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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】便器用洗浄水排出装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/35 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
E03D1/35
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018204678
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070603
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000107332
【氏名又は名称】ジャニス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 努
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 裕二
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 和宏
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-79569(JP,A)
【文献】特開平10-114988(JP,A)
【文献】特開2012-102508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/34-1/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーの回転方向によって2種類の洗浄水量を選択できる便器用洗浄水排出装置であって、
下部に排水孔を備えた器具本体と、
この器具本体に支持され、排水孔を開閉するフロート弁と、
フロート弁の上面に揺動可能に軸支された揺動体と、
操作レバーと揺動体とを連結し、操作レバーの回転方向によって揺動体を異なる方向に引き上げる引き紐とを備え、
器具本体には係止用凸部が形成されており、揺動体には片側方向に引き上げられたときにはこの係止用凸部と当たり、反対側方向に引き上げられたときにはこの係止用凸部に接触しないアームが形成されていることを特徴とする便器用洗浄水排出装置。
【請求項2】
揺動体の揺動軸が器具本体の左右方向であることを特徴とする請求項1に記載の便器用洗浄水排出装置。
【請求項3】
揺動体の揺動軸が器具本体の前後方向であることを特徴とする請求項1に記載の便器用洗浄水排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーの回転方向によって2種類の洗浄水量を選択できる便器用洗浄水排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンク式の水洗便器は、タンクの上部に設けられた操作レバーの回転方向を選択することによって、洗浄水量を2通りに切り替えることができるものが一般的である。そのため、特許文献1には、排水孔を開閉するフロート弁の上面に、操作レバーの回転方向に応じて作動するリンクと、蓋連結部材とを設けた構造が提案されている。
【0003】
この特許文献1の構造では、フロート弁の引き上げ方向が少量側であるときには、蓋連結部材の係止片が器具本体の係止用凸部に当たるためフロート弁の引き上げ量が小さく制限される。しかしフロート弁の引き上げ方向が多量側であるときには、引き紐の下部の浮具ガイドがリンクを回転させ、リンクがさらに蓋連結部材を反転させる。その結果、蓋連結部材の係止片が器具本体の係止用凸部に当たらなくなり、フロート弁の引き上げ量を大きくすることができる。
【0004】
しかしこの特許文献1の構造は、フロート弁の引き上げ量を規制するために、リンク、蓋連結部材、浮具ガイドなどの多くの部品が必要であってコスト高となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-79569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、部品点数を削減してコストダウンを図るとともに、故障発生の可能性を小さくした便器用洗浄水排出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、操作レバーの回転方向によって2種類の洗浄水量を選択できる便器用洗浄水排出装置であって、下部に排水孔を備えた器具本体と、この器具本体に支持され、排水孔を開閉するフロート弁と、フロート弁の上面に揺動可能に軸支された揺動体と、操作レバーと揺動体とを連結し、操作レバーの回転方向によって揺動体を異なる方向に引き上げる引き紐とを備え、器具本体には係止用凸部が形成されており、揺動体には片側方向に引き上げられたときにはこの係止用凸部と当たり、反対側方向に引き上げられたときにはこの係止用凸部に接触しないアームが形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、揺動体の揺動軸を器具本体の左右方向とした構造とすることも、請求項3のように、揺動体の揺動軸を器具本体の前後方向とした構造とすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便器用洗浄水排出装置は、操作レバーの回転方向を切り替えることによって、フロート弁の上面の揺動体を直接揺動させ、揺動体に一体に形成されたアームが器具本体に形成された係止用凸部に当たる角度と当たらない角度を選択することができる。このため操作レバーの回転方向によってフロート弁の開口角度を変え、2種類の洗浄水量を選択できるうえ、従来のリンク、蓋連結部材、浮具ガイドなどの多くの部品を省略し、構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態を示す分解斜視図である。
図2】少量排水時の状態を示す正面図である。
図3】少量排水時の状態を示す側面図である。
図4】揺動体の斜視図である。
図5】第1の実施形態のフロート弁を示す斜視図である。
図6】少量排水時のストッパを示す図である。
図7】多量排水時のストッパを示す図である。
図8】フロート弁のアーム保持機構の説明図である。
図9】第1の実施形態の多量および少量排水時の引き紐の方向を示す正面図である。
図10】多量排水時の状態を示す側面図である。
図11】第2の実施形態のフロート弁を示す斜視図である。
図12】第2の実施形態の揺動体を示す斜視図である。
図13】少量排水時の状態を示す側面図である。
図14】多量排水時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は第1の実施形態を示す分解斜視図、図2はその少量排水状態における正面図、図3はその側面図である。
【0012】
これらの図において、10は下部に排水孔11を備えた器具本体であり、排水孔11の後方に垂直に立ち上る筒状部12が設けられている。この筒状部12の上方には周知のオーバーフローパイプ13が取り付けられている。オーバーフローパイプ13はタンク内の水位がその上端を越えたときに、排水孔11に流下させる機能を有するものである。筒状部12の前面には、四角形の係止用凸部40が形成されている。この係止用凸部40の役割については後述する。
【0013】
14は排水孔11の上方に設けられ、排水孔11を開閉するフロート弁である。フロート弁14は円形の本体15と、その下面に取り付けられた円形のパッキン16と、上部半球部材17と、下部半球部材18とを備えている。上部半球部材17と下部半球部材18とは、フロートを形成する部材である。円形の本体15の上面の左右には一対のアーム19が突設されており、それらの先端部の下面に形成された凹部20を、器具本体10の筒状部12の左右両側に突設された軸21に嵌めてある。このためフロート弁14は、軸21を回転中心として上下方向に開閉することができ、下降したときにはパッキン16が排水孔11の上端面に水圧により密着し、タンク内の水が流出することを防止する。
【0014】
また、フロート弁14の円形の本体15の上面には、軸受22が設けられている。この実施形態では前後方向と左右方向にそれぞれ一対の軸受22が設けられている。
【0015】
23はフロート弁14の上面に取り付けられる揺動体である。図1に示されるように、揺動体23はフロート弁14の上部半球部材17の上部を覆う半球部24と、軸受22に軸支される軸部25とを備えている。図5に示すように、この第1の実施形態では、揺動体23の軸25は前後方向の軸受22に取り付けられている。また揺動体23はその頂部に、図1に示す引き紐26の下部を係止するための係止部27を備えている。引き紐26の上端はタンクの上部に軸支された図示しない操作レバーに接続されている。このため、操作レバーの操作方向を左右に切り替えることにより、フロート弁14の上面で揺動体23を左右に揺動させることができる。なお、引き紐26としては図示したボールチェーンのほか、ワイヤ等の他の紐状体を用いることもできる。
【0016】
図4に示すように、揺動体23の一方の軸部25にはL字状のアーム28が一体的に形成されており、その先端にはストッパ29が形成されている。このストッパ29は平坦な上面30と、斜面31を備えている。上記のように揺動体23を左右に揺動させると、揺動体23に一体に形成されたアーム28及びストッパ29も左右に揺動することとなる。
【0017】
さらに図6に示すように、フロート弁14のアーム19の一方には、L字状のアーム28の上昇位置を規制するアーム保持機構32が形成されている。図6図7図8に示すように、このアーム保持機構32はL字状のアーム28のうちストッパ29に隣接する部位の上下方向の位置を規制する上下2つの凹部34、35を備えている。これらの凹部34、35は、一方のアーム19の内側に突出させた壁36に形成されている。少量時には図6図8(A)に示すようにL字状のアーム28が上側の凹部34に入り、多量時には図7図8(B)に示すように下側の凹部35に入る。これによってL字状のアーム28の位置を安定させ、予期せぬ外力や水流圧などによって開口状態が変化することを防止する。
【0018】
このほか、引き紐26には浮玉33が取り付けられている。これは後述するように、フロート弁14の開口角度を維持するための部材である。
【0019】
このように構成された本発明の便器用洗浄水排出装置は、操作レバーの回転方向を少量方向とした場合には、図9に示すように引き紐26は中心よりも右側方向となり、揺動体23及びフロート弁14には右上向きの力が作用する。この場合にはフロート弁14の上面に配置されたL字状のアーム28の先端のストッパ29は図6の位置にある。
【0020】
この図6の状態では、フロート弁14を少しだけ持ち上げると揺動体23のストッパ29が器具本体10の係止用凸部40に当たるため、フロート弁14を図3の位置より高く持ち上げることができない。図3の状態では排水孔11に対するフロート弁14の開口角度が小さいために排出流量が少なく、またフロート弁14上に貯水された水の水圧がフロート弁14に作用する。このため操作レバーから手を離すと、フロート弁14は直ぐに閉止しようとする。しかし浮玉33に閉止方向の力に上回る浮力を持たせておけば、操作レバーから手を離しても開口状態を維持することができる。
【0021】
このようにしてフロート弁14が開口状態を維持し、徐々に水位が低下して行くと、浮玉33が水中から空気中に出てくる。すると浮玉33による浮力が失われるので開口状態を維持できなくなり、フロート弁14に掛かる水圧及び浮玉33の自体の重量によりフロート弁14が排水孔11を閉止する。このため、浮玉33の位置を変えることによって洗浄水量の調整が可能である。
【0022】
また、操作レバーの回転方向を図9に想像線で示す多量方向とした場合には、揺動体23の頂部の係止部27に斜め方向の力が加わり、揺動体23は軸部25を中心として左方向に揺動する。このとき揺動体23のL字状のアーム28も左方向に回転し、アーム28の先端のストッパ29は図7の位置に移動する。
【0023】
この図7の状態では、フロート弁14を持ち上げてもストッパ29は器具本体10の係止用凸部40に当たらないため、フロート弁14を図10に示すように高く持ち上げることができる。図10の状態では排水孔11に対するフロート弁14の開口角度が大きく、排出流量が多くなるため、水圧よりも開口方向への力が勝り、直ぐに閉止することはない。しかし水位がフロート弁14の位置に差し掛かった時点から、フロート弁14は水面の低下とともに閉止される。
【0024】
以上に説明したように、本発明の便器用洗浄水排出装置は、操作レバーの回転方向を切り替えることによって、洗浄水量を選択できる。しかも従来のリンク、蓋連結部材、浮具ガイドなどの多くの部品を省略し、構造を簡素化することができる利点がある。
【0025】
図11以下に本発明の第2の実施形態を示す。上記した第1の実施形態では、揺動体23の軸部25を、フロート弁14の上面に形成された前後方向の軸受22に支持させ、揺動体23を左右方向に揺動可能とした。しかし第2の実施形態では、図11に示すように揺動体23の軸部25を左右方向の軸受22に支持させ、揺動体23を前後方向に揺動可能としている。
【0026】
図12に示すように、第2の実施形態の揺動体23は後方に斜め上向きに延びる平板状のアーム50を備えている。
【0027】
第2の実施形態の便器用洗浄水排出装置は、操作レバーまたは器具本体10の取付位置を変えて、少量洗浄の場合には引き紐26を図13に示すように後方に引き、多量洗浄の場合には図14に示すように前方に引くようになっている。
【0028】
図13の場合には揺動体23は後方に揺動されるので、フロート弁14を持ち上げたときにアーム50が器具本体10の係止用凸部40に当たり、開口角度が小さくなる。しかし図14の場合には揺動体23は前方に揺動されるのでアーム50は位置を変え、フロート弁14を持ち上げたときにアーム50が器具本体10の係止用凸部40に当たることはなく、大きく開口させることができる。
【0029】
この第2の実施形態の便器用洗浄水排出装置も、従来のリンク、蓋連結部材、浮具ガイドなどの多くの部品を省略し、構造を簡素化することができる利点がある。
【符号の説明】
【0030】
10 器具本体
11 排水孔
12 筒状部
13 オーバーフローパイプ
14 フロート弁
15 本体
16 パッキン
17 上部半球部材
18 下部半球部材
19 アーム
20 凹部
21 軸
22 軸受
23 揺動体
24 半球部
25 軸部
26 引き紐
27 係止部
28 アーム
29 ストッパ
30 上面
31 斜面
32 アーム保持機構
33 浮玉
34 凹部
35 凹部
36 壁
40 係止用凸部
50 平板状のアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14