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▶ 淺田鉄工株式会社の特許一覧

<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】分散機
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20220726BHJP
   B02C 17/24 20060101ALI20220726BHJP
   B02C 23/36 20060101ALI20220726BHJP
   B02C 23/38 20060101ALI20220726BHJP
   B01F 27/60 20220101ALN20220726BHJP
   B01F 27/117 20220101ALN20220726BHJP
   B01F 27/1151 20220101ALN20220726BHJP
   B01F 23/53 20220101ALN20220726BHJP
【FI】
B02C17/16 Z
B02C17/24
B02C23/36
B02C23/38
B01F27/60
B01F27/117
B01F27/1151
B01F23/53
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021200461
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2022-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591111868
【氏名又は名称】淺田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】宗岡 一平
(72)【発明者】
【氏名】青木 康博
(72)【発明者】
【氏名】小田 真也
(72)【発明者】
【氏名】小川 菜摘
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-220649(JP,A)
【文献】特表2003-519569(JP,A)
【文献】特開2001-025653(JP,A)
【文献】特開昭62-241561(JP,A)
【文献】特開平07-124491(JP,A)
【文献】特開平03-060747(JP,A)
【文献】特許第4859534(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第104056688(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/53、27/00-96
B02C 17/00-24、23/18-40
G11B 5/842
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内のメディアと当該容器の上流側に設けた投入部から投入した分散対象物を下流側に設けた排出部に向けて送りながらメディアとともに分散するメディア型の分散機であって、
前記下流側から前記上流側に向けて外径が大きくなるテーパを有する円錐台状の複数の分散ロータと、
複数の突片を外周に有するとともに、上流側の面から下流側の面に向かう複数の貫通孔を有する1または複数の分散ディスクと、
前記分散ロータおよび前記分散ディスクが回転可能に取り付けられる回転軸と、を備え
記分散ロータと前記分散ディスクを前記回転軸に交互に取り付けて構成した
ことを特徴とする分散機。
【請求項2】
前記分散ロータは、外周面を有し、前記外周面には粗面が含まれている
ことを特徴とする請求項1に記載の分散機。
【請求項3】
複数の溝が、外周面に沿って形成されており、上流から下流の方向に延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の分散機。
【請求項4】
前記分散ロータの上流側で複数の前記溝と前記分散ディスクの複数の前記貫通孔の各々が連通する
ことを特徴とする請求項3に記載の分散機。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記上流側の面から前記下流側の面に向けて、前記分散ディスクの回転方向と同じ方向に斜めに貫通するよう構成した
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の分散機。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記上流側の面から前記下流側の面に向けて、外径が小さくなるテーパ状である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の分散機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、医薬品、化粧品、食品、電池、電子部品などの顔料分散ペーストなどを製造する過程で、分散対象物を供給しながら容器内に投入済みのメディアと一緒に混合しながら分散または粉砕させるメディア型の分散機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分散機として、メディア(例えば、ガラス、ジルコニアなどのビーズ)を用いて分散対象物を分散、撹拌または粉砕させるメディア式の分散機が知られている。例えば、分散機は、容器内の回転軸に分散用の複数のディスクを等間隔に備えている。ディスクは、外周に複数の突片を有し、厚み方向に貫通する貫通孔を有する。貫通孔は、ディスクの上流側から下流側の厚み方向にディスク回転方向と同方向に斜めに貫通している。この構成により、従来の分散機は、ディスクと容器の間から下流に流れた分散対象物およびメディアの一部を貫通孔の下流側の面から上流側の面に戻すように構成されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6634493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の分散機は、次のような問題点がある。先ず、ディスクの貫通孔を介してディスクの上流側の面にメディアを戻す力は、貫通孔を通過する分散対象物の流れよりも僅かに強い程度であるので、戻し力が作用するディスクの下流側の面の貫通孔の開口付近のメディアしか上流側の面に戻せない。それ故に、ディスク同士の間隙を狭くしてメディアを上流側に連続的に戻さなければ容器内にメディアを均等に分布させることができない。そこで、ディスク同士の間隙を狭くすることが考えられる。ディスク同士の間隙を狭くすると、隣接するディスクによる分散対象物の連続的な剪断によって生じる摩擦熱が容器とディスクの狭い間隙に蓄積され、分散対象物の物性を変質させるといった問題が生じる。この問題を解決するためにディスク同士の間隔を十分に確保する必要がある。
【0005】
また、大量の分散対象物を高速に処理するために容器内への短時間当たりの未処理の分散対象物の供給量を増加させた場合、分散対象物の圧送力が高くなる。すなわち、貫通孔を介してメディアを上流側に戻す力よりも貫通孔を通過する分散対象物の流れが強くなり、メディアが下流に偏在して排出口を閉塞するばかりでなく、メディアが排出口に停滞してその運動が阻害されるのでメディア同士の速度差による剪断(ズリ速度)やメディア同士の衝突による分散対象物の微粒子化(分散)の作用が得らない。すなわち、分散対象物の供給量の増加と処理能力はトレードオフの関係にあり、生産効率を高めることができないといった不都合が生じている。
【0006】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、容器内のメディアの分布を均一に保ちながら大量の分散対象物を高速に処理可能な分散機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような分散機を提供する。
【0008】
すなわち、容器内のメディアと当該容器の上流側に設けた投入部から投入した分散対象物を下流側に設けた排出部に向けて送りながらメディアとともに分散するメディア型の分散機であって、
前記下流側から前記上流側に向けて外径が大きくなるテーパを有する円錐台状の複数の分散ロータと、
複数の突片を外周に有するとともに、上流側の面から下流側の面に向かう複数の貫通孔を有する1または複数の分散ディスクと、
前記分散ロータおよび前記分散ディスクが回転可能に取り付けられる回転軸と、を備え
記分散ロータと前記分散ディスクを前記回転軸に交互に取り付けて構成した
ことを特徴とする分散機。
【0009】
この構成によれば、円錐台状の分散ロータは、外径の小さい端部よりも外径の大きい端部の周速が速くなる。それ故に、分散対象物の分散時に分散ロータの回転に伴うメディアに作用する遠心力とは別にテーパ状の各分散ロータの周りに分散するメディアに対して上流側に戻す力(遠心力の分力)が連続的に作用する。すなわち、上記構成の分散機は、等間隔に配置した分散ディスクのみでメディアを上流側に戻す力を間欠的にメディアに付与する従来の分散機に比べて、回転軸に連ねた複数の分散ロータの全体でメディアに上流側に戻す力を連続的に付与する。
【0010】
また、メディアは、分散ロータによる戻し力、分散ロータの回転に伴う遠心力および分散ディスクの貫通孔を上流から下流に通過した分散対象物の押圧の相乗効果により、分散ロータよりも大径の分散ディスク外周の突片にメディアが集まる。したがって、分散ディスクの回転に伴う分散対象物の撹拌中に、分散ディスクの突片にメディアが衝突して活発に運動するので、メディア同士の速度差による剪断やメディア同士の衝突による分散対象物の微粒子化の作用を効率よく得られる。
【0011】
分散対象物の撹拌中に微粒子化は維持されるので、分散効率が向上するとともに、メディアが、排出部に偏在することを抑制できるので、処理後の分散対象物を排出口から円滑に排出することができる。換言すれば、分散機は、メディアの分布を均一に保ちながら大量の分散対象物を高速に処理可能にする。
【0012】
さらに、円錐台状の分散ロータは、厚みの薄いディスクに比べて回転軸の軸芯方向に距離を稼ぐことができるので、容器と分散ロータの間隙が最も小さくなり剪断作用を発揮する各分散ロータの大径の端部同士の距離を十分に拡大することができる。したがって、剪断によって生じる摩擦熱が容器内に蓄積されないので、熱の影響による分散対象物の物性の変質を回避することができる。
【0013】
上記構成において、分散ロータは、外周面を有し、前記外周面には粗面が含まれていてもよいし、または、複数の溝が、外周面に沿って形成されており、上流から下流の方向に延びていてもよい。
【0014】
この構成によれば、分散ロータの外周面と分散対象物の摩擦抵抗が大きくなるので、撹拌効率が高まる。特に、分散ロータの回転によってメディアに作用する遠心力と上流側に戻す力の相互作用によって、メディアは分散ロータの大径部へと移動する。さらにメディアは、分散ロータの大径部から容器内で間隙が最も狭くなる領域となる分散ディスクの外周の突片へと移動する。したがって、分散対象物は、分散ディスクの外周の領域で剪断および微粒子化の作用を効率よく受ける。
【0015】
なお、上記構成において、前記分散ロータの上流側で複数の前記溝と前記分散ディスクの複数の前記貫通孔の各々が連通するよう構成することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、分散ディスクの貫通孔を通過した分散対象物が、分散ロータの溝に流れ込むので、分散ロータの回転抵抗が増して強く撹拌される。すなわち、分散対象物およびメディアに遠心力が作用し易くなり、分散ディスクの突片に向けてメディアをより確実に集めることができる。なお、「連通」とは、回転軸の軸芯方向から見て、分散ディスクの貫通孔の下流側の開口が、分散ロータの上流側の端面と接触した状態で、分散ロータの外周面に形成された溝と、少なくとも部分的に重なることをいう。
【0017】
また、上記構成において、前記貫通孔は、前記上流側の面から前記下流側の面に向けて、前記分散ディスクの回転方向と同じ方向に斜めに貫通するよう構成してもよい。或いは、前記貫通孔は、前記上流側の面から前記下流側の面に向けて、外径が小さくなるテーパ状であってもよい。
【0018】
この構成によれば、分散ロータの回転に伴って外周に沿って上流側に移動したメディアの一部が、分散ディスクの貫通孔を通過する。したがって、メディアが下流に偏在して排出部を閉塞するのをより確実に回避することができるとともに、メディアを各分散ディスクの外周の領域に戻すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、容器内のメディアの分布を均一に保ちながら分散対象物を高速に処理可能な分散機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る分散機の概略構成を示す断面図である。
図2】分散ロータの上流からの斜視図である。
図3】分散ロータの下流からの斜視図である。
図4】分散ディスクの正面図である。
図5】第1実施形態の分散機における分散処理時の分散対象物の流れとメディアの移動を示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る分散機の概略構成を示す断面図である。
図7】遠心ロータの正面図である。
図8】遠心ロータの背面図である。
図9】遠心ロータの上流からの斜視図である。
図10】遠心ロータの下流からの斜視図である。
図11】第2実施形態の分散機における分散処理時の分散対象物の流れとメディアの移動を示す模式図である。
図12】変形例の分散機の概略構成を示す断面図である。
図13】撹拌ロータの正面図である。
図14】変形例の遠心ロータの前方からの斜視図である。
図15】変形例の遠心ロータの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るメディア型の分散機の一実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態の分散機では、メディアとして例えばジルコニアビーズを用いて分散対象物を混合して分散させる分散機(例えばビーズミル)について説明するが、本発明は分散機としてだけでなく、粒化対象材を細かく砕く粉砕機としても利用することができる。なお、ビーズはメディアの一例であり、分散対象物の種類、粒子の硬さ、粒子径、投入される溶媒(原料ペースト)の粘度や比重などに応じて、適宜に選択する。
【0022】
分散機1は、図1に示すように、横型の分散機である。この分散機1は、容器2および回転軸3を備え、回転軸3に複数の分散ロータ4および複数の分散ディスク20が取り付けられている。
【0023】
容器2は、略密閉された円筒状のタンクである。容器2の一方の端面側に分散対象物を内部に投入する投入部5を有し、この端面に対向する他方の端面側に排出部6を有する。
【0024】
投入部5は、容器内部と連通する供給管7を接続して構成している。なお、供給管7は、その上流側に分散対象物を圧送するポンプなどが接続されている。
【0025】
排出部6は、ギャップセパレータ8および排出管9から構成されている。ギャップセパレータ8は、容器2の内部を圧送されて最下流に到達した処理済みの分散対象物に含まれるメディアおよび処理済みの分散対象物以外の物(例えば、メディアの破片など)を分離するためのものである。すなわち、ギャップセパレータ8は、回転軸3に設けた回転ロータ10と回転ロータ10の外周を囲う固定ステータ11とから構成されている。回転ロータ10と固定ステータ11の間隙を調整することにより、メディアなどが間隙を通過しないようにしている。なお、ギャップセパレータ8は、本実施形態の一例であり、メディアと分散対象物を分離することができるものであればよく、例えばスクリーン機構であってもよい。
【0026】
排出管9は、ギャップセパレータ8によって分離された分散対象物を分散機1の外部に排出する。本実施形態では、回転軸3を回転可能に支持するメカニカルシール12とメカニカルシール12を固定する固定壁13とによって構成されている。
【0027】
なお、容器2は、外周にジャケット14を備えている。ジャケット14は、その内部に形成された流路に冷媒または温水などを供給および循環させることにより、容器2の内部の温度を調整する。
【0028】
回転軸3は、排出部側からメカニカルシール12を介して容器2の内部に挿通され、投入部側まで延びている。すなわち、回転軸3は、排出部側で片持ち支持されている。また、回転軸3は、基端側で図示しないモータなどの駆動源に直接または間接的に連結されており、コントローラを介して回転を制御されている。
【0029】
分散ロータ4は、図1ないし図3に示すように、円錐台状をしている。分散ロータ4の外周面には複数の溝15が形成されている。溝15は、外周面の上流から下流の方向に延びている。さらに、溝15は、分散ロータ4の外周に等間隔に形成されている。複数の分散ロータ4の各々は、外径の大きい端部を上流側に向け、分散ロータ4を回転軸3に連ねて取り付けたとき、上流側の分散ロータ4の小さい外径よりも下流側の分散ロータ4の大きい外径が大きくなるように構成されている。なお、分散ロータ4の中央には、回転軸3に取り付けるための貫通孔16が設けられている。
【0030】
分散ディスク20は、図4に示すように、分散ロータ4の外径の大きい端部よりも大径であり、外周に複数の突片21を有する。
【0031】
突片21は、径外方向に延在する略台形状である。本実施形態の突片21は、分散ディスク20の回転方向Rと反対向きの斜めに延びる第1辺21aと、第1辺21aから円周方向へ延びる第2辺21bと、第2辺21bから分散ディスク20の中心方向に向けて延びる第3辺21cから構成されている。また、第1辺21aと第2辺21bは緩やかな湾曲であり、これらが滑らかに連続している。また、隣り合う突片21は、一の突片21の第3辺21cと、他の突片21の第1辺21aとが滑らかに連続している。
【0032】
また、分散ディスク20には、各突片21からディスクの中心方向に少しずらした位置に貫通孔22が形成されている。
【0033】
貫通孔22は、メディアおよび分散対象物を通過させるための孔である。本実施形態の貫通孔22は、分散ディスク20の上流側の面から下流側の面に向けて、分散ディスク20の回転方向Rと同方向に斜めに貫通している。また、分散ディスク20の下流側の面の貫通孔22の開口のそれぞれは、分散ロータ4の外径の大きい端面と接触した状態で、分散ロータ4の外周面に形成された複数の溝15のそれぞれと重なる。すなわち、分散ロータ4の上流側で複数の溝15と分散ディスク20の複数の貫通孔22の各々が連通するよう構成されている。
【0034】
なお、分散ディスク20の中央には、回転軸3に取り付けるための貫通孔23が形成されている。
【0035】
<動作説明>
次に上記構成を有する分散機1の動作について説明する。
【0036】
予めメディアが投入されている容器2に供給管7から分散対象物の投入を開始する。ポンプによって下流側に圧送される分散対象物は、下流に向けて流れる過程で複数の分散ロータ4および複数の分散ディスク20の回転によって撹拌、分散される。このとき、図5に示すように、分散対象物は、容器2の内周壁に沿って下流に向かう大きな流れ(以下、適宜に「本流」と称す)と、分散ディスク20の貫通孔22を通過する小さな流れ(以下、適宜に「副流」と称す)とからなる。ここで、分散対象物の流速は、副流よりも本流が速い。
【0037】
本実施形態では、分散処理時に分散ロータ4および分散ディスク20の協働により、本流における容器2の内周壁と各分散ディスク20の外周との間の領域(以下、適宜に「分散領域」と称す)にメディアMが、均一に分布する。
【0038】
先ず、分散ディスク20の外径よりも小さい分散ロータ4の各々が、投入部側に向けて外径の大きくなるテーパ状の外周を有するので、分散ロータ4の外径の小さい端部から外径の大きい端部側に向かうにつれて周速がしだいに速くなる。このとき、分散ロータ4の回転時に溝15との摩擦抵抗により分散対象物およびメディアMに作用する遠心力が、隣り合う分散ディスク20の間で連続的に作用している。
【0039】
また、テーパ状の分散ロータ4の外周で生じる周速の差によって遠心力とは別にテーパ状の各分散ロータ4の周りに存するメディアMに対して上流側に戻す力(遠心力の分力)が連続的に作用する。また、隣り合う分散ディスク20の間に存するメディアMが、分散ディスク20の貫通孔22を通過する分散対象物の副流に僅かな力で逆らいながら上流に移動しつつ、分散ロータ4の回転に伴う遠心力によってその大半が、容器2の内周壁と各分散ロータ4の外径の最大となる上流側の分散領域へと回転しながら引き寄せられる。隣り合う分散ディスク20の間におけるメディアMの移動により、メディアMは、各分散領域で分散ディスク20から容器2の内周壁に向けて放射状に広がりながら回転し続けている。すなわち、メディアMは、各分散領域で均一に分布している。
【0040】
メディアMの大半が分散領域に移動する一方で、僅かな数のメディアMが、分散ディスク20の貫通孔22を通過して上流側に戻される。
【0041】
したがって、分散対象物のみが下流側に流れ、ギャップセパレータ8を介して排出管9から排出される。
【0042】
上記構成の分散機1によれば、分散ロータ4および分散ディスク20の協働によりメディアMに上流側に戻す力を連続的に発生させるので、この戻す力と回転に伴う遠心力の相互作用により、本流の流れを乱すことなく各分散ディスク20の外周側の分散領域にメディアMを移動させ、均一に分布させながら分散対象物の分散処理を継続的に行うことができる。
【0043】
さらに、隣り合う分散ディスク20の間に分散ロータ4を備えているので、分散ディスク間の距離が拡大される。したがって、分散ディスク20によって分散対象物を剪断した際に生じる摩擦熱が効率よく分散されるので、摩擦熱による分散対象物の物性の変質を抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態の構成に、さらに排出部に対向するように回転軸に遠心ロータを備えた構成である(図6を参照)。したがって、異なる構成について詳述し、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付すに留めて説明する。
【0045】
遠心ロータ30は、図6ないし図10に示すように、中央から分散対象物を最下流の容器端面側に導きながら最下流に到達した分散対象物の一部を容器2の端面および内周壁に沿って上流側に戻すように構成されている。遠心ロータ30は、円柱状のロータ31の排出部側の一端にロータ31の外径よりも大きい外径を有する大径部32と、大径部32の外周側にロータ31を囲う外囲部33と、ロータ31と外囲部33の間に大径部32の厚み方向に貫通する貫通孔34を有する。
【0046】
ロータ31は、円柱状であり、分散ディスク20に形成された貫通孔22の一部を覆うサイズの直径を有する。すなわち、ロータ31は、外周面に沿って上流から下流方向に延びる複数の溝を形成されている。
【0047】
溝35は、分散ディスク20の貫通孔22と連通するように、貫通孔22と同じ間隔でロータ31の外周面に形成されている。また、溝35は、分散ディスク20から後述する撹拌ブロック33Aの手前まで形成されている。
【0048】
大径部32は、その上流側の面がロータ31を挟んで分散ディスク20の下流側の面と対向するとともに、大径部32の下流側の面が排出部側の容器2の端面と対向するよう構成されている。すなわち、大径部32の外径は、分散ディスク20の外径と略同じであり、容器2の内周壁と大径部32の間隙が、容器2の内周壁と分散ディスク20の間隙と略同じである。
【0049】
また、大径部32は、ロータ31の直径と同じ直径の平面部32Aと、平面部32Aから外周にかけて上流に向かって僅かに傾斜している傾斜部32Bとから成る。なお、大径部32の下流側の面の中央は、ギャップセパレータ8の回転ロータ10の先端が嵌合して連結固定される凹部32Cが形成されている。さらに、凹部32Cの中央には、回転軸3に取り付けるための貫通孔が形成されている。
【0050】
傾斜部32Bの傾斜角度は、容器2の端面の傾斜角度と同じ、或いは回転軸3から容器2の内周壁に向かうに連れて容器2端面と傾斜部32Bの間隙が徐々に広がるように適宜に設定される。
【0051】
平面部32Aと傾斜部32Bの間にはロータ31の外周を囲う直径を有するリング状溝36が、厚み方向に形成されている。
【0052】
傾斜部32Bには平面部32Aに形成されたリング状溝36および隣り合う外囲部33の間に形成された小溝38に連通する小溝37が等間隔に形成されている。
【0053】
外囲部33は、図9示すように、傾斜部32B(下流側の面)の反対側の上流側の面から上流に向けて突き出た複数の撹拌ブロック33Aによって構成されている。すなわち、撹拌ブロック33Aは、図7ないし図9に示すように、傾斜部32Bの上流側の面に等間隔に設けられており、略扇形状をしている。撹拌ブロック33Aは、外側面に大溝39が形成されている。さらに、撹拌ブロック33Aは、ロータ31と対向する内面をテーパ状に形成されている。すなわち、撹拌ブロック33Aは、上流側でロータ31との間隙が広く、下流に向かうに連れて狭くなっている。
【0054】
貫通孔34は、排出部6に向けて分散対象物を送り出すためのものであり、大径部32の径方向における大径部32のロータ31と外囲部33との間に当該大径部32の厚み方向に貫通している。さらに、貫通孔34は、大径部32の下流側の面に形成されたリング状溝36と連通している。なお、貫通孔34は、本実施形態では、円弧状の長孔であるが、この形状に限定されることなく、楕円、円形など形状およびサイズを適宜に変更可能である。
【0055】
<動作説明>
次に上記構成を有する分散機1の動作について説明する。
【0056】
予めメディアが投入されている容器2に供給管7から分散対象物の投入を開始する。ポンプによって下流側に圧送される分散対象物は、下流に向けて流れる過程で複数の分散ロータ4および複数の分散ディスク20の回転によって撹拌、分散される。このとき、図11に示すように、分散対象物は、容器2の内周壁に沿って下流に向かう大きな流れ(以下、適宜に「本流」と称す)と、分散ディスク20の貫通孔22を通過する小さな流れ(以下、適宜に「副流」と称す)とからなる。ここで、分散対象物の流速は、副流よりも本流が速い。
【0057】
本実施形態では、分散処理時に分散ロータ4および分散ディスク20の協働により、本流における容器2の内周壁と各分散ディスク20の外周との間の領域(以下、適宜に「分散領域」と称す)にメディアMが、均一に分布する。
【0058】
先ず、分散ディスク20の外径よりも小さい分散ロータ4の各々が、投入部側に向けて外径の大きくなるテーパ状の外周を有するので、分散ロータ4の外径の小さい端部から外径の大きい端部側に向かうにつれて周速がしだいに速くなる。このとき、分散ロータ4の回転時に溝15との摩擦抵抗により分散対象物およびメディアMに作用する遠心力が、隣り合う分散ディスク20の間で連続的に作用している。
【0059】
したがって、テーパ状の分散ロータ4の外周で生じる周速の差によって遠心力とは別にテーパ状の各分散ロータ4の周りに存するメディアMに対して上流側に戻す力(遠心力の分力)が連続的に作用する。また、隣り合う分散ディスク20の間に存するメディアMが、分散ディスク20の貫通孔22を通過する分散対象物の副流に僅かな力で逆らいながら上流に移動しつつ、分散ロータ4の回転に伴う遠心力によってその大半が、容器2の内周壁と各分散ロータ4の外径の最大となる上流側の分散領域へと回転しながら引き寄せられる。隣り合う分散ディスク20の間におけるメディアMの移動により、メディアMは、各分散領域で分散ディスク20から容器2の内周壁に向けて放射状に広がりながら回転し続けている。すなわち、メディアMは、各分散領域で均一に分布している。
【0060】
本流を成す分散対象物は、遠心ロータ30の上流側の端面と接触した状態で一緒に回転する分散ディスク20に到達すると、容器2の内周壁側から回転軸側へと進路が変更され、分散ディスク20の貫通孔22を通過する。すなわち、遠心ロータ30は、その回転により排出部側から容器2の端面および内周壁に沿って上流に戻す撹拌流を生じさせ、分散ディスク20と容器2の内周壁の間を通過しようとする分散対象物の本流に撹拌流を衝突させて容器2と分散ディスク20の間からの分散対象物の進入を抑えている。すなわち、撹拌流の衝突によって本流の流れが変更されている。
【0061】
なお、分散対象物の本流に衝突させる撹拌流は、遠心ロータ30の大径部32および外囲部33によって生じる撹拌流に、円柱状のロータ31によって生じる撹拌流を合成したものである。
【0062】
大径部32および外囲部33の回転によって生じる撹拌流は、ギャップセパレータ8の手前で分散対象物に含まれるメディアMを容器2の内周壁に沿って上流側に戻すとともに、容器2の内周壁と分散ディスク20との間を通過しようとする分散対象物の本流の押圧以上の戻し力を有する。
【0063】
円柱状のロータ31の回転によって生じる撹拌流は、円柱状のロータ31に形成された溝35と分散対象物との摩擦抵抗によって生じる。この撹拌流は、分散ディスク20の貫通孔22を通過する分散対象物の流れよりも小さくなるよう設定されている。すなわち、分散ディスク20を通過した分散対象物が、遠心ロータ30の貫通孔34を通過するのを阻害することなく、分散ディスク20の貫通孔22を通過してきたメディアMに遠心力を付与し、容器2の内周壁に沿って流れる撹拌流にメディアMを送り込んでいる。
【0064】
本流と衝突する撹拌流には排出部側に到達したメディアMが含まれており、さらに衝突領域は分散ディスク20の外周の分散領域でもある。したがって、排出部側に到達したメディアは、上流の分散領域に確実に戻される。
【0065】
撹拌流によってメディアMの分離された分散対象物のみが、ギャップセパレータ8を通過して排出部6から分散機1の外部に排出される。
【0066】
上記構成の分散機1によれば、分散ロータ4および分散ディスク20の協働によりメディアMを上流側に戻す力を連続的に発生させるので、この戻す力と回転に伴う遠心力の相互作用により、本流の流れを乱すことなく各分散ディスク20の外周側の分散領域にメディアMを移動させ、均一に分布させながら分散対象物の分散処理を継続的に行うことができる。
【0067】
また、隣り合う分散ディスク20の間に分散ロータ4を備えているので、分散ディスク間の距離が拡大される。したがって、分散ディスク20によって分散対象物を剪断した際に生じる摩擦熱が効率よく分散される。したがって、摩擦熱による分散対象物の物性の変質を抑制することができる。
【0068】
さらに、分散機1は、最下流側において容器2の内周壁と分散ディスク20との間隙を通過しようとする本流に遠心ロータ30によって発生させた撹拌流を衝突させるので、その間隙への分散対象物の通過を抑制し、かつ、進路を回転軸側へと変更させる。その後、分散機1は、分散ディスク20の貫通孔22および遠心ロータ30の貫通孔34に分散対象物を通過させてギャップセパレータ8から排出する一方で、遠心ロータ30によって生じる撹拌流によって排出部6まで到達したメディアMを分散ディスク20の分散領域に戻すことができる。したがって、メディアMによるギャップセパレータ8の閉塞が抑制されるので、分散対象物の排出効率が高まる。上記構成の分散機1は、これらの相乗効果により単位時間当たりの分散対象物の処理量を増加させることができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能である。
【0070】
(1)上記構成の分散機1において、回転軸3の先端に撹拌ロータを備えた構成であってもよい。撹拌ロータ40は、図12および図13に示すように、円柱状のロータ41の外周および軸芯方向に等間隔に複数のピン42が設けられている。すなわち、軸先端側の1列目のピン42の間に2列目のピン42が位置し、1列目と2列目の各ピン42の位置が軸方向で重ならないように構成されている。
【0071】
この構成によれば、上流側の回転中心で滞留しがちなメディアMが、撹拌ロータ40の回転によりピン42と衝突し、本流に向けて弾き飛ばされる。したがって、容器2に投入したメディアMの全てを分散処理に利用することができる。
【0072】
(2)上記構成の分散機1は、遠心ロータ30を次のようい構成してもよい。遠心ロータ300は、図14および図15に示すように、円錐台状のロータ310の排出部側の一端にロータ310の外径よりも大きい外径を有する大径部320と、大径部320の外周側にロータ310を囲う外囲部330と、ロータ310と外囲部330の間に大径部32の厚み方向に貫通する貫通孔340を有する。
【0073】
円錐台状のロータ310は、上流側の一端の上面に向けて先細りとなる円錐台状である。円錐台状のロータ310の上流側の面は、分散ディスク20に形成された貫通孔22と重ならい直径に設定されており、分散ディスク20の下流側の面と接触している。
【0074】
大径部320の下流側の面は、排出部6に向けて突き出た湾曲形状をしている。すなわち、回転軸3の中心から容器2の内周壁に向かうに連れて容器2の端面と下流側の面との間隙が徐々に広がるように設定される。
【0075】
外囲部330は、大径部320の上流側の面から上流側に向けて立設された複数の翼によって構成されている。すなわち、翼は、大径部320の上流側の面に等間隔に設けられており、軸芯方向から正面視したときに回転方向の前端に向かうに連れて厚みが薄くなるテーパ状である。また、外囲部330は、側面視したときに、略平行四辺形であり、回転方向の前端および後端の各々が、大径部320の基端から先端にかけて後ろ向きに傾斜している。
【0076】
貫通孔340は、排出部6に向けて分散対象物を送り出すためのものであり、円錐台状のロータ310と翼の間において大径部320の厚み方向に貫通している。なお、貫通孔340は、本実施形態では、翼の幅と略同じ長さの円弧状の長孔であるが、この形状に限定されることなく、楕円、円形など適宜に設定を変更可能である。
【0077】
この構成によれば、遠心ロータ300は、上記実施形態の遠心ロータ30と同様に容器2の内周壁と分散ディスク20との間隙を通過しようとする本流に衝突させる撹拌流を発生させることができる。また、この撹拌流は、ギャップセパレータ8の手間に到達したメディアMを一緒に上流側に戻す。したがって、メディアMによるギャップセパレータ8の閉塞を抑制することができるとともに、撹拌流で戻したメディアMを分散ディスク20の分散領域で再利用することもできる。
【0078】
なお、大径部320の下流側の面は、上記実施形態と同様にリング状溝や中心側から放射状に複数の溝を形成した構成であってもよい。溝の本数およびサイズは、分散対象物の物性および容器2のサイズに応じて適宜に設定変更することができる。
【0079】
また、円錐台状のロータ310の外周面に溝を設けてもよい。この場合、上記実施形態と同様に、円錐台状のロータ310の上流側の面は、分散ディスク20の下流側の面と接触した状態で分散ディスク20に形成された貫通孔22の一部を覆うサイズの直径を有し、円錐台状のロータ310の溝と貫通孔22とが連通するように構成すればよい。
【0080】
(3)上記構成の分散機1において、分散ディスク20に形成された貫通孔22は、上流側の面から下流側の面に向けて垂直に形成してもよいし、または、上流側の面から下流側の面に向けて、分散ディスク20の回転方向Rと逆方向に斜めに貫通するよう形成してもよい。さらに、貫通孔22は、円形以外に楕円や長孔であってもよい。
【0081】
(4)上記構成の分散機1において、分散ディスク20に形成された貫通孔22は、上流側の面から下流側の面に向けて垂直に形成してもよい。また、貫通孔22は、円形以外に楕円や長孔であってもよい。
【0082】
(5)上記の各実施形態の分散機1は、回転軸3が片持ち水平保持された横型について説明しているが、回転軸3が垂直または傾斜した縦型としても利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 分散機
2 容器
3 回転軸
4 分散ロータ
5 投入部
6 排出部
7 供給管
8 ギャップセパレータ
9 排出管
15 溝
20 分散ディスク
21 突片
22 貫通孔
30 遠心ロータ
31 ロータ
32 大径部
33 外囲部
33A 撹拌ブロック
34 貫通孔
35 溝
【要約】
【課題】容器内のメディアの分布を均一に保ちながら分散対象物を高速に処理可能なメディア型の分散機を提供する。
【解決手段】 分散機1は、横型の分散機である。この分散機1は、この分散機1は、容器2および回転軸3を備え、回転軸3に複数の分散ロータ4および複数の分散ディスク20が取り付けられている。分散ロータ4は、下流から上流に向けて外径が大きくなるテーパを有する円錐台状である。分散ディスク20は、複数の突片21を外周に有するとともに、上流側の面から下流側の面に向かう複数の貫通孔を有する。分散機1は、分散ロータ4の上流側と下流側を分散ディスク20で挟むように分散ロータ4と分散ディスク20を回転軸3に交互に取り付けて構成している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15