(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2018554990
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2017043487
(87)【国際公開番号】W WO2018105558
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2016235840
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 和人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 陽
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091128(JP,A)
【文献】特開2014-203961(JP,A)
【文献】特開2011-054963(JP,A)
【文献】特開2009-081201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/335
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層内に複数の光電変換素子が二次元状に配列され、
前記半導体層の光入射側とは反対側の面側に、前記半導体層側の面に対し層間絶縁層と複数の光反射構造とが形成された支持基板が設けられ、
前記光反射構造は、光透過層と、該光透過層の前記半導体層とは反対側の表面を覆う反射金属とを有し、かつ、前記光反射構造は、前記各光電変換素子とそれぞれ対向する位置に形成され、
前記反射金属は、前記光電変換素子側の面が前記光電変換素子側に凹の曲面形状となっており、
前記層間絶縁層は、隣り合う前記光反射構造の間に位置しており、
前記光反射構造が有する前記反射金属は、500℃以上600℃以下の温度範囲で溶融しない材料で形成された金属膜であ
り、前記層間絶縁層の前記半導体層とは反対側の表面は、反射金属で覆われていることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記光反射構造は、前記半導体層側に平面を有するように配置された半球形状であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記支持基板の材質は石英又はシリコンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記光反射構造が有する前記反射金属と、前記層間絶縁層の前記半導体層とは反対側の表面を覆う前記反射金属とは、連続していることを特徴とする請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記光反射構造が有する前記反射金属は、銀、クロム、タンタル、タングステン、またはチタンで形成された金属膜であることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記半導体層の膜厚は、2μm以上3μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記光反射構造の前記半導体層側とは反対側の面側に、平坦化層が設けられ、
前記層間絶縁層と前記平坦化層とは共に非ドープ型酸化シリコンで形成された層であることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子は、半導体層に光を吸収して電荷を発生するCMOSタイプ又はCCDタイプの光電変換素子を二次元的に配列し、発生した電荷を外部へ電気信号として転送するものである。このような固体撮像素子は、テレビカメラ、デジタルスチルカメラなどに広く用いられている。
固体撮像素子上の光電変換素子は、pn接合によるシリコンフォトダイオードで形成されることが一般的である。逆方向電圧を加えたpn接合に光が照射されると、空乏層内で発生した電子は、空乏層中でドリフトし、n型領域に達する。固体撮像素子では、各画素のフォトダイオードのn型領域で蓄積された電子を信号電荷として読み出すことで、撮像データを得ることができる。
【0003】
光電変換素子に入射した光の強度は、光子が半導体中で吸収され電子-正孔対を生成するため、内部に進むに従い急激に減衰していく。吸収の割合は光吸収係数に依存し、長波長の光ほど同じ距離を浸透した時の吸収の割合が少ない。そのため、波長が長い赤色光が半導体内で吸収されず、赤色光感度が低下する問題があった。
特許文献1に開示されている従来技術は、光電変換素子を透過した長波長領域の光を再利用するために、光電変換素子の裏面に金属反射面が形成されている裏面照射型の固体撮像素子である。
【0004】
また、特許文献2に開示されている従来技術は、半導体基板の裏面に凹面反射鏡を形成することで、半導体基板を通過した赤色光を効率よく光電変換素子に再入射できる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-177705号公報
【文献】特開2011-119484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、形成された金属反射鏡が平面であるため、金属反射鏡で反射する光の角度を制御できず、効率よく光を光電変換素子に再入射できないという問題があった。また、特許文献2では、基板の表裏両面に機能性素子を形成する必要があるため、表面素子形成後に裏面素子を形成する際、又は両面への素子形成後にパッケージングを行う際に、ステージ上に基板を直接置くことが不可能になる等、基板ハンドリングが困難になるという問題があった。
本発明は、上記問題を解決するために提案されるものであり、光電変換素子を透過した赤色光を効率よく光電変換素子に向けて反射することができて優れた赤色光感度を有し、かつ、素子形成時の基板ハンドリングが容易である固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る固体撮像素子は、半導体層内に複数の光電変換素子が二次元状に配列され、前記半導体層の光入射側とは反対側の面側に、前記半導体層側の面に対し層間絶縁層と複数の光反射構造とが形成された支持基板が設けられ、前記光反射構造は、光透過層と、該光透過層の前記半導体層とは反対側の表面を覆う反射金属とを有し、かつ、前記光反射構造は、前記各光電変換素子とそれぞれ対向する位置に形成され、前記反射金属は、前記光電変換素子側の面が前記光電変換素子側に凹の曲面形状となっており、前記層間絶縁層は、隣り合う前記光反射構造の間に位置していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様である固体撮像素子では、光電変換素子に入射した光のうち、光電変換素子で吸収されきれず半導体層を通過した赤色光が、光電変換素子の裏面側に設けられた光反射構造によって反射され、光電変換素子に効率的に再入射する。このため、本発明の一態様によれば、赤色光感度が優れている。
また、半導体層が支持基板に支持され、光反射構造は半導体層と支持基板の間に位置することから、支持基板の裏面に入射光を反射するための機能性素子を形成する必要がない。そのため、製造工程中にステージ上に基板を直接置くことが可能であり、素子形成時の基板ハンドリングが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の概略構造を説明する模式的断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の製造工程を説明する模式的断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の効果を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
<構成>
本実施形態の固体撮像素子は、
図1に示すように、複数の光電変換素子21が二次元状に配列された半導体層20を備え、半導体層20の光入射側(
図1においては上方)に、カラーフィルタ24及びマイクロレンズ25がこの順に形成されている。半導体層20内において、複数の光電変換素子21は、素子分離壁26で画素単位に分離されている。
また、本実施形態の固体撮像素子は、半導体層20の裏面側(光入射側とは反対の面側)に支持基板10が設けられ、半導体層20は支持基板10に支持されている。その支持基板10の表面(半導体層20側の面)側に、層間絶縁層22と複数の光反射構造14とが形成されている。
【0012】
具体的には、支持基板10の表面上に平坦化層13が形成され、その平坦化層13の表面を覆うように膜状の反射金属12が形成されている。その反射金属12の上に、光透過層11と、層間絶縁層22とが設けられている。反射金属12は、膜状である必要はなく、光電変換素子21側を向く面が、光電変換素子21側に凹の曲面形状となっていれば良い。
光透過層11は、各光電変換素子21それぞれと上下に対向する位置、つまり各光電変換素子21の裏面側に設けられている。光透過層11は、半導体層20側の面が平面になっていると共に、支持基板10側の面が、支持基板10側に凸の半球形状に形成されている。
【0013】
本実施形態では、反射金属12のうち、光透過層11における凸の半球形状の面と対向する部分は、光透過層11の半球形状の表面(球面)に沿った半球形状となっている。そして、この半球形状の反射金属12と光透過層11とによって、半球状の光反射構造14が構成される。これにより、光反射構造14は、半球形状における球面を裏面側(支持基板10側)に向け、平面を半導体層20側(すなわち光入射側)に向けて配置されている。
光透過層11における凸の半球形状の面と対向する反射金属12の形状は、光電変換素子21に凹、すなわち支持基板10側に凸の曲面形状となっていれば良く、球の一部に限定されず、楕円形状等の一部などから構成されていても良い。
層間絶縁層22は、各素子分離壁26の裏面側、すなわち隣り合う光反射構造14の間に配置され、その層間絶縁層22内に対し配線23が配置されている。
【0014】
<作用その他>
本実施形態の固体撮像素子は、光電変換素子21に入射した光のうち光電変換素子21で吸収されずに透過し半導体層20を通過した赤色光が、光電変換素子21の裏面側に設けられた光反射構造14で反射して光電変換素子21に向かう。この結果、半導体層20を通過した赤色光が、光電変換素子21に効率よく再入射されるため、本実施形態の固体撮像素子は、優れた赤色光感度を有している。
また、光反射構造14は、半球形状などの光電変換素子21側に凹の曲面形状を有するため、光反射構造14の球面(半球形状の反射金属12)で反射した光は、その光が入射した画素の光電変換素子21に向かって効率よく反射される。そのため、隣接する画素の光電変換素子21に入射することによる混色が生じにくい。
【0015】
さらに、本実施形態の固体撮像素子は、光反射構造14が半導体層20と支持基板10の間に位置することから、支持基板10の裏面には特に入射光を反射する機能性素子を形成する必要がない。このため、製造工程中に、ステージ上へ支持基板10を直接置くことが可能であり、固体撮像素子の形成時における支持基板10のハンドリングが容易である。
このような本実施形態の固体撮像素子は、裏面照射型固体撮像素子であり、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサなどの固体撮像素子として利用可能である。
【0016】
<製造方法>
次に、
図1に示した本実施形態の固体撮像素子の製造方法について、
図2~
図12を参照して説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、
図2に示すように、半導体基板30の内部に対して、公知の方法によって光電変換素子21を形成する。半導体基板30は、後の工程で支持基板10と貼り合わせた後に、半導体部分を薄く加工することで半導体層20にするためのp型又はn型のシリコン基板である。なお、
図2における上側が光電変換素子21の裏面側となる。
【0017】
光電変換素子21として、フォトゲート又はフォトダイオードなどが用いられるが、電荷転送率の高さから埋め込み型のフォトダイオードを用いることが望ましい。また、図示しないが、光電変換素子21を形成すると同時に固体撮像素子の駆動に必要な素子を画素内に形成する。例えばCCDイメージセンサの場合は、垂直転送CCDを光電変換素子21と共に形成する。一方、CMOSイメージセンサの場合は、浮遊拡散層アンプ、電荷転送用トランジスタ等の素子を光電変換素子21と共に形成する。
光電変換素子21及びその他の素子を形成した後、信号電荷や信号電圧を転送するための、又はトランジスタを駆動するための配線23を形成する。また、固体撮像素子の構造によっては複数の配線23が必要になるため、各配線23間に層間絶縁層22を形成する(
図3を参照)。
【0018】
層間絶縁層22の材料には、非ドープ型酸化シリコン等の透明性を有する低誘電率材料を用いる。また、層間絶縁層22の形成は、常圧CVD(Chemical Vapor Deposition)、PE-CVD(Plasma Enhanced - CVD)等の方法によるが、本実施形態はそれらに限るものではない。
配線23の材料には、金属材料又はそれを用いた合金等を用いることができる。金属材料としては、アルミニウム、銅、クロム等が例示できる。そして、使用する材料に適した製造プロセスを用いて、配線23による配線パターンを形成することで、半導体基板30の上に、
図3に示すような層間絶縁層22並びに配線23を形成することができる。
【0019】
次に、層間絶縁層22内に光反射構造14を形成するため、フォトレジスト15を塗布し、
図4及び
図5に示すようなパターニングを行う。パターニング後のフォトレジスト15は、光電変換素子21上に位置する半球形状パターン15a、及び、配線23上に位置する矩形状パターン15bよりなる。矩形状パターン15bは、
図5の平面図に示すように、二次元状に配列された半球形状パターン15aを囲うように井桁形状に形成する。
図4に示すように、半球形状パターン15aと矩形状パターン15bの高さは同一ではなく、高さは、形成したい光反射構造14の構造に従って設定する。層間絶縁層22の膜厚をH、光電変換素子21の幅をWとすると、例えば、光反射構造14として光電変換素子21の幅Wと同じ直径の半球形状を形成したい場合は、半球形状パターン15aと矩形状パターン15bの高さ比を、(W/2):Hに設定する必要がある。
【0020】
また、後のドライエッチング工程で半球形状パターン15aの形状を層間絶縁層22に転写させるためには、W/2はH以下である必要がある。
光反射構造14は、反射した入射光を画素の中心部に集光させる半球形状であることが望ましいが、赤色光の感度を改善するには、必ずしも反射光は画素の中心部に集光する必要はなく、光電変換素子21に再入射されればよい。よって、本発明においては、半球形状パターン15aの形状を、真球の一部を構成する曲面形状となるように厳密に設計する必要はない。
【0021】
フォトレジスト15のパターンを形成するためには、まずフォトレジスト15の材料を層間絶縁層22の表面に塗布し、画素毎に円柱形状にフォトレジスト15が残るようパターニングする。次に、パターニングしたフォトレジストに対して熱リフロー処理を行うことで、フォトレジスト15を半球形状に加工し、半球形状パターン15aを形成する。その後、再びフォトレジストを塗布し、半球形状パターン15aを囲う矩形状パターン15bを形成することで、
図4に示すフォトレジスト15のパターンが形成できる。
また、ナノインプリントリソグラフィー又は網点マスクを用いることで、一回のパターニングでフォトレジスト15のパターンを形成することも可能であるが、本実施形態の方法は、それらに限定されるものではない。
【0022】
次に、フォトレジスト15をドライエッチング用マスクとしてドライエッチング処理を行うことで、
図6に示すように、半球形状パターン15aの形状は層間絶縁層22に転写されて、半球状の光透過層11が形成される。また、矩形状パターン15bはドライエッチング時にマスクとなるため、ドライエッチング処理後も、矩形状パターン15bの下方に位置する層間絶縁層22、及び、その内部の配線23はエッチングされずに保護される。
次に、
図7に示すように、光透過層11の表面と、ドライエッチングされずに残った層間絶縁層22の表面とに反射金属12を形成する。反射金属12には、金属材料又は金属材料を用いた合金等、高い反射率を有する材料からなる金属薄膜を用いる。金属材料としては、アルミニウム、銀、クロム、タンタル、タングステン、チタンが例示できる。また、反射金属12の材料は、後の製造工程で高温に曝されるため、少なくとも500℃以上600℃以下の熱処理によって溶融しない材料であることが望ましい。反射金属12の成膜には蒸着、スパッタ等の手段を用いる。
【0023】
次に、
図8に示すように、反射金属12上に平坦化層13を成膜することで、層間絶縁層22や光反射構造14の加工で生じた表面の凹凸を平坦化する。平坦化層13の材料は透明性を有する必要はないが、半導体プロセスで用いる高温環境に対して耐性がある窒化シリコン又は非ドープ型酸化シリコン等の材料が好ましい。
平坦化層13の成膜による凹凸の平坦化が不十分な場合は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の研磨手段により、基板表面をより平坦化してもよい。以上の工程により、半導体基板30上に光反射構造14を形成することができる。
【0024】
次に、
図9に示すように、光反射構造14を形成した側を接合面として、半導体基板30と支持基板10を接合する。支持基板10の材料としては、石英基板又はp型又はn型のシリコン基板を用いる。半導体基板30の光反射構造14を形成した面又は支持基板10の表面を、プラズマ処理又はオゾン処理で表面活性化した後、半導体基板30と支持基板10を貼り合わせることで、両者を強固に接着させることが可能である。しかしながら、半導体基板30と支持基板10を貼り合わせる方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0025】
次に、半導体基板30と支持基板10の接合後、半導体基板30を加工し、半導体層20を形成する。半導体基板30と支持基板10と貼り合わせを行った後、半導体基板30を薄膜化することで、
図10に示すように、支持基板10上に半導体層20を形成することができる。
図10は、光入射側を上側に配置した図である。
半導体基板30を薄膜化させるためには、まずグラインダを用いて物理的に基板を薄くした上で、CMP等の方法により研磨処理を行い、表面を平滑化する。その後、ウェットエッチング又はドライエッチングにより化学的に基板をエッチングすることで、狙いの膜厚まで半導体基板30を薄膜化して半導体層20を形成することができる。ただし、本発明の形態は、これらに限定されるものではない。
【0026】
電子を蓄積する空乏層は、
図10に示す光電変換素子21の下部(裏面側部分)に位置するため、半導体層20の膜厚が厚くなった場合は、光電変換素子21の上方で電子が空乏層に辿り着くまでの距離が長くなってしまう。その場合は、電子が発生画素の空乏層に辿り着く前に再結合により消滅又は隣接画素に流れ込むことで、効率低下や混色を引き起こす原因となりうる。特に短波長領域の光(波長360nm以上450nm以下)は主に光電変換素子21の上部(光入射側部分)で光電変換されるため、半導体層20が3μmよりも厚みを持つ場合は、短波長光の光電変換効率が低下してしまう。
【0027】
一方、半導体層20の膜厚を薄くすることで、短波長光の変換効率は上昇するが、長波長光は光電変換素子21の内部で十分に光電変換されずに、光電変換素子21の下方に抜けていく。しかしながら、それらの光は、本実施形態の固体撮像素子に備わる光反射構造14で反射されて光電変換素子21に再入射するため、本実施形態の構造においては半導体層20の厚みが2μm以上あれば、全可視光領域の光を効率よく光電変換させることが可能である。このため、半導体層20の膜厚は2μm以上3μm以下とすることが好ましい。
【0028】
次に、
図11に示すように、光電変換素子21の間に素子分離壁26を形成する。素子分離壁26は、素子駆動上は必ずしも必要なものではないが、光電変換素子21への入射光の隣接画素への入射、又は、光電変換素子21で発生した電子が隣接画素へ流入して生じる混色を抑制する効果がある。素子分離壁26の材料として多結晶シリコン又は酸化シリコンを用いることで、入射光と発生電子の両方の隣接画素へ流入を抑制することが可能である。素子分離壁26の形成は、DTI(Deep Trench Isolation)技術を用いて半導体層20内に高アスペクト比の溝を形成し、この溝に素子分離壁26の材料を埋め込むことで実施する。
また、薄膜化後の半導体層20の表面には多数の欠陥準位が存在し、そのまま撮像素子を形成した場合には、欠陥準位により発生電子がトラップされる、又は、暗時ノイズが増大するなど、著しく素子の性能が低下する。そのため、半導体層20の表面を不活性化処理する必要がある。不活性化処理は、半導体層20の表面に高濃度のp+層を形成することで実施する。
【0029】
次に、
図12に示すように、半導体層20の上にカラーフィルタ24を形成する。図示していないが、カラーフィルタ24の形成前に、半導体層20上に平坦化性を有する有機膜を成膜し、表面を平滑化してからカラーフィルタ24を形成しても良い。カラーフィルタ24は、顔料を分散させた感光性を有する樹脂を用いて、フォトリソグラフィによりパターン形成を行うことができる。
また、半導体層20の上、又は、その上に形成した平坦化膜上に、顔料を分散させた非感光性樹脂を塗布し、さらにこの非感光性樹脂上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによりパターン形成した上でドライエッチングを行うことで、カラーフィルタ24のパターン加工を行うことも可能である。
【0030】
カラーフィルタ24のカラー配列は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の三色のベイヤー配列(Bayer Array)でもよいし、RGBによる他の配列でもよいし、その他RGB以外の色(例えばホワイト、シアン、イエロー、マゼンタ等)のフィルタを配列したカラーフィルタ配列でも良いが、本実施形態はそれらに限定されるものではない。
カラーフィルタ24の形成後、カラーフィルタ24の上にマイクロレンズ25を形成することで、
図1に示す本実施形態の固体撮像素子となる。カラーフィルタ24の上に感光性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィにより各画素のレンズ間ギャップを形成した後に、熱フローさせることでレンズ形状に形成して、マイクロレンズ25とすることができる。
又は、カラーフィルタ24の上に樹脂を塗布し、その上に感光性樹脂を塗布して、フォトリソグラフィ、熱フローによりレンズ形状に形成した後に、レンズ形状の感光性樹脂膜を犠牲膜としてドライエッチングを行い、カラーフィルタ24の上に形成した樹脂をレンズ形状に加工する方法によっても、マイクロレンズ25を形成することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
(支持基板10上への光電変換素子21の形成)
CMOS製造プロセスにより、半導体基板30の中に光電変換素子21となる埋め込み型フォトダイオードを形成した。また、CMOSイメージセンサを駆動するための機能性素子である、浮遊拡散層アンプ、電荷転送用トランジスタ選択用トランジスタ、リセットトランジスタ、及びソースフォロワアンプを、光電変換素子21と同時に画素内に形成した。
光電変換素子21及びその他の素子を形成した後に、配線23を形成した。また、各配線23間に層間絶縁層22を形成した。層間絶縁層22は、非ドープ型酸化シリコンを常圧CVDで成膜することにより形成した。また、配線23は、アルミニウム薄膜をスパッタで成膜した後に、フォトリソグラフィにより配線パターン加工を行うことにより形成した。
【0032】
(光反射構造14の形成)
次に、光反射構造14を形成するため、層間絶縁層22上にフォトレジスト15のパターンを形成した。最初に感光性レジストをスピンコータで塗布し、露光、現像を行うことで、円柱形状のパターンを形成した。半導体基板30を230℃のホットプレートで加熱し、パターニングした感光性レジストを熱リフローさせることで、半球形状パターン15aを形成した。その後、再び感光性レジストをスピンコータで塗布し、露光、現像を行って、半球形状パターン15aを井桁形状に囲う矩形状パターン15bを形成して、フォトレジスト15のパターンを形成した。
本実施例においては、光電変換素子21の幅、層間絶縁層22の膜厚が共に3μmであり、かつ、フォトレジスト15と層間絶縁層22のドライエッチング選択比がほぼ1:1となるようなドライエッチング条件を適用したため、パターン完成後の半球形状パターン15aの膜厚が1.5μm、矩形状パターン15bの膜厚が3μmとなるように感光性レジスト塗布時の膜厚を調整した。
【0033】
次に、半導体基板30に対して、メタン(CF4)と酸素(O2)の混合ガスを用いてドライエッチング処理を行って層間絶縁層22を加工し、光透過層11を形成した。半球形状にパターニングされたフォトレジスト15はドライエッチング処理中にエッチングされてプロセス途中で消失するが、その半球形状が下地の層間絶縁層22に転写されたため、光透過層11を半球形状に加工することができた。また、配線23が形成された部分の層間絶縁層22上にある矩形状のフォトレジスト15のパターンもドライエッチング処理中にエッチングされてプロセス途中で消失するが、光透過層11が形成された時点でエッチングを終了するため、その下の層間絶縁層22及び配線23はエッチングされず保護される。
その後、光透過層11、及びドライエッチングされずに残った層間絶縁層22の表面に、スパッタリングによりアルミニウム薄膜を成膜することで、反射金属12を形成した。その後、常圧CVDによって非ドープ型酸化シリコンを成膜し、成膜後に表面をCMPによって研磨して表面を平滑化させることで、平坦化層13を形成した。以上の工程により、半導体基板30上に光反射構造14を形成した。
【0034】
(支持基板10上への半導体層20の形成)
支持基板10となるシリコン基板の表面にオゾン処理を施して表面を活性化させ、半導体基板30の平坦化層13を形成した側の面に貼り付けた。支持基板10と半導体基板30を貼り合わせた後に、グラインダを用いて半導体基板30を削り、CMPによって半導体薄膜表面を研磨し、表面を平滑化した。
その後、水酸化カリウムと水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の混合溶液を用いてウェットエッチング処理をして、半導体基板30を薄膜化することで半導体層20を形成した。固体撮像素子を形成した後、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査電子顕微鏡S4800により固体撮像素子の断面を観察したところ、半導体層20の膜厚は2.5μmであった。
【0035】
(固体撮像素子の製造)
半導体層20の表面に最大キャリア濃度1e19/cm3のp+層をドーピングすることで、不活性化処理を行った。表面の不活性化処理の後に、ドライエッチングにより半導体層20内の各画素の境界部分に幅200nm、深さ2μmの溝を形成し、この溝内に常圧CVDによって非ドープ型酸化シリコンを埋め込み、さらにCMPによって半導体薄膜表面を研磨し表面を平滑化することで、半導体層20内に素子分離壁26を形成した。
次に、半導体層20上に、それぞれ緑色、青色、赤色の顔料を含有する3種類の感光性樹脂を用いて、ベイヤー配列となるようにカラーフィルタ24を形成した。顔料を含有する感光性樹脂はスピンコート法で塗布した後、露光、現像することで色毎にパターンを形成した。
【0036】
カラーフィルタ24を形成した後に、カラーフィルタ24上に非感光性樹脂を塗布し、ベークを行うことで平坦化膜を形成した。次に、平坦化膜上にポジ型の感光性樹脂をスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィを行って各画素のレンズ間ギャップを形成した後に熱処理をすることで、感光性樹脂がリフローしてレンズ形状になり、マイクロレンズ25が形成された。また、可視光領域の光を入射した時に光電変換素子21の中心付近に集光するように、マイクロレンズ25のレンズ形状を設計した。
マイクロレンズ25を形成した後に、保護膜の成膜、支持基板のダイシング、配線ボンディング等の後処理を行うことで、固体撮像素子が完成した。
【0037】
本実施例の構造に従って製造した固体撮像素子に入射した光の挙動について、
図13を用いて説明する。固体撮像素子に向かって垂直に入射した光はマイクロレンズ25内で屈折し、光電変換素子21の中心に向かって集光する。波長が短い光は光電変換素子21の表面又は内部において光電変換し、電子-正孔対を形成するが、大半の赤色光は光電変換せずに半導体層20を通過し、光反射構造14中の反射金属12にて反射する。
また、マイクロレンズ25の頂点から垂直に入射した光だけでなく、光電変換素子21に集光後、光反射構造14に斜めに入射した光も、光透過層11及びそれを覆う反射金属12が半球形状で形成されているため、光電変換素子21の中心に向かって効率よく反射して再入射する。
【0038】
本実施例による固体撮像素子の感度向上効果を検証するため、実施例に従って作成した固体撮像素子の量子効率を測定した。固体撮像素子の量子効率QEは、単位時間当たりの一画素への入射光子数をNp、その画素で発生する信号電子数をNeとした場合、下記の式で表すことができる。
QE = Ne / Np
信号電子数Neを求めるため、固体撮像素子を専用の駆動回路基板に接続し、波長可変光源からの入射光を照射することで、波長毎にセンサー出力DN(Digit Number)を測定した後、以下の式を用いて信号電子数Neを計算した。
Ne = DN × C
ここで、上記式においてCは変換係数(Electron Number / Digit Number)を示している。
【0039】
一方、単位時間当たりの一画素への入射光子数Npは、まず分光感度が既知である市販のフォトダイオードに入射光を照射して、各波長における光電流を測定することで、波長毎の光量W(W/cm2)を求めた後、以下の式を用いて算出した。
Np = W× s × λ × t /(h × c)
上記式においてsは固体撮像素子の一画素の面積(cm2)、λは入射光の波長(m)、tは入射光の照射時間(sec)、hはプランク定数(6.6×10-34J・sec)、cは真空中の光速(3.0×1010 m/sec)を示している。
【0040】
上記方法により、本実施例で作成した固体撮像素子の量子効率を測定したところ、赤色領域(600~650nm)の入射光に対する量子効率は61.9%であった。
比較のため、半導体層20の下部に光反射構造14を有さない点を除けば、本実施例と同じ構造である固体撮像素子を作成し、本実施例の固体撮像素子と同じ測定条件で量子効率を測定したところ、赤色領域(600~650nm)の入射光に対する量子効率は50.9%であり、実施例と比べ感度が低下していた。
感度低下は、比較のために作成した固体撮像素子は半導体層20の下部に光反射構造14を有していないため、半導体層20で光電変換されなかった赤色光が配線層を通って、支持基板側10に抜けてしまうことで生じたものと思われる。
【0041】
以上の検証により、本実施例の構造の固体撮像素子は赤色光に対する感度が良好であることが示された。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
また、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2016-235840号(2016年12月5日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
【符号の説明】
【0042】
10 支持基板
11 光透過層
12 反射金属
13 平坦化層
14 光反射構造
15 フォトレジスト
15a 半球形状パターン
15b 矩形状パターン
20 半導体層
21 光電変換素子
22 層間絶縁層
23 配線
24 カラーフィルタ
25 マイクロレンズ
26 素子分離壁
30 半導体基板