(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物及びガラス繊維強化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 13/02 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
C03C13/02
(21)【出願番号】P 2022528642
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005136
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021026996
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】栗田 忠史
(72)【発明者】
【氏名】野中 貴史
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0181004(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0337839(US,A1)
【文献】特表2004-525066(JP,A)
【文献】特開平08-333137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
15/08-15/14
C03C 1/00-14/00
C08J 5/04-5/10
5/24
D03D 1/00-27/18
D06M 10/00-11/84
16/00
19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、50.00~61.00質量%の範囲のSiO
2と、16.00~27.00質量%の範囲のB
2O
3と、7.00~14.00質量%の範囲のAl
2O
3と、0.20~4.00質量%の範囲のP
2O
5と、0.50~5.00質量%の範囲のTiO
2と、0.10~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF
2及びCl
2とを含み、
前記SiO
2の含有率(質量%)S、前記Al
2O
3の含有率(質量%)A、前記P
2O
5の含有率(質量%)P、前記TiO
2の含有率(質量%)T、前記CaOの含有率(質量%)C及び前記MgOの含有率(質量%)Mが下記式(1)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
3.65≦(S/A)
2×(P×T)
1/2/(C+M)
3≦8.25 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、A、P、T、C及びMが下記式(2)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
4.51≦(S/A)
2×(P×T)
1/2/(C+M)
3≦7.32 ・・・(2)
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、A、P、T、C及びMが下記式(3)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
4.87≦(S/A)
2×(P×T)
1/2/(C+M)
3≦7.20 ・・・(3)
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、A、P、T、C及びMが下記式(4)を満たすことを特徴とする、ガラス繊維用ガラス組成物。
5.96≦(S/A)
2×(P×T)
1/2/(C+M)
3≦7.16 ・・・(4)
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載のガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とする、ガラス繊維。
【請求項6】
請求項5記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維織物。
【請求項7】
請求項5記載のガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維用ガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維織物、及び、ガラス繊維強化樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、所望の組成を有するガラス繊維用ガラス組成物となるように調合されたガラス原料をガラス溶融炉で溶融して溶融ガラス(ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物)とし、該溶融ガラスを数個から数千個のノズルチップを形成したノズルプレートを有する容器(ブッシング)から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状とする(以下、この操作を「紡糸」と言うことがある)ことにより製造されている。前記ブッシングは、例えば、白金等の貴金属により形成されている。
【0003】
従来、ガラス繊維は、樹脂成形品の強度を向上させるために種々の用途で広く用いられており、該樹脂成形品は、サーバー、スマートフォンやノートパソコン等の電子機器の筐体又は部品に用いられている。
【0004】
一般に、ガラスは交流電流に対してエネルギーを熱として吸収するので、前記樹脂成形品を前記電子機器の筐体又は部品に用いると、該樹脂成形品が発熱するという問題がある。
【0005】
ここで、ガラスに吸収される誘電損失エネルギーはガラスの成分及び構造により定まる誘電率及び誘電正接に比例し、下記式(A)で表される。
W=kfv2×ε1/2×tanδ ・・・(A)
【0006】
ここで、Wは誘電損失エネルギー、kは定数、fは周波数、v2は電位傾度、εは誘電率、tanδは誘電正接を表す。式(A)から、誘電率及び誘電正接が大きい程、また周波数が高い程、誘電損失が大きくなり、前記樹脂成形品の発熱が大きくなることがわかる。
【0007】
近年、前記電子機器に用いられる交流電流の周波数(前記式(A)のf)が高くなっていることを受けて、誘電損失エネルギーを低減するために、前記電子機器の筐体又は部品に用いられるガラス繊維に、より低い誘電率及びより低い誘電正接を備えることが求められている。特に、1/2乗される誘電率よりも、前記式(A)に与える影響が大きいことから、低い誘電正接を備えることが求められている。
【0008】
かかる事情に鑑み、本出願人は、低誘電率及び低誘電正接を備え、かつ、分相の発生が抑制され、さらに、高温での粘性が低減された、ガラス繊維用ガラス組成物として、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、52.0~59.5質量%の範囲のSiO2と、17.5~25.5質量%の範囲のB2O3と、9.0~14.0質量%の範囲のAl2O3と、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.0~5.0質量%の範囲のCaOと、合計で0.1~2.5質量%の範囲のF2及びCl2とを含む、ガラス繊維用ガラス組成物を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、特に10GHz程度の高周波数領域で、より低い誘電率及びより低い誘電正接を備えるガラス繊維を得ることができるガラス繊維用ガラス組成物が求められており、かかる課題を達成するために、ガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するAl2O3及びアルカリ土類金属酸化物(CaO、MgO及びSrO)の含有率を低減させ、その分SiO2及びB2O3の含有率を高めることが考えられる。
【0011】
ところが、前記ガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSiO2の含有率が高くなると、1000ポイズ温度が高くなり、ガラスの粘性も高くなって混合しにくくなるために均質なガラスの溶融が難しく、また紡糸する際にブッシングの劣化が大きく早まるという問題がある。
【0012】
前記問題を解決するために、前記ガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSiO2の含有率の一部をP2O5で代替することにより、高周波数領域での優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を維持したまま、1000ポイズ温度を低減させることが考えられる。
【0013】
しかしながら、前記ガラス繊維用ガラス組成物において、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対するSiO2の含有率の一部をP2O5で代替すると、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の耐水性が低下し、ガラスの加水分解によりガラス繊維表面に析出した異物により誘電特性が悪化したり、ガラス繊維の強度が大幅に低下したりするという不都合がある。
【0014】
本発明は、かかる不都合を解消して、優れた耐水性と、高周波領域における優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体低減された1000ポイズ温度を備える、ガラス繊維用ガラス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、50.00~61.00質量%の範囲のSiO2と、16.00~27.00質量%の範囲のB2O3と、7.00~14.00質量%の範囲のAl2O3と、0.20~4.00質量%の範囲のP2O5と、0.50~5.00質量%の範囲のTiO2と、0.10~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF2及びCl2とを含み、前記SiO2の含有率(質量%)S、前記Al2O3の含有率(質量%)A、前記P2O5の含有率(質量%)P、前記TiO2の含有率(質量%)T、前記CaOの含有率(質量%)C及び前記MgOの含有率(質量%)Mが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
3.65≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦8.25 ・・・(1)
【0016】
本発明のガラス繊維用ガラス組成物は、SiO2と、B2O3と、Al2O3と、P2O5と、TiO2と、CaOと、MgOと、F2及びCl2とを上述の範囲で含み、SiO2の含有率(質量%)S、Al2O3の含有率(質量%)A、P2O5の含有率(質量%)P、TiO2の含有率(質量%)T、CaOの含有率(質量%)C及びMgOの含有率(質量%)Mが式(1)を満たすことにより、優れた耐水性と、高周波領域における低誘電率及び低誘電正接という優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体低減された1000ポイズ温度を備えることができる。
【0017】
なお、ここで、本発明のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維が、低誘電率を備えるとは、誘電率が、測定周波数10GHzにおいて4.1以下であることを意味し、低誘電正接を備えるとは、誘電正接が、測定周波数10GHzにおいて0.0011以下であることを意味する。
【0018】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維が、優れた耐水性を示すとは、次の耐水性の評価方法により評価したときに、質量減少率が2.0%以下であり、水中においてもガラス繊維の成分がほぼ溶出しないことを意味する。
【0019】
耐水性の評価方法では、まず、所定のガラス繊維用ガラス組成となるようにガラス原料を混合して得られたガラスバッチを、直径80mmの白金ルツボに入れ、1550℃の温度で4時間加熱したのち、さらに、1650℃の温度で2時間加熱して溶融する。次に、ルツボから取り出して得られる、均質なガラスカレットを容器底部に1つの円形ノズルチップを有する小型の筒型白金製ブッシング内に入れ、所定の温度に加熱して溶融する。そののち、ノズルチップから吐出した溶融ガラスを所定の速度でステンレス製コレットに巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備える、繊維径13μmのガラス繊維を得る。次に、得られたガラス繊維約1g(試験用ガラス繊維)をコレットから採取し、120℃の温度で1時間乾燥させ、質量(操作前質量)を測定する。次いで、試験用ガラス繊維を100mlの蒸留水中に、80℃の温度にて24時間静置した後、該試験用ガラス繊維をおよそ150μmの目穴の開いた金網に取り、蒸留水で洗浄したのち、120℃の温度で1時間乾燥させ、質量(操作後質量)を測定する。そして、前記操作前質量及び操作後質量より、質量減少率(100×(1-(操作後質量/操作前質量)))を算出する。
【0020】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物が、低減された1000ポイズ温度を備えるとは、1000ポイズ温度が1500℃以下であることを意味する。
【0021】
また、本発明のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、A、P、T、C及びMは、好ましくは下記式(2)を満たし、より好ましくは下記式(3)を満たし、さらに好ましくは下記式(4)を満たす。
4.51≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.32 ・・・(2)
4.87≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.20 ・・・(3)
5.96≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.16 ・・・(4)
【0022】
また、本発明は、前記いずれかのガラス繊維用ガラス組成物からなることを特徴とする、ガラス繊維にもある。また、本発明は、該ガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維織物にもある。さらに、本発明は、該ガラス繊維を含むことを特徴とする、ガラス繊維強化樹脂組成物にもある。
【0023】
本発明のガラス繊維は、例えば、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物を溶融し、得られた溶融物を1~8000個のノズルチップ又は孔を形成したノズルプレートを有するブッシングから吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状に形成することで得ることができる。したがって、本発明のガラス繊維は、前述の本発明のガラス繊維用ガラス組成物と同一のガラス組成を備える。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0025】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、50.00~61.00質量%の範囲のSiO2と、16.00~27.00質量%の範囲のB2O3と、7.00~14.00質量%の範囲のAl2O3と、0.20~4.00質量%の範囲のP2O5と、0.50~5.00質量%の範囲のTiO2と、0.10~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF2及びCl2とを含み、前記SiO2の含有率(質量%)S、前記Al2O3の含有率(質量%)A、前記P2O5の含有率(質量%)P、前記TiO2の含有率(質量%)T、前記CaOの含有率(質量%)C及び前記MgOの含有率(質量%)Mが下記式(1)を満たす。
3.65≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦8.25 ・・・(1)
【0026】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、SiO2と、B2O3と、Al2O3と、P2O5と、TiO2と、CaOと、MgOと、F2及びCl2とを上述の範囲で含み、SiO2の含有率(質量%)S、Al2O3の含有率(質量%)A、P2O5の含有率(質量%)P、TiO2の含有率(質量%)T、CaOの含有率(質量%)C及びMgOの含有率(質量%)Mが式(1)を満たすことにより、優れた耐水性と、測定周波数10GHzの高周波領域における4.1以下の低誘電率及び0.0011以下の低誘電正接という優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体1500℃未満の低減された1000ポイズ温度を備えることができる。
【0027】
ここで、式(1)において、「S/A」は、SiO2の含有率とAl2O3の含有率との比であるところ、この値が小さくなることは、Al2O3の含有率が相対的に高まることを意味し、そうすると、ガラス繊維の誘電特性が悪化する傾向がある。一方、「S/A」が大きくなることは、SiO2の含有率が相対的に高まることを意味し、そうすると、ガラス繊維の誘電特性の向上には寄与するが、ガラス繊維用ガラス組成物の1000ポイズ温度が高くなる傾向がある。
【0028】
「P×T」は、中間酸化物である、P2O5とTiO2との積であり、この値が大きくなる程、ガラス繊維の誘電特性の向上には寄与するが、ガラス繊維の耐水性が悪化する傾向がある。一方、「P×T」が小さくなる程、溶融ガラスの粘性が高まり、ガラス繊維用ガラス組成物の1000ポイズ温度が高くなる傾向がある。
【0029】
「C+M」は、ガラス繊維の誘電特性に大きな影響を及ぼすアルカリ土類金属酸化物である、CaO及びMgOの合計含有率であり、この値が大きくなる程、ガラス繊維の誘電特性が悪化する傾向がある。一方、「C+M」が小さくなる程、ガラス繊維用ガラス組成物の1000ポイズ温度が高くなる傾向がある。
【0030】
したがって、式(1)は、これらの傾向を統合して、ガラス繊維の誘電特性と、ガラス繊維の耐水性と、ガラス繊維用ガラス組成物の1000ポイズ温度の均衡を表現しているものと推定される。
【0031】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiO2の含有率が50.00質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の機械的強度が大きく低下し、該ガラス繊維が有する、ガラス繊維強化樹脂組成物における補強材としての機能が損なわれる。また、該ガラス繊維が酸性環境下におかれた際に劣化し易くなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiO2の含有率が61.00質量%超であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。
【0032】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SiO2の含有率が、好ましくは、52.10~59.90質量%の範囲であり、より好ましくは、54.10~59.70質量%の範囲であり、さらに好ましくは、56.10~59.60質量%の範囲であり、特に好ましくは、57.60~59.50質量%の範囲であり、最も好ましくは、58.10~59.40質量%の範囲である。
【0033】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、B2O3の含有率が16.00質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、B2O3の含有率が27.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維に分相が発生し、ガラス繊維の化学的耐久性が低下するおそれがある。
【0034】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、B2O3の含有率が、好ましくは、19.60~24.90質量%の範囲であり、より好ましくは、20.10~24.50質量%の範囲であり、さらに好ましくは、20.60~24.00質量%の範囲であり、特に好ましくは、21.10~23.50質量%の範囲であり、最も好ましくは、21.50~23.00質量%の範囲である。
【0035】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、B2O3の含有率がガラス繊維用ガラス組成物全量に対し19.60質量%以上であることで、当該ガラス繊維用ガラス組成物から得られる溶融ガラスの粘性が低く保たれ、製造コストが減少されるので、工業的なガラス繊維製造により適したものになる。
【0036】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、B2O3の含有率がガラス繊維用ガラス組成物全量に対し24.90質量%以下であることで、当該ガラス繊維用ガラス組成物から溶融ガラスを経てガラス繊維を製造する際の揮発成分が減少させることができる。また、当該ガラス繊維用ガラス組成物を溶融させるガラス溶融炉の炉体の損耗を低減し、炉体の寿命が長くなるため、製造コストを減少させることができる。
【0037】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Al2O3の含有率が7.00質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維に分相が発生し、ガラス繊維の化学的耐久性が低下するおそれがある。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Al2O3の含有率が14.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。
【0038】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Al2O3の含有率が、好ましくは、8.00~13.50質量%の範囲であり、より好ましくは、9.00~13.00質量%の範囲であり、さらに好ましくは、9.60~12.80質量%の範囲であり、とりわけ好ましくは、10.10~12.40質量%の範囲であり、特に好ましくは、10.30~11.90質量%の範囲であり、殊に好ましくは、10.50~11.50質量%の範囲であり、最も好ましくは、10.60~10.90質量%の範囲である。
【0039】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、Al2O3の含有率がガラス繊維用ガラス組成物全量に対し13.00質量%以下であることで、液相温度が大きく減少して、作業温度範囲が大きくなるため、安定した紡糸を行うことができる。
【0040】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、P2O5の含有率が0.20質量%未満であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接の低減と、該ガラス繊維用ガラス組成物の1000ポイズ温度の低減との両立が困難になる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、P2O5の含有率が4.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の分相が抑えられなくなり、耐水性が悪化する。
【0041】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、P2O5の含有率が、好ましくは、0.30~3.50質量%の範囲であり、より好ましくは、0.50~3.20質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.70~2.90質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.90~2.70質量%の範囲であり、最も好ましくは、1.00~2.50質量%の範囲である。
【0042】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiO2の含有率が0.50質量%未満であると、高温での粘性が高くなるため、ガラス原材料を溶融させる温度が高くなり、製造コストの観点から、工業的なガラス繊維製造に適さなくなる。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiO2の含有率が5.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができず、また、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度が大幅に増加するため、安定したガラス繊維の製造を行うことができなくなる。
【0043】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、TiO2の含有率が、好ましくは、0.60~4.90質量%の範囲であり、より好ましくは、1.00~4.50質量%の範囲であり、さらに好ましくは、1.50~4.00質量%の範囲であり、とりわけ好ましくは、1.60~3.50質量%の範囲であり、特に好ましくは、1.70~3.40質量%の範囲であり、殊に好ましくは、1.80~3.30質量%の範囲であり、最も好ましくは、2.10~3.20質量%の範囲である。
【0044】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、CaOの含有率が0.10質量%未満であると、ガラスの結晶化を抑制することが難しく、ガラス繊維用ガラス組成物の液相温度が大きく増加するため、作業温度範囲を十分に確保することができない。一方、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、CaOの含有率が5.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電正接を十分に低減することができない。
【0045】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、CaOの含有率が、好ましくは、0.50~4.50質量%の範囲であり、より好ましくは、0.70~4.00質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.90~3.50質量%の範囲であり、特に好ましくは、1.10~3.00質量%の範囲であり、殊に好ましくは、1.30~2.70質量%の範囲であり、最も好ましくは、1.50~2.50質量%の範囲である。
【0046】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、MgOの含有率が4.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物に脈理が発生し、紡糸中のガラス繊維切断が生じ易くなるおそれがある。
【0047】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、MgOの含有率が、好ましくは、3.00質量%未満の範囲であり、より好ましくは、2.00質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、1.50質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、1.00質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは、0.95質量%未満の範囲であり、最も好ましくは0.50質量%未満の範囲である。
【0048】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、F2及びCl2の含有率が合計で2.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の化学的耐久性が低下する。
【0049】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、F2及びCl2の含有率が、合計で、好ましくは、0.10~1.80質量%の範囲であり、より好ましくは、0.30~1.60質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.50~1.50質量%の範囲である。
【0050】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対しF2及びCl2の含有率が、合計で、0.30質量%以上であることで、ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電率をさらに低減することができる。
【0051】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対しF2及びCl2の含有率が、合計で、1.60質量%以下であることで、当該ガラス繊維用ガラス組成物からガラス繊維を製造する際にF2及びCl2に由来する揮発物の発生を抑制し、当該ガラス繊維用ガラス組成物を溶融するガラス溶融炉の炉体の周辺環境が悪化するのを防ぐことができる。
【0052】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0~6.00質量%の範囲でSrOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がSrOを含む場合、SrOの含有率が6.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が悪化し、目標の誘電特性を満たすことができない。
【0053】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物はSrOを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、SrOの含有率が、好ましくは、4.00質量%以下の範囲であり、より好ましくは、3.00質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、2.00質量%以下の範囲であり、特に好ましくは、1.00質量%未満の範囲であり、殊に好ましくは、0.50質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.45質量%未満の範囲である。
【0054】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、合計で1.00質量%未満の範囲で、Na2O、K2O及びLi2Oを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がNa2O、K2O及びLi2Oを含む場合、これらの合計の含有率が1.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が大きく悪化し、目標の誘電特性を達成することができない。
【0055】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がNa2O、K2O及びLi2Oを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、これらの合計の含有率は、好ましくは、0.80質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.50質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。
【0056】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0~3.00質量%の範囲でZnOを含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZnOを含む場合、ZnOの含有率が3.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の紡糸中に失透物が発生し易くなって、安定したガラス繊維製造ができなくなり、また、ガラス繊維の誘電特性が悪化する。
【0057】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZnOを含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、ZnOの含有率は、好ましくは2.50質量%以下の範囲であり、より好ましくは、1.50質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.50質量%以下の範囲である。
【0058】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0~3.00質量%の範囲でMnO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がMnO2を含む場合、MnO2の含有率が3.00質量%超であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の誘電特性が悪化し、所望の誘電特性を得ることができない。
【0059】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がMnO2を含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、MnO2の含有率は、好ましくは2.50質量%以下の範囲であり、より好ましくは、1.50質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは、0.50質量%以下の範囲である。
【0060】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0質量%以上1.00質量%以下の範囲でFe2O3を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がFe2O3を含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、Fe2O3の含有率が0.10質量%以上0.60質量%以下の範囲であることが有効である。
【0061】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0質量%以上1.00質量%以下の範囲でSnO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がSnO2を含む場合、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制するという観点からは、SnO2の含有率が0.10質量%以上0.60質量%以下の範囲であることが有効である。
【0062】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.50質量%未満の範囲であれば、ZrO2を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZrO2を含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、ZrO2の含有率が0.50質量%以上であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の紡糸中に失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0063】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がZrO2を含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、ZrO2の含有率は、好ましくは0.45質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.40質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、最も好ましくは、0.05質量%未満の範囲である。
【0064】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、0.05質量%未満の範囲であれば、Cr2O3を含んでもよい。本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物がCr2O3を含む場合、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、Cr2O3の含有率が0.05質量%以上であると、該ガラス繊維用ガラス組成物から得られるガラス繊維の紡糸中に失透物が発生し易くなり、安定したガラス繊維製造ができなくなる。
【0065】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、原材料に起因する不純物として、Ba、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ce、Y、La、Bi、Gd、Pr、Sc、又は、Ybの酸化物を、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、合計で1.00質量%未満の範囲で含んでもよい。特に本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物が、不純物として、BaO、CeO2、Y2O3、La2O3、Bi2O3、Gd2O3、Pr2O3、Sc2O3、又は、Yb2O3を含む場合、その含有率が、それぞれ独立に好ましくは0.40質量%未満の範囲であり、より好ましくは、0.20質量%未満の範囲であり、さらに好ましくは、0.10質量%未満の範囲であり、特に好ましくは、0.05質量%未満であり、最も好ましくは、0.01質量%未満である。
【0066】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前記S、A、P、T、C及びMは、好ましくは下記式(1-1)を満たし、より好ましくは下記式(1-2)を満たし、さらに好ましくは、下記式(1-3)を満たし、特に好ましくは下記式(2)を満たし、殊に好ましくは下記式(3)を満たし、最も好ましくは下記式(4)を満たす。
3.86≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.32 ・・・(1-1)
4.00≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.32 ・・・(1-2)
4.25≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.32 ・・・(1-3)
4.51≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.32 ・・・(2)
4.87≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.20 ・・・(3)
5.96≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦7.16 ・・・(4)
【0067】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、式(2)を満たすことにより、優れた耐水性と、測定周波数10GHzの高周波領域における4.0以下の低誘電率及び0.0010以下の低誘電正接という極めて優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体1500℃未満の低減された1000ポイズ温度を備えることができる。
【0068】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、式(3)を満たすことにより、優れた耐水性と、測定周波数10GHzの高周波領域における4.0以下の低誘電率及び0.0010以下の低誘電正接という極めて優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体1500℃未満の低減された1000ポイズ温度と、作業温度範囲が150℃以上であって優れたガラス繊維製造性とを備えることができる。
【0069】
また、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、式(4)を満たすことにより、優れた耐水性と、測定周波数10GHzの高周波領域における4.0以下の低誘電率及び0.0010以下の低誘電正接という極めて優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体1500℃未満の低減された1000ポイズ温度と、作業温度範囲が200℃以上であって極めて優れたガラス繊維製造性とを備えることができる。
【0070】
なお、本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物において、前述した各成分の含有率は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて測定を行うことができ、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて測定を行うことができる。
【0071】
測定方法としては、初めに、ガラス原料を混合して調合したガラスバッチを白金ルツボに入れ、電気炉中で、1550℃の温度に4時間保持したのち、さらに、1650℃の温度に2時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。または、ガラス繊維を白金ルツボに入れ、電気炉中で、1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。
【0072】
前記ガラス繊維は、ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃の温度のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる。
【0073】
次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化してガラス粉末とする。軽元素であるLiについては得られたガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。波長分散型蛍光X線分析装置を用いた定量分析は、具体的には、ファンダメンタルパラメーター法によって測定した結果をもとに検量線用試料を作製し、検量線法により分析することができる。なお、検量線用試料における各成分の含有量は、ICP発光分光分析装置によって定量分析することができる。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有率を求めることができる。
【0074】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物は、溶融固化後において前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融した後、冷却して固化することにより得ることができる。
【0075】
本実施形態のガラス繊維用ガラス組成物から、本実施形態のガラス繊維を形成する際には、まず、前述のように調合したガラス原料をガラス溶融炉に供給し、前記1000ポイズ温度以上の温度域、具体的には1400℃~1700℃の範囲の温度で溶融する。そして、前記温度に溶融された溶融ガラスを、所定の温度に制御された、1~8000個のノズルチップ又は孔から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化することによりガラス繊維が形成される。
【0076】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラス単繊維(ガラスフィラメント)は、通常、真円形の断面形状を有し、3.0~35.0μmの範囲の直径を有する。低い誘電特性を求められる用途には、前記ガラスフィラメントは、3.0~6.0μmの範囲の直径を有することが好ましく、3.0~4.5μmの範囲の直径を有することがより好ましい。
【0077】
一方、前記ノズルチップが、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有する場合には、温度条件を制御することで、非円形(例えば、楕円形、長円形)の断面形状を有するガラスフィラメントを得ることができる。ガラスフィラメントが楕円形又は長円形の断面形状を有する場合、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)は、例えば、2.0~10.0の範囲にあり、断面積を真円に換算したときの繊維径(換算繊維径)は3.0~35.0μmの範囲にある。
【0078】
本実施形態のガラス繊維は、通常、10~8000本の範囲の前記ガラスフィラメントが集束されたガラス繊維束(ガラスストランド)の形状をとり、1~10000tex(g/km)の範囲の重量を備える。なお、複数のノズルチップ又は孔から吐出されたガラスフィラメントは、1本のガラス繊維束に集束されることもあり、複数本のガラス繊維束に集束されることもある。
【0079】
本実施形態のガラス繊維は、前記ガラスストランドにさらに種々の加工をして得られる、ヤーン、織物、編物、不織布(チョップドストランドマットや多軸不織布を含む)、チョップドストランド、ロービング、パウダー等の種々の形態を取り得る。
【0080】
本実施形態のガラス繊維は、ガラスフィラメントの集束性の向上、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されてもよい。このような有機物としては、デンプン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。
【0081】
また、本実施形態のガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。また、本実施形態のガラス繊維は、上記の樹脂を含まず、シランカップリング剤、界面活性剤等を含む処理剤組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物又は処理剤組成物は、樹脂組成物又は処理剤組成物に被覆されていない状態の本実施形態のガラス繊維の質量を基準として、0.03~2.0質量%の範囲の割合で、ガラス繊維を被覆する。
【0082】
なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて樹脂溶液又は樹脂組成物溶液をガラス繊維に付与し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液の付与されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。また、有機物によるガラス繊維の被覆は、織物の形態をとる本実施形態のガラス繊維を、処理剤組成物溶液中に浸漬し、その後処理剤組成物の付与されたガラス繊維を乾燥させることでも行うことができる。
【0083】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシラン等を挙げることができる。
【0084】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0085】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0086】
エポキシシランとしては、(β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0087】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0088】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0089】
(メタ)アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0090】
本実施形態では、前記シランカップリング剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0091】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油及びこの水素添加物、植物油及びこの水素添加物、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物系ワックス、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0092】
動物油としては、牛脂等を挙げることができる。
【0093】
植物油としては、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等を挙げることができる。
【0094】
動物性ワックスとしては、蜜蝋、ラノリン等を挙げることができる。
【0095】
植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス等を挙げることができる。
【0096】
鉱物系ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。
【0097】
高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールの縮合物としては、ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等を挙げることができる。
【0098】
脂肪酸アミドとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等を挙げることができる。
【0099】
第4級アンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0100】
本実施形態では、前記潤滑剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0101】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。本実施形態では、前記界面活性剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0102】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0103】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩を挙げることができる。
【0104】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩を挙げることができる。
【0105】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤を挙げることができる。
【0106】
本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を、少なくとも経糸又は緯糸の一部として、それ自体公知の織機により製織することより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。
【0107】
また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。本実施形態のガラス繊維織物は、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸及び緯糸として用いることが好ましい。
【0108】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維は、3.0~9.0μmの範囲の直径を備えるガラスフィラメントが、35~400本の範囲で集束されて、0~1.0回/25mmの範囲の撚りを備え、0.9~69.0tex(g/km)の範囲の質量を備えることが好ましい。
【0109】
本実施形態のガラス繊維織物において、前述の本実施形態のガラス繊維を経糸又は緯糸として用いる場合、経糸織密度は、40~120本/25mmの範囲であることが好ましく、緯糸織密度は、40~120本/25mmの範囲であることが好ましい。
【0110】
本実施形態のガラス繊維織物は、製織された後で、脱油処理、表面処理、及び開繊処理を施されてもよい。
【0111】
脱油処理としては、ガラス繊維織物を雰囲気温度が350℃~400℃の範囲の加熱炉内に40~80時間の範囲の時間配置し、ガラス繊維に付着している有機物を加熱分解する処理を挙げることができる。
【0112】
表面処理としては、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む溶液中にガラス繊維織物を浸漬し、余分な水を絞液した後、80~180℃の範囲の温度で、1~30分間の範囲の時間、加熱乾燥させる処理を挙げることができる。
【0113】
開繊処理としては、例えば、ガラス繊維織物の経糸に30~200Nの範囲の張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理を挙げることができる。
【0114】
本実施形態のガラス繊維織物は、7.0~190.0g/m2の範囲の単位面積あたりの質量を備え、8.0~200.0μmの範囲の厚さを備えることが好ましい。
【0115】
本実施形態のガラス繊維織物の経糸の糸幅は、110~600μmの範囲であることが好ましく、緯糸の糸幅は、110~600μmの範囲であることが好ましい。
【0116】
本実施形態のガラス繊維織物は、前記シランカップリング剤、又は、前記シランカップリング剤及び前記界面活性剤を含む表面処理層を備えてもよい。本実施形態のガラス繊維織物が該表面処理層を含む場合、該表面処理層は、表面処理層を含むガラス繊維織物全量に対して、例えば、0.03~1.50質量%の範囲の質量を備えることができる。
【0117】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、前述の本実施形態のガラス繊維を含む。具体的には、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、ガラス繊維、その他の添加剤を含むガラス繊維強化樹脂組成物において、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、10~90質量%の範囲のガラス繊維を含む。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維強化樹脂組成物全量に対して、90~10質量%の範囲の樹脂を含み、0~40質量%の範囲のその他の添加剤を含む。
【0118】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0119】
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等を挙げることができる。
【0120】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0121】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等を挙げることができる。
【0122】
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等を挙げることができる。
【0123】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等を挙げることができる。
【0124】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0125】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等を挙げることができる。
【0126】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0127】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0128】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等を挙げることができる。
【0129】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法により得られる重合体を挙げることができる。
【0130】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等を挙げることができる。
【0131】
ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができる。
【0132】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖末端にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基等の官能基を導入したもの、前記ポリフェニレンエーテルのポリマー鎖側鎖にアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、スチリル基、メタクリル基等の官能基を導入したもの等を挙げることができる。
【0133】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等を挙げることができる。
【0134】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等からなる群から選択される1種以上の構造単位からなる(共)重合体等を挙げることができる。
【0135】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等を挙げることができる。
【0136】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィンまたはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等を挙げることができる。
【0137】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等を挙げることができる。
【0138】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等を挙げることができる。
【0139】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、またはその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0140】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。
【0141】
また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0142】
具体的に、不飽和ポリエステル樹脂としては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールをエステル化反応させることで得ることができる樹脂を挙げることができる。
【0143】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂を挙げることができる。
【0144】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0145】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体を挙げることができる。
【0146】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等を挙げることができ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0147】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂を挙げることができる。
【0148】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0149】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、低い誘電特性を求められる用途に用いられることから、前記樹脂としては、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)が好ましい。
【0150】
前記その他の添加剤としては、ガラス繊維以外の強化繊維、ガラス繊維以外の充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。
【0151】
ガラス繊維以外の強化繊維としては、例えば、炭素繊維、金属繊維を挙げることができる。
【0152】
ガラス繊維以外の充填剤としては、例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカを挙げることができる。
【0153】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、本実施形態の前記ガラス繊維織物に、それ自体公知の方法により、前記樹脂を含浸させ、半硬化させたプリプレグであってもよい。
【0154】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体も含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法で成形して種々のガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。また、前記プリプレグを硬化させることによっても、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【0155】
このような成形品の用途としては、例えば、電子機器筐体、電子部品、車両外装部材、車両内装部材、車両エンジン周り部材、マフラー関連部材、高圧タンク等を挙げることができる。
【0156】
電子部品としては、プリント配線基板等を挙げることができる。
【0157】
車両外装部材としては、バンパー、フェンダー、ボンネット、エアダム、ホイールカバー等を挙げることができる。
【0158】
車両内装部材としては、ドアトリム、天井材等を挙げることができる。
【0159】
車両エンジン周り部材としては、オイルパン、エンジンカバー、インテークマニホールド、エキゾーストマニホールド等を挙げることができる。
【0160】
マフラー関連部材としては、消音部材等を挙げることができる。
【0161】
なお、本実施形態のガラス繊維は、本実施形態のガラス繊維強化樹脂組成物以外にも、石膏やセメントといった無機材料の補強材としても好適に用いることができる。例えば、石膏、とりわけ、4~60mmの範囲の厚さを備える石膏ボードの補強材として用いられる場合、前記の範囲のガラス組成を備えるガラス繊維は、石膏の全質量に対して、0.1~4.0質量%の範囲で含まれることができる。
【0162】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0163】
まず、溶融固化後のガラス組成が、表1に示された実施例1~8及び比較例1~5の各組成となるように、ガラス原料を混合し、ガラスバッチを得た。
【0164】
次に、実施例1~8又は比較例1~5のガラス繊維用ガラス組成に対応するガラスバッチを、直径80mmの白金ルツボに入れ、1550℃の温度で4時間加熱したのち、さらに、1650℃の温度で2時間加熱して溶融し、ルツボから取り出し、均質なガラスバルクやガラスカレットを得た。次いで、得られたガラスバルク及びガラスカレットを、620℃の温度で、8時間焼き鈍し、試験片を得た。
【0165】
得られた試験片について、以下に示す方法で、誘電率及び誘電正接を評価した。また、試験片作成過程で得られたガラスカレットを用いて、以下に示す方法で、耐水性を評価した。また、試験片作成過程で得られたガラスカレットを用いて、以下に示す方法で、1000ポイズ温度及び液相温度を測定し、これらの値から作業温度範囲を算出した。結果を表1に示す。
【0166】
〔耐水性の評価方法〕
前述のようにして得られたガラスカレットを、容器底部に1つの円形ノズルチップを有する小型の筒型白金製ブッシング内に入れ、所定の温度に加熱して溶融したのち、ノズルチップから吐出した溶融ガラスを所定の速度でステンレス製コレットに巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却固化して、真円状の円形断面を備え、繊維径13μmのガラス繊維を得た。得られたガラス繊維約1g(試験用ガラス繊維)をコレットから採取し、120℃の温度で1時間乾燥させ、質量(操作前質量)を測定した。次いで、試験用ガラス繊維を100mlの蒸留水中に、80℃の温度で24時間静置した。その後、試験用ガラス繊維をおよそ150μmの目穴の開いた金網にとり、蒸留水で洗浄したのち、120℃の温度で1時間乾燥させ、質量(操作後質量)を測定した。
【0167】
前記操作前質量及び操作後質量より、質量減少率(100×(1-(操作後質量/操作前質量)))を算出した。質量減少率が2.0%以下であり、水中においてもガラス繊維の成分がほぼ溶出しないものをOKとし、質量減少率が2.0%超であり、水中においてガラス繊維の成分が大きく溶出するものをNGとした。
【0168】
〔誘電率及び誘電正接の測定方法〕
試験片を研磨し、80mm×3mm(厚さ1mm)の研磨試験片を作成した。次いで、得られた研磨試験片を、絶乾後、23℃の温度、60%の湿度の室内に24時間保管した。次いで、得られた研磨試験片につき、JIS C 2565:1992に準拠し、空洞共振器法誘電率測定装置(株式会社エーイーティー製、商品名:ADMS01Oc1)を用いて、10GHzにおける誘電率(誘電定数Dk)及び誘電正接(散逸率Df)を測定した。
【0169】
〔1000ポイズ温度の測定方法〕
回転粘度計付高温電気炉(芝浦システム株式会社製)を用い、白金ルツボ中でガラスカレットを溶融し、回転式ブルックフィールド型粘度計を用いて溶融温度を変化させながら連続的に溶融ガラスの粘度を測定し、回転粘度が1000ポイズのときに対応する温度を測定することにより、1000ポイズ温度を求めた。
【0170】
〔液相温度の測定方法〕
ガラスカレットを粉砕し、0.5~1.5mmの範囲の粒子径を備えるガラス粒子40gを180mm×20mm×15mmの白金製ボートに入れ、1000~1550℃の範囲の温度勾配を設けた管状電気炉で8時間以上加熱した後、該管状電気炉から取り出し、偏光顕微鏡で観察して、ガラス由来の結晶(失透)が析出し始めた位置を特定した。管状電気炉内の温度をB熱電対を用いて実測し、前記結晶が析出し始めた位置の温度を求めて液相温度とした。
【0171】
〔作業温度範囲の算出方法〕
1000ポイズ温度と液相温度との差により、作業温度範囲を算出した。
【0172】
【0173】
【0174】
表1から、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、50.00~61.00質量%の範囲のSiO2と、16.00~27.00質量%の範囲のB2O3と、7.00~14.00質量%の範囲のAl2O3と、0.20~4.00質量%の範囲のP2O5と、0.50~5.00質量%の範囲のTiO2と、0.10~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF2及びCl2とを含み、前記SiO2の含有率(質量%)S、前記Al2O3の含有率(質量%)A、前記P2O5の含有率(質量%)P、前記TiO2の含有率(質量%)T、前記CaOの含有率(質量%)C及び前記MgOの含有率(質量%)Mが式(1)を満たす、実施例1~8のガラス繊維用ガラス組成物によれば、優れた耐水性と、測定周波数10GHzの高周波領域における誘電率が4.1以下、誘電正接が0.0011以下という優れた誘電特性とを備えるガラス繊維を得ることができ、それ自体の1000ポイズ温度を1500℃未満に低減することができることが明らかである。
【0175】
一方、表2から、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、50.00~61.00質量%の範囲のSiO2と、16.00~27.00質量%の範囲のB2O3と、7.00~14.00質量%の範囲のAl2O3と、0.20~4.00質量%の範囲のP2O5と、0.50~5.00質量%の範囲のTiO2と、0.10~5.00質量%の範囲のCaOと、0~4.00質量%の範囲のMgOと、合計で0~2.00質量%の範囲のF2及びCl2とを含むものの、前記S、A、P、T、C及びMが式(1)の範囲未満である、比較例1、2、4のガラス繊維用ガラス組成物によれば、それ自体の1000ポイズ温度が1500℃超であるか、得られるガラス繊維の誘電率が4.1超であるか、誘電正接が0.0011超であることが明らかであり、前記S、A、P、T、C及びMが式(1)の範囲超である、比較例3のガラス繊維用ガラス組成物によれば、十分な耐水性を得ることができないことが明らかである。
【0176】
さらに、ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、61.00質量%超のSiO2を含み、P2O5の含有率が0.20質量%未満であり、前記S、A、P、T、C及びMが式(1)の範囲未満である、比較例5のガラス繊維用ガラス組成物によれば、それ自体の1000ポイズ温度が1500℃超であることが明らかである。
【要約】
優れた耐水性と、高周波領域における優れた誘電特性とを備えるガラス繊維が得られ、低減された1000ポイズ温度を備える、ガラス繊維用ガラス組成物を提供する。ガラス繊維用ガラス組成物全量に対し、50.00~61.00質量%のSiO2と、16.00~27.00質量%のB2O3と、7.00~14.00質量%のAl2O3と、0.20~4.00質量%のP2O5と、0.50~5.00質量%のTiO2と、0.10~5.00質量%のCaOと、0~4.00質量%のMgOと、合計で0~2.00質量%のF2及びCl2とを含み、SiO2の含有率S、Al2O3の含有率A、P2O5の含有率P、TiO2の含有率T、CaOの含有率C及びMgOの含有率Mが下記式(1)を満たす。
3.65≦(S/A)2×(P×T)1/2/(C+M)3≦8.25 ・・・(1)