(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】電気抵抗調整剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220726BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220726BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220726BHJP
C08G 65/24 20060101ALI20220726BHJP
C08L 71/03 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C09K3/00 C
C08J5/18 CEQ
C08J5/18 CEZ
G03G15/00 550
C08G65/24
C08L71/03
(21)【出願番号】P 2019509921
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012527
(87)【国際公開番号】W WO2018181371
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2017072359
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 和敬
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 尚也
(72)【発明者】
【氏名】宇渡 真一
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070137(JP,A)
【文献】特開2012-224749(JP,A)
【文献】特開2015-007668(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133610(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/081152(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08J 5/18
G03G 15/00
C08G 65/00-65/48
C08L 71/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル系電気抵抗調整剤と、ゴム及び樹脂から選択される少なくとも一種とを含有し、
前記ポリエーテル系電気抵抗調整剤が、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位を10~60mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位を30~89mol%、(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位を1~15mol%有し、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算により測定された重量平均分子量が130万以下である重合体からな
り、
前記重量平均分子量が、株式会社島津製作所GPC装置RID-6A、及びShodex社製カラムKD-807、KD-806、KD-806M、KD-803を用いて、流量1.0mL/min、濃度を20mg重合体/ジメチルフォルムアミド8mlとし、注入量50μL、カラム温度40℃の条件にて測定されたものである電気抵抗調整剤含有組成物(但し、下記(i)及び(ii)に記載の組成物を除く)。
(i)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を1分子あたりの平均個数として5~200個含んでなり、重量平均分子量が1,000~50,000であり、下記一般式(1)で表される繰り返し単位の少なくとも一部が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位であるポリエーテル化合物を含む組成物
(ii)単量体組成比が、エピクロロヒドリン単量体単位40モル%、エチレンオキサイド単量体単位56モル%、アリルグリシジルエーテル単量体単位4モル%であるポリエーテルゴムと、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとを含む組成物
【化1】
【化2】
(上記一般式(1)において、Aは一価の基である。上記一般式(2)において、A
+はカチオン性の窒素原子を含有する基であり、X
-は任意のアニオンである。)
【請求項2】
前記(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位がエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンから選択される少なくとも一種に由来する構成単位である請求項1に記載の電気抵抗調整剤含有組成物。
【請求項3】
前記(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位がエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選択される少なくとも一種に由来する構成単位である請求項1又は2に記載の電気抵抗調整剤含有組成物。
【請求項4】
前記(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位がメタクリル酸グリシジル及びアリルグリシジルエーテルから選択される少なくとも一種に由来する構成単位である請求項1~3のいずれかに記載の電気抵抗調整剤含有組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテル系電気抵抗調整剤の含有量が、ゴム及び樹脂の合計100重量部に対して、120重量部以下である請求項1~4のいずれかに記載の電気抵抗調整剤含有組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテル系電気抵抗調整剤以外の導電剤を含まないか、前記ポリエーテル系電気抵抗調整剤以外の導電剤を含む場合には該導電剤の量が、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、2重量部以下である請求項1~5のいずれかに記載の電気抵抗調整剤含有組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の電気抵抗調整剤含有組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエーテル重合体からなる電気抵抗調整剤、該電気抵抗調整剤を含有する電気抵抗調整剤含有組成物、及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気抵抗調整剤はゴム、樹脂と共に含有することにより、電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置を含む種々のOA機器の部品として用いられている。OA機器の部品としては、例えば、導電性ローラを例示することができ、芯材と、半導電性を有するゴム材料といった導電性弾性体を備えて、形成されている。
【0003】
通常、OA機器の部品に用いられている電気抵抗調整剤としては導電性カーボンブラックが用いられているが、導電性カーボンブラックの材料中での分散性の不良によって抵抗のむらが大きくなるとともに、材料の硬度が上昇するという問題があった。通常、柔軟性を与えるためには可塑剤等が用いられるが、この方法によると、ブリードアウトが生じ、材料が汚染されるという問題も生じる。
【0004】
また、カーボンブラックの分散性を改良することに関し、カーボンブラック表面を各種の界面活性剤や樹脂で被覆して、固状または液状の基材との親和性を高める検討やカーボンブラック複合ポリマーとする検討も行われている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、上記の検討も十分では無く、新たな電気抵抗調整剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一の課題は、ゴムとともに配合することにより、その組成物の加工性を改良でき、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能である電気抵抗調整剤を提供することである。
本発明の別の課題は、樹脂とともに配合することにより、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能であり、かつ該成形体を低硬度化させることができる電気抵抗調整剤を提供することである。
本発明の好ましい課題は、ゴムや樹脂とともに配合することにより、その組成物の加工性を改良でき、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能であり、且つ、前記成形体を低硬度化させることができる電気抵抗調整剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位を10~60mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位を30~89mol%、(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位を1~15mol%有し、重量平均分子量が130万以下である重合体からなるポリエーテル系電気抵抗調整剤を用いることにより、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
項1 (a)エピハロヒドリンに由来する構成単位を10~60mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位を30~89mol%、(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位を1~15mol%有し、重量平均分子量が130万以下である重合体からなるポリエーテル系電気抵抗調整剤。
項2 前記(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位がエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンから選択される少なくとも一種に由来する構成単位である項1に記載のポリエーテル系電気抵抗調整剤。
項3 前記(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位がエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選択される少なくとも一種に由来する構成単位である項1又は2に記載のポリエーテル系電気抵抗調整剤。
項4 前記(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位がメタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルに由来する構成単位である項1~3いずれかに記載のポリエーテル系電気抵抗調整剤。
項5 項1~4いずれかに記載のポリエーテル系電気抵抗調整剤と、ゴム及び樹脂から選択される少なくとも一種を含有する電気抵抗調整剤含有組成物。
項6 前記ポリエーテル系電気抵抗調製剤が、ゴム及び樹脂の合計100重量部に対して、120重量部以下である項5に記載の電気抵抗調製剤含有組成物。
項7 前記ポリエーテル系電気抵抗調整剤以外の導電剤を含まないか、前記ポリエーテル系電気抵抗調整剤以外の導電剤を含む場合には該導電剤の量が、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、2重量部以下である項5又は6に記載の電気抵抗調整剤含有組成物。
項8 項5~7のいずれかに記載の電気抵抗調整剤含有組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤はゴムとともに配合することにより、その組成物の加工性を改良でき、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能である。
また本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は樹脂とともに配合することにより、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能であり、かつ該成形体を低硬度化させることができる。
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は、好ましくは、ゴムや樹脂とともに配合することにより、その組成物の加工性を改良でき、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能であり、且つ、該成形体を低硬度化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位を10~60mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位を30~89mol%、(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位を1~15mol%有し、重量平均分子量が130万以下である重合体からなる。
【0012】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位が、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンから選択される少なくとも一種に由来する構成単位であることが好ましく、エピクロロヒドリンに由来する構成単位であることがより好ましい。
【0013】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位が45mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましい。また(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位が15mol%以上であることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましい。
【0014】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位が、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選択される少なくとも一種に由来する構成単位であることが好ましく、エチレンオキサイドに由来する構成単位であることがより好ましい。
【0015】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位が80mol%以下であることが好ましく、77mol%以下であることがより好ましい。また(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位が35mol%以上であることが好ましく、40mol%以上であることがより好ましい。アルキレンオキサイドに由来する構成単位の含有量が30mol%未満であると、電気抵抗を十分に下げることができない。また、一般的にアルキレンオキサイドの含有量が多いほど電気抵抗性が向上するが、89mol%より多く含有すると、アルキレンオキサイドの結晶化によりかえって電気抵抗性が低下する。
【0016】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位がグリシジル基などのオキシラン環を有していることが好ましい。オキシラン環を有するエチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位が、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルから選択される少なくとも一種に由来する構成単位であることが好ましく、アリルグリシジルエーテルに由来する構成単位である事が特に好ましい。
【0017】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、(c)エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位が13mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。下限は2mol%以上であることがより好ましく、3mol%以上であることが特に好ましい。
【0018】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤がエピクロロヒドリン-アルキレンオキサイド-エチレン性不飽和基含有モノマー共重合体である場合の共重合組成については、塩素含有量、ヨウ素価により求められる。
塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって測定する。得られた塩素含有量からエピクロロヒドリンに由来する構成単位のモル分率を算出する。
ヨウ素価はJIS K6235に準じた方法で測定する。得られたヨウ素価からエチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位のモル分率を算出する。
アルキレンオキサイドに由来する構成単位のモル分率は、エピクロロヒドリンに基づく構成単位のモル分率、エチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位のモル分率より算出する。
【0019】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、重合体の重量平均分子量は130万以下である。重量平均分子量の上限は120万以下であることが好ましく、115万以下であることがより好ましい。重量平均分子量の下限は20万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましい。このような範囲の重量平均分子量を有する重合体を用いることにより、材料を汚染することなく、適度に組成物の粘度及び/又は成形体の硬度を下げることができる。組成物の粘度や成形体の硬度を下げると、加工性を向上でき、OA機器用の導電性ローラとした時の押し付け時の密着性を向上できる。
【0020】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤においては、重合体の重量平均分子量と数平均分子量との比(重量平均分子量/数平均分子量)が3~10であることが好ましく、5~9であることがより好ましく、5~6.5であることが最も好ましい。
【0021】
本発明において、重量平均分子量と数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶剤としてジメチルフォルムアミド(DMF)を使用して、ポリスチレン換算により測定することができる。
【0022】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は、オキシラン化合物を開環重合させ得るものを触媒として使用し、(a)エピハロヒドリン、(b)アルキレンオキサイド、及び(c)エチレン性不飽和基含有モノマーを共重合させることによって製造できる。重合温度は、例えば、-20~100℃の範囲である。この重合は、溶液重合、スラリー重合のいずれでもよい。前記触媒としては、例えば、有機アルミニウムを主体としこれに水やリンのオキソ酸化合物やアセチルアセトン等を反応させた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させた触媒系、有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系(例えば米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫-リン酸エステル縮合物触媒系)等が挙げられる。なお、前記(a)エピハロヒドリン、(b)アルキレンオキサイド、及び(c)エチレン性不飽和基含有モノマーを実質上ランダムに共重合することが好ましい。
【0023】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は、ゴム及び樹脂から選択される少なくとも一種を含有し、電気抵抗調整剤含有組成物として用いることができる。
【0024】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物に用いられるゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエン(VBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)などの主鎖に不飽和炭素結合をもつゴム(Rグループ);エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)などのポリメチン型飽和主鎖をもつゴム(Mグループ);ウレタンゴム(AU)などの主鎖にC、N及びOをもつゴム(Uグループ);シリコーンゴム(VMQ)などの主鎖にSiとOをもつゴム(Qグループ);エピクロロヒドリンゴム(ECO、但し、重量平均分子量80万以上)などの主鎖にCとOを持つゴム(Oグループ)などから選択される少なくとも一種であることが好ましい。ただしOグループのゴムの構成単位が前記電気抵抗調整剤と共通する場合、該構成単位が共通するOグループのゴムは、重量平均分子量が130万超であり、重量平均分子量が150万以上であることが好ましい。前記ゴムとしては、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(AU)、及びシリコーンゴム(VMQ)から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)から選択される少なくとも一種であることが特に好ましい。
前記ゴムは、一種を用いるか、二種以上組み合わせる場合には、最も多い成分の含有割合を高くすることが好ましい。二種以上を組み合わせる場合の最多成分の割合は、ゴム100重量%中、例えば、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
なお前記ゴムは、実質的に非液状ゴムであり、液状ゴムを含む場合でもその量は、ゴム100重量%中、例えば、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは0重量%である。
【0025】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、アクリル系樹脂から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0026】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物としては、上記ゴム及び樹脂の全量100重量部に対して、本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤を500重量部以下含有することが好ましく、300重量部以下含有することがより好ましく、250重量部以下含有することがよりさらに好ましく、120重量部以下含有することが特に好ましく、100重量部以下含有することが最も好ましい。本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は低分子量であって少量で十分な電気抵抗低下効果を示す一方、過剰に入れてもその効果が飽和する場合がある。電気抵抗低下効果が飽和する場合には、他の物性(組成物の粘度、成形体の硬度)の変化を考慮しつつ、その使用量を抑制してもよい。また本発明では、ポリエーテル系電気抵抗調整剤を、ゴム及び樹脂の全量100重量部に対して、5重量部以上含有することが好ましく、10重量部以上含有することがより好ましく、20重量部以上含有することがよりさらに好ましく、35重量部以上含有することが特に好ましく、40重量部以上含有することが最も好ましい。
【0027】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物は、架橋剤を含有してもよい。また架橋剤と共に架橋促進剤を含有してもよい。
【0028】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物において用いることのできる架橋剤は、塩素原子の反応性を利用する公知の架橋剤、即ちポリアミン類、チオウレア類、チアジアゾール類、トリアジン類、キノキサリン類、ビスフェノール類等を、また、側鎖二重結合の反応性を利用する公知の架橋剤、例えば、有機過酸化物、硫黄、スルフィド類等を例示することができる。
【0029】
ポリアミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p-フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサンメチレンジアミンカーバメート等が挙げられる。
【0030】
チオウレア類としては、エチレンチオウレア、1,3-ジエチルチオウレア、1,3-ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が挙げられる。
【0031】
チアジアゾール類としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール-5-チオベンゾエート等が挙げられる。
【0032】
トリアジン類としては、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-シクロヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-フェニルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン等が挙げられる。
【0033】
キノキサリン類としては、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-エチル-2,3-ジメルカプトキノキサリン、6-イオプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等が挙げられる。
【0034】
ビスフェノール類としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、1,1-シクロヘキシリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)、2-クロロ-1,4-シクロヘキシレン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)、2,2-イソプロピリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールA)、ヘキサフルオロイソプロピリデン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)(ビスフェノールAF)、および2-フルオロ-1,4-フェニレン-ビス(4-ヒドロキシベンゼン)等が挙げられる。
【0035】
有機過酸化物としては、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、1,1,3,3,-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、1,1-tert-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジtert-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジtertジブチルパーオキシヘキシン-3、1,3-ビスtert-ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジベンゾイルパーオキシヘキサン、1,1-ビスtert-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビスtert-ブチルパーオキシバレレート、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイドイソブチレート、tert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカルボナート、tert-ブチルパーオキシアリルモノカルボナート、p-メチルベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。
【0036】
スルフィド類としては、モルホリンジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられる。
【0037】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物における架橋剤の配合量は、電気抵抗調整剤100重量部に対して0.1~20重量部であることが好ましく、0.1~10重量部であることがより好ましく、0.1~5重量部であることが特に好ましい。
【0038】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物に用いることのできる架橋促進剤としては、公知の架橋促進剤であれば特に限定されないが、チウラム系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、モルホリンスルフィド系架橋促進剤、スルフェンアミド系架橋促進剤、グアニジン系架橋促進剤、チオウレア系架橋促進剤、アルデヒド-アンモニア系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤、キサントゲン酸塩系架橋促進剤、脂肪酸アルカリ金属塩系架橋促進剤、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下DBUと略)塩系架橋促進剤、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5(以下DBNと略)塩系架橋促進剤等を挙げることができる。また架橋剤として硫黄を使用する場合には、亜鉛華を架橋促進剤として使用できる。
【0039】
チウラム系架橋促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等が挙げられる。
【0040】
チアゾール系架橋促進剤としては、メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの各種金属塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モノホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。
【0041】
モルホリンスルフィド系架橋促進剤としては、モルホリンジスルフィドが挙げられる。
【0042】
スルフェンアミド系架橋促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチル-2-ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N-第三ブチルージ(2-ベンゾチアゾール)スルフェンイミド等が挙げられる。
【0043】
グアニジン系架橋促進剤としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
【0044】
チオウレア系架橋促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチレンチオウレア、ジブチルチオウレア、ジラウリルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジフェニルチオウレア等が挙げられる。
【0045】
アルデヒド-アンモニア系架橋促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0046】
ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
【0047】
キサントゲン酸塩系架橋促進剤としては、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。
【0048】
脂肪酸アルカリ金属塩系架橋促進剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
【0049】
DBU塩系架橋促進剤としては、DBU-炭酸塩、DBU-ステアリン酸塩、DBU-2-エチルヘキシル酸塩、DBU-安息香酸塩、DBU-サリチル酸塩、DBU-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、DBU-フェノール樹脂塩、DBU-2-メルカプトベンゾチアゾール塩、DBU-2-メルカプトベンズイミダゾール塩等が挙げられる。
【0050】
DBN塩系架橋促進剤としては、DBN-炭酸塩、DBN-ステアリン酸塩、DBN-2-エチルヘキシル酸塩、DBN-安息香酸塩、DBN-サリチル酸塩、DBN-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、DBN-フェノール樹脂塩、DBN-2-メルカプトベンゾチアゾール塩、DBN-2-メルカプトベンズイミダゾール塩等が挙げられる。
【0051】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物における架橋促進剤の配合量は、電気抵抗調整剤100重量部に対して0.1~15重量部であることが好ましく、0.1~10重量部であることがより好ましく、0.1~5重量部であることが特に好ましい。
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物における架橋剤と架橋促進剤の合計の配合量は、ゴム、樹脂、電気抵抗調整剤の合計100重量部に対して、例えば、0.1~20重量部であり、好ましくは0.3~10重量部であり、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0052】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物に対しては、本発明の効果を損なわない限り、上記の他に当該技術分野で行われる各種の受酸剤、充填剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、顔料、老化防止剤、導電剤(ただし、本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤を除く)等を任意で配合することができる。
【0053】
本発明で用いられる受酸剤としては、公知の受酸剤を使用できるが、側鎖二重結合の反応性を利用する公知の架橋剤を用いる際には使用しなくてもよい。好ましくは金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルである。金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表III族(3族および13族)金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物があげられる。
【0054】
前記金属化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができ、炭酸ナトリウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、亜鉛華などが好ましい。なお架橋剤として硫黄を使用する場合、前記亜鉛華は架橋促進剤に該当する。
【0055】
前記無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、チタン酸アルカリ金属塩等があげられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトがあげられる。
【0056】
前記ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM-5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いてもよい。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0057】
前記合成ハイドロタルサイトは下記一般式(1)で表される。
MgXZnYAlZ(OH)(2(X+Y)+3Z-2)CO3・wH2O (1)
[式中、XとYはそれぞれX+Y=1~10の関係を有する0~10の数、Zは1~5の数、Wは0~10の数をそれぞれ示す。]
【0058】
前記一般式(1)で表されるハイドロタルサイト類の例として、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3、Mg4Al2(OH)12CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O、Mg3Al2(OH)10CO3・1.7H2O、Mg3ZnAl2(OH)12CO3・3.5H2O、Mg3ZnAl2(OH)12CO3等をあげることができる。
【0059】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物における受酸剤の配合量は、側鎖二重結合の反応性を利用する架橋反応を行う場合(場合A)と、場合A以外の架橋反応(例えば、塩素原子の反応性を利用する架橋反応など)を行う場合(場合B)とで、それぞれ適宜調整でき、場合Aでは、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、例えば、0~200重量部であり、好ましくは0~50重量部であり、0重量部であってもよい。また場合Bの時の受酸剤の配合量は、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、0.1~50重量部であってもよいが、30~150重量部であってもよく、80~150重量部であってもよい。
【0060】
充填剤としては、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤などがあげられる。
充填剤の量は、それぞれ適宜調整でき、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、0~200重量部であってよく、0~150重量部であってよく、0重量部であってもよい。
【0061】
本発明で用いられる加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィン、ナフテンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォンなどがあげられる。
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物における加工助剤の配合量は、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、例えば、500重量部以下、好ましくは300重量部以下、より好ましくは100重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。
【0062】
本発明で用いられる老化防止剤としては、公知の老化防止剤を使用できるが、例としては、フェニル-α-ナフチルアミン、p-トルエンスルホニルアミド-ジフェニルアミン、4,4-α,α-ジメチルベンジルジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応生成品、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応生成品、ジフェニルアミン、アニリン、アセトンの低温反応品、ジフェニルアミンとジイソブチルレンの反応生成品、オクチル化ジフェニルアミン、置換ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミン誘導体、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス1-メチルヘプチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジアリル-p-フェニレンジアミンの混合品、フェニル-オクチル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミンとジフェニル-p-フェニレンジアミンの混合品、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1-オキシ-3-メチル-4-イソプロピルベンゼン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールと2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールとオルト-tert-ブチルフェノールの混合物、スチレン化フェノール、アルキル化フェノール、アルキルおよびアラルキル置換フェノールの混合品、フェノール誘導体、2,2’-メチレン-ビス-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2,2’-メチレン-ビス-4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール、2,2’-メチレン-ビス-4-エチル-6-tert-ブチルフェノール、4,4’-メチレン-ビス-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、ポリブチル化ビスフェノールAの混合物、4,4’-チオビス-6-tert-ブチル-3-メチルフェノール(4,4’-チオ-ビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)とも言う)、4,4’-ブチリデンビス-3-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2,4-ビスオクチルチオメチル-o-クレゾール、ヒンダートフェノール、ヒンダートビスフェノール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイメダゾールの亜鉛塩、2-メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、4-メルカプトメチルベンズイミダゾール、5-メルカプトメチルベンズイミダゾール、4-メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、5-メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジオクタデシルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、1,3-ビスジメチルアミノプロピル-2-チオ尿素、トリブチルチオ尿素、ビス2-メチル-4-3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ-5-tert-ブチルフェニルスルフィド、ビス3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルフィド、混合ラウリルステアリンチオジプロピオネート、環状アセタール、ポリマーポリオール60%と水添シリカ40%の混合品、ポリエチレンとポリエチレングリコールの2分子構造による特殊ポリエチレングリコール加工品、不活性フィラーとポリマーポリオールの特殊設計混合品、複合系老化防止剤、エノールエーテル、1,2,3-ベンゾトリアゾール、3-N-サリチロイルアミノ-1,2,4-トリアゾール、トリアジン系誘導体複合物、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N,N’-ビス3-3,5-ジ-tert-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルヒドラジン、テトラキス-メチレン-3-3’,5’-ジ-tert-ブチル4’ヒドロキシフェニルプロピオネートメタン等があげられる。
【0063】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物における老化防止剤の配合量は、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、例えば、30重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0064】
本発明で用いられる導電剤としては、公知の導電剤を使用でき、炭素材料、無機イオン物質、界面活性剤、第四級アンモニウム塩、有機酸リチウム塩等を例示することができる。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムパークロレート、エチルトリブチルアンモニウムエトサルフェート、ラウリルトリメチルアンモウニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、ジメチルアルキルラウリルベタイン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等があげられる。
ただし、本発明でポリエーテル系電気抵抗調整剤を使用する効果を最大化する観点から、本発明の電気抵抗調整剤含有組成物は前記導電剤を含まないことが好ましい。また電気抵抗調整剤含有組成物が導電剤を含む場合、導電剤の量は、ポリエーテル系電気抵抗調整剤100重量部に対して、例えば、100重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下、特に好ましくは2重量部以下、最も好ましくは0.5重量部以下にすることが推奨される。
【0065】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物の製造方法としては、特に限定されず通常使用されている方法を用いることができ、ミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダーを例示することができる。
【0066】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物の成形方法としては、特に限定されず、通常使用されている方法を用いることができ、金型による圧縮成形、押出成形、インジェクション成形等を例示することができる。
【0067】
本発明の電気抵抗調整剤含有組成物の特性は、該組成物がゴムを含有する場合(以下、ゴム系組成物という)と樹脂を含有する場合(以下、樹脂系組成物という)とで分けて説明される。ポリエーテル系電気抵抗調整剤を含有する本発明のゴム系組成物では、その組成物の加工性が改善されており、かつ成形体の電気抵抗も小さくなる。加えて成形体を低硬度化できる場合もある。
本発明のゴム系組成物のムーニースコーチ試験による最低粘度(Vm)は、使用するゴムに応じて異なるが、50以下であることが好ましく、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である。下限については特に限定されないが、1以上であってもよく、10以上であってもよい。
【0068】
本発明のゴム系組成物から得られる成形体の硬度(JIS A)は、使用するゴムに応じて異なるが、70以下であることが好ましく、より好ましくは60以下であり、さらに好ましくは55以下である。下限については特に限定されないが、10以上であってもよく、15以上であってもよい。
【0069】
本発明のゴム系組成物から得られる成形体の体積抵抗率(×107Ω・cm)は、使用するゴムに応じて異なり、例えば、前記ゴムがEPDMなどのMグループに属するゴムの場合、70000以下であることが好ましく、より好ましくは500以下であり、さらに好ましくは200以下である。Mグループに属するゴムを使用した場合の体積抵抗率(×107Ω・cm)の下限については特に限定されないが、50以上であってもよく、100以上であってもよい。またRグループに属するゴムを使用した場合の体積抵抗率(×107Ω・cm)は、100以下であることが好ましく、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは10以下である。Rグループに属するゴムを使用した場合の体積抵抗率(×107Ω・cm)の下限については特に限定されないが、0.1以上であってもよく、1以上であってもよい。
【0070】
ポリエーテル系電気抵抗調整剤を含有する本発明の樹脂系組成物では、該組成物から得られる成形体の電気抵抗を下げることができ、かつ成形体を低硬度化できる。
【0071】
本発明の樹脂系組成物から得られる成形体の硬度(SHORE D)は、使用する樹脂に応じて異なるが、100以下であることが好ましく、より好ましくは80以下であり、さらに好ましくは65以下である。下限については特に限定されないが、30以上であってもよく、50以上であってもよい。
【0072】
本発明の樹脂系組成物から得られる成形体の体積抵抗率(×107Ω・cm)は、使用する樹脂に応じて異なるが、10000以下であることが好ましく、より好ましくは1000以下であり、さらに好ましくは500以下である。下限については特に限定されないが、100以上であってもよく、300以上であってもよい。
【0073】
本発明の成形体は、電気抵抗調整剤含有組成物を架橋された成形体であってよく、架橋反応は成形前、成形時、成形後であってもよい。架橋反応は架橋剤を用いた場合、通常100℃~200℃に加熱する事で行われ、架橋時間は温度により異なるが0.5分~300分の間で行われるのが通常である。
【0074】
本願は、2017年3月31日に出願された日本国特許出願第2017-072359号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年3月31日に出願された日本国特許出願第2017-072359号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0075】
以下において実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
重合触媒の合成
温度計および撹拌装置を伏した三ツ口フラスコにジブチル錫オキシド10.0g、トリブチルホスフェート23.4gをいれ、窒素気流下にて撹拌しながら260℃で15分間加熱して留出物を留去させ、残留物として固体状の縮合物質を得た。この縮合物質を触媒として以下の重合を行った。
【0077】
実施例1
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロロヒドリン580g、エチレンオキサイド860gの60%量(すなわち516g)、アリルグリシジルエーテル120g、t-ブタノール2.31gを仕込み、35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目にエチレンオキサイド860gの25%量(すなわち215g)を添加し、2.5時間目にエチレンオキサイド860gの15%量(すなわち129g)を添加した。反応溶媒を除去した後、減圧下60℃にて8時間乾燥し、表1に記載された共重合組成を有する実施例1の電気抵抗調整剤を得た。
【0078】
比較例1
株式会社大阪ソーダ製のエピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体「EPION-301」を比較例1の電気抵抗調整剤とした。
【0079】
得られた電気抵抗調整剤の共重合組成について、塩素含量及びヨウ素価により求めた。塩素含量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって求めた。
電位差滴定は電極に複合銀電極C-878を備えた京都電子工業株式会社製AT-420N電位差滴定装置を用いて行い、得られた塩素含量からエピクロロヒドリンに由来する構成単位のモル分率を算出した。
ヨウ素価はJIS K6235に準じた方法で測定した。共栓付きフラスコにサンプル約0.70gとクロロホルム80mLを加えて40℃に加熱してサンプルを溶解させた後、ウィイス試薬20mLと酢酸ナトリウム水溶液10mLを加えてよく振り混ぜ、暗所で20分間静置した。次に20%ヨウ化カリウム水溶液5mLを加えてよく振り混ぜた。その後、微量複合白金電極(酸化還元滴定)を備えた自動滴定装置を用いて0.1N-チオ硫酸ナトリウム水溶液で電位差滴定を行い、得られたヨウ素価からエチレン性不飽和基含有モノマーに由来する構成単位のモル分率を算出した。
アルキレンオキサイドのモル分率は、エピクロロヒドリンに由来する構成単位のモル分率、エチレン性不飽和基含有モノマーユニットのモル分率より算出した。
【0080】
分子量の測定方法
重合体を溶剤であるジメチルフォルムアミド(DMF)に溶解させてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算による分子量分布を求め、該分布に基づいて数平均分子量および重量平均分子量を決定した。すなわち、株式会社島津製作所GPC装置RID-6A、Shodex社製カラムKD-807、KD-806、KD-806M、KD-803を用いて、流量1.0mL/min、濃度を20mgポリマー/DMF8mlとし、注入量50μL、カラム温度40℃で測定を行った。
【0081】
【0082】
実施例2~6、比較例2~6
表2、3に示す配合で各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2~2.5mmの未架橋ゴムシートを作製した。また、得られた実施例2~6、比較例2~6の未架橋ゴムシートを、170℃で15分プレス架橋し、2mm厚の架橋シートを得た。
【表2】
【表3】
【0083】
<ムーニースコーチ試験における最低粘度>
混練後の未架橋ゴムシートの最低粘度(Vm)をJIS K6300に記載の方法に従って測定した。この測定には、東洋精機製ムーニー粘度計AM-3、L型ローターを用い、測定温度を120℃とした。結果は表4、表5に示す。
<体積抵抗率測定>
得られた架橋シートを23℃/50%RH環境下にて状態調整を行った後、二重リング電極を用いた三菱油化株式会社製ハイレスタを用い、JIS K6271に準拠して架橋シートの体積抵抗率を測定した。結果は表4、表5に示す。
<ゴム硬度測定>
高分子計器株式会社製ASKERタイプAデュロメーターを用い、JIS K6253に準拠して得られた架橋シートのゴム硬度を測定した。結果は表4、表5に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
表4、表5に示されるように、本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤を用いることにより、加工性を向上させ、成形体(架橋体)の抵抗率を下げ、かつ成形体を低硬度化させることができる。
【0087】
実施例7~10、比較例7~14
表6、7に示す配合で各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2~2.5mmの未架橋ゴムシートを作製した。また、得られた実施例7~10、比較例7~14の未架橋ゴムシートを、170℃で15分プレス架橋し、2mm厚の架橋シートを得た。
【0088】
【0089】
【0090】
上記の方法に従って、表6及び表7の配合で得られたゴムシートの最低粘度、硬度、及び体積抵抗率を実施例2~6及び比較例2~6の場合と同様にして測定した。ただし、最低粘度の測定温度は125℃とした。
結果を表8及び表9に示す。
【0091】
【0092】
【0093】
表8、表9に示されるように、本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤とゴムとを配合して得られた組成物は、加工性が向上しており、かつその成形体の電気抵抗を下げることができる。さらに、成形体を低硬度化できる場合もある。
【0094】
実施例11、比較例15~16
表10に示す配合で各材料をニーダーおよびオープンロールで混練(温度160℃)した。温度200℃で3分間加圧プレスした後、1分間、冷却加圧プレスして厚さ2mmのシート状成形体を得た。
得られた成形体の特性を以下の様にして評価し、結果を表10に示した。
<デュロメータ タイプD硬さ(ショアD)>
高分子計器株式会社ASKERタイプDデュロメーターを用い、ASTM D2240に準拠して成形体の硬さを測定した。
<体積抵抗率>
成形したシートを23℃/50%RH環境下にて状態調整を行った後、HEWLETT・PACKARD製4329A HIGH RESISTANCE METERと16008A RESISTIVITY CELLを用い、JIS K6271に準拠しつつ500V印加での抵抗値の測定を行い、以下の式に基づいて体積抵抗率を求めた。
ρ(体積抵抗率)=(成形体の断面積/成形体の厚み)×測定値
【0095】
【0096】
表10に示されるように、本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤と樹脂とを配合して得られた組成物は、その成形体の電気抵抗を下げることができ、かつ成形体を低硬度化できる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤をゴムとともに配合することにより、その組成物の加工性を改良でき、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能である。また本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤を樹脂とともに配合することにより、その組成物より得られる成形体の電気抵抗を調整することが可能であり、且つ、低硬度化させることができる。これらのため、本発明のポリエーテル系電気抵抗調整剤は産業上有用である。