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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】薄膜バルク音響波共振器の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20220726BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/17 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021526615
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2019107175
(87)【国際公開番号】W WO2021012379
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】201910656733.3
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519437928
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司上海分公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO SEMICONDUCTOR INTERNATIONAL CORPORATION(SHANGHAI BRANCH)
【住所又は居所原語表記】Room 309, Area C, F3, Building 1,No.95, Lane 85, Cailun Road, China(Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Shanghai 201210 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 海龍
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-142372(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109309483(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109889174(CN,A)
【文献】特開2006-217281(JP,A)
【文献】特開2002-182652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B1/00-7/04
B81C1/00-99/00
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜バルク音響波共振器の作製方法であって、
第1基板を提供するステップと、
前記第1基板上に隔離層と、前記隔離層上に位置するバルク音響波薄膜とを形成するステップと、
前記バルク音響波薄膜に、前記バルク音響波薄膜の上面に外側から内側に順次設けられた主支持壁と、隔離壁と、補助支持柱とを含む支持構造を形成するステップであって、前記主支持壁および前記隔離壁は、いずれも環状構造であり、前記隔離壁は、前記主支持壁内に設けられ、前記補助支持柱は、前記隔離壁内に設けられるステップと、
前記支持構造が形成された前記第1基板の側を第2基板と結合し、かつ前記第1基板を除去するステップと、
前記バルク音響波薄膜に、前記隔離壁によって画定される空間を外部と連通させる開放窓を形成するステップと、
前記開放窓を用いて、前記補助支持柱および前記隔離壁を除去するステップとを含む、ことを特徴とする薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項2】
前記バルク音響波薄膜上に前記支持構造を形成するステップは、
前記バルク音響波薄膜上に所定の厚さの支持層を形成するステップと、
前記支持構造を形成するように前記支持層をエッチングするステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項3】
前記隔離壁の幅は、前記隔離壁の幅方向に沿う前記補助支持柱のサイズ以上である、ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項4】
前記バルク音響波薄膜上に前記支持構造を形成するステップは、
前記バルク音響波薄膜上に所定の厚さの第1支持層を形成するステップと、
前記主支持壁を形成するように前記第1支持層をエッチングするステップと、
第2支持層を前記主支持壁の上面と面一となるように前記主支持壁によって画定される範囲内に充填するステップと、
前記隔離壁および前記補助支持柱を形成するように前記第2支持層をエッチングするステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項5】
前記主支持壁と前記隔離壁との材質が異なり、
前記補助支持柱を除去するエッチングプロセスにおいて前記補助支持柱および前記隔離壁に対するエッチング速度が前記主支持壁に対するエッチング速度よりも大きい、ことを特徴とする請求項4に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項6】
前記バルク音響波薄膜上に前記支持構造を形成するステップは、
前記バルク音響波薄膜上に所定の厚さの第1支持層を形成するステップと、
前記主支持壁および前記隔離壁を形成するように前記第1支持層をエッチングするステップと、
第2支持層を前記主支持壁の上面と面一となるように前記隔離壁によって画定される範囲内に充填するステップと、
前記補助支持柱を形成するように前記第2支持層をエッチングするステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項7】
前記隔離壁と前記補助支持柱との材質が異なり、
前記補助支持柱を除去するエッチングプロセスにおいて前記補助支持柱に対するエッチング速度が前記隔離壁に対するエッチング速度よりも大きい、ことを特徴とする請求項6に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項8】
前記バルク音響波薄膜上に前記支持構造を形成するステップは、
前記バルク音響波薄膜上に所定の厚さの第1支持層を形成するステップと、
前記主支持壁を形成するように前記第1支持層をエッチングするステップと、
第2支持層を前記主支持壁の上面と面一となるように前記主支持壁によって画定される範囲内に充填するステップと、
前記隔離壁を形成するように前記第2支持層をエッチングするステップと、
第3支持層を前記隔離壁の上面と面一となるように前記隔離壁によって画定される範囲内に充填するステップと、
前記補助支持柱を形成するように前記第3支持層をエッチングするステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項9】
前記主支持壁、前記隔離壁と前記補助支持柱との材質が、いずれも異なり、
前記補助支持柱を除去するエッチングプロセスにおいて前記補助支持柱、前記隔離壁および前記主支持壁に対するエッチング速度が順次低くなる、ことを特徴とする請求項8に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項10】
前記バルク音響波薄膜は、前記隔離層上に順次重ねて設けられた第1電極層と、圧電層と、第2電極層とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項11】
前記第1基板を除去してから前記開放窓を形成する前に、
前記第2電極層を前記第2基板から離れた側から露出させるように前記第1電極層および前記圧電層の一部分を除去するステップであって、露出した前記第2電極層は、前記隔離壁によって画定される範囲に位置する部分を含むステップと、
露出された前記第2電極層をエッチングして、前記隔離壁によって画定される範囲に対応する前記バルク音響波薄膜に前記開放窓を形成するステップとを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項12】
前記バルク音響波薄膜に2つ以上の開放窓を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項13】
前記開放窓は、前記隔離壁によって画定される範囲内において中心領域よりも前記隔離壁に近い、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項14】
前記支持構造において、前記主支持壁と前記補助支持柱との間に2周または3周の前記隔離壁が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項15】
前記開放窓を用いて前記補助支持柱および前記隔離壁を除去するステップにおいて、ウエットエッチングプロセスにより前記補助支持柱および前記隔離壁を除去する、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項16】
前記隔離壁と前記主支持壁との間に、均一な幅の隙間を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項17】
第1基板の表面と平行な平面内において、前記隔離壁の平面形状は、五角形、六角形または七角形である、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【請求項18】
前記主支持壁、前記隔離壁および前記補助支持柱の高さは、いずれも2μm~5μmの範囲にある、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜バルク音響波共振器の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタの分野に関し、特に薄膜バルク音響波共振器の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の絶えない発展に伴って、様々な無線通信端末の多機能化需要を満たすために、端末装置は異なるキャリアスペクトルを利用してデータを伝送する必要があり、それと同時に、限られた帯域幅内で十分なデータ伝送率をサポートするために、無線周波数システムに対しても厳しい性能要件が求められている。無線周波数フィルタは無線周波数システムの重要な構成部分であり、無線周波数システムと通信プロトコルの信号対ノイズ比に対する要件を満たすために、通信スペクトル外の干渉とノイズをフィルタ除去することができる。携帯電話を例に、帯域ごとに対応するフィルタが必要であるため、1台の携帯電話に数十個のフィルタを設置する必要がある場合がある。
【0003】
典型的に、フィルタはインダクタと、キャパシタと、共振器とを含む。圧電に基づく共振器において、圧電材料に音響共振モードを発生し、音響波は使用のために電波に変換されてる。バルク音響波(BAW)共振器は、圧電共振器の1つのタイプであり、異なるバルク音響波共振器をカスケードすることにより、異なる性能要件を満たすバルク音響波フィルタを製造することができる。薄膜バルク音響波共振器(FBAR)は、バルク音響波共振器の1つのタイプであり、そのバルク音響波薄膜が、基板に形成された反射素子としてキャビティに取り付けられ、典型的に、バルク音響波薄膜は、2つの電極間に設けられた圧電膜を含み、音響波がバルク音響波薄膜にわたる共振を実現し、共振周波数は主にバルク音響波薄膜の材料によって決定される。薄膜バルク音響波共振器は、高い品質係数Q値、ICチップに集積でき、およびCMOSプロセスと互換できるという利点を有し、近年迅速な発展を遂げている。
【0004】
現在、薄膜バルク音響波共振器を形成する一つの方法は、まず、基板に一つのピットを腐食させ、ピットに犠牲層材料を充填し、そして犠牲層の上方にバルク音響波薄膜を形成し、その後バルク音響波薄膜から一つのウィンドウを腐食させ、該ウィンドウから犠牲層を除去することである。該方法は、犠牲層上にバルク音響波薄膜を形成するため、底層粗さがバルク音響波薄膜の性能に重要な影響を与え、粗さを特に制御する必要があり、プロセスの複雑さを増大させ、また、このような方法により品質のよい単結晶圧電膜を得ることが困難であり、薄膜バルク音響波共振器の性能の向上に不利である。
【0005】
現在、薄膜バルク音響波共振器を形成するもう1つの方法は、犠牲層材料を用いずに、作製基板を用いてバルク音響波薄膜およびバルク音響波薄膜に位置する支持構造を形成し、次に、支持構造によって他の基板と結合し、続いて作製基板を除去し、電極を隔離してキャビティ上に共振構造を形成することである。バルク音響波薄膜の強度を向上させるために、支持構造は、キャビティ範囲を画定する主支持壁に加えて、キャビティの範囲内に設置された補助支持柱を含み、後続の共振構造の作製が完了した後に補助支持柱を除去するが、補助支持柱を除去する過程で支持構造の主支持壁を侵食しやすくなり、共振構造の性能が不安定になる。
【発明の概要】
【0006】
従来プロセスにおける問題に基づき、本発明は、薄膜バルク音響波共振器の安定性を向上させ、製造プロセス難度が比較的低い薄膜バルク音響波共振器の作製方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、
第1基板を提供するステップと、
前記第1基板上に隔離層と、前記隔離層上に位置するバルク音響波薄膜とを形成するステップと、
前記バルク音響波薄膜に、前記バルク音響波薄膜の上面に外側から内側に順次設けられた主支持壁と、隔離壁と、補助支持柱とを含む支持構造を形成するステップであって、前記主支持壁および前記隔離壁は、いずれも環状構造であり、前記隔離壁は、前記主支持壁内に設けられ、前記補助支持柱は、前記隔離壁内に設けられるステップと、
前記支持構造が形成された前記第1基板の側を第2基板と結合し、かつ前記第1基板を除去するステップと、
前記バルク音響波薄膜に、前記隔離壁によって画定される空間を外部と連通させる開放窓を形成するステップと、
前記開放窓を用いて、前記補助支持柱および前記隔離壁を除去するステップとを含む薄膜バルク音響波共振器の作製方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法では、補助支持柱は、薄膜層移行および他の支持構造の上方で行われるプロセスにおいて有効的な支持を提供することを助け、主支持壁と補助支持柱との間に形成された隔離壁は、補助隔離壁を除去する過程で主支持壁を効果的に保護することができ、主支持壁侵食リスクを低減または避けることができる。これにより、後続の主支持壁の画定範囲内に位置するキャビティの信頼性を向上させ、形成された薄膜バルク音響波共振器の共振性能を向上させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の流れの模式図である。
図2】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
図3】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
図4】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
図5】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
図6】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
図7】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
図8】本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面と具体的な実施例を参照しながら、本発明のバルク音響波共振器の作製方法についてさらに詳細に説明する。以下の説明によって、本発明の利点と特徴はさらに明らかになる。なお、図面はすべて、本発明の実施例を容易かつ明白に説明するために、非常に簡略化された形で非正確な割合を用いているが、本発明の実施例は、図に示される領域の特定形状だけに限定されないと理解されたい。明瞭化のため、本発明の実施例を説明するために用いられるすべての図面において、同じ部材には原則として同一の符号を付し、それについて繰り返して説明しない。
【0011】
なお、以下の用語「第1」「第2」などは、類似する要素間で区別するためのものであり、必ずしも特定の順序や時系列を記述するための用語ではない。適宜な場合、このように使用される用語は代替可能であり、例えば、本明細書に記載の本発明の実施例を、本明細書に記載された、または、示された他の順序とは異なる順序で動作させることができる。同様に、本明細書に記載の方法に一連の手順が含まれている場合、本明細書で示されるこれらの手順の順は、これらの手順を実行できる唯一の順である必要はなく、また、記載の手順の一部は省略されることができ、または、本明細書に記載されていないその他の手順をこの方法に追加することもできる。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の流れの模式図である。図1を参照すると、バルク音響波共振器の作製方法は、
第1基板を提供するステップS1と、
前記第1基板上に隔離層と、隔離層上に位置するバルク音響波薄膜とを形成するステップS2と、
前記バルク音響波薄膜上に、前記バルク音響波薄膜の上面に外から内向きに順次設けられた主支持壁と、隔離壁と、補助支持柱とを含む支持構造を形成するステップであって、前記主支持壁および前記隔離壁は、いずれも環状構造であり、前記隔離壁は、前記主支持壁内に設けられ、前記補助支持柱は、前記隔離壁内に設けられるステップS3と、
前記第1基板に前記支持構造が形成された側を第2基板と結合し、かつ前記第1基板を除去するステップS4と、
前記バルク音響波薄膜に、前記隔離壁によって画定される空間を外部と連通させる開放窓を形成するステップS5と、
前記開放窓を用いて、前記補助支持柱および前記隔離壁を除去するステップS6とを含む。
【0013】
図2図8は、本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法の各ステップの模式的断面図である。以下、図2図8を参照しながら、本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法についてさらに詳細に説明する。
【0014】
まず、ステップS1を実行し、第1基板100を提供する。本実施例では、後続で第1基板100を基板としてバルク音響波共振器のバルク音響波薄膜および支持構造を製造する。
【0015】
第1基板100は、該技術分野において常用の製造基板および支持基板から選択されることができ、具体的には、第1基板100の材料は、当業者によく知られている任意の適切な基材であってもよく、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、シリコンゲルマニウムカーボン(SiGeC)、ヒ化インジウム(InAs)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、または他のIII/V化合物半導体のうちの少なくとも1種であってもよく、これら半導体で構成される多層構造等をさらに含んでもよく、あるいは絶縁体上シリコン(SOI)、絶縁体上積層シリコン(SSOI)、絶縁体上積層ゲルマニウム化シリコン(S-SiGeOI)、絶縁体上ゲルマニウム化シリコン(SiGeOI)および絶縁体上ゲルマニウム(GeOI)であってもよく、あるいは両面研磨シリコンシート(Double Side Polished Wafers、DSP)であってもよく、アルミナなどのセラミック基板、石英やガラス基板などでもよい。本実施例では、前記第1基板100は、例えば、上面が〈100〉結晶面のP型高抵抗単結晶シリコンシートである。もちろん、第1基板100は、該技術分野において周知である他の材料を含んでもよい。
【0016】
図2は、本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法を用いてバルク音響波薄膜を形成した後の断面図である。図1および図2を参照すると、ステップ2を実行し、前記第1基板100上に隔離層110と、隔離層110に位置するバルク音響波薄膜120とを形成する。
【0017】
隔離層110は、第1基板100上にバルク音響波薄膜120を形成するための緩衝材料として機能することができ、前記隔離層110は、適当な方法(例えば、化学気相堆積、物理気相堆積、原子層堆積、コーティングまたは熱酸化など方法)により第1基板100上に形成されてもよい。前記隔離層110の材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒酸化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、フルオロカーボン、炭素添加酸化ケイ素、炭窒化ケイ素などの材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限られない誘電体材料等、第1基板100上に比較的容易に被覆することができ、かつ後続のバルク音響波薄膜120と反応しにくい任意の適合な材料であってもよい。他の実施例では、前記隔離層110は、非晶質炭素、光硬化型接着剤、ホットメルト接着剤またはレーザーアブレーション接着層(例えば、ポリマー材料)等、第1基板100上に比較的容易に被覆することができ、かつ後続のバルク音響波薄膜と反応しにくい材料の任意の適切な材料であってもよい。一方、隔離層110は、第1基板100表面の欠陥によるバルク音響波薄膜120製造に与える影響の回避に有利であり、デバイスの性能および信頼性を向上させることができ、他方、後に形成されるバルク音響波薄膜120への損傷を防止するために、裏面薄型化プロセス(例えば、化学的機械的平坦化など)により第1基板100を除去し、後続の第1基板100の除去プロセスにおいてプロセス停止点を制御することが可能になる。隔離層110の厚さ範囲が約0.1μm~2μmであり、任意的には、1μm未満である。
【0018】
隔離層110は、上層に位置するエッチング停止層(図示せず)と、エッチング停止層と第1基板100との間に位置する犠牲材料層(図示せず)とを含むことができ、隔離層110におけるエッチング停止層の厚さが比較的薄く(例えば、1000Å)、エッチング停止層と犠牲材料層および後に形成されるバルク音響波薄膜120(具体的には、よりも第1基板100に近づけた電極層)は、いずれも高いエッチング選択比を備えることにより、後続のバルク音響波薄膜120と第1基板100とを分離するプロセス停止点とすることができ、第1基板100を除去する際に、バルク音響波薄膜120に必要のない損傷を与えることを避けることができる。該エッチング停止層は、例えば、酸化ケイ素または窒化ケイ素または窒酸化ケイ素である。後続の第1基板100を除去するプロセスの難度を低減するために、隔離層110における犠牲材料層が、第1基板100とバルク音響波薄膜120とを容易に分離することができる任意の適切な材料であってもよい。
【0019】
図2を参照すると、本実施例では、前記バルク音響波薄膜120は、前記隔離層110上に順次重ねて形成された第1電極層121と、圧電層122と、第2電極層123とを含む。前記第1電極層121、圧電層122および第2電極層123の形状は、同一でも異なってもよく、および、前記第1電極層121、圧電層122および第2電極層123の面積は、同一でも異なってもよい。後続の第1基板100を第2基板200と結合した後、パターニングプロセスによって共振構造を得ることができ、パターニングされた第1電極層121および第2電極層123は、それぞれ共振構造の上下電極として機能する。本発明の他の実施例では、バルク音響波薄膜120は、第1電極層121、圧電層122、および第2電極層123以外の他の薄膜層をさらに含むことができ、実際のデバイス需要に応じて、合理的に設けることができ、ここで具体的に制限しない。
【0020】
第1電極層121および第2電極層123は、当業者によく知られている任意の適当な導電性材料または半導体材料を用いてもよい。ここで、導電性材料は、導電性性能を有する金属材料、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銀(Ag)、金(Au)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)などの1つまたは複数を用いて製造することができる。前記半導体材料は、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGe等であってもよい。マグネトロンスパッタリング、蒸着などの物理蒸着または化学蒸着方法により、第1電極層121および第2電極層123を形成することができる。第1電極層121および第2電極層123は、好ましくは同じ材料からなるが、具体的に実施する際、実際の需要に応じて異なる導電性材料を選択して製造される。圧電層122は、圧電共振層や圧電共振構造とも呼ばれ、石英、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、酸化ニオブリチウム(LiNbO3)、酸化タンタルリチウム(LiTaO3)などの圧電材料のうちの1種または複数種を用いて製造することができ、圧電層122にも希土類元素をドーピングしてもよい。本実施例における第1電極層121および第2電極層123の材質は、例えば、モリブデンであり、圧電層122の材質は、例えば、窒化アルミニウムである。第1電極層121と第2電極層123の厚さは、約100nm~200nmの範囲にある。圧電層122の厚さは、1μm~3μmの範囲にある。具体的には、圧電材料層122の厚さは、ターゲット共振周波数に基づいて設定することができ、例えば、共振波長の1/2ほどに設けられる。モリブデンの堆積は、PVD(物理気相蒸着)プロセスあるいはマグネトロンスパッタリングプロセスを利用でき、窒化アルミニウムの堆積は、PVD(物理気相蒸着)プロセスあるいはMOCVD(金属有機化学気相蒸着)プロセスを利用できる。
【0021】
図3は、本発明の一実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法を用いて支持構造を形成した後の模式的断面図である。図4は、図3中の支持構造の概略平面図である。図3および図4を参照すると、ステップS3を実行し、前記バルク音響波薄膜120上に、前記バルク音響波薄膜120の上面に外から内向きに順次設けられた主支持壁131と、隔離壁132と、補助支持柱133とを含む支持構造130を形成し、前記主支持壁131および隔離壁132は、いずれも環状構造であり、前記隔離壁132は、前記主支持壁131内に設けられ、前記補助支持柱133は、前記隔離壁132内に設けられる。支持構造130は、第2電極層123上に支持材料を堆積させ、パターニングプロセスを用いて得ることができる。前記支持材料は、バルク音響波薄膜と反応しにくく任意の適切な材料であってもよく、任意の支持材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒酸化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、無定型炭素、オルトケイ酸テトラエチルなどの少なくとも1種の材料を用いて製造することができ、また、支持材料は、ドライ薄膜等の該技術分野において公知の他の材料を含んでいてもよく、2種類以上の材料の重ね合わせ層を用いてもよい。支持材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒酸化ケイ素などの大きな機械的強度を有する材料の少なくとも1つを選択することができ、これにより形成された支持構造130は、一方、支持力が十分な支持柱の形成に有利であり、さらにデバイス構造の安定性を増加させ、バルク音響波薄膜の後続プロセスにおけるキャビティ内外の圧力差による下圧変形や必要のない破断問題を防止することができ、他方、形成されたバルク音響波薄膜と後続の第2基板との間に漏電の発生を防止し、後続の第2基板とバルク音響波薄膜との接着性を向上させ、デバイスの性能と信頼性を向上させる。
【0022】
支持構造130を形成することにより、犠牲層を用いてキャビティの範囲を構築する必要をとせず、後に形成される共振キャビティ(以下、「キャビティ」という)の範囲を第1基板100上に画定することができ、プロセスが簡単で、制御容易である。本実施例では、支持構造130は、バルク音響波薄膜120上に形成されたバルク音響波共振器のキャビティの位置および範囲を画定するための最外周に設けられた主支持壁131を含み、主支持壁131の第1基板100と平行な断面に沿って形状は、矩形、円形、五角形、六角形などであってもよい。また、主支持壁131によって画定される範囲に、支持をさらに強化する役割を果たす隔離壁132と、補助支持柱133とが設けられ、第1基板100と第2基板200とを結合してバルク音響波薄膜120の薄膜層移動を実現し、およびパッケージングまで共振構造を作製する前のプロセスにおいて薄膜層の信頼性の向上、崩壊回避、プロセスの制御難度の低減に役立つ。補助支持柱133は、隔離壁132によって画定される範囲内に設けられ、補助支持柱133の数が複数であってもよく、少なくとも1つの補助支持柱133は、中実の柱状構造として設けられてもよく、例えば、2つ以上の柱状の補助支持柱133を隔離壁132によって画定される範囲内に均一に分布して補助支持されてもよく、少なくとも1つの補助支持柱133は、閉鎖または非閉鎖環状塀構造として設けられてもよい。前記環状塀構造は、隔離壁132によって画定される範囲内にて補助支持を発揮するために、隔離壁132から間隔で設けられている。
以下、主に柱状構造の補助支持柱133を例に、説明する。隣接する補助支持柱133の間、各補助支持柱133と隔離壁132との間、および隔離壁132と主支持壁131との間にも隙間を有する。主支持壁131と前記隔離壁132との支持作用を結合して、上方薄膜層のために安定な支持を提供することができる。各補助支持柱133の第1基板100と平行な断面形状は、円形、楕円形、四角形、五角形、六角形などのパターンのうちの1つまたは2つ以上の組み合わせであってもよい。少なくとも2つの補助支持柱133を形成した場合には、これらの補助支持柱133の形状は同一でも異なってもよい。および、これらの補助支持柱133の同一方向のサイズは同一でも異なってもよい。本実施例では、補助支持柱133の縦断面形状が矩形(図3に示すように)であり、すなわち、上下の幅が一致する。しかしながら、具体的に実施する際、補助支持柱133の縦断面形状は、正台形または逆台形のような他の形状であってもよく、本発明の目的を同様に実現することができる。選択可能には、隔離壁132によって画定される範囲内に、同じ形状で均一に分布された2つ以上の補助支持柱133を形成することにより、後続の第1基板100を除去した後の共振構造を作製する過程でより均一な支持を提供することができる。
【0023】
前記隔離壁132は、主支持壁131と補助支持柱133との間に設けられて環状に形成されており、後続の補助支持柱133を除去する際に、エッチングガスまたはエッチング液の開放窓を隔離壁132によって画定される範囲内に設けることにより、エッチングガスまたはエッチング液が主に隔離壁132の範囲内で補助支持柱133と隔離壁132に対してエッチングできるようにすることができる。隔離壁132のバリアにより、主支持壁131は、エッチング雰囲気またはエッチング液を隔離壁132によって隔離されており、エッチングされる可能性(例えば、横方向エッチング)を大幅に低減することができる。主支持壁131は、ほとんど侵食破壊されないので、後続の主支持壁131によって画定されるキャビティ(バルク音響波共振器の共振キャビティとする)の安定性を向上させることに役立ち、バルク音響波共振器の性能を向上させることができる。
【0024】
支持構造130の主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133は、共通の支持効果を実現するように等高の形状に設けられていてもよく、本実施例では、支持構造130における主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133の高さは、ほぼ同じの約3μmであるが、これに限定されることはない。材料選択の差異やプロセス誤差に応じて、支持構造130は、一定の弾性を有する材料であってもよく、支持の役割を発揮するときに、上下接触界面の距離に基づいて主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133の実際の高さが異なってもよく、また、隔離壁132は、主に補助支持柱を除去する過程に主支持壁131を保護するために用いられるため、その高さが主支持壁131および補助支持柱133の高さよりも低いように設けられていてもよい。主支持壁131、隔離壁132、および補助支持柱133の間隔およびサイズも、具体的なプロセスおよび構造に応じて設計することができる。例えば、隔離壁132の厚さは、補助支持柱の数と、補助支持柱の除去のエッチング難度とに基づいて、具体的に設けることができる。選択可能には、主支持壁131の厚さ方向に沿って、補助支持柱133および隔離壁132のサイズを主支持壁131の厚さよりも小さく、例えば、主支持壁131の厚さの1/3以下に設定することができ、それにより、後続の補助支持柱133および隔離壁132の迅速な除去に有利であるとともに、補助支持柱133および隔離壁132の除去過程における主支持壁131への影響を低減または回避することができる。需要に応じて、隔離壁132は、複数の周であってもよく、例えば、他の実施例では、バルク音響波薄膜120上の支持構造において、主支持壁131と補助支持柱133との間に2周または3周隔離壁132をネスト化設けられる。本実施例では、主支持壁131および隔離壁132の厚さ方向の縦断面形状は、図3に示すように、すなわち、上下の幅が一致する矩形である。しかしながら、具体的に実施する際、主支持壁131および隔離壁132の厚さ方向の縦断面形状は、正台形または逆台形のような他の形状であってもよく、本発明の目的を同様に実現することができる。
【0025】
上記支持構造130により、後続の補助支持柱133を除去するエッチング過程では、隔離壁132の補助支持柱133に向かって裏側表面もエッチングされ、このエッチング過程で補助支持柱133を完全に除去し、かつ主支持壁131に可能な限り影響を与えないように、前記隔離壁132の幅が前記隔離壁132の幅方向における前記補助支持柱133のサイズわずかにより大きい、または等しいものとしてもよい。ここで、隔離壁132の幅方向とは、第1基板100と平行な平面にて隔離壁132の外側から画定された領域中心へ指向する方向を指す。隔離壁132は、片面エッチングを受けるが、補助支持柱133は、各方向のエッチングを受けるため、上述した幅関係を用いて、前記補助支持柱133を除去する過程で主支持壁131に影響を与えないことをほぼ保証できる。さらに、選択可能には、補助支持柱133を除去した後の過程で前記隔離壁132をすべて除去し、主支持壁131およびその画定されたキャビティ範囲にほとんど影響を与えないようにエッチング時間を制御することにより、共振キャビティの信頼性を向上させ、バルク音響波共振器の性能を向上させるのに役立つことができる。バルク音響波共振器の共振構造の設計要件に応じて、バルク音響波薄膜120の共振領域は、円形、楕円形または多角形などの形状(第1基板100と平行な断面)を有していてもよく、支持構造130の形状は、空間を節約するために、対応する設計を行ってもよい。図4は、本発明の実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法における支持構造の平面図である。図4を参照すると、例えば、主支持壁131は、後続の共振構造と同様の平面形状(例えば、五角形、六角形、七角形など)を有していてもよく、ここで「同様」とは、主支持壁131の平面形状が共振構造の平面形状と同様の多角形または同様の円形などの形状であり、かつ対応する辺に比例する形状を意味する。具体的には、隔離壁132を設ける場合に、主支持壁131と隔離壁132との間に均一な幅を有する隙間を形成してスペースを節約するために、隔離壁132を主支持壁131の中心と重なって縮小された同じ平面形状に設け、主支持壁131の形状に適応させるようにしてもよい。補助支持柱133は、隔離壁132内に設けられる。図4に示すように、本実施例では、第1基板100表面と平行な平面内に、主支持壁131および隔離壁132の平面形状が、いずれも五角形であってもよい。
【0026】
後続の隔離壁132および補助支持柱133を除去してエッチング過程による主支持壁131への影響を低減または回避するために、本発明の他の実施例では、支持構造130における主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133は、異なる材料を用いて製造することができ、例えば、後続でウェットエッチングを用いて補助支持柱133を除去する場合、該ウェットエッチング過程において、補助支持柱133および隔離壁132に対するエッチング速度は、主支持壁131に対するエッチング速度よりも大きいことが好ましく、また、設計要件に応じて、隔離壁132および補助支持柱133は、異なる材料を選択して製造することもでき、ウェットエッチングを用いて補助支持柱133を除去する場合、隔離壁132のエッチング貫通によるエッチング液が主支持壁131へ侵食することを回避するために、補助支持柱133のエッチング速度は、隔離壁132のエッチング速度よりも大きくすることができる。
【0027】
一例として、支持構造130を形成するいくつかの任意の実施形態を以下に説明する。
任意の第1の実施形態では、前記バルク音響波薄膜120上に前記支持構造130を形成するステップは、まず、前記バルク音響波薄膜120上に所定の厚さの支持層を形成するステップを含む。具体的には、バルク音響波薄膜120の第2電極層123上に、支持層として化学気相蒸着プロセスにより約2μm~5μmのシリカ薄膜層を堆積させた後、CMPプロセスにより支持層表面を平坦化することができる。次に、前記支持層をパターニングプロセスによりエッチングして、前記支持構造130を形成する。パターニングプロセスは、露光、現像、エッチング、離型などのプロセスを含むことができる。
【0028】
上述した第1の実施形態では、主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133は、同一の支持層をエッチングすることにより得られるため、同じ材質を有し、同一のエッチングプロセスに対するエッチング速度が同様である。
任意の第2の実施形態では、前記バルク音響波薄膜120上に前記支持構造130を形成するステップは、まず、前記バルク音響波薄膜120上に所定の厚さの第1支持層を形成するステップと、次に、前記主支持壁131を形成するように前記第1支持層をエッチングするステップと、その後、第2支持層を前記主支持壁131によって画定される範囲内に充填されるステップであって、第2支持層は前記主支持壁131の上面に揃えられるステップと、続いて、前記隔離壁132および前記補助支持柱133を形成するように前記第2支持層をエッチングするステップとを含む。
【0029】
上述した第2の実施形態では、主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133は、それぞれ異なるエッチングプロセスにより得られ、ここで、主支持壁131の材料は、第1支持層と同じであり、隔離壁132および補助支持柱133の材料は、第2支持層の材料と同じであり、同一のエッチングプロセスにおける隔離壁132および補助支持柱133のエッチング速度と異なるように第1支持層および第2支持層は、異なる材料を含むことができ、第1支持層および第2支持層の材質の選択により、前記補助支持柱133を除去するエッチングプロセスにおいて前記補助支持柱133および前記隔離壁132に対するエッチング速度が前記主支持壁131に対するエッチング速度よりも大きくなるようにすることができる。したがって、後続の補助支持柱133をエッチングして除去する過程で隔離壁132を同ステップで除去することができるが、このエッチングプロセスでの主支持壁131に対するエッチング速度が小さいため、隔離壁132を除去するときに主支持壁131を効果的に保護することができる。
【0030】
任意の第3の実施形態では、前記バルク音響波薄膜120上に前記支持構造130を形成するステップは、まず、前記バルク音響波薄膜120上に所定の厚さの第1支持層を形成するステップと、次に、前記主支持壁131および前記隔離壁132を形成するように前記第1支持層をエッチングするステップと、その後、第2支持層を隔離壁132によって画定される範囲内に充填されるステップであって、第2支持層は前記主支持壁131の上面に揃えられるステップと、続いて、前記補助支持柱133を形成するように前記第2支持層をエッチングするステップとを含む。
【0031】
上述した第3の実施形態では、主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133は、それぞれ異なるエッチングプロセスにより得られ、ここで、主支持壁131および隔離壁132の材料は、第1支持層と同じであり、補助支持柱133の材料は、第2支持層の材料と同じであり、同一のエッチングプロセスにおける主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133のエッチング速度と異なるように第1支持層および第2支持層は、異なる材料を含むことができ、第1支持層および第2支持層の材質の選択により、前記補助支持柱133を除去するエッチングプロセスにおいて前記補助支持柱133に対するエッチング速度が前記隔離壁132(または前記主支持壁131)に対するエッチング速度よりも大きくなるようにすることができる。したがって、後続の補助支持柱133をエッチングして除去する過程では、エッチング媒体、例えば、エッチング液も隔離壁132に接触してエッチングされるが、隔離壁132のエッチング速度が補助支持柱133よりも低い、すなわち、エッチングされることがより困難になるため、補助支持柱133の除去過程で隔離壁132のエッチング貫通によるエッチング液が主支持壁131を損傷することを回避することができ、すなわち、良好な隔離効果を発揮することができる。また、隔離壁132と補助支持柱133とが同じ材料である場合(すなわち、第1の実施形態)に対して、同様の分離効果では隔離壁132の幅を相対的に小さくすることができる。
【0032】
任意の第4の実施形態では、前記バルク音響波薄膜120上に前記支持構造130を形成するステップは、まず、前記バルク音響波薄膜120上に所定の厚さの第1支持層を形成するステップと、次に、前記主支持壁131を形成するように前記第1支持層をエッチングするステップと、その後、第2支持層を隔離壁132によって画定される範囲内に充填されるステップであって、前記第2支持層は前記主支持壁131の上面に揃えられるステップと、続いて、前記隔離壁132を形成するように前記第2支持層をエッチングするステップと、その後、
第3支持層を隔離壁132によって画定される範囲内に充填されるステップであって、第3支持層は前記隔離壁132の上面に揃えられるステップと、続いて、前記補助支持柱133を形成するように前記第3支持層をエッチングするステップとを含む。
【0033】
上述した第4の実施形態では、主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133は、それぞれ異なるエッチングプロセスにより得られ、ここで、主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133の材料は、それぞれ第1支持層、第2支持層および第3支持層の材料と同じであり、同一のエッチングプロセスにおける主支持壁131、隔離壁132および補助支持柱133のエッチング速度と異なるように第1支持層、第2支持層および第3支持層は、異なる材料を含むことができる。例えば、第1支持層、第2支持層および第3支持層の材質の選択により、前記補助支持柱133を除去するエッチングプロセスにおいて前記補助支持柱133、前記隔離壁132および前記主支持壁131に対するエッチング速度が順次低下させることができる。したがって、後続の補助支持柱133をエッチングして除去する過程では、エッチング媒体、例えば、エッチング液も隔離壁132に接触してエッチングされるが、隔離壁132のエッチング速度が補助支持柱133よりも低い、すなわち、エッチングされることがより困難になるため、補助支持柱133の除去過程で隔離壁132のエッチング貫通によるエッチング液が主支持壁131を損傷することを回避することができ、すなわち、良好な隔離効果を発揮することができる。また、補助支持柱133を除去した後、隔離壁132を除去する過程では、主支持壁131をエッチングされることがより困難になるため、主支持壁131が侵食破損することは生じにくい。
【0034】
図5は、本発明の実施例に係る薄膜バルク音響波共振器の作製方法を用いて第1基板と第2基板とを結合した後の模式的断面図である。図1および図5を参照すると、前記第1基板100に前記支持構造130が形成された側を第2基板200と結合し、かつ前記第1基板100を除去する。
【0035】
本実施例では、第2基板200を支持基板(carrier wafer)とし、第1基板100と第2基板200とを結合することにより、第1基板100上のバルク音響波薄膜を2つの基板の間に固定し、その後、背面エッチングプロセスにより第1基板100をほとんど除去するまで薄くし、支持構造130における補助支持柱133および隔離壁132を除去することにより、バルク音響波薄膜の両側に空気界面を形成することができ、薄膜バルク音響波共振器の本体構造を獲得する。
【0036】
第2基板200は、該技術分野において常用の支持基板から選択されることができ、具体的には、第2基板200の材料は、当業者によく知られている任意の適切な基材であってもよく、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーボン(SiC)、シリコンゲルマニウムカーボン(SiGeC)、ヒ化インジウム(InAs)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、または他のIII/V化合物半導体のうちの少なくとも1種であってもよく、これら半導体で構成される多層構造等をさらに含んでもよく、あるいは絶縁体上シリコン(SOI)、絶縁体上積層シリコン(SSOI)、絶縁体上積層ゲルマニウム化シリコン(S-SiGeOI)、絶縁体上ゲルマニウム化シリコン(SiGeOI)および絶縁体上ゲルマニウム(GeOI)であってもよく、あるいは両面研磨シリコンシート(Double Side Polished Wafers、DSP)であってもよく、アルミナなどのセラミック基板、石英やガラス基板などでもよい。本実施例では、前記第2基板200は、〈100〉結晶方向のP型高抵抗単結晶シリコンシートである。もちろん、第2基板200は、該技術分野において周知である他の材料を含んでもよい。
【0037】
第2基板200の表面と、第1基板100上の支持構造130の表面とに共有結合を形成して固定され、より高い結合強度を有するために、第1基板100と、第2基板200との結合は、溶融結合プロセスまたは真空結合プロセスを採用することができる。本発明の他の実施例では、第1基板100および第2基板200は、接着により固定されていてもよく、例えば、第2基板200上にホットメルト接着剤を塗布した後、真空結合プロセスを用いて真空環境下で支持構造130の上面(すなわち、支持構造130がバルク音響波薄膜120から離れた側の表面)と結合し、真空結合プロセスを用いて第2基板200を支持構造130に結合する際に、設定可能な真空結合条件は、結合圧力が1 Pa~105 Paであり、結合温度が150℃~200℃である。真空結合プロセスは、気泡の発生を避けることができ、より良い結合効果を有する。
【0038】
第1基板100と第2基板200とを結合された後、第2基板200を支持基板として逆にすることで、支持構造130およびバルク音響波薄膜120を第2基板200上に移されると、第1基板100を除去することができる。
【0039】
第1基板100は、背面エッチングプロセスにより薄くして隔離層110から除去することができ、隔離層110をエッチング過程で停止層とすることで、バルク音響波薄膜120への影響を回避することができ、第1基板100を除去した後、隔離層110がエッチングされた後、厚さが大幅に低下し、完全に取り除かれさえするので、図5には示しない。他の実施例では、化学的機械的研磨プロセスを用いて第1基板100を除去するとともに、隔離層110を除去することができ、選択可能には、隔離層110を用いてバルク音響波薄膜120を保護することを考慮した場合、隔離層110を部分的に保留してもよく、このとき、残りの隔離層110の厚さは、化学的機械的研磨プロセス能力などにより達成可能な厚さの最小値であり、例えば、1000Åであってもよい。更なる実施例では、隔離層110および第1基板100の材質特性に基づいて、適切なプロセスを選択して第1基板を除去することができ、例えば、前記隔離層110が光硬化型接着剤である場合、前記第1基板100とバルク音響波薄膜110とを分離して第1基板100を除去するために、化学試薬で前記光硬化型接着剤を除去することができる。前記隔離層110がホットメルト接着剤である場合、加熱処理等の熱放出プロセスにより前記ホットメルト接着剤を粘性を失わせ、さらに、前記第1基板とバルク音響波薄膜110とを分離して第1基板100を除去する。さらに、隔離層110がエッチング停止層と犠牲材料層との積層構造であり、かつ該犠牲材料がレーザ離型材料である場合、第1基板100を剥離するために、レーザアブレーションプロセスにより犠牲材料層を除去することができ、該レーザアブレーション過程では、隔離層110におけるエッチング停止層がバルク音響波薄膜110を保護するために用いられる。
【0040】
図5に示すように、ステップS4を経て、第2基板200上方のバルク音響波薄膜120の上下両側(すなわち、厚さ方向の両側)は、いずれも空気界面を有する。支持構造130は、複数の領域からバルク音響波薄膜120を支持しているため、バルク音響波薄膜120の安定性が良好となり、バルク音響波薄膜120に対する実行される様々な処理(例えば、バルク音響波薄膜120に対するパターニングプロセス)は、バルク音響波薄膜120を崩壊させにくく、プロセス制御の難度を低減することができる。このようなバルク音響波薄膜120の安定性に対して高い要求があるプロセスを完了した後、支持構造130における補助支持柱133および隔離壁132を除去することができる。
【0041】
図6および図7を参照すると、第1基板100を除去した後、ステップS5を実行し、前記バルク音響波薄膜120に前記隔離壁132によって画定される空間を外部と連通させる開放窓120aを形成する。
【0042】
選択可能には、ステップS4において第1基板100を除去した後、前記第2電極層123の部分領域を露出するエッジトリミング領域123aを形成するために、バルク音響波薄膜120の第1電極層121および圧電層122を切断プロセスまたはフォトマスクプロセスを用いて部分的に除去することができ、エッジトリミング領域123aの側壁は、前記第2電極層123の上面に垂直な側壁であってもよく、側壁頂部は、側壁底部に対してよりも隔離壁132によって画定される範囲の中心に近い傾斜した側壁であってもよく、エッジトリミング領域123aと、隔離壁132によって画定される範囲とを隔離壁132の厚さ方向に部分的に重なってもよい。エッジトリミング領域123aと隔離壁132によって画定される範囲に位置する重畳領域との薄膜厚さが薄いため、後続のバルク音響波薄膜110に開放窓を形成するプロセスの難度を低減することに有利であり、より大きなサイズの開放窓の作成に有利であり、さらに、後続の補助支持柱133および隔離壁132の除去のプロセス難度を低減するとともに、除去効率を向上させるのに有利である。
【0043】
また、選択可能には、ステップS4において第1基板100を除去した後、バルク音響波薄膜120をパターニングすることにより(例えば、複数回のホトエッチングとエッチングの組み合せプロセスによりパターニングすることが可能である)、上電極、下電極を形成し、バルク音響波薄膜は、主支持壁131の画定範囲の上方に位置する共振動作領域および非共振領域を画定することができる。共振動作領域のバルク音響波薄膜120は、薄膜バルク音響波共振器の共振構造とすることができる。また、上電極および下電極を形成した後、後続のバルク音響波薄膜110の第2基板200から離れた側に封止基板とする第3基板と結合するための金属接合層を、例えば、金属剥離プロセス(metal lift-off technology)により有効な動作領域以外に形成することができる。上記の上、下電極の定義プロセスおよび金属接合層の形成過程では、支持構造130の支持により、これらのプロセスは、支持構造130の範囲内の薄膜層に規格要件を超えた下押し変形問題や破裂の問題を生じることはない。本発明の他の実施例では、ステップS2において第1基板100上にバルク音響波薄膜120を形成する際に、圧電層122を覆う前に、第1電極層121をパターニングして(例えば、フホトエッチングとエッチングの組み合せプロセスによりパターニングする)、バルク音響波共振器の上電極を形成してもよい。第2電極層123を覆う前に、圧電層122をパターニングして(例えば、フホトエッチングとエッチングの組み合せプロセスによりパターニングする)、バルク音響波共振器の有効動作領域に位置する圧電層を形成してもよい。第2電極層123を覆った後、支持材料を覆う前に、第2電極層123をパターニングして(例えば、フホトエッチングとエッチングの組み合せプロセスによりパターニングする)、バルク音響波共振器の下電極を形成し、およびバルク音響波薄膜の共振動作領域および非共振領域を画定する。具体的に実施する際、ステップS2において、バルク音響波薄膜120の第1電極層121、圧電層122および第2電極層123のうちの1つのみをパターニングしてもよいし、そのうちの任意の2つまたは全部をパターニングしてもよく、残りのパターニングされていない薄膜層は、ステップS4での第1基板を除去した後に行われてもよいことを理解されたい。
【0044】
本実施例では、前記第1基板100を除去した後、前記開放窓120aを形成する前に、以下のプロセスを含むことができる。まず、第1サブステップを実行し、第1フォトマスクパターンを用いて、第2電極層123が第2基板から離れた側から露出させるように前記第1電極層121および前記圧電層122をエッチングし(図6に示すように)、露出した前記第2電極層は、前記隔離壁132によって画定される範囲に位置する部分を含み、続いて、第2サブステップを実行し、第2フォトマスクパターンを用いて露出された前記第2電極層123をエッチングして、前記隔離壁132によって画定される範囲に前記開放窓120a(図7に示すように)を形成する。
【0045】
本発明の他の実施例では、第2電極層123を第2基板から離れた側から露出させるプロセスは、上述したエッジトリミング領域123aを形成するプロセス、または上電極および下電極を形成するプロセスで実現することができる。開放窓120aを第2電極層123の露出した部分に形成することにより、一方、プロセスの難度を低減することができ、他方、共振動作領域への影響を回避することもできる。
【0046】
具体的には、開放窓120aは、隔離壁132と補助支持柱との間の隙間に対応してバルク音響波薄膜120を貫通して形成してもよく、開放窓120aは、バルク音響波薄膜120を貫通して補助支持柱133の頂部の一部を露出させてもよい。開放窓120aのエッチングプロセスは、ドライエッチングまたはウェットエッチングであってもよく、ドライエッチングプロセスは、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチングなどを含むが、これらに限定されず、例えば、フッ素系エッチングガスを用いて、第2電極層123の露出した部分を反応性イオンエッチングプロセスによりエッチングして、開放窓120aを形成する。前記フッ素系エッチングガスは、CF4、CHF3、C26、CH22、C48、NF3およびSF4のうちの少なくとも1つを含むことができ、エッチング電力は、歩留まり率を保証するために、例えば、0~500Wとする。また、前記開放窓120aを形成することは、エッジトリミング領域123aに位置する露出した第2電極層123をレーザ穿孔の方法によりエッチングして、前記隔離壁132によって画定される範囲内に前記開放窓120aを形成することができる。
【0047】
本発明の他の実施例では、エッジトリミング領域123aを形成することなく、バルク音響波薄膜120に開放窓120aを直接形成してもよい。すなわち、開放窓120aを形成するためには、第1電極層121、圧電層122および第2電極層123を貫通する必要がある。この場合、第1電極層121、圧電層122および第2電極層123をステップバイステップでエッチングして開放窓120aを形成するために、複数ステップエッチングプロセスを用いて前記開放窓120aを形成することができる。後続のエッチングプロセスにおいて支持構造によって画定される範囲内の不純物が開放窓120 aを介して円滑に排出されることを容易にするために、開放窓120aのサイズを大きくすることができ、例えば、直径が10μm~30μmである円孔または辺長が約10μm~30μmである角孔などとしても構わない。
【0048】
補助支持柱133を除去する過程で主支持壁131への影響を低減するために、前記開放窓120aは、第2基板200表面の正投影が隔離壁132によって画定される範囲内にあるべきであり、すなわち、前記開放窓120aは、隔離壁132および補助支持柱133を開放窓120aから入るエッチングプロセスガスまたはエッチング液と反応させて、隔離壁132によって画定される範囲内にて補助支持柱133を除去するプロセスを実行する。
【0049】
前記開放窓120aの開口サイズは、開放窓の設置が許容される領域範囲に応じて設定されてもよく、開放窓120aが複数であってもよい。選択可能には、補助支持柱133および隔離壁132の除去速度を速めるために、前記バルク音響波薄膜120に2つ以上の開放窓120aが形成される。複数の開放窓120aは、露出した第2電極層304上に隔離壁132によって画定される範囲に沿って分散されてもよい。選択可能には、開放窓120aは、隔離壁132によって画定される範囲内のコーナーの位置に設けられてもよい。一方、共振動作領域への影響を回避し、バルク音響波共振器のQ値を向上させることができ、他方、後続のエッチングプロセスおよび洗浄プロセスにおける物質がキャビティからの円滑に排出し、およびキャビティの乾燥に有利であり、また、寄生素子の面積を可能な限り減少させることができる。
【0050】
図8を参照すると、ステップS6を実行し、前記開放窓120aを用いて前記補助支持柱133および前記隔離壁132を除去する。
【0051】
補助支持柱133および隔離壁132の材質に基づいて、具体的には、ウエットプロセスやドライプロセスを用いて除去することができる。ウエットエッチングを例に、酸化ケイ素材質の補助支持柱と隔離壁132については、開放窓120aを介して希塩酸、BOE(緩衝酸化物エッチング液)またはDHF(希釈フッ化水素酸)などの酸化ケイ素をエッチングできるエッチング液を第2基板200と第2電極層123との間の隔離壁によって画定される範囲内に流すことにより、補助支持柱133および隔離壁132を除去することができる。ここで、BOEは、フッ化水素酸HFと、フッ化アンモニウムNH4Fと、水とを混合した溶液であり、40%のNH4F:49%のHF:H2Oの割合が、10:1:0~200:1:10であり、DHFのうち、49%のHFとH2Oの割合が、例えば30:1~500:1である。エッチング液は、前記開放窓120aを介して隔離壁132およびバルク音響波薄膜120によって画定される空間内に入り、前記隔離壁132の側壁および補助支持柱133の側壁に接触するか、または、まず、開放窓120aによって露出された補助支持柱133の頂部に接触し、その後、該補助支持柱133の周辺の隙間に入って他の補助支持柱133の側壁および隔離壁132の側壁と接触する。また、BOE溶液またはDHF溶液を選択使用して補助支持柱133と隔離壁132を除去する過程では、BOE溶液またはDHF溶液を用いて主支持壁131の範囲内に形成されたキャビティにて予備洗浄を行い、エッチング副生成物粒子や金属イオンなどの汚染物質を除去し、比較的短い洗浄時間以内に良好なキャビティ洗浄効果を得るために、比較的短い過エッチング時間(すなわち、洗浄時間)が存在してもよい。これにより、最終的に形成されるデバイス性能をさらに向上させる。
【0052】
補助支持柱133および隔離壁132を除去する過程では、圧電層122、第2電極層123、および第1電極層121への損傷を回避することが検討されるべきであるので、補助支持柱133および隔離壁132の材質とバルク音響波薄膜との間に、高いエッチング選択比のエッチング液を選択して、各補助支持柱133および隔離壁132を除去するのが好適である。すなわち、選択使用されたエッチング液は、補助支持柱133と隔離壁132を除去することができるが、バルク音響波薄膜を損傷しない又は損傷がより少ない。
【0053】
本発明の他の実施例では、補助支持柱133は、フォトレジスト、ドライ薄膜又は無定型炭素等の灰化除去しやすい材質を採用すれば、又は他の領域に保護層を覆った後、開放窓120aを介して第2基板200と第2電極層123との間に、隔離壁132によって画定される範囲内にプラズマプロセスガスを流して補助支持柱133を除去してもよい。具体的なプロセスパラメータについて、エッチング方法および要求に応じて具体的に設定することができる。
【0054】
本実施例では、補助支持柱133をエッチングする過程では、エッチング液やエッチングガスも露出した隔離壁132をエッチングするが、隔離壁132のバリアにより、主支持壁131が侵食される可能性を低減することができ、さらに、隔離壁132の幅や数、およびエッチング時間に対して設定を行うことにより、ステップS6において補助支持柱133と隔離壁132を同時に除去することができる。または、補助支持柱133を除去した後、同一のエッチング反応時間を長くすることにより、隔離壁132を除去することができる。すなわち、補助支持柱133および隔離壁132を順次除去し、隔離壁132を除去する反応が終了した後、長時間の侵食による主支持壁131に影響を与えないようにエッチング反応をできるだけ早く停止させてもよい。
【0055】
補助支持柱133および隔離壁132を除去した後、前記第2基板200、前記主支持壁131および前記バルク音響波薄膜120によって一つのキャビティ140に囲まれる。上述した薄膜バルク音響波共振器の作製方法を用いて、キャビティ140の範囲および形状は、上述したエッチングプロセスによって顕著な変化が生じることなく、従って、信頼性が良く、前記キャビティ140は、バルク音響波共振器の共振キャビティとすることができ、その安定性を向上させることは、バルク音響波共振器の性能を向上させるのに有利である。
【0056】
選択可能には、補助支持柱133および隔離壁132を除去した後、キャビティ140内の残留液体をきれいに除去し、さらに共振性能を保証するように開放窓120aを介してキャビティ140に脱イオン水を流入してキャビティ140を洗浄し(すなわち、洗い流す)、続いて、開放窓120aを用いてキャビティ140にイソプロパノールガス(IPA)を流入して、キャビティ140を乾燥させてもよい。また、開放窓120aの存在により、キャビティ140を洗浄・乾燥するステップでは、各開放窓120aを通気孔としてキャビティ140の内外環境を連通することができ、これにより、キャビティ140内外の気圧をバランスさせることができ、キャビティ140内外の気圧差が大きすぎることによるキャビティ140が破壊されるなどの問題を回避することができる。
【0057】
前記部分を用いて、キャビティ140と、バルク音響波薄膜と、第2基板200とを備える共振器本体構造を形成する。その後、主支持壁131の上方に第3基板(封着基板として機能する、cap wafer)を結合することができ、バルク音響波薄膜120と第3基板との間に、バルク音響波共振器のキャビティ140と連通する別のキャビティとして機能する隙間が設けられる。第3基板は、共振器本体構造をパッケージングして保護するので、上述した支持構造の補助支持柱133および隔離壁132は、各共振器作製プロセスにおいて支持機能の発揮を容易にするために、第3基板を結合する前に除去すればよい。本実施例では、上述した開放窓は、第3基板の閉鎖範囲内に配置されてよい。
【0058】
また、その後、第1電極層121および第2電極層123に電気的に接続されたパッドを第3基板により共振動作領域の両側にそれぞれ形成することにより、薄膜バルク音響波共振器を得ることが可能である。ここで、第1電極層121は、無線周波数(RF)信号等の電気信号を受信または提供する入力電極または出力電極として機能することができる。例えば、パターニングされた第2電極層123を入力電極として機能する場合には、パターニングされた第1電極層121を出力電極として機能することができ、パターニングされた第2電極層123を出力電極として機能する場合には、パターニングされた第1電極層121を入力電極として機能することができ、圧電層122は、パターニングされた第1電極層121またはパターニングされた第2電極層123で入力した電気信号をバルク音響波に変換する。例えば、圧電層122は、物理的振動により電気信号をバルク音響波に変換する。上記の作製過程を利用して得られた支持構造およびキャビティの信頼性を向上させたため、前記バルク音響波共振器の性能向上に寄与する。
【0059】
本実施例は、上述した方法を用いて形成された薄膜バルク音響波共振器をさらに含む。前記薄膜バルク音響波共振器は、第2基板200と、第2基板200上に設けられたバルク音響波薄膜とを備え、前記バルク音響波薄膜と第2基板200との間には、主支持壁131を含む支持構造が設けられ、前記第2基板200、前記主支持壁131および前記バルク音響波薄膜によって一つのキャビティ140に囲まれ、バルク音響波薄膜は、支持構造と接触することでキャビティ140の上方に懸架される。上述した薄膜バルク音響波共振器の作製方法は、キャビティ140の信頼性の向上に役立つため、作製された薄膜バルク音響波共振器の信頼性も向上することができ、更に共振性能の向上に役立つ。
【0060】
本実施例は、少なくとも1つの薄膜バルク音響波共振器を含むフィルタをさらに備え、前記薄膜バルク音響波共振器の形成は、上述した薄膜バルク音響波共振器の作製方法を含む。前記フィルタは、無線周波数フィルタであってもよい。そのうちの薄膜バルク音響波共振器の作製方法を改良することにより、共振器の性能と信頼性を向上させ、フィルタの性能と歩留まり率の向上に有利である。
【0061】
本実施例における方法および構造は、漸進的方式で説明され、後の方法および構造は、前の方法および構造と異なる点を重点として説明し、これに関連する点は参照して理解することができる。
【0062】
以上の説明は、本発明のより好ましい実施例の説明にすぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記開示された方法および技術内容を利用して本発明の技術的解決手段に可能な変更および修正を行うことができるため、本発明の技術的解決手段から逸脱していない内容や、本発明の技術的解決手段によって以上の実施例に対するいかなる簡単な修正や、均等変化および修飾は、いずれも本発明の技術的解決手段の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0063】
100 第1基板
200 第2基板
110 隔離層
120 バルク音響波薄膜
121 第1電極層
122 圧電層
123 第2電極層
130 支持構造
131 主支持壁
132 隔離壁
133 補助支持柱
123a エッジトリミング領域
120a 開放窓
140 キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8