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特許7111124グラビアまたはフレキソインキ、およびその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】グラビアまたはフレキソインキ、およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20220726BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20220726BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C09D11/102
C09D11/106
B32B27/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062401
(22)【出願日】2020-03-31
(62)【分割の表示】P 2019048497の分割
【原出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020147755
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤乘 徳治郎
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 進
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
(72)【発明者】
【氏名】杉 裕紀
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/199085(WO,A1)
【文献】特開2016-150945(JP,A)
【文献】特開2019-123810(JP,A)
【文献】特開2018-095831(JP,A)
【文献】特開2018-062642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0257273(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスポリウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、および塩化ビニル-アクリル共重合樹脂を有する、グラビアまたはフレキソインキであって、
前記ポリウレタン樹脂は二塩基酸とジオールとを縮合反応させてなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、前記二塩基酸は、バイオマス二塩基酸を65質量%以上含有し、かつ、前記バイオマス二塩基酸は、セバシン酸およびコハク酸を含有し、
前記ジオールは、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールを含み、質量比(分岐状ジオール:直鎖状ジオール)が、30:70~70:30である、
グラビアまたはフレキソインキ。
(ただし、前記バインダー樹脂が、硝化綿を含む場合を除く。)
【請求項2】
二塩基酸100質量%中に、バイオマス二塩基酸を70質量%以上含有する、請求項1に記載のグラビアまたはフレキソインキ。
【請求項3】
バイオマスポリウレタン樹脂のバイオマス度が、40~100質量%である、請求項1または2に記載のグラビアまたはフレキソインキ。
【請求項4】
基材1上に、請求項1~いずれかに記載のグラビアまたはフレキソインキからなる印刷層を有する印刷物。
【請求項5】
少なくとも、基材1、請求項1~いずれかに記載のグラビアまたはフレキソインキからなる印刷層、および基材2をこの順に有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料、特にラミネート積層体に好適に用いられるグラビアまたはフレキソインキに関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアまたはフレキソインキは、絵柄印刷として、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられているが、近年、包装物の多様性や包装技術の高度化、さらには有機溶剤に代表される法規制面からの環境課題に対する取組みなど、印刷インキへの要求は年々多様化している。
【0003】
さらには、地球温暖化対策として、2015年に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、各国の削減目標が提出され、日本は、2030年までに2013年比で温室効果ガスを26%削減する約束草案を提出(特許文献1)した。これを実現するためには、例えばカーボンニュートラルという概念がある。これを行うと、植物原料などのバイオマス原料を使用し、燃焼で排出される二酸化炭素と、植物などの生長により吸収・固定される二酸化炭素の量とが同一量とすれば空気中の二酸化炭素を増加させることない。従って、フィルム用の包装材に使用できるグラビアまたはフレキソインキの原料に、植物由来(バイオマス由来)のものを使用する、すなわち、グラビアまたはフレキソインキのバイオマス度を、空気中の二酸化炭素を増加させない程度まで向上させる取り組みが急務となっている。
【0004】
一方、グラビアまたはフレキソインキの中でも、特にラミネート積層体に使用されるものは、ラミネート強度を維持・向上させるために、ポリウレタン樹脂を使用する場合が多い。これは、ポリウレタン樹脂は、その原料であるイソシアネート、ポリオール等を適宜選択することで、硬くて強靱な塗膜から柔軟かつ弾性のある塗膜まで広く自由な塗膜設計ができるためである。しかし、バイオマス由来のポリウレタン樹脂を使用した場合でも、少なくとも従来と同様の性能が維持できることはもちろん、今後においては更なる特性向上が求められる。そこで、ポリウレタン樹脂のなかでも、印刷適性やラミネート強度向上のためにポリウレタン樹脂の構成単位の原料であるバイオマス由来のポリエステルポリオール構造について様々な検討が行われてきた(特許文献2、3)。
【0005】
例えば、ラミネート積層体を用いた包装袋の内容物における味覚や臭気などの衛生状態を制御することは重要な性能の一つである。従来の石油由来であって品質の悪いインキを使用すると、インキ原料の副生成物、分解物や微量不純物などが内容物へ移行して内容物への溶出、臭気等の品質低下などが問題となる場合があった。
例えば、特許文献4では内容物へ溶出する主たる成分は環状ジカルボン酸とするが、それ以外の化合物においても、溶出量は微量であっても内容物の臭気味覚等に大きく影響を及ぼすものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-062642号公報
【文献】WO2018/110664号パンフレット
【文献】WO2018/199085号パンフレット
【文献】特開2016-150944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、グラビアまたはフレキソインキにより、印刷適性が良好であり、積層体でのラミネート強度が良好であり、更にラミネート積層体を用いた包装袋における内容物への溶出の影響の少なく、印刷物の臭気の少ない、バイオマス由来のポリウレタン樹脂を用いたグラビアまたはフレキソインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記状況を鑑み鋭意検討を重ねた結果、以下に記載のグラビアまたはフレキソインキを使用することで課題解決できることを見出し、本願発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、バイオマスポリウレタン樹脂を含むバインダー樹脂を有する、グラビアまたはフレキソインキであって、
前記ポリウレタン樹脂は二塩基酸とジオールとを縮合反応させてなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、前記二塩基酸は、コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含有し、前記ジオールは、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールを含む、グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0010】
また、本発明は、二塩基酸100質量%中に、バイオマス二塩基酸を65質量%以上含有する、上記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0011】
また、本発明は、二塩基酸は、コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸より選ばれる少なくとも一種の二塩基酸のみから構成される、上記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0012】
また、本発明は、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールの質量比(分岐状ジオール:直鎖状ジオール)が、10:90~90:10である、上記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0013】
また、本発明は、更に、塩化ビニル共重合樹脂および/またはセルロース系樹脂を含有する、上記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0014】
また、本発明は、バイオマスポリウレタン樹脂のバイオマス度が、40~100質量%である、上記グラビアまたはフレキソインキに関する。
【0015】
また、本発明は、基材1上に、上記グラビアまたはフレキソインキからなる印刷層を有する印刷物に関する。
【0016】
また、本発明は、少なくとも、基材1、上記グラビアまたはフレキソインキからなる印刷層、および基材2をこの順に有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のグラビアまたはフレキソインキにより、印刷適性が良好であり、積層体でのラミネート強度が良好であり、更にラミネート積層体を用いた包装袋における内容物への溶出の影響の少なく、印刷物の臭気の少ない、バイオマス由来のポリウレタン樹脂を用いたグラビアまたはフレキソインキを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のグラビアまたはフレキソインキについて説明する。
【0019】
本発明は、バイオマスポリウレタン樹脂を含むバインダー樹脂を有する、グラビアまたはフレキソインキである。
該ポリウレタン樹脂の一部または全部が、二塩基酸とジオールとからなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有する。該二塩基酸の一部または全部が、コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸である。また、ジオールは、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールを含む。
バイオマスポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含有することで、環境保全として寄与し、当該ポリウレタン樹脂にコハク酸、セバシン酸およびダイマー酸より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸と、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールを含むジオールからなるポリエステル構造を含有させることでバインダー樹脂として適切な硬さと柔軟性を付与する効果を奏する。結果として印刷適性およびラミネート強度等の特性向上に寄与すると考えられる。
【0020】
なお本明細書において「グラビアまたはフレキソインキ」を単に「インキ」または「印刷インキ」と表記する場合があるが同義である。
また、特に断らない限り、%、部は、それぞれ、質量%、質量部を表す。
【0021】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂とはグラビアまたはフレキソインキにおける結着樹脂成分をいう。バインダー樹脂はインキ総質量中に2~25質量%含有することが好ましく、4~20質量%含有することが好ましい。
【0022】
(バイオマスポリウレタン樹脂)
本発明において、バイオマスポリウレタン樹脂とは、後述するバイオマス度が0より大きいものをいう。バイオマスポリウレタン樹脂はポリウレタン樹脂総質量中に30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがなお好ましく、60質量%以上含有することが更に好ましい。
本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂はバインダー樹脂として機能する。バイオマスポリウレタン樹脂の質量平均分子量は10000~100000であることが好ましい。さらに好ましくは30000~80000である。質量平均分子量が10000~100000の範囲内であると、ラミネート強度が向上傾向にある。
【0023】
本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂のバイオマス度はカーボンニュートラルという概念から、40質量%~100質量%であることが好ましく、45質量%~100質量%であることがより好ましい。また、本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂を含むバインダーを有するグラビアまたはフレキソインキの不揮発分中のバイオマス度、すなわち印刷層のバイオマス度は、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることが好ましく、10質量%であることがなお好ましい。
【0024】
本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを縮合反応させてなるポリウレタン樹脂や、ポリオールと、ポリイソシアネートとの縮合反応物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ポリアミンとの反応(鎖延長という)により得られるポリウレタン樹脂(ポリウレタンウレア樹脂)が好ましい。ポリオールとしては高分子ポリオールを含むことが特に好ましい。なお、ポリオール、ポリイソシアネートおよびポリアミンのいずれかがバイオマス由来成分を含む必要がある。
この様なバイオマスポリウレタン樹脂は例えばWO2018/199085号パンフレット、特開2018-131624号公報に記載の方法で製造をすることができ、上記ポリオール、ポリイソシアネートおよびポリアミンの残基が、縮合反応後、バイオマスポリウレタン樹脂の構造単位となる。
【0025】
上記高分子ポリオールは、後述のバイオマス二塩基酸を原料成分として反応させたポリエステルポリオールを含有し、質量平均分子量が400~10000であることが好ましい。なお、原料ポリオール中、ポリエステルポリオールを50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがなお好ましい。
更に、上記ポリエステルポリオール以外の高分子ポリオールを併用してもよい。かかる高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。これらは原料ポリオール総量中、50質量%以下で使用することが好ましい。ポリエステルポリオールの他に併用する高分子ポリオールとしては、版かぶり性の観点からポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオールの中でもポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの共重合物であることが好ましい。
【0026】
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールは、二塩基酸とジオールとを縮合反応させてなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、二塩基酸の一部または全部が、バイオマス二塩基酸である。ここで、バイオマス二塩基酸とは、バイオマス由来の二塩基酸であるが、本発明では、そのうち、コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸から選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を必須とする。当該バイオマス二塩基酸はポリエステルポリオールの原料の二塩基酸総質量中に65質量%以上含有することが必要であり、70質量%以上で含有することが好ましく、85質量%以上で含有することがなお好ましく、バイオマス二塩基酸のみからなることが更に好ましい。また、バイオマス二塩基酸総量中に、コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸から選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を65質量%以上含むことが好ましい。また、コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸から選ばれる少なくとも一種のみからなる二塩基酸であることがなお好ましく、いずれかのみからなる二塩基酸である形態も好ましい。コハク酸、セバシン酸およびダイマー酸から選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸は、例えば、伊藤製油社などの市販品として得られる。
【0027】
上記二塩基酸として、バイオマス二塩基酸以外の二塩基酸を含有してもよく、かかる二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、等が挙げられる。また、バイオマス由来でないコハク酸、セバシン酸およびダイマー酸を排除するものではない。
【0028】
上記ジオールは、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールの双方を含む。これにより積層体におけるラミネート強度がより良好となる。ここで、直鎖状ジオールとは、原子数2以上であるジオールであり、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールその他のジオールをいう。また、分岐状ジオールとは、アルキレングリコールの炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水素原子以外で置換されたジオールをいう。
【0029】
直鎖状ジオールは結晶性を付与し、分岐状ジオールは柔軟性を付与するので、そのバランスにより、バインダー樹脂としてのポリウレタン樹脂はインキ被膜が強靭となり高いラミネート強度が得られる。
【0030】
上記分岐状ジオールとしては、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGとも記載する)と、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOとも記載する)、3メチル1,5ペンタンジオール(MPDとも記載する)、ネオペンチルグリコール(NPGとも記載する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGとも記載する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明では、MPO、MPD、BEPG、NPG、PG、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールから選ばれる少なくとも一種の分岐状ジオールが好ましく、NPGおよび/またはBEPGを用いることがさらに好ましく、BEPGを用いることが特に好ましい。
【0031】
直鎖状ジオールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、かかる化合物としては、エチレングリコール(EGとも記載する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(1,3PDとも記載する)、1,4-ブタンジオール(1,4―BDとも記載)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
中でも炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールが好ましく、EG、1,3PD、1,4-BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、などが好ましい。さらにバイオマス度および物性の観点からは、EG、1,3PD、1,4-BDが特に好ましい。
【0032】
本発明において、ラミネート強度の観点からポリエステルポリオールの全ジオール中の分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールの質量比(分岐状ジオール:直鎖状ジオール)は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがなお好ましい。30:70~70:30であることが更に好ましい。
【0033】
なお、分岐状ジオール単位と直鎖状ジオール単位はそれぞれをひとつのポリエステルポリオール中に存在させてもよいし、分岐状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールと、直鎖状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールを混合物原料として利用し、バイオマスウレタン樹脂としてもよい。およそ同一の効果が得られる。
【0034】
本発明におけるポリイソシアネートとしてはジイソシアネートが好ましく、かかる化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネートを使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。中でもイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、溶解性の観点からイソホロンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0035】
上記ポリアミンは有機ジアミンが好ましく、かかるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの有機ジアミンは単独または2種以上を混合して用いることができるが、イソホロンジアミンが好ましい。さらに、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン:(IBPA、3,3’-ジアミノジプロピルアミン)、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン:(スペルミジン)、6,6-イミノジヘキシルアミン、3,7-ジアザノナン-1,9-ジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン等のアミノ基数が3以上の多官能アミンを、上記有機
ジアミンと併用することもできる。
【0036】
本発明において、ポリウレタン樹脂は、アミン価を有することが好ましい。ポリウレタンウレア樹脂のアミン価は1~13mgKOH/gであることが好ましく、この範囲内であると、基材に対するラミネート強度が向上傾向にある。
【0037】
ポリアミンを用いた鎖延長反応には、モノアミンを反応停止剤として使用してもよい。反応停止剤としては、例えばジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどのジアルキルアミン類などの他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、等の水酸基を有するアミン類も用いることができる。
【0038】
本発明におけるバイオマスポリウレタン樹脂を用いたグラビアまたはフレキソインキには、用途や基材に応じて、バイオマスポリウレタン樹脂以外に、様々な樹脂を併用することができる。用いられる樹脂の例としては、上記記載以外のバイオマスポリウレタン樹脂およびポリウレタンウレア樹脂、塩化ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ポリブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、中でも、塩化ビニル共重樹脂および/またはセルロース系樹脂が好ましい。またその含有量は、インキの総質量中に1~6質量%含有することが好ましい。上記バイオマスポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂と、塩化ビニル共重樹脂および/またはセルロース系樹脂と、の質量比率は95:5~30:70で含むことが好ましく、95:5~50:50で含むことがなお好ましく、90:10~65:35で含むことが更に好ましい。
バイオマスポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂と、塩化ビニル共重樹脂および/またはセルロース系樹脂との合計はバインダー樹脂総質量中に60質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがなお好ましく、80質量%以上含有することが更に好ましい。
【0039】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂および塩化ビニル-アクリル共重合樹脂が好ましい。
【0040】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0041】
<塩化ビニル-アクリル共重合樹脂>
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーは、ポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト重合されていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましく、30,000から70,000であることが更に好ましい。また、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましく、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0042】
また、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニルモノマー由来の構造は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
【0043】
以下の説明において、(メタ)アクリルないし(メタ)アクリレートはそれぞれメタクリルおよびアクリル、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。
【0044】
上記アクリルモノマーは水酸基を有するものを含むことが好ましく、例としては(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが溶剤に対する溶解性を向上させるため、より好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。なお上記以外のアクリルモノマーを随時含有しても良い。
【0045】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースより選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~80,000であるものが更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。上記ニトロセルロースの窒素含有量は10~13質量%であることが好ましく、10.5~12.5質量%であることがなお好ましい。
【0046】
(顔料)
本発明におけるグラビアまたはフレキソインキには、着色剤として顔料を含むことが好ましく、無機顔料または有機顔料の使用が好ましい。カラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを適宜使用することができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化クロム、シリカ、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から、白色顔料には酸化チタンが好ましく、さらに、顔料表面が塩基性である酸化チタンがより好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングいずれでもよい。硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムは体質顔料と呼ばれ、流動性、強度、光学的性質の改善のために増量剤として使用される。
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノン系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられ、カラーインデックス記載のものを随時併用可能である。
【0047】
顔料は、インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち印刷インキの総質量に対して1~50質量%の割合で含まれることが好ましい。3~25質量%で含まれることがなお好ましい、
【0048】
(その他添加剤)
本発明のインキは、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、光安定化剤、シリカ粒子、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤、硬化剤などの添加剤を含むこともできる。
【0049】
(有機溶剤)
本発明のインキは、液状媒体として有機溶剤を含むことが好ましい。使用される有機溶剤としては、混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤であり、有機溶剤中にエステル系有機溶剤を主成分(50%以上)として含有することが好ましい。特にエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤を含むものが好ましい。
【0050】
(インキの製造方法)
本発明におけるグラビアまたはフレキソインキは、顔料をバインダー樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散し、得られた顔料分散体にバインダー樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。また、本発明においては顔料を含有しないメジウム等に関しても適用できる。
【0051】
グラビアまたはフレキソインキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から25℃において、10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。20~500mPa・sであることがなお好ましい。上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度値を採用できる。
【0052】
(硬化剤)
グラビアまたはフレキソインキは、ラミネート強度を向上させるためイソシアネート系硬化剤を添加し、2液型のグラビアまたはフレキソインキとして使用する形態も好ましい。かかるイソシアネート系硬化剤としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の、それぞれアダクト型ポリイソシアネート(アダクト体)、ビウレット型ポリイソシアネート(ビウレット体)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(イソシアヌレート体)等が好適に使用でき、例えば、トリメチロールプロパン1モルとHDI3モルとの反応から得られるアダクト体、水1モルとHDI3モルとの反応から得られるビウレット体、HDIの環状三量化反応から得られるイソシアヌレート体等が挙げられる。2液型として使用する場合、ポリイソシアネート系硬化剤の添加量は本発明のインキ総量に対して、0.5~10質量%が好ましく、0.5~5質量%での使用が好ましい。
【0053】
(グラビアまたはフレキソインキの印刷)
本発明におけるインキは、グラビア印刷方式およびフレキソ印刷方式利用することもで
きる。グラビア印刷では、印刷に適した粘度および濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0054】
<グラビア印刷>
(グラビア版)
本発明におけるグラビアまたはフレキソインキをグラビア印刷する場合、グラビア版を用いて印刷される。本発明においてグラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部を各色で作成される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線/インチのものが適宜使用され、線数の大きいものほど高精細な印刷が可能である。
(印刷機)
印刷機は、上記グラビア版を具備した印刷機を好適に使用できる。通常色ごとに印刷ユニットが設置されており、各ユニットにはグラビア版が輪転すると同時にインキを掻き取るドクターブレードが配置され、基材は各印刷ユニットを通過して凹版印刷されたのちにフィルム巻取り物となる。場合に応じてグラビア版にファニッシャーロールを使用することが可能である。また、各ユニットには乾燥オーブンが設けられており、印刷された基材がオーブンを通って乾燥される。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
【0055】
<フレキソ印刷>
(フレキソ版)
本発明においてフレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0056】
<基材1>
本発明のグラビアまたはフレキソインキは、基材1に、あるいは、基材1と基材2を含む積層体の基材1の表面又は裏面に、印刷されて印刷物となる。
本発明のグラビアまたはフレキソインキを適用できる基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材(ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸など)、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0057】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0058】
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
【0059】
<積層体>
上記印刷物を使用して積層体を製造することも可能である。かかる積層体は、少なくとも基材1、印刷層、基材2をこの順に有する積層体となる。少なくとも基材1、印刷層、接着剤層、基材2をこの順に有する積層体の使用形態であることが好ましい。
本発明の積層体はグラビアまたはフレキソインキを印刷した印刷物の印刷層上に、接着剤層を設け、基材2と貼り合わせる(ラミネートする)ことで得られる。ラミネート加工の代表例として、ドライラミネート法等が挙げられる。ドライラミネート法とは、接着剤を印刷物の印刷層上に塗布・乾燥し、シーラントと熱圧着して積層する方法である。
【0060】
<接着剤層>
接着剤層は接着剤を塗布、乾燥して得られる。当該接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。具体的には東洋モートン株式会社製・TM-250HV/CAT-RT86L-60、TM-550/CAT-RT37、TM-314/CAT-14B等が挙げられる。
【実施例
【0061】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、以下の実施態様は本発明のごく一例であり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0062】
<アミン価の測定方法>
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式1)によりアミン価を求めた。
(式1)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0063】
<数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定方法>
数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0064】
<水酸基価の測定方法>
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
【0065】
<酸価の測定方法>
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
【0066】
[合成例1-1](ポリエステルポリオールA1の合成)
攪拌機、温度計、分水器および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、1,3-プロパンジオール(以下1,3-PDとも略す)2.6部、2-ブチル2-エチル1,3-プロパンジオール(以下BEPGとも略す)49.4部、コハク酸48部、テトラブチルチタネート0.002部を仕込み、窒素気流下に230℃で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。これにより数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、バイオマス度50.6%のポリエステルポリオ-ル(A1)を得た。
【0067】
[合成例1-2~1-16](ポリエステルポリオールA2~A16の合成)
表1に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で、ポリエステルポリオールA2~A16を得た。なお、表中に記載の略称は以下を表す。
BEPG:2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(石油由来)
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール(石油由来)
MPD:3-メチル-1,5-ペンタンジオール(石油由来)
NPG:ネオペンチルグリコール(植物由来 バイオマス度40%)
PG:1,2-プロピレングリコール(植物由来 バイオマス度100%)EG:エチレングリコール(植物由来 バイオマス度100%)
1,3-PD:1,3-プロパンジオール(植物由来 バイオマス度100%)
上記において、NPGのバイオマス度はパーストープ社カタログ値に由来する。
・表中の二塩基酸は以下のバイオマス度である。
コハク酸:(バイオマス由来 バイオマス度100%)
アジピン酸:(石油由来)
セバシン酸:(バイオマス由来 バイオマス度100%)
ダイマー酸:(バイオマス由来 バイオマス度100%)
【0068】
なお、バイオマス度とは化合物中に含まれる植物由来その他のバイオマス由来の割合をいう。
バイオマス度=100×該当化合物のバイオマス由来成分質量/該当化合物の総質量
で表される。
ただし、該当化合物が、バイオマス由来原料と、バイオマス由来でない原料との反応物である場合、反応前の原料に換算して、計算する。例えば、二塩基酸とジオールとの反応物であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)の場合、
バイオマス度=100×(バイオマス二塩基酸+バイオマス由来ジオール)/(すべての二塩基酸+すべてのジオール)
「すべての二塩基酸+すべてのジオール」とは、バイオマス由来およびバイオマス由来でない二塩基酸、およびバイオマス由来およびバイオマス由来でないジオールの合計をいう。
【0069】
[比較合成例1-1~1-3](ポリエステルポリオールB1~B3の合成)
表1に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で、ポリエステルポリオールB1~B3を得た。
【0070】
[合成例2-1](ポリウレタン樹脂P1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオ-ルA1を23.6部、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIとも略す)4.68部、酢酸エチル7.5部、2-エチルヘキサン酸スズ0.003部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸プロピル7.5部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)1.72部、酢酸エチル34部およびイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)21部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、質量平均分子量70000、アミン価4mgKOH/g バイオマス度40質量%のポリウレタン樹脂P1溶液を得た。
【0071】
[合成例2-2~2-24](ポリウレタン樹脂P2~P24の合成)
表2-1、表2-2に記載の原料およびの仕込み比率を用いた以外は、合成例2-1と同様の操作で、ポリウレタン樹脂P2~P24を得た。なお、合成例2-17および合成例2-18では、ポリエステルポリオールB1を11.8部併用した。バイオマス度等を同表に示した。
【0072】
[比較合成例2-1~2-3]
表2-3に記載の原料およびの仕込み比率を用いた以外は、合成例2-1と同様の方法で、ポリウレタン樹脂PP1~PP3を得た。バイオマス度等を同表に示した。
【0073】
[実施例1](インキS1の製造)
銅フタロシアニン藍(トーヨーカラー株式会社製LIONOL BLUE FG-7330)10部、ポリウレタン樹脂P1溶液10部、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂溶液(水酸基価は140mgKOH/g、質量平均分子量は50000の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂 固形分30%溶液)5.0部、混合溶剤(酢酸プロピル/IPA=75/25(質量比))10部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂(B1)30部、混合溶剤(ノルマルプロピルアセテート/イソプロピルアルコール=75/25(質量比))35部を攪拌混合し、藍色印刷インキS1を得た。
【0074】
[実施例2~34](インキS2~S34の製造)
表3-1および表3-2に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、インキS2~S34を得た。なお表中の記載は以下を表す。
酸化チタン:テイカ社製 酸化チタン チタニックスJR-805
ニトロセルロース:質量平均分子量40000、窒素含有量12質量%のニトロセルロース 固形分30%溶液
【0075】
[比較例1~3](インキSS1~SS3の製造)
表3-3に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、インキSS1~SS3を得た。
【0076】
[インキS1を用いた印刷物の作成]
インキS1の粘度を酢酸プロピル/IPA混合溶剤(質量比70/30)で、ザーンカップ#3(離合社製)における粘度が15秒(25℃において)に希釈調整し、版深30μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、片面コロナ処理ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡株式会社製パイレンP2161)および片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製E5100#12)のコロナ処理面に印刷して40~50℃で乾燥し、インキS1を用いた印刷物(OPP、PET)を得た。
【0077】
[インキS2~S34およびインキSS1~SS3を用いた印刷物の作成]
インキS2~S34およびインキSS1~SS3を使用した以外は上記インキS1を用いた印刷物の例と同様の方法でインキS2~S34およびインキSS1~SS3を用いた印刷物(OPP、PET)をそれぞれ得た。
【0078】
[評価]
上記実施例および比較例において得られたインキS1~S34(実施例)、SS1~SS3(比較例)およびそれらの印刷物(OPP、PET)を用いて、以下に記載する方法により、内容物の味覚試験、ラミネート強度の評価を行った。
【0079】
[溶出成分試験(PET/CPP構成)]
上記実施例および比較例において得られたインキS1~S34(実施例)、SS1~SS3(比較例)のPETフィルムの印刷物の印刷層上に、ドライラミネート機を用いてライン速度40m/分にて接着剤を塗布し、同時に無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レ社製 ZK93KM 膜厚60μm)と貼り合わせて印刷層を有するラミネート積層体を得た。
なお、ドライラミネートに用いた接着剤は東洋モートン社製 TM-550/CAT-RT37を使用した。その後、積層体は横12cm縦22cmのサイズに切出し、CPP面同士を内側として縁をヒートシール(温度:190℃、圧力:2kgf、時間:1秒)して包装袋を作り、内容物として水を充填し、85℃20分のボイル処理を行った。
ボイル水をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)にて分析し、有機物成分のピークの有無を確認した。なお、GC/MSの装置およびカラムは以下の通りである。
装置:HP-GC6890N/MSD5973(アジレント・テクノロジー株式会社製)/TDS(GERSTEL株式会社製)カラム:HP-5(内径0.32mm/長さ60m/膜厚1.00μm)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
(評価基準)
5:環状ジエステル以外の有機物が検出されず、ボイル水も無臭であった。(優)
4:環状ジエステルを除く有機物が検出され、ボイル水は無臭であった。(良)
3:環状ジエステルを除く有機物が検出され、ボイル水は僅かに臭気があった。(可)
2:環状ジエステルを除く有機物が検出され、ボイル水に臭気があった。(不可)
1:環状ジエステルに起因するピークが確認され、ボイル水に臭気があった。(劣)
なお、実用レベルは3~5である。
【0080】
[溶出成分試験(PET/LLDPE構成)]
上記溶出試験において、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東レ社製 ZK93KM 膜厚60μm)の代わりに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(東洋紡(株)社製 L4104 膜厚50μm)を用いた以外は上記と同様の方法で評価を行った。
【0081】
[揮発物・臭気試験]
上記実施例および比較例において得られたインキS1~S34(実施例)、SS1~SS3(比較例)のPETフィルムの印刷物を印刷直後に横12cm縦22cmのサイズに切出し、瓶の中に密閉してオーブンに入れて、60℃で12時間保持した。
瓶の中の成分を上記と同様にガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)にて分析した。
(評価基準)
5:有機物に起因するピークが確認されず、印刷物は無臭であった。(優)
4:有機物に起因するピークが確認され、印刷物に無臭であった。(良)
3:有機物に起因するピークが確認され、印刷物に僅かに臭気があった。(可)
2:有機物に起因するピークが確認され、印刷物にやや強い臭気があった。(不可)
1:有機物に起因するピークが確認され、印刷物に強い臭気があった。(劣)
なお、実用レベルは3~5である。
【0082】
[ラミネート強度]
上記実施例および比較例において得られたインキS1~S34(実施例)、SS1~SS3(比較例)のOPPフィルム印刷物の印刷層上に、イミン系のアンカーコート剤(東洋モートン社製・EL420)を固形分1質量%としたメタノール溶液を塗工し、押し出しラミネート機(ムサシノキカイ社製)によってライン速度100m/minにて溶融ポリエチレン(日本ポリエチレン社製・LC600A)を320℃で押し出して18μmで積層し、同時にCPP(フタムラ化学社製 FCMN 膜厚20μm)を同様に貼り合わせてラミネート積層体を得た。ラミネート加工後、ラミネート積層体について長さ150mm、幅15mmに切り出し、インキ/OPPフィルム界面で開き、引っ張り試験機を用いて90°方向のラミネート強度を測定した。
(評価基準)
5:1.5N/15mm以上(優)
4:1.0N/15mm以上1.5N/15mm未満(良)
3:0.8N/15mm以上1.0N/15mm未満(可)
2:0.5N/15mm以上0.8N/15mm未満(不可)
1:0.5N/15mm未満(劣)
なお実用レベルは3~5である。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2-1】
【0085】
【表2-2】
【0086】
【表2-3】
【0087】
【表3-1】
【0088】
【表3-2】
【0089】
【表3-3】
【0090】
以上の結果より、本発明のグラビアまたはフレキソインキを用いれば、本願課題を達成できた。またバイオマス由来二塩基酸を有するポリエステルポリオールを使用したバイオマスポリウレタン樹脂を使用した場合ラミネート強度の向上がみられた。また、当該ポリウレタン樹脂にコハク酸、セバシン酸およびダイマー酸より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸と、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールを含むジオールからなるポリエステル構造を含有させることでレトルト後の内容物の臭気や本発明の印刷物の臭気について優位な結果が得られた。