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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ロール成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 13/04 20060101AFI20220726BHJP
   B21D 28/12 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B21D13/04 Z
B21D28/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019109251
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199540
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 忠利
(72)【発明者】
【氏名】二見 諭
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-7637(JP,A)
【文献】特開平4-172139(JP,A)
【文献】特開2015-221448(JP,A)
【文献】実開平4-12326(JP,U)
【文献】特開平2-80126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 13/04
B21D 28/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1切刃が軸線方向に積層された第1ロールと、複数の第2切刃が前記軸線方向に積層された第2ロールとが、互いに対向した状態で配列され、
前記第1ロール及び前記第2ロールの配列方向に対向する前記第1切刃及び前記第2切刃からなる切刃対を前記軸線方向に複数有し、
複数の前記切刃対には、前記配列方向の基準位置から同方向へ突出する突部を有する波状部を成形する2種類の波状部用切刃対が含まれ、
互いに逆方向に回転される前記第1ロール及び前記第2ロールの間に通された金属シートを、各波状部用切刃対とその両隣の前記切刃対とにより剪断しつつ前記波状部を成形するロール成形装置であって、
各波状部用切刃対における第1切刃及び第2切刃の前記軸線方向の厚みが互いに異なり、厚みの小さな切刃が大きな切刃の前記軸線方向における中央部分に位置するように、前記第1ロール及び前記第2ロールの前記軸線方向における位置決めがなされており、
前記2種類の前記波状部用切刃対は、前記第1切刃が前記第2切刃よりも大きな厚みを有するものと、前記第2切刃が前記第1切刃よりも大きな厚みを有するものとからなり、前記2種類の前記波状部用切刃対が前記軸線方向に交互に配置され、隣り合う前記切刃対の少なくとも一方が前記波状部用切刃対により構成されているロール成形装置。
【請求項2】
複数の前記切刃対には、前記軸線方向における前記波状部用切刃対の少なくとも一方の隣に、前記基準位置から前記配列方向へ突出する部分を有しない平坦部を成形する平坦部用切刃対が含まれ、
前記平坦部用切刃対では、第1切刃及び第2切刃として、前記厚みが同一であるものが用いられている請求項1に記載のロール成形装置。
【請求項3】
前記2種類の前記波状部用切刃対が前記軸線方向に隣り合っており、
前記平坦部用切刃対は、両波状部用切刃対の前記軸線方向における両側に配置されている請求項2に記載のロール成形装置。
【請求項4】
前記軸線方向における前記第1ロールの両側に一対の第1カラーが配置され、
前記軸線方向における前記第2ロールの両側に一対の第2カラーが配置され、
前記配列方向に対向する前記第1カラー及び前記第2カラーとして、前記軸線方向における厚みが異なるものが用いられている請求項1~3のいずれか1項に記載のロール成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに逆方向に回転する一対のロールの間に金属シートを通して成形を行なうロール成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、燃料電池の一部を構成する多孔体流路板の成形に用いられるロール成形装置が開示されている。このロール成形装置は、第1ロールと、同第1ロールに対向した状態で配置された第2ロールとを備える。第1ロールは、複数の第1切刃が軸線方向に積層されることにより形成されている。第2ロールは、複数の第2切刃が上記軸線方向に積層されることにより形成されている。
【0003】
ロール成形装置は、第1ロール及び第2ロールの配列方向に対向する第1切刃及び第2切刃からなる切刃対を軸線方向に複数有する。複数の切刃対には、上記配列方向の基準位置から同方向へ突出する突部を有する波状部を成形する波状部用切刃対が含まれる。そして、互いに逆方向に回転される第1ロール及び第2ロールの間に通された金属シートが、各波状部用切刃対とその両隣の切刃対とにより剪断されつつ波状部が成形される。
【0004】
上記ロール成形装置では、上記金属シートを適切に剪断するためには、隣り合う切刃対のうちの一方における第1切刃と、他方における第2切刃との間に剪断クリアランスが必要となる。この剪断クリアランスを形成するために、上記特許文献1では、隣り合う切刃間にシム等の別部材を挟んだり、各切刃の外周部に対し、切削等の追加の加工を施したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-146770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、シム等の別部材によって剪断クリアランスを形成する方法では、切刃以外に別部材が必要となる。また、隣り合う切刃間毎に別部材を挟み込む作業が必要となり、その分手間がかかり、作業効率が悪い。一方、追加の加工により剪断クリアランスを形成する方法では、複数の切刃のそれぞれの外周部に対し、切削等の加工を施さなければならず、この場合にも、手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、別部材を挟んだり追加の加工を施したりすることなく、簡単に剪断クリアランスを形成することのできるロール成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するロール成形装置は、複数の第1切刃が軸線方向に積層された第1ロールと、複数の第2切刃が前記軸線方向に積層された第2ロールとが、互いに対向した状態で配列され、前記第1ロール及び前記第2ロールの配列方向に対向する前記第1切刃及び前記第2切刃からなる切刃対を前記軸線方向に複数有し、複数の前記切刃対には、前記配列方向の基準位置から同方向へ突出する突部を有する波状部を成形する2種類の波状部用切刃対が含まれ、互いに逆方向に回転される前記第1ロール及び前記第2ロールの間に通された金属シートを、各波状部用切刃対とその両隣の前記切刃対とにより剪断しつつ前記波状部を成形するロール成形装置であって、各波状部用切刃対における第1切刃及び第2切刃の前記軸線方向の厚みが互いに異なり、厚みの小さな切刃が大きな切刃の前記軸線方向における中央部分に位置するように、前記第1ロール及び前記第2ロールの前記軸線方向における位置決めがなされており、前記2種類の前記波状部用切刃対は、前記第1切刃が前記第2切刃よりも大きな厚みを有するものと、前記第2切刃が前記第1切刃よりも大きな厚みを有するものとからなり、前記2種類の前記波状部用切刃対が前記軸線方向に交互に配置され、隣り合う前記切刃対の少なくとも一方が前記波状部用切刃対により構成されている。
【0009】
上記の構成によれば、第1ロール及び第2ロールの軸線方向における位置決めがなされた状態では、第1切刃の厚みが、第2切刃の厚みよりも大きな波状部用切刃対では、軸線方向における第2切刃の両側の面が、第1切刃の両側の面から、軸線方向へ同じ長さずつ遠ざかった箇所に位置する。上記波状部用切刃対の隣の切刃対における第1切刃は、波状部用切刃対における厚みの大きな第1切刃に重ねられる。上記隣の切刃対における第2切刃は、波状部用切刃対における厚みの小さな第2切刃に重ねられる。そのため、上記波状部用切刃対における厚みの小さな第2切刃と、その隣の切刃対における第1切刃との間にクリアランスが形成される。従って、波状部用切刃対において厚みの大きな第1切刃及び厚みの小さな第2切刃として、それぞれ適切な厚みを有するものを用いることで、剪断クリアランスを形成することが可能である。
【0010】
また、第1切刃の厚みが、第2切刃の厚みよりも小さな波状部用切刃対では、第1切刃の軸線方向における両側の面が、第2切刃の両側の面から、軸線方向へ同じ長さずつ遠ざかった箇所に位置する。上記波状部用切刃対の隣の切刃対における第1切刃は、波状部用切刃対における厚みの小さな第1切刃に重ねられる。上記隣の切刃対における第2切刃は、波状部用切刃対における厚みの大きな第2切刃に重ねられる。そのため、上記波状部用切刃対における厚みの小さな第1切刃と、その隣の切刃対における第2切刃との間にクリアランスが形成される。従って、波状部用切刃対において厚みの小さな第1切刃及び厚みの大きな第2切刃として、それぞれ適切な厚みを有するものを用いることで、剪断クリアランスを形成することが可能である。
【0011】
上記ロール成形装置において、複数の前記切刃対には、前記軸線方向における前記波状部用切刃対の少なくとも一方の隣に、前記基準位置から前記配列方向へ突出する部分を有しない平坦部を成形する平坦部用切刃対が含まれ、前記平坦部用切刃対では、第1切刃及び第2切刃として、前記厚みが同一であるものが用いられていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、軸線方向における第1切刃の厚みが、第2切刃の厚みよりも大きな波状部用切刃対に対し、隣に位置する平坦部用切刃対における第1切刃は、上記波状部用切刃対における厚みの大きな第1切刃に重ねられる。上記平坦部用切刃対における第2切刃は、上記波状部用切刃対における厚みの小さな第2切刃に重ねられる。そのため、上記波状部用切刃対における厚みの小さな第2切刃と、その隣の平坦部用切刃対における第1切刃との間にクリアランスが形成される。従って、波状部用切刃対において厚みの大きな第1切刃及び厚みの小さな第2切刃として、それぞれ適切な厚みを有するものを用いることで、剪断クリアランスを形成することが可能である。
【0013】
また、軸線方向における第1切刃の厚みが、第2切刃の厚みよりも小さな波状部用切刃対に対し、隣に位置する平坦部用切刃対における第1切刃は、上記波状部用切刃対における厚みの小さな第1切刃に重ねられる。上記平坦部用切刃対における第2切刃は、上記波状部用切刃対における厚みの大きな第2切刃に重ねられる。そのため、上記波状部用切刃対における厚みの小さな第1切刃と、その隣の平坦部用切刃対における第2切刃との間にクリアランスが形成される。従って、波状部用切刃対において厚みの小さな第1切刃及び厚みの大きな第2切刃として、それぞれ適切な厚みを有するものを用いることで、剪断クリアランスを形成することが可能である。
【0014】
上記ロール成形装置において、前記2種類の前記波状部用切刃対が前記軸線方向に隣り合っており、前記平坦部用切刃対は、両波状部用切刃対の前記軸線方向における両側に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、第1切刃の厚みが、第2切刃の厚みよりも大きな波状部用切刃対に対し、隣に位置する波状部用切刃対における第1切刃の厚みは、第2切刃の厚みよりも小さい。従って、一方の波状部用切刃対において厚みが大きな第1切刃は、他方の波状部用切刃対において厚みが小さな第1切刃に重ねられる。一方の波状部用切刃対において厚みが小さな第2切刃は、他方の波状部用切刃対において厚みが大きな第2切刃に重ねられる。
【0016】
そのため、一方の波状部用切刃対における厚みの小さな第2切刃と、その隣の波状部用切刃対における厚みの小さな第1切刃との間にクリアランスが形成される。従って、各波状部用切刃対において第1切刃及び第2切刃として、それぞれ適切な厚みを有するものを用いることで、剪断クリアランスを形成することが可能である。
【0017】
上記ロール成形装置において、前記軸線方向における前記第1ロールの両側に一対の第1カラーが配置され、前記軸線方向における前記第2ロールの両側に一対の第2カラーが配置され、前記配列方向に対向する前記第1カラー及び前記第2カラーとして、前記軸線方向における厚みが異なるものが用いられていることが好ましい。
【0018】
ロール成形装置では、互いに厚みの異なる第1切刃及び第2切刃をそれぞれ有する2種類の波状部用切刃対が軸線方向に交互に配置されている。隣り合う切刃対の少なくとも一方が波状部用切刃対により構成されている。従って、ロール成形装置では、第1ロールの軸線方向における一方の端面と、同第1ロールに対し上記配列方向に対向する第2ロールの軸線方向における一方の端面とが、同軸線方向に互いに異なる箇所に位置する。両端面間に軸線方向の段差が生ずる。
【0019】
しかし、配列方向に対向する第1カラー及び第2カラーとして、互いに上記軸線方向における厚みの異なるものが用いられる上記の構成によれば、第1カラー及び第2カラーの厚みの差によって、上記両端面間の軸線方向の段差を吸収することが可能である。
【0020】
従って、各波状部用切刃対における第1切刃及び第2切刃のうち、厚みの小さな切刃が大きな切刃の軸線方向における中央部分に位置するように、第1ロールの軸線方向における位置決めを両第1カラーによって行ない、第2ロールの軸線方向における位置決めを両第2カラーによって行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
上記ロール成形装置によれば、別部材を挟んだり追加の加工を施したりすることなく、簡単に剪断クリアランスを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態におけるロール成形装置の概略構成図。
図2】一実施形態のロール成形装置を用いて金属シートを成形する様子を示す説明図。
図3】一実施形態のロール成形装置によって成形された多孔体流路板の部分斜視図。
図4図3の4-4線断面図。
図5図3の5-5線断面図。
図6図3の6-6線断面図。
図7図3の多孔体流路板の部分断面図。
図8】一実施形態のロール成形装置の部分断面図。
図9図8の部分拡大断面図。
図10】ロール成形装置の変形例を示す図であり、図9に対応する部分拡大断面図。
図11】ロール成形装置の変形例を示す図であり、図9に対応する部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、ロール成形装置の一実施形態について、図1図9を参照して説明する。なお、一部の図では、ロール成形装置における各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態のロール成形装置20は、例えば、チタン、ステンレス鋼の板材からなる長尺状の金属シート11をロール成形することにより、燃料電池の一部を構成する多孔体流路板12を形成する装置である。
【0025】
まず、多孔体流路板12が用いられて構成される固体高分子形燃料電池について、簡単に説明する。固体高分子形燃料電池は、複数の単セルを積層して構成された燃料電池スタックを備えている。単セルは、発電部を構成する膜電極ガス拡散層接合体と、膜電極ガス拡散層接合体を厚さ方向における両側から挟持する第1セパレータ及び第2セパレータと、膜電極ガス拡散層接合体及び第2セパレータの間に設けられる多孔体流路板12とを備えている。
【0026】
次に、金属シート11が用いられて形成される多孔体流路板12について説明する。本実施形態では、金属シート11として、0.05mm(50μm)の板厚を有するものが用いられている。ここで、多孔体流路板12の各部について説明するに当たり、方向を特定するために、金属シート11の延びる方向を「長さ方向」とし、金属シート11の面に沿う方向のうち、上記長さ方向に直交する方向を「幅方向」というものとする。また、金属シート11の板厚に沿う方向は、後述するロール成形装置20における第1ロール30及び第2ロール40の配列方向と一致している。
【0027】
多孔体流路板12は、図3図7に示すように、平坦部13及び波状部14,16を備えている。これらの平坦部13及び波状部14,16は、幅方向に対し互いに平行な状態で長さ方向へ延びている。平坦部13は、上記配列方向における基準位置において平坦状に形成されており、上記配列方向に突出する部分を有していない。
【0028】
波状部14は、上記配列方向の基準位置から同方向の一方に突出する複数の突部15を有している。これらの突部15は、互いに上記長さ方向に一定間隔ずつ離れた箇所に位置している。波状部14において、隣り合う突部15間の部分は上記平坦部13と同様に、基準位置において平坦状に形成されている。
【0029】
波状部16は、上記配列方向の基準位置から他方に突出する複数の突部17を有している。これらの突部17は、互いに上記長さ方向に一定間隔ずつ離れた箇所に位置している。各突部17は、波状部14において平坦状の部分の側方となる箇所に位置している。波状部16において、隣り合う突部17間の部分は上記平坦部13と同様に、基準位置において平坦状に形成されている。
【0030】
波状部14及び波状部16は、上記幅方向に隣り合っている。平坦部13は、波状部14を挟んで波状部16とは反対側に位置するとともに、波状部16を挟んで波状部14とは反対側に位置している。すなわち、平坦部13は、隣り合う波状部14及び波状部16の幅方向における両側に位置している。
【0031】
多孔体流路板12における各突部15の頂面は、上記膜電極ガス拡散層接合体のカソード側ガス拡散層に当接される。多孔体流路板12における各突部17の底面は、上記第2セパレータに当接される。
【0032】
平坦部13、波状部14及び波状部16は、各々が隣接する部分において互いに繋がっている。
燃料電池では、酸化剤ガスが、波状部14,16と上記膜電極ガス拡散層接合体との間を流れる。また、反応ガスの電気化学反応により生成された生成水が、平坦部13と第2セパレータとの間を流れる。
【0033】
次に、ロール成形装置20について説明する。
図1に示すように、ロール成形装置20は、基台21と、基台21に立設された一対の支持柱22とを備えている。各支持柱22において、上下方向に互いに離れた箇所には、第1軸受23及び第2軸受24が取り付けられている。
【0034】
第1ロール30の回転軸である第1軸部25は、両第1軸受23によって回転可能に支持されている。第2ロール40の回転軸である第2軸部26は、上記第1軸部25の下方で、その第1軸部25に対し平行に配置されており、両第2軸受24によって回転可能に支持されている。
【0035】
図8及び図9に示すように、第1軸部25及び第2軸部26が延びる方向を軸線方向とすると、第1ロール30は、それぞれ略円盤状をなす複数の第1切刃31,32,33を軸線方向に積層することにより構成されている。第1切刃31~33のそれぞれの外周縁部は、径が周方向に変化するように、凹凸状に形成されている。第1切刃31~33のうち、隣り合うものは互いに接着されている。第1ロール30は、第1軸部25に外嵌されて、同第1軸部25に対し一体回転可能に取り付けられている。
【0036】
第2ロール40は、それぞれ略円盤状をなす複数の第2切刃41,42,43を軸線方向に積層することにより構成されている。第2切刃41~43のそれぞれの外周縁部は、径が周方向に変化するように、凹凸状に形成されている。第2切刃41~43のうち、隣り合うものは互いに接着されている。第2ロール40は、第2軸部26に外嵌されて、同第2軸部26に対し一体回転可能に取り付けられている。第1ロール30及び第2ロール40は、互いに上下方向に対向した状態で配列されている。
【0037】
第1軸部25上であって、上記軸線方向における第1ロール30の両側となる箇所には、一対の第1カラー55,56が外嵌されている。また、第2軸部26上であって、上記軸線方向における第2ロール40の両側となる箇所には、一対の第2カラー57,58が外嵌されている。
【0038】
第1軸部25上には位置決め用のリブ61が設けられ、第2軸部26上には位置決め用のリブ62が設けられている。両リブ61,62は、上記軸線方向における同一の箇所に位置している。第1カラー56がリブ61に接触させられることにより、同第1カラー56の軸線方向の位置決めがなされている。また、第2カラー58がリブ62に接触させられることにより、同第2カラー58の軸線方向の位置決めがなされている。第1カラー55は、第1カラー56との間に第1ロール30を挟み込んだ状態で第1軸部25に装着されている。第2カラー57は、第2カラー58との間に第2ロール40を挟み込んだ状態で第2軸部26に装着されている。
【0039】
第1ロール30及び第2ロール40の配列方向である上下方向に対向する第1切刃31~33及び第2切刃41~43の組合せを「切刃対」とすると、ロール成形装置20は切刃対を上記軸線方向に複数有している。
【0040】
複数の切刃対は、2種類の波状部用切刃対51,52と、1種類の平坦部用切刃対53とによって構成されている。波状部用切刃対51は、その両隣の切刃対と協働して、金属シート11を剪断しつつ上記波状部14を成形するためのものである。波状部用切刃対52は、その両隣の切刃対と協働して、金属シート11を剪断しつつ上記波状部16を成形するためのものである。2種類の波状部用切刃対51,52は、上記軸線方向に互いに隣り合っている。
【0041】
平坦部用切刃対53は、その両隣の切刃対と協働して、金属シート11を剪断しつつ平坦部13を成形するためのものである。平坦部用切刃対53は、上記軸線方向における各波状部用切刃対51,52の両隣のうち、同波状部用切刃対51(52)の隣に別の波状部用切刃対52(51)が位置していない側の隣に位置している。隣り合う2種類の波状部用切刃対51,52は、それらの軸線方向における両側から一対の平坦部用切刃対53によって挟み込まれている。
【0042】
上記金属シート11の剪断を適切に行なうためには、隣り合う切刃対における第1切刃31~33と第2切刃41~43との間に剪断クリアランスC1が必要である。
上記剪断クリアランスC1を形成するために、本実施形態では、波状部用切刃対51,52毎の第1切刃31,32及び第2切刃41,42として、上記軸線方向における寸法(以下「厚み」という)の異なるものが用いられている。
【0043】
さらに、ロール成形装置20では、上記2種類の波状部用切刃対51,52が上記軸線方向に交互に配置されている。
より具体的には、波状部用切刃対51は、厚みの大きな第1切刃31と、厚みの小さな第2切刃42とからなる。波状部用切刃対52は、厚みの大きな第2切刃41と、厚みの小さな第1切刃32とからなる。
【0044】
平坦部用切刃対53では、第1切刃33及び第2切刃43として、厚みが同一であるものが用いられている。
本実施形態では、各波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの小さなものとして、0.10mmの厚みを有するものが用いられている。
【0045】
ここで、隣り合う切刃対における第1切刃31~33と第2切刃41~43との間の剪断クリアランスC1は、一般に、金属シート11の板厚の10%程度に設定されることが好ましいとされている。上述したように、本実施形態では、金属シート11として、0.05mm(50μm)の板厚を有するものを用いているため、剪断クリアランスC1は、0.005mm(5μm)である。そこで、本実施形態では、各波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの大きなものとして、厚みの小さなものよりも0.01mm厚みが大きなもの、すなわち、0.11mmの厚みを有するものが用いられている。
【0046】
また、平坦部用切刃対53における第1切刃33及び第2切刃43として、0.11mmの厚みを有するものが用いられている。
ロール成形装置20では、波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの小さな切刃を大きな切刃の軸線方向における中央部分に位置させると、軸線方向における第1ロール30の両側の端面と、第2ロール40の両側の端面とが、同軸線方向にずれる。図8の場合、第1ロール30の右端面が第2ロール40の右端面よりも右方へ飛び出し、両右端面間に段差が生ずる。また、第2ロール40の左端面が第1ロール30の左端面よりも左方へ飛び出し、両左端面間に段差が生ずる。
【0047】
ここで、仮に、第1カラー56及び第2カラー58として、軸線方向における厚みが互いに同一であるものを用い、第1カラー55及び第2カラー57として、軸線方向における厚みが互いに同一であるものを用いると、上記段差を吸収できない。波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの小さな切刃を大きな切刃の軸線方向における中央部分に位置させることができない。
【0048】
そのため、第1カラー56及び第2カラー58として、上記軸線方向における厚みの異なるものが用いられている。第1カラー55及び第2カラー57として、上記軸線方向における厚みの異なるものが用いられている。本実施形態では、第1カラー56として第2カラー58よりも、上記段差の分だけ厚みの小さなものが用いられている。また、第1カラー55として第2カラー57よりも上記段差の分だけ厚みの大きなものが用いられている。
【0049】
さらに、ロール成形装置20では、図1に示すように、第1軸部25にギヤ64が一体回転可能に取り付けられている。第2軸部26にギヤ65が一体回転可能に取り付けられており、このギヤ65が上記第1軸部25上のギヤ64に噛み合わされている。また、第2軸部26には、スプロケット66が一体回転可能に取り付けられている。このスプロケット66と図示しない電動モータの出力軸との間には、無端状のチェーンが掛け渡されている。
【0050】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図1及び図8に示すように、ロール成形装置20では、リブ61及び両第1カラー55,56によって第1ロール30の軸線方向における位置決めがなされ、リブ62及び両第2カラー57,58によって第2ロール40の軸線方向における位置決めがなされている。
【0051】
図9に示すように、第1切刃31が第2切刃42よりも大きな厚みを有する波状部用切刃対51では、第2切刃42が第1切刃31の軸線方向における中央部分に位置している。軸線方向における第2切刃42の両側の面が、第1切刃31の両側の面から、0.005mmずつ遠ざかった箇所に位置する。
【0052】
上記波状部用切刃対51の図9における左隣には、第1切刃32が第2切刃41よりも小さな厚みを有する波状部用切刃対52が配置されている。この波状部用切刃対52では、第1切刃32が第2切刃41の軸線方向における中央部分に位置している。軸線方向における第1切刃32の両側の面が、第2切刃41の両側の面から、0.005mmずつ遠ざかった箇所に位置する。
【0053】
前者の波状部用切刃対51における厚みの大きな第1切刃31と、後者の波状部用切刃対52における厚みの小さな第1切刃32とは重ねられている。また、前者の波状部用切刃対51における厚みの小さな第2切刃42と、後者の波状部用切刃対52における厚みの大きな第2切刃41とは重ねられている。そのため、後者の波状部用切刃対52における厚みの小さな第1切刃32と、前者の波状部用切刃対51における厚みの小さな第2切刃42との間に、0.005mmの剪断クリアランスC1が形成される。
【0054】
前者の波状部用切刃対51の図9における右隣には、第1切刃33の厚みと第2切刃43の厚みとが同一である平坦部用切刃対53が配置されている。この平坦部用切刃対53における第1切刃33は、上記波状部用切刃対51における厚みの大きな第1切刃31に重ねられている。平坦部用切刃対53における第2切刃43は、上記波状部用切刃対51における厚みの小さな第2切刃42に重ねられている。そのため、波状部用切刃対51における厚みの小さな第2切刃42と、その隣の平坦部用切刃対53における第1切刃33との間に、0.005mmの剪断クリアランスC1が形成される。
【0055】
上記平坦部用切刃対53の右隣には、第1切刃32が第2切刃41よりも小さな厚みを有する波状部用切刃対52が配置されている。この波状部用切刃対52では、第1切刃32が第2切刃41の軸線方向における中央部分に位置している。
【0056】
上記平坦部用切刃対53における第1切刃33と、上記波状部用切刃対52における厚みの小さな第1切刃32とは重ねられている。また、平坦部用切刃対53における第2切刃43と、上記波状部用切刃対52における厚みの大きな第2切刃41とは重ねられている。そのため、平坦部用切刃対53における第2切刃43と、上記波状部用切刃対52における厚みの小さな第1切刃32との間に、0.005mmの剪断クリアランスC1が形成される。
【0057】
互いに軸線方向に隣り合う波状部用切刃対51,52の図9における左隣には、平坦部用切刃対53が配置されている。この平坦部用切刃対53における第1切刃33は、上記波状部用切刃対52における厚みの小さな第1切刃32に重ねられている。平坦部用切刃対53における第2切刃43は、上記波状部用切刃対52における厚みの大きな第2切刃41に重ねられている。そのため、波状部用切刃対52における厚みの小さな第1切刃32と、その隣の平坦部用切刃対53における第2切刃43との間に、0.005mmの剪断クリアランスC1が形成される。
【0058】
上記平坦部用切刃対53の図9における左隣には、波状部用切刃対51が配置されている。この波状部用切刃対51では、第2切刃42が第1切刃31の軸線方向における中央部分に位置している。
【0059】
上記平坦部用切刃対53における第1切刃33と、上記波状部用切刃対51における厚みの大きな第1切刃31とは重ねられている。また、平坦部用切刃対53における第2切刃43と、上記波状部用切刃対51における厚みの小さな第2切刃42とは重ねられている。そのため、平坦部用切刃対53における第1切刃33と、波状部用切刃対51における厚みの小さな第2切刃42との間に、0.005mmの剪断クリアランスC1が形成される。
【0060】
このように、本実施形態では、複数の切刃対が、第1切刃31が第2切刃42よりも大きな厚みを有する波状部用切刃対51と、第1切刃32が第2切刃41よりも小さな厚みを有する波状部用切刃対52とを含んでいる。そして、上記2種類の波状部用切刃対51,52を軸線方向に交互に配置している。隣り合う切刃対の少なくとも一方を波状部用切刃対51,52によって構成している。
【0061】
そのため、厚みの小さな第1切刃32及び第2切刃42と、厚みの大きな第1切刃31,33及び第2切刃41,43とを予め作成しておき、これらを上述したような順に積層することで、第1ロール30及び第2ロール40をそれぞれ作成する。波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの小さな切刃が大きな切刃の軸線方向における中央部分に位置するように、第1ロール30を第1カラー55,56によって第1軸部25に取り付け、第2ロール40を第2カラー57,58によって第2軸部26に取り付ける。こうした簡単な作業を行なうだけで、波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち厚みの小さい切刃と、同波状部用切刃対51,52の隣の切刃対における切刃との間に剪断クリアランスC1を形成することができる。
【0062】
その結果、従来のロール成形装置とは異なり、シム等の別部材を挟んだり追加の加工を施したりすることなく、簡単に剪断クリアランスC1を形成することができ、剪断クリアランスC1の形成に要するコストを低減することができる。また、剪断クリアランスC1の管理が容易になる。
【0063】
ところで、ロール成形装置20では図1及び図2に示すように、電動モータの出力軸が回転されると、その回転がチェーンを介してスプロケット66に伝達される。スプロケット66が第2軸部26と一体となって回転される。第2軸部26の回転に伴いギヤ65がスプロケット66と同じ方向へ回転される。この回転はギヤ64を介して第1軸部25に伝達される。第1軸部25が第2軸部26とは逆方向へ回転される。第1軸部25に取り付けられた第1ロール30は、第2軸部26に取り付けられた第2ロール40とは逆方向へ回転される。
【0064】
一方、図示しない搬送装置により、長尺状の金属シート11が、第1ロール30及び第2ロール40の間に向けて送られる。金属シート11は、互いに逆方向に回転される第1ロール30及び第2ロール40の間に通される。図9に示すように、金属シート11が、第1ロール30及び第2ロール40の間を通過する際に、波状部用切刃対51と、その両隣の波状部用切刃対52及び平坦部用切刃対53とによって、金属シート11が剪断されつつ波状部14が成形される。波状部用切刃対52とその両隣の平坦部用切刃対53及び波状部用切刃対51とによって、金属シート11が剪断されつつ波状部16が成形される。平坦部用切刃対53と、その両隣の波状部用切刃対51,52とによって、金属シート11が剪断されつつ平坦部13が成形される。このようにして、波状部14、波状部16及び平坦部13を有する、目的とする多孔体流路板12が得られる。
【0065】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、図1及び図8に示すように、配列方向に対向する第1カラー55,56及び第2カラー57,58として、互いに厚みの異なるものが用いられている。
【0066】
そのため、両第1カラー55,56及び両第2カラー57,58によって、軸線方向における第1ロール30及び第2ロール40の位置決めを行なうことで、第1ロール30及び第2ロール40の両端面間の軸線方向の段差を吸収することができる。各波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの小さな切刃を、大きな切刃の軸線方向における中央部分に位置させることができる。
【0067】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・2種類の波状部用切刃対51,52が軸線方向に交互に配置され、かつ隣り合う切刃対の少なくとも一方が波状部用切刃対51,52により構成されることを条件に、切刃対が、上記実施形態とは異なる態様で配置されてもよい。図10及び図11はその一例を示している。なお、図10及び図11において、上記実施形態と共通する要素には同一の符号が付されている。
【0069】
図10は、波状部用切刃対51の両隣に平坦部用切刃対53が配置され、かつ波状部用切刃対52の両隣に平坦部用切刃対53が配置された変形例を示している。すなわち、この変形例では、上記実施形態において隣り合う2種類の波状部用切刃対51,52の間にも平坦部用切刃対53が配置されている。
【0070】
図11は、平坦部用切刃対53が省略され、2種類の波状部用切刃対51,52が軸線方向に互いに違いに配置された変形例を示している。
上記いずれの変形例でも、上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0071】
・軸線方向における第1ロール30の端面と、第2ロール40の端面との間に生ずる段差が、上記実施形態とは異なる構成によって吸収されてもよい。
例えば、リブ61,62として互いに厚みの異なるものが用いられてもよい。例えば、図8では、リブ62として、リブ61よりも上記段差の分だけ厚みの大きなものが用いられてもよい。
【0072】
上記のように、リブ61,62によって段差を吸収する場合には、第1カラー56及び第2カラー58が省略されてもよい。また、第1カラー56及び第2カラー58として互いに厚みが同一であるものが用いられてもよい。
【0073】
また、第1カラー55及び第2カラー57のうち、厚みの小さなものが省略され、厚みの大きなものとして、上記段差と同じ大きさの厚みを有するものが用いられてもよい。例えば、図8では、第2カラー57が省略され、第1カラー55として、上記段差と同じ大きさの厚みを有するものが用いられてもよい。
【0074】
また、第1カラー56及び第2カラー58のうち、厚みの小さなものが省略され、厚みの大きなものとして、上記段差と同じ大きさの厚みを有するものが用いられてもよい。例えば、図8では、第1カラー56が省略され、第2カラー58として、上記段差と同じ大きさの厚みを有するものが用いられてもよい。
【0075】
このようにしても、上記段差を吸収することができる。
上記いずれの場合にも、上記実施形態と同様に、各波状部用切刃対51,52における第1切刃31,32及び第2切刃41,42のうち、厚みの小さな切刃を大きな切刃の軸線方向における中央部分に位置させて、剪断クリアランスC1を形成することができる。
【符号の説明】
【0076】
11…金属シート、13…平坦部、14,16…波状部、15,17…突部、20…ロール成形装置、30…第1ロール、31,32,33…第1切刃、40…第2ロール、41,42,43…第2切刃、51,52…波状部用切刃対、53…平坦部用切刃対、55,56…第1カラー、57,58…第2カラー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11