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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】自然薯栽培器及び自然薯栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/25 20180101AFI20220726BHJP
【FI】
A01G22/25 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018063410
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019170282
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】599139453
【氏名又は名称】株式会社奥村鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】奥村 桂志
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-335750(JP,A)
【文献】特開2017-209106(JP,A)
【文献】特開2003-164223(JP,A)
【文献】特開平11-075533(JP,A)
【文献】特開平06-327347(JP,A)
【文献】特開2006-129797(JP,A)
【文献】特開昭54-135125(JP,A)
【文献】実開昭49-016428(JP,U)
【文献】実開昭61-089255(JP,U)
【文献】特開2001-292632(JP,A)
【文献】特開2014-076039(JP,A)
【文献】実開昭56-125054(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然薯の種芋および吸収根を育成するための土壌を内部に蓄積する第1育成部と、前記自然薯の新生芋を育成するための土壌を内部に蓄積する第2育成部と、を有する容器である栽培容器と、
前記第2育成部の内部において、前記第1育成部から水平方向に離間するに従って鉛直方向にも離間するように傾斜した傾斜面を形成する斜面部材と、
前記第2育成部の内部において、前記斜面部材の前記傾斜面に対して平行となるように設けられることによって、前記新生芋の伸長する方向に対して垂直をなす方向から前記新生芋に所定の圧力を加える加圧部材と、
を備えたことを特徴とする自然薯栽培器。
【請求項2】
請求項1に記載の自然薯栽培器において、
前記斜面部材は、前記傾斜面を形成する面において傾斜する方向に延びた溝が形成されている
ことを特徴とする自然薯栽培器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自然薯栽培器において、
前記第2育成部および前記斜面部材は、断熱材で形成されている
ことを特徴とする自然薯栽培器。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の自然薯栽培器において、
前記第1育成部の内部を水平方向において所定の空間に分ける仕切部材
を備えたことを特徴とする自然薯栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然薯の栽培に要する労力を軽減することができる自然薯の栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用土に下端が埋設されたパイプを垂直方向に保持して1列又は複数列に配設し、パイプ内の上端部まで用土を充填し、用土に自然薯の種芋を植え付けて適宜施肥と注水を行いながら育成させ、成長した蔓をパイプ間あるいはパイプの近傍に立設された支柱又は支柱に張架された誘導ネットに這わせ、収穫時にはパイプを用土から抜き取りパイプの一端を水流圧による押圧して用土と生育した自然薯をパイプから取り出すようにした自然薯栽培器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開20014-076039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、自然薯は、自然の状態では、蔓や親芋に対し土中で斜めに成長するという特性もあるのに対し、上記の従来の自然薯栽培器では、パイプを垂直方向に保持しているため、自然薯を垂直方法に成長させるようになっている。したがって、上記の従来の自然薯栽培器では、自然薯の成長に悪影響を与えるという問題があった。また、上記従来の自然薯栽培器は、パイプを垂直方向に保持して1列又は複数列配置しているため、装置の高さが高くなり、取扱いがし難くなるため作業性が悪いという問題もあった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、自然薯の成長を促進可能とするとともに、作業性を向上させることのできる自然薯栽培器及び自然薯栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
[適用例1]
適用例1の自然薯栽培器(30)は、自然薯(5)の種芋(6)および吸収根(7)を育成するための土壌(12)を内部に蓄積する第1育成部(105)と、自然薯の新生芋(8)を育成するための土壌を内部に蓄積する第2育成部(115)と、を有する容器である栽培容器(120)と、第2育成部の内部において、第1育成部から水平方向に離間するに従って鉛直方向にも離間するように傾斜した傾斜面(142)を形成する斜面部材(140)と、第2育成部の内部において、斜面部材の傾斜面に対して平行となるように設けられることによって、新生芋の伸長する方向に対して垂直をなす方向から新生芋に所定の圧力を加える加圧部材(350)と、を備えたことを要旨とする。
【0008】
このような自然薯栽培器では、自然薯の種芋および吸収根が第1育成部で育成され、自然薯の栽培の際に成長して長く伸張していく新生芋が第2育成部で育成されることとなる。そして、第2育成部においては、斜面部材による傾斜面が形成されているため、種芋等に対し土中で斜めに成長するという自然薯の特性を考慮し、斜面部材の傾斜面に沿って新生芋を育成することができる。つまり、このような自然薯栽培器であれば、長くて形状のよい新生芋を栽培することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例2の自然薯栽培器(100,200,300,400,500)は、適用例1の自然薯栽培器において、斜面部材(140)は、傾斜面を形成する面において傾斜する方向に延びた溝(145)が形成されていることを要旨とする。
【0010】
適用例2のような自然薯栽培器によれば、第2育成部の内部の傾斜面において傾斜する方向に延びた溝が形成されているため、新生芋を傾斜面の溝に沿って伸長させるように自然薯を栽培することができる。つまり、このような自然薯栽培器であれば、新生芋が溝に沿って真っすぐに育成されることとなり、より長くて形状の良い新生芋を栽培することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例3の自然薯栽培器(100,200,300,400,500)は、適用例1又は適用例2の自然薯栽培器において、第2育成部(115,505)および斜面部材(140)は、断熱材で形成されていることを要旨とする。
【0012】
適用例3のような自然薯栽培器によれば、第2育成部および斜面部材が断熱材で形成されているため、第2育成部で育成される新生芋を断熱材で囲まれるようにして、自然薯を栽培することができる。つまり、このような自然薯栽培器であれば、新生芋に対する外気における温度変化の影響を低減することができ、好適な温度下での自然薯を栽培して新生芋の育成をより促進することができることとなる。
【0014】
ここで、新生芋に圧力を加える自然薯の栽培方法について説明する。一般的に、自然薯を育成すると、新生芋は伸長していくが、この新生芋の伸長する方向に対して垂直をなす方向に所定の圧力を加えると、圧力を加えない場合に比べて、より長くて形状の良い新生芋となることがわかっている。この点、適用例のような自然薯栽培器によれば、加圧部材を備えているため、第2育成部の内部において新生芋の伸長する方向に対して垂直をなす方向から新生芋に所定の圧力を加えながら自然薯を栽培することができる。つまり、このような自然薯栽培器であれば、より長くて形状の良い新生芋を栽培することができる。
【0015】
[適用例
適用例の自然薯栽培器(400)は、適用例1~適用例のいずれかの自然薯栽培器において、第1育成部の内部を水平方向において所定の空間に分ける仕切部材(450)を備えたことを要旨する。
【0016】
適用例のような自然薯栽培器によれば、仕切部材によって第1育成部の内部が水平方向において所定の空間に分けられているため、複数の自然薯を第1育成部に対して水平方向に並べて栽培することができる。つまり、このような自然薯栽培器であれば、一つの自然薯栽培器で複数の自然薯を効率よく栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自生栽培の場合の自然薯5の育ち方を説明するための図である。
図2】自然薯栽培器100の構成を示す図であり、(a)は正面に対して右斜め上からの斜視図であり、(b)は蓋部130を取外した状態の正面に対して右斜め上からの斜視図である。
図3】自然薯栽培器100の概略の構成を示す図であり、(a)は蓋部130を取外した状態の上面図であり、(b)は右側面の断面図である。
図4】(a)は自然薯栽培器200の概略の構成を示す右側面の断面図であり、(b)は自然薯栽培器300の概略の構成を示す右側面の断面図である。
図5】自然薯栽培器400の概略の構成を示す図であり、(a)は蓋部130を取外した状態の上面図であり、(b)は右側面の断面図である。
図6】自然薯栽培器500の概略の構成を示す図であり、(a)は蓋部130を取外した状態の正面の断面図であり、(b)は右側面の断面図である。
図7】自然薯栽培システム600の概略の構成を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0019】
[自然薯5の育ち方]
図1に基づき、まずは、自生地栽培をした場合の自然薯5の育ち方について説明する。図1は、自生栽培の場合の自然薯5の育ち方を説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、自然薯5は、空気中の蔓や葉の分と土壌中の根の部分とで栽培される。また、土壌中には、芽9があり、芽9から種芋6、吸収根7及び新生芋8が伸びている。このうち種芋6及び新生芋8は、茎の一部であって、養分を吸収しないものであり、むしろ、養分があると、芋が分岐したり腐ったりする場合がある。これに対し、吸収根7は、芽9から8~10本出て養分を吸収し、主に新生芋8に養分を供給し、新生芋8の成長を促す。また、吸収根7は、いわゆる浅根性を有しており、地表近くを広がるように伸びる。したがって、図1に示すように、種芋6及び吸収根7を土壌の浅い部分に埋設し、新生芋8が土壌の深い部分で成長するようにして、新生芋8を育成する。
【0021】
[第1実施形態]
(自然薯栽培器100の構成)
図2および図3に基づき、自然薯栽培器100の構成について説明する。図2は、自然薯栽培器100の構成を示す図であり、(a)は正面に対して右斜め上からの斜視図であり、(b)は蓋部130を取外した状態の正面に対して右斜め上からの斜視図である。図3は、自然薯栽培器100の概略の構成を示す図であり、(a)は蓋部130を取外した状態の上面図であり、(b)は右側面の断面図である。
【0022】
図2および図3に示すように、自然薯栽培器100は、栽培容器120、蓋部130、および斜面部材140から構成されている。栽培容器120は、第2育成部115に対して第1育成部105を組み付けた構造の容器であって、自然薯5の栽培における種芋6、吸収根7及び新生芋8を育成するための土壌12を内部に蓄積するとともに、内部で新生芋8を伸長させるものである。
【0023】
第1育成部105は、自然薯5の栽培における種芋6及び吸収根7を育成するための土壌12を内部に蓄積するものであり、断熱性を有する発泡スチロールで形成されるとともに、上下面に開口が形成された略筒状の部材である。また、第1育成部105の大きさは、平面の縦横の寸法が約350[mm]×約400[mm]、深さが約270[mm]である。
【0024】
第2育成部115は、自然薯5の栽培における新生芋8を育成するための土壌12を内部に蓄積するものであり、断熱性を有する発泡スチロールで形成されているとともに、上面の略全てに亘って開口が形成された略直方体状の容器である。また、第2育成部115の大きさは、平面の縦横の寸法が約350[mm]×約900[mm]、深さが約300[mm]である。
【0025】
蓋部130は、第2育成部115の上面の開口から内部に日光が射し込まれるのを防止するために、第2育成部115における上面の開口の一部を覆う所定の厚みの板状の部材であり、断熱性を有する発砲スチロールで形成されている。
【0026】
斜面部材140は、断熱性を有する発砲スチロールで形成された三角柱状の部材であり、斜面を上向きにした状態で第2育成部115の内部に収納されることによって、第2育成部115の内部において第2育成部115の底面に対し約8度に傾斜した傾斜面142を形成するものである。また、斜面部材140の斜面には、傾斜した方向に延びる溝であって、深さが約50[mm]の溝部145が4つ形成されている。
【0027】
栽培容器120は、内部に斜面部材140を収納した第2育成部115の上面における長手方向の一端側に第1育成部105を組み付けた構造であって、第1育成部105の開口と第2育成部115の開口とが組み合わされて第1育成部105の開口の上方から第2育成部115の内部が視認可能となっている。また、第1育成部105が組み付けられる第2育成部115の一端側においては、斜面部材140の斜面の上部が配設されるような構成となっている。そして、栽培容器120における斜面部材140を収納した第2育成部115の内部の空間と、第1育成部により形成された内部の空間と、に土壌12が蓄積されることとなる。さらに、第2育成部115の上面の開口において、新生芋8が伸長する方向の部分であって、第1育成部105が組み付けられていない部分は、蓋部130が載置されることで塞がれることとなる。
【0028】
次に、図3に基づき、自然薯栽培器100を用いた自然薯5の栽培方法について説明する。図3に示すように、まず、斜面部材140を収納した栽培容器120の内部に適量の土壌12を充填する。そして、種芋6および吸収根7が第1育成部105の内部に位置するように土壌12に横たえて埋め込み、土壌12を栽培容器120の内部に満たしていく。また、自然薯5に水を供給するときには、第1育成部105の上側の開口から適量を供給することとなる。さらに、自然薯5の新生芋8は、第2育成部115の内部に形成された傾斜面142に沿って伸長し、特に、溝部145に嵌り込んだ状態で真っ直ぐに伸長することとなる。
【0029】
なお、栽培容器120に蓄積される土壌12は、鹿沼土に肥料を混ぜたものなどの他に、いわゆる土ではないが、食物等の栽培に用いられる腐葉土など自然薯5の栽培のための養分が多く含まれている栽培用の用土を含むものである。
【0030】
(自然薯栽培器100の特徴)
以上のような自然薯栽培器100では、自然薯5を栽培容器120で栽培すると、種芋6および吸収根7が第1育成部105で育成され、栽培の際に成長して長く伸長していく新生芋8が第2育成部115で育成されることとなる。そして、第2育成部115においては、斜面部材140による傾斜面142が形成されているため、種芋6等に対し土中で斜めに成長するという自然薯5の特性が考慮され、傾斜面142に沿って新生芋8を育成することができる。つまり、このような自然薯栽培器100であれば、長くて形状のよい新生芋8を栽培することができる。
【0031】
また、第2育成部115の内部の傾斜面142において傾斜する方向に延びた溝部145が形成されているため、育成されている新生芋8は溝部145に沿って伸長できる。つまり、新生芋8が溝部145に沿って真っすぐに育成されることとなり、より長くて形状の良い新生芋8を栽培することができる。
【0032】
さらに、第2育成部115および斜面部材140が断熱材である発泡スチロールで形成されているため、新生芋8を断熱材によって囲んだ状態で育成することができる。つまり、外気温の変化による新生芋8への影響を低減することができ、新生芋8の育成をより促進することができる。
【0033】
そして、栽培容器120の第2育成部115の上面の開口において、新生芋8が伸長する方向の部分であって、第1育成部105が組み付けられていない部分が、蓋部130によって塞がれているため、開口からの第2育成部115に対する直射日光が射し込まれることを防ぐことができる。つまり、蓋部130によって、第2育成部115の内部の土壌12における極度の乾燥を防ぐことができる。なお、蓋部130は、第2育成部115の開口から着脱可能な構成であるため、第2育成部115の内部の土壌12が乾燥した場合には、蓋部130を取外して第2育成部115の内部の土壌12への直接の水の供給をすることもできる。
【0034】
[第2実施形態]
図4(a)に基づき、第2実施形態である自然薯栽培器200について説明する。図4(a)は、自然薯栽培器200の概略の構成を示す右側面の断面図である。なお、第2実施形態では、蓋部230を除けば、第1実施形態の自然薯栽培器100と同じであるため、同じ部材については、同じ符号を付して説明を省略する。また、栽培容器120、および斜面部材140は、第1実施形態の自然薯栽培器100における各々と同じ素材で形成されている。
【0035】
図4(a)に示すように、自然薯栽培器200における蓋部230には、側面のうちの長手面から対抗する長手面に亘って短手方向に形成された凹形状の溝である凹部が3つ形成されている。この凹部は、蓋部230が栽培容器120に設置されると、第2育成部115の内部を換気するための換気口235となる。なお、蓋部230は、第1実施形態の自然薯栽培器100における蓋部130と同じく、断熱材である発泡スチロールで形成された所定の厚みの板状の部材である。
【0036】
このような自然薯栽培器200によれば、換気口235によって第2育成部115の内部における換気をすることができるため、夏場などの外気温が高温となるときに第2育成部115の内部が高温となってしまうことを防止することができる。つまり、このような自然薯栽培器200であれば、栽培容器120の内部において、自然薯5が育成するための好適な環境にして、新生芋8の育成をより促進することができる。
【0037】
[第3実施形態]
図4(b)に基づき、第3実施形態である自然薯栽培器300について説明する。図4(b)は、自然薯栽培器300の概略の構成を示す右側面の断面図である。なお、第3実施形態では、加圧部350を除けば、第1実施形態の自然薯栽培器100と同じであるため、同じ部材については、同じ符号を付して説明を省略する。また、栽培容器120、蓋部130、および斜面部材140は、第1実施形態の自然薯栽培器100における各々と同じ素材で形成されている。
【0038】
図4(b)に示すように、自然薯栽培器300においては、所定の重さの板状の部材であって、第2育成部115の内部の土壌12の上に載置されることで土壌12を介して新生芋8に対して所定の圧力を加える加圧部材350を備えている。加圧部材350は、第2育成部115の内部の土壌12の上において、斜面部材140の傾斜面142と略平行となるように載置される。つまり、第2育成部115の内部において、土壌12と新生芋8とが、加圧部材350と斜面部材140の傾斜面142とによって挟まれることで、新生芋8の伸長する方向に対して垂直をなす方向から加圧部材350による所定の圧力が新生芋8に加えられることとなる。
【0039】
このような自然薯栽培器300であれば、第2育成部115の内部で加圧部材350によって新生芋8の伸長する方向に対して垂直をなす方向から新生芋8に所定の圧力が加えられるため、このような方向からの圧力が加えられない場合に比べて、より長くて形状の良い新生芋8を栽培することができる。
【0040】
[第4実施形態]
図5に基づき、第4実施形態である自然薯栽培器400について説明する。図5は、自然薯栽培器400の概略の構成を示す図であり、(a)は蓋部130を取外した状態の上面図であり、(b)は右側面の断面図である。なお、第4実施形態では、仕切部材450を除けば、第1実施形態の自然薯栽培器100と同じであるため、同じ部材については、同じ符号を付して説明を省略する。また、栽培容器120、蓋部130、および斜面部材140は、第1実施形態の自然薯栽培器100における各々と同じ素材で形成されている。
【0041】
図5に示すように、自然薯栽培器400は、断熱材である発泡スチロールから形成された板状の部材である仕切部材450を備えている。仕切部材450は、斜面部材140の傾斜面142から第1育成部105と第2育成部115とにおいて連通している開口を通って、第1育成部105の内部に至るまで鉛直方向に延設されるような形状である。また、自然薯栽培器400における仕切部材450は、傾斜面142の溝部145と隣の溝部145との境となる部分に載置されており、4つの溝部145に対して3つの仕切部材450が設けられることで第1育成部105を4つの空間に分けている。
【0042】
このような自然薯栽培器400であれば、仕切部材145によって第1育成部105の内部が水平方向において複数の空間に分けられているため、複数の自然薯5を第1育成部105に対して水平方向に並べて栽培することができる。つまり、一つの自然薯栽培器400で、複数の自然薯5を効率よく栽培することができる。また、仕切部材145によって分けられる空間は、第2育成部115の内部における傾斜面142の複数の溝部145の各々に対応するように分けられているため、この空間で栽培される自然薯5の新生芋8は溝部145に沿って育成されることとなる。つまり、一つの自然薯栽培器400で、複数の新生芋8を溝部145に沿って真っすぐに育成することができる。
【0043】
[第5実施形態]
図6に基づき、第5実施形態である自然薯栽培器500について説明する。図6は、自然薯栽培器500の概略の構成を示す図であり、(a)は蓋部130を取外した状態の正面の断面図であり、(b)は右側面の断面図である。なお、第5実施形態では、第1育成部505を除けば、第1実施形態の自然薯栽培器100と同じであるため、同じ部材については、同じ符号を付して説明を省略する。また、第2育成部115、蓋部130、および斜面部材140は、第1実施形態の自然薯栽培器100における各々と同じ素材で形成されている。
【0044】
図6に示すように、自然薯栽培器500における第1育成部505の内部の壁面には、赤色等の目立つ彩色で刻印された第1刻印部507と第2刻印部510が設けられている。図6(a)に示すように、第1刻印部507は、第1育成部505の内部の壁面であって、第2育成部115の傾斜面142の4つの溝部145の各々に対応するように、各溝部145の延長線上となる位置に設けられている。また、図6(b)に示すように、第2刻印部510は、第1育成部505の内部の壁面であって、種芋を載置するときに好適な深さとなる位置に設けられている。
【0045】
このような自然薯栽培器500によれば、栽培容器120の内部に土壌12を充填するときに、第2刻印部510を目印にして充填して、種芋6を横たえて埋め込むことができる。また、第1刻印部507を目印にして、第1刻印部507に対応する位置に種芋6を埋め込むと、新生芋8が溝部145に沿って育成されることとなる。つまり、このような自然薯栽培器500であれば、第1刻印部507および第2刻印部510が設けられていないものに比べて、自然薯5を栽培するときに種芋を好適な位置として栽培することができることとなる。
【0046】
[第6実施形態]
図7に基づき、自然薯栽培システム600について説明する。図7は、自然薯栽培システム600の概略の構成を示す外観図である。図7に示すように、自然薯栽培システム600は、2つの自然薯栽培器100と、2つの自然薯栽培器100を載置可能な固定部650から構成されている。また、固定部650は、基部652、座部654及び支柱656を備えている。
【0047】
基部652は、固定部650の土台となる部分であり、スチールなどの金属の板材を平面形状が長方形になるように組み合わせて、溶接やボルトなどで接合した部材である。また、基部652の4隅には、自然薯栽培システム600を移動できるようにするための車輪652aが取り付けられている。
【0048】
座部654は、自然薯栽培器100を水平にした状態で載置するための部材であり、スチールなどの金属の板材を平面形状が長方形で、第2育成部115の底面が載置できる大きさになるように組み合わせて、溶接やボルトなどで接合した部材である。
【0049】
支柱656は、基部652と座部654とを結合するための、スチールなどの金属の板材であり、基部652の長手方向の板材と座部654の短手方向の板材とを溶接やボルトで接合して、座部654を基部652に対して支えている。また、支柱656は、座部654を、水平となるように固定してある。
【0050】
以上のような構成の固定部650に、複数(本実施形態では2個)の自然薯栽培器100を鉛直方向に上下二段となるように並べて座部654に載置して固定する。また、下側の自然薯栽培器100の第2育成部115の上方に、上側の自然薯栽培器100の栽培容器120が配置するように固定される。
【0051】
このような自然薯栽培システム600であれば、2個の自然薯栽培器100が上下二段となるように固定される。したがって、複数の固定部650を利用すれば、多数の自然薯栽培器100を面積効率よく配置でき、ひいては少ない面積で多くの自然薯5を栽培することができる。
【0052】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態において、栽培容器120、蓋部130および斜面部材140とは、断熱性を有する発砲スチロールで形成されているものとしたが、これらの全ておよびいずれかのものが、段ボールなどの紙製の材料や、プラスチック、塩化ビニルなどの樹脂、ステンレスなどの金属、あるいは紙などの自然素材で形成されていてもよい。例えば、栽培容器120の第2育成部115としては、家庭菜園に利用される市販の樹脂製プランターを利用して、内部の壁面に断熱材である発泡スチロールの板材を据え付けるような構成であってもよい。
【0053】
(2)上記実施形態においては、栽培容器120における第1育成部105と第2育成部115とは組み付けて合体させているものとしたが、一体成型されていたり固着されていたりしていてもよい。例えば、第1育成部105を第2育成部115に組み付けた後に、接着剤等で互いに着脱不可能に接着されているようなものとすることもできる。
【0054】
(3)上記実施形態においては、斜面部材140の傾斜面142における溝部145の数を4つとしたが、5つ以上であってもよい。また、各溝部145の深さにおいても、上記実施形態のものに比べて、深くても浅くてもよく、新生芋8が伸長するときの伸長方向のガイドとなるようなサイズであれば、どのようなサイズのものでもよい。
【0055】
(4)上記第1~3実施形態においては、1本の自然薯5を栽培していたが、栽培する自然薯5の数は、これに限定されるものではなく、第1育成部105の短手方向の長さに応じて、2本以上の自然薯5を並べて栽培してもよい。例えば、上記実施形態に比べ大きいサイズの自然薯栽培器であれば、第1育成部105の短手方向に複数の自然薯5を並べて栽培することができる。
【0056】
(5)上記第4実施形態においては、栽培容器120の内部に設けられる仕切部材450の数を3つとしたが、2つ以下又は4つ以上であってもよい。例えば、上記実施形態に比べ大きいサイズの自然薯栽培器であれば、4つ以上の仕切部材450を設けるようにし、小さいサイズの自然薯栽培器であれば、2つ以下の仕切部材450を設けるようにしてもよい。また、第4実施形態の自然薯栽培器400においては、仕切部材450が傾斜面142の溝部145と隣の溝部145との境となる部分に載置されていたが、載置される位置は、これに限定されず、自然薯5を効率よく栽培するために好適な空間に分けられるような間隔で、仕切部材450が設けられるようにしてもよい。さらに、上述のように溝部145の数が5つ以上となった場合などには、その溝部145の数に応じた数の仕切部材450を設けるようにしてもよい。
【0057】
(6)上記第5実施形態においては、第1育成部505に設けられる第1刻印部507の数を4つとしたが、3つ以下又は5つ以上であってもよい。例えば、上述のように溝部145の数が5つ以上となった場合などには、その溝部145の数に応じた数の第1刻印部507を設けるようにしてもよい。また、溝部145の数に応じた数の第1刻印部507を設けることに限定されず、自然薯5を効率よく栽培するために好適な間隔で、複数の第1刻印部507が設けられるようにしてもよい。
【0058】
(7)上記第6実施形態の自然薯栽培システム600では、2個の自然薯栽培器100が上下二段となるように固定されていたが、3個以上の自然薯栽培器100が多段で固定される構造の固定部としてもよい。
【0059】
(8)上記実施形態において、自然薯栽培器に充填される土壌12は、1種類のものであったが、複数の種類のものであってもよい。例えば、土壌としては、鹿沼土に肥料を混ぜたものや、食物等の栽培に用いられる腐葉土などが考えられる。上記実施形態の自然薯栽培器100に対して、このような複数種類の土壌を利用した栽培方法としては、第1育成部105に充填される土壌と、第2育成部115に充填される土壌との種類を変える方法が考えられる。ここで、第2育成部115に充填される土壌は、第1育成部105に充填される土壌に比べて、含まれている養分が少ないものとする。これは、第2育成部115で育成される新生芋は、茎の一部で養分を吸収しないものであり、養分があると分岐したり腐ったりする場合があるためである。
【0060】
(9)上記実施形態においては、自然薯を栽培するための自然薯栽培器の実施形態を記載したが、本発明の実施形態としての栽培器は、自然薯だけでなく栽培方法が同じであれば、長芋などの山芋類の栽培にも適用可能であるため、自然薯としては長芋など栽培方法が同じ山芋類も含まれることを意味するものとする。
【符号の説明】
【0061】
5…自然薯、6…種芋、7…吸収根、8…新生芋、9…芽、12…土壌、100,200,300,400,500…自然薯栽培器、105,505…第1育成部、115…第2育成部、120…栽培容器、130,230…蓋部、140…斜面部材、235…換気口、350…加圧部材、450…仕切部材、507…第1刻印部、510…第2刻印部、600…自然薯栽培システム、650…固定部、652…基部、652a…車輪、654…座部、656…支柱。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7