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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】モア
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/44 20060101AFI20220726BHJP
   A01D 34/54 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A01D34/44
A01D34/54
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018178499
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020048433
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591187841
【氏名又は名称】株式会社共栄社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智之
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209866(JP,A)
【文献】特開2014-113115(JP,A)
【文献】特開2011-206028(JP,A)
【文献】特開平09-065745(JP,A)
【文献】実開昭60-094032(JP,U)
【文献】実開昭60-067033(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 - 34/01
A01D 34/412- 34/90
A01D 42/00 - 42/08
A01D 43/06 - 43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に対して芝刈ユニットが、吊下げ状態で昇降可能に装着され、
前記機体に対して前記芝刈ユニットは、基端部が前記機体に上下方向に回動可能に連結されたリフトアーム、当該リフトアームを回動さる油圧シリンダ、及び前記リフトアームの先端部に前記機体の進行方向に沿って一体に連結された支持ロッドを介して装着され、
前記芝刈ユニットのユニットフレームの内部にリールカッターが配置され、前記ユニットフレームの前記リールカッターの軸方向の一端部に、当該リールカッターを駆動する油圧モータが配置され、当該油圧モータには、上方から油圧ホースが接続され、
前記支持ロッドの自由端側の水平回動軸は、前記リフトアームの先端部に一体に設けられた軸支持円筒体に挿入支持され、前記芝刈ユニットは、水平を維持して芝生面に接地される構成のモアであって、
前記軸支持円筒体の外側に増巻き状態で嵌め込まれたコイルバネの両端部が、それぞれ前記支持ロッド及びリフトアームの各側に、前記リフトアームにより持ち上げられた前記芝刈ユニットの下降に伴って、前記コイルバネの増巻き角度が小さくなるようにして、それぞれ引掛け係止され、
空中配置状態の前記芝刈ユニットは、接地状態に比較して前記コイルバネの増巻き角度の増大により増大された付勢トルクにより、前記油圧モータの自重及び前記油圧ホースの硬直化による押下げ力に抗して、前記水平回動軸を中心にして油圧モータの側が持ち上げられるように回動付勢されていることで、当該芝刈ユニットの水平バランスが維持される構成であることを特徴とするモア。
【請求項2】
前記コイルバネの一端部は、接線方向に直線状に延設されて、当該延設部の先端部にわん曲引掛け部が形成されていると共に、その他端部は、同様に接線方向に直線状に延設されて、当該延設部の先端部が、当該コイルバネの伸縮方向の外側に折り曲げられて直線引掛け部が形成され、
前記支持ロッドにおける前記コイルバネの前端部が配置される部分には、前記コイルバネの前記わん曲引掛け部が係止される係止フランジが、前記芝刈ユニットの油圧モータと反対側に突出した状態で一体に設けられていると共に、前記リフトアームの先端部には、前記コイルバネの前記直線引掛け部を挿入して係止させる引掛け係止孔が形成され、
前記リフトアームにより持ち上げられた前記芝刈ユニットの下降に伴って、両端部のわん曲引掛け部及び直線引掛け部が、それぞれ前記係止フランジ及び前記引掛け係止孔に係止されたコイルバネの増巻き角度が小さくなるように変化することを特徴とする請求項1に記載のモア。
【請求項3】
前記機体には、3基以上の前記コイルバネを備えた芝刈ユニットが、前後の各列に各芝刈ユニットの刈取部が僅かにオーバーラップするように多連配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモア。
【請求項4】
前記支持ロッド及びリフトアームの各側に対する前記コイルバネの一端部の引掛け係止位置は、前記支持ロッドの周方向に沿って変更可能にすることで、当該コイルバネの付勢トルクが調整可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のモア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動されるリール式の芝刈ユニットが機体に昇降可能に装着されたモアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されるように、多連モアの各芝刈ユニットは、基端部が機体に上下方向に回動可能に連結されたリフトアーム、及び当該リフトアームの先端部に前記機体の進行方向に沿って連結された支持ロッド、及び前記リフトアームを上下方向に回動させる昇降油圧シリンダを介して前記機体に対して吊下げ状態で昇降可能に装着されている。リール式の芝刈ユニットは、リールフレームにおけるリール回転軸の軸方向に沿った一端部に油圧モータが装着され、当該油圧モータによりリール回転軸が駆動回転されて、回転するリール刃と、当該リールフレームに固定された固定刃とで、芝生が刈り取られる。
【0003】
機体の進行方向に配置された前記支持ロッドに対する芝刈ユニットは、芝生の均一な刈取り(刈上がり)を確保するために、左右がバランスして水平を維持する(水平バランスが確保される)ように配置されている。従来、芝刈ユニットの水平バランスの実現には、左右の重量を調整するためのバランスウェイトを使用したり、構造物をリールフレームの左右方向に移動させて調整していた。このように、重量物による左右バランスの調整は、芝刈ユニット自体の重量を無用に増大させ、これに起因して、芝刈時には、特に軟弱な圃場において、芝生の刈込みすぎの問題が発生していた。
【0004】
一方、芝刈開始時には、前記リフトアームと油圧シリンダとにより、機体に対して吊下げ状態で支持されていた芝刈ユニットを下降させて、芝生面に接地させる。芝刈途中においても、例えば、芝刈ユニットに対して付着した異物の除去等の際には、一旦、芝生面に対して芝刈ユニットを吊上げた後に、再度、吊下げて芝生面に接地させることがある。この場合においても、芝刈ユニットは、水平バランスを維持していて、全体がほぼ同時に芝生面に接地されることが望ましい。しかし、芝刈ユニットの油圧モータに圧油を供給するための油圧ホースの自重、或いは圧油の作用時における油圧ホースの硬直化により、芝刈ユニットは、油圧モータの側が押し下げられて、左右バランスが崩される場合があり、この場合には、芝刈ユニットの低い側である油圧モータの側の端部により、芝生面を損傷させてしまう(図10参照)。
【0005】
また、芝刈ユニットの水平バランスが崩される他の原因として、機体に対する芝刈ユニットの昇降時における前記支持ロッドを構成する水平回動軸の摺動抵抗がある。即ち、芝刈ユニットの側に一体に設けられた支持ロッドの水平回動軸は、前記リフトアームの先端部に水平に取付けられた軸支持円筒体に回動可能に挿入支持されており、機体に対する芝刈ユニットの昇降時において、当該軸支持円筒体に対する水平回動軸の回動時における摺動抵抗が大きい場合には、当該支持円筒体に対して水平回動軸が部分的に連れ廻りされる現象が生じて、芝刈ユニットの水平バランスが崩されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-209866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、重量を増大させることなく、機体に対する芝刈ユニットの昇降時における水平バランスを確保させると共に、芝刈時における刈取りの均一性を確保することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、
機体に対して芝刈ユニットが、吊下げ状態で昇降可能に装着され、
前記機体に対して前記芝刈ユニットは、基端部が前記機体に上下方向に回動可能に連結されたリフトアーム、当該リフトアームを回動さる油圧シリンダ、及び前記リフトアームの先端部に前記機体の進行方向に沿って一体に連結された支持ロッドを介して装着され、
前記芝刈ユニットのユニットフレームの内部にリールカッターが配置され、前記ユニットフレームの前記リールカッターの軸方向の一端部に、当該リールカッターを駆動する油圧モータが配置され、当該油圧モータには、上方から油圧ホースが接続され、
前記支持ロッドの自由端側の水平回動軸は、前記リフトアームの先端部に一体に設けられた軸支持円筒体に挿入支持され、前記芝刈ユニットは、水平を維持して芝生面に接地される構成のモアであって、
前記軸支持円筒体の外側に増巻き状態で嵌め込まれたコイルバネの両端部が、それぞれ前記支持ロッド及びリフトアームの各側に、前記リフトアームにより持ち上げられた前記芝刈ユニットの下降に伴って、前記コイルバネの増巻き角度が小さくなるようにして、それぞれ引掛け係止され、
空中配置状態の前記芝刈ユニットは、接地状態に比較して前記コイルバネの増巻き角度の増大により増大された付勢トルクにより、前記油圧モータの自重及び前記油圧ホースの硬直化による押下げ力に抗して、前記水平回動軸を中心にして油圧モータの側が持ち上げられるように回動付勢されていることで、当該芝刈ユニットの水平バランスが維持される構成であることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、芝刈ユニットは、リフトアームの先端部の軸支持円筒体の外側に嵌め込まれたコイルバネの付勢トルクにより、水平回動軸を中心にして油圧モータの側が上がるように回動付勢されているため、既存構造の芝刈ユニットの支持ロッド及び軸支持円筒体の部分に、付勢トルクが加えられた状態(増巻き状態)でコイルバネを組み込むのみで、リフトアームの先端部に芝刈ユニットを、その油圧モータの側が持ち上げられるように回動付勢された状態で装着できる。この結果、芝刈ユニットの油圧モータの側が下がるのを防止して、機体に対する各芝刈ユニットの昇降時における水平バランスを確保できるので、芝刈ユニットの全体を同時に芝生面に接地させることができ、水平バランスが崩れた状態で芝刈ユニットが下降されることで、当該芝刈ユニットの左右方向の端部で芝生面が損傷されるのを防止できる。
【0010】
このように、既存構造の芝刈ユニットの支持ロッド及び軸支持円筒体の部分に、付勢トルクが加えられた状態で軽量なコイルバネを組み込むのみで、機体に対する各芝刈ユニットの昇降時における水平バランスを確保できるため、芝刈ユニットの重量の増大を最少に抑えることができ、芝刈ユニットの重量増大に起因する上記不具合の発生がなくなる。
【0011】
また、機体に対する芝刈ユニットの昇降時には、支持ロッドの基端側の水平回動軸が、リフトアームの先端部に一体に設けられた軸支持円筒体に挿入支持された状態で、当該水平回動軸と軸支持円筒体が相対的に回動して、当該芝刈ユニットの水平バランスが図られる構成であって、当該回動時に発生する摺動抵抗により、前記水平バランスが崩されることがあるが、前記コイルバネに加えられている付勢トルクは、前記摺動抵抗に抗するように作用するので、軸支持円筒体に対して水平回動軸が連れ廻りされる現象がなくなるか、或いは抑制できるため、芝刈ユニットの水平バランスが崩されるのが防止される。
【0012】
一方、前記コイルバネによる芝刈ユニットの油圧モータの側を持ち上げようとする付勢トルクは、芝刈作業時においても有効に作用する。この結果、芝生面に対して作用する芝刈ユニットのリール回転軸の軸心方向に沿った荷重は均一となるので、芝生が均一に刈り取られる。
また、芝刈ユニットのユニットフレームに配置された前記油圧モータには、上方から油圧ホースが接続され、前記油圧モータに対する当該油圧ホースの硬直化による押付け力は、当該油圧モータの自重と協働になって、前記芝刈ユニットの油圧モータ側を押し下げるように作用するため、従来構造では、空中配置状態の芝刈ユニットは、油圧モータの側が下がった傾斜姿勢で昇降する。しかし、芝刈ユニットの空中配置状態では、前記コイルバネの増巻き角度の増大により増大された付勢トルクは、前記油圧モータの自重及び前記油圧ホースの硬直化による押下げ力に抗して、前記水平回動軸を中心にして油圧モータの側が持ち上げられるように回動付勢するため、当該芝刈ユニットは、空中配置状態において、その左右の水平バランスが確保され易くなる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記コイルバネの一端部は、接線方向に直線状に延設されて、当該延設部の先端部にわん曲引掛け部が形成されていると共に、その他端部は、同様に接線方向に直線状に延設されて、当該延設部の先端部が、当該コイルバネの伸縮方向の外側に折り曲げられて直線引掛け部が形成され、
前記支持ロッドにおける前記コイルバネの前端部が配置される部分には、前記コイルバネの前記わん曲引掛け部が係止される係止フランジが、前記芝刈ユニットの油圧モータと反対側に突出した状態で一体に設けられていると共に、前記リフトアームの先端部には、前記コイルバネの前記直線引掛け部を挿入して係止させる引掛け係止孔が形成され、
前記リフトアームにより持ち上げられた前記芝刈ユニットの下降に伴って、両端部のわん曲引掛け部及び直線引掛け部が、それぞれ前記係止フランジ及び前記引掛け係止孔に係止されたコイルバネの増巻き角度が小さくなるように変化することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1の発明の具体的な実施例であって、コイルバネ自体の両端部の形状の工夫、及び当該コイルバネ自体の両端部を係止させる部分を前記支持ロッド及びリフトアームに形成することで、請求項1の発明を容易かつ確実に実施できる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記機体には、3基以上の前記コイルバネを備えた芝刈ユニットが、前後の各列に各芝刈ユニットの刈取部が僅かにオーバーラップするように多連配置されていることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明を多連モアの各芝刈ユニットの全てに適用したものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記支持ロッド及びリフトアームの各側に対する前記コイルバネの一端部の引掛け係止位置は、前記支持ロッドの周方向に沿って変更可能にすることで、当該コイルバネの付勢トルクが調整可能であることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明によれば、各芝刈ユニット毎に、水平バランスが崩れる程度は異なるため、コイルバネに付与される付勢トルクを調整することで、各芝刈ユニット毎に、最適に付勢トルクを付与して、水平バランスを図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リフトアームの先端部の軸支持円筒体の外側に嵌め込まれて、その両端部が、それぞれリフトアーム及び支持ロッドの各側に引掛け係止されたコイルバネの付勢トルクにより、芝刈ユニットは、水平回動軸を中心にして油圧モータの側が上がるように回動付勢されている。この結果、芝刈ユニットの油圧モータの側が下がるのを防止して、機体に対する各芝刈ユニットの昇降時における水平バランスを確保できるので、芝刈ユニットの全体を同時に芝生面に接地させることができ、水平バランスが崩れた状態で芝刈ユニットが下降されることで、当該芝刈ユニットの左右方向の端部で芝生面が損傷されるのを防止できる。また、軽量なコイルバネをリフトアームの先端部の軸支持円筒体の外側に嵌め込むのみで、芝刈ユニットの水平バランスが図られるため、芝刈ユニットの重量の増大を最少に抑えることができて、芝刈ユニットの重量増大に起因する不具合が発生しない。
【0018】
また、芝刈ユニットの空中配置状態では、前記コイルバネの増巻き角度の増大により増大された付勢トルクは、前記油圧モータの自重及び硬直化された前記油圧ホースの押下げ力に抗して、前記水平回動軸を中心にして油圧モータの側が持ち上げられるように回動付勢するため、当該芝刈ユニットは、空中配置状態において、その左右の水平バランスが確保され易くなる。
更に、コイルバネによる芝刈ユニットの油圧モータの側を持ち上げようとする付勢トルクは、芝刈作業時においても有効に作用する。この結果、芝生面に対して作用する芝刈ユニットのリール回転軸の軸心方向に沿った荷重は均一となるので、芝生が均一に刈り取られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】5連モアの正面図である。
図2】同じく平面図である。
図3】同じく側面図である。
図4】芝刈ユニットU1 がリフトアームA1 の先端部に支持ロッドR1 を介して連結される構造の分解斜視図である。
図5】同じく連結状態を示す斜視図である。
図6】支持ロッドR1 の水平回動軸15が、リフトアームA1 の先端の軸支持円筒体25に挿入されて、両者が連結された状態を示す芝刈ユニットU1 の部分断面側面図である。
図7】芝刈ユニットU1 に作用するコイルバネK2 の付勢トルクにより、芝生面Gから持ち上げられた芝刈ユニットU1 が水平バランスを維持している状態を示す正面図である。
図8】水平バランスが維持された状態で芝刈ユニットU1 が芝生面Gに接地された状態を示す正面図である。
図9】本発明の作用により、5連モアの前列の3基の芝刈ユニットU1 ~U3 が水平バランスを維持した状態で接地されることを示す図である。
図10】5連モアの前列の3基の芝刈ユニットU1 ~U3 が水平バランスを崩した状態で接地されることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を5連モアに実施した例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明する。
【0021】
最初に、図1図3を参照して、本発明の実施の対象である5連モアの基本構成について簡単に説明して、その後に、本発明に係るコイルバネK1 ,K2 が組み込まれる構成、及びその作用について詳細に説明する。4輪構造の機体Bの前方には、前列の3基の芝刈ユニットU1 ,U2 ,U3 が当該機体Bの進行方向Pと直交する水平方向(横方向)に沿って所定間隔をおいて配置され、機体Bの前輪Dfと後輪Dbの間であって、しかも横方向に沿って前記した3基の各芝刈ユニットU1 ,U2 ,U3 の間に、刈取部が僅かにオーバーラップするように、後列の2基の芝刈ユニットU4 ,U5 が配置されている。各芝刈ユニットU1 ~U5 は、いずれも特定の1つのリンクのリンク長が変化する同一構造の3節の変則的なリンク機構によって、機体Bに対して昇降可能に連結されている。各リンク機構は、構造(原理)は同一であって、当該機体Bに一体に取付けられて、その下面に配置された各フレームF1 ,F2 ,F3 のいずれか一つに対して前記機体Bの進行方向Pに沿って配置された回動軸心Ca1~Ca5図1参照)を中心にして上下方向に沿って回動可能に支持されたリフトアームA1 ~A5 と、機体Bの横方向に沿って配置されて、基礎部が前記各フレームF1 ,F2 ,F3 のいずれか一つに対して機体Bの進行方向Pに沿った回動軸心Cs1~Cs5図1参照)を中心として回動可能に支持されると共に、その先端部が前記各リフトアームA1 ~A5 の先端部に回動可能に連結された油圧シリンダS1 ~S5 とで構成される。
【0022】
いずれのリンク機構においても、各リンク機構を構成する各リフトアームA1 ~A5 は、基端側は、機体Bの進行方向Pに対して傾斜して位置されると共に、先端側は、機体Bの横方向に配置されることで、中間部で鈍角状にわん曲されており、図4及び図5に示されるように、各リフトアームA1 ~A5 の上方に直線状の各油圧シリンダS1 ~S5 が横方向に配置される。図2に示されるように、芝刈ユニットU1 ,U2 ,U4 では、リフトアームA1,A2,A4 と油圧シリンダS1,S2,S4 の配置は同一であり、芝刈ユニットU3 ,U5 では、リフトアームA3 ,A5 と油圧シリンダS3 ,S5 の配置は同一であるが、芝刈ユニットU1 ,U2 ,U4 の配置に対して機体Bの進行方向Pに沿った対称線に対して線対称に配置されている。
【0023】
ここで、各支持ロッドR1 ~R5 と各リフトアームA1 ~A5 とを用いて各芝刈ユニットU1 ~U5 が機体Bに対して昇降可能に装着される構成は、同一であるので、図4図6を参照して、前列の右端に配置された芝刈ユニットU1 についてのみ説明する。芝刈ユニットU1 は、ユニットフレーム1の前部及び後部にそれぞれに前ローラ2及び後ローラ3が取付けられ、当該ユニットフレーム1の内部に、油圧モータM1 により駆動回転されるリールカッター4が配置され、当該リールカッター4と、その後部に配置された固定刃5とで芝生が刈り取られる。当該油圧モータM1 は、ユニットフレーム1におけるリールカッター4のリール回転軸6(図6参照)の軸方向の一端側に配置されている。ユニットフレーム1の前部に左右に跨ぐようにしてブリッジ状の支持枠7が一体に取付けられ、当該支持枠7の左右方向の中央部に支持ブラケット8を介して連結ロッド11が垂直に配置されている。筒状の支持ロッドR1 の先端部に直交して連結筒部12が一体に設けられ、前記連結ロッド11に当該連結筒部12が外嵌され、固定リング13及びストッパーピン14により、当該連結ロッド11に対して連結筒部12の抜け出しが防止される構造になっている。
【0024】
油圧モータM1 には、図4及び図5に示されるように、流入口部31a及び吐出口部31bに、それぞれ油圧ホース32a,32bが上方から接続されており、当該油圧ホース32a,32bの存在自体により、芝刈ユニットU1 は、油圧モータM1 の側に予測し得ない荷重が作用し、特に、油圧ホース32a,32bに圧油が作用して硬直化すると、油圧モータM1 の部分に作用する荷重が大きくなる。これにより、芝刈ユニットU1 は、油圧モータM1 の側が下り加減となり易い。なお、油圧ホース32a,32bは、図4図6のみで表示し、その他の図面では、複雑となるので、当該油圧ホース32a,32bの表示は略してある。
【0025】
筒状の支持ロッドR1 に水平回動軸15の約半分が挿入されて、当該支持ロッドR1 の長手方向の途中に軸直角方向に設けられ固定ピン孔16及び前記水平回動軸15に設けられた固定ピン孔17の固定ピン18が挿通されることで、当該支持ロッドR1 と水平回動軸15とが長手方向及び周方向の双方に移動することなく互いに連結される。支持ロッドR1 の自由端部には、後述のコイルバネK2 の一端部を引掛け係止させるための係止フランジ21が、前記油圧モータM1 と反対側に大きく突出して設けられている。係止フランジ21には、コイルバネK2 の一端部のわん曲引掛け部22aを引掛け係止させるための係止溝21aが形成されている。
【0026】
筒状の支持ロッドR1 の中空部に水平回動軸15の約半分が挿入されて、前記水平回動軸15に設けられた固定ピン孔17、及び支持ロッドR1 に設けられた固定ピン孔29に固定ピン30が挿通されることで、当該支持ロッドR1 と水平回動軸15とが長手方向及び周方向の双方に移動することなく互いに連結される。前記支持ロッドR1 の長手方向の中央部に貫通固定された支持パイプ体16に固定ピン18が貫通され、当該固定ピン18の先端部が、支持枠7に設けられた支持環9に挿入される。支持ロッドR1 の自由端部には、後述のコイルバネK2 の一端部を引掛け係止させるための係止フランジ21が、前記油圧モータM1 と反対側に大きく突出して設けられている。係止フランジ21には、コイルバネK2 の一端部のわん曲引掛け部22aを引掛け係止させるための係止溝21aが形成されている。
【0027】
一方、機体Bの下面に一体に装着されたフレームF1 には、リフトアームA1 及び油圧シリンダS1 の各基端部が、それぞれ機体Bの進行方向Pに沿った回動軸心Ca1, Cs1を中心に回動可能に支持され、リフトアームA1 の先端部に一体に設けられたブラケット23に、油圧シリンダS1 のロッド24の先端部が連結軸心C0 を中心にして回動可能に連結されている。これにより、リフトアームA1 と油圧シリンダS1 とブラケット23とで、特定の1つのリンクである油圧シリンダS1 のリンク長が変化する3節のリンク機構が構成され、当該油圧シリンダS1 が駆動リンクとなっている。前記ブラケット23の直下には、軸支持円筒体25が機体Bの進行方向Pに沿って一体に設けられている。水平配置された軸支持円筒体25は、前記ブラケット23を構成する一対のブラケット板23aの下方に一体に設けられていて、当該軸支持円筒体25のほぼ前半部は、外側にコイルバネK2 を嵌込みできるように、前側のブラケット板23aに対して前方に突出したバネ嵌込み部25aを兼用している。前方のブラケット板23aには、コイルバネK2 の他方の直線引掛け部22bを挿入して係止させるための複数の引掛け係止孔26が、前記軸支持円筒体25の周方向に沿って一定の間隔をおいて形成されている。
【0028】
コイルバネK1 (K2 )は、金属線材をコイル状に巻回したもので、圧縮又は引張りによる変形により発生する復元力を「弾性押圧力」又は「弾性引張り力」として利用することが主たる用途である。しかし、本発明では、自然の巻回状態から、更に、同一方向に「増巻き(コイルバネの巻数又は巻角度を増大させること)」することで発生する「付勢トルク(回動力)」を利用することが特徴である。この「付勢トルク」は、コイルバネK1 (K2 )の巻回方向により異なり、芝刈ユニットU1 ~U5 の左右方向のいずれかの端部に油圧モータM1 ~M5 が配置されているかによって、組み込むコイルバネK1 (K2 )の巻回方向を選択する。即ち、芝刈ユニットU1 ~U5 を正面から見て、油圧モータM1 ~M5 が右側端に配置されている場合には、芝刈ユニットU1 ~U5 に「左回り(反時計回り)」の「付勢トルク」を付与して、芝刈ユニットU1 ~U5 における下り加減の右側端を持ち上げる必要があるので、「左巻き」のコイルバネK2 を使用すると共に、逆に、芝刈ユニットU1 ~U5 が左側端に配置されている場合には、「右回り(時計回り)」のコイルバネK1 を使用する。実施例では、芝刈ユニットU1 ,U2 ,U4 では、「左巻き」のコイルバネK2 が使用され、芝刈ユニットU3 ,U5 では、「右巻き」のコイルバネK1 が使用される。
【0029】
コイルバネK1 (K2 )は、金属線材をコイル状に巻回して、その一端部は、接線方向に所定長だけ直線状に延設されて、当該延設部の先端部がU字状にわん曲されたわん曲引掛け部22aを形成していると共に、その他端部は、同様に接線方向に所定長だけ直線状に延設されて、当該延設部の先端部が、当該コイルバネK1 (K2 )の伸縮方向の外側に折り曲げられて、直線引掛け部22bを形成している。
【0030】
コイルバネK2 は、軸支持円筒体25のバネ嵌込み部25aに嵌め込む際には、付勢トルクが発生していない自然の巻回状態で、当該バネ嵌込み部25aに嵌め込んで、直線引掛け部22bを、ブラケット板23aに設けられた複数の引掛け係止孔26のいずれかに挿入することで、引掛け係止させる。この状態で、水平回動軸15における支持ロッドR1 から突出した部分を、軸支持円筒体25に挿入して、当該水平回動軸15における軸支持円筒体25の後端から突出した部分と抜止めカラー27とを連結ピン28で連結することで、当該軸支持円筒体25に対して水平回動軸15は、抜止め状態で回動可能に組み付けられる。なお、図4において、19は、前記連結ピン28を挿入させるために、水平回動軸15の後端部に直径方向に貫通形成されたピン挿通孔を示す。
【0031】
その後に、左巻きのコイルバネK2 のわん曲引掛け部22aの部分において、当該コイルバネK2 を右方向に90°程度だけ巻回して、当該わん曲引掛け部22aを、支持ロッドR1 の係止フランジ21に形成された係止溝21aに引っ掛けて係止させる。これにより、図7及び図8に示されるように、コイルバネK2 は「増巻き」されて、芝刈ユニットU1 に対して当該芝刈ユニットU1 の正面からみて、水平回動軸15を中心とする油圧モータM1 の側を持ち上げるように作用する左回りの付勢トルクT2 が付与される。コイルバネK2 の付勢トルクT2 の調整は、その「増巻数又は増巻き角度」の調整と、ブラケット板23aに形成された複数の引掛け係止孔26の変更(選択)により行う。
【0032】
このため、図7に示されるように、芝刈ユニットU1 が芝生面Gから持ち上げられた状態において、左巻きのコイルバネK2 の付勢トルクT2 は、当該芝刈ユニットU1 に対して正面から見て左回り(反時計回り)のトルクとして作用するので、油圧モータM1 の側が下り加減となる芝刈ユニットU1 は、当該油圧モータM1 の側を持ち上げるように作用するので、芝刈ユニットU1 は、芝生面Gから持ち上げられた空中配置状態で水平バランスを維持する。このため、図7及び図8に示されるように、芝刈ユニットU1 は、水平バランスを維持したまま、芝生面Gに接地されるので、前ローラ2及び後ローラ3は、その全体が同時又はほぼ同時に芝生面Gに接地するため、芝生面Gが損傷されることはない。また、リフトアームA1 と油圧シリンダS1 とでリンク機構を構成するブラケット23は、芝刈ユニットU1 の空中配置状態と接地状態とでは、その姿勢が変化されて、コイルバネK2 は、芝刈ユニットU1 の接地状態に対して持ち上げられた状態において、「増巻き角度」が大きくなって、前記付勢トルクT2 が大きくなることも、芝刈ユニットU1 の水平バランスの維持に寄与する。
【0033】
また、機体Bに対して芝刈ユニットU1 が昇降する際には、芝刈ユニットU1 の側の水平回動軸15と、当該水平回動軸15が挿入支持されているリフトアームA1 の側の軸支持円筒体25とは、相対的に回動して、その回動時において両者の間に摺動抵抗し、当該摺動抵抗は、芝刈ユニットU1 の昇降直前の状態を維持するように、即ち、水平バランスを阻害するように作用する。しかし、本発明では、コイルバネK1 の付勢トルクT1 は、前記水平回動軸15と軸支持円筒体25とが一体となって回動するのを阻止するように、即ち、前記摺動抵抗に抗するように作用し、この面からも、コイルバネK1 は、芝刈ユニットU1 の水平バランスの維持に寄与する。
【0034】
また、芝刈ユニットU1 の水平バランスを図るために、リフトアームA1 の先端部に一体に設けられた軸支持円筒体25のバネ嵌込み部25aの外側に嵌め込まれるコイルバネK2 は、重量バランスを図るウェイトに比較して著しく軽量であるので、重量増加による軟弱な圃場における芝刈ユニットU1 の沈下による芝生の刈込みすぎの問題もなくなる。
【0035】
また、芝刈ユニットU2 ,U4 は、前記芝刈ユニットU1 と同一の側に油圧モータM2 ,M4 が配置されて、左巻きのコイルバネK2 が使用されているため、当該コイルバネK2 は、芝刈ユニットU1 について上記に説明したように作用する。一方、芝刈ユニットU3 ,U5 は、前記芝刈ユニットU1 と反対の側に油圧モータM3 ,M5 が配置されて、右巻きのコイルバネK1 が使用されているため、コイルバネK1 の付勢トルクT1 は、芝刈ユニットU3 ,U5 に対して正面から見て右回り(時計回り)のトルクとして作用する。
【0036】
よって、本発明によれば、芝刈開始時、或いは芝刈途中において、一旦、芝生面Gから持ち上げた各芝刈ユニットU1 ~U5 を下降させて芝生面Gに接地させる場合において、芝生面Gから持ち上げた各芝刈ユニットU1 ~U5 は、いずれもコイルバネK1 ,K2 の付勢トルクT1 ,T2 により、水平バランスが維持されているため、前ローラ2或いは後ローラ3は、その全長に亘って同時に、又はほぼ同時に芝生面Gに接地される。
【0037】
この点に関して、従来構造の多連モアでは、図10に示されるように、各芝刈ユニットU1 ~U5 のいずれかは、油圧ホース32a,32bによる下方への押付け力により、油圧モータM1 ~M5 の側が下げられることで水平バランスが崩され、芝生面Gへの接地時において、各芝刈ユニットU1 ~U5 における油圧モータM1 ~M5 の側の端部が先に接地することで、当該芝生面Gが損傷されることがあるが、本発明によれば、この不具合を防止できる。
【0038】
また、芝刈作業時においては、吸込み側の油圧ホース32aに作用する圧油は、芝刈ユニットU1 ~U5 の油圧モータM1 ~M5 の側を押し付けるように作用するが、水平回動軸15及び軸支持円筒体25の部分に組み込まれたコイルバネK1 ,K2 の付勢トルクT1 ,T2 は、圧油による前記押付け力を軽減させるように作用するので、軟弱な圃場において、芝刈ユニットU1 ~U5 の横方向(リール回転軸6の軸方向)に沿った刈高の変化の発生を防止して、芝生を均一に刈り取ることができる。
【0039】
なお、一般事項として、芝刈作業時において、芝生面Gの横方向の傾斜に対しては、各芝刈ユニットU1 ~U5 が水平回動軸15を中心にしていずれかの方向に回動することで、横方向の傾斜に対応すると共に、前後方向の傾斜に対しては、前ローラ2に対して後ローラ3の上下方向の配置位置が変化して、前後方向の傾斜に対応することで、芝生面Gの全方向の傾斜に対応して芝刈可能になっている。
【0040】
なお、上記実施例は、本発明を5連モアに実施した例であるが、機体の前方に2基の芝刈ユニットが配置され、当該機体の前輪と後輪との間に1基の芝刈ユニットが配置された3連モア、機体に前後して2基の芝刈ユニットが装着された2連モア、更には、機体に1基のみの芝刈ユニットが装着された単体モアに対しても、当然に本発明は実施可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ~A5 :リフトアーム
B:機体
Ca1 ~Ca5 :リフトアームの回動軸心
Cs1 ~Cs5 :油圧シリンダの回動軸心
G:芝生面
1 :コイルバネ(右巻)
2 :コイルバネ(左巻)
P:機体の進行方向
1 ~R5 :支持ロッド
1 ~S5 :油圧シリンダ
1 :付勢トルク(右回り・時計回り)
2 :付勢トルク(左回り・反時計回り)
1 ~U5 :芝刈ユニット
15:水平回動軸
21:係止フランジ
21a:コイルバネのわん曲引掛け部の係止溝
22a:コイルバネのわん曲引掛け部
22b:コイルバネの直線引掛け部
25:軸支持円筒体
26:コイルバネの直線引掛け部の引掛け係止孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10