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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20220726BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20220726BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220726BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H03H7/01 B
H03H7/09 Z
H01F17/00 D
H01G4/40 321A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021072555
(22)【出願日】2021-04-22
(62)【分割の表示】P 2019567004の分割
【原出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2021121110
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2018011821
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018059718
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲夫
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027690(JP,A)
【文献】特開2014-057277(JP,A)
【文献】特開2005-045447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/01
H03H 7/09
H01F 17/00
H01G 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層され、複数の導体を有する積層体と、
前記積層体に構成された、第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路、および中間回路とを含むバンドパスフィルタにおいて、
前記第1のフィルタ回路は、
グランド電位に接続されるグランド導体と、
前記グランド導体に接続される、第1のグランド側キャパシタ電極と、
前記第1のグランド側キャパシタ電極と対向配置される、第1のキャパシタ導体および第2のキャパシタ導体と、
一方端が前記第1のグランド側キャパシタ電極に接続される第1の共有インダクタ導体と、
前記第1のキャパシタ導体と、前記第1の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第1のインダクタ導体と、
前記第2のキャパシタ導体と、前記第1の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第2のインダクタ導体と、を備え、
前記第2のフィルタ回路は、
前記グランド導体と、
前記グランド導体に接続される、第2のグランド側キャパシタ電極と、
前記第2のグランド側キャパシタ電極と対向配置される、第3のキャパシタ導体および第4のキャパシタ導体と、
一方端が前記第2のグランド側キャパシタ電極に接続される第2の共有インダクタ導体と、
前記第3のキャパシタ導体と、前記第2の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第3のインダクタ導体と、
前記第4のキャパシタ導体と、前記第2の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第4のインダクタ導体と、を備え、
前記中間回路は、
前記グランド導体と、
前記グランド導体と対向配置される、第5のキャパシタ導体と、
一方端が前記第5のキャパシタ導体に接続され、他方端が前記グランド導体に接続される、第5のインダクタ導体と、を備え、
前記積層方向と直交する方向において、前記第1のフィルタ回路、前記中間回路、前記第2のフィルタ回路は、この順に並んで配置され、
前記第1のフィルタ回路と前記中間回路、前記第2のフィルタ回路と前記中間回路、のそれぞれは電磁界結合する、バンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記積層方向と直交する方向において、
前記第1のインダクタ導体の少なくとも一部と前記第2のインダクタ導体の少なくとも一部とが、前記第5のインダクタ導体と重なり、
前記第3のインダクタ導体の少なくとも一部と前記第4のインダクタ導体の少なくとも一部とが、前記第5のインダクタ導体と重なる、請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
複数の誘電体層が積層され、複数の導体を有する積層体と、
前記積層体に構成された、第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路、および中間回路とを含むバンドパスフィルタにおいて、
前記第1のフィルタ回路は、
グランド電位に接続されるグランド導体と、
前記グランド導体に接続される、第1のグランド側キャパシタ電極と、
前記第1のグランド側キャパシタ電極と対向配置される、第1のキャパシタ導体および第2のキャパシタ導体と、
一方端が前記第1のグランド側キャパシタ電極に接続される第1の共有インダクタ導体と、
前記第1のキャパシタ導体と、前記第1の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第1のインダクタ導体と、
前記第2のキャパシタ導体と、前記第1の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第2のインダクタ導体と、を備え、
前記第2のフィルタ回路は、
前記グランド導体と、
前記グランド導体に接続される、第2のグランド側キャパシタ電極と、
前記第2のグランド側キャパシタ電極と対向配置される、第3のキャパシタ導体および第4のキャパシタ導体と、
一方端が前記第2のグランド側キャパシタ電極に接続される第2の共有インダクタ導体と、
前記第3のキャパシタ導体と、前記第2の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第3のインダクタ導体と、
前記第4のキャパシタ導体と、前記第2の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第4のインダクタ導体と、を備え、
前記中間回路は、
前記グランド導体と、
前記グランド導体と対向配置される、第5のキャパシタ導体と、
一方端が前記第5のキャパシタ導体に接続される第5のインダクタ導体と、を備え、
前記積層方向と直交する方向において、前記第1のフィルタ回路、前記中間回路、前記第2のフィルタ回路は、この順に並んで配置され、
前記第1のフィルタ回路と前記中間回路、前記第2のフィルタ回路と前記中間回路、のそれぞれは電磁界結合し、
前記中間回路が、
前記グランド導体と対向配置される、第6のキャパシタ導体を更に有し、
前記第5のインダクタ導体の他方端は、前記第6のキャパシタ導体に接続され、前記グランド導体と前記第6のキャパシタ導体との間で形成されるキャパシタを介して前記グランド導体に接続されている、バンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記中間回路が、
第6のインダクタ導体と、前記グランド導体と対向配置される第7のキャパシタ導体とを更に有し、
前記第6のインダクタ導体の一方端は前記第7のキャパシタ導体に接続され、前記第6のインダクタ導体の他方端は前記グランド導体に接続されており、
前記積層方向と直交する方向において、
前記第1のインダクタ導体の少なくとも一部と前記第2のインダクタ導体の少なくとも一部とが、前記第5のインダクタ導体と重なり、
前記第3のインダクタ導体の少なくとも一部と前記第4のインダクタ導体の少なくとも一部とが、前記第6のインダクタ導体と重なり、
前記第5のインダクタ導体の少なくとも一部と前記第6のインダクタ導体の少なくとも一部とが重なる、請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記中間回路が、
前記グランド導体と対向配置される、第6のキャパシタ導体および第8のキャパシタ導体とを更に有し、
前記第5のインダクタ導体の他方端は、前記第6のキャパシタ導体に接続され、前記グランド導体と前記第6のキャパシタ導体との間で形成されるキャパシタを介して前記グランド導体に接続されており、
前記第6のインダクタ導体の他方端は、前記第8のキャパシタ導体に接続され、前記グランド導体と前記第8のキャパシタ導体との間で形成されるキャパシタを介して前記グランド導体に接続されている、請求項4に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項6】
複数の誘電体層が積層され、複数の導体を有する積層体と、
前記積層体に構成された、第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路、および中間回路とを含むバンドパスフィルタにおいて、
前記第1のフィルタ回路は、
グランド電位に接続されるグランド導体と、
第1のグランド側キャパシタ電極と、
前記第1のグランド側キャパシタ電極と対向配置される、第1のキャパシタ導体および第2のキャパシタ導体と、
一方端が前記第1のグランド側キャパシタ電極に接続される第1の共有インダクタ導体と、
前記第1のキャパシタ導体と、前記第1の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第1のインダクタ導体と、
前記第2のキャパシタ導体と、前記第1の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第2のインダクタ導体と、を備え、
前記第2のフィルタ回路は、
前記グランド導体と、
第2のグランド側キャパシタ電極と、
前記第2のグランド側キャパシタ電極と対向配置される、第3のキャパシタ導体および第4のキャパシタ導体と、
一方端が前記第2のグランド側キャパシタ電極に接続される第2の共有インダクタ導体と、
前記第3のキャパシタ導体と、前記第2の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第3のインダクタ導体と、
前記第4のキャパシタ導体と、前記第2の共有インダクタ導体の他方端と、に接続される第4のインダクタ導体と、を備え、
前記中間回路は、
前記グランド導体と、
前記グランド導体と対向配置される、第5のキャパシタ導体と、
一方端が前記第5のキャパシタ導体に接続され、他方端が前記グランド導体に接続される、第5のインダクタ導体と、を備え、
前記積層方向と直交する方向において、前記第1のフィルタ回路、前記中間回路、前記第2のフィルタ回路は、この順に並んで配置され、
前記第1のフィルタ回路と前記中間回路、前記第2のフィルタ回路と前記中間回路、のそれぞれは電磁界結合し、
前記第1のグランド側キャパシタ電極は、前記グランド導体と対向配置され、前記第1のグランド側キャパシタ電極と前記グランド導体との間で形成されるキャパシタを介して前記グランド導体に接続されており、
前記第2のグランド側キャパシタ電極は、前記グランド導体と対向配置され、前記第2のグランド側キャパシタ電極と前記グランド導体との間で形成されるキャパシタを介して前記グランド導体に接続されている、バンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンドパスフィルタに関するものであり、特にインダクタとキャパシタとで構成される複数の共振回路を備えたバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型化および低廉化に適した高周波のバンドパスフィルタは、誘電体層とパターン導体とビア導体とを含む積層体内に、キャパシタとインダクタとを有する共振回路が複数形成されてなる。複数の共振回路を備えたバンドパスフィルタの一例として、国際公開第2007/119356号(特許文献1)に記載されたバンドパスフィルタが挙げられる。
【0003】
図19は、特許文献1に記載のバンドパスフィルタの説明図である。図19(A)は、バンドパスフィルタ200の等価回路図である。図19(B)は、バンドパスフィルタ200のフィルタ特性図である。S21は、減衰量を指標とした通過特性を表す。S11は、減衰量を指標とした反射特性を表す。
【0004】
図19(A)に示されるように、バンドパスフィルタ200は、キャパシタC211、C221、C231、C241とインダクタL211、L221、L231と第1の信号ポートP201と第2の信号ポートP202とを備えている。キャパシタC211とインダクタL211とは、共振回路を構成している。同様に、キャパシタC221とインダクタL221、およびキャパシタC231とインダクタL231とは、それぞれ別の共振回路を構成している。すなわち、バンドパスフィルタ200は、3段の並列共振回路からなっている。
【0005】
バンドパスフィルタ200では、インダクタL211とインダクタL221との間、およびインダクタL221とインダクタL231との間に、それぞれ矢印で示されるような電磁界結合が生じている。その結果、図19(B)に示されるように、バンドパスフィルタ200のS21は、通過帯域より低周波側に約-80dB、高周波側に約-60dBの減衰極を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2007/119356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記のバンドパスフィルタ200では、低周波側の減衰極より低い周波数領域におけるS21の絶対値が、減衰極での値に比較して大きく低下する。また、高周波側の減衰極より高い周波数領域におけるS21の絶対値も、減衰極での値に比較して大きく低下し、かつ周波数の増加に伴い、その低下の度合いが次第に大きくなる。
【0008】
すなわち、この発明の目的は、通過帯域より高周波側および低周波側の周波数領域においても十分な減衰量特性を得ることのできるバンドパスフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るバンドパスフィルタでは、複数の共振回路を互いに電磁界結合させる構造についての改良が図られる。
【0010】
この発明に係るバンドパスフィルタの第1の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第5の共振回路とを備えている。
【0011】
第1のフィルタ回路は、第1の信号ポートと、第1のインダクタと第1のキャパシタとを有する第1の共振回路と、第2のインダクタと第2のキャパシタとを有する第2の共振回路とを含んでいる。第2のフィルタ回路は、第2の信号ポートと、第3のインダクタと第3のキャパシタとを有する第3の共振回路と、第4のインダクタと第4のキャパシタとを有する第4の共振回路とを含んでいる。
【0012】
第5の共振回路は、グランドに接続された第5のキャパシタと、グランドに接続された第6のキャパシタと、第5のキャパシタと第6のキャパシタとの間に接続された第5のインダクタとを有している。そして、第5のインダクタは、第1のインダクタ、第2のインダクタ、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。
【0013】
この発明に係るバンドパスフィルタの第2の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第5の共振回路と、第6の共振回路とを備えている。
【0014】
第1のフィルタ回路は、第1の信号ポートと、第1のインダクタと第1のキャパシタとを有する第1の共振回路と、第2のインダクタと第2のキャパシタとを有する第2の共振回路とを含んでいる。第2のフィルタ回路は、第2の信号ポートと、第3のインダクタと第3のキャパシタとを有する第3の共振回路と、第4のインダクタと第4のキャパシタとを有する第4の共振回路とを含んでいる。
【0015】
第5の共振回路は、グランドに接続された第5のキャパシタと、グランドに接続された第6のキャパシタと、第5のキャパシタと第6のキャパシタとの間に接続された第5のインダクタとを有している。
【0016】
第6の共振回路は、グランドに接続された第7のキャパシタと、グランドに接続された第8のキャパシタと、第7のキャパシタと第8のキャパシタとの間に接続された第6のインダクタとを有している。
【0017】
そして、第5のインダクタは、第1のインダクタおよび第2のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。また、第6のインダクタは、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。さらに、第5のインダクタと第6のインダクタとが電磁界結合する。
【0018】
この発明に係るバンドパスフィルタの第3の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第7の共振回路とを備えている。
【0019】
第1のフィルタ回路は、第1の信号ポートと、第1のインダクタと第1のキャパシタとを有する第1の共振回路と、第2のインダクタと第2のキャパシタとを有する第2の共振回路とを含んでいる。第2のフィルタ回路は、第2の信号ポートと、第3のインダクタと第3のキャパシタとを有する第3の共振回路と、第4のインダクタと第4のキャパシタとを有する第4の共振回路とを含んでいる。
【0020】
第7の共振回路は、グランドに接続された第5のキャパシタと、グランドと第5のキャパシタとの間に接続された第5のインダクタとを有している。そして、第5のインダクタは、第1のインダクタ、第2のインダクタ、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。
【0021】
この発明に係るバンドパスフィルタの第4の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第7の共振回路と、第8の共振回路とを備えている。
【0022】
第1のフィルタ回路は、第1の信号ポートと、第1のインダクタと第1のキャパシタとを有する第1の共振回路と、第2のインダクタと第2のキャパシタとを有する第2の共振回路とを含んでいる。第2のフィルタ回路は、第2の信号ポートと、第3のインダクタと第3のキャパシタとを有する第3の共振回路と、第4のインダクタと第4のキャパシタとを有する第4の共振回路とを含んでいる。
【0023】
第7の共振回路は、グランドに接続された第5のキャパシタと、グランドと第5のキャパシタとの間に接続された第5のインダクタとを有している。第8の共振回路は、グランドに接続された第7のキャパシタと、グランドと第7のキャパシタとの間に接続された第6のインダクタとを有している。
【0024】
そして、第5のインダクタは、第1のインダクタおよび第2のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。第6のインダクタは、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。さらに、第5のインダクタと第6のインダクタとが電磁界結合する。
【0025】
この発明に係るバンドパスフィルタの第5の態様は、複数の誘電体層が積層された積層体と、誘電体層の層間に配置された複数のパターン導体と、誘電体層を貫通して配置された複数のビア導体とを含んでいる。そして、この発明に係るバンドパスフィルタの第5の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第5の共振回路とを備えている。
【0026】
第1のフィルタ回路には、第1の信号電極と、第1のグランド電極と、第1のインダクタと第1のキャパシタとを有する第1の共振回路と、第2のインダクタと第2のキャパシタとを有する第2の共振回路とが含まれる。第1の信号電極と、第1のグランド電極と、第1の共振回路と、第2の共振回路とは、上記のパターン導体またはパターン導体およびビア導体により形成されている。
【0027】
第2のフィルタ回路には、第2の信号電極と、第2のグランド電極と、第3のインダクタと第3のキャパシタとを有する第3の共振回路と、第4のインダクタと第4のキャパシタとを有する第4の共振回路とが含まれる。第2の信号電極と、第2のグランド電極と、第3の共振回路と、第4の共振回路とは、上記のパターン導体またはパターン導体およびビア導体により形成されている。
【0028】
第5の共振回路は、第3のグランド電極と、第5のキャパシタと、第6のキャパシタと、第5のインダクタとを有している。第5のキャパシタおよび第6のキャパシタは、第3のグランド電極に接続されている。第5のインダクタは、第5のキャパシタと第6のキャパシタとの間に接続されている。第5の共振回路は、上記のパターン導体またはパターン導体およびビア導体により形成されている。
【0029】
第5の共振回路は、第1のフィルタ回路と第2のフィルタ回路との間に、以下のようにして並列配置されている。すなわち、第5のインダクタが配置されている仮想的な面を第1の平面とする。そして、第1のインダクタと第2のインダクタとが第1の平面上に投影されたときに、第1のインダクタの少なくとも一部と第2のインダクタの少なくとも一部とが第5のインダクタと重なる。
【0030】
また、第3のインダクタと第4のインダクタとが第1の平面上に投影されたときに、第3のインダクタの少なくとも一部と第4のインダクタの少なくとも一部とが第5のインダクタと重なる。
【0031】
この発明に係るバンドパスフィルタの第6の態様は、複数の誘電体層が積層された積層体と、誘電体層の層間に配置された複数のパターン導体と、誘電体層を貫通して配置された複数のビア導体とを含んでいる。そして、この発明に係るバンドパスフィルタの第6の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第5の共振回路と、第6の共振回路とを備えている。
【0032】
第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路、および第5の共振回路は、それぞれこの発明に係るバンドパスフィルタの第5の態様における第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路、および第5の共振回路と同様である。
【0033】
第6の共振回路は、第4のグランド電極と、第7のキャパシタと、第8のキャパシタと、第6のインダクタとを有している。第7のキャパシタおよび第8のキャパシタは、第4のグランド電極に接続されている。第6のインダクタは、第7のキャパシタと第8のキャパシタとの間に接続されている。第6の共振回路は、上記のパターン導体またはパターン導体およびビア導体により形成されている。
【0034】
第5の共振回路および第6の共振回路は、第1のフィルタ回路と第2のフィルタ回路との間に、以下のようにして並列配置されている。すなわち、第5のインダクタが配置されている仮想的な面を第1の平面とする。そして、第1のインダクタと第2のインダクタとが第1の平面上に投影されたときに、第1のインダクタの少なくとも一部と第2のインダクタの少なくとも一部とが第5のインダクタと重なる。
【0035】
また、第6のインダクタが配置されている仮想的な面を第2の平面とする。そして、第3のインダクタと第4のインダクタとが第2の平面上に投影されたときに、第3のインダクタの少なくとも一部と第4のインダクタの少なくとも一部とが第6のインダクタと重なる。
【0036】
さらに、第6のインダクタが上記の第1の平面上に投影されたときに、第6のインダクタの少なくとも一部が第5のインダクタと重なる。
【0037】
この発明に係るバンドパスフィルタの第7の態様は、複数の誘電体層が積層された積層体と、誘電体層の層間に配置された複数のパターン導体と、誘電体層を貫通して配置された複数のビア導体とを含んでいる。そして、この発明に係るバンドパスフィルタの第6の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第7の共振回路とを備えている。
【0038】
第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路は、それぞれこの発明に係るバンドパスフィルタの第5の態様における第1のフィルタ回路および第2のフィルタ回路と同様である。
【0039】
第7の共振回路は、第3のグランド電極と、第5のキャパシタと、第5のインダクタとを有している。第5のキャパシタは、第3のグランド電極に接続されている。第5のインダクタは、第3のグランド電極と第5のキャパシタとの間に接続されている。第7の共振回路は、上記のパターン導体またはパターン導体およびビア導体により形成されている。
【0040】
そして、第5のインダクタは、第1のインダクタ、第2のインダクタ、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合するように配置されている。
【0041】
この発明に係るバンドパスフィルタの第8の態様は、複数の誘電体層が積層された積層体と、誘電体層の層間に配置された複数のパターン導体と、誘電体層を貫通して配置された複数のビア導体とを含んでいる。そして、この発明に係るバンドパスフィルタの第8の態様は、第1のフィルタ回路と、第2のフィルタ回路と、第7の共振回路と、第8の共振回路とを備えている。
【0042】
第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路および第7の共振回路は、それぞれこの発明に係るバンドパスフィルタの第7の態様における第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路および第7の共振回路と同様である。
【0043】
第8の共振回路は、第4のグランド電極と、第7のキャパシタと、第6のインダクタとを有している。第7のキャパシタは、第4のグランド電極に接続されている。第6のインダクタは、第4のグランド電極と第7のキャパシタとの間に接続されている。第8の共振回路は、上記のパターン導体またはパターン導体およびビア導体により形成されている。
【0044】
そして、第5のインダクタは、第1のインダクタおよび第2のインダクタのそれぞれと電磁界結合するように配置されている。第6のインダクタは、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合するように配置されている。さらに、第5のインダクタと第6のインダクタとが電磁界結合するように配置されている。
【0045】
この発明に係るバンドパスフィルタの第9の態様は、複数の誘電体層と複数の導体層との積層体に構成された、第1のフィルタ回路、第2のフィルタ回路、中間回路を含む。中間回路は、導体層のいずれかに形成される接地導体と導体層のいずれかに形成され、誘電体層を介して接地導体と対向配置される、第1のキャパシタ導体および第2のキャパシタ導体と、導体層のいずれかに形成される第1の線路導体と、積層体の積層方向に形成される第1のビア導体、第2のビア導体と、を備える。第1のキャパシタ導体と第1の線路導体は、第1のビア導体を介して接続される。第2のキャパシタ導体と第1の線路導体は、第2のビア導体を介して接続される。また、積層方向と直交する方向において、第1のフィルタ回路、中間回路、第2のフィルタ回路は、この順に並んで配置される。第1のフィルタ回路と中間回路、第2のフィルタ回路と中間回路のそれぞれは電磁界結合される。
【0046】
ここで、「第1のフィルタ回路と中間回路が電磁界結合される」とは、第1のフィルタ回路を構成するインダクタと中間回路を構成するインダクタが電磁界結合することを指す。同様に、「第2のフィルタ回路と中間回路が電磁界結合される」とは、第2のフィルタ回路を構成するインダクタと中間回路を構成するインダクタが電磁界結合することを指す。
【発明の効果】
【0047】
この発明に係るバンドパスフィルタは、通過帯域より高周波側および低周波側の周波数領域においても十分な減衰量特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】この発明に係るバンドパスフィルタの第1の実施形態であるバンドパスフィルタ100の等価回路図である。
図2】バンドパスフィルタ100の分解斜視図である。
図3】バンドパスフィルタ100のフィルタ特性図である。
図4】この発明に係るバンドパスフィルタの第2の実施形態であるバンドパスフィルタ100Aの等価回路図である。
図5】バンドパスフィルタ100Aの分解斜視図である。
図6】この発明に係るバンドパスフィルタの第3の実施形態であるバンドパスフィルタ100Bの等価回路図である。
図7】バンドパスフィルタ100Bの分解斜視図である。
図8】バンドパスフィルタ100Bのフィルタ特性図である。
図9】この発明に係るバンドパスフィルタの第4の実施形態であるバンドパスフィルタ100Cの等価回路図である。
図10】バンドパスフィルタ100Cの分解斜視図である。
図11】この発明に係るバンドパスフィルタの第5の実施形態であるバンドパスフィルタ100Dの等価回路図である。
図12】バンドパスフィルタ100Dの分解斜視図である。
図13】バンドパスフィルタ100Dのフィルタ特性図である。
図14】この発明に係るバンドパスフィルタの第6の実施形態であるバンドパスフィルタ100Eの等価回路図である。
図15】この発明に係るバンドパスフィルタの第7の実施形態であるバンドパスフィルタ100Fの等価回路図である。
図16】この発明に係るバンドパスフィルタの第8の実施形態であるバンドパスフィルタ100Gの等価回路図である。
図17】参考例のバンドパスフィルタ100Hないし100Kの等価回路図である。
図18】バンドパスフィルタ100Hの分解斜視図である。
図19】背景技術のバンドパスフィルタ200の等価回路図およびフィルタ特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下にこの発明の実施形態を示して、この発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。この発明が適用されるバンドパスフィルタとしては、例えば低温焼成セラミックと、パターン導体およびビア導体とを同時焼成して得られる積層セラミックフィルタが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0050】
-バンドパスフィルタの第1の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第1の実施形態であるバンドパスフィルタ100について、図1ないし図3を用いて説明する。
【0051】
なお、後述する分解斜視図は、模式図である。例えば誘電体層およびパターン導体の厚み、ならびにビア導体の太さなどは、模式的なものである。また、製造工程上で発生する各構成要素の形状のばらつきなどは、各図面に必ずしも反映されていない。
【0052】
図1は、バンドパスフィルタ100の等価回路図である。バンドパスフィルタ100は、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5とを備えている。
【0053】
第1のフィルタ回路FC1は、第1の信号ポートP1と、第1の共振回路RC1と、第2の共振回路RC2とを含んでいる。第1の共振回路RC1は、第1のインダクタL11と、第1のキャパシタC11と、第2の共振回路RC2と共有される第7のインダクタL13とを有している。第2の共振回路RC2は、第2のインダクタL12と、第2のキャパシタC12と、第1の共振回路RC1と共有される第7のインダクタL13とを有している。なお、第7のインダクタL13は、この発明における必須の構成要素ではない。
【0054】
第1の共振回路RC1において、第1のインダクタL11および第7のインダクタL13は、第1の信号ポートP1とグランドとの間に直列に接続されている。第1のキャパシタC11は、第1の信号ポートP1とグランドとの間に、第1のインダクタL11および第7のインダクタL13と並列に接続されている。
【0055】
第2の共振回路RC2において、第2のインダクタL12および第2のキャパシタC12は、上記の第1のインダクタL11とグランドとの間に直列に接続されている。第7のインダクタL13は、上記の第1のインダクタL11とグランドとの間に、第2のインダクタL12および第2のキャパシタC12と並列に接続されている。
【0056】
第2のフィルタ回路FC2は、第2の信号ポートP2と、第3の共振回路RC3と、第4の共振回路RC4とを含んでいる。第3の共振回路RC3は、第3のインダクタL21と、第3のキャパシタC21と、第4の共振回路RC4と共有される第8のインダクタL23とを有している。第4の共振回路RC4は、第4のインダクタL22と、第4のキャパシタC22と、第3の共振回路RC3と共有される第8のインダクタL23とを有している。なお、第8のインダクタL23は、この発明における必須の構成要素ではない。
【0057】
第3の共振回路RC3において、第3のインダクタL21および第8のインダクタL23は、第2の信号ポートP2とグランドとの間に直列に接続されている。第3のキャパシタC21は、第2の信号ポートP2とグランドとの間に、第3のインダクタL21および第8のインダクタL23と並列に接続されている。
【0058】
第4の共振回路RC4において、第4のインダクタL22および第4のキャパシタC22は、上記の第3のインダクタL21とグランドとの間に直列に接続されている。第8のインダクタL23は、上記の第3のインダクタL21とグランドとの間に、第4のインダクタL22および第4のキャパシタC22と並列に接続されている。
【0059】
第5の共振回路RC5は、第5のキャパシタC31と、第6のキャパシタC32と、第5のインダクタL31とを有している。第5のキャパシタC31および第6のキャパシタC32は、それぞれグランドに接続されている。第5のインダクタL31は、第5のキャパシタC31と第6のキャパシタC32との間に接続されている。
【0060】
そして、第5のインダクタL31は、第1のインダクタL11、第2のインダクタL12、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれと電磁界結合する。
【0061】
図2は、バンドパスフィルタ100の分解斜視図である。バンドパスフィルタ100は、誘電体層DL1ないしDL13が積層されてなる積層体と、誘電体層の層間に配置された、後述する複数のパターン導体と、誘電体層を貫通して配置された、後述する複数のビア導体とを含んでいる。これらの誘電体層、パターン導体およびビア導体により、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5とが形成されている。なお、図2では、誘電体層DL1上に方向目印P11が配置されているが、これは必須ではない。
【0062】
第1のフィルタ回路FC1は、パターン導体P21、P61、P101、P102、P111、P113と、ビア導体とから構成されている。矩形状のパターン導体P21は、誘電体層DL2上に形成されている。屈曲した板状のパターン導体P61は、誘電体層DL6上に形成されている。矩形状のパターン導体P101、P102は、誘電体層DL10上に形成されている。矩形状のパターン導体P111と、角ばったC字状のパターン導体P113とは、誘電体層DL11上に形成されている。複数のビア導体は、誘電体層DL2ないしDL11にそれぞれ形成されている。
【0063】
第1のフィルタ回路FC1は、第1の信号電極(後述する第1の端子電極P131)と、後述する第1のグランド側キャパシタ電極と、第1の共振回路RC1および第2の共振回路RC2とを含んでいる。
【0064】
パターン導体P21は、ビア導体v1を介してパターン導体P61及びP101と接続されている。パターン導体P21は、ビア導体v2を介してパターン導体P113と接続されている。パターン導体P21は、ビア導体v3を介してパターン導体P102と接続されている。パターン導体P61はビア導体v4を介してパターン導体P111及びP131と接続されている。
【0065】
パターン導体P111は、ビア導体v4を介して第1の端子電極P131に接続されている。パターン導体P21の一部(ビア導体v1との接続箇所からビア導体v2との接続箇所までの部分)と、ビア導体v1とにより、第1のインダクタL11が構成される。パターン導体P21とパターン導体P113とを接続するビア導体v2により、第7のインダクタL13が構成される。上述したように、第7のインダクタL13は、この発明における必須の構成要素ではない。すなわち、第7のインダクタL13は、第1のインダクタL11と後述する第2のインダクタL12との誘導結合でも実現可能である。
【0066】
パターン導体P101とパターン導体P113とにより、第1のキャパシタC11が構成される。パターン導体P113は、第1のキャパシタC11と後述する第2のキャパシタC12とに共通するグランド側のキャパシタ電極(これを「第1のグランド側キャパシタ電極」と呼ぶ。)である。第1の端子電極P131は図1における第1の信号ポートP1に対応する。パターン導体P61は、図1に図示はないが、第1の信号ポートP1に接続されるパターン導体である。
【0067】
このように、第1の共振回路RC1は、第1のインダクタL11と第7のインダクタL13と第1のキャパシタC11とにより構成されている。
【0068】
パターン導体P21の一部(ビア導体v2との接続箇所からビア導体v3との接続箇所までの部分)と、ビア導体v3とにより、第2のインダクタL12が構成される。パターン導体P102とパターン導体P113とにより、第2のキャパシタC12が構成される。
【0069】
上述のように、第1のキャパシタC11と第2のキャパシタC12とは、パターン導体P113を共用している。パターン導体P113は、後述するグランド電極であるパターン導体P121に、誘電体層DL11から誘電体層DL12に形成されたビア導体v5及びv6を介して接続されている。
【0070】
このように、第2の共振回路RC2は、第2のインダクタL12と第7のインダクタL13と第2のキャパシタC12とにより構成されている。
【0071】
第2のフィルタ回路FC2は、パターン導体P22、P62、P103、P104、P112、P114と、ビア導体とから構成されている。矩形状のパターン導体P22は、誘電体層DL2上に形成されている。屈曲した板状のパターン導体P62は、誘電体層DL6上に形成されている。矩形状のパターン導体P103、P104は、誘電体層DL10上に形成されている。矩形状のパターン導体P112と、角ばったC字状のパターン導体P114は、誘電体層DL11上に形成されている。複数のビア導体は、誘電体層DL2ないしDL11にそれぞれ形成されている。
【0072】
第2のフィルタ回路FC2は、第2の信号電極(後述する第2の端子電極P132)と、後述する第2のグランド側キャパシタ電極と、前述した第3の共振回路RC3および第4の共振回路RC4とを含んでいる。
【0073】
パターン導体P22は、ビア導体v9を介してパターン導体P62及びP103と接続されている。パターン導体P22は、ビア導体v10を介してパターン導体P114と接続されている。パターン導体P22は、ビア導体v11を介してパターン導体P104と接続されている。パターン導体P62はビア導体v12を介してパターン導体P112及びP132と接続されている。
【0074】
パターン導体P112は、ビア導体v12を介して第2の端子電極P132に接続されている。パターン導体P22の一部(ビア導体v9との接続箇所からビア導体v10との接続箇所までの部分)と、ビア導体v9とにより、第3のインダクタL21が構成される。パターン導体P22とパターン導体P114とを接続するビア導体v10により、第7のインダクタL13が構成される。上述したように、第8のインダクタL23は、この発明における必須の構成要素ではない。すなわち、第8のインダクタL23は、第3のインダクタL21と後述する第4のインダクタL22との誘導結合でも実現可能である。
【0075】
パターン導体P103とパターン導体P114とにより、第3のキャパシタC21が構成される。パターン導体P114は、第3のキャパシタC21と後述する第4のキャパシタC22とに共通するグランド側のキャパシタ電極(これを「第2のグランド側キャパシタ電極」と呼ぶ。)である。第2の端子電極P132は図1における第2の信号ポートP2に対応する。パターン導体P62は、図1に図示はないが、第2の信号ポートP2に接続されるパターン導体である。
【0076】
このように、第3の共振回路RC3は、第3のインダクタL21と第8のインダクタL23と第3のキャパシタC21とにより構成されている。
【0077】
パターン導体P22の一部(ビア導体v10との接続箇所からビア導体v11との接続箇所までの部分)と、ビア導体v11とにより、第4のインダクタL22が構成される。パターン導体P104とパターン導体P114とにより、第4のキャパシタC22が構成される。
【0078】
上述のように、第3のキャパシタC21と第4のキャパシタC22とは、パターン導体P114を共用している。パターン導体P114は、後述するグランド電極であるパターン導体P121に、誘電体層DL11ないし誘電体層DL12に形成されたビア導体v13及びv14を介して接続されている。
【0079】
このように、第4の共振回路RC4は、第4のインダクタL22と第8のインダクタL23と第4のキャパシタC22とにより構成されている。
【0080】
第5の共振回路RC5は、グランド電極と、第5のキャパシタC31と、第6のキャパシタC32と、第5のキャパシタC31と第6のキャパシタC32との間に接続された第5のインダクタL31とにより構成されている。グランド電極は、パターン導体P121である。パターン導体P121は、誘電体層DL12からDL13に形成されたビア導体v15を介して、第3の端子電極P133と接続されている。パターン導体P121は、誘電体層DL12からDL13に形成されたビア導体v16を介して、第4の端子電極P134と接続されている。パターン導体P121は、誘電体層DL12からDL13に形成されたビア導体v17を介して、第5の端子電極P135と接続されている。パターン導体P121は、誘電体層DL12からDL13に形成されたビア導体v18を介して、第6の端子電極P136と接続されている。
【0081】
第5のキャパシタC31は、パターン導体P115、P121により構成されている。第6のキャパシタC32は、パターン導体P116、P121により構成されている。すなわち、第5のキャパシタC31および第6のキャパシタC32とは、パターン導体P121を共用している。第5のインダクタL31は、パターン導体P23と、その両端部に接続された誘電体層DL2ないしDL11に形成されたビア導体v7及びv8とにより構成されている。
【0082】
第5の共振回路RC5は、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2との間に、以下のようにして並列配置されている。すなわち、第5のインダクタL31を構成しているパターン導体P23とその両端部に接続された各ビア導体が配置されている仮想的な面を第1の平面とする。すなわち、第1の平面は、製造上の誤差を含んだ上での、各ビア導体の中心軸およびパターン導体P23の長手方向に沿った中央断面を含む平面を指す。
【0083】
そして、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12とが第1の平面上に投影されたときに、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12とは、第5のインダクタL31と重なっている。また、第3のインダクタL21と第4のインダクタL22とが第1の平面上に投影されたときに、第3のインダクタL21と第4のインダクタL22とは、第5のインダクタL31と重なっている。
【0084】
上記の配置により、第5のインダクタL31は、第1のインダクタL11、第2のインダクタL12、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれと、図1の矢印のように電磁界結合する。
【0085】
図2に示されたバンドパスフィルタ100では、第1のインダクタL11の全体および第2のインダクタL12の全体が、それぞれ第5のインダクタL31と重なっている。また、第3のインダクタL21の全体および第4のインダクタL22の全体が、それぞれ第5のインダクタL31と重なっている。ただし、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12と第3のインダクタL21と第4のインダクタL22とは、それぞれの少なくとも一部が第5のインダクタL31と重なっていればよい。
【0086】
例えば、パターン導体P23がパターン導体P21およびパターン導体P22より長くなるように、あるいは短くなるように形成されていてもよい。また、第5のインダクタL31と、第1のインダクタL11、第2のインダクタL12、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれとの電磁界結合を調整するため、パターン導体P23が形成されている誘電体層は、パターン導体P21およびパターン導体P22が形成されている誘電体層と異なってもよい。例えば、パターン導体P23を誘電体層DL3に形成することにより、コイル間の部分的な結合状態が実現されるため、コイル間の電磁界結合を弱めることができる。パターン導体P23を誘電体層DL3に形成することにより、パターン導体P21~P23の物理寸法を大きくすることなく、所望の電磁界結合を実現することができる。
【0087】
図3に、各キャパシタのキャパシタンスおよび各インダクタのインダクタンスを所定の値としたときの、バンドパスフィルタ100のフィルタ特性を示す。フィルタ特性のS21に着目すると、通過帯域より低周波側に約-83dB、高周波側に約-44dBの減衰極を有している。
【0088】
そして、バンドパスフィルタ100では、低周波側減衰極より低周波側において-53dBを越える減衰量が確保されている。また、高周波側減衰極より高周波側において-38dBを越える減衰量が確保されている。特に、高周波側減衰極より高周波側のS21には、周波数の増加に伴い、絶対値が次第に低下する傾向(図19(B)参照)が見られない。
【0089】
したがって、バンドパスフィルタ100では、上記の構造により効果的に電磁界結合が生じた結果、通過帯域より高周波側および低周波側の周波数領域においても十分な減衰量特性を得ることができる。
【0090】
なお、バンドパスフィルタ100を構成する各キャパシタンスの値は、それらを構成する導体パターンの面積と、誘電体材料の比誘電率とにより設定することができる。また、各インダクタンスの値は、それらを構成するビア導体の接続個数により設定することができる。すなわち、バンドパスフィルタ100における誘電体層DL3ないしDL4および誘電体層DL7ないしDL9のようなビア導体のみが形成されている誘電体層の層数を調整することで、各インダクタンスの値を変更することができる。後述する各実施形態においても、各キャパシタンスの値および各インダクタンスの値が調整される。
【0091】
-バンドパスフィルタの第2の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第2の実施形態であるバンドパスフィルタ100Aについて、図4および図5を用いて説明する。
【0092】
図4は、バンドパスフィルタ100Aの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Aは、バンドパスフィルタ100と同様に、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5とを備えている。
【0093】
バンドパスフィルタ100Aでは、第1のフィルタ回路FC1は、第9のキャパシタC13をさらに備えている。第9のキャパシタC13は、第1のキャパシタC11と、第2のキャパシタC12と、第7のインダクタL13との接続点と、グランドとの間に接続されている。また、第2のフィルタ回路FC2は、第10のキャパシタC23をさらに備えている。第10のキャパシタC23は、第3のキャパシタC21と、第4のキャパシタC22と、第8のインダクタL23との接続点と、グランドとの間に接続されている。
【0094】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100と同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0095】
図5は、バンドパスフィルタ100Aの分解斜視図である。バンドパスフィルタ100Aは、バンドパスフィルタ100と同様に、誘電体層DL1ないしDL13が積層されてなる積層体と、複数のパターン導体と、複数のビア導体とを含んでいる。これらの誘電体層、パターン導体およびビア導体により、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5とが形成されている。
【0096】
前述したように、バンドパスフィルタ100Aでは、第1のフィルタ回路FC1は、第9のキャパシタC13をさらに備えている。第9のキャパシタC13は、パターン導体P113、P121により構成されている。すなわち、バンドパスフィルタ100Aでは、パターン導体P113とパターン導体P121とはビア導体より接続されていない。上述のように、パターン導体P121がグランド電極である。そして、第1のキャパシタC11と第2のキャパシタC12と第9のキャパシタC13とは、パターン導体P113を共有している。
【0097】
また、バンドパスフィルタ100Aでは、第2のフィルタ回路FC2は、第10のキャパシタC23をさらに備えている。第10のキャパシタC23は、パターン導体P114、P121により構成されている。すなわち、バンドパスフィルタ100Aでは、パターン導体P114とパターン導体P121とはビア導体により接続されていない。上述のように、パターン導体P121がグランド電極である。そして、第3のキャパシタC21と第4のキャパシタC22と第10のキャパシタC23とは、パターン導体P114を共有している。
【0098】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100と同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0099】
バンドパスフィルタ100Aでは、上記の構造により、第1のフィルタ回路FC1および第2のフィルタ回路FC2との間のアイソレーションを効果的に得ることができる。その結果、前述の効果に加え、特に通過帯域より高周波側の減衰特性をさらに高めることができる。
【0100】
-バンドパスフィルタの第3の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第3の実施形態であるバンドパスフィルタ100Bについて、図6ないし図8を用いて説明する。
【0101】
図6は、バンドパスフィルタ100Bの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Bは、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5と、第6の共振回路RC6とを備えている。バンドパスフィルタ100Bにおける、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2と第5の共振回路RC5とは、バンドパスフィルタ100のそれらと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0102】
第6の共振回路RC6は、第7のキャパシタC41と、第8のキャパシタC42と、第6のインダクタL41とを有している。第7のキャパシタC41および第8のキャパシタC42は、それぞれグランドに接続されている。第6のインダクタL41は、第7のキャパシタC41と第8のキャパシタC42との間に接続されている。
【0103】
そして、第5のインダクタL31は、第1のインダクタL11および第2のインダクタL12のそれぞれと電磁界結合する。また、第6のインダクタL41は、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれと電磁界結合する。さらに、第5のインダクタL31と第6のインダクタL41とが電磁界結合する。
【0104】
なお、第5の共振回路RC5と第6の共振回路RC6との間に、さらに別のキャパシタと別のインダクタとを有する別の共振回路が備えられていてもよい。この場合、第5のインダクタL31は、上記のインダクタと電磁界結合し、上記のインダクタは、第6のインダクタL41と電磁界結合する。その結果、第5のインダクタL31と第6のインダクタL41とは、間接的に電磁界結合することになる。第5の共振回路RC5と第6の共振回路RC6との間に備えられる別の共振回路の数は、特に限定されない。
【0105】
図7は、バンドパスフィルタ100Bの分解斜視図である。バンドパスフィルタ100Bは、バンドパスフィルタ100、100Aと同様に、誘電体層DL1ないしDL13が積層されてなる積層体と、複数のパターン導体と、複数のビア導体とを含んでいる。これらの誘電体層、パターン導体およびビア導体により、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5と、第6の共振回路RC6とが形成されている。なお、図7でも、誘電体層DL1上に方向目印P11が配置されているが、これは必須ではない。
【0106】
バンドパスフィルタ100Bにおける第1のフィルタ回路FC1では、誘電体層DL6に形成されているパターン導体P61の配置が、バンドパスフィルタ100のものと異なっている。また、誘電体層DL10上に形成されているパターン導体P101、P102の形状が、バンドパスフィルタ100のものと異なっている。しかしながら、それらはこの発明において本質的な違いではなく、かつそれら以外はバンドパスフィルタ100の第1のフィルタ回路FC1の構成要素と同様である。そのため、ここでは第1のフィルタ回路FC1についてのさらなる説明を省略する。
【0107】
また、バンドパスフィルタ100Bにおける第2のフィルタ回路FC2では、誘電体層DL10上に形成されているパターン導体P103、P104の形状が、バンドパスフィルタ100のものと異なっている。しかしながら、それらはこの発明において本質的な違いではなく、かつそれら以外はバンドパスフィルタ100の第2のフィルタ回路FC2の構成要素と同様である。そのため、ここでは第2のフィルタ回路FC2についてのさらなる説明を省略する。
【0108】
第5の共振回路RC5は、第3のグランド側キャパシタ電極と、第5のキャパシタC31と、第6のキャパシタC32と、第5のキャパシタC31と第6のキャパシタC32との間に接続された第5のインダクタL31とにより構成されている。第3のグランド側キャパシタ電極は、誘電体層DL11上に形成されたパターン導体P215である。
【0109】
第1のグランド側キャパシタ電極であるパターン導体P113は、誘電体層DL11からDL12に形成されたビア導体v5及びv6を介して、パターン導体P121に接続されている。第2のグランド側キャパシタ電極であるパターン導体P114は、誘電体層DL11からDL12に形成されたビア導体v13及びv14を介して、パターン導体P121に接続されている。上記のパターン導体P215は、誘電体層DL11からDL12に形成されたビア導体v21及びv22を介して、パターン導体P121に接続されている。すなわち、パターン導体P121は、共通のグランド電極となっている。パターン導体P121は、前述したように第3の端子電極P133、第4の端子電極P134、第5の端子電極P135および第6の端子電極P136のそれぞれと接続されている。
【0110】
第5のキャパシタC31は、パターン導体P105、P215により構成されている。第6のキャパシタC32は、パターン導体P106、P215により構成されている。すなわち、第5のキャパシタC31および第6のキャパシタC32は、第3のグランド側キャパシタ電極であるパターン導体P215を共用している。第5のインダクタL31は、パターン導体P23と、その両端部に接続された誘電体層DL2ないしDL10に形成されたビア導体v7及びv8により構成されている。
【0111】
第6の共振回路RC6は、第3のグランド側キャパシタ電極と、第7のキャパシタC41と、第8のキャパシタC42と、第7のキャパシタC41と第8のキャパシタC42との間に接続された第6のインダクタL41とにより構成されている。第3のグランド側キャパシタ電極は、前述の通り、誘電体層DL11上に形成されたパターン導体P215である。パターン導体P215と他の構成要素との接続については、前述の通りである。
【0112】
第7のキャパシタC41は、パターン導体P107、P215により構成されている。第8のキャパシタC42は、パターン導体P108、P215により構成されている。すなわち、第7のキャパシタC41および第8のキャパシタC42は、第3のグランド側キャパシタ電極であるパターン導体P215を共用している。第6のインダクタL41は、パターン導体P24と、その両端部に接続された誘電体層DL2ないしDL10に形成されたビア導体v19及びv20により構成されている。
【0113】
第5の共振回路RC5および第6の共振回路RC6は、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2との間に、以下のようにして並列配置されている。すなわち、前述のバンドパスフィルタ100と同様の第1の平面が規定される。そして、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12とが第1の平面上に投影されたときに、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12とは、第5のインダクタL31と重なっている。
【0114】
また、第6のインダクタL41が配置されている仮想的な面を第2の平面とする。すなわち、第2の平面は、製造上の誤差を含んだ上での、各ビア導体の中心軸およびパターン導体P23の長手方向に沿った中央断面を含む平面を指す。
【0115】
そして、第3のインダクタL21と第4のインダクタL22とが第2の平面上に投影されたときに、第3のインダクタL21と第4のインダクタL22とが第6のインダクタL41と重なっている。さらに、第6のインダクタL41が上記の第1の平面上に投影されたときに、第6のインダクタL41が第5のインダクタL31と重なっている。
【0116】
上記の配置により、第1のインダクタL11および第2のインダクタL12のそれぞれと、第5のインダクタL31とが、図7の矢印のように電磁界結合する。また、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれと、第6のインダクタL41とが、同様に電磁界結合する。さらに、第5のインダクタL31と第6のインダクタL41とが、同様に電磁界結合する。
【0117】
図7に示されたバンドパスフィルタ100Bでは、第1のインダクタL11の全体および第2のインダクタL12の全体が、それぞれ第5のインダクタL31と重なっている。また、第3のインダクタL21の全体および第4のインダクタL22の全体が、それぞれ第6のインダクタL41と重なっている。さらに、第5のインダクタL31の全体が、第6のインダクタL41の全体と重なっている。
【0118】
ただし、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12とは、それぞれの少なくとも一部が第5のインダクタL31と重なっていればよい。また、第3のインダクタL21と第4のインダクタL22とは、それぞれの少なくとも一部が第6のインダクタL41と重なっていればよい。さらに、第6のインダクタL41の少なくとも一部が、第5のインダクタL31と重なっていればよい。
【0119】
例えば、パターン導体P23がパターン導体P21より長くなるように、あるいは短くなるように形成されていてもよい。また、パターン導体P24がパターン導体P22より長くなるように、あるいは短くなるように形成されていてもよい。
【0120】
図8に、各キャパシタのキャパシタンスおよび各インダクタのインダクタンスを所定の値としたときの、バンドパスフィルタ100Bのフィルタ特性を示す。フィルタ特性のS21に着目すると、通過帯域より低周波側に約-78dB、高周波側に約-45dBの減衰極を有している。
【0121】
そして、バンドパスフィルタ100Bでは、低周波側減衰極より低周波側において-62dBを越える減衰量が確保されている。また、高周波側減衰極より高周波側において-42dBを越える減衰量が確保されている。特に、高周波側減衰極より高周波側のS21には、周波数の増加に伴い、絶対値が次第に低下する傾向(図19(B)参照)が見られない。
【0122】
加えて、バンドパスフィルタ100Bでは、バンドパスフィルタ100に比べて、通過帯域の幅が約1.5倍に広くなっている。また、低周波側減衰極より低周波側における減衰量の絶対値の低下の度合いが小さくなっている。そして、通過帯域から高周波側減衰極にかけての減衰がさらに急峻となっている(図3参照)。
【0123】
これは、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2との間に並列配置された共振回路の数を2つに増やしたことにより、電磁界結合のバランスが向上したためと考えられる。
【0124】
したがって、バンドパスフィルタ100Bでは、上記の構造によりさらに効果的に電磁界結合が生じた結果、通過帯域より高周波側および低周波側の減衰特性をさらに高めることができる。
【0125】
-バンドパスフィルタの第4の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第4の実施形態であるバンドパスフィルタ100Cについて、図9および図10を用いて説明する。
【0126】
図9は、バンドパスフィルタ100Cの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Cは、バンドパスフィルタ100Bと同様に、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5と、第6の共振回路RC6とを備えている。
【0127】
バンドパスフィルタ100Cでは、第1のフィルタ回路FC1は、第9のキャパシタC13をさらに備えている。第9のキャパシタC13は、バンドパスフィルタ100Aの第1のフィルタ回路FC1が備えるものと同様である。また、第2のフィルタ回路FC2は、第10のキャパシタC23をさらに備えている。第10のキャパシタC23は、バンドパスフィルタ100Aの第2のフィルタ回路FC2が備えるものと同様である。
【0128】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100Bと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0129】
図10は、バンドパスフィルタ100Cの分解斜視図である。バンドパスフィルタ100Cは、バンドパスフィルタ100Bと同様に、誘電体層DL1ないしDL13が積層されてなる積層体と、複数のパターン導体と、複数のビア導体とを含んでいる。これらの誘電体層、パターン導体およびビア導体により、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第5の共振回路RC5と、第6の共振回路RC6とが形成されている。
【0130】
前述したように、バンドパスフィルタ100Cでは、第1のフィルタ回路FC1は、第9のキャパシタC13をさらに備えている。また、第2のフィルタ回路FC2は、第10のキャパシタC23をさらに備えている。第9のキャパシタC13および第10のキャパシタC23は、バンドパスフィルタ100Aと同様にして構成されている。
【0131】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100Bと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0132】
バンドパスフィルタ100Cでは、上記の構造により、第1のフィルタ回路FC1および第2のフィルタ回路FC2との間のアイソレーションを効果的に得ることができる。その結果、前述の効果に加え、特に通過帯域より高周波側の減衰特性をさらに高めることができる。
【0133】
-バンドパスフィルタの第5の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第4の実施形態であるバンドパスフィルタ100Dについて、図11ないし図13を用いて説明する。
【0134】
図11は、バンドパスフィルタ100Dの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Dは、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第7の共振回路RC7とを備えている。バンドパスフィルタ100Dにおける、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2とは、バンドパスフィルタ100のそれらと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0135】
第7の共振回路RC7は、第5のキャパシタC31と、第5のインダクタL31とを有している。第5のキャパシタC31は、グランドに接続されている。第5のインダクタL31は、グランドと第5のキャパシタC31との間に接続されている。
【0136】
そして、第5のインダクタは、第1のインダクタ、第2のインダクタ、第3のインダクタおよび第4のインダクタのそれぞれと電磁界結合する。
【0137】
図12は、バンドパスフィルタ100Dの分解斜視図である。バンドパスフィルタ100Dは、バンドパスフィルタ100と同様に、誘電体層DL1ないしDL13が積層されてなる積層体と、複数のパターン導体と、複数のビア導体とを含んでいる。これらの誘電体層、パターン導体およびビア導体により、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第7の共振回路RC7とが形成されている。なお、図12でも、誘電体層DL1上に方向目印P11が配置されているが、これは必須ではない。
【0138】
バンドパスフィルタ100Dにおける第1のフィルタ回路FC1では、誘電体層DL6に形成されているパターン導体P61の配置が、バンドパスフィルタ100のものと異なっている。しかしながら、それはこの発明において本質的な違いではなく、かつそれら以外はバンドパスフィルタ100の第1のフィルタ回路FC1の構成要素と同様である。そのため、ここでは第1のフィルタ回路FC1についてのさらなる説明を省略する。
【0139】
第7の共振回路RC7は、グランド電極と、第5のキャパシタC31と、グランド電極と第5のキャパシタC31との間に接続された第5のインダクタL31とにより構成されている。
【0140】
なお、第7の共振回路RC7では、第5のキャパシタC31を構成するパターン導体のうちの1つが誘電体層DL11上に形成されておらず、誘電体層DL10上にパターン導体P105として形成されている。しかしながら、それもこの発明において本質的な違いではなく、バンドパスフィルタ100と同様に、第5のキャパシタC31を構成するパターン導体のうちの1つは、誘電体層DL11上に形成されていてもよい。
【0141】
また、第5のインダクタL31を構成するパターン導体P23の一端に接続され、誘電体層DL2ないしDL10に形成されたビア導体v7は、各誘電体層の中央部に配置されている。すなわち、バンドパスフィルタ100Dにおけるパターン導体P23は、バンドパスフィルタ100におけるパターン導体P23より短く形成されている。
【0142】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100と同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0143】
第7の共振回路RC7は、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2との間に、以下のようにして配置されている。すなわち、第5のインダクタL31は、第1のインダクタL11、第2のインダクタL12、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれと電磁界結合するように配置されている(図11の矢印参照)。
【0144】
図13に、各キャパシタのキャパシタンスおよび各インダクタのインダクタンスを所定の値としたときの、バンドパスフィルタ100Dのフィルタ特性を示す。フィルタ特性のS21に着目すると、通過帯域より低周波側に約-87dB、高周波側に約-20dBの減衰極を有している。
【0145】
そして、バンドパスフィルタ100Dでは、低周波側減衰極より低周波側において-53dBを越える減衰量が確保されている。また、高周波側減衰極より高周波側において-14dBを越える減衰量が確保されている。特に、高周波側減衰極より高周波側のS21には、周波数の増加に伴い、絶対値が次第に低下する傾向(図19(B)参照)が見られない。
【0146】
したがって、バンドパスフィルタ100Dでは、上記の構造により効果的に電磁界結合が生じた結果、通過帯域より高周波側および低周波側の周波数領域におけるS21の絶対値の低下が抑制できる。
【0147】
-バンドパスフィルタの第6の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第6の実施形態であるバンドパスフィルタ100Eについて、図14を用いて説明する。
【0148】
図14は、バンドパスフィルタ100Eの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Eは、バンドパスフィルタ100Dと同様に、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第7の共振回路RC7とを備えている。
【0149】
バンドパスフィルタ100Eでは、バンドパスフィルタ100Aと同様に、第1のフィルタ回路FC1が第9のキャパシタC13をさらに備えている。また、第2のフィルタ回路FC2が第10のキャパシタC23をさらに備えている。
【0150】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100Dと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0151】
バンドパスフィルタ100Eでは、上記の構造により、第1のフィルタ回路FC1および第2のフィルタ回路FC2との間のアイソレーションを効果的に得ることができる。その結果、前述の効果に加え、特に通過帯域より高周波側の減衰量の絶対値を大きくすることができる。
【0152】
-バンドパスフィルタの第7の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第7の実施形態であるバンドパスフィルタ100Fについて、図15を用いて説明する。
【0153】
図15は、バンドパスフィルタ100Fの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Fは、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第7の共振回路RC7と、第8の共振回路RC8とを備えている。バンドパスフィルタ100Fにおける、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2と第7の共振回路RC7とは、バンドパスフィルタ100Dのそれらと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0154】
第8の共振回路RC8は、第7のキャパシタC41と、第6のインダクタL41とを有している。第7のキャパシタC41は、グランドに接続されている。第6のインダクタL41は、グランドと第7のキャパシタC41との間に接続されている。
【0155】
そして、第5のインダクタL31は、第1のインダクタL11および第2のインダクタL12のそれぞれと電磁界結合する。また、第6のインダクタL41は、第3のインダクタL21および第4のインダクタL22のそれぞれと電磁界結合する。さらに、第5のインダクタL31と第6のインダクタL41とが電磁界結合する。
【0156】
なお、第7の共振回路RC7と第8の共振回路RC8との間に、さらに別のキャパシタと別のインダクタとを有する別の共振回路が備えられていてもよい。この場合、第5のインダクタL31は、上記のインダクタと電磁界結合し、上記のインダクタは、第6のインダクタL41と電磁界結合する。その結果、第5のインダクタL31と第6のインダクタL41とは、間接的に電磁界結合することになる。第7の共振回路RC7と第8の共振回路RC8との間に備えられる別の共振回路の数は、特に限定されない。
【0157】
バンドパスフィルタ100Fでは、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2との間に配置される共振回路の数を2つに増やしたことにより、電磁界結合のバランスが向上すると考えられる。
【0158】
したがって、バンドパスフィルタ100Fでは、上記の構造によりさらに効果的に電磁界結合が生じた結果、通過帯域より高周波側および低周波側の減衰特性をさらに高めることができる。
【0159】
-バンドパスフィルタの第8の実施形態-
この発明に係るバンドパスフィルタの第8の実施形態であるバンドパスフィルタ100Gについて、図16を用いて説明する。
【0160】
図16は、バンドパスフィルタ100Gの等価回路図である。バンドパスフィルタ100Gは、バンドパスフィルタ100Fと同様に、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第7の共振回路RC7と、第8の共振回路RC8とを備えている。
【0161】
バンドパスフィルタ100Gでは、バンドパスフィルタ100Eと同様に、第1のフィルタ回路FC1が第9のキャパシタC13をさらに備えている。また、第2のフィルタ回路FC2が第10のキャパシタC23をさらに備えている。
【0162】
それら以外の構成要素については、バンドパスフィルタ100Fと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0163】
バンドパスフィルタ100Gでは、上記の構造により、第1のフィルタ回路FC1および第2のフィルタ回路FC2との間のアイソレーションを効果的に得ることができる。その結果、前述の効果に加え、特に通過帯域より高周波側の減衰特性をさらに高めることができる。
【0164】
-バンドパスフィルタの参考例-
バンドパスフィルタの参考例であるバンドパスフィルタ100Hないし100Kについて、図17および図18を用いて説明する。
【0165】
図17(A)は、バンドパスフィルタ100Hの等価回路図である。図17(B)は、バンドパスフィルタ100Iの等価回路図である。図17(C)は、バンドパスフィルタ100Jの等価回路図である。図17(D)は、バンドパスフィルタ100Kの等価回路図である。
【0166】
上記の各バンドパスフィルタは、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2とを備えている。第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2とは、バンドパスフィルタ100のそれらと同様である。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0167】
上記の各バンドパスフィルタは、第1のフィルタ回路FC1と第2のフィルタ回路FC2とが、第11のキャパシタC51により結合されている。バンドパスフィルタ100Hでは、第2のインダクタL12と第2のキャパシタC12との間と、第4のインダクタL22と第4のキャパシタC22との間とが、第11のキャパシタC51により結合されている。
【0168】
バンドパスフィルタ100Iでは、第2のキャパシタC12とグランドとの間と、第4のキャパシタC22とグランドとの間とが、第11のキャパシタC51により結合されている。バンドパスフィルタ100Jでは、第7のインダクタL13とグランドとの間と、第8のインダクタL23とグランドとの間とが、第11のキャパシタC51により結合されている。バンドパスフィルタ100Kでは、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12との間と、第3のインダクタL21と第4のインダクタL22との間とが、第11のキャパシタC51により結合されている。
【0169】
この第11のキャパシタC51による結合は、キャパシタ素子の接続による結合、または各共振回路の構成要素間における電界結合のいずれであってもよい。
【0170】
また、この発明に係るバンドパスフィルタ100Aと同じく、第1のフィルタ回路FC1が第9のキャパシタC13をさらに備え、第2のフィルタ回路FC2が第10のキャパシタC23をさらに備えるようにしてもよい。第9のキャパシタC13および第10のキャパシタC23の接続位置は、前述の通りである。そのため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0171】
図18は、バンドパスフィルタ100Hの分解斜視図である。バンドパスフィルタ100Hは、バンドパスフィルタ100と同様に、誘電体層DL1ないしDL13が積層されてなる積層体と、複数のパターン導体と、複数のビア導体とを含んでいる。これらの誘電体層、パターン導体およびビア導体により、第1のフィルタ回路FC1と、第2のフィルタ回路FC2と、第11のキャパシタC51とが形成されている。なお、図18でも、誘電体層DL1上に方向目印P11が配置されているが、これは必須ではない。
【0172】
前述したように、第2のインダクタL12は、パターン導体P21と、その他端部に接続された、誘電体層DL2ないしDL10に形成されたビア導体v2及びv3とにより構成されている。第2のキャパシタC12は、パターン導体P102、P113により構成されている。また、第4のインダクタL22は、パターン導体P22と、その他端部に接続された、誘電体層DL2ないしDL10に形成されたビア導体v10及びv11とにより構成されている。第4のキャパシタC22は、パターン導体P104、P114により構成されている。
【0173】
第11のキャパシタC51は、誘電体層DL9上に形成されたパターン導体P91と、誘電体層DL10上に形成されたパターン導体P102、P104とにより構成されている。すなわち、図17(A)の等価回路図における第2のインダクタL12と第2のキャパシタC12との間と、第4のインダクタL22と第4のキャパシタC22との間とは、第11のキャパシタC51により結合されることになる。
【0174】
なお、パターン導体の配置を変更することにより、バンドパスフィルタ100Hに替えて、バンドパスフィルタ100Iないし100Kを構成することができる。
【0175】
この明細書に記載の実施形態は、例示的なものであって、この発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではなく、この発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。
【0176】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0177】
100 バンドパスフィルタ、FC1 第1のフィルタ回路、FC2 第2のフィルタ回路、P1 第1の信号ポート、P2 第2の信号ポート、RC1 第1の共振回路、RC2 第2の共振回路、RC3 第3の共振回路、RC4 第4の共振回路、RC5 第5の共振回路、L11 第1のインダクタ、L12 第2のインダクタ、L21 第3のインダクタ、L22 第4のインダクタ、L31 第5のインダクタ、C11 第1のキャパシタ、C12 第2のキャパシタ、C21 第3のキャパシタ、C22 第4のキャパシタ、C31 第5のキャパシタ、C32 第6のキャパシタ、v1~v21 ビア導体。
図1
図2
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