(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/06 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
F24H9/06 301A
(21)【出願番号】P 2018003642
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】中西 渉
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009748(JP,A)
【文献】実開昭58-103388(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/06
H05K 5/02
F24F 1/0057
A47G 27/00,1/16
F16B 21/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置を収容する筐体の背面の上部に、鉛直面への取付用の取付金具を設けてなる給湯器であって、
前記取付金具には、
正面視で前記筐体から上方へ突出して前記鉛直面へ固定される後側の第1の取付部と、前記背面へ固定される前側の第2の取付部と、前記第1の取付部と前記第2の取付部とを前後への段違いで平行に連結する連結部とが設けられ、前記第1の取付部には、前記鉛直面に設けた係止部に係止させるための仮止め孔と、前記鉛直面に固定するための本止め孔とがそれぞれ形成されると共に、前記仮止め孔の下側に、前側へ膨出する膨出部が、前記仮止め孔の下縁から前記連結部に至る長さで上下方向に形成されて、前記膨出部の裏側に、前記係止部が前記連結部の下方から前記仮止め孔へ相対移動可能な案内空間が形成されていることを特徴とする給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置等を収容して内部の通水を加熱して出湯する給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、筐体内にバーナや熱交換器等を含む燃焼装置を収容してなり、例えば特許文献1に開示されるように、筐体の背面上下に設けた取付金具を介してネジやボルトによって建物の壁面等に取り付けられる。この取付金具は、壁面側へ取り付けられる上下方向の上取付部と、筐体側へ取り付けられる上下方向の下取付部とを、水平な連結部によって前後へ段違いで平行に連結した板状体で、上取付部には、壁面等に仮止めするための仮止め孔と、本止めするための本止め孔とが設けられている。すなわち、壁面等にねじ込んだ仮止めネジに仮止め孔を係止させて仮止め(吊り下げ)した状態で、本止め孔を介してネジ等を壁面等にねじ込むことで筐体が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、仮止めは、筐体を持ち上げて上側の取付金具を仮止めネジに係止させる作業となるため、取付金具とその後側に隠れる仮止めネジとの目視確認がしにくく、仮止め孔に仮止めネジをスムーズに通して係止させるのに手間がかかる場合があった。仮止め孔の面積を大きくすることも考えられるが、位置を合わせる際に仮止め孔が仮止めネジより上方にずれると、取付金具の連結部に仮止めネジが引っ掛かり、結局何度もやり直す必要が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、取付時の仮止め作業がスムーズに行えて施工性に優れる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃焼装置を収容する筐体の背面の上部に、鉛直面への取付用の取付金具を設けてなる給湯器であって、
取付金具には、正面視で筐体から上方へ突出して鉛直面へ固定される後側の第1の取付部と、背面へ固定される前側の第2の取付部と、第1の取付部と第2の取付部とを前後への段違いで平行に連結する連結部とが設けられ、第1の取付部には、鉛直面に設けた係止部に係止させるための仮止め孔と、鉛直面に固定するための本止め孔とがそれぞれ形成されると共に、仮止め孔の下側に、前側へ膨出する膨出部が、仮止め孔の下縁から連結部に至る長さで上下方向に形成されて、膨出部の裏側に、係止部が連結部の下方から仮止め孔へ相対移動可能な案内空間が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、取付金具の膨出部の裏側に、係止部が連結部の下方から仮止め孔へ相対移動可能な案内空間を形成したことで、取付金具の仮止め孔と係止部との目視確認がしにくくても、案内空間を利用して仮止め孔に係止部を簡単に通して係止させることができる。よって、取付時の仮止め作業がスムーズに行えて施工性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】取付金具の説明図で、(A)が正面、(B)が平面、(C)が底面、(D)が側面をそれぞれ示す。
【
図5】(A)(B)は給湯器を仮止めする手順を示す説明図(第1の取付部は縦断面で示す)である。
【
図6】給湯器を壁面に取り付けた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す斜視図、
図2は正面図である。
給湯器1は、前面に開口を形成して天板3及び底板4、左右の側板5,5、背板6とからなる縦長箱状の筐体2と、筐体2の前面を閉塞するフロントカバー7とを備えている。筐体2内には、バーナを有する燃焼部、熱交換器を有する熱交換部、排気部を含む燃焼装置等の構成部品が収容されて、フロントカバー7には、排気部の前面に設けた横長の排気口8が嵌合する長孔9が形成され、前面下側と側方とには、燃焼用空気の吸気孔10,10・・が形成されている。
【0010】
筐体2の背面を形成する背板6の上下には、壁面等の鉛直面に取り付けるための取付金具11,11が設けられている。この取付金具11は、
図3に示すように、第1の取付部12と、第2の取付部13と、両取付部12,13の間で両取付部12,13を前後へ段違いで平行に連結する連結部14とを備える金属板である。
【0011】
まず、第1の取付部12は、横長矩形状を有し、左右方向の中央には、筐体2が取り付けられる鉛直面に設けた仮止めネジ等に係止させるための半円形の仮止め孔15が形成されている。また、仮止め孔15の下側には、第2の取付部13側(給湯器1への取付状態では前側)へ膨出する横断面半円状の膨出部16が、仮止め孔15の下側内縁から連結部14の上面まで跨がる長さで上下方向に形成されている。これにより第1の取付部12の裏側(第2の取付部13と反対側)には、連結部14の下方から仮止め孔15まで連通する案内空間17が形成される。この案内空間17の左右方向の幅は、後述する仮止めネジ30の頭部が通過可能な大きさとなっている。
【0012】
また、仮止め孔15を中心とした左右対称位置には、鉛直面にネジ止めするための本止め孔19,19が、左右に延びる長円状に形成され、本止め孔19,19の両外側には、左右一対の丸孔20,20が形成されている。
さらに、仮止め孔15と本止め孔19との間で第1の取付部12の下側には、左右一対の補強リブ21,21が、連結部14から上向きに形成されている。
【0013】
次に、第2の取付部13は、第1の取付部12よりも左右に長く、上下に短い横長矩形状を有している。これにより、取付金具11は上下非対称の形状となっている。
第2の取付部13には、背板6にネジ止めするための、間隔が異なる二対の内側取付孔22,22及び外側取付孔23,23とがそれぞれ形成されて、内側取付孔22,22の間には、左右一対の補強リブ24,24が、連結部14から下向きに形成されている。
【0014】
以上の如く構成された給湯器1を取り付ける場合、まず、
図4に示すように、2つの取付金具11,11を、背板6の上下に分けて、上側では、第2の取付部13を背板6側に向け、第1の取付部12を上向き且つ後側に向けた姿勢として、第2の取付部13の外側取付孔23,23を介して左右一対のネジ25,25によって背板6へ固定する。この状態で第1の取付部12は筐体2の上側へ突出し、仮止め孔15及び本止め孔19,19、丸孔20,20を正面視で筐体2の上方へ露出させている。
一方、背板6の下側では、第2の取付部13を背板側に向け、第1の取付部12を下向き且つ後側に向けた姿勢として、第2の取付部13の内側取付孔22,22を介して左右一対のネジ26,26によって背板6へ固定する。但し、上下で同じ取付孔を用いて背板6へ固定してもよいし、取付金具11において内側取付孔22と外側取付孔23との一方を省略してもよい。
【0015】
そして、上側の取付金具11の第1の取付部12を用いて筐体2を壁面に仮止めする。すなわち、筐体2を持ち上げて仮止め孔15に、壁面に設けた係止部としての仮止めネジを係止させて吊り下げる作業となる。
このとき、仮止め孔15と仮止めネジとが目視できれば、仮止めネジに合わせて直接係止させればよいが、仮止め孔15と仮止めネジとが正確に目視できなくても、
図5(A)に示すように、第1の取付部12を仮止めネジ30の上側で壁面Wに当接させ、そのまま筐体2ごと取付金具11を下方へスライドさせれば、同図(B)に示すように、仮止めネジ30が連結部14と干渉することなく膨出部16の裏側の案内空間17を通過して仮止め孔15へ相対的に移動し、仮止め孔15に係止する。よって、簡単に仮止めすることができる。
【0016】
仮止め後、
図6に示すように、本止め孔19,19を介して左右一対のネジ27,27を壁面Wにねじ込んで本止めする。また、下側の取付金具11では、第1の取付部12の本止め孔19,19を介して左右一対のネジ28,28を壁面Wにねじ込む。すると、給湯器1は、上下の取付金具11,11を介して壁面Wに取り付けられる。
なお、壁面Wに対して絶縁及び防振を図る場合は、ネジ27,28にスリーブ状のゴムを取り付けて、本止め孔19,19ではなく丸孔20,20を介してゴム付きのネジ27,28を壁面Wにねじ込むこともできる。
【0017】
このように、上記形態の給湯器1によれば、取付金具11には、壁面Wへ固定される後側の第1の取付部12と、背板6へ固定される前側の第2の取付部13と、第1の取付部12と第2の取付部13とを前後への段違いで平行に連結する連結部14とが設けられ、第1の取付部12には、壁面Wに設けた仮止めネジ30に係止させるための仮止め孔15と、壁面Wに固定するための本止め孔19とがそれぞれ形成されると共に、仮止め孔15の下側に、前側へ膨出する膨出部16が、仮止め孔15の下縁から連結部14に至る長さで上下方向に形成されて、膨出部16の裏側に、仮止めネジ30が連結部14の下方から仮止め孔15へ相対移動可能な案内空間17が形成されていることで、取付金具11の仮止め孔15と仮止めネジ30との目視確認がしにくくても、案内空間17を利用して仮止め孔15に仮止めネジ30を簡単に通して係止させることができる。よって、取付時の仮止め作業がスムーズに行えて施工性に優れたものとなる。
【0018】
なお、仮止め孔の形状は上記形態に限らず、半円形でなく三角形状や円形状としたり、円形状の上部中央に仮止めネジのネジ部が係止する長孔を上向きに連設した鍵穴状としたり等、適宜変更可能である。
膨出部も横断面半円状に限らず、横断面四角形や三角形等にしたり、上下に亘って等幅とせず、
図7に示す取付金具11の膨出部16aのように、上端から下端へ行くに従って左右幅が徐々に広くなる正面視テーパ状にすることもできる。このような下広がりの形状とすれば、案内空間17から仮止め孔15への仮止めネジ30等の案内がよりスムーズに行える。
取付金具自体の形態も、第1の取付部と第2の取付部とを上下対称に形成したり、補強リブの位置や形状を変えたり、補強リブを省略したりするのに加え、本止め孔の形状を変更したり、丸孔を省略したりすることもできる。連結部も、形状の変更が可能であるのは勿論、水平に設ける場合に限らず、前下がりや後下がりに傾斜している連結部であっても仮止め孔の跨がり形成は可能である。
【0019】
また、上記形態では、筐体の上下で同じ取付金具を用いているが、上側でのみ仮止め孔及び膨出部付きの取付金具を用いて下側では仮止め孔や膨出部のない取付金具を用いることは可能である。下側の取付金具を省略することもできる。
そして、上記形態では、本止め孔や取付孔を介した取付金具の固定をネジで行っているが、ボルト等の他の固定具であっても同様に固定できる。仮止め用の係止部も、ネジに限らずボルトやL字状の金具等であっても差し支えない。
勿論給湯器自体の構成も上記形態に限らないし、取り付ける鉛直面も、壁面でなく、壁面に取り付けた別体のプレートであっても差し支えない。
【符号の説明】
【0020】
1・・給湯器、2・・筐体、6・・背板、7・・フロントカバー、11・・取付金具、12・・第1の取付部、13・・第2の取付部、14・・連結部、15・・仮止め孔、16,16a・・膨出部、17・・案内空間、19・・本止め孔、25~28・・ネジ、30・・仮止めネジ、W・・壁面。