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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
A61B6/00 320Z
A61B6/00 300X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019001281
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2020110228
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】代田 健
(72)【発明者】
【氏名】坂口 淳平
(72)【発明者】
【氏名】奥村 皓史
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/042483(WO,A1)
【文献】特開2008-245726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0085075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線管と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線管および前記X線検出器の少なくとも一方を所定方向に移動可能に支持する移動体と、
前記移動体を所定の方向に移動させるためのアシスト量を付与する駆動部と、
手動により前記移動体を移動させる際に、前記移動体の高さ位置に応じて、前記移動体に前記駆動部が付与する水平方向への前記アシスト量を変化させる制御を行う制御部と、を備える、X線撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、手動により前記移動体を移動させる際に、前記移動体の高さ位置が、低い場合よりも高い場合の方が、前記移動体に前記駆動部が付与する前記アシスト量を大きくするように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、手動により前記移動体を移動させる際に、前記移動体の高さ位置が、所定の高さ未満の場合には、前記移動体に前記駆動部が付与する前記アシスト量を一定とし、所定の高さ以上の場合には、高さが大きくなるにしたがって、前記アシスト量を大きくするように構成されている、請求項1または2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記駆動部は、モータを含み、
前記制御部は、手動により前記移動体を移動させる際に、前記移動体の高さ位置に応じて、前記移動体に前記駆動部が付与する前記アシスト量を変化させるように前記モータの発生トルクを制御するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記移動体の高さ位置を検出するための位置検出部をさらに備え、
前記制御部は、手動により前記移動体を移動させる際に、前記位置検出部により検出された高さ位置に基づいて、前記移動体に前記駆動部が付与する前記アシスト量を変化させるように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記移動体を前記所定方向に移動可能に支持する移動機構をさらに備え、
前記移動機構は、水平方向に設けられた複数のレールを含み、
前記制御部は、手動により前記移動体を移動させる際に、前記移動体の高さ位置に応じて、前記移動体に前記駆動部が付与する前記複数のレールに沿った水平方向への前記アシスト量を変化させるように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線撮影装置が知られている。(たとえば、特許文献1参照)
【0003】
上記特許文献1には、放射線源と、放射線検出手段と、放射線源を手動により移動させるための力を検出する操作部と、放射線源を移動させるサーボモータと、サーボモータを制御する制御部と、を備えるX線撮影装置が開示されている。上記特許文献1に記載のX線撮影装置では、放射線源を手動により移動させる際に、制御部は、放射線源を手動により移動させるための力に基づいて、サーボモータの回転速度を制御することにより、操作補助(パワーアシスト)を行うように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-227376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のX線撮影装置では、制御部は、放射線源を手動により移動させるための力に基づいて、サーボモータの回転速度を制御することにより、操作補助(パワーアシスト)を行うように制御している。しかしながら、たとえば、高い位置に放射線源が位置する場合には、操作者が手を高く上げて操作する必要があるため、操作部に力を加えづらくなる。このため、操作部に加える力が弱くなるので、充分なアシストが得られない。その結果、高い位置に放射線源が位置する場合には、移動のための操作が重く感じるという不都合がある。そのため、放射線源を手動により移動させる際に、放射線源の高さ位置により操作性が低下するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、X線管およびX線検出器の少なくとも一方を手動により移動させる際に、X線管およびX線検出器の少なくとも一方の高さ位置により操作性が低下するのを抑制することが可能なX線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面におけるX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、X線管およびX線検出器の少なくとも一方を所定方向に移動可能に支持する移動体と、移動体を所定の方向に移動させるためのアシスト量を付与する駆動部と、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置に応じて、移動体に駆動部が付与する水平方向へのアシスト量を変化させる制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面によるX線撮影装置では、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置に応じて、移動体に駆動部が付与する水平方向へのアシスト量を変化させる制御を行う制御部を設ける。これにより、たとえば、移動体の高さ位置が高い位置にある場合に水平方向へのアシスト量を大きくするように構成することにより、移動体の高さ位置が高い位置にある場合でも移動のための操作が重く感じるのを抑制することができる。また、たとえば、移動体の高さ位置が低い位置にある場合に水平方向へのアシスト量を大きくするように構成することにより、移動体の高さ位置が低すぎて力が加えづらい場合でも移動のための操作が重く感じるのを抑制することができる。これらの結果、X線管およびX線検出器の少なくとも一方を手動により移動させる際に、X線管およびX線検出器の少なくとも一方の高さ位置により操作性が低下するのを抑制することができる。また、制御部は、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置に応じて、移動体に駆動部が付与する水平方向へのアシスト量を変化させるので、上下方向に比べて移動距離が大きい水平方向における移動のための操作の際に、高さ位置によって操作性が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0009】
この発明の一の局面によるX線撮影装置おいて、好ましくは、制御部は、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置が、低い場合よりも高い場合の方が、移動体に駆動部が付与するアシスト量を大きくする。このように構成すれば、移動体が高い位置にある場合には、アシスト量が大きくなるので、移動体が高い位置にある場合でも、手動により移動体を容易に移動させることができる。
【0010】
この発明の一の局面によるX線撮影装置おいて、好ましくは、制御部は、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置が、所定の高さ未満の場合には、移動体に駆動部が付与するアシスト量を一定とし、所定の高さ以上の場合には、高さが大きくなるにしたがって、アシスト量を大きくする。このように構成すれば、移動のための力を加えることが比較的容易な移動体の高さ位置が低い場合に、アシスト量が変化するのを抑制することができる。これにより、移動のための操作が比較的容易な低い位置において高さ位置に応じて操作性が変動するのを抑制することができるので、操作性が低下するのを抑制することができる。
【0012】
この発明の一の局面によるX線撮影装置おいて、好ましくは、駆動部は、モータを含み、制御部は、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置に応じて、移動体に駆動部が付与するアシスト量を変化させるようにモータの発生トルクを制御する。このように構成すれば、モータのトルク(駆動力)を制御して力をアシストすることができる。これにより、操作力が直接的な力(トルク)によりアシストされるので、違和感のない良好なパワーアシストを行うことができる。この点でも、操作性が低下するのを抑制することができる。
【0013】
この発明の一の局面によるX線撮影装置おいて、好ましくは、移動体の高さ位置を検出するための位置検出部をさらに備え、制御部は、手動により移動体を移動させる際に、位置検出部により検出された高さ位置に基づいて、移動体に駆動部が付与するアシスト量を変化させる。このように構成すれば、位置検出部により検出した高さ位置に応じて容易にアシスト量を変化させることができる。
【0014】
この発明の一の局面によるX線撮影装置おいて、好ましくは、移動体を所定方向に移動可能に支持する移動機構をさらに備え、移動機構は、水平方向に設けられた複数のレールを含み、制御部は、手動により移動体を移動させる際に、移動体の高さ位置に応じて、移動体に駆動部が付与する複数のレールに沿った水平方向へのアシスト量を変化させるように構成する。このように構成すれば、移動体および移動体支持部の重量が重い場合であっても、移動体および移動体支持部をガイド部のレールに沿って、移動させることができるので、手動により移動体を移動させる操作の際にも移動体および移動体支持部を容易に移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、X線管およびX線検出器の少なくとも一方を手動により移動させる際に、X線管およびX線検出器の少なくとも一方の高さ位置により操作性が低下するのを抑制することが可能なX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示した模式図である。
図2】本発明の一実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示したブロック図である。
図3】本発明の一実施形態によるX線撮影装置の移動体と移動機構の構成を示した図である。
図4】本発明の一実施形態によるX線撮影装置の移動体の構成を示した図である。
図5】本発明の一実施形態によるX線撮影装置の移動体支持部内部の構成と制御部との接続を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(X線撮影装置の構成)
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態によるX線撮影装置100の全体構成について説明する。
【0019】
図1では、撮影室101に設置された天井懸垂型のX線撮影装置100の例を示している。X線撮影装置100は、移動体1と、移動機構2と、制御部3と、リモコン4と、X線検出器10とを主として備える。
【0020】
天井懸垂型のX線撮影装置100では、移動機構2によって、X線管11を有する移動体1が天井から吊り下げるように支持される。移動体1は、移動機構2によって撮影室101内で移動可能に支持されている。また、移動機構2には、移動体1の位置を検出する位置検出部7が設けられている。
【0021】
また、X線撮影装置100は、医用X線撮影装置であり、撮影対象である被検体200をX線撮影するように構成されている。X線撮影装置100は、被検体200を横たわらせた姿勢(臥位)で撮影を行うための撮影テーブル8と、被検体200を起立させた姿勢(立位)で撮影を行うための撮影スタンド9とを備えている。
【0022】
撮影テーブル8および撮影スタンド9には、それぞれX線検出器10が移動可能に保持されている。X線検出器10は、たとえばFPD(フラットパネルディテクタ)により構成されており、被検体200を透過したX線を検出する。ガイド部22は、少なくとも、撮影テーブル8を用いた臥位での撮影位置(図1の実線参照)と、撮影スタンド9を用いた立位での撮影位置(図1の二点鎖線参照)との間で、移動体1を移動させることが可能である。
【0023】
臥位の撮影では、移動体1が、撮影テーブル8のX線検出器10と上下方向に対向する位置に配置され、上下方向に対向するX線管11とX線検出器10との間で、撮影テーブル8上に横臥された被検体200が撮影される。立位の撮影では、移動体1が、撮影スタンド9のX線検出器10と水平方向に対向する位置に配置され、水平方向に対向するX線管11とX線検出器10との間で、撮影スタンド9の前に起立した被検体200が撮影される。また、X線撮影装置100は、持ち運び可能なX線検出器10を撮影室101内の任意の位置に配置し、移動体1をX線検出器10と対向する位置に移動させることにより、任意の姿勢の被検体200を任意の方向から撮影可能な一般撮影(姿勢を特定しない撮影)を行うことが可能である。
【0024】
また、X線撮影装置100は、制御部3およびリモコン4を備えている。制御部3は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを備えている。制御部3は、X線管11およびX線検出器10によるX線撮影の制御や、移動体1の移動に関する制御を行う。リモコン4は、移動体1の移動の操作を行うために、設けられている。リモコン4は、X線撮影に関わる入力操作を受け付ける機能を有する。入力操作は、オートポジショニング制御、X線撮影の撮影条件設定およびX線照射の開始指示などである。
【0025】
(移動体)
図2図4に示すように、移動体1は、X線管11と、力覚センサ12と、複数のボタン13と、把持部14と、コリメータ15と、タッチパネル16とを含んでいる。移動体1は、手動による移動または制御部3による制御によって、複数方向(所定方向)に移動可能に構成されている。
【0026】
X線管11は、図示しない電源から高電圧が印加されることによりX線を発生させ、被検体200にX線を照射する。
【0027】
力覚センサ12は、移動体1に配置されており、移動体1に加えられた各方向の力およびモーメントを検出することが可能である。
【0028】
より具体的には、力覚センサ12は、操作者が手動により移動体1を移動させるために加えた水平および垂直の各並進方向(X、Y、Z方向)の力を検出するように構成されている。また、力覚センサ12は、移動体1に加えられた水平軸(R軸)回りおよび垂直軸(Z軸)回りの各回転方向(θ、η方向)のモーメントを検出するように構成されている。力覚センサ12は、加えられた力およびモーメントの各検出方向成分を検出して、力およびモーメントの方向と、力およびモーメントの大きさとを計測することが可能である。力覚センサ12の検出結果は、制御部3によって取得される。
【0029】
ボタン13は、移動体1に複数配置された後述するロック機構6の制御を行うために、操作者が押下する物理ボタンであり、移動体1の把持部14の近傍(把持部14もしくは把持部付近)に複数設けられる。
【0030】
把持部14は、移動体1に設けられている。把持部14は、操作者が、手動により移動体1を移動させる操作を行う際に把持するために設けられており、操作者の操作力を移動体1に伝える。
【0031】
コリメータ15は、位置調整可能な複数の遮蔽板(コリメータリーフ)を有し、X線管11からのX線の一部を遮蔽することにより、X線の照射野を調整する機能を有する。
【0032】
タッチパネル16は、X線撮影の撮影条件や術式を表示し、操作者からの入力操作を受付可能なタッチパネルである。
【0033】
(移動機構)
図1および3に示すように、移動機構2は、移動体1を複数方向(所定方向)に移動可能に支持する移動体支持部21と、複数のレールを含むガイド部22を備える。
【0034】
移動機構2(移動体支持部21、ガイド部22)により移動体1は、複数方向に移動が可能である。図1および図3に示すように、鉛直(垂直)方向をZ方向とし、水平方向で互いに直交する2方向をX方向、Y方向とする。
【0035】
本実施形態では、移動機構2(移動体支持部21、ガイド部22)により移動体1が移動できる複数方向は、図3に示すように、3つの並進方向(X、YおよびZ方向)と、垂直方向のZ軸回りの回転方向(η方向)と、水平方向のR軸回りの回転方向(θ方向)との、合計5方向を含む例を示す。
【0036】
移動体支持部21は、図1に示すように、支柱211と、ベース部212と、回転保持部213と、を含む。また、図2に示すように、移動機構2(移動体支持部21)の内部には、モータ5が各軸に対応して設けられている。なお、モータ5は、特許請求の範囲の「駆動部」の一例である。
【0037】
図1に示すように、支柱211は、移動体1を垂直方向へ並進移動可能に保持する。支柱211は、ガイド部22に取り付けられたベース部212から吊り下がるように設けられ、Z方向(上下方向)に伸縮可能である。これらの構成により、移動体支持部21は、移動体1を3つの並進方向(X、YおよびZ方向)へ移動可能に支持する。また、支柱211の先端(下端)には、回転保持部213が設けられている。
【0038】
回転保持部213は、垂直軸(Z軸)回りのη方向に回転移動可能に支柱211に支持される。Z軸は、支柱211の中心軸線に一致する。回転保持部213は、一端側が支柱211に接続されるとともに、移動体1を水平軸(R軸)回りのθ方向に回転移動可能に保持している。R軸は、支柱211の半径方向(水平方向)である。これらの構成により、移動体支持部21は、移動体1を2つの回転方向(ηおよびθ方向)へ移動可能に支持する。
【0039】
回転保持部213は、移動体1と一体となって複数方向(X、Y、Z、η、θ)に移動するので、操作者は、把持部14を持って力を加えることにより、移動体1(X線管11)を複数方向(X、Y、Z、η、θ)に移動させることができる。
【0040】
また、移動体支持部21は、図5に示すように、各軸のモータ5に設けられたエンコーダ51と、ロック機構6と、位置検出部7と、を含んでいる。
【0041】
各エンコーダ51は、各軸方向における移動体1の相対位置を検出する。各エンコーダ51の出力信号に基づいて、移動体1のX線管11の現在位置(X、Y、Z方向の各位置、および、η、θ方向の各回転角度)を求めることが可能である。また、各エンコーダ51の出力信号は、制御部3に送られ、位置情報として、移動体1の移動の制御に用いられる。
【0042】
ロック機構6は、制御部3の制御により、複数方向の各々における、移動体1のロック解除状態(移動を許可する状態)とロック状態(移動を禁止する状態)とを切り替える。
【0043】
位置検出部7は、各軸に設けられたポテンショメータを含んでいる。また、位置検出部7は、移動体1の移動により、出し引きされたワイヤーの長さを電気的に出力することにより、移動体1の絶対位置を検出する。また、各ポテンショメータの出力信号は、制御部3に送られ、位置情報として、パワーアシスト制御などの移動体1の移動の制御に用いられる。なお、移動体1の高さ位置の情報は、Z軸に設けられたポテンショメータにより、検出される。
【0044】
ガイド部22は、図1に示すように、撮影室101の天井に設けられている。ガイド部22は、複数のレールを含み、移動体支持部21をX方向およびY方向に並進移動可能に支持する。これらの構成により、移動体支持部21は、ガイド部22に沿ったX方向およびY方向(左右方向)に移動体1を移動可能に支持する。
【0045】
具体的には、図3に示すように、ガイド部22は、天井面に固定された固定レール221と、可動レール222とを含む。なお、固定レール221および可動レール222は、特許請求の範囲の「複数のレール」の一例である。固定レール221は、X方向に直線状に延びる。固定レール221には、可動レール222がX方向に移動可能に取り付けられている。可動レール222は、Y方向に直線状に延びる。可動レール222には、支柱211のベース部212がY方向に移動可能に取り付けられている。
【0046】
(ロック機構)
図5に示すように、ロック機構6は、移動体支持部21の内部に設けられる。ロック機構6は、複数方向の各々に対応して、移動機構2(移動体1)の移動をロックする。
【0047】
具体的には、ロック機構6として、電磁ロック(電磁ブレーキ)が複数設けられている。ロック機構6としては、油圧式や機械式のブレーキなどであってもよい。各電磁ロックは、複数方向の各々における、移動体1の移動を解除可能にロックするように構成されている。
【0048】
電磁ロックは、X、Y、Z、η、θ方向の複数方向に個別に設けられている。各電磁ロックは、X、Y、Z、η、θ方向の各々のロック/ロック解除を個別に切り替えることが可能である。これにより、ロック機構6は、複数方向の各々への移動体1のロック解除状態(移動を許可する状態)と、各方向への移動体1のロック状態(移動を禁止する状態)とに切り替え可能に構成されている。
【0049】
ロック機構6は、常時、複数方向の各々における移動体1の移動を禁止する状態(ロック状態)に維持している。そして、ロック機構6は、制御部3により決定された方向について、個別に移動体1の移動を許可する状態(ロック解除状態)に切り替えるように構成されている。また、各電磁ロックの動作は、制御部3によって制御される。
【0050】
ロック状態とロック解除状態との切り替えは、ボタン13の入力操作によって行われる。移動体1には、複数方向(X、Y、Z、η、θ)の各々について、個別にロック状態とロック解除状態とを切り替えるための複数のボタン13が設けられている。
【0051】
制御部3は、各ボタン13の入力操作に基づいて、移動体1の移動を許可する方向を決定する制御を行うことが可能である。制御部3は、入力操作が行われたボタン13に対応する方向に基づいて移動を許可する方向を個別に切り替える制御を行うように構成されている。
【0052】
また、複数の電磁ロックをロック解除し、複数方向への移動体1の移動を許可させる複数方向解除モードや全方向への移動体1の移動を許可させるフリーモードを設けてもよい。その際、移動体1には、それぞれのモード切り替え用ボタンとして、複数方向解除モードボタン(図示せず)やフリーモードボタン(図示せず)を別途設けてもよい。
【0053】
制御部3は、複数方向解除モードボタン(もしくはフリーモードボタン)の入力操作を受け付けると、複数の電磁ロック(もしくは全ての電磁ロック)をロック解除状態に切り替える制御を開始する。この場合、操作者は、把持部14を把持して移動体1を複数方向(もしくは全方向)へ自由に移動させることが可能となる。
【0054】
複数方向解除モード(もしくはフリーモード)の制御を開始した場合、制御部3は、操作者の設定解除操作、または、複数方向の全方向への移動を許可してからの時間経過に基づいて、電磁ロックにより複数方向の全方向への移動を禁止する状態に切り替える。操作者の設定解除操作としては、たとえば、複数方向解除モードボタン(もしくはフリーモードボタン)が一度入力されて、複数方向解除モード(もしくはフリーモード)に移行した後、再度、複数方向解除モードボタン(もしくはフリーモードボタン)が入力された場合や、専用の解除ボタン(図示せず)が入力された場合が含まれる。
【0055】
(アシスト手段)
手動により移動体1を移動させる際にアシストを付与するアシスト手段を図5を参照して説明する。
【0056】
移動体支持部21(ベース部212)は、X軸用のモータ5と、X軸用の伝達機構(図示せず)とを含む。X軸用の伝達機構は、たとえば、ベルト-プーリ機構を含んでいる。X軸用のモータ5が回転駆動することにより、一対の可動レール222(移動体1)に対してX方向にアシスト力を付与する。
【0057】
移動体支持部21(ベース部212)は、Y軸用のモータ5と、Y軸用の伝達機構(図示せず)とを含む。Y軸用の伝達機構は、たとえば、X軸用の伝達機構と同様、ベルト-プーリ機構を含んでいる。Y軸用のモータ5が回転駆動することにより、支柱211(移動体1)に対してY方向にアシスト力を付与する。
【0058】
移動体支持部21(ベース部212)は、Z軸用のモータ5と、Z軸用の伝達機構(図示せず)とを含む。Z軸用の伝達機構は、たとえば、支柱211の下端部の回転保持部213に接続された図示しないワイヤーを備えた巻き上げ機構である。Z軸用のモータ5がワイヤーを巻き上げ駆動することにより、回転保持部213(移動体1)に対してZ方向のアシスト力を付与する。
【0059】
移動体支持部21(支柱211)は、回転保持部213をZ軸回りに回転駆動するη軸用のモータ5を含む。η軸用のモータ5は回転保持部213に直結されている必要はなく、減速機などの伝達機構が設けられていてもよい。η軸用のモータ5は、回転保持部213(移動体1)に対してη方向にアシスト力を付与する。
【0060】
移動体支持部21(支柱211)は、移動体1をR軸回りに回転駆動するθ軸用のモータ5を含む。θ軸用のモータ5は移動体1に直結されている必要はなく、減速機などの伝達機構が設けられていてもよい。θ軸用のモータ5は、移動体1に対してθ方向にアシスト力を付与する。
【0061】
各モータ(X軸、Y軸、Z軸、η軸、θ軸)の各々には、エンコーダ51が接続されている。また、各モータ(X軸、Y軸、Z軸、η軸、θ軸)の動作は、制御部3によって制御される。制御部3は、アシスト力を付与する方向に対応するモータ5(X軸、Y軸、Z軸、η軸、θ軸)を個別に駆動する制御により、移動体1の移動方向に向かうアシスト力を発生させる。
【0062】
(パワーアシスト制御)
制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1にモータ5が付与するアシスト量を変化させる制御を行う。
【0063】
また、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1にモータ5が付与する水平方向へのアシスト量を変化させる。
【0064】
また、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、位置検出部7により検出された高さ位置に基づいて、移動体1にモータ5が付与するアシスト量を変化させる。
【0065】
また、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1にモータ5が付与する複数のレール(221、222)に沿った水平方向へのアシスト量を変化させる。
【0066】
具体的には、制御部3は、操作者が手動により移動体1を移動させる際に、位置検出部7により検出し取得された高さ位置と力覚センサ12により検出された操作力とに基づいて、モータ5の発生トルクを制御し、移動体1の移動方向に向かうパワーアシストを行う制御を行うように構成されている。
【0067】
まず、制御部3は、Z軸に設けられたポテンショメータ(位置検出部7)により移動体1の高さ位置を随時、検出して取得する。ポテンショメータは、移動体1の移動により出し引きされたワイヤーの長さを電気的に出力することにより、移動体1の絶対位置を検出する。そして、操作者が、ロック機構6のロックを解除し、把持部14を把持して移動体1を移動させるべく移動方向に向けて力を加えると、制御部3は、力覚センサ12によって操作力を検出して取得する。制御部3は、検出された操作力を移動体1の自重、装置による影響を補正し、各方向の操作力に変換する。さらに、制御部3は、変換して得られた操作力に対して、Z軸に設けられたポテンショメータ(位置検出部7)により検出された移動体1の高さ位置に応じた、アシスト比を乗じたアシスト力が発生するように、各軸に設けられたモータ5のトルクを制御する。
【0068】
たとえば、制御部3は、式(1)のように、変換された操作力に対して、移動体1の高さ位置に応じたアシスト比を乗じたアシスト力が発生するように移動体支持部21の各軸に設けられたモータ5のトルクを制御する。
Ma=fh-Fr+αfh・・・(1)
なお、Mは移動部分(移動体1と、移動機構2の各軸の移動の際に移動する部位)の質量、aは加速度、fhは移動体1に加えられる操作力、Frは抵抗力、αは操作力に対するアシスト量の比である。Mはたとえば、数百kgである。αはたとえば、1.5以上10以下程度である。
【0069】
ここで、本実施形態では、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置が、低い場合よりも高い場合の方が、移動体1に付与するアシスト量(αfh)を大きくなるように構成されている。
【0070】
具体的には、制御部3は、移動体1の高さが所定の高さ以上の場合には、高さが大きくなるにしたがって、アシスト量を大きくしている。たとえば、高さ位置に応じて、アシスト量を一次関数的に増加させる(1.5倍以上10倍以下程度)。このように制御を行うことで、移動体1を手動により移動させる際に、高さ位置が変化しても、急激に操作感が変化することなく、操作することができる。さらに、制御部3は、位置検出部7で検出された移動体1の高さが所定の高さ未満の場合には、移動体1に駆動部が付与するアシスト量を一定とする(1.5倍程度)ことで、移動体1の位置が低い場合に、アシスト量が小さくなりすぎるのを抑制している。なお、所定の高さは、操作者が、移動体1を移動させ易い高さを基準にするとよい。たとえば、操作者の身長に基づいて、算出された高さ(操作者の平均身長に基づいたしきい値など)である。
【0071】
このように構成することで、移動体1(X線管11)を手動により移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じたパワーアシスト制御が行われる。 これにより、移動体1に付与されるアシスト量が変化するようにモータ5のトルクが制御され、複数のレール(221,222)に沿ったX、Y方向(水平方向)およびZ、η、θ方向に移動体1は移動させられる。
【0072】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
本実施形態では、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1に駆動部(モータ5)が付与するアシスト量を変化させる制御を行う。これにより、移動体1の高さ位置が高い位置にある場合にアシスト量を大きくするように構成することで、移動体1の高さ位置が高い位置にある場合でも移動のための操作が重く感じるのを抑制することができる。その結果、X線管11およびX線検出器10の少なくとも一方を手動により移動させる際に、X線管11およびX線検出器10の少なくとも一方の高さ位置により操作性が低下するのを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置が、低い場合よりも高い場合の方が、移動体1に駆動部(モータ5)が付与するアシスト量を大きくするように構成する。これにより、移動体1が高い位置にある場合には、アシスト量が大きくなるので、移動体1が高い位置にある場合でも、手動により移動体1を容易に移動させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置が、所定の高さ未満の場合には、移動体1に駆動部(モータ5)が付与するアシスト量を一定とし、所定の高さ以上の場合には、高さが大きくなるにしたがって、アシスト量を大きくするように構成する。これにより、移動のための力を加えることが比較的容易な移動体1の高さ位置が低い場合に、アシスト量が変化するのを抑制することができる。これにより、移動のための操作が比較的容易な低い位置において高さ位置に応じて操作性が変動するのを抑制することができるので、操作性が低下するのを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1に駆動部(モータ5)が付与する水平方向へのアシスト量を変化させるように構成する。これにより、上下方向に比べて移動距離が大きい水平方向における移動のための操作の際に、高さ位置によって操作性が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、駆動部は、モータ5を含み、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1にモータ5が付与するアシスト量を変化させるようにモータ5の発生トルクを制御するように構成する。これにより、モータ5のトルク(駆動力)を制御して力をアシストすることができる。そのため、操作力が直接的な力(トルク)によりアシストされるので、違和感のない良好なパワーアシストを行うことができる。この点でも、操作性が低下するのを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、移動体1の高さ位置を検出するための位置検出部7をさらに備え、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、位置検出部7により検出された高さ位置に基づいて、移動体1に駆動部が付与するアシスト量を変化させるように構成する。これにより、位置検出部7により検出した高さ位置に応じて容易にアシスト量を変化させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、移動体1を所定方向に移動可能に支持する移動機構2をさらに備え、移動機構2は、水平方向に設けられた複数のレールを含み、制御部3は、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置に応じて、移動体1にモータ5が付与する複数のレール(固定レール221、可動レール222)に沿った水平方向へのアシスト量を変化させるように構成する。これにより、移動体1および移動体支持部21の重量が重い場合であっても、移動体1および移動体支持部21をガイド部22のレールに沿って、移動させることができるので、手動により移動体1を移動させる操作の際にも移動体1および移動体支持部21を容易に移動させることができる。
【0080】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0081】
たとえば、上記実施形態では、X線管11が移動体1に設けられた構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線検出器、もしくは、X線管とX線検出器の両方が移動体に設けられていてもよい。そのため、近接透視台のように、X線検出器が移動体に設けられ、X線検出器を手動で移動させるX線撮影装置やX線管とX線検出器の両方が移動体に設けられ、その両方を手動で移動させるCアーム式のX線撮影装置に本発明を適用してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、移動体1の高さ位置が、低い場合よりも高い場合の方が付与するアシスト量が大きくなるように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動体の高さ位置が、高い場合よりも低い場合の方が付与するアシスト量が大きくなるようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、手動により移動体1を移動させる際に、移動体1の高さ位置が、所定の高さ未満の場合には、付与するアシスト量を一定とし、所定の高さ以上の場合には、高さ位置に応じて、付与するアシスト量を一次関数的に増加させる構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の高さ未満の場合においても、アシスト量を一定とせずに、たとえば、一次関数的にアシスト量が変化するようにしてもよい。また、所定の高さ自体設けなくてもよい。また、アシスト量の変化は、一次関数的な変化でなくてもよく、たとえば、段階的な変化でもよいし、単調増加しない変化でもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ボタン13を物理ボタンで示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ボタンは、タッチパネルに表示されるボタンでもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、制御部3が撮影室101の外部に配置されている(設けられている)例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、撮影室の内部に配置されてよいし、移動体や移動機構に内蔵されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、入力装置をリモコン4で構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、入力装置は、マウスやキーボードなどの入力装置により構成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、制御部3は、高さ位置と操作力と基づいて、アシスト量を変化させる制御を行う構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、高さ位置と操作力とに加えて、他の要素(たとえば、移動体の速度など)に基づいて、アシスト量を変化させる制御を行ってもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、モータ5(駆動部)の発生トルクを制御することでアシスト量を変化させる構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、モータの回転速度を制御することでアシスト量を変化させてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、位置検出部7が高さ位置を検出する構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、操作者が、タッチパネルなどにより、高さ情報を手動で入力するように構成し、制御部は、入力された高さ情報に基づいて、アシスト量の制御を行ってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、位置検出部7が、ポテンショメータを含んでいる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、位置検出部は、エンコーダやレーザ測距センサを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 移動体
2 移動機構
3 制御部
5 モータ(駆動部)
7 位置検出部
10 X線検出器
11 X線管
100 X線撮影装置
200 被検体
221 固定レール(複数のレール)
222 可動レール(複数のレール)
図1
図2
図3
図4
図5