(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】スクリーンマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41C 1/055 20060101AFI20220726BHJP
B41N 1/24 20060101ALI20220726BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20220726BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20220726BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220726BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B41C1/055 511
B41N1/24
B41F15/08 303E
H05K3/12 610N
H05K3/12 610P
G03F7/20 511
G03F9/00 G
(21)【出願番号】P 2018114569
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000176534
【氏名又は名称】ミタニマイクロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】青木 希仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 華奈
(72)【発明者】
【氏名】坪井 恵
(72)【発明者】
【氏名】旭 晃一
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204367550(CN,U)
【文献】特開平02-183253(JP,A)
【文献】特開2010-173103(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107757069(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/00 - 3/08
B41D 1/00 - 99/00
B41F 15/00 - 15/46
B41N 1/00 - 99/00
G03F 7/20 - 7/24
G03F 9/00 - 9/02
H01L 31/04 - 31/06
H05K 3/10 - 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部に形成された感光性材料のマスク膜に所定の
露光データに基づく露光パターンで光を照射し、前記マスク膜に所定のパターン開口を形成する
マスクレス露光処理と、
前記透過部の情報に基づき、前記
マスクレス露光処理の
前記露光データを補正することと、を備え
、
前記補正において、前記露光パターンの基準位置と前記メッシュ部の前記透過部との相対位置を調整する、スクリーンマスクの製造方法。
【請求項2】
前記メッシュ部は複数本並列に配されるメッシュ線材を有し、
前記パターン開口は複数並列に配されるライン状開口を有し、
前記補正において、前記露光パターンにおける、前記ライン状開口の開口幅、ピッチ、及び前記メッシュ部を形成するメッシュ線材と前記ライン状開口との傾斜角度、のいずれか1以上を調整する、請求項
1に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項3】
前記補正において、前記ライン状開口の中心位置と、複数の前記メッシュ線材の中間位置とを近づける、請求項
2に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【請求項4】
前記メッシュ部の前記透過部の位置情報を検出することを備える、請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載のスクリーンマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スクリーンマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷手法の一つであるスクリーン印刷法は、メッシュ上に樹脂組成物で形成された所定のパターン開口が形成されたスクリーンマスクを用い、被印刷物に任意の印刷体を形成する方法である。このスクリーン印刷法は、例えば配線、電極、蛍光材料の印刷等、種々の印刷に用いられ、電子部品等を含む様々な分野で利用されている。
【0003】
近年、電子部品の小型化、高品質化により、スクリーンマスクの高精度化が求められている。
【0004】
例えば、スクリーンマスクは、塗布材を透過可能な孔を有するメッシュと、メッシュに設けられパターン開口を有するマスク膜と、を備える。例えばマスク膜を形成する乳剤をメッシュに塗布した後に、所定のパターンを有するフォトマスクを重ねた露光処理によってパターン開口を形成している。
【0005】
メッシュは、複数のメッシュ線材が編成されて構成されている。例えばパターン開口がメッシュ線材と重なる場合、パターン開口の一部がメッシュ材で塞がれることにより、印刷形状が変わり、所望の印刷形状を得ることが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は高精度の印刷が可能なスクリーンマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかるスクリーンマスクの製造方法は、塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部に形成された感光性材料のマスク膜に所定の露光データに基づく露光パターンで光を照射し、前記マスク膜に所定のパターン開口を形成するマスクレス露光処理と、前記透過部の情報に基づき、前記マスクレス露光処理の前記露光データを補正することと、を備え、前記補正において、前記露光パターンの基準位置と前記メッシュ部の前記透過部との相対位置を調整する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、高精細なパターン形成が可能なスクリーンマスクの製造方法、を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置の構成を示す説明図。
【
図2】同スクリーン印刷装置のスクリーンマスクの平面図。
【
図3】同スクリーンマスクの一部を拡大して示す平面図。
【
図4】同スクリーンマスクの一部を拡大して示す平面図。
【
図5】同スクリーンマスクの一部を拡大して示す断面図。
【
図6】同スクリーンマスクを用いてパターン形成された太陽電池の説明図。
【
図7】同実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図8】同スクリーンマスクの製造方法を示す説明図。
【
図9】同スクリーンマスクの製造方法における補正処理を示す説明図。
【
図10】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す説明図。
【
図11】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す説明図。
【
図12】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す説明図。
【
図13】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す説明図。
【
図14】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの構成を示す説明図。
【
図15】他の実施形態にかかるスクリーンマスクの製造方法における補正処理を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態にかかるスクリーン印刷装置10及びスクリーンマスク20について
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るスクリーン印刷装置10の構成を示す説明図であり、
図2は同スクリーン印刷装置10のスクリーンマスク20の平面図である。
図3乃至
図5はスクリーンマスク20の一部を拡大して示す平面図及び断面図である。
図6はスクリーンマスク20を用いてパターニングされた太陽電池の構成を示す斜視図である。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示しており、第1方向はY方向、第2方向はX方向である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、スクリーン印刷装置10は、スクリーンマスク20と、スクリーンマスク20の印刷面側である一方の面(表面)に対向して印刷媒体30を保持する保持部材12と、スクリーンマスク20の印刷面側とは反対の他方の面(裏面)に当接した状態で移動可能に構成されたスキージ13と、スキージ13を移動させる移動手段と、スクリーンマスク20を印刷媒体30に対向して支持する支持手段と、を備える。
【0013】
スクリーン印刷装置10は、印刷媒体30の表面に、各種印刷材料を所定のパターンで形成する。スクリーン印刷装置10は、例えば、チップ部品(コンデンサー、チップ抵抗、インダクター、サーミスター等)、タッチパネル、液晶基板(Liquid crystal display, LCD)シール、LTCC(Low Temperature Co-fired ceramics)基板、太陽電池用電極、その他の電子部品等の製造に用いられる。
【0014】
スクリーンマスク20は、フレーム21と、フレーム21に張設されたメッシュ部22と、メッシュ部22に形成された感光性材料のマスク膜23と、を備える。スクリーンマスク20において、印刷を行う際に印刷媒体30の表面に対向する側を表面とし、その反対側であって塗布材が供給される側を裏面とする。
【0015】
フレーム21は、互いに平行な2対の辺を有し、例えば所望のサイズの方形の開口を備える枠状に構成される。フレーム21はメッシュ部22の外周縁を支持し、開口にメッシュ部22を張設する。
【0016】
またフレーム21は、所定量の塗布材をマスク膜23の裏面側に保持する枠としても機能する。フレーム21とメッシュ部22は、例えば合成ゴム系やシアノアクリレート系の接着剤により接合部で接合されている。
【0017】
メッシュ部22は、伸び率の異なる内側のメインメッシュ26と外側のサポートメッシュ27とがUV硬化性の接着剤で固定されて接続されたいわゆるコンビネーション型である。メッシュ部22は、フレーム21の開口部分にマスク膜23を保持する。
【0018】
図1乃至
図5に示すように、メインメッシュ26は、正方形状又は長方形状に構成されている。メインメッシュ26は、メッシュ線材としての経糸26a及び緯糸26bにより編成された織物であり、塗布材を透過可能に開口した透過部である孔部26cを多数有している。メインメッシュ26の経糸26aと緯糸26bは、例えばステンレス,タングステン等の金属のワイヤで構成される。経糸26aの径d1と緯糸の径d2はそれぞれ10~150μmである。経糸26aと緯糸26bとは90°位相が異なり、例えば経糸26aはX方向、緯糸26bがY方向に沿う。一例として本実施形態においてはd1=d2=φ16μm、孔部26cの縦横の寸法はそれぞれ54.6μm、メッシュ数はいずれも360本とした。
【0019】
サポートメッシュ27は、メインメッシュ26の外周に接着剤によって接合されている。サポートメッシュ27は、経糸27aと緯糸27bとが編まれて形成された織物である。サポートメッシュ27は、メインメッシュ26よりも伸び率が高く構成されている。サポートメッシュ27の、経糸27aと緯糸27bとは、例えば、ポリエステルなどの合成樹脂で構成されている。
【0020】
例えば本実施形態において、メインメッシュ26の伸び率は、サポートメッシュ27の伸び率よりも小さい。
【0021】
サポートメッシュ27の外形はフレーム21の開口部分の形状に対応する形状であって、X方向の寸法とY方向の寸法が同等の正方形状に構成されている。サポートメッシュ27の外周が接着剤等によってフレーム21に接合され、支持されている。
【0022】
マスク膜23は、光硬化性の樹脂組成物、例えばPVA、PVAc、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等からなる層である。マスク膜23は、メッシュ部22に形成され、フレーム21の開口部分に配されている。マスク膜23には、マスクレス露光によって、印刷用の所定のパターン開口23aが形成されている。
【0023】
パターン開口23aはメインメッシュ26に形成されたマスク膜23の有効エリア内に形成されている。本実施形態のパターン開口23aは例えば太陽電池の電極のパターン形状に対応した形状であり、複数本の平行なライン状のフィンガー部23bと、フィンガー部23bと交差して延びるライン状のバスバー部23cと、を備える方形状に構成されている。
【0024】
フィンガー部23bは縦方向に、バスバー部が横方向に、複数、配列されている。すなわち、フィンガー部23bとバスバー部23cがそれぞれメインメッシュ26の経糸及び緯糸に沿う方向に延びている。
【0025】
一例として、本実施形態において、パターン開口23aは100mm~400mm四方の矩形状、フィンガー部23bのラインの幅寸法wf1は0.015mm~0.050mm、フィンガー部23bのピッチPf1=0.5~2.0mmで配置されている。バスバー部23cは、幅寸法Wb1は0.1mm~2.0mmで、ピッチPb1は15mm~60mmで、描画エリア内に3~6本、配列されている。フィンガー部23bとメッシュ材の経糸26aとの傾斜角は0±0.1°、フィンガー部23bとメッシュ材の緯糸26bとの傾斜角は90±5°に設定される。バスバー部23cとメッシュ材の経糸26aとの傾斜角は90±5°、バスバー部23cとメッシュ材の緯糸26bとの傾斜角は0±5°に設定される。
【0026】
フィンガー部23bは経糸26aの方向に沿う姿勢で複数並列配置されるとともに、経糸26aに重ならない位置、すなわち隣合う一対の経糸26aの間の孔部26cの並びに沿って配され、マスク膜23の開口がメッシュ線材によって塞がれない位置関係となるように配置されている。一方、バスバー部23cは隣合う一対の緯糸26bの間の孔部26cの並びに沿って配され、開口がメッシュの糸によって塞がれない位置関係となるように配置されている。なお、フィンガー部23bは緯糸26bとは90度で直交し、バスバー部23cは経糸26aとは90度で直交している。
【0027】
マスク膜23は、パターン開口23aにおいて感光性樹脂が存在せず、メッシュ部22の孔部を通過して塗布材が裏面から表面へと透過可能な印刷部を構成する。マスク膜23のパターン開口23a以外であってメッシュ部22の孔部が感光性樹脂で塞がれた部位は、塗布材としてのインクを透過しない非印刷部を構成する。
【0028】
マスク膜23が形成されたメッシュ部22は、例えばスキージ13による押圧力によって撓み変形し、押圧力が解除されることで復元するように、弾性変形可能に構成されている。マスク膜23のパターン開口23aに塗布材が保持された状態で、メッシュ部22の弾性変形によりマスク膜23が印刷媒体30に接離することで、塗布材がパターン開口23aから印刷媒体30に転写される。
【0029】
スキージ13は例えばウレタンゴム・シリコンゴム・合成ゴム・金属・プラスチック等の材料から、例えば薄い板状に構成される。例えば、スキージ13は先端の厚みが低減するように面取りされている。スキージ13はフレーム21に対して相対的に往復移動可能に構成されている。例えばスキージ13は移動方向と直交する方向においてマスク膜23の領域の全長にわたる長さを有して構成される。スキージ13の先端部分13aがスクリーンマスク20の裏面に当接し、表側に押しつけられた状態で、Y方向に沿う移動方向に移動することで、マスク膜23の全面を押圧し、塗布材が予め充填されたパターン開口23aから塗布材を表側に押し出す。
【0030】
支持手段は、印刷媒体30に対して所定の間隔を開けて平行に、フレーム21を支持する。移動手段は、スキージ13を所定の速度で第1方向に沿って移動させる。
【0031】
次に、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置10を用いたスクリーン印刷方法により印刷物31を製造する印刷物の製造方法について、
図1乃至
図6を参照して説明する。まず、スクリーンマスク20の表面側を保持部材12で保持された印刷媒体30の表面に対向させて配置する。
【0032】
そして、高粘度のペースト状の塗布材をスクリーンマスク20の裏面側、すなわち、印刷媒体30とは反対側の面から供給し、塗布材をパターン開口23a内に充填させる。
【0033】
次に、スクリーンマスク20の裏面、すなわち印刷面側とは反対側の面に、スキージ13を配置する。このとき、例えばスキージ13を、印刷媒体30の表側の面に対して所定の角度θで配置する。そして、スキージ13をメッシュ部22及びマスク膜23の裏面において、所定の印圧で印刷媒体30側に向けて押しつけながら、Y方向に沿って、所定の速度で移動させる。
【0034】
スキージ13は、例えばマスク膜23の裏面全面にわたる領域でマスク膜23を押圧する。スキージ13の押圧により、マスク膜23は押圧される部分が表側に変位するように変形し、印刷媒体30に当接する。スキージ13が通過した塗布材がパターン開口23aから印刷媒体30側に押し出される。
【0035】
スキージ13が通過した後、マスク膜23及びメッシュ部22が復元するように変形して印刷媒体30から離れるとともに、一部の塗布材が印刷媒体30上に転写されて残ることで、印刷媒体30上にパターン印刷がなされ、印刷物31が完成する。なお塗布材は、例えば金属材や樹脂材などを含む各種材料であり、印刷対象の種類、例えば、電子部品、ディスプレイ、等によって、多様な材料が用いられる。例えば
図6に示す太陽電池100は、例えばスクリーンマスク20を用いてパターニングされ、スクリーンマスク20のパターン開口23aに対応するパターン形状を有する電極123が形成されている。電極123は、パターン開口23aにおけるライン状開口である複数のフィンガー部23b及び複数のバスバー部23cにそれぞれ対応するライン状のフィンガー電極123b及びバスバー電極123cを有する。
【0036】
印刷時にはX方向に長いスキージ13を、Z方向に押し付けながら、Y方向に所定量移動させる。この移動と押しつけによってメッシュ部22が変形して伸びる。
【0037】
次に、本実施形態にかかるスクリーンマスク20の製造方法について
図1乃至
図9を参照して説明する。
図7及び
図8はスクリーンマスク20の製造方法を示す説明図であり、
図7はメッシュ検出装置60の構成を示す。
図8は露光装置を示している。
図9は補正処理を示す説明図である。スクリーンマスク20の製造方法は、メッシュデータ検出処理、乳剤Pmの塗布処理、及び露光処理、を備える。
【0038】
スクリーンマスク20の製造方法において、まず、フレーム21の枠内にメッシュ部22が貼付けられたメッシュベースをセットし、スキャン処理によりメッシュ線材や透過部の位置や形状の情報を含むメッシュパターンデータを検出するメッシュパターン検出処理を行う。
【0039】
図7に示すメッシュ検出装置60は、支持装置61と、スキャンヘッド62と、LED照明63と、を備える。メッシュ検出装置60は、メッシュ部22の形状や大きさ、メインメッシュ26の経糸26a、緯糸26b、及び孔部26cの位置及び形状の情報であるメッシュパターンデータをCADデータとして検出する。メッシュ検出装置60はメッシュデータを記憶するとともに、露光装置50に送信する。
【0040】
次に、乳剤Pmをメッシュ部22上に塗布する塗布処理を行いメッシュ部22上に、乳剤Pmを平板状に形成する。
【0041】
マスク材となる乳剤Pmは、光硬化性の樹脂であり、たとえばポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を包含する液体である。
【0042】
例えば塗布処理、必要に応じて複数回塗布を繰り返してもよい。本実施形態では乾燥後に乳厚tmが10μm程度となるように乳剤Pmの厚さを設定する。なお、塗布処理においてメッシュを水平の姿勢として塗布してもよいし、鉛直の姿勢として塗布することも可能である。
【0043】
次に、フォトマスクを用いないいわゆるマスクレスの露光装置50(マスクレス露光機)にて、所定の露光パターンにてマスクレス露光処理を行う。
【0044】
図8は露光装置50の構成を示す説明図である。
図8に示すように、露光装置50は、支持装置51と、DMD素子を備える照射ヘッド52と、各部の動作を制御する制御装置57と、を備える。
【0045】
露光装置50は、フォトマスクを介在させず、所定の露光パターンで、照射ヘッド52で直接スクリーンマスク20に描画する露光装置である。
【0046】
支持装置51は、フレーム21及びメッシュ部22を有するメッシュ部材を移動可能なステージ51aを備える。支持装置51は、例えば制御装置57の制御により駆動され、ステージ51aを例えばX軸、及びY軸の2方向に移動させる移動機構を備える。ステージ51aは例えば吸着機構を備える。移動機構は照射ヘッド52とスクリーンマスク20とを相対的に移動させる。
【0047】
照射ヘッド52は、複数の波長のレーザを照射可能に構成される。例えば制御装置57の制御により駆動され、例えば2波長(375、405nm)のレーザを、単独、もしくは複合で照射する。
【0048】
照射ヘッド52は、レーザ光を発光するレーザ光源52aと、レーザ光源52aからの光を反射して照射する照射素子としての複数のDMD素子52bと、マイクロレンズアレイ52cと、を備える。各DMD素子52bは制御部57aの制御により、CADデータとして記憶あるいは算出された所定の露光パターンに応じて、ON/OFF制御され、ON状態にて当該素子からレーザ光がマスク膜23に対して照射される。レーザ光はマイクロレンズアレイ52cにより集光される。例えばDMD素子52bは、1秒間に数万回ON/OFF状態が切替えられる。
【0049】
制御装置57は、所定のプログラムを実行する制御部57aと、各種プログラムや設定値を記憶する記憶部57bと、を備える。例えば記憶部57bには、露光パターンなどの描画データや露光処理の出力条件などが、記憶されている。
【0050】
制御部57aは、例えば予め設定されたプログラムや各種データに基づいて、照射ヘッド52や支持装置51を駆動することにより、マスク膜23を所定の露光パターンにて露光し、パターン開口23aを形成する。
【0051】
また、制御部57aは、孔部26cの位置情報を含むメッシュパターンデータに基づき、露光パターンを補正する。すなわち、制御部57aは、メッシュ情報に基づき、描画するパターン開口の形状に対応して予め設定されたCADデータであるベースパターンデータに、補正処理(調整処理)をして、実際の露光処理のパターンのCADデータである露光パターンを決定する。
【0052】
補正処理において、制御部57aは、パターン開口23aと、対象の描画エリア内におけるメッシュ部22の孔部26cとの位置関係を調整する。例えば、制御部57aは、パターン開口23aのライン状開口23dの開口幅、ピッチ、及びメッシュ線材26dとライン状開口23dとの傾斜角度、のいずれか1以上を調整する。
【0053】
具体的には、例えばパターン開口23aの開口がメッシュの孔部(透過部)26cの位置と重なるように位置調整を行い、例えばマスク膜23に対する露光パターンの位置、サイズ、傾斜角度、露光パターンにおける各ライン状開口23dの開口幅やピッチの増減を行う。
【0054】
一例として、
図9に示す補正処理では、元データにおいてパターン開口23aの形状は、幅寸法が0.03mmのライン状開口23dである複数のフィンガー部23bが、0.18mm間隔で並んでいる場合を例示する。制御部は、検出処理として、メインメッシュ26のデータをスキャンにより検出し、メッシュの開口の位置、すなわち透過部の位置をデータ化し、透過部の並び方向や並列の間隔を検出する。補正処理として、制御部は、フィンガー部23bの配列の間隔や延出角度を透過部の配列の間隔や並列角度に合わせて増減する。
【0055】
すなわち、制御部は補正処理として、フィンガー部23bの延出方向を、透過部の列の延出方向に合わせて傾斜させる。例えば、メッシュ線材26dである経糸26aとの傾斜角度が-5度から5度の範囲、好ましくは0度となるように、パターン開口23aとメッシュ部22との相対角度を調整する。
【0056】
また、基準位置との相対位置を調整する例として、例えばフィンガー部23bの基準位置としての中心ラインを、一対の経糸26aの中間位置に、近づける。好ましくはフィンガー部23bの中心ラインを、一対の経糸26aの中間のラインに重ね合わせる。
【0057】
さらに、フィンガー部23bの配列の間隔であるピッチPf1を、経糸26aのピッチPm1の倍数に設定することで、全てのフィンガー部23bをメインメッシュ26の経糸26aと重ならない配置とする。例えば
図9に示す例では、0.18mmから0.22mmの間隔へ変更する。
【0058】
また、基準位置との相対位置を調整する他の例として、補正において、バスバー部23cの中心ラインを、一対の緯糸26bの中間位置に、配置し、開口がメッシュの糸によって塞がれない位置関係となるように露光パターンにおけるバスバー部の位置を調整する。
バスバーのような幅広いパターンは緯糸と傾斜角が比較的大きくてもよい。したがって、異なる複数の方向のライン状開口を有する場合には、幅の狭いライン状開口の方向を優先して角度を調整する。
【0059】
ここで、ライン状開口の位置をシフトする補正量は±0.05mm以下とする。また、本実施形態において、例えばライン状開口の位置をシフトする補正量は、ライン幅以下が好ましい。例えば電極及びフィンガー部23bの幅寸法Wf1が0.030mm程度、配列のピッチPf1が1.4mm程度である場合に、フィンガー部23bの位置をシフトする補正量は0.03mm以下とする。さらに好ましくは、ライン状開口の補正量はライン幅の1/2以下としてもよい。すなわち、例えばメッシュ数360本の♯360メッシュにおいて、フィンガー部23b及び電極の線幅が0.071である場合には、±0.035以下とする。
【0060】
露光処理は、印刷面側から光を照射する露光処理であり、所定の露光パターンで露光することにより、露光パターンに対応する所定範囲を硬化させる。具体的には、所定の領域に、乳剤Pmの表面側を紫外線ランプや紫外線LED等の照射ヘッドに向けて配置し、照射ヘッド52により光を照射させ、乳剤Pmの表面を照らす露光処理を行う。一例として露光量は例えば1000mJ/cm2程度である。
【0061】
制御部57aは算出された露光パターンデータに基づき、所定の露光エリアにレーザ光を照射する。このとき、描画エリアよりも狭いエリアを複数回に分けてスキャンしながら所定の描画エリアを露光してもよい。
【0062】
露光処理によって、露光パターンの部位に対応して、乳剤Pmの紫外線が照射された部分が紫外線によって硬化する。
【0063】
露光処理後、エッチング処理として、水や溶剤により、乳剤Pmの表面側を洗い流す。この処理によって、乳剤Pmの未硬化部分が洗い流される。すなわち、乳剤Pmの層において、未硬化領域は全て洗い流され、厚み方向において表面側から裏面側まで貫通するパターン開口23aが形成される。以上により乳剤Pmから、所定の形状のパターン開口23aを有するマスク膜23が形成される。
【0064】
以上のように構成されたスクリーンマスクの製造方法によれば、パターン開口23aと孔部26cとの位置を調整する補正により、開口がメッシュ線材26dにより塞がれることを抑制できる。したがって、所望の印刷形状を得ることができるスクリーンマスク20を製造することが可能となる。したがって、例えば細かいライン状開口23dであるフィンガー部23bを多数有する太陽電池の電極形成用のスクリーンマスクにおいて、パターン形状が途切れず開口幅のバラツキが少なくなるため、断線や抵抗値の上昇を防止でき、安定した電極を形成できる。なお、太陽光電池の電極において、補正量を0.05mm以下、あるいはライン幅以下、さらに好ましくはライン幅の1/2以下、としたことで、太陽光電池の電極としての性能を確保できる。
【0065】
また、上記実施形態は、フォトマスクを用いないマスクレス露光とすることで、個々のメッシュ部22の形状に応じた補正処理を容易に実現できる。すなわち、例えばフォトマスクを用いたパターン形成の場合、メッシュ毎に、メッシュの形状に合わせたフォトマスクを形成する必要があるが、上記実施形態によれば、フォトマスクが不要であるため、マスクレス露光の露光データを補正するだけで個々に異なるメッシュ形状に応じた補正が実現でき、高精度のパターン形成が可能なスクリーンマスクを形成できる。
【0066】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0067】
例えばメッシュ部22やパターン開口23aの形状は上記実施形態に限られるものではなく適宜変更可能である。例えば
図10は複数種類のメッシュ部22とパターン開口23aとの対応を示す説明図である。図中、φはメッシュ部22の経糸26a及び緯糸26bの線径、OPはメッシュ部22の開口幅をそれぞれ示す。
図10に示すように、ライン状開口23dと、経糸26aまたは緯糸26bの角度を揃えるとともに、ライン状開口23dを並列する一対の糸の間の孔部26cに配置することで、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
また、上記実施形態においては太陽光電池用の電極を形成するパターン開口23aを例示したがこれに限られるものではない。
【0069】
他の実施形態として
図11に示すように、一方向に延びる複数のライン状開口23dを有するパターン形状の場合、経糸26a及び緯糸26bの両方に傾斜する角度となるように角度を調整してもよい。この場合であっても、それぞれのライン状開口23dがメッシュ線材26dによって塞がれないため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
他の実施形態として
図12及び
図13に示すように屈曲して異なる方向を向くライン状部分を有するライン状開口23dを備えるパターン形状のパターン開口23aにおいて、それぞれのライン状部分を経糸26a及び緯糸26bにそれぞれ沿う方向に配置するとともに、隣り合うメッシュ線材26dの間にライン状開口23dが配置されるように補正することで、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
他の実施形態として
図14に示すように角形や円形の複数の開口部23e、23fが複数点在するパターン形状のパターン開口23aにおいて、各開口部23e、23fがメッシュ部22の孔部26cに配置されるように補正してもよい。この場合であっても、それぞれの開口部23e、23fがメッシュ線材26dによって塞がれないため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
また、上記実施形態においては、パターンのピッチの調整の後に角度を調整する例を示したがこれに限られるものではない。例えば
図15に示すように、パターン全体の角度をメッシュの延出角度に合わせて調整した後、ライン状開口23dの位置をずらす補正をしてもよい。
【0073】
さらに上記実施形態においてはレーザ光源によりレーザ光を照射した例を示したが、これに限られるものではなく、紫外線光を照射する紫外線光源を備える構成としてもよい。
【0074】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
塗布材を透過する透過部を有するメッシュ部に形成された感光性材料のマスク膜に所定の露光パターンで光を照射し、前記マスク膜に所定のパターン開口を形成する露光処理と、
前記透過部の情報に基づき、前記露光処理の露光パターンを補正することと、を備える、スクリーンマスクの製造方法。
(2)
前記露光処理はマスクレス露光であり、
前記補正において、前記露光パターンの基準位置と前記メッシュ部の透過部との相対位置を調整する、(1)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(3)
前記メッシュ部は複数本並列に配されるメッシュ線材を有し、
前記パターン開口は複数並列に配されるライン状開口を有し、
前記補正において、前記露光パターンにおける、前記ライン状開口の開口幅、ピッチ、及び前記メッシュ部を形成するメッシュ線材と前記ライン状開口との傾斜角度、のいずれか1以上を調整する、(1)または(2)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(4)
前記補正において、前記ライン状開口の中心位置と、複数の前記メッシュ線材の中間位置とを近づける、(3)に記載のスクリーンマスクの製造方法。
(5)
前記メッシュ部の前記透過部の位置情報を検出することを備える、(1)乃至(4)のいずれかに記載のスクリーンマスクの製造方法。
【符号の説明】
【0075】
10…スクリーン印刷装置、12…保持部材、13…スキージ、13a…先端部分、20…スクリーンマスク、21…フレーム、22…メッシュ部、23…マスク膜、23a…パターン開口、23b…フィンガー部、23c…バスバー部、26…メインメッシュ、26a…経糸、26b…緯糸、26c…孔部(透過部)、27…サポートメッシュ、27a…経糸、27b…緯糸、30…印刷媒体、31…印刷物、50…露光装置、51…支持装置、51a…ステージ、52…照射ヘッド、52a…レーザ光源、52b…DMD素子、52c…マイクロレンズアレイ、57…制御装置、57a…制御部、57b…記憶部、60…メッシュ検出装置、61…支持装置、62…スキャンヘッド、63…LED照明。