(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】注出口栓及び注出口栓を備える包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 5/74 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B65D5/74 020Z
(21)【出願番号】P 2018146726
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】仲野 祐輔
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-69083(JP,A)
【文献】特開2013-151310(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027303(WO,A1)
【文献】特開2012-25410(JP,A)
【文献】特開2014-84140(JP,A)
【文献】特開2013-107674(JP,A)
【文献】特開2016-11128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/74
B29C 45/00-B29C 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の側壁と、
前記側壁の一端縁から外方に延出するフランジと、
前記フランジの前記側壁とは反対側の面に、平面視において前記側壁の同心円上に配列され、リブによって区画された複数の凹部と、
前記凹部の1つから、前記側壁の軸方向に、前記フランジの前記側壁とは反対側の面を超えない位置まで突出するゲート口とを備える口栓本体と、
前記口栓本体を封止するキャップとを含む、注出口栓。
【請求項2】
請求項1に記載された注出口栓を備える、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口栓及び注出口栓を備える包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体等の内容物の包装容器として、注出口栓を設けた包装容器が広く使用されている。この注出口栓は、容器本体に溶着される口栓本体と、口栓本体に螺着されるキャップとを備えている。
【0003】
特許文献1には、紙製容器に溶着される樹脂製の本体と、本体に着脱自在な樹脂製のねじ蓋とを備えた注出装置において、本体は、外周に雄ねじが形成された注出口と、注出口の内部に設けられた閉止板と、閉止板に設けられたプルリングとを有し、ねじ蓋は、本体の注出口に外側から嵌まり、内面に雌ねじが形成された筒部と、天板と、インナーリングとを有することが記載されている。
【0004】
特許文献1には、注出装置は、ポリエチレンのような比較的軟質の合成樹脂を素材として射出成形法によって製造できることと、本体を成形する際に樹脂を注入するゲートは、金型のうち閉止板の中心部に対応した箇所に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の注出装置は、注出口に設けられたプルリングに指を挿入してプルリングを引っ張って、閉止板を注出口から切除することで開封されるものである。閉止板によって密封性を保つ方式では、閉止板に設けたプルリングのサイズによっては開封し難かったり、プルリングを引き抜く作業に手間がかかったりした。
【0007】
このため、閉止板を無くした注出装置の本体が検討されているが、閉止板を無くした場合のゲートの位置及び形状に検討の余地があった。ゲートの位置及び形状が適切に設定されないと、キャビティ内における樹脂材料の流動が安定せずに、製品内部に残留応力が発生し、ヒケ、そり等の変形が発生したりする原因となることが知られている。特に、大きな残留応力が発生した製品の場合、超音波溶着することにより、その大きな残留応力が発生した位置においてクラックが発生しやすいという課題があった。
【0008】
本発明は、口栓本体に閉止板を設けない構成であっても、射出成形による残留応力の発生や、ヒケ、そり等の変形の発生を抑制することが可能な注出口栓及び注出口栓を備える包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、円筒状の側壁と、側壁の一端縁から外方に延出するフランジと、フランジの側壁とは反対側の面に、平面視において側壁の同心円上に配列され、リブによって区画された複数の凹部と、凹部の1つから、側壁の軸方向に、フランジの側壁とは反対側の面を超えない位置まで突出するゲート口とを備える口栓本体と、口栓本体を封止するキャップとを含む、注出口栓である。
【0010】
また、本発明の他の局面は、上記注出口栓を備える包装容器に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、口栓本体に閉止板を設けない構成であっても、射出成形による残留応力の発生や、ヒケ、そり等の変形の発生を抑制することが可能な注出口栓及び注出口栓を備える包装容器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本実施形態に係る注出口栓を備える包装容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(注出口栓)
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る注出口栓の断面図である。
図2は、口栓本体の下面図である。
図3は、本実施形態に係る注出口栓を備える包装容器の斜視図である。なお、
図1は、
図2のB-B’線で切断した断面である。
【0014】
図1及び
図3に示すように、注出口栓1は、超音波溶着により容器本体2に取り付けられる口栓本体3と、口栓本体3に取り付けられて口栓本体3を封止して密封することができるキャップ4とを備える。キャップ4は、一例として螺着により口栓本体3へ取り付けることができる。
【0015】
(キャップ)
キャップ4は、一例として、天板5と、天板5の外周縁に接続され、内周面に内ネジ6aが形成された側壁6と、天板5に周状に設けられた円筒状のインナーリング7と、天板5の側壁6とインナーリング7との間に設けられたコンタクトリング8とを有する。
【0016】
(口栓本体)
口栓本体3は、円筒状の側壁11と、側壁11の一端縁から外方に延出するフランジ17とを備える。側壁11の外周面には、一例として外ネジ11aが形成されている。口栓本体3は、後述する樹脂材料を用いた射出成形により製造することができる。フランジ17は、口栓本体3を容器本体2に取り付ける際の接合箇所となる。
【0017】
図1、
図2に示すように、フランジ17の側壁11とは反対側の面には、平面視において側壁11の同心円上に配列され、リブ18によって区画された複数の凹部19が形成されている。凹部19の断面形状は、例えば、
図1に示すように、天面をドーム状とし、フランジ17の側壁11とは反対側の面に向かって拡がるテーパー状とすることができる。テーパー面の角度θ(
図1参照)は、50°以上70°以下とすることで、後述する超音波溶着における振動を好適に吸収することができる。
【0018】
凹部19の1つからはゲート口20が突出している。ゲート口20は、側壁11の軸方向に、フランジ17の側壁11とは反対側の面を超えない位置まで突出する。ゲート口20は、一例として円柱形状に形成されている。なお、ゲート口20は、射出成形の際に溶融した樹脂材料を流し込むキャビティのゲート(入口部)を意味するものである。
【0019】
口栓本体3と容器本体2とは、一例として、容器本体2と、容器本体2の内側に挿入した受け具としてのアンビル(図示せず)および口栓本体3のフランジ17とが重なっている容器本体2上に超音波ホーン(図示せず)を宛がい、超音波振動を発生させることで溶着することができる。この時に発生した振動は、フランジ17から側壁11に伝わるが、凹部19及びリブ18によって振動の一部が吸収されるため、振動により口栓本体3の各部に変形等が生じることを防ぐことができる。
【0020】
口栓本体3の射出成形に用いる金型の凹部19に対応する位置にゲートを設けることにより、ゲート口20を凹部19から突出するように形成することができる。また、ゲートからキャビティに流し込まれた樹脂材料を、キャビティの側壁11及びフランジ17に対応する部分に同時に充填することができる。これにより、キャビティ内に樹脂材料を均一に充填できるため、残留応力の発生や、ヒケ、そり等の変形の発生を抑制することができる。この結果、超音波溶着によるクラックの発生を抑制することができる。
【0021】
また、ゲートを側壁11の軸方向に沿って設けることにより、ゲート口20を側壁11の軸方向に突出するように形成することができる。さらに、ゲートを通過する樹脂材料を側壁11の軸方向に沿って直線的に流し込むことができる。これにより、キャビティ内における樹脂材料の流動をさらに安定させることができるため、残留応力の発生や、ヒケ、そり等の変形の発生を抑制することができる。
【0022】
そして、ゲート口20を凹部19から突出させることで、樹脂材料が均一に充填され難いゲート口20の先端を、振動の伝播経路となるフランジ17から離れた箇所に位置するように形成することができる。これにより、ゲート口20の先端に残留応力が発生した場合にもその力により影響を低減でき、クラックの発生を抑制することができる。
【0023】
また、口栓本体3によれば、超音波溶着によるクラックの発生を抑制できるため、通常よりも高いエネルギーでの溶着を行うことができる。この結果、溶着強度を高めたり、溶着にかかる時間を短くしたりすることができる。
【0024】
なお、キャップ4のインナーリング7及び口栓本体3の側壁11は、
図1に示すように、キャップ4を口栓本体3に取り付けた状態において、インナーリング7の外周面と側壁11の内周面とが密着するように形成してもよい。インナーリング7の外周面と口栓本体3の内周面とを密着させることにより、口栓本体3に閉止板を設けない構成であっても高い密封性を確保することができる。
【0025】
口栓本体3の材料としては、例えば、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられ、キャップ4の材料としては、例えば、ポリプロピレンが挙げられるが、口栓本体3及びキャップ4の材料はこれらに限定されない。口栓本体3とキャップ4との密着強度を高めるために、口栓本体3は、キャップ4よりも剛性が低い材料を用いて形成されてもよい。また、口栓本体3がキャップ4よりも剛性(曲げ弾性率)が小さい材料からなることを条件として、口栓本体3の材料の曲げ弾性率は、100MPa以上1200MPa以下とし、キャップ4の材料の曲げ弾性率は、1000MPa以上2100MPa以下とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明における注出口栓及び注出口栓を備える包装容器は、例えば、液体等の内容物を収納した包装容器に設けられる注出口栓や注出口栓を備える包装容器に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0027】
1 注出口栓
2 容器本体
3 口栓本体
4 キャップ
5 天板
6 側壁
6a 内ネジ
7 インナーリング
8 コンタクトリング
11 側壁
11a 外ネジ
17 フランジ
18 リブ
19 凹部
20 ゲート口