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特許7111405巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットおよび水門の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットおよび水門の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20220726BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01N27/83
G01B17/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021519597
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 CN2018114767
(87)【国際公開番号】W WO2020073407
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】201811173150.7
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518012559
【氏名又は名称】河海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】廖 迎▲ディ▼
(72)【発明者】
【氏名】婁 保東
(72)【発明者】
【氏名】陳 達
(72)【発明者】
【氏名】趙 亜州
(72)【発明者】
【氏名】侯 利軍
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106087(JP,A)
【文献】特開2008-020319(JP,A)
【文献】特開2006-242762(JP,A)
【文献】特開2004-177177(JP,A)
【文献】特開2001-264300(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104698074(CN,A)
【文献】中国実用新案第202141947(CN,U)
【文献】中国実用新案第203350226(CN,U)
【文献】特開昭62-113692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-27/9093
G01B 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査機構を含み、
前記検査機構はキャリッジを含み、キャリッジの底部に案内輪および2つの駆動輪が設けられ、キャリッジに制御機、測距位置検出モジュールおよび巨大磁気抵抗素子に基づく磁気探傷センサが設けられ、
前記磁気探傷センサは、励磁機構、巨大磁気センサおよび2つの磁気コンセントレーターを含み、励磁機構は、逆U字形の導磁性接続体および2つの励磁機を含み、前記駆動輪は、材質がNdFeB永久磁石であり、励磁機構の励磁機として機能し、導磁性接続体の両端にそれぞれ励磁機としての駆動輪が設けられ、2つの励磁機によって励磁機構の2つの磁極が形成され、2つの駆動輪は第1モータによって駆動され、前記巨大磁気センサは2つの磁気コンセントレーターの間に位置し、
前記測距位置検出モジュールは、キャリッジに垂直に設けられる2つの超音波センサを含み、一方の超音波センサがキャリッジの一端に設けられ、検査ロボットから水門の側辺までの距離を測定するために用いられ、他方の超音波センサがキャリッジの底部に設けられ、検査ロボットから水門の底部までの距離を測定するために用いられ、
前記第1モータ、巨大磁気センサおよび超音波センサはいずれも制御機に信号接続される、
ことを特徴とする巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項2】
上位機をさらに含み、制御機と上位機はケーブルを介して接続され、シリアル通信が採用されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項3】
接続フレームと回転軸をさらに含み、励磁機としての駆動輪が接続フレームを介して導磁性接続体の両端に連設され、2つの駆動輪は回転軸を介して接続され、接続フレームの上端は導磁性接続体に固定接続され、接続フレームの下端は駆動輪の回転軸に回転可能に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項4】
前記駆動輪は、タービンウォームにより駆動され、タービンウォームは、キャリッジの底部に固定されるケーシング内に取り付けられ、第1モータの出力軸は、カップリングを介してウォームに接続され、タービンの回転軸の両端は、ケーシングの外に延出してそれぞれ対応する駆動輪に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項5】
前記巨大磁気センサおよび2つの磁気コンセントレーターがケーシングに取り付けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項6】
前記磁気コンセントレーターの材質がNiFe合金である、
ことを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項7】
ブレードおよびブラシアセンブリを備える掃除機構をさらに含み、ブレードは、キャリッジの前端に斜めに設けられ、水門上にある汚泥、苔癬を掃除するために用いられ、
前記ブラシアセンブリは、第2モータ、回動軸、回転盤およびブラシを含み、第2モータがキャリッジに固定設置され、第2モータの出力軸がカップリングを介して回動軸に接続され、回動軸の他端が回転盤に固定接続され、ブラシが回転盤に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項8】
前記ブレードは、キャリッジにヒンジ接続され、ブレードの上面が1つのバネの一端に接続され、ブレードの下面がもう1つのバネの一端に接続され、2つのバネの他端がいずれもキャリッジに接続される、
ことを特徴とする請求項7に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項9】
前記巨大磁気センサは、励磁機構の2つの磁極の間に位置し、複数の巨大磁気抵抗素子を組み合わせてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【請求項10】
検査対象水門の上端の1つの頂点に請求項1から9のいずれか一項に記載された水門用検査ロボットを配置し、前記2つの超音波センサにより、該水門用検査ロボットから水門他方の側辺までの距離および該水門用検査ロボットから水門の底部までの距離である水門全体のサイズを測定し、測定した情報を前記制御機に送信し、前記制御機における計算モジュールにより、該頂点を座標原点とし、水門の幅方向をX軸とし、水門の高さ方向をY軸として直交座標系を確立するステップと、
前記制御機における計算モジュールにより該水門用検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するように該水門用検査ロボットを制御し、検査中、磁界を媒介物として前記励磁機構で水門を磁化させ、水門の表面に欠陥がある場合、局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成されており、前記巨大磁気センサを用いて前記励磁機構に同期して移動させ、異常な磁電信号を前記制御機に送信させ、前記制御機によりこの時前記2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて該水門用検査ロボットの詳細な位置である欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信するステップと、を含む、
ことを特徴とする水門の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水門検査の技術分野に関し、特に巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットおよび水門の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水門の漏水は水理構造物において一般的な現象であり、大型ダム、川水門から小型ダム、暗渠水門まで、漏水しない水門はほとんど存在しない。こうして人々は「漏水しない水門は存在しない」と思うようになり、水門の漏水を当たり前のことのように思い、あまり重視していない。しかし水門の漏水による弊害と損失は遥かに想像を超え、水理構造物や水防の安全に危害が及ぶことさえある。
【0003】
現在、中国国内外の水門漏水検査では、依然として従来の巡回点検と水門外観検査の組み合わせにより判断を行っている。巡回点検と外観検査により、基本的に水門漏水の原因の究明が可能であるが、このような従来の方法にはまだ様々な欠点がある。例えば、水面下にある止水装置の漏水検査が困難であり、漏水程度や詳細な漏水位置を判別することができない。検査員が漏水を発見した時、漏水がすでに深刻になった場合が多く、止水装置は破壊され、正常に止水できず、結果として止水装置を新たに交換しなければならず、水門の正常な運転に多大な損害をもたらすことになる。また、船行用の水門に漏水が発生すると、水門チャンバの充水・放水時間に影響があり、通航時間の延長と通航効率の低下を招く。漏水が深刻で修理を必要とする場合、通航を停止して大規模な修理を行う必要があり、正常な通航に影響があり、経済的に大きな損失が生じる。
【0004】
これらの問題に対して、放射線探傷装置、磁粉探傷装置など様々な検査装置が現れているが、放射線探傷は人体に害を及ぼしがちであり、磁粉探傷および超音波探傷は効率が低く、汚染も伴う。また、従来の検査装置は検査プローブが1つしかなく、検査効率が低く、検査精度が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み、巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットおよび検査方法を提供し、従来技術の水門用検査ロボットの構造が複雑で、使用が不便で、検査精度が低いという問題を解決することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0007】
巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットであって、上位機および検査機構を含み、前記検査機構はキャリッジを含み、キャリッジの底部に案内輪および2つの駆動輪が設けられ、キャリッジに制御機、測距位置検出モジュールおよび巨大磁気抵抗素子に基づく磁気探傷センサが設けられ、
前記磁気探傷センサは、励磁機構、巨大磁気センサおよび2つの磁気コンセントレーターを含み、励磁機構は、逆U字形の導磁性接続体を含み、導磁性接続体の両端に駆動輪として励磁機が設けられ、2つの励磁機によって励磁機構の2つの磁極が形成され、駆動輪は、NdFeB永久磁石であり、導磁性接続体は、接続フレームの上端に固定接続され、接続フレームの下端は駆動輪に回転可能に接続され、2つの駆動輪は、第1モータによって駆動され、前記巨大磁気センサは、2つの磁気コンセントレーターの間に位置し、
前記測距位置検出モジュールは、キャリッジの底部に垂直に設けられる2つの超音波センサを含み、一方の超音波センサは、検査ロボットから水門の側辺までの距離を測定するために用いられ、他方の超音波センサは、検査ロボットから水門の底部までの距離を測定するために用いられる。
【0008】
前記第1モータ、第2モータ、巨大磁気センサおよび超音波センサと制御機とは、電気的に接続され、制御機と上位機はケーブルを介して接続され、シリアル通信が採用されており、
検査ロボットに防水処理が施されている。
【0009】
制御機における計算モジュールは、検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、検査中、励磁機構は、磁界を媒介物として水門を磁化させる。水門の表面に欠陥がある場合、該局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成される。巨大磁気抵抗素子で構成される巨大磁気センサは、励磁機構に同期して移動するとともに、異常な磁電信号を出力する。制御機は、この時2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて検査ロボットの詳細な位置、即ち欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信する。
【0010】
検査対象水門は、巨大磁気抵抗素子に基づく磁気探傷センサの励磁機構の磁極側に位置し、NdFeB永久磁石は、励磁機として水門を磁化させる。水門に欠陥がない場合、磁力線は水門を均一に通過し、漏れ磁束はない。水門の内部または表面に欠陥がある場合、漏れ磁束が生じる。磁気コンセントレーターは、空間的に分布される漏洩磁界を収集して、巨大磁気抵抗素子の検査通路に導入し、巨大磁気抵抗素子は、磁気信号を電気信号に変換して制御機に送信する。
【0011】
該検査ロボットを使用することにより、操作がしやすくなり、測定の空間識別力とカバー範囲が改善される。磁界の収集、誘導および均一化を実現する磁気コンセントレーターが増設され、検査感度が高く、検査結果の精度が高く、微弱な磁界を測定でき、安定性に優れる。
【0012】
さらなる改良として、前記磁気コンセントレーターは、NiFe合金である。
【0013】
さらなる改良として、ブレードおよびブラシアセンブリを備える掃除機構をさらに含む。ここでブレードは、キャリッジの前端に斜めに設けられ、水門上にある汚泥、苔癬を掃除し、汚泥、苔癬等が検査結果に与える影響を防止するために用いられる。
【0014】
前記ブラシアセンブリは、第2モータ、回動軸、回転盤およびブラシを含み、第2モータがキャリッジに固定設置され、第2モータの出力軸がカップリングを介して回動軸に接続され、回動軸の他端が回転盤に固定接続され、ブラシが回転盤に接続される。制御機は、第2モータが回転盤を回動駆動するように制御し、これによりブラシは回転盤とともに回動し、水門の表面をブラシ洗浄するようになる。
【0015】
さらなる改良として、前記ブレードは、キャリッジにヒンジ接続され、ブレードの上面が1つのバネの一端に接続され、ブレードの下面がもう1つのバネの一端に接続される。2つのバネの他端がいずれもキャリッジに接続され、バネは伸張した状態にあり、緩衝作用を奏する。
【0016】
さらなる改良として、前記駆動輪は、タービンウォームにより駆動され、タービンウォームは、キャリッジの底部に固定されるケーシング内に取り付けられる。第1モータの出力軸は、カップリングを介してウォームに接続され、タービンの回転軸の両端は、ケーシングの外に延出してそれぞれ対応する駆動輪に接続される。タービンウォームアセンブリの動作が安定し、騒音が低い。
【0017】
さらなる改良として、前記巨大磁気センサおよび2つの磁気コンセントレーターが、ケーシングに取り付けられる。
【0018】
さらなる改良として、前記巨大磁気センサは、励磁機構の2つの磁極の間に位置し、複数の巨大磁気抵抗素子を組み合わせてなる。
【0019】
巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットを用いた検査方法は、
検査対象水門の上端の1つの頂点にロボットを配置し、2つの超音波センサにより測定し、ロボットから水門他方の側辺までの距離およびロボットから水門の底部までの距離である水門全体のサイズを測定し、該情報を制御機に送信し、制御機における計算モジュールにより、該頂点を座標原点とし、水門の幅方向をX軸とし、水門の高さ方向をY軸として直交座標系を確立するステップ1と、
制御機における計算モジュールにより検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、検査中、磁界を媒介物として励磁機構で水門を磁化させ、水門の表面に欠陥がある場合、該局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成されており、巨大磁気抵抗素子で構成される巨大磁気センサを励磁機構に同期して移動させるとともに、異常な磁電信号を出力させ、制御機によりこの時2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて検査ロボットの詳細な位置、即ち欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信するステップ2と、を含む。
【0020】
さらなる改良として、ロボットが水門の表面に沿って走行する過程において、ブレードは、水門の表面の汚泥と苔癬を掃除し、制御機は、第2モータが回転盤を回動駆動するように制御し、これによりブラシは回転盤とともに回動し、水門の表面をブラシ洗浄するようになる。
【0021】
さらなる改良として、前記ステップ2では、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、前記設定された経路は、水門の高さ方向に沿って上方に一層ずつ移動するように設定する。
【発明の効果】
【0022】
従来技術に比べて、本解決手段は以下の有益な効果を有する。
【0023】
制御機における計算モジュールは、検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、検査中、励磁機構は、磁界を媒介物として水門を磁化させる。水門の表面に欠陥がある場合、該局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成される。巨大磁気抵抗素子で構成される巨大磁気センサは、励磁機構に同期して移動するとともに、異常な磁電信号を出力する。制御機は、この時2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて検査ロボットの詳細な位置、即ち欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信する。該検査ロボットを使用することにより、操作がしやすくなり、測定の空間識別力とカバー範囲が改善され、磁界の収集、誘導および均一化を実現する磁気コンセントレーターが増設され、検査感度が高く、検査結果の精度が高く、微弱な磁界を測定でき、安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットの構成図である。
図2図1の右側面図である。
図3】第2モータおよびタービンウォームの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明についてさらに説明する。
【0026】
実施例1
図1から図3に示すように、巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットであって、上位機(図示せず)および検査機構を含む。前記検査機構は、キャリッジ1を含み、キャリッジの底部に案内輪2および2つの駆動輪6が設けられる。キャリッジに、制御機(図示せず)、測距位置検出モジュールおよび巨大磁気抵抗素子に基づく磁気探傷センサが設けられる。
【0027】
前記磁気探傷センサは、励磁機構、巨大磁気センサ9および2つの磁気コンセントレーター8を含む。励磁機構は、逆U字形の導磁性接続体5および2つの励磁機を含む。前記駆動輪6は、材質がNdFeB永久磁石であり、励磁機構の励磁機として機能し、励磁機としての駆動輪が接続フレーム7を介して導磁性接続体5の両端に設けられる。2つの励磁機によって励磁機構の2つの磁極が形成される。導磁性接続体5は、接続フレーム7の上端に固定接続される。接続フレーム7の下端は、駆動輪6に回転可能に接続され、2つの駆動輪は、第1モータ3によって駆動され、前記巨大磁気センサ9は、2つの磁気コンセントレーター8の間に位置する。
【0028】
前記測距位置検出モジュールは、キャリッジの底部に垂直に設けられる2つの超音波センサ16を含む。その1つは、検査ロボットから水門の側辺までの距離を測定するために用いられ、もう1つは、検査ロボットから水門の底部までの距離を測定するために用いられる。
【0029】
前記第1モータ3、巨大磁気センサ9および超音波センサ16と制御機とは、電気的に接続され、制御機と上位機は、ケーブルを介して接続され、シリアル通信が採用されている。
【0030】
検査ロボットに防水処理が施されている。
【0031】
制御機における計算モジュールは、検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御する。検査中、励磁機構は、磁界を媒介物として水門を磁化させ、水門の表面に欠陥がある場合、該局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成される。巨大磁気抵抗素子で構成される巨大磁気センサは、励磁機構に同期して移動するとともに、異常な磁電信号を出力して制御機に送信する。制御機は、この時2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて検査ロボットの詳細な位置、即ち欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信する。
【0032】
検査対象水門は、巨大磁気抵抗素子に基づく磁気探傷センサの励磁機構の磁極側に位置し、NdFeB永久磁石は、励磁機として水門を磁化させる。水門に欠陥がない場合、磁力線は水門を均一に通過し、漏れ磁束はない。水門の内部または表面に欠陥がある場合、漏れ磁束は生じる。磁気コンセントレーターは、空間的に分布される漏洩磁界を収集して、巨大磁気抵抗素子の検査通路に導入し、巨大磁気抵抗素子は、磁気信号を電気信号に変換して制御機に送信する。
【0033】
該検査ロボットを使用することにより、操作がしやすくなり、測定の空間識別力とカバー範囲が改善される。また、磁界の収集、誘導および均一化を実現する磁気コンセントレーターが増設され、検査感度が高く、検査結果の精度が高く、微弱な磁界を測定でき、安定性に優れる。
【0034】
本実施例では、前記磁気コンセントレーター8はNiFe合金である。
【0035】
本実施例では、ブレード11およびブラシアセンブリを備える掃除機構をさらに含む。ここでブレード11は、キャリッジ1の前端に斜めに設けられ、水門上にある汚泥、苔癬を掃除し、汚泥、苔癬等が検査結果に与える影響を防止するために用いられる。
【0036】
前記ブラシアセンブリは、第2モータ13、回動軸14、回転盤およびブラシ15を含む。第2モータ13がキャリッジ1に固定設置され、第2モータ13の出力軸がカップリングを介して回動軸14に接続される。回動軸14の他端が回転盤に固定接続され、ブラシ15が回転盤に接続される。制御機は、第2モータが回転盤を回動駆動するように制御し、これによりブラシは回転盤とともに回動し、水門の表面をブラシ洗浄するようになる。
【0037】
本実施例では、前記ブレード11は、キャリッジ1にヒンジ接続される。ブレード11の上面が1つのバネ12の一端に接続され、ブレード11の下面がもう1つのバネ12の一端に接続される。2つのバネの他端がいずれもキャリッジに接続され、バネは伸張した状態にあり、緩衝作用を奏する。
【0038】
図2図3に示すように、本実施例では、前記駆動輪6は、タービンウォームにより駆動され、タービンウォームは、キャリッジ1の底部に固定されるケーシング4内に取り付けられる。第1モータ3の出力軸は、カップリングを介してウォームに接続され、タービンの回転軸10の両端は、ケーシングの外に延出してそれぞれ対応する駆動輪に接続される。タービンウォームアセンブリの動作が安定し、騒音が低い。
【0039】
本実施例では、前記巨大磁気センサ9および2つの磁気コンセントレーター8がケーシングに取り付けられる。
【0040】
本実施例では、前記巨大磁気センサ9は、励磁機構の2つの磁極の間に位置し、複数の巨大磁気抵抗素子を組み合わせてなる。
【0041】
実施例2
巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットを用いた検査方法は、
検査対象水門の上端の1つの頂点にロボットを配置し、2つの超音波センサにより、ロボットから水門他方の側辺までの距離およびロボットから水門の底部までの距離、即ち水門全体のサイズを測定し、該情報を制御機に送信し、制御機における計算モジュールにより、該頂点を座標原点とし、水門の幅方向をX軸とし、水門の高さ方向をY軸として直交座標系を確立するステップ1と、
制御機における計算モジュールにより検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、検査中、磁界を媒介物として励磁機構で水門を磁化させ、水門の表面に欠陥がある場合、該局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成されており、巨大磁気抵抗素子で構成される巨大磁気センサを励磁機構に同期して移動させるとともに、異常な磁電信号を出力させて制御機に送信し、制御機によりこの時2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて検査ロボットの詳細な位置、即ち欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信するテップ2と、を含む。
【0042】
本実施例では、ロボットが水門の表面に沿って走行する過程にて、ブレードは、水門の表面の汚泥と苔癬を掃除し、制御機は、第2モータが回転盤を回動駆動するように制御し、これによりブラシは回転盤とともに回動し、水門の表面をブラシ洗浄するようになる。
【0043】
本実施例では、前記ステップ2で、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、前記設定された経路は、水門の高さ方向に沿って上方に一層ずつ移動するように設定する。
【0044】
本願の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等の用語が指し示す方位または位置関係は、図面に示す方位または位置関係に基づくものであり、本発明の説明の便宜上および説明の簡素化のためのものに過ぎず、その対象となる装置または素子が特定の方位を有し、特定の方位で構造および操作される必要があることを指示または示唆するものではないと理解すべきであり、よって本発明の保護内容を限定するものと理解すべきではない。
【0045】
以上は本発明の好適な実施形態に過ぎず、指摘しておきたいのは、当業者にとって、本発明の技術的原理から逸脱することなく、若干の改良と修飾を行うことができ、これらの改良と修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとする点である。
【0046】
(付記)
(付記1)
検査機構を含み、
前記検査機構はキャリッジを含み、キャリッジの底部に案内輪および2つの駆動輪が設けられ、キャリッジに制御機、測距位置検出モジュールおよび巨大磁気抵抗素子に基づく磁気探傷センサが設けられ、
前記磁気探傷センサは、励磁機構、巨大磁気センサおよび2つの磁気コンセントレーターを含み、励磁機構は、逆U字形の導磁性接続体および2つの励磁機を含み、前記駆動輪は、材質がNdFeB永久磁石であり、励磁機構の励磁機として機能し、導磁性接続体の両端にそれぞれ励磁機としての駆動輪が設けられ、2つの励磁機によって励磁機構の2つの磁極が形成され、2つの駆動輪は第1モータによって駆動され、前記巨大磁気センサは2つの磁気コンセントレーターの間に位置し、
前記測距位置検出モジュールは、キャリッジに垂直に設けられる2つの超音波センサを含み、一方の超音波センサがキャリッジの一端に設けられ、検査ロボットから水門の側辺までの距離を測定するために用いられ、他方の超音波センサがキャリッジの底部に設けられ、検査ロボットから水門の底部までの距離を測定するために用いられ、
前記第1モータ、巨大磁気センサおよび超音波センサはいずれも制御機に信号接続される、
ことを特徴とする巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0047】
(付記2)
上位機をさらに含み、制御機と上位機はケーブルを介して接続され、シリアル通信が採用されている、
ことを特徴とする付記1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0048】
(付記3)
接続フレームと回転軸をさらに含み、励磁機としての駆動輪が接続フレームを介して導磁性接続体の両端に連設され、2つの駆動輪は回転軸を介して接続され、接続フレームの上端は導磁性接続体に固定接続され、接続フレームの下端は駆動輪の回転軸に回転可能に接続される、
ことを特徴とする付記1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0049】
(付記4)
前記駆動輪は、タービンウォームにより駆動され、タービンウォームは、キャリッジの底部に固定されるケーシング内に取り付けられ、第1モータの出力軸は、カップリングを介してウォームに接続され、タービンの回転軸の両端は、ケーシングの外に延出してそれぞれ対応する駆動輪に接続される、
ことを特徴とする付記1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0050】
(付記5)
前記巨大磁気センサおよび2つの磁気コンセントレーターがケーシングに取り付けられる、
ことを特徴とする付記4に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0051】
(付記6)
前記磁気コンセントレーターの材質がNiFe合金である、
ことを特徴とする付記1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0052】
(付記7)
ブレードおよびブラシアセンブリを備える掃除機構をさらに含み、ブレードは、キャリッジの前端に斜めに設けられ、水門上にある汚泥、苔癬を掃除するために用いられ、
前記ブラシアセンブリは、第2モータ、回動軸、回転盤およびブラシを含み、第2モータがキャリッジに固定設置され、第2モータの出力軸がカップリングを介して回動軸に接続され、回動軸の他端が回転盤に固定接続され、ブラシが回転盤に接続される、
ことを特徴とする付記1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0053】
(付記8)
前記ブレードは、キャリッジにヒンジ接続され、ブレードの上面が1つのバネの一端に接続され、ブレードの下面がもう1つのバネの一端に接続され、2つのバネの他端がいずれもキャリッジに接続される、
ことを特徴とする付記7に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0054】
(付記9)
前記巨大磁気センサは、励磁機構の2つの磁極の間に位置し、複数の巨大磁気抵抗素子を組み合わせてなる、
ことを特徴とする付記1に記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボット。
【0055】
(付記10)
検査対象水門の上端の1つの頂点にロボットを配置し、2つの超音波センサにより、ロボットから水門他方の側辺までの距離およびロボットから水門の底部までの距離である水門全体のサイズを測定し、該情報を制御機に送信し、制御機における計算モジュールにより、該頂点を座標原点とし、水門の幅方向をX軸とし、水門の高さ方向をY軸として直交座標系を確立するステップと、
制御機における計算モジュールにより検査ロボットの検査走行路を計画し、設定された経路に沿って検査するようにロボットを制御し、検査中、磁界を媒介物として励磁機構で水門を磁化させ、水門の表面に欠陥がある場合、該局所領域の透磁率が低下し、磁気抵抗が増加し、結果として磁力線に歪みが発生して水門外まで拡散し、検出可能な漏洩磁界信号が形成されており、巨大磁気センサを用いて励磁機構に同期して移動させ、該信号を制御機に送信させ、制御機によりこの時2つの超音波センサにより測定されたデータに基づいて検査ロボットの詳細な位置である欠陥の詳細な位置を取得し、欠陥情報および欠陥位置情報を上位機に送信するステップと、を含む、
ことを特徴とする付記1から9のいずれか1つに記載の巨大磁気抵抗素子に基づく水門用検査ロボットの検査方法。
【符号の説明】
【0056】
1 キャリッジ、2 案内輪、3 第1モータ、4 ケーシング、5 導磁性接続体、6 駆動輪、7 接続フレーム、8 磁気コンセントレーター、9 巨大磁気センサ、10 タービンの回転軸、11 ブレード、12 バネ、13 第2モータ、14 回動軸、15 ブラシ、16 超音波センサ。
図1
図2
図3