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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20220726BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20220726BHJP
   H01B 7/40 20060101ALI20220726BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04
H01B7/40 307Z
H01B7/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020566065
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001422
(87)【国際公開番号】W WO2020148883
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 龍太
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-18312(JP,U)
【文献】実開昭58-168010(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/08
H02G 3/04
H01B 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと、
前記コネクタから延出する複数の線状伝送部材と、
前記コネクタから延出する前記複数の線状伝送部材が、前記コネクタの端面における配列と異なる配列へと配列が変更された状態で主面上に配設されて固定されたシート部材と、
を備え、
前記複数の線状伝送部材の配列変更のために前記複数の線状伝送部材同士が交差する少なくとも1つの交差箇所が、前記コネクタの端面の後方領域に位置しており、
少なくとも1つの前記交差箇所は、前記複数の線状伝送部材のうちの1つの線状伝送部材が前記複数の線状伝送部材のうちの他の2つ以上の線状伝送部材とそれぞれ異なる箇所で交差して形成されるものを含む、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記コネクタは、前記シート部材と離れて設けられている、配線部材。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材であって、
少なくとも1つの前記交差箇所が、前記コネクタと前記シート部材との間に設けられている、配線部材。
【請求項4】
請求項3に記載の配線部材であって、
すべての前記交差箇所が、前記コネクタと前記シート部材との間に設けられている、配線部材。
【請求項5】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記コネクタの前記端面を含む端部が前記シート部材上に位置している、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記後方領域は、前記シート部材と前記線状伝送部材との固定箇所のうち前記コネクタの前記端面に最も近い固定箇所と、前記コネクタの前記端面との間である、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材と、長手方向に沿った少なくとも一部の領域で前記機能性外装部材に重なるように配設された電線と、を備え、前記電線の絶縁被覆と前記機能性外装部材とが重なる部分の少なくとも一部が溶着されている、ワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に開示のワイヤーハーネスでは、電線の経路、コネクタへの接続先位置等に応じて、シート状の機能性外装部材上で、いずれかの電線が他の電線を跨ぐようにして交差して配設される場合があり得る。
【0005】
しかしながら、シート状の機能性外装部材上で電線同士が交差する場合、その部分でワイヤーハーネスの厚みが増してしまい、車両等の配設箇所におけるワイヤーハーネスの配設スペースが大きくなる恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、シート部材上に線状伝送部材を固定した配線部材の配設スペースの増加を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る配線部材は、コネクタと、前記コネクタから延出する複数の線状伝送部材と、前記コネクタから延出する前記複数の線状伝送部材が、前記コネクタの端面における配列と異なる配列へと配列が変更された状態で主面上に配設されて固定されたシート部材と、を備え、前記複数の線状伝送部材の配列変更のために前記複数の線状伝送部材同士が交差する少なくとも1つの交差箇所が、前記コネクタの端面の後方領域に位置しており、少なくとも1つの前記交差箇所は、前記複数の線状伝送部材のうちの1つの線状伝送部材が前記複数の線状伝送部材のうちの他の2つ以上の線状伝送部材とそれぞれ異なる箇所で交差して形成されるものを含む。
【0008】
第2の態様に係る配線部材は、第1の態様に係る配線部材であって、前記コネクタは、前記シート部材と離れて設けられている。
【0009】
第3の態様に係る配線部材は、第2の態様に係る配線部材であって、少なくとも1つの前記交差箇所が、前記コネクタと前記シート部材との間に設けられている。
【0010】
第4の態様に係る配線部材は、第3の態様に係る配線部材であって、すべての前記交差箇所が、前記コネクタと前記シート部材との間に設けられている。
【0011】
第5の態様に係る配線部材は、第1の態様に係る配線部材であって、前記コネクタの前記端面を含む端部が前記シート部材上に位置している。
【0012】
第6の態様に係る配線部材は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記後方領域は、前記シート部材と前記線状伝送部材との固定箇所のうち前記コネクタの前記端面に最も近い固定箇所と、前記コネクタの前記端面との間である。
【発明の効果】
【0013】
各態様によると、線状伝送部材同士の交差箇所が、コネクタにおいて線状伝送部材が引き出される端面近くに配置される。ここで、線状伝送部材のコネクタへの接続部分を保護するために、コネクタの端面の後方は、もともと周辺部材が進入しないように設定されている場合がある。このため、この部分を後方領域とし、この後方領域に交差箇所を配置することによって、デッドスペースとなりがちであった後方領域を有効活用できる。また後方領域から離れた部分に配置される交差箇所を少なくできる。これらより、シート部材上に線状伝送部材を固定した配線部材の配設スペースの増加を抑制できる。
【0014】
第2の態様によると、コネクタとシート部材とが離れているため、シート部材の外側に交差箇所を配置しやすい。
【0015】
第3の態様によると、交差箇所とシート部材とが重なることを抑制できるため、配線部材の中間部における厚み寸法の増加を抑制できる。
【0016】
第4の態様によると、シート部材上に交差箇所がないため、配線部材の中間部における厚み寸法の増加を抑制できる。
【0017】
第5の態様によると、シート部材上にコネクタが位置しているため、コネクタの位置を認識しやすい。
【0018】
第6の態様によると、シート部材と線状伝送部材との固定箇所のうちコネクタの端面に最も近い固定箇所と、コネクタの端面との間に交差箇所を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る配線部材を示す概略平面図である。
図2】第1実施形態に係る配線部材を示す概略側面図である。
図3】コネクタを示す概略斜視図である。
図4】第2実施形態に係る配線部材を示す概略平面図である。
図5】第2実施形態に係る配線部材を示す概略側面図である。
図6】第3実施形態に係る配線部材を示す概略平面図である。
図7】配線部材の変形例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る配線部材について説明する。図1は、第1実施形態に係る配線部材10を示す概略平面図である。図2は、第1実施形態に係る配線部材10を示す概略側面図である。図3は、コネクタ20を示す概略斜視図である。なお、図1において線状伝送部材30は、その径方向の寸法が省略されて線状に記載されている。以下の図4図6でも同様である。これに対して、図2図3において線状伝送部材30は、その径方向の寸法が省略されずに記載されている。以下の図5図7でも同様である。
【0021】
配線部材10は、コネクタ20と、複数の線状伝送部材30と、シート部材40と、を備える。ここでは配線部材10は、複数のコネクタ20を備える。配線部材10は、コネクタ20を一のみ備える場合もあり得る。
【0022】
コネクタ20は、車両に搭載された部品に接続される部品である。線状伝送部材30は、電気又は光を伝送する線状部材である。複数の線状伝送部材30の端部がいずれかのコネクタ20に接続されている。コネクタ20が車両に搭載された部品に接続されることで、線状伝送部材30と当該部品とが電気的に接続され、或は、光信号を送受可能に接続される。
【0023】
配線部材10が車両に搭載された状態で、複数のコネクタ20が車両に搭載された各部品に接続される。これにより、車両に搭載された部品の間で、電気信号の送受信、電力の送受、光信号の送受信がなされる。つまり、配線部材10は、車両に搭載された部品同士を接続する配線部品である。特に、配線部材10において、複数の線状伝送部材30が分岐していることから、複数の部品を分岐した経路を介して接続することが可能となる。
【0024】
シート部材40は、シート状の部材である。このシート部材40上に、複数の線状伝送部材30のうちコネクタ20から延出する部分が固定される。複数の線状伝送部材30は、コネクタ20の端面24における配列と異なる配列へと配列が変更された状態でシート部材40上に固定されている。
【0025】
複数の線状伝送部材30の配列変更のために複数の線状伝送部材30同士が交差する部分を交差箇所32とする。このとき、少なくとも1つの交差箇所32が、コネクタ20の後方領域BAに位置している。なおコネクタ20は通常、線状伝送部材30が延出する端面24とは反対側の端面側から相手側部材と接続される。このため本明細書では、コネクタ20に対して線状伝送部材30が延出する端面24とは反対側の端面側をコネクタ20の前方と称し、線状伝送部材30が延出する端面24側をコネクタ20の後方と称する。そして、コネクタ20の端面24側でコネクタ20の外方の部分をコネクタ20の後方領域BAと称している。
【0026】
ここでコネクタ20の後方領域BAは、例えば、コネクタ20の端面24から所定寸法L以内の領域とすることができる。所定寸法Lは、例えば、30ミリメートルとすることができる。所定寸法Lは、例えば、コネクタ20の大きさ等によって異なる値をとり得る。所定寸法Lは、例えば、10ミリメートル乃至30ミリメートルの間のいずれかの値とすることができる。
【0027】
なお、コネクタ20の後方に周辺部材80、81の進入禁止領域が設定されている場合がある。この進入禁止領域は、例えば、コネクタ20への線状伝送部材30の接続部分に周辺部材80、81が接触して、コネクタ20から線状伝送部材30が抜けるのを抑制するためなどに、コネクタ20の端面24から所定寸法以内の領域に設定される。このように、コネクタ20の端面24の後方に周辺部材80、81の進入禁止領域が設定されている場合には、その進入禁止領域を後方領域BAとすることもできる。
【0028】
各部についてより具体的に説明する。
【0029】
コネクタ20は、ハウジング22と、接続部材とを含む。なお、ここでは接続部材について図示が省略されている。
【0030】
ハウジング22は、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料によって箱状に形成され、内部に接続部材を収容する。ハウジング22の一の端面24から線状伝送部材30が延出する。例えば、当該一の端面24に線状伝送部材30の端部が収まるキャビティ23が形成され、当該キャビティ23に線状伝送部材30の端部が収まることによって、ハウジング22の一の端面24から線状伝送部材30が延出した状態となる。なお図3において、キャビティ23は1段のみ形成されているが、2段以上形成されていてもよい。
【0031】
接続部材は、線状伝送部材30とコネクタ20の接続相手との間に介在して、電気又は光を伝送するための部材である。係る接続部材としては、特に限定されるものではなく、例えば、バスバー、又は線状伝送部材30の端部に設けられた端子などを用いることができる。コネクタ20において、接続部材が所定の配列でハウジング22に収容された構成とされている。またコネクタ20において、線状伝送部材30の端部は対応する接続部材と接続された状態とされる。このためコネクタ20の端面24における複数の線状伝送部材30の配列は、この接続部材の配列に応じた配列とされている。
【0032】
線状伝送部材30は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材30は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0033】
電気を伝送する線状伝送部材30としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材30は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0034】
ここでは線状伝送部材30が一般電線30(以下、単に電線30という)であるものとして説明する。電線30は、伝送線本体としての芯線と、芯線を覆う被覆としての絶縁被覆とを有する。電線30に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、線状伝送部材30の各例示物に適用可能である。
【0035】
芯線は、1本又は複数本の素線で構成される。素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体で形成される。芯線が複数本の素線で構成される場合、複数本の素線は撚られていてもよい。絶縁被覆は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線の周囲に押出成形されるなどして形成される。ここでは電線30は、横断面が円形のいわゆる丸電線30である。
【0036】
ここでは電線30は、コネクタ20間をつなぐように延びている。つまり電線30の両端部がそれぞれ別のコネクタ20に接続されている。もっとも、電線30は、一端部のみがコネクタ20と接続されていてもよい。
【0037】
シート部材40は、電線30を2次元的に位置決めした状態で保持できるシート状部材である。シート部材40は、折曲げ可能な柔軟性を有していてもよいし、折り曲げ困難な剛性を有していてもよい。
【0038】
シート部材40を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材40は、好ましくはPVC、PE、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート部材40は、銅又はアルミニウムなどの金属材料を含むこともあり得る。
【0039】
シート部材40は、織布、編布、不織布などの繊維材であってもよいし、押出成形または射出成形などによって繊維を有さずに結合されて成形された成形シートであってもよい。後者の場合、シート部材40は、発泡成形された発泡成形シートであってもよいし、発泡成形されずに内部が一様に埋ったシートであってもよい。
【0040】
シート部材40は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0041】
シート部材40の一主面上に、電線30が固定されている。シート部材40の一主面上において、電線30は一定の経路に沿って配設されて固定されている。
【0042】
なお、電線30とシート部材40との固定態様は、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、電線30とシート部材40とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。例えば、縫糸、別のシート部材40、粘着テープなどが、電線30をシート部材40に向けて押え込んだり、縫糸、別のシート部材40、粘着テープなどが、電線30とシート部材40とを囲む状態等となって、電線30とシート部材40とを挟み込んだりして、電線30とシート部材40とが固定された状態に維持するものである。本例では、電線30とシート部材40とが、接触部位固定の状態にあるものとして想定している。接触部位固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、非接触部位固定にも適用可能である。
【0043】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、電線30とシート部材40とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、電線30とシート部材40とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば電線30とシート部材40とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。以下では、電線30とシート部材40とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明する。接触部位直接固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、接触部位間接固定にも適用可能である。
【0044】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0045】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する構成は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の構成を含む各種構成を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着構成を採用することができる。またこれらの構成によって接触部位直接固定の状態が形成されると、電線30とシート部材40とは、その構成による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、電線30とシート部材40とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成した部分(電線30とシート部材40との固定部分)を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0046】
接触部位直接固定の場合、電線30の被覆に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、シート部材40に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。また、接触部位直接固定の場合、電線30の被覆に含まれる樹脂とシート部材40に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。
【0047】
ここではシート部材40は、細長く真っ直ぐ延びる帯状に形成されている。もっとも、シート部材の形状は、細長く真っ直ぐ延びる帯状に限定されるものではなく、例えば、曲がっていてもよいし、複数の帯状部分が組み合わさった形状などであってもよい。
【0048】
シート部材40上における電線30の経路は、直線であってもよいし、途中で曲る経路であってもよい。シート部材40の一主面上において、複数の電線30は途中で分岐している。ここではシート部材40の一端部41aから他端部41bに向けて複数の電線30が延びている。一部の電線30は、シート部材40の中間部で一側部42aに向けて曲がり、他の一部の電線30は、シート部材40の中間部で他側部42bに向けて曲がっている。残りの電線30がシート部材40の他端部41bまで達している。
【0049】
便宜上、複数のコネクタ20を、コネクタ20A、20B、20C、20Dと区別する。また複数の電線30を、電線30a、30b、30c、30d、30e、30fと区別する。以下、コネクタ20及び電線30を区別する必要がある場合には、同様の符号で区別する。
【0050】
複数の電線30a、30b、30c、30d、30e、30fの一端部は、シート部材40の一端部41a側でコネクタ20Aに接続されている。ここでは電線30a、30b、30c、30d、30e、30fの一端部がシート部材40の一端部41aから外方に延出してコネクタ20Aに接続されている。電線30a、30b、30c、30d、30e、30fの他端部についてもシート部材40から外方に延出して、コネクタ20B、20C、20Dにそれぞれ接続されている。
【0051】
コネクタ20Aの端面24における複数の電線30a、30b、30c、30d、30e、30fの配列は、複数の電線30a、30b、30c、30d、30e、30fの一端部がコネクタ20Aのハウジング22(キャビティ23)に収容される配列に応じて決定されている。
【0052】
以下、電線30a、30b、30c、30d、30e、30fのコネクタ20Aからの延在態様について説明する。
【0053】
電線30aは、コネクタ20Aから延出したすぐ先の部分で曲り、他の電線30c、30d、30e、30fに対して交差する。電線30bは、コネクタ20Aから延出したすぐ先の部分で曲り、他の電線30c、30d、30e、30fに対して交差する。電線30cは、コネクタ20Aから延出したすぐ先の部分で曲り、他の電線30a、30b、30d、30e、30fに対して交差する。電線30dは、コネクタ20Aから延出したすぐ先の部分で曲り、他の電線30a、30b、30c、30fに対して交差する。電線30eは、コネクタ20Aから延出したすぐ先の部分で曲り、他の電線30a、30b、30c、30fに対して交差する。電線30fは、コネクタ20Aから延出したすぐ先の部分で曲り、他の電線30a、30b、30c、30d、30eに対して交差する。
【0054】
これらの電線30a、30b、30c、30d、30e、30fが相互に交差する箇所が交差箇所32の一例である。
【0055】
電線30a、30b、30c、30d、30e、30fは、コネクタ20Aから延出し、交差した先で、シート部材40の一端部41aからシート部材40上を延びる。つまり、電線30a、30b、30c、30d、30e、30fの交差箇所32は、コネクタ20の端面24とシート部材40との間に位置している。電線30a、30b、30c、30d、30e、30fは、シート部材40の一端部41aから他端部41bに向けて並列状態(ここでは平行姿勢)で延び、シート部材40に固定される。
【0056】
一部の電線30d、30fは、シート部材40の中間部でシート部材40の一側部42aに向けて曲って、他の電線30a、30b、30c、30eに対して分岐し、それらに直交する姿勢で延在する。そして、シート部材40の一側部42aから外方に延出して、コネクタ20Bに接続される。電線30d、30fの他端部における配列は、電線30d、30fの他端部がコネクタ20B内に収容される配置に応じて決定される。
【0057】
一部の電線30a、30bは、電線30d、30fの分岐位置よりもシート部材40の他端部41b側でシート部材40の他側部42bに向けて曲って、他の電線30c、30eに対して分岐し、それらに直交する姿勢で延在する。そして、シート部材40の他側部42bから外方に延出して、コネクタ20Cに接続される。電線30a、30bの他端部における配列は、電線30a、30bの他端部がコネクタ20C内に収容される配置に応じて決定される。
【0058】
残りの電線30c、30eは、シート部材40の他端部41bまで延びている。そして、シート部材40の他端部41bから外方に延出して、コネクタ20Dに接続される。電線30c、30eの他端部における配列は、電線30c、30eの他端部がコネクタ20D内に収容される配置に応じて決定される。
【0059】
ここでは電線30a、30b、30c、30d、30e、30fが交差するすべての交差箇所32が、コネクタ20とシート部材40との間に設けられている。このため、シート部材40上に電線30a、30b、30c、30d、30e、30fが交差する交差する交差箇所32が存在していない。
【0060】
ここで、複数の交差箇所32のうち電線30cと電線30eとの交差箇所32aは、これらの一端部が接続されるコネクタ20Aの端面24における配列と、これらの他端部が接続されるコネクタ20Dにおける配列とが異なることに起因するものである。つまり、交差箇所32aは、複数の電線30c、30eの両端部がそれぞれ同じコネクタ20A、20Dに接続される場合に、一端部が接続されるコネクタ20Aにおける配列と、他端部が接続されるコネクタ20Dにおける配列とが異なる場合に、コネクタ20A、20D間で配列替えを行うために交差する箇所である。電線30dと電線30fとの交差箇所32bも同様である。複数の交差箇所32のうち交差箇所32a、32b以外の交差箇所32cは、電線30同士の分岐のためのものである。
【0061】
以上のように構成された配線部材10によると、電線30同士の交差箇所32が、コネクタ20において電線30が引き出される端面24近くに配置される。ここで、電線30のコネクタ20への接続部分を保護するために、コネクタ20の端面24の後方は、もともと周辺部材80、81が進入しないように設定されている場合がある。このため、この部分を後方領域BAとし、この後方領域BAに交差箇所32を配置することによって、デッドスペースとなりがちであった後方領域BAを有効活用できる。また後方領域BAから離れた部分に配置される交差箇所32を少なくできる。これらより、シート部材40上に電線30を固定した配線部材10の配設スペースの増加を抑制できる。
【0062】
また配線部材10によると、コネクタ20とシート部材40とが離れているため、シート部材40の外側に交差箇所32を配置しやすい。
【0063】
また配線部材10によると、少なくとも1つの交差箇所32が、コネクタ20とシート部材40との間に設けられていることによって、交差箇所32とシート部材40とが重なることを抑制できるため、配線部材10の中間部における厚み寸法の増加を抑制できる。
【0064】
また配線部材10によると、すべての交差箇所32が、コネクタ20とシート部材40との間に設けられていることによって、シート部材40上に交差箇所32がないため、配線部材10の中間部における厚み寸法の増加を抑制できる。
【0065】
{第2実施形態}
第2実施形態に係る配線部材について説明する。図4は、第2実施形態に係る配線部材110を示す概略平面図である。図5は、第2実施形態に係る配線部材110を示す概略側面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、コネクタ20Aの端面24を含む端部がシート部材40上に位置している。つまり、コネクタ20Aの端面24を含む端部とシート部材40とが線状伝送部材30の延出方向に離れていない。ここではコネクタ20B、20C、20Dの端部もシート部材40上に位置している。もっとも、コネクタ20A、20B、20C、20Dのうち一部のコネクタ20の端部はシート部材40上に位置していなくてもよい。
【0067】
シート部材40上に位置するコネクタ20の端部は、シート部材40に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
【0068】
コネクタ20の端部が、シート部材40に固定されている場合、その固定手段は特に限定されるものではない。コネクタ20の端部は、例えば、接着剤、両面粘着テープ等によってシート部材40に固定されていてもよいし、ハウジング22がシート部材40と溶着されることなどにより固定されていてもよい。
【0069】
このようにコネクタ20の端面24を含む端部がシート部材40上に位置している場合、交差箇所32もシート部材40上に位置する。なお交差箇所32がシート部材40上に位置するとは、交差箇所32がシート部材40の主面上に載置されている場合のほか、シート部材40の主面から浮いた状態の場合も含む。このように交差箇所32がシート部材40上に位置する場合でも、この交差箇所32がコネクタ20の後方領域BAに配置されることによって、シート部材40上に線状伝送部材30を固定した配線部材10の配設スペースの増加を抑制できる。
【0070】
また配線部材110によると、シート部材40上にコネクタ20が位置しているため、コネクタ20の位置を認識しやすい。特にシート部材40上にコネクタ20が固定されていると、コネクタ20の位置決めもすることができる。
【0071】
交差箇所32がシート部材40上に位置する場合、電線30のうち交差箇所32を挟む部分は、シート部材40に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。図5に示す例では、電線30のうち交差箇所32を挟む部分は、シート部材40に固定されていない。このため、電線30のうち交差箇所32よりもコネクタ20A側の部分は、シート部材40に固定されていない。
【0072】
図5に示す例において、電線30とシート部材40との固定箇所FPが二点鎖線で示されている。この際、図5に示す例では、電線30とシート部材40との固定箇所FPのうちコネクタ20Aの端面24に最も近い固定箇所FP1とコネクタ20Aの端面24との間が離れており、この間に交差箇所32が配置されている。なお図5に示す例では、固定箇所FPは、電線30の延在方向に沿って断続的に設けられているが、一連に設けられていてもよい。この場合、一連に形成された固定箇所のうちコネクタ20Aの端面24に最も近い部分を、電線30とシート部材40との固定箇所のうちコネクタ20Aの端面24に最も近い固定箇所とすることができる。
【0073】
なお、電線30のうちキャビティ23の開口に位置する部分と、シート部材40におけるコネクタ20Aの端面24に最も近い固定箇所FP1に位置する部分との間の寸法は、キャビティ23の開口と固定箇所FP1との最短距離よりも長く設定されている。これにより、電線30の急曲げが抑制され、もって電線30がキャビティ23の開口周縁にこすられて傷つくことを抑制できる。
【0074】
{第3実施形態}
第3実施形態に係る配線部材について説明する。図6は、第3実施形態に係る配線部材210を示す概略平面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
これまで複数の交差箇所32が一のコネクタ20Aの後方領域BAにのみ存在するものとして説明してきたがこのことは必須の構成ではない。複数の交差箇所32が複数のコネクタ20の後方領域BAに分かれて存在していてもよい。このように、複数の交差箇所32が複数のコネクタ20の後方領域BAに分かれて存在することによって、一のコネクタ20Aの後方領域BAに複数の交差箇所32が集中することを抑制できる。
【0076】
本例では、複数の交差箇所32のうち一部がコネクタ20Aの後方領域BA1に設けられ、他の一部がコネクタ20Dの後方領域BA2に設けられ、残りがコネクタ20Bの後方領域BA3に設けられている。
【0077】
特に本例では、複数の交差箇所32のうち電線30cと電線30eとの交差箇所32aが、コネクタ20Dの後方領域BA2に設けられている。また複数の交差箇所32のうち電線30dと電線30fとの交差箇所32bが、コネクタ20Bの後方領域BA3に設けられている。残りの交差箇所32cがコネクタ20Aの後方領域BA1に設けられている。
【0078】
つまり、本例では、分岐のための交差箇所32cがコネクタ20Aの後方領域BA1に設けられている。また、2つのコネクタ20間での配列違いに起因する交差箇所32a、32bがコネクタ20D、20Bの後方領域BA2、BA3に設けられている。
【0079】
また本例では、シート部材240の形状がこれまでのシート部材40の形状とは異なる。より具体的には、シート部材240は、第1シート状部分44と、第2シート状部分46a、46bとを含む。
【0080】
ここでは、第1シート状部分44は、細長く真っ直ぐ延びる帯状に形成されている。第1シート状部分は曲っていてもよい。なお第1シート状部分44は、上記シート部材40と同様の形状に形成されており、シート部材40の一端部41a、他端部41b、一側部42a、他側部42bは、第1シート状部分44の一端部41a、他端部41b、一側部42a、他側部42bに対応する。
【0081】
第2シート状部分46a、46bは、第1シート状部分44の延在方向中間部で曲って第1シート状部分44の側方に分岐している。第2シート状部分46a、46bは細長く真っ直ぐ延びる帯状に形成されている。第2シート状部分は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。第2シート状部分が複数設けられる場合、複数の第2シート状部分は、第1シート状部分44の両側部42a、42bに分かれて設けられていてもよいし、第1シート状部分44の一側部42aのみに設けられていてもよいし、他側部42bのみに設けられていてもよい。
【0082】
第2シート状部分46aは、第1シート状部分44の一側部42aの延在方向中間部から第1シート状部分44の一側部42aの外方に向けて延在するように分岐している。第2シート状部分46bは、第1シート状部分44の他側部42bの延在方向中間部から第1シート状部分44の他側外方に向けて延在するように分岐している。
【0083】
ここでは、第2シート状部分46a、46bは、第1シート状部分44の延在方向において異なる箇所に設けられている。ここでは、第2シート状部分46aは、第1シート状部分44の一端部41a寄りに、第2シート状部分46bは、第1シート状部分44の他端部41b寄りに設けられている。複数の第2シート状部分が第1シート状部分44の両側部42a、42bに分かれて設けられる場合、そのうちの2つの第2シート状部分が第1シート状部分の延在方向において同じ位置に設けられていてもよい。
【0084】
第2シート状部分46a、46bは、第1シート状部分44の延在方向に対して直交する姿勢で延出している。第2シート状部分は、第1シート状部分の延在方向に対して斜め方向に延出していてもよい。
【0085】
{変形例}
図7は、配線部材10の変形例を示す概略平面図である。
【0086】
本例において、一の電線30xが複数の電線30に対して交差する際、一の電線30xが第1の電線30yに対して一方側を通過し、第2の電線30zに対して他方側を通過している。このように一の電線30xが第1の電線30yと第2の電線30zとの間を縫うように交差することによって、交差箇所32の形状が保持されやすくなり、交差箇所32がばらけにくくなる。これにより、コネクタ20が引っ張られたときなどに電線30に大きな負荷が生じにくくなる。
【0087】
このほか、これまで後方領域BAとして、コネクタ20の端面24から所定寸法L以内の領域とするものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。これ以外の領域を後方領域BAとすることもできる。
【0088】
例えば、第1実施形態のようにコネクタ20とシート部材40とが、線状伝送部材30の延出方向に沿って離れて設けられている場合がある。この場合、コネクタ20とシート部材40との間の領域を後方領域BAとすることもできる。
【0089】
また例えば、第2実施形態のようにシート部材40と線状伝送部材30との固定箇所FPのうちコネクタ20の端面24に最も近い固定箇所FP1と、コネクタ20の端面24とが離れている場合がある。この場合、これらの間の領域を後方領域BAとすることもできる。
【0090】
またこれまで、すべての交差箇所32が後方領域BAに配置されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。一部の交差箇所32が後方領域BA外に配置されてもよい。この場合、後方領域BA外に配置される交差箇所32は、配線部材のうち比較的配設スペースの大きい部分に配置されるとよい。つまり、配線部材のうち後方領域外の部分が、第1部分と、第1部分よりも比較的配設スペースの大きい第2部分とを含み、後方領域BA外に配置される交差箇所が第1部分と、第2部分とのうち第2部分のみに配置されるとよい。これにより、交差箇所が、比較的配設スペースの小さい第1部分に配置されることが抑制され、周辺部材と接触しにくくなる。
【0091】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0092】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0093】
10 配線部材
20、20A、20B、20C、20D コネクタ
24 端面
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f 電線(線状伝送部材)
32、32a、32b、32c 交差箇所
40、240 シート部材
BA 後方領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7