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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】衛星選択装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/28 20100101AFI20220726BHJP
   G01S 19/22 20100101ALN20220726BHJP
【FI】
G01S19/28
G01S19/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019004691
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020112494
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】下岡 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳祥
(72)【発明者】
【氏名】宮島 朗
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153085(JP,A)
【文献】特開2010-151725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0139271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の位置を計算する測位装置で使用する衛星を選択する衛星選択装置であって、
複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の距離に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部と、
前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す観測疑似距離情報を導出する観測疑似距離導出部と、
前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との予め定めた位置関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、算出される前記測位対象箇所からの各位置による前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す推定疑似距離情報を推定する推定疑似距離算出部と、
前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測疑似距離導出部で導出された前記観測疑似距離情報と、前記推定疑似距離算出部で推定された前記推定疑似距離情報との残差を導出する残差導出部と、
前記複数の衛星アンテナの各々の受信機の時刻誤差の各々の信頼度を判定する信頼度判定部と、
前記信頼度判定部により前記信頼度が高いと判定された場合のみ、前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、前記使用する衛星から除外する衛星を選択する衛星選択部と、
を含む衛星選択装置。
【請求項2】
前記衛星選択部は、予め定めた閾値以上の前記残差の差分に対応する衛星を、前記使用する衛星から除外する
請求項1に記載の衛星選択装置。
【請求項3】
前記信頼度判定部は、予め定めた所定数の異なる複数の衛星について、前記残差導出部で導出された残差のうち何れか1つの衛星アンテナの残差が、他の衛星アンテナの残差に対して閾値以内の場合に前記受信機の時刻誤差の信頼度が高いと判定する
請求項1又は請求項2に記載の衛星選択装置。
【請求項4】
移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の速度を計算する速度測定装置で使用する衛星を選択する衛星選択装置であって、
複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の相対速度に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部と、
前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す観測ドップラー周波数情報を導出する観測ドップラー周波数導出部と、
前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との速度関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す推定ドップラー周波数情報を推定する推定ドップラー周波数算出部と、
前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測ドップラー周波数導出部で導出された前記観測ドップラー周波数情報と、前記推定ドップラー周波数算出部で推定された前記推定ドップラー周波数情報との残差を導出する残差導出部と、
前記複数の衛星アンテナの各々の受信機の時刻誤差の変化量の各々の信頼度を判定する信頼度判定部と、
前記信頼度判定部により前記信頼度が高いと判定された場合のみ、前記複数の衛星の各々における前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、複数の衛星から使用する衛星を選択する衛星選択部と、
を含む衛星選択装置。
【請求項5】
前記衛星選択部は、予め定めた閾値以上の前記残差の差分に対応する衛星を、前記使用する衛星から除外する
請求項4に記載の衛星選択装置。
【請求項6】
前記信頼度判定部は、予め定めた所定数の異なる衛星について、前記残差導出部で導出された残差のうち、前記複数の衛星アンテナのうち何れか1つの衛星アンテナの残差が、他の衛星アンテナの残差に対して閾値以内の場合に、前記受信機の時刻誤差の変化量の信頼度が高いと判定する
請求項4又は請求項5に記載の衛星選択装置。
【請求項7】
移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の位置を計算する測位装置で使用する衛星を選択するためのプログラムであって、
コンピュータを、
複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の距離に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部、
前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す観測疑似距離情報を導出する観測疑似距離導出部、
前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との予め定めた位置関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、算出される前記測位対象箇所からの各位置による前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す推定疑似距離情報を推定する推定疑似距離算出部、
前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測疑似距離導出部で導出された前記観測疑似距離情報と、前記推定疑似距離算出部で推定された前記推定疑似距離情報との残差を導出する残差導出部、
前記複数の衛星アンテナの各々の受信機の時刻誤差の各々の信頼度を判定する信頼度判定部、および、
前記信頼度判定部により前記信頼度が高いと判定された場合のみ、前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、前記使用する衛星から除外する衛星を選択する衛星選択部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の速度を計算する速度測定装置で使用する衛星を選択するためのプログラムであって、
コンピュータを、
複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の相対速度に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部、
前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す観測ドップラー周波数情報を導出する観測ドップラー周波数導出部、
前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との速度関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す推定ドップラー周波数情報を推定する推定ドップラー周波数算出部、
前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測ドップラー周波数導出部で導出された前記観測ドップラー周波数情報と、前記推定ドップラー周波数算出部で推定された前記推定ドップラー周波数情報との残差を導出する残差導出部、
前記複数の衛星アンテナの各々の受信機の時刻誤差の変化量の各々の信頼度を判定する信頼度判定部、および、
前記信頼度判定部により前記信頼度が高いと判定された場合のみ、
前記複数の衛星の各々における前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、複数の衛星から使用する衛星を選択する衛星選択部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星選択装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の衛星からの信号を受信して自己の位置を算出する際に、複数の衛星からの信号のうち、一部の衛星の信号を使用せずに自己の位置を計算する位置検出装置が知られている(特許文献1)。この位置検出装置では、衛星からの信号を受信する受信機と、衛星との相対速度により生じるドップラー周波数について、受信機の静止中に測定した測定値と予測値との差が閾値以上となる衛星からの信号を使用せずに自己の位置を計算している。
【0003】
また、衛星から受信器までの距離を算出して、一部の衛星について算出された距離を使用せずに当該受信機の位置を算出する航法衛星受信機が知られている(特許文献2)。この航法衛星受信機では、衛星から受信器まで予測した距離を近似距離とし、衛星から信号を送信した送信時刻と当該信号を受信した受信機での時刻との時間差に基づき衛星から受信器まで算出した距離を疑似距離として求める。これら疑似距離と近似距離との差(以下、疑似距離残差という。)が閾値を越える衛星に対する近似距離及び疑似距離を使用せずに、当該受信機の位置が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-118903号公報
【文献】特開2003-57327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の衛星からの信号を受信して自己の位置を算出する場合には、建物等から反射した信号と衛星からの直接信号とが混在するマルチパスの影響を受ける。上記特許文献1では、ドップラー周波数の測定値と予測値との差が閾値以上となった場合には、マルチパスの影響を受けていると判断し、当該衛星からの信号を使用せずに自己の位置を計算する。このとき、移動体の速度に応じて、閾値を設定する手法が提案されている。しかし、移動体の速度とマルチパス環境かどうかは無関係であるため、当該手法では、マルチパスの影響によるドップラー周波数の予測誤差を考慮した適切な閾値を設定することは困難である。例えば、閾値を大きくし過ぎると、マルチパス誤差の大きな衛星を除外できず、閾値が小さ過ぎると、マルチパスの影響を受けていない衛星を除外してしまう可能性がある。
【0006】
また、上記特許文献2では、マルチパスの影響を考慮して受信機の位置を算出することが記載されている。しかし、求めた疑似距離残差に大きな誤差が有る場合、マルチパスの影響を受けた誤差であるか否かの判断が困難であるため、適切な閾値の設定が困難である。
【0007】
ここで、疑似距離には、受信機位置の推定誤差及び受信機時刻ずれの推定誤差により生じる距離誤差が含まれる。受信機時刻ずれの推定誤差を抑制するには、疑似距離残差をそのまま用いるのではなく、最も仰角が高い衛星の疑似距離残差を基準値とし、疑似距離残差の基準値と各衛星の疑似距離残差との差(疑似距離残差の差)に基づき、マルチパスの影響を受けた疑似距離の誤差の大きな衛星を判別することが考えられる。受信機時刻ズレの誤差は各衛星に共通であるため、受信機時刻ずれの誤差の影響を除外することができる。
【0008】
一方、受信機位置の推定誤差は、各衛星との疑似距離残差の算出精度に与える影響が共通ではない。例えば、最も仰角が高い衛星に近づく方向に位置誤差が生じた場合、最も仰角が高い衛星との疑似距離残差は小さくなるのに対して、その他の衛星との疑似距離残差は大きくなる可能性がある。このため、位置推定の精度の影響を小さくすることは困難である。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮してなされたもので、移動体の地球上の位置及び速度の少なくとも一方を求める場合に精度よく計算可能な衛星を選択することができる衛星選択装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の第1態様は、移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の位置を計算する測位装置で使用する衛星を選択する衛星選択装置であって、複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の距離に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す観測疑似距離情報を導出する観測疑似距離導出部と、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との予め定めた位置関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、算出される前記測位対象箇所からの各位置による前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す推定疑似距離情報を推定する推定疑似距離算出部と、前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測疑似距離導出部で導出された前記観測疑似距離情報と、前記推定疑似距離算出部で推定された前記推定疑似距離情報との残差を導出する残差導出部と、前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、前記使用する衛星から除外する衛星を選択する衛星選択部と、を含む衛星選択装置である。
【0011】
本開示の第2態様は、第1態様の衛星選択装置において、前記衛星選択部は、予め定めた閾値以上の前記残差の差分に対応する衛星を、前記使用する衛星から除外する。
【0012】
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様の衛星選択装置において、前記複数の衛星アンテナの各々の受信機の時刻誤差の各々の信頼度を判定する信頼度判定部をさらに含み、前記衛星選択部は、前記信頼度判定部により前記信頼度が高いと判定された場合のみ、前記複数の衛星アンテナの各々の残差の差分に基づいて、前記使用する衛星から除外する衛星を選択する。
【0013】
本開示の第4態様は、第3態様の衛星選択装置において、前記信頼度判定部は、予め定めた所定数の異なる複数の衛星について、前記残差導出部で導出された残差のうち何れか1つの衛星アンテナの残差が、他の衛星アンテナの残差に対して閾値以内の場合に前記受信機の時刻誤差の信頼度が高いと判定する。
【0014】
本開示の第5態様は、移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の速度を計算する速度測定装置で使用する衛星を選択する衛星選択装置であって、複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の相対速度に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す観測ドップラー周波数情報を導出する観測ドップラー周波数導出部と、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との速度関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す推定ドップラー周波数情報を推定する推定ドップラー周波数算出部と、前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測ドップラー周波数導出部で導出された前記観測ドップラー周波数情報と、前記推定ドップラー周波数算出部で推定された前記推定ドップラー周波数情報との残差を導出する残差導出部と、前記複数の衛星の各々における前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、複数の衛星から使用する衛星を選択する衛星選択部と、を含む衛星選択装置である。
【0015】
本開示の第6態様は、第5態様の衛星選択装置において、前記衛星選択部は、予め定めた閾値以上の前記残差の差分に対応する衛星を、前記使用する衛星から除外する。
【0016】
本開示の第7態様は、第5態様又は第6態様の衛星選択装置において、前記複数の衛星アンテナの各々の受信機の時刻誤差の変化量の各々の信頼度を判定する信頼度判定部をさらに含み、前記衛星選択部は、前記信頼度判定部により前記信頼度が高いと判定された場合のみ、前記複数の衛星アンテナの各々の残差の差分に基づいて、前記使用する衛星から除外する衛星を選択する。
【0017】
本開示の第8態様は、第7態様の衛星選択装置において、前記信頼度判定部は、予め定めた所定数の異なる衛星について、前記残差導出部で導出された残差のうち、前記複数の衛星アンテナの何れか1つの衛星アンテナの残差が、他の衛星アンテナの残差に対して閾値以内の場合に、前記受信機の時刻誤差の変化量の信頼度が高いと判定する。
【0018】
本開示の第9態様は、移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の位置を計算する測位装置で使用する衛星を選択するためのプログラムであって、コンピュータを、複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の距離に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す観測疑似距離情報を導出する観測疑似距離導出部、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との予め定めた位置関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、算出される前記測位対象箇所からの各位置による前記複数の衛星アンテナの各々との間の距離を示す推定疑似距離情報を推定する推定疑似距離算出部、前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測疑似距離導出部で導出された前記観測疑似距離情報と、前記推定疑似距離算出部で推定された前記推定疑似距離情報との残差を導出する残差導出部、および、前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、前記使用する衛星から除外する衛星を選択する衛星選択部、として機能させるためのプログラムである。
【0019】
本開示の第10態様は、移動体に設置された複数の衛星アンテナの設置箇所とは異なる前記移動体における測位対象箇所の地球上の速度を計算する速度測定装置で使用する衛星を選択するためのプログラムであって、コンピュータを、複数の衛星の各々から送信された前記複数の衛星の各々の位置に関する情報、及び前記複数の衛星の各々と前記移動体との間の相対速度に関する情報を含む衛星情報を取得する衛星情報取得部、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報に基づいて、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所で観測された、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す観測ドップラー周波数情報を導出する観測ドップラー周波数導出部、前記複数の衛星アンテナの各々の設置箇所と前記測位対象箇所との速度関係と、前記衛星情報取得部で取得された前記衛星情報とに基づいて、前記複数の衛星の各々と、前記複数の衛星アンテナの各々との間の相対速度を示す推定ドップラー周波数情報を推定する推定ドップラー周波数算出部、前記複数の衛星の各々について、前記複数の衛星アンテナの衛星アンテナ毎に、前記観測ドップラー周波数導出部で導出された前記観測ドップラー周波数情報と、前記推定ドップラー周波数算出部で推定された前記推定ドップラー周波数情報との残差を導出する残差導出部、および、前記複数の衛星の各々における前記残差導出部で導出された前記複数の衛星アンテナの各々の前記残差の差分に基づいて、複数の衛星から使用する衛星を選択する衛星選択部、として機能させるためのプログラムである。
【0020】
なお、本開示のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD-ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、移動体の地球上の位置及び速度の少なくとも一方を求める場合に精度よく計算可能な衛星を選択することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る測位装置を示すブロック図である。
図2】測位対象箇所を車両中心とし、2つのGPSアンテナを設置した場合の例を示す図である。
図3】ある時刻における車両の姿勢角算出結果の例を示す図である。
図4】ENU座標系における、測位対象箇所とアンテナ設置箇所との位置関係算出手法を説明するための図である。
図5】第1の実施形態に係る測位装置のコンピュータにおける測位処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る測位装置を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態に係る測位装置のコンピュータにおける測位処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図8】第3の実施形態に係る速度測定装置を示すブロック図である。
図9】ある時刻における車両の角速度及び姿勢角算出結果の例を示す図である。
図10】ENU座標系における、測位対象箇所とアンテナ設置箇所との速度関係算出手法を説明するための図である。
図11】第3の実施形態に係る速度測定装置のコンピュータにおける速度測定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図12】第4の実施形態に係る速度測定装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載され、GPS衛星から発信されたGPS情報を取得して測位を行う測位装置に、本開示の技術を適用した場合を一例として説明する。
【0024】
<本実施形態の概要>
複数のGNSSアンテナを用いて測位を行う場合、測位対象箇所と、観測値が得られるGNSSアンテナ設置箇所とは一致せず、GNSSアンテナ設置箇所でマルチパス誤差の影響を受けると、マルチパス誤差の影響を受けた衛星からの衛星情報により算出される位置、および速度の精度はマルチパス誤差の影響を受けないものより低精度になる。
【0025】
本実施形態では、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との位置関係や速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することで、誤差の少ない衛星からの衛星情報のみを用いて、高精度に、測位対象箇所の位置、および速度の算出が可能となる。
【0026】
<第1の実施形態>
図1に、第1の実施形態に係る測位装置の構成の一例を示す。
図1に示すように、第1の実施形態に係る測位装置10は、GPS衛星からの電波を受信するための複数のGPSアンテナ12A、12Bと、複数のGPSアンテナ12A、12BによってGPS衛星からの受信信号を取得する複数の受信機14A、14Bと、姿勢角センサ16と、複数の受信機14A、14Bによって受信されたGPS衛星からの受信信号、及び姿勢角センサ16の検出値に基づいて、使用するGPS衛星を選択する衛星選択装置18と、自車両の位置を推定する測位処理を実行する位置導出部40とを備えている。衛星選択装置18は、測位対象箇所の位置を導出するために用いるGPS衛星を選択する衛星選択処理を実行するコンピュータ30と、出力部20とを備えている。
【0027】
図2に、複数のGPSアンテナ12A、12Bの設置個所の一例を示す。
複数のGPSアンテナ12A、12Bは、例えば、図2に示すように、自車両50の車室内に設置されており、測位対象箇所とは異なる箇所に設置されている。本実施形態では、測位対象箇所を車両中心とし、2台のGPSアンテナ12A、12B、および受信機14A、14Bを、それぞれ図1に示す位置に設置した場合の一例を考える。ここで、それぞれのGPSアンテナ12A、12Bの、測位対象箇所(車両中心)からの距離については、人手により測定することで、正確に把握できているものとする。
【0028】
受信機14A、14Bは、GPSアンテナ12A、12B毎に設けられており、受信機14A、14Bは、GPSアンテナ12A、12Bを介して複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した全てのGPS衛星からの受信信号から、GPS衛星の情報として、GPS衛星の衛星番号、GPS衛星の軌道情報(エフェメリス)、GPS衛星が電波を送信した時刻、受信信号の強度、周波数などを取得し、コンピュータ30に出力する。
姿勢角センサ16は、一例として、地磁気センサであり、地磁気を検出する。
【0029】
衛星選択装置18におけるコンピュータ30は、CPU、後述する処理を実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びHDD等の記憶装置で構成されている。
【0030】
コンピュータ30を機能ブロックで表すと、図1に示すように、衛星情報取得部31、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32、推定疑似距離算出部34、疑似距離残差算出部35、及び除外衛星判別部37を備えている。第1実施形態に係る衛星情報取得部31は、本開示の衛星情報取得部及び観測疑似距離導出部の一例である。推定疑似距離算出部34は、本開示の推定疑似距離導出部の一例である。疑似距離残差算出部35は、本開示の残差導出部の一例である。除外衛星判別部37は、本開示の衛星選択部の一例である。
【0031】
衛星情報取得部31は、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPS疑似距離データ、ドップラー周波数、及びGPS衛星の位置座標を算出して取得する。具体的には、衛星情報取得部31は、各受信機14A、14Bから、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPS衛星が電波を送信した時刻及び自車両で電波を受信した時刻に基づいて、GPS疑似距離データを算出する。また、衛星情報取得部31は、各GPS衛星から送信される信号の既知の周波数と、各GPS衛星から受信した受信信号の周波数とに基づいて、各GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数を各々算出する。なお、ドップラー周波数は、GPS衛星と自車両との相対速度による、搬送波周波数のドップラーシフト量を観測したものである。また、衛星情報取得部31は、GPS衛星の軌道情報及びGPS衛星が電波を送信した時刻に基づいて、GPS衛星の位置座標を各々算出する。
【0032】
アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、自車両の姿勢角に基づき計算されるGPSアンテナ12A、12Bの各々の地球上における設置箇所と測位対象箇所との位置関係、及び取得した衛星情報を用いて定まる測位対象箇所の位置に基づいて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の位置、及び受信機14A、14Bの時刻誤差を計算する。
【0033】
具体的には、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、第1工程として、姿勢角センサ16の検出値から自車両の姿勢角を算出する。本実施形態では、自車両の姿勢角として、姿勢角センサ16の検出値を用いることにより、当該時刻の自車両の姿勢角が算出される。なお、本実施形態では、姿勢角センサ16として地磁気センサを用いて自車両の姿勢角を算出する場合を例に説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ドップラー周波数に基づいて算出される車両の速度ベクトルや、6軸ジャイロセンサから検出される車両の加速度及び角速度などを用いて、自車両の姿勢角を算出してもよい。
【0034】
図3に、ある時刻における自車両50の姿勢角の一例を示す。図3(A)は路面に対する真上からの自車両50の姿勢角を示し、図3(B)は路面に対する真横からの自車両50の姿勢角を示している。以降では、図3に示すように、ある時刻における自車両50の姿勢角が、ヨー角=θ(真北をゼロとして時計回りを正)、ピッチ角=α、ロール角=ゼロであったとする。
【0035】
次に、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、第2工程として、算出された自車両の姿勢角に基づいて、GPSアンテナ12A、12Bの各々について、地球上におけるGPSアンテナの設置箇所と、測位対象箇所との位置関係を計算する。具体的には、まず、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、予め求められた、地球上における各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所と、測位対象箇所との間の距離と、各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所の角度と、検出された自車両の姿勢角とに基づいて、測位対象箇所(車両中心)と各GPSアンテナの設置箇所との、地球上における絶対位置の関係を算出する。具体的には、以下の手順で算出する。なお、ここでは、GPSアンテナ12Aを対象とした場合について説明する。
【0036】
(手順1) 以下に示す式(1)により、ENU(East-North-Up)座標系における位置関係を算出する。
図4に、測位対象箇所(車両中心)とGPSアンテナ12Aの設置箇所との位置関係の一例を示す、図4(A)は路面に対して真上から見た位置関係を示し、図4(B)は路面に対して真横から見た位置関係を示し、図4(C)は地表面(EN座標面)に投影された位置関係を示す。
【0037】
【数1】

(1)
【0038】
(手順2) 以下に示す式(2)により、ENU座標系からECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系に変換することにより、地球上における絶対位置の関係を算出する。同様に、GPSアンテナ12Bの設置箇所についても、測位対象箇所との位置関係を算出する。以降では、このようにして得られた位置関係の算出結果を、「GPSアンテナ12Aの設置箇所=FA(測位対象箇所)」のように表記する。
【0039】
【数2】

(2)
【0040】
ここで、
【0041】
また、αは地球の長半径[m]であり、fは扁平率である。
【0042】
そして、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、第3工程として、計算された位置関係と、取得した衛星情報とを用いて、地球上における測位対象箇所の位置、および、各受信機の時刻誤差を計算する。具体的には、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、測位対象箇所の位置、及び複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々の時刻誤差を未知数とし、測位対象箇所の位置、及び測位対象箇所(車両中心)と各アンテナ設置箇所との、地球上における絶対位置の関係を用いて、複数のGPSアンテナ12A、12Bの設置箇所の位置を記述した方程式と、複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々により、複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所で観測された疑似距離とに基づいて、測位対象箇所の位置、および、各受信機の時刻誤差を算出する。この疑似距離は、上記GPS疑似距離データによるGPS衛星とGPSアンテナとの間の距離である。
【0043】
より具体的には、測位対象箇所のECEF座標系における3次元位置ベクトル(x, y, z)、および、2台の受信機14A、14Bの時刻誤差(以降、クロックバイアスとも表記)の合計5個を未知数とし、各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所のECEF座標系における3次元位置ベクトルをFA(x, y, z)、およびFB(x, y, z)とした上で、従来(1台のGPSアンテナによる測位)と同様、各GPSアンテナ12A、12B毎及び衛星毎に式(3)を立式することにより(ここでは、GPSアンテナ12Aについてのみ記載。GPSアンテナ12Bについても同様)、GPSアンテナ12A、12Bの合計5個以上の衛星による観測結果を用いて、測位対象箇所の位置(x, y, z)を算出する。また、受信機14A、14Bの各々の時刻誤差も算出する。なお、設置されたGPSアンテナがN個である場合には、合計(N+3)個以上の衛星による観測結果を用いて、測位対象箇所の位置(x, y, z)を算出する。
【0044】
【数3】

・・・(3)
【0045】
ここで、GPSアンテナ12Aの位置は以下の式で表される。
【0046】
また、(x,y,z)は測位対象箇所の位置であり、CbAは、GPSアンテナ12Aの受信機14Aのクロックバイアス[m](光速をかけて距離に換算したもの)である。また、PRiは、衛星iについて観測された疑似距離[m]であり、(Xsi,Ysi,Zsi)は、衛星iの位置である。
【0047】
このように、測位対象箇所とアンテナ設置箇所との位置関係を適切に考慮することにより、測位対象箇所とは異なる位置で観測された疑似距離を用いても、高精度に、測位対象箇所の位置を算出することが可能となる。
【0048】
次に、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32は、第4工程として、上述のようにして求めたGPSアンテナの設置箇所と測位対象箇所との位置関係、及び測位対象箇所の位置を用いて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の位置を導出する。すなわち、第2工程で算出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所と測位対象箇所との位置関係に、第3工程で算出された地球上における測位対象箇所の位置を適用することで、GPSアンテナ12A、12Bの各々の位置を導出する。
【0049】
推定疑似距離算出部34は、電波を受信した全てのGPS衛星のうち、GPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信した全てのGPS衛星の各々について、GPSアンテナ12A、12B毎に、推定される疑似距離(以下、推定疑似距離という。)を算出する。具体的には、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32で導出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の位置、および受信機14A、14Bの各々の時刻誤差を、式(3)に代入することにより、GPSアンテナ12A、12B毎に推定疑似距離を算出する。
【0050】
疑似距離残差算出部35は、GPSアンテナ12A、12B毎に、観測された疑似距離(以下、観測疑似距離という。)と、推定された推定疑似距離との差分(以下、疑似距離の残差という。)を算出する。具体的には、電波を受信した全てのGPS衛星のうち、GPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信した全てのGPS衛星の各々について、GPSアンテナ12A、12B毎に、式(4)により、疑似距離の残差を算出する。
(疑似距離の残差)=|(観測疑似距離)-(推定疑似距離)| ・・・(4)
【0051】
除外衛星判別部37は、疑似距離残差算出部35で算出された全GPS衛星各々のGPSアンテナ12A、12Bの疑似距離残差の差に基づいて、自車両の位置を推定する際に使用するGPS衛星とから除外する除外対象のGPS衛星を判別する。具体的には、除外衛星判別部37は、GPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信した全てのGPS衛星の各々について、疑似距離残差算出部35で算出された、GPSアンテナ12Aの疑似距離残差と、GPSアンテナ12Bの疑似距離残差との差分(以下、疑似距離残差の差という。)を計算する。そして、GPS衛星毎に計算された疑似距離残差の差の絶対値が閾値以上となるGPSアンテナのGPS衛星を、共通に電波を受信した全てのGPS衛星から除外する除外対象のGPS衛星として判別する。このようにして、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との位置関係や速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0052】
位置導出部40は、GPS衛星の情報を用いて地球上における測位対象箇所の位置を導出する。具体的には、例えば、除外対象のGPS衛星を除くGPS衛星からの衛星情報を用いて、測位対象箇所の位置を算出する。なお、位置導出部40における測位対象箇所の位置の導出は、例えば、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32における第1工程から第3工程による算出と同様の処理によって導出可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0053】
以上のようにして、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との位置関係や速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することで、誤差の少ない衛星からの衛星情報のみを用いて、高精度に、測位対象箇所の位置、および速度の算出が可能となる。
【0054】
次に、第1の実施形態に係る測位装置10の作用について説明する。
図5に、測位装置における衛星選択装置18のコンピュータにおける衛星選択処理ルーチンの内容の一例を示す。
【0055】
姿勢角センサ16によって地磁気を検出すると共に、GPSアンテナ12A、12B、受信機14A、14Bによって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、衛星選択装置18のコンピュータ30において、図5に示す測位処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0056】
ステップS100で、GPS受信機14A、14Bから複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、複数のGPS衛星のGPS疑似距離データ、ドップラー周波数、GPS衛星の位置座標を算出して取得する。同一時刻に取得された複数のGPS衛星分のGPS情報を、GPS情報群として取得する。
【0057】
次に、ステップS102で、GPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所の位置、及び受信機14A、14Bの時刻誤差を算出する。
【0058】
具体的には、第1段階で、姿勢角センサ16からの検出値に基づいて、自車両の姿勢角を算出する。次に、第2段階で、予め求められた、地球上における各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所と、測位対象箇所との間の距離と、各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所の角度と、検出された自車両の姿勢角とに基づいて、測位対象箇所(車両中心)と各アンテナ設置箇所との、ECEF座標系における位置関係を算出する。そして、第3段階では、測位対象箇所の位置、及び複数のGPSアンテナ12A、12Bに対応する各々の受信機14A、14Bの時刻誤差を未知数とし、測位対象箇所の位置、及び測位対象箇所(車両中心)と各アンテナ設置箇所とのECEF座標系における位置関係を用いて、複数のGPSアンテナ12A、12Bの設置箇所の位置を記述した方程式と、複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々により、複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所で観測された疑似距離とに基づいて、測位対象箇所の位置を計算する。また、GPSアンテナ12A、12Bの各々の受信機14A、14Bの時刻誤差を計算する。次に、第4段階で、第2段階で算出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所と測位対象箇所との位置関係に、第3段階で算出された地球上における測位対象箇所の位置を適用することで、GPSアンテナ12A、12Bの各々の位置を導出する。
【0059】
そして、GPS情報群、GPSアンテナ12A、12Bの各々の位置、及びGPSアンテナ12A、12Bに対応する各々の受信機14A、14Bの時刻誤差に基づいて、共通に受信しているGPS衛星のうち、除外対象のGPS衛星を設定する。
【0060】
具体的には、ステップS106で、GPS衛星からの電波を、複数のGPSアンテナ12A、12Bで共通に受信している全てのGPS衛星(例えばn個)のうち何れか1つのGPS衛星(i=1)を設定し、次のステップS108で、ステップS102において導出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の位置、および受信機14A、14Bの各々の時刻誤差を用いて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の推定疑似距離を算出する。次にステップS110では、GPSアンテナ12A、12B毎に、観測された疑似距離である観測疑似距離からステップS112で算出された推定疑似距離を減算した絶対値を算出することで、疑似距離の残差を算出する(式(4)参照)。
【0061】
次のステップS112では、該当するGPS衛星について算出されたGPSアンテナ12Aの疑似距離残差と、GPSアンテナ12Bの疑似距離残差との差分である疑似距離残差の差を計算する。そして、次のステップS114では、疑似距離残差の差の絶対値が閾値以上か否かを判断し、肯定判断の場合は、ステップS116で、現在設定されているGPSアンテナのGPS衛星を、共通に電波を受信した全てのGPS衛星から除外する除外対象のGPS衛星として設定し、出力部20により出力する。これによって、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との位置関係や速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0062】
一方、ステップS114で否定判断の場合は、ステップS118へ処理を移行する。ステップS118では、上記処理を未実行のGPS衛星が残存するか否かを判別することで、全GPS衛星に対して上記処理が終了した(i≧n)かを判断する。上記処理を未実行のGPS衛星が残存する場合は、ステップS118で否定され、ステップS120で、次のGPS衛星(i=i+1)を設定した後に、上記ステップS108へ戻る。一方、全てのGPS衛星について上記処理の実行が終了した場合は、ステップS118で肯定され、上記ステップS100へ戻る。
【0063】
本実施形態に係る測位装置10では、上記のようにして、除外対象のGPS衛星が選択されると、位置導出部40は、選択された除外対象のGPS衛星を除くGPS衛星からの衛星情報を用いて、測位対象箇所の位置を算出する。これによって、車両における複数のGPSアンテナの設置箇所とは異なる測位対象箇所について、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外することで、地球上の位置を精度よく計算することができる。
【0064】
以上説明したように、第1の実施形態に係る測位装置によれば、衛星選択装置18によって、測位対象箇所と各GPSアンテナ設置箇所との位置関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外することにより、車両における測位対象箇所について、地球上の位置を精度よく計算することができる。
【0065】
また、測位対象箇所が、各GPSアンテナ設置箇所の重心ではない場合、あるいは、測位対象箇所と各GPSアンテナ設置箇所が離れている場合であっても、高精度に、測位対象箇所の位置の算出が可能である。
【0066】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の測位装置について、第1の実施形態の測位装置10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態では、算出される受信機14A、14Bの時刻誤差の信頼度が高い場合にのみ、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外する点が、第1の実施形態と主に異なっている。
【0068】
図6に、第2の実施形態に係る測位装置の構成の一例を示す。
図6に示すように、第2の実施形態に係る測位装置210における衛星選択装置218のコンピュータ230は、衛星情報取得部31、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32、推定疑似距離算出部34、疑似距離残差算出部35、受信機時刻誤差信頼度判定部232、および除外衛星判別部237を備えている。受信機時刻誤差信頼度判定部232は、本開示の信頼度判定部の一例である。
【0069】
受信機時刻誤差信頼度判定部232は、アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部32によって算出された受信機の時刻誤差の信頼度を判定する。具体的には、GPSアンテナにおける疑似距離残差の変動に応じて受信機の時刻誤差の信頼度を判定すればよい。例えば、受信機の時刻誤差に誤りが生じた場合、全GPS衛星の各々の疑似距離残差に対して共通に影響する。このため、全GPS衛星についての疑似距離残差が一定以上大きくなっているということは、当該受信機の時刻誤差算出が誤っている可能性が高い、すなわち、信頼度が低いと考えられる。一方、全GPS衛星についての疑似距離残差が一定未満であることは、当該受信機の時刻誤差算出が誤っている可能性が低い、すなわち、信頼度が高いと考えられる。
【0070】
より具体的には、受信機時刻誤差信頼度判定部232は、疑似距離残差算出部35で算出された疑似距離残差を用いて、GPSアンテナ12A、12Bで共通に受信している全てのGPS衛星について、各GPSアンテナ毎に、疑似距離残差を算出する。次に、共通に受信している全てのGPS衛星について、一方のGPSアンテナの疑似距離残差が、他方のGPSアンテナの疑似距離残差より予め定めた閾値以上大きい場合は、疑似距離残差が大きい方のGPSアンテナに接続されている受信機の時刻誤差の信頼度が低いと判定する。これは、受信機の時刻誤差の算出の誤りは、共通に受信している全てのGPS衛星各々の疑似距離残差に対して共通に影響するため、全てのGPS衛星についての疑似距離残差が一定以上大きくなっているということは、当該受信機の時刻誤差算出が誤っている可能性が高いと考えられるためである。また、一方のGPSアンテナの疑似距離残差が、他方のGPSアンテナの疑似距離残差に対して閾値未満の場合は、当該GPSアンテナに接続されている受信機の時刻誤差の信頼度が高いと判定する。
【0071】
除外衛星判別部237は、受信機時刻誤差信頼度判定部232によって判定された受信機の時刻誤差の信頼度に基づいて、疑似距離残差算出部35で算出された全GPS衛星各々のGPSアンテナ12A、12Bの疑似距離残差の差から自車両の位置を推定する際に使用するGPS衛星とから除外する除外対象のGPS衛星を判別する。
【0072】
具体的には、全てのGPS衛星についての疑似距離残差が閾値未満で、受信機時刻誤差信頼度判定部232によって受信機の時刻誤差の信頼度が高いと判定された場合には、上記第1の実施形態と同様に、全GPS衛星各々のGPSアンテナ12A、12Bの疑似距離残差の差に基づいて、除外対象のGPS衛星を判別する。
【0073】
一方、全てのGPS衛星についての疑似距離残差が閾値以上で、受信機時刻誤差信頼度判定部232によって受信機の時刻誤差の信頼度が低いと判定された場合には、除外対象のGPS衛星を判別することを実施しない。例えば、GPSアンテナ12A、12Bの何れのGPSアンテナで受信されたGPS衛星を、除外対象のGPS衛星することなく出力する。
【0074】
このように、GPSアンテナ12A、12Bの各々の受信機ともに、時刻誤差の信頼度が高いと判定された場合についてのみ、上記第1実施形態と同様の衛星選択を行う。これによって、全てのGPS衛星についての疑似距離残差に基づき判定された受信機の時刻誤差の信頼度に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0075】
次に、第2の実施形態に係る測位装置210の作用について説明する。なお、第1の実施形態と同様の処理となる部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図7に、第2の実施形態に係る測位装置における主な処理として、衛星選択装置18のコンピュータにおける衛星選択処理ルーチンの内容の一例を示す。
【0076】
GPSアンテナ12A、12B、受信機14A、14Bによって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、コンピュータ230において、図7に示す測位処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0077】
ステップS100で、GPS受信機14A、14Bから複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、複数のGPS衛星のGPS疑似距離データ、ドップラー周波数、GPS衛星の位置座標を算出して取得する。同一時刻に取得された複数のGPS衛星分のGPS情報を、GPS情報群として取得する。
【0078】
次に、上記と同様にして、ステップS102で、GPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所の位置、及びGPSアンテナ12A、12Bの各々の受信機14A、14Bの時刻誤差を計算する。そして、GPSアンテナ12A、12Bの各々で共通に受信しているGPS衛星のうち、除外対象のGPS衛星を設定する。
【0079】
まず、ステップS106で、複数のGPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信している全てのGPS衛星のうち何れか1つのGPS衛星を設定する。そして、ステップS108で、GPSアンテナ12A、12Bの各々の推定疑似距離を算出し、ステップS110で、GPSアンテナ12A、12B毎に、疑似距離の残差を算出する。
【0080】
ステップS200では、推定疑似距離、および疑似距離の残差の算出処理を未実行のGPS衛星が残存するか否かを判別することで、全GPS衛星に対して上記処理が終了したかを判断する。上記処理を未実行のGPS衛星が残存する場合は、ステップS200で否定され、ステップS202で、次のGPS衛星を設定した後に、上記ステップS200へ戻る。一方、全てのGPS衛星について上記処理の実行が終了した場合は、ステップS200で肯定され、ステップS204へ処理を移行する。
【0081】
ステップS204では、GPSアンテナ12A、12Bで共通に受信している全てのGPS衛星に対する、各GPSアンテナ毎の疑似距離残差のうち、閾値以上の疑似距離残差のGPSアンテナが存在するかを判断する。疑似距離残差が閾値以上のGPSアンテナが存在する場合はステップS204で肯定され、後述する除外対象のGPS衛星を選択する処理を実行することなく、ステップS100へ戻る。一方、疑似距離残差が全て閾値未満である場合はステップS204で否定され、除外対象のGPS衛星を選択する処理を実行するために、ステップS206へ処理を移行する。
【0082】
ステップS206では、複数のGPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信している全てのGPS衛星のうち何れか1つのGPS衛星を設定する。そして、ステップS108で、GPSアンテナ12A、12Bの各々の推定疑似距離を算出し、ステップS110で、GPSアンテナ12A、12B毎に、疑似距離の残差を算出する。
【0083】
次のステップS208では、GPSアンテナ12Aの疑似距離残差と、GPSアンテナ12Bの疑似距離残差との差分である疑似距離残差の差を計算する。次のステップS210では、疑似距離残差の差の絶対値が閾値以上か否かを判断し、肯定判断の場合は、ステップS212で、現在設定されているGPS衛星を、共通に電波を受信した全てのGPS衛星から除外する除外対象のGPS衛星として設定し、出力部20により出力する。これによって、受信機の時刻誤差の信頼度を考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0084】
一方、ステップS210で否定判断の場合は、ステップS214へ処理を移行する。ステップS214では、上記処理を未実行のGPS衛星が残存するか否かを判別することで、全GPS衛星に対して上記処理が終了したかを判断する。上記処理を未実行のGPS衛星が残存する場合は、ステップS214で否定され、ステップS216で、次のGPS衛星を設定した後に、ステップS208へ戻る。一方、全てのGPS衛星について上記処理の実行が終了した場合は、ステップS214で肯定され、上記ステップS100へ戻る。
【0085】
以上説明したように、第2の実施形態に係る測位装置によれば、衛星選択装置18によって、GPSアンテナに接続されている受信機の時刻誤差の信頼度が高い場合にのみ、測位対象箇所と各GPSアンテナ設置箇所との位置関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外することにより、車両における測位対象箇所について、地球上の位置を精度よく計算することができる。
【0086】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、自車両の速度を算出する速度測定装置に、本開示の技術を適用した場合を例に説明する。なお、第3の実施形態の速度測定装置について、第1の実施形態の測位装置10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
図8に、第3の実施形態に係る速度測定装置の構成の一例を示す。
図8に示すように、第3の実施形態に係る速度測定装置310は、複数のGPSアンテナ12A、12Bと、複数の受信機14A、14Bと、姿勢角センサ16と、ジャイロセンサ316と、複数の受信機14A、14Bによって受信されたGPS衛星からの受信信号、及び姿勢角センサ16、ジャイロセンサ316の検出値に基づいて、使用するGPS衛星を選択する衛星選択装置318と、自車両の速度を導出する速度導出処理を実行する速度導出部340とを備えている。衛星選択装置318は、自車両の速度を導出するために用いるGPS衛星を選択する衛星選択処理を実行するコンピュータ330と、出力部20とを備えている。
【0088】
コンピュータ330を機能ブロックで表すと、図8に示すように、衛星情報取得部31と、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332と、推定ドップラー周波数算出部334と、ドップラー周波数残差算出部335と、除外衛星判別部337を備えている。第3実施形態に係る衛星情報取得部31は、本開示の衛星情報取得部及び観測ドップラー周波数導出部の一例である。推定ドップラー周波数算出部334は、本開示の推定ドップラー周波数導出部の一例である。ドップラー周波数残差算出部335は、本開示の残差導出部の一例である。除外衛星判別部337は、本開示の衛星選択部の一例である。
【0089】
アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、自車両の姿勢角に基づき計算されるGPSアンテナ12A、12Bの各々の地球上における設置箇所と測位対象箇所との速度関係、及び取得した衛星情報を用いて定まる測位対象箇所の速度に基づいて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の速度を計算する。また、GPSアンテナ12A、12Bの各々の受信機14A、14Bの時刻誤差の変化量(以降、クロックドリフトと表記する。)を計算する。
【0090】
具体的には、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、第1工程として、ジャイロセンサ316の検出値を用いることにより、当該時刻の自車両の角速度を算出する。次に、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、第2工程として、姿勢角センサ16の検出値から自車両の姿勢角を算出する。
図9に、ある時刻における自車両50の姿勢角の一例を示す。図9(A)は路面に対する真上からの自車両50の姿勢角を示し、図9(B)は路面に対する真横からの自車両50の姿勢角を示している。以降では、図9に示すように、ある時刻における角速度が、ヨーレート=ω、ピッチレート=ゼロ、ロールレート=ゼロ、また、姿勢角が、ヨー角=θ(真北をゼロとして時計回りを正)、ピッチ角=α、ロール角=ゼロであったとする。
【0091】
次に、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、第3工程として、算出された自車両の姿勢角、および各GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数に基づいて、GPSアンテナ12A、12Bの各々について、地球上におけるGPSアンテナの設置箇所と、測位対象箇所との速度関係を計算する。
具体的には、まず、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、予め求められた、地球上における各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所と、測位対象箇所との間の距離と、各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所の角度と、検出された自車両の姿勢角及び角速度とに基づいて、測位対象箇所(車両中心)と各GPSアンテナ設置箇所との、地球上における速度関係を算出する。より具体的には、次の手順で算出する。なお、ここでは、GPSアンテナ12Aを対象とした場合について説明する。
【0092】
(手順1) 以下に示す式(5)により、ENU(East-North-Up)座標系における速度関係を算出する。
図10に、測位対象箇所(車両中心)とGPSアンテナ12Aの設置箇所との速度関係の一例を示す、図10(A)は路面に対して真上から見た場合の速度関係を示し、図10(B)は路面に対して真横から見た場合の速度関係を示し、図10(C)は地表面(EN座標面)に投影された状態を見た場合の速度関係を示す。
【0093】
【数4】

(5)
【0094】
(手順2) 以下に示す式(6)により、ENU座標系からECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系に変換することにより、地球上における速度関係を算出する。同様に、GPSアンテナ12Bの設置箇所についても、測位対象箇所との速度関係を算出する。以降では、このようにして得られた速度関係の算出結果を、「GPSアンテナ12Aの設置箇所の速度=GA(測位対象箇所の速度)」のように表記する。
【0095】
【数5】

(6)
【0096】
ここで、
【0097】
また、αは地球の長半径[m]であり、fは扁平率である。
【0098】
そして、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、第4工程として、計算された速度関係と、取得した衛星情報とを用いて、地球上における測位対象箇所の速度、および、複数のGPSアンテナの各々の受信機のクロックドリフトを計算する。
具体的には、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、測位対象箇所の速度、及び複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々の時刻誤差を未知数とし、測位対象箇所の速度、及び測位対象箇所(車両中心)と各アンテナ設置箇所との、地球上における速度関係を用いて、複数のGPSアンテナ12A、12Bの設置箇所の速度を記述した方程式と、複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々により、複数のGPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所で観測されたドップラー周波数から得られる衛星との相対速度とに基づいて、測位対象箇所の速度、および、各受信機のクロックドリフトを算出する。
【0099】
より具体的には、測位対象箇所のECEF座標系における3次元速度ベクトル(Vx,Vy,Vz)、および、2台の受信機14A、14Bのクロックバイアスの変化量であるクロックドリフトの合計5個を未知数とし、各GPSアンテナ12A、12Bの設置箇所のECEF座標系における3次元速度ベクトルをGA(Vx, Vy, Vz)、およびGB(Vx, Vy, Vz)とした上で、周知の方法(例えば、1台のGPSアンテナによる速度算出)と同様に、各GPSアンテナ12A、12B毎及び衛星毎に式(7)を立式することにより(ここでは、GPSアンテナ12Aについてのみ記載。GPSアンテナ12Bについても同様)、GPSアンテナ12A、12Bの合計5個以上の衛星による観測結果を用いて、測位対象箇所の速度(Vx, Vy, Vz)を算出する。1台のGPSアンテナによる速度算出の一例は、文献(Y. Kojima, “Proposal for a new localization method using tightly coupled integration based on a precise estimation of trajectory from GPS Doppler", Proceedings of AVEC2010, Laughborough UK, 2010.)に記載された技術が挙げられる。なお、設置されたGPSアンテナがN個である場合には、合計(N+3)個以上の衛星による観測結果を用いて、測位対象箇所の速度(Vx, Vy, Vz)、およびクロックドリフトを算出する。
【0100】
【数6】

・・・(7)
【0101】
ここで、GPSアンテナ12Aの速度は以下の式で表される。
【0102】
また、(Vx,Vy,Vz)は測位対象箇所の速度であり、CbvAは、GPSアンテナ12Aの受信機14Aのクロックドリフト[m/s](光速をかけて速度に換算したもの)である。(xA,yA,zA)は、GPSアンテナ12Aの位置である。また、Diは、衛星iについて観測されたドップラー周波数[Hz]であり、(Xsi,Ysi,Zsi)は、衛星iの位置であり、riは、以下の式で表わされる。
【0103】
また、f1は、搬送波周波数(1575.42×106)[Hz]であり、Cは光速(2.99792458×108)[m/s]であり、(Vxsi,Vysi,Vzsi)は、衛星iの速度である。
【0104】
このように、測位対象箇所とアンテナ設置箇所との速度関係を適切に考慮することにより、測位対象箇所とは異なる位置で観測されたドップラー周波数を用いても、高精度に、測位対象箇所の速度を算出することが可能となる。
【0105】
次に、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332は、第5工程として、上述のようにして求めたGPSアンテナの設置箇所と測位対象箇所との速度関係、及び測位対象箇所の位置を用いて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の速度を導出する。すなわち、第3工程で算出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所と測位対象箇所との速度関係に、第4工程で算出された地球上における測位対象箇所の速度を適用することで、GPSアンテナ12A、12Bの各々の速度を導出する。
【0106】
推定ドップラー周波数算出部334は、電波を受信した全てのGPS衛星のうち、GPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信した全てのGPS衛星の各々について、GPSアンテナ12A、12B毎に、推定されるドップラー周波数(以下、推定ドップラー周波数という。)を算出する。具体的には、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332で導出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の速度、および受信機14A、14Bの各々のクロックドリフトを、式(7)に代入することにより、GPSアンテナ12A、12B毎に推定ドップラー周波数を算出する。
【0107】
ドップラー周波数残差算出部335は、GPSアンテナ12A、12B毎に、観測されたドップラー周波数(以下、観測ドップラー周波数という。)と、推定された推定ドップラー周波数との差分(以下、ドップラー周波数残差という。)を算出する。具体的には、電波を受信した全てのGPS衛星のうち、GPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信した全てのGPS衛星の各々について、GPSアンテナ12A、12B毎に、式(8)により、ドップラー周波数の残差を算出する。
(ドップラー周波数残差)=|(観測ドップラー周波数)-(推定ドップラー周波数)|
・・・(8)
【0108】
除外衛星判別部337は、ドップラー周波数残差算出部335で算出された全GPS衛星各々のGPSアンテナ12A、12Bのドップラー周波数残差の差に基づいて、自車両の速度を推定する際に使用するGPS衛星とから除外する除外対象のGPS衛星を判別する。具体的には、除外衛星判別部337は、GPSアンテナ12A、12Bで共通に電波を受信した全てのGPS衛星の各々について、ドップラー周波数残差算出部335で算出された、GPSアンテナ12Aのドップラー周波数残差と、GPSアンテナ12Bのドップラー周波数残差との差分(以下、ドップラー周波数残差の差という。)を計算する。そして、GPS衛星毎に計算されたドップラー周波数残差の差の絶対値が閾値以上となるGPSアンテナのGPS衛星を、共通に電波を受信した全てのGPS衛星から除外する除外対象のGPS衛星として判別する。このようにして、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0109】
速度導出部340は、GPS衛星の情報を用いて地球上における測位対象箇所の速度を導出する。具体的には、例えば、除外対象のGPS衛星を除くGPS衛星からの衛星情報を用いて、測位対象箇所の速度を算出する。なお、速度導出部340における測位対象箇所の速度の導出は、例えば、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332における第1工程から第4工程による算出と同様の処理によって導出可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0110】
以上のようにして、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することで、誤差の少ない衛星からの衛星情報のみを用いて、高精度に、測位対象箇所の位置、および速度の算出が可能となる。
【0111】
次に、第3の実施形態に係る速度測定装置310の作用について説明する。
図11に、速度測定装置における衛星選択装置318のコンピュータにおける衛星選択処理ルーチンの内容の一例を示す。
【0112】
姿勢角センサ16によって地磁気を検出し、ジャイロセンサ316によって角加速度を検出すると共に、GPSアンテナ12A、12B、受信機14A、14Bによって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、衛星選択装置318のコンピュータ330において、図11に示す速度測定処理ルーチンが繰り返し実行される。
【0113】
ステップS300で、GPS受信機14A、14Bから複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、複数のGPS衛星のGPS疑似距離データ、ドップラー周波数、GPS衛星の位置座標を算出して取得する。同一時刻に取得された複数のGPS衛星分のGPS情報を、GPS情報群として取得する。
【0114】
次に、ステップS302で、GPSアンテナ12A、12Bの各々の設置箇所の速度を算出する。具体的には、第1段階で、ジャイロセンサ316の検出値を用いることにより、当該時刻の自車両の角速度を算出し、第2段階で、姿勢角センサ16の検出値から自車両の姿勢角を算出する。次の第3段階で、GPSアンテナ12A、12Bの各々について、地球上におけるGPSアンテナの設置箇所と、測位対象箇所との速度関係を計算する。次の第4段階で、計算された速度関係と、取得した衛星情報とを用いて、地球上における測位対象箇所の速度を計算する。また、GPSアンテナ12A、12Bの各々の受信機14A、14Bのクロックドリフトを計算する。そして、第5段階で、求めたGPSアンテナの設置箇所と測位対象箇所との速度関係、及び測位対象箇所の位置を用いて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の速度を導出する。
【0115】
そして、GPS情報群、GPSアンテナ12A、12Bの各々の位置、及びGPSアンテナ12A、12Bに対応する各々の受信機14A、14Bのクロックドリフトに基づいて、共通に受信しているGPS衛星のうち、除外対象のGPS衛星を設定する。
【0116】
具体的には、ステップS306で、複数のGPSアンテナ12A、12BにおいてGPS衛星からの電波を共通に受信している全てのGPS衛星(例えばn個)のうち何れか1つのGPS衛星(i=1)を設定し、次のステップS308で、ステップS304において導出されたGPSアンテナ12A、12Bの各々の速度、および受信機14A、14Bの各々のクロックドリフトを用いて、GPSアンテナ12A、12Bの各々の推定ドップラー周波数を算出する。次にステップS310では、GPSアンテナ12A、12B毎に、観測されたドップラー周波数である観測ドップラー周波数からステップS308で算出された推定ドップラー周波数を減算した絶対値を算出することで、ドップラー周波数の残差を算出する(式(8)参照)。
【0117】
次のステップS312では、該当するGPS衛星について算出されたGPSアンテナ12Aのドップラー周波数の残差と、GPSアンテナ12Bのドップラ^周波数の残差との差分であるドップラー周波数残差の差を計算する。そして、次のステップS314では、ドップラー周波数残差の差の絶対値が閾値以上か否かを判断し、肯定判断の場合は、ステップS316で、現在設定されているGPSアンテナのGPS衛星を、共通に電波を受信した全てのGPS衛星から除外する除外対象のGPS衛星として設定し、出力部20により出力する。これによって、測位対象箇所と各GNSSアンテナ設置箇所との位置関係や速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0118】
一方、ステップS314で否定判断の場合は、ステップS318へ処理を移行する。ステップS318では、上記処理を未実行のGPS衛星が残存するか否かを判別することで、全GPS衛星に対して上記処理が終了した(i≧n)かを判断する。上記処理を未実行のGPS衛星が残存する場合は、ステップS318で否定され、ステップS320で、次のGPS衛星(i=i+1)を設定した後に、上記ステップS308へ戻る。一方、全てのGPS衛星について上記処理の実行が終了した場合は、ステップS318で肯定され、上記ステップS300へ戻る。
【0119】
本実施形態に係る速度測定装置310では、上記のようにして、除外対象のGPS衛星が選択されると、速度導出部340は、選択された除外対象のGPS衛星を除くGPS衛星からの衛星情報を用いて、測位対象箇所の速度を算出する。これによって、車両における複数のGPSアンテナの設置箇所とは異なる測位対象箇所について、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外することで、地球上の速度を精度よく計算することができる。
【0120】
以上説明したように、第3の実施形態に係る速度測定装置によれば、衛星選択装置318によって、測位対象箇所と各GPSアンテナ設置箇所との速度関係を適切に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外することにより、車両における測位対象箇所について、地球上の速度を精度よく計算することができる。
【0121】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態の速度測定装置について、第3の実施形態の速度測定装置310と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0122】
第4の実施形態では、算出される受信機各々のクロックドリフトの信頼度が高い場合にのみ、マルチパス誤差の影響を受けたと推定されるGPS衛星を事前に除外する点が、第3の実施形態と主に異なっている。
【0123】
図12に、第4の実施形態に係る速度測定装置の構成の一例を示す。
図12に示すように、第4の実施形態に係る速度測定装置410における衛星選択装置418のコンピュータ430は、衛星情報取得部31と、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332と、推定ドップラー周波数算出部334と、ドップラー周波数残差算出部335と、受信機クロックドリフト信頼度判定部436と、除外衛星判別部437を備えている。受信機クロックドリフト信頼度判定部436は、本開示の信頼度判定部の一例である。
【0124】
受信機クロックドリフト信頼度判定部436は、アンテナ速度・受信機時刻誤差変化量算出部332によって算出された受信機のクロックドリフトの信頼度を判定する。具体的には、GPSアンテナにおけるドップラー周波数残差の変動に応じて受信機のクロックドリフトの信頼度を判定すればよい。例えば、受信機のクロックドリフトに誤りが生じた場合、全GPS衛星の各々のドップラー周波数残差に対して共通に影響する。このため、全GPS衛星についてのドップラー周波数残差が一定以上大きくなっているということは、当該受信機のクロックドリフトの算出が誤っている可能性は高い、すなわち、信頼度が低いと考えられる。一方、全GPS衛星についてのドップラー周波数の残差が一定未満であることは、当該受信機のクロックドリフトの算出が誤っている可能性は低い、すなわち、信頼度が高いと考えられる。
【0125】
より具体的には、受信機クロックドリフト信頼度判定部436は、ドップラー周波数残差算出部335で算出されたドップラー周波数残差を用いて、GPSアンテナ12A、12Bで共通に受信している全てのGPS衛星について、各GPSアンテナ毎に、ドップラー周波数の残差を算出する。次に、共通に受信している全てのGPS衛星について、一方のGPSアンテナのドップラー周波数の残差が、他方のGPSアンテナのドップラー周波数の残差より予め定めた閾値以上大きい場合は、ドップラー周波数の残差が大きい方のGPSアンテナに接続されている受信機のクロックドリフトの信頼度が低いと判定する。これは、受信機のクロックドリフトの算出の誤りは、共通に受信している全てのGPS衛星各々のドップラー周波数の残差に対して共通に影響するため、全てのGPS衛星についての疑似距離残差が一定以上大きくなっているということは、当該受信機のクロックドリフトの算出が誤っている可能性が高いと考えられるためである。また、一方のGPSアンテナのドップラー周波数の残差が、他方のGPSアンテナのドップラー周波数の残差に対して閾値未満の場合は、当該GPSアンテナに接続されている受信機のクロックドリフトの信頼度が高いと判定する。
【0126】
除外衛星判別部437は、受信機クロックドリフト信頼度判定部436によって判定された受信機のクロックドリフトの信頼度に基づいて、ドップラー周波数残差算出部335で算出された全GPS衛星各々のGPSアンテナ12A、12Bのドップラー周波数残差の差から自車両の速度を推定する際に使用するGPS衛星とから除外する除外対象のGPS衛星を判別する。
【0127】
具体的には、全てのGPS衛星についてのドップラー周波数残差が閾値未満で、受信機クロックドリフト信頼度判定部436によって受信機のクロックドリフトの信頼度が高いと判定された場合には、上記第3の実施形態と同様に、全GPS衛星各々のGPSアンテナ12A、12Bのドップラー周波数残差の差に基づいて、除外対象のGPS衛星を判別する。
【0128】
一方、全てのGPS衛星についてのドップラー周波数残差が閾値以上で、受信機クロックドリフト信頼度判定部436によって受信機のクロックドリフトの信頼度が低いと判定された場合には、除外対象のGPS衛星を判別することを実施しない。例えば、GPSアンテナ12A、12Bの何れのGPSアンテナで受信されたGPS衛星を、除外対象のGPS衛星することなく出力する。
【0129】
このように、GPSアンテナ12A、12Bの各々の受信機ともに、クロックドリフトの信頼度が高いと判定された場合についてのみ、上記第3実施形態と同様の衛星選択を行う。これによって、全てのGPS衛星についてのドップラー周波数残差に基づき判定された受信機のクロックドリフトの信頼度に考慮して、マルチパス誤差の影響を受けた衛星を事前に除外することが可能となる。
【0130】
なお、第4の実施形態に係る速度測定装置410の他の構成及び作用については、第2の実施形態、第3の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0131】
以上説明したように、第4の実施形態に係る速度測定装置によれば、検出された自車両の受信機のクロックドリフトの信頼度が高い場合にのみ、地球上における測位対象箇所の速度を計算することにより、測位対象箇所について、地球上の速度を安定して計算することができる。
【0132】
なお、上記の実施形態において、車両に搭載される測位装置又は速度測定装置に、本開示の技術を適用する場合を例に説明したが、本開示の測位装置又は速度測定装置が搭載される移動体は車両に限定されない。例えば、測位装置又は速度測定装置をロボットに搭載してもよい。
【0133】
また、上記の実施形態では、車両に搭載される測位装置又は速度測定装置に、本開示の技術を適用する場合を例に説明したが、本開示の測位装置および速度測定装置を搭載し、測位および速度を導出する場合に本開示の技術を適用してもよい。
【0134】
また、衛星航法システムとしてGPSを用いた場合を例に説明したが、他の衛星測位システム(GLONASS,BeiDou,Galileo,QZSS)を用いてもよいし、これらを併用してもよい。
【符号の説明】
【0135】
10、210 測位装置
12A、12B GPSアンテナ
14A、14B 受信機
16 姿勢角センサ
18、218、318、418 衛星選択装置
20 出力部
30、230、330、340 コンピュータ
31 衛星情報取得部
32 アンテナ位置・受信機時刻誤差算出部
34 推定疑似距離算出部
35 疑似距離残差算出部
37 除外衛星判別部
40 位置導出部
310、410 速度測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12