(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】用紙搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/038 20060101AFI20220726BHJP
B65H 43/08 20060101ALI20220726BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20220726BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20220726BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20220726BHJP
B65H 7/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B65H43/08
B65H9/00 A
B65H5/06 M
B65H5/06 C
B65H27/00 A
B65H7/10
(21)【出願番号】P 2018194759
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 誠
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-321147(JP,A)
【文献】特開2007-039172(JP,A)
【文献】特開2016-216249(JP,A)
【文献】特開2002-116648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/038
B65H 43/08
B65H 9/00
B65H 5/06
B65H 27/00
B65H 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置を除く位置に設けられた第1の搬送ローラー及び第2の搬送ローラーと、
用紙を搬送するローラーとして、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーを選択するローラー選択部と、
前記ローラー選択部に、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーを選択させる制御部と、
を備え、
前記第1の搬送ローラーは、当該第1の搬送ローラーの回転速度より、当該第1の搬送ローラーにより圧接搬送される用紙の速度が速くなる材質で構成され、
前記第2の搬送ローラーは、当該第2の搬送ローラーの回転速度より、当該第2の搬送ローラーにより圧接搬送される用紙の速度が遅くなる材質で構成されている用紙搬送装置。
【請求項2】
用紙幅方向における用紙の位置を検出する用紙位置検出部を備え、
前記制御部は、前記検出された用紙の位置に基づいて、前記ローラー選択部に、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーを選択させる請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記第1の搬送ローラー及び前記第2の搬送ローラーのそれぞれを、対向ローラーに圧接させる圧接力を変更する圧接力変更部を備える請求項1又は2に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
用紙幅方向における用紙の蛇行量を検出する蛇行量検出部を備え、
前記制御部は、前記検出された蛇行量に基づいて、前記圧接力変更部に、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーの圧接力を変更させる請求項3に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
用紙幅方向における前記中央位置を挟んだ両側のそれぞれに、前記第1の搬送ローラー及び前記第2の搬送ローラーが設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
用紙幅方向において前記中央位置を挟んで一方に設けられた前記第1の搬送ローラーと、他方に設けられた前記第2の搬送ローラーと、が同軸で回転するよう構成され、
前記一方に設けられた前記第2の搬送ローラーと、前記他方に設けられた前記第1の搬送ローラーと、が同軸で回転するよう構成されている請求項5に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記第1の搬送ローラーは、非圧縮性材料で構成され、
前記第2の搬送ローラーは、圧縮性材料で構成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の用紙搬送装置と、
用紙に画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターや複写機等の画像形成装置の用紙搬送において、用紙蛇行により通紙位置が所定の位置からずれると、通紙ジャムや用紙に対するダメージが発生する。用紙蛇行の補正技術として、搬送ローラーの角度を変更したり、用紙幅方向において搬送ローラーに速度差を設けたりして、用紙蛇行を制御することが実施されている。
【0003】
例えば、搬送ローラーの用紙幅方向の両側端部で圧接力に差を設けることで、用紙幅方向の速度差を生じさせる用紙搬送装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、搬送ローラーの用紙に対する用紙幅方向の圧力バランスを変化させて、搬送ローラーの用紙送り量に用紙幅方向で差をつける画像形成装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-276922号公報
【文献】特開2005-330084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、複数の搬送ローラーを異なる回転速度で駆動させるために複数の駆動モーターが必要となったり、装置が大型化・複雑化したりする等、コストアップに繋がっていた。
【0006】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、簡単な機構で用紙の幅方向の位置を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置を除く位置に設けられた第1の搬送ローラー及び第2の搬送ローラーと、用紙を搬送するローラーとして、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーを選択するローラー選択部と、前記ローラー選択部に、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーを選択させる制御部と、を備え、前記第1の搬送ローラーは、当該第1の搬送ローラーの回転速度より、当該第1の搬送ローラーにより圧接搬送される用紙の速度が速くなる材質で構成され、前記第2の搬送ローラーは、当該第2の搬送ローラーの回転速度より、当該第2の搬送ローラーにより圧接搬送される用紙の速度が遅くなる材質で構成されている用紙搬送装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の用紙搬送装置において、用紙幅方向における用紙の位置を検出する用紙位置検出部を備え、前記制御部は、前記検出された用紙の位置に基づいて、前記ローラー選択部に、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーを選択させる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の用紙搬送装置において、前記第1の搬送ローラー及び前記第2の搬送ローラーのそれぞれを、対向ローラーに圧接させる圧接力を変更する圧接力変更部を備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の用紙搬送装置において、用紙幅方向における用紙の蛇行量を検出する蛇行量検出部を備え、前記制御部は、前記検出された蛇行量に基づいて、前記圧接力変更部に、前記第1の搬送ローラー又は前記第2の搬送ローラーの圧接力を変更させる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の用紙搬送装置において、用紙幅方向における前記中央位置を挟んだ両側のそれぞれに、前記第1の搬送ローラー及び前記第2の搬送ローラーが設けられている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の用紙搬送装置において、用紙幅方向において前記中央位置を挟んで一方に設けられた前記第1の搬送ローラーと、他方に設けられた前記第2の搬送ローラーと、が同軸で回転するよう構成され、前記一方に設けられた前記第2の搬送ローラーと、前記他方に設けられた前記第1の搬送ローラーと、が同軸で回転するよう構成されている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の用紙搬送装置において、前記第1の搬送ローラーは、非圧縮性材料で構成され、前記第2の搬送ローラーは、圧縮性材料で構成されている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の用紙搬送装置と、用紙に画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な機構で用紙の幅方向の位置を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】非圧縮性ゴム材の搬送ローラーと圧縮性ゴム材の搬送ローラーについて、圧接力を変化させた際の搬送ローラーの表面速度の変化を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態における画像形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】(a)は、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラーを模式的に示した上面図である。(b)は、搬送ローラーを模式的に示した断面図である。
【
図5】(a)は、非圧縮性ゴム材の搬送ローラーに回転駆動力を付加した場合の図である。(b)は、圧縮性ゴム材の搬送ローラーに回転駆動力を付加した場合の図である。
【
図7】(a)は、用紙検出センサーがONを出力する場合の用紙検出センサーと用紙との位置関係を示す図である。(b)は、用紙検出センサーがOFFを出力する場合の用紙検出センサーと用紙との位置関係を示す図である。
【
図8】(a)は、奥側に寄っている状態の用紙と用紙検出センサーとの位置関係を示す図である。(b)は、中央付近の用紙と用紙検出センサーとの位置関係を示す図である。(c)は、手前側に寄っている状態の用紙と用紙検出センサーとの位置関係を示す図である。
【
図9】用紙位置と用紙検出センサーの出力状態の関係を示す図である。
【
図10】第1の実施の形態の画像形成装置により実行される第1の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】速度特性が異なる搬送ローラーを選択する別の機構を説明するための図である。
【
図12】第2の実施の形態の画像形成装置により実行される第2の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【
図13】第3の実施の形態の画像形成装置の用紙蛇行制御に用いる搬送ローラーを模式的に示した上面図である。
【
図14】第3の実施の形態の画像形成装置により実行される第3の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【
図15】第4の実施の形態の画像形成装置の用紙蛇行制御に用いる搬送ローラーセットを模式的に示した上面図である。
【
図16】第4の実施の形態の画像形成装置により実行される第4の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【
図17】用紙幅方向における用紙位置、用紙検出センサーの出力結果、搬送ローラーセットの圧接・解除を示すタイミングチャートである。
【
図18】(a)は、カット紙に対して、非圧縮性ゴム材の奥側の搬送ローラーが選択された場合の用紙の移動を説明するための図である。(b)は、カット紙に対して、圧縮性ゴム材の奥側の搬送ローラーが選択された場合の用紙の移動を説明するための図である。
【
図19】搬送ローラーの潰れ量を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る用紙搬送装置及び画像形成装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0018】
[搬送ローラーの速度特性]
まず、搬送ローラーの速度特性について説明する。
図1は、搬送ローラー21の断面を示す模式図である。搬送ローラー21を使用する際、搬送ローラー21は、搬送ローラー21と対向する対向ローラー22に対して圧接され、ローラー軸を中心として回転駆動される。搬送ローラー21と対向ローラー22とで用紙Pが挟持され、用紙Pは搬送ローラー21により対向ローラー22に対して圧接されながら搬送される。
【0019】
搬送ローラー21で用紙Pを搬送する場合、搬送ローラー21の回転速度が同じであっても、搬送ローラー21の材質の違いにより、用紙Pの搬送速度に差が生じる。
例えば、非圧縮性材料で構成された搬送ローラー21の場合、搬送ローラー21によって圧接搬送される用紙Pの速度は、搬送ローラー21の回転速度より速くなる。また、圧縮性材料で構成された搬送ローラー21の場合、搬送ローラー21によって圧接搬送される用紙Pの速度は、搬送ローラー21の回転速度より遅くなる。搬送ローラー21が「非圧縮性材料で構成されている」とは、少なくとも搬送ローラー21の最外層が非圧縮性材料で構成されていることであり、搬送ローラー21が「圧縮性材料で構成されている」とは、少なくとも搬送ローラー21の最外層が圧縮性材料で構成されていることである。
【0020】
図1に示すように、搬送ローラー21が回転駆動された状態での搬送ローラー21の回転速度をVs、対向ローラー22に対して圧接された搬送ローラー21の表面速度(ニップ部における用紙搬送速度)をVtとする。
非圧縮性材料で構成された搬送ローラー21の場合、
Vt>Vs
となる。
圧縮性材料で構成された搬送ローラー21の場合、
Vt<Vs
となる。
【0021】
本発明では、搬送ローラー21の材質の違いによるニップ部における用紙搬送速度の差を利用して、用紙幅方向における用紙Pの搬送速度に差を設ける。用紙幅方向とは、用紙搬送方向と直交する方向で、かつ、用紙面に平行な方向である。
非圧縮性材料とは、圧縮しても体積にほとんど変化がない材料で、ゴム材が該当する。圧縮性材料とは、圧縮すると体積が減少する材料で、ウレタン材等が該当する。
非圧縮性材料と圧縮性材料の特性は、ポアソン比で区別され、ポアソン比は0~0.5の値を取る。非圧縮性材料のポアソン比は略0.5近辺であるが、圧縮性材料のポアソン比は略0近辺の値となる。
非圧縮性材料の一例として、ポアソン比が0.49の非圧縮性ゴム材を用い、圧縮性材料の一例として、ポアソン比が0.01の圧縮性ゴム材を用いる。
【0022】
図2に、非圧縮性ゴム材(ポアソン比が0.49)で構成された搬送ローラー21と圧縮性ゴム材(ポアソン比が0.01)で構成された搬送ローラー21について、圧接力を変化させた際の搬送ローラー21の表面速度の変化を示す。非圧縮性ゴム材にはシリコンゴム、圧縮性ゴム材には発泡ウレタンゴムを使用した。
非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21では、圧接力が大きくなるほど、搬送ローラー21の表面速度が速くなる。
圧縮性ゴム材の搬送ローラー21では、圧接力が大きくなるほど、搬送ローラー21の表面速度が遅くなる。
【0023】
図2に示すように、搬送ローラー21の材質が変わると、同じ圧接力でも、搬送ローラー21の表面速度が速くなる場合と遅くなる場合がある。また、搬送ローラー21の圧接力によって、搬送ローラー21の表面速度が変化することがわかる。つまり、圧接力に応じて、搬送ローラー21の表面速度が速くなる程度・遅くなる程度を変えることができる。
【0024】
[第1の実施の形態]
次に、本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態について説明する。
図3は、第1の実施の形態における画像形成装置100の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、画像形成装置100は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15、給紙部16、画像形成部17、搬送部18、用紙検出センサー19等を備えている。
【0025】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成され、画像形成装置100の各部の処理動作を統括的に制御する。CPUは、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って、各種処理を実行する。
【0026】
操作部12は、表示部13の表示画面上を覆うように形成されたタッチパネルや、数字ボタン、スタートボタン等の各種操作ボタンを備え、ユーザーの操作に基づく操作信号を制御部11に出力する。
表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、制御部11から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0027】
通信部14は、通信ネットワークに接続された外部装置との間でデータの送受信を行う。例えば、通信部14は、外部装置から画像形成の対象となる画像データを受信する。
【0028】
記憶部15は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等の記憶装置からなり、各種処理に関するデータ等を記憶する。
【0029】
給紙部16は、用紙Pを画像形成部17に供給する。ここでは、用紙Pとして、連続紙を用いる。給紙部16では、例えば、ロール状の連続紙が支持軸に巻回されて回転可能に保持されていてもよいし、連続紙が折り畳まれた状態で保持されていてもよい。
【0030】
画像形成部17は、画像データに基づいて、用紙Pに画像を形成する。画像形成部17は、電子写真方式、インクジェット方式等、特に限定されない。
【0031】
搬送部18は、画像形成装置100における用紙Pの搬送機構であり、複数の搬送ローラーを備える。搬送部18は、複数の搬送ローラーによって、給紙部16から画像形成部17へ用紙Pを搬送し、画像形成中及び画像形成後の用紙Pを搬送し、画像形成装置100の外部へと用紙Pを搬送する。
【0032】
搬送ローラーのうち、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラーを「搬送ローラー21」と記す。また、個々の搬送ローラー21を区別する場合には、「搬送ローラー21A,21B」等の符号を用いる。搬送ローラー21は、例えば、給紙部16と画像形成部17との間に設けられている。
【0033】
図4(a)は、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bを模式的に示した上面図である。
図4(b)は、搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bを模式的に示した断面図である。
搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bは、用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置より奥側に設けられている。搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bは、用紙幅方向において用紙端部付近に設けられることが望ましい。搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bには、ローラーを回転させるための駆動がかけられる。
搬送ローラー21Aは、搬送ローラー21Aの回転速度より、搬送ローラー21Aにより圧接搬送される用紙Pの速度が速くなる材質(非圧縮性ゴム材)で構成された第1の搬送ローラーである。
搬送ローラー21Bは、搬送ローラー21Bの回転速度より、搬送ローラー21Bにより圧接搬送される用紙Pの速度が遅くなる材質(圧縮性ゴム材)で構成された第2の搬送ローラーである。
【0034】
図4(b)に示すように、用紙搬送経路に対して搬送ローラー21Aと対向する位置に対向ローラー22Aが設けられており、用紙搬送経路に対して搬送ローラー21Bと対向する位置に対向ローラー22Bが設けられている。
搬送ローラー21Aを使用する際には、搬送ローラー21Aが対向ローラー22Aに対して圧接された状態となる。
搬送ローラー21Bを使用する際には、搬送ローラー21Bが対向ローラー22Bに対して圧接された状態となる。
図4(b)は、搬送ローラー21Bが対向ローラー22Bに対して圧接された状態を示している。
【0035】
図5(a)は、用紙P(連続紙)が用紙速度Vpで搬送されている状況で、非圧縮性ゴム材で構成された搬送ローラー21Aに回転速度がVpとなるような回転駆動力を付加した場合の図である。
搬送ローラー21Aを対向ローラー22Aに圧接させた場合の搬送ローラー21Aの表面速度をVt1とすると、速度の関係は、
Vt1>Vp
となる。
用紙P(連続紙)は速度が速い方に引っ張られるため、用紙Pに対して用紙幅方向において奥側への力F1が発生することになる。つまり、用紙Pは奥側にシフトする。
【0036】
図5(b)は、用紙P(連続紙)が用紙速度Vpで搬送されている状況で、圧縮性ゴム材で構成された搬送ローラー21Bに回転速度がVpとなるような回転駆動力を付加した場合の図である。
搬送ローラー21Bを対向ローラー22Bに圧接させた場合の搬送ローラー21Bの表面速度をVt2とすると、速度の関係は、
Vt2<Vp
となる。
用紙P(連続紙)は速度が速い方に引っ張られるため、用紙Pに対して用紙幅方向において手前側への力F2が発生することになる。つまり、用紙Pは手前側にシフトする。
【0037】
また、搬送部18は、ローラー駆動部181、ローラー選択部182、圧接力変更部183を備える。
ローラー駆動部181は、搬送部18が備える各搬送ローラーを回転駆動させる。
【0038】
ローラー選択部182は、用紙蛇行制御のために用紙Pを搬送するローラーとして、搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bを選択する。ローラー選択部182は、搬送ローラー21A,21Bを、個別に圧接状態又は離間状態とすることが可能となっている。
【0039】
圧接力変更部183は、搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bのそれぞれを、対向ローラー22A,22Bに圧接させる圧接力を変更する。圧接力変更部183は、ローラー選択部182により選択された搬送ローラー21A,21Bの対向ローラー22A,22Bに対する圧接力を変更する。
【0040】
ローラー選択部182及び圧接力変更部183として、例えば、
図6に示す偏心カム31を用いる。偏心カム31は、軸32を中心に回転されることによって、その最下端の位置がL1の範囲で変わる。偏心カム31の最下端で、搬送ローラー21A,21Bのローラー軸を加圧することで、ローラー選択部182及び圧接力変更部183が実現される。
また、ソレノイドによって、搬送ローラー21A,21Bのローラー軸を加圧することで、ローラー選択部182及び圧接力変更部183を実現することとしてもよい。
また、ローラー選択部182と、圧接力変更部183とは、別々の機構により実現されることとしてもよい。
【0041】
用紙検出センサー19は、用紙搬送経路上に設けられており、用紙Pの有無を検出し、検出結果を制御部11に出力する。通紙される用紙Pの幅がわかると、用紙Pの幅方向の一方の端部の位置を検出することで、用紙全体の位置を把握することが可能となる。用紙検出センサー19は、用紙幅方向における用紙Pの位置を検出する用紙位置検出部として機能する。
【0042】
用紙検出センサー19として、例えば、光センサーを用いることができる。用紙検出センサー19は、用紙Pに対向する面に発光部及び受光部を備える。
図7(a)に示すように、発光部により発せられた光が用紙Pで反射され、受光部により反射光が受光された場合には、用紙検出センサー19は、ON(用紙あり)を出力する。
図7(b)に示すように、発光部により発せられた光が用紙Pで反射されず、受光部により反射光が受光されない場合には、用紙検出センサー19は、OFF(用紙なし)を出力する。
【0043】
ここでは、二つの用紙検出センサー19A,19Bを利用し、用紙幅方向における用紙Pの位置を、「奥側寄り」、「中央付近」、「手前側寄り」で区別する場合について説明する。
【0044】
図8(a)~(c)に示すように、用紙検出センサー19A,19Bは、用紙幅方向の奥側端部付近に、用紙幅方向に所定の距離だけ離れた状態で配置されている。
図8(a)は、奥側に寄っている状態の用紙Pと用紙検出センサー19A,19Bとの位置関係を示す。この状態では、用紙Pの奥側端部は、用紙検出センサー19Aより奥に位置している。
図8(b)は、中央付近の用紙Pと用紙検出センサー19A,19Bとの位置関係を示す。この状態では、用紙Pの奥側端部は、用紙検出センサー19Aと用紙検出センサー19Bとの間に位置している。
図8(c)は、手前側に寄っている状態の用紙Pと用紙検出センサー19A,19Bとの位置関係を示す。この状態では、用紙Pの奥側端部は、用紙検出センサー19Bより手前に位置している。
【0045】
図9に、用紙位置と用紙検出センサー19A,19Bの出力状態(ON/OFF)の関係を示す。用紙Pが奥側に寄っている場合には、用紙検出センサー19A,19Bがともに「ON」となる。用紙Pが中央付近にある場合には、用紙検出センサー19Aは「OFF」、用紙検出センサー19Bは「ON」となる。用紙Pが手前側に寄っている場合には、用紙検出センサー19A,19Bがともに「OFF」となる。
【0046】
制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bにより検出された用紙Pの位置に基づいて、ローラー選択部182に、搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bを選択させる。
【0047】
次に、画像形成装置100における動作について説明する。
図10は、画像形成装置100により実行される第1の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【0048】
まず、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が奥側に寄っているか否かを判断する(ステップS1)。具体的には、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bがともに「ON」である場合に、用紙位置が奥側に寄っていると判断する。
【0049】
用紙位置が奥側に寄っている場合には(ステップS1;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Bを選択させる(ステップS2)。搬送ローラー21Bが対向ローラー22Bに対して圧接され、搬送ローラー21Bの回転により用紙Pが搬送されると、用紙Pは、用紙幅方向において手前側に移動する(
図5(b)参照)。
【0050】
ステップS2の後、又は、ステップS1において、用紙位置が奥側に寄っていない場合には(ステップS1;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が中央付近であるか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、制御部11は、用紙検出センサー19Aが「OFF」であり、用紙検出センサー19Bが「ON」である場合に、用紙位置が中央付近であると判断する。
【0051】
用紙位置が中央付近である場合には(ステップS3;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、搬送ローラー21A,21Bの圧接を解除させる(ステップS4)。なお、搬送ローラー21A,21Bを離間状態とする代わりに、用紙幅方向における速度差を生じさせない程度の微圧接状態としてもよい。
【0052】
ステップS4の後、又は、ステップS3において、用紙位置が中央付近でない場合には(ステップS3;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が手前側に寄っているか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bがともに「OFF」である場合に、用紙位置が手前側に寄っていると判断する。
【0053】
用紙位置が手前側に寄っている場合には(ステップS5;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Aを選択させる(ステップS6)。搬送ローラー21Aが対向ローラー22Aに対して圧接され、搬送ローラー21Aの回転により用紙Pが搬送されると、用紙Pは、用紙幅方向において奥側に移動する(
図5(a)参照)。
【0054】
ステップS6の後、又は、ステップS5において、用紙位置が手前側に寄っていない場合には(ステップS5;NO)、ステップS1に戻り、処理が繰り返される。
【0055】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Aと圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Bを用紙幅方向における中央位置を除く位置(第1の実施の形態では奥側端部)に設け、搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bのいずれか一方で用紙Pを圧接搬送させることで、用紙Pに用紙幅方向で速度差を発生させ、用紙Pを用紙幅方向にシフトさせる力を生じさせることができる。このように、材質(速度特性)が異なる搬送ローラー21A,21Bを用いることで、簡単な機構で用紙Pの幅方向の位置を制御することができる。
また、搬送ローラー21A,21Bの回転数は一律でよく、搬送ローラー21A,21Bを回転駆動させるための駆動モーターとして、複数のモーターを用意する必要はない。
【0056】
また、用紙検出センサー19A,19Bにより検出された用紙Pの位置に基づいて、搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bを選択するので、用紙Pの蛇行状況(用紙幅方向においてどちら側にずれているか)に応じて、用紙Pの幅方向の位置を制御することができる。
【0057】
また、搬送ローラー21の材質を変えることで、ニップ部の搬送ローラー21の表面速度を、用紙本来の搬送速度に対して速くしたり遅くしたりすることができるため、用紙本来の搬送速度とニップ部の搬送ローラー21の表面速度との差を小さくすることが可能となる。このため、他の用紙搬送機構に負担がかからず、用紙自体にも過剰なストレスが生じない。
【0058】
なお、ローラー選択部182が搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bを選択するための機構は、上記の例に限定されない。例えば、
図11に示すように、搬送ローラー21A及び搬送ローラー21Bに対する対向ローラー22を共通とし、ローラー選択部182が、搬送ローラー21Aと搬送ローラー21Bの位置を入れ替えることで、搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bを選択することとしてもよい。
【0059】
[第2の実施の形態]
次に、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態における画像形成装置は、第1の実施の形態に示した画像形成装置100と比較して、用紙検出センサー19を除いて、同様の構成であるため、共通する部分については同一の符号を用い、説明を省略する。以下、第2の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0060】
第1の実施の形態では、用紙幅方向において2箇所(用紙検出センサー19A,19B)で用紙Pの有無を検出する場合について説明したが、第2の実施の形態では、用紙検出センサー19は、用紙幅方向においてより多くの位置で用紙Pの有無を検出し、段階的に用紙幅方向における用紙Pの位置を検出する。
すなわち、用紙検出センサー19は、用紙幅方向における用紙Pの蛇行量を検出する蛇行量検出部として機能する。蛇行量は、用紙幅方向における用紙Pの正しい位置からのずれ量である。用紙検出センサー19の出力によって、用紙Pが奥側・手前側のどちら側に、どの程度ずれているかがわかる。
【0061】
制御部11は、検出された蛇行量に基づいて、圧接力変更部183に、搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bの圧接力を変更させる。
【0062】
次に、第2の実施の形態の画像形成装置における動作について説明する。
図12は、第2の実施の形態の画像形成装置により実行される第2の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【0063】
まず、制御部11は、用紙検出センサー19の出力状態に基づいて、用紙位置が奥側に寄っているか否かを判断する(ステップS11)。
用紙位置が奥側に寄っている場合には(ステップS11;YES)、制御部11は、用紙検出センサー19の出力状態に基づいて、蛇行量(奥側へ寄っている程度)を判断する。そして、制御部11は、蛇行量に基づいて、圧接力を決定する(ステップS12)。具体的には、制御部11は、蛇行量が大きいほど、より大きい圧接力に決定する。
【0064】
次に、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Bを選択させる(ステップS13)。
次に、制御部11は、圧接力変更部183を制御して、ステップS12で決定された圧接力で、搬送ローラー21Bを圧接させる(ステップS14)。搬送ローラー21Bが対向ローラー22Bに対して、決定された圧接力で圧接され、搬送ローラー21Bの回転により用紙Pが搬送されると、用紙Pは、用紙幅方向において手前側に移動する。
【0065】
ステップS14の後、又は、ステップS11において、用紙位置が奥側に寄っていない場合には(ステップS11;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19の出力状態に基づいて、用紙位置が中央付近であるか否かを判断する(ステップS15)。
【0066】
用紙位置が中央付近である場合には(ステップS15;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、搬送ローラー21A,21Bの圧接を解除させる(ステップS16)。
【0067】
ステップS16の後、又は、ステップS15において、用紙位置が中央付近でない場合には(ステップS15;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19の出力状態に基づいて、用紙位置が手前側に寄っているか否かを判断する(ステップS17)。
【0068】
用紙位置が手前側に寄っている場合には(ステップS17;YES)、制御部11は、用紙検出センサー19の出力状態に基づいて、蛇行量(手前側へ寄っている程度)を判断する。そして、制御部11は、蛇行量に基づいて、圧接力を決定する(ステップS18)。具体的には、制御部11は、蛇行量が大きいほど、より大きい圧接力に決定する。
【0069】
次に、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Aを選択させる(ステップS19)。
次に、制御部11は、圧接力変更部183を制御して、ステップS18で決定された圧接力で、搬送ローラー21Aを圧接させる(ステップS20)。搬送ローラー21Aが対向ローラー22Aに対して、決定された圧接力で圧接され、搬送ローラー21Aの回転により用紙Pが搬送されると、用紙Pは、用紙幅方向において奥側に移動する。
【0070】
ステップS20の後、又は、ステップS17において、用紙位置が手前側に寄っていない場合には(ステップS17;NO)、ステップS11に戻り、処理が繰り返される。
【0071】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加え、用紙Pの蛇行量に基づいて、使用する搬送ローラー21A又は搬送ローラー21Bの圧接力を変更させることで、用紙Pの蛇行状況(用紙幅方向においてどれくらいずれているか)に応じた用紙幅方向の速度差を発生させることができる。
【0072】
[第3の実施の形態]
次に、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態における画像形成装置は、第1の実施の形態に示した画像形成装置100と比較して、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラー21の配置を除いて、同様の構成であるため、共通する部分については同一の符号を用い、説明を省略する。以下、第3の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0073】
第1の実施の形態では、速度特性が異なる搬送ローラー21A,21Bが、用紙幅方向において中央位置から離れた片側端部に設けられていたが、第3の実施の形態では、用紙幅方向における中央位置を挟んだ両側のそれぞれに、用紙Pの速度を速くする搬送ローラー21(第1の搬送ローラー)及び用紙Pの速度を遅くする搬送ローラー21(第2の搬送ローラー)が設けられている。
【0074】
図13は、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラー21C,21D,21E,21Fを模式的に示した上面図である。
搬送ローラー21C及び搬送ローラー21Dは、用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置より奥側に設けられている。
搬送ローラー21Cは、搬送ローラー21Cの回転速度より、搬送ローラー21Cにより圧接搬送される用紙Pの速度が速くなる材質(非圧縮性ゴム材)で構成されている。
搬送ローラー21Dは、搬送ローラー21Dの回転速度より、搬送ローラー21Dにより圧接搬送される用紙Pの速度が遅くなる材質(圧縮性ゴム材)で構成されている。
【0075】
搬送ローラー21E及び搬送ローラー21Fは、用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置より手前側に設けられている。
搬送ローラー21Eは、搬送ローラー21Eの回転速度より、搬送ローラー21Eにより圧接搬送される用紙Pの速度が速くなる材質(非圧縮性ゴム材)で構成されている。
搬送ローラー21Fは、搬送ローラー21Fの回転速度より、搬送ローラー21Fにより圧接搬送される用紙Pの速度が遅くなる材質(圧縮性ゴム材)で構成されている。
【0076】
搬送ローラー21C,21D,21E,21Fのそれぞれに対向する対向ローラーについては図示しないが、対向ローラー22C,22D,22E,22Fとする。
【0077】
ローラー選択部182は、用紙蛇行制御のために用紙Pを搬送するローラーとして、搬送ローラー21C,21D,21E,21Fのうち一つ以上を選択する。ローラー選択部182は、搬送ローラー21C,21D,21E,21Fを、個別に圧接状態又は離間状態とすることが可能となっている。
【0078】
制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bにより検出された用紙Pの位置に基づいて、ローラー選択部182に、搬送ローラー21C,21D,21E,21Fのうち一つ以上を選択させる。
【0079】
次に、第3の実施の形態の画像形成装置における動作について説明する。
図14は、第3の実施の形態の画像形成装置により実行される第3の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【0080】
まず、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が奥側に寄っているか否かを判断する(ステップS21)。
【0081】
用紙位置が奥側に寄っている場合には(ステップS21;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、奥側の搬送ローラー群(搬送ローラー21C,21D)から圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Dを選択させ、手前側の搬送ローラー群(搬送ローラー21E,21F)から非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Eを選択させる(ステップS22)。搬送ローラー21D,21Eが対向ローラー22D,22Eに対して圧接され、搬送ローラー21D,21Eの回転により用紙Pが搬送されると、用紙P(連続紙)に対して、奥側より手前側の用紙搬送速度が速くなるから、用紙Pは、用紙幅方向において手前側に移動する。
【0082】
ステップS22の後、又は、ステップS21において、用紙位置が奥側に寄っていない場合には(ステップS21;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が中央付近であるか否かを判断する(ステップS23)。
【0083】
用紙位置が中央付近である場合には(ステップS23;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、搬送ローラー21C,21D,21E,21Fの圧接を解除させる(ステップS24)。なお、搬送ローラー21C,21D,21E,21Fを離間状態とする代わりに、用紙幅方向における速度差を生じさせない程度の微圧接状態としてもよい。また、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、材質(速度特性)が同じ搬送ローラー21C,21Eを選択させ、用紙幅方向で速度差を生じさせないようにしてもよい。同様に、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、材質(速度特性)が同じ搬送ローラー21D,21Fを選択させ、用紙幅方向で速度差を生じさせないようにしてもよい。
【0084】
ステップS24の後、又は、ステップS23において、用紙位置が中央付近でない場合には(ステップS23;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が手前側に寄っているか否かを判断する(ステップS25)。
【0085】
用紙位置が手前側に寄っている場合には(ステップS25;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、奥側の搬送ローラー群から非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Cを選択させ、手前側の搬送ローラー群から圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Fを選択させる(ステップS26)。搬送ローラー21C,21Fが対向ローラー22C,22Fに対して圧接され、搬送ローラー21C,21Fの回転により用紙Pが搬送されると、用紙P(連続紙)に対して、手前側より奥側の用紙搬送速度が速くなるから、用紙Pは、用紙幅方向において奥側に移動する。
【0086】
ステップS26の後、又は、ステップS25において、用紙位置が手前側に寄っていない場合には(ステップS25;NO)、ステップS21に戻り、処理が繰り返される。
【0087】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Cと圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Dにより構成される搬送ローラー群と、非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Eと圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Fにより構成される搬送ローラー群が、用紙幅方向における中央位置を挟んだ両側のそれぞれに設けられているので、第1の実施の形態と比較して、用紙Pにかかる力が分散される。そのため、用紙蛇行制御を効率良く行うことができ、用紙Pに対するダメージを抑えることができる。
【0088】
また、用紙Pを用紙幅方向に移動させる場合、用紙幅方向における両端でそれぞれ選択される搬送ローラー21は、速度特性が異なるもの同士(搬送ローラー21Cと搬送ローラー21F、又は、搬送ローラー21Dと搬送ローラー21E)となるが、個々の搬送ローラー21が独立しているため、用紙Pを用紙幅方向に移動させない場合は、奥側と手前側とで同じ種類の搬送ローラー21(搬送ローラー21Cと搬送ローラー21E、又は、搬送ローラー21Dと搬送ローラー21F)を選択し、用紙幅方向で速度差を生じさせない通常の搬送ローラーとしても利用できるというメリットがある。
【0089】
また、第1の実施の形態と同様、片側の搬送ローラー群のみのいずれかの搬送ローラー21を圧接することで、両側の搬送ローラー21を使用する場合よりも、用紙幅方向の移動量又は移動速度を小さくすることができる。
【0090】
なお、第3の実施の形態においても、第2の実施の形態のように、搬送ローラー21の圧接力を変えることによって、ニップ部の搬送ローラー21の表面速度を速くしたり、遅くしたりする程度を変更することとしてもよい。圧接力によってニップ部の搬送ローラー21の表面速度を変更する方が、ブレーキ等を利用して用紙Pに用紙幅方向で速度差を発生させる場合よりも、用紙本来の搬送速度と搬送ローラー21の表面速度との差が小さくなるため、用紙Pに対するダメージが少なくなるという効果がある。
【0091】
[第4の実施の形態]
次に、本発明を適用した第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態における画像形成装置は、第1の実施の形態に示した画像形成装置100と比較して、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラー21の配置を除いて、同様の構成であるため、共通する部分については同一の符号を用い、説明を省略する。以下、第4の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0092】
第4の実施の形態では、用紙幅方向における中央位置を挟んだ両側のそれぞれに、用紙Pの速度を速くする搬送ローラー21(第1の搬送ローラー)及び用紙Pの速度を遅くする搬送ローラー21(第2の搬送ローラー)が設けられており、用紙幅方向における中央位置を挟んで反対側に位置する、速度特性が異なる搬送ローラー21同士が、同軸で回転するように構成されている。
【0093】
図15は、用紙蛇行制御に用いる搬送ローラーセットQ,Rを模式的に示した上面図である。
搬送ローラーセットQは、搬送ローラー21Gと搬送ローラー21Hとが同軸で回転するよう構成されている。
搬送ローラー21Gは、搬送ローラー21Gの回転速度より、搬送ローラー21Gにより圧接搬送される用紙Pの速度が遅くなる材質(圧縮性ゴム材)で構成されている。
搬送ローラー21Hは、搬送ローラー21Hの回転速度より、搬送ローラー21Hにより圧接搬送される用紙Pの速度が速くなる材質(非圧縮性ゴム材)で構成されている。
【0094】
搬送ローラーセットRは、搬送ローラー21Jと搬送ローラー21Kとが同軸で回転するよう構成されている。
搬送ローラー21Jは、搬送ローラー21Jの回転速度より、搬送ローラー21Jにより圧接搬送される用紙Pの速度が速くなる材質(非圧縮性ゴム材)で構成されている。
搬送ローラー21Kは、搬送ローラー21Kの回転速度より、搬送ローラー21Kにより圧接搬送される用紙Pの速度が遅くなる材質(圧縮性ゴム材)で構成されている。
【0095】
搬送ローラー21G及び搬送ローラー21Jは、用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置より奥側に設けられている。
搬送ローラー21H及び搬送ローラー21Kは、用紙搬送経路上の用紙幅方向における中央位置より手前側に設けられている。
【0096】
用紙幅方向において中央位置を挟んで手前側(一方)に設けられた搬送ローラー21Hと、奥側(他方)に設けられた搬送ローラー21Gと、が同軸で回転するよう構成されている。
また、用紙幅方向において中央位置を挟んで手前側(一方)に設けられた搬送ローラー21Kと、奥側(他方)に設けられた搬送ローラー21Jと、が同軸で回転するよう構成されている。
【0097】
搬送ローラー21G,21H,21J,21Kのそれぞれに対向する対向ローラーについては図示しないが、対向ローラー22G,22H,22J,22Kとする。
【0098】
ローラー選択部182は、用紙蛇行制御のために用紙Pを搬送するローラーとして、搬送ローラーセットQ(搬送ローラー21G,21H)又は搬送ローラーセットR(搬送ローラー21J,21K)を選択する。ローラー選択部182は、搬送ローラーセットQ,Rを、個別に圧接状態又は離間状態とすることが可能となっている。
【0099】
制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bにより検出された用紙Pの位置に基づいて、ローラー選択部182に、搬送ローラーセットQ又は搬送ローラーセットRを選択させる。
【0100】
次に、第4の実施の形態の画像形成装置における動作について説明する。
図16は、第4の実施の形態の画像形成装置により実行される第4の用紙蛇行制御処理を示すフローチャートである。
【0101】
まず、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が奥側に寄っているか否かを判断する(ステップS31)。
【0102】
用紙位置が奥側に寄っている場合には(ステップS31;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、搬送ローラーセットQを選択させる(ステップS32)。すなわち、奥側では圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Gが対向ローラー22Gに対して圧接され、手前側では非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Hが対向ローラー22Hに対して圧接される。搬送ローラー21G,21Hの回転により用紙Pが搬送されると、用紙P(連続紙)に対して、奥側より手前側の用紙搬送速度が速くなるから、用紙Pは、用紙幅方向において手前側に移動する。
【0103】
ステップS32の後、又は、ステップS31において、用紙位置が奥側に寄っていない場合には(ステップS31;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が中央付近であるか否かを判断する(ステップS33)。
【0104】
用紙位置が中央付近である場合には(ステップS33;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、搬送ローラーセットQ,Rの圧接を解除させる(ステップS34)。
【0105】
ステップS34の後、又は、ステップS33において、用紙位置が中央付近でない場合には(ステップS33;NO)、制御部11は、用紙検出センサー19A,19Bの出力状態に基づいて、用紙位置が手前側に寄っているか否かを判断する(ステップS35)。
【0106】
用紙位置が手前側に寄っている場合には(ステップS35;YES)、制御部11は、ローラー選択部182を制御して、搬送ローラーセットRを選択させる(ステップS36)。すなわち、奥側では非圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Jが対向ローラー22Jに対して圧接され、手前側では圧縮性ゴム材の搬送ローラー21Kが対向ローラー22Kに対して圧接される。搬送ローラー21J,21Kの回転により用紙Pが搬送されると、用紙P(連続紙)に対して、手前側より奥側の用紙搬送速度が速くなるから、用紙Pは、用紙幅方向において奥側に移動する。
【0107】
ステップS36の後、又は、ステップS35において、用紙位置が手前側に寄っていない場合には(ステップS35;NO)、ステップS31に戻り、処理が繰り返される。
【0108】
図17は、用紙幅方向における用紙位置、用紙検出センサー19A,19Bの出力結果、搬送ローラーセットQ,Rの圧接・解除を示すタイミングチャートである。
図17に示す用紙位置の位置Xは、用紙検出センサー19AのON/OFFが切り替わる位置であり、用紙位置の位置Yは、用紙検出センサー19BのON/OFFが切り替わる位置である。
【0109】
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、同軸で回転する搬送ローラーセットQの両端に同じ圧接力をかけることで、搬送ローラー21Hにより圧接搬送される部分の用紙搬送速度は速くなり、搬送ローラー21Gにより圧接搬送される部分の用紙搬送速度は遅くなる。このため、搬送ローラーセットQに対して、用紙幅方向の両端で圧接力に差を設ける必要がなく、簡単な機構で用紙蛇行制御を実現することができる。搬送ローラーセットRについても同様である。
また、搬送ローラーセットRについては、搬送ローラーセットQと速度特性が逆であるため、用紙Pが奥側に寄っているか、手前側に寄っているかに応じて、搬送ローラーセットQ又は搬送ローラーセットRを選択的に用いればよい。
【0110】
なお、用紙蛇行制御を行わない場合、すなわち、単に用紙Pを搬送する場合は、搬送ローラーセットQ,Rの圧接力を微圧接として、ある程度の搬送駆動力を確保しつつ、用紙Pの幅方向の位置を変えないようにすることもできる。
【0111】
また、第4の実施の形態では、搬送ローラーセットQ,Rに対して、圧接と解除の2段階に切り替える制御を行う場合について説明したが、3段階以上の多段階に圧接力を変更し、精度良く用紙蛇行制御を実施することも可能である。第4の実施の形態においても、第2の実施の形態のように、搬送ローラーセットQ,Rの圧接力を変えることによって、ニップ部の搬送ローラー21の表面速度を速くしたり、遅くしたりする程度を変更することができる。
【0112】
上記各実施の形態における記述は、本発明に係る用紙搬送装置及び画像形成装置の例であり、これに限定されるものではない。装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0113】
例えば、上記各実施の形態では、用紙Pとして連続紙を用いた場合について説明したが、本発明は、カット紙に対しても適用可能である。用紙Pとしてカット紙を用いる場合には、用紙幅方向において速度差を設けると、用紙Pが移動する向きが、連続紙を用いた場合と逆になる。
図18(a)は、カット紙に対して、第1の実施の形態に示した非圧縮性ゴム材で構成された奥側の搬送ローラー21Aが選択された場合の図である。用紙Pが用紙速度Vpで搬送されている状況で、搬送ローラー21Aに回転速度がVpとなるような回転駆動力を付加すると、搬送ローラー21Aの表面速度Vt1はVpより速くなる。用紙Pに対する用紙幅方向における速度差(Vt1>Vp)により、用紙Pには左回りに回転する力F11がはたらき、用紙Pは手前側に移動することになる。
【0114】
図18(b)は、カット紙に対して、第1の実施の形態に示した圧縮性ゴム材で構成された奥側の搬送ローラー21Bが選択された場合の図である。用紙Pが用紙速度Vpで搬送されている状況で、搬送ローラー21Bに回転速度がVpとなるような回転駆動力を付加すると、搬送ローラー21Bの表面速度Vt2はVpより遅くなる。用紙Pに対する用紙幅方向における速度差(Vt2<Vp)により、用紙Pには右回りに回転する力F12がはたらき、用紙Pは奥側に移動することになる。
【0115】
また、圧接力変更部183により変更される搬送ローラー21の圧接力を直接測定又は管理するより、搬送ローラー21の潰れ量で管理する方が簡単でコストもかからないため、搬送ローラー21の圧接力を調整する際に、搬送ローラー21の潰れ量を用いて調整してもよい。
図19(a)に示す半径h1の搬送ローラー21を対向ローラー22に対して圧接し、
図19(b)に示すように、圧接された状態での搬送ローラー21のローラー軸中心から用紙Pまでの距離をh2とすると、搬送ローラー21の潰れ量h3は、h3=h1-h2で表される。この潰れ量h3を調整することで、簡単に搬送ローラー21の圧接力を調整することができる。
【符号の説明】
【0116】
11 制御部
17 画像形成部
18 搬送部
19 用紙検出センサー
19A,19B 用紙検出センサー
21 搬送ローラー
21A,21B 搬送ローラー
21C,21D,21E,21F 搬送ローラー
21G,21H,21J,21K 搬送ローラー
22 対向ローラー
100 画像形成装置
181 ローラー駆動部
182 ローラー選択部
183 圧接力変更部
P 用紙
Q,R 搬送ローラーセット