(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】悪性腫瘍の治療に対する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20220726BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220726BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220726BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220726BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220726BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220726BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20220726BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61P35/00
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/16
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/63 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020164124
(22)【出願日】2020-09-29
(62)【分割の表示】P 2017536882の分割
【原出願日】2016-01-08
【審査請求日】2020-10-29
(32)【優先日】2015-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517238396
【氏名又は名称】オンコセック メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピアス ロバート エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ライト ジョセリン エイチ.
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-522372(JP,A)
【文献】特表2007-501283(JP,A)
【文献】Molecular Therapy,2007年,Vol.15, No.12,pp.2194-2202
【文献】Cancer Gene Therapy,2005年,Vol.12,pp.198-205
【文献】Cancer Immunology, Immunotherapy,2000年,Vol.49,pp.71-77
【文献】JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY,2008年,Vol.26, No.36,pp.5896-5903
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-33/44
A61P 35/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌性腫瘍を有する被験体を治療するために用いられる医薬であって、膜結合型GITRLをコードする第1の核酸と、IL-12及び/又はIL-15をコードする第2の核酸とを含み、前記治療は、有効用量の前記第1の核酸と前記第2の核酸とを前記癌性腫瘍に注入することと、前記腫瘍に対して電気穿孔療法を施すこととを含み、前記電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅に亘って、約200V/cm~約1500V/cmの少なくとも1回の電圧パルスの施行を含む、医薬。
【請求項2】
前記第2の核酸がIL-12及びIL-15をコードする、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記第1の核酸と前記第2の核酸とが、同一の発現プラスミド上に存在する、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
前記膜結合型GITRLが、
異種性膜貫通ドメインと結合した、GITRLの細胞外ドメイン(ECD)一本鎖三量体(SCT)を含むか、又は
GCN4pII三量体化モチーフ及び異種性膜貫通ドメインと結合した、GITRLの細胞外ドメイン(ECD)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記腫瘍に送達される前記少なくとも1回の電圧パルスが約300V/cm~約1500V/cmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記腫瘍が黒色腫である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
癌性腫瘍を有する被験体を治療するために用いられる医薬であって、膜結合型GITRLをコードする第1の核酸と、IL-12及び/又はIL-15をコードする第2の核酸とを含み、前記治療は、
前記治療が第1の有効用量の前記第1の核酸と前記第2の核酸とを前記癌性腫瘍に注入することと、第1の時間(T1)に前記腫瘍に対して第1の電気穿孔療法を施すことと; 第2の有効用量の第1の核酸と前記第2の核酸とを前記癌性腫瘍に注入することと、第2の時間(T2)に前記腫瘍に対して第2の電気穿孔療法を施すこととを含み、
前記時間T2が前記時間T1より後であり、かつ
前記第1及び第2の電気穿孔療法がそれぞれ約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を含む;
医薬。
【請求項8】
前記第2の核酸がIL-12及びIL-15をコードする、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
前記第1の核酸と前記第2の核酸とが、同一の発現プラスミド上に存在する、請求項7又は8に記載の医薬。
【請求項10】
前記膜結合型GITRLが、
異種性膜貫通ドメインと結合した、GITRLの細胞外ドメイン(ECD)一本鎖三量体(SCT)を含むか、又は
GCN4pII三量体化モチーフ及び異種性膜貫通ドメインと結合した、GITRLの細胞外ドメイン(ECD)を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
前記腫瘍に送達される前記少なくとも1回の電圧パルスが約200V/cm~約1500V/cmである、請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項12】
前記腫瘍が黒色腫である、請求項7~11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記時間T1が第0日目であり、前記時間T2が第4日目である、請求項7~12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
前記治療が、第3の有効用量の前記第1の核酸と前記第2の核酸とを前記癌性腫瘍に注入することと、第3の時間(T3)に前記腫瘍に対して第3の電気穿孔療法を施すこととを含み、ここで時間T3が時間T2の後であり、前記第3の電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を含む、請求項7~13のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項15】
前記時間T3に施行される少なくとも1回の電圧パルスが約200V/cm~約1500V/cmである、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
前記時間T3が第7日目である、請求項14又は15に記載の医薬。
【請求項17】
前記少なくとも1回の電圧パルスが約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅を有する低電圧パルスを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項18】
前記少なくとも1回の電圧パルスが350V/cmである、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
前記電気穿孔療法は、10ミリ秒の8回のパルスを含む、請求項18に記載の医薬。
【請求項20】
被験体における
癌性腫瘍及び転移を治療するために用いられる医薬であって、
膜結合型GITRLをコードする第1の核酸と、IL-12及び/又はIL-15をコードする第2の核酸とを含み、
ここで、前記第1の核酸と前記第2の核酸とが、同一の発現プラスミド上に存在してもよく、
前記治療は、有効用量の前記第1の核酸と前記第2の核酸とを前記癌性腫瘍に注入することと、前記腫瘍に対して電気穿孔療法を施すこととを含み、前記電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅に亘って、約200V/cm~約1500V/cmの少なくとも1回の電圧パルスの施行を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節物質の腫瘍内送達を提供する。特に、本発明は、腫瘍内電気穿孔による共刺激分子の送達を提供する。
【背景技術】
【0002】
最近では、免疫療法は、腫瘍を治療するための手術、化学療法及び放射線療法に続く第4の方法として注目されている。免疫療法がヒトに固有の免疫性を利用することから、患者の肉体的負荷は、免疫療法では他の治療法におけるものより小さいと言われている。免疫療法として知られる治療的アプローチとして、例えば、外因性に誘導された細胞毒性Tリンパ球(CTL)、又は様々な方法を使用する拡大培養による末梢血リンパ球から得られたリンホカイン活性化細胞、ナチュラルキラーT細胞又はγδT細胞等の細胞を移植する細胞移植療法、抗原特異性CTLのin vivoでの誘導が期待される樹状細胞移植療法又はペプチドワクチン療法、Th1細胞療法、及び様々な効果を有すると期待される遺伝子を上記細胞へとex vivoで導入してそれらをin vivoへと移植する免疫遺伝子療法が挙げられる。これらの免疫療法では、CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞は、重大な役割を果たすことがこれまでに知られている。
【0003】
CD8陽性T細胞は、直接in vivo及びin vitroで腫瘍細胞を破壊することができる主なエフェクター細胞である。これらの細胞は、MHCクラス1分子によって提示される抗原ペプチドに厳密に特異的である。対照的に、NKT細胞の抗原特異性はそれほど厳密ではなく、それらは固有の免疫応答を示すエフェクター細胞であると考えられる。
【0004】
CD4陽性T細胞は、腫瘍を直接破壊しないものの、複数の機構によって抗腫瘍免疫応答を調節する根本的な役割を有すると考えられる。MHCクラスII分子によって表される腫瘍抗原ペプチドを認識したCD4陽性T細胞は、抗原提示細胞(APC)との相互作用によってCTLの活性化及び増殖を促進する。
【0005】
対照的に、CD25陽性/CD4陽性細胞(調節性T細胞:Treg)は、抗腫瘍免疫応答及び多様な自己免疫性疾患の進行を阻害することが示された(特許文献1及び非特許文献1を参照されたい)。具体的には、調節性T細胞がCD4陽性T細胞を標的とすることによりヘルパー機能の制御によって細胞毒性CD8陽性T細胞の活性を抑制することから、いくつかの腫瘍は、それらの増殖にこの系を利用して、免疫系の攻撃を回避すると考えられる。
【0006】
調節性T細胞で発現される遺伝子として見出されたGITR(「Treg」、非特許文献1を参照されたい)は、細胞表面膜貫通型タンパク質受容体及び腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。GITRは、Treg及び活性化T細胞に恒常的に存在することが示されている。GITRは、GITRリガンド(以下、「GITR-L」と呼ぶ)と呼ばれる、別の膜貫通型タンパク質に結合する。GITRに対する作動性抗体は、調節性T細胞の免疫抑制活性を抑止することが示され、GITRを介して調節性T細胞の活性を調節する際に、GITRLが機能的な役割を果たすことを示唆する(非特許文献2を参照されたい)。同様に、CD137、CD134、CD40L、CD27等の他の共刺激分子もまた、免疫を賦活するように機能する。
【0007】
in vivoにおける電気穿孔は、様々な組織へのプラスミドDNAの効率的な送達の成功に使用された遺伝子送達法である。研究は、B16メラノーマ及び他の腫瘍組織へ
のプラスミドDNAの送達に対するin vivo電気穿孔の施行を報告した。プラスミドによってコードされる遺伝子又はcDNAの全身及び局所の発現は、in vivo電気穿孔の施行により得ることができる。in vivo電気穿孔の使用は、腫瘍組織におけるプラスミドDNA取り込みを増強して腫瘍内での発現をもたらし、また筋組織へプラスミドを送達して、サイトカイン等の分泌タンパク質の全身性の発現をもたらす(例えば特許文献2を参照されたい)。
【0008】
電気穿孔を使用して、プラスミドDNAによりin vivoで細胞に形質移入できることが示されている。最近の研究は、電気穿孔が抗腫瘍物質としてのプラスミドDNAの送達を増強し得ることを示した。電気穿孔は、齧歯類モデルにおける肝細胞性癌、腺癌、乳腺腫瘍、扁平上皮癌、及びB16.F10メラノーマの治療に対して施行されている。B16.F10、CT-26及びMC-38のマウスの同系腫瘍モデルは、組換えタンパク質として又は遺伝子療法のいずれかによって、サイトカインを含む免疫調節分子の送達に関して可能性のある免疫療法プロトコルを試験するため、広範囲に使用されている。
【0009】
当該技術分野において既知の様々なプロトコルは、癌の治療に対するin vivo電気穿孔を利用する共刺激アゴニストをコードするプラスミドの送達に利用することができる。当該技術分野において既知のプロトコルは、低電圧及び長パルス電流を利用する、腫瘍内及び筋肉内の両方のin vivoでの電気穿孔を媒介とするサイトカインに基づく遺伝子療法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願第2003049696号
【文献】米国特許第8026223号
【非特許文献】
【0011】
【文献】S. Sakaguchi et al., Immunol. Rev. 182 (2001), pp 18-32
【文献】McHugh et al., Immunity 16 (2002), PP 311-23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、当該技術分野で必要とされているのは、実質的に長期生存率も改善しながら、黒色腫等の癌腫瘍の退縮における実質的に改善された結果をもたらす、GITRL、CD137、CD134、CD40L、及びCD27のアゴニスト等の共刺激アゴニストをコードするプラスミドの送達に対する電気穿孔プロトコルである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、悪性腫瘍の治療に対する方法であって、電気穿孔と組み合わせた、治療用共刺激タンパク質をコードするプラスミドの投与が、遠位腫瘍及び転移と同様に、原発性腫瘍に対して治療効果を有する、方法を提供する。
【0014】
本発明は、癌性腫瘍を有する被験体を治療する方法であって、治療用タンパク質をコードする有効用量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、前記腫瘍に対して電気穿孔療法を施すこととを含み、前記電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅に亘って、約200V/cm~約1500V/cmの少なくとも1回の電圧パルスの施行を更に含む、方法を提供する。或る特定の実施の形態では、前記癌性腫瘍が黒色腫である。更なる実施の形態では、治療用タンパク質をコードする前記プラスミドが、共刺激分子をコードするプラスミドであり、前記共刺激分子はGITR、CD137、CD134、CD40L、及びCD27のアゴニストから選択することができる。更なる実施の
形態では、前記プラスミドが少なくとも1つの免疫賦活性サイトカインを更にコードし、前記免疫賦活性サイトカインはIL-12、IL-15、及びIL-12とIL-15との組み合わせから選択することができる。或る特定の実施の形態では、前記腫瘍に送達される前記電圧パルスが約200V/cm~約1500V/cmである。
【0015】
本発明は、癌性腫瘍を有する被験体を治療する方法であって、該方法は、
時間T1に第1の治療を施すことと、
ここで前記第1の治療が治療用タンパク質をコードする第1の有効用量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、時間に前記腫瘍に対して第1の電気穿孔療法を施すこととを含み、前記第1の電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒の持続期間を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を更に含む;
時間T2に第2の治療を施すことと、
ここで時間T2が時間T1より後であり、前記第2の治療が、治療用タンパク質をコードする第2の有効用量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、時間T2に前記腫瘍に対して第2の電気穿孔療法を施すこととを更に含み、前記第2の電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒の持続期間を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を更に含む;
を含む、方法を提供する。或る特定の実施の形態では、前記癌性腫瘍が黒色腫である。更なる実施の形態では、前記治療用タンパク質が共刺激分子であり、前記共刺激分子は、GITR-L、CD137、CD134、CD40L、及びCD27のアゴニストから選択することができる。別の実施の形態では、前記プラスミドが、少なくとも1つの免疫賦活性サイトカインを更にコードし、前記免疫賦活性サイトカインがIL-12、IL-15、及びIL-12とIL-15との組み合わせから選択される。或る特定の実施の形態では、前記腫瘍に送達される前記電圧パルスが約200V/cm~約1500V/cmである。更なる実施の形態では、時間T3において第3の治療が加えられ、ここで時間T3が時間T2の後であり、前記第3の治療が治療用タンパク質をコードする第3の有効用量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、前記腫瘍に対して第3の電気穿孔療法を施すこととを更に含み、前記第3の電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒の持続期間を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を更に含む。或る特定の実施の形態は、前記被験体の前記癌性腫瘍に治療用タンパク質をコードする有効用量のプラスミドを注入することと、約100マイクロ秒~約20ミリ秒のパルス幅を有する少なくとも1回の低電圧パルスを使用して被験体の腫瘍内に電気穿孔を施すこととを含み、前記腫瘍に送達される前記電圧パルスが約200V/cm~約1500V/cmである。
【0016】
本発明は、癌性腫瘍を有する被験体を治療する方法であって、該方法Iは、
時間T1に第1の治療を施すことと、
ここで前記第1の治療が治療用タンパク質をコードする第1の有効用量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、時間に前記腫瘍に対して第1の電気穿孔療法を施すこととを更に含み、前記第1の電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒の持続期間を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を更に含む;
時間T2に第2の治療を施すことと、
ここで時間T2が時間T1よりも後であり、前記第2の治療が治療用タンパク質をコードする第2の有効量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、時間に前記腫瘍に対して第2の電気穿孔療法を施すこととを更に含み、前記第2の電気穿孔療法が約100マイクロ秒~約20ミリ秒の持続期間を有する少なくとも1回の電圧パルスの施行を更に含む;
時間T3に第3の治療を施すことと、
ここで時間T3が時間T2よりも後であり、前記第3の治療が治療用タンパク質をコードする第3の有効量のプラスミドを前記癌性腫瘍に注入することと、前記腫瘍に対して第3の電気穿孔療法を施すこととを更に含み、前記第3の電気穿孔療法が約100マイク
ロ秒~約20ミリ秒の持続期間を有する少なくとも1回の高電圧パルスの施行を更に含む;
を含む、方法を提供する。或る特定の実施の形態では、前記癌性腫瘍が黒色腫である。別の実施の形態では、前記治療用タンパク質が共刺激分子であり、前記共刺激分子が、GITR-L、CD137、CD134、CD40L、及びCD27のアゴニストから選択される。更なる実施の形態では、前記プラスミドが少なくとも1つの免疫賦活性サイトカインを更にコードし、前記免疫賦活性サイトカインがIL-12、IL-15、及びIL-12とIL-15との組み合わせから選択される。特定の実施の形態では、前記腫瘍に送達される前記電圧パルスが、約200V/cm~約1500V/cmである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】組換え膜結合型及び可溶型のヒトGITRL、OX40L、及び4-1BBLのコンストラクトの構造を示す図である。示される組換え遺伝子は、pUMVC3プラスミド骨格に挿入される。単一の細胞外ドメイン(ECD)とGCN4pII三量体化モチーフとを含む可溶性タンパク質は、GITRL4、OX40L4、及び4-1BBL4と示される。3つの連続するECDを有する可溶性タンパク質は、追加された3つのFc抗体ドメイン(ヒトIgG1、マウスIgG1、及びマウスIgG2a)のうちの1つを有する又は有しない一本鎖三量体(SCT)と示される。異種性膜貫通ドメイン(TM)を含む膜結合型はGITRL4-TM1及びSCT-TMと示される。また、同一の形態を、前臨床研究のためヒトECDに代えてマウスECDで作製した。
【
図2】可溶性GITR-Fc融合タンパク質に対する、可溶性組換えGITRL4タンパク質の結合を示す機能性ELISAを示す図である。
【
図3】HEK293同時形質移入アッセイにおける、NFkBで駆動されるルシフェラーゼ遺伝子発現に対するGITRからの組換えGITRリガンド依存性シグナル伝達を示す図である。棒グラフは、細胞溶解物における相対ルシフェラーゼ活性単位を示す。値は、3つの別々の同時形質移入溶解物により測定された活性に対する、平均±SDである。
【
図4】Promega GITR有効性アッセイによるJurkatレポーター細胞との共培養における細胞表面組換えGITRLタンパク質の活性を示す図である。RLUは、相対ルシフェラーゼ単位である。EC50を、共培養アッセイにおけるGITRL-形質導入細胞の数として表す。
【
図5】組換えマウスGITRLタンパク質をコードするプラスミドの腫瘍内電気穿孔による、BALB/cマウスにおける原発性の、治療した(
図5A)及び対側の治療していない(
図5B)CT26皮下腫瘍における減少を示す図である。治療していない腫瘍及びGITRアゴニスト抗体、DTA-1で全身を治療したマウスに由来する腫瘍を比較として示す。腫瘍容積の測定を、SDと共に平均としてグラフ化した;*=治療なしに対してp<0.01;#=治療なしに対してp<0.05。
【
図6】マウスGITRLタンパク質をコードするプラスミドの腫瘍内電気穿孔が、単回の治療から4日後に脾臓においてCD8+CD44+T細胞に結合するAH1-デキストラマーを増加させたことを示す図である。抗CD44で染色される対数蛍光強度(x軸)とデキストラマーに結合したAHIペプチド(y軸)による2次元のドットプロットを示す。未処理及びDTA-1処理したマウスに由来する脾臓細胞を比較のため示す。各グラフで提示されるデータは、単一のマウスの脾臓細胞のものである。
【
図7】マウスGITRLタンパク質をコードするプラスミドの腫瘍内電気穿孔が、pUMVC3空ベクター対照による電気穿孔と比較して、リンパ球に浸潤する腫瘍におけるFoxp3遺伝子発現を減少させたことを示す図である。各点は、単一のマウスからの3つのRT-PCR値を表した。CT26腫瘍を有する複数のマウスから全RNAを分離した:EP/空ベクター及びDTA-1コホートに対してn=6、及びEP/GITRL4コホートに対してn=14。%遺伝子発現は、空ベクター対照コホートの平均値に対するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の特許請求の範囲を含めて、本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」等の単数形の単語は、文脈に別段の明らかな指示がない限り、それらの対応する複数の参照を含む。
【0019】
本明細書に引用される参照文献はいずれも、あたかも個々の出版物、特許出願、又は特許がそれぞれ具体的且つ個別に参照により援用されることが示されるのと同じ程度に参照により援用される。
【0020】
定義
本明細書で使用される「共刺激分子」は、T細胞と抗原提示細胞との間で従事し、抗原提示細胞上の抗原のT細胞受容体(「TCR」)認識に起因するT細胞おける刺激シグナル(すなわち、「共刺激」)と結びつく、T細胞で刺激シグナルを生成する、免疫細胞表面受容体/リガンド群を指す。共刺激分子として、限定されないが、GITR、CD137、CD134、CD40L、CD27等のアゴニストが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用されるように、「T細胞活性化の共刺激因子」は、共刺激リガンドが結合して、TCRによって活性化されたT細胞を活性化する能力を指す。よく知られているように、共刺激的な活性化は、サイトカインの産生によって、またよく知られており、実施例に記載されるような増殖反応測定法によって、T細胞について測定することができる。生物学的に活性な可溶型の共刺激分子は、活性化T細胞上の同族の受容体に対する結合について試験されてもよい。
【0022】
本明細書で使用される「抗原提示細胞に由来する」可溶型共刺激分子は、可溶性とするために本明細書に記載されるように操作された、B細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞及び他のかかる抗原提示細胞によって正常に発現される共刺激分子を指す。抗原提示細胞に由来する好ましい可溶性共刺激分子として、GITR-L、CD137-L、CD134-L(別名OX40-L)、CD40、CD28のいずれかが挙げられる。抗原提示細胞に由来する可溶型共刺激分子は、T細胞上のその同族の受容体/リガンドに生来の共刺激分子が結合し、T細胞活性化を刺激する能力を保持する。
【0023】
「共刺激分子アゴニスト」の用語は、可溶性共刺激分子及び共刺激分子結合パートナーのアゴニストを含む。例えば、GITR-Lの結合パートナーはGITRである。GITRのアゴニストは、作動性GITR抗体、多量体可溶型及び膜貫通型を含むGITR-Lポリペプチド、GITRL模倣物、又はGITRの生物活性に従事し、誘導する他の分子を含んでもよい。
【0024】
本明細書で使用される、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体「GITR」リガンド(別名GITR-L、TNFSF18(腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー18))の用語は、この名前と関連する特定の分子、及びSwiss Prot Id.番号Q9UNG2に定義されるGITR-Lと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも98%の配列同一性を共有する、共刺激分子としての生体機能を有する任意の他の分子を指す。
【0025】
本明細書で使用される、「CD137-L」又は「CD137のアゴニスト」(別名4-1BBリガンド又はTNFL9)の用語は、この名前に関連した特定の分子、及びSwiss Prot Id.番号P41273に定義されるヒトCD137-Lと少なくとも80%のアミノ酸配列の同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ま
しくは少なくとも95%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも98%の配列同一性を共有する、共刺激分子としての生体機能を有する任意の他の分子を指す。
【0026】
ヒトCD137-Lは、254個のアミノ酸(シグナル配列なし)を含むII型膜タンパク質である(Swiss Prot Id番号P41273の配列を参照されたい)。該タンパク質は、1~28残基に細胞質ドメイン、29~49残基に膜貫通ドメイン、及び50~254残基に細胞外ドメインを含む。CD137-L(1645bp)のヌクレオチド配列は、公的データベース(Genbankアクセッション番号NM003811を参照されたい)において利用可能である。CD137-Lは、Alderson et al. (1994)
Eur J. Immunol. 24(9):2219-27によって記載される。CD137-Lは、B細胞、単球及び脾臓の樹状細胞を含む抗原提示細胞及びTリンパ球上で発現される。CD137-Lは、活性化T細胞上のCD137と相互作用する。
【0027】
本明細書で使用される、「CD134-L」又は「CD134のアゴニスト」(別名OX40リガンド又はTNRSF4)の用語は、この名前に関連した特定の分子、及びSwiss Prot Id.番号P23510に定義されるCD134-Lと少なくとも80%のアミノ酸配列の同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも98%の配列同一性を共有する、共刺激分子としての生体機能を有する任意の他の分子を指す。
【0028】
ヒトCD134-Lは、183個のアミノ酸(シグナル配列なし)を含むII型膜タンパク質である。該タンパク質は、1~23残基に細胞質ドメイン、24~50残基に膜貫通ドメイン、及び51~183残基に細胞外ドメインを含む。CD134-L(157~708であるコード配列を含む3510bp)のヌクレオチド配列は、公的データベースにおいて利用可能である(Genbankアクセッション番号NM_003326.2を参照されたい)。CD134-Lは、Godfry et al., J Exp Med. Aug. 1, 1994; 180(2):757-62.に記載される。CD134-Lは樹状細胞及び他のAPCによって発現され、活性化T細胞に存在する、CD134に結合する。
【0029】
本明細書で使用される、「CD40」(別名TNFRSF5又はCD40リガンド受容体)の用語は、この名前に関連した特定の分子、及びSwiss Prot Id.番号P25942に定義されるヒトCD40と少なくとも80%のアミノ酸配列の同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも98%の配列同一性を共有する、共刺激分子としての生体機能を有する任意の他の分子を指す。
【0030】
ヒトCD40の配列は、N末端の20個のアミノ酸がシグナル配列を表す277個のアミノ酸を含む(Swiss Prot Id番号P25942の配列を参照されたい)。膜貫通ドメインは、194~215残基に位置し、細胞質のドメインは216~277残基に位置する。CD40(1177bp)のヌクレオチド配列は、公的データベースにおいて利用可能である(Genbankアクセッション番号NM_001250を参照されたい)。CD40及び様々なアイソフォームはTone et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98 (4), 1751-1756 (2001)によって記載される。CD40は、活性化T細胞によって発現されるCD40-L(別名CD40リガンド又はCD153)への単球及びB細胞の結合によって発現される。
【0031】
本明細書で使用される「CD28」は、I型膜貫通糖タンパク質であり、CD80及びCD86に対する結合に必要なMYPPPY(配列番号639)モチーフを有する、その単一のIg可変様細胞外ドメイン(Ig variable-like extracellular domain)により、
免疫グロブリンファミリーのメンバーである(Peach et al. (1994) J. Exp. Med. 180:
2049-2058)。CD28は、そのホモ二量体化に関与する、Ig可変様ドメインの後に位
置するシステイン残基を有する。CD28のタンパク質配列及びヒトCD28をコードする核酸は、例えばHarper et al. J. Immunol. (1991) 147: 1037-44に開示される。また
、CD28をコードするヒトmRNAの配列は、例えば、2009年4月19日付で最終更新されたNCBIアクセッション番号NM_006139に開示される。また、ヒトCD28の完全タンパク質配列は、NCBIアクセッション番号NP_006130に開示される。
【0032】
「癌」の用語は、一般に、不適当な細胞増殖、異常又は過度の細胞増殖を特徴とする、多様な疾患を含む。癌の例として、限定されないが、乳癌、結腸癌、前立腺癌、膵癌、黒色腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌、脳腫瘍、又は肉腫が挙げられる。かかる癌は、染色体異常、変性増殖(degenerative growth)及び発育障害、細胞分裂促進薬剤、紫外線(UV)
、ウイルス感染症、遺伝子の不適当な組織発現、遺伝子発現の変更、又は発癌物質によって引き起こされ得る。
【0033】
「治療」の用語は、限定されないが、癌細胞の増殖の阻害又は減少、癌細胞の破壊、癌細胞の増殖の予防若しくは悪性細胞の開始の予防、又は形質転換された前癌細胞の悪性疾患への進行の停止若しくは逆転、又はその疾患の改善を含む。
【0034】
「被験体」の用語は、任意の動物、好ましくはヒト等の哺乳動物を指す。獣医学的用途も、本発明に包含されることが意図される。
【0035】
本明細書で同義的に使用される、「電気穿孔」、「電気透過化」、又は「電気運動増強」(「EP」)の用語は、生体膜において微視的な経路(孔)を誘導するための膜貫通性の電界パルスの使用を指し、それら経路の存在は、プラスミド、オリゴヌクレオチド、siRNA、薬物、イオン及び水等の生体分子が細胞性膜の一方から他方へと通過することを可能とする。
【0036】
本明細書で使用される「生体分子」の用語は、抗体、抗体フラグメント、全長の免疫調節タンパク質、膜アンカー分子の可溶性ドメイン、融合タンパク質等をコードするプラスミドを包含する。
【0037】
抗体
本発明は、個体において腫瘍のサイズを減少させる若しくは癌細胞の増殖を阻害する、又は癌に苦しむ個体において転移性癌の発症を減少させる若しくは阻害する、免疫療法的アプローチを提供する。治療法は、電気穿孔を使用して、様々な可溶型の共刺激分子又はそのアゴニストをコードするプラスミドの腫瘍内送達によって達成される。
【0038】
共刺激アゴニストは、抗体又は抗体フラグメントの形態であってもよく、いずれもプラスミドにおいてコードされ、電気穿孔によって腫瘍に送達され得る。
【0039】
本明細書で使用される「抗体」の用語は、T細胞の生成物及びその変異体であるT細胞受容体(TcR)と同様に、B細胞の生成物及びその変異体である、免疫グロブリンを含む。免疫グロブリンは、多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子と同様に、免疫グロブリンカッパ及びラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、並びにミューの定常領域遺伝子によって実質的にコードされる1以上のポリペプチドを含むタンパク質である。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンに分類され、これらは免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEをそれぞれ定義する。また、重鎖のサブクラスが知られている。例えば、ヒトにおけるIgG重鎖はIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブク
ラスのいずれであってもよい。
【0040】
典型的な免疫グロブリン構造単位は、四量体を含むことが知られている。四量体は、それぞれ同一の2対のポリペプチド鎖で構成され、各対は1つの「軽鎖」(約25kD)及び1つの「重鎖」(約50kD~70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100~110以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)の用語は、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれ指す。
【0041】
抗体は、全長の無傷の抗体、又は多様なペプチダーゼ若しくは化学物質による消化によって産生された、多くの十分に特性評価されたフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、F(ab’)2、すなわちそれ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に連結された軽鎖であるFabの二量体をもたらすためにヒンジ領域のジスルフィド結合の下の抗体を消化する。F(ab’)2は、ヒンジ領域のジスルフィド結合を壊す穏やかな条件の下で還元して、F(ab’)2二量体をFab’単量体に変換し得る。Fab’単量体は、本質的にはヒンジ領域(他の抗体フラグメントのより詳細な説明については、Fundamental Immunology, W. E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993)を
参照されたい)を有するFabフラグメントである。Fabフラグメント及びFcフラグメントは、パパインによるIgGの消化によって生成される。パパインは、鎖間S-S結合形成に含まれる残基のすぐ上のヒンジ領域で切断し、各々ヒンジの下部、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む、2つの定常領域フラグメントを含む、1価のFabフラグメント及びFcフラグメントを生じる。ヒンジ領域の下部の残基の鎖間S-S結合形成にもかかわらず、Fcの定常領域フラグメントは二量体として安定化される。
【0042】
免疫グロブリン「Fc」は、古典的にパパインによる消化によって生成された定常領域の部分を指す。これには鎖間のS-S結合を有する下部ヒンジが含まれる。本明細書で使用される「Fc」の用語は、各々、ヒンジの下部、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む、1対の免疫グロブリン定常領域ポリペプチドを含む二量体タンパク質を指す。かかる「Fc」フラグメントは、ヒンジ領域にS-S鎖間結合形成を含んでもよく、含まなくてもよい。Fcは、いずれのIgクラスに由来してもよく、それ自体、例えばIgMの場合にはCH4ドメインを含んでいてもよいことが理解されるべきである。Fcの突然変異体配列は、Wines et al., J. Immunol. 2000 May 15; 164(10):5313-8によって記載され
るように既知であり、本発明において使用され得る。
【0043】
多様な抗体フラグメントが無傷の抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、様々な抗体フラグメントがいずれも、新たに化学的に又は組換えDNA方法論のいずれかの利用によって合成され得ることを理解するだろう。したがって、本明細書で使用さる抗体の用語は、抗体全体の修飾によって産生された若しくは新たに合成された抗体フラグメント、又は組換えDNA方法論を用いることにより得られた抗体及びフラグメントも含む。
【0044】
組換え抗体は、従来の全長抗体、タンパク質消化による既知の抗体フラグメント、Fv又は単鎖Fv(scFv)等の特有の抗体フラグメント、ドメイン欠失抗体等であってもよい。フラグメントは、わずか1個又は数個の欠失若しくは変異したアミノ酸を有するドメイン又はポリペプチドを含んでもよいが、1以上のドメインの欠失等のより広範囲な欠失が可能である。
【0045】
Fv抗体は、約50Kdのサイズであり、軽鎖及び重鎖の可変領域を含む。単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、直接連結されたか、ペプチドをコードするリンカーによって連結された、VH及びVLをコードする配列を含む、核酸から発現され得る、共有結合で連結されたVH::VLヘテロ二量体である。例えば、Huston, et al. (1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883を参照されたい。抗原結合部位の構造に実質的に
類似する三次元構造へと折り畳む、自然に凝集しているが、化学的には分離されている軽鎖及び重鎖のポリペプチドを抗体V領域からscFV分子へと変換するための多くの構造。
【0046】
上記の従来の抗体フラグメントの代わりは、ラクダ、ラマ及びサメの免疫系によって産生された1組の特有の抗体において見出された。他の抗体と異なり、これらの親和性試薬は2つの重鎖のみで構成され、更に良いことに、単一ドメインがこれらの重鎖抗体に対する抗原結合部位を形成する。該ドメインを、「ナノボディ」と呼ばれる極めて小さく、非常に安定した単一ドメイン組換え抗体フラグメントを産生するように、更に遺伝子操作してもよい。重鎖(VHH)のみ、すなわち単一ドメイン抗体をコードするプラスミド、及びナノボディもまた、電気穿孔による腫瘍内送達が意図される。
【0047】
可溶性アゴニスト
共刺激分子のアゴニストは、少なくともGITR-Lの細胞外ドメイン(ECD)を含む可溶性GITR-L等の可溶性分子であってもよい。他の共刺激分子は、同様に、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを欠くが、それらの結合パートナーに結合して、生物学的作用を誘発することができる。電気穿孔による腫瘍内送達のため、ECDは発現ベクターにコードされ、腫瘍に送達された場合に発現される。
【0048】
共刺激分子の可溶性コード形態は、発現ベクターにおいて別のタンパク質又はポリペプチドをコードするDNAに連結されてもよい。かかる他のポリペプチドは、免疫グロブリンのFc部分、アルブミン、又は共刺激分子の溶解度を維持する任意の他の種類の血清タンパク質若しくはそれらのフラグメントであってもよい。可溶性形態の共刺激分子は、フラグメント又は全長の重鎖若しくは軽鎖であってもよい重鎖及び/又は軽鎖を介して免疫グロブリンに連結されてもよい。免疫グロブリンは、癌細胞又は腫瘍に関連する抗原を標的とすることができる抗体であってもよい。また、共刺激分子は、細胞の細胞表面上で発現されてもよく、異種性の三量体化ドメイン(例えばGCN4)の付加を有してもよく、又はリガンドをより強力にする受容体結合ドメインにおける点突然変異を有してもよい(例えば、Chattopadhyay et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci.,104:19452-19457を参照されたい)。
【0049】
共刺激分子アゴニストは、核酸として送達される。核酸は、標準的なホスホジエステル結合又は他の連結によって共有結合的に連結された、窒素複素環塩基又は塩基類縁体を有する、ヌクレオシド又はヌクレオシド類縁体を含む、オリゴヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチド化合物を指す。核酸は、RNA、DNA、キメラDNA-RNAポリマー、又はそれらの類縁体を含んでもよい。DNAは、目的の特定の共刺激分子アゴニストを発現するプラスミドであってもよい。
【0050】
コードされた共刺激分子の電気穿孔に使用されるDNAプラスミドは、電気穿孔後の上記DNAプラスミドの進入により、哺乳動物細胞において発現され得る、組換え抗原のコード配列を含むものである。好ましくは、コード配列は、標的腫瘍中の免疫反応を誘発するコンセンサス共刺激分子アゴニストである。いくつかの形態では、コード配列は、哺乳動物の発現に対して最適化されるコンストラクトであり、Kozak配列の付加、コドン最適化、及びRNA最適化を含む、1以上を含んでもよい。これらの最適化されたコード配列を、多様な商業的に入手可能なベクターへとサブクローニングすることができる。
【0051】
併用療法
共刺激アゴニストをコードするDNAの腫瘍内電気穿孔を、他の治療実体と共に施行し得ることが意図される。表1は可能な組み合わせを提供する。併用療法の施行は、電気穿孔単独、又は電気穿孔と全身送達との組み合わせによって達成され得る。
【0052】
【0053】
他の意図される併用療法は、次ものと組み合わせた共刺激アゴニストである:TLRアゴニスト(例えばフラジェリン、CpG);IL-10アンタゴニスト(例えば抗IL-10又は抗IL-10R抗体);TGFβアンタゴニスト(例えば抗TGFβ抗体);PGE2阻害剤;Cbl-b(E3リガーゼ)阻害剤;CD3アゴニスト;テロメラーゼアンタゴニスト等。特に、IL-12、IL-15/IL-15Ra、及び/又はGITR-Lの様々な組み合わせが意図される。IL-12及びIL-15は相乗的な抗腫瘍効果があることが示された(例えば、Kimura et al. (2000) Cancer Immunol. Immunother. 49:71-77を参照されたい)。各分子をコードするDNAは、個別の発現プラスミド上にあ
ってもよく、又は単一の発現プラスミド上で適切なプロモーターと組み合わされてもよく、以下に記載される様々な技術によって腫瘍に送達され得る。
【0054】
電気穿孔
装置は、癌又は他の非癌性の(良性)増殖に悩む患者における使用が意図される。これらの増殖は病変、ポリープ、新生物(例えば乳頭状尿路上皮新生物)、乳頭腫、悪性腫瘍、腫瘍(例えばクラッキン腫瘍、肝門部腫瘍、非侵襲性乳頭状尿路上皮腫瘍、胚細胞腫瘍、ユーイング腫瘍、アスキン腫瘍、原始神経外胚葉性腫瘍、ライディッヒ細胞腫瘍、ウィルムス腫瘍、セルトリ細胞腫瘍)、肉腫、癌(例えば扁平上皮癌、総排泄腔癌、腺癌、腺扁平上皮癌、胆管細胞癌、肝細胞癌、侵襲性乳頭状尿路上皮癌、扁平尿路上皮癌)、瘤、又は他の型の癌性若しくは非癌性増殖のいずれかとして現れ得る。本実施形態の装置及び方法で処理される腫瘍は非侵襲性、侵襲性、表在性、乳頭状、扁平、転移性、限局性、単中心性、多中心性、低悪性度、及び高悪性度のいずれかであってもよい。
【0055】
本装置は多くの型の悪性腫瘍(すなわち癌)及び良性腫瘍への使用が意図される。例えば、本明細書に記載の装置及び方法は、副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば肝門部周囲癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、良性及び癌性の骨癌(例えば骨腫、類骨骨腫、骨芽腫、骨軟骨腫、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨の巨細胞腫瘍、脊索腫、リンパ腫、多発性骨髄腫)、脳及び中枢神経系の癌(例えば髄膜腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、上皮腫、神経膠腫、髄芽腫、神経節膠腫、シュワン腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房症)、キャッスルマン病(例えば巨大リンパ節過形成、血管胞状リンパ節過形成)、子宮頚癌、大腸癌、子宮内膜癌(例えば子宮内膜腺癌、腺類癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞癌)、食道癌、胆嚢癌(粘液性腺癌、小細胞癌
)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば絨毛癌、破壊性絨毛膜腺腫)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎癌(例えば腎細胞癌)、喉頭下咽頭癌、肝癌(例えば血管腫、肝腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔副鼻腔癌(例えば感覚神経芽腫、正中線肉芽腫)、上咽頭癌、神経芽腫、口腔中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫(例えば胎児性横紋筋肉腫、胞巣状横紋筋肉腫、多型細胞型横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌、黒色腫及び非黒色腫両方の皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例えば精上皮腫、非精巣上皮腫胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば濾胞状癌、未分化癌、低分化癌、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫)、膣癌、外陰癌、及び子宮癌(例えば子宮平滑筋肉腫)への使用が意図される。
【0056】
本発明の実施形態の装置及び方法は、電気療法を連続的に、及び/又は1秒の数分の1~数日間、数週間、及び/又は数か月に及ぶ期間のパルスで腫瘍へと送達することにより癌性腫瘍を治療するようにはたらく。好ましい実施形態では、電気療法は直流電気療法である。
【0057】
本明細書で使用される「電気穿孔」の用語(すなわち、細胞膜浸透性を与える)は、(例えば、生細胞中への医薬品、溶液、遺伝子及び他の薬剤等の分子の拡散を可能とするため)細胞膜に孔を開けるのに十分な任意の期間に患者に送達される任意の量のクーロン、電圧、及び/又は電流によってもたらされてもよい。
【0058】
組織に電気療法を送達すると、一連の生物学的及び電気化学反応を引き起こす。十分に高い電圧では、細胞構造及び細胞代謝は、電気療法の施行によって極度に妨げられる。癌性及び非癌性細胞はいずれも一定レベルの電気療法で破壊されるが、腫瘍細胞は、非癌性細胞よりそれらの微小環境の変化に敏感である。多量元素及び微量元素の分布は電気療法の結果変更される。
【0059】
単電極配置では、リード電極とジェネレーターハウジングとの間に数秒分の1~数時間に亘って電圧を印加して、癌組織の破壊を始めてもよい。所与の電圧の印加は、各パルスが1秒の数分の1~数分間続く一連のパルスであってもよい。或る特定の実施形態では、パルス持続時間又は幅はおおよそのものであってもよい。また、低電圧は、腫瘍部位に白血球を引き付け得る、数秒分の1~数分の持続期間に亘って印加されてもよい。この方法では、細胞媒介免疫系は、死んだ腫瘍細胞を除去し、腫瘍細胞に対する抗体が生じ得る。さらに、賦活された免疫系は、境界型腫瘍細胞及び転移を攻撃する場合がある。
【0060】
任意の免疫学的応答を増加させるため、宿主の種に応じて、限定されないが、フロイントのアジュバント(完全、及び不完全)、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム等のミネラル塩、様々なサイトカイン、リゾレシチン、プルロニック(登録商標)多価アルコール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン等の界面活性物質、並びにBCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin))及びコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)等の潜在的に有用なヒトアジュバントを含む、様々なアジュバントを使
用してもよい。代替的には、キーホールリンペットヘモシニアン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、オブアルブミン、コレラ毒素又はそれらのフラグメント等の分子との組み合わせ及び/又はカップリングによって免疫応答を増強してもよい。
【0061】
Draghia-Akli, et al.による米国特許第7,245,963号は、モジュール電極システム、及び身体又は植物の選択された組織の細胞中への生体分子の導入を促進するためのそれらの使用を記載する。モジュール電極システムは複数の針電極と、皮下注射針と、プログラム可能な定電流パルスコントローラから複数の針電極に導電性リンクを提供する電気的コネクターと、電源とを備える。オペレーターは、支持構造にマウントされ、身体又
は植物の選択された組織にそれらをしっかりと挿入する複数の針電極をつかむことができる。その後、生体分子が選択された組織中への皮下注射針によって送達される。プログラム可能な定電流パルスコントローラが活性化され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスは、複数の電極間の細胞中への生体分子の導入を促進する。米国特許第7,245,963号の全内容が、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0062】
米国特許出願公開第2005/0052630号は、身体又は植物の選択された組織の細胞中への生体分子の導入を効果的に促進するため使用され得る、電気穿孔装置を記載する。該電気穿孔装置は、その操作がソフトウェア又はファームウェアによって指定される、電気運動装置(「EKD装置」)を備える。EKD装置は、ユーザ制御及びパルスパラメーターの入力に基づいたアレイ中の電極間の一連のプログラム可能な定電流パルスパターンをもたらし、電流波形データの蓄積及び獲得を可能とする。また、電気穿孔装置は、針電極アレイを有する取り換え可能な電極ディスクと、注射針に対する中心注射チャネルと、リムーバブルガイドディスクとを備え(例えば、米国特許出願公開第2005/0052630号を参照されたい)、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0063】
米国特許第7,245,963号、及び米国特許出願公開第2005/0052630号に記載される電極アレイ及び方法は、筋肉等の組織のみならず、他の組織又は臓器中への深い浸透に対して適合される。電極アレイの配置のために、電極によってあらかじめ描写される領域において、注射針(選択された生体分子を送達するため)も完全に標的臓器に挿入され、その注射は標的組織に垂直に施行される。
【0064】
典型的には、in vivoの細胞電気穿孔に必要とされる電場は、一般に、in vitroで細胞に必要な電場に対する規模に類似する。一実施形態では、電場の規模は、およそ10V/cm~約1500V/cm、好ましくは約300V/cm~1500V/cm、好ましくは約1000V/cm~1500V/cmの範囲に及ぶ。代替的には、電場強度が低いほど(約10V/cm~100V/cm、より好ましくは約25V/cm~75V/cm)、パルス長が長い。例えば、名目上の電場が約25V/cm~75V/cmである場合、パルス長は約10m秒であることが好ましい。
【0065】
パルス長は、約10μ秒~約100m秒であってもよい。任意の所望の数のパルス、典型的には1秒当たり1パルス~100パルスであってもよい。パルスセット間の遅れは、任意の所望の時間、例えば1秒であってもよい。また、波形、電場強度、及びパルス持続時間は、細胞の種類、及び電気穿孔を介して細胞に入る分子の種類に依存し得る。
【0066】
また、本発明の非ウイルス送達ベクターの取り込みは、電子なだれ(avalanche)トラ
ンスフェクションとも名付けられた血漿電気穿孔によって増強されてもよい。簡潔には、マイクロ秒放電は、電極表面でキャビテーションマイクロバブルを生じる。磁界と併せてマイクロバブル崩壊によって生じた機械力は、従来の電気穿孔に関連する拡散媒介輸送と比較して、細胞膜を横切る輸送効率を増加させる役目を果たす。血漿電気穿孔の技術は、2011年4月12日付発行のVankov, et al.の米国特許第7,923,251号、及び2012年10月9日付発行のVankov, et al.の米国特許第8,283,171号に記載される。また、この技術を細胞の形質転換のためin vivoで採用してもよい。Chalberg, et al (2006) Investigative Ophthalmology & Visual Science 47:4083-4090;2012年1月24日付発行のChalberg, et al.の米国特許第8,101169号。
【実施例】
【0067】
I.腫瘍及びマウス
ATCC(CRL2638)から得られたCT-26.野生型細胞を解凍し、移植に先
立って最小限に継代した。トリプシンを用いて接着性CT-26.野生型細胞をプレートから除去し、細胞生存率をAO/PI染色によって決定して、生存/死亡数をCellometer Auto2000(Nexelcom Biosciences)を使用して行った。細胞を1.0×107生存細胞/ml又は0.5×107/mlのいずれかの密度でDPBSに再懸濁し、移植まで氷上に置いた。
【0068】
腫瘍移植の1日前に、Jackson Laboratoriesから購入した6週齢の雌性BALB/cJ(品番000651)マウスの両方の後部脇腹を剃毛した。ピンチ試験(pinch test)に対する反応がなくなるまでマウスをイソフルランで麻酔した。18Ga針を使用して1.0mlの無菌シリンジにCT-26.野生型細胞を引き込み、針を移植用の26Ga針と取り換えた。CT-26.野生型細胞を0.1mlの容量で後部脇腹に対して頭側に皮下注射し、1.0×106細胞(原発腫瘍用)又は0.5×106細胞(対側腫瘍用)の移植をもたらした。
【0069】
腫瘍増殖を、ディジタルキャリパーで腫瘍の長軸及び短軸を測定することにより移植4日後に開始してモニターした。楕円体の容積を推定するため、式(A2×B)/2(「A」が短軸で、「B」が長軸である)を使用して腫瘍容積を計算した。二葉腫瘍(bi-lobed
tumors)、又は皮下よりも深く移植された腫瘍を持つマウスを廃棄した。原発腫瘍容積
が40mm3~90mm3に達すると、マウスを同様の平均腫瘍容積を含むコホートへ無作為化した。マウスをAALAMガイドラインに従って収容する。
【0070】
II.プラスミドDNA
組換え可溶型及び膜結合型のヒトGITRL、OX40L又は4-1BB(
図1に説明される構造)と同様に、両方の野生型の発現に対するpUMVC3プラスミド(ALDEVERON)を生成した。各リガンドに対する細胞外ドメイン(ECD)を付加した(Genbank ID AF125303[GITRL]、D90224[OX40L]、及びU03398[4-1BBL])。1つの変種(GITRL4、OX40L4及び4-1BBL4と表される)では、異種性三量体化ドメインが付加される(Harbury, P.B. Nature 371: 80.)。別の変種(一本鎖三量体、SCTと表される)では、「ゆらぎ(wobble)」を導入するためのグリシンとセリンとの変化する組み合わせで構成されるリンカ
ー配列によって3つのECDドメインを順に付加した。リンカーの長さは、12個~23個のアミノ酸で変化する。いくつかのコンストラクトでは、PDGF受容体(Thermo FisherのベクターpDisplayから得られた)に由来する膜貫通ドメインをECD(複
数の場合がある)に対してC末端に付加した。いくつかのコンストラクトでは、ヒト又はマウスの抗体に由来する定常領域(Fc)をECD(ヒトFc-IgG1[InvivoGenの
pFUSE-hIgG1-Fcに由来]、マウスFc-IgG1[InvivoGenのpFUS
E-mIgG1-Fcに由来]、マウスFc-IgG2a[InvivoGenのpFUSE-mIgG2a-Fcに由来])に対してC末端に付加した。
【0071】
マウス及びヒトのGITRLは交差反応しないと報告される(例えば、Bossen et al.,
(2006) J. Biol. Chem. 281:13964-13971を参照されたい)ため、組換えヒトGITRLに対するマウスホモログを、マウスにおける前臨床研究用に構築した。マウスGITRLは、本来二量体である。組み換えマウスGITRLコンストラクトを、GCN4多量体化モチーフ(Harbury, P.B. Nature 371: 80.)を使用して、二量体及び三量体の両方とし
て作製した。マウスGITR-Fcに対する二量体型及び三量体型の相対的結合を、機能的ELISAを使用して比較した。三量体型は、より高い結合親和性を示し、全て更なる研究に使用した(二量体に対するEC50、39.24μM、三量体に対するEC50、12.38μM)。上に記載される全てのコンストラクトにおいて、ヒトECDドメインをマウスGITRL ECDドメイン(Genbankアクセッション番号NM_183391)に置換することにより、前臨床研究で使用されるSCT形態のマウス版を作製し
た。共刺激分子アゴニスト(すなわち、GITRL)を含むpUMVC3は、エンドトキシンを含まないキットにより作製される。全てのプラスミドDNAを、無菌注射用生理食塩水(0.9%)に希釈し、-20℃で保存した。
【0072】
III.組織培養細胞における発現
Mirus TransIT-LT1試薬(カタログ番号:MIR 2300)を用いるHEK293(ATCC)細胞へのGITRLプラスミドの形質移入。
形質導入される細胞を、6ウェルディッシュに400000個の細胞で定着させる。24時間後、細胞を4μLのMirus及び1μg DNAで被覆した。細胞を4日後~7日後にウェスタンブロット、フローサイトメトリーによる分析のために採取した。活性アッセイに対しては、分泌されたタンパク質を、細胞上清から採取し、製造業者の指示書(Novagen)に従ってNi+-樹脂を使用して精製した。
【0073】
IV.ウェスタンブロット及びフローサイトメトリーによるタンパク質検出
ウェスタンブロッティングのため、レムリー(laemmli)SDS試料バッファー(Al
fa Aesar J61337)を各試料に添加し、10分間100℃で沸騰させて、試料を遠心分離した。20μlのタンパク質+バッファーを1ウェル毎に載せ、最も小さな標準がゲルの底に達するまで、150ボルトでゲルを約1時間電気泳動した。ゲルタンパク質を氷上で1時間に亘って100ボルトでPVDF薄膜に転写し、1×TBSTによりPVDFを3回濯いだ後、TBST中5%BSAを用いてロッカー(rocker)上で室温にて1時間に亘ってブロックした。濯いだ膜を、TBST+5%無脂肪粉乳中に希釈された抗NWSHPQFEKタグ抗体、mAb、マウス(Genscript、A01732-100
)と共に一晩インキュベートした。ブロットを700の標識した抗マウス2次抗体(Rockland)と共に、室温で1時間インキュベートした。LICOR撮像装置を使用して画像を分析した。
【0074】
V.フローサイトメトリー
フローサイトメトリーのため、細胞をCa++又はMg++のない温かいPBSを使用して、ディッシュから除去した。細胞を計数し、5×106細胞/チューブでチューブに分配し、洗浄して、100μl~200μlのFCバッファー(Ca++又はMg++を含まないPBS中、5%濾過FBS+0.1%NaN3)に再懸濁した。PE標識抗GITRL(クローン109101、R&D systems)、アイソタイプ対照(クローン1171
1、R&D systems)、又は抗FC及び対応するアイソタイプ対照(Biolegend)を添加し、1時間氷上でインキュベートした。試料をFCバッファーで3回洗浄した。試料を抗FCとインキュベートした場合、最初に、FCバッファー中、抗GITR-FC融合タンパク質と共に氷上で1時間、細胞をインキュベートした。Becton-Dickenson
FACScan、GUAVA 12HTフローサイトメーター(Millipore)又はLS
R-II(Beckman)を使用して、細胞を分析した。
【0075】
HEK293ヒト細胞へと形質導入された場合、これらのコンストラクトに由来するタンパク質が合成され、適切に細胞外空隙(可溶型)又は細胞表面へと局在化され、ウェスタンブロットによる抗NWSHPQFEKタグ抗体、及びフローサイトメトリーによる抗GITRL Abによって検出可能であった。膜結合型三量体化組換えGITRLタンパク質は、HEK293細胞で発現された場合、可溶性GITR-FC融合タンパク質に結合した。
【0076】
【0077】
VI.機能性ELISAによる受容体結合
抗ヒト-Fc抗体(Pierce、31125)を、平底の96ウェルELISAプレート(Costar、カタログ番号3690)に添加し、PBSで1μg/mlに希釈し、室温にて1時間インキュベートした。ウェルを150μlのPBSTで3回洗浄し、デカントして乾燥させた。150μl/ウェルのSuperblock(Scytek、AAA999)を付加することによりウェルをブロックし、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、50μl/ウェルの組換えヒトGITR/TNFRSF18 Fcキメラタンパク質(R&D、6
89-GR-100)を500ng/mlの濃度で添加した。試料を室温で1時間インキュベートした後、洗浄した。PBSで5倍からゼロまで希釈した50μlの5000ng/ml rhGITRL標準組換えのヒトGITRリガンド/TNFSF18(R&D、6
987-GL-025)、PBSで5倍から0まで希釈した50μlの適切なHEK293培養上清(遺伝子発現を有しない陰性対照)、及び可溶性ヒトGITRLタンパク質の滴定も行って、3連で添加した。試料を1時間室温でインキュベートした後、再度洗浄した。PBSで500ng/mlに希釈した50μl/ウェルのマウス抗ヒトビオチン化hGTIRL抗体(R&D、BAM6943)を各ウェルに添加し、1時間室温でインキュベ
ートした。洗浄後、50μl/ウェルの1:15000のストレプトアビジンHRP(Abcam、7403)を添加した。試料を室温で1時間インキュベートした。洗浄後に、50
μl/ウェルのTMB基質(Pierce、カタログ番号34028)を添加し、試料を10分間インキュベートした。反応を25μl/ウェルのH2SO4の添加で停止した。波長補正を540nm又は570nmに設定して、450nmに設定されたマイクロプレートリーダを使用して、光学密度を決定した。培養上清中のGITRLの濃度を、結合及び検出について抗GITRL抗体を使用する従来のELISA、及びGITRLタンパク質標準(R&D、6987-GL-025)によって決定した。
【0078】
可溶性GITRL4及びGITRL-SCT-Fcタンパク質は、商業的に入手可能なGITRLタンパク質(R&D 6987-GL-025、表3)より2倍超高い親和性、
及び2倍超高い比活性(1ng当たりの活性単位、
図2)でELISAにおいてGITR-FC融合タンパク質に結合する。可溶性組換えGITRLタンパク質は、架橋されたMK-4166に匹敵するGITR結合親和性を実証した。
【0079】
【0080】
VII.NFkBルシフェラーゼリポーターアッセイ
GITRLプラスミドを、NFkBで駆動されるプロモーター(Promega)の制御下で
ホタルルシフェラーゼをコードするプラスミドと共にHEK293ヒト細胞へと形質導入した。ヒトGITR遺伝子(Origene)を発現するプラスミド、及びウミシイタケルシフ
ェラーゼを発現するプラスミドは、恒常的なCMVプロモーターの制御(Promega、形質
導入変異性に対する制御)下にある。形質移入の48時間後、細胞を溶解させ、デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega、E1910)を使用するホタル及びウミシイ
タケのルシフェラーゼ活性の両方について分析した。可溶性GITRLタンパク質は、レポーター細胞株系においてNFkBに対するGITRのシグナル伝達を刺激した(
図4)。
【0081】
可溶性GITRLタンパク質を、製造業者の指示書(Novagen)によりNi+-樹脂を
使用して、血清不含状態のHEK293培養上清を精製した。精製されたタンパク質を、A280吸光度、及びELISAによって正規化した。タンパク質のモル等価物を、ヒトGITR及びNF-kBで駆動される分泌されたルシフェラーゼを発現する、操作されたJurkat細胞に添加した(GITR効力試験、Promega、CS184002)。用量
応答を各タンパク質について測定し、商業的に入手可能な可溶性ヒトGITRL(R&D systems)と比較した。架橋抗体、すなわちR&D GITRL標準(R&D systems)に対する抗HA、及び本発明者らのGITRLタンパク質に対する抗NWSHPQFEKタグ(Genscript)の添加を伴って、及び添加を伴わずに、製造指示によりアッセイを実行した
。
【0082】
また、共培養刺激にアッセイプロトコルを適合させることによりGITR効力アッセイ(Promega、CS184002)において細胞表面GITRLタンパク質を試験した。細
胞表面GITRLタンパク質をコードするプラスミドで形質導入されたHEK293細胞を培養の4日後にPBS-Mg++-Ca++を含むディッシュから取り出し、平底96ウェル組織培養トレー(Corning)において100000細胞/ウェルから1細胞/ウェ
ルまで段階希釈で蒔き、基体に接着するように一晩置いた。解凍し、使用したJurkat細胞(Promega、CS184002)を製造業者の指示書に従ってGITRL発現HE
K293細胞上に重ね、7時間共培養した。上清を共培養物から除去し、BioTekルミノメータを使用して、標準的なプロトコル(Promega、GITR効力アッセイ)に記載
されるように、ルシフェラーゼ活性を測定した。結果を、陰性対照として形質移入されていない細胞、及び各実験の陽性対照としての可溶性R&D GITRLと比較した。
【0083】
【0084】
可溶性GITRL4及びGITRL-SCT-FCは、商業的に入手可能なヒトGITRL(R&D Systems)よりも、このGITR活性アッセイにおいてそれぞれ3倍超及び1
0倍超のより良好な効力を有した。また、GITR効力アッセイにおいて、Jurkatレポーター細胞と共培養した場合、細胞表面GITRLは、強い活性化を示した(
図4)。
【0085】
VIII.初代ヒトT細胞刺激、及び可溶性GITRLの細胞表面結合
初代ヒトPan T細胞(Allcells、PB009-1)を、抗CD3(OKT3、10μg/ml)単独で、若しくは可溶性抗CD28(15E8、1μg/ml)と組み合わせて、又は可溶性GITRLによる先の形質移入を伴って、及び伴わずにHEK293細胞に由来する培養上清で一晩被覆されたウェル中に蒔いた。細胞を4日間RPMI+10%FBS中で培養した。刺激されていない対照細胞を、平行してRPMI+10%FBSに蒔いた。
【0086】
細胞表面結合について、抗CD3及び抗CD28で刺激された細胞を、氷上でFCバッファー(マグネシウム又はカルシウムを含まないPBS中、5%濾過FBS+0.1%NaN3)を用いて洗浄した。細胞を、氷上で1時間HEK293培養上清と共に、又は該培養上清なしでインキュベートした。FCバッファー中で洗浄後に、細胞を複合化抗体、すなわちFITC複合化-StrepTAG II抗体(GenScript、A10736-1
00)、FITC複合化アイソタイプ対照(Invitrogen、GM4992)、PE複合化ヒトGITR抗体と共にインキュベートした。細胞をFCバッファーで洗浄し、上に記載されるようなフローサイトメトリーによって分析する。
【0087】
増殖アッセイのため、刺激した細胞又は刺激していない対照の複製ウェルを、AO/PI生体染色溶液(Nexcelom、CS2-0106-5ML)で染色し、刺激の4日後に Cellometer Auto 2000で計数した。
【0088】
サイトカイン産生アッセイのため、CD4+T細胞及びPan T細胞(Allcells)を、0.1μg/ml、0.2μg/ml又は0.5μg/mlのBiolegend製の抗ヒトC
D3(カタログ番号100207)及び可溶性アゴニストGITRL分子で共刺激した。抗ヒトCD28(カタログ番号102111)を陽性対照として使用した。上清を収集する前に、共刺激したT細胞を37℃で72時間インキュベートした。細胞上清中のヒトIFN-γ及びIL-2のレベルをR&D ELISAキット(カタログ番号DY485-05及びカタログ番号DY402-05)によって測定した。
【0089】
組換え可溶性GITRL4は、刺激した初代ヒトpan T細胞の細胞表面に結合した。
【0090】
【0091】
GITRL4を発現するプラスミドで形質導入されたHEK293細胞に由来する培養上清の添加は、抗CD3抗体と架橋するTCRに対する初代ヒトT細胞の増殖の反応を増加させるが、抗CD28抗体より小さな程度に過ぎない。GTRLタンパク質の付加もまた、TRCの架橋に応答してサイトカイン産生を増加させる。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
まとめると、これらのデータは、細胞へ導入された場合に、組換えGITRLタンパク質をコードするプラスミドが発現され、T細胞上の細胞表面内因性GITRに結合して、刺激することができることを示す。腫瘍微小環境内では、Tリンパ球上の細胞表面GITRの刺激は、腫瘍微小環境内のこれらのリンパ球の活性化を増強し、腫瘍細胞に対する免疫応答を促進すると予想される。
【0096】
IX.初代マウスT細胞における組換えGITRLに対するマウスホモログとDTA-1との比較。
マウス組換えGITRLタンパク質はHEK293細胞で発現され、細胞(TMドメインを含んでいるもの)の保持、又は培養培地中への分泌をウェスタンブロットによって確認した。初代マウス脾臓細胞の表面上のGITRに結合することは、抗StrepTAG
II抗体(Genscript)を使用するフローサイトメトリーによって確認された。さらに
、精製された可溶性マウスGITRLタンパク質の付加と共に、最適以下の用量の抗CD3(1452C11)による初代マウスT細胞の刺激の増加が精製されたCD4+及びCD8+のT細胞の両方で観察され、同様に全脾臓細胞培養物でも観察された。各場合において、組換えマウスGITRLは、GITRアゴニスト抗体であるDTA-1(BXcell、BE0063)に匹敵するか、より良好なT細胞共刺激活性を示した。例えば、0.5μg/mlの1452C11抗CD-3 Ab(Biolegend、100207)と共に蒔いた
全脾臓細胞では、DTA-1は1.29μMのEC50を有し、mGITRL-SCT-FcIgG2aは0.473μMのEC50を有し、mGITRL4は3.32μMのEC50を有した。
【0097】
X.腫瘍内治療
マウスに治療用イソフルランで麻酔をかけた。環状プラスミドDNAを無菌の0.9%生理食塩水中に1μg/μlまで希釈した。50μlのプラスミドDNAを、26Gaの針を備える1mlシリンジを使用して、原発腫瘍の中央に注入した。注射直後に電気穿孔を行った。DNAの電気穿孔は、350V/cm、各々1秒間隔で間隔をおいて10ミリ秒の8回のパルスを供給するBTX ECM 830方形波エレクトロポレーターを使用して達成された。電気穿孔は、2本の針から2本の向かい合った針へ電流を一方向性に送達するように構成され、0.5cm間隔で間隔をおいた針を備えたMedpulserハンドルによって送達された。腫瘍サイズが許容される場合、電気穿孔針を腫瘍に挿入した。治療は、0日目、4日目及び7日目、又は研究によっては0日目及び4日目に行なわれた。治療に続いて、先に記載されるようなディジタルキャリパーを使用して、2日~3日毎に腫瘍容積を決定した。原発又は対側の腫瘍容積が1000mm3に達した場合、マウスを安楽死させた。
【0098】
各実験のために、10匹~15匹のマウスコホートを、組換えマウスGITRLタンパク質をコードするプラスミドで電気穿孔し、1日目に500μgのDTA-1 GITRアゴニスト抗体により腹腔内で治療した、又は治療せず放置したコホートと比較した。
【0099】
治療していないマウスと比較して、電気穿孔した腫瘍に対する腫瘍容積は、著しく減少された(
図5A)。さらに、統計学的に有意な減少が、マウスの対側脇腹の治療していない腫瘍でも観察された(
図5B)。治療した腫瘍は、全身性DTA-1治療に匹敵する容積の減少を実証した。
【0100】
XI.フローサイトメトリーによる脾臓及び腫瘍におけるT細胞の特性評価
腫瘍及び脾臓を屠殺したマウスから切除し、RPMI+10%FBSに入れた。脾臓を70ミクロンのストレーナーに押しつけることにより脾細胞を単離し、それらを低張の赤血球溶解(ACKバッファー;ThermoFisher)に供した。分離脾細胞を、染色に先立ってlympholyte M(Cedarlane)を使用して精製した。腫瘍を、腫瘍用Gent
le-MACS(Miltenyi腫瘍分離キット130-096-730、C-チューブ、130-093-237)を使用し分離し、Heaters(130-096-427)を
備えるMiltenyi gentleMACS(商標) Octo Dissociatorを使用してホモジナイズした。全ての試料の準備ができるまで、試料を氷上に保存した。細胞を4℃にて5分間、1200rpm(800×g)でペレット化し、PBS+2%FBS+1mM EDTA(PFB)に再懸濁して、15mL円錐形遠心分離管で5mLのLympholyte-M(Cedarlane)の上に重ねた。Lympholyteカ
ラムを、中断することなく(with no brake)室温にて20分間、2000rpm(15
00×g)の遠心分離機で回転させた。リンパ球層を10mLのPBFに移した後、4℃で5分間、1200rpm(800×g)で遠心分離した。細胞ペレットをFcブロック(BD Biosciences、553142)を含む500μLのPFBに優しく再懸濁した。96ウェルプレートにおいて、細胞を製造業者の指示に従ってAH1-デキストラマー(immu
dex、JG3294-APC)の溶液と混合し、室温で10分間インキュベートした。抗
CD45-AF488(Biolegend、100723)、抗CD3-BV785(Biolegend、100232)、抗CD4-PE(eBioscience、12-0041)、抗CD8a-A
PC(eBioscience、17-0081)、抗CD44-APC-Cy7(Biolegend、103028)、抗CD19-BV711(Biolegend、11555)を含む抗体染色カクテ
ルを添加し、30分間室温でインキュベートした。細胞を3回洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含むPFB中、氷上にて15分間固定した。細胞をPFBで洗浄し、暗所に4℃で保存した。試料をLSR IIフローサイトメーター(Beckman)で分析した。
【0101】
GITRLの腫瘍内電気穿孔は、脾臓におけるAH1-デキストラマー結合CD8+CD44+T細胞を増加させた(
図6)。CT26腫瘍において、免疫優性抗原を表すAH1ペプチドに結合する活性化されたCD8+エフェクターT細胞の増加は、治療されたマウスにおけるCT26腫瘍に対する全身性免疫の増加を示す。
【0102】
治療された腫瘍内の遺伝子発現変更を測定するためRT-PCRを使用した。急速凍結した腫瘍をPBSに再懸濁し、穏やかなMACS Dissociator(Miltenyl Biotech)を使用してホモジナイズした。その後、ホモジェネートをTrizol(Life Technologies Corp.)へ移した。製造業者のプロトコルに従って全RNAを単離した後、
DNase処理を行った。1μgのRNAを使用してcDNAを作製した(dsDNaseを含むMaxima H Minus First Strand cDNA合成キット、Thermo Fisher Scientific)。TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(Thermo Fisher Scientific.)及びCFX96(Biorad)を
使用して、RT-PCRを行った。相対mRNAのレベルを18sに正規化し、サイクル数を使用し、2-ΔΔCT法(Livak et al, Methods, 2001)を使用して、各製品の量を計算した。
【0103】
GITRLの腫瘍内電気穿孔は、治療した腫瘍内のFoxp3遺伝子発現を減少させた(
図7)。Foxp3転写因子の発現は調節性T細胞(Treg)に対するマーカーであり、腫瘍微小環境内の免疫抑制機能を担う。GITRアゴニスト抗体であるDTA-1は、腫瘍内のTregの数を減らすことが知られており、また腫瘍に存在するFoxp3遺伝子のレベルを低下させることも示されている(Schaer et al., (2013) Cancer Immunol
Res. 1:320-331)。同様に、本発明者らは、pUMVC3空ベクターで電気穿孔された
腫瘍と比較して、pUMVC3-GITR4で電気穿孔された腫瘍におけるFoxp3遺伝子レベルの減少を観察した。
【0104】
治療したマウスの脾臓及び腫瘍によるT細胞のこれらの分析は、組換えGITRLをコードするプラスミドの腫瘍内電気穿孔が、治療した腫瘍内のTregレベルを変更することができ、全身の腫瘍抗原反応性エフェクターT細胞の増加をもたらすことを示唆する。
【0105】
GITRL単独療法に加えて、CT26同系腫瘍モデルを使用して組み合わせ研究を行った。GITRL4-TM1をコードするpUMVC3プラスミドを、IL-12サイトカインのp35及びp40のサブユニットをコードするpUMVC3と共に腫瘍内に電気穿孔した(A Daud et al., (2008) J. Clin. Oncol. 26:5896-5903)。
【0106】
第1のEP治療後6日目、8日目、11日目及び13日目に測定した、pUMVC3ベクター対照又はpUMVC3-IL12プラスミド単独と比較して、治療していない対側腫瘍の平均腫瘍容積の統計学的に有意な減少が見られた。さらに、治療していない腫瘍の完全腫瘍退縮にはより速い速度があった。例えば、治療開始後19日目に7匹/15匹のマウスが完全退縮した対側腫瘍を有したのに対し、IL-12治療コホートはわずか1匹/15匹であった。さらに、pUMVC3-IL-12単独と比較して、原発(治療した
)及び対側(治療していない)の両方に対して完全奏功(CR)を有するマウスの数の増加が観察された。
【0107】
【0108】
これらの結果は、原発(治療された)腫瘍の腫瘍微小環境におけるGITRL及びIL-12による併用療法が、治療されていない対側腫瘍に対するIL-12単独よりも大きな効能を有していたことを示す。
【0109】
X.IL-12、IL15/IL15Ra、GITRLによる腫瘍内治療
IL-12、IL15、及びGITRLは、いずれも免疫系の賦活に個別の効果を有する。IL-12α及びβのサブユニット、IL15及びIL-15Ra、並びに組換えGITRLをコードするプラスミドを、共に(別々のプラスミド上又は単一のプラスミド中で)対側腫瘍モデルのCT26腫瘍に電気穿孔し、これらの5つの遺伝子の組み合わせがBALB/cマウスにおいて樹立された腫瘍の退縮に更に効能を有するかどうかを判断する。また、5つ全ての遺伝子をコードする単一の大きなプラスミドの腫瘍内電気穿孔を、治療していないマウスと比較して、効能について試験する。さらに、これらの遺伝子の試験を組み合わせて及び別々に、C57/Bl6マウスにおけるB16F10の対側腫瘍モデルで行う。腫瘍容積を経時的に測定し、完全寛解のマウス割合を測定する。
【0110】
XI.組織学
マウスをCO2窒息によって人道的に屠殺する。腫瘍を切除し、10mlの10%ホルマリンを含む50mlの円錐管に入れる。組織を固定後にH&Eで以下通り染色する:6時間の10%中性緩衝ホルマリン中での固定の後、代表的な組織試料をMiles VIP組織プロセッサー(インディアナ州ミシャワカのMiles Inc.)を使用して、パラフィンブロックへと加工する。簡潔には、組織を上昇する等級のエタノールで脱水し、キシレンで透徹し、パラフィン中に浸透させる(Tissue Prep 2、Fisher Scientific)。包埋に続いて、標準的な回転ミクロトーム上で組織から切片を作製し、4mmの切
片を水浴から回収してスライドガラスにマウントする。1つの腫瘍当たり3つの切片を検査する。切片を加熱乾燥し、標準的な組織学の技術を使用して、H&E(ミシガン州カラ
マズーのRichard-Allen Scientific)で染色する。
【0111】
XII.免疫組織化学
免疫組織化学染色を、以下の抗体、すなわち、ラット抗マウスCD4、ラット抗マウスCD8(Ly2)、及びラット抗マウスCD31(PECAM-1)(マサチューセッツ州ケンブリッジのPharMingen)をそれぞれ使用して、CD4+リンパ球、CD8+リンパ球及び血管の存在について腫瘍を検査するために行う。マウスをCO2窒息によって人道的に屠殺した。腫瘍をハサミで切除し、皮膚を除去した後、直ちにドライアイス及びエタノールの混合物中で凍結して保存した(80℃)。5mの凍結切片を得た。免疫組織化学分析のため、ラット抗マウスCD4、ラット抗マウスCD8(Ly2)、又はラット抗マウスCD31(PECAM-1)を1:50の稀釈で組織切片に施行し、30分間インキュベートした後、2倍濃度(各ビオチン化抗ラットIgG及びABC複合体中で15分間)でVector EliteラットIgGペルオキシダーゼキットを用いて検出する。免疫染色をDako自動染色器で行う。切片を倍率400倍で分析する。
【0112】
XIII.統計学的手法
統計学的分析は、分散分析、マンホイットニーの検定又は両側スチューデントのt検定によって行なわれる。