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  • 特許-ヘアカラー方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ヘアカラー方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20220726BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220726BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20220726BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/19
A61K8/22
A61K8/34
A61K8/365
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/44
A61K8/49
A61K8/73
A61K8/9789
A61Q5/08
A61Q5/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019124971
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021011436
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031085(JP,A)
【文献】特開2019-019099(JP,A)
【文献】特開平11-158049(JP,A)
【文献】特開2013-213006(JP,A)
【文献】特開2004-067518(JP,A)
【文献】特開2004-352888(JP,A)
【文献】特開2004-018492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/46
A61K 8/19
A61K 8/22
A61K 8/34
A61K 8/365
A61K 8/37
A61K 8/41
A61K 8/44
A61K 8/49
A61K 8/73
A61K 8/9789
A61Q 5/08
A61Q 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)ヘアカラー剤及び(B)毛髪化粧料を塗布する工程前に、脱色する工程と、
(A)チオグリコール酸3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、塩基性染料、HC染料、第二のアミノ酸、第一のカチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤、及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8~10であるヘアカラー剤と、
(B)アルカリ剤、第一のアミノ酸、炭素数が12~22の高級アルコール類、界面活性剤、及び増粘剤を少なくとも含有する毛髪化粧料と、
を所定割合で混合したものを塗布する工程と、
前記塗布後に所定時間を設ける工程と、を含む、ヘアカラー方法。
【請求項2】
前記塩基性染料又はHC染料の配合量は、前記ヘアカラー剤の全量に対して、0.5重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のヘアカラー方法。
【請求項3】
さらに、前記塗布後にキューティクルケア剤を塗布する工程を含む、請求項1又は2に記載のヘアカラー方法。
【請求項4】
前記キューティクルケア剤は、臭素酸ナトリウム、過酸化水素から選択される少なくとも1種と、第二のカチオン界面活性剤と、第二のpH調整剤とを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記キューティクルケア剤の塗布後、一定時間放置する工程を含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記(A)ヘアカラー剤と前記(B)毛髪化粧料とを混合する配合比は、(A)/(B)=1~20である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ剤は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種である請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一又は第二のアミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、ならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘアカラー剤、前記毛髪化粧料、及び前記キューティクルケア剤の少なくとも一つが、抗体産生抑制剤を含む、請求項3記載の方法。
【請求項10】
前記塗布後に所定時間を設ける工程において、毛髪を加温することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカラー方法に関し、特に、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能であり、デザインカラーが可能な毛髪化粧料組成物とヘアカラー剤組成物との混合物を用いたヘアカラー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ、(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤、及び(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平11-501947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を含む従来技術のごとく、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるのに加えて、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因での皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
一方で、上述のヘアカラーでは、コルテックス(毛皮質。毛髪の内部)までしっかり染めることができるが、一般的なヘアカラートリートメントでは、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあった。
【0008】
また、近年、健常毛に対しても、カラートーンを上げた頭髪に「デザインカラー」や「おしゃれ染め」の要望があり、部分的に明るさを変えて立体感を出したり、一部分を染めてポイントを作ったりすることが望まれている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、毛髪染毛を行う上で、より色もちが良く、パラフェニレンジアミンフリーで、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能なヘアカラー方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラー方法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0011】
すなわち、本発明のヘアカラー方法は、下記(A)ヘアカラー剤及び(B)毛髪化粧料を塗布する工程前に、脱色する工程と、
(A)チオグリコール酸3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、塩基性染料、HC染料、第二のアミノ酸、第一のカチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤、及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8~10であるヘアカラー剤と、
(B)アルカリ剤、第一のアミノ酸、炭素数が12~22の高級アルコール類、界面活性剤、及び増粘剤を少なくとも含有する毛髪化粧料と、
を所定割合で混合したものを塗布する工程と、
前記塗布後に所定時間を設ける工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記塩基性染料又はHC染料の配合量は、前記ヘアカラー剤の全量に対して、0.5重量%以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、さらに、前記塗布後にキューティクルケア剤を塗布する工程を含む、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記キューティクルケア剤は、臭素酸ナトリウム、過酸化水素から選択される少なくとも1種と、第二のカチオン界面活性剤と、第二のpH調整剤とを含む、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記キューティクルケア剤の塗布後、一定時間放置する工程を含む、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記(A)ヘアカラー剤と前記(B)毛髪化粧料とを混合する配合比は、(A)/(B)=1~20である、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記第一又は第二のアミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、ならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記ヘアカラー剤、前記毛髪化粧料、及び前記キューティクルケア剤の少なくとも一つが、抗体産生抑制剤を含む、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記塗布後に所定時間を設ける工程において、毛髪を加温することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のヘアカラー方法によれば、パラフェニレンジアミンを含まないことで、かぶれや接触性皮膚炎のリスクを低減することに加え、ヘアカラーの使用期間が長くなる場合にも毛髪を傷め難いながらも、色持ち良く、施術者側において頭皮への付着を気にせず新生部までヘア・カラーリングの提供が可能であるという有利な効果を奏する。
【0022】
また、本発明の脱色後用ヘアカラー剤組成物によれば、特定成分の使用により、浸透性が良好であり、少ない染色料等の量であっても、デザインカラー等を実現することが可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、各種色素を用いた場合の、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、1%、3%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のヘアカラー方法は、下記(A)ヘアカラー剤及び(B)毛髪化粧料を塗布する工程前に、脱色する工程と、
(A)チオグリコール酸、システイン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、塩基性染料、HC染料、第二のアミノ酸、第一のカチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤、及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH3.5以上であるヘアカラー剤と、
(B)アルカリ剤、第一のアミノ酸、炭素数が12~22の高級アルコール類、界面活性剤、及び増粘剤を少なくとも含有する毛髪化粧料と、
を所定割合で混合したものを塗布する工程と、
前記塗布後に所定時間を設ける工程と、を含む、ことを特徴とする。当該ヘアカラー剤は、チオグリコール酸、システイン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、塩基性染料と、HC染料、第二のアミノ酸と、第一のカチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、第一のpH調整剤と、湿潤剤とを含有するものであって、pHは、3.5以上であり、当該毛髪化粧料は、アルカリ剤と、第一のアミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有することが好ましい。ヘアカラー剤には、さらに、好ましくは、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを含むことができる。
【0025】
これは、チオグリセリン(科学名:3-メルカプト-1,2-プロパンジオール)等を配合することによってpHを上げたり加温をしなくても、チオグリセリン等を配合せずにpHを上げ加温して染毛したものより染毛が良好であることが、今回本発明者らが見出したことによる。
【0026】
今回、脱色工程を採用しているのは、いわゆる脱色工程を経た後、ヘアカラー剤等の処理を行うことを明記したものである。すなわち、一度脱色処理を経た後でなければ、上述の毛髪浸透作用を有する、チオグリコール酸、システイン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン等を用いて、健常毛に直接、ヘアカラー剤組成物を適用しても、黒色の毛髪にほとんど変化が見られず、ひいては、デザインカラーを楽しめない虞があるためである。したがって、一度脱色処理を経た後の毛髪に対して、本発明はより有効に発揮させることが可能となる。
【0027】
まず、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物及びヘアカラー剤について以下に説明する。
【0028】
本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物は、チオグリコール酸、システイン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムと、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤を含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、チオグリセリン又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム等を配合した場合には、pHを上げたり加温をしなくても良好な堅牢特性を有する染毛が可能になるという観点から、pH3.5以上であることを特徴とする。また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物においては、pH6.8以上にすることによって、キューティクルを開き易くし、同時にL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、またその塩類といった塩基性アミノ酸を毛髪内部に送り込み、(毛髪の傷みとして)過去に毛髪から流出した塩基性アミノ酸を補って補修しながらカラーリングできる製品である。すなわち、本発明のヘアカラ―剤組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0029】
また、本発明の好ましい態様において、デザインカラーという観点から、前記塩基性染料又はHC染料の配合量は、組成物の合計量に対して、0.5質量%以下であることを特徴とする。また、デザインカラーという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.005~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.45質量%、さらに好ましくは、0.05~0.4質量%とすることができる。前記塩基性染料又はHC染料の配合量が、0.5質量%より多い場合には、明度が下がる虞があり、所望の効果を達成することが困難な場合がある。白髪染めは、白髪を濃く染めてスケールレベルの4~5程度の明度に落ち着かせていた。また、6~7レベルの明度は、健康毛の地毛の方や照明下では黒髪に見えるが、太陽の光が当たればやや茶色く見える程度の髪色で、真っ黒の髪色よりも雰囲気が柔らかく見えるとも言われ銀行、ホテル業や日系航空会社等の職場での判断基準の明るさとされている。本発明のおしゃれ染めと称するレベルは、さらに明るさが増す8~10レベルを目標としており、11レベル以上の明度は永久染毛剤としての酸化染毛剤域になる。そこで、後述の実施例では、日本ヘアカラー協会(JHCA)が販売するヘアカラーリング・レベルスケールを購入し、分光色彩計(日本電色工業(株)製、型番:SD 6000)を用いて毛束の明るさを測定して数値化した。またブルー系と紅系スカーレットの2色をそれぞれの脱色した毛束に染毛し、分光色彩計を用いて測定した場合、スカーレットの染料配合量が0.8%で明度(L*)の測定値が19.79、ブルーの染料配合量が0.8%で明度(L*)の測定値が19.12であり、9レベルに相当することが分かった。かかる観点から、最終的に所望の明度に対して、所望の量を決定することができる。
【0030】
従来においては、もっぱら、白髪染めにおいては、塩基性染料を1~3質量%加えた組成物で色素を濃くすることによって行っていた。すなわち、塩基性染料には黒色というものが無く、茶色を濃くするか青を濃くして黒っぽく仕上げていた。今回、健常毛に対しても、塩基性染料が適用できないか検討した結果、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムやチオグリセリン(3-メルカプト1,2-プロパンジオール)を配合することにより、より毛髪内部に色素が浸透させ、より濃い黒っぽさに仕上げることが可能になり、驚くべきことに、既存の色素量を30~50分の1に減らした量の0.5質量%以下であっても、脱色工程を経ることにより、デザインカラー等が楽しめることを本発明者らは見出したものである。
【0031】
例えば、配合色素量を減らしているので白髪が10%以上の混じっている方には白髪部分がだけが染まり不均一の染め上がりになる。本発明は好適には、健常毛用とすることができ、健常毛に脱染剤(ライトナーやパウダーブリーチ剤)を用いて、例えば、日本ヘアカラー協会が販売しているヘアカラーリング・レベルスケールで9~11レベルにカラートーンを上げた頭髪とする、「デザインカラー」や「おしゃれ染め」を楽しめるという効果を有することができる。
【0032】
また、本発明において、チオグリコール酸、システィン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種、及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムとしたのは、これらの成分を含むことにより、染料等の成分を毛髪内部に深く浸透させることが可能であり、少量の染料でも十分にヘアカラーを実現でき、しかも、長期間に渡って染料の効果を維持することが可能であるためである。本発明において、チオグリコール酸、システィン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩類、及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムのうち、臭いと結晶析出等の観点から、好ましくは3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを使用することができる。
【0033】
また、本発明においては、アルカリ剤を必須とせず、中性領域においても毛髪への優れた染料の浸透促進作用があるが、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、キューティクルを開き易くしpHを所望の数値以上に調整するという観点から、前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を挙げることができる。弱アルカリ性で毛髪への残留が少ないという観点から、好ましくは、前記pH調整剤としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施態様において、チオグリコール酸、システィン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の含有量、及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムの含有量は、前記ヘアカラー剤の全量に対して、低刺激性であり且つ毛髪への浸透促進作用にも優れた組成物という観点から、0.01~10.0重量%、好ましくは0.05~5.0重量%、より好ましくは、0.1~3.0%重量%としてもよい。
【0035】
キューティクルを効率よく開き、色持ちを良好に発揮し得るという観点から、本発明のヘアカラー剤組成物のpH値としては、好ましくは、3.5以上、より好ましくは5~11、さらに好ましくは6.8~10に調整することができる。
【0036】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0037】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青9(ベーシックブルー9)、塩基性青26(ベーシックブルー26)、塩基性青75(ベーシックブルー75)、塩基性青77(ベーシックブルー77)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性青124(ベーシックブルー124)、塩基性赤51(ベーシックレッド51)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57)、塩基性紫2(ベーシックバイオレット2)、塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、デザインカラーという観点から、組成物の合計量に対して、0.005~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.45質量%、さらに好ましくは、0.05~0.4質量%とすることができる。
【0038】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI名において、HC青2(HCブルー2)、HC青12(HCブルー12)、HC青14(HCブルー14)、HC青15(HCブルー15)、HC青16(HCブルー16)、HC青18(HCブルー18)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、前記HC染料の量としては、特に限定されないが、デザインカラーという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.005~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.45質量%、さらに好ましくは、0.05~0.4質量%とすることができる。
【0039】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、毛髪に与える感触をさらに向上させるという観点から、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。また、好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。また、前記カチオン界面活性剤の量としては、特に限定されないが、塩基性染料の毛髪染着力の向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%とすることができる。
【0040】
その他、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物には、増粘剤、湿潤剤、油剤等を含むことができる。本発明においては、これら増粘剤等について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。増粘剤としては、製品の安定性という観点から、例えばヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。また、前記増粘剤の量としては、特に限定されないが、製品の安定性向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%、さらに好ましくは0.2~0.4質量%とすることができる。
【0041】
また、湿潤剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1、3-ブチレングリコールを挙げることができる。また、前記湿潤剤の量としては、特に限定されないが、製品の塗布のしやすさという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%とすることができる。
【0042】
また、油剤としては、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等を挙げることができる。また、前記油剤の量としては、特に限定されないが、塗布放置時間の乾燥を防ぐとともに製品の安定性という観点から、好ましくは、1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0043】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤は、上述の本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。所望により、又はヘアカラー剤の用途によって、ヘアカラー剤に適宜本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物を含めることができる。
【0044】
また、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物及び毛髪化粧料の一例は、以下の通りである。
【0045】
本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤と、アミノ酸と、炭素数が12~22の高級アルコール類と、界面活性剤と、増粘剤とを含有することを特徴とする。アルカリ剤の配合は必須ではないが、アルカリ剤の配合によりキューティクルを開くことが可能である。すなわち、従来のヘアカラーリング等では、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染め、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあったが、当該毛髪化粧料組成物により、キューティクルを開くことが可能であり、ひいては、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0046】
すなわち、従来、塩基性染料やHC染料はキューティクル及び表面近くのコルテックスを染めることに対しては、前記毛髪化粧料組成物(膨潤剤)を使うことによって、毛髪のより深い部分までを塩基性染料及びHC染料で染めることが可能となることが本発明者らにより判明したものである。
【0047】
また、キューティクルを効率よく開き、膨潤効果を良好に発揮し得るという観点から、前記毛髪化粧料組成物のpH値としては、好ましくは、3.5以上、より好ましくは5~11、さらに好ましくは6.8~10に調整することができる。アルカリ剤の量としては、特に限定されないが、キューティクルを効率よく開き、膨潤効果を良好に発揮し得るという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.1~3質量%とすることができる。
【0048】
また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0049】
本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物において、炭素数が12~22の高級アルコール類としては特に限定されないが、毛髪に滑らかさを付与、乳化安定性の向上及び粘度調整という観点から、例えば、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等を挙げることができる。
【0050】
また、炭素数が12~22の高級アルコール類の量としては、特に限定されないが、毛髪に滑らかさを付与、乳化安定性の向上及び粘度調整という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.1~5.0質量%、より好ましくは、0.1~3.0質量%、さらに好ましくは0.2~2.0質量%とすることができる。
【0051】
好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種を挙げることができる。また、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物の好ましい実施態様において、前記エタノールアミン類は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び/又はトリエタノールアミンであることを特徴とする。モノエタノールアミン等のエタノールアミン類は不揮発性のため臭いは少ないが、毛髪への残留が高く毛髪を痛める虞がある。また、アルギニンは毛髪との親和性が高いがアルカリ剤としての作用としては弱く反応が穏やかである。アンモニア水は揮発性のため刺激臭はあるが、毛髪への残留が少なく反応が早い点特徴である。かかる観点から、アルカリ剤としては、好ましくは、アンモニア水を挙げることができる。
【0052】
また、好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、及び/又はヒスチジン、ならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種を挙げることができる。加齢に伴い毛髪内部のアルギニンやヒスチジンが低下することが報告されているが、本発明においては、本発明の毛髪化粧料組成物(膨潤剤)に配合されているアルギニンやヒスチジン塩酸塩、リシン塩酸塩が毛髪に浸透して毛髪補修効果を発揮することが可能である。
【0053】
本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物においては、界面活性剤と、増粘剤とを含有することができる。これら界面活性剤と、増粘剤について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0054】
また、好ましい実施態様において、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物において、当該毛髪化粧料組成物中に含まれるアルカリ剤がキューティクルを開くことが可能である。
【0055】
なお、本発明に適用可能な毛髪化粧料組成物を含むヘアカラーリング後、キューティクルを引き締めるためなどに、例えば、臭素酸ナトリウムを含むキューティクルケア剤を適用することも可能である。また、色落ちしやすいHC染料を毛髪内部染着させ、色落ちを遅らせることも可能である。
【0056】
また、本発明に適用可能な毛髪化粧料は、前記毛髪化粧料組成物を含むことを特徴とする。
【0057】
以上が、毛髪化粧料及びヘアカラー剤の一例についての説明である。
【0058】
本発明においては、下記(A)ヘアカラー剤及び(B)毛髪化粧料を塗布する工程前に、脱色する工程を行う。すなわち、上述のように、一度脱色処理を経た後でなければ、上述の毛髪浸透作用を有する、チオグリコール酸等を用いて、健常毛に直接、ヘアカラー剤組成物を適用しても、黒色の毛髪にほとんど変化が見られず、ひいては、デザインカラーを楽しめない虞があるためである。脱色する工程について、クリームタイプやパウダータイプの脱色剤を用いて脱色度合を確認しながら室温で5~30分程度放置し脱色することができる。その後、薬液を水またはぬるま湯で落とした後、シャンプー及びタオルドライ、またはヘアドライヤーを用いて乾燥させることができる。
【0059】
本発明においては、上述したヘアカラ―剤と毛髪化粧料とを、所定割合で混合したものを塗布することができる。両者を混合することとしたのは、これら単独使用に比較して、両者を混合して用いると、染色が濃く、色もちがよくなることを本発明者らが見出したことによる。両者を混合すれば足り、所定の割合については特に限定されないが、好ましい実施態様において、前記(A)ヘアカラー剤と前記(B)毛髪化粧料とを混合する配合比は、(A)/(B)=1~20であることを特徴とする。すなわち、毛髪染着力の観点から、前記ヘアカラー剤と前記毛髪化粧料の配合比は、好ましくは1~20:1の質量比、より好ましくは5~15:1の質量比、さらに好ましくは8~12:1の質量比とすることができる。
【0060】
また、本発明においては、キューティクルを効率良く開き、膨潤効果を良好に発揮させ、また染色を進行させ得るという観点から、前記塗布後に所定時間を設けることができる。また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記塗布後に所定時間を設ける工程において、浸透染着力を高めるという観点から、毛髪を加温することを特徴とする。加温時間についても、所望により特に限定されないが、効率よく染毛するという観点から、1~60分間、好ましくは5~40分間とすることが出来る。施術行程時間という観点から、約10分~(約10分又はそれ以上)で40℃前後まで昇温し、約30分間温度を保ってもよい。また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、塗布との毛髪を置いておく時間の間、塗布部分をラップで覆い、ヘアドライヤーヒートキャップを用いて加温してもよい。
【0061】
また、本発明において、前記所定時間後にキューティクルケア剤を塗布する工程とを含むことができる。また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記キューティクルケア剤の塗布後、開かせたキューティクル(毛小皮)を引き締め、HC染料を毛髪内部染着させるという観点から、一定時間放置する工程を含むことができる。放置時間としても特に限定されないが、例えば、放置時間は、1~20分間、好ましくは、1~10分間とすることができる。
【0062】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、さらに、キューティクルケア剤を塗布する工程を含んでもよい。例えば、好ましい実施態様において、前記毛髪化粧料及び前記ヘアカラー剤を混合して塗布した後、さらに、臭素酸ナトリウム、過酸化水素から選択される少なくとも1種と、第二のカチオン界面活性剤と、第二のpH調整剤とを含むキューティクルケア剤を塗布する工程を含んでもよい。なお、第二のpH調整剤としては、酸性側のpH調整剤を配合することができる。また、健康な毛髪の状態(等電帯pH4.5~5.5)に戻すという観点から、pH調整剤としては、クエン酸、リン酸、フィチン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸等を挙げることができる。
【0063】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記アルカリ剤は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、エタノールアミン類、炭酸水素アンモニウム、アルギニンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。アルカリ剤については、上述の本発明に適用可能な毛髪化粧料等における説明を参照することができる。
【0064】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、前記第一又は第二のアミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。第一又は第二のアミノ酸については、上述の本発明に適用可能な毛髪化粧料及びヘアカラー剤等における説明を参照することができる。
【0065】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、さらに、シャンプー剤の適用を含んでもよい。シャンプー剤を毛髪に適用する場合、整髪料や皮脂等の阻害要因を取り除くという観点から、毛髪化粧料前に適用してもよい。この場合、シャンプー剤としては、好ましくは、輝髪シャンプー、輝髪ブラック、アプルセルシャンプープレミアム、ナノサプリクレンジングシャンプー等(これらの製品の製造販売元:(株)サニープレイス)を用いることができる。
【0066】
また、シャンプー剤を、カラーリング後に適用してもよい。この場合、シャンプー剤のpHとしては、好ましくは弱酸性とする。また、シャンプー剤としては、好ましくは、輝髪シャンプーあるいは、アプルセルシャンプープレミアム(製造販売元:(株)サニープレイスのシャンプー剤)を用いることができる。
【0067】
また、本発明のヘアカラー方法の好ましい実施態様において、さらに、前記ヘアカラー剤、前記毛髪化粧料、及び前記キューティクルケア剤の少なくとも一つが、抗体産生抑制剤を含むことができる。抗体産生抑制剤としては、アレルギー疾患の予防や改善という観点から、ザクロ種子エキス、アガリクス属等に属するキノコ、ヤナギハッカ、エーデルワイス等抽出物を挙げることができる。
【0068】
例えば、抗体産生抑制剤として、ザクロ種子エキスを用いた場合を例に説明すれば以下の通りである。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0069】
また、好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスは、プニカ酸、又はエラグ酸を含むことを特徴とする。ザクロ種子エキスは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。
【0070】
より詳細には、まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0071】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0072】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。また、本発明のザクロ種子エキスの製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0073】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0074】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0075】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0076】
なお、本発明のヘアカラー方法の一例を、以下に説明する。
【0077】
1)整髪剤や汚れの除去のため、適宜プレシャンプーを行う。
2)常法による脱色処理を行う。この脱色工程により、次に脱色後用ヘアカラー剤の適用を容易にして、デザインカラ―を実現可能とする。
3)本発明に適用可能な脱色後用ヘアカラー剤(染毛成分含有)及び毛髪化粧料(塩基性キューティクル膨潤剤含有)を所定割合で混合したものを、刷毛によって毛髪に塗布する。
4)塗布した毛髪をラップで覆い、ヘアドライヤーやヒートキャップを用いて加温し、約30分置く。
5)4)の後、必要に応じて、キューティクルケア剤を毛髪に十分塗布し、約6分置く。
6)5)の後、適温の湯とシャンプー剤で洗髪する。
7)タオルドライ後、ヘアドライヤーで毛髪を乾かす。
【0078】
このように、従来では、白髪混じりの対象者に対して、幾分多い量のヘアカラー剤組成物+アルカリ剤等を含む毛髪化粧料を混合し、塗布し加温又は加温無しの放置した後、必要に応じて、キューティクルケア剤を塗布し、洗髪・仕上げを行っていた(10~30分程度の放置時間)。
【0079】
一方、今回、本発明においては、健常毛の黒髪の対象者に対して、脱色行程で頭髪を明るくした後、従来の1/30程度の量の組成物+アルカリ剤等を含む毛髪化粧料を混合し、塗布し加温又は加温無しの放置をした後、必要に応じて、キューティクルケア剤を塗布し、洗髪・仕上げを行うことにより(10~30分程度の放置時間)、デザインカラーを少量の染料にて、楽しめることが可能となった。
【実施例
【0080】
以下では本発明のヘアカラー方法に適する、ヘアカラー剤、及びキューティクルケア剤の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0081】
まず、本発明に適用可能なヘアカラー剤を作成した。
【0082】
アルカリ剤(pH調整剤)に関しては、弱アルカリ性で皮膚刺激が起きにくいという観点から、本実施例においては、炭酸水素アンモニウムを一例として、試験を行った。
【0083】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷すると流出することが知られていて、塩基性アミノ酸およびその塩類を0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0084】
表1は、本発明の一実施態様におけるヘアカラー剤組成物の成分例を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
調整方法は以下の通りである。
【0087】
調整方法:
1.表1の水相を75~77℃まで撹拌しながら加温する。
2.表1の油相を75~79℃まで加熱しながら撹拌し、均一にする。
3.75~77℃までに加熱した水相に色素を加えて均一にし、前記油相を加えて乳化し、均一になるまで撹拌する。
4.内容物をゆっくりと冷却し、43℃以下になったら防腐剤および清涼成分、消炎成分、アミノ酸群を加えて均一になるまで撹拌し、32℃以下になるまで冷却する。
【0088】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0089】
また、表1において、「チオグリセリン」を「オキシメチレンスルホキシル酸Na」(製造元:東京化成工業(株)、配合量の0.5%)に変更した場合にも同様に試験を行った。
【0090】
このようにして、本発明に適用可能なヘアカラ―剤を調整して、毛束に色落ち試験をおこなったところ、色落ちに極めて優れていることが判明した。
【0091】
従来、パラフェニレンジアミンを含まないヘアカラー剤を塗布し放置すると、ベースカラーは、酸化染料に比べて安全性が高いとされている塩基性染料およびHC染料であるが、毛髪に染着するために染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすいという欠点があった。従来のヘアカラー剤に対して、本発明に適用するヘアカラー剤は、ベースカラーが浸透しやすくなるばかりではなく、酸性染料を含まないために頭皮への付着を気にせず新生部から毛先まで塗布できることが判明した。
【0092】
このように、本発明に適用するヘアカラー剤等は、毛髪染料を行う上で、従来のヘアカラー及びヘアマニキュアと比較し、1)染色を繰り返すことで毛髪が傷んでいる方は毛髪強度が低下し、弾力が無くなり、毛髪が細化する(従来のヘアカラー)、2)頭皮のかぶれが発生しているとかぶれ部分が染色してかなり取れにくい(従来のヘアマニキュア)といった問題が無く、より色持ちと浸透染着力が良い毛髪化粧料を提供することが判明した。すなわち、本発明においては、色持ち以外に、安全性も備わっていることも判明した。
【0093】
次に、本発明に適用可能な毛髪化粧料を作成した。
【0094】
アルカリ剤に関しては、アンモニア水・炭酸アンモニウム・炭酸ナトリウム・モノやジ、トリエタノールアミンといったエタノールアミン類・炭酸水素アンモニウム・アルギニン等が考えられる。しかしながらモノエタノールアミン等のエタノールアミン類は不揮発性のため臭いは少ないが、毛髪への残留が高く毛髪を痛めるおそれがある。また、アルギニンは毛髪との親和性が高いがアルカリ剤としての作用としては弱く反応が穏やかである。アンモニア水は揮発性のため刺激臭はあるが、毛髪への残留が少なく反応が早い性質を有する。
【0095】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷により毛髪から流出することが知られていて、塩基性アミノ酸およびその塩類0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0096】
表2は、本発明の一実施態様における毛髪化粧料組成物の成分例を示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表3は、本発明の一実施態様における毛髪化粧料の成分例に関する調整例を示す。
【0099】
【表3】
【0100】
調整方法は、以下のとおりである。
1.表3のA相の精製水にアミノ酸群を溶解確認後、アルカリ剤を均一に混合する。
2.次いで、表3のA相を撹拌しながら表3のB相を加えて均一に混合する。
3.適度に撹拌しながら表3のC相を加え、均一になるまで撹拌する。
【0101】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0102】
表4は、本発明の一実施態様におけるキューティクルケア剤の成分例を示す。キューティクルケア剤とは、キューティクルを整える、引き締めるといったキューティクルの状態を改善する作用を含むものである。つまり、整える、引き締める作用に限定されない。
【0103】
【表4】
【0104】
表5は、本発明の一実施態様において、本発明に適用可能なキューティクルケア剤の調整方法の一例を示す。
【0105】
【表5】
本発明に適用可能なキューティクルケア剤の調整方法は以下の通りである。
調整方法:
1.表5のA相の精製水に残りの成分を均一に混合する。
2.表5のA相を撹拌しながら表5のB相を加えて均一に混合する。
3.適度に撹拌しながら表5のC相を加え、均一になるまで撹拌する。
【0106】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0107】
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
実施例1
本発明に適用可能な主な塩基性染料の浸透を比較した。毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BS-C、ビューラックス社製)長さ30cmを3等分し、染毛する毛髪試料とした。Basic Red 51、Basic Brown 16及び17は色素を精製水に0.2%溶解し25%アンモニア水(和光純薬工業(株)製)を用いてpHをアルカリ性に寄せ、チオグリセリンとして3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)の0%、1%、3%溶液を調整した。アルカリ性の最適値は、pH7.5~10.0付近であるが、色素によって違いがあり、pHを上げ過ぎると溶液内で沈殿を生じてしまう色素もある。またBasic Blue 75、77、 99、 Basic Violet 2、Basic Yellow 57は染料の溶解性を上げるためにアミドベタイン型両面活性剤のヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(品番:ソフタゾリンCPB-R,川研ファインケミカル(株)製)5.0%に染料を0.7%溶解し精製水を加え25%アンモニア水(和光純薬工業(株)製)を用いてpHをアルカリ性に寄せ、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、1%、3%溶液を調整した。1本の白髪を3等分した毛髪試料を各染料の3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、1%、3%溶液に浸し、40℃恒温槽を用いて30分間放置して染色した。上記毛髪試料を、PVA樹脂を用いて凍結包埋した後、ミクロトームを用いて、毛髪断面試料(切片厚:10μm)を作製した。そして、顕微鏡観察用試料としてスライドガラス上に載せて顕微鏡で比較した(図1)。
【0108】
図1に示すように、毛髪試料への染料の浸透程度は、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールは、3%の場合が、染料いずれにおいても最も深く(断面外周からの色が濃い範囲が最も大きい)ことがわかる。特には、Basic Brown 16とBasic Blue 77の染料の場合に、浸透良好であることがより明確であった。
【0109】
実施例2
浸透の良好であったBasic Brown 16とBasic Blue 77の染料を用いて毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BS-C、ビューラックス社製)を以下処方例(表6)で40℃恒温槽を用いて30分間放置して黒褐色に染毛した。表6に成分例と処方例を示す。
【0110】
【表6】
上記毛髪試料を、PVA樹脂を用いて凍結包埋した後、ミクロトームを用いて、毛髪断面試料(切片厚:10μm)を作製した。そして、顕微鏡観察用試料としてスライドガラス上に載せて顕微鏡で比較した結果、Basic Brown16 0.2%とBasic Blue77 0.2%を混ぜて黒褐色にした場合の、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムの0%、0.5%、1%、3%、5%、7%及び10%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による良好な観察結果が得られた。すなわち、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを用いた場合、チオグリセリンのように染色力が上がるという効果は低いものの、配合しないときよりも配合した方が洗浄回数による色落ちが防げることが判明した。
【0111】
実施例3
次に、摩擦係数に関しては値が低い方が滑らかさを示し、光沢は85°の角度で照射した光がどれだけ反射して戻ってきたかで数値が高いほど光沢が高いことを示すことから、本発明の脱色後用ヘアカラー組成物等の効果を調べた。
【0112】
まず、市販人毛黒髪100%未処理毛毛束(品番:BS-B-A、ビューラックス社製)長さ10cm、重さ1gを用いて以下の脱色毛束を作成した。なお、1)試作処方の脱色剤、2)クリームタイプの市販脱色剤、3)パウダータイプの市販脱色剤を用いた。
【0113】
1)試作処方の脱色剤
I剤 :
強アンモニア水(25%) 9.20%
炭酸水素アンモニウム 8.00%
EDTA-4Na 0.10%
精製水 残部82.7%
【0114】
II剤:
過酸化水素水(30%) 20.00%
精製水 残部80%
【0115】
I剤とII剤を1:1の割合で混合した溶液に市販人毛黒髪100%未処理毛毛束を浸し、25℃,30分放置し、その後ぬるま湯で薬液を落とし、シャンプーとドライヤーによる乾燥で脱色毛を作成した。日本ヘアカラー協会が販売するヘアカラーリング・レベルスケールでは9レベルを示した。
【0116】
2)クリームタイプの市販脱色剤
I剤として「フィヨーレ BLカラーライトナー(製造販売元:資生ケミカル(株))」とII剤として市販の過酸化水素6%を1:1の割合で混合し、市販人毛黒髪100%未処理毛毛束に塗布して25℃,30分放置し、その後ぬるま湯で薬液を落とし、シャンプーとドライヤーによる乾燥させた。この工程を5回繰り返して脱色毛を作成した。日本ヘアカラー協会が販売するヘアカラーリング・レベルスケールでは11レベルを示した。
【0117】
3)パウダータイプの市販脱色剤
I剤として「ナンバースリー BP(製造販売元:(株)ナンバースリー)とII剤として市販の過酸化水素6%を1:3の割合で混合し、市販人毛黒髪100%未処理毛毛束に塗布して25℃,30分放置し、その後ぬるま湯で薬液を落とし、シャンプーとドライヤーによる乾燥で脱色毛を作成した。日本ヘアカラー協会が販売するヘアカラーリング・レベルスケールでは10レベルを示した。
【0118】
これら3種類の毛束に上述した表1等のおしゃれ染処方についてのヘアカラー剤組成物と、おしゃれ染めの酸化染毛料である「イルミナカラー TWI-6(製造販売元:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(株)」,「ノンジアミン ヘルパDF/P-08製造販売元:エステートケミカル(株)」を用いて染毛し、染毛した毛束を仕上がりの風合いにあたる手触り感として摩擦感テスター(カトーテック(株)社製)で、毛髪の輝きを光沢計(日本電色工業(株)社製)で、そして毛髪の傷み具合を保有水分量として定温乾燥器((株)三商社製)を用いて測定した。
【0119】
毛髪の風合いを「なでる」といった官能評価を「KES-SE摩擦感テスター(カトーテック株式会社製)」を使って「なめらかさ」を摩擦係数として測定(平均値)した。なお、測定は恒温恒湿室内で行い、測定環境温湿度は、20℃/61%RHであった。摩擦係数に関して評価の結果を表7に示す。
【0120】
【表7】
【0121】
したがって、1)~3)のいずれの脱色工程を経た後であっても、本発明の脱色後用ヘアカラー組成物及びヘアカラー剤においては、値が低く、優れた滑らかさを有することが判明した。
【0122】
実施例4
次に、実施例3と同様の毛束を日本電色工業社製の光沢度測定器(VG7000)を使用し、入射角85°による計測値(平均値)を以下に示した。結果を表8に示す。
【0123】
【表8】
【0124】
したがって、1)~3)のいずれの脱色工程を経た後であっても、本発明の脱色後用ヘアカラー組成物及びヘアカラー剤においては、数値が高く、ひいては、光沢が良好であることが判明した。
【0125】
実施例5
実施例3と同様の毛束を三商社製の定温乾燥器(SDN27P)を用い、65℃、40分加熱した際の減量分を一次蒸散水とし、さらに毛髪に含まれる全水分が蒸発するとされる180℃、30分加熱して得られた値(平均値)を以下に示した。具体的には、水分蒸散量測定法に従い、電子式水分計(EB-340MOC;島津製作所製)を用いて毛髪の水分量を測定した。結果を表9に示す。
【0126】
【表9】
【0127】
表9の結果、一次蒸散水はヘアドライヤーの温度を想定したものであるので、本発明品は、ドライヤー後の水分量が他2品より優れ、毛髪全水分量を比較しても水分量が高いことから本発明品を使うと他2品と比較しても毛髪にうるおいが高くなることが分かる。
【0128】
一般的におしゃれカラーは、酸化染料と過酸化水素等の酸化剤で発色させる酸化染毛料によるものであったが、本発明は酸化剤等と反応させる必要が無い塩基性染料を使い、組成物の塩基性染料を配合色素量の調整と脱色と染毛の2段階の工程で染毛すると「デザインカラー」と言われる複数の色合いや明暗を使って髪の色を「デザイン」する染毛が可能となり、部分的に明るさを変えて立体感を出したり、一部分を染めてポイントを作ったりすることが可能となった。
【0129】
また、以上の結果から、チオグリセリン等を配合する場合に、pHを上げることや、加温をしなくても良好な堅牢特性を有する染毛が可能になることが分かった。また、チオグリセリン等を配合し、かつ加温とpHを上げることはより効果的となることも判明した。染料の塩基性青99と塩基性茶16の場合は、pH10付近までpHを上げていけばいくほど良好な堅牢特性を有する染毛が可能である一方、塩基性青77の場合はpH8以上に上げると色素が壊れて色彩が変わり弱い染毛になる傾向が判明した。
【0130】
このように、毛髪等のカラーリングにおいて、チオグリセリン等を配合することで、毛髪に染料が入りやすくなることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によると、毛髪を傷めにくく、皮膚障害を低減可能であるとともに、染料が毛髪に入りやすいカラーリング方法は、普及しやすく、産業上利用価値が高い。
図1