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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20220726BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B1/18 F
B66B3/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021205503
(22)【出願日】2021-12-17
(62)【分割の表示】P 2020058419の分割
【原出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2022027982
(43)【公開日】2022-02-14
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】小村 章
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-41628(JP,A)
【文献】特開2007-31110(JP,A)
【文献】特開2010-241566(JP,A)
【文献】特開2002-370877(JP,A)
【文献】特開2009-220902(JP,A)
【文献】特開平10-67477(JP,A)
【文献】特開昭63-106284(JP,A)
【文献】特開平7-157208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の目的階床を含む第1の建物に設置された、複数台のエレベータを有する第1のエレベータ群と、
第2の建物に設置された、複数台のエレベータを有する第2のエレベータ群と、
前記第1のエレベータ群の利用に関する特定条件の成立を検知する検知部と、
前記第1のエレベータ群における複数台のエレベータの何れかを利用して前記目的階床を来訪しようとする来訪客を第1利用者とし、当該第1利用者に接客するために前記第2の建物から前記目的階床に向かう利用者を第2利用者とし、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記第1利用者が前記目的階床にて前記第2利用者を待つ時間が短くなるように、(i)前記第1利用者および前記第2利用者が利用する前記第1のエレベータ群の運行を調整する、並びに/又は、(ii)前記第1のエレベータ群に含まれるエレベータに対する前記第1利用者及び/若しくは前記第2利用者の割当を調整する、調整部と、
を備え、
前記検知部は、前記第1利用者が前記第1のエレベータ群のエレベータを利用しようとしていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知する、エレベータシステム。
【請求項2】
前記調整部は、さらに、前記第1利用者が前記目的階床にて前記第2利用者を待つ時間が短くなるように、前記第2利用者が利用する前記第2のエレベータ群の運行を調整する、並びに/又は、前記第2のエレベータ群に含まれるエレベータに対する前記第2利用者の割当を調整する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記検知部は、予め定められた領域を撮像した画像の画像データ分析に基づき、前記画像内に前記第1利用者が含まれていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知する、
請求項1又は2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記検知部は、前記第1利用者が前記目的階床に対する行先階登録を行ったことを検知することにより、前記特定条件の成立を検知する、
請求項1から3の何れか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記検知部は、前記第1利用者に対応して予め定められた時間帯に限り、前記特定条件の成立を検知するようになっている、
請求項1から4の何れか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記特定条件の成立が検知されると、その旨を前記第2利用者に報知するための情報を発信する報知部をさらに備える、
請求項1から5の何れか1項に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、社長や重役、来賓客などの特定の人物(VIP:Very Important Person)が優先的にエレベータを利用できるように、優先運転(VIP運転)を実施するエレベータシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-24815号公報(2017年2月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エレベータシステムが設置される環境及びエレベータシステムの利用態様は様々である。例えば、来客(来訪客)が訪れる来客スペースと、来訪客に応対する担当者の執務室とが、それぞれ、同一建物における異なる階床に設けられていたり、近隣の2つの建物に別々に設けられていたりする場合がある。この場合、来訪客及び担当者は、それぞれエレベータを利用して来客スペースに向かう。
【0005】
このような状況において、通常、担当者は、来客スペースに来訪客が到着した旨の呼出を受けて、エレベータを使用して来客スペースに向かうことになる。エレベータの運行状態によっては、来訪客が来客スペースに到着してから担当者が来客スペースに到着するまでに長い時間を要することがある。このような場合、来客スペースにて来訪客を長らく待たせる、という不都合を生じることになる。
【0006】
上記のような問題について、特許文献1に記載の発明では考慮されておらず、状況によっては問題を助長させることも有り得る。具体的には、特許文献1に開示されたVIP運転では、VIP(すなわち来訪客)が優先的にエレベータを利用できるようにすることから、来客スペースでの来訪客の待ち時間をかえって長引かせる可能性がある。
【0007】
本発明は、来訪客が来客してから担当者が接客するまでの、来訪客の待ち時間を低減することができるエレベータシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るエレベータシステムは、所定の目的階床を含む第1の建物に設置された複数台のエレベータを有する第1のエレベータ群と、第2の建物に設置された、複数台のエレベータを有する第2のエレベータ群と、前記第1のエレベータ群の利用に関する特定条件の成立を検知する検知部と、前記第1のエレベータ群における複数台のエレベータの何れかを利用して前記目的階床を来訪しようとする来訪客を第1利用者とし、当該第1利用者に接客するために前記第2の建物から前記目的階床に向かう利用者を第2利用者とし、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記第1利用者が前記目的階床にて前記第2利用者を待つ時間が短くなるように、(i)前記第1利用者および前記第2利用者が利用する前記第1のエレベータ群の運行を調整する、並びに/又は、(ii)前記第1のエレベータ群に含まれるエレベータに対する前記第1利用者及び/若しくは前記第2利用者の割当を調整する、調整部と、を備え、前記検知部は、前記第1利用者が前記第1のエレベータ群のエレベータを利用しようとしていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知する。
【0009】
前記の構成によれば、前記調整部は、前記検知部によって前記特定条件の成立が検知された場合に、第1のエレベータ群の運行、及び/又は、第1のエレベータ群に含まれるエレベータに対する前記第1利用者(来訪客)及び/若しくは前記第2利用者(担当者)の割当、を調整する。これにより、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記第1利用者が前記目的階床へ到着する時刻を遅くする、または前記第2利用者が前記目的階床へ到着する時刻を早くすることができる。その結果、前記第1利用者が前記目的階床に到着してから、前記担当者が前記第1利用者に接客するまでの時間(すなわち前記第1利用者が来客してから担当者が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間)を低減することができる。
【0010】
本発明の態様2に係るエレベータシステムは、前記態様1において、前記調整部は、さらに、前記第1利用者が前記目的階床にて前記第2利用者を待つ時間が短くなるように、前記第2利用者が利用する前記第2のエレベータ群の運行を調整する、並びに/又は、前記第2のエレベータ群に含まれるエレベータに対する前記第2利用者の割当を調整してもよい。
【0011】
前記の構成によれば、前記調整部は、第2のエレベータ群の運行、並びに/又は、第2のエレベータ群に対する前記第2利用者の割当を調整する。これにより、前記第2利用者は、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合よりも前記目的階床に早く到着することができる。その結果、前記第1利用者が来客してから担当者が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間を低減することができる。
【0012】
本発明の態様3に係るエレベータシステムは、前記態様1または2において、前記検知部は、予め定められた領域を撮像した画像の画像データ分析に基づき、前記画像内に前記第1利用者が含まれていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知してもよい。
【0013】
前記の構成によれば、予め定められた領域は、例えば、乗場カメラ又はかご内カメラ等の撮像視野であってよい。前記検知部は、既存の乗場カメラ又はかご内カメラ等にて撮像した画像データと、前記第1利用者について予め登録された情報と、に基づいて前記特定条件の成立を検知することができる。よって、特別な装置を乗場に設置しなくてもよいことから、エレベータシステムの導入コストを比較的低くすることができる。
【0014】
本発明の態様4に係るエレベータシステムは、前記態様1から3の何れかにおいて、前記検知部は、前記第1利用者が前記目的階床に対する行先階登録を行ったことを検知することにより、前記特定条件の成立を検知してもよい。
【0015】
前記の構成によれば、前記検知部は、例えば、かご内に設置された操作盤に対して前記目的階床を行先階として登録する操作が前記第1利用者によって行われた場合に、前記特定条件の成立を検知する。これにより、前記特定条件の成立を検知した時点が、前記第1利用者が前記目的階床に移動しようとしている時点である蓋然性をより一層高くすることができる。そのため、前記調整部は、前記検知部の検知に基づいて、より適切に処理を行うことができる。
【0016】
本発明の態様5に係るエレベータシステムは、前記態様1から4の何れかにおいて、前記検知部は、前記第1利用者に対応して予め定められた時間帯に限り、前記特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。
【0017】
前記の構成によれば、例えば、前記第1利用者が予約時間よりもかなり前の時間に建物に到着し、当該建物内における前記目的階床以外の階床に移動するような場合において、エレベータシステムによる処理が不必要に実行される可能性を低減することができる。ここで、建物内には、前記第1利用者及び前記第2利用者以外のエレベータの利用者(以下、第3利用者と称する)が存在する。前記予約時間の前後の時間帯において、前記検知部が特定条件の成立を検知して前記調整部が処理を実行することによれば、前記第3利用者のエレベータの使用に与える影響を比較的低減することができる。
【0018】
本発明の態様6に係るエレベータシステムは、前記態様1から5の何れかにおいて、前記特定条件の成立が検知されると、その旨を前記第2利用者に報知するための情報を発信する報知部をさらに備えていてもよい。
【0019】
前記の構成によれば、前記第2利用者は、前記報知部から発信された情報を受信することにより、前記第1利用者への接客のために前記目的階床に向かうべきであることを認識することができる。そのため、前記第2利用者は、前記特定条件が成立していない場合(すなわち前記情報を受信していない場合)と比較して、前記目的階床への移動を開始する時点を大幅に早くすることができる。その結果、前記第1利用者が来客してから担当者(すなわち前記第2利用者)が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間を効果的に低減することができる。
【0020】
本発明の各態様に係るエレベータシステムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記エレベータシステムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記エレベータシステムをコンピュータにて実現させるエレベータシステムの制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、来訪客が来客してから担当者が接客するまでの、来訪客の待ち時間を低減することができるエレベータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態1におけるエレベータシステムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1におけるエレベータシステムの概要について説明するための模式図である。
図3】本発明の実施形態1におけるエレベータシステムにおいて実行される処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
図4】検知部が検知する特定条件の一例について説明するためのフローチャートである。
図5】検知部が検知する特定条件の他の一例について説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の実施形態1におけるエレベータシステムにおいて実行される処理の流れの別の一例を示すフローチャート図である。
図7】本発明の実施形態2におけるエレベータシステムの要部構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、図1~6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
<エレベータシステム1Aの概要>
始めに、本実施形態におけるエレベータシステムの全体像について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態におけるエレベータシステム1Aの概要について説明するための模式図である。なお、図中、破線にて情報伝達の流れを模式的に示しているが、図示の簡略化のために、情報ネットワークに含まれる各種の機器の一部について破線を付し、各種の機器の一部については図示を省略している。
【0025】
図2に示すように、エレベータシステム1Aは、建物B1に設置されたエレベータ群EvG1及び制御システム10と、建物B2に設置されたエレベータ群EvG2及び制御システム20と、管理装置30と、建物B1及び建物B2内に設置された各種の機器と、を含む。この各種の機器については、具体例を後述する。
【0026】
本実施形態におけるエレベータシステム1Aを適用する場面の一例として、以下のような場面を例示して説明する。
【0027】
すなわち、隣接する2つの建物(建物B1及び建物B2)における、一方の建物B1の一部を商談スペースR1として使用するとともに、他方の建物B2の一部を執務室R2として使用して、或る会社がビジネスを行っているとする。建物B1は、地上1階の階床F11に入口Ent1が設けられており、地上n階の階床F1nに商談スペースR1を有している。建物B2は、地上1階の階床F21に入口Ent2が設けられており、地上m階の階床F2mに執務室R2を有している。このような状況において、通常、商談スペースR1に顧客(第1利用者)P1が来訪した後で、担当者(第2利用者)P2は、商談スペースR1の受付から顧客P1が到着した旨の呼び出しを受ける。そして、担当者P2は、呼び出しを受けてから、執務室R2から商談スペースR1へと向かうことになる。この場合、エレベータ群EvG2及びエレベータ群EvG1の運行状態によっては、担当者P2が商談スペースR1に到着するまでに長時間を要することがある。
【0028】
本発明者らは、上記のような状況において生じ得る問題を見出し、本発明の一態様におけるエレベータシステムを想到した。
【0029】
本実施形態におけるエレベータシステム1Aについて、概略的に説明すれば以下のとおりである。
【0030】
エレベータシステム1Aは、概して、下記(1)~(4)の機能を有することによって、顧客P1が商談スペースR1に到着してから担当者P2が顧客P1に接客するまでの、顧客P1の待ち時間を低減する。
【0031】
(1)管理装置30は、商談スペースR1を有する階床F1nに顧客P1が到着する前の時点において、顧客P1のエレベータ群EvG1の利用に関する特定条件の成立を検知する。この特定条件の成立の検知(顧客P1が予約者又は登録者であるか否かの場合分けを含む)については後述する。
【0032】
(2)上記(1)の検知が行われた場合、管理装置30からの指令を受けて、制御システム10は、顧客P1が階床F1nに到着する時点を遅らせるようにエレベータ群EvG1について延着運行制御を行う。
【0033】
(3)上記(1)の検知が行われた場合、管理装置30は、その旨を担当者P2に報知する処理を実行する。
【0034】
(4)上記(1)の検知が行われた場合、管理装置30からの指令を受けて、制御システム20は、担当者P2が階床F21に到着する時点を早めるようにエレベータ群EvG2について早着運行制御を行う。好ましくは、管理装置30からの指令を受けて、制御システム10は、建物B2から建物B1に移動した担当者P2が階床F11から階床F1nに到着する時点を早めるようにエレベータ群EvG1について早着運行制御を行う。
【0035】
上記(1)~(4)の機能を実現するための具体的手段について詳しくは後述するが、概略的に説明すれば以下のとおりである。
【0036】
(1:特定条件の成立の検知)
上記(1)について、管理装置30は、概して、顧客P1がエレベータ群EvG1のエレベータを利用して商談スペースR1を来訪しようとしていることを、特定条件の成立に基づいて検知する。管理装置30は、例えば、乗場カメラ及び/又はかご内カメラにて撮像して得られた画像データ、階床F11の乗場F11sに設置された乗場呼び装置の操作、かご内に設置されたかご操作盤の操作、等の情報を用いて、特定条件(具体的には後述)が成立したか否かを判定する。
【0037】
なお、管理装置30は、予め定められた時間帯に限定して、上記特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。上記時間帯は、例えば、商談スペースR1への来訪を予約済の顧客P1について設定された予約時間の前後における、所定の時間範囲であってもよい。
【0038】
管理装置30は、複数の条件(具体的には後述)を満たすことに基づいて特定条件の成立を検知してもよい。
【0039】
(2:延着運行制御)
上記(2)について、管理装置30は、概して、通常の運行制御を行う場合に比べて顧客P1が商談スペースR1に到着する時刻が遅くなるように、制御システム10に対して延着運行制御の指令を送信する。この延着運行制御は、例えば、エレベータ群EvG1のエレベータの運行を調整すること、及び/又は、エレベータ群EvG1に含まれるエレベータの顧客P1への割当を調整することにより行われる。制御システム10は、管理装置30からの指令に基づいて、例えば、エレベータの上昇速度を低減するように制御を行う、及び/又は、乗場F11sでの待ち時間が比較的長くなるように顧客P1へのエレベータの割当を調整する。さらに、制御システム10は、顧客P1の乗車したかごに対して商談スペースR1に到着するまでの各階床の乗場呼びに応答するように、エレベータの割当を調整する。
【0040】
(3:報知)
上記(3)について、管理装置30は、概して、顧客P1が商談スペースR1に到着するよりも前に担当者P2が執務室R2から商談スペースR1へと移動を開始することを可能とするように、上記特定条件の成立を検知した旨を担当者P2に報知する。担当者P2に情報を報知する手段は特に限定されるものではなく、例えば、担当者P2の情報端末Tへのメール送信若しくはアプリ通知、又は、執務室R2に設置された装置による音声発信(例えば担当者P2への自動音声電話若しくは室内放送であってもよい)、等の手段を例示することができる。
【0041】
(4:早着運行制御)
上記(4)について、管理装置30は、概して、通常の運行制御を行う場合に比べて担当者P2が商談スペースR1に到着する時刻が早くなるように、少なくとも建物B2の制御システム20に対して早着運行制御の指令を送信する。この早着運行制御は、例えば、担当者P2に対してエレベータ群EvG2のエレベータの運行を調整する、及び/又は、エレベータ群EvG1に含まれるエレベータの割当を調整することにより行われる。例えば、制御システム20は、執務室R2を有する階床F2mの乗場での待ち時間が比較的短くなるように担当者P2へのエレベータの割当を調整する。また、制御システム20は、担当者P2が乗場にてかごの到着を待つ時間を低減させるように、階床F2mの乗場に、階床F21へ向かう状態にてかごを待機させるように制御を行ってもよい。
【0042】
また、制御システム20は、例えば、担当者P2が搭乗しているかごについて、停止することなく階床F21まで優先的に移動するように制御を行ってもよい。また、エレベータ群EvG2において設計上可能であれば、制御システム20は、運行速度が増大するようにエレベータの制御を行ってもよい。
【0043】
管理装置30は、例えば、担当者P2がかごに搭乗したか否かを、階床F2mの乗場に設置された認証装置を用いて判定するようになっていてもよい。また、管理装置30は、制御システム10に対して、制御システム20と同様に早着運行制御を行うように指令を送信するようになっていてもよい。また、管理装置30は、上記(3)の特定条件の成立を検知した旨を担当者P2に報知すると同時に、階床F2mの乗場呼びを登録してもよい。
【0044】
(補記)
ここで、本発明の一態様におけるエレベータシステムにおいて、上記(1)~(4)の機能を実現するために、具体的には様々な手段が適用可能である。本発明の一態様におけるエレベータシステムでは、以下に例示する一実施形態のエレベータシステム1Aが有する具体的手段に特に限定されず、公知の手段を適宜応用して上記(1)~(4)の機能を実現してもよい。
【0045】
なお、本明細書の説明においては、建物B1は、1階の階床F11に入口Ent1を有しており、顧客P1が階床F11の乗場F11sからエレベータに搭乗する場合を例示して説明する。また、建物B2は、1階の階床F21に入口Ent2を有しており、担当者P2は階床F21に移動した後、建物B1に移動する場合を例示して説明する。
【0046】
しかし、建物B1は地下の階を有する構造であってもよく、入口Ent1が複数の階床に設けられていてもよい。顧客P1は、1階以外の階床の乗場からエレベータに搭乗してもよい。建物B2は地下の階を有する構造であってもよく、入口Ent2が複数の階床に設けられていてもよい。建物B1と建物B2とは例えば2階に連絡通路が設けられており、人が往来可能となっていてもよい。そのような様々な状況においても本発明の一態様におけるエレベータシステムを適用可能であることは、以下に説明することに基づいて容易に理解することができる。
【0047】
<エレベータシステム1Aの詳細>
以上に概要を説明した本実施形態におけるエレベータシステム1Aについて、図1~6を用いて詳細に説明すれば以下のとおりである。図1は、エレベータシステム1Aの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0048】
図1に示すように、エレベータシステム1Aは、制御システム10、エレベータ群EvG1、制御システム20、エレベータ群EvG2、管理装置30、及び複数の機器を含む。複数の機器は、建物B1の1階(F11)の乗場F11sに設置された乗場カメラ3と、建物B1の各階床における乗場に設置された乗場呼び装置311~31nと、建物B2の各階床における乗場に設置された乗場呼び装置321~32mと、を含む。また、上記複数の機器は、エレベータ群EvG1のエレベータ110~1P0のかご111~1P1内、並びにエレベータ群EvG2のエレベータ210~2Q0のかご211~2Q1内にそれぞれ設置されたかご内カメラ(図示省略)及びかご操作盤(図示省略)を含んでいてもよい。また、上記複数の機器は、建物B2のm階(F2m)の乗場に設置された、担当者P2を検知するための乗場カメラ(図示省略)又は認証装置(図示省略)を含んでいてもよい。
【0049】
以下では、建物B1におけるエレベータ110~1P0を区別しないときには単に「エレベータ100」と表記し、建物B2におけるエレベータ210~2Q0を区別しないときには単に「エレベータ200」と表記する。また、乗場呼び装置311~31n及び乗場呼び装置321~32mを区別しないときには、単に「乗場呼び装置300」と表記する。
【0050】
制御システム10は、建物B1のエレベータ群EvG1に含まれる複数台のエレベータのそれぞれの制御装置を統括して制御するシステムであって、調整部11、速度制御部12、及び割当部13を含む。制御システム20は、建物B2のエレベータ群EvG2に含まれる複数台のエレベータのそれぞれの制御装置を統括して制御するシステムであって、調整部21、速度制御部22、及び割当部23を含む。管理装置30は、画像解析部31、検知部32、記憶部33、及び報知部34を含む。記憶部33には顧客データ33Aが格納されている。
【0051】
制御システム10、制御システム20、及び管理装置30に含まれる各部の詳細については、エレベータシステム1Aが実行する処理の流れと合わせて後述する。
【0052】
本実施形態では、建物B1において、エレベータ群EvG1にP台の複数のエレベータが含まれており、各階床に1つのエレベータ乗場が設けられている。また、建物B2において、エレベータ群EvG2にQ台の複数のエレベータが含まれており、各階床に1つのエレベータ乗場が設けられている。各エレベータの制御装置は、制御システム10又は制御システム20からの移動命令を受信すると、当該移動命令が示す階床にかごを移動させる。
【0053】
乗場呼び装置300は、各エレベータにおけるかごの呼びを発生させる装置であって、利用者がエレベータを呼び出す操作を行うための操作盤を備えている。
【0054】
なお、図1では、建物B1における3階からn-1階までの図示を省略し、建物B2における3階からm-1階までの図示を省略しているが、図示を省略した階床においても乗場呼び装置300が設置されている。また、図示を省略するが、建物B1の2階(F12)からn階(F1n)までの乗場にも乗場カメラが設置されている。
【0055】
エレベータシステム1Aにおける管理装置30は、情報ネットワーク2を介して、建物B2の執務室R2にて業務を行っている担当者P2のスマートフォン4と通信可能に接続されている。
【0056】
(処理の流れI)
図3を参照して、本実施形態におけるエレベータシステム1Aが実行する処理の流れの一例について説明する。図3は、エレベータシステム1Aにおいて実行される処理の流れの一例を示すフローチャート図である。ここでは、顧客P1として、顧客データ33Aに予め情報が登録されている既存の顧客(特定顧客)であって、かつ、商談スペースR1に来訪する日時が予約済の顧客を例示して説明する。
【0057】
商談スペースR1が設けられている階床F1nは、顧客P1及び担当者P2が向かう目的階床であると言える。この目的階床に関する情報を含む、エレベータシステム1Aが適用される状況(建物B1及び建物B2の状況)に関する情報は、例えば記憶部33に予め格納されていればよい。或いは、上記情報は、エレベータシステム1Aに含まれる各部(例えば検知部32)に予め設定されていればよい。
【0058】
(S1~S2:特定条件の検知)
図3に示すように、エレベータシステム1Aは、先ず、管理装置30における画像解析部31が、乗場カメラ3にて乗場F11sを撮像して得られた画像データについて、所定の時間間隔で画像解析(画像データ分析)を行う(S1)。画像解析部31は、例えば、乗場F11sに存在する人物の顔の特徴を抽出する処理を行う。このような処理としては公知の処理を用いることができるので、詳細な説明は省略する。なお、検知部32が画像解析処理を実行してもよく、この場合、管理装置30は画像解析部31を備えていなくてもよい。
【0059】
ここで、記憶部33には顧客データ33Aとして、顧客P1の顔情報と当該顧客の担当者P2とが紐付けられて記憶されている。また、顧客データ33Aには、顧客P1に対応付けて、顧客P1が商談スペースR1への来訪を予約した日時も記憶されている。顧客データ33Aには、顧客P1以外の他の顧客についても同様の情報が記憶されている。なお、顧客データ33Aとしての顔情報の登録は、例えば顧客P1に事前に了承を得て行うことができる。
【0060】
上記S1に次いで、検知部32は、乗場F11sを撮像して得られた画像データに画像解析を行った結果と、顧客データ33Aとを照会する(すなわち顔認証処理を行う)。このような顔認証処理としては公知の処理を用いることができるので、詳細な説明は省略する。そして、検知部32は、顧客P1がエレベータを利用しようとしていることを検知することにより、特定条件の成立を検知する。具体的には、建物B1の乗場F11sに顧客P1が存在すると判定した場合、エレベータ群EvG1に含まれるエレベータの利用に関する特定条件が成立したと検知する(S2でYES)。一方、検知部32において乗場F11sに顧客P1が存在すると判定されず、特定条件が成立したと検知されなかった場合(S2でNO)、上記S1の処理に戻る。
【0061】
検知部32は、特定条件が成立したことを検知した場合、報知部34にその旨の信号を送信するとともに、制御システム10に対して延着運行制御を実行する旨の指令を送信し、制御システム20に対して早着運行制御を実行する旨の指令を送信する。
【0062】
(S13:報知)
報知部34は、検知部32から受信した信号に基づいて、情報ネットワーク2を介して、例えば担当者P2の所持するスマートフォン4にメールを送信することにより、特定条件の成立が検知された旨の情報(以下、検知情報と称する)を担当者P2に報知する(S13)。
【0063】
担当者P2に情報を報知する手段は特に限定されるものではなく、例えば、以下のような手段を例示することができる。
【0064】
スマートフォン4に搭載された既存のアプリケーションへの通知によって、担当者P2に検知情報を報知してもよい。また、担当者P2に検知情報を報知する機能を実装した特別なアプリケーションがスマートフォン4にインストールされていてもよい。
【0065】
また、担当者P2に検知情報を報知するために使用可能な装置が執務室R2に設置されており、当該装置から音声又は映像等が発信されることによって担当者P2に検知情報が報知されてもよい。例えば、担当者P2に検知情報を連絡するために、担当者P2の自席の電話機に対して自動音声にて電話がかかるようになっていてもよく、又は、執務室R2の室内設備を用いて室内放送が行われるようになっていてもよい。
【0066】
(S14~S15:早着運行制御)
S13の後又はS13と並行して、制御システム20における調整部21は、検知部32からの早着運行制御の指令に基づいて、エレベータ群EvG2に対して早着運行制御を実行する(S14)。具体的には、調整部21は、速度制御部22を用いてエレベータ群EvG2に含まれるエレベータの何れかの運行を調整する、並びに/又は、割当部23を用いてエレベータ群EvG2に含まれる複数台のエレベータに対する担当者P2の割当を調整する。
【0067】
(早着運行:速度制御)
エレベータ群EvG2に含まれるエレベータについて、例えば、予め運行速度を増速させることを想定して設計されている場合、又は、加変速式エレベータのような種類である場合、速度制御部22は、以下のような制御を行う。すなわち、速度制御部22は、調整部21からの指令に基づいて、担当者P2の搭乗したかごの移動速度を、通常運行時における移動速度よりも速くなるように制御する。
【0068】
ここで、エレベータ群EvG2の全てのエレベータについて速度制御部22による制御を行うことは現実的ではないため、速度制御部22は、担当者P2が搭乗したかごについて速度制御を行うようになっていることが好ましい。
【0069】
例えば、管理装置30又は制御システム20は、各種の機器からの情報を用いて、担当者P2が搭乗したかごを特定してもよい。担当者P2が搭乗したかごを特定する方法は特に限定されないが、例えば、S13にて担当者P2への報知が行われた後、階床F2mの乗場呼び装置32mを用いて階床F21の行先階登録が初めて行われた場合、当該操作を行った人物が担当者P2であると特定してもよい。また、階床F2mの乗場に設けられた乗場カメラ(図示省略)にて撮像した画像データを用いて画像解析部31及び検知部32にて担当者P2の顔認証処理が行われることによって、担当者P2が搭乗したかごを特定してもよい。この場合、記憶部33に担当者P2の顔情報が記憶されていればよい。
【0070】
また、例えば、階床F2mの乗場に認証装置(図示省略)が設けられている場合、当該認証装置を用いて担当者P2のIDカードを読み取ることによって、担当者P2が搭乗するかごを特定するようになっていてもよい。
【0071】
或いは、担当者P2は、スマートフォン4を用いて操作を行うことにより、担当者P2が搭乗しているかごを管理装置30に通知するようになっていてもよく、この場合、制御システム20は、管理装置30から受信した情報に基づいて担当者P2が搭乗するかごを特定してもよい。
【0072】
(早着運行:割当)
割当部23は、担当者P2が階床F2mの乗場にて待機している時間が通常運行時よりも短くなるように、かごの割当を行う。このようなかごの割当制御については、公知の技術を適用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0073】
また、割当部23は、管理装置30が担当者P2に報知した時点において、階床F2mの乗場に対してかごの呼びを登録するとともに、当該かごに対して階床F21への行先階登録を行うようになっていてもよい。これにより、担当者P2が階床F2mの乗場にて待機する時間をより一層短縮することができる。その結果、担当者P2が階床F21に到着するまでの所要時間を短縮することができる。
【0074】
或いは、管理装置30からの報知を担当者P2が受信した後、スマートフォン4を担当者P2が操作することによって、管理装置30から制御システム20に、階床F2mの乗場に対してかごの呼びを発生させるように指令が送信されるようになっていてもよい。割当部23は、管理装置30からの指令に基づいて、階床F2mの乗場へのかごの呼びを登録する。
【0075】
制御システム20は、担当者P2が目的階床に到着すると(S15でYES)、早着運行制御を終了する。ここで、制御システム20を有する建物B2内における担当者P2の目的階床は階床F21であると言えるが、担当者P2の最終的な目的階床は建物B1内の階床F1nである。
【0076】
そのため、管理装置30は、制御システム10に対して、担当者P2が使用するエレベータに早着運行制御を実行する旨の指令を送信するようになっていることが好ましい。この場合、前述したことと同様に、管理装置30は、例えば、乗場カメラ3にて撮像した画像に基づいて担当者P2を特定する。そして、制御システム10は、担当者P2が搭乗したかごに対して、早着運行制御を実行する。制御システム10が実行する早着運行制御の内容については、前述した制御システム20が実行する早着運行制御の内容から理解することができるので、繰り返して説明することは省略する。
【0077】
制御システム10においても早着運行制御を実行する場合、担当者P2が階床F1nに到着すると(S15でYES)、制御システム10は早着運行制御を終了する。
【0078】
(S14~15の補記)
なお、エレベータシステム1Aは、上述のS15の処理に限定されず、早着運行制御を開始してから所定の時間が経過すると早着運行制御を終了するようになっていてもよい。
【0079】
また、エレベータシステム1Aにおいて、割当部23は、建物B2における複数の乗場呼び装置321~32mからの呼び登録に基づくエレベータ群EvG2の各エレベータの割当に関して、以下のように制御を行ってもよい。すなわち、担当者P2が搭乗したかごに対しては、複数の乗場呼び装置321~32mに入力された呼び登録から独立して、階床F21まで優先的に移動させる。つまり、割当部23は、建物B2における、階床F2m(出発階床)及び階床F21(目的階床)を除いた他の階床に、担当者P2が搭乗したかごが停止しないように、他の階床の乗場呼びに対して応答しないようになっていてもよい。これにより、担当者P2が階床2mから階床F21に移動する所要時間を効果的に低減することができる。
【0080】
(I-4.延着運行制御)
エレベータシステム1Aにおいては、担当者P2の移動に関して上記S13~15の処理を実行する一方で、顧客P1の移動に関して以下の処理を実行する。
【0081】
すなわち、検知部32は、特定条件が成立したことを検知した場合、制御システム10に対して延着運行制御を実行する旨の指令を送信する。制御システム10における調整部11は、検知部32からの延着運行制御の指令に基づいて、エレベータ群EvG1に対して延着運行制御を実行する(S3)。具体的には、調整部11は、速度制御部12を用いてエレベータ群EvG1に含まれるエレベータの何れかの運行を調整する、並びに/又は、割当部13を用いてエレベータ群EvG1に含まれる複数台のエレベータに対する顧客P1の割当を調整する。
【0082】
(延着運行:速度制御)
速度制御部12は、調整部11からの指令に基づいて、顧客P1の搭乗したかごの移動速度を、通常運行時における移動速度(定格速度)よりも遅くなるように制御する。
【0083】
ここで、エレベータ群EvG1の全てのエレベータについて速度制御部12による制御を行うことは現実的ではないため、速度制御部12は、顧客P1が搭乗したかごについて速度制御を行うようになっていることが好ましい。
【0084】
例えば、管理装置30又は制御システム10は、各種の機器からの情報を用いて、顧客P1が搭乗したかごを特定してもよい。例えば、かご内に設置されたかご内カメラ(図示省略)にて撮像した画像データを用いて、画像解析部31及び検知部32にて顧客P1の顔認証を行った結果に基づいて、顧客P1が搭乗したかごが特定されてもよい。また、例えば、エレベータのかご内のかご操作盤を用いて階床F1nの行先階登録が行われた場合、管理装置30又は制御システム10は、当該操作を行われたかごを、顧客P1が搭乗したかごであると特定してもよい。
【0085】
また、乗場呼び装置311に行先階登録の機能(行先階を選択するボタン)が設けられている場合、以下のように顧客P1が搭乗したかごが特定されてもよい。すなわち、乗場呼び装置311の操作によって呼び登録及び階床F1nへの行先階登録が行われた場合、階床F11に到着したかごであって行先階が階床F1nに登録されたかごが、顧客P1が搭乗したかごであると特定することができる。
【0086】
(延着運行:割当)
割当部13は、顧客P1が階床F11の乗場F11sにて待機している時間が通常運行時よりも長くなるように、かごの割当を行う。このようなかごの割当制御については、公知の技術を応用することができる。一般に、利用者がかごを待つ時間が短くなるように、かごの割当制御が行われていることから、制御システム10は、エレベータ群EvG1に含まれる各エレベータのかごについて、乗場F11sにかごを移動させるために要する時間を把握可能である。
【0087】
一例では、割当部23は、建物B1におけるなるべく上層に位置しているかごを階床F11に移動させてもよい。このとき、階床F11へのかごの移動速度が通常運行時よりも遅くなるように、速度制御部12による制御が行われてもよい。
【0088】
また、例えば、割当部23は、建物B1の上層から階床F11へと移動しているかごであって、搭乗者が比較的多いかごを顧客P1に割り当てるようになっていてもよい。
【0089】
また、例えば、かごの制御装置(図示省略)によって、ドアの開閉速度を通常速度よりも遅く設定してもよい。あるいは、当該かごの制御装置によって、ドアが開いた状態から閉じるまでの時間を、通常時間よりも長く設定してもよい。
【0090】
制御システム10は、顧客P1が目的階床である階床F1nに到着すると(S4でYES)、延着運行制御を終了する。
【0091】
なお、エレベータシステム1Aは、上述のS4の処理に限定されず、延着運行制御を開始してから所定の時間が経過すると延着運行制御を終了するようになっていてもよい。
【0092】
(処理の流れ1の補足説明)
なお、検知部32は、顧客P1がエレベータを利用しようとしていることを検知することにより、特定条件の成立を検知すればよく、上述した特定条件は一例である。以下、本明細書において、検知部32によって検知される上記のような顔認証処理に基づく特定条件を、説明の便宜上、検知条件X(第1の検知条件)と称する。
【0093】
また、検知部32は、乗場F11sを撮像した画像に代替して、例えば建物B1の1階(F11)における入口Ent1付近を撮像するカメラが設けられており、当該カメラにて得られた画像データに対して画像解析を行うことにより、顔認証処理に基づく検知条件Xを満たしたか否かを判定してもよい。
【0094】
また、検知部32は、乗場F11sを撮像した画像に代替して、例えばかご内カメラにて得られた画像データに対して画像解析を行うことにより、顔認証処理に基づく検知条件Xを満たしたか否かを判定してもよい。
【0095】
(特定条件の検知について)
エレベータシステム1Aにおいて、上記S1及びS2に限定されず、検知部32は、他の条件が成立したことに基づいて特定条件の成立を検知してもよい。このことについて、図4~6を用いて以下に説明する。図4は、検知部32が検知する特定条件の一例について説明するためのフローチャートである。
【0096】
図4に示すように、エレベータシステム1Aは、先ず、画像解析部31が、上述のS1の処理を行う。そして、検知部32における顔認証処理によって顧客P1の存在が検知されなかった場合(S21でNO)、上記S1の処理に戻る。
【0097】
検知部32によって顧客P1の存在が検知された場合(S21でYES)、検知部32は、顧客P1によって目的階床F1nへの行先階登録が行われるか否かを判定する処理を行う。検知部32は、例えば、乗場F11sに停止したかごのかご内カメラにて顧客P1の存在を特定するとともに、当該かごのかご内操作盤によって目的階床F1nへの行先階登録が行われた場合(S22でYES)、特定条件が成立したと検知する(S23)。その後、上述のS3又はS13(図3を参照)の処理が行われる。
【0098】
検知部32によって検知される上記のような顔認証処理及びその後の行先階登録に基づく特定条件を、説明の便宜上、検知条件Y1(第2の検知条件)と称することがある。
【0099】
管理装置30は、上記S21の後、上記S22でYESとなるまでの間において、報知部34によって担当者P2に対して、建物B1に顧客P1が来訪した旨の情報を報知するようになっていてもよい(S30)。この場合、報知部34は、顧客P1がエレベータを利用しようとしていることを検知すると、その旨を担当者P2に報知するための情報を発信する機能を有するものであると言える。これにより、担当者P2は、商談スペースR1への移動を開始してもよいし、移動前の準備を行ってもよい。
【0100】
検知部32が検知する特定条件の別の例について、図5を用いて以下に説明する。図5は、検知部32が検知する特定条件の他の一例について説明するためのフローチャートである。
【0101】
図5に示すように、先ず、検知部32は、乗場F11sに停止したかごのかご内操作盤によって目的階床F1nへの行先階登録が行われた場合(S26でYES)、当該かごのかご内カメラにて撮像された画像データに対して画像解析を行う(S27)。検知部32は、目的階床F1nへの行先階登録が行われたかご内に顧客P1の存在が検知された場合(S28でYES)、特定条件が成立したと検知する(S29)。一方で、かご内に顧客P1の存在が検知されなかった場合(S28でNO)、上記S26の処理に戻る。
【0102】
検知部32によって検知される上記のような行先階登録及びその後の顔認証処理に基づく特定条件を、説明の便宜上、検知条件Y2(第3の検知条件)と称することがある。
【0103】
(処理の制限について)
なお、検知部32における特定条件の成立の検知は、時間的に制限されていてもよい。
【0104】
具体的には、例えば、管理装置30は、顧客データ33Aに含まれる顧客P1の予約時間に対応して、所定の時間帯を予め設定しておき、管理装置30の内部又は外部から現在時刻に関する時刻情報を取得する。この所定の時間帯は、例えば、顧客P1について設定された予約時間の前後における、所定の時間範囲である。
【0105】
そして、管理装置30は、取得した時刻情報に基づく現在時刻が、予め設定された所定の時間帯に含まれている場合にのみ、特定条件の成立の検知を実行するようになっていてもよい。
【0106】
(顧客P1の乗場について)
なお、顧客P1は、建物B1に来訪した後、一旦、別の階床(F12等)に移動した後、目的階床である階床F1nに移動するような場合もある。そのような場合においても、エレベータシステム1Aにおける検知部32は、特定条件の成立を検知するようになっていることが好ましい。この場合、本明細書の説明における「乗場F11s」の記載を、他の階床(F12等)における乗場に読み替えることで容易に理解することができる。
【0107】
(顧客P1が予約の無い登録者の場合)
顧客P1は、顧客データ33Aに予め情報が登録されている既存の顧客(特定顧客)であって、商談スペースR1に来訪する日時を予約していない顧客であってもよい。従来、予約の無い顧客P1が商談スペースR1に来客した場合に、顧客P1が商談スペースR1に来客してから担当者P2が接客するまでの、顧客P1の待ち時間が長時間となり易い。エレベータシステム1Aは、このような場合に好適に用いることができる。エレベータシステム1Aは、予約時間に基づく処理の制限を除いて、上記のように処理を行うことができ、予約の無い顧客P1が来客した場合においても、顧客P1の待ち時間を効果的に低減することができる。
【0108】
(処理の流れ2)
上記の例では、予約済の顧客P1に対する処理について説明したが、以下では、顧客P1が顧客データ33Aに予め情報が登録されていない新規の顧客である場合について説明する。この場合においても、商談スペースR1が設けられている階床F1nは、顧客P1及び担当者P2が向かう目的階床であると言える。
【0109】
図6を参照して、本実施形態におけるエレベータシステム1Aが実行する処理の流れの別の一例について説明する。図6は、エレベータシステム1Aにおいて実行される処理の流れの別の一例を示すフローチャート図である。
【0110】
図6に示すように、検知部32は、エレベータ群EvG1に含まれる各エレベータについて、目的階床F1nへの行先階登録が行われたか否かを判定する処理(S41)を行う。具体的には、検知部32は、例えば、かご111~1P1のうちいずれかのかごにおけるかご内操作盤に対して、行先階として目的階床F1nが選択された場合、目的階床F1nへの行先階登録が行われたと判定する(S41でYES)。そして、検知部32は、当該かごに顧客P1が搭乗していると特定するとともに、特定条件が成立したことを検知する(S42)。
【0111】
その後、管理装置30は、上述のS3及びS13と同様の処理を行う。上記S13において、管理装置30は、顧客P1が搭乗していると特定されたかごに対して、延着運行制御を行うように制御システム10に指令を送信する。この場合、顧客P1に対してかごは既に割り当てられているので、延着運行制御は、速度制御部12によって行われるようになっていてもよい。
【0112】
また、例えば、乗場呼び装置311に対して目的階床F1nを行先階として選択する操作が行われたことに基づいて上記S41の判定が行われてもよく、この場合、上記S13の処理としては、速度制御部12及び割当部13によって延着運行制御が行われるようになっていてもよい。
【0113】
(変形例)
(1a)建物B1及び建物B2には、それぞれエレベータが1台のみ設けられていてもよく、この場合においても、上述したことと同様に延着運行制御及び早着運行制御を実行することができる。
【0114】
(1b)実施形態1におけるエレベータシステム1Aでは、管理装置30が、特定条件の成立の検知に基づいて、延着運行制御及び早着運行制御の指令を送信するとともに、担当者P2への報知処理を行っていたが、これに限定されない。本発明の一態様におけるエレベータシステムは、特定条件の成立の検知に基づいて、少なくとも延着運行制御を実行するようになっていればよい。
【0115】
(1c)エレベータシステム1Aは、例えば、エレベータの乗場に呼び登録装置が設けられていてもよい。呼び登録装置とは、乗場呼びと行先階登録とを同時に行うことができる装置であって、既存の装置を用いることができる。本変形例では、呼び登録装置は、使用者(顧客P1)を特定する機能を備えているものとする。当該機能は、例えば、使用者が所有するIDカードの読み取りを行う機能であってもよい。
【0116】
一変形例におけるエレベータシステム1Aは、顧客P1が上記呼び登録装置を用いて階床F1nを行先階登録した場合に、特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。
【0117】
また、エレベータシステム1Aは、例えば、検知部32が、画像解析によって顧客P1を特定するとともに、顧客P1が上記呼び登録装置を用いて階床F1nを行先階登録した場合に、特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。
【0118】
(エレベータシステムの利点)
以上のように、エレベータシステム1Aは、エレベータ群EvG1(1台又は複数台のエレベータ)と、エレベータ群EvG1の利用に関する特定条件の成立を検知する検知部32と、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合と比較して、顧客P1(第1利用者)が階床F1n(目的階床)へ到着するのを遅らせるように、(i)エレベータ群EvG1の運行を調整する、及び/又は、(ii)エレベータ群EvG1の複数台のエレベータ111~1P1に対する顧客P1の割当を調整する、調整部11と、を備えている。
【0119】
また、エレベータシステム1Aは、エレベータ群EvG1(1台又は複数台のエレベータ)と、エレベータ群EvG1の利用に関する特定条件の成立を検知する検知部32と、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合と比較して、エレベータ群EvG1のいずれかのエレベータを利用して階床F1n(目的階床)へ向かう顧客P1(第1利用者)が、エレベータ群EvG1のいずれかのエレベータを利用して階床F1nへ向かう担当者P2(第2利用者)を階床F1nにおいて待つ時間が短くなるように、(i)エレベータ群EvG1の何れかの運行を調整する、並びに/又は、(ii)エレベータ群EvG1及びエレベータ群EvG2に対する顧客P1及び/若しくは担当者P2の割当を調整する、調整部11・21と、を備えている。
【0120】
上記構成によれば、上記特定条件が成立していない場合と比較して、顧客P1が階床F1n(ひいては商談スペースR1)に到着する時刻を遅くすることができる。そのため、例えば、予約時刻よりも前に商談スペースR1に到着するように行動していた顧客P1が搭乗したかごに対して延着運行制御を行うことにより、顧客P1は、予約時刻に近い時刻に商談スペースR1に到着する。その結果、顧客P1が商談スペースR1に到着してから、担当者P2が商談スペースR1に到着して接客するまでの時間(顧客P1の待ち時間)を低減することができる。
【0121】
また、エレベータシステム1Aでは、検知部32は、顧客P1がエレベータ群EvG1を利用しようとしていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知するようになっている。
【0122】
具体的には、例えば、検知部32は、階床F11の乗場F11s(予め定められた領域)を撮像した画像の画像データ分析に基づき、前記画像内に顧客P1が含まれていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知する。
【0123】
上記構成によれば、既存の乗場カメラ等を利用して顧客P1の顔認証処理を行うことにより、検知部32は特定条件の成立を検知することができる。そのため、エレベータシステム1Aを適用するために特別な装置を乗場に設置する必要がない。
【0124】
また、検知部32は、顧客P1に対応して予め定められた時間帯に限り、前記特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。
【0125】
上記構成によれば、顧客P1が予約時間よりもかなり前の時間に建物B1に到着し、建物B1内における階床F1n以外の階床(F12等)に移動するような場合において、制御システム10が不必要に延着運行制御を実行しないようにすることができる。そして、予約時間の前後の時間帯において、検知部32が、顧客P1のエレベータ群EvG1の利用に関する特定条件の成立を検知する。これにより、制御システム10は、管理装置30からの指令に基づいて、延着運行制御を適切に実行し易くすることができる。
【0126】
検知部32は、階床F1nに対する行先階登録が行われたことを検知することにより、前記特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。
【0127】
上記構成によれば、商談スペースR1への訪問を予約していない顧客P1に対しても、エレベータシステム1Aの処理を行うことができる。その結果、商談スペースR1に到着した顧客P1の待ち時間を低減することができる。
【0128】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図7に基づいて以下に説明する。なお、本実施形態において説明すること以外の構成は、前記実施形態1と同じである。また、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0129】
前記実施形態1のエレベータシステム1Aでは、2つの建物(建物B1及び建物B2)のうちの一方に商談スペースR1が設けられ、他方に執務室R2が設けられている場合を例示して説明した。これに対して、本実施形態におけるエレベータシステム1Bは、1つの建物B3内における異なる階床に商談スペースR1及び執務室R2がそれぞれ設けられている点が異なっている。
【0130】
具体的には、建物B3は、地上1階の階床F31に入口Ent3を有しており、地上n階の階床F3nに商談スペースR1を有している。また、建物B3は、地上2階の階床F32に執務室R2を有している。
【0131】
図7は、エレベータシステム1Bの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0132】
図7に示すように、エレベータシステム1Bは、建物B3に設置されたエレベータ群EvG3及び制御システム10Bと、管理装置30と、建物B3内に設置された各種の機器と、を含む。複数の機器は、建物B3の1階(F31)の乗場に設置された乗場カメラ3と、建物B3の各階床における乗場に設置された乗場呼び装置331~33nと、を含む。また、上記複数の機器は、エレベータ群EvG3のエレベータ310~3P0のかご311~3P1内にそれぞれ設置されたかご内カメラ(図示省略)及びかご操作盤(図示省略)を含んでいてもよい。
【0133】
エレベータシステム1Bは、以下の点を除いて、前記実施形態1におけるエレベータシステム1Aと同様の処理を実行する。
【0134】
すなわち、管理装置30における検知部32は、延着運行制御及び早着運行制御の指令を制御システム10Bに送信する。制御システム10Bは、検知部32から受信した指令に基づいて、前記実施形態1における制御システム10と同様に延着運行制御を実行し、制御システム20と同様に早着運行制御を実行する。ここで、かごに搭乗した顧客P1又はかごに搭乗した担当者P2を特定する方法は、前記実施形態1の説明に基づいて容易に理解することができる。
【0135】
したがって、エレベータシステム1Bは、前述のエレベータシステム1Aと同様に、商談スペースR1に到着した顧客P1の待ち時間を低減することができるという効果を奏する。
【0136】
〔本発明の別の表現〕
本発明は以下のようにも表現できる。
【0137】
本発明の態様1に係るエレベータシステムは、1台又は複数台のエレベータと、前記1台又は複数台のエレベータの利用に関する特定条件の成立を検知する検知部と、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合と比較して、第1利用者が目的階床へ到着するのを遅らせるように、(i)前記1台又は複数台のエレベータの何れかの運行を調整する、及び/又は、(ii)前記複数台のエレベータに対する前記第1利用者の割当を調整する、調整部と、を備えている。
【0138】
前記の構成によれば、前記調整部は、前記検知部によって前記特定条件の成立が検知された場合に、1台又は複数台のエレベータの何れかの運行、及び/又は、複数台のエレベータに対する前記第1利用者(来訪客)の割当、を調整する。これにより、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記第1利用者が前記目的階床へ到着する時刻を遅くすることができる。そのため、例えば、前記第1利用者が前記目的階床に設けられた或る施設を訪問することを予約していたような場合、前記エレベータシステムは以下のような効果を奏する。例えば、予約時刻よりも前に前記目的階床に到着するように行動していた前記第1利用者は、前記調整部による処理が行われることにより、前記目的階床に到着する時刻が前記予約時刻に近付く。ここで、通常、前記施設において前記第1利用者に接客する担当者は、予約時刻が近づくと接客可能な状態で待機する。その結果、前記第1利用者が前記目的階床に到着してから、前記担当者が前記第1利用者に接客するまでの時間(すなわち前記第1利用者が来客してから担当者が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間)を低減することができる。
【0139】
本発明の態様2に係るエレベータシステムは、1台又は複数台のエレベータと、前記1台又は複数台のエレベータの利用に関する特定条件の成立を検知する検知部と、前記特定条件が成立した場合に、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記1台又は複数台のエレベータの何れかを利用して目的階床へ向かう第1利用者が、前記1台又は複数台のエレベータの何れかを利用して前記目的階床へ向かう第2利用者を前記目的階床において待つ時間が短くなるように、(i)前記1台又は複数台のエレベータの何れかの運行を調整する、並びに/又は、(ii)前記複数台のエレベータに対する前記第1利用者及び/若しくは前記第2利用者の割当を調整する、調整部と、を備えている。
【0140】
前記の構成によれば、前記調整部は、前記検知部によって前記特定条件の成立が検知された場合に、1台又は複数台のエレベータの何れかの運行、並びに/又は、複数台のエレベータに対する前記第1利用者及び/若しくは前記第2利用者の割当、を調整する。これにより、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記第1利用者が前記目的階床へ到着する時刻を遅くすることができる。また、前記特定条件が成立していない場合と比較して、前記第2利用者が前記目的階床へ到着する時刻を早くすることができる。そのため、例えば、前記第1利用者が前記目的階床に設けられた或る施設を訪問することを予約していたような場合、前記エレベータシステムは以下のような効果を奏する。
【0141】
すなわち、前記第1利用者に関して、前記態様1におけるエレベータシステムと同様の効果を奏する。例えば、前記第2利用者は、前記目的階床に設けられた或る施設にて前記第1利用者に接客する担当者であって、前記目的階床とは異なる階床に設けられた執務室から前記目的階床に向かうことを要するとする。ここで、仮に前記執務室から前記目的階床に向けて前記第2利用者が出発した時刻が同じであると仮定する。前記特定条件が成立した場合としていない場合とを比較すると、前記第2利用者は、前記特定条件が成立した場合の方が、前記特定条件が成立していない場合よりも、前記目的階床に早く到着することができる。
【0142】
このように、前記態様2に係るエレベータシステムによれば、前記目的階床に前記第1利用者が到着する時刻を遅くする、及び/又は、前記目的階床に前記第2利用者が到着する時刻を早くすることができる。その結果、前記第1利用者が来客してから担当者が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間を低減することができる。
【0143】
本発明の態様3に係るエレベータシステムは、前記態様1又は2において、前記検知部は、前記第1利用者がエレベータを利用しようとしていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知してもよい。
【0144】
前記第1利用者がエレベータを利用しようとしている場合、前記第1利用者は、前記目的階床に移動しようとしている蓋然性が高いと考えられる。前記構成によれば、前記検知部による前記特定条件の成立の検知が行われるタイミングを比較的適切なものとすることができる。そのため、前記調整部の処理を適切に行うことができる。その結果、前記第1利用者が来客してから担当者が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間を効果的に低減することができる。なお、前記第1利用者は、例えば、前記目的階床に設けられた或る施設を利用するために個人を特定する情報が予め登録された登録者である。前記第1利用者がエレベータを利用しようとしているか否かを検知する手段としては、例えば、予め登録された情報を用いて、前記第1利用者が乗場に存在することを特定する手段が考えられ、公知の手段を適宜応用することができる。
【0145】
本発明の態様4に係るエレベータシステムは、前記態様3において、前記検知部は、予め定められた領域を撮像した画像の画像データ分析に基づき、前記画像内に前記第1利用者が含まれていることを検知することにより、前記特定条件の成立を検知してもよい。
【0146】
前記の構成によれば、予め定められた領域は、例えば、乗場カメラ又はかご内カメラ等の撮像視野であってよい。前記検知部は、既存の乗場カメラ又はかご内カメラ等にて撮像した画像データと、前記第1利用者について予め登録された情報と、に基づいて前記特定条件の成立を検知することができる。よって、特別な装置を乗場に設置しなくてもよいことから、エレベータシステムの導入コストを比較的低くすることができる。
【0147】
本発明の態様5に係るエレベータシステムは、前記態様3又は4において、前記検知部は、前記第1利用者が前記目的階床に対する行先階登録を行ったことを検知することにより、前記特定条件の成立を検知してもよい。
【0148】
前記の構成によれば、前記検知部は、例えば、かご内に設置された操作盤に対して前記目的階床を行先階として登録する操作が前記第1利用者によって行われた場合に、前記特定条件の成立を検知する。これにより、前記特定条件の成立を検知した時点が、前記第1利用者が前記目的階床に移動しようとしている時点である蓋然性をより一層高くすることができる。そのため、前記調整部は、前記検知部の検知に基づいて、より適切に処理を行うことができる。
【0149】
本発明の態様6に係るエレベータシステムは、前記態様1から5の何れかにおいて、前記検知部は、前記第1利用者に対応して予め定められた時間帯に限り、前記特定条件の成立を検知するようになっていてもよい。
【0150】
前記の構成によれば、例えば、前記第1利用者が予約時間よりもかなり前の時間に建物に到着し、当該建物内における前記目的階床以外の階床に移動するような場合において、エレベータシステムによる処理が不必要に実行される可能性を低減することができる。ここで、建物内には、前記第1利用者及び前記第2利用者以外のエレベータの利用者(以下、第3利用者と称する)が存在する。前記予約時間の前後の時間帯において、前記検知部が特定条件の成立を検知して前記調整部が処理を実行することによれば、前記第3利用者のエレベータの使用に与える影響を比較的低減することができる。
【0151】
本発明の態様7に係るエレベータシステムは、前記態様1又は2において、前記検知部は、前記目的階床に対する行先階登録が行われたことを検知することにより、前記特定条件の成立を検知してもよい。
【0152】
前記の構成によれば、例えば、エレベータのかご内の操作盤に対して、前記目的階床に対する行先階登録の操作が行われた場合に、当該かごに搭乗している者を前記第1利用者とすればよい。そのため、前記目的階床における或る施設への来客を予約していない者、及び、個人を特定する情報が或る施設に予め登録されていない者であっても、前記第1利用者とすることができる。よって、前記施設を利用しようとする新規な顧客に対しても、エレベータシステムの処理を行うことができ、当該顧客が来客してから担当者が接客するまでの、当該顧客の待ち時間を低減することができる。
【0153】
本発明の態様8に係るエレベータシステムは、前記態様1から7の何れかにおいて、前記特定条件の成立が検知されると、その旨を前記1台又は複数台のエレベータの何れかを利用して前記目的階床へ向かう第2利用者に報知するための情報を発信する報知部をさらに備えていてもよい。
【0154】
前記の構成によれば、前記第2利用者は、前記報知部から発信された情報を受信することにより、前記第1利用者への接客のために前記目的階床に向かうべきであることを認識することができる。そのため、前記第2利用者は、前記特定条件が成立していない場合(すなわち前記情報を受信していない場合)と比較して、前記目的階床への移動を開始する時点を大幅に早くすることができる。その結果、前記第1利用者が来客してから担当者(すなわち前記第2利用者)が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間を効果的に低減することができる。
【0155】
本発明の態様9に係るエレベータシステムは、前記態様1から7の何れかにおいて、
前記第1利用者がエレベータを利用しようとしていることを検知すると、その旨を前記1台又は複数台のエレベータの何れかを利用して前記目的階床へ向かう第2利用者に報知するための情報を発信する報知部をさらに備えていてもよい。
【0156】
前記の構成によれば、例えば、前記報知部は、前記検知部によって前記特定条件が成立したと検知される前の時点において、前記第1利用者がエレベータを利用しようとしていることを検知した旨を前記第2利用者に報知するための情報を発信することができる。これにより、前記第2利用者は、前記情報を受信したことに基づいて、前記目的階床への移動を開始することができる。そのため、前記検知部によって前記特定条件が成立したと検知された時点において、前記第2利用者は、例えば、前記目的階床への移動を開始した状態又は前記目的階床に到着した状態とすることができる。その結果、前記第1利用者が来客してから担当者(すなわち前記第2利用者)が接客するまでの、前記第1利用者の待ち時間を効果的に低減することができる。
【0157】
〔附記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0158】
〔ソフトウェアによる実現例〕
エレベータシステム1A・1Bの制御ブロック(特に画像解析部31、検知部32、報知部34、制御システム10・10Bの各部、制御システム20の各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0159】
後者の場合、エレベータシステム1A・1Bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【符号の説明】
【0160】
1A、1B エレベータシステム
11、21 調整部
32 検知部
34 報知部
P1 顧客(第1利用者)
P2 担当者(第2利用者)
F1n 目的階床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7