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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20220726BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20220726BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F27/32 140
H01F41/12 E
H01F41/12 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018175975
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2019153772
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018039159
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144237(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 41/12
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内に配置される内側コア部と、前記巻回部外に配置される外側コア部とを含む磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間の少なくとも一部に充填される内側樹脂部と、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う外側樹脂部とを含む樹脂モールド部とを備え、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が前記巻回部の周方向に異なっており、
前記間隔が最も狭い箇所に介在される電気絶縁材と、前記間隔が最も広い箇所に介在される厚肉部と、前記間隔が相対的に狭い箇所の少なくとも一部に充填される薄肉部とを備え、
前記厚肉部は、前記内側樹脂部の一部をなし、
前記薄肉部は、前記内側樹脂部の他部をなし、
前記電気絶縁材の熱伝導率をλ1、前記最も狭い箇所の間隔をt1、前記熱伝導率λ1に対する前記間隔t1の比率を(間隔t1/熱伝導率λ1)とし、
前記厚肉部の熱伝導率をλ2、前記最も広い箇所の間隔をt2、前記熱伝導率λ2に対する前記間隔t2の比率を(間隔t2/熱伝導率λ2)とし、
(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす
リアクトル。
【請求項2】
前記間隔が相対的に狭い箇所に前記電気絶縁材と前記薄肉部とを備える請求項に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記電気絶縁材は、前記内側樹脂部の構成樹脂と同じ樹脂を含む成形体を備える請求項1又は請求項に記載のリアクトル。
【請求項4】
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内に配置される内側コア部と、前記巻回部外に配置される外側コア部とを含む磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間の少なくとも一部に充填される内側樹脂部と、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う外側樹脂部とを含む樹脂モールド部とを備え、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が前記巻回部の周方向に異なっており、
前記間隔が最も狭い箇所に介在される電気絶縁材と、前記間隔が最も広い箇所に介在され、前記内側樹脂部の一部をなす厚肉部とを備え
前記電気絶縁材は、前記内側樹脂部の構成樹脂と同じ樹脂を含む成形体を備え、
前記電気絶縁材の熱伝導率をλ1、前記最も狭い箇所の間隔をt1、前記熱伝導率λ1に対する前記間隔t1の比率を(間隔t1/熱伝導率λ1)とし、
前記厚肉部の熱伝導率をλ2、前記最も広い箇所の間隔をt2、前記熱伝導率λ2に対する前記間隔t2の比率を(間隔t2/熱伝導率λ2)とし、
(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす
リアクトル。
【請求項5】
前記最も狭い箇所の間隔t1は、前記最も広い箇所の間隔t2の50%以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記巻回部は四角筒状であり、前記内側コア部は四角柱状であり、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が相対的に狭い箇所は、前記巻回部の内周面の一面と前記内側コア部の外周面の一面とに挟まれる平板状の箇所を含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記電気絶縁材の熱伝導率λ1は、前記厚肉部の熱伝導率λ2よりも高い請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記電気絶縁材は、絶縁紙及び絶縁フィルムの少なくとも一方を含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内に配置される内側コア部と、前記巻回部外に配置される外側コア部とを含む磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間の少なくとも一部に充填される内側樹脂部と、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う外側樹脂部とを含む樹脂モールド部とを備え、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が前記巻回部の周方向に異なっており、
前記間隔が最も狭い箇所に介在される電気絶縁材と、前記間隔が最も広い箇所に介在され、前記内側樹脂部の一部をなす厚肉部とを備え
前記電気絶縁材は、絶縁紙及び絶縁フィルムの少なくとも一方を含み、
前記電気絶縁材の熱伝導率をλ1、前記最も狭い箇所の間隔をt1、前記熱伝導率λ1に対する前記間隔t1の比率を(間隔t1/熱伝導率λ1)とし、
前記厚肉部の熱伝導率をλ2、前記最も広い箇所の間隔をt2、前記熱伝導率λ2に対する前記間隔t2の比率を(間隔t2/熱伝導率λ2)とし、
(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす
リアクトル。
【請求項10】
前記最も狭い箇所の間隔t1は、前記最も広い箇所の間隔t2の50%以下である請求項に記載のリアクトル。
【請求項11】
前記巻回部は四角筒状であり、前記内側コア部は四角柱状であり、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が相対的に狭い箇所は、前記巻回部の内周面の一面と前記内側コア部の外周面の一面とに挟まれる平板状の箇所を含む請求項9又は請求項10に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車載コンバータ等に用いられるリアクトルとして、一対の巻回部を備えるコイルと、巻回部の内外に配置される磁性コアと、磁性コアの外周を覆う樹脂モールド部とを備えるものを開示する。上記磁性コアは、環状に組み付けられる複数のコア片を有する。上記樹脂モールド部は、コイルを覆わずに露出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-135334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルに対して、放熱性の更なる向上が望まれている。
上述のようにコイルが樹脂モールド部から露出されていれば、例えばコイルの巻回部が液体冷媒やファンからの風に直接接触できて、放熱性に優れる。また、リアクトルの設置対象自体が冷却機構を備えていたり、設置対象とは独立して冷却機構を備えていたりする場合には、コイルの巻回部を設置対象や冷却機構に近接できて放熱性に優れる。しかし、大電流化に伴うコイルや磁性コアの高温化、リアクトルの小型化に伴う放熱面積の縮小等の理由により、放熱性により優れるリアクトルが望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、放熱性に優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内に配置される内側コア部と、前記巻回部外に配置される外側コア部とを含む磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間の少なくとも一部に充填される内側樹脂部と、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う外側樹脂部とを含む樹脂モールド部とを備え、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が前記巻回部の周方向に異なっており、
前記間隔が最も狭い箇所に介在される電気絶縁材と、前記間隔が最も広い箇所に介在され、前記内側樹脂部の一部をなす厚肉部とを備え、
前記電気絶縁材の熱伝導率をλ1、前記最も狭い箇所の間隔をt1、前記熱伝導率λ1に対する前記間隔t1の比率を(間隔t1/熱伝導率λ1)とし、
前記厚肉部の熱伝導率をλ2、前記最も広い箇所の間隔をt2、前記熱伝導率λ2に対する前記間隔t2の比率を(間隔t2/熱伝導率λ2)とし、
(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリアクトルは、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。
図2A】実施形態1のリアクトルを図1に示す(II)-(II)切断線で切断した断面図である。
図2B図2Aに示すリアクトルにおいて、巻回部と内側コア部との間隔を説明する説明図である。
図3】実施形態1のリアクトルに備えられる組合体を示す分解斜視図である。
図4A】実施形態2のリアクトルを巻回部の軸方向に直交する平面で切断した断面図である。
図4B図4Aに示すリアクトルにおいて、巻回部と内側コア部との間隔を説明する説明図である。
図5】実施形態3のリアクトルを巻回部の軸方向に直交する平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部内に配置される内側コア部と、前記巻回部外に配置される外側コア部とを含む磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間の少なくとも一部に充填される内側樹脂部と、前記外側コア部の少なくとも一部を覆う外側樹脂部とを含む樹脂モールド部とを備え、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が前記巻回部の周方向に異なっており、
前記間隔が最も狭い箇所に介在される電気絶縁材と、前記間隔が最も広い箇所に介在され、前記内側樹脂部の一部をなす厚肉部とを備え、
前記電気絶縁材の熱伝導率をλ1、前記最も狭い箇所の間隔をt1、前記熱伝導率λ1に対する前記間隔t1の比率を(間隔t1/熱伝導率λ1)とし、
前記厚肉部の熱伝導率をλ2、前記最も広い箇所の間隔をt2、前記熱伝導率λ2に対する前記間隔t2の比率を(間隔t2/熱伝導率λ2)とし、
(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす。
【0010】
本開示のリアクトルは、以下の理由により、放熱性に優れる。
(a)コイルの巻回部の外周面が樹脂モールド部に実質的に覆われずに露出されている。そのため、例えば巻回部が液体冷媒やファンからの風に直接接触できたり、巻回部を冷却機構自体、又は冷却機構を備える設置対象に近接できたりする。従って、放熱効率に優れる。
【0011】
(b)コイルの巻回部と磁性コアの内側コア部との間に相対的に狭い箇所がある。
上記相対的に狭い箇所の少なくとも一部を、巻回部の外周面において以下の放熱箇所に対応する位置に設ければ、内側コア部から巻回部の放熱箇所までの距離が短いといえる。そのため、内側コア部から巻回部に効率よく放熱できる。上記巻回部の放熱箇所とは、巻回部において、上述の液体冷媒等の流体冷媒が直接接触し得る箇所や、上述の設置対象又は冷却機構に近接して配置される箇所等が挙げられる。
【0012】
(c)巻回部と内側コア部との間に存在する介在物の熱伝導率と、上記介在物が配置される箇所の間隔とについて、(間隔t1/熱伝導率λ1)が(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも小さいという特定の条件を満たす。
【0013】
例えば、電気絶縁材の構成材料と、厚肉部の構成材料とが同じであれば、熱伝導率λ1,λ2が実質的に等しい。しかし、間隔t1が間隔t2よりも小さいため、上述のように内側コア部から巻回部の放熱箇所までの距離が短いことで、放熱性に優れる。
【0014】
一方、電気絶縁材の構成材料と厚肉部の構成材料とが異なる場合を考える。
例えば、電気絶縁材の熱伝導率λ1が厚肉部の熱伝導率λ2よりも大きければ、電気絶縁材は厚肉部よりも熱伝導性に優れる。熱伝導率の大小関係と、間隔t1,t2の大小関係との双方から、放熱性により優れる。なお、この場合には、(間隔t1/熱伝導率λ1)は(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも確実に小さい。
【0015】
又は、例えば、電気絶縁材の熱伝導率λ1が厚肉部の熱伝導率λ2よりも小さいことが考えられる。しかし、間隔t1が間隔t2よりも非常に小さければ、内側コア部と巻回部との間に電気絶縁材が介在しても、内側コア部から巻回部に伝熱し易いといえる。このことから、「(間隔t1/熱伝導率λ1)が(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも小さい」ことは、放熱性に優れる構成の一つといえる。そこで、本開示のリアクトルでは、放熱性に優れる構成の一つとして、巻回部と内側コア部との間の介在物の熱伝導率と上記介在物が配置される箇所の間隔との比率の大小関係を規定する。
【0016】
また、本開示のリアクトルは、以下の理由により、製造性にも優れる。本開示のリアクトルの製造過程では、巻回部と内側コア部との間の空間の少なくとも一部に、樹脂モールド部の原料となる流動性樹脂を充填した後、固化することで樹脂モールド部を形成する。上記空間は、厚肉部の形成箇所として、上記間隔が相対的に広い箇所を含む。そのため、上記空間に流動性樹脂を充填し易い。ひいては、樹脂モールド部を形成し易い。
【0017】
電気絶縁材が厚肉部とは異なる材料で構成されており、樹脂モールド部とは独立した成形物であれば、樹脂モールド部をより形成し易く、製造性により優れる。上記空間のうち、最も狭い箇所の少なくとも一部に電気絶縁材を配置した状態で流動性樹脂の充填を行えばよいからである。上記空間のうち、電気絶縁材が存在する領域には上記流動性樹脂を充填しなくてよい。上記空間のうち、電気絶縁材が配置されていない箇所、つまり比較的広い箇所に上記流動性樹脂を充填すればよい。そのため、上記空間に流動性樹脂を充填し易い。また、上記流動性樹脂を隙間なく精度よく充填できる。
【0018】
更に、本開示のリアクトルでは、以下の理由により、強度にも優れる。本開示のリアクトルに備えられる磁性コアは、内側樹脂部と外側樹脂部とを備える樹脂モールド部によって一体に保持される。この樹脂モールド部は、厚肉部によって、内側樹脂部と外側樹脂部との接続強度を高め易い。このような樹脂モールド部に保持されることで、磁性コアの一体物としての剛性を高められる。
【0019】
その他、本開示のリアクトルは、樹脂モールド部によって磁性コアの機械的保護、外部環境からの保護、コイルとの電気絶縁性の向上等を図ることができる。
【0020】
(2)本開示のリアクトルの一例として、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が相対的に狭い箇所の少なくとも一部に充填され、前記内側樹脂部の他部をなす薄肉部を含む形態が挙げられる。
【0021】
上記形態は、以下の理由により、放熱性により優れる。上記形態は、上記相対的に狭い箇所に樹脂モールド部の一部(薄肉部)を備える。薄肉部の熱伝導率は空気よりも高い。そのため、上記形態は、上記相対的に狭い箇所内に空気を含む場合に比較して放熱性を高め易い。
【0022】
(3)上記(2)のリアクトルの一例として、
前記間隔が相対的に狭い箇所に前記電気絶縁材と前記薄肉部とを備える形態が挙げられる。
【0023】
上記形態における電気絶縁材は、樹脂モールド部とは独立して成形されたものである。このような電気絶縁材を備える形態は、上述のように樹脂モールド部を形成し易く、製造性に優れる。特に、電気絶縁材の熱伝導率λ1が厚肉部の熱伝導率λ2よりも高ければ、放熱性により優れる。
【0024】
また、上記形態は、以下の理由により、熱応力等による内側樹脂部の割れの発生等を防止し易く、機械的強度にも優れる。上記形態に備えられる内側樹脂部は、リアクトルを巻回部の軸方向に直交する平面で切断した断面(以下、横断面と呼ぶことがある)において、巻回部の周方向に連続する環状体ではない。この内側樹脂部は、上記横断面において、電気絶縁材との境界を有し、代表的には電気絶縁材を切れ目とするC字形状である。このような内側樹脂部は、ある程度の弾性変形が可能であり、応力を解放し易い。そのため、内側樹脂部は、熱応力等によって割れ難い。
【0025】
(4)本開示のリアクトルの一例として、
前記最も狭い箇所の間隔t1は、前記最も広い箇所の間隔t2の50%以下である形態が挙げられる。
【0026】
上記形態では、最も狭い箇所の間隔t1が間隔t2に比較して非常に小さい。そのため、熱伝導率λ1が多少小さくても、(間隔t1/熱伝導率λ1)が小さくなり易い。上記形態では、熱伝導率λ1が熱伝導率λ2の1/2倍超の大きさであれば(間隔t1/熱伝導率λ1)は(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも確実に小さい。このような形態は、放熱性により優れる。また、上記形態は、最も広い箇所の間隔t2をより広く確保し易い。このような形態は、上述のように製造過程で流動性樹脂をより充填し易く、製造性により優れる。
【0027】
(5)本開示のリアクトルの一例として、
前記巻回部は四角筒状であり、前記内側コア部は四角柱状であり、
前記巻回部と前記内側コア部との間隔が相対的に狭い箇所は、前記巻回部の内周面の一面と前記内側コア部の外周面の一面とに挟まれる平板状の箇所を含む形態が挙げられる。
【0028】
上記形態では、上述の内側コア部から巻回部の放熱箇所までの距離が短い領域が平板状の領域であり、比較的広く存在するといえる。このような形態は、放熱性により優れる。上記平板状の領域に、樹脂モールド部とは独立して成形された電気絶縁材が介在される場合には、上述のように製造性にも優れる。特に、電気絶縁材の熱伝導率λ1が厚肉部の熱伝導率λ2よりも高ければ、放熱性により優れる。
【0029】
(6)本開示のリアクトルの一例として、
前記電気絶縁材の熱伝導率λ1は、前記厚肉部の熱伝導率λ2よりも高い形態が挙げられる。
【0030】
上記形態は、電気絶縁材の熱伝導率λ1が厚肉部の熱伝導率λ2よりも高いことで、(間隔t1/熱伝導率λ1)が(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも確実に小さい。このような形態は、放熱性により優れる。
【0031】
(7)本開示のリアクトルの一例として、
前記電気絶縁材は、絶縁紙及び絶縁フィルムの少なくとも一方を含む形態が挙げられる。
【0032】
一般に、絶縁紙や絶縁フィルムの厚さは非常に薄い。そのため、絶縁紙や絶縁フィルムが配置される箇所の間隔t1を小さくできる。ひいては、(間隔t1/熱伝導率λ1)を小さくできる。従って、上記形態は、放熱性により優れる。また、上記形態は、最も広い箇所の間隔t2をより広く確保し易い。そのため、上記形態は、上述のように製造過程で流動性樹脂をより充填し易く、製造性により優れる。更に、上記形態は、巻回部と内側コア部との間の電気絶縁性にも優れる。間隔t1が小さいものの、空気ではなく、絶縁紙や絶縁フィルムが介在するからである。
【0033】
(8)本開示のリアクトルの一例として、
前記電気絶縁材は、前記内側樹脂部の構成樹脂と同じ樹脂を含む成形体を備える形態が挙げられる。
【0034】
上記形態に備えられる電気絶縁材は、内側樹脂部と同じ樹脂を含む。そのため、熱伝導率λ1が熱伝導率λ2に近い又は実質的に等しい。しかし、上述のように間隔t1が間隔t2よりも小さいため、上記形態は、放熱性に優れる。また、上記電気絶縁材の熱膨張係数が内側樹脂部の熱膨張係数に近い又は実質的に等しい。従って、上記形態は、上記熱膨張係数の相違に伴う内側樹脂部の変形や割れ等が生じ難く、機械的強度により優れる。更に、上記電気絶縁材は樹脂モールド部とは独立して成形されたものである。そのため、上記形態は、上述のように樹脂モールド部を形成し易く、製造性にも優れる。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を具体的に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0036】
[実施形態1]
主に図1図3を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。
図2Aは、リアクトル1をコイル2の軸方向に直交する平面で切断した横断面図である。図2Aでは、コイル2の巻回部2a,2b、内側コア部31a,31b、電気絶縁材7及び内側樹脂部61のみを示す。この点は、後述する図4A図5も同様である。
図2Bは、図2Aと同じ図であり、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔、巻回部2bと内側コア部31bとの間隔を説明する説明図である。
以下の説明では、図1図2図4図5の紙面下側をリアクトル1の設置側として説明する。この設置方向は例示であり、適宜変更できる。
また、以下の説明では、設置対象100側を下側と呼び、設置対象100とは反対側を上側と呼ぶことがある。巻回部2a,2bが近付く側を内側と呼び、巻回部2a,2bが離れる側を外側と呼ぶことがある。
【0037】
(リアクトル)
〈概要〉
実施形態1のリアクトル1は、図1に示すように、巻回部を有するコイル2と、巻回部内外に配置される磁性コア3と、磁性コア3の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部6とを備える。本例のコイル2は一対の巻回部2a,2bを有する。各巻回部2a,2bは各軸が平行するように横並びに配置される。磁性コア3は、巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される内側コア部31a,31bと、巻回部2a,2b外に配置される二つの外側コア部32,32とを含む。この磁性コア3は、横並びされる内側コア部31a,31bを挟むように二つの外側コア部32,32が配置されて、環状の閉磁路を形成する。樹脂モールド部6は、内側樹脂部61,61と(図2Aも参照)、外側樹脂部62,62とを含む。一方の内側樹脂部61は、一方の巻回部2aと一方の内側コア部31aとの間の少なくとも一部に充填される。他方の内側樹脂部61は、他方の巻回部2bと他方の内側コア部31bとの間の少なくとも一部に充填される。各外側樹脂部62,62は、各外側コア部32,32の少なくとも一部を覆う。この樹脂モールド部6は、各巻回部2a,2bの外周面を覆わずに露出させる。このようなリアクトル1は、代表的には、コンバータケース等の設置対象100(図2A)に取り付けられて使用される。
【0038】
実施形態1のリアクトル1では、図2Aに示すように、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔が巻回部2aの周方向に異なっている。また、巻回部2bと内側コア部31bとの間隔が巻回部2bの周方向に異なっている。本例のリアクトル1では、巻回部2aと内側コア部31aとがつくる空間の形状及び間隔と、巻回部2bと内側コア部31bとがつくる空間の形状及び間隔とが実質的に等しい。いずれも筒状の空間であり、間隔g<間隔g,g<間隔gde<間隔g<間隔gueを満たす(図2B)。
【0039】
更に、実施形態1のリアクトル1は、上述の巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔のうち、間隔が最も狭い箇所に存在する介在物と、間隔が最も広い箇所に存在する介在物とが以下の特定の条件を満たす。詳しくは、リアクトル1は、間隔が最も狭い箇所に介在される電気絶縁材7と、間隔が最も広い箇所に介在される厚肉部612とを備える。厚肉部612は、内側樹脂部61の一部をなす。電気絶縁材7の熱伝導率をλ1、最も狭い箇所の間隔(本例では間隔g)をt1、熱伝導率λ1に対する間隔t1の比率を(間隔t1/熱伝導率λ1)とする。厚肉部612の熱伝導率をλ2、最も広い箇所の間隔(本例では間隔gue)をt2、熱伝導率λ2に対する間隔t2の比率を(間隔t2/熱伝導率λ2)とする。リアクトル1は、(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす。
以下、構成要素ごとに詳細に説明する。
【0040】
〈コイル〉
本例のコイル2は、巻線が螺旋状に巻回されてなる筒状の巻回部2a,2bを備える。横並びされる一対の巻回部2a,2bを備えるコイル2として、以下の形態が挙げられる。
(i)独立した2本の巻線2w,2wによってそれぞれ形成される巻回部2a,2bと、以下の接続部とを備える形態(本例、図1)。接続部は、巻回部2a,2bから引き出される巻線2w,2wの両端部のうち、一方の端部同士を接続する。
(ii)1本の連続する巻線から形成される巻回部2a,2bと、巻回部2a,2bを連結する連結部とを備える形態。連結部は、巻回部2a,2b間に渡される巻線の一部からなる。
いずれの形態も、各巻回部2a,2bから引き出される巻線の端部((i)では接続部に用いられていない他方の端部)は、電源等の外部装置が接続される箇所として利用される。形態(i)の接続部は、巻線2w,2wの端部同士が直接的に接続される形態と、間接的に接続される形態とが挙げられる。直接的な接続には、溶接や圧着等が利用できる。間接的な接続には、巻線2wの端部に取り付けられる適宜な金具等を利用できる。
【0041】
巻線2wは、導体線と、導体線の外周を覆う絶縁被覆とを備える被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅等が挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミド等の樹脂が挙げられる。本例の巻回部2a,2bは、被覆平角線からなる巻線2w,2wがエッジワイズ巻して形成された四角筒状のエッジワイズコイルである。また、本例の巻回部2a,2bの形状・巻回方向・ターン数等の仕様は同一である。エッジワイズコイルは、占積率を高め易く、小型なコイル2にできる。また、四角筒状であることで巻回部2a,2bの外周面は、四つの長方形状の平面を含むことができる。この四つの平面のうち、一面を例えば設置面とすれば、巻回部2a,2bの設置面から設置対象100までの距離を均一的にできる(図2A)。又は、上記一面を例えば冷却機構に近接して配置する場合、この一面から冷却機構までの距離を均一的にできる。そのため、巻回部2a,2bは、設置対象100や冷却機構に効率よく放熱でき、放熱性に優れる。
【0042】
なお、巻線2wや巻回部2a,2bの形状、大きさ等は適宜変更できる。例えば、巻線を被覆丸線としてもよい。又は、例えば、巻回部2a,2bの形状を円筒状やレーストラック状の筒状等の角部を有しない筒状としてもよい。各巻回部2a,2bの仕様を異ならせてもよい。
【0043】
実施形態1のリアクトル1では、巻回部2a,2bの外周面の全体が樹脂モールド部6に覆われず露出される。巻回部2a,2b内には樹脂モールド部6の一部である内側樹脂部61が存在する。巻回部2a,2bの内周面の少なくとも一部は樹脂モールド部6に覆われる。
【0044】
〈磁性コア〉
本例の磁性コア3は、二つの柱状の内側コア部31a,31bと、二つの柱状の外側コア部32,32とを備える。更に、本例の磁性コア3は、内側コア部31a,31bの端面31e,31e(図3)と外側コア部32の連結面32e(図3)との間にギャップ材(図示せず)を備える。このギャップ材は、樹脂モールド部6の構成樹脂からなる。
【0045】
《コア片》
本例の内側コア部31a,31bはいずれも、図3に示すように一つの柱状のコア片からなる。各コア片は、同一形状、同一の大きさである。また、各コア片は、端面31eが正方形状である直方体状である。各コア片の外周形状は、巻回部2a,2bの内周形状に概ね相似である。各コア片の角部は、C面取りされている。そのため、各コア片は角部が欠け難く、強度に優れる。各コア片の角部がR面取りされた形態としてもよい(後述の図4A参照)。
【0046】
本例の外側コア部32,32はいずれも、一つの柱状のコア片からなる。各コア片は、同一形状、同一の大きさである。各コア片は、直方体の二つの角部をR面取りしたような柱状体である。各コア片における設置対象100側の面及びその対向面(図3では上面及び下面)がドーム状である。各コア片における内側コア部31a,31bが接続される連結面32eが長方形状の平坦な平面である。また、各コア片は、内側コア部31a,31bが連結された状態において、各コア片の下面が内側コア部31a,31bの下面よりも突出する大きさを有する。この突出によって外側コア部32の磁路を増大できる。その結果、リアクトル1における巻回部2a,2bの軸方向に沿った大きさを小さくし易い(短くし易い)。この点から、小型なリアクトル1とすることができる。
【0047】
内側コア部31a,31b,外側コア部32の形状、大きさ等は適宜変更できる(後述の変形例4,5参照)。
【0048】
本例では、図2Bに示すように、巻回部2a,2bの軸P,P対して、内側コア部31a,31bの軸Q,Qがずれている。本例のように巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとが概ね相似形状であっても、軸Pに対する軸Qのずれ量を設定すれば、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔を巻回部2a,2bの周方向に異ならせることができる。上記間隔が所望の範囲となるように、上記ずれ量を調整するとよい。上記間隔の詳細は後述する。
【0049】
《構成材料》
上述のコア片は、軟磁性材料を主体とする成形体等が挙げられる。軟磁性材料は、鉄や鉄合金(例、Fe-Si合金、Fe-Ni合金等)といった金属、フェライト等の非金属等が挙げられる。上記成形体は、圧粉成形体、複合材料の成形体、軟磁性材料からなる板の積層体、焼結体等が挙げられる。圧粉成形体は、軟磁性材料からなる粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末等が圧縮成形されたものである。複合材料の成形体は、軟磁性粉末と樹脂とを含む流動性の混合体を固化させたものである。積層体は、電磁鋼板等の板材が積層されたものである。焼結体は、フェライトコア等が挙げられる。内側コア部31a,31bの構成材料と外側コア部32の構成材料とが等しい形態、又は異なる形態のいずれも利用できる。
【0050】
磁性コア3は、本例のようにギャップ材を備えてもよい。ギャップ材は、板材等の中実体、エアギャップのいずれも利用できる。中実体の構成材料は、本例のように樹脂モールド部6の構成樹脂の他、アルミナ等の非磁性材料、磁性材料を含む成形体であって上述のコア片よりも比透磁率が低いもの等が挙げられる。なお、ギャップ材を省略してもよい。
【0051】
〈巻回部と内側コア部との間隔〉
以下、主に図2Bを参照して、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔について説明する。
本例では、コイル2の一方の巻回部2aと磁性コア3の一方の内側コア部31aとの間隔に関する事項は、他方の巻回部2bと他方の内側コア部31bとの間隔に関しても実質的に同じである。そのため、以下、巻回部2a及び内側コア部31aを例にして説明する。なお、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔及び後述の介在物と、巻回部2bと内側コア部31bとの間隔及び後述の介在物とを異ならせることもできる。
【0052】
ここでの巻回部2aと内側コア部31aとの間隔とは、横断面において、巻回部2aの内周面と内側コア部31aの外周面との距離とする。
【0053】
本例では、上述のように巻回部2aの内周形状と内側コア部31aの外周形状とが概ね相似である。但し、図2Bに示すように、巻回部2aの軸Pに対して内側コア部31aの軸Qが同軸ではなくずれている。詳しくは、本例の内側コア部31aは、軸Pと軸Qとが同軸に配置された状態から、内側コア部31aの軸Qが設置対象100側(下側)にずれて配置されている。いわば、内側コア部31aは、設置対象100側に偏心して配置された状態である。そのため、リアクトル1では、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔が相対的に広い箇所と上記間隔が相対的に狭い箇所とが存在する。本例では、設置対象100側(下側)の間隔が相対的に狭く、設置対象100とは反対側(上側)の間隔が相対的に広い。設置対象100側の間隔は、設置対象100とは反対側の間隔よりも小さい。
【0054】
上述の配置状態において、巻回部2aの内周面のうち設置対象100とは反対側(上側)の角部と、内側コア部31aの上側の角部との間隔をgueとする。巻回部2aの内周面のうち上面と内側コア部31aの上面との間隔をgとする。巻回部2aの内周面のうち下面と内側コア部31aの下面との間隔をgとする。巻回部2aの内周面のうち下側の角部と内側コア部31aの下側の角部との間隔をgdeとする。巻回部2aの内周面のうち左面と内側コア部31aの左面との間隔、即ち内側の間隔をgとする。巻回部2aの内周面のうち右面と内側コア部31aの右面との間隔、即ち外側の間隔をgとする。
間隔gueが最大である。
間隔gが最小である。
また、昇順で、間隔g,g、間隔gde、間隔gである。つまり、リアクトル1は、間隔g<間隔g,g<間隔gde<間隔g<間隔gueを満たす。
【0055】
定量的には、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔の最大値である間隔gueを基準として、リアクトル1は、以下を満たす。
間隔gが間隔gueの80%以上100%未満である。
間隔gdeが間隔gueの70%以下である。
間隔g,gが間隔gueの60%以下である。間隔gと間隔gとは等しい。
上述の間隔の最小値である間隔gが間隔gueの40%以下である。
【0056】
ここでは、巻回部2aと内側コア部31aとの間の領域において、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔の最大値(本例では間隔gue)の70%以下の領域を上記間隔が相対的に狭い箇所と呼ぶ。上記間隔の最大値の70%超の領域を上記間隔が相対的に広い箇所と呼ぶ。図2Bでは、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間の領域において、上記間隔が相対的に狭い箇所に二点鎖線でクロスハッチングを付し、上記間隔が相対的に狭い箇所を仮想的に示す。また、上記間隔が相対的に広い箇所に二点鎖線でハッチングを付し、上記間隔が相対的に広い箇所を仮想的に示す。本例では、上記間隔が相対的に狭い箇所は、間隔g,g,g,gdeを有するU字状の領域である(クロスハッチング参照)。
【0057】
上述の間隔が相対的に狭い箇所は、内側コア部31aから巻回部2aまでの距離を短くすることに寄与する。本例では、内側コア部31aの設置対象100側の面(下面)から、巻回部2aの外周面のうち、設置対象100側の面(下面)までの距離を、巻回部2aと内側コア部31aとが同軸に配置された場合に比較して短くできる。そのため、内側コア部31aから巻回部2aを経て設置対象100に効率よく放熱できる。又は、本例では、内側コア部31aの右面から巻回部2aの外周面のうち右面までの距離を内側コア部31aの上面から巻回部2aの上面までの距離よりも短くできる。そのため、例えば巻回部2aの外周面のうち、右面に冷却機構を近接すれば、内側コア部31aの右面から巻回部2aを経て冷却機構に効率よく放熱できる。このように内側コア部31aから巻回部2aの放熱箇所(ここでは下面や右面)までの距離を短くできる。
【0058】
上述の相対的に狭い箇所の大きさ(間隔)が小さいほど、上述の内側コア部31aから巻回部2aの放熱箇所までの距離を短くできる。この点で、放熱性に優れるリアクトル1とし易い。また、上記相対的に狭い箇所の間隔が小さいほど、相対的に広い箇所の間隔を大きく確保し易い。この点で、樹脂モールド部6を製造し易く、リアクトル1の製造性に優れる(詳細は後述する)。放熱性の向上、製造性の向上等を望む場合には、上記相対的に狭い箇所の間隔は、上述の間隔の最大値の65%以下、更に60%以下、55%以下、50%以下であることが好ましい。
【0059】
巻回部2aと内側コア部31aとの間隔のうち、最も狭い箇所の間隔t1(ここでは間隔g)は、最も広い箇所の間隔t2(ここでは間隔gue)の50%以下であることが好ましい。上述の内側コア部31aから巻回部2aの放熱箇所までの距離がより短く、放熱性により優れるからである。また、最も広い箇所の間隔t2をより広く確保し易い。そのため、樹脂モールド部6を製造し易く、リアクトル1の製造性により優れるからである。放熱性の向上、製造性の向上等を望む場合には、最も狭い箇所の間隔t1は、上記間隔の最大値の45%以下、更に40%以下、35%以下であることが好ましい。
【0060】
放熱性の向上、製造性の向上の観点からは、最も狭い箇所の間隔t1は実質的にゼロでも構わない。但し、この場合には、巻回部2aと内側コア部31aとの電気絶縁性の確保の観点から、巻線2wが絶縁被覆を備える等してコイル2側で電気的絶縁が確保されていることが好ましい。また、この場合には、リアクトル1の使用中に振動等でコイル2等を傷付ける恐れが無いことが好ましい。
【0061】
巻回部2aと内側コア部31aとの電気絶縁性の向上等を望む場合には、最も狭い箇所の間隔t1は、上記間隔の最大値の5%以上、更に10%以上であることが挙げられる。
【0062】
本例では、上記間隔が最も狭い箇所は、平板状の箇所である。この平板状の箇所の間隔gは、上記間隔の最大値の5%以上50%以下である。
【0063】
巻回部2aと内側コア部31aとの間の領域における上述の間隔が相対的に狭い箇所が占める割合が多いほど、放熱性に優れる。上述の内側コア部31aから巻回部2aの放熱箇所までの距離が短い領域が多くなるからである。上述の占有割合が多い形態の一例として、例えば、横断面において、巻回部2aの内周長に対して上記間隔が相対的に狭い箇所の長さの割合(以下、長さ割合と呼ぶ)が10%以上であることが挙げられる。上記間隔が相対的に狭い箇所の長さとは、巻回部2aの周方向に沿った長さである。上記長さ割合が大きいほど、上述の放熱箇所までの距離が短い領域が多い。この点から、放熱性を高め易い。放熱性の向上を望む場合には、上記長さ割合が15%以上であることが好ましい。本例では、上記長さ割合が50%以上、更に65%以上である。そのため、本例のリアクトル1は、上記間隔が相対的に狭い箇所を多く含むといえる。一方、上記長さ割合が例えば90%以下であれば、上記間隔が相対的に広い箇所が確実に存在する。ひいては、厚肉部612が確実に存在する。厚肉部612の存在割合の増大等を望む場合には、上記長さ割合を85%以下、更に80%以下としてもよい。その他、本例では、巻回部2aの内周長に対して上記間隔が最も狭い箇所の長さの割合が15%以上である。
【0064】
上述の占有割合が多い形態の別例として、本例のように上記間隔が相対的に狭い箇所が以下の平板状の箇所を含むことが挙げられる。詳しくは、巻回部2aが四角筒状である。内側コア部31aが四角柱状である。平板状の箇所は、巻回部2aの内周面の一面(ここでは設置対象100側の面(下面))と内側コア部31aの外周面の一面(下面)とに挟まれる箇所である。上記平板状の箇所は、巻回部2aの下面と同等程度の平面積を有する。そのため、この形態は、上述の内側コア部31aから巻回部2aの放熱箇所までの距離が短い領域が非常に多いといえる。この点から、放熱性を高め易い。また、本例では、平板状の箇所の間隔gは上記間隔の最大値の40%以下であり、上記間隔の最大値の半分以下である。この点からも放熱性を高め易い。
【0065】
〈介在部材〉
本例のリアクトル1は、コイル2の巻回部2a,2bと磁性コア3との間に介在される介在部材5を備える。本例の介在部材5は、代表的には電気絶縁材料からなり、コイル2と磁性コア3との間の電気絶縁性を高めることに寄与する。また、介在部材5は、巻回部2a,2bに対して磁性コア3を位置決めすることにも寄与する。更に、本例の介在部材5は、リアクトル1の製造過程で、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間、内側コア部31a,31bと外側コア部32との間等に所定の隙間を形成することにも寄与する。この隙間は、流動性樹脂の流路に利用する。上記隙間に充填された流動性樹脂は、固化されて樹脂モールド部6をなす。
【0066】
詳しくは、本例の介在部材5は、図3に示すように枠状の板材であり、巻回部2a,2bの端面と外側コア部32の連結面32eとの間に配置される(図1も参照)。板材には、二つの貫通孔5h,5hが巻回部2a,2bの軸方向に直交する方向に横並びに設けられている。この板材における巻回部2a,2b側には複数の支持片51が設けられている。支持片51は、内側コア部31a,31bを位置決めする。上記板材における外側コア部32側には、複数の支持片52と凹部54とを備える。支持片52は、外側コア部32の位置ずれを防止する。凹部54には、外側コア部32が嵌められる。図1では支持片51,52を省略している。
【0067】
本例の貫通孔5hは、その軸方向にみて+形状の孔である。詳しくは、正方形状の孔の四隅がそれぞれ平板状の端面支持部53に覆われて+形状をなす。内側コア部31a,31bと介在部材5とを組み付けた状態では、内側コア部31a,31bの端面31e,31eのうち、四つの角部はそれぞれ端面支持部53に覆われる。端面31e,31eのうち、上記四つの角部以外の箇所は貫通孔5hから露出される。内側コア部31a,31bの外周面と貫通孔5hの開口縁との間には所定の隙間が形成される。この隙間は、上述の流動性樹脂の流路に利用される。また、上述の組付状態では、端面支持部53は、内側コア部31a,31bの端面31e,31eと外側コア部32の連結面32eとの間に介在する。この介在によって、端面31eと連結面32eとの間には、端面支持部53の厚さに応じた隙間が形成される。この隙間を樹脂モールド部6の構成樹脂からなるギャップの形成箇所とする。端面支持部53の厚さはギャップ長に応じて調整する。
【0068】
介在部材5は、複数の支持片51(合計八つの支持片51)を備える。各支持片51は、各貫通孔5h,5hの開口縁近傍の角部からそれぞれ、巻回部2a,2b側に向かって突出する。一つの開口縁近傍の角部から四つの支持片51が突出する。各支持片51は、巻回部2a,2bの軸方向に沿って延びる棒状の部材である。各支持片51の内周面は、内側コア部31a,31bの外周面の角部に対応した形状である。コイル2と磁性コア3と介在部材5とを組み付けた状態では、上述の四つの支持片51は、一つの内側コア部31a(又は31b)の外周面のうち、端面31e近傍の角部を支持する。この支持によって、各巻回部2a,2bに対して内側コア部31a,31bが所定の位置に位置決めされる。かつ、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔を所定の大きさに規定する。
【0069】
本例では、上述の四つの支持片51の厚さが異なる。詳しくは、設置対象100側(下側)に配置される支持片51,51の厚さが、設置対象100とは反対側(上側)に配置される支持片51,51の厚さよりも薄い(図3の右側の介在部材5参照)。このような支持片51に内側コア部31a,31bが支持されることで、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔は、上述の所定の大きさに適切に維持される(図2Aも参照)。
【0070】
その他、本例では、介在部材5において巻回部2a,2b側の領域には、巻回部2a,2bの端面近傍及び巻線2w,2wの一部が嵌められる溝部が設けられている(図3の右側の介在部材5参照)。上記巻線2w,2wの一部とは、巻回部2a,2bから引き出された巻線2w,2wの引出部分である。巻回部2a,2bの端面近傍及び引出部分を溝部に嵌めることで、介在部材5に対して巻回部2a,2bを精度よく位置決めできる。この介在部材5を介して、巻回部2a,2bに対する内側コア部31a,31bの位置も精度よく決められる。そのため、リアクトル1は、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔を精度よく維持できる。
【0071】
介在部材5において外側コア部32側に配置される二つの支持片52,52は、外側コア部32の上下の位置ずれを防止する。各支持片52,52は、平板状の舌片である。両支持片52,52は外側コア部32の上面及び下面を挟むように配置される。介在部材5において外側コア部32側に設けられる凹部54には、外側コア部32の連結面32e及びその近傍が収納される。凹部54に外側コア部32が収納された状態において、外側コア部32の外周面と凹部54の内壁との間に所定の隙間が設けられるように凹部54の形状、大きさが調整されている。この隙間は、上述のギャップを形成する隙間、及び内側コア部31a,31bと貫通孔5h,5hの開口縁との隙間に連通した空間である。これらの隙間は、上述の流動性樹脂の流路に利用される。凹部54の底面には、上述の貫通孔5h,5hが開口する。また、凹部54の底面には、外側コア部32の連結面32eが当接される。
【0072】
図3に示す介在部材5は例示であり、介在部材5の形状、大きさ等は適宜変更できる。
【0073】
《構成材料》
介在部材5の構成材料は、電気絶縁材料が挙げられる。電気絶縁材料の一例として、各種の樹脂等が挙げられる。樹脂の一例として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の具体例として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6、ナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。介在部材5は、射出成形等の公知の成形方法によって製造できる。
【0074】
〈樹脂モールド部〉
樹脂モールド部6は、内側コア部31a,31bの少なくとも一部を覆う内側樹脂部61,61と、外側コア部32,32の少なくとも一部とを覆う外側樹脂部62,62とを備えることで、例えば以下の効果を奏する。
(A)コア片の機械的保護。
(B)外部環境からの保護(耐食性の向上)。
(C)コア片とコイル2や周囲部品との間の絶縁性の向上。
本例の内側樹脂部61,61は、内側コア部31a,31bの外周面のうち、端面31eの一部及び介在部材5で支持される箇所を除く領域を主として覆う。本例の外側樹脂部62,62は、各外側コア部32,32の外周面のうち連結面32eを除く領域を主として覆う。本例のリアクトル1は、樹脂モールド部6によって磁性コア3の外周面の広い範囲が覆われるため、上記効果をより得易い。
【0075】
また、本例の樹脂モールド部6は、内側樹脂部61,61と外側樹脂部62,62とが連続して形成された一体物である。かつ、本例の樹脂モールド部6は、磁性コア3と介在部材5との組物を一体に保持する。そのため、樹脂モールド部6は、上記組物の一体物としての強度の向上にも寄与する。更に、本例の樹脂モールド部6の一部は、上述のように磁気ギャップとしても機能する。
【0076】
特に、実施形態1のリアクトル1では、内側樹脂部61の厚さが周方向に異なっており、薄肉部610と厚肉部612とを備える(図2A)。厚肉部612は、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔のうち、間隔が最も広い箇所を含み、上記間隔が相対的に広い箇所に充填されて、内側樹脂部61の一部をなす。薄肉部610は、上記間隔が相対的に狭い箇所の少なくとも一部に充填され、内側樹脂部61の他部をなす。
【0077】
《内側樹脂部》
本例の内側樹脂部61は、巻回部2a(又は2b)の内周面と内側コア部31a(又は31b)の外周面との間に設けられる筒状の空間の少なくとも一部に存在する。即ち、内側樹脂部61,61は、各巻回部2a,2b内に存在する。内側樹脂部61は、上記筒状の空間に樹脂モールド部6の原料となる流動性樹脂が充填されて形成される。本例では、上記筒状の空間の一部に電気絶縁材7が存在する。そのため、内側樹脂部61は、横断面形状がC字状である(図2A)。内側樹脂部61の厚さは、筒状の空間の大きさに対応している。即ち巻回部2a(又は2b)と内側コア部31a(又は31b)との間隔に対応して、巻回部2a(又は2b)の周方向に沿って一様な厚さではない。内側樹脂部61の厚さは、図2Aに示すように設置対象100側(下側)が薄く、設置対象100とは反対側(上側)が厚い。厚さの詳細は後述する。
【0078】
《外側樹脂部》
本例の外側樹脂部62は、外側コア部32の外周面のうち、連結面32e及びその近傍を除いて実質的に全体を外側コア部32(コア片)に沿って覆う。即ち、外側樹脂部62,62は、巻回部2a,2bに覆われず露出されている。また、本例の外側樹脂部62は、概ね一様な厚さを有する。外側樹脂部62における外側コア部32の被覆領域、厚さ等は適宜選択できる。
【0079】
《構成材料》
樹脂モールド部6の構成材料は、各種の樹脂が挙げられる。樹脂の一例として、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の具体例として、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10T、ナイロン9T、ナイロン6T等のPA樹脂、PBT樹脂等が挙げられる。上記構成材料を、上記樹脂に熱伝導性に優れるフィラー(例、アルミナやシリカからなるもの等)を含有する複合樹脂としてもよい。フィラーを含むことで、放熱性に優れる樹脂モールド部6とすることができる。樹脂モールド部6の構成材料と介在部材5の構成材料とが同じ樹脂を含んでもよい。同じ樹脂を含むことで、樹脂モールド部6と介在部材5との両者の接合性に優れる。また、同じ樹脂を含むことで、上記両者の熱膨張係数が近い又は実質的に等しい。そのため、熱応力による剥離や樹脂モールド部6の割れ等を抑制できる。樹脂モールド部6の成形には、射出成形等が利用できる。
【0080】
〈巻回部と内側コア部との間の介在物〉
本例では、コイル2の一方の巻回部2aと磁性コア3の一方の内側コア部31aとの間の介在物に関する事項は、他方の巻回部2bと他方の内側コア部31bとの介在物に関しても実質的に同じである。そのため、以下、巻回部2a及び内側コア部31aを例にして説明する。
【0081】
本例では、巻回部2aと内側コア部31aとの間に内側樹脂部61と電気絶縁材7とを備える。詳しくは、上述の間隔が相対的に広い箇所の全域に亘って、内側樹脂部61の一部である厚肉部612を備える。上述の間隔が相対的に狭い箇所の一部に内側樹脂部61の残部である薄肉部610を備え、他部に電気絶縁材7を備える。特に、上記間隔が相対的に狭い箇所のうち、上述の最も狭い平板状の箇所に平板状の電気絶縁材7を備える。本例の電気絶縁材7は、樹脂モールド部6とは独立した成形体である。
【0082】
《内側樹脂部》
本例の内側樹脂部61は、一様な樹脂から構成される。そのため、内側樹脂部61の熱特性は一様であり、薄肉部610及び厚肉部612は、熱伝導率λ2を有する。本例の薄肉部610は、上述の間隔g,g,gdeを有する領域に存在する。そのため、薄肉部610は、間隔g,g,gdeに応じた厚さを有する。本例の厚肉部612は、巻回部2aと内側コア部31aとの間の領域のうち、上述の間隔が相対的に狭い箇所を除く領域(図2Bではクロスハッチングが付されておらずハッチングのみの領域)、即ち上述の間隔gue,gを有する領域に存在する。そのため、厚肉部612は、間隔gue,gに応じた厚さを有する。厚肉部612における最も厚い箇所は間隔gue(=間隔t2)に応じた厚さを有する。
【0083】
《電気絶縁材》
電気絶縁材7は、各種の電気絶縁材料からなるものである。電気絶縁材7が巻回部2aと内側コア部31aとの間に介在されることで、両者の電気絶縁性を高められる。
【0084】
<構成材料>
≪λ1=λ2≫
電気絶縁材7の一例として、内側樹脂部61の構成樹脂と同じ樹脂を含む成形体を備えることが挙げられる。この電気絶縁材7の熱伝導率λ1は、厚肉部612の熱伝導率λ2と実質的に同じである(λ1=λ2)。一方、電気絶縁材7が配置される箇所の間隔t1(ここでは間隔g)は、厚肉部612が配置される箇所の間隔t2(ここでは間隔gue)よりも小さい(t1<t2)。従って、この形態は、(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たし、放熱性に優れる。特に、間隔t1が小さいほど、放熱性により優れる。
【0085】
また、電気絶縁材7が上記樹脂を含む成形体である場合、内側樹脂部61と電気絶縁材7との双方によって、巻回部2aと内側コア部31aとの間の電気絶縁性を高められる。更に、この場合、内側樹脂部61と電気絶縁材7との組物の機械的強度を高められる。内側樹脂部61の熱膨張係数と電気絶縁材7の熱膨張係数とが実質的に等しく、熱膨張係数の相違に伴う内側樹脂部61の変形や割れ等が生じ難いからである。内側樹脂部61の構成材料が上述のフィラーを含む複合樹脂である場合、電気絶縁材7は、少なくとも樹脂成分が共通すれば、内側樹脂部61との熱膨張係数の差を小さくし易い。電気絶縁材7がフィラーを含む複合樹脂であり、このフィラーが電気絶縁性にも優れるものであれば、電気絶縁性により優れる。
【0086】
≪λ1>λ2≫
電気絶縁材7の別例として、内側樹脂部61の構成材料よりも熱伝導率が高い構成材料からなるものが挙げられる。この電気絶縁材7の熱伝導率λ1は内側樹脂部61(厚肉部612)の熱伝導率λ2よりも高い(λ1>λ2)。かつ、上述のように間隔t1が間隔t2よりも小さい。従って、この形態は、(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす。特に、上述の間隔が相対的に狭い箇所のうち、最も狭い箇所に電気絶縁材7が配置される。そのため、内側コア部31aから電気絶縁材7を経て巻回部2aに熱伝達を効率よく行える。従って、この形態は、放熱性により優れる。特に、熱伝導率λ1が大きいほど、放熱性に優れる。また、間隔t1が小さいほど、放熱性により優れる。
【0087】
高熱伝導性の電気絶縁材7の構成材料として、例えば、上述のフィラーを含む複合樹脂、各種のセラミックス等が挙げられる。セラミックスは、例えば、アルミナや窒化アルミニウム等が挙げられる。電気絶縁材7には、上記複合樹脂や、上記セラミックスからなる板材が利用できる。その他、樹脂製の電気絶縁材7として、シリコーン樹脂等からなる各種の放熱シート等を利用できる。放熱シートの一面やセラミックス板の一面に接着層を備えるものを利用すれば、リアクトル1の製造性に優れる。リアクトル1の製造過程で、内側コア部31aの外周面に電気絶縁材7を貼り付けておくことで、内側コア部31a及び電気絶縁材7を同時に巻回部2aに挿入できるからである。その他、高熱伝導性の電気絶縁材7として、金属からなる基材の表面に絶縁膜を備えるもの等が挙げられる。上記金属は、アルミニウムやその合金等が挙げられる。上記絶縁膜の構成材料は、各種の樹脂や、アルミナ等のセラミックス等が挙げられる。
【0088】
≪λ1<λ2≫
電気絶縁材7の更に別例として、内側樹脂部61(厚肉部612)の熱伝導率λ2未満のものを利用できる(λ1<λ2)。電気絶縁材7は、上述の間隔が最も狭い箇所に配置される。そのため、電気絶縁材7が内側樹脂部61の熱伝導率λ2と同等以上の熱伝導率を有していなくても、(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たせば、内側コア部31aから巻回部2aまでの距離が短いことで、巻回部2aに放熱できるからである。この形態では、特に、間隔t1が小さいほど、放熱性に優れる。また、熱伝導率λ1はλ1<λ2を満たす範囲で大きいほど好ましい。間隔t1の大きさにもよるが、熱伝導率λ2は熱伝導率λ1の2.5倍以下、更に2倍未満であれば、(間隔t1/熱伝導率λ1)が(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも小さくなり易い。
【0089】
λ1<λ2である電気絶縁材7の一例として、絶縁紙、絶縁フィルム等が挙げられる。絶縁紙や絶縁フィルムは、厚さが10μm以上200μm以下、更に180μm以下、150μm以下、更には100μm以下といった非常に薄いものが市販されている。電気絶縁材7がこのように薄ければ、電気絶縁材7の厚さに応じて、間隔t1も小さくできる。そのため、(間隔t1/熱伝導率λ1)を(間隔t2/熱伝導率λ2)よりも非常に小さくできて、放熱性を高められる。
【0090】
絶縁紙は、例えば、セルロース繊維、アラミド繊維等を含むものが挙げられる。絶縁フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の樹脂からなるものが挙げられる。市販の絶縁紙、市販の絶縁フィルムを利用できる。電気絶縁材7の配置箇所の大きさに応じて、絶縁紙や絶縁フィルムを切断して利用するとよい。接着層を備える絶縁フィルム等を利用すれば、上述のようにリアクトル1の製造性にも優れる。
【0091】
<形状>
本例の電気絶縁材7は、平板材である。この平板材は、間隔gと同等程度の厚さを有する。また、この平板材は、内側コア部31aにおける設置対象100側の面(下面)のうち介在部材5に覆われない箇所と同等程度の平面積を有する。この平板状の電気絶縁材7は、巻回部2aの内周面のうち設置対象100側の面(下面)と内側コア部31aの下面との間を概ね埋めるように存在する。その他、上記平板材に代えて、例えば棒材等としてもよい。
【0092】
<個数>
本例では、一つの巻回部2aに対して一つの電気絶縁材7を備える。電気絶縁材7の個数が少ないことで、リアクトル1の製造性に優れる。リアクトル1の製造過程で組立時間を短くし易いからである。本例の電気絶縁材7は平板材であり、平板状の箇所に配置し易いことからも、製造性に優れる。一つの巻回部2aに対して、複数の電気絶縁材7を備えてもよい。例えば、上述の電気絶縁材7を棒材とする場合、巻回部2aの周方向に離間して、複数の棒材を備えてもよい。
【0093】
<占有割合>
一つの巻回部2aにおける上述の間隔が相対的に狭い箇所に対する電気絶縁材7が占める割合、いわば最も狭い箇所に電気絶縁材7が占める割合は、適宜選択できる。例えば、上記占有割合は、横断面における面積割合で、5%以上95%以下であることが挙げられる。上記占有割合は、上記間隔が相対的に狭い箇所の横断面積を100%とする。図2Bの例示では、クロスハッチングを付したU字状の箇所を100%とする。また、上記占有割合は、複数の電気絶縁材7を備える場合には合計面積の割合とする。本例の上記占有割合は、横断面における面積割合で5%以上30%以下である。このようなリアクトル1は、上記間隔が相対的に狭い箇所に薄肉部610がある程度多く存在するといえる。薄肉部610、ひいては内側樹脂部61がある程度多いことで、樹脂モールド部6によって磁性コア3の強度を高め易い。本例のように複数のコア片を樹脂モールド部6によって一体化する場合に一体物としての強度を高め易いからである。一方、上述の電気絶縁材7の占有割合を上述の範囲(5%~95%)でより多くして、薄肉部610の割合を少なくしてもよい。この場合、樹脂モールド部6の製造性に優れる。流動性樹脂の充填箇所に比較的狭い箇所が少なく、流動性樹脂を充填し易いからである。
【0094】
電気絶縁材7の形状、大きさ、上記間隔が相対的に狭い箇所における電気絶縁材7の配置位置・個数、上記間隔が相対的に狭い箇所に対する電気絶縁材7の占有割合等は適宜選択できる。
【0095】
<その他>
本例のリアクトル1は、上記間隔が相対的に狭い箇所のうち、最も狭い箇所に実質的に電気絶縁材7のみが存在する。このようなリアクトル1は、樹脂モールド部6を製造し易く、製造性に優れる。リアクトル1の製造過程では、上記最も狭い箇所に電気絶縁材7を配置した状態で樹脂モールド部6を形成すれば、上記最も狭い箇所以外の箇所を流動性樹脂の流路にできる。そのため、上記流路を比較的広くし易い。従って、流動性樹脂を充填し易い。
【0096】
なお、上記最も狭い箇所に電気絶縁材7と樹脂モールド部6の一部とを含むこともできる。但し、製造性の点から、上記最も狭い箇所は電気絶縁材7のみとすることが好ましい。
【0097】
〈リアクトルの製造方法〉
実施形態1のリアクトル1は、例えば、以下のようにして製造することが挙げられる。コイル2と磁性コア3と電気絶縁材7とを備える組合体10を作製する(図3)。樹脂モールド部6の成形金型(図示せず)に組合体10を収納する。コイル2の巻回部2a,2bの外周面を露出させつつ、磁性コア3を流動性樹脂で覆う。
【0098】
本例の組合体10は、介在部材5を備える。介在部材5を利用することで、組合体10を容易に構築できる。詳しくは、介在部材5の溝部に巻回部2a,2bを配置する。端面支持部53に当接するまで内側コア部31a,31bを組み付ける。凹部54に外側コア部32を収納する。このように介在部材5に対して、コイル2及び磁性コア3を容易に位置決めできる。また、本例では、内側コア部31a,31bと、電気絶縁材7,7とを順に巻回部2a,2b内に挿入する。又は、内側コア部31a,31bに予め電気絶縁材7,7を接合しておき、巻回部2a,2b内に同時に挿入する。こうすることで、巻回部2a,2b内に内側コア部31a,31bと電気絶縁材7,7とが存在する組合体10を構築できる。
【0099】
成形金型に収納された組合体10に対して、例えば、一方の外側コア部32の外端面から他方の外側コア部32の外端面に向かう一方向に流動性樹脂を導入することが挙げられる。又は、両外側コア部32,32の外端面からそれぞれ巻回部2a,2b側に向かって二方向に流動性樹脂を導入することが挙げられる。いずれにしても、流動性樹脂は、外側コア部32の外端面から、以下の隙間を順に流れて各隙間に充填される。まず、外側コア部32の外周面と介在部材5の凹部54の内壁との隙間を流れる。次に、端面支持部53の介在による隙間を経て、コイル2の巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bの外周面との隙間を流れる。流動性樹脂の充填後、流動性樹脂を固化することで樹脂モールド部6を形成できる。
【0100】
(用途)
実施形態1のリアクトル1は、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品、例えば種々のコンバータや電力変換装置の構成部品等に利用できる。コンバータの一例として、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の車両に搭載される車載用コンバータ(代表的にはDC-DCコンバータ)や、空調機のコンバータ等が挙げられる。
【0101】
(効果)
実施形態1のリアクトル1は、以下の理由により、放熱性に優れる。
(a)コイル2の巻回部2a,2bの外周面が樹脂モールド部6に実質的に覆われずに露出されている。そのため、巻回部2a,2bは、液体冷媒やファンからの風等といった流体冷媒に直接接触できたり、設置対象100や冷却機構に近接できたりして、放熱効率に優れる。
【0102】
(b)コイル2の巻回部2a,2bと磁性コア3の内側コア部31a,31bとの間に相対的に狭い箇所がある。この相対的に狭い箇所のうち、最も狭い箇所が巻回部2a,2bにおける設置対象100側の面に対応する位置に設けられる。そのため、内側コア部31a,31bから巻回部2a,2bの放熱箇所までの距離が短い。その結果、内側コア部31a,31bから巻回部2a,2bに効率よく放熱でき、更に設置対象100に放熱できる。
【0103】
上記相対的に狭い箇所の他部が巻回部2a,2bにおける両者が離れる側の面(図2Aの巻回部2aでは右面、巻回部2bでは左面)に対応する位置に設けられる。そのため、例えば巻回部2a,2bの側方に冷却機構が近接されれば、巻回部2a,2bの放熱箇所までの距離が短い。その結果、内側コア部31a,31bから巻回部2a,2bに効率よく放熱でき、更に冷却機構に放熱できる。
【0104】
(c)(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす。そのため、電気絶縁材7の熱伝導率λ1が厚肉部612の熱伝導率λ2と同等以上である場合は勿論、熱伝導率λ2よりも小さい場合でも放熱性に優れる。
【0105】
本例のリアクトル1は、以下の理由により、放熱性に更に優れる。
(d)上述の相対的に狭い箇所に薄肉部610を備える。そのため、上記相対的に狭い箇所内に空気を含む場合に比較して熱伝導性に優れる。
(e)巻回部2a,2bにおける設置対象100側の面や、両者が離れる側の面が平板状の平面である。そのため、巻回部2a,2bは放熱面積が広く、放熱効率により優れる。
(f)電気絶縁材7の熱伝導率λ1が厚肉部612の熱伝導率λ2よりも大きい場合には、放熱性により優れる。
【0106】
本例のリアクトル1は、更に、以下の効果を奏する。
(1)製造性に優れる。
(1-1)巻回部2a,2bと内側樹脂部61,61との間の空間に、厚肉部612の形成箇所として相対的に広い箇所を含む。そのため、上記空間に樹脂モールド部6の原料である流動性樹脂を充填し易く、樹脂モールド部6を形成し易いからである。
(1-2)電気絶縁材7が樹脂モールド部6とは独立した成形体である。そのため、上記空間のうち、最も狭い箇所に流動性樹脂を充填しなくてよく、流動性樹脂を充填し易い上に、精度よく充填できるからである。
(1-3)厚さが異なる複数の支持片51が設けられた介在部材5を備える。そのため、介在部材5の支持片51の厚さを所定の間隔に応じて調整することで、この間隔の大きさに応じた所定の厚さを有する内側樹脂部61を精度よく、かつ容易に成形できるからである。
(1-4)上述の所定の形状を有する介在部材5を備える。そのため、介在部材5を介して、コイル2と磁性コア3とを容易に位置決めできて、組み付け易いからである。
【0107】
(2)樹脂モールド部6とは独立した成形体である電気絶縁材7を備えることで、機械的強度にも優れる。内側樹脂部61の横断面形状がC字形状であるため、内側樹脂部61はある程度の弾性変形が可能である。その結果、熱応力等による内側樹脂部61の割れの発生等を防止し易いからである。
【0108】
その他、実施形態1のリアクトル1は、樹脂モールド部6によって磁性コア3の機械的保護、外部環境からの保護、コイル2との電気絶縁性の向上等を図ることができる。
【0109】
[実施形態2]
図4A図4Bを参照して、実施形態2のリアクトルを説明する。
図4Bは、図4Aと同じ図であり、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔を説明する説明図である。
【0110】
実施形態2のリアクトルは、図4Aに示すように、基本的な構成は実施形態1のリアクトル1(図2A参照)と同様である。実施形態2のリアクトルでは、各巻回部2a,2bにおける両者が近付く側(内側)の角部に内側コア部31a,31bが偏在される点が実施形態1との相違点の一つである。また、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間隔のうち、最も狭い箇所の間隔t1が実施形態1よりも小さい点が別の相違点の一つである。
以下、上記相違点を中心に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果は詳細な説明を省略する。また、実施形態1と同様に、巻回部2a及び内側コア部31aを例にして説明する。
【0111】
図4Bに示すように、実施形態2のリアクトルでは、巻回部2aの軸Pと内側コア部31aの軸Qとが同軸の状態から、軸Qは、巻回部2a,2bが近付く側(内側)かつ下側にずれている。その結果、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔が巻回部2aの周方向に異なる。巻回部2aと内側コア部31aとの間隔のうち、上側の角部の間隔gueが最大である。内側の間隔gと、内側かつ下側の角部の間隔と、設置対象100側(下側)の間隔gとが最小である(g=g=t1)。上側の間隔gと、巻回部2a,2bが離れる側(外側)の間隔gとが等しく、上記間隔の最大値(=間隔gue=t2)の70%超である。外側かつ下側の角部のうち、上記間隔の最大値の70%である箇所の間隔を間隔gdeとする。上記間隔の最大値の70%以下を満たす箇所を相対的に狭い箇所とすれば、相対的に狭い箇所はL字状に存在する。この相対的に狭い箇所には、電気絶縁材7と内側樹脂部61の一部(薄肉部610)とが存在する(図4A)。また、上記間隔の最大値の70%超を満たす箇所を相対的に広い箇所とすれば、相対的に広い箇所は逆L字状に存在する。この相対的に広い箇所に厚肉部612が存在する(図4A)。
【0112】
本例では、上記間隔の最小値である間隔g,gは、上記間隔の最大値である間隔gueの5%以上25%以下であり、実施形態1よりも小さい。この点で、間隔t1が間隔t2よりも非常に小さくなり易い。この最も狭い箇所には、電気絶縁材7が存在する。本例の電気絶縁材7には、厚さが薄いもの、例えば絶縁紙や絶縁フィルムが好適に利用できる。電気絶縁材7が絶縁紙や絶縁フィルム等であり、熱伝導率λ1が厚肉部612の熱伝導率λ2よりも大きくても、上述のように間隔t1が間隔t2よりも非常に小さい。このことから、(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たす。
【0113】
また、本例では、一つの巻回部2aの内周長に対して上述の間隔が相対的に狭い箇所の長さ割合は、40%以上60%以下であり、実施形態1よりも小さい。従って、本例のリアクトルは、上記間隔が相対的に広い箇所を実施形態1よりも多く含むといえる。また、上述のように上記間隔の最小値が実施形態1よりも小さい。そのため、上記間隔の最大値(=間隔gue=t2)を実施形態1よりも大きく確保し易い。
【0114】
更に、本例では、一つの巻回部2aにおける上記間隔が相対的に狭い箇所に対する電気絶縁材7が占める面積割合は、60%以上80%以下であり、実施形態1よりも大きい。従って、本例のリアクトルは、上記間隔が最も狭い箇所に電気絶縁材7を実施形態1よりも多く含むといえる。
【0115】
実施形態2のリアクトルは、実施形態1と同様の理由により、放熱性に優れる。特に、間隔t1が間隔t2よりも非常に小さくなり易いことから(上述の間隔g,g,gueの大きさ参照)、放熱性に優れる。本例のリアクトルでは、電気絶縁材7が存在する箇所、即ち間隔t1をとる箇所の占有割合が実施形態1よりも大きいことからも(上述の面積割合参照)、放熱性に優れる。また、本例のリアクトルは、上記間隔が相対的に狭い箇所が、実施形態1と同様に平板状の箇所を含むことからも、放熱性に優れる。
【0116】
更に、本例のリアクトルは、上述のように相対的に広い箇所が実施形態1よりも大きい。そのため、製造過程で、流動性樹脂をより充填し易く、内側樹脂部61を含めた樹脂モールド部を製造し易いことで、製造性により優れる。巻回部2a,2b及び内側コア部31a,31bの上側及び外側に相対的に広い箇所が寄せて設けられていることからも、流動性樹脂を充填し易い。
【0117】
更に、本例のリアクトルは、樹脂モールド部に保持されることによる磁性コアの一体物としての剛性に優れて、高強度である。内側コア部31a,31bの上側及び外側に相対的に厚肉部612,612が寄せて設けられているからである。ここで、内側コア部31a,31bの下側は設置対象100に保護される。内側コア部31a,31bにおける隣り合う内側は、巻回部2a,2bが介在することで保護される。これに対し、内側コア部31a,31bの上側及び外側は、外部からの衝撃等を受け易いといえる。本例のリアクトルは、このような内側コア部31a,31bの上側及び外側を厚肉部612,612によって効果的に補強できる。
【0118】
その他、本例のリアクトルは、上記間隔が最も狭い箇所に絶縁紙等を備えることで、空気を含む場合に比較して、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間の電気絶縁性にも優れる。
【0119】
[実施形態3]
図5を参照して、実施形態3のリアクトルを説明する。
実施形態3のリアクトルは、図5に示すように、基本的な構成は実施形態1のリアクトル1(図2A参照)と同様である。即ち、巻回部2aと内側コア部31aとの間隔、及び巻回部2bと内側コア部31bとの間隔が各巻回部2a,2bの周方向に異なっている。巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間には、薄肉部610及び厚肉部612を含む内側樹脂部61が存在する。但し、実施形態3のリアクトルは、実施形態1のリアクトル1に対して、樹脂モールド部6とは独立した電気絶縁材7を備えていない点が異なる。以下、上記相違点を中心に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果は詳細な説明を省略する。
【0120】
実施形態3のリアクトルでは、内側樹脂部61,61は、各巻回部2a,2bの周方向に連続して筒状に成形されている。上記間隔が相対的に狭い箇所の全体に、内側樹脂部61の構成樹脂が充填され、薄肉部610,610が存在する。この薄肉部610の一部が電気絶縁材7をなす。従って、電気絶縁材7の熱伝導率λ1は、厚肉部612の熱伝導率λ2と実質的に同じである(λ1=λ2)。電気絶縁材7が配置される箇所の間隔t1は、厚肉部612が配置される箇所の間隔t2よりも小さい(t1<t2)。そのため、実施形態3のリアクトルは、(間隔t1/熱伝導率λ1)<(間隔t2/熱伝導率λ2)を満たし、放熱性に優れる。
【0121】
実施形態3のリアクトルは、樹脂モールド部6とは独立した電気絶縁材7が不要であり、組立工程数を減らせる点で製造性に優れる。また、巻回部2a,2bと内側コア部31a,31bとの間に熱膨張係数が一様な材料からなる内側樹脂部61,61のみが存在する。そのため、実施形態3のリアクトルは、熱膨張係数差に起因する内側樹脂部61の割れ等が生じ難い点で強度にも優れる。
【0122】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施形態1~3に対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
【0123】
(変形例1)電気絶縁材が空気を含む。
この場合、巻回部と内側コア部との電気絶縁性の確保の観点から、上述のようにコイル側の電気的絶縁が十分に確保されていることが好ましい。
【0124】
(変形例2)一つの巻回部に複数の電気絶縁材(成形体)を備える。
この場合、電気絶縁材の形状、大きさ、構成材料等の仕様を全て等しくすることもできるし、異ならせることもできる。例えば、絶縁紙と、樹脂成形体とを備えてもよい。複数の電気絶縁材を巻回部の周方向に離間して備える場合、隣り合う電気絶縁材の間に内側樹脂部が介在してもよい。上記隣り合う電気絶縁材の間に内側樹脂部が介在せず、空気が存在してもよい。この場合、上述のように最も狭い箇所に流動性樹脂を充填しなくて済み、樹脂モールド部を形成し易い。
【0125】
(変形例3)上述の間隔が最も狭い箇所を設置対象側以外の位置に設ける。
図2Aを用いて説明する。上記間隔が最も狭い箇所を、巻回部2a,2bの内周面のうち設置対象100とは反対側の面(上面)と内側コア部31a,31bの上面との間に設けてもよい。又は、上記間隔が最も狭い箇所を、巻回部2a,2bの内周面のうち両者が離れる側の側面(巻回部2aでは右面、巻回部2bでは左面)と内側コア部31a,31bの側面との間に設けてもよい。この場合、巻回部2a,2bの外周面の上面や上述の側面に冷却機構を近接配置することが挙げられる。
【0126】
(変形例4)内側コア部の外周形状が巻回部の内周形状に非相似である。
この場合、巻回部の内周形状及び内側コア部の外周形状に応じて、巻回部と内側コア部との間隔を変更できる。上記間隔が所望の大きさとなるように、巻回部及び内側コア部の形状、大きさを調整するとよい。例えば、巻回部の内周形状が実施形態1~3で説明した正方形状である場合に、内側コア部の外周形状が円形状、台形状等であることが挙げられる。又は、巻回部の内周形状及び内側コア部の外周形状が長方形状であり、長辺長さ及び短辺長さの少なくとも一方が異なることが挙げられる。
【0127】
(変形例5)内側コア部は、複数のコア片と複数のギャップ材(エアギャップでもよい)との組物である(特許文献1参照)。
複数のコア片と中実のギャップ材との組物は、接着剤で一体化したり、樹脂モールド部6の内側樹脂部61によって一体化したりすることが挙げられる。
【0128】
(変形例6)リアクトルが以下の少なくとも一つを備える(いずれも図示せず)。
(6-1)温度センサ、電流センサ、電圧センサ、磁束センサ等のリアクトルの物理量を測定するセンサ。
【0129】
(6-2)コイル2の巻回部2a,2bの外周面の少なくとも一部に取り付けられる放熱板。
放熱板は、例えば金属板、熱伝導性に優れる非金属無機材料からなる板材等が挙げられれる。巻回部2a,2bの外周面のうち、上述の間隔が相対的に狭い箇所に対応した位置に放熱板を設けると、効率よく放熱できる。図2A図4Aを用いて説明すると、巻回部2a,2bの外周面のうち設置対象100側の面(下面)に放熱板を設けることが挙げられる。図2A図4Aでは、巻回部2a,2bにおける設置対象100側の面は、上述の間隔が最も狭い箇所に対応した位置であり、電気絶縁材7が存在する。その他、巻回部2aの外周面のうち右面、巻回部2bの外周面のうち左面に放熱板を設けてもよい。又は、厚肉部612が存在する箇所に放熱板を設けてもよい。放熱板によって、内側コア部31a,31bから厚肉部612,612を介して巻回部2a,2bへの熱引きを多少なりとも高められると期待される。
【0130】
(6-3)リアクトル1の設置面と設置対象100、又は上記の放熱板との間に介在される接合層。
接合層は、例えば接着剤層が挙げられる。電気絶縁性に優れる接着剤とすると、放熱板が金属板であっても、巻回部2a,2bと放熱板との間の絶縁性を高められて好ましい。
【0131】
(6-4)外側樹脂部62に一体に成形され、リアクトル1を設置対象100に固定するための取付部。
【符号の説明】
【0132】
1 リアクトル
10 組合体
2 コイル
2a,2b 巻回部、2w 巻線
3 磁性コア
31a,31b 内側コア部、32 外側コア部
31e 端面、32e 連結面
5 介在部材
5h 貫通孔、51,52 支持片、53 端面支持部、54 凹部
6 樹脂モールド部
61 内側樹脂部、62 外側樹脂部、610 薄肉部、612 厚肉部
7 電気絶縁材
100 設置対象
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5