(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】スピーカーシステム及び車両ドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20220726BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B60J5/04 F
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2020514822
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2018015852
(87)【国際公開番号】W WO2019202656
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 英樹
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/049352(WO,A1)
【文献】特開2005-039454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの外板である第1パネルと、
前記車両ドアのうち車室の側に設けられた第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、
前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられたスピーカーユニットと、
前記第2パネルの周辺部と前記第3パネルとを連結する第1の連結機構と、
前記スピーカーユニットの前記第2パネルの面内における位置よりも前記第2パネルの中央部より近い位置に設けられ、前記面内において前記スピーカーユニットと重ならない位置において前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結機構と、
を備えるスピーカーシステム
であって、
前記スピーカーユニットの中心軸に沿って前記車室から視た平面視において、前記放音面は円形の形状であり、
前記平面視における前記第2の連結機構の中心位置の、前記放音面の中心からの距離は、前記放音面の半径の3倍以内である、
スピーカーシステム。
【請求項2】
車両ドアの外板である第1パネルと、
前記車両ドアのうち車室の側に設けられた第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、
前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられたスピーカーユニットと、
前記第2パネルの周辺部と前記第3パネルとを連結する第1の連結機構と、
前記スピーカーユニットの前記第2パネルの面内における位置よりも前記第2パネルの中央部より近い位置に設けられ、前記面内において前記スピーカーユニットと重ならない位置において前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結機構と、
を備えるスピーカーシステム
であって、
前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構の各々は、
前記第2パネルに設けられる挿入体と、
前記第3パネルに設けられ、前記挿入体が挿入される挿入穴を有する受部と、
を備えるスピーカーシステム。
【請求項3】
前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記受部を、前記第3パネルに設けられる棒状部の先端に備える
請求項2に記載のスピーカーシステム。
【請求項4】
前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記挿入体を、前記第2パネルに設けられる棒状部の先端に備える
請求項2に記載のスピーカーシステム。
【請求項5】
車両ドアの外板である第1パネルと、
前記車両ドアのうち車室の側に設けられた第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、
前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられたスピーカーユニットと、
前記第2パネルの周辺部と前記第3パネルとを連結する第1の連結機構と、
前記スピーカーユニットの前記第2パネルの面内における位置よりも前記第2パネルの中央部より近い位置に設けられ、前記面内において前記スピーカーユニットと重ならない位置において前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結機構と、
を備えるスピーカーシステムであって、
前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構の各々は、
前記第3パネルに設けられる挿入体と、
前記第2パネルに設けられ、前記挿入体が挿入される挿入穴を有する受部と、
を備える
スピーカーシステム。
【請求項6】
前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記受部を、前記第2パネルに設けられる棒状部の先端に備える
請求項5に記載のスピーカーシステム。
【請求項7】
前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記挿入体を、前記第3パネルに設けられた棒状部の先端に備える
請求項5に記載のスピーカーシステム。
【請求項8】
前記スピーカーユニットの中心軸に沿って前記車室から視た平面視において、前記放音面は円形の形状であり、
前記平面視における前記第2の連結機構の中心位置の、前記放音面の中心からの距離は、前記放音面の半径の3倍以内である、
請求項2から7までのいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
【請求項9】
前記第2パネルの前記第3パネル側の面と、前記スピーカーユニットの前記第2パネル側の面との間に挟まれる弾性体を備える請求項1から8までのいずれか1項に記載のスピーカーシステム。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のスピーカーシステムを備える車両ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーシステム及びスピーカーシステムを備えた車両ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両ドアは、アウターパネルと、車室側に設けられるドアトリムと、アウターパネルとドアトリムとの間に設けられるインナーパネルとにより構成されることがある。インナーパネルには、スピーカーユニット及びウインドーレギュレータ等のドア機能部品が取り付けられる。例えば特許文献1に記載のように、インナーパネルの開口部を塞ぐように、ドア機能部品を搭載したモジュールキャリアプレートが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、車両ドアの内部にスピーカーユニットを備えた従来のスピーカーシステムにおいては、スピーカーユニットの作動により、スピーカーユニットの振動板の振動がドアトリムに伝達され、ドアトリムに不要な振動が生じ、本来スピーカーで発生すべき音以外の音が発生しやすいという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、ドアトリムの振動により発生する音を抑制することが可能となるスピーカーシステム及び車両ドアを提供することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるスピーカーシステムの一態様は、スピーカーシステムは、車両ドアの外板である第1パネルと、前記車両ドアのうち車室の側に設けられた第2パネルと、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられたスピーカーユニットと、前記第2パネルの周辺部と前記第3パネルとを連結する第1の連結機構と、前記スピーカーユニットの前記第2パネルの面内における位置よりも前記第2パネルの中央部により近い位置に設けられ、前記面内において前記スピーカーユニットと重ならない位置において前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結機構と、を備える。
また、本発明の一態様に係わる車両ドアは、上記スピーカーシステムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態のスピーカーシステムを備えた車両ドアを示す分解斜視図である。
【
図4】スピーカーユニットを取り付けた第2パネル(ドアトリム)の一例を車内側から見た図である。
【
図5】本発明のスピーカーシステムの第1実施形態における連結機構の他の例を示す縦断面図である。
【
図6】本発明のスピーカーシステムの第1実施形態における連結機構の他の例をさらに示す縦断面図である。
【
図7】本発明のスピーカーシステムの第1実施形態における連結機構の他の例をさらに示す縦断面図である。
【
図8】本発明のスピーカーシステムの第1実施形態における連結機構の他の例をさらに示す縦断面図である。
【
図9】
図8の連結機構の一部を連結前の状態で示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態のスピーカーシステムを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<1.第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、第1実施形態に係るスピーカーシステム及び車両ドアの構成を示す分解斜視図である。また、
図2はこの実施形態の縦断面図であり、
図3はその部分拡大図である。スピーカーシステム100は、スピーカーユニット5とエンクロージャーとを備える。本実施形態において、車両ドア1はエンクロージャーとして機能する。
車両ドア1は、車両の外側に位置する外板(アウターパネル)である第1パネル2と、車両ドア1において車室側に内装材として設けられ、ドアトリムと称される第2パネル3とを備える。また、車両ドア1は、第1パネル2と第2パネル3との間に設けられ、インナーパネルと称される第3パネル4とを備える。車両ドア1には、車室に向けて放音する放音面5aを有し、第3パネル4に取り付けられるスピーカーユニット5が組み込まれる。放音面5aは、円錐台状の振動板の内壁面である。
【0010】
第1パネル2と第3パネル4には一般的に鋼板が用いられる。第1パネル2と第3パネル4は結合される。第1パネル2と第3パネル4には、例えばアルミニウム合金あるいは炭素材を使用することも可能である。第2パネル3には、例えば合成樹脂成形板が用いられる。第1パネル2と第3パネル4との上部には、窓ガラス6を上下動可能に収容した枠体7が設けられる。
【0011】
第3パネル4には、スピーカーユニット5を収容するための開口部4a及び複数の開口部4bが設けられている。複数の開口部4bには、窓ガラス6を上下動させるための不図示のモータ及びドアロックアクチュエータ等の部品が収容され得る。この実施形態においては、複数の開口部4bの少なくとも一部は、各種の部品によって閉塞されず、開口部4bを閉塞する専用の部材も設けられない。
【0012】
第2パネル3は第3パネル4に対し、複数の第1の連結機構9Aと、第2の連結機構9Bにより固定される。これらの連結機構9A及び9Bについては後で詳細に説明する。第2パネル3の外縁部分には外縁部分に沿って溝状のパッキン取付部3aが設けられ、パッキン取付部3aにはパッキン10が嵌め込まれている。このパッキン10が第2パネル3と第3パネル4との間に介在することにより、第2パネル3及び第3パネル4に囲まれた空間11の気密性が保持される。第3パネル4に設けられた少なくとも一部の開口部4bにより、第1パネル2と第3パネル4とに囲まれた空間12と空間11は連通する。
【0013】
この例のスピーカーユニット5は、ボイスコイル、磁石及び振動板等を含むスピーカー本体5bと、このスピーカー本体5bを収容する筒状のハウジング5cとを有する。スピーカー本体5bは、その第2パネル3側に鍔部5dを有する。この鍔部5dを、ねじ13によりハウジング5cに固定することにより、ハウジング5cがスピーカー本体5bに固定される。
【0014】
ハウジング5cは、第3パネル4側に開口部を有する。ハウジング5cの第3パネル4側の外周部には鍔部5eが設けられる。鍔部5eは、スピーカーユニット5を取り付けるための取付穴5fを有する。スピーカーユニット5は、取付穴5fに取付ねじ14を挿し通して、第3パネル4に設けたねじ穴4cに取付ねじ14をねじ込むことにより、第3パネル4に取り付けられる。第3パネル4にねじ穴4cを設ける代わりに貫通穴を設け、その貫通穴に取付ねじ14を通してナットに締結することにより、スピーカーユニット5を第3パネル4に固定してもよい。
【0015】
スピーカーユニット5の放音面5aに対向する第2パネル3の領域には、スピーカーユニット5で発生する音を車室内に放音するための複数の開口部3bが設けられている。第1パネル2におけるスピーカーユニット5の背面(放音面とは反対側の面)に対向する面には、スピーカーユニット5で発生する音を吸収して定在波を抑制する吸音部材16が設けられている。
【0016】
スピーカーユニット5の第2パネル3側の面、すなわち放音面5a側の周辺部には、スピーカーユニット5と第2パネル3との間の隙間を塞ぐリング状の弾性体18が取り付けられる。弾性体18には、伸縮可能なゴム等の弾性材や、伸縮可能な合成樹脂製発泡材等を用いることができる。この例の弾性体18は、スピーカーユニット5の放音面5aの周辺部に接着剤20により取り付けられている。弾性体18をスピーカーユニット5に取り付けて第2パネル3を第3パネル4に固定した状態においては、弾性体18はスピーカーユニット5と第2パネル3との間で挟まれる。これにより、スピーカーユニット5と第2パネル3との間の隙間が閉塞される。第2パネル3に設けられた放音用の開口部3bは、スピーカーユニット5の中心軸に沿って車室から視た平面視において、弾性体18で囲まれた領域に位置する。
【0017】
図1、
図2、
図4に示すように、第2パネル3を第3パネル4に固定する第1の連結機構9Aは、第2パネル3の周辺部3cの複数箇所において、第2パネル3を第3パネル4に固定する。以下の説明において、スピーカーユニット5の中心軸に沿って車室から視た平面視において、第2パネル3の重心となる点を第2パネル3の中央部3dと称する。
第2の連結機構9Bは、スピーカーユニット5の第2パネル3の面内における位置よりも第2パネル2の中央部3d
により近い位置に設けられ、面内においてスピーカーユニット5と重ならない位置に設けられる。
より具体的には、第2の連結機構9Bは、第2パネル3の端部までの最短距離が、複数の第1の連結機構9Aのそれぞれから第2パネル3までの最短距離と比較して長く、かつスピーカーユニット5の外周部近傍の位置に設けられる。ただし、この実施形態においては、スピーカーユニット5はハウジング5cで覆われているので、ハウジング5cの外周部5gの近傍の位置に、第2パネル3と前記第3パネル4とを連結する第2の連結機構9Bが設けられる。
【0018】
また、この例においては、
図4に示すように、スピーカーユニット5の中心軸に沿って車室内から視た平面視において、放音面5aは円形の形状である。そして、平面視において、第2の連結機構9Bの中心位置から
放音面5aまでの距離は、放音面5aの半径rの3倍以内とする。但し、第2の連結機構9Bは第2パネル3の面内において、スピーカーユニット5と重ならない位置に設けられる。第2の連結機構9Bの中心位置が、放音面5aの中心から放音面5aの半径rの3倍を超えると、放音面5aの外周部近傍に発生する第2パネル3の振動が抑制しにくくなる。なお、スピーカーユニット5の取り付け位置によっては、第2の連結機構9Bは単数ではなく、複数設けてもよい。
【0019】
本例の第2の連結機構9Bは、第1の連結機構9Aと同じ構造を有している。すなわち
図3に示すように、これらの連結機構9A及び9Bは、それぞれ第2パネル3に設けられる挿入体22と、第3パネル4に設けられる受部23とにより構成される。
【0020】
この例の挿入体22は第2パネル3と一体に形成されている。受部23は、第3パネル4と一体に形成された筒状の棒状部23aの先端に形成され、挿入体22を押し込む挿入穴23bを有している。挿入体22は弾性体である。第2パネル3を第3パネル4に連結する際には、第2パネル3に設けられた挿入体22の先端部22aを挿入穴23bに押し込む。この挿入体22の押し込み工程において、挿入体22の先端部22aは、挿入穴23bを通過する際に縮径した後、挿入穴23bを通過した後は元の大きさに戻る。挿入体22は受部23に固定され、抜け止めされる。その結果、第2パネル3が第3パネル4に固定される。
【0021】
なお、第3パネル4に対して第2パネル3を車内側に強い力で引つ張ることにより、挿入体22の先端部22aが縮径しながら挿入穴23bを通過し、挿入体22を挿入穴23bから引き抜くことができ、第2パネル3を第3パネル4から外すことができる。
【0022】
上述のように、第3パネル4に第2パネル3を固定する場合、第2パネル3の周辺部3cのみを第3パネル4に第1の連結機構9Aによって固定するのみでなく、スピーカーユニット5の第2パネル3の面内における位置よりも第2パネル2の中央部3dにより近い位置において、第2パネル3と第3パネル4とを第2の連結機構9Bによって固定したものである。
【0023】
第2の連結機構9Bによって第2パネル3におけるスピーカーユニット5の外周部5gの近傍に位置する個所を第3パネル4に固定することにより、第2パネル3の振動が低減又は防止される。すなわち、第2パネル3において、スピーカーユニット5の作動により振動しやすい箇所は、第1の連結機構9Aによる第2パネル3の固定が行なわれていない箇所、すなわち第2パネル3の周辺部3cから離れた個所である。この周辺部3cから離れ、しかもスピーカーユニット5の振動の影響を受けやすいスピーカーユニット5の外周部5gの近傍を第2の連結機構9Bによって固定することにより、第2パネル3の振動が低減又は防止される。
【0024】
このように、第2の連結機構9Bによって第2パネル3の振動が低減又は防止されることにより、本来スピーカーユニット5で発生すべき音以外の音の発生が抑制され、スピーカーユニット5から発生する音の音質が向上する。
【0025】
また、この実施形態においては、弾性体18を設けているので、スピーカーユニット5と第2パネル3との間で挟まれる弾性体18が弾性変形することにより、スピーカーユニット5の位置決め誤差が許容される。従って、スピーカーユニット5の取付作業が容易となる。また、
図3に点線25に示すような、スピーカーユニット5の背面側からの音のスピーカーユニット5の放音面5a側への回り込みが低減又は防止される。このため、スピーカーユニット5の放音面5aから本来発生させるべき正面放射音が、スピーカーユニット5の背面側から回り込む背面放射音によって影響を受けて、音質が低下することを低減又は防止できる。その結果、スピーカーユニット5の放音面5aから本来発生させるべき音を得やすくなり、音質が向上する。
【0026】
この実施形態においては、第1パネル2と第3パネル4との間で形成された空間12と、第2パネル3と第3パネル4との間で形成された空間11とが開口部4bを通して連通する。スピーカーユニット5のエンクロージャーの容積は、空間11の容積と空間12の容積の合計の容積となる。このため、空間12のみをエンクロージャーとして用いていた従来のスピーカーシステムに比較し、スピーカーシステムとしてのキャビネット容積が増大する。その結果、最低共振周波数を低下させ、低音域の再生音圧を高めることができる。ただし、本発明は、空間11と空間12が隔離された構成にも適用できる。
【0027】
なお、第3パネル4の開口部4bは、合成樹脂製のフィルム等によりカバーされてもよい。これらのフィルムは低音域での透過損失は十分に低いため、これらのフィルムがある場合でも、第1パネル2と第2パネル3とで囲まれた空間は、特に低音域において一体のエンクロージャーとして機能する。
【0028】
図5乃至
図7はそれぞれ第1の連結機構及び第2の連結機構の他の例を示す。
図5の例は、第1の連結機構9C及び第2の連結機構9Dの受部26が、第3パネル4に直接形成された挿入穴26aとして設けられたものである。また、挿入体27は弾性体である。挿入体27は第2パネル3に一体に設けられた棒状部27aの先端に設けられる。この例においては、挿入体27の先端部27bが第3パネル4の挿入穴26aに挿入され、固定されることにより、第2パネル3が第3パネル4に固定される。
【0029】
図6の例は、第1の連結機構9E、第2の連結機構9Fの挿入体29が第3パネル4に一体に設けられ、受部30は、第2パネル3に設けられた筒状の棒状部30aの先端に設けられた例である。挿入体29は弾性体である。受部30は挿入体29の先端部29aが挿入されて固定される挿入穴30bを有する。この例においては、挿入体29の先端部29aが受部30の挿入穴30bに挿入され、固定されることにより、第2パネル3が第3パネル4に固定される。
【0030】
図7の例は、第1の連結機構9G、第2の連結機構9Hの挿入体31が第3パネル4に一体に設けられた棒状部31aの先端に設けられている。挿入体31は弾性体である。受部32は、第2パネル3に直接形成された挿入穴32aとして設けられる。この例においては、挿入体31の先端部31bが受部32の挿入穴32aに挿入され、固定されることにより、第2パネル3が第3パネル4に固定される。
【0031】
なお、
図3、
図5、
図6、及び
図7の例において、棒状部23a、27a、30a、及び31aは第2パネル3と第3パネル4との間の幅に相当する長さとしているが、これらの長さを第2パネル3と第3パネル4との間の幅より短い長さとしてもよい。棒状部23a、27a、30a、及び31aの長さを短くする場合、その短くした分を補う棒状部を、対をなす挿入体又は受部にも備えた構造にしてもよい。
【0032】
また、
図3、
図5、
図6及び、
図7に示した棒状部23a、27a、30a、及び31a又は挿入体22、27、29、及び31は第3パネル4や第2パネル3に一体に形成するのではなく、一端を第3パネル4又は第2パネル3に設けた穴に嵌め込んで接着、又は溶着等により固定する構造としてもよい。
【0033】
また、
図5及び
図7に示したように、受部26及び32を第3パネル4又は第2パネル3に直接形成した挿入穴26a及び32aとして設ける。この場合、受部26及び32の強度を確保するために、受部26及び32の厚さを周辺のパネル板の厚さより厚くしてもよい。また、挿入体は単品として構成するのではなく、挿入穴に挿入して固定する第1部材と、その中に挿入する補強部材としての第2部材とからなる構成も採用できる。
【0034】
図8及び
図9は第1及び第2の連結機構の他の例を示す。この例においては、合成樹脂製の第2パネル3に、挿入体40を取り付ける取付部41を一体に設け、第3パネル4に受部42を一体に設けている。取付部41は、互いに対向する側板部41a及び41bの一端側を半円筒部41cで一体に結合した構造を有する。側板部41a及び41bの間には第2パネル3と平行の平行板部41dと、その平行板部41dに設けられた挿入体支持用の縦板部41eとを有する。側板部41a及び41b、並びに半円筒部41cの先端部には天板部41fを有する。天板部41fには円形の取付穴41gと、側板部41aと側板部41bとの間から取付穴41gに挿入体40を導入するための挿入体導入溝41hとを有する。
【0035】
挿入体40は、軸部40aの周囲に間隔を有して一体に形成された2つの鍔部40b、40cと、挿入体受部42の先端面に当接する鍔部40dと、弾性変形可能な先端部40eとを有する。先端部40eは軸部40aより外径が大きく形成されている。
図9に示すように、取付部41の側板部41a及び41b間の開口面から矢印43に示すように、取付部41の導入溝41hから挿入体40の軸部40aを押し込むことによって、挿入体40は取付部41へ取り付けられる。この時、
図8に示すように、天板部41fを挿入体40の鍔部40b及び40cで挟んだ状態で押し込む。そして、取付穴41gに軸部40aを収める。
【0036】
第3パネル4に設ける受部42は、筒状をなし、その先端に、挿入体40を挿入する挿入穴42aが設けられている。挿入穴42aは筒状をなす受部42の内径より小さな内径を有する。
【0037】
第2パネル3を第3パネル4に固定する際には、第2パネル3に設けられている取付部41に挿入体40を取り付けておき、挿入体40の先端部40eを受部42の挿入穴42aから押し込み。この押し込みの際に挿入体40の先端部40eは弾性変形して縮径されて挿入穴42aを通り、挿入穴42aを通過した後、先端部40eが元に戻ることにより、挿入体40が受部42に固定され、第2パネル3が第3パネル4に固定される。
【0038】
<2.第2実施形態>
図10は本発明のスピーカーシステム100の第2の実施形態である。この実施形態は、スピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けたものである。この実施形態においては、スピーカーユニット5の第2パネル3側には、取り付け用の鍔部5iを有し、この鍔部5iに取り付け用の穴5jを有する。そして、この穴5jに取付ねじ44を挿し通し、さらに弾性体18に設けた穴18aに取付ねじ44を挿し通して、第2パネル3に設けたねじ穴3fに取付ねじ44をねじ込むことにより、スピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けている。
【0039】
また、この実施形態においてはスピーカーユニット5のハウジング5cに鍔部5hを設け、この鍔部5hに弾性体45を重ねて固定している。この例では鍔部5hに接着剤46を介して弾性体45を固定しているが、ねじ等の固定具を用いて固定してもよい。第2パネル3を第3パネル4に固定した状態においては、弾性体45はスピーカーユニット5の背面側に放射される音がハウジング5cから漏れることを低減又は防止する。
【0040】
この実施形態においては、スピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けている。予めスピーカーユニット5を第2パネル3に取り付けておくことにより、第2パネル3を第3パネル4に取り付けるだけで簡単にスピーカーシステム100を構成することができるという組立上の利点がある。
【0041】
<変形例>
以上の実施形態は多様に変形され得る。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
(1)第2パネル3を第3パネル4に固定する第1の連結機構9Aと第2の連結機構9Bとは同じ構造にするのではなく、異なる構造としてもよい。
【0042】
(2)第2パネル3を第3パネル4に固定する第1の連結機構9Aと第2の連結機構9Bは、受部と挿入体とを嵌めあう構造ではなく、第2パネルと第3パネルの一方の穴に挿通する取付ねじを他方に設けたねじ穴、またはナットにねじ込む構造も採用できる。
【0043】
<実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様>
上述した実施形態及び各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
スピーカーシステムは、車両ドアの外板である第1パネルと、前記車両ドアのうち車室の側に設けられた第2パネルと、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に設けられた第3パネルと、前記車室に向けて放音する放音面を有し、前記第2パネル又は前記第3パネルに取り付けられたスピーカーユニットと、前記第2パネルの周辺部と前記第3パネルとを連結する第1の連結機構と、前記スピーカーユニットの前記第2パネルの面内における位置よりも前記第2パネルの中央部により近い位置に設けられ、前記面内において前記スピーカーユニットと重ならない位置において前記第2パネルと前記第3パネルとを連結する第2の連結機構と、を備える。この態様によれば、第2の連結機構によって第2パネルの振動が有効に低減又は防止されることにより、本来スピーカーユニットで発生すべき音以外に余計な音の発生が抑制され、スピーカーユニットから発生する音の音質を向上できる。
【0044】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記スピーカーユニットの中心軸に沿って前記車室から視た平面視において、前記放音面は円形の形状であり、前記第2の連結機構は、前記平面視において、前記放音面の中心から前記放音面の半径の3倍以内に位置することが好ましい。この態様によれば、第2の連結機構が放音面の半径の3倍以内に位置することにより、第2の連結機構による第2パネルの振動抑制効果が有効に発揮できる。
【0045】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構の各々は、前記第2パネルに設けられる挿入体と、前記第3パネルに設けられ、前記挿入体が挿入される挿入穴を有する受部とを備えることが好ましい。この態様によれば、第2パネルを第3パネルに固定するためのねじ等の固定具を要することなく、第2パネルを第3パネルに容易に着脱可能となる。
【0046】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記受部を、前記第3パネルに設けられる棒状部の先端に備えることが好ましい。この態様によれば、第2パネルを第3パネルに固定するためのねじ等の固定具を要することなく、第2パネルを第3パネルに容易に着脱可能となる。また、棒状部により、第2パネルと第3パネルとの間に必要とされる空間を容易に確保することができる。
【0047】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記挿入体を、前記第2パネルに設けられる棒状部の先端に備えることが好ましい。この態様によれば、第2パネルを第3パネルに固定するためのねじ等の固定具を要することなく、第2パネルを第3パネルに容易に着脱可能となる。また、棒状部により、第2パネルと第3パネルとの間に必要とされる空間を容易に確保することができる。
【0048】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構の各々は、前記第3パネルに設けられる挿入体と、前記第2パネルに設けられ、前記挿入体が挿入される挿入穴を有する受部と、を備えることが好ましい。この態様によれば、第2パネルを第3パネルに固定するためのねじ等の固定具を要することなく、第2パネルを第3パネルに容易に着脱可能となる。
【0049】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記受部を、前記第2パネルに設けられる棒状部の先端に備えることが好ましい。この態様によれば、第2パネルを第3パネルに固定するためのねじ等の固定具を要することなく、第2パネルを第3パネルに容易に着脱可能となる。また、棒状部により、第2パネルと第3パネルとの間に必要とされる空間を容易に確保することができる。
【0050】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記第1の連結機構及び前記第2の連結機構のうち少なくとも一方は、前記挿入体を、前記第3パネルに設けられた棒状部の先端に備えることが好ましい。この態様によれば、第2パネルを第3パネルに固定するためのねじ等の固定具を要することなく、第2パネルを第3パネルに容易に着脱可能となる。また、棒状部により、第2パネルと第3パネルとの間に必要とされる空間を容易に確保することができる。
【0051】
上述したスピーカーシステムの一態様として、前記スピーカーの前記第2パネル側の面との間に挟まれる弾性体を備えることが好ましい。この態様によれば、弾性体の弾性変形により、スピーカーユニットの位置決め誤差が許容されるので、スピーカーユニットの位置決めが容易となる。また、スピーカーユニットの背面側からの音のスピーカーユニットの放音面側への回り込みが低減又は防止される。このため、スピーカーユニットの放音面から本来発生させるべき正面放射音が、スピーカーユニットの背面側から回り込む背面放射音によって影響を受けて、音質が低下することを低減又は防ぐことができる。その結果、スピーカーユニットの放音面から本来発生させるべき音を得やすくなり、音質が向上する。
【0052】
上述した車両ドアの一態様として、上述したスピーカーシステムのいずれかを備えることが好ましい。この態様によれば、上述した各効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…車両ドア、2…第1パネル、3…第2パネル、4…第3パネル、5…スピーカーユニット、5a…放音面、5c…ハウジング、9A、9C、9E、9G…第1の連結機構、9B、9D、9F、9H…第2の連結機構、14…取付ねじ、18…弾性体、22、27、29、31…挿入体、23、26、30、32…受部、22a、27b、29a、31b…先端部、23a、27a、30a、31a…棒状部、23b、26a、30b、32a…挿入穴、100…スピーカーシステム。