(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】副生ガス利用システム
(51)【国際特許分類】
F22B 35/14 20060101AFI20220726BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
F22B35/14 C
F22B35/00 E
(21)【出願番号】P 2018145995
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 務
(72)【発明者】
【氏名】中島 正隆
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040444(JP,A)
【文献】特開2011-247538(JP,A)
【文献】特開2002-081604(JP,A)
【文献】特開2017-157442(JP,A)
【文献】特開平08-219551(JP,A)
【文献】特開2016-048044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0276452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/14
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副生ガスのみを燃焼させて消費す
ることで蒸気を生成する燃焼装置であって、生成した蒸気を、別のメインのボイラ又はメインのボイラシステムにおける蒸気ヘッダに集合させる燃焼装置と、
副生ガスタンクに貯留された前記副生ガスを前記燃焼装置に供給する副生ガス供給ラインと、
前記燃焼装置の生成する蒸気量とは関係なく前記副生ガスタンクの内部の圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、前記燃焼装置における副生ガスの消費量を制御する制御部と、を備える副生ガス利用システムであって、
前記制御部は、
燃焼停止状態にある燃焼装置のうち、少なくとも1台の燃焼装置を選択して、選択された前記燃焼装置に前記副生ガスを供給する前記副生ガス供給ラインをパージさせた後、前記燃焼装置をパイロット燃焼させ、前記パイロット燃焼を保持するように制御する、副生ガス利用システム。
【請求項2】
前記少なくとも1台の燃焼装置は、次に燃焼開始する優先順位最上位の燃焼装置を含む、請求項1に記載の副生ガス利用システム。
【請求項3】
前記少なくとも1台の燃焼装置は、燃焼状態にある燃焼装置の台数を減少させる際に停止燃焼装置として選択された燃焼装置を含み、
前記制御部は、
停止燃焼装置として選択された燃焼装置を燃焼停止させるとき、前記停止燃焼装置に対して前記副生ガスを供給する前記副生ガス供給ラインをパージさせた後、前記停止燃焼装置をパイロット燃焼させ、前記パイロット燃焼を所定時間保持するように制御する、請求項1に記載の副生ガス利用システム。
【請求項4】
前記少なくとも1台の燃焼装置は、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が予め設定された制御下限圧力値を下回ることで全台燃焼停止させる際に、燃焼停止される燃焼装置を含み、
前記制御部は、
前記燃焼停止される少なくとも1台の燃焼装置に前記副生ガスを供給する前記副生ガス供給ラインをパージさせた後、前記燃焼装置をパイロット燃焼させ、前記パイロット燃焼を保持するように制御する、請求項1に記載の副生ガス利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副生ガス利用システムに関する。より詳細には、例えばプラント設備等の副生設備から製品製造に伴って発生する副生ガスのみを燃料ガスとして用いるボイラ等の燃焼装置を備える副生ガス利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラシステムが設置されるプラント等では、プラントの運転に伴い副生ガスとして例えば水素ガス(以下、「副生ガス」ともいう)が発生する場合がある。そこで、プラントにおいて発生した水素ガス(副生ガス)を燃料の一部として用いるボイラシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、複数の貫流ボイラ20からなるボイラ群2において、貫流ボイラ20それぞれに第1燃料ガス(例えば、13AやLPG等の炭化水素ガス)を供給する第1燃料ガス供給ラインL1と、貫流ボイラ20それぞれに副生ガス(水素ガス)を供給する水素ガス供給ラインL2と、台数制御装置50と、を設けたボイラシステム1が記載されている。ここで、特許文献1に記載のボイラシステム1は、第1燃料ガス及び副生ガスの混合ガスを燃料ガスとして混焼燃焼可能、かつ、第1燃料ガスのみを燃料ガスとして専焼燃焼可能な複数の貫流ボイラにより構成されている。
そして、ボイラシステム1の台数制御装置50は、蒸気ヘッダ40の蒸気圧に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を算出し、算出された複数の貫流ボイラ20の燃焼状態に応じて、第1燃料ガス供給弁61及び水素ガス供給弁62の開閉又は開度を制御することで、それぞれの貫流ボイラ20への燃料ガス(第1燃料ガス及び副生ガス)の供給量を調整し、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を制御する。このため、ボイラシステム1における副生ガスの消費量は、蒸気ヘッダ40の蒸気圧に依存するものとなり、必ずしも、プラント設備から製品製造において生成される副生ガスを全て消費できるものではなかった。
より具体的には、特許文献1に記載の第1実施形態においては、台数制御装置50(水素供給制御部521)は、例えば、副生ガスとしての水素ガスを貯留する水素ホルダ30の内部の圧力がP1以上の場合には副生ガス(水素ガス)を供給する貫流ボイラ20を4台とし、圧力がP1未満P2以上の場合には副生ガス(水素ガス)を供給する貫流ボイラ20を3台とし、圧力がP2未満P3以上の場合には水素ガスを供給する貫流ボイラ20を2台とし、圧力がP3未満P4以上の場合には副生ガス(水素ガス)を供給する貫流ボイラ20を1台とし、そして圧力がP4未満の場合には副生ガス(水素ガス)を供給する貫流ボイラ20を0台とするように、副生ガス(水素ガス)供給の制御をする。
ただし、台数制御装置50(水素供給制御部521)により決定された副生ガス(水素ガス)を供給する貫流ボイラ20の台数が、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数よりも多い第1状態を検出した場合、副生ガス(水素ガス)を供給すると決定された貫流ボイラ20のうち、燃焼指示が出されていない貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を閉止して水素ガス放出弁63を開放して、副生ガス(水素ガス)を大気に放出する(以下、「放気する」ともいう)ことが記載されている。
また、特許文献1に記載の第2実施形態では、台数制御装置50A(水素供給制御部521A)は、副生ガス(水素ガス)を貯留する水素ホルダ30の内部の圧力値が予め設定された目標圧力値となるように、水素ガスのボイラ群2への供給量(必要出力水素量)を算出し、台数制御装置50A(水素供給制御部521A)は、必要出力水素量がボイラ群2に供給されるように水素ガス供給弁62の開閉又は開度を制御する。
しかしながら、この場合においても、台数制御装置50A(水素供給制御部521A)は、燃焼状態にある貫流ボイラ20への水素ガスの供給だけでは水素ホルダ30から出力される水素量(出力水素量)が必要出力水素量に到達しない場合、又は燃焼状態にある貫流ボイラ20が無い場合には、水素ガス放出弁63Aの開度を制御して、副生ガス(水素ガス)を放気することで、水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力が目標圧力となるように制御することが記載されている。
【0005】
以上のように、特許文献1に記載のボイラシステム1は、第1燃料ガス及び副生ガスの混合ガスを燃料ガスとして混焼燃焼させるか、又は第1燃料ガスのみを専焼燃焼させる複数の貫流ボイラから構成され、副生ガスとしての水素ガスを、第1燃料ガスの補助として使用しているに過ぎない。このため、ボイラシステム1の台数制御装置は、発生蒸気量の制御を前提として、その条件下で、(放気を含む)水素供給量の制御を行う。第1実施形態及び第2実施形態に関わらず、台数制御装置50Aは、ボイラシステム1の燃焼量の制御を行う際に、水素供給量が過剰な場合には、その過剰な量を放気する制御を行うことを前提としている。このように、特許文献1に記載のボイラシステム1は、必ずしも、プラント設備から製品製造において生成される副生ガスを全て消費できるものではなかった。また、発生量の変動のある副生ガス(水素ガス)のみを燃料ガスとして消費させることが可能な水素専焼ボイラを含むボイラシステムでもなかった。
【0006】
他方、例えば、メインボイラシステムによる蒸気量生成がなされ、当該メインボイラシステムにおいて蒸気量の制御を行っている場合に、プラント設備から製品製造における副生ガスとして発生する水素ガスのみを燃料ガスとして燃焼可能な水素専焼ボイラ(貫流ボイラ)を含む副生ガス利用システムを新たに設けることで、プラント設備側で発生する製品製造における副生ガスとして発生する発生量の変動のある副生ガス(水素ガス)をプラント設備側に影響を与えることなく、通常時には全て燃料ガスとして消費させることで、発生量の変動が大きい副生ガスを効率よくエネルギーとして利用可能な副生ガス利用システムが求められている。
この点、特許文献1に開示されたボイラシステム1は、第1燃料ガス(例えば、13AやLPG等の炭化水素ガス)のみを燃料ガスとして燃焼可能な専焼燃焼及び第1燃料ガス及び副生ガスの混合ガスを燃料ガスとして燃焼可能な混焼燃焼可能な貫流ボイラにより構成されており、第1燃料ガスと副生ガスとの組み合わせで必要蒸気量を生成させるものであり、通常時に副生ガスを全て燃料ガスとして無駄なく消費させるものではなく、発生量の変動のある副生ガス(水素ガス)を効率的にエネルギーとして利用可能なボイラシステムでもなかった。
また、特許文献1に開示されたボイラシステム1は、発生量の変動のある副生ガス(水素ガス)のみを燃料ガスとして消費させることが可能な(発生蒸気量の制御を行わない)水素専焼ボイラ(貫流ボイラ)を含むボイラシステムを新たに設けるものでもなかった。
【0007】
本発明は、例えばプラント設備等の副生設備における製品製造過程において発生する副生ガス(例えば水素ガス)のみを燃料ガスとして燃焼可能な燃焼装置としての副生ガス専焼ボイラ(貫流ボイラ)を1つ以上含むボイラ群と、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように前記燃焼装置における副生ガスの消費量を制御する制御部と、を備える副生ガス利用システムにおいて、ガス消費量の急増加に対して、燃焼開始ボイラの起動遅れによって、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が急上昇し、前記副生ガスの放気をする事態が発生することを防止する副生ガス利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、副生ガスのみを燃焼させて消費する燃焼装置と、副生ガスタンクに貯留された前記副生ガスを前記燃焼装置に供給する副生ガス供給ラインと、副生ガスタンクの内部の圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、前記燃焼装置における副生ガスの消費量を制御する制御部と、を備える副生ガス利用システムであって、前記制御部は、燃焼停止状態にある燃焼装置のうち、少なくとも1台の燃焼装置を選択して、選択された前記燃焼装置に前記副生ガスを供給する前記副生ガス供給ラインをパージさせた後、前記燃焼装置をパイロット燃焼させ、前記パイロット燃焼を保持するように制御する、副生ガス利用システムに関する。
【0009】
(2) また、前記少なくとも1台の燃焼装置は、次に燃焼開始する優先順位最上位の燃焼装置を含むことが好ましい。
【0010】
(3) また、前記少なくとも1台の燃焼装置は、燃焼状態にある燃焼装置の台数を減少させる際に停止燃焼装置として選択された燃焼装置を含み、前記制御部は、停止燃焼装置として選択された燃焼装置を燃焼停止させるとき、前記停止燃焼装置に対して前記副生ガスを供給する前記副生ガス供給ラインをパージさせた後、前記停止燃焼装置をパイロット燃焼させ、前記パイロット燃焼を所定時間保持するように制御することが好ましい。
【0011】
(4) また、前記少なくとも1台の燃焼装置は、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が予め設定された制御下限圧力値を下回ることで全台燃焼停止させる際に、燃焼停止される燃焼装置を含み、前記制御部は、前記燃焼停止される少なくとも1台の燃焼装置に前記副生ガスを供給する前記副生ガス供給ラインをパージさせた後、前記燃焼装置をパイロット燃焼させ、前記パイロット燃焼を保持するように制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばプラント設備等の副生設備における製品製造過程において発生する副生ガス(例えば水素ガス)のみを燃料ガスとして燃焼可能な燃焼装置としての副生ガス専焼ボイラ(貫流ボイラ)を1つ以上含むボイラ群と、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように前記燃焼装置における副生ガスの消費量を制御する制御部と、を備える副生ガス利用システムにおいて、ガス消費量の急増加に対して、燃焼開始ボイラの起動遅れによって、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が急上昇し、前記副生ガスの放気をする事態が発生することを防止する副生ガス利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態におけるボイラシステムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるボイラシステムにおけるタンク圧力帯域を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるボイラシステムにおける台数制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4A】ハンチングの発生する状況を示す図である。
【
図4B】ハンチングの発生を防止又は抑制するための必要ガス消費量MV
nの補正を示す図である。
【
図5A】本発明の実施形態における制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5B】本発明の実施形態における制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5C】本発明の実施形態における制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5D】本発明の実施形態における制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の副生ガス利用システムとしてのボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態における副生ガスとして、プラント設備等の副生設備(以下「プラント設備等」ともいう)から製品製造において発生する水素ガスを例示するが、本発明は水素ガスに限られない。本発明は、例えば消化ガス、その他の炭化水素ガス等任意の副生ガスに適用できる。
本実施形態における副生ガス利用システムとしてのボイラシステムは、プラント設備等から製品製造における副生ガスとして発生する水素ガスのみを燃料ガスとして消費させることが可能な燃焼装置としての水素専焼ボイラ(貫流ボイラ)を備えるボイラシステムである。
【0015】
本実施形態のボイラシステム1は、
図1に示すように、複数(例えば4台)の水素専焼ボイラである貫流ボイラ20(以下「ボイラ20」ともいう)を含むボイラ群2と、水素ガス供給ラインL2と、ボイラ群2における副生ガスの消費量を制御する、制御部としての台数制御装置50と、を備え、ボイラシステム1は、副生ガスタンクとしての2次側水素タンク30から供給される副生ガスとしての水素ガスを消費する。なお、本実施形態では、ボイラ群2は4台のボイラ20を備えるとしたが、これに限られない。ボイラ群2は3台以下のボイラ20を含んでもよい。また、ボイラ群2は5台以上のボイラ20を含んでもよい。
【0016】
水素ガス供給ラインL2は、水素専焼ボイラである貫流ボイラ20それぞれに水素ガスを供給する。水素ガス供給ラインL2は、水素ガス本ラインL21と、複数の水素ガス分岐ラインL22と、を備える。水素ガス本ラインL21の上流側は、逆火防止器23を介して、2次側水素タンク30に接続される。複数の水素ガス分岐ラインL22の上流側は、水素ガス本ラインL21に接続される。複数の水素ガス分岐ラインL22の下流側は、それぞれ、貫流ボイラ20に接続される。
水素ガス分岐ラインL22には、それぞれ、水素ガス流量調整弁24及び2つ以上の水素ガス遮断弁25、26が配置される。
【0017】
水素ガス流量調整弁24は、例えばエア駆動バルブにより構成され、水素ガス分岐ラインL22の流路を開閉又は開度調整することで、水素ガス分岐ラインL22を流通する水素ガスの流量を調整する。
水素ガス遮断弁25は、水素ガス分岐ラインL22における水素ガス流量調整弁24よりも上流に配置される。水素ガス遮断弁25は、例えば電磁弁により構成され、水素ガス分岐ラインL22からのボイラ20への水素ガスの供給路を開閉する。
なお、図示しないが、仮に、台数制御装置50に障害が発生し、ボイラ群2における副生ガスの消費量の制御が正常に行われない状態となり、その結果2次側水素タンク30の内部の圧力値が下がり過ぎる事態になる場合に備えて、ボイラ20それぞれに、供給ガス圧スイッチを設けることで、供給ガス圧の低下が発生した場合に、供給ガス圧スイッチが作動することで、ボイラ20の水素ガス消費量をゼロとするようにしてもよい。
【0018】
<2次側水素タンク30について>
2次側水素タンク30は、プラント設備等において副生ガスとして発生した水素ガスを後述するように昇圧させた状態で貯留する副生ガスタンクである。そして、2次側水素タンク30には、内部の圧力値を測定する圧力値測定部としての水素圧センサ31が配置される。水素圧センサ31は、副生ガスタンクとしての2次側水素タンク30に貯留された水素ガスの圧力を検出し、検出した水素ガスの圧力に係る信号(水素圧力信号)を、後述の台数制御装置50に送信する。
これにより、台数制御装置50は、2次側水素タンク30の内部の圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、ボイラ群2における副生ガス(水素ガス)の消費量を制御する。以下、簡単のために、2次側水素タンク30の内部の圧力を「タンク圧力」ともいい、水素圧センサ31により検出される2次側水素タンク30の内部の圧力値を「タンク圧力値」ともいう。
より具体的には、台数制御装置50は、後述する必要ガス消費量が後述する実績ガス消費量よりも大きくなれば、ボイラ群2に対して、水素ガス消費量を増加させるように、水素ガス流量調整弁24の開度を調整し、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも小さくなれば、ボイラ群2に対して、水素ガス消費量を減少させるように、水素ガス流量調整弁24の開度を調整する。
この際、2次側水素タンク30には、水素ガスが昇圧されて貯留されていることから、2次側水素タンク30に供給されるガス量とボイラ群2により消費されるガス量の差異を吸収することができる。
また、ボイラシステム1は、通常時、すなわち、2次側水素タンク30の内部の水素ガスの圧力値が後述する制御上限圧力値を超えないときには、副生ガスとして発生する水素ガスが放気されることなく、副生ガスを無駄なく、エネルギーとして利用することを可能とする。
【0019】
なお、2次側水素タンク30には、水素ガス放出ラインL3と、水素ガス放気弁33が配置される。水素ガス放気弁33は、例えば、モータバルブ等により構成される。水素ガス放気弁33は、通常時には閉状態で運用されるが、緊急時、例えば貫流ボイラ20が燃焼停止状態となった場合、再度貫流ボイラ20を燃焼させるまでに数10秒の時間を要するため、この間に、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回った場合に、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回らないように、水素ガス放気弁33を開閉又は開度調整することで、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスの、水素ガス放出ラインL3を介した大気への放気量を調整することができる。それにより、タンク圧力値が制御上限圧力値を超えるような異常時が発生した場合には、水素ガス放気弁33により水素ガスを放気することで、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回らないようにして、2次側水素タンク30の圧力破壊や水素ガス遮断弁25、26の破損等を防ぐことができる。詳細については後述する。
【0020】
また、2次側水素タンク30には、水素ガス放気弁33とは別に、安全弁(図示せず)を配置するようにしてもよい。安全弁は、仮に水素ガス放気弁33が故障した場合であって、仮にタンク圧力値が制御上限圧力値を超えて、さらに上昇した場合に、タンク圧力値が2次側水素タンク30の耐圧を超えないように、安全弁を開放して、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスを放気することで、2次側水素タンク30の圧力破壊や水素ガス遮断弁25、26の破損等を防ぐことができる。
【0021】
<プラント設備等の副生設備から供給されるガスについて>
図1に示すように、2次側水素タンク30には、プラント設備等の副生設備側(図示せず)から供給される水素ガスは昇圧機42で昇圧されて、2次側水素タンク30に供給される。なお、センサ41により、昇圧機42の上流側の圧力値が一定の値を保つように戻り調整弁44の開度が調整される。
【0022】
<ボイラ群2について>
ボイラ群2を構成するボイラ20は、前述したように、水素専焼ボイラである貫流ボイラ20であり、プラント設備等の副生設備から製品製造における副生ガスとして発生する水素ガスのみを燃料ガスとして消費させて蒸気を生成する。ボイラ群2は、副生ガスのみを燃焼させて消費する燃焼装置としての水素専焼ボイラである貫流ボイラ20から構成され、生成した蒸気を蒸気集合ラインL4を介してメインのボイラ又はメインボイラシステムにおける蒸気ヘッダ(図示せず)に集合させる。
前述したように、本実施形態においては、ボイラシステム1とは別に、メインのボイラ又はメインボイラシステム(図示せず)が存在し、メインのボイラ又はメインボイラシステムにおいて生成された蒸気を蒸気使用設備に供給している。より具体的には、メインのボイラ又はメインボイラシステム及びボイラシステム1において生成された蒸気は、蒸気ヘッダ(図示せず)に集合させて貯留される。蒸気ヘッダにおいて、複数のボイラから生成された蒸気の相互の圧力差及び圧力変動が調整される。そして、圧力の調整された蒸気が、蒸気供給ライン(図示せず)を介して蒸気使用設備(図示せず)に供給される。ここで、メインのボイラ又はメインボイラシステムは、蒸気ヘッダ圧力に基づいて、蒸気量の制御を行う。すなわち、メインのボイラ又はメインボイラシステムはボイラシステム1の生成する蒸気量を前提として、自身の生成する蒸気量の制御を行う。
【0023】
ボイラシステム1は、タンク圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、後述する台数制御装置50により、ボイラ群2における副生ガス(水素ガス)の消費量を制御する。
このように、ボイラシステム1は、メインのボイラ又はメインボイラシステムにおける台数制御から独立して、副生ガスとしての水素ガスの消費量を制御することができる。それにより、通常時には、副生ガスとして発生する水素ガスを放気させることなく、副生ガスを無駄なく、エネルギーとして利用可能とすることができる。
以上のように、ボイラシステム1は、複数の水素専焼ボイラである貫流ボイラ20から構成され、ボイラ群2の生成する蒸気量の制御を行うものではなく、ボイラ群2の生成する蒸気量とは関係なく、副生ガスとしての水素ガスの消費量を制御する点に特長がある。副生ガスとしての水素ガスの消費量の制御についての詳細は、後述する。
【0024】
<水素専焼ボイラである貫流ボイラ20について>
台数制御装置50による水素ガスの消費量の制御方式を説明する前に、水素専焼ボイラである貫流ボイラ20について説明する。以下、特に断らない限り、貫流ボイラ20は、水素専焼ボイラとしての貫流ボイラを意味する。貫流ボイラ20は、複数の段階的な燃焼位置を有する段階値制御ボイラ、又は連続制御ボイラにより構成することができる。段階値制御ボイラとは、燃焼を選択的にオン/オフしたり、高燃焼、中燃焼、低燃焼等に燃焼位置を設定したりすること等により水素ガス消費量を制御して、選択された燃焼位置に応じて水素ガス消費量を段階的に増減可能なボイラである。
また、連続制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態における水素ガス消費量である最小ガス消費量(例えば、最大水素ガス消費量の25%のガス消費量)から最大燃焼状態における水素ガス消費量(最大水素ガス消費量)の範囲で、ガス消費量(燃焼量)が連続的に制御可能とされているボイラである。連続制御ボイラは、例えば、燃料ガスとしての水素ガスをバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給する送風機の出力を制御することにより、水素ガス消費量を調整するようになっている。また、水素ガス消費量を連続的に制御するとは、制御がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の水素ガス消費量が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に水素ガス消費量を制御可能な場合を含む。
【0025】
本実施形態における貫流ボイラ20は、特に断らない限り、連続制御ボイラを例示する。本実施形態におけるボイラ20における、燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更については、ボイラ20の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1における水素ガス消費量である最小ガス消費量から最大燃焼状態S2における水素ガス消費量である最大ガス消費量の範囲においては、水素ガス消費量(燃焼量)が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数のボイラ20それぞれには、変動可能な水素ガス消費量の単位である単位ガス消費量が設定されている。これにより、ボイラ20は、最小燃焼状態S1における水素ガス消費量である最小ガス消費量から最大燃焼状態S2における水素ガス消費量である最大ガス消費量の範囲においては、単位ガス消費量単位で、ガス消費量を変更可能となっている。
【0026】
単位ガス消費量は、ボイラ20の最大燃焼状態S2における水素ガス消費量である最大ガス消費量に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における水素ガス消費量の必要水素ガス消費量に対する追従性を向上させる観点から、ボイラ20の最大水素ガス消費量の例えば、0.1%~20%に設定されることが好ましく、1%~10%に設定されることがより好ましい。
【0027】
また、複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。
図1に示す、ボイラ20の1号機~4号機のそれぞれに「1」~「4」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、4号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部52の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0028】
また、各ボイラ20は、各ボイラ20の水素ガス消費量を制御するローカル制御部201を備える。ローカル制御部201は、信号線16Bを介して台数制御装置50から送信される制御信号又は運転者の手動操作により入力された制御信号に基づいて、ボイラ20の水素ガス消費量(燃焼状態)を制御する。また、ローカル制御部201は、台数制御装置50で用いられる信号を、信号線16Bを介して台数制御装置50に送信する。台数制御装置50で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の水素ガス消費量(燃焼状態)、及びその他のデータ等が挙げられる。これにより、台数制御装置50は、各ボイラ20の燃焼状態及び水素ガス消費量等を管理することができる。
【0029】
<台数制御装置50について>
台数制御装置50は、水素圧センサ31により検出される2次側水素タンク30の内部の圧力値(タンク圧力値)に基づいて、複数の水素専焼ボイラである貫流ボイラ20における水素ガス消費量を制御する。
具体的には、プラント設備等の副生設備から製品製造における副生ガスの発生量が増大した場合にタンク圧力値が上がると、水素ガス消費量を増加させることでタンク圧力値を適正な値に戻し、逆に2次側水素タンク30に供給される副生ガスの発生量が不足した場合にタンク圧力値が減少すると、水素ガス消費量を減少させることでタンク圧力値を適正な値に戻す。
従って、ボイラシステム1は、タンク圧力値の変動に基づいて、2次側水素タンク30に供給される副生ガスの発生量の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、タンク圧力値に基づいて、プラント設備等の副生設備から製品製造における副生ガスの発生量に応じて必要とされる水素ガス消費量である必要ガス消費量を算出し、この算出された必要ガス消費量に基いて、複数の貫流ボイラ20の水素ガス消費状態(水素ガスを消費させる貫流ボイラ20の台数及び水素ガスを消費させる貫流ボイラ20の水素ガス消費量)を決定することができる。
ボイラシステム1においては、タンク圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、水素専焼ボイラである貫流ボイラ20における水素ガス消費量が制御される。より具体的には、台数制御装置50は、タンク圧力値が予め設定された目標圧力値に一致するように、水素専焼ボイラである貫流ボイラ20における水素ガス消費量が制御される。
【0030】
本実施形態のボイラシステム1における水素ガス消費量の制御について説明する前に、タンク圧力の帯域について説明する。
図2にタンク圧力帯域の一例を示す。
【0031】
<台数制御圧力帯域>
前述したように、台数制御装置50は、タンク圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、ボイラ群2における水素ガス消費量を制御する。当該圧力値範囲の上限圧力値を制御上限圧力値といい、下限圧力値を制御下限圧力値という。後述するように、台数制御装置50は、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回ると、水素ガスの放気量を調整することで、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回らないように制御する。また、タンク圧力値が制御下限圧力値を下回ると、燃焼状態にあるボイラ20を即燃焼停止状態、すなわち全台待機状態にする。以下、制御下限圧力値から制御上限圧力値までの圧力帯域を仮に「台数制御圧力帯域」という。例えば、前述の目標圧力値は台数制御圧力帯域に含まれる値である。なお、この目標値を「台数制御目標圧力値」ともいう。
後述するように、台数制御装置50は、基本的には、タンク圧力値が台数制御目標圧力値を保つように、現時点のボイラシステム1における必要ガス消費量をPIアルゴリズム又はPIDアルゴリズムにより算出し、現時点の必要ガス消費量をボイラ群2に消費させるようにボイラ群2における水素ガス消費量(具体的には、水素ガスを消費させる貫流ボイラ20の台数及び水素ガスを消費させる貫流ボイラ20の水素ガス消費量)を制御する。以下、このような制御を「台数制御」という。
【0032】
<放気制御圧力帯域>
しかしながら、例えば一部のボイラ20の異常停止等により、タンク圧力値が急上昇し、制御上限圧力値を超える可能性がある。このような場合、台数制御装置50は、2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御することで、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスの放気量を調整することで、タンク圧力値が予め設定された上限圧力値を上回らないように制御する。このような制御を「放気制御」ともいう。
上限圧力値は、台数制御目標圧力値よりも高く設定され、例えば、制御上限圧力値と同じ値に設定することができる。
台数制御装置50は、前述したような異常時(すなわち、台数制御による水素ガス消費量の制御では、タンク圧力値の上昇を止められない場合)であっても、タンク圧力値が予め設定された上限圧力値を上回らないように2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御するように構成される。
【0033】
<放気制御方式の変形例>
なお、放気制御方式は前述した方式に限られない。
図2には図示しないが、上限圧力値に換えて放気弁制御用の目標圧力値(以下、「放気目標圧力値」ともいう)を設定し、タンク圧力値が予め設定された放気目標圧力値を維持するように2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御するように構成してもよい。なお、放気目標圧力値を、圧力値範囲の上限値(制御上限圧力値)以下の値に設定してもよい。
【0034】
<制御下限圧力値以下の帯域>
後述するように、制御下限圧力値以下の帯域として、予めボイラインターロック停止圧力値を設定することが好ましい。例えば水素圧センサ31の故障等により、台数制御が正常に行われない状態となり、例えば、台数制御装置50がボイラ20を燃焼停止状態、すなわち全台待機状態にできない場合に、ボイラ20個々に予め供給ガス圧スイッチを設けて、供給ガス圧低下(ボイラインターロック停止圧力値に到達すること)により供給ガス圧スイッチが作動することで、ボイラ20を強制的に燃焼停止とすることが好ましい。
なお、これらの圧力値は以下の関係を満たすように設定される。
制御下限圧力値 > ボイラインターロック停止圧力値。
【0035】
<放気制御上限圧力値以上の帯域>
タンク圧力値が制御上限圧力値を超えて、さらに上昇した場合に、昇圧機を強制的に停止させる閾値としての昇圧機停止圧力値が予め設定されることが好ましい。
前述したように、仮に水素ガス放気弁33が故障した場合であって、仮にタンク圧力値がさらに上昇した場合に、タンク圧力値が例えば、2次側水素タンク30の耐圧を超えないように、所定の圧力値に到達すると、安全弁を開放して、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスを強制的に放気することが好ましい。この場合の所定の圧力値を安全弁開放圧力値ともいう。
なお、これらの圧力値は以下の関係を満たすように設置される。
安全弁開放圧力値>昇圧機停止圧力値。
【0036】
次に、台数制御装置50の制御について、台数制御、放気制御、及び起動時制御について順番に説明する。
【0037】
<台数制御について>
まず、台数制御装置50の台数制御の詳細について説明する。ここで、台数制御とは、タンク圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、ボイラ群2における水素ガス消費量を制御することをいう。
台数制御装置50は、台数制御機能を実現するために、
図3に示すように、台数制御装置50は、記憶部51と、制御部52と、を備える。
記憶部51は、タンク圧力値に関して予め設定される圧力値に関する情報(制御下限圧力値、台数制御目標圧力値、制御上限圧力値)、複数の貫流ボイラ20それぞれに予め設定される、変動可能な水素ガス消費量の単位である単位ガス消費量に関する情報、最も大きい燃焼状態における最大ガス消費量に関する情報、及び最も小さい燃焼状態におけるガス消費量である最小ガス消費量に関する情報、また、ボイラ群2に対して予め設定される、水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させる基準となる各ボイラ20のガス消費量を示す増台ラインに関する情報、水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させる基準となる増加基準ガス消費量に関する情報、及び水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を減少させる基準となるガス消費量を示す減台ラインに関する情報を記憶する。
また、記憶部51は、台数制御装置50(制御部52)の制御により複数の貫流ボイラ20に対して行われた指示の内容や、複数の貫流ボイラ20から受信した水素ガス消費状態等の情報、複数の貫流ボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報、タンク圧力値の情報等を記憶する。
【0038】
<ガス消費量の平準化について>
最初に、ボイラシステム1において必要とされるガス消費量の変動に対して、燃焼状態にある複数のボイラ20のガス消費量を平準化する台数制御について説明する。ここでは、燃焼状態にある複数のボイラ20は、後述する、燃焼させるボイラ20の台数を増加又は減少させる条件(増大ライン、減台ライン等に係る条件)を満たしていないものとする。
なお、ボイラシステム1において、台数制御装置50は、ボイラ20への水素ガス分岐ラインL22の水素ガス遮断弁25、26が開となったとき、ボイラ20が燃焼状態にあると判断するものとする。
ボイラシステム1において必要とされるガス消費量の変動に対して、燃焼状態にある複数のボイラ20のガス消費量を平準化するため、制御部52は、
図3に示すように、必要ガス消費量算出部520と、実績ガス消費量算出部521と、偏差算出部522と、燃焼装置選択部523と、第1判定部5241と、消費量制御部525と、を備える。
【0039】
<必要ガス消費量算出部520>
必要ガス消費量算出部520は、タンク圧力値及び台数制御目標圧力値に基づいて、ボイラ群2に消費させるべきガス量である必要ガス消費量を算出する。
より具体的には、必要ガス消費量算出部520は、タンク圧力値が台数制御目標圧力値に一致するように、制御周期毎に、例えば公知の位置形PID(又は位置形PI)アルゴリズム又は速度形PID(又は速度形PI)アルゴリズムにより算出される現時点の必要ガス消費量MVnを算出する。
ここで、Δtを制御周期、nを正の整数値としたとき、MVnは制御周期n(起点t0+n*Δt)における必要ガス消費量(以下、特に断らない限り、「今回必要ガス消費量」又は「現時点の必要ガス消費量」ともいう)を示す。
【0040】
<位置形PIDアルゴリズム>
必要ガス消費量算出部520は位置形PIDアルゴリズムを使用する場合、今回必要ガス消費量MVnは、公知の式(1)に基づいて算出することができる。
MVn=偏差比例出力(P制御)-偏差積分出力(I制御)+偏差微分出力(D制御)
・・・(1)
【0041】
ここで、MVnを構成する各成分は、例えば、下記の式(2)~(4)により算出される。
台数制御目標蒸気圧力値をSP、制御周期n(起点t0+n*Δt)におけるタンク圧力値をPVn(以下、特に断らない限り「今回タンク圧力値」ともいう)、前回制御周期のタンク圧力値をPVn-1(以下、特に断らない限り「前回タンク圧力値」ともいう)、比例ゲインをKPとすると、
偏差比例出力=KP×(PVn-SP) ・・・(2)
【0042】
偏差積分出力=KP×(Δt/TI)×Σi(PVi-SP) ・・・(3)
ここで、TIは積分時間を表す。
【0043】
偏差微分出力= KP×(TD/Δt)×(PVn-PVn-1) ・・・(4)
ここで、TDは微分時間を表す。
【0044】
以上のように、必要ガス消費量算出部520は位置形PIDアルゴリズムを使用する場合、例えば式(2)~(4)で算出された各出力を合計することにより、今回の必要ガス消費量MVnを算出することができる。
【0045】
<速度形PIDアルゴリズム>
必要ガス消費量算出部520は位置形PIDアルゴリズムに換えて、速度形PIDアルゴリズムを使用してもよい。速度形PIDアルゴリズムは、制御周期毎の必要ガス消費量変化分ΔMVnのみを計算し、これに前回必要ガス消費量MVn-1を加算して、今回必要ガス消費量MVnを式(5)により計算する方法である。
MVn = MVn-1 + ΔMVn ・・・(5)
【0046】
制御周期毎の必要ガス消費量変化分ΔMVnは、下記の式(6)~(10)に基づいて算出する。
ΔMVn = ΔPn+ΔIn+ΔDn ・・・(6)
ここで、ΔPnはP制御出力(変化分)を、
ΔInはI制御出力(変化分)を、
ΔDnはD制御出力(変化分)を表す。
ΔPn = KP×(en-en-1) ・・・(7)
ここで、KPは、比例ゲインを表す。
enは、式(8)に示すように、今回の台数制御目標蒸気圧力値SVn(ただし、今の前提ではSVn=SV)、今回のタンク圧力値PVnとの差(今回偏差量)を表す。
en = PVn-SVn ・・・(8)
ΔIn =KP×(Δt/TI) ×en ・・・(9)
TIは積分時間を表す。
ΔDn = KP×(TD/Δt) ×(en-2en-1+en-2)
・・・(10)
ここで、TDは微分時間を表す。
【0047】
必要ガス消費量算出部520は速度形PIDアルゴリズムを使用する場合、例えば式(7)、(9)、(10)で算出された各出力(変化分)を合計することにより、制御周期毎の必要ガス消費量変化分ΔMVnを算出する。
必要ガス消費量算出部520は、式(5)のように、前回必要ガス消費量MVn-1にΔMVnを加算して、今回必要ガス消費量MVnを計算する。
以上で、必要ガス消費量算出部520について説明した。
【0048】
<実績ガス消費量算出部521>
実績ガス消費量算出部521は、各ボイラ20のローカル制御部201から送信される各ボイラ20の水素ガス消費状態(燃焼状態、水素ガス消費量)に基いて、燃焼状態にある各ボイラ20での水素ガス消費量の実績である実績ガス消費量を算出するとともに、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量の合計量となる、ボイラ群2での水素ガス消費量の実績である実績ガス消費量を算出する。
【0049】
<偏差算出部522>
偏差算出部43は、必要ガス消費量算出部520により算出された必要ガス消費量と実績ガス消費量算出部521により算出された、ボイラ群2の実績ガス消費量との偏差量を算出する。
【0050】
<燃焼装置選択部523>
燃焼装置選択部523は、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも大きい場合に、燃焼状態にある複数のボイラ20のうち水素ガス消費量の少ないボイラ20(以下、「ガス消費量の少ないボイラ」ともいう)を選択する。逆に、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも小さい場合)、燃焼装置選択部523は、燃焼状態にある複数のボイラ20のうち水素ガス消費量の多いボイラ20(以下、「ガス消費量の大きいボイラ」ともいう)を選択する。
なお、燃焼装置選択部523は、タンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも大きい場合(すなわち、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも大きい場合)であって、燃焼状態にある2以上のガス消費量の少ないボイラの水素ガス消費量が等しい場合、例えば、燃焼優先順位の高いボイラ20を優先して選択するようにしてもよい。
また、燃焼装置選択部523は、タンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも小さい場合(すなわち、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも小さい場合)であって、燃焼状態にある2以上のガス消費量の大きいボイラの水素ガス消費量が等しい場合、例えば、燃焼優先順位の低いボイラ20を優先して選択するようにしてもよい。
【0051】
<第1判定部5241>
第1判定部5241は、偏差算出部522により算出された、必要ガス消費量と実績ガス消費量との偏差量が正の値の場合、すなわち、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも大きい場合、偏差量が、「ガス消費量の少ないボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上であるかを判定する。
また、第1判定部5241は、偏差算出部522により算出された、必要ガス消費量と実績ガス消費量との偏差量が負の値の場合、すなわち、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも小さい場合、偏差量の絶対値が、「ガス消費量の大きいボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上であるかを判定する。
【0052】
<消費量制御部525>
消費量制御部525は、偏差算出部522により算出された、必要ガス消費量と実績ガス消費量との偏差量が正の値の場合、第1判定部5241により、偏差量が、「ガス消費量の少ないボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上であると判定された場合、燃焼装置選択部523により選択された「ガス消費量の少ないボイラ20」の水素ガス消費量を単位ガス消費量分増加させる。
逆に、消費量制御部525は、偏差算出部522により算出された、必要ガス消費量と実績ガス消費量との偏差量が負の値の場合、第1判定部5241により、偏差量の絶対値が、予め設定された単位ガス消費量以上であると判定された場合、燃焼装置選択部523により選択された「ガス消費量の大きいボイラ20」の水素ガス消費量を単位ガス消費量分減少させる。
以上説明した構成により、必要ガス消費量が変動した場合に、ガス消費量の大きい又は小さいボイラ20のガス消費量を変動させて、ガス消費量を調整できるので、燃焼状態にある複数のボイラ20のガス消費量を平準化することができ、2次側水素タンク30の圧力安定性を向上させることができる。
【0053】
<増台制御、減台制御>
次に、燃焼させるボイラ20の台数を増加又は減少させる場合の台数制御について説明する。
このため、記憶部51には、前述したように、水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させる基準となる各ボイラ20のガス消費量を示す増台ラインに関する情報、及び水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を減少させる基準となるガス消費量を示す減台ラインに関する情報等が予め設定されている。
制御部52は、
図3に示すように、さらに第2判定部5242を備える。
【0054】
<第2判定部5242>
第2判定部5242は、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、増台ラインが規定するガス消費量以上になるか、又は、同ガス消費量を上回るかを判定する。また、第2判定部5242は、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、減台ラインが規定するガス消費量以下になるか、又は同ガス消費量を下回るかを判定する。
【0055】
<燃焼装置選択部523>
第2判定部5242により、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、増台ラインが規定するガス消費量以上になるか、又は、同ガス消費量を上回ると判定された場合、燃焼装置選択部523は、ボイラ群2から燃焼停止しているボイラ20を選択して、新たに燃焼を開始させるボイラ20(以下、「燃焼開始ボイラ」ともいう)として選択する。なお、燃焼停止しているボイラ20が複数存在する場合、燃焼装置選択部523は、燃焼停止しているボイラ20のうち、最も優先順位の高いボイラ20を燃焼開始ボイラとして選択するようにしてもよい。
また、第2判定部5242により、複数のボイラ20が燃焼状態にあり、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、減台ラインが規定するガス消費量以下になるか、又は同ガス消費量を下回ると判定された場合、燃焼装置選択部523は、燃焼状態にあるボイラ20を選択して、燃焼を停止させるボイラ20(以下「停止燃焼ボイラ」ともいう)として選択する。なお、燃焼状態にあるボイラ20が複数存在する場合、燃焼装置選択部523は、燃焼状態にあるボイラ20のうち、最も優先順位の低いボイラ20を停止燃焼ボイラとして選択するようにしてもよい。
【0056】
<消費量制御部525>
消費量制御部525は、第2判定部5242により燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が増台ラインが規定するガス消費量以上になるか、又は、同ガス消費量を上回ると判定された場合、燃焼装置選択部523により、選択された燃焼開始ボイラを、当該ボイラ20に予め設定された最小ガス消費量で燃焼させる。
このように、新たに燃焼開始させた燃焼開始ボイラ20は、燃焼開始時の水素消費量を最小ガス消費量に留めることとしている。
逆に、消費量制御部525は、第2判定部5242により複数のボイラ20が燃焼状態にあり、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が減台ラインが規定するガス消費量以下になるか、又は同ガス消費量を下回ると判定された場合、燃焼装置選択部523により、選択された停止燃焼ボイラ20をタンク圧力値の変化に対してガス消費量を変更するように制御する。その際、当該停止燃焼ボイラ20のガス消費量が当該ボイラ20に予め設定された最小ガス消費量まで低下した場合、消費量制御部525は、当該停止燃焼ボイラ20の燃焼を停止する。
これにより、燃焼台数を増加させる場合、及び減少させる場合におけるガス消費量の変動による圧力変動を、抑えることができ、2次側水素タンク30の圧力安定性を向上させることができる。
以上、水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させる基準となるガス消費量を示す増台ラインに関する情報、及び水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を減少させる基準となるガス消費量を示す減台ラインに関する情報に基づいて、燃焼させるボイラ20の台数を増加又は減少させる場合の台数制御について説明した。
【0057】
<増加余力量>
なお、ボイラシステム1では、例えば、プラント設備等の副生設備において副生ガスとして発生した水素ガスの急激な増加に対応するため、燃焼状態のボイラ20に対して一定の余力を持たせた状態で水素ガスを燃焼させることが好ましい。このため、前述したように、ボイラ群2に対して急激な水素ガス消費量の増加に対する余力としての「増加基準ガス消費量」を予め設定し、増加基準ガス消費量に基づいて、水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させるようにしてもよい。
このため、制御部52は、
図3に示すように、さらに余力算出部526を備える。
【0058】
<余力算出部526>
余力算出部526は、燃焼状態にある各ボイラ20について、それぞれの最大ガス消費量と現時点のガス消費量との差である増加余力ガス消費量を算出する。そして、余力算出部526は、燃焼状態にある各ボイラ20の増加余力ガス消費量の合計である合計増加余力ガス消費量を算出する。すなわち、合計増加余力ガス消費量は、ボイラ群2の現時点において即追従できる水素ガス消費量の最大の増加変動量であるといえる。
【0059】
この場合、第2判定部5242は、さらに、余力算出部526により算出された合計増加余力ガス消費量が、前述した水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させる基準となる増加基準ガス消費量以下になるか、又は増加基準ガス消費量を下回るかを判定する。
そして、燃焼装置選択部523は、さらに、第2判定部5242により合計増加余力ガス消費量が増加基準ガス消費量以下になるか、又は増加基準ガス消費量を下回ると判定された場合、ボイラ群2から燃焼停止しているボイラ20を選択して、新たに燃焼を開始させるボイラ20(以下、「燃焼開始ボイラ」ともいう)として選択する。なお、燃焼停止しているボイラ20が複数存在する場合、燃焼装置選択部523は、燃焼停止しているボイラ20のうち、最も優先順位の高いボイラ20を燃焼開始ボイラとして選択するようにしてもよい。
そして、消費量制御部525は、第2判定部5242により合計増加余力ガス消費量が増加基準ガス消費量以下になるか、又は増加基準ガス消費量を下回ると判定されると、燃焼装置選択部523により選択された燃焼開始ボイラを、当該ボイラ20に予め設定された最小ガス消費量で燃焼させる。
これにより、ボイラ群2において、予め設定された急激な水素ガス消費量の増加(「増加基準ガス消費量」)に即追従可能となる余力を確保した状態で、燃焼ボイラ20の台数を増加させることができる。
【0060】
<パイロット保持制御>
燃焼停止しているボイラ20を新たに燃焼開始させる場合、当該ボイラが実際に燃焼を開始する(すなわち、水素ガスを消費する)までに、プレパージ時間等を必要とする。このため、仮に必要ガス消費量が増加し、供給ガス量の増加スピードが速いと、燃焼開始ボイラの起動遅れによって、タンク圧力値が急上昇し、その結果、制御上限圧力値を超え、水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御することで、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスの放気をする事態が発生する可能性がある。
このような事態を避けるために、例えば、次に燃焼開始する優先順位最上位のボイラ20を選択し、炉内換気のためプレパージを開始し、プレパージ中に水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせ、その後パイロット着火、パイロット安定化を経て当該ボイラ20をパイロット燃焼させ、その後当該ボイラ20のパイロット燃焼状態を所定時間保持するように制御してもよい。そうすることで、仮に必要ガス消費量が急に増加した場合、当該パイロット燃焼状態のボイラを迅速に燃焼開始させることで、必要ガス消費量の増加に対して、追従可能とすることができる。
また、副生ガスとして水素ガスを燃焼させるボイラ20は燃焼停止後に、安全上ポストパージ中に水素ガス遮断弁25、26により水素ガス供給ラインL22を閉止状態として、水素ガス供給ラインのN2パージ(不活性ガスである窒素ガスによるパージ)を行う必要がある。このため、ボイラ20は、メイン燃焼中にパイロットバーナを燃焼させ、メイン燃焼停止後もパイロットバーナの燃焼を継続する連続パイロット制御を行うことが難しい。
燃焼状態にあるボイラ20を燃焼停止させて燃焼ボイラを減台した後に、仮に必要ガス消費量が増加し、供給ガス量の増加スピードが速いと、燃焼開始ボイラの起動遅れによって、タンク圧力値が急上昇し、その結果、制御上限圧力値を超え、水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御することで、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスの放気をする事態が発生する可能性がある。
このような事態を避けるために、例えば、減台制御において台数制御装置50(消費量制御部525)は、ボイラ20を燃焼停止させた場合、燃焼停止時に前述したように当該ボイラ20のポストパージを行った後、パイロット着火、パイロット安定化を経て、当該ボイラ20をパイロット燃焼させ、その後当該ボイラ20のパイロット燃焼状態を所定時間保持するように制御してもよい。
そうすることで、減台した後に、仮に必要ガス消費量が増加した場合、当該パイロット燃焼状態のボイラを迅速に燃焼開始させることで、必要ガス消費量の増加に対して、追従可能とすることができる。
また、後述するように、燃焼状態にあるボイラ20が1台になり、さらにタンク圧力値が制御下限圧力値を下回ることで全台燃焼停止させた場合において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、前述したように当該ボイラ20の燃焼停止時にポストパージを行った後に、当該ボイラ20をパイロット燃焼させ、その後所定時間パイロット燃焼を保持するように制御してもよい。
又は、台数制御装置50(消費量制御部525)は、少なくとも1台のボイラ20(例えば、次に燃焼開始する優先順位最上位のボイラ20)を選択し、選択されたボイラ20に対して前述したようにプレパージを行い、プレパージを行った後に、選択されたボイラ20をパイロット燃焼させ、その後所定時間パイロット燃焼状態を保持するように制御してもよい。
そうすることで、全台燃焼停止した後に、仮に必要ガス消費量が増加した場合、当該パイロット燃焼状態のボイラを迅速に燃焼開始させることで、必要ガス消費量の増加に対して、追従可能とすることができる。
【0061】
以上説明したパイロット保持制御方式では、ボイラ停止後又は停止ボイラに対して、ポストパージ又はプレパージを行い、水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせ、その後パイロット着火、パイロット安定化を経て、連続パイロット燃焼に遷移した。
【0062】
<パイロット燃焼保持制御に係る別形態>
これに対して、ボイラ燃焼中からパイロット燃焼を継続する方式がある。具体的には、台数制御装置50(消費量制御部525)は、ローカル制御装置201に対してボイラ20のパイロット燃焼を継続させる指示を行う。それにより、ローカル制御装置201は、ボイラ20が燃焼中(すなわちメインバーナによるガスを燃焼させている状態)に並行してパイロットバーナにパイロットガスを供給してパイロット燃焼状態とし、ボイラ20を燃焼停止(すなわちメインバーナによる燃焼停止)させたときにおいても、パイロット燃焼状態を継続させる。
その後、ローカル制御装置201は、パイロットバーナによる燃焼が消えない範囲で、ポストパージを開始し、ポストパージ中に水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)パージするとともに、パイロット燃焼状態を保持するように制御する。パイロット燃焼を維持するために、送風機の風量を不活性ガスパージ中は中風量、不活性ガスパージ終了後は低風量としても良い。なお、台数制御装置50及びローカル制御装置201は、ボイラ20がポストパージ中に、パイロットバーナによりメインバーナを着火させるメイン着火に遷移できないように制御する。その後、台数制御装置50は、当該ボイラ20のパイロット燃焼状態を所定時間保持するように制御してもよい。
こうすることで、前述した通常のパイロット保持制御方式に比較して、パイロットバーナの着火回数が増加しないことから、着火機構の劣化を低減することができる。また、前述した通常のパイロット保持制御方式に比較して、プレパージ後のパイロット着火、パイロット安定化等を省略して、連続パイロット燃焼に遷移することから、ボイラ燃焼停止後に仮に必要ガス消費量が増加した場合、ボイラ20をより迅速に燃焼開始させることができる。
【0063】
<台数制御目標圧力値の可変設定>
次に、ボイラ群2の燃焼状態にあるボイラ20の台数又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)に応じて、台数制御目標圧力値を切り替える台数制御について説明する。
燃焼停止しているボイラ20を新たに燃焼開始させる場合、当該ボイラが実際に燃焼を開始する(すなわち、水素ガスを消費する)までに、プレパージ時間等を必要とする。このため、燃焼台数が少ないとき又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が少ないときは、例えば、ガス供給量減少に対する追従性よりもガス供給量増加に対する追従性を優先することが好ましい。具体的には、タンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも急に大きくなった場合(すなわち、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも急に大きくなった場合)、燃焼状態にある少数のボイラ20により追従できることが好ましい。このため、燃焼台数が少ないとき又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が少ないときには、台数制御目標圧力値を低く設定し、制御上限圧力値に達するまでの時間を長くすることで、燃焼状態にある少数のボイラ20によりガス供給量増加に対して追従できる時間を確保し、その間に、新たに選択された燃焼開始ボイラ20が燃焼開始できるようにすることが好ましい。
逆に、燃焼台数が多いとき又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が多いときは、例えば、ガス供給量増加に対する追従性よりもガス供給量減少に対する追従性を優先することが好ましい。具体的には、タンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも急に小さくなった場合(すなわち、必要ガス消費量が実績ガス消費量よりも急に小さくなった場合)に、燃焼状態にあるボイラ20を燃焼停止させずに追従できることが好ましい。このため、燃焼台数が多いとき又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が多いときには、台数制御目標圧力値を高く設定し、制御下限圧力値に達するまでの時間を長くすることで、燃焼状態にあるボイラ20のガス消費量を下げることで追従できるようにすることが好ましい。
以上のように、ボイラ群2の燃焼状態にあるボイラ20の台数又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)に応じて、台数制御目標圧力値を切り替えるために、制御部52は、
図3に示すように、さらに目標圧力切替部527を備えるようにすることが好ましい。
【0064】
<目標圧力切替部527>
目標圧力切替部527は、燃焼状態にあるボイラ20の台数又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)に応じて、台数制御目標圧力値を切り替える。より具体的には、目標圧力切替部527は、燃焼状態にあるボイラ20の台数が多い場合又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が多い場合に台数制御目標圧力値を高く設定し、燃焼状態にあるボイラ20の台数が少ない場合又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が少ない場合に台数制御目標圧力値を低く設定することが好ましい。
そうすることで、燃焼状態にあるボイラ20の台数が多い場合又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が多い場合に、仮にタンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも小さくなった場合(ガス供給量が急に減った場合)、台数制御目標圧力値が高く設定され、制御下限圧力値に達するまでの時間を長くすることで、燃焼状態にあるボイラ20を燃焼停止させずに、燃焼状態にあるボイラ20のガス消費量を下げることで追従することができる。
また、燃焼状態にあるボイラ20の台数が少ない場合又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)が少ない場合に、仮にタンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも大きくなった場合(ガス供給量が急に増えた場合)、台数制御目標圧力値が低く設定され、制御上限圧力値に達するまでの時間を長くすることで、新たに選択される燃焼開始ボイラ20が燃焼開始できるまでの間、燃焼状態にある少数のボイラ20のガス消費量を上げることで追従することができる。
そうすることで、オーバーシュートやアンダーシュートが起き難くなり、安定制御が可能となる。
なお、ボイラ群2の燃焼状態にあるボイラ20の台数又は副生ガス消費量(水素ガス消費量)に対応する台数制御目標圧力値を記憶部51に予め設定するようにしてもよい。
【0065】
<ボイラ20の故障発生時>
ボイラ20の故障発生時の台数制御について説明する。ローカル制御部201は、自身の制御するボイラ20を停止させるべき所定の異常が発生したことを検知した場合、台数制御装置50に対して、当該ボイラ20に異常が発生したことを知らせる異常発生信号を送信するとともに、当該ボイラ20の燃焼を停止する。
台数制御装置50は、ローカル制御部201から上述した異常発生信号を受信した場合、燃焼停止状態(待機状態)にあるボイラ20に対して、燃焼指示を送信する。なお、台数制御装置50は、燃焼停止状態(待機状態)にあるボイラ20に対して上述した燃焼指示を送信する場合、燃焼停止状態(待機状態)にあるボイラ20のうち、最も優先順位の高いボイラ20に対して、燃焼指示を送信することが好ましい。なお、台数制御装置50は、燃焼停止状態(待機状態)にあるボイラ20に対して燃焼指示を送信する際、異常発生により燃焼停止したボイラ20の燃焼量(ガス消費量)と同じ燃焼量(ガス消費量)を燃焼(消費)させることが好ましい。
こうすることで、ローカル制御部201は、自身の制御するボイラ20に所定の異常が発生したことを検知した場合、当該ボイラ20を燃焼停止させるとともに、台数制御装置50に対して異常発生信号を送信することで、台数制御装置50が燃焼停止状態(待機状態)にあるボイラ20を燃焼開始させることを可能とし、タンク圧力値を変動させないようにすることができる。
【0066】
<タンク圧力低下時の制御>
次に、タンク圧力値が低下する場合の台数制御について説明する。タンク圧力値が低下し過ぎると、ボイラシステム1の上流のプラント設備に影響が及ぶ。例えば、プラント設備の備える電解設備にまで影響(設備・装置の性能低下や不具合、損傷等)が及ぶ可能性がある。
他方、台数制御においては、タンク圧力値が台数制御目標圧力値を下回る状態が継続すると、必要ガス消費量算出部520により算出される必要ガス消費量MVnは、どんどん小さな値となり、最終的には、ゼロ又はゼロ未満となる可能性がある。
前述したように、タンク圧力値が低下し過ぎると上流のプラント設備に影響が及ぶことから、最終的には、あるタイミングでボイラ20を全台燃焼停止状態にすることが必要となる。しかしながら、全台燃焼停止となった場合、その後、燃焼を開始させる場合、燃焼停止ボイラが燃焼を開始するまでに(すなわち、水素ガスの消費を開始するまでに)、例えば数10秒が必要となる。そうすると、燃焼停止ボイラが燃焼を開始するまでの間にタンク圧力値が上昇し続け、仮に、台数制御上限圧力値を超えた場合には、後述するように、2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開度を調整することで、水素ガスを放出せざるを得なくなり、エネルギーロスが生じる可能性がある。
【0067】
この場合、消費量制御部525は、燃焼状態にあるボイラ20が1台になった場合に、必要ガス消費量算出部520により算出された必要ガス消費量が仮に最小ガス消費量を下回った場合であっても、タンク圧力値が制御下限圧力値を下回るまで、燃焼状態にあるボイラ20を最小ガス消費量で燃焼させる。
そうすることで、仮に、必要ガス消費量が増加し、タンク圧力値が上昇した場合(例えば、台数制御目標圧力値よりも大きくなった場合)には、最小ガス消費量で燃焼状態にあるボイラ20によりガス消費量を増やすことで追従することが可能となる。
なお、消費量制御部525は、タンク圧力値が制御下限圧力値を下回ると、燃焼状態にあるボイラ20を即燃焼停止状態、すなわち全台待機状態とする。
この場合、前述したように、台数制御装置50(消費量制御部525)は、少なくとも1台のボイラ20(例えば、次に燃焼開始する優先順位最上位のボイラ20)のポストパージを行い、パイロット燃焼させ、パイロット燃焼状態を保持するように制御することが好ましい。そうすることで、その後、タンク圧力値が制御下限圧力値に予め設定された制御下限圧力ディファレンシャル値を加算した圧力値を上回ると、燃焼装置選択部523により、最も優先順位の高いボイラ20が燃焼開始ボイラとして選択され、消費量制御部525により、予め設定された最小ガス消費量で迅速に燃焼するように制御される。
【0068】
また、前述したパイロット燃焼保持制御に係る別形態を適用する場合、全台待機状態としたとき、少なくとも1台のボイラ20(例えば、次に燃焼開始する優先順位最上位のボイラ20)のパイロット燃焼状態を継続させることが好ましい。そうすることで、仮にタンク圧力値が制御下限圧力値に予め設定された制御下限圧力ディファレンシャル値を加算した圧力値を上回ると、燃焼装置選択部523により、当該ボイラ20が燃焼開始ボイラとして選択され、消費量制御部525により、予め設定された最小ガス消費量で迅速に燃焼するように制御される。
【0069】
<ボイラインターロック停止>
例えば水素圧センサ31の故障により、台数制御が正常に行われない状態となり、消費量制御部525がボイラ20を燃焼停止状態、すなわち全台待機状態にできない場合に、タンク圧力値が下がり過ぎたとき、前述したように、ボイラシステム1の上流のプラント設備に影響が及ぶことから、ボイラ20個々に予め供給ガス圧スイッチを設けて、供給ガス圧低下により供給ガス圧スイッチが作動することで、ボイラ20を強制的に燃焼停止とすることが好ましい。これにより、ボイラシステム1の上流のプラント設備には影響が及ばないようにすることができる。
なお、制御下限圧力値は、供給ガス圧スイッチが作動する圧力限界値(「インターロック」ともいう)よりも高い圧力値に設定することが好ましい。
【0070】
<放気制御について>
次に、台数制御装置50の放気制御について説明する。
前述したように、例えば一部のボイラ20の異常停止、水素圧センサ31の故障等により、タンク圧力値が急上昇し、制御上限圧力値を超える場合、台数制御装置50は、2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御することで、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスの放気量を調整することで、タンク圧力値が予め設定された上限圧力値を上回らないように制御する。このため、制御部52は、
図3に示すようにさらに、弁制御部528を備える。
より具体的には、例えば、上限圧力値を制御上限圧力値と等しい値に設定する場合、弁制御部528は、タンク圧力値が、前述したように、予め設定された制御上限圧力値を上回った場合に、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回らないように、2次側水素タンク30に配置された圧力値調整弁としての水素ガス放気弁33の開度を制御する。
また、前述したように、2次側水素タンク30には、水素ガス放気弁33とは別に、安全弁(図示せず)を配置するようにしてもよい。安全弁は、仮に水素ガス放気弁33が故障した場合であっても、最終的には安全弁を開放することにより、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスを放気することができる。これらにより、ボイラシステム1の上流のプラント設備には影響が及ばないようにすることができる。
なお、放気制御中に、例えば異常停止していたボイラ20が燃焼開始した場合、水素ガス放気弁33は徐々に閉とされ、最終的には全閉状態となり、タンク圧力値が制御上限圧力値以下となる。そうすると、台数制御装置50は、ふたたびタンク圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、ボイラ群2における水素ガス消費量を制御する。
【0071】
<弁制御部528の変形例>
なお、弁制御部528は、台数制御装置50と別装置とすることもできる。弁制御部528を別装置とする場合、これらの装置間の連携制御は行わず、両装置の共通の入力情報であるタンク圧力値と各装置の設定圧力値により、間接的に連携することができる。
【0072】
<放気制御の別実施例>
前述したように、放気制御方式は、前述した制御方式に限られない。上限圧力値に換えて、放気弁制御用の目標圧力値(以下、「放気目標圧力値」ともいう)を設定し、台数制御が追従できずにタンク圧力値が上昇した場合、弁制御部528は、タンク圧力値が予め設定された放気目標圧力値を維持するように2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御するようにしてもよい。なお、放気目標圧力値を、圧力値範囲の上限値(制御上限圧力値)以下の値に設定してもよい。
【0073】
<ハンチング現象について>
前述したように、台数制御装置50(消費量制御部525)は、タンク圧力値が制御下限圧力値を下回ると、燃焼状態にあるボイラ20を即燃焼停止状態、すなわち全台待機状態とし、ガス消費量がゼロとなる。他方、ガス消費量がゼロとなった場合であっても、プラント設備において副生ガスとして発生した水素ガスが2次側水素タンク30に供給される。このため、仮にガス供給量が急に増加する場合には、仮に燃焼停止ボイラ20を燃焼開始させても、タンク圧力値が短い時間で急上昇することで、制御上限圧力値を超える事象が発生する可能性がある。そうすると、台数制御装置50は、2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開度を調整して水素ガスを放出せざるを得ない状況になる。
その後、応答遅れとなった燃焼停止ボイラ20が燃焼開始すると、逆にガス消費量が一気に増加し、タンク圧力値が短い時間で急下降し、燃焼開始ボイラがガス消費量を絞り切れずに、タンク圧力値が再び制御下限圧力値を下回り、燃焼状態にあるボイラ20を即燃焼停止状態、すなわち全台待機状態とする可能性がある。
これにより、ガス消費量がゼロとなり、プラント設備において副生ガスとして発生した水素ガスが2次側水素タンク30に供給されることで、再度タンク圧力値が短い時間で急上昇し、制御上限圧力値を超えて、水素ガスを放出せざるを得ない状況になり、その後応答遅れとなった燃焼停止ボイラ20が燃焼開始することで、逆にガス消費量が一気に増加し、タンク圧力値の下降を抑えきれずに全台待機となる、ということを繰り返す可能性がある。この繰り返しにより、タンク圧力値が台数制御目標蒸気圧力値に収束せずに上下に変動する、いわゆるハンチング現象が発生し、継続する。
【0074】
ハンチング発生要因について、
図4Aを参照して説明する。
図4Aに示すように、(a)においてタンク圧力値が制御下限圧力値を下回り全台待機状態になった後、ガス消費量がゼロとなることで、タンク圧力値が急上昇し、ボイラによる燃焼開始指示がなされた場合であっても、ボイラ燃焼移行の遅れにより、(b)において水素ガス放気弁33による放気制御に切り替わる。その後、今回必要ガス消費量MV
nと実際に消費されるガス消費量との間にボイラ燃焼移行の遅れによるずれが生じた状態のまま、(c)においてタンク圧力値が下がり、必要ガス消費量が下がっても、実績ガス消費量は、必要ガス消費量に到達していないため、増加し続けることとなり、その結果、タンク圧力値の下降を抑えきれずに、(d)において再びタンク圧力値が制御下限圧力値を下回り、全台待機となる。このようにして、ハンチングが発生すると説明できる。
【0075】
<ハンチング抑制制御>
本発明においては、このようなハンチング現象の発生を未然に防止し、仮にハンチング現象が発生した場合であっても、ハンチング現象を速やかに収束させるために、必要ガス消費量算出部520は、さらに次のような構成を備える。
必要ガス消費量算出部520は速度形PIDアルゴリズムを使用することで、2次側水素タンク30への水素ガスの供給量変動に対してタンク圧力値を台数制御目標圧力値に保つように、制御周期nにおける今回必要ガス消費量MVnを、制御周期n-1における前回必要ガス消費量MVn-1、及び前述した式(6)~(10)に基づいて算出される制御周期毎の必要ガス消費量変化分ΔMVnに基づいて、前述した式(5)により算出する。
そして、必要ガス消費量算出部520は、少なくとも1台のボイラ20が燃焼(ガスを消費)している状態において、タンク圧力値に所定の条件を満たす上昇が発生し、その後タンク圧力値が上昇から下降に転じた場合に、タンク圧力値が上昇から下降に転じた制御周期nにおける、今回必要ガス消費量MVnの値を、実績ガス消費量算出部521により算出されたボイラ群2での水素ガス消費量の実績である実績ガス消費量に置き換えた制御周期n-1における前回必要ガス消費量MVn-1と、制御周期毎の必要ガス消費量変化分ΔMVnとを加算して算出するように構成する(以下「構成A」という)。
なお、必要ガス消費量算出部520は、上述した構成に換えて、少なくとも1台の前記燃焼装置が燃焼している状態において、前記副生ガスタンクの内部の圧力値に所定の条件を満たす上昇が発生し、その後前記副生ガスタンクの内部の圧力値が上昇から下降に転じた場合に、前記副生ガスタンクの内部の圧力値が上昇から下降に転じた制御周期nにおける、今回必要ガス消費量MVnの値を、実際の燃焼装置により消費されている実績ガス消費量に置き換えて算出するように構成してもよい(以下「構成B」という)。
ここで、タンク圧力値の所定の条件を満たす上昇とは、例えば、タンク圧力値がアンダーシュートしたことに起因してタンク圧力値が上昇すること、又はタンク圧力値が上昇してオーバーシュートすることを含むものとしてもよい。
また、タンク圧力値の所定の条件を満たす上昇とは、タンク圧力値が、制御下限圧力値を下回ること、又はタンク圧力値が、制御上限圧力値を上回ることを含むものとしてもよい。
また、タンク圧力値の所定の条件を満たす上昇とは、タンク圧力値が、制御下限圧力値を下回る場合に、ボイラ20を全台待機とすることを含むものとしてもよい。
消費量制御部525は、必要ガス消費量算出部520により前述のように補正された今回必要ガス消費量MVnを発生させるように、制御周期nにおけるボイラ20の燃焼状態(消費ガス)を制御する。
そうすることにより、ハンチング現象の発生を未然に防止し、仮にハンチング現象が発生した場合であっても、ハンチング現象を速やかに収束させることができる。
【0076】
ハンチング現象の発生を未然に防止し、仮にハンチング現象が発生した場合であっても、ハンチング現象を速やかに収束させる動作について、
図4Bを参照して説明する。
図4Bに示すように、(b)において水素ガス放気弁33による放気制御に切り替わり、その後、再度台数制御に切り替わり、(c)においてタンク圧力値が上昇から下降に転じた時点における必要ガス消費量を、実際に消費されるガス消費量に置き換える補正を行うことで、実際に消費されるガス消費量の増加を抑制し、アンダーシュートを抑制することができる。これにより、ハンチング現象の発生を未然に防止し、仮にハンチング現象が発生した場合であっても、ハンチング現象を速やかに収束させることができる。
【0077】
<起動時制御について>
次に、ボイラシステム1の起動時制御について説明する。前述したように、ボイラシステム1においては、副生設備から供給される水素ガスは昇圧されて、2次側水素タンク30に供給され貯留される。タンク圧力値がボイラ群2に対して水素ガスを供給するために必要な前記下限供給圧力値以上となると、ボイラ20は水素ガスを消費することができる。
そして、従来のボイラシステム1においては、起動時に、タンク圧力値が下限供給圧力値以上となることを検知した後、炉内換気のためプレパージを開始し、プレパージ中に水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせ、パイロット着火、パイロット安定化を経て燃焼開始ボイラ20の燃焼を開始させていた。このため、プレパージ及びパイロット着火、パイロット安定化の間(約30秒間)、副生ガスとしての水素ガスが2次側水素タンク30に供給されるが、燃焼開始ボイラ20で水素ガスが燃焼されない(消費されない)状態が続くこととなり、その結果、タンク圧力値が急上昇し、制御上限圧力値を超える状態となることが往々に発生した。
それにより、タンク圧力値を下げるために、水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御して、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスを放気することが必要となり、エネルギーの無駄を生じていた。
本発明においては、このようなエネルギーの無駄を避けるため、制御部52は、
図3に示すようにさらに起動時制御部529を備える。
【0078】
<起動時制御部529>
起動時制御部529は、例えば起動ボタンが押下される等によりボイラシステム1が起動されると、例えば、優先順位の高い順に予め設定された所定台数のボイラ20を選択し、炉内換気のためプレパージを開始し、プレパージ中に水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせ、その後パイロット着火、パイロット安定化を経て、所定時間パイロット燃焼を保持した状態で、タンク圧力値が下限供給圧力値以上となることを検知した後、燃焼開始ボイラ20の燃焼を開始させるように制御する。ここで、所定台数は1台以上とし、全台の場合を含む。なお、パイロット燃焼は、副生ガスとしての水素ガスではなく、例えば、13Aガスを使用する。このため、副生ガスとしての水素ガスを供給するメイン燃焼用の燃料ラインとは別に、例えば、13Aガスを供給するパイロット用の燃料ライン(図示せず)が設けられる。そうすることで、水素供給ガス圧力とは無関係に、水素供給ガス圧力値が低くてもプレパージされたボイラ20をパイロット燃焼させることができる。その後、パイロット燃焼状態を保持したまま、副生設備から供給される水素ガスが昇圧され、タンク圧力値がボイラ群2に対して水素ガスを供給するために必要な下限供給圧力値以上となると、台数制御装置50(消費量制御部525)は、パイロット燃焼状態のボイラ20を燃焼させて、タンク圧力値が予め設定された圧力値範囲に収まるように、ボイラ群2におけるガス消費量の制御を開始する。なお、パイロット用の燃料ラインは、13Aガスを供給するラインに限られない。例えば、2次側水素タンク30からの水素供給ガス圧力とは無関係に、水素供給ガス圧力値が低くてもプレパージされたボイラ20をパイロット燃焼させることができるように、パイロット燃焼に必要な量及び圧力の副生ガスとしての水素ガスを供給できるパイロット用の燃料ラインを設けてもよい。
このように起動時制御されることで、2次側水素タンク30に貯留された水素ガスを放気することなく、ボイラ20をメイン燃焼させることが可能となり、エネルギーの無駄を防ぐとともに、安全性を向上させることができる。
【0079】
<手動制御>
最後に、例えば、タンク圧力値を測定する水素圧センサ31の故障、台数制御装置50とボイラ20との間の通信不良等により、ボイラ群2の台数制御が正常動作できなくなった場合の、ボイラ手動運転について説明する。
ボイラ個々の制御となる手動運転に切り替わった場合、ボイラ燃焼量(すなわち、水素ガス消費量)を極力抑制することが好ましい。これは、異常時には、ボイラ20を燃焼させない方が安全であるとの考えに基づく。ただし、手動運転に切り替わった直後のボイラ燃焼量(ガス消費量)の急変は、2次側水素タンク30への影響が大きいため、ゆっくりとボイラ燃焼量(ガス消費量)を抑制させていくことが好ましい。
このため、手動運転に際しては、ボイラ全体の燃焼量(ガス消費量)を、手動運転切り替わり直前の燃焼量(ガス消費量)よりも減少させるとともに、個々の燃焼ボイラ20の燃焼量(ガス消費量)を急変させないことが望まれる。
しかしながら、手動運転中のボイラ制御は、ボイラ20自身の圧力の定圧制御となるため、燃焼量(ガス消費量)の増加や急変の可能性があり得る。また、燃焼停止中のボイラ20は、手動運転により燃焼(ガス消費)を開始させるため、ボイラ群2における燃焼量(ガス消費量)が増加する可能性がある。
さらに、手動運転時のボイラ缶体保護の観点から、高圧力検知時の燃焼停止が必要となる。
このため、各ボイラ20の備えるローカル制御部201は、例えば、台数制御装置50から送信される制御信号の受信が停止された場合、当該ボイラ20の燃焼状態を判定する。ボイラ20が燃焼状態にあると判定された場合、ローカル制御部201は、当該ボイラ20による燃焼量(ガス消費量)を徐々に低下させた後、当該ボイラ20を予め設定された最小ガス消費量で燃焼させるように制御する。また、ボイラ20が燃焼停止状態にあると判定された場合、ローカル制御部201は、当該ボイラ20の燃焼停止状態を維持する。また、ローカル制御部201は、ボイラ20の圧力が予め設定された高設定圧力値を超えた場合、当該ボイラ20の燃焼を停止するように制御する。
こうすることで、ボイラ全体の燃焼量(ガス消費量)を、手動運転切り替わり直前の燃焼量(ガス消費量)よりも減少させるとともに、個々の燃焼ボイラ20の燃焼量(ガス消費量)を急変させずに、ボイラ群2を安全に運転することができる。
以上、本発明のボイラシステム1の各機能部の実施形態を、台数制御装置50、及び水素専焼ボイラである貫流ボイラ20等の構成に基づいて説明した。
【0080】
次に、本実施形態のボイラシステム1における台数制御及び放気制御の流れについて、
図5Aから
図5Dを参照しながら説明する。
図5Aから
図5Dは、本実施形態の制御部52の台数制御及び放気制御に係る処理の流れを示すフローチャートである。
ここで、処理の前準備として、タンク圧力値に関して予め設定される圧力値に関する情報(制御下限圧力値、台数制御目標圧力値、制御上限圧力値、放気制御上限圧力値)、複数の貫流ボイラ20それぞれに予め設定される、単位ガス消費量に関する情報、最大ガス消費量に関する情報、及び最小ガス消費量に関する情報、また、ボイラ群2に対して予め設定される、増台ラインに関する情報、増加基準ガス消費量に関する情報、及び減台ラインに関する情報を記憶しているものとする。また、ボイラシステム1は起動され、プラント設備から生成される副生ガスとしての水素ガスを消費しているものとする。
【0081】
図5Aを参照すると、ステップST101において、台数制御装置50は、タンク圧力値が台数制御圧力帯域内(すなわち、制御下限圧力値から制御上限圧力値の範囲内)にあるか否かを検出する。タンク圧力値が台数制御圧力帯域内(すなわち、制御下限圧力値から制御上限圧力値の範囲内)にある場合(YES)、ステップST102に進む。タンク圧力値が、台数制御圧力帯域内にない場合、処理を後述する、
図5Dに記載のステップST201(放気制御又は最小燃焼制御)に移す。
【0082】
ステップST102において、台数制御装置50(必要ガス消費量算出部520)は、タンク圧力値及び台数制御目標圧力値に基づいて、ボイラ群2に消費させるべきガス量である必要ガス消費量を算出する。
【0083】
ステップST103において、台数制御装置50(実績ガス消費量算出部521)は、各ボイラ20の水素ガス消費状態(燃焼状態、水素ガス消費量)に基いて、燃焼状態にある各ボイラ20での水素ガス消費量の実績である実績ガス消費量を算出し、ボイラ群2での水素ガス消費量の実績である実績ガス消費量を算出する。
【0084】
ステップST104において、台数制御装置50(第2判定部5242)は、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、増台ラインが規定するガス消費量以上になるか、又は、同ガス消費量を上回るかを判定する。燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、増台ラインが規定するガス消費量以上になるか、又は、同ガス消費量を上回る場合(YES)、処理を後述する、
図5Bに記載のステップST111(増台制御)に移す。そうでなければ(NO)、処理をステップST105に移す。
【0085】
ステップST105において、台数制御装置50(第2判定部5242)は、複数のボイラ20が燃焼状態にあり、燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、減台ラインが規定するガス消費量以下になるか、又は同ガス消費量を下回るかを判定する。燃焼状態にある各ボイラ20のガス消費量が、減台ラインが規定するガス消費量以下になるか、又は同ガス消費量を下回る場合(YES)、処理を後述する、
図5Cに記載のステップST121(減台制御)に移す。そうでなければ(NO)、処理をステップST106に移す。
【0086】
ステップST106において、台数制御装置50(偏差算出部522)は、ステップST102において算出された必要ガス消費量と、ステップST103において算出されたボイラ群2の実績ガス消費量との偏差量を算出する。
【0087】
ステップST107において、台数制御装置50(燃焼装置選択部523)は、タンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも大きい場合、燃焼状態にあるボイラ20のうち水素ガス消費量の少ないボイラ20(ガス消費量の少ないボイラ)を選択し、タンク圧力値が台数制御目標圧力値よりも小さい場合、燃焼状態にあるボイラ20のうち水素ガス消費量の多いボイラ20(ガス消費量の大きいボイラ)を選択する。
【0088】
ステップST108において、台数制御装置50(第1判定部5241)は、ステップST106において算出された偏差量が正の値の場合、偏差量が「ガス消費量の少ないボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上であるか、を判定する。また、偏差量が負の値の場合、偏差量の絶対値が、「ガス消費量の大きいボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上であって、水素ガス消費量から単位ガス消費量分減算した値が最小ガス消費量以上であるか、を判定する。偏差量が、「ガス消費量の少ないボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上である場合(YES)、又は偏差量の絶対値が、「ガス消費量の大きいボイラ20」に予め設定された単位ガス消費量以上であって、水素ガス消費量から単位ガス消費量分減算した値が最小ガス消費量以上である場合(YES)、処理をステップST109に移す。それ以外の場合(NO)、処理をステップST101に移す。
【0089】
ステップST109において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、偏差量が正の値の場合、ステップST107において選択された「ガス消費量の少ないボイラ20」の水素ガス消費量を単位ガス消費量分増加させる。また、台数制御装置50(消費量制御部525)は、偏差量が負の値の場合、ステップST107において選択された「ガス消費量の大きいボイラ20」の水素ガス消費量から単位ガス消費量分減少させる。その後、処理をステップST101に移す。
【0090】
<増台制御>
図5Bを参照すると、ステップST111において、台数制御装置50(燃焼装置選択部523)は、ボイラ群2から燃焼停止しているボイラ20のうち、最も優先順位の高いボイラ20を新たに燃焼を開始させるボイラ20(燃焼開始ボイラ)として選択する。
【0091】
ステップST112において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、ステップST111において選択された燃焼開始ボイラを、当該ボイラ20に予め設定された最小ガス消費量で燃焼させる。
【0092】
ステップST113において、台数制御装置50(目標圧力切替部527)は、燃焼状態にあるボイラ20の台数に応じて、台数制御目標圧力値を切り替える。その後、処理をステップST101に移す。なお、ステップST113は、台数制御装置50が、燃焼状態にあるボイラ20の台数に応じて台数制御目標圧力値を切り替える目標圧力切替部527を備える場合にのみ、適用される。
【0093】
<増加余力量に基づく増台制御について>
図5A及び
図5Bでは、燃焼状態にあるボイラ20のガス消費量が増台ラインが規定するガス消費量以上の場合に増台する処理フローについて説明したが、これに限られない。前述したように、合計増加余力ガス消費量が増加基準ガス消費量以下になるか、又は増加基準ガス消費量を下回ると判定された場合に増台するようにしてもよい。
この場合の処理フローは、
図5AのステップST104を、「台数制御装置50(第2判定部5242)は、余力算出部526により算出された合計増加余力ガス消費量が水素ガスを消費(燃焼)させるボイラ20の台数を増加させる基準となる増加基準ガス消費量以下になるか、又は増加基準ガス消費量を下回るかを判定する。合計増加余力ガス消費量が、増加基準ガス消費量以下又は増加基準ガス消費量を下回る場合(YES)、処理をステップST111に移し、そうでなければ(NO)処理をステップST106に移す」と読み替えることで説明できる。
【0094】
<減台制御>
図5Cを参照すると、ステップST121において、台数制御装置50(燃焼装置選択部523)は、ボイラ群2から燃焼状態にあるボイラ20のうち、最も優先順位の低いボイラ20を新たに燃焼を停止させるボイラ20(停止燃焼ボイラ)として選択する。
【0095】
ステップST122において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、ステップST121において選択された停止燃焼ボイラ20のガス消費量を、タンク圧力値の変化に対して変更する。
【0096】
ステップST123において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、停止燃焼ボイラ20のガス消費量が当該ボイラ20に予め設定された最小ガス消費量まで低下したか、判定する。最小ガス消費量まで低下した場合(YES)、処理をステップST124に移す。最小ガス消費量まで低下していない場合(NO)、処理をステップST101に移す。
【0097】
ステップST124において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、当該停止燃焼ボイラ20の燃焼を停止する。
【0098】
ステップST125において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、当該停止燃焼ボイラ20のポストパージを行った後、パイロット燃焼させ、パイロット燃焼状態を保持させる。
【0099】
ステップST126において、台数制御装置50(目標圧力切替部527)は、燃焼状態にあるボイラ20の台数に応じて、台数制御目標圧力値を切り替える。その後、処理をステップST101に移す。なお、ステップST126は、台数制御装置50が、燃焼状態にあるボイラ20の台数に応じて台数制御目標圧力値を切り替える目標圧力切替部527を備える場合にのみ、適用される。
【0100】
図5Dを参照すると、ステップST201において、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回る場合、処理をステップST202に移す。タンク圧力値が制御下限圧力値を下回る場合、処理をステップST211に移す。
【0101】
<放気制御>
ステップST202において、台数制御装置50(弁制御部528)は、タンク圧力値が制御上限圧力値を上回らないように、水素ガス放気弁33の開度を制御する。その後、処理をステップST101に移す。
【0102】
<タンク圧力低下時の処理>
ステップST211において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、燃焼状態にあるボイラ20を燃焼停止状態、すなわち全台待機状態とする。
【0103】
ステップST212において、台数制御装置50(消費量制御部525)は、少なくとも1台の(例えば、最も優先順位の高い)停止燃焼ボイラ20のポストパージを行い、パイロット燃焼させ、パイロット燃焼状態を保持させる。処理をステップST101に移す。
【0104】
以上説明した本実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0105】
(1)燃焼停止ボイラ20のうち、少なくとも1台の燃焼停止ボイラ20を選択して、当該選択された燃焼停止ボイラ20の炉内換気を行うためプレパージを開始し、プレパージ中に水素ガス供給ラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせた後、該ボイラ20をパイロット燃焼させ、所定時間パイロット燃焼を保持するように制御するように構成した。
これにより、ガス消費量が増加して、燃焼台数を増やす場合に、当該パイロット燃焼状態のボイラを迅速に燃焼開始させることで、必要ガス消費量の増加に対して、追従可能とすることができる。
【0106】
(2)燃焼状態にあるボイラ20の台数を減少させる際に、停止燃焼ボイラの燃焼停止時に、当該ボイラ20の炉内換気を行うためポストパージを開始し、ポストパージ中に水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせた後、該ボイラ20をパイロット燃焼させ、所定時間パイロット燃焼を保持するように制御するように構成した。
これにより、燃焼状態にあるボイラ20の台数を減少させた後に、仮にガス消費量が増加した場合、当該パイロット燃焼状態のボイラを迅速に燃焼開始させることで、ガス消費量の増加に対して、追従可能とすることができる。
【0107】
(3)2次側水素タンクの内部の圧力値が予め設定された制御下限圧力値を下回ることでボイラ全台を燃焼停止させる場合、少なくとも1台の燃焼停止されるボイラ20の炉内換気を行うためポストパージを開始し、ポストパージ中に水素供給ガスラインL22を不活性ガス(例えば、窒素ガス)でパージさせた後、該ボイラ20をパイロット燃焼させ、所定時間パイロット燃焼を保持するように制御するように構成した。
これにより、燃焼ボイラ全台を燃焼停止させた後に、仮にガス消費量が増加した場合、当該パイロット燃焼状態のボイラを迅速に燃焼開始させることで、ガス消費量の増加に対して、追従可能とすることができる。
【0108】
以上、本発明のボイラシステムの好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0109】
<変形例1>
本実施形態では、副生ガスとして水素ガスを例示したが、これに限らない。例えば、消化ガス、その他の炭化水素ガス等任意の副生ガスに適用できる。
【0110】
<変形例2>
本実施形態では、本発明を4台の貫流ボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステム1を例示したが、これに限らない。すなわち、本発明を、5台以上の貫流ボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよく、また、3台以下の貫流ボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。
【0111】
<変形例3>
ボイラシステム1のボイラ20のガス消費量の平準化処理の流れを示すフローチャートの説明(
図5A)において、ステップST109の後、処理をステップST101に移すものとして説明したが、これに限られない。
例えば、
図5Aにおいて、ステップST109の後、実績ガス消費量を単位ガス消費量分増加又は減少するように算出した後、処理を再びステップST106に移すようにしてもよい。この場合、ステップST108において、必要ガス消費量と実績ガス消費量との偏差が単位ガス消費量未満と判定した後に、処理をステップST101に移すように制御される。
【0112】
<変形例4>
本実施形態では、貫流ボイラ20として連続制御ボイラを例示したが、これに限らない。例えば、燃焼を選択的にオン/オフしたり、高燃焼、中燃焼、低燃焼等に燃焼位置を設定したりすること等により水素ガス消費量を制御して、選択された燃焼位置に応じて水素ガス消費量を段階的に増減可能な段階値制御ボイラに適用してもよい。
【0113】
<変形例5>
本実施形態では、放気制御として、弁制御部528により、2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33の開閉又は開度を制御することで、水素ガスを放気するケースを例示したがこれに限られない。
例えば、2次側水素タンク30に配置された水素ガス放気弁33に加えて、又は替えて、水素ガス分岐ラインL22又は水素ガス本ラインL21に水素ガス放出弁(図示せず)を設置するようにしてもよい。
そうすることで、例えば、ローカル制御部201が、燃焼状態にあるボイラ20に異常が発生し当該ボイラ20によりガス消費ができなくなったことを検知した場合、当該ボイラ20に水素ガスを供給する水素ガス分岐ラインL22又は水素ガス本ラインL21に設置された水素ガス放出弁の開度を制御することで、当該ボイラ20の消費できないガス量を放気するように制御するように構成してもよい。
このように、ローカル制御部201は、ボイラ20が消費できなくなったガス消費量に相当するガス放気量を、水素ガス放出弁の開度により制御可能である。これにより、燃焼状態にあるボイラ20に何らかの異常が発生し当該ボイラ20によりガス消費ができなくなった場合であっても、該ボイラ20のガス消費量に相当するガス量を放気することで、タンク圧力値の圧力変動を抑えることが可能となる。
その際、ローカル制御部201は、当該ボイラ20の異常状態及び消費できないガス量を台数制御装置50に対して通知するように構成してもよい。そうすることで、台数制御装置50は、ガス量を消費できなくなったボイラ20の当該消費できないガス量を他の燃焼状態にあるボイラ20に割り当てるとともに、当該消費できないガス量を放気するために開制御された水素ガス放出弁を直接又はローカル制御部201を介して閉状態にすることができる。これにより、燃焼状態にあるボイラ20に何らかの異常が発生し当該ボイラ20によりガス消費ができなくなった場合であっても、タンク圧力値の圧力変動を抑えることが可能となる。
より具体的には、ボイラ20が連続制御ボイラの場合、ローカル制御部201は、当該消費できないガス量を放気するように、水素ガス放出弁の開度を制御するように構成してもよい。その後、消費できないガス量が他の燃焼状態にあるボイラ20に割り当てられた後、水素ガス放出弁の開度を閉状態とすることができる。
また、ボイラ20が、例えば1つ以上の燃焼位置を備え、選択された燃焼位置に応じて水素ガス消費量を段階的に増減可能な段階値制御ボイラ2の場合、水素ガス放出弁として、各燃焼位置のガス供給量に相当するガスを放出する水素ガス放出弁(便宜的に「燃焼位置対応水素ガス放出弁」という)を設置することで、ボイラ20が所定の燃焼位置(例えば、高燃焼位置)で水素ガスを消費していた場合に当該ボイラ20に異常が発生し、当該ボイラ20により所定の燃焼位置(例えば、高燃焼位置)でのガス消費ができなくなったときに、所定の燃焼位置(例えば、高燃焼位置)のガス供給量に相当するガスを放出する水素ガス放出弁を開状態とすることにより、当該ボイラ20の消費できないガス量に相当するガス量を放気するように構成してもよい。その後、消費できないガス量が他の燃焼状態にあるボイラ20に割り当てられた後、所定の燃焼位置(例えば、高燃焼位置)のガス供給量に相当するガスを放出する水素ガス放出弁を閉状態とすることができる。
【符号の説明】
【0114】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
20 貫流ボイラ(水素専焼ボイラ)
201 ローカル制御部
24 水素ガス流量調整弁
25、26 水素ガス遮断弁
30 2次側水素タンク
31 水素圧センサ(水素圧力検出部)
33 水素ガス放気弁
41 センサ
42 昇圧機
44 戻り流量調整弁
50 台数制御装置
51 記憶部
52 制御部
520 必要ガス消費量算出部
521 実績ガス消費量算出部
522 偏差算出部
523 燃焼装置選択部
5241 第1判定部
5242 第2判定部
525 消費量制御部
526 余力算出部
527 目標圧力切替部
528 弁制御部
529 起動時制御部
L1 副生ガス供給ライン
L11 戻りライン
L2 水素ガス供給ライン
L21 水素ガス本ライン
L22 水素ガス分岐ライン
L3 水素ガス放気ライン
L4 蒸気集合ライン