(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】両性解離型イオン交換媒体、並びに使用方法及び分離容量のキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
B01J 43/00 20060101AFI20220726BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20220726BHJP
B01J 47/014 20170101ALI20220726BHJP
B01J 49/50 20170101ALI20220726BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220726BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20220726BHJP
B01J 20/285 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
B01J43/00
B01J20/281 X
B01J47/014
B01J49/50
G01N21/27 Z
G01N30/02 B
B01J20/285 T
B01J20/285 Z
(21)【出願番号】P 2019530832
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2018111536
(87)【国際公開番号】W WO2019080851
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2019-06-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】201711010305.0
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518396769
【氏名又は名称】重慶博藍鷹生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING BOLANYING (BLY) BIOTECHNOLOGY CO., LTD., CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】廖飛
(72)【発明者】
【氏名】竜高波
(72)【発明者】
【氏名】謝燕玲
(72)【発明者】
【氏名】黄銘通
(72)【発明者】
【氏名】謝万軍
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】三崎 仁
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-77037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005265(US,A1)
【文献】特開昭50-68981(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102993229(CN,A)
【文献】特開昭58-76145(JP,A)
【文献】特表平3-501446(JP,A)
【文献】米国特許第6420439(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J43/00, B01J47/00-47/15, B01J20/00-20/34, B01D15/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性解離型イオン交換分離媒体であって、
前記両性解離型イオン交換分離媒体の表面が両性解離共有結合修飾層であり、前記両性解離共有結合修飾層は、両性解離型イオン交換分離媒体の表面の正味荷電がゼロであるときの環境pHであってpImで示される等電点を有し、環境pHが前記等電点pImより低い場合、両性解離共有結合修飾層の表面の正味荷電が正であり、アニオン交換剤の性質を有し、環境pHが前記等電点pImより高い場合、両性解離共有結合修飾層の表面の正味荷電が負であり、カチオン交換剤の性質を有し、
前記両性解離型イオン交換分離媒体の表面の両性解離共有結合修飾層に、pH値が前記等電点pImより低いときに解離して正電荷を発生させる基とpH値が前記等電点pImより高いときに解離して負電荷を発生させる基とを同時に含み、前記解離して負電荷を発生させる基は脂肪族カルボキシ基であり、
前記解離して正電荷を発生させる基は脂肪族一級、二級、三級アミン基及びイミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み合わせであり、
前記両性解離共有結合修飾層は、両性解離基前駆体による分離媒体マトリックスの表面に対する共有結合修飾に由来し、
前記分離媒体マトリックスは、表面に長さが9個の原子を超える線状長直鎖を含まず、両性解離基前駆体と共有結合反応を行って前記両性解離共有結合修飾層を生成するための反応基を含み、前記反応基が脂肪族一級アミン基及び/又は脂肪族二級アミン基、脂肪族カルボキシ基、及びメルカプト基で置換されて分離媒体マトリックスの表面から離脱する小体積脱離基を含有するメルカプト反応性基のうちのいずれか1種であり、
前記両性解離基前駆体は、親水性で、分子量が500ダルトン未満で、連続した5個超の炭素原子を持つ炭化水素鎖又は炭化水素環を含まない物質であり、且つすべてアルキルチオール基又は脂肪族一級アミン基を共有結合連結基として含むとともに、脂肪族カルボキシ基を解離して負電荷を発生させる基として含み
及び脂肪族一級、二級、三級アミン基及びイミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み合わせを解離して正電荷を発生させる基として含み、前記両性解離基前駆体は、
前駆体Aと前駆体Bの組み合わせ、前駆体Aと前駆体Cの組み合わせ、前駆体Bと前駆体Cの組み合わせ、又は前駆体Cであり、
前駆体Aが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離して負電荷を発生させる基
を含み、前記解離して正電荷を発生させる基を含まない両性解離基前駆体であり、前駆体Bが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離して正電荷を発生させる基
を含み、前記解離して負電荷を発生させる基を含まない両性解離基前駆体であり、前駆体Cが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離して負電荷を発生させる基及び解離して正電荷を発生させる基を同時に含有する両性解離基前駆体であり、
前駆体Cは、リジン
、ヒスチジン、システインから選ばれ、前駆体Aは、
メルカプト酢酸であり、前駆体Bは、メルカプトエチルアミン
、2-メルカプトイミダゾールから選ばれ、
前記両性解離基前駆体は、前駆体Cを単独として用いる場合、リジン、ヒスチジン、又はシステインを用いるものであり、前駆体Aと前駆体Bを用いる場合、メルカプト酢酸と2-メルカプトイミダゾールを用いるものであり、前駆体Aと前駆体Cを用いる場合、メルカプト酢酸とシステインを用いるものであり、前駆体Bと前駆体Cを用いる場合、メルカプトエチルアミンとシステインを用いるものあり、
前記両性解離型イオン交換分離媒体は、カルボキシ磁気ビーズFBD-MSP-FCOOHのカルボキシ基を活性化させてFBD-MSP-FCONHSとした後、
FBD-MSP-FCONHSに(1)リジン溶液を修飾してFBD-MSP-ZEWBを得ること、
FBD-MSP-FCONHSに(2)ヒスチジン溶液を修飾してFBD-MSP-ZEWDを得ること、
FBD-MSP-FCOCH2Clに(5)システイン溶液、(7)メルカプト酢酸溶液を修飾してFBD-MSP-ZEW1を得ること、
FBD-MSP-FCOCH2Clに(5)システイン溶液を修飾してFBD-MSP-ZEW2を得ること、
FBD-MSP-FCOCH2Clに(5)システイン溶液、(6)メルカプトエチルアミン溶液を修飾してFBD-MSP-ZEW3を得ること、
FBD-MSP-FCOCH2Clに(7)メルカプト酢酸溶液、(8)2-メルカプトイミダゾール溶液を修飾してFBD-MSP-ZEW4を得ること
、
を特徴とする両性解離型イオン交換分離媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の両性解離型イオン交換分離媒体の使用方法であって、
前記両性解離型イオン交換分離媒体は、FBD-MSP-ZEWBであり、
対象物質を吸着する場合、環境pHはpH3.6であり、
対象物質を溶出する場合、溶出液のpHはpH8.9であることを特徴とする、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的活性物質を分離するイオン交換分離媒体に関し、具体的には両性解離
型イオン交換媒体、並びにその使用方法及びその分離容量のキャリブレーション方法に関
する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換分離媒体は、タンパク質/核酸などの生物分子の高速分離と再分析、タンパク
質/核酸の精製調製、解離性荷電物質のクロマトグラフィー定量分析に適用でき、このよ
うな用途では、イオン交換分離媒体に対して、高吸着容量、温和な条件での被吸着物質へ
の高溶出能力、分離容量キャリブレーションの正確性、妨害物質への低非特異的吸着、温
和な条件での高再生能力などの特徴が同時に求められる。従来のイオン交換分離媒体は、
上記要求を同時に満たすことができず、これら要求をできるだけ同時に満たす新規イオン
交換分離媒体を設計することは本発明が解決しようとする課題となっている。
【0003】
分離媒体表面の基が所定pHで解離して小体積の対イオンとともに静電吸引するイオン対
を形成し、次に、静電吸引及び競合的結合によって反対電荷を有する対象物質を吸着して
、それにより対象物質のオンラインクロマトグラフィー分析を行い、又は、さらにNaC
l、KClなどの高濃度一価中性無機塩にて競合イオンを提供して、静電吸引及び競合的
結合によって吸着された対象物質を溶出し、このことはイオン交換と呼ばれ、使用される
分離媒体はイオン交換剤と呼ばれる。
【0004】
生物分子のイオン交換分離に使用されるpHは一般的に5.0-8.0であり、通常、3
.0-11.0に制限される。古典的なイオン交換精製/対象物質の抽出及び再分析には
、吸着及び溶出の2つの工程ともに対象物質、分離媒体の表面の荷電基、溶液におけるイ
オン間の静電吸引及び競合的結合による。古典的なイオン交換分離媒体の表面に存在可能
なイオン化可能基が通常1種しかなく、pH3.0-11.0ではその表面の正味荷電が
2種のタイプしかなく、すなわち、その表面の正味荷電が正又はゼロであるが、負帯電状
態にならない場合は、アニオン交換剤と呼ばれ、その表面の正味荷電が負又はゼロである
が、正帯電状態にならない場合は、カチオン交換剤と呼ばれる。古典的なイオン交換剤は
、生物分子の精製調製、抽出濃縮再分析及びクロマトグラフィー分析に用いる場合、性能
には一定の欠点がある。まず、親水性にするために、古典的なイオン交換剤の表面に大量
のヒドロキシ基、アミドのような水素結合形成基を有するが、対象物質と大量の水素結合
を形成して非特異的吸着を発生させるため、古典的なイオン交換剤の吸着させたタンパク
質/核酸に対する溶出能力、分離選択性、分離容量及び再生能力を低下させ、クロマトグ
ラフィー分析の場合は、解像度が低いとともに、クロマトグラフィーカラムの耐用年数が
短い。次に、高濃度一価中性無機塩を用いた競合的結合によって対象物質の放出を促進す
るときに、優れた溶出効果を果たすのに高濃度無機塩でなければならず、その結果、後続
の再分析/処理に脱塩を必要とし、効率を低下させるとともに、コストを増大する。した
がって、非特異的吸着を大幅に低下させるとともに、被吸着対象物質への溶出能力を高め
るイオン交換分離媒体の新しい設計原理を確立することが期待される。
【0005】
古典的なイオン交換は、低溶出能力のために、核酸の抽出濃縮再分析に向いていない。遺
伝物質としての核酸は、現在の臨床検査における感染症の感染の確診、法医学的証拠の検
査、遺伝子型判定、食品安全性試験、及び医薬原料の供給源の確認などの生物医学分析の
中心及び焦点である。生物サンプルにおける核酸含有量が低いので、通常、検出前にPC
R増幅が必要とされる。しかしながら、サンプルには核酸のPCR増幅を妨害する非核酸
物質を大量含む場合が多い。サンプルにおける核酸を迅速に抽出すると同時に大部分の妨
害物質を除去した後にPCR増幅分析を行わなければならない。核酸は、リン酸ジエステ
ル結合を有し、pH2.0以上で解離して正味荷電が負のポリアニオンになり、理論的に
は、アニオン交換は核酸の抽出濃縮再分析に利用できる。一般的なアニオン交換剤は、核
酸への吸着容量が極めて高いものの、吸着された核酸をどのように溶出するかが技術的に
困難である。高濃度一価中性無機塩は吸着された核酸アニオンの溶出能力を高めることが
できるが、大量の無機塩を使用すると後続のPCR増幅の阻害となる。現在、サンプルに
おける核酸を迅速に抽出して再分析するときに、主にシラノールを基として水素結合によ
り結合されることによって、温和な条件での溶出能力を確保する。核酸抽出結果の再現性
を高めて核酸分析結果の再現性を確保するために、従来、ミクロン磁気ビーズを用いて高
速吸着分離を行った後に溶出するのが一般的である。しかしながら、シラノールは核酸結
合容量が低く且つ核酸に対する選択性が低いため、シラノール磁気ビーズの使用量を増大
して、さらにコストを高め、シラノール磁気ビーズの表面に高非特異的吸着を有するため
、それによって抽出された核酸に多くの不純物が含まれるため、PCR反応が阻害されて
、核酸の高感度検出が妨害されてしまう。イオン交換は、タンパク質精製のために一般的
に使用される手段でもあり、しかし、使用時に易溶性の高濃度一価中性無機塩を用いても
、溶出される対象タンパク質の収率が低く、また、後続の操作又は分析に透析又は限外ろ
過により無機塩を除去しなければならず、それも操作効率を低下させて、コストを増大す
る。このため、核酸及びタンパク質の高速抽出/精製調製のいずれにおいても、低イオン
強度のバッファによる被吸着物質への溶出能力を向上させるために、新規イオン交換剤が
求められる。
【0006】
対象物質が静電吸引によってイオン交換媒体の表面に吸着された後、pHが明らかに異な
る溶出液を用いて、イオン交換媒体の表面の正味荷電をゼロにすることによって、対象物
質の溶出能力を強くすることができるが、対象物質とイオン交換媒体の間の大量の水素結
合が溶出を妨害し、それに加えて、通常のイオン交換媒体による妨害小分子への非特異的
吸着が後続の分析を妨害する。被吸着対象物質とイオン交換媒体の間で静電反発作用を発
生させると、被吸着対象物質の溶出及び分離媒体の再生が確実に促進できる。吸着バッフ
ァのpHと明らかに異なる溶出液は、対象物質と分離媒体の表面の間で静電反発を発生さ
せる可能性がある。しかし、古典的なイオン交換剤の表面に1種の解離基しかないため、
pHを変えることで、分離媒体の表面の正味荷電と対象物質の正味荷電を反対するものか
ら同じものに変更して静電反発作用を発生させることができない。
【0007】
したがって、古典的なイオン交換分離媒体を生物分子分離に使用する場合の欠陥を解決す
るために、高吸着容量、温和な条件での被吸着イオンへの高溶出能力、分離容量キャリブ
レーションの正確性、非対象物質への低非特異的吸着、温和な条件での高再生能力などの
利点を同時に備える新規イオン交換媒体の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に鑑み、本発明は、高い吸着能力と溶出能力を兼ね備えるとともに、高吸着容量、温
和な条件での被吸着イオンへの効果的な溶出、分離容量キャリブレーションの正確性、非
対象物質への低非特異的吸着、温和な条件での高再生能力などの利点を有する新規イオン
交換媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、両性解離型イオン交換分離媒体を提供し、前記両性解離型イオン交換分離媒体
の表面が両性解離共有結合修飾層であり、前記両性解離共有結合修飾層は、両性解離型イ
オン交換分離媒体の表面の正味荷電がゼロであるときの環境pHであってpImで示され
る等電点を有し、pH値が前記等電点pImより低い場合、両性解離共有結合修飾層の表
面の正味荷電が正であり、アニオン交換剤の性質を有し、pH値が前記等電点pImより
高い場合、両性解離共有結合修飾層の表面の正味荷電が負であり、カチオン交換剤の性質
を有する。
【0010】
さらに、環境pHが前記等電点pImより低い場合、差値が増大するに伴い、両性解離共
有結合修飾層の表面の正電荷の数が徐々に増加し、環境pHが前記等電点pImより高い
場合、差値が増大するに伴い、両性解離共有結合修飾層の表面の負電荷の数が徐々に増加
し、前記環境pHはいずれも分離対象物質と前記両性解離型イオン交換分離媒体の両方が
耐えられる範囲にある。
【0011】
さらに、前記両性解離型イオン交換分離媒体の表面の両性解離共有結合修飾層に、pH値
が前記等電点pImより低いときに解離して正電荷を発生させる基とpH値が前記等電点
pImより高いときに解離して負電荷を発生させる基とを同時に含み、前記解離して負電
荷を発生させる基は脂肪族カルボキシ基であり、解離して正電荷を発生させる基は脂肪族
一級、二級、三級アミン基及びイミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み合わせであ
る。
【0012】
さらに、前記両性解離共有結合修飾層は、両性解離基前駆体による分離媒体マトリックス
の表面に対する共有結合修飾に由来し、
前記分離媒体マトリックスは、表面に長さが9個の原子を超える線状長直鎖を含まず、両
性解離基前駆体と共有結合反応を行って前記両性解離共有結合修飾層を生成するための反
応基を含み、前記反応基が脂肪族一級アミン基及び/又は脂肪族二級アミン基、脂肪族カ
ルボキシ基、及びメルカプト基で置換されて分離媒体マトリックスの表面から離脱する小
体積基を含有するメルカプト反応性基のうちのいずれか1種であり、
前記両性解離基前駆体は、親水性で、分子量が500ダルトン未満で、連続した5個超の
炭素原子を持つ炭化水素鎖又は炭化水素環を含まない物質であり、且つすべてアルキルチ
オール基又は脂肪族一級アミン基を共有結合連結基として含むとともに、脂肪族カルボキ
シ基を解離して負電荷を発生させる基として含み及び/又は脂肪族一級、二級、三級アミ
ン基及びイミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み合わせを解離して正電荷を発生さ
せる基として含み、前記両性解離基前駆体は、前駆体A、前駆体B及び前駆体Cを含み、
前駆体Aが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離して負電荷を発生させる基だけを含
む両性解離基前駆体であり、前駆体Bが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離して正
電荷を発生させる基だけを含む両性解離基前駆体であり、前駆体Cが前記共有結合連結基
を含む以外、前記解離して負電荷を発生させる基及び解離して正電荷を発生させる基を同
時に含有する両性解離基前駆体であり、
前記両性解離基前駆体を分離媒体マトリックスの共有結合修飾に用いるとき、
a.前駆体Cを単独で使用し又は混合して使用し、混合して使用する場合、複数種の前駆
体Cを所定比率で混合して使用し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結
合連結基を含有する方式と、
b.1種又は複数種の前駆体Aと1種又は複数種の前駆体Bとを所定比率で混合して使用
し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結合連結基を含有する方式と、
c.1種又は複数種の前駆体Aと1種又は複数種の前駆体Cだけを所定比率で混合して使
用し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結合連結基を含有する方式と、
d.1種又は複数種の前駆体Bと1種又は複数種の前駆体Cだけを所定比率で混合して使
用し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結合連結基を含有する方式との
うちの1種によって修飾する。
【0013】
さらに、分離媒体マトリックスに対して共有結合修飾を行うとき、使用される両性解離基
前駆体において、脂肪族カルボキシ基の総モル量に対する脂肪族一級、二級、三級アミン
基及びイミダゾリル基の総モル量の比率が1:6-6:1の間に制限される。
【0014】
さらに、使用される両性解離基前駆体に脂肪族二級アミン及び/又は三級アミンを解離し
て正電荷を発生させる基として含む場合、前記脂肪族二級アミンと三級アミンの総モル量
の合計が脂肪族一級アミン及びイミダゾリル基の総モル量の合計の30%以下である。
【0015】
さらに、前記両性解離型イオン交換分離媒体は、pHが3である場合、その表面の正電荷
の数が最大値の90%以上であり、pHが11である場合、その表面の負電荷の数が最大
値の90%以上である。
【0016】
本発明はさらに、前記両性解離型イオン交換分離媒体の使用方法を開示し、前記両性解離
型イオン交換分離媒体を使用して対象物質を吸着して分離するとき、対象物質が水素イオ
ンを放出する解離定数の常用対数をpIs又は対象物質の等電点をpIsとし、使用過程
において、
a.そのpImと対象物質のpIsの差が1.0以上である両性解離型イオン交換分離媒
体を選択する特徴と、
b.対象物質を吸着する場合、対象物質のpIsと両性解離型イオン交換分離媒体の等電
点pImの間にあり且つ対象物質のpIs及び両性解離型イオン交換分離媒体のpImの
いずれとの差も0.3より大きい環境pHを選択して、イオン交換分離媒体の表面の正味
荷電と対象物質の正味荷電を逆にして、静電吸引によって対象物質を吸着する特徴と、
c.対象物質を溶出する場合、溶出液のpHが両性解離型イオン交換分離媒体の等電点p
Imより低いとき、溶出液のpHが対象物質のpIs及び両性解離型イオン交換分離媒体
の等電点pImのうち低い方よりも少なくとも0.30低く、溶出液のpHが両性解離型
イオン交換分離媒体の等電点pImより高いとき、溶出液のpHが対象物質のpIs及び
両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImのうち高い方よりも少なくとも0.30高
く、両性解離型イオン交換分離媒体の表面の正味荷電と対象物質の正味荷電を同じにして
、静電反発によって対象物質を溶出し、水溶性一価中性無機塩を加えて、対象物質の溶出
を促進する特徴とを有する。
【0017】
本発明は、前記両性解離型イオン交換分離媒体のキャリブレーション方法を開示し、
a.前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量をキャリブレーションするとき、解離
定数又は等電点がpKaであり、分子量が600Dalton未満で、可視光吸収係数が
14mM-1.cm-1より大きく、pH3.0-11.0での溶解度が5.0μmol
/L以上で且つpH3.0-11.0で解離した後の正味荷電が正又は負である有色有機
物を発色プローブとし、
b.前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量をキャリブレーションするときに、
b1.両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImが4.0-6.0である場合、解離
定数又は等電点pKaが両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImよりも少なくとも
2.0大きいカチオンプローブ、又は解離定数又は等電点pKaが両性解離型イオン交換
分離媒体の等電点pImよりも少なくとも2.0小さいアニオンプローブを用いる形態と
、
b2.両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImが6.0-10.0である場合、解
離定数又は等電点pKaが両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImよりも少なくと
も2.0小さいアニオンプローブを用いる形態とを有し、
c.前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量をキャリブレーションするとき、吸着
する場合、解離定数又は等電点pKaと両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImの
間にあり且つ両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImとの差が1.3以上であると
ともに発色プローブの解離定数又は等電点pKaとの差が0.5以上である環境pHに対
応したバッファを用いて、両性解離型イオン交換分離媒体に静電吸引によって発色プロー
ブを吸着させ、溶出する場合、発色プローブの解離定数又は等電点pKaと両性解離型イ
オン交換分離媒体の等電点pImのうち高い方よりも少なくとも1.3高く又は低い方よ
りも少なくとも1.3低い環境pHに対応したバッファを用いて、両性解離型イオン交換
分離媒体の表面の正味荷電と発色プローブの正味荷電を同じにして静電反発によって発色
プローブを溶出し、溶出液での発色プローブの吸収を測定して、発色プローブに対する分
離容量を換算し、
pHによる両性解離型イオン交換分離媒体の発色プローブに対する分離容量への影響を測
定した結果、解離後の正味荷電が負である発色プローブに対する分離容量がゼロになる最
小pH、解離後の正味荷電が正である発色プローブに対する分離容量がゼロになる最大p
Hが、両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImの近似値である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明による両性解離型イオン交換分離媒体
は、共有結合修飾により媒体の表面に両性解離共有結合修飾層の構造を形成し、且つ修飾
される構造又は使用される両性解離基前駆体の比率の相違によって、特定の等電点pIm
を形成し、等電点pImを限界にして、所定の各種環境pHでアニオン交換剤の性質又は
カチオン交換剤の性質となるような特殊な分離機能を有し、等電点pImの両側でのpH
変更によって、両性解離型イオン交換分離媒体のイオン交換性質を逆転させることができ
、荷電物質に対する吸着分離機能が、pHが等電点pImの両側のいずれにあるかによっ
て明らかなに異なる。本発明で製造される両性解離型イオン交換分離媒体は、バッファp
Hを調整することで分離媒体の表面の正味荷電と対象物質の正味荷電を同じにして静電反
発を発生させて対象物質を放出し、このように、溶出能力を高めるとともに、高濃度無機
イオンの使用による後続の問題を防止し、特に溶出速度がより高くなり、分離媒体の再生
が容易になり、溶出工程において、イオン間の競合的結合に依らなくなるが、イオン間の
競合的結合で溶出を促進できる。以上のように、本発明による両性解離型イオン交換分離
媒体は、静電作用による吸着及び静電作用による溶出機能を兼ね備えるとともに、高分離
容量、温和な条件での吸着イオンへの高溶出能力、分離容量キャリブレーションの正確性
、非対象物質への低非特異的吸着、温和な条件での高再生能力などの利点を有する。また
、本発明では、両性解離基前駆体で分離媒体マトリックスについて共有結合修飾を行う方
式により、所望の両性解離共有結合修飾層を生成することで、得られた分離媒体の表面に
両性解離性質を付与し、このような方式の有益な効果は以下の複数の点にある。まず、こ
のような技術案によれば、各種生物分子に適している様々なpImを取得するように、解
離によりカチオンを発生させる基に対する解離によりアニオンを発生させる基のモル比率
を容易に調整でき、勿論、重合反応の条件を調整することにより表面に両性解離基を有す
る分離媒体を直接調製する場合よりも、シンプルで実用的であり、且つ効率が高い。次に
、このような方式で両性解離型イオン交換分離媒体を調製するときに、セルロース類天然
重合体の分離媒体をマトリックスとするのが適しているが、現在のところ、表面に両性解
離基を有するセルロースを重合反応により直接調製するどころか、重合によりセルロース
を調製するための工業的技術もない。さらに、このような方式は、特定の要求を満たす分
離媒体をマトリックスとして共有結合修飾を行って両性解離表面とするのが容易であり、
重合時の荷電基間のサイズ排除による表面両性解離基の被覆度の減少を避けるのに寄与す
るので、表面の親水性基の高被覆率を確実に確保して、疎水性小分子の非特異的吸着を低
下させる。つまり、このような方式は、二重作用を同時に果たし、すなわち、表面に所望
の両性解離基を生成するとともに、表面による疎水性物質への非特異的吸着を低下させ、
したがって、本発明の前記両性解離型イオン交換分離媒体はより好適な使用効果を有する
ようになる。
【0019】
本発明はさらに、両性解離型イオン交換分離媒体の使用方法及び分離容量のキャリブレー
ション方法を開示し、使用方法は、シンプルであり、特定pKaを有する発色プローブだ
けを必要とし、分離容量をキャリブレーションするときに、測定過程がシンプルで素早く
実施でき、吸収測定の標準化が容易になり且つ再現性に優れ、製品の品質キャリブレーシ
ョン及びトレーシング、及び前記両性解離型イオン交換分離媒体の両性解離性質のキャラ
クタリゼーションに適しており、イオン交換分離媒体の分離容量のキャリブレーション及
びその性質のキャラクタリゼーションを迅速で正確且つ精度よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、図面及び実施例にて本発明をさらに説明する。
【
図1】FBD-MSP-ZEWの表面の正味荷電のpHに伴う変化を示す図である。
【
図2】FBD-MSP-FCOOHの活性エステルへの転化過程の模式図である。
【
図3】FBD-MSP-FCOOH活性エステルからアミド結合を介して両性解離共有結合修飾層を生成するときの模式図である。
【
図4】FBD-MSP-FCOOH活性エステルからメルカプト反応性基に変換して両性解離修飾層を生成するときの模式図である。
【
図5】アシッドレッド13のpH8.3での消光係数の測定である。
【
図6】アシッドレッド13の吸着分離量の反応系におけるFBD-MSP-ZEWA用量に対する応答である。
【
図7】アシッドレッド13の吸着分離量の反応体におけるアシッドレッド13濃度に対する応答である。
【
図8】吸着反応pHによる、3種の両性解離磁気ビーズのアシッドレッド13分離容量への影響及びそのpImの推定である。
【
図9】吸着反応系のプラスミド量による、磁気ビーズのプラスミド分離量への影響である。
【
図10】プラスミドが過量の場合におけるプラスミド分離量の磁気ビーズ用量に対する応答である。
【
図11】非過量のプラスミドを磁気ビーズで分離して回収した後のPCR能力の半定量的比較である。
【
図12】FBD-MSP-ZEWBによるピキア・グイリエルモンディウリカーゼRMGU精製効果のSDS-PAGE分析である。M:タンパク質分子量Marker。1:天然MGUをDEAE-セルロースで3回吸着して不純物を除去してタンパク質を精製し、5μg注入する。2:細胞溶解液、タンパク質の総注入量5μg。3:0.20mlの粗酵素の二次溶出液を凍結乾燥させて、5μg注入する。4:1.0mlの粗酵素を用いて得られた二次溶出液を凍結乾燥させて、5μg注入する。5.4.0mlの粗酵素を用いて得られた二次溶出液を凍結乾燥させて、5μg注入する。6:粗酵素、タンパク質の総注入量15μg。7:粗酵素、タンパク質の総注入量45μg。
【
図13】空白磁気ビーズの妨害を検出し比較するための蛍光リアルタイム定量的PCRの測定過程(プラスミドサンプルは使用実施例7参照)。
【
図14】磁気ビーズにより抽出されたプラスミドを検出し比較するための蛍光リアルタイム定量的PCRの測定過程(プラスミドサンプルは使用実施例7参照)。
【
図15】蛍光リアルタイム定量的PCRでMGU発現プラスミドを測定したときの応答曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施例による両性解離型イオン交換分離媒体は、表面が両性解離共有結合修飾層であり
、前記両性解離共有結合修飾層は、両性解離型イオン交換分離媒体の表面の正味荷電がゼ
ロであるときの環境pHであってpImで示される等電点を有し、環境pHが前記等電点
pImより低い場合、両性解離共有結合修飾層の表面の正味荷電が正であり、アニオン交
換剤の性質を有し、pH値が前記等電点pImより高い場合、両性解離共有結合修飾層の
表面の正味荷電が負であり、カチオン交換剤の性質を有する。解離して負電荷を生成する
基と解離して正電荷を生成する基を同時に含む物質は、両性解離物質と呼ばれ、pHに明
らかな差異がある吸着バッファと溶出バッファを用いて、両性解離修飾層を表面とした分
離媒体と対象物質との間の静電吸引を静電反発にして、静電反発による効率的な溶出を実
現できる。対象物質も分離媒体も耐えられるpH範囲内で、pHを調整して分離媒体の表
面の正味荷電性質を変える一方、対象物質の正味荷電性質を一定に保持し、又は、対象物
質の正味荷電性質を変える一方、分離媒体の正味荷電性質を一定に保持することで、この
ような静電反発による新しい溶出方式を実現できる。生物学的活性物質が耐えられるpH
範囲が限られるため、対象物質が両性解離物質ではないと、帯電する電荷を逆転できず、
それと分離媒体の表面との静電作用を相互吸引から相互反発に逆転させることができない
。両性解離対象物質にも非両性解離対象物質にも適用できるように、限られた範囲内でp
Hを調整するだけで正味荷電性質を変化できる新規イオン交換分離媒体、すなわち両性解
離修飾層を表面としたイオン交換分離媒体(
図1)が必要とされる。
【0022】
両性解離物質の荷電性質は、通常、その正味荷電がゼロであるときのpH即ち等電点pI
によりキャラクタリゼーションされ、非両性解離物質の荷電性質は、通常、その解離定数
pIsによりキャラクタリゼーションされる。説明の便宜のために、両性解離対象物質の
等電点もpIsと呼ばれ、イオン交換分離媒体の表面の正味荷電がゼロであるときのpH
即ちその等電点はpImと呼ばれる。イオン交換分離媒体は、表面の親水性が強いほど、
大部分の物質、特に非荷電疎水性物質に対する非特異的吸着が低くなり、これはこのよう
な分離媒体の再生能力及び分離選択性を向上させて、さらに後続分析の感度を向上させる
のに寄与する。しかし、pHを変えることで対象物質の分離媒体表面への静電吸引による
効率的な吸着を静電反発による効率的な溶出に逆転させるために、前記両性解離型イオン
交換分離媒体のpImは下記条件を満たさなければならない。対象物質も分離媒体も耐え
られるpH範囲内で、低pHにより分離媒体の表面の正味荷電を正にし、高pHによりそ
の表面の正味荷電を負に逆転させ、即ち、pImは対象物質も分離媒体も耐えられるpH
範囲の中央部にある。両性解離対象物質の場合、適切なイオン交換分離媒体pImと対象
物質pIsとの十分な差異がさらに要求される。これら条件を満たせば、吸着バッファの
pHを選択して、対象物質とイオン交換分離媒体の表面の正味荷電を逆にして静電吸着を
発生させ、吸着バッファで吸着対象物質の分離媒体を洗浄して、妨害物質の非特異的吸着
をできるだけ低下させ、次に、適切なpHを有するバッファで分離媒体と対象物質の正味
荷電を同じにして静電反発を発生させて、対象物質を効率的に溶出し、さらに水溶性一価
中性無機塩を添加して溶出を促進する。このイオン交換分離媒体は、荷電対象物質の抽出
濃縮に用いられる場合、最も優位性を有し、イオン交換クロマトグラフィーカラムの充填
材として用いられる場合、耐用年数が長いとともに分離能力がより高く、対象物質の調製
に用いられる場合、分離媒体の再生能力が高く、分離過程がシンプルで迅速であり、且つ
対象物質の収率が高い。
【0023】
イオン交換分離媒体を用いてpH調整により対象物質のその表面での吸着・溶出をする場
合、溶出工程の原理が古典的なイオン交換原理と明らかに異なる。このようなイオン交換
分離媒体を使用するとき、pH調整により分離媒体の表面と対象物質の正味荷電を同じに
して静電反発を発生させて対象物質を放出し、このように、溶出能力を高めるとともに、
高濃度無機イオンの使用による後続の問題を防止し、特に溶出速度がより高くなり、溶出
工程において、イオン間の競合的結合に依らなくなるが、イオン間の競合的結合で溶出を
促進できる。前記両性解離型イオン交換分離媒体の荷電物質への吸着分離機能はpHがp
Imの両側のいずれにあるかによって明らかに異なり、pHがpImより低いとき、アニ
オンを吸着させるためアニオン交換剤であり、pHがpImより高くなると、カチオンを
吸着させるためカチオン交換剤である。勿論、古典的なイオン交換剤の荷電物質への吸着
機能はpHの変化により逆転することはない。
【0024】
環境pHが前記両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImより低い場合、環境pHと
pImの差値が増大するに伴い、両性解離共有結合修飾層の表面の正電荷の数が徐々に増
加し、環境pHが前記等電点より高い場合、環境pHとpImの差値が増大するに伴い、
両性解離共有結合修飾層の表面の負電荷の数が徐々に増加し、前記環境pHはいずれも分
離対象物質と前記両性解離型イオン交換分離媒体の両方が耐えられる範囲にある。
【0025】
本実施例において、前記両性解離型イオン交換分離媒体の表面の両性解離共有結合修飾層
に、pH値が前記等電点pImより低いときに解離して正電荷を発生させる基とpH値が
前記等電点pImより高いときに解離して負電荷を発生させる基とを同時に含み、前記解
離して負電荷を発生させる基は脂肪族カルボキシ基であり、解離して正電荷を発生させる
基は脂肪族一級、二級、三級アミン基及びイミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み
合わせである。
【0026】
本実施例において、前記両性解離共有結合修飾層は、両性解離基前駆体による分離媒体マ
トリックスに対する共有結合修飾に由来し、
前記分離媒体マトリックスは、表面に長さが9個の原子を超える線状長鎖を含まない任意
のサイズの粒子又は任意の厚みのフィルムであり、しかし、両性解離基前駆体と共有結合
反応を行って前記両性解離共有結合修飾層を生成するために、脂肪族一級アミン基及び/
又は脂肪族二級アミン基、脂肪族カルボキシ基、及びメルカプトで置換されて分離媒体マ
トリックスの表面から離脱する小体積基を含有するメルカプト反応性基のうちのいずれか
の基を反応基として含み、
前記両性解離基前駆体は、親水性で、分子量が500ダルトン未満で、連続した5個超の
炭素原子を持つ炭化水素鎖又は炭化水素環を含まない物質であり、且つすべてアルキルチ
オール基又は脂肪族一級アミン基を共有結合連結基として含むとともに、脂肪族カルボキ
シ基を解離して負電荷を発生させる基として含み及び/又は脂肪族一級、二級、三級アミ
ン基及びイミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み合わせを解離して正電荷を発生さ
せる基として含み、前記両性解離基前駆体には、前駆体A、前駆体B及び前駆体Cが含ま
れ、前駆体Aが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離して負電荷を発生させる基だけ
を含む両性解離基前駆体であり、前駆体Bが前記共有結合連結基を含む以外、前記解離し
て正電荷を発生させる基だけを含む両性解離基前駆体であり、前駆体Cが前記共有結合連
結基を含む以外、前記解離して負電荷を発生させる基及び解離して正電荷を発生させる基
を同時に含有する両性解離基前駆体である。前駆体Cは、リジン、オルニチン、ヒスチジ
ン、N,N-ジカルボキシメチルエチレンジアミン、システイン、3-メルカプトヒスチ
ジン、3-メルカプトリジン、3-メルカプトグルタミン酸などを含み、前駆体Aは、グ
ルタミン酸、3-メルカプト-1,5-グルタル酸、メルカプト酢酸、トリス-(カルボ
キシメチル)-アミノメタンを含み、前駆体Bは、メルカプトエチルアミン、3-メルカ
プト-2-ヒドロキシプロピルアミン、2-メルカプトイミダゾール、ジエチルトリアミ
ン、N,N-ジメチルアミノエチレンジアミン、テトラ-(アミノメチル)-メタンを含
む。これら物質は、単独で使用してもよいし、解離して正電荷を発生させる基と解離して
負電荷を発生させる基との比率を調整して、各種pImを有する両性解離型イオン交換分
離媒体を得るために2種及び複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
前記両性解離基前駆体を分離媒体マトリックスの共有結合修飾に用いるとき、
a.前駆体Cを単独で使用し又は混合して使用し、混合して使用する場合、複数種の前駆
体Cを所定比率で混合して使用し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結
合連結基を含有する方式と、
b.1種又は複数種の前駆体Aと1種又は複数種の前駆体Bとを所定比率で混合して使用
し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結合連結基を含有する方式と、
c.1種又は複数種の前駆体Aと1種又は複数種の前駆体Cだけを所定比率で混合して使
用し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結合連結基を含有する方式と、
d.1種又は複数種の前駆体Bと1種又は複数種の前駆体Cだけを所定比率で混合して使
用し、且つ混合して使用する前駆体のいずれにも同じ共有結合連結基を含有する方式との
うちの1種によって修飾し、
分離媒体マトリックスに対して共有結合修飾を行うとき、使用される両性解離基前駆体に
おいて、脂肪族カルボキシ基の総モル量に対する脂肪族一級、二級、三級アミン基及びイ
ミダゾリル基の総モル量の比率が1:6-6:1の間に制限される。使用される両性解離
基前駆体に脂肪族二級アミン及び/又は三級アミンを解離して正電荷を発生させる基とし
て含む場合、前記脂肪族二級アミンと三級アミンの総モル量の合計が脂肪族一級アミン及
びイミダゾリル基の総モル量の合計の30%以下であり、
共有結合反応には、脂肪族アミン基と脂肪族カルボキシ基によるアミド生成と、アルキル
チオールによる脱離基の置換との2種がある。
【0028】
分離媒体マトリックスの表面に両性解離共有結合修飾層も、9個の原子を超える長直鎖基
もない。両性解離共有結合修飾層のない分離媒体をマトリックスとすると、その表面に含
まれる反応基は脂肪族カルボキシ基、脂肪族一級アミン基及び/又は脂肪族二級アミン基
、メルカプトで求核置換されて分離媒体の表面から離脱しやすい小体積脱離基を含有する
メルカプト反応性基のうちの1種であり、このような小体積脱離基には、ハロゲンイオン
、p-トルエンスルホン酸根、トリフルオロ酢酸根が含まれる。両性解離共有結合修飾層
のない分離媒体の表面に上記反応基がないとき、適切な誘導反応で上記反応基を取得して
分離媒体マトリックスとし、次に両性解離基前駆体で修飾して、前記両性解離型イオン交
換分離媒体とする。セルロース、表面にヒドロキシ基を含む親水性マクロポーラス樹脂を
分離媒体として、無水コハク酸又はクロロ酢酸無水物で誘導修飾を行うことで、所望の反
応基を得ると、両性解離共有結合修飾層を生成するためのマトリックスとして適している
。
【0029】
両性解離共有結合修飾層のない分離媒体をマトリックスとして、その表面に脂肪族一級ア
ミン基及び/又は脂肪族二級アミン基を共有結合する反応基とする場合、そのアミン基と
ハロゲン化無水酢酸又はハロゲン化酢酸活性エステルが反応した後、メルカプトを含有す
る両性解離基前駆体と反応し、又はブロモ酢酸又はヨード酢酸におけるハロゲンと置換反
応して置換グリシンを生成し、又は無水コハク酸又は無水コハク酸と無水酢酸の混合物を
、無水物の総モル量が過量でない条件で、分離媒体の表面におけるアミン基と反応させて
、両性解離基からなる共有結合修飾層を生成する。
【0030】
本実施例において、前記両性解離型イオン交換分離媒体は、pHが3である場合、その表
面の正電荷の数が最大値の90%以上であり、pHが11である場合、その表面の負電荷
の数が最大値の90%以上である。
【0031】
イオン交換分離媒体を用いてpH調整により対象物質を吸着又は溶出する場合、このイオ
ン交換媒体の表面を両性解離修飾層とする必要があり、これは古典的なイオン交換媒体の
表面構造と明らかに異なる。対象物質も分離媒体も耐えられるpH範囲の両側の境界でイ
オン交換分離媒体の表面の正電荷と負電荷の数をそれぞれ最大に近くすることによってし
か、その分離性能を最大化させることができない。イオン交換分離媒体の表面の正味荷電
の数が最大値の90%以上であると、その分離性能が最大に近い。親水性基は前記両性解
離型イオン交換分離媒体の調製に適するが、芳香物質は両性解離基前駆体として適してい
ない。イオン化して負電荷を発生させるための基として一般的に使用されている基には、
リン酸モノエステル及びリン酸ジエステル、有機スルホン酸及び脂肪族カルボン酸が含ま
れる。リン酸モノエステル、リン酸ジエステル及び有機スルホン酸のpIsが1.7未満
であり、酢酸などの単一カルボキシ基のpIsが4.8に近い。イミダゾールのpIsが
6.0に近く且つ親水性である。親水性置換基を有する単一一級アミン、たとえばトリメ
チロールアミノメタンのpIsが8.0に近く、メチルアミン及びジメチルアミンのpI
sが10.7に近く、トリメチルアミンのpIsが10.0に近く、エチルアミン、ジエ
チルアミン及びトリエチルアミンのいずれのpIsも11.0に近い。一方、両性解離修
飾層において解離基が空間的に隣接することは、それぞれの解離定数に明らかな影響を与
える。たとえば、酢酸のpIsが4.8に近く、それに対してエチルアミンのpIsが1
1.0に近く、トリメチロールアミノメタンには、中性基がアミン基に隣接するため、そ
のpIsが8.0に近く、エチルアミンの11.0より遥かに小さく、グリシン、アラニ
ンは隣接する脂肪族カルボキシ基と一級アミン基を等モルで含むため、そのpIsが6.
0に近く、エチルアミン及び酢酸pIsの中央値7.8よりもはるかに小さい。しかしな
がら、EDTA及びEGTAにおいて同じカルボキシ基のpIsの差が大きく、エチレン
ジアミンでも2つのアミン基のpIsに大きな差がある。両性解離共有結合修飾層におい
て解離して正電荷を発生させる基と解離して負電荷を発生させる基が均等な間隔を空けて
ランダムに分布していれば、2種の解離基のpIsは単独した状態よりも遥かに低下し、
そうではないと相当し、解離して正電荷を発生させる基又は解離して負電荷を発生させる
基がいずれもクラスターとして分布していれば、すべてイオン化して対応した見かけpI
sがより高くなる。解離して正電荷を発生させる基は、pHがpIsより1.0単位高い
とき、解離度が10%より低く、解離して負電荷を発生させる基は、環境pHがそのpI
sより1.0単位低いとき、解離度が10%より低い。本発明の前記両性解離型イオン交
換分離媒体を調製するための簡単な汎用手段は、pH4.0の場合のイオン化度ができる
だけ10%より低い解離して負電荷を発生させる基、及び、pH10.0の場合のイオン
化度ができるだけ10%より低い解離して正電荷を発生させる基を用いることであり、こ
の場合、pH3.0-11.0ではその分離性能を最大化させることができる。それによ
れば、解離して負電荷を発生させる基のpIsができるだけ4.0より大きいものとして
、脂肪族カルボン酸しかなく、そして、好ましくは、すべてイオン化して対応した見かけ
pIsをより高くするために空間的に隣接する複数のカルボキシ基を有する。解離して正
電荷を発生させる基のpIsができるだけ9.0より小さいものとして、イミダゾリル基
、及び空間的に隣接して解離して負電荷になり又は中性の親水性置換基を有する脂肪族一
級アミン基しか、要求を満たすものがなく、そして、これら脂肪族一級アミンは、そのp
Isを低下させるためにできるだけ脂肪族カルボキシ基で離間されるべきである。エチル
基及びより大きなアルキルで置換された二級アミン及び三級アミンは、pIsが高すぎる
とともに、疎水性が強いため、好適ではなく、pImを調整するためにメチル置換脂肪族
二級アミン及び三級アミンを使用しても、その脂肪族一級アミン及びイミダゾリル基の総
モル量に対する比率をできるだけ低くすべきである。上記両性解離基から表面共有結合修
飾を構成すると、理論的には、pH3.0-11.0では分離性能を最大化させることが
可能である。
【0032】
勿論、解離して負電荷を発生させる基と解離して正電荷を発生させる基とのモル比は、p
H11.0の場合、正帯電脂肪族一級アミン/イミダゾリル基の、ほぼ完全にイオン化し
た脂肪族カルボキシ基に対する比率を決めるとともに、pH3.0の場合、負帯電脂肪族
カルボキシ基の、ほぼ完全にイオン化した脂肪族一級アミン/イミダゾリル基に対する比
率を決め、つまり、このpH範囲の境界では、分離媒体の表面の正味荷電が最大に近くて
その分離性能を最大にしているかを決定する。勿論、本発明の前記両性解離分離媒体の表
面における2種の解離基の比率を最適化させる必要がある。pHが酸性解離基pIsより
3つのpH単位小さく又は塩基性解離基pIsより3つのpH単位より大きい場合、この
ような基の解離度/イオン化度はいずれも0.1%未満である。したがって、空間的に隣
接する脂肪族カルボキシ基と脂肪族一級アミン基のpIsの差が2.5よりもはるかに大
きいと考えられる。pHが上記解離して正電荷を発生させる基のpIsより1.0単位高
い場合に、脂肪族カルボキシ基は負電荷を発生させて解離度が99%を超え、一方、解離
して正電荷を発生させる基はイオン化度が10%未満であり、pHが解離して負電荷を発
生させる基のpIsより1.0単位低い場合に、脂肪族カルボキシ基は、負電荷を発生さ
せて解離度が10%未満であり、一方、上記解離して正電荷を発生させる基の解離度は9
9%を超える。pH3.0では、本発明の前記両性解離分離媒体の表面の脂肪族カルボキ
シ基の見かけpIsが4.8に近く、解離して負電荷を発生させる基のイオン化度が2%
未満であり、pH11.0では、親水性脂肪族置換基を有する一級アミンのpIsが9.
0未満で且つ脂肪族二級アミン/三級アミンの含有量が無視できるため、解離して正電荷
を発生させる基のイオン化度が1%未満であると仮定すれば、脂肪族一級アミン基とイミ
ダゾリル基の総量に対する脂肪族カルボキシ基のモル比が3:1以下且つ1:6より大き
いときにのみ、pH3.0-11.0では、その分離性能が最大に近い。表面の脂肪族カ
ルボキシ基の密度が高いとき、隣接するカルボキシ基が多くなることにより、カルボキシ
基のpIsを高くして、カルボキシ基とアミン基が隣接することにより、アミン基のpI
sを低下させる知見に基づいて、本発明では、脂肪族カルボキシ基に対する、前記両性解
離型イオン交換分離媒体の表面の共有結合修飾層における脂肪族一級アミン基(解離して
正電荷を発生させるすべての基に対する二級アミン/三級アミンの総量の比率が30%以
下である)の比率を1:6-6:1に制限することによって、pH3.0-11.0では
その分離性能を最大化させ、このような比率の制御は、修飾するときに前記解離して正電
荷を発生させる基と解離して負電荷を発生させる基とを含む2種の前駆体の混合物を使用
する、又は前駆体Cをうまく設計することによって行われ得る。
【0033】
実用するときに、静電吸引を発生させるpHでは、分離媒体の表面の正味荷電が多いほど
、対象物質への吸着容量が大きくなり、静電反発を発生させるpHでは、分離媒体の表面
の正味荷電と対象物質の正味荷電が同じで且つ数が十分であれば、被吸着物質を効率的に
溶出できる。理論的には、表面に両性解離共有結合修飾層のない分離媒体をマトリックス
として表面修飾を行う場合、修飾対象媒体の表面における反応基の数/密度が限られるの
で、共有結合修飾により表面において生成可能な、解離して負電荷を発生させる基と解離
して正電荷を発生させる基との総モル量が限られる。解離して負電荷を発生させる基と解
離して正電荷を発生させる基とのモル比が異なると、対応した両性解離分離媒体のpIm
が異なる。各対象物質ごとに、分離性能及び対象物質の収率を最大化させるために、異な
るpImの両性解離型イオン交換分離媒体を使用しなければならない。それに対応して、
負帯電対象物質を吸着する両性解離型イオン交換分離媒体では、その正電荷の絶対値をよ
り大きくするために、その表面における脂肪族カルボキシ基をより少なくするのが好まし
い。正帯電対象物質を吸着する両性解離型イオン交換分離媒体では、その負電荷の絶対値
をより大きくするために、その表面における脂肪族一級アミン基/イミダゾリルをより少
なくするのが好ましい。したがって、脂肪族カルボキシ基のモル量に対する、両性解離型
イオン交換分離媒体の表面における脂肪族一級アミン基/イミダゾリル基の総モル量の比
値の範囲を広げることができ、それに対応して、両性解離型イオン交換分離媒体pImの
範囲が広くなる。両性解離型イオン交換分離媒体は、アニオン分離に用いられる場合、p
H3.0では、その表面の正電荷の数が最大値の90%以上であり、カチオン分離に用い
られる場合、pH11.0では、その表面の負電荷の数が最大値の90%以上であること
が要求される。
【0034】
前記両性解離型イオン交換分離媒体を調製するための汎用方法としては、表面に反応基を
有し両性解離修飾層のない分離媒体をマトリックスとして、対応した所望の共有結合連結
基を有する両性解離基前駆体と直接又は間接的な共有結合反応を行って、所望の両性解離
共有結合修飾層を生成する。PCR増幅検出を必要とする核酸を抽出するとき、抽出され
る核酸におけるPCRを阻害する妨害不純物の含有量を減少させるために、使用される両
性解離型イオン交換分離媒体については小分子物質に対して十分に低い非特異的吸着が求
められる。ポリエチレングリコールは中性親水性重合体でありながら、一般的に使用され
る抗タンパク質非特異的吸着性を有する修飾剤である。しかし、ポリエチレングリコール
は本質的には界面活性剤であり、クロロホルムでの溶解度が極めて高く、疎水性小分子物
質に対する非特異的吸着が強い。このため、ポリエチレングリコール誘導体を用いて修飾
を行い又は重合して直接調製した分離媒体は、本発明の前記両性解離型イオン交換媒体を
調製するためのマトリックスとして適しておらず、ポリエチレングリコールに対応したカ
ルボキシ基及び一級アミン基誘導体も本発明の前記両性解離基前駆体として好適ではない
。特に、ポリエチレングリコールの分子が線状直鎖であり、互いのサイズ排除が高いため
、両性解離基の修飾度を向上させるのに役立てず、さらに得られた両性解離分離媒体の分
離容量を向上させにくく、また修飾度を確保することで疎水性小分子に対する非特異的吸
着を低下させることも不可能になる。このため、ポリエチレングリコール誘導体を直接重
合して、表面に両性解離基を有するイオン交換分離媒体を調製し、又はポリエチレングリ
コール誘導体で修飾することにより得られた両性解離基を有するイオン交換分離媒体は、
核酸の抽出やタンパク質の分離に向いていない。したがって、本発明の前記共有結合修飾
による両性解離型イオン交換分離媒体の調製手段は、表面に直鎖状高分子重合体を有する
が、両性解離基がない分離媒体マトリックスに適用できない。直鎖状高分子を重合して得
られた分離媒体は、pH3.0~11.0で表面に両性解離基を有するとしても、本発明
の前記両性解離型イオン交換分離媒体ではない。
【0035】
勿論、高密度の両性解離修飾層を生成することで、疎水性小分子への非特異的吸着を低下
させるとともに分離容量を増大するために、小分子両性解離基前駆体、及び室温下での収
率が高いライゲーション反応が必要である。高密度修飾層を形成して疎水性物質への非特
異的吸着を低下させるために、修飾用の両性解離基前駆体について分子量を500Dal
ton以下に制御し且つ疎水性の大体積置換基をなくする。アミド形成反応及びメルカプ
ト置換反応は、無酸素・無水のような苛酷な反応条件を必要としないため、修飾にとって
好適なライゲーション反応である。両性解離修飾層のない分離媒体であるマトリックスの
表面に両性解離修飾層を生成するとき、修飾対象の分離媒体のマトリックスの表面におけ
る脂肪族カルボキシ基、脂肪族一級アミン基/二級アミン基、メルカプト反応性基を反応
基とするのが適しており、それに対応して、両性解離基前駆体は、脂肪族一級アミン、脂
肪族メルカプトを共有結合連結基とする必要がある。前記のとおり、両性解離共有結合修
飾層のない分離媒体をマトリックスとすると、その表面に含まれる反応基は、脂肪族カル
ボキシ基、脂肪族一級アミン基及び/又は脂肪族二級アミン基、メルカプトで求核置換さ
れて分離媒体の表面から離脱しやすい小体積脱離基を含有するメルカプト反応性基のうち
の1種であり、このような小体積脱離基としては、ハロゲンイオン、p-トルエンスルホ
ン酸根が含まれる。両性解離共有結合修飾層のない分離媒体の表面に反応基がない場合、
誘導反応により上記反応基を取得した後、マトリックスとして共有結合修飾に用いる。
【0036】
四級アミン及びスルホン酸からなる両性イオン対で表面を修飾して、表面が親水性である分離媒体を調製する特許技術(中国発明特許ZL201610963764.X)によって得られた製品FBD-MSP-FCOOH
(中国発明特許ZL201610963764.Xでは、「MSP-ZW-ZW-COOH」と記載。製品名の変更により、現在の製品名は「FBD-MSP-FCOOH」である)はミクロン磁気ビーズであり、その表面には、ほかの物質をカップリングするための脂肪族カルボキシ基が官能基として機能する以外、残りが四級アミン及び隣接するスルホン酸からなるpH2.0-13.0で両性解離を示さないので正味荷電がゼロである両性イオン対修飾基であり、その表面の疎水性物質及びタンパク質への非特異的吸着がすべて低く、本発明の前記両性解離型イオン交換分離媒体を調製するのに必要な、両性解離修飾層のない分離媒体マトリックスである。それに対応して、この分離媒体の表面における脂肪族カルボキシ基を活性化させ(
図2)、次に、さらに誘導して、各種pImを有する両性解離イオン交換ミクロン磁気ビーズのシリーズを調製している(
図3 、
図4 ) 。これらイオン交換分離媒体は、弱酸性pHでは表面の正電荷による対象物質の静電吸引により核酸を吸着させ、弱アルカリ性pHでは静電反発により被吸着核酸を効率的に放出し、もしくは、適切な中性及びアルカリ性のpHでは塩基性タンパク質を吸着させる一方、弱酸又は強アルカリ性の条件で吸着されたタンパク質を放出し、これは、溶解しにくいタンパク質にとって好適なイオン交換精製方法である。この新規イオン交換分離媒体は、核酸に対してより高い選択性を有し、核酸に対する分離容量がサーモエレクトロン株式会社製のDynabeads MyoneSilaneシラノール磁気ビーズの10倍より高く、分離選択性がさらに高いため、抽出される核酸における阻害性不純物が減少し、PCRテンプレートとしての能力がシラノール磁気ビーズによる核酸より高い。このミクロン磁気ビーズは、pIsが9.0に近いが、中性時に難溶性になるピキア・グイリエルモンディウリカーゼの高速精製にも適用でき、結合酵素の活性溶出率が80%に近く、古典的なカチオン交換剤よりもはるかに優れている。しかし、両性解離型イオン交換分離媒体をタンパク質の分離に用いる場合、タンパク質の飽和吸着によって分離媒体の表面の両性解離基の解離状態での溶出液pHへの応答に悪影響を与えるため、溶出能力を確保するのに、大量の溶出液を用いてバッチ式で溶出しなければならない。
【0037】
また、両性解離型イオン交換分離媒体を生産する過程に、製品の分離容量を正確にキャリ
ブレーションして製品の品質を制御する必要がある。このようなイオン交換分離媒体の核
酸類対象物質に対する分離容量のキャリブレーションは、核酸の抽出濃縮後に高感度分析
を行うときに試験再現性を確実にするために必要な前提条件である。本発明の前記両性解
離型イオン交換分離媒体の性質であるpImを確認するために、荷電対象物質に対する分
離容量及び溶出能力の吸着pHに伴う変化を測定するための簡単な方法が必要とされる。
このような製品による吸着分離により得られた核酸の定量的測定はその吸着分離容量をキ
ャリブレーションするための最も直接的な方法である。核酸の定量化のために蛍光定量的
PCRすなわちqPCRが必要であり、測定させた所定信号に達する最小サイクル数がテ
ンプレート核酸の量の対数に反比例するが、測定精度が低く、コストが高く、分析に時間
がかかり、このため、生産過程における品質制御に適用できないし、本発明の前記新型イ
オン交換分離媒体のpImなどの特性のキャラクタリゼーションにも向いていない。分光
光度法は簡単且つ迅速に測定でき、吸収測定の標準化が容易であり且つ再現性に優れ、製
品の品質キャリブレーション及びトレーシング、本発明の前記両性解離型イオン交換分離
媒体の両性解離性質のキャラクタリゼーションに適している。核酸が強い紫外線吸収を有
するが、通常、吸着核酸の溶出過程に各種不純物が紫外吸収測定を妨害する上に、核酸を
プローブとするとコストが高く且つ安定性が低い。発色プローブは分光光度法により容易
に測定可能で安定的に荷電した有色小分子有機物であり、イオン交換分離媒体の分離容量
のキャリブレーション及びそのpIm性質のキャラクタリゼーションを迅速且つ簡単に実
施できる。本発明では、可視光の吸収が強く且つ解離しやすい水溶性芳香有機物を発色プ
ローブとして、室温下でpHを調整することによって、プローブを効率的に吸着又は溶出
し、溶出液におけるプローブの可視光への強吸収により、イオン交換分離媒体の吸着分離
容量を迅速に精度よくキャリブレーションし、製品の品質制御、及び本発明の前記両性解
離型イオン交換分離媒体のpIm性質(表1)のキャラクタリゼーションに用いたところ
、得られた両性解離型イオン交換分離媒体の特別な両性解離性質及び溶出能力が確認され
た。
【0038】
本発明はさらに、両性解離型イオン交換分離媒体の使用方法を開示し、
前記両性解離型イオン交換分離媒体を使用して対象物質を吸着して分離するとき、対象物
質が水素イオンを放出する解離定数の常用対数をpIs又は対象物質の等電点をpIsと
し、使用過程において、
a.その等電点pImと対象物質のpIsの差が1.0以上である両性解離型イオン交換
分離媒体を選択する特徴と、
b.対象物質を吸着する場合、対象物質のpIsと両性解離型イオン交換分離媒体の等電
点pImの間にあり且つ対象物質のpIs及び両性解離型イオン交換分離媒体のpImの
いずれとの差も0.3より大きい環境pHを選択して、イオン交換分離媒体の表面の正味
荷電と対象物質の正味荷電を逆にして、静電吸引によって対象物質を吸着する特徴と、
c.対象物質を溶出する場合、溶出液の(環境)pHが等電点pImより低いとき、環境
pHを、対象物質のpIs及び両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImのうち低い
方よりも少なくとも0.30低くし、溶出環境が等電点pImより高いとき、溶出液の(
環境)pHを、対象物質のpIs及び両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImのう
ち高い方よりも少なくとも0.30高くし、両性解離型イオン交換分離媒体の表面の正味
荷電と対象物質の正味荷電を同じにして、静電反発によって対象物質を溶出し、水溶性一
価中性無機塩を加えて溶出を促進する特徴とを有する。
【0039】
本発明はさらに、両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量のキャリブレーション方法を
開示し、
a.前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量をキャリブレーションするとき、解離
定数又は等電点がpKaであり、分子量が600Dalton未満で、可視光吸収ピーク
での吸収係数が14mM-1.cm-1より大きく、pH3.0-11.0での溶解度が
5.0μmol/L以上で且つpH3.0-11.0で解離した後の正味荷電が正又は負
である有色有機物を発色プローブとし、
b.前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量をキャリブレーションするときに、
b1.両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImが4.0-6.0である場合、解離
定数又は等電点pKaが両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImよりも少なくとも
2.0大きいカチオンプローブ、又は解離定数又は等電点pKaが両性解離型イオン交換
分離媒体の等電点pImよりも少なくとも2.0小さいアニオンプローブを用いる形態と
、
b2.両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImが6.0-10.0である場合、解
離定数又は等電点pKaが両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImよりも少なくと
も2.0小さいアニオンプローブを用いる形態とを有し、
c.前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量をキャリブレーションするとき、吸着
する場合、解離定数又は等電点pKaと両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImの
間にあり且つ両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImとの差が1.3以上であると
ともに発色プローブの解離定数又は等電点pKaとの差が0.5以上である環境pHに対
応したバッファを用いて、両性解離型イオン交換分離媒体に静電吸引によって発色プロー
ブを吸着させ、溶出する場合、発色プローブの解離定数又は等電点pKaと両性解離型イ
オン交換分離媒体の等電点pImのうち高い方よりも少なくとも1.3高く又は低い方よ
りも少なくとも1.3低い環境pHを選択して、両性解離型イオン交換分離媒体の表面の
正味荷電と発色プローブの正味荷電を同じにして静電反発によって発色プローブを溶出し
、溶出液での発色プローブの吸収を測定して、発色プローブに対する分離容量を換算し、
pHによる両性解離型イオン交換分離媒体の発色プローブに対する分離容量への影響を測
定した結果、解離後の正味荷電が負である発色プローブに対する分離容量がゼロになる最
小pH、解離後の正味荷電が正である発色プローブに対する分離容量がゼロになる最大p
Hが、両性解離型イオン交換分離媒体の等電点pImの近似値である。
【0040】
即ち、両性解離型イオン交換分離媒体の発色プローブに対する分離容量のpHに伴う変化
、解離して負イオンを生成する発色プローブに対する分離容量がゼロになる最小pH、解
離して正イオンを生成する発色プローブに対する分離容量がゼロになる最大pH、即ちそ
のpImを測定する。
【0041】
発色プローブの吸着後に残った発色プローブの量を測定することによって、発色プローブ
の吸着量を推定できる。次に、溶出液における発色プローブの量を測定すると、溶出液p
Hによる溶出能力への影響を比較し、それによって、本発明の前記静電反発による荷電物
質の溶出効果を確認できる。
【0042】
四級アミン型カチオン発色プローブが少ないが、スルホン酸型アニオン発色プローブが多
数ある。アニオン色素としてのアシッドレッド13は、本発明の前記両性解離型イオン交
換分離媒体の分離容量のキャリブレーション/キャラクタリゼーション及びpImの測定
のための発色プローブの代表例である。
【0043】
以下、使用実施例を説明し、実施例に使用される試薬及び材料は以下のとおりである。
【0044】
シラノールミクロン磁気ビーズ:THermo-FisHer(サーモエレクトロン)社
、Dynabeads MyoneSilaneシラノール磁気ビーズ(カタログ番号3
7002D);
磁気分離ラック:江蘇無錫百運ナノ科技有限公司製、8ウェル磁気分離ラック;
従来のPCR装置:BioradT100サーマルサイクラー;
蛍光リアルタイム定量的PCR装置:Biorad CFX Connect;
カルボキシ磁気ビーズFBD-MSP-FCOOH:中国発明特許(ZL2016109
63764.X)のように表面に四級アミン及びスルホン酸イオン対を含む修飾層を製造
しているため、カルボキシ磁気ビーズFBD-MSP-FCOOHはpH2.0-12.
0では中性になる。
ピキア・グイリエルモンディウリカーゼRMGU発現プラスミド:配列Genbank参
照、登録番号KY706244、等電点8.9;全合成したコード配列と発現ベクターp
DE1を連結してタグフリー発現プラスミドを得て、該プラスミド及びそのタンパク質を
RMGUと呼ぶ。
アシッドレッド13ストック溶液:蒸留水で200mMとなるように溶解して、0.22
μm精密ろ過膜でろ過して4℃で保管し、使用時に希釈する。
核酸吸着バッファ:0.20m酢酸-酢酸ナトリウムバッファ、pH3.6-5.8;2
0mMmES、pH6.0~6.8;20mMHEPES、pH7.0~8.0;説明し
ない場合、pH3.6の核酸吸着バッファを用いる。
核酸溶出バッファ:25mMTris-HCl、pH8.0~9.0;説明しない場合、
pH8.9の核酸溶出バッファを用いる。
磁気ビーズ洗浄バッファ:pH3.6、0.20m酢酸-酢酸ナトリウムバッファ;
核酸の定量化:説明しない場合、Nanodropにより260nmでの吸収を測定して
定量化させる。
核酸電気泳動:臭化エチジウムとアガロースゲルを予備混合して電気泳動を行い、核酸タ
ンパク質イメージャで記録した。検出限界は約80ngである。
ウリカーゼ活性測定液:0.20mホウ砂pH9.2、0.10mM尿酸;1分間あたり
1.0ミクロモルの底質を消費する場合を1単位とする。
細胞溶解液1:RMGUを組み換え発現させた大腸菌細胞を、20mMHEPES、pH
7.6で溶解する。
タンパク質溶出液1:pH10.0グリシン-水酸化ナトリウムバッファ;
タンパク質電気泳動:従来のSDS-PAGE;説明しない場合、タンパク質を総量で5
g注入する。
タンパク質濃度の測定:Bradfordの色素結合法、又はNanodropにより2
80nmでの吸収を測定する。
使用される化学試薬はTansooプラットフォーム及びアラジン試薬ウェブサイトから
購入し、純度が95%以上である。
【0045】
以下、具体的な実施例を説明する。
【0046】
実施例1:代表的な構造形態を有する両性解離型イオン交換分離媒体の調製
ステップ1、下記溶液を準備する(同時に除菌を行うように0.22umろ過膜を用いて
ろ過):
(1)リジン溶液:100mMリジンを50mM塩酸でpH6.0にして、水で30mM
に希釈し、ろ過して使用に備える。
(2)ヒスチジン溶液:50mMヒスチジン溶液を、10mM塩酸でpH6.0に調整し
て、30mMに希釈する。
(3)グリシン溶液:100mMグリシン溶液を希重炭酸ナトリウムでpH6.0に調整
して、水で30mMに希釈し、ろ過して使用に備える。
(4)N,N-ジメチルエチレンジアミン溶液:10mMN,N-ジメチルエチレンジアミ
ンを0.10m塩酸でpH6.0に調整し、10mMに希釈する。
(5)システイン溶液:50mMシステイン水溶液を、10mM重炭酸ナトリウムでpH
6.0に調整して、10mMに希釈し、ろ過して使用に備える(調製後30min内に使
用)。
(6)メルカプトエチルアミン溶液:20mMメルカプトエチルアミン水溶液を、10m
M塩酸でpH6.0に調整して、10mMに希釈する(調製後30min内に使用)。
(7)メルカプト酢酸溶液:20mMメルカプト酢酸水溶液を、10mM重炭酸ナトリウ
ムでpH6.0に調整して、10mMに希釈する(調製後30min内に使用)。
(8)2-メルカプトイミダゾール溶液:20mM2-メルカプトイミダゾール溶液を、
10mM重炭酸ナトリウムでpH6.0に調整して、10mMに希釈する(調製後30m
in内に使用)。
ステップ2、FBD-MSP-FCOOHのカルボキシ基を活性化させて活性エステルに
する。
FBD-MSP-FCOOHを乾燥させたN,N-ジメチルホルムアミドDMFで繰り返
して洗浄し、次に、FBD-MSP-FCOOHを乾燥DMFで10g/Lになるまで懸
濁させ、FBD-MSP-FCOOHの質量を基準にして、3倍のジシクロヘキシルカル
ボジイミドDCC、1.5倍のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS-OH)を加えて
、撹拌して均一に混合し、28~35℃で連続的に混合して~12H反応させ、1回にF
BD-MSP-FCOOH 1gあたりDMF 100mlを添加して活性化後の磁気ビ
ーズを3回洗浄し、FBD-MSP-FCOOH磁気ビーズのNHS活性エステルを得て
、単にFBD-MSP-FCONHSとする(
図2)。
ステップ3、アミドを形成するように活性エステルと連結して共有結合修飾を行い、両性
解離型イオン交換分離媒体を得る(
図3)。
(1)FBD-MSP-FCONHS 1gをリジン溶液70mlとグリシン溶液30m
lの混合物に懸濁させて修飾し、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌して13H反応さ
せ、1gあたりの磁気ビーズを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解離イオン
交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-ZEWAとする。
(2)FBD-MSP-FCONHS 1gをリジン溶液100mlに懸濁させて、共有
結合修飾を行い、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌して13H反応させ、磁気ビーズ
1gを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解離イオン交換ミクロン磁気ビーズ
を得て、単にFBD-MSP-ZEWBとする。
(3)FBD-MSP-FCONHS 1gをリジン溶液70mlとN,N-ジメチルエ
チレンジアミン溶液30mlの混合物に懸濁させて共有結合修飾を行い、室温下で上記修
飾系を中等速度で撹拌して~13H反応させ、磁気ビーズ1gを蒸留水100mlで3回
洗浄し、対応した両性解離イオン交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-
ZEWCとする。
(4)FBD-MSP-FCONHS 1gをヒスチジン溶液100mlに懸濁させて、
共有結合修飾を行い、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌して~13H反応させ、磁気
ビーズ1gを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解離イオン交換ミクロン磁気
ビーズを得て、単にFBD-MSP-ZEWDとする。
(5)FBD-MSP-FCONHS 1gをN,N-ジメチルエチレンジアミン溶液1
00mlに懸濁させて、共有結合修飾を行い、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌して
13H反応させ、磁気ビーズ1gを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解離イ
オン交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-ZEWEとする。
ステップ4、メルカプト反応性基と連結して共有結合修飾を行い、両性解離型イオン交換
分離媒体を得る(
図4)。
(1)FBD-MSP-FCONHS 1gをジメチルホルムアミド100mlに懸濁さ
せて、モノクロロアセチルエチレンジアミン0.5gを加え、室温で振とう反応を4H行
って、クロロアセチルをメルカプト反応性基とした修飾対象の分離媒体を得て、単にFB
D-MSP-FCOCH
2Clとする。
(2)FBD-MSP-FCOCH
2Cl 1gをシステイン溶液70mlとメルカプト
酢酸溶液30mlの混合物に懸濁させて修飾し、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌し
て~13h反応させ、磁気ビーズ1gを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解
離イオン交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-ZEW1とする。
(3)FBD-MSP-FCOCH
2Cl 1gをシステイン溶液100mlに懸濁させ
て、共有結合修飾を行い、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌して~13H反応させ、
磁気ビーズ1gを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解離イオン交換ミクロン
磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-ZEW2とする。
(4)FBD-MSP-FCOCH
2Cl 1gをシステイン溶液70mlとメルカプト
エチルアミン溶液30mlの混合物に懸濁させて共有結合修飾を行い、室温下で上記修飾
系を中等速度で撹拌して~13H反応させ、磁気ビーズ1gを蒸留水100mlで3回洗
浄し、対応した両性解離イオン交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-Z
EW3とする。
(5)FBD-MSP-FCOCH
2Cl 1gをメルカプト酢酸溶液50mlと2-メ
ルカプトイミダゾール溶液50mlの混合物に懸濁させて共有結合修飾を行い、室温下で
上記修飾系を中等速度で撹拌して~13H反応させ、磁気ビーズ1gを蒸留水100ml
で3回洗浄し、対応した両性解離イオン交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-M
SP-ZEW4とする。
(6)FBD-MSP-FCOCH
2Cl 1gをメルカプトエチルアミン溶液100m
lに懸濁させて、共有結合修飾を行い、室温下で上記修飾系を中等速度で撹拌して~13
H反応させ、磁気ビーズ1gを蒸留水100mlで3回洗浄し、対応した両性解離イオン
交換ミクロン磁気ビーズを得て、単にFBD-MSP-ZEW5とする。
(7)勿論、本調製実施例において調製された製品は、両性解離型イオン交換分離媒体の
調製方法を説明するために過ぎず、材料を、上記他の前記解離して負電荷を発生させる脂
肪族カルボキシ基、解離して正電荷を発生させる脂肪族一級、二級、三級アミン基及びイ
ミダゾリル基のうちの1種又は複数種の組み合わせに変更しても、本発明の目的を達成で
きる。
【0047】
実施例2:両性解離型イオン交換媒体によるアシッドレッド13に対する吸着分離容量の
測定操作手順
ステップ1、pHによるアシッドレッド13の消光係数への影響を測定し、結果を
図5に
示す。アシッドレッド13の消光係数は、pH4.0-8.9では変化がなく、すべて1
8.0(mM)
-1.cm
-1である。以下、アシッドレッド13にはすべてこの消光係
数を用いる。
ステップ2、両性解離型イオン交換分離媒体をpH3.6のバッファで3回洗浄して、こ
のバッファに再懸濁させる。
ステップ3、アシッドレッド13を吸着バッファで5.0mM以上に希釈する。
ステップ4、所定量のイオン交換分離媒体から水相を除去した後、吸着バッファ0.80
mlに再懸濁させ、50μl以下のアシッドレッド13の希釈溶液を加えて所望の最終濃
度にし、4次元ミキサーを用いて室温で5~10minかけて連続的に軽く混合して均一
にする。
ステップ5、結合されたアシッドレッド13を磁気分離して、洗浄バッファ0.80ml
で磁気ビーズを2回洗浄し、磁気ビーズを溶出バッファ0.80mlに懸濁させて、4次
元ミキサーで5~10min振とうし、磁気ビーズを磁気除去して、上澄み液0.70m
lを用いて、506nmでの吸収を測定する。
ステップ6、両性解離型イオン交換分離媒体によるアシッドレッド13の分離容量のpH
に伴う変化から、分離容量がゼロになる最大pHを近似推定して、測定対象の両性解離型
イオン交換分離媒体のpImとする。
ステップ7、pH3.6の吸着バッファにおけるアシッドレッド13に対する分離容量で
両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量を示し、各種表面が両性解離イオン交換基であ
る磁気ビーズの計算に用いる。
実施例3.吸着及び溶出条件による両性解離分離媒体の分離容量への影響(操作は実施例
2と同様)。
ステップ1、pH3.6で吸着させて、アシッドレッド13を60Mとし、溶出液のpH
効果を測定して、表1に示す。
pH8.0-8.9では、溶出液は、FBD-MSP-ZEWC及びFBD-MSP-Z
EW3のアシッドレッド13に対する分離容量だけに強い影響を与えるが、pH>8.9
では、影響の増加が低下した。以下、説明しない場合、吸着されたアシッドレッド13又
は核酸のいずれも、pH8.9の溶出液を用いる。吸着前のアシッドレッド13の量を全
量として、使用される洗浄条件で、洗浄液に存在するアシッドレッド13の比率及び洗浄
による損失率が2%未満である。以上の澄み液におけるアシッドレッド13の減少量が全
吸着量であり、pH8.9では、試験対象の両性解離イオン交換磁気ビーズの代表例によ
り吸着されたアシッドレッド13の溶出率は、FBD-MSP-ZEWE及びFBD-M
SP-ZEW5以外、すべて95%より大きい。FBD-MSP-ZEWE及びFBD-
MSP-ZEW5は、pH8.9での溶出率も2%未満である。これら結果から、pHを
調整することにより表面の正味荷電を逆転させて荷電物質の溶出を促進できることが確認
された。
表1 溶出液pHによる2種の両性解離吸着分離磁気ビーズにより吸着されるアシッドレ
ッド13の溶出収率への影響
*:pH8.9での溶出効率が低すぎる。アシッドレッド13吸着後の上澄み液の減少量
から分離容量を推定し、それに基づいてpImを推定する。
ステップ2、pH3.6では吸着、pH8.9では溶出を行い、吸着バッファにおけるア
シッドレッド13の最終濃度を60μMとし、吸着分離量の用量効果関係を測定する。結
果から明らかなように、溶出液におけるアシッドレッド13分離量は160μg以下のF
BD-MSP-ZEWBの量に対して線形応答を示した(
図6)。しかも、FBD-MS
P-ZEWAが0.10mgである場合、吸着反応系には異なる濃度のアシッドレッド1
3を用いたところ、得られた溶出液におけるアシッドレッド13の量は吸着反応系の限ら
れた範囲内でのアシッドレッド13の量に対して略線形応答を示した(
図7)。これら結
果から、アシッドレッド13を発色プローブとすることは、このような両性解離分離媒体
の分離容量のキャリブレーションに適用できることが確認され、且つ本発明で設計された
両性解離イオン交換剤は染色や製織廃液における水溶性染料の効率的な回収利用に適して
おり、再利用を容易に行うとともに、環境汚染を削減させることが認められた。
ステップ3、吸着反応pHは両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量にも明らかな影響
を与え(表1)、代表的なデータを
図8に示した。pH>4.0では、磁気ビーズのアシ
ッドレッド3への分離容量はすべて低下し、このことから、その正電荷が持続的に減少す
ることを示した。最大分離容量になるのに、吸着反応系のpHをpH3.6~4.0にす
る必要がある。アシッドレッド13への分離容量がゼロに近い最小pHはそのpImであ
り、以上から明らかなように、3種類の磁気ビーズの例のpImは明らかに異なる(
図8
)。pH8.0では、
図8における3種類の磁気ビーズのアシッドレッド13に対する吸
着容量はいずれもゼロに近く、それは、この際の3種類の磁気ビーズの表面の正味荷電が
いずれも負であることを示した。これに基づいて調製された両性解離型イオン交換分離媒
体のpImを推定する。これらpImの差からも、溶出液のpH効果が認められ、さらに
本発明の設計構想及び得られたイオン交換剤の使用が認められた(表1)。
ステップ4、FBD-MSP-ZEWA 0.10mgとアシッドレッド13 60μM
、吸着系0.80mlpH3.6、溶出液pH8.9 合計0.80mlを用いて、FB
D-MSP-ZEWAを独立して希釈し、アシッドレッド13に対する分離容量を繰り返
して測定した結果、(55±2) μmole/g磁気ビーズ(n=5)であった。この
方法は、非常に高い精度を有し、本発明の前記両性解離型イオン交換分離媒体の分離容量
のキャリブレーションに適していることが明らかになる。以下の実施例では、いずれも磁
気ビーズについて、pH3.6でのアシッドレッド13に対する分離量を計算する。
【0048】
実施例4(使用).FBD-MSP-ZEWB及びFBD-MSP-ZEWAによるプラ
スミドDNAの抽出
ステップ1:RMGUプラスミドをテンプレートとし、大腸菌細胞を拡大培養した後、天
根生化社製のスピンコラムプラスミド抽出キットを用いて、アルカリによる大腸菌細胞の
溶解及びスピンカラムを組み合わせて、プラスミドを抽出して核酸サンプルとする。
ステップ2:以下、別に説明しない場合、全ての磁気ビーズ結合プラスミドのpHは3.
6、溶出pHは8.9である。
ステップ3:サーモエレクトロン株式会社製のシラノール磁気ビーズ0.40mg、FB
D-MSP-ZEWA 5.5nmol(0.10mg);吸着体系合計0.20ml、
溶出液40μl。nanodropを用いてA260核酸を測定して定量化させ、核酸の
分離量の吸着反応系における過量の核酸量に対する応答曲線は
図9に示される。この曲線
から分かるように、核酸が過量である場合、FBD-MSP-ZEWAの核酸分離容量は
サーモエレクトロン株式会社製のシラノール磁気ビーズよりも4倍高くなった。吸着反応
系の核酸全量から吸着反応後の上澄みに残った核酸量を減算して、磁気ビーズの核酸最大
吸着量として溶出能力を計算し、pH8.9では、FBD-MSP-ZEWAに吸着され
た核酸の溶出能力が85%より大きく、それに対して、サーモエレクトロン株式会社製の
シラノール磁気ビーズに吸着された核酸の溶出能力が30%であり、この結果から、本発
明の設計構想が認められた。
ステップ4:プラスミド5.0μgを含む吸着体系合計0.20ml、溶出液40μl。
得られた核酸量の磁気ビーズ用量に対する応答曲線は
図10に示される。この曲線から分
かるように、FBD-MSP-ZEWBにより分離された核酸の力価はサーモエレクトロ
ン株式会社製のシラノール磁気ビーズの9倍よりも高くなる可能性がある。FBD-MS
P-ZEWBの核酸分離容量はFBD-MSP-ZEWAより遥かに高く、両方のアシッ
ドレッド13に対する分離容量の差異と一致する。このような差異も本発明の設計構想及
び設計されたイオン交換剤の実用性を認めた。
ステップ5:プラスミド0.40μgを含む吸着体系合計0.20ml。FBD-MSP
-ZEWB(~0.15mg)50nmol、サーモエレクトロン株式会社製のシラノー
ル磁気ビーズ1.0mg及びBiomigaキットにおけるシラノール磁気ビーズ1.0
mgを用いて分離し、溶出液を40μlとする。得られた核酸抽出液2.5μlをPCR
反応系50μlに入れて、各種サイクル/増幅回数後のアガロース電気泳動検出のPCR
産物を
図11に示す。その符号は以下のとおりである。M:核酸分子量の参照;1、4、
7、10、13、16:FBD-MSP-ZEWB 0.15mgでプラスミドを抽出す
る。2、5、8、11、14、17:サーモエレクトロン株式会社製のシラノール磁気ビ
ーズ1.0mgでプラスミドを抽出する。3、6、9、12、15、18:Biomig
aに使用されるシラノール磁気ビーズ(キットにおけるシラノール磁気ビーズの供給源は
未知)1.0mgでプラスミドを抽出する;1、2、3:合計10個のPCRサイクル;
4、5、6:合計13個のPCRサイクル;7、8、9:合計16個のPCRサイクル;
10、11、12:合計19個のPCRサイクル;13、14、15:合計22個のPC
Rサイクル;16、17、18:合計25個のPCRサイクル。
FBD-MSP-ZEWB 50nmolの、テンプレートとしての核酸の抽出能力は、
サーモエレクトロン株式会社製のシラノール磁気ビーズ1.0mg、Biomigaに使
用されるシラノール磁気ビーズ(キットにおけるシラノール磁気ビーズの供給源は未知)
1.0mgのテンプレートとしての核酸の抽出能力より遥かに高い。FBD-MSP-Z
EWBは、PCR用の核酸抽出により適用でき、前記イオン交換剤の使用が認められた。
【0049】
実施例5(使用).FBD-MSP-ZEWBイオン交換による微量の組換え発現RMG
Uタンパク質の精製
MGUは、カルボキシメチル又はリン酸化セルロース、Toyopearシリーズのスル
ホン酸親水性マクロポーラス樹脂類のカチオン交換媒体のいずれにおいても強い吸着性を
有し、ゲル体積に対して10倍の溶出液を用いても吸着されたMGU(Protein
J(2016) 35:318-329及び本明細書の引用文献)を溶出できない。両性
解離イオン交換剤の分離容量を向上させて、RMGU安定性を確保するために、RMGU
のpIsとは2.0個のpH単位の差がある6.6に近いpImを有するFBD-MSP
-ZEWBを用い、両方の間にあり且つ中性pHに近いバッファで細胞を溶解し、0.2
2μm精密ろ過膜にかけると、直接吸着分離に利用できる。
ステップ1:RMGUを誘導発現させて、細胞溶解液1において超音波溶解し、1200
0rpmで上澄み液を遠心分離してろ過し、組換え発現RMGUの粗酵素サンプルとする
。タンパク質濃度3.25g/L、活性3.27kU/L、比活性1.01kU/g。
ステップ2:磁気ビーズFBD-MSP-ZEWB 3.0μmolを細胞溶解液で3回
洗浄し、異なる量の粗酵素サンプルを加えて、室温で10min混合し、磁気分離して細
胞溶解液1で磁気ビーズを洗浄して、タンパク質溶出液1を加えて室温で30min混合
し、溶出液を得て、溶出液を収集した後、前記量の溶出液を加えて30min再溶出し、
複数回繰り返して溶出を行い、Nanodropを用いて280nmでの吸収を測定する
(タンパク質濃度)。結果を表2に示す。結果から分かるように、FBD-MSP-ZE
WBは、RMGUを効率的に精製することができ、得られた酵素の比活性がDEAE-セ
ルロースで不純物を3回吸着することにより精製する場合の比活性(Protein J
(2016)35:318-329)より高く、吸着されたRMGUは、活性換算で最
高溶出能力が80%に近く、それに対して、従来の古典的なカチオン交換媒体により吸着
されたMGUは溶出できなかった。且つ、溶出液を用いてバッチ式で溶出した結果、二回
目の溶出には最高活性濃度のRMGUは得られた。二回目の溶出液(各80μl)を凍結
乾燥させ、直接SDS-PAGE注入バッファ25μlで加熱して溶解し、同量のタンパ
ク質を注入してSDS-PAGE分析を行った結果、FBD-MSP-ZEWBでイオン
交換を1回行って精製したRMGUの純度は非常に高く、DEAE-セルロースによる3
回の精製の場合より遥かに優れている(
図12;文献の記載との比較Protein J
(2016)35:318-329)。
表2 FBD-MSP-ZEWB 3.0μmolによるRMGUの高速分離(ND:タ
ンパク質濃度が低すぎるため、測定不能)
【0050】
実施例6.FBD-MSP-ZEWBによる定量的PCR用のRMGUプラスミドの抽出
ステップ1:大腸菌細胞にRMGUを形質転換した後に拡大培養し、細胞を収集して、ア
ルカリで溶解した後、スピンカラム法によりプラスミドを抽出して、初期精製プラスミド
とし、初期精製プラスミドを0.20m酢酸でpH3.6に調整し、次に後続精製に用い
る。
ステップ2:FBD-MSP-ZEWBを用いて上記プラスミドをさらに精製し、得た溶
出液を0.20m酢酸でpH3.6に調整し、次にFBD-MSP-ZEWBで再度精製
し、プラスミド標準品を得て、ステップ6に記載の適切な濃度になるまで希釈する。
ステップ3:それぞれFBD-MSP-ZEWB 50nmol、Dynabeadsm
yone Silane 1.0mg、Biomigaキット磁気ビーズ1.0mgを用
いて、直接溶出液(25mM Tris-HCl、pH8.9)40μlで溶出して、磁
気ビーズ由来の不純物を得る。
ステップ4:磁気ビーズ由来の不純物に同量のプラスミド標準品を加えて、磁気ビーズの
空白とし、蛍光リアルタイム定量的PCR(qPCR)に用い、異なる磁気ビーズにより
抽出された核酸における、qPCRに対して阻害作用を有する不純物の含有量を比較する
。
ステップ5:スピンカラムにより精製されたプラスミド20μlを合計0.40μgにな
るまで希釈し、0.20m酢酸ナトリウム45μl、0.20m酢酸235μlを加えて
pH~3.6に調整し、それぞれFBD-MSP-ZEWB 50nmol(0.15m
g)、Dynabeadsmyone Silane 1.0mg、Biomigaキッ
トに使用される磁気ビーズ1.0mgを用いて抽出し、40μl溶出し(25mM Tr
is-HCl、pH8.9)、磁気ビーズ抽出核酸の試験液とする。
ステップ6:qPCR用のサンプルは以下のとおりである。
1 プラスミド標準品:RMGUプラスミドをスピンカラム法により1回精製した後、F
BD-MSP-ZEWBで2回精製し、A
260を測定した結果、プラスミド濃度は26
.9mg/Lである。溶出液で1125倍希釈して、プラスミドの標準品使用液とし、プ
ラスミドの標準品使用液を溶出液でさらに4、16、64、256、1024倍希釈し、
qPCRに用いる。
2 FBD-MSP-ZEWB空白:50nmol単独磁気ビーズ溶出液20μl+標準
品使用液の64倍希釈液20μl;
3 Dynabeads Myone Silane空白:1.0mg単独磁気ビーズ溶
出液20μl+標準品使用液の64倍希釈液20μl;
4 Biomiga磁気ビーズ空白:1.0mg単独磁気ビーズ溶出液20μl+標準品
使用液の64倍希釈液20μl;
5 FBD-MSP-ZEWB試験:磁気ビーズ50nmolでプラスミド0.40gを
抽出し、溶出液をさらに360倍希釈する。
6 Dynabeads Myone Silane試験:磁気ビーズ1.0mgでプラ
スミド0.40gを抽出し、溶出液をさらに360倍希釈する。
7 Biomiga磁気ビーズ試験:磁気ビーズ1.0mgでプラスミド0.40gを抽
出し、溶出液をさらに360倍希釈する。
ステップ7:蛍光リアルタイム定量的PCR
Biorad CFX96を用いて標準手順を行う。蛍光色素をSybrgreenとし
、PCR反応系に、酵素、トリヌクレオチド、プライマー(産物を150bpに制御する
)、Sybrlgreen及びテンプレート2.5μlを含み、合計25μlとし、磁気
ビーズ空白の追跡過程を
図13、磁気ビーズ試験の追跡過程を
図14、応答曲線を
図15
に示す。プラスミドの標準品使用液におけるプラスミド濃度を24pg/Lとすると、応
答曲線における各反応系のプラスミドの全量の勾配は順次、60、15、3.75、0.
94、0.24、0.06pgであり、自然対数を横座標として負の応答曲線を得て、そ
の詳細は
図15に示される。
ステップ8:表3から明らかなように、FBD-MSP-ZEWBでは、不純物によるP
CRへの阻害作用が最も少なく、2種のシラノール磁気ビーズにより抽出された核酸にお
ける不純物によるPCRへの阻害がより強く、特にBiomigaに使用される磁気ビー
ズにおける阻害性不純物がより多くなった。痕跡量のプラスミドに対しては、磁気ビーズ
用量(質量)及びqPCR測定用のテンプレート量を考慮すると、FBD-MSP-ZE
WBのqPCR用核酸の抽出能力はDynabeadsmyone Silaneの10
倍になり、Biomigaに使用される磁気ビーズでは、qPCRを阻害する不純物は明
らかに多く、また、qPCRによるテンプレート量は最低である。
表3 蛍光リアルタイム定量的PCRにより測定された、磁気ビーズのプラスミド抽出量
及び各種磁気ビーズ抽出物における妨害不純物
【0051】
上記使用実施例から、本発明の両性解離型イオン交換分離媒体の実用性が確認された。こ
のような媒体は、アシッドレッド13類の染料に対する吸着能力も溶出能力も強く、前記
イオン交換分離媒体のキャラクタリゼーションにも、捺染廃液におけるシッドレッド系水
溶性染料の回収利用にも適用できる。このようなイオン交換分離媒体及びアシッドレッド
13の溶出と測定を組み合わせることによって、調製された両性解離型イオン交換分離媒
体のpIm、溶出効率のpH効果を容易にキャラクタリゼーションできる。適切なpIm
を有する両性解離型イオン交換分離媒体を用いると、タンパク質を効率よく迅速に精製し
たり、核酸を効率よく抽出したりすることができ、且つ得られた核酸がPCRにより適し
ており、また、蛍光リアルタイム定量的PCRから明らかなように、前記両性解離型イオ
ン交換分離媒体のPCR用核酸の抽出能力は、ミクロン磁気ビーズの質量換算で、The
rmo-Fisher Dynabeads Myone Silaneシラノール磁気
ビーズの10倍に近い。
【0052】
最後に、なお、以上の実施例は本発明の技術案を説明するものに過ぎず、限定的なもので
はない。当業者であれば、本発明の技術案の主旨及び範囲から逸脱することなく本発明の
技術案について修正又は等同置換を行うことができ、それらはいずれも本発明の特許請求
の範囲に含まれることが理解できる。