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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/19 20060101AFI20220726BHJP
   B60R 21/38 20110101ALI20220726BHJP
【FI】
F15B15/19
B60R21/38 323
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019005358
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020112252
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】青山 譲二
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-123868(JP,A)
【文献】特開2011-208738(JP,A)
【文献】特開2016-194326(JP,A)
【文献】特表2017-515080(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1652883(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/38
F15B 15/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動時に作動用ガスを発生させるガス発生器を内部に保持した筒状のケースを有して、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを先端から吐出可能に、前記ケースの先端部を開口させたインナ部材と、
前記ケースの前記開口を覆うヘッド部と、前記ケースの外周面側を覆うように、前記ヘッド部の外周縁から延びる筒状のカバー部と、を有し、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを、前記ヘッド部の裏面側における前記カバー部の内周面側に流入させて、前記インナ部材から離れるように前進移動するアウタ部材と、
を備えて構成されるアクチュエータであって、
前記アウタ部材の前記ヘッド部と前記カバー部とが、相互に別体の部材から形成されるとともに、
前記アウタ部材が、前記ヘッド部と前記カバー部とに対応して設けられた結合部相互を結合させて、形成され
前記アウタ部材の前記ヘッド部が、前記結合部としての結合軸部を元部側に備えるとともに、前記結合軸部が、外周面側から凹む結合凹部を有し、
前記アウタ部材の前記カバー部が、先端部に、前記結合軸部の外周を覆う前記結合部としての筒状の結合筒部を備えるとともに、前記結合筒部が、前記結合軸部の前記結合凹部に嵌合する嵌合凸部を設けられて、前記結合軸部に結合され、
前記インナ部材の前記ケースが、金属製のパイプ材から形成されるとともに、前記ガス発生器の外周側に配設される一般筒部と、該一般筒部の先端側に配置されて、前記一般筒部より拡径した先端筒部と、を備えて構成され、
前記アウタ部材の前記カバー部が、金属製のパイプ材から形成されるとともに、前記ヘッド部から離れた元部側に、内周面を前記一般筒部の外周面に摺動可能として、縮径された縮径部が配設され、
前記インナ部材の前記先端筒部と前記アウタ部材の前記縮径部とが、作動時における前記アウタ部材の前進移動時に、前記縮径部を前記先端筒部に当接させて、前記アウタ部材の前進移動を停止させるストッパ機構、を構成していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記アウタ部材における前記カバー部の前記結合筒部の内周面と前記ヘッド部の前記結合軸部の外周面との間に、全周にわたって、防水性を有した環状のシール材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記アウタ部材の前記カバー部が、前記ヘッド部から離れた前記縮径部の端縁に、前記一般筒部の外周面との間に隙間を開けるように拡径する拡径筒部を備え、
前記拡径筒部の内周面と前記一般筒部の外周面との間に、全周にわたって、防水性を有した環状のシール材が配設されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
作動時に作動用ガスを発生させるガス発生器を内部に保持した筒状のケースを有して、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを先端から吐出可能に、前記ケースの先端部を開口させたインナ部材と、
前記ケースの前記開口を覆うヘッド部と、前記ケースの外周面側を覆うように、前記ヘッド部の外周縁から延びる筒状のカバー部と、を有し、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを、前記ヘッド部の裏面側における前記カバー部の内周面側に流入させて、前記インナ部材から離れるように前進移動するアウタ部材と、
を備えて構成されるアクチュエータの製造方法であって、
前記インナ部材の前記ケースと前記アウタ部材の前記カバー部とが、それぞれ、金属製のパイプ材から形成されるとともに、鍛造加工を利用して、形成され、
前記アウタ部材の前記ヘッド部が、金属製のブロック材から、鍛造加工と切削加工とを利用して、形成されて、
前記ヘッド部と前記カバー部とに対応して設けられた結合部相互を結合させることにより、前記アウタ部材が、形成されていることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器が発生させた作動用ガスにより作動されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際にフードパネルを持ち上げるように作動されるフード跳ね上げ装置等の、車両に搭載される自動車用安全装置に好適に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアクチュエータでは、フードパネルを持ち上げるためのフード跳ね上げ装置に使用されるものがあり、作動時に作動用ガスを発生させるガス発生器を設けたインナ部材と、インナ部材を覆うように配設されて、ガス発生器の発生する作動用ガスにより、前進移動して、フードパネルを持ち上げるアウタ部材と、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1,2参照)。インナ部材は、ガス発生器を内部に保持した筒状のケースを有して、ガス発生器から発生する作動用ガスを先端から吐出可能に、ケースの先端部を開口させていた。アウタ部材は、インナ部材のケースの開口を覆うヘッド部と、ケースの外周面側を覆うように、ヘッド部の外周縁から延びる筒状のカバー部と、を有し、ガス発生器から発生する作動用ガスを、ヘッド部の裏面側におけるカバー部の内周側に流入させて、インナ部材から離れるように前進移動する構成としていた。なお、このアクチュエータでは、インナ部材のケースにおける開口から離れた元部側とアウタ部材のヘッド部とが、作動時にフードパネルを持ち上げることができるように、それぞれ、フードパネルのヒンジ機構の所定部位に連結されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-123868号公報
【文献】特開2017-180668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアクチュエータでは、ヘッド部とカバー部とを有したアウタ部材が、一つの金属製のブロック材から鍛造加工と切削加工とを利用して、形成されていた。すなわち、アウタ部材は、カバー部が筒状としており、ブロック材を、カバー部の略筒形状に近似するように、ある程度、鍛造加工して賦形した後に、カバー部の内部のヘッド部近傍まで、切削加工して形成しており、加工工数と加工費とが嵩むとともに、廃棄する切削屑の量も多くなって、省資源的でなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、容易、かつ、省資源的に形成できるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアクチュエータは、作動時に作動用ガスを発生させるガス発生器を内部に保持した筒状のケースを有して、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを先端から吐出可能に、前記ケースの先端部を開口させたインナ部材と、
前記ケースの前記開口を覆うヘッド部と、前記ケースの外周面側を覆うように、前記ヘッド部の外周縁から延びる筒状のカバー部と、を有し、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを、前記ヘッド部の裏面側における前記カバー部の内周面側に流入させて、前記インナ部材から離れるように前進移動するアウタ部材と、
を備えて構成されるアクチュエータであって、
前記アウタ部材の前記ヘッド部と前記カバー部とが、相互に別体の部材から形成されるとともに、
前記アウタ部材が、前記ヘッド部と前記カバー部とに対応して設けられた結合部相互を結合させて、形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアクチュエータは、アウタ部材が、ヘッド部とカバー部との対応して設けられた結合部相互を結合させて、形成されており、筒状のカバー部を、中実のブロック材から形成せずに、パイプ材から形成できることから、アウタ部材の加工工数と加工費とを低減でき、さらに、加工屑も少なくできることから、省資源的となる。また、アウタ部材が、ヘッド部とカバー部とを結合させて形成される構成であり、作動初期におけるガス発生器から吐出される作動用ガスを貯留する貯留室の容積を調整する場合、カバー部を変更せずに、ヘッド部におけるインナ部材の開口を塞ぐ閉塞面を、凹ませたり、突出させたりして、容易に、調整できる。さらに、アウタ部材が、ヘッド部とカバー部とを結合させて形成される構成であり、アクチュエータの作動時に押圧する部材の形状に対応させて、ヘッド部の形状を変更する場合でも、カバー部を、極力、変更せずに済み、容易に対処できる。
【0008】
したがって、本発明に係るアクチュエータでは、容易、かつ、省資源的に形成でき、さらに、ヘッド部を設計変更する場合にも、容易に対処することができる。
【0009】
そして、本発明に係るアクチュエータでは、前記アウタ部材の前記ヘッド部が、前記結合部としての結合軸部を元部側に備えるとともに、前記結合軸部が、外周面側から凹む結合凹部を有し、
前記アウタ部材の前記カバー部が、先端部に、前記結合軸部の外周を覆う前記結合部としての筒状の結合筒部を備えるとともに、前記結合筒部が、前記結合軸部の前記結合凹部に嵌合する嵌合凸部を設けられて、前記結合軸部に結合されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、ヘッド部とカバー部との結合に関し、カバー部の先端部側の結合筒部を、ヘッド部の元部側の結合軸部に被せ、結合筒部を縮径させるようにカシメて形成する嵌合凸部を、結合凹部に嵌合させれば、結合軸部を結合筒部に結合させることができて、ヘッド部とカバー部とが別体としていても、簡便に、ヘッド部とカバー部とを結合させることができる。
【0011】
また、本発明に係るアクチュエータでは、前記インナ部材の前記ケースが、金属製のパイプ材から形成されるとともに、前記ガス発生器の外周側に配設される一般筒部と、該一般筒部の先端側に配置されて、前記一般筒部より拡径した先端筒部と、を備えて構成され、
前記アウタ部材の前記カバー部が、金属製のパイプ材から形成されるとともに、前記ヘッド部から離れた元部側に、内周面を前記一般筒部の外周面に摺動可能として、縮径された縮径部が配設され、
前記インナ部材の前記先端筒部と前記アウタ部材の前記縮径部とが、作動時における前記アウタ部材の前進移動時に、前記縮径部を前記先端筒部に当接させて、前記アウタ部材の前進移動を停止させるストッパ機構、を構成していることが望ましい。
【0012】
このような構成では、作動時、インナ部材の先端筒部に、所定の作動ストローク分、前進移動したアウタ部材の縮径部が当接して、アウタ部材のヘッド部が移動を停止することから、本発明に係るアクチュエータを使用して構成される装置を、円滑に作動させることができる。そして、インナ部材のケースやアウタ部材のカバー部が、金属製のパイプ材から形成されていることから、鍛造加工を利用して、容易に、インナ部材のケースにおける一般筒部から拡径する先端筒部や、アウタ部材のカバー部における縮径部を形成できる。
【0013】
さらに、本発明に係るアクチュエータでは、前記アウタ部材における前記カバー部の前記結合筒部の内周面と前記ヘッド部の前記結合軸部の外周面との間に、全周にわたって、防水性を有した環状のシール材が配設されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、アクチュエータのアウタ部材におけるインナ部材の開口を覆うヘッド部とカバー部との結合部間に、防水性を有したシール材が配設されており、その部位から進入しようとする雨水が、インナ部材の開口側に進入せず、ガス発生器の内容物の変質を防止できる。また、ヘッド部とカバー部との結合部間にシール材が配設されていれば、作動時のガス発生器から吐出される作動用ガスのアウタ部材外への漏れも防止できることから、作動用ガスの所定の圧力を安定して確保できて、アウタ部材が、所定の駆動力により、前進移動することができる。
【0015】
また、本発明に係るアクチュエータでは、前記アウタ部材の前記カバー部が、前記ヘッド部から離れた前記縮径部の端縁に、前記一般筒部の外周面との間に隙間を開けるように拡径する拡径筒部を備え、
前記拡径筒部の内周面と前記一般筒部の外周面との間に、全周にわたって、防水性を有した環状のシール材が配設されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、アクチュエータのインナ部材のケースにおける一般筒部の外周面とアウタ部材のカバー部の内周面との間のシール材によって、カバー部の開放端側から進入しようとする雨水が、カバー部におけるヘッド部側に進入せず、ガス発生器の内容物の変質を防止できる。また、塵の進入も防止できることから、カバー部の縮径部と一般筒部の外周面との相互の摺動面も、平滑な状態を維持できて、作動時、カバー部の縮径部が、一般筒部の外周面を円滑に摺動できて、アクチュエータは、所定の駆動力を安定して発揮することができる。
【0017】
また、本発明のアクチュエータの製造方法では、作動時に作動用ガスを発生させるガス発生器を内部に保持した筒状のケースを有して、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを先端から吐出可能に、前記ケースの先端部を開口させたインナ部材と、
前記ケースの前記開口を覆うヘッド部と、前記ケースの外周面側を覆うように、前記ヘッド部の外周縁から延びる筒状のカバー部と、を有し、前記ガス発生器から発生する作動用ガスを、前記ヘッド部の裏面側における前記カバー部の内周面側に流入させて、前記インナ部材から離れるように前進移動するアウタ部材と、
を備えて構成されるアクチュエータの製造方法であって、
前記インナ部材の前記ケースと前記アウタ部材の前記カバー部とが、それぞれ、金属製のパイプ材から形成されるとともに、鍛造加工を利用して、形成され、
前記アウタ部材の前記ヘッド部が、金属製のブロック材から、鍛造加工と切削加工とを利用して、形成されて、
前記ヘッド部と前記カバー部とに対応して設けられた結合部相互を結合させることにより、前記アウタ部材が、形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のアクチュエータの製造方法では、インナ部材におけるガス発生器を内部で保持するケースが、ガス発生器から発生する作動用ガスを先端部の開口から吐出させるような筒状の構造としていても、金属製のパイプ材から、鍛造加工を利用して形成されており、切削屑等を発生させる切削加工を極力利用せずに形成できることから、省資源的に簡便に製造できる。また、アウタ部材では、ヘッド部が、金属製のブロック材から、鍛造加工と切削加工とを利用して、形成されて、カバー部が、既述したように、金属製のパイプ材から、鍛造加工を利用して、形成されることから、アウタ部材も、省資源的に簡便に製造できる。さらに、アウタ部材が、別体のヘッド部とカバー部とを結合させて形成する構成であり、アクチュエータの作動時に押圧する部材の形状に対応させて、ヘッド部の形状を変更する場合でも、カバー部を変更せずに済み、容易に対処できる。
【0019】
したがって、本発明に係るアクチュエータの製造方法では、アクチュエータを、容易、かつ、省資源的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る一実施形態のアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置の作動状態を説明する車両の概略部分縦断面図である。
図2】実施形態のアクチュエータの概略縦断面図である。
図3】実施形態のアクチュエータの作動後の概略縦断面図である。
図4】実施形態のアクチュエータの概略分解斜視図である。
図5】実施形態のアウタ部材のヘッド部を形成する工程を説明する図である。
図6】実施形態のアウタ部材のカバー部を形成する工程を説明する図である。
図7】実施形態のアウタ部材におけるカバー部とヘッド部とを結合する工程と、を説明する図である。
図8】実施形態のインナ部材のケースを形成する工程を説明する図である。
図9】実施形態の変形例を示すアクチュエータであり、貯留室の容積を調整したものを示す。
図10】実施形態の他の変形例のアクチュエータの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータ20は、図1に示すように、自動車用安全装置としてのフード跳ね上げ装置(以下、適宜、「跳ね上げ装置」と略す)Uに使用されるものであり、車両Vにおけるフードパネル7の後端7c側のヒンジ機構9に、配設される。
【0022】
なお、車両Vの図示しないフロントバンパには、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサが、配設されており、このセンサからの信号を入力させている図示しない制御回路が、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、アクチュエータ20のガス発生器40(図2,4参照)における図示しない火薬を点火させて作動用ガスGを発生させることにより、アクチュエータ20を作動させ、そして、フードパネル7の後端7cを上昇させるように、跳ね上げ装置Uを動作させることとなる。
【0023】
フードパネル7は、図1に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、後端7c近傍の左右両側に配置されるヒンジ機構9により、車両Vの車体(ボディ)1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている(図1のAの二点鎖線参照)。フードパネル7は、鋼、アルミニウム合金等からなる板金製として、上面側のアウタパネル7aと、下面側に位置してアウタパネル7aより強度を向上させたインナパネル7bと、から構成されている。フードパネル7は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ20が作動されて、図1のBに示すように、上昇したフードパネル7の後端7cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができ、フードパネル7は、歩行者の運動エネルギーを多く吸収することができる。
【0024】
ヒンジ機構9は、フードパネル7の後端7cの左右両側に、それぞれ、配設される。ヒンジ機構9は、フードパネル7の後端7cの下方におけるボディ1側に固定されるヒンジベース10と、フードパネル7の後端7cの下面側に配置される取付プレート13と、ヒンジベース10と取付プレート13とに軸支されるヒンジアーム12と、を備えて構成される。ヒンジベース10は、ボディ1側のフードリッジリインホース等に連結された取付フランジ2に、固定されている。そして、ヒンジ機構9は、フードパネル7の通常使用の開き時に、ヒンジアーム12とヒンジベース10とを連結する支持軸11を回転中心として開く構成としている(図1のAの二点鎖線参照)。
【0025】
なお、このヒンジアーム12は、元部端から先端を前方に延ばすように配設されて、元部端が、支持軸11を利用してヒンジベース10の後端側に連結され、この支持軸11を回転中心として、回動可能とし、また、先端側も、支持軸14を利用して、取付プレート13の前端側に連結され、この支持軸14を回転中心として、回動可能である。左右の支持軸11,14は、それぞれ、軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。但し、通常使用時には、ヒンジアーム12と取付プレート13とが、アクチュエータ20の作動時には破断可能なシェアピン15により連結されているため、支持軸14を中心とする回転はできず、フードパネル7は、通常使用の開閉時、支持軸11の部位を回転中心として、開閉することとなる。すなわち、フードパネル7を開く際には、図1のAの実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸11を回転中心として、フードパネル7の前端側が上昇することとなって、フードパネル7を前開きで開くことができ、そして、前端側を下せば、支持軸11を回転中心として回転して、フードパネル7が閉じることとなる。
【0026】
また、左右のヒンジ機構9は、左右対称形として配設され、ヒンジアーム12と取付プレート13とのエンジンルームER側の部位に、それぞれ、軸支ピン17,18を利用して、アクチュエータ20の両端(連結孔21a,50aの部位、図2,3参照)が連結されている。
【0027】
なお、フードパネル7の前端側には、公知のフードロック機構が配設されている。このフードロック機構は、フードパネル7の前端下面に固定されるロックストライカと、ボディ1側に配設されてロックストライカを係止するラッチと、を備えて構成され、ラッチは、図示しないレバーを操作しなければ、係止したロックストライカを係止解除できないように構成されており、フードパネル7の後端7cの上昇時でも、フードパネル7の前端は、フードロック機構のロックストライカを係止するラッチにより、ボディ1側から離れるように上昇しない。そして、アクチュエータ20が作動して伸長すれば、シェアピン15が破断されて、ヒンジアーム12と取付プレート13との相互の交差角度が大きくなり、フードパネル7は、フードロック機構に係止された前端側を上昇させずに、図1のBの二点鎖線から実線に示すように、後端7cを上昇させることとなる。
【0028】
さらに、フードパネル7の後方には、図1に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル5aと、カウルパネル5aの上方における合成樹脂製のカウルルーバ5bと、からなるカウル5が、配設されている。カウルルーバ5bは、後端側をフロントウインドシールド3の下部側に連ならせるように配設されている。
【0029】
実施形態のアクチュエータ20は、図2~4に示すように、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器40を内部に配設させたインナ部材21と、ガス発生器40から発生する作動用ガスGにより、インナ部材21から離れるように前進移動するアウタ部材50と、を備えて構成される。
【0030】
インナ部材21は、ガス発生器40と、ガス発生器40を内部に保持する筒状のケース22と、を備え、さらに、ケース22内には、ガス発生器40を位置決めして保持できるように、ホルダ31が配設されている。インナ部材21には、ガス発生器40から離れた端部側に、軸支ピン17を挿通させる連結孔21aが配設されている。
【0031】
ホルダ31は、ガス発生器40の端子ピン40dを接続させるピンソケット38やガス発生器40に作動用信号を入力させるリード線39を配設させており、ピンソケット38を配設させたソケット部32と、リード線39を保持してケース22外に突出させる延長スペーサ部34と、ソケット部32と延長スペーサ部34との防水性を向上させるパッキン33と、を備えて構成されている。ソケット部32と延長スペーサ部34とは、ポリアミド等からなる合成樹脂製とし、パッキン33は、ゴム製としている。また、延長スペーサ部34は、ケース22の軸直交方向で二分割する構成として、その分割面に、リード線39を挟持するように構成されている。延長スペーサ部34には、ホルダ31をケース22に固定するリベット42を挿通させる組付孔21bが、ケース22とともに、形成されている。
【0032】
ガス発生器40は、作動時に、図示しない所定の火薬を点火させ、火薬自体の燃焼により、あるいは、さらに火薬に着火されるガス発生剤の燃焼により、先端40aから作動用ガスGを発生させるスクイブやマイクロガスジェネレータ等が使用されている。また、ガス発生器40は、元部40bから端子ピン40dを突設させ、元部40b近傍の外周に鍔部40cを突設させている。ガス発生器40は、ケース22の内周面27bに嵌合させる係止リング36により、鍔部40cを押えて、ソケット部32のピンソケット38に端子ピン40dを挿入させた状態で、ケース22内に位置決めされて保持されている。なお、端子ピン40dの周囲には、シールリング37も配設されている。
【0033】
ケース22は、鋼等からなる金属製の円筒状のケース用パイプ材80から形成されており(図8参照)、先端部22aには、ガス発生器40から発生する作動用ガスGを吐出する開口23が、配設されている。ケース22は、開口23を設けた先端筒部24と、開口23から離れた側の円筒状の一般筒部27と、を備えて構成されている。
【0034】
先端筒部24は、一般筒部27より、内外径を大きくするように拡径させた円筒状として、拡開された一般筒部27側に、一般筒部27から拡径する段差部25を配設させている。なお、実施形態の場合、先端筒部24の外周面24aは、アクチュエータ20の作動時、アウタ部材50の後述するカバー部60の内周面60cを摺動させる摺動面となる。
【0035】
一般筒部27は、段差部25の近傍部位まで、内周面27c側に、ガス発生器40とホルダ31とを配設させており、開口23から離れた元部側には、軸支ピン17を挿通させる連結孔21aと、リベット42を挿通させる組付孔21bとが配設されるとともに、端縁側に、リード線39を突出させる挿通部29を開口させている。
【0036】
ケース22は、図8のA,Bに示すように、ケース用パイプ材80から鍛造加工(例えば、すえ込み鍛造加工や型鍛造等)されて、拡径された先端筒部24が形成され、その後、図8のB,Cに示すように、切削加工(例えば、孔あけ加工等)されて、連結孔21a、組付孔21b、及び、挿通部29が形成されて、製造されている。
【0037】
そして、インナ部材21は、リード線39を結線したピンソケット38を配設させたソケット部32、シールリング37、パッキン33、及び、延長スペーサ部34を組み付けてなるホルダ31に対し、各端子ピン40dをピンソケット38に嵌めて、ガス発生器40を組み付け、その組付体を、ケース22内に、開口23から離れた元部側から挿入する。そして、延長スペーサ部34から突出するリード線39の部位を挿通部29に嵌めて、ケース22とホルダ31との組付孔21bを一致させ、組付孔21bに貫通するように、抜け止め具としてのリベット42を貫通させて、リベット42をケース22に締結すれば、ガス発生器40を配設したホルダ31をケース22内に固定することができる。そして、開口23を経て、鍔部40cの周囲に係止リング36を嵌めて、ケース22内にガス発生器40を固定させれば、インナ部材21を製造することができる。
【0038】
アウタ部材50は、ケース22の開口を覆うヘッド部51と、ケース22の外周面27a側を覆うように、ヘッド部51の外周縁から延びる筒状のカバー部60と、を有して構成され、ガス発生器40から発生する作動用ガスGを、ヘッド部51の裏面側におけるカバー部60の内周面側に流入させて、インナ部材21から離れるように前進移動する。アウタ部材50は、ヘッド部51に、ヒンジ機構9の取付プレート13に連結させるための軸支ピン18を挿通させる連結孔50aを、配設させている。
【0039】
アウタ部材50は、ヘッド部51とカバー部60とが、相互に別体の部材から形成されて、対応して設けられた結合部としての結合軸部53と結合筒部62とを相互を結合させて、形成されている。
【0040】
ヘッド部51は、鋼等の金属製のヘッド部用ブロック材83から形成されるものであり(図5参照)、先端側の長方形板状の本体部52と、元部側の略円柱状の結合軸部53と、を備えて構成される。本体部52は、ヒンジ機構9の軸支ピン18を挿通させる連結孔50aを備えて構成されている。結合軸部53は、外周面53aに、外周面53a側から環状に凹む結合凹部54を配設させるとともに、円環状のシール材71を配設させる環状の収納溝53bを配設させている。収納溝53bは、結合凹部54と本体部52との間に配設されている。
【0041】
カバー部60は、鋼等の金属製の円筒状のカバー部用パイプ材88から形成されるものであり(図6)、先端部60aに、ヘッド部51の結合軸部53の外周を覆う筒状の結合筒部62を備えるとともに、結合筒部62が、結合軸部53の結合凹部54に嵌合する嵌合凸部63を設けられて、結合軸部53に結合されている。また、カバー部60は、ヘッド部51から離れる元部60b側に、内周面を、一般筒部27の外周面27aに摺動可能な摺動面64aとして、内径寸法を小さくするように縮径された略円筒状の縮径部64が配設されている。縮径部64は、カバー部60の先端部60a側の段差部65を、アウタ部材50の前進移動時に、インナ部材21の段差部25に当接させる形状としている(図3参照)。
【0042】
そのため、インナ部材21の先端筒部24の段差部25とアウタ部材50の縮径部64の段差部65とは、アクチュエータ20の作動時におけるアウタ部材50の前進移動時に、縮径部64の段差部65を先端筒部24の段差部25に当接させて、アウタ部材50の前進移動を停止させるストッパ機構SS、を構成している。
【0043】
また、アウタ部材50のカバー部60は、ヘッド部51から離れた縮径部64の端縁に、インナ部材21の一般筒部27の外周面27aとの間に隙間Hを開けるように、内径寸法を広げて拡径する拡径筒部67を備えている。そして、拡径筒部67の内周面67a側には、一般筒部27の外周面27aとの間に、全周にわたって、隙間Hを埋めるように、防水性を有したゴム製の円環状のシール材72が配設されている。なお、シール材72は、カバー部60側に固着されるように配設されており、アクチュエータ20の作動時、インナ部材21の一般筒部27の外周面27a側の摺動面27bを摺動することとなる(図3参照)。
【0044】
さらに、ヘッド部51の結合軸部53に設けられた収納溝53bには、円環状のゴム製のシール材71が収納されており、カバー部60の結合筒部62の内周面62aとヘッド部51の結合軸部53の外周面53aとは、全周にわたって、防水性が確保される構成としている。
【0045】
アウタ部材50のヘッド部51は、図5のA,Bに示すように、円柱状等の所定形状の鋼等の金属製のヘッド部用ブロック材83から、鍛造加工(例えば、型鍛造)により、連結孔21aを有しない本体部52や、収納溝53bを有しない結合軸部53の外形形状を賦形し、ついで、図5のCに示すように、連結孔21aと収納溝53bとを、切削加工により(例えば、連結孔21aは孔あけ加工により、収納溝53bは旋削加工により)、形成して、製造される。
【0046】
また、カバー部60は、図6のA,Bに示すように、円筒状の鋼等の金属製としたカバー部用パイプ材88から、鍛造加工により、嵌合凸部63を有しない状態の結合筒部62と縮径部64とを形成し、ついで、図7のA,Bに示すように、シール材71を収納溝53bに収納したヘッド部51の結合軸部53を、カバー部60の嵌合凸部63を形成していない状態の結合筒部62内に、嵌め、結合筒部62を縮径させるようにカシメて、結合筒部62に、結合軸部53の結合凹部54に嵌合させる嵌合凸部63を形成すれば、結合筒部62と結合軸部53とを結合させることができて、アウタ部材50を製造することができる。
【0047】
但し、アウタ部材50は、インナ部材21に組み付けつつ、カバー部60の縮径部64や嵌合凸部63を形成して、製造する。すなわち、まず、縮径部64や嵌合凸部63を形成していない状態のパイプ材88の状態で、インナ部材21を覆うように、パイプ材88をインナ部材21に嵌め、また、元部60b側の内周面60c側にシール材72を嵌め、そして、元部60b側を、インナ部材21の一般筒部27の外周面27c側で、縮径させるようにカシメて、縮径部64と拡径筒部67とを形成し、また、拡径筒部67の内周面67a側にシール材72を配置させておく。ついで、インナ部材21のケース22における先端部22aの位置に、嵌合凸部63の形成前の状態のカバー部60の結合筒部62を、配置させ、さらに、結合筒部62の内周面62a側に、収納溝53b内にシール材71を嵌めておいたヘッド部51の結合軸部53を、配置させ、そして、結合筒部62を縮径させるようにカシメて、カバー部60に、結合凹部54に嵌合する嵌合凸部63を形成すれば、アウタ部材50を製造することができ、同時に、インナ部材21にアウタ部材50を組み付けたアクチュエータ20を組み立てることができる。
【0048】
そして、このように組み立てたアクチュエータ20では、リード線39を図示しない制御回路に結線するとともに、フードパネル7の左右のヒンジ機構9における取付プレート13とヒンジアーム12とに対し、連結孔21a,50aに軸支ピン17,18を挿通させつつ、アクチュエータ20の両端のインナ部材21とアウタ部材50との部位(連結孔21a,50aの部位)を、連結させれば、跳ね上げ装置Uを車両Vに搭載することができる。
【0049】
跳ね上げ装置Uの車両Vへの搭載後、実施形態のアクチュエータ20が作動して、ガス発生器40が作動用ガスGを発生させれば、作動用ガスGがアウタ部材50のヘッド部51の裏面56側におけるカバー部60の内周側の貯留室75、に作動用ガスGが充満し、その作動用ガスGの圧力をヘッド部51が受けて、図1のBの二点鎖線から実線、あるいは、図2,3に示すように、縮径部64の内周面側の摺動面64aがインナ部材21のケース22の外周面27aを摺動面27bとして摺動し、かつ、インナ部材21の先端筒部24の外周面24aに、アウタ部材50のカバー部60の内周面60cを摺動させて、アウタ部材50がインナ部材21に対して前進移動し、アクチュエータ20が伸長して、シェアピン15を破断させて、取付プレート13とヒンジアーム12との交差角度を広げることから、フードパネル7の後端7c側が上昇し、フードパネル7が、変形スペースSを広く確保できて、変形量を多くした塑性変形により、衝撃を緩和させて歩行者を受け止めることができる。
【0050】
そして、実施形態のアクチュエータ20では、アウタ部材50が、ヘッド部51とカバー部60との対応して設けられた結合部53,62相互を結合させて、形成されており、筒状のカバー部60を、中実のブロック材から形成せずに、パイプ材88から形成できることから、アウタ部材50の加工工数と加工費とを低減でき、さらに、加工屑も少なくできることから、省資源的となる。また、アウタ部材50が、ヘッド部51とカバー部60とを結合させて形成される構成であり、作動初期におけるガス発生器40から吐出される作動用ガスGを貯留する貯留室75の容積を調整する場合、カバー部60を変更せずに、ヘッド部51におけるインナ部材21の開口23を塞ぐ閉塞面56を、凹ませたり、突出させたりして、容易に、調整できる。
【0051】
例えば、図9のAに示すアクチュエータ20Aのように、アウタ部材50Aのヘッド部51Aにおけるインナ部材21の開口23を塞ぐ閉塞面56Aに、凸部56aを設けて、貯留室75Aの容積を狭めるようにして、アクチュエータ20Aの作動時、アウタ部材50の押圧力を高めたり、あるいは、図9のBに示すアクチュエータ20Bのように、アウタ部材50Bのヘッド部51Bにおけるインナ部材21の開口23を塞ぐ閉塞面56Bに凹部56bを設けて、貯留室75Bの容積を広げて、アクチュエータ20Bの作動時、アウタ部材50の押圧力を低くすることができる。
【0052】
さらに、アウタ部材50が、ヘッド部51とカバー部60とを結合させて形成される構成であり、アクチュエータ20の作動時に押圧する部材の形状に対応させて、ヘッド部51の形状を変更する場合でも、カバー部60を、極力、変更せずに済み、容易に対処できる。
【0053】
例えば、図2,3の二点鎖線に示すアクチュエータ20Cのように、ヘッド部51Cの本体部52Cとして、実施形態のヘッド部51が備えていた連結孔50aを備えずに、上端面に平坦な押圧面52aを設けたものと、アクチュエータ20のヘッド部51を交換すれば、アクチュエータ20Cの作動時、押圧面52aを所定の押圧部材19の受止座19aに当接させて、受止座19aを設けた押圧部材19を、所定位置まで、移動させることができる。
【0054】
したがって、実施形態のアクチュエータ20では、容易、かつ、省資源的に形成でき、さらに、ヘッド部51を設計変更する場合にも、容易に対処することができる。
【0055】
また、実施形態のアクチュエータ20では、アウタ部材50のヘッド部51が、結合部としての結合軸部53を元部側に備えるとともに、結合軸部53が、外周面53a側から凹む結合凹部54を有している。また、アウタ部材50のカバー部60が、先端部60aに、結合軸部53の外周を覆う結合部として筒状の結合筒部62を備えるとともに、結合筒部62が、結合軸部53の結合凹部54に嵌合する嵌合凸部63を設けられて、結合軸部53に結合されている。
【0056】
そのため、実施形態のアクチュエータ20では、ヘッド部51とカバー部60との結合に関し、図7のA,Bに示すように、カバー部60の先端部60a側の結合筒部62を、ヘッド部51の元部側の結合軸部53に被せ、結合筒部62を縮径させるようにカシメて形成する嵌合凸部63を、結合凹部54に嵌合させれば、結合軸部53を結合筒部62に結合させることができて、ヘッド部51とカバー部60とが別体としていても、簡便に、ヘッド部51とカバー部60とを結合させることができる。
【0057】
なお、ヘッド部とカバー部との結合は、実施形態のような、塑性変形を伴なうカシメのほか、図10に示すアクチュエータ20Dのように、アウタ部材50Dにおけるヘッド部51Dの結合軸部53Dの外周面53aに雄ねじ55を設け、カバー部60Dの結合筒部62Dの内周面62aに雌ねじ62cを設けて、ねじ結合により、結合軸部53Cを結合筒部62Cに結合させてもよい。
【0058】
さらに、アウタ部材のヘッド部とカバー部との対応する結合部相互の結合としては、溶接を利用して、結合させてもよい。
【0059】
さらに、実施形態のアクチュエータ20では、インナ部材21のケース22が、金属製のパイプ材80から形成されるとともに、ガス発生器40の外周側に配設される一般筒部27と、一般筒部27の先端側に配置されて、一般筒部27より拡径した先端筒部24と、を備えて構成されている。また、アウタ部材50のカバー部60が、金属製のパイプ材88から形成されるとともに、ヘッド部51から離れた元部側に、内周面64aを一般筒部27の外周面27aの摺動面27bに摺動可能として、縮径された縮径部64が配設されている。そして、インナ部材21の先端筒部24とアウタ部材50の縮径部64とが、作動時におけるアウタ部材50の前進移動時に、縮径部64の段差部65を先端筒部24の段差部25に当接させて、アウタ部材50の前進移動を停止させるストッパ機構SS、を構成している。
【0060】
そのため、実施形態では、作動時、インナ部材21の先端筒部24の段差部25に、所定の作動ストローク分、前進移動したアウタ部材50の縮径部64が当接して、アウタ部材50のヘッド部51が移動を停止する。その結果、実施形態のアクチュエータ20を搭載して構成されるフード跳ね上げ装置Uを、円滑に作動させることができる。そして、インナ部材21のケース22やアウタ部材50のカバー部60が、金属製のパイプ材80,88から形成されていることから、鍛造加工を利用して、容易に、インナ部材21のケース22における一般筒部27から拡径する先端筒部24や、アウタ部材50のカバー部60における縮径部64を形成できる。
【0061】
さらに、実施形態のアクチュエータ20では、アウタ部材50におけるカバー部60の結合筒部62の内周面62aとヘッド部51の結合軸部53の外周面53aとの間に、全周にわたって、防水性を有した環状のシール材71が配設されている。
【0062】
そのため、実施形態では、アクチュエータ20のアウタ部材50におけるインナ部材21の開口23を覆うヘッド部51とカバー部60との結合部53,62間に、防水性を有したシール材71が配設されており、その部位から進入しようとする雨水が、インナ部材21の開口23側に進入せず、ガス発生器40の内容物の変質を防止できる。また、ヘッド部51とカバー部60との結合部53,62間にシール材71が配設されていれば、作動時のガス発生器40から吐出される作動用ガスGのアウタ部材50外への漏れも防止できることから、作動用ガスGの所定の圧力を安定して確保できて、アウタ部材50が、所定の駆動力により、前進移動することができる。
【0063】
また、実施形態のアクチュエータ20では、アウタ部材50のカバー部60が、ヘッド部51から離れた縮径部64の端縁に、一般筒部27の外周面27aとの間に隙間Hを開けるように拡径する拡径筒部67を備え、拡径筒部67の内周面67aと一般筒部27の外周面27aとの間に、全周にわたって、隙間Hを埋めるように、防水性を有した環状のシール材72が配設されている。
【0064】
そのため、実施形態では、アクチュエータ20のインナ部材21のケース22における一般筒部27の外周面27aとアウタ部材50のカバー部60の内周面60cとの間のシール材72によって、カバー部60の開放端側から進入しようとする雨水が、カバー部60におけるヘッド部51側に進入せず、ガス発生器40の内容物の変質を防止できる。また、塵の進入も防止できることから、カバー部60の縮径部64と一般筒部27の外周面27aとの相互の摺動面64a,27bも、平滑な状態を維持できて、作動時、カバー部60の縮径部64が、一般筒部27の外周面27aを円滑に摺動できて、アクチュエータ20は、所定の駆動力を安定して発揮することができる。
【0065】
なお、実施形態の場合、シール材72による塵の進入の防止により、アウタ部材50におけるカバー部60の内周面60cも、インナ部材21のケース22の先端筒部24の外周面24aに対して、円滑に摺動することができる。
【0066】
そして、実施形態のアクチュエータ20の製造方法では、アクチュエータ20が、インナ部材21とアウタ部材50とを備えて構成されている。インナ部材21は、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器40を内部に保持した筒状のケース22を有して、ガス発生器40から発生する作動用ガスGを先端から吐出可能に、ケース22の先端部22aを開口させている。アウタ部材50は、ケース22の開口23を覆うヘッド部51と、ケース22の外周面27a側を覆うように、ヘッド部51の外周縁から延びる筒状のカバー部60と、を有し、ガス発生器40から発生する作動用ガスGを、ヘッド部51の裏面側におけるカバー部60の内周面60c側に流入させて、インナ部材21から離れるように前進移動する。そして、実施形態では、インナ部材21のケース22とアウタ部材50のカバー部60とが、それぞれ、図6のA,Bや図7のA,Bに示すように、金属製のパイプ材80,88から形成されるとともに、鍛造加工を利用して、形成されている。また、アウタ部材50のヘッド部51が、図5のA~Cに示すように、金属製のブロック材83から、鍛造加工と切削加工とを利用して、形成されている。そして、図6のC,Dに示すように、ヘッド部51とカバー部60とに対応して設けられた結合部53,62相互を結合させることにより、アウタ部材50が、形成されて、アクチュエータ20が製造されている。
【0067】
実施形態のアクチュエータ20の製造方法では、インナ部材21におけるガス発生器40を内部で保持するケース22が、ガス発生器40から発生する作動用ガスGを先端部22aの開口23から吐出させるような筒状の構造としていても、金属製のパイプ材80から、鍛造加工を利用して形成されており、切削屑等を発生させる切削加工を極力利用せずに形成できることから、省資源的に簡便に製造できる。また、アウタ部材50では、ヘッド部51が、金属製のブロック材83から、鍛造加工と切削加工とを利用して、形成されて、カバー部60が、既述したように、金属製のパイプ材88から、鍛造加工を利用して、形成されることから、アウタ部材50も、省資源的に簡便に製造できる。
【0068】
したがって、実施形態のアクチュエータ20の製造方法では、アクチュエータ20を、容易、かつ、省資源的に製造することができる。
【0069】
なお、実施形態では、連結孔21aや収納溝53bが、切削加工により形成されているが、他の加工(非切削加工)でもよく、例えば、連結孔21aは、プレス加工による打ち抜きにより形成したり、あるいは、収納溝53bは、転造加工により、形成してもよい。
【0070】
また、実施形態のアクチュエータ20では、フードパネル7を跳ね上げる跳ね上げ装置Uに使用する場合を例示したが、ヘッドレストを前後に二分割して車両が追突される際にヘッドレスト前部を前進移動させる頭部保護装置や、着座した運転者の前方の膝受パネルとボディ側のインパネリインホースとに、インナ部材とアウタ部材とを連結させ、車両の正面衝突時、膝受パネルを後方移動させる膝保護装置のアクチュエータに、本発明を利用してもよい。さらに、本発明のアクチュエータでは、所定時に、ガス発生器を作動させて、インナ部材に対して相対的にアウタ部材を移動させる構成であれば、実施形態に限定されず、種々の自動車用安全装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0071】
20,20A,20B,20C,20D…アクチュエータ、21,21D…インナ部材、22…ケース、22a…先端部、23…開口、24…先端筒部、25…(ストッパ)段差部、27…一般筒部、27a…外周面、27b…摺動面、40…ガス発生器、50,50A,50B,50C,51D…アウタ部材、51,51A,51B,51C,51D…ヘッド部、53,53D…(結合部)結合軸部、53a…外周面、54…結合凹部、56,56A,56B…(裏面)閉塞面、60,60D…カバー部、60a…先端部、60c…内周面、62,62D…(結合部)結合筒部、62a…内周面、63…嵌合凸部、64…縮径部、64a…(内周面)摺動面、65…(ストッパ)段差部、67…拡径筒部、67a…内周面、71,72…シール材、
80…ケース用パイプ材、83…ヘッド部用ブロック材、88…カバー部用パイプ材、
H…隙間、SS…ストッパ機構、G…作動用ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10