(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220726BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220726BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20220726BHJP
B60W 10/20 20060101ALI20220726BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B62D6/00
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W10/20
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2018147845
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】大村 博志
(72)【発明者】
【氏名】粟根 梨絵
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216010(JP,A)
【文献】特開2010-036756(JP,A)
【文献】特開平11-073597(JP,A)
【文献】特開2017-174017(JP,A)
【文献】特開2010-036645(JP,A)
【文献】特開2007-326534(JP,A)
【文献】特開平11-099955(JP,A)
【文献】特開2014-118025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
G08G 1/16
B60W 10/00-50/16
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行状況に応じて、車両のステアリングホイールに対して操舵力を付与する車両制御装置であって、
前記ステアリングホイールへの前記操舵力を生成する操舵力生成部と、
前記車両が走行する車線を検出する車線検出部と、
前記車両の車速を検出する車速検出部と、
前記車線検出部および前記車速検出部からの検出結果を逐次取得し、当該取得した前記検出結果に基づき前記操舵力生成部に対して前記ステアリングホイールへの前記操舵力の付与を指令する車両制御部と、
を備え、
前記車両制御部は、
前記車両が前記車線の中央を走行するように、第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第1操舵力付与部と、
前記車両が前記車線から逸脱するのを抑制するように、前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく前記操舵力である第2操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第2操舵力付与部と、
前記車線の曲率半径を算出する曲率半径算出部と、
を有し、
横軸に前記車線の幅方向での位置をとり、縦軸に付与される前記操舵力の値をとった特性図において、前記第1操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第1操舵力上昇部を有し、前記第2操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第2操舵力上昇部を有し、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記第1操舵力上昇部は、前記車速が高いほど前記車線の幅方向外側に設定され、前記第2操舵特性における前記第2操舵力上昇部の上限値は、前記車線の曲率半径が小さいほど低く設定される、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の任意箇所では、前記車速が高いほど前記第1操舵力の値が小さく設定される、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、且つ、前記車速が所定速以下の場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の中央において、前記第1操舵力の値の減少度合いは、前記車速が高いほど大きくなるように設定される、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両制御装置において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、当該カーブの曲率半径が第1所定値と第2所定値との間の範囲にある場合には、当該曲率半径に応じて前記第2操舵力の値が漸次変化するように設定される、
車両制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御装置において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、当該カーブの曲率半径が前記第1所定値未満の場合には、前記第2操舵力の値がゼロに設定される、
車両制御装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の車両制御装置において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、当該カーブの曲率半径が前記第2所定値よりも大きい場合には、前記第2操舵力の値が所定の操舵力値に設定される、
車両制御装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れかに記載の車両制御装置において、
横軸に前記カーブの曲率半径をとり、縦軸に前記第2操舵力の値をとった特性図において、第1所定値と第2所定値との間の範囲であって、前記第1所定値よりも前記曲率半径が大きい第1所定領域、および前記第2所定値よりも前記曲率半径が小さい第2所定領域では、前記第2操舵力の値は、前記曲率半径に対応して曲線を以って滑らかに変化するように設定される、
車両制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の車両制御装置において、
前記車両の運転者がステアリングホイールを操作する際の操作力の値を検出する操作力検出部をさらに備え、
前記車両制御部は、前記車線検出部および前記車速検出部からの検出結果に加えて、前記操作力検出部からの検出結果も逐次取得し、
前記第1操舵力付与部は、前記操作力が所定操作力以上である場合に、前記操舵力生成部への指令をキャンセルする、
車両制御装置。
【請求項9】
走行状況に応じて、車両のステアリングホイールに対して操舵力を付与する車両制御方法であって、
前記車両が走行する車線を検出する車線検出ステップと、
前記車両の車速を検出する車速検出ステップと、
前記車線検出ステップおよび前記車速検出ステップで検出された各検出結果に基づいて、前記車両に前記操舵力を付与する操舵力付与ステップと、
を備え、
前記操舵力付与ステップは、
前記車両が前記車線の中央を走行するように、第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を付与する第1操舵力付与サブステップと、
前記車両が前記車線から逸脱するのを抑制するように、前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく前記操舵力である第2操舵力を付与する第2操舵力付与サブステップと、
前記車線の曲率半径を算出する曲率半径算出サブステップと、
を有し、
横軸に前記車線の幅方向での位置をとり、縦軸に付与される前記操舵力の値をとった特性図において、前記第1操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第1操舵力上昇部を有し、前記第2操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第2操舵力上昇部を有し、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記第1操舵力上昇部は、前記車速が高いほど前記車線の幅方向外側に設定され、前記第2操舵特性における前記第2操舵力上昇部の上限値は、前記車線の曲率半径が小さいほど低く設定される、
車両制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の車両制御方法において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の任意箇所では、前記車速が高いほど前記第1操舵力の値が小さく設定される、
車両制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の車両制御方法において、
前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、且つ、前記車速が所定速以下の場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の中央において、前記第1操舵力の値の減少度合いは、前記車速が高いほど大きくなるように設定される、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置および車両制御方法に関し、特に操舵アシスト技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、事故未然防止技術の一種として、車線逸脱回避のための操舵アシスト技術が適用されたものがある。例えば、車線を逸脱しそうになった場合に、ステアリングホイールに対して操舵力を付与して車両が車線から逸脱するのを防止する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の技術では、車載カメラにより車線を区画する区画線と路端とを検出し、当該区画線と路端との間の幅に応じて路端側の区画線の内側に操舵力の付与開始箇所を設定することとしている。
【0004】
特許文献1に開示の技術では、車両が路端側の区画線に近付いた場合に車両を車線の内側に戻そうとする操舵力がステアリングホイールに付与されることにより、車両が区画線を超えて路端側に逸脱するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、車両が車線におけるカーブした部分を走行する場合に、運転者が煩わしさや違和感を覚えることが懸念される。即ち、上記特許文献1に開示の技術では、区画線と路端との間の幅に応じて区画線の内側に操舵力の付与開始箇所が設定されるので、カーブの曲率半径や車両の車速などとは関係なく、区画線に対する車両の位置に応じて操舵力が付与されることとなる。
【0007】
このように車両が車線におけるカーブした部分を走行している場合において、運転者が意図しないような操舵力が付与された場合には、運転者が想定している車両の進行経路とは異なる経路へ導くような操舵力が付与される場合も生じ得るため、運転者が煩わしさや違和感を覚えることがある。そして、運転中に運転者が煩わしさや違和感を覚える状況が続くような場合には、運転者に対して強いストレスがかかることになる。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、車線逸脱を防ぐことで高い安全性を確保しながら、運転時における運転者に煩わしさや違和感を覚えさせ難く、ストレスを与え難い車両制御装置および車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車両制御装置は、走行状況に応じて、車両のステアリングホイールに対して操舵力を付与する車両制御装置であって、前記ステアリングホイールへの前記操舵力を生成する操舵力生成部と、前記車両が走行する車線を検出する車線検出部と、前記車両の車速を検出する車速検出部と、前記車線検出部および前記車速検出部からの検出結果を逐次取得し、当該取得した前記検出結果に基づき前記操舵力生成部に対して前記ステアリングホイールへの前記操舵力の付与を指令する車両制御部と、を備え、前記車両制御部は、前記車両が前記車線の中央を走行するように、第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第1操舵力付与部と、前記車両が前記車線から逸脱するのを抑制するように、前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく前記操舵力である第2操舵力を付与するように前記操舵力生成部に指令する第2操舵力付与部と、前記車線の曲率半径を算出する曲率半径算出部と、を有し、横軸に前記車線の幅方向での位置をとり、縦軸に付与される前記操舵力の値をとった特性図において、前記第1操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第1操舵力上昇部を有し、前記第2操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第2操舵力上昇部を有し、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記第1操舵力上昇部は、前記車速が高いほど前記車線の幅方向外側に設定され、前記第2操舵特性における前記第2操舵力上昇部の上限値は、前記車線の曲率半径が小さいほど低く設定される。
【0010】
上記態様に係る車両制御装置では、車両が車線におけるカーブした部分を走行している場合に、車速が高いほど第1操舵力上昇部を車線の幅方向外側に設定することとしているので、車線におけるカーブした部分を高速で走行するような場合には車線の幅方向中央側の部分での操舵アシストの介入を抑制することができる。よって、車線におけるカーブした部分を高速走行しているような場合には、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入を抑制し、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0011】
また、上記態様に係る車両制御装置では、車両が車線におけるカーブした部分を走行している場合に、車線の曲率半径が小さいほど第2操舵力上昇部の上限値が小さく設定されることとしているので、運転者の操作に応じて車両が車線の端の区画線に近付いた場合にも、過度に大きな第2操舵力がステアリングホイールに付与されるのが抑制される。よって、車線におけるカーブの曲率半径が小さい部分を走行しているような場合に、大きい第2操舵力が付与されるのを抑制することで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0012】
上記態様に係る車両制御装置では、車両が走行しているカーブの曲率半径が大きい場合には、比較的大きな第2操舵力がステアリングホイールに付与されるので、車線逸脱の防止が図られ、高い安全性を確保することができる。
【0013】
従って、上記態様に係る車両制御装置では、車線逸脱を防ぐことで高い安全性を確保しながら、運転時における運転者に煩わしさや違和感を覚えさせ難く、ストレスを与え難い。
【0014】
上記態様に係る車両制御装置において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の任意箇所では、前記車速が高いほど前記第1操舵力の値が小さく設定される、とすることもできる。
【0015】
上記の車両制御装置では、車速が高いほど第1操舵力の値を小さくすることとしているので、センターキープのための操舵アシストの介入が、高速走行時には抑えられる。よって、上記の車両制御装置では、車線におけるカーブした部分を高速走行しているような場合には、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入を抑制し、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0016】
上記態様に係る車両制御装置において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、且つ、前記車速が所定速以下の場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の中央において、前記第1操舵力の値の減少度合いは、前記車速が高いほどが大きくなるように設定される、とすることもできる。
【0017】
上記の車両制御装置では、車線の幅方向中央での第1操舵力の値の減少度合いを、車速が高いほど大きくすることとしているので、車速が高くなるのに従って車線の幅方向中央でステアリングホイールに付与される第1操舵力をより小さくすることができる。即ち、上記の車両制御装置では、線におけるカーブした部分を走行している場合において車速が高いほど、1次関数的に第1操舵力の値を小さくするのではなく、2次関数的または指数関数的または対数関数的に第1操舵力の値を小さくし、これにより、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入をより小さく抑えることで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのをさらに抑制することができる。
【0018】
上記態様に係る車両制御装置において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、当該カーブの曲率半径が第1所定値と第2所定値との間の範囲にある場合には、当該曲率半径に応じて前記第2操舵力の値が漸次変化するように設定される、とすることもできる。
【0019】
上記の車両制御装置では、カーブの曲率半径が第1所定値と第2所定値との間の範囲にある場合において、第2操舵力の値が曲率半径に応じて漸次変化するようにしているので、ある曲率半径を境に第2操舵力の値が一気に変化するような場合に比べて、操舵アシストが介入した場合における運転者が覚える煩わしさや違和感を抑えることができる。
【0020】
上記態様に係る車両制御装置において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、当該カーブの曲率半径が前記第1所定値未満の場合には、前記第2操舵力の値がゼロに設定される、とすることもできる。
【0021】
上記の車両制御装置では、車両が走行している車線の曲率半径が第1所定値未満の場合には、第2操舵力の値をゼロ(“0”)にすることとしているので、例えば、進行方向におけるカーブの中程(カーブした部分の長手方向の中程)で、車線の幅方向内側に車両を寄せて走行するような場合に、第2操舵力の付与がなく運転者自らのイメージする走行ラインを走行するのに適している。よって、上記の車両制御装置では、カーブの曲率半径が第1所定値未満である場合に、操舵アシストが介入しないようにすることで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0022】
上記態様に係る車両制御装置において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、当該カーブの曲率半径が前記第2所定値よりも大きい場合には、前記第2操舵力の値が所定の操舵力値に設定される、とすることもできる。
【0023】
上記の車両制御装置では、カーブの曲率半径が第2所定値よりも大きい場合には、第2操舵力の値を上限値である所定の操舵力値としているので、車線における緩やかにカーブした部分を車両が走行する場合にも、前記所定の操舵力値よりも大きな第2操舵力がステアリングホイールに付与されることがない。よって、上記の車両制御装置では、車線における緩やかにカーブした部分を走行している状況下では、過度の第2操舵力が付与されることはなく、車線逸脱の防止を図りながら、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0024】
上記態様に係る車両制御装置において、横軸に前記カーブの曲率半径をとり、縦軸に前記第2操舵力の値をとった特性図において、第1所定値と第2所定値との間の範囲であって、前記第1所定値よりも前記曲率半径が大きい第1所定領域、および前記第2所定値よりも前記曲率半径が小さい第2所定領域では、前記第2操舵力の値は、曲率半径に対応して曲線を以って滑らかに変化するように設定される、とすることもできる。
【0025】
上記の車両制御装置では、特性図における第1所定領域および第2所定領域において、第2操舵力の値が曲率半径の大小に対応して曲線を以って滑らかに変化するように設定されているので、走行している車線のカーブの曲率半径が変化した場合においても、急激に第2操舵力の値が変化するのを抑えることができる。よって、上記の車両制御装置では、車線におけるカーブした部分を走行している状況下で、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのをより確実に抑制することができる。
【0026】
上記態様に係る車両制御装置において、前記車両の運転者がステアリングホイールを操作する際の操作力の値を検出する操作力検出部をさらに備え、前記車両制御部は、前記車線検出部および前記車速検出部からの検出結果に加えて、前記操作力検出部からの検出結果も逐次取得し、前記第1操舵力付与部は、前記操作力が所定操作力以上である場合に、前記操舵力生成部への指令をキャンセルする、とすることもできる。
【0027】
上記の車両制御装置では、運転者の操作力が所定操作力以上である場合に、第1操舵力の付与をキャンセルすることとし、運転者の操作を優先することとしている。即ち、車両がカーブした車線を走行しているような場合において、運転者がステアリングホイールを所定以上の力で操作したようなときには、センターキープのための第1操舵力の介入をキャンセルして、運転者の操作によりスムーズなラインを以って車線におけるカーブした部分を通過できるようにすることができる。
【0028】
本発明の一態様に係る車両制御方法は、走行状況に応じて、車両のステアリングホイールに対して操舵力を付与する車両制御方法であって、前記車両が走行する車線を検出する車線検出ステップと、前記車両の車速を検出する車速検出ステップと、前記車線検出ステップおよび前記車速検出ステップで検出された各検出結果に基づいて、前記ステアリングホイールに前記操舵力を付与する操舵力付与ステップと、を備え、前記操舵力付与ステップは、前記車両が前記車線の中央を走行するように、第1操舵特性に基づく前記操舵力である第1操舵力を付与する第1操舵力付与サブステップと、前記車両が前記車線から逸脱するのを抑制するように、前記第1操舵特性とは異なる第2操舵特性に基づく前記操舵力である第2操舵力を付与する第2操舵力付与サブステップと、前記車線の曲率半径を算出する曲率半径算出サブステップと、を有し、横軸に前記車線の幅方向での位置をとり、縦軸に付与される前記操舵力の値をとった特性図において、前記第1操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第1操舵力上昇部を有し、前記第2操舵特性は、前記車線の幅方向における内側から外側に向けて前記操舵力が漸増する第2操舵力上昇部を有し、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記第1操舵力上昇部は、前記車速が高いほど前記車線の幅方向外側に設定され、前記第2操舵特性における前記第2操舵力上昇部の上限値は、前記車線の曲率半径が小さいほど低く設定される。
【0029】
上記態様に係る車両制御方法では、車両が車線におけるカーブした部分を走行している場合に、車速が高いほど第1操舵力上昇部を車線の幅方向外側に設定することとしているので、車線におけるカーブした部分を高速で走行するような場合には車線の幅方向中央側の部分での操舵アシストの介入を抑制することができる。よって、車線におけるカーブした部分を高速で走行しているような場合には、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入を抑制し、運転者のイメージ通りの走行ラインに沿って走行することが容易となり、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0030】
また、上記態様に係る車両制御方法では、車両が車線におけるカーブした部分を走行している場合に、車線の曲率半径が小さいほど第2操舵力上昇部の上限値が小さく設定されることとしているので、運転者の操作に応じて車両が車線の端の区画線に近付いた場合にも、過度に大きな第2操舵力がステアリングホイールに付与されるのが抑制される。よって、車線におけるカーブの曲率半径が小さい部分を走行しているような場合に、大きい第2操舵力が付与されるのを抑制することで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0031】
上記態様に係る車両制御方法では、車両が走行している車線におけるカーブの曲率半径が大きい場合には、比較的大きな第2操舵力がステアリングホイールに付与されるので、車線逸脱の防止が図られ、高い安全性を確保することができる。
【0032】
従って、上記態様に係る車両制御方法では、車線逸脱を防ぐことで高い安全性を確保しながら、運転時における運転者に煩わしさや違和感を覚えさせ難く、ストレスを与え難い。
【0033】
上記態様に係る車両制御方法において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行している場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の任意箇所では、前記車速が高いほど前記第1操舵力の値が小さく設定される、とすることもできる。
【0034】
上記の車両制御方法では、車速が高いほど第1操舵力の値を小さくすることとしているので、センターキープのための操舵アシストの介入が、高速走行時には抑えられる。よって、上記の車両制御方法では、車線におけるカーブした部分を高速走行しているような場合には、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入を抑制し、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0035】
上記態様に係る車両制御方法において、前記車両が前記車線におけるカーブした部分を走行しており、且つ、前記車速が所定速以下の場合に、前記第1操舵特性における前記車線の幅方向の中央において、前記第1操舵力の値の減少度合いは、前記車速が高いほど大きくなるように設定される、とすることもできる。
【0036】
上記の車両制御方法では、車線の幅方向中央での第1操舵力の値の減少度合いを、車速が高いほど大きくなるように設定することとしているので、車速が高くなるのに従って車線の幅方向中央でステアリングホイールに付与される第1操舵力をより小さくすることができる。即ち、上記の車両制御方法では、車線におけるカーブした部分を走行中に車速が高いほど、1次関数的に第1操舵力の値を小さくするのではなく、2次関数的または指数関数的または対数関数的に第1操舵力の値を小さくし、これにより、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入をより小さく抑えることで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0037】
上記の各態様では、車線逸脱を防ぐことで高い安全性を確保しながら、運転時における運転者に煩わしさや違和感を覚えさせ難く、ストレスを与え難い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図3】車室外カメラによる車線の検出を説明するための模式図である。
【
図4】車線における車両の幅方向での位置を示す模式背面図である。
【
図5】車線におけるカーブした部分を走行している車両を上方から示す模式平面図である。
【
図6】コントロールユニットが実行する操舵特性の設定方法を示すフローチャートである。
【
図7】車線における幅方向での位置と、第1操舵特性および第2操舵特性と、の関係の一例を示す模式図である。
【
図8】(a)は、車両が右側に寄った場合を示す模式平面図であり、(b)は、車両がさらに右側に寄った場合を示す模式平面図である。
【
図9】車両の車速と設定される第1操舵特性との関係を示す模式図である。
【
図10】車線幅との関係で設定される第2操舵特性を示す模式図である。
【
図11】カーブの曲率半径と設定される第2操舵特性との関係を示す模式図である。
【
図12】カーブの曲率半径と第3トルク値との関係を示すグラフである。
【
図13】曲率半径の算出における車速に対する操舵角とヨーレートとの重みづけを説明するための模式図である。
【
図14】変形例1に係る車両において、コントロールユニットが実行する操舵アシスト制御の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0040】
なお、以下の説明で用いる図において、「Fr」は自車両の前方(進行方向)、「Re」は自車両の後方、「Le」は自車両の左方、「Ri」は自車両の右方を示す。
【0041】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0042】
図1に示すように、車両1は、動力源としてのエンジン2を備える。本実施形態に係る車両1では、エンジン2の一例として、多気筒のガソリンエンジンを採用している。
【0043】
エンジン2には変速機3が接続されており、変速機3には、デファレンシャルギヤ4が接続されている。デファレンシャルギヤ4からは、左右方向に向けてドライブシャフト5が延びている。ドライブシャフト5の端部には、左右の前輪6l,6rが取り付けられている。
【0044】
ドライブシャフト5には、左前輪6lに近い部分に左前ブレーキ7lが設けられ、右前輪6rに近い部分に右前ブレーキ7rが設けられている。
【0045】
車両1の後方には、左右の後輪8l,8rが配置されている。左右の後輪8l,8rのそれぞれは、図示を省略するリヤアームに取り付けられている。そして、左後輪8lを軸支するシャフト(図示を省略)には左後ブレーキ9lが設けられ、右後輪8rを軸支するシャフト(図示を省略)には右後ブレーキ9rが設けられている。
【0046】
図1に示すように、車両1の車室内における運転席の前方部分には、ステアリングホイール10が配置されている。ステアリングホイール10は、ステアリングシャフト11の先端部分に取り付けられている。ステアリングシャフト11の他端は、ステアリングギヤ12に接続されている。また、ステアリングシャフト11には、ステアリングアクチュエータ14が接続されており、ステアリングシャフト11に対して操舵トルク(操舵力)を付与可能となっている。即ち、車両1では、ステアリングアクチュエータ14が操舵力を生成する操舵力生成部として機能する。
【0047】
また、ステアリングシャフト11には、操舵角を検出するための操舵角センサ15と、運転者のステアリングホイール10を操作する際の操作トルクの値を検出するトルクセンサ16と、が取り付けられている。車両1では、トルクセンサ16が操作力検出部として機能する。
【0048】
さらに、ステアリングギヤ12には、タイロッド13が接続されている。タイロッド13の左右への移動に伴い、前輪6l,6rの向きが変更される。
【0049】
図1に示すように、車両1には、3つのレーダ17,18,19と車室外カメラ20とが設けられている。3つのレーダ17,18,19の内、レーダ17は、車両1の前方部分に配置され、残りの2つのレーダ18,19は、車両1の側部に配置されている。これらレーダ17,18,19は、自車両(車両1)の周囲の車両の検出や、車両1と周囲の車両との相対速度および相対距離を検出する機能を有する。
【0050】
車室外カメラ20については、車両1が走行する車線(レーン)の両側の区画線を検出し、これにより、車両1が走行する車線を検出する。即ち、本実施形態に係る車両1において、車室外カメラ20は、車線検出部として機能する。
【0051】
また、車両1には、ヨーレートセンサ21が設けられている。なお、トルクセンサ16の検出結果およびヨーレートセンサ21の検出結果は、車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している状況において、当該カーブの曲率半径を算出するのに用いられる。
【0052】
さらに、車両1には、地図情報格納部22が設けられている。地図情報格納部22は、車両1が走行する道路に関する情報などが格納されている。地図情報格納部22に格納された地図情報には、道路における車線情報も含まれている。
【0053】
なお、地図情報格納部22は、外部に設けられたサーバと通信を行う機能を備えていてもよく、逐次にサーバとの間での通信を行い道路情報などに関する情報を取得することができるように構成することも可能である。
【0054】
また、車両1には、乗車する乗員に警報の発報が可能な警報機23が設けられている。
【0055】
また、車両1の変速機3のアウトプットシャフト(図示を省略)に対しては、当該車両1の車速を検出するための車速センサ24が接続されている。即ち、車両1において、車速センサ24は、車速検出部として機能する。
【0056】
また、車両1には、コントロールユニット25も設けられている。コントロールユニット25は、CPU、ROM、RAMなどから構成されたマイクロプロセッサを有して構成されているとともに、
図1および
図2に示すように、車室外カメラ20、操舵角センサ15、レーダ17,18,19、トルクセンサ16、ヨーレートセンサ21、車速センサ24、および地図情報格納部22などと接続されており、各種情報を逐次受け付ける構成となっている。
【0057】
また、コントロールユニット25は、受け付けた情報を基に、ステアリングアクチュエータ14および警報機23に対して指令することができるようになっている。
【0058】
さらに、
図2に示すように、コントロールユニット25は、第1操舵トルク付与部(第1操舵力付与部)251、第2操舵トルク付与部(第2操舵力付与部)252、車線幅算出部253、曲率半径算出部254、第1操舵トルク付与開始箇所設定部255.および第2操舵トルク付与開始箇所設定部256を有する。これらについては、後述する。
【0059】
本実施形態では、コントロールユニット25は、車両制御部として機能する。
【0060】
2.車室外カメラ20による車線LNの検出
車室外カメラ20による車線LNの検出について、
図3を用いて説明する。
図3は、車室外カメラ20による車線LNの検出を説明するための模式図である。
【0061】
図3に示すように、車両1のフロントウインドシールドの車室内側に設けられた車室外カメラ20は、車両1の前方側の範囲θ
20の検出が可能となっている。
【0062】
ここで、本実施形態では、車線LNの左側に、左側区画線(車道外側線)DLLが設けられ、車線LNの右側に、右側区画線(車道中央線)DLRが設けられている。
【0063】
車室外カメラ20は、左側区画線DLLおよび右側区画線DLRを少なくとも検出できる。なお、車室外カメラ20での左側区画線DLLおよび右側区画線DLRの検出では、各区画線DLL,DLRの内端EDLL,EDLRも検出可能となっている。
【0064】
車室外カメラ20では、左側区画線DLLと右側区画線DLRとの検出により、その間の車線LNの検出を実行する。
【0065】
なお、本実施形態に係る車線LNでは、左側区画線DLLの内端EDLLと右側区画線DLRの内端EDLRとの間の中点を通り、左側区画線DLLの内端EDLLと右側区画線DLRの内端EDLRとの双方に平行な仮想線が、車線中央CLNと規定される。
【0066】
3.車両1の走行状況
次に、一例として仮定する、車両1の走行状況について、
図4を用いて説明する。
図4は、車両1を後方から見た状態で、車両1と区画線DL
L,DL
Rとの位置を示す模式図である。
【0067】
図4に示すように、車室外カメラ19による撮像結果に基づき、コントロールユニット25の車線幅算出部253は、左側区画線DL
Lの内端E
DLLと右側区画線DL
Rの内端E
DLRとの間の幅W
1を算出する。そして、車線幅算出部253は、車線LNの幅W
1から左右の半幅W
2L,W
2Rも算出する。
【0068】
また、コントロールユニット25は、車室外カメラ20による撮像結果や地図情報格納棒22の格納情報を基に、車線LNの車線中央CLNに対する車両1の車両中央CVCのズレ量Gを算出する。そして、この算出結果および車両1の車幅WVCより、車両左側端EVCLと左側区画線DLLの内端EDLLとの間の間隔W3Lと、車両右側端EVCRと右側区画線DLRの内端EDLRとの間の間隔W3Rと、も算出される。
【0069】
ここで、車線LNの車線中央CLNと車両1の車両中央CVCとが合致している状態では、間隔W3Lと間隔W3Rとは、次の関係を満たす。
【0070】
W3L=W3R ・・(数1)
また、本実施形態においては、車両左側端EVCLと左側区画線DLLの内端EDLLとが合致する状態、および、車両右側端EVCRと右側区画線DLRの内端EDLRとが合致する状態でのズレ量(許容ズレ量)GMAXを次のように規定する。
【0071】
GMAX=(W1-WVC)/2 ・・(数2)
上記のように算出したズレ量Gや間隔W3L,W3Rと車両1の車速Vを基に、コントロールユニット25の第1操舵トルク付与部251および第2操舵トルク付与部252がステアリングアクチュエータ14に対して操舵トルクの付与を指令することとなる。
【0072】
4.車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している状況
次に、一例として仮定する、車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している状況について、
図5を用いて説明する。
図5は、車線LNにおけるカーブした部分を走行している車両1を上方から見た模式平面図である。なお、
図5に示す例では、車両1は車線LNにおける右側にカーブした部分を走行している。
【0073】
図5に示すように、車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している状況では、車室外カメラ20の撮像結果や地図情報格納部22の格納情報などから、当該状況を把握することができる。そして、コントロールユニット25の曲率半径算出部254は、車室外カメラ20の撮像結果および地図情報格納部22の格納情報に加えて、操舵角センサ15の検出結果やヨーレートセンサ21の検出結果なども用いて、カーブの曲率半径Rを算出する。
【0074】
図5に示すように、本実施形態に係る車両1では、車線LNの車線中央C
LNの曲率半径を“曲率半径R”として算出している。
【0075】
ここで、上述のように、曲率半径算出部254は、曲率半径Rの算出に際して操舵角センサ15およびヨーレートセンサ21の各検出結果も用いるが、車両1の車速Vに応じて操舵角センサ15の検出結果とヨーレートセンサ21の検出結果とに対して重みづけを行う。これについては、後述する。
【0076】
5.コントロールユニット25による第1操舵特性CH1および第2操舵特性CH2の設定
コントロールユニット25による第1操舵特性CH1および第2操舵特性CH2の設定について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、コントロールユニット25による操舵特性の設定の方法を示すフローチャートであり、
図7は、車線LNにおける幅方向での位置と、第1操舵特性CH1および第2操舵特性CH2と、の関係の一例を示す模式図である。
【0077】
なお、
図7において、「E
GR」で示す位置は、車線LNの車線中央C
LNから右側に向けて許容ズレ量G
MAXだけ離れた位置であり、以下の説明では、「許容右端箇所E
GR」と記載する。
【0078】
図6に示すように、コントロールユニット25は、車線逸脱防止機能およびセンターキープ機能が作動中であるか否かを判定する(ステップS1、ステップS2)。これは、詳細な説明を省略したが、車線逸脱防止機能およびセンターキープ機能の何れか一方、または両方の機能を、運転者の選択により作動停止とすることができることを考慮したものである。
【0079】
コントロールユニット25は、車線逸脱防止機能およびセンターキープ機能の少なくとも一方の機能の作動について、停止指令がなされている場合には(ステップS1:No、ステップS2:No)、制御をリターンする。
【0080】
一方、コントロールユニット25は、車線逸脱防止機能およびセンターキープ機能の両機能が作動中であると判定した場合には、車室外カメラ20および車速センサ24からの情報(検出結果)を取得する(ステップS3)。
【0081】
上述のように、コントロールユニット25の車線幅算出部253は、車室外カメラ20による検出結果に基づいて、車線LNの幅W1や上記(数2)の許容ズレ量GMAXなどを算出する。
【0082】
次に、コントロールユニット25の第1操舵トルク付与部251は、車速センサ24による検出結果(車両1の車速V)に基づいて、第1操舵特性CH1を設定する(ステップS4)。第1操舵特性CH1は、センターキープのために車両1のステアリングホイール10に付与する操舵トルクを規定する特性であり、
図7に一例として示すように、第1トルク値TO1から第2トルク値TO2までの間のトルク値が幅方向における位置ごとに設定されている。
【0083】
具体的に、
図7に一例として示す第1操舵特性CH1では、第1操舵トルク付与開始箇所設定部255により車線LNの車線中央C
LN上に第1操舵トルク付与開始箇所P0が設定され、車両中央C
VCが車線LNの幅方向外側の箇所P1までの間にある場合には第1トルク値TO1が付与されるように特性が設定されている。
【0084】
図7に一例として示す第1操舵特性CH1において、車両中央C
VCが車線LNの幅方向における中間の箇所P1と箇所P2との間にある場合には、操舵トルク値が第1トルク値TO1から第2トルク値TO2までの間を漸次変化する。即ち、箇所P1と箇所P2の間には、トルク上昇部(第1操舵力上昇部)L1が設定されている。そして、車両中央C
VCが箇所P2と許容右端箇所E
GRとの間にある場合には、第2トルク値TO2が維持される。即ち、箇所P2と許容右端箇所E
GRとの間には、トルク維持部L2が設定されている。
【0085】
なお、
図7に示すように、第1操舵特性CH1においては、箇所P1よりも外側の一部および箇所P2よりも内側の一部が、一次関数的に操舵トルク値が変化するのではなく、二次関数的または指数関数的または対数関数的に操舵トルク値が変化するように特性が設定されている。
【0086】
図6に戻って、コントロールユニット25の第2操舵トルク付与部252は、車線幅算出部253により算出された車線幅W
1に基づいて、第2操舵特性CH2を設定する(ステップS5)。第2操舵特性CH2は、車線逸脱防止のために車両1のステアリングホイール10に付与する操舵トルクを規定する特性であり、
図7に一例として示すように、第3トルク値TO3を上限として幅方向における位置ごとにトルク値が設定されている。
【0087】
具体的に、
図7に一例として示す第2操舵特性CH2では、第2操舵トルク付与開始箇所設定部256により車線LNの幅方向における中間の箇所に第2操舵トルク付与開始箇所P3が設定される。そして、
図7に一例として示す第2操舵特性CH2において、車両中央C
VCが第2操舵トルク付与開始箇所P3とそれよりも外側の箇所P4との間にある場合には、操舵トルク値が“0”から第3トルク値(所定の操舵力値)TO3までの間を漸次変化する。即ち、箇所P3と箇所P4との間には、トルク上昇部(第2操舵力上昇部)L3が設定されている。そして、車両中央C
VCが箇所P4と許容右端箇所E
GRとの間にある場合には、第3トルク値TO3が維持される。即ち、箇所P4と許容右端箇所E
GRとの間には、トルク維持部L4が設定されている。トルク維持部L4は、許容右端箇所E
GRを基準に、その内側の幅W
L4の領域に設定されている。本実施形態において、幅W
L4は、30~50cmの範囲内の値(一例として、40cm)である。
【0088】
なお、
図7に示すように、第2操舵特性CH2においても、第2操舵トルク付与開始箇所P3よりも外側の一部および箇所P4よりも内側の一部が、一次関数的に操舵トルク値が変化するのではなく、二次関数的または指数関数的または対数関数的に操舵トルク値が変化するように特性が設定されている。
【0089】
ここで、
図7では、車両中央C
VCが車線LNの車線中央C
LNから許容右端箇所E
GRまでの間の領域にある場合に設定される第1操舵特性CH1および第2操舵特性CH2の一例を示したが、車両中央C
VCが車線LNの車線中央C
LNから許容左端箇所までの間の領域にある場合については、
図7に示すのとは線対称の関係を以って第1操舵特性CH1および第2操舵特性CH2が設定される。
【0090】
上記における「許容左端箇所」は、車線中央CLNを挟んで許容右端箇所EGRとは線対称の関係を以って規定される箇所であって、車線中央CLNから左側に向けて許容ズレ量GMAXだけ離れた位置である。
【0091】
6.車両1のステアリングホイール10に付与される操舵トルクST1,ST2
車線LNにおける車両1の幅方向位置と、車両1のステアリングホイール10に付与される操舵トルクST1,ST2との関係について、
図7および
図8を用いて説明する。
図8(a)は、車両1が車線LNにおける車線中央C
LNから右側に寄った場合を示す模式平面図であり、
図8(b)は、車両1がさらに右側に寄った場合を示す模式平面図である。
【0092】
先ず、
図8(a)に示すように、車速V
1で走行している車両1の車両中央C
VCが、車線LNの車線中央C
LNから右側(矢印A)に向けてG1だけ寄った状態を想定する。車両中央C
VCのズレ量G1は、
図7における車線中央C
LNから第1操舵特性CH1と第2操舵特性CH2との交点(特性切換箇所P5)までの間のズレ量である。
【0093】
図8(a)に示す状況では、車両1のステアリングホイール10に対して第1操舵特性CH1に基づく操舵トルク(第1操舵力)ST1が付与される。これにより、車両1の車両中央C
VCが車線LNの車線中央C
LNへと戻るように作用する。
【0094】
次に、
図8(b)に示すように、車両1の車両中央C
VCが、車線LNの車線中央C
LNからさらに右側(矢印B)に向けてG2だけ寄った状態を想定する。車両中央C
VCのズレ量G2は、
図7における特性切換箇所P5から許容右端箇所E
GRまでのズレ量である。
【0095】
図8(b)に示す状況では、車両1のステアリングホイール10に対して第2操舵特性CH2に基づく操舵トルク(第2操舵力)ST2が付与される。これにより、車両右側端E
VCRが右側区画線DL
Rから外側に逸脱するのを抑制することができる。
【0096】
7.車両1の車速Vと第1操舵特性CH1との関係
車両1の車速Vと設定される第1操舵特性CH1との関係について、
図9を用いて説明する。
図9は、車両1の車速Vと設定される第1操舵特性CH1との関係を示す模式図である。
【0097】
図9に示すように、本実施形態に係る車両1では、車両1の車速Vに応じて、設定される第1操舵特性CH1が、CH1A~CH1Jのように変化する(矢印C)。なお、
図8では、車速Vに応じて変化する第1操舵特性CH1のうち、CH1A~CH1Jを抽出して描いているが、隣り合う特性同士の間やCH1Aよりも低速側あるいはCH1Jよりも高速側にも第1操舵特性CH1が設定される。
【0098】
具体的には、第1操舵特性CH1におけるトルク上昇部L1が、車速Vが高くなるほど車線LNの幅方向外側に設定される。換言すると、車線LNの幅方向における任意箇所での操舵トルク値は、車速Vが高くなるほど低く設定される。
【0099】
図9に示すように、車速Vが比較的低速域にある場合には、第1操舵トルク付与開始箇所P0がP0A~P0Dで示すように車線中央C
LN上に規定された第1操舵特性CH1A~CH1Dが設定される。
【0100】
車速Vが比較的低速域にある場合(第1操舵特性CH1Dの設定に係る車速V以下の場合)に設定される第1操舵特性CH1A~CH1Dは、車速Vが低速域の内でも低速から高速へと変化するのに従って、CH1A→CH1B→CH1C→CH1Dのように漸次変更される。
【0101】
ここで、
図9に示すように、車速Vが低速域の内でも低速から高速へと変化するのに従って、矢印Dで示すように、第1操舵トルク値TO1もTO1A→TO1B→TO1C→TO1Dのように漸次変更される。
【0102】
なお、本実施形態における、第1操舵特性CH1Dの設定に係る車速Vと第1操舵特性CH1Eの設定に係る車速Vとの間の車速Vが、“所定速”に相当する。
【0103】
車速Vが比較的高速域にある場合(第1操舵特性CH1Eの設定に係る車速V以上の場合)には、第1操舵トルク付与開始箇所P0がP0E~P0Jで示すように車線LNの幅方向に漸次変化するように規定される第1操舵特性CH1E~CH1Jが設定される。
【0104】
車速Vが比較的高速域にある場合に設定される第1操舵特性CH1E~CH1Jは、車速Vが高速域の内でも低速から高速へと変化するのに従って、CH1E→CH1F→CH1G→CH1H→CH1I→CH1Jのように漸次変更される。
【0105】
なお、本実施形態では、一例として、車速Vが36km/h、43km/h、50km/h、57km/h、64km/h、71km/h、78km/h、85km/h、92km/h、99km/hのそれぞれの場合に、第1操舵特性としてCH1A、CH1B、CH1C、CH1D、CH1E、CH1F、CH1G、CH1H、CH1I、CH1Jが設定される。
【0106】
また、上述のように、
図9に示した各特性線の各間および内外にも、車速Vに応じて第1操舵特性CH1が設定される。
【0107】
また、
図9では、車両中央C
VCが車線中央C
LNよりも右側にある場合だけを示したが、車両中央C
VCが車線中央C
LNよりも左側にある場合においても、
図9に示すのとは線対称の関係を以って車速Vに応じた第1操舵特性CH1が設定される。
【0108】
8.車線LNの幅W
1と第2操舵特性CH2との関係
車線LNの幅W
1と設定される第2操舵特性CH2との関係について、
図10を用いて説明する。
図10は、車線LNの幅W
1と車両1の幅W
VCとから規定される許容右端箇所E
GRとの関係で設定される第2操舵特性CH2を示す模式図である。
【0109】
図10に示すように、第2操舵特性CH2の設定時における基準となる許容右端箇所E
GRは、車線LNの幅W
1の広狭に伴って車線LNの幅方向に変化する。そして、この許容右端箇所E
GRの幅方向への変化に伴って、CH2A~CH2Gで示すように、トルク上昇部L3が車線LNの幅方向にスライドするように変化する(矢印E)。なお、
図10では、許容右端箇所E
GRの幅方向位置に応じて変化する第2操舵特性CH2のうち、CH2A~CH2Gを抽出して描いているが、隣り合う特性同士の間や幅方向の内外にも第2操舵特性CH2が設定される。
【0110】
具体的に説明すると、
図10に示すように、本実施形態に係る車両1では、許容右端箇所E
GRを基準として、その内側に幅W
L4のトルク維持部L4を有する第2操舵特性CH2(CH2A~CH2G)が設定される。本実施形態においては、上述のように、トルク維持部L4の幅W
L4は一定の幅(例えば、30~50cm)である。このような規定により、第2操舵特性CH2は、許容右端箇所E
GRの位置に応じて、車線LNの幅方向にスライドした状態で第2操舵特性CH2A~CH2Gが設定される。
【0111】
そして、各第2操舵特性CH2A~CH2Gの第2操舵トルク付与開始箇所P3A~P3Gは、それぞれの特性を設定する際の基準である許容右端箇所EGRに応じて、車線LNの幅方向の所定位置に設定される。
【0112】
なお、
図10では、車両中央C
VCが車線中央C
LNよりも右側にある場合だけを示したが、車両中央C
VCが車線中央C
LNよりも左側にある場合においても、
図10に示すのとは線対称の関係を以って許容左端箇所を基準とする第2操舵特性CH2が設定される。
【0113】
9.カーブの曲率半径Rと第2操舵特性CH2との関係
車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している場合に、カーブの曲率半径Rと設定される第2操舵特性CH2との関係について、
図11および
図12を用いて説明する。
図11は、カーブの曲率半径Rと設定される第2操舵特性CH2との関係を示す模式図であり、
図12は、カーブの曲率半径Rを横軸にとり、第2操舵特性CH2における第3トルク値TO3を縦軸にとったグラフ(特性図)である。
【0114】
図11に示すように、本実施形態に係るコントロールユニット25の第2操舵トルク付与部252は、車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行中である場合には、当該カーブの曲率半径Rに応じて第2操舵特性CH2のトルク維持部L4の設定を変更する。
【0115】
具体的には、カーブの曲率半径Rが大きい場合には、第3トルク値TO3も大きいTO3Aが維持されるトルク維持部L4を有する第2操舵特性CH2Hが設定される。そして、カーブの曲率半径Rが小さくなるにしたがって、第3トルク値がTO3Bの第2操舵特性CH2I、第3トルク値がTO3Cの第2操舵特性CH2J、第3トルク値がTO3Dの第2操舵特性CH2K、第3トルク値がTO3Eの第2操舵特性CH2Lというように変化させる。
【0116】
なお、
図11では、カーブの曲率半径Rに応じて変化する第2操舵特性CH2のうち、CH1H~CH1Lを抽出して描いているが、隣り合う特性同士の間やCH2Hよりも高い第3トルク値を有する第2操舵特性CH2、あるいはCH2Lよりも低い第3トルク値を有する第2操舵特性CH2が設定される。
【0117】
ここで、
図11に示すように、本実施形態においては、カーブの曲率半径Rに応じて第3トルク値TO3を漸次変化させるのに対して、箇所P4と許容右端箇所E
GRとの間の幅W
L4や、トルク上昇部L3の傾きなどは変化させないこととした。
【0118】
横軸にカーブの曲率半径Rをとり、縦軸に第3トルク値TO3をとった
図12のグラフにおいて、第3トルク値TO3は、カーブの曲率半径RがR
G(第1所定値)からR
A(第2所定値)までの間の範囲で、漸次変化させる。そして、カーブの曲率半径RがR
Gよりも小さい場合には、第3トルク値TO3はゼロ(“0”)に設定される。
【0119】
一方、カーブの曲率半径RがRAよりも大きい場合には、第3トルク値TO3は設定上限値であるTO3Aに設定される。
【0120】
図12に示すように、カーブの曲率半径Rが、R
G→R
F→R
E→R
D→R
C→R
B→R
Aと漸増して行くのに従って、第3トルク値TO3が、TO3G→TO3F→TO3E→TO3D→TO3C→TO3B→TO3Aと漸増して行くように第2操舵特性CH2が設定される。
【0121】
ここで、
図12に示す特性図において、曲率半径RがR
E~R
Cの間の範囲では、特性ラインが直線的(一次関数的)に変化するように設定されているのに対して、曲率半径RがR
G~R
Eの間の範囲およびR
C~R
Aの間の範囲では、特性ラインが曲線的(二次関数的、指数関数的、対数関数的)に変化するように設定されている。
【0122】
なお、曲率半径RGは一例として500mであり、曲率半径RAは一例として1100mである。
【0123】
10.曲率半径Rの算出における車速Vと操舵角およびヨーレートとの関係
本実施形態では、コントロールユニット25の曲率半径設定部254が行う曲率半径Rの算出に際して操舵角およびヨーレートを用いるとともに、車速Vに応じて操舵角とヨーレートとの重みづけを行うこととしている。曲率半径Rの算出における車速Vに応じた操舵角とヨーレートとの重みづけについて、
図13を用いて説明する。
【0124】
図13は、曲率半径Rの算出における車速Vに対する操舵角とヨーレートとの重みづけを説明するための模式図である。
【0125】
図13に示すように、曲率半径算出部254は、車速Vが比較的低速の車速V
2までの範囲では、操舵角センサ15の検出結果をベースとし、ヨーレートセンサ21の検出結果をベースとはせずに曲率半径Rを算出する。
【0126】
一方、車速Vが比較的高速の車速V3以上の範囲では、ヨーレートセンサ21の検出結果をベースとし、操舵角センサ15の検出結果をベースとはせずに曲率半径Rを算出する。そして、曲率半径算出部254は、車速Vが車速V2から車速V3までの範囲にある場合に、操舵角センサ15の検出結果とヨーレートセンサ21の検出結果との両検出結果を用いて曲率半径Rを算出する。
【0127】
なお、曲率半径算出部254が実行する曲率半径Rの算出においては、操舵角センサ15の検出結果およびヨーレートセンサ21の検出結果の他に、車室外カメラ20の撮像結果および地図情報格納部22に格納された地図情報なども用いられる。
【0128】
11.効果
本実施形態に係る車両1では、車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している場合に、車速Vが高いほど第1操舵特性CH1のトルク上昇部L1を車線LNの幅方向外側(許容右端箇所EGRおよび許容左端箇所の側)に設定することとしているので、車線LNにおけるカーブした部分を高速で走行するような場合には車線LNの幅方向中央側(車線中央CLNの側)の部分での操舵アシストの介入を抑制することができる。よって、車線LNにおけるカーブした部分を高速走行しているような場合には、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入を抑制し、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0129】
また、本実施形態に係る車両1では、車両1が車線LNにおけるカーブした部分を走行している場合に、車線LNの曲率半径Rが小さいほど第2操舵特性CH2のトルク上昇部L3の上限値(第3トルク値TO3)が小さく設定されることとしているので、運転者の操作に応じて車両が車線LNの端の区画線DLL,DLRに近付いた場合にも、過度に大きな操舵トルクST2が車両1のステアリングホイール10に付与されるのが抑制される。よって、車線LNにおけるカーブの曲率半径Rが小さい部分を走行しているような場合に、大きい操舵トルクST2が付与されるのを抑制することで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0130】
なお、本実施形態において、トルク上昇部L3の上限値は、トルク維持部L4のトルク値(第3トルク値TO3)に相当する。
【0131】
本実施形態に係る車両1では、車両1が走行している車線LNにおけるカーブの曲率半径Rが大きい場合には、比較的大きい操舵トルクST2が車両1のステアリングホイール10に付与されるので、車線逸脱の防止が図られ、高い安全性を確保することができる。
【0132】
従って、本実施形態に係る車両1では、車線逸脱を防ぐことで高い安全性を確保しながら、運転時における運転者に煩わしさや違和感を覚えさせ難く、ストレスを与え難い。
【0133】
本実施形態に係る車両1では、車速Vが高いほど第1操舵特性CH1における第1トルク値TO1を小さくすることとしているので、センターキープのための操舵アシストの介入が、高速走行時には抑えられる。よって、本実施形態に係る車両1では、車線LNにおけるカーブした部分を高速走行しているような場合には、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入を抑制し、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0134】
本実施形態に係る車両1では、
図12を用いて説明したように、カーブの曲率半径RがR
GとR
Aとの間の範囲にある場合において、第3トルク値TO3が曲率半径Rに応じてTO3G~TOO3Aの間で漸次変化するようにしているので、ある曲率半径を境に第2操舵力の値が一気に変化するような場合に比べて、操舵アシストが介入した場合における運転者が覚える煩わしさや違和感を抑えることができる。
【0135】
本実施形態に係る車両1では、車両1が走行している車線LNの曲率半径RがRGよりも小さい場合には、第3トルク値TO3をゼロ(“0”)にすることとしているので、例えば、進行方向における車線LNのカーブした部分の中程で、車線LNの幅方向内側に車両1を寄せて走行するような場合に、操舵トルクST2の付与がなく運転者自らのイメージする走行ラインを走行するのに適している。よって、本実施形態に係る車両1では、カーブの曲率半径RがRGよりも小さい場合に、操舵アシストが介入しないようにすることで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0136】
本実施形態に係る車両1では、カーブの曲率半径RがRAよりも大きい場合には、第3トルク値TO3を上限値であるTO3Aとしているので、車線LNにおける緩やかにカーブした部分を車両1が走行する場合にも、TO3を超えるような大きな操舵トルクが車両1のステアリングホイール10に付与されることがない。よって、本実施形態に係る車両1では、車線LNにおける緩やかにカーブした部分を走行している状況下では、過度の操舵トルクST2が付与されることはなく、車線逸脱の防止を図りながら、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0137】
本実施形態に係る車両1では、
図12を用いて説明したように、曲率半径RがR
G~R
Eの間の範囲およびR
C~R
Aの間の範囲では、特性ラインが曲線的(二次関数的、指数関数的、対数関数的)に変化するように設定されているので、走行している車線LNにおけるカーブの曲率半径Rが変化した場合においても、急激に第3トルク値TO3が変化するのを抑えることができる。よって、本実施形態に係る車両1では、車線LNにおけるカーブした部分を走行している状況下で、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのをより確実に抑制することができる。
【0138】
[変形例1]
変形例1に係る車両において、コントロールユニットが実行する操舵アシスト制御について、
図14を用いて説明する。
図14は、変形例1に係る車両において、コントロールユニット25が実行する操舵アシスト制御の方法を示すフローチャートである。
【0139】
図14に示すように、コントロールユニット25は、トルクセンサ16の検出結果(運転者がステアリングホイール10の操作により入力した入力トルク値T
OP)を取得する(ステップS11)。次に、コントロールユニット25は、取得した入力トルク値T
OPを、予め規定された閾値(所定操作力)T
TH以上であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0140】
コントロールユニット25がTOP<TTHと判断した場合には(ステップS12:No)、リターンされ、第1操舵トルク付与部251は第1操舵特性CH1に基づく操舵トルクの設定を行う。
【0141】
一方、コントロールユニット25がTOP≧TTHと判断した場合には(ステップS12:Yes)、第1操舵トルク付与部251は第1操舵特性CH1に基づく操舵トルクの付与をキャンセルする(ステップS13)。
【0142】
なお、本変形例においては、上記閾値TTHを車速Vに対応して変化するように規定する。
【0143】
また、本変形例に係る車両は、
図14を用いて説明した第1操舵特性CH1に基づく操舵トルクの付与に関する制御を除き、上記実施形態と同じ構成を有し、同じ制御を実行する。
【0144】
本変形例に係る車両では、運転者の操作に係る入力トルク値TOPが閾値TTH以上である場合に、第1操舵特性CH1に基づく操舵トルクST1の付与をキャンセルすることとし、運転者の操作を優先することとしている。即ち、車両がカーブを走行しているような場合において、運転者がステアリングホイール10を所定以上のトルクTOPで操作したようなときには、センターキープのための第1操舵特性CH1に基づく操舵アシストの介入をキャンセルして、運転者の操作によりスムーズなラインを以って車線LNにおけるカーブした部分を通過できるようにすることができる。
【0145】
[変形例2]
上記実施形態では、
図9を用いて説明したように、車速Vが比較的低速域にある場合(第1操舵特性CH1Dの設定に係る車速V以下の場合)に、第1操舵特性CH1がCH1A~CH1Dと漸次変化するのに伴って、第1操舵トルク値TO1もTO1A→TO1B→TO1C→TO1Dのように漸次変化するようにしたが(
図9の矢印Dで示す変化形態)、本変形例では、第1操舵トルク値TO1の変化形態について、
図9に示す形態に限定を受けるものではない。例えば、TO1AとTO1Bとの差分がTO1BとTO1Cとの差分よりも小さく、TO1BとTO1Cとの差分がTO1CとTO1Dとの差分よりも小さい、としている。換言すると、本変形例に係る車両では、車両が車線LNにおけるカーブした部分を走行しており、且つ、車速Vが所定速以下の場合に、第1操舵特性CH1における車線中央C
LN上において、車速Vが高いほど第1操舵トルク値TO1の減少度合いが大きく設定される、としている。
【0146】
なお、本変形例においても、第1操舵特性CH1Dの設定に係る車速Vと第1操舵特性CH1Eの設定に係る車速Vとの間の車速Vが“所定速”に相当する。
【0147】
本変形例では、車速Vが高いほど車線中央CLN上での第1操舵トルク値TO1の減少度合いを大きくすることとするので、車速Vが高くなるのに従って車線中央CLNおよびその近傍で車両1のステアリングホイール10に付与される操舵トルクST1をより小さくすることができる。即ち、本変形例では、車線LNにおけるカーブした部分を走行中に車速Vが高いほど、1次関数的に第1操舵力の値を小さくするのではなく、2次関数的または指数関数的または対数関数的に第1操舵力の値を小さくし、これにより、運転者による操舵に対して操舵アシストの介入をより小さく抑えることで、運転者が煩わしさや違和感を覚えるのをさらに抑制することができる。
【0148】
[その他の変形例]
上記実施形態及び変形例1,2では、車両1の車速Vが比較的低速である場合に設定される第1操舵特性CH1(CH1A~CH1D)が
図9に示したように一定のトルク値が維持されるトルク維持部を有することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車速Vが比較的高速である場合に設定される第1操舵特性CH1E~CH1Jと同様に、トルク上昇部L1と操舵トルク値TO2で維持されるトルク維持部L2とから構成される特性とすることもできる。
【0149】
上記実施形態および変形例1,2では、第2操舵特性CH2において、許容右側箇所EGRまたは許容左側箇所を基準として一定の幅WL4(一例として、30~50cm)を以ってトルク維持部L4が設定されることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車線LNの幅W1や車速Vに応じて幅WL4を漸次変化させることとしてもよい。
【0150】
上記実施形態および変形例1,2では、車線中央CLNの曲率半径を以って車線LNの曲率半径Rとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車線の両脇の区画線の曲率半径を以って車線の曲率半径としてもよい。なお、この場合には、車線中央CLNの曲率半径との差分を考慮して、上記のような操舵アシスト制御を行うことが必要である。
【0151】
上記実施形態および変形例1,2では、警報機23が果たす役割については言及しなかったが、例えば、車両1の車両中央CVCが許容右側箇所EGRや許容左側箇所に近接する状況となった場合に、警報機23により警報を発することとすることもできる。より具体的には、車両1の車両中央CVCが箇所P4よりも幅方向外側に位置することとなった場合に、警報機23から運転者に向けて警報を発することとしてもよい。
【0152】
また、車両1の車両中央CVCが許容右側箇所EGRや許容左側箇所に近接する状況となった場合には、エンジン2やブレーキ7l,7r,9l,9rへの指令により、車速Vを減速することとしてもよい。
【0153】
上記実施形態および変形例1,2では、車両1の動力源としてエンジン2を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、電動モータを駆動源とすることも可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 車両
10 ステアリングホイール
14 ステアリングアクチュエータ(操舵力生成部)
15 操舵角センサ
16 トルクセンサ(操作力検出部)
20 車室外カメラ(車線検出部)
24 車速センサ(車速検出部)
25 コントロールユニット(車両制御部)
251 第1操舵トルク付与部(第1操舵力付与部)
252 第2操舵トルク付与部(第2操舵力付与部)
254 曲率半径算出部
CH1,CH1A~CH1J 第1操舵特性
CH2,CH2A~CH2L 第2操舵特性
CLN 車線中央
DLL,DLR 区画線
L1 トルク上昇部(第1操舵力上昇部)
L3 トルク上昇部(第2操舵力上昇部)
L4 トルク維持部(第2操舵力維持部)