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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】浴室床パネル接続装置及び浴室床構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20220726BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E04H1/12 301
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018190423
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059993
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】宮下 卓也
【審査官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204904(JP,A)
【文献】特開2013-112958(JP,A)
【文献】特開平11-029967(JP,A)
【文献】特開2013-170349(JP,A)
【文献】特開2011-196108(JP,A)
【文献】中国実用新案第2262583(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並べられた複数の床パネルを備えた浴室床における、隣接方向に隣り合う第1床パネル及び第2床パネルどうしを接続する浴室床パネル接続装置であって、
係合部材及び操作部材を有して、前記第1床パネルに設けられた第1接続部品と、
前記第2床パネルに設けられた第2接続部品と、を備え、
前記操作部材の操作によって、前記係合部材が、前記隣接方向と交差する変位方向に沿って着脱位置と拘束位置との間で移動可能であり、
前記第2接続部品が、前記着脱位置における前記係合部材と着脱可能かつ前記拘束位置における前記係合部材によって離間不能に拘束されることを特徴とする浴室床パネル接続装置。
【請求項2】
前記操作部材が、前記第1接続部品の上面に現れていることを特徴とする請求項1に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項3】
前記係合部材及び前記第2接続部品の一方には、受け入れ穴と、前記受け入れ穴の径より小さい幅を有して前記受け入れ穴から前記変位方向に沿って延びる拘束溝とが形成され、前記係合部材及び前記第2接続部品の他方が、前記隣接方向に沿って前記一方の側へ突出された係合突起を含み、前記係合突起が、前記拘束溝の幅より小径の突出軸部と、前記突出軸部の突出端部に形成された軸頭部とを有し、前記軸頭部が、前記受け入れ穴より小径かつ前記拘束溝の幅より大径であることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項4】
前記係合部材及び前記第2接続部品の一方における前記拘束溝の側縁部には、前記他方とは反対側へ隆起する拘束隆起部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項5】
前記拘束隆起部が、前記反対側を向く平坦頂面と、前記受け入れ穴の縁と前記平坦頂面とを連ねるとともに前記平坦頂面へ向かって前記反対側へ傾く傾斜案内面とを有していることを特徴とする請求項4に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項6】
前記第1接続部品又は第2接続部品が相手側を向く側面を有し、前記側面に水密材が設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項7】
前記第1接続部品が、前記第1床パネルに固定されて前記係合部材を昇降可能に保持するホルダ部材を有し、
前記操作部材が、前記ホルダ部材の上面部を回転可能に貫通して前記係合部材にねじ込まれたネジ部材であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項8】
前記ホルダ部材の上面部には、浴室の壁パネル又は扉枠を受ける壁・扉受け凹部が形成され、前記操作部材の頭部が、前記壁・扉受け凹部に現れていることを特徴とする請求項7に記載の浴室床パネル接続装置。
【請求項9】
互いに並べられた複数の床パネルを備えた浴室床構造であって、
隣接方向に隣り合う第1床パネル及び第2床パネルと、
前記第1床パネル及び第2床パネルどうしを接続する浴室床パネル接続装置と、備え、
前記浴室床パネル接続装置が、
係合部材及び操作部材を有して、前記第1床パネルに設けられた第1接続部品と、
前記第2床パネルに設けられた第2接続部品と、を含み、
前記操作部材の操作によって、前記係合部材が、前記隣接方向と交差する変位方向に沿って着脱位置と拘束位置との間で移動可能であり、
前記第2接続部品が、前記着脱位置における前記係合部材と着脱可能かつ前記拘束位置における前記係合部材によって離間不能に拘束されることを特徴とする浴室床構造。
【請求項10】
前記第1床パネルにおける浴室外周に面する側部には浴室の壁パネル又は扉枠を受ける第1枠部が設けられ、
前記第2床パネルにおける浴室外周に面する側部には前記壁パネル又は扉枠を受ける第2枠部が設けられ、前記第1、第2枠部どうしが一直線上に配置されており、
前記第1接続部品が、前記第1枠部における第2枠部側の端部に設けられ、
前記第2接続部品が、前記第2枠部における第1枠部側の端部に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の浴室床構造。
【請求項11】
前記浴室床パネル接続装置の上面部には、浴室壁パネル又は浴室扉枠を受ける壁・扉受け凹部が形成され、
前記操作部材が、前記壁・扉受け凹部に現れていることを特徴とする請求項10に記載の浴室床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室における床パネルの接続装置及び浴室床構造に関し、特に大型の浴室に適した浴室床パネル接続装置及び浴室床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にユニットバスの床パネルは、圧縮成形、積層成形などによって作製され、施工現場に搬入されて設置される。
介護施設など向けの大型浴室の床は、成形機のサイズの制約、搬入やハンドリングのしやすさなどを考慮して、複数の浴室床パネルによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-218799号公報
【文献】特開2000-230261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記複数の浴室床パネルは、建築現場に搬入され、並べられて敷設されるとともに、隣接する浴室床パネルどうしが接続される。一方、浴室床の周りに建築躯体の壁が構築されていて、浴室の平面視外側のスペースが狭隘ないしは殆ど無い現場も少なくない。その場合、隣接する浴室床パネルどうしを浴室の平面視外側からビスで固定するのは不可能である。
本発明は、かかる事情に鑑み、複数の床パネルが並べられた浴室床を構築する際に前記床パネルどうしを確実かつ容易に接続可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、互いに並べられた複数の床パネルを備えた浴室床における、隣接方向に隣り合う第1床パネル及び第2床パネルどうしを接続する浴室床パネル接続装置であって、
係合部材及び操作部材を有して、前記第1床パネルに設けられた第1接続部品と、
前記第2床パネルに設けられた第2接続部品と、を備え、
前記操作部材の操作によって、前記係合部材が、前記隣接方向と交差する変位方向に沿って着脱位置と拘束位置との間で移動可能であり、
前記第2接続部品が、前記着脱位置における前記係合部材と着脱可能かつ前記拘束位置における前記係合部材によって離間不能に拘束されることを特徴とする。
【0006】
建築現場において浴室床を施工する際は、第1床パネル及び第2床パネルを並べて配置する。かつ、係合部材を着脱位置に配置しておき、該係合部材と第2接続部品とを離間可能に係合させる。続いて、操作部材を操作することによって係合部材を拘束位置へ移動させる。これによって、係合部材と第2接続部品とが離間不能に拘束される。この結果、第1床パネル及び第2床パネルどうしを容易にかつしっかりと接続できる。
【0007】
操作部材が、第1接続部品の上面に現れていることが好ましい。これによって、操作部材を上方から操作することができる。例えば浴室の平面視外側に躯体壁が近接して配置されていても、操作部材を支障無く操作できる。
前記係合部材の変位方向は、好ましくは非水平であり、より好ましくは上下方向(鉛直)である。前記係合部材が着脱位置と拘束位置との間で昇降されることが好ましい。
【0008】
前記係合部材及び前記第2接続部品の一方には、受け入れ穴と、前記受け入れ穴の径より小さい幅を有して前記受け入れ穴から前記変位方向に沿って延びる拘束溝とが形成され、前記係合部材及び前記第2接続部品の他方が、前記隣接方向に沿って前記一方の側へ突出された係合突起を含み、前記係合突起が、前記拘束溝の幅より小径の突出軸部と、前記突出軸部の突出端部に形成された軸頭部とを有し、前記軸頭部が、前記受け入れ穴より小径かつ前記拘束溝の幅より大径であることが好ましい。
好ましくは、前記係合部材を着脱位置に配置したとき、受け入れ穴に係合突起が挿し込み可能となる。挿し込んだ状態で前記係合部材を拘束位置へ移動させると、係合突起が拘束溝へ移行され、軸頭部が拘束溝から抜けなくなり、拘束される。
【0009】
前記係合部材及び前記第2接続部品の一方における前記拘束溝の側縁部には、前記他方とは反対側へ隆起する拘束隆起部が形成されていることが好ましい。
前記係合突起を前記受け入れ穴に差し込んだ状態で、前記係合部材を着脱位置から拘束位置へ移動させると、軸頭部が拘束隆起部に乗り上げることで前記反対側へ押圧される。これによって、第1、第2接続部品どうしを強く拘束できる。ひいては、第1、第2床パネルどうしを強固に接合できる。
【0010】
前記拘束隆起部が、前記反対側を向く平坦頂面と、前記受け入れ穴の縁と前記平坦頂面とを連ねるとともに前記平坦頂面へ向かって前記反対側へ傾く傾斜案内面とを有していることが好ましい。
前記係合突起を前記受け入れ穴に差し込んだ状態で、前記係合部材を着脱位置から拘束位置へ移行させていくと、軸頭部が傾斜案内面に当たって案内されることで平坦頂面へスムーズに移行させることができる。平坦頂面に乗り上げた軸頭部は、平坦頂面と面接触される。これによって、強固な拘束状態を安定的に保持できる。
【0011】
前記第1接続部品又は第2接続部品が相手側を向く側面を有し、前記側面に水密材が設けられていることが好ましい。
これによって、水密材を安定的に設置できる。前記係合部材を拘束位置にすることで前記押圧力を作用させると、該押圧力によって前記水密材が強く圧縮される。これによって、水密材の防水能力を確実に発現させることができる。
【0012】
前記第1接続部品が、前記第1床パネルに固定されて前記係合部材を昇降可能に保持するホルダ部材を有し、
前記操作部材が、前記ホルダ部材の上面部を回転可能に貫通して前記係合部材にねじ込まれたネジ部材であることが好ましい。
これによって、操作部材の構成を簡易化できる。操作部材のネジ回し操作によって、係合部材が着脱位置と拘束位置との間で昇降(移動)される。係合部材をホルダ部材に保持させることによって、係合部材を安定的に昇降させることができる。操作部材を上方から操作できるから、浴室の平面視外側に躯体壁などがあっても支障無く、床パネル接続作業を行うことができる。
【0013】
前記ホルダ部材の上面部には、浴室の壁パネル又は扉枠を受ける壁・扉受け凹部が形成され、前記操作部材の頭部が、前記壁・扉受け凹部に現れていることが好ましい。
これによって、ホルダ部材の上方から壁・扉受け凹部を通して操作部材を操作できる。その後、浴室壁パネル又は浴室扉枠を設置することで、操作部材を壁パネル又は扉枠によって隠すことができる。
【0014】
本発明構造は、互いに並べられた複数の床パネルを備えた浴室床構造であって、
隣接方向に隣り合う第1床パネル及び第2床パネルと、
前記第1床パネル及び第2床パネルどうしを接続する浴室床パネル接続装置と、備え、
前記浴室床パネル接続装置が、
係合部材及び操作部材を有して、前記第1床パネルに設けられた第1接続部品と、
前記第2床パネルに設けられた第2接続部品と、を含み、
前記操作部材の操作によって、前記係合部材が、前記隣接方向と交差する変位方向に沿って着脱位置と拘束位置との間で移動可能であり、
前記第2接続部品が、前記着脱位置における前記係合部材と着脱可能かつ前記拘束位置における前記係合部材によって離間不能に拘束されることを特徴とする。
当該浴室床構造によれば、浴室床の床パネルどうしを確実かつ容易に接続することができる。
【0015】
前記第1床パネルにおける浴室外周に面する側部には浴室の壁パネル又は扉枠を受ける第1枠部が設けられ、
前記第2床パネルにおける浴室外周に面する側部には前記壁パネル又は扉枠を受ける第2枠部が設けられ、前記第1、第2枠部どうしが一直線上に配置されており、
前記第1接続部品が、前記第1枠部における第2枠部側の端部に設けられ、
前記第2接続部品が、前記第2枠部における第1枠部側の端部に設けられていることが好ましい。
これによって、浴室床パネル接続装置を介して第1枠部と第2枠部とが接続される。ひいては、第1床パネルと第2床パネルとが接続される。
【0016】
前記浴室床パネル接続装置の上面部には、浴室壁パネル又は浴室扉枠を受ける壁・扉受け凹部が形成され、
前記操作部材が、前記壁・扉受け凹部に現れていることが好ましい。
これによって、壁・扉受け凹部の上方から操作部材を操作できる。その後、浴室壁パネル又は浴室扉枠を設置することで、操作部材を壁パネル又は扉枠によって隠すことができる。浴室壁パネル又は浴室扉枠を、第1、第2枠部で受けるだけでなく、浴室床パネル接続装置によっても受けることができる。
浴室床パネル接続装置の壁・扉受け凹部を介して、前記第1、第2枠部の壁・扉受け凹部どうしが一直線に連なることがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の床パネルが並べられた浴室床において、床パネルどうしを確実かつ容易に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る浴室床を部分的に破断して示す平面図である。
図2図2は、前記浴室床の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿う浴室床の断面図である。
図4図4は、前記浴室床の浴室床パネルの分解斜視図である。
図5図5は、図3の円部Vを拡大して示す断面図である。
図6図6は、図1の円部VIを拡大して示す平面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿う正面断面図である。
図8図8は、図7のVIII線に沿う前記浴室床の浴室床パネル接続装置の側面断面図である。
図9図9は、前記浴室床パネル接続装置の分解斜視図である。
図10図10は、前記浴室床パネル接続装置によって隣接する浴室床パネルどうしを接続しようとする様子を示す正面断面図である。
図11図11は、前記浴室床パネル接続装置によって隣接する浴室床パネルどうしを接続するために突き当てた段階を示す正面断面図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に沿う、前記浴室床パネル接続装置の側面断面図である。
図13図13(a)は、図12のXIII-XIII線に沿う拡大断面図である。図13(b)は、前記浴室床パネル接続装置の係合部材を同図(a)の状態から少し上昇操作した段階の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
本実施形態における浴室1は、例えば介護施設などにおいて用いられる比較的大型の浴室である。図1に示すように、浴室1の全体が洗い場になっている。浴室1の供用時には、別途、移動式の浴槽(図示せず)を搬入可能である。
【0020】
図1及び図2に示すように、浴室床2(浴室床構造)は、架台3と、排水ピット4と、複数の浴室床パネル5と、表層シート6とを備えている。排水ピット4と、複数の浴室床パネル5とが、架台3に支持されている。浴室1の奥行方向D(図1において上下方向)の中央部(所定箇所)に排水ピット4が配置されている。浴室床2が、排水ピット4を挟んで2つの床部2aに分かれている。各床部2aには、複数(図1では例えば4つ)の浴室床パネル5が浴室1の幅方向(図1において左右)に並べられて設置されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、各浴室床パネル5は、平面視で長方形状(四角形状)になっており、その長手方向が浴室奥行方向Dへ向けられ、短手方向が浴室幅方向Wへ向けられている。図3に示すように、各浴室床パネル5ひいては床部2aの上面(浴室床面)には、奥行方向Dの端部から排水ピット4へ向かうにしたがって下へ傾く水流れ勾配が形成されている。
なお、図1及び図2に示すように、浴室床2の1のコーナーには、建物躯体の柱を避ける柱欠き2cが形成されている。前記コーナーの浴室床パネル5Cには柱欠き部5eが形成されている。
柱欠き2cの有無や位置は、浴室1を設置する建物躯体に応じて適宜変更できる。
【0022】
図4に示すように、各浴室床パネル5は、パネル体10と、枠部19を備えている。パネル体10は、パネル本体11と、下側補強板13と、上側補強板12を含む。パネル本体11は、発泡樹脂によって構成されている。パネル本体11の発泡樹脂材質は、例えばEPS(発泡ポリスチレン)であり、発泡倍率は15倍~30倍程度である。なお、前記発泡樹脂材質は、これに限られず、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等であってもよい。発泡樹脂製のパネル本体11は断熱性を有している。
【0023】
前記発泡樹脂製のパネル本体11が上側補強板12及び下側補強板13によって上下から挟まれ、サンドイッチ構造となっている。これによって、パネル体10の製造コストを安価にでき、かつ所要強度を確保できる。
【0024】
補強板12,13は、ステンレス、鉄、鋼等の金属板や樹脂被覆化粧鋼板にて構成されている。なお、補強板12,13の材質は金属主体に限らず、熱硬化性樹脂などの硬質樹脂であってもよい。各補強板12,13の4つの端部にはそれぞれ側板部12b,13bが一体に設けられている。図5に示すように、パネル本体11と下側補強板13とは、接着剤15によって接着され、かつパネル本体11と上側補強板12とは、接着剤15Aによって接着されている。接着剤15,15Aとしては、例えば熱硬化性の2液混合ウレタン系接着剤が用いられているが、これに限られず、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤などであってもよい。接着剤15,15Aは、パネル本体11と補強板13,12との間の全面に塗布することが好ましいが、所要の接合性を得られるのであれば部分的に塗布してもよい。
【0025】
図1及び図2に示すように、幅方向Wに隣り合う浴室床パネル5のパネル体10の上面に跨って、表層シート6が敷設されている。表層シート6は、比較的軟質の樹脂やシリコンラバー等によって構成されている。表層シート6は、防水性を有している。更に、表層シート6によって、浴室床2の温熱感性及びクッション性が確保されている。表層シート6は、施工現場で適切な大きさに切断してもよく、予め工場でNC切断機などを用いて定型サイズにしておいてもよい。
図5に示すように、各パネル体10の上側補強板12の上面に両面粘着テープ14が積層されている。表層シート6と上側補強板12とが、両面粘着テープ14を介して接合されている。若しくは、表層シート6と上側補強板12とが、接着剤によって接着されていてもよい。
【0026】
図1及び図2に示すように、浴室床2の外周部の全周には、外周枠9が設けられている。外周枠9は、浴室床パネル5の浴室外周に面する外側部5w,5dごとに枠部19に分割されている。各浴室床パネル5における排水ピット4とは反対側の外側部5wには、枠部19Wが幅方向Wへ延びるように配置されている。浴室床2の幅方向Wの両端の浴室床パネル5における、外側部5wと交差する外側部5dには、枠部19Dが浴室奥行方向Dへ延びるように配置されている。
各浴室床パネル5における、隣接する浴室床パネルとの隣接側部5b及び排水ピット側部5aには、枠部19が設けられていない。
排水ピット4の短手側縁には、短いピット枠部19Cが設けられている。排水ピット4を挟んで両側の奥行方向枠部19Dが、ピット枠部19Cを介して平面視で一直線に連なっている。
【0027】
図4に示すように、枠部19ひいては外周枠9は、壁・扉受け部17と、表層端受け部18とを含む。図3に示すように、壁・扉受け部17の上面部には、浴室壁パネル7又は浴室扉枠(図示せず)を受ける壁・扉受け凹部17fが形成されている。表層端受け部18は、表層シート6における排水ピット4側以外の端部6dを受けている。これら受け部19a,19bは、それぞれアルミの押出型材によって構成されている。
【0028】
図1及び図4に示すように、幅方向枠部19Wにおける壁・扉受け部17及び表層端受け部18は、共に、浴室幅方向W(幅方向側部5wの長手方向)に沿って水平に延びている。
奥行方向枠部19Dにおいては、壁・扉受け部17は、浴室奥行方向D(奥行方向側部5dの長手方向)に沿って水平に延びる一方、表層端受け部18は、前記水流れ勾配に沿うように壁・扉受け部17に対して斜めに延びている。図3及び図4に示すように、奥行方向枠部19Dにおいては、壁・扉受け部17が表層端受け部18よりも上側へ突出され、該壁・扉受け部17の上側突出部分の側部17bが浴室内側に露出されている。
【0029】
図1及び図6に示すように、浴室幅方向W(隣接方向)に隣接する枠部19Wどうし間に浴室床パネル接続装置20が介在されている。接続装置20を介して、これら隣接する2つの枠部19どうしが一直線に接続され、ひいては隣接する2つの浴室床パネル5,5どうしが接続されている。
以下、前記隣接する2つの枠部19どうしを区別するときは、一方を「第1枠部19A」と称し、他方を「第2枠部19B」と称す。前記隣接する2つの浴室床パネル5どうしを区別するときは、一方を「第1床パネル5A」と称し、他方を「第2床パネル5B」と称す。
【0030】
図7に示すように、接続装置20は、第1接続部品30と、第2接続部品40を備えている。第1接続部品30は、第1床パネル5Aの第1枠部19Aにおける第2枠部側の端部に設けられている。第2接続部品40は、第2床パネル5Bの第2枠部19Bにおける第1枠部側の端部に設けられている。
【0031】
図8及び図9に示すように、第1接続部品30は、ホルダ部材31と、係合部材32と、操作部材33と、補強金具34を有している。
ホルダ部材31は、硬質樹脂によって構成され、上下に長いケース状になっている。図4に示すように、幅方向Wから矢視したホルダ部材31の側面視形状は、アルミ押出型材からなる壁・扉受け部17の断面形状とほぼ同一に形成されている。ホルダ部材31の上面部には、壁・扉受け凹部31fが形成されている。壁・扉受け凹部31fは、枠部19の壁・扉受け凹部17fと同一断面に形成され、浴室壁パネル7(又は浴室扉枠)の底部を受ける。図6に示すように、隣接する枠部19A,19Bの壁・扉受け凹部17f,17fどうしが、ホルダ部材31の壁・扉受け凹部31fを介して一直線に連なっている。
【0032】
図7及び図9に示すように、ホルダ部材31における第1枠部19A側の第1側板31aには、上下一対の切欠凹部31dが形成されている。第2枠部19B側の第2側板31bには、上下一対の切欠凹部31eが形成されている。
【0033】
図7に示すように、第1側板31aの外側面には、水密材51が設けられている。第2側板31bの外側面(相手側を向く側面)には、水密材52が設けられている。これら水密材51,52は、例えばEPDMの発泡体によって構成されている。各側板31a,31bの外側面は面状であるから、水密材51,52を安定的に設置することができる。
【0034】
ホルダ部材31は、上下一対の固定ねじ37によって第1枠部19Aの端面に固定されている。第1側板31aの内側面には平板状の補強金具34が添えられている。固定ねじ37が、補強金具34の挿通孔34d及び第1側板31aの切欠凹部31dを通して、第1枠部19Aにねじ込まれている。固定ねじ37の頭部と第1側板31aとの間に補強金具34が挟み付けられている。かつ水密材51が第1枠部19Aの端面と第1側板31aとの間に挟まれて圧縮されている。これによって、第1枠部19Aとホルダ部材31との間が、水密材51によって防水処理されている。
【0035】
図7及び図8に示すように、ホルダ部材31の内部に係合部材32が収容されている。係合部材32は、縦板部32aと、上板部32bと、底板部32dを有し、上下に長いコ字状の金具によって構成されている。縦板部32aが、枠部19A,19Bどうしの対向方向と直交するように向けられて、第2側板31bの内側面に添うように配置されている。縦板部32a(係合部材及び第2接続部品の一方)には、上下一対の係合受け部35が形成されている。なお、係合部材32における係合受け部35の数は、1つだけでもよく、3つ以上でもよい。
【0036】
図9に示すように、各係合受け部35は、受け入れ穴35aと、拘束溝35bと、拘束隆起部36を含む。受け入れ穴35aは、円形に形成され、縦板部32aの厚さ方向に貫通している。受け入れ穴35aから下方へ(前記変位方向に沿って)拘束溝35bが延びている。拘束溝35bの幅は、受け入れ穴35aの直径より小さい。
【0037】
縦板部32aにおける拘束溝35bの両側の側縁部には、それぞれ切り起こしによって拘束隆起部36が形成されている。一対の拘束隆起部36が、拘束溝35bを挟んで対峙するように配置されている。各拘束隆起部36は、縦板部32aから第1側板31a(係合部材及び第2接続部品の他方とは反対側)へ隆起されている。
【0038】
拘束隆起部36における第1側板31aを向く表側面は、平坦頂面36aと、傾斜案内面36bとを含む。傾斜案内面36bは、受け入れ穴35aの下側の縁に連なるとともに、そこから下方へ向かって第1側板31a側へ傾けられている。傾斜案内面36bの下端部に平坦頂面36aが連なっている。平坦頂面36aは、縦板部32aにおける第1側板31aを向く表側面よりも第1側板31a側へ突出され、かつ枠部19A,19Bどうしの対向方向Wひいては床パネル5A,5Bどうしの隣接方向に対して直交している。
【0039】
図7及び図10に示すように、係合部材32は、ホルダ部材31内において上下(前記隣接方向と交差する変位方向)に変位(昇降)可能である。図7及び図8に示すように、ホルダ部材31には、前記昇降用の操作部材33が設けられている。操作部材33は、ネジによって構成されている。該操作部材33が、ホルダ部材31の上板部31c(上面部)を貫通して、ホルダ部材31の内部空間に垂下され、係合部材32の上板部32bにねじ込まれている。操作部材33を構成するネジの頭部33a(操作部)は、上板部31cに回転可能に係止されている。頭部33aは、ホルダ部材31の壁・扉受け凹部31fの底部に現れている。
【0040】
操作部材33のネジ回し操作によって、係合部材32が、上側の拘束位置(図7)と下側の着脱位置(図10)との間で昇降される。このとき、係合部材32が操作部材33からのトルクで回転しないようにホルダ部材31によって保持される。
図10図12に示すように、係合部材32が着脱位置のとき、底板部32dがホルダ部材31の底部に着座される。かつ一対の受け入れ穴35aがそれぞれ対応する切欠凹部31eと同じ高さに位置され、これら受け入れ穴35aと切欠凹部31eとが連通される。
図7及び図8に示すように、係合部材32が拘束位置のとき、上板部32bがホルダ部材31の上板部31cの下面に当たっている。かつ、受け入れ穴35aは対応する切欠凹部31eの上方へずれ、拘束溝35b及び拘束隆起部36が切欠凹部31eの高さに位置されている。
【0041】
図7及び図9に示すように、第2枠部19Bに設けられた第2接続部品40は、上下一対の接続ネジ部材41を含む。各接続ネジ部材41は、第2枠部19Bの長手方向に向けられて、第2枠部19Bにおける第1枠部19Aとの対向端部にねじ込まれている。上側の接続ネジ部材41の配置高さは、第1接続部品30の上側の切欠凹部31eの配置高さと一致している。下側の接続ネジ部材41の配置高さは、第1接続部品30の下側の切欠凹部31eの配置高さと一致している。
【0042】
接続ネジ部材41の首下部における頭部側の部分の外周に筒部材42が嵌められている。これによって、接続ネジ部材41が、筒部材42の配置部分において大径化された段付きネジとなっている。接続ネジ部材41における前記筒部材42の配置部分及び頭部は、第2枠部19Bの前記対向端部から第1枠部19A側へ突出され、係合突起43となっている。係合突起43は、突出軸部44と、軸頭部45を含む。接続ネジ部材41における筒部材42の配置部分及び筒部材42によって、突出軸部44が構成されている。図8に示すように、突出軸部44の直径(筒部材42の外直径)は拘束溝35bの幅より小さい。
図7に示すように、筒部材42における第2枠部19B側の端部(前記段付きネジの段差)は、第2枠部19Bの端面に突き当たっている。
筒部材42における第1枠部19A側の端部は、軸頭部45に突き当たっている。
第2接続部品40として、接続ネジ部材41と筒部材42とが一体化された形状の一体物の段付きネジを用いてもよい。
【0043】
突出軸部44の突出端部(図7において左端部)には、接続ネジ部材41の頭部からなる軸頭部45が設けられている。軸頭部45は、筒部材42の外径より大径であり、ひいては突出軸部44より大径である。かつ、軸頭部45の直径は、係合部材32の受け入れ穴35aの直径より小さく、拘束溝35bの幅より大きい。
【0044】
係合突起43は、係合部材32と係合可能である。
図10に示すように、係合部材32が着脱位置のとき、上下一対の受け入れ穴35aが、それぞれ対応する係合突起43と同じ高さに位置される。床パネル5A,5Bを水平に接近離間させることによって、係合突起43が受け入れ穴35aに挿抜可能である。図11に示すように、床パネル5A,5Bの対向端面どうしを突き当てた状態では、係合突起43が受け入れ穴35aに受け入れられる。詳しくは、突出軸部44が、受け入れ穴35aを貫通し、軸頭部45が受け入れ穴35aの周縁の縦板部32aより第1側板31aの側へ突出して位置される。
【0045】
図7及び図8に示すように、接続状態の床パネル5A,5Bにおいては、両者間の接続装置20の係合部材32が拘束位置に配置されている。拘束位置においては、上下一対の係合受け部35の拘束溝35b及び拘束隆起部36がそれぞれ対応する係合突起43と同じ高さに位置されている。係合突起43の突出軸部44は、拘束溝35bに通され、かつ軸頭部45が拘束隆起部36の平坦頂面36aに当たって引っ掛かっている。しかも、軸頭部45は、平坦頂面36aに強く押し当てられて拘束されている。これによって、第1、第2接続部品30,40どうしが離間不能に係合され、更には第1、第2枠部19A,19Bどうし、ひいては床パネル5A,5Bどうしが離間不能に接続されている。
【0046】
なお、図1に示すように、排水ピット4の短手側縁のピット枠部19Cと各奥行方向枠部19Dとは、接続装置29を介して接続されている。接続装置29は、幅方向枠部19W,19Wどうし用の前記接続装置20と同一構造になっている。
【0047】
建築現場において浴室床2を施工する際は、まず架台3を設置する。その上に排水ピット4を架設する。さらに、複数の床パネル5を並べて配置し、かつ隣接する床パネル5(5A,5B)どうしを、次のようにして接続する。
図10に示すように、接続装置20の係合部材32は着脱位置に配置しておく。そして、床パネル5A,5Bどうしを水平に対峙させる。図11及び図12に示すように、これら床パネル5A,5Bどうしを互いに接近させて、突き当てる。接近操作に伴って、第2床パネル5Bの係合突起43が、第1床パネル5Aの切欠凹部31eを通して、受け入れ穴35aに受け入れられる。
続いて、操作部材33を操作することによって、図7及び図8に示すように、係合部材32を拘束位置まで上昇させる。操作部材33の頭部33aをホルダ部材31の上板部31cに配置することによって、操作部材33を上方から容易にネジ回し操作できる。したがって、浴室床2の平面視外側に躯体壁8などが近接して配置されていても、操作部材33の操作に支障を来すことがない。
係合部材32が拘束位置へ向かって上昇されるのに伴って、係合突起43の突出軸部44が、受け入れ穴35aから拘束溝35bへ移行される。さらに図13(a)~同図(b)に拡大して示すように、軸頭部45が、拘束隆起部36の傾斜案内面36bに沿って第1枠部19A側(図13において左側)へ押されながら平坦頂面36a側へ移行される。傾斜された案内面36bによって軸頭部45を平坦頂面36a側へスムーズに案内できる。これに伴って、係合突起43ひいては第2枠部19Bが第1枠部19A側へ引き寄せられる。
【0048】
係合部材32が拘束位置に到達すると、軸頭部45が、拘束隆起部36の平坦頂面36aに乗り上げ、第1枠部19A側へ強く押圧される。このため、係合突起43を介して第2枠部19Bには、第1枠部19A側へ向かって強い押圧力ないしは引き寄せ力が作用する。言い換えると、第1、第2枠部19A,19Bどうしが強く圧接される。これによって、第1、第2床パネル5A,5Bどうしを強固に接合できる。更に、前記引き寄せ力によって水密材52が強く圧縮される。これによって、水密材52の防水能力を確実に発現させることができ、第1接続部品30と第2枠部19Bとの間を確実にシールできる。
このようにして、浴室の平面視外側のスペースが狭隘ないしは殆ど無い建築現場であっても、床パネル5どうしを容易かつ確実に接続できる。
【0049】
その後、表層シート6の敷設、浴室壁パネル7(又は扉枠)の設置作業などを行う。浴室壁パネル7(又は扉枠)の底部は、枠部19の壁・扉受け凹部17fに嵌め入れられるだけでなく、接続装置20の壁・扉受け凹部31fにも嵌め入れられる。したがって、操作部材33を浴室壁パネル7(又は扉枠)によって隠すことができる。操作部材33が壁・扉受け部17の側部17bなどに露出して浴室内から見えることもない。
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、接続装置20が、隣接する第1、第2床パネル5A,5Bのパネル体10,10どうし間に設けられていてもよい。
第1床パネル5A側の第1接続部品30の係合部材が係合突起を有し、該係合突起が操作部材33によって着脱位置と拘束位置との間で移動可能であってもよい。かつ第2床パネル5B側の第2接続部品40が、前記第1接続部品30の係合突起に対する受け入れ穴35a及び拘束溝35bを有し、更には拘束隆起部36を有していてもよい。
拘束位置が着脱位置に対して下方に位置されていてもよい。係合部材を下降させることによって拘束位置になるようにしてもよい。
さらに、操作部材33による係合部材の変位方向は、床パネル5A,5Bの隣接方向に対して交差していればよく、好ましくは非水平であればよく、鉛直方向に限られず、鉛直方向に対して斜め方向であってもよい。
枠部19は、必ずしも浴室幅方向Wの全域ないしは浴室外周の全域に設けられている必要は無く、浴室幅方向Wないしは浴室外周の一部だけに部分的に設けられていてもよい。
本発明の浴室床構造は、介護施設などの大型浴室に限らず、戸建て住宅や集合住宅その他の浴室にも適用できる。
床パネルはFRP製であってもよい。
浴室が、浴槽及び浴槽受けパンを有していてもよい。本発明の浴室床パネルが、前記浴槽受けパンを含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば介護施設などの大型の浴室に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
W 浴室幅方向(隣接方向)
1 浴室
2 浴室床(浴室床構造)
5 床パネル
5A 第1床パネル
5B 第2床パネル
7 浴室壁パネル
8 躯体壁
17 壁・扉受け部
17f 壁・扉受け凹部
19 枠部
19A 第1枠部
19B 第2枠部
20 浴室床パネル接続装置
30 第1接続部品
31 ホルダ部材
31c 上板部(上面部)
31f 壁・扉受け凹部
32 係合部材
33 操作部材(ネジ部材)
33a 頭部(操作部)
35 係合受け部
35a 受け入れ穴
35b 拘束溝
36 拘束隆起部
36b 傾斜案内面
36a 平坦頂面
40 第2接続部品
43 係合突起
44 突出軸部
45 軸頭部
52 水密材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13