(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/30 20160101AFI20220726BHJP
【FI】
H02K11/30
(21)【出願番号】P 2018168706
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】東出 智寛
(72)【発明者】
【氏名】谷川 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】南田 尚武
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201904(JP,A)
【文献】特開2017-028876(JP,A)
【文献】特開2017-108501(JP,A)
【文献】特開2018-125948(JP,A)
【文献】特開2017-163810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの作動を制御するとともに複数の電子部品が実装されている回路基板と、前記回路基板に設けられたコネクタと、前記モータを収容するモータハウジングと、前記回路基板及び前記コネクタを覆う金属製のカバーとを備え、
前記コネクタは、樹脂製のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングから前記モータの軸方向一端側に突出した突出部とを有し、
前記カバーは、前記モータの軸方向他端側に開口する有底筒状体をなすとともに、側壁部、及び前記モータの軸方向に貫通する貫通孔が形成された底壁部を有し、
前記カバーは、前記突出部が前記貫通孔を介して前記カバーから突出した状態で前記モータハウジングに固定されており、
前記回路基板は、金属製の締結部材が前記コネクタ側の面から挿通されていることにより前記モータハウジングに固定されており、
前記コネクタハウジングには、前記回路基板と前記コネクタとの間及び前記回路基板と前記カバーとの間に形成されている内部空間のうち、前記回路基板に挿通されている前記締結部材を収容している第1収容空間と、前記回路基板に前記電子部品が実装されている実装領域を収容している第2収容空間とを区画する壁部が設けられているモータ装置。
【請求項2】
前記電子部品は、特定電子部品を有し、
前記特定電子部品は、前記回路基板における前記コネクタ側の面に配置されているとともに電気的構成を収容した特定電子部品ハウジングを有し、
前記特定電子部品と前記回路基板とを電気的に接続している接続部分は、前記回路基板に設けられた前記コネクタと反対側の面に配置されており、
前記第1収容空間は、前記コネクタハウジングに形成されている前記壁部、前記カバーの前記側壁部、及び前記特定電子部品ハウジングの側面により区画されている請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記第1収容空間は、前記コネクタハウジングに形成されている前記壁部、及び前記カバーの前記側壁部により区画されている請求項1に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記コネクタハウジングの前記回路基板と反対側の部位には、前記突出部と、外部を形成するように前記カバーの前記底壁部に当接している当接部とが設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記締結部材を第1締結部材とするとき、前記第1締結部材に加えて、前記第1締結部材とは別の第2締結部材が前記回路基板に挿通されていることにより、前記回路基板は前記モータハウジングに固定されており、
前記第1締結部材は、前記第1収容空間内に配置された状態で前記回路基板を挿通しており、
前記第2締結部材は、前記第2収容空間内に配置された状態で前記回路基板を挿通しており、
前記カバーの底壁は、前記モータの軸方向から見たとき、前記第2締結部材と重なる位置において、前記回路基板に近付くように段差形状をなす段差部を有し、
前記回路基板における前記コネクタ側の面と前記段差部における前記回路基板側の面との間の距離は、前記第2締結部材の前記モータの軸方向における長さよりも短い請求項1~4のいずれか一項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、モータと、モータの駆動を制御するための回路が構成された回路基板とが一体化されたモータ装置が知られている。こうしたモータ装置では、外部の配線と接続するためのコネクタが回路基板に設けられている。回路基板は、ねじ等の金属製の締結部材によって、モータのハウジングに固定されている。モータのハウジングに回路基板が固定された状態において、回路基板及びコネクタはカバーによって覆われている。カバーはモータのハウジングに取り付けられている。カバーの底に設けられている貫通孔からコネクタが外部に突出している。
【0003】
特許文献2には、回路基板を固定するためのねじが抜け出ることを抑えるために、カバーがハウジングの所定の位置に組み付けられた状態において、カバーがねじの頭を押さえる段差部をなしていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-88813号公報
【文献】特開2014-201288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属製のカバーを前提とした場合、カバーにねじの頭を押さえる段差部を形成するためにはプレス加工等の何らかの加工を施す必要がある。モータの軸方向から見たときにカバーにおけるねじと重なる部分との間において、カバーに段差部を形成するための加工を施すスペースを確保することができない場合、カバーにねじの頭を押さえる機能を付与することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するモータ装置は、モータと、前記モータの作動を制御するとともに複数の電子部品が実装されている回路基板と、前記回路基板に設けられたコネクタと、前記モータを収容するモータハウジングと、前記回路基板及び前記コネクタを覆う金属製のカバーとを備え、前記コネクタは、樹脂製のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングから前記モータの軸方向一端側に突出した突出部とを有し、前記カバーは、前記モータの軸方向他端側に開口する有底筒状体をなすとともに、側壁部、及び前記モータの軸方向に貫通する貫通孔が形成された底壁部を有し、前記カバーは、前記突出部が前記貫通孔を介して前記カバーから突出した状態で前記モータハウジングに固定されており、前記回路基板は、金属製の締結部材が前記コネクタ側の面から挿通されていることにより前記モータハウジングに固定されており、前記コネクタハウジングには、前記回路基板と前記コネクタとの間及び前記回路基板と前記カバーとの間に形成されている内部空間のうち、前記回路基板に挿通されている前記締結部材を収容している第1収容空間と、前記回路基板に前記電子部品が実装されている実装領域を収容している第2収容空間とを区画する壁部が設けられている。
【0007】
車両の振動等によって、モータハウジングに対して回路基板を固定するための締結部材が回路基板から脱落すると、回路基板の実装領域に接触して短絡故障を引き起こすことがある。そこで、上記構成によれば、回路基板に挿通されている締結部材を収容している第1収容空間と、回路基板に電子部品が実装されている実装領域を収容している第2収容空間とを区画するように、コネクタハウジングに壁部を形成している。これにより、仮に、締結部材が回路基板から脱落したとしても、その締結部材が壁部によって区画された第1収容空間から第2収容空間に侵入することが抑制されている。このことから、モータの軸方向から見たときにカバーにおけるねじと重なる部分との間において、カバーに段差部を形成するための加工を施すスペースを確保することができなかったとしても、回路基板から脱落した締結部材が回路基板の実装領域に接触することを抑えることができる。
【0008】
例えば、前記電子部品は、特定電子部品を有し、前記特定電子部品は、前記回路基板における前記コネクタ側の面に配置されているとともに電気的構成を収容した特定電子部品ハウジングを有し、前記特定電子部品と前記回路基板とを電気的に接続している接続部分は、前記回路基板に設けられた前記コネクタと反対側の面に配置されており、前記第1収容空間は、前記コネクタハウジングに形成されている前記壁部、前記カバーの前記側壁部、及び前記特定電子部品ハウジングの側面により区画されるように具体化することができる。
【0009】
また、前記第1収容空間は、前記コネクタハウジングに形成されている前記壁部、及び前記カバーの前記側壁部により区画されるように具体化することができる。
上記のモータ装置において、前記コネクタハウジングの前記回路基板と反対側の部位には、前記突出部と、外部を形成するように前記カバーの前記底壁部に当接している当接部とが設けられていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、モータの軸方向において、第1収容空間と第2収容空間とを区画した状態で、コネクタハウジングとカバーとの間において、締結部材が入り込めるような隙間がない。このため、回路基板から脱落した締結部材が回路基板の実装領域に接触すること、ひいてはモータ装置の外方へ出ていってしまうことを抑えることができる。
【0011】
上記のモータ装置において、前記締結部材を第1締結部材とするとき、前記第1締結部材に加えて、前記第1締結部材とは別の第2締結部材が前記回路基板に挿通されていることにより、前記回路基板は前記モータハウジングに固定されており、前記第1締結部材は、前記第1収容空間内に配置された状態で前記回路基板を挿通しており、前記第2締結部材は、前記第2収容空間内に配置された状態で前記回路基板を挿通しており、前記カバーの底壁は、前記モータの軸方向から見たとき、前記第2締結部材と重なる位置において、前記回路基板に近付くように段差形状をなす段差部を有し、前記回路基板における前記コネクタ側の面と前記段差部における前記回路基板側の面との間の距離は、前記第2締結部材の前記モータの軸方向における長さよりも短いことが好ましい。
【0012】
コネクタとカバーの側壁部との距離を確保することができる場合、カバーに段差部を形成することで、締結部材が回路基板から抜け出ないようにする機能をカバーに付与することができる。このことから、カバーに段差部を形成するという簡単な構成によって、回路基板に挿通している第2締結部材が回路基板の実装領域に接触することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のモータ装置によれば、回路基板から脱落した締結部材が回路基板の実装領域に接触することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】カバーを取り外した状態のモータ装置の平面図。
【
図6】第1ねじ側の第1収容空間を示すモータ装置の部分断面図。
【
図7】第1ねじ側の第1収容空間を示すモータ装置の部分斜視図。
【
図8】第2ねじ側の第1収容空間を示すモータ装置の部分断面図。
【
図9】第2ねじ側の第1収容空間を示すモータ装置の部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、モータ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、モータ装置1は、モータ2と、モータ2の作動を制御する回路が構成された回路基板3と、回路基板3に設けられた樹脂製のコネクタ4と、モータ2を収容するモータハウジング5と、回路基板3及びコネクタ4を覆う金属製のカバー6とを備えている。なお、以下では、説明の便宜上、モータ2の軸方向Xを基準として、カバー6側を軸方向一端側、モータ2側を軸方向他端側という。軸方向Xは、モータ2の回転軸41の延びる方向である。
【0016】
モータ2及びモータハウジング5の構成について説明する。
図3に示すように、モータ2は、モータハウジング5内に固定されたステータ11と、ステータ11の内周に回転可能に配置されたロータ12とを備えている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、モータハウジング5は、有底筒状体のハウジング本体21と、ハウジング本体21の開口を閉塞する平板状の天板22とを有している。本実施形態のハウジング本体21及び天板22は、金属材料により構成されている。天板22は、ヒートシンクとして機能する。ハウジング本体21の底部の中央には、軸方向Xに貫通した第1挿通孔23が形成され、天板22の中央には、軸方向Xに貫通した第2挿通孔24が形成されている。ハウジング本体21の開口端部21aは、略長方形と略長方形の一方の長辺を底辺とした略台形とが一体となっている略六角形状をなしている。略長方形の2つの長辺は、略台形の2つの底辺と略平行である。開口端部21aの外周面には、複数の係合突部25が形成されている。また、天板22には、軸方向一端側(
図3中の上側)に突出した複数の支持部26が形成されている。
【0018】
ステータ11は、ハウジング本体21の筒状部の内側に固定された円筒状のステータコア31、及びステータコア31に巻回されたモータコイル32を備えている。モータコイル32の接続端子32aは、バスバー33を介して回路基板3に接続されている。
【0019】
ロータ12は、回転軸41と一体回転可能に固定された円筒状のロータコア42、及びロータコア42の外周に固定された複数の永久磁石43を備えている。永久磁石43は、その磁極がロータコア42の周方向において、N極及びS極が交互に入れ替わるように配置されている。モータハウジング5のハウジング本体21に設けられた第1挿通孔23には、第1軸受44が設けられている。第1軸受44は、ハウジング本体21の第1挿通孔23に対して回転軸41の軸方向他端側の端部を回転可能に支持する。モータハウジング5の天板22に設けられた第2挿通孔24には、第2軸受45が設けられている。第2軸受45は、天板22の第2挿通孔24に対して回転軸41の軸方向一端側の端部を回転可能に支持する。これにより、回転軸41は、第1軸受44及び第2軸受45を介してモータハウジング5に対して回転可能に支持されている。
【0020】
回路基板3及びコネクタ4の構成について説明する。
図2~
図4に示すように、回路基板3は、ハウジング本体21の開口端部21aに対応した略六角形の平板状に形成されている。回路基板3には、モータ2に供給する駆動電流の目標値等の演算を行うための制御回路や、当該制御回路の演算した目標値に従ってモータ2に駆動電流を供給するための駆動回路や、電磁ノイズを低減するためのコイル71等の各種の電子部品70が実装されている。回路基板3におけるコネクタ4側の面には、回路基板3に制御回路及び駆動回路が実装されている領域であって、制御回路及び駆動回路と回路基板3との電気的な接続部分が実装されている実装領域Rが形成されている。実装領域Rは、軸方向Xにおいて、回路基板3におけるカバー6と対向する部分のみならず、回路基板3におけるコネクタ4と対向する部分まで広がっている。回路基板3は、そのコネクタ4側の表面に配線パターンが露出しているプリント基板である。実装領域Rには、回路基板3の配線パターンも実装されている。特定電子部品としてのコイル71は、回路基板3におけるコネクタ4側の面に配置されているとともに、電気的構成である巻き線を収容した特定電子部品ハウジングとしてのコイルハウジング71aを有している。コイル71と回路基板3とを電気的に接続している接続部分は、回路基板3におけるコネクタ4と反対側の面に配置されている。
【0021】
回路基板3は、締結部材としての複数のねじ100が挿通されていることにより、モータハウジング5の天板22に対して固定されている。ねじ100は、金属材料により構成されている。ねじ100は、軸部100a及び頭部100bを有している。軸部100aの外周面には、ねじ溝が形成されている。頭部100bは、半球状をなしている。頭部100bの外周面は、軸部100aよりも拡径している。回路基板3を挿通しているねじ100の軸部100aがモータハウジング5の天板22の支持部26に螺着することにより、回路基板3は天板22に固定されている。本実施形態では、ねじ100は、第1締結部材としての第1ねじ101及び第2ねじ102と、第2締結部材としての第3ねじ103及び第4ねじ104とにより構成されている。第1ねじ101及び第2ねじ102は、コネクタ4とカバー6の側壁部61とが近接している位置において、回路基板3を挿通している。言い換えると、第1ねじ101及び第2ねじ102は、略六角形の回路基板3のうち略台形の部分において、回路基板3を挿通している。第3ねじ103及び第4ねじ104は、コネクタ4とカバー6の側壁部61とが離間している位置において、回路基板3を挿通している。言い換えると、第3ねじ103及び第4ねじ104は、略六角形の回路基板3のうち略長方形の部分において、回路基板3を挿通している。これら4つのねじ100が回路基板3を挿通して支持部26に螺着していることにより、回路基板3はモータハウジング5の天板22に固定されている。軸方向Xから見たとき、回路基板3におけるねじ100が挿通されている部分から所定距離内の領域では、回路基板3上に電子部品70は実装されていない。すなわち、軸方向Xから見たとき、回路基板3における実装領域Rと回路基板3におけるねじ100が挿通されている部分とは重ならない。
【0022】
コネクタ4は、樹脂製のコネクタハウジング51と、コネクタハウジング51から軸方向一端側に突出した複数の突出部52と、コネクタハウジング51から軸方向他端側に突出した複数の足部53と、コネクタハウジング51から軸方向他端側に突出した第1壁部54及び第2壁部55とを有している。本実施形態のコネクタハウジング51は、軸方向Xから見たとき、略L字をなしている平板状に形成されており、回路基板3よりも小さく形成されている。軸方向Xから見たとき、コネクタハウジング51は、モータ2の回転軸41を中心として、回路基板3における略台形の部分に偏った状態で回路基板3に固定されている。各突出部52は、略円筒状に形成されているとともに、軸方向Xから見たとき、楕円形状をなしている。各突出部52は、外部から延びる配線が接続可能に形成されている。各足部53は、略円柱状に形成されている。コネクタ4の各足部53の先端は、回路基板3に接触している。ねじ105が回路基板3を挿通して各足部53に螺着していることにより、コネクタ4は回路基板3に固定されている。ねじ105は、回路基板3におけるコネクタ4と反対側の面から回路基板3に挿通されている。コネクタ4が回路基板3に固定された状態で、突出部52内のターミナル(図示略)から延びる接続端子は、回路基板3における予め設定された位置に接続されている。コネクタハウジング51には複数の孔が形成されており、各接続端子はその孔から回路基板3に向けて延びている。この接続端子は、実装領域R内で回路基板3に接続されている。コネクタハウジング51の回路基板3と反対側の面には、カバー6の底壁部62に当接している当接部56が設けられている。軸方向Xから見たとき、環状に形成されている当接部56は、突出部52を取り囲んでいる。当接部56は、コネクタハウジング51の回路基板3と反対側の面における周縁部分に設けられている。
【0023】
図4、
図6、及び
図7に示すように、軸方向Xにおいて、回路基板3とコネクタ4との間、及び回路基板3とカバー6との間には、内部空間Sが形成されている。内部空間Sは、第1収容空間S1及び第2収容空間S2により構成されている。
【0024】
第1壁部54は、第1収容空間S1と第2収容空間S2とを区画するように設けられている。第1収容空間S1には回路基板3における接続部分及び配線パターンが実装されている実装領域Rが位置していない一方、第2収容空間S2には回路基板3における実装領域Rが位置している。第1壁部54は、コネクタハウジング51における回路基板3側の面から軸方向他端側に延びている。第1壁部54は、軸方向Xから見たとき、円弧状をなしている。第1壁部54は、軸方向Xと直交する方向において、第1ねじ101の外周側に設けられている。本実施形態では、内部空間S内において、第1ねじ101を取り囲む側の第1収容空間S1と、第2ねじ102を取り囲む側の第1収容空間S1とからなる2つの第1収容空間S1が設けられている。第1ねじ101側の第1収容空間S1は、第1壁部54及びカバー6の側壁部61により取り囲まれている空間である。軸方向Xにおいて、第1壁部54と回路基板3との間には、ねじ100の軸部100aの外径よりも小さな隙間が形成されている。第1壁部54の周方向における端部と側壁部61との間には、ねじ100の軸部100aの外径よりも小さな隙間が形成されている。また、回路基板3における軸方向Xと直交する方向の周縁部と側壁部61との間には、ねじ100の軸部100aの外径よりも小さな隙間が形成されている。
【0025】
図4、
図8、及び
図9に示すように、第2壁部55は、第2ねじ102側の第1収容空間S1と第2収容空間S2とを区画するように設けられている。第2壁部55は、コネクタハウジング51における回路基板3側の面から軸方向他端側に延びている。第2壁部55は、軸方向Xから見たとき、円弧状をなしている。第2壁部55は、軸方向Xと直交する方向において、第2ねじ102の外周側に設けられている。第2ねじ102側の第1収容空間S1は、第2壁部55、カバー6の側壁部61、及びコイル71のコイルハウジング71aの側面により取り囲まれている空間である。軸方向Xにおいて、第2壁部55と回路基板3との間には、ねじ100の軸部100aの外径よりも小さな隙間が形成されている。第2壁部55の周方向における端部と側壁部61との間には、ねじ100の軸部100aの外径よりも小さな隙間が形成されている。また、回路基板3における軸方向Xと直交する方向の周縁部と側壁部61との間には、ねじ100の軸部100aの外径よりも小さな隙間が形成されている。
【0026】
カバー6の構成について説明する。
図2、
図3、及び
図5に示すように、カバー6は、ハウジング本体21の開口端部21aの形状に対応した有底角筒状に形成されている。カバー6は、金属材料から構成されている。カバー6は、筒状の側壁部61及び底壁部62を有している。側壁部61には、軸方向他端側に突出した板状の取付部63が複数箇所に形成されている。各取付部63には、その板厚方向に貫通した係合孔64が形成されている。
【0027】
カバー6の底壁部62には、底壁部62を軸方向Xに貫通する貫通孔65が形成されている。貫通孔65は、コネクタ4のコネクタハウジング51よりも一回り小さな略L字状に形成されている。貫通孔65の内周縁部65aは、コネクタハウジング51の当接部56と軸方向Xにおいて当接する。カバー6は、貫通孔65を介して突出部52がカバー6から突出するようにモータハウジング5に装着され、取付部63の係合孔64に係合突部25が係合していることにより、固定されている。
【0028】
カバー6の底壁部62には、軸方向Xから見たとき、第3ねじ103及び第4ねじ104と重なる位置において、回路基板3に近付くように段差形状をなす段差部66が形成されている。すなわち、段差部66は、略六角形状をなすカバー6の底壁部62における略長方形状の部分に設けられている。軸方向Xにおいて、段差部66と回路基板3との間の距離は、ねじ100の軸方向Xにおける長さよりも短い。
【0029】
このように構成されたモータ装置1は、回路基板3を介して駆動電流がモータコイル32に対して供給されると、ステータ11に回転磁界が発生し、その回転磁界に基づいてロータ12が回転する。
【0030】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)回路基板3に挿通されている第1ねじ101及び第2ねじ102を収容している第1収容空間S1と、電子部品70の制御回路及び駆動回路と回路基板3との電気的な接続部分が実装されている実装領域Rを収容している第2収容空間S2とを区画するように、コネクタハウジング51に第1壁部54及び第2壁部55を形成している。これにより、仮に、第1ねじ101及び第2ねじ102が回路基板3から脱落したとしても、第1ねじ101及び第2ねじ102が第1壁部54及び第2壁部55によって区画された第1収容空間S1から第2収容空間S2に侵入することが抑制されている。このことから、モータ2の軸方向Xから見たときにカバー6における第1ねじ101及び第2ねじ102と重なる部分との間において、カバー6に段差部を形成するための加工を施すスペースを確保することができなかったとしても、回路基板3から脱落した第1ねじ101及び第2ねじ102が回路基板3の実装領域Rに接触することを抑えることができる。
【0031】
(2)第1収容空間S1を区画するために設けられた第1壁部54及び第2壁部55のみで第1収容空間S1を区画しているわけではなく、第1ねじ101及び第2ねじ102の周囲にある既存の部材を有効に活用することで、複数の部材で第1収容空間S1を区画することができる。すなわち、第1ねじ101の周囲に、新規の部材である第1壁部54だけではなく、既存の部材であるカバー6の側壁部61を配置することにより、第1ねじ101側の第1収容空間S1を区画している。また、第2ねじ102の周囲に、新規の部材である第2壁部55だけではなく、既存の部材であるカバー6の側壁部61及びコイル71のコイルハウジング71aの側面を配置することにより、第2ねじ102側の第1収容空間S1を区画している。また、コネクタハウジング51に形成されている壁部のみで第1収容空間S1を区画する場合に比べて、コネクタハウジング51に形成されている壁部を小さくすることができる。これにより、コネクタハウジング51の体格が大きくなることを抑制できる。
【0032】
(3)軸方向Xにおいて、第1収容空間S1と第2収容空間S2とを区画した状態で、コネクタハウジング51の当接部56とカバー6の底壁部62との間において、第1締結部材である第1ねじ101及び第2ねじ102が入り込めるような隙間がない。このため、回路基板3から脱落した第1ねじ101及び第2ねじ102が、回路基板3の実装領域Rと接触すること、ひいてはカバー6の貫通孔65を介してモータ装置1の外方へ出ていってしまうことを抑えることができる。
【0033】
(4)軸方向Xから見たときにカバー6におけるねじ100と重なる部分との間において、カバー6に段差部66を形成するための加工を施すスペースを確保することができる場合、カバーに段差部66を形成することで、第2締結部材である第3ねじ103及び第4ねじ104が回路基板3から脱落しない機能をカバー6に付与することができる。このことから、カバー6に段差部66を形成するという簡単な構成によって、回路基板3に挿通している第3ねじ103及び第4ねじ104が実装領域Rに実装されている電子部品70の接続部分に接触することを抑えることができる。
【0034】
(5)軸方向Xから見たときにカバー6におけるねじ100と重なる部分との間において、カバー6に段差部66を形成するための加工を施すスペースを確保することができないことがある。この点、本実施形態では、第1ねじ101及び第2ねじ102については、第1収容空間S1と第2収容空間S2とを区画する第1壁部54及び第2壁部55によって、第1収容空間S1から第2収容空間S2への移動を規制している。また、第3ねじ103及び第4ねじ104については、段差部66によって、回路基板3からの脱落自体が抑制されている。このように、軸方向Xと直交する方向におけるコネクタ4とカバー6の側壁部61との間の間隙に応じて、ねじ100が電子部品70と回路基板3との接続部分に接触することを回避する対策を適切に行うことができるようになる。
【0035】
(6)軸方向Xから見たとき、第1壁部54及び第2壁部55が円弧状をなしていることから、第1ねじ101及び第2ねじ102の螺着の際に用いる工具がコネクタハウジング51と干渉しにくくされている。このことから、第1収容空間S1と第2収容空間S2とを区画する第1壁部54及び第2壁部55を設けている場合においても、第1ねじ101及び第2ねじ102の螺着のし易さを維持することができる。
【0036】
本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・第3ねじ103及び第4ねじ104は、カバー6の段差部66によって、実装領域Rに接触することを回避していたが、これに限らない。例えば、コネクタハウジング51から軸方向他端側に突出する壁部を第3ねじ103及び第4ねじ104の外周側に配置することで、第3ねじ103及び第4ねじ104が第2収容空間S2に移動することを抑制してもよい。
【0037】
カバー6の側壁部61の全面において、ねじ100が回路基板3から脱落しないようにする機能をカバー6に付与することが困難なほどにコネクタ4とカバー6の側壁部61とが近接している場合がある。例えば、軸方向Xから見たとき、コネクタハウジング51を回路基板3と略同じ大きさ及び形状に形成したような場合である。このような場合、軸方向Xから見たとき、カバー6におけるねじ100と重なる部分との間において、カバー6に段差部66を形成するための加工を施すスペースを確保することができないことがある。この場合、カバー6に段差部66を設けることは難しい。しかし、コネクタハウジング51に壁部を設け、その壁部を含めて、第3ねじ103及び第4ねじ104を収容する第1収容空間S1を構築することは可能である。仮に、第3ねじ103及び第4ねじ104が回路基板3から脱落したとしても、そのねじが第2収容空間S2へ移動することを抑制できる。そのため、脱落したねじ100が電子部品70と回路基板3との接続部分に接触することを回避することができる。
【0038】
・第1収容空間S1について、軸方向Xと直交する方向における区画を第1壁部54のみによって構成することも可能である。この場合、例えば第1壁部54を円筒状に構成し、その筒内領域が第1収容空間S1となる。また、第2収容空間S2について、軸方向Xと直交する方向における区画を第2壁部55のみによって構成することも可能である。この場合、例えば第2壁部55を円筒状に構成し、その筒内領域が第2収容空間S2となる。
【0039】
・第1壁部54及び第2壁部55は、軸方向Xから見たとき、円弧状をなしていたが、これに限らない。例えば、第1収容空間S1を、3つの平板によって構成されている第1壁部とカバー6の側壁部61とで取り囲むことで形成してもよい。
【0040】
・第1ねじ101側の第1収容空間S1は、第1壁部54及びカバー6の側壁部61の2つの部材によって取り囲まれ、第2ねじ102側の第1収容空間S1は、第2壁部55、カバー6の側壁部61、及びコイルハウジング71aの側面の3つの部材によって取り囲まれていたが、これに限らない。すなわち、第1収容空間S1は、4つ以上の部材によって取り囲むことにより区画するようにしてもよい。第1収容空間S1を取り囲む構成として、第1壁部54あるいは第2壁部55以外の部材は適宜変更可能である。
【0041】
・内部空間S内において、第1ねじ101を取り囲む側の第1収容空間S1と、第2ねじ102を取り囲む側の第1収容空間S1とからなる2つの第1収容空間S1が設けられていたが、第1ねじ101及び第2ねじ102をともに取り囲む1つの第1収容空間S1が設けられていてもよい。
【0042】
・回路基板3におけるコネクタ4側の面には配線パターンが露出していたが、これに限らない。例えば、回路基板3におけるコネクタ4側の面に形成された配線パターンが露出しないように、配線パターンの表面を樹脂等により覆っていてもよい。この場合であっても、コンデンサ等の電子部品70の接続部分は、回路基板3におけるコネクタ4側の面に露出することになる。これに対して、上記実施形態を適用すれば、上記(1)~(6)と同様の効果を奏することができる。
【0043】
・回路基板3には、4つのねじ100が挿通されて支持部26に螺着されていることで、回路基板3をモータハウジング5の天板22に固定していたが、これに限らない。例えば、回路基板3には、第1ねじ101あるいは第2ねじ102を含む1つ以上のねじ100が挿通されて支持部26に螺着されていることで、回路基板3をモータハウジング5の天板22に固定していればよい。
【0044】
・回路基板3及びカバー6は、略六角形状をなしていたが、例えば略四角形状をなしていてもよい。すなわち、回路基板3及びカバー6の形状は、適宜変更可能である。
・コネクタハウジング51の当接部56には、カバー6の底壁部62が当接していたが、軸方向Xにおいて、当接部56と底壁部62との間に隙間が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…モータ装置、2…モータ、3…回路基板、4…コネクタ、5…モータハウジング、6…カバー、11…ステータ、12…ロータ、21…ハウジング本体、22…天板、26…支持部、31…ステータコア、32…モータコイル、41…回転軸、42…ロータコア、43…永久磁石、51…コネクタハウジング、52…突出部、53…足部、54…第1壁部、55…第2壁部、56…当接部、61…側壁部、62…底壁部、63…取付部、64…係合孔、65…貫通孔、65a…内周縁部、66…段差部、70…電子部品、71…コイル、71a…コイルハウジング、100…ねじ、100a…軸部、100b…頭部、101…第1ねじ、102…第2ねじ、103…第3ねじ、104…第4ねじ、105…ねじ、R…実装領域、S…内部空間、S1…第1収容空間、S2…第2収容空間、X…軸方向。