(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】インバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220726BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019016991
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018017445
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 直人
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 一善
(72)【発明者】
【氏名】東 拓矢
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085792(JP,A)
【文献】特開2017-022908(JP,A)
【文献】特開2014-183719(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031147(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0039127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワー素子を
第1方向に並べたパワー素子群が
、前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けて複数配列されているパワー基板と、
前記パワー基板の板厚方向に前記パワー基板と間隔を空けて配置されており、前記パワー素子を制御する電子部品が実装された制御基板と、
前記パワー基板と前記制御基板との間に配置されており、複数のコンデンサが実装されたコンデンサ基板と、
前記パワー基板が固定された放熱部と、
前記パワー基板と前記コンデンサ基板とを電気的に接続しているスペーサと、を備え、
前記スペーサは、
隣り合う前記パワー素子群同士の間に配置された本体と、
前記
第1方向において、前記パワー素子群よりも外側であり、かつ、前記コンデンサ基板の板厚方向から見て前記コンデンサと重なり合わない位置に設けられた伝熱部と、を備えるインバータ。
【請求項2】
前記複数のコンデンサは、前記
第1方向での前記コンデンサ基板の中心よりも一端側に集約して配置されており、
前記伝熱部は、前記コンデンサ基板の一端と、前記パワー基板との間に設けられている請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
前記スペーサを前記パワー基板に固定するための固定ネジを備える請求項1又は請求項2に記載のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力を交流電力に変換して出力するインバータとしては、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載のインバータは、パワー素子が実装されたパワー基板と、コンデンサが実装されたコンデンサ基板と、制御基板と、パワー基板が固定された放熱部と、を備える。また、インバータは、パワー基板と、コンデンサ基板との間に設けられたスペーサを備える。スペーサは、パワー基板とコンデンサ基板とを接続している。スペーサは、コンデンサ基板からパワー基板に熱を伝導させる伝熱経路としても機能している。これにより、パワー基板を介して、コンデンサ基板の熱を放熱部に伝導させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンデンサの冷却不足が生じると、コンデンサの性能が劣化するおそれがある。
本発明の目的は、コンデンサの冷却不足を抑制できるインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するインバータは、複数のパワー素子を並べたパワー素子群が間隔を空けて複数配列されているパワー基板と、前記パワー基板の板厚方向に前記パワー基板と間隔を空けて配置されており、前記パワー素子を制御する電子部品が実装された制御基板と、前記パワー基板と前記制御基板との間に配置されており、複数のコンデンサが実装されたコンデンサ基板と、前記パワー基板が固定された放熱部と、前記パワー基板と前記コンデンサ基板とを電気的に接続しているスペーサと、を備え、前記スペーサは、隣り合う前記パワー素子群同士の間に配置された本体と、前記パワー素子の並ぶ方向において、前記パワー素子群よりも外側であり、かつ、前記コンデンサ基板の板厚方向から見て前記コンデンサと重なり合わない位置に設けられた伝熱部と、を備える。
【0006】
これによれば、コンデンサ基板の熱は、スペーサの本体及びスペーサの伝熱部を介してパワー基板に伝導する。本体に加えて、伝熱部も伝熱経路として利用できるため、スペーサが本体だけの場合に比べてコンデンサ基板からパワー基板に熱が伝導しやすい。特に、伝熱部は、パワー素子の並ぶ方向において、パワー素子群よりも外側であり、かつ、コンデンサ基板の板厚方向から見てコンデンサと重なり合わない位置に設けられているので、スペーサが本体だけの場合に比べて、伝熱経路を広くとることができる。パワー基板を介して、コンデンサ基板の熱を放熱部に伝導させやすいため、コンデンサ基板に実装されたコンデンサの冷却不足を抑制できる。
【0007】
上記インバータについて、前記複数のコンデンサは、前記パワー素子の並ぶ方向での前記コンデンサ基板の中心よりも一端側に集約して配置されており、前記伝熱部は、前記コンデンサ基板の一端と、前記パワー基板との間に設けられていてもよい。
【0008】
コンデンサ基板の一端側にコンデンサを集約した場合、コンデンサの重量によりコンデンサ基板の一端側に荷重が集中しやすい。結果として、コンデンサ基板の一端側は撓みやすくなる。伝熱部をコンデンサ基板の一端と、パワー基板との間に設けることでコンデンサ基板の撓みやすい位置でコンデンサ基板を支持して、コンデンサ基板が撓むことを抑制できる。
【0009】
上記インバータについて、前記スペーサを前記パワー基板に固定するための固定ネジを備えていてもよい。
これによれば、固定ネジの締結力によってスペーサをパワー基板及びコンデンサ基板に密着させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンデンサの冷却不足を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】制御基板を省略した状態のインバータを示す斜視図。
【
図5】制御基板を省略した状態のインバータを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、インバータの一実施形態について説明する。なお、本実施形態のインバータは、バッテリ式の産業車両(フォークリフトなど)に搭載される。インバータは、バッテリから入力された直流電力を交流電力(三相交流)に変換して、三相モータに出力する。これにより、三相モータが駆動する。
【0013】
図1に示すように、インバータ10は、放熱部としてのヒートシンク11を備える。ヒートシンク11は、アルミニウム系金属や銅等の金属製である。ヒートシンク11は、板状の固定部12と、固定部12の板厚方向の一面から突出するフィン13と、を備える。
【0014】
インバータ10は、パワー基板20と、制御基板60と、コンデンサ基板50と、を備える。制御基板60は、パワー基板20の板厚方向に対して、パワー基板20と間隔を空けて配置されている。コンデンサ基板50は、パワー基板20と、制御基板60との間に配置されている。パワー基板20の板厚方向と、制御基板60の板厚方向と、コンデンサ基板50の板厚方向は一致している。ヒートシンク11、及び、3つの基板20,50,60は、層状に配置されているといえる。
【0015】
インバータ10は、複数のパワー素子24と、2つの入力端子25と、3つの出力端子35と、2つのスペーサ40と、ピンヘッダ46と、を備える。パワー素子24、入力端子25、出力端子35、スペーサ40、及び、ピンヘッダ46は、パワー基板20に実装されている。本実施形態のパワー素子24は、MOSFETである。なお、パワー素子24としては、MOSFET以外のスイッチング素子(例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いることもできる。複数のパワー素子24は、6つのパワー素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6に分かれて配置されている。各パワー素子群G1~G6において、各パワー素子24は、一列に並んでいる。以下、各パワー素子群G1~G6を構成するパワー素子24の並ぶ方向を第1方向とする。
【0016】
各パワー素子群G1~G6は、間隔を空けて配列されている。詳細にいえば、各パワー素子群G1~G6は、パワー基板20の板厚方向の面に沿う方向のうち、第1方向に交差する方向に配列されている。以下、各パワー素子群G1~G6の配列方向を第2方向とする。各パワー素子群G1~G6は、インバータ10における三相の上下アームを構成している。
【0017】
パワー基板20は、固定部12の板厚方向の両面のうちフィン13が設けられた面の反対面に固定されている。本実施形態のパワー基板20は、絶縁金属基板(IMS基板)であり、金属製のベースに絶縁層を設けたものである。
【0018】
図2に示すように、パワー基板20は、パワー素子24が電気的に接続される複数の導体パターン21,22,23を備える。導体パターン21,22,23は、互いに間隔を空けて第2方向に並んで配置されている。導体パターン21,22,23は、入力端子25に接続される2つの導体パターン21、出力端子35に接続される3つの導体パターン22、及び、スペーサ40に接続される2つの導体パターン23を含む。各導体パターン21,22,23には、パワー素子24が接続されている。
【0019】
導体パターン21は、各パワー素子群G1~G6を挟んで配置されている。導体パターン22と、導体パターン23とは、隣り合うパワー素子群G1~G6同士の間に配置されている。導体パターン22と、導体パターン23とは、交互に配置されている。
【0020】
導体パターン23は、隣り合うパワー素子群G1~G6同士の間で第1方向に延びる第1部位23Aと、隣り合う2つのパワー素子群G1~G6よりも第1方向に突出した第2部位23Bと、を備える。第2部位23Bは、第1方向においてパワー素子群G1~G6よりも外側に設けられている。
【0021】
パワー基板20は、板厚方向に貫通した複数の第1挿通孔H1と、複数の第2挿通孔H2と、を備える。第1挿通孔H1は、パワー基板20において、導体パターン21,22,23の配置された部分に設けられている。第1挿通孔H1は、導体パターン21の配置された部分、及び、導体パターン22の配置された部分のそれぞれに2つずつ設けられている。第1挿通孔H1は、第1部位23Aの配置された部分に2つ、第2部位23Bの配置された部分に1つ設けられている。
【0022】
図1に示すように、2つの入力端子25と、3つの出力端子35は、第2方向に間隔を空けて並んでいる。2つの入力端子25は、各パワー素子群G1~G6を挟んで配置されている。即ち、入力端子25は、第2方向において、パワー素子群G1~G6よりもパワー基板20の外縁に寄って配置されている。3つの出力端子35は、2つの入力端子25同士の間に配置されている。入力端子25は、基部26と、基部26から突出する柱状部27と、柱状部27の周面から突出する台座部28と、を備える。出力端子35は、基部36と、基部36から突出する柱状部37と、を備える。入力端子25、及び、出力端子35は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。入力端子25には、バッテリが接続される。出力端子35には、三相モータが接続される。ピンヘッダ46は、第1方向において、パワー素子群G1~G6よりもパワー基板20の外縁に寄って配置されている。
【0023】
2つのスペーサ40は、第2方向に間隔を空けて並んでいる。各スペーサ40は、出力端子35同士の間に配置されている。スペーサ40は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
【0024】
図3に示すように、スペーサ40は、矩形板状の本体41と、本体41の長手方向の一端に設けられた円筒状の伝熱部42と、を備える。本体41は、基部45と、基部45から突出する2つの接触部43と、を備える。2つの接触部43は、本体41の板厚方向に突出している。2つの接触部43と、伝熱部42とは、本体41の長手方向に並んで配置されている。スペーサ40は、本体41の板厚方向にスペーサ40を貫通したスペーサ孔44を備える。スペーサ孔44は、本体41において各接触部43を備える部分、及び、伝熱部42に設けられている。
【0025】
スペーサ40は、パワー基板20に接触する第1接触面47A,47Bと、コンデンサ基板50に接触する第2接触面48A,48Bと、を備える。本体41の板厚方向の両面のうち接触部43が設けられた面の反対面は第1接触面47Aであり、伝熱部42の軸線方向の両端面のうち一方の面は第1接触面47Bである。各接触部43の先端面は第2接触面48Aであり、伝熱部42の軸線方向の両端面のうち第1接触面47Bの反対面は第2接触面48Bである。各接触面47A,47B,48A,48Bは、切削加工によって平滑化されている。
【0026】
図2に示すように、スペーサ40の本体41は、導体パターン23の第1部位23Aに重なりあっている。スペーサ40の伝熱部42は、導体パターン23の第2部位23Bに重なりあっている。これにより、第1接触面47A,47Bは、パワー基板20(導体パターン23)に電気的に接続されている。
【0027】
スペーサ40の本体41は、パワー素子群G1~G6同士の間に配置されている。スペーサ40の伝熱部42は、パワー素子24の並ぶ方向である第1方向において、パワー素子群G1~G6よりも外側に配置されている。
【0028】
図4、及び、
図5に示すように、インバータ10は、コンデンサ基板50に実装された複数のコンデンサ54を備える。コンデンサ基板50において、第1方向の両縁55,56のうち一方の縁55に沿って複数のコンデンサ54は配置されている。コンデンサ基板50の第1方向での中心C1よりも、各コンデンサ54は一端58側に集約して配置されている。なお、一端58は、コンデンサ基板50において、縁55側の端部である。コンデンサ基板50の第1方向での中心C1でコンデンサ基板50を二分すると、一方の領域にはコンデンサ54が配置されており、他方の領域にはコンデンサ54が配置されていないことになる。なお、コンデンサ基板50は、縁55に沿う部分の一部に、コンデンサ54が設けられていない非配置領域57を備える。コンデンサ54は、円柱状であり、軸線方向とコンデンサ基板50の板厚方向とが一致するように配置されている。コンデンサ54は、コンデンサ基板50に立設しているといえる。
【0029】
図1、及び、
図5に示すように、コンデンサ基板50は、導体パターン52を備える。コンデンサ基板50は、出力孔53を備える。出力端子35の柱状部37は、出力孔53を挿通している。コンデンサ基板50は、板厚方向に貫通した第3挿通孔H3を備える。第3挿通孔H3は、非配置領域57を含む複数箇所に設けられている。第3挿通孔H3は、第1挿通孔H1と同数設けられている。第3挿通孔H3同士の間隔は、第1挿通孔H1同士の間隔と同一である。第3挿通孔H3と、第1挿通孔H1とは、コンデンサ基板50の板厚方向に向かい合って配置されている。
【0030】
図4~
図6に示すように、コンデンサ基板50は、入力端子25の基部26、出力端子35の基部36、及び、スペーサ40に重ねて配置されている。コンデンサ基板50は、非配置領域57とスペーサ40の伝熱部42とが向かい合うように配置されている。コンデンサ基板50の板厚方向から見て、伝熱部42は、コンデンサ54と重ならない位置に配置されているといえる。スペーサ40の第2接触面48A,48Bは、コンデンサ基板50に接触している。入力端子25の基部26、及び、スペーサ40を介して、コンデンサ基板50とパワー基板20とは、電気的に接続されている。
【0031】
図1に示すように、制御基板60は、板厚方向に貫通した出力孔61を3つ備える。出力端子35の柱状部37は、出力孔61を挿通している。制御基板60は、ピンヘッダ46が挿入されるスルーホール62を備える。制御基板60は、板厚方向に貫通した複数の第4挿通孔H4を備える。
【0032】
インバータ10は、制御基板60に実装された複数の電子部品63、電流センサ65、及び、接続部67を備える。電子部品63は、各パワー素子群G1~G6を制御する制御回路を構成している。制御回路により各パワー素子群G1~G6が制御されることで、電力変換が行われる。
【0033】
スルーホール62にピンヘッダ46が挿入されることで、制御基板60とパワー基板20との接続が行われる。電流センサ65は、3つの出力端子35のうちの2つに設けられている。電流センサ65は、コア66と、図示しないホール素子と、を備える。接続部67は、インバータ10を制御する制御装置(上位制御装置)とインバータ10とを接続するコネクタが挿入される雌コネクタである。
【0034】
インバータ10は、制御基板60をヒートシンク11に固定するために設けられたブラケット70を備える。ブラケット70は、板状の本体71と、本体71の板厚方向に突出する複数の締結ボス72と、を備える。締結ボス72により、パワー基板20と、制御基板60との間隔が維持されている。ブラケット70は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
【0035】
インバータ10は、ブラケット70と制御基板60との間に配置された熱伝導部材91と、ブラケット70とコンデンサ基板50との間に配置された介在熱伝導部材92と、を備える。熱伝導部材91及び介在熱伝導部材92の配置箇所は、電流の集中する箇所や、発熱素子となる電子部品63の近くになるように定められている。熱伝導部材91は、制御基板60からブラケット70に熱を伝導させる。介在熱伝導部材92は、コンデンサ基板50からブラケット70に熱を伝導させる。
【0036】
図1、及び、
図6に示すように、インバータ10は、パワー基板20、制御基板60、及び、コンデンサ基板50をヒートシンク11に固定するための複数のネジS1,S2,S3と、絶縁性のカラーCと、を備える。複数のネジS1,S2,S3は、第1ネジS1と、第2ネジS2と、第3ネジS3と、を含む。
【0037】
複数の第1ネジS1は、カラーCとともにコンデンサ基板50の第3挿通孔H3と、パワー基板20の第1挿通孔H1とを挿通して、ヒートシンク11の固定部12に締結されている。これにより、第1ネジS1は、パワー基板20とコンデンサ基板50とを共締めしている。また、複数の第1ネジS1のうち一部の第1ネジS1は、第3挿通孔H3、第1挿通孔H1とともにスペーサ40のスペーサ孔44を挿通している。スペーサ孔44を挿通する第1ネジS1がスペーサ40を固定するための固定ネジとなる。
【0038】
複数の第2ネジS2は、制御基板60の第4挿通孔H4のうち一部の第4挿通孔H4とパワー基板20の第2挿通孔H2とを挿通してヒートシンク11の固定部12に締結されている。これにより、第2ネジS2は、制御基板60とパワー基板20とを共締めしている。
【0039】
複数の第3ネジS3は、制御基板60の第4挿通孔H4のうち一部の第4挿通孔H4を挿通して、入力端子25の台座部28及びブラケット70に締結されている。
次に、インバータ10の作用について説明する。
【0040】
三相モータを駆動させるため、インバータ10を駆動させると、パワー素子24、電子部品63、及び、導体パターン21,22,23,52が発熱する。パワー素子24及びパワー基板20で発した熱は、パワー基板20からヒートシンク11に伝導する。
【0041】
コンデンサ54及びコンデンサ基板50で発した熱は、入力端子25、出力端子35、及び、スペーサ40を介してパワー基板20に伝導する。パワー基板20に伝導した熱は、ヒートシンク11に伝導する。パワー基板20を介して、コンデンサ基板50の熱をヒートシンク11に伝導させることができる。本実施形態のスペーサ40は、本体41と、伝熱部42を備えているため、本体41及び伝熱部42の両方を伝熱経路としてコンデンサ基板50からパワー基板20に熱が伝導する。
【0042】
図7に示すように、比較例のインバータ100は、実施形態のインバータ10とスペーサ110の形状が異なる。比較例のインバータ100において、スペーサ110は、本体41を備え、伝熱部42を備えていない。この場合、コンデンサ基板50の熱をパワー基板20に伝導させるスペーサ40の伝熱経路は、本体41のみとなる。スペーサ40の伝熱経路が本体41のみの場合、コンデンサ基板50及びパワー基板20とのスペーサ40の接触面積が少ないことに加え、スペーサ110の熱容量も少なくなる。このため、比較例のインバータ100では、スペーサ110を介してパワー基板20に伝導する熱量が実施形態のインバータ10よりも少ない。
【0043】
また、スペーサ40は、コンデンサ54とパワー素子24とを電気的に接続する通電経路としても機能している。
図6に矢印Y1で示すように、実施形態のインバータ10は、本体41に加えて伝熱部42も通電経路となる。伝熱部42は、第1方向において、本体41よりもコンデンサ54に寄って配置されている。このため、
図7に矢印Y2で示すように、伝熱部42を設けずに、本体41のみが通電経路となる場合に比べて、コンデンサ54からパワー素子24への通電経路が短くなる。
【0044】
実施形態のインバータ10では、コンデンサ基板50の一端58側にコンデンサ54を集約させている。コンデンサ54をこのように配置すると、コンデンサ54の重量によって、コンデンサ基板50の一端58側に荷重が集中し、重心位置がコンデンサ基板50の中心C1よりも一端58側に寄る。すると、振動や衝撃などでコンデンサ基板50の一端58は撓みやすく、コンデンサ54が脱落しやすい。コンデンサ54の脱落を抑制するため、コンデンサ54の根元にポッティング樹脂を設けて、コンデンサ54をコンデンサ基板50に固定することも考えられる。しかしながら、この場合、ポッティング樹脂を設けることによる手間が増加し、ポッティング樹脂のコストも増える。
【0045】
本実施形態のように、伝熱部42をパワー基板20と、コンデンサ基板50の一端58との間に配置することで、コンデンサ基板50を伝熱部42で支持して、コンデンサ基板50の撓みを抑制できる。
【0046】
したがって、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)スペーサ40は、本体41と、伝熱部42と、を備える。伝熱部42は、第1方向において、パワー素子群G1~G6よりも外側であり、コンデンサ基板50の板厚方向から見て、コンデンサ54に重ならない位置に配置されている。本体41に加えて、伝熱部42も伝熱経路とすることができるため、コンデンサ基板50の熱をパワー基板20に伝導させやすい。特に、伝熱部42は、第1方向において、パワー素子群G1~G6よりも外側であり、かつ、コンデンサ基板50の板厚方向から見てコンデンサ54と重なり合わない位置に設けられているので、スペーサ40が本体41だけの場合に比べて、伝熱経路を広くとることができる。したがって、コンデンサ54の冷却不足が生じることを抑制でき、コンデンサ54の性能劣化を抑制できる。
【0047】
(2)スペーサ40の伝熱部42をパワー基板20と、コンデンサ基板50の一端58との間に配置することで、コンデンサ基板50の撓みを抑制している。これにより、コンデンサ54の脱落を抑制することができる。したがって、コンデンサ54の脱落を抑制するために、ポッティング樹脂などでコンデンサ54をコンデンサ基板50に固定する必要がない。
【0048】
(3)第1ネジS1によってスペーサ40を固定している。第1ネジの締結力によって、スペーサ40はパワー基板20及びコンデンサ基板50に密着する。したがって、接触抵抗を低減させることができる。
【0049】
(4)伝熱部42は、伝熱経路だけでなく、通電経路としても機能する。伝熱部42を設けることで、コンデンサ54からパワー素子24までの通電経路が短くなり、インダクタンスを低減させることができる。
【0050】
(5)スペーサ40は、第2方向において、各入力端子25よりもパワー基板20の中心に寄って配置されている。熱は、パワー基板20の第2方向での中心位置に篭もりやすいため、スペーサ40を第2方向でのパワー基板20の中心に寄って配置することで、熱の篭もりやすい位置での放熱性を高めることができる。
【0051】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○スペーサ40は、第1ネジS1以外で固定されていてもよい。例えば、スペーサ40は、半田などの接合剤により、パワー基板20及びコンデンサ基板50に固定されていてもよい。
【0052】
○コンデンサ54は、中心C1よりも一端58側に集約されていなくてもよい。即ち、コンデンサ基板50の中心C1を挟んだ両側にコンデンサ54が配置されていてもよい。なお、この場合、中心C1を挟んで一方に配置されるコンデンサ54の数と、他方に配置されるコンデンサ54の数とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。コンデンサ54の数が異なる場合、第1方向において、重心位置が偏っている方向に伝熱部42を設けてもよい。即ち、コンデンサ基板50の撓みやすい位置に伝熱部42が設けられるようにしてもよい。
【0053】
○スペーサ40の伝熱部42は、本体41の長手方向の両端に設けられていてもよい。この場合、各伝熱部42が第1方向において、パワー素子群G1~G6よりも外側に配置されることになる。
【0054】
○ブラケット70は、制御基板60をヒートシンク11に固定することができればどのような形状であってもよい。また、ブラケット70は、樹脂など絶縁性の材料製でもよい。
【0055】
○熱伝導部材91及び介在熱伝導部材92は設けられていなくてもよい。
○放熱部としては、フィン13を有さない放熱板などでもよい。なお、放熱部としては、気体状の冷媒によって冷却されるものでもよいし、液状の冷媒によって冷却されるものでもよい。
【0056】
○各基板20,50,60は、絶縁金属基板や、プリント基板などどのような基板であってもよい。
○インバータ10は、産業車両に搭載されるものでなくてもよい。
【0057】
○コンデンサ基板50とヒートシンク11(またはパワー基板20)との間であり、かつ、コンデンサ基板50の一端58側に、絶縁性の伝熱部材を挟み込んでもよい。この場合、伝熱部材はコンデンサ基板50の板厚方向から見て、伝熱部42と重ならない位置に設けられる。これにより、本体41及び伝熱部42による熱伝導に加え、伝熱部材を伝熱経路としてコンデンサ基板50からヒートシンク11(またはパワー基板20)に熱が伝導する。また、伝熱部材を緩衝材として機能させることができるため、コンデンサ基板50の撓みをさらに抑制できる。
【符号の説明】
【0058】
S1…第1ネジ(固定ネジ)、G1~G6…パワー素子群、10…インバータ、11…ヒートシンク(放熱部)、20…パワー基板、24…パワー素子、40…スペーサ、41…本体、42…伝熱部、50…コンデンサ基板、54…コンデンサ、60…制御基板、63…電子部品。