(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】食品洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A23N 12/02 20060101AFI20220726BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220726BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20220726BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220726BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A23N12/02 Z
A61L9/01 B
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
A61L9/014
(21)【出願番号】P 2017185110
(22)【出願日】2017-09-26
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 喜智
(72)【発明者】
【氏名】小山 聡
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】古川 修三
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081289(JP,A)
【文献】実開昭54-017848(JP,U)
【文献】特開2008-246411(JP,A)
【文献】特開2002-113078(JP,A)
【文献】特開平09-028364(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/20-20/28
20/30-20/34
B01D 53/02-53/12
A23N 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素成分を含有する電解水で食品を洗浄する装置であって、
電解水の給水口を有し、内部に密閉空間を形成する洗浄槽と、
前記洗浄槽の側壁を貫通し、前記洗浄槽内に溜められた電解水の水位よりも上方に位置し、前記空間内の空気を前記空間外に排出するための排出口と、
前記空間内の空気を吸引して前記空間外への排出を促す吸引ポンプと、
前記排出口と前記吸引ポンプとの間に設けられ、食品の洗浄に伴い電解水から揮発する塩素ガスによる塩素臭を吸着させて塩素臭を低減させるための塩素臭吸着フィルターとを備え、
前記塩素臭吸着フィルターは、
交換可能にユニット化されており、
塩素成分を物理吸着可能な物理吸着層と、
前記物理吸着層に重ね合わせられ、塩素成分を化学吸着可能な化学吸着層と、
前記化学吸着層
の空気の流れの下流側に重ね合わせられ、塩素成分と反応して呈色する物質が添着している呈色層とを備える、食品洗浄装置。
【請求項2】
前記物理吸着層は、塩素成分を捕捉する細孔径2nm以下のミクロ孔を含む、請求項1に記載の食品洗浄装置。
【請求項3】
前記物理吸着層は、細孔径2nm以下のミクロ孔と、細孔径2nm以上50nm以下のメソ孔と、細孔径50nm以上のマクロ孔とを含む活性炭を有する、請求項1または2に記載の食品洗浄装置。
【請求項4】
前記化学吸着層は、通気性を有する基材を含み、
前記基材には、イオン交換樹脂層が添着している、請求項1~3のいずれかに記載の食品洗浄装置。
【請求項5】
前記化学吸着層は、細孔径2nm以下のミクロ孔と、細孔径2nm以上50nm以下のメソ孔と、細孔径50nm以上のマクロ孔とを含む活性炭を有し、
前記物理吸着層の前記活性炭におけるミクロ孔の占める割合は、前記化学吸着層の前記活性炭におけるミクロ孔の占める割合よりも大きい、請求項3または4に記載の食品洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素成分を含有する電解水により食品を洗浄する食品洗浄装置用の塩素臭吸着フィルターおよび食品洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
青果などの食品を殺菌または除菌するために、塩素成分を含有する電解水が用いられる。塩素成分を含有する電解水を用いる場合、食品の洗浄中に、電解水から塩素ガスが揮発する現象が生じる。そのため、特開2003-305469号公報(特許文献1)では、電解水から揮発するガスを活性炭によって吸引して、ガス中の塩素成分を除去し、塩素成分を含有しない空気として排気する電解水生成装置が提案されている。
【0003】
また、特開2003-47649号公報(特許文献2)に示されるように、ハニカム構造体のセル内部に活性炭を充填し、悪臭成分を除去することができる脱臭フィルターも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-305469号公報
【文献】特開2003-47649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2では、吸着剤として活性炭を用いているため、条件によってはガス中の塩素成分を除去できる可能性があるが、塩素成分以外の物質も吸着してしまうため、効率的ではない。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、食品洗浄に伴って発生する塩素ガスによる臭気を効果的に低減させることができる食品洗浄装置用の塩素臭吸着フィルターおよび食品洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従う食品洗浄装置用の塩素臭吸着フィルターは、塩素成分を含有する電解水で食品を洗浄する食品洗浄装置において、食品の洗浄に伴い電解水から揮発する塩素ガスによる塩素臭を吸着させて塩素臭を低減させるための塩素臭吸着フィルターであって、塩素成分を物理吸着可能な物理吸着層と、物理吸着層に重ね合わせられ、塩素成分を化学吸着可能な化学吸着層とを備える。
【0008】
好ましくは、物理吸着層は、塩素成分を捕捉する細孔径2nm以下のミクロ孔を含む。
【0009】
好ましくは、物理吸着層は、細孔径2nm以下のミクロ孔と、細孔径2nm以上50nm以下のメソ孔と、細孔径50nm以上のマクロ孔とを含む活性炭を有する。
【0010】
好ましくは、化学吸着層は、通気性を有する基材を含み、基材には、イオン交換樹脂層が添着している。
【0011】
好ましくは、化学吸着層は、細孔径2nm以下のミクロ孔と、細孔径2nm以上50nm以下のメソ孔と、細孔径50nm以上のマクロ孔とを含む活性炭を有し、物理吸着層の活性炭におけるミクロ孔の占める割合は、化学吸着層の活性炭におけるミクロ孔の占める割合よりも大きい。
【0012】
好ましくは、塩素臭吸着フィルターは、化学吸着層に重ね合わせられ、塩素成分と反応して呈色する物質が添着している呈色層をさらに備える。
【0013】
この発明のある局面に従う食品洗浄装置用の塩素臭吸着フィルターは、塩素成分を含有する電解水で食品を洗浄する装置であって、電解水の給水口を有し、内部に密閉空間を形成する洗浄槽と、洗浄槽を貫通し、空間内の空気を空間外に排出するための排出口と、排出口に設けられ、食品の洗浄に伴い洗浄タンク内の電解水から揮発することによって、洗浄槽内の空間に溜まる塩素ガスによる塩素臭を吸着させるための塩素臭吸着フィルターとを備え、塩素臭吸着フィルターは、塩素成分を物理吸着可能な物理吸着層と、空間外側において物理吸着層に重ね合わせられ、塩素成分を化学吸着可能な化学吸着層とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、食品洗浄に伴って発生する塩素ガスによる臭気を効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の外観例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態における洗浄タンクの外観斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の基本の配管構成例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における食品洗浄装置を模式的に示す図である。
【
図7】塩素臭吸着フィルターが塩素成分を吸着する仕組みを説明するための模式図である。
【
図8】塩素臭吸着フィルターが塩素成分を吸着する仕組みを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
(基本構成について)
はじめに、
図1~
図3を参照して、本実施の形態に係る食品洗浄装置1の基本構成について説明する。
【0018】
食品洗浄装置1は、塩素成分を含有する電解水で食品を洗浄する装置であり、洗浄槽2を備えている。
【0019】
洗浄槽2は、たとえば立方体形状の筐体90と、筐体90内に設けられた洗浄タンク10とを含む。洗浄タンク10には、被洗浄物としての食品を収納する網カゴ11が設置される。洗浄タンク10は、たとえば、平面視矩形状の水槽であり、略矩形形状の底壁31と、底壁31の四辺それぞれに下端が連結された4つの側壁32とで構成されている。なお、
図2において、矢印A1は洗浄タンク10の上方を示し、矢印A2は洗浄タンク10の正面方向(前方)を示している。
【0020】
図1に示されるように、筐体90には、洗浄タンク10への食品の投入および取り出しのために開放可能な蓋91と、洗浄の開始および停止を指示するための操作ボタン93とが設けられている。筐体90の蓋91が閉鎖状態の場合、筐体90の内部に密閉空間が形成される。
【0021】
図3に示されるように、食品洗浄装置1は、基本の配管構成として、給水経路21と、排水経路22と、電解水循環経路23とを有している。
【0022】
給水経路21は、洗浄タンク10の給水口12に接続されている。給水経路21上には、制御装置によって開閉制御される給水バルブ21aが設けられている。給水バルブ21aが開状態のとき、塩素成分を含有する電解水が給水経路21を介して洗浄タンク10に供給される。給水経路21を介して供給される電解水は、たとえば40mg/kg程度の有効塩素濃度の微酸性電解水である。給水口12は、洗浄タンク10の側壁32に位置する。
【0023】
排水経路22は、洗浄タンク10の排水口13に接続されている。排水経路22上には、制御装置によって開閉制御される排水バルブ22aが設けられている。排水バルブ22aが開状態のとき、洗浄タンク10内の電解水が排水経路22を介して排水される。排水口13は、洗浄タンク10の底壁31に位置する。
【0024】
電解水循環経路23は、排水経路22から分岐し、洗浄タンク10の戻し口14に接続されている。戻し口14は、側壁32に位置する。電解水循環経路23は、途中位置に循環ポンプ23aを有している。排水バルブ22aが閉状態で、かつ、循環ポンプ23aがONのとき、洗浄タンク10内の電解水が電解水循環経路23を介して循環する。電解水循環経路23は、洗浄タンク10の下部から取水した電解水を、戻し口14から洗浄タンク10に戻す経路であればよく、排水経路22とは独立して設けられていてもよい。
【0025】
なお、洗浄タンク10の側壁32には、給水口12および戻し口14よりも上方に位置するオーバーフロー口15が設けられている。これにより、食品の洗浄期間において所定の水位を超えた電解水がオーバーフロー口15から外部に排水される。
【0026】
本実施の形態の食品洗浄装置1は、たとえば、側壁32に設けられた給水口12および電解水循環経路23の戻し口14から供給される電解水によって洗浄タンク10内に水流を発生させ、その水流によって食品を洗浄する構成である。この場合、給水口12および戻し口14の上下方向位置が互いに異なっており、給水口12からの洗浄水の流水方向と戻し口14からの洗浄水の流水方向とが、立体的に交差することが望ましい。
【0027】
洗浄タンク10の4つの側壁32は、正面側に位置する側壁32aと、正面から見て右側に位置する側壁32bと、背面側に位置して側壁32aに対面する側壁32cと、正面から見て左側に位置して側壁32bに対面する側壁32dとで構成される。本実施の形態において、給水口12は、たとえば背面側の側壁32cに設けられ、戻し口14は、側壁32cと交差する、たとえば右側の側壁32bに設けられる。
【0028】
塩素成分を含有する電解水によって洗浄タンク10内の食品を洗浄する場合、食品の洗浄に伴って、洗浄タンク10内の電解水から塩素ガスが揮発する。公知の蓋付きの洗浄処理装置において塩素成分を含有する電解水によって食品を洗浄する場合、筐体内の空間(上部空間)には、揮発した塩素ガスによる臭気、すなわち塩素臭が充満する。そのため、公知の食品洗浄装置において食品洗浄が完了した後に、蓋を開放して食品を取り出す際に、空間に溜まっていた塩素ガスの臭気成分が食品に付着する可能性がある。また、筐体内部から一気に塩素臭が放出されるため、周辺環境が汚染されるおそれもある。
【0029】
そこで、本実施の形態に係る食品洗浄装置1は、空間に溜まる塩素ガスによる塩素臭を低減させるために、空間94(
図4において想像線で示す)内の塩素ガスを空間94外に排出するための排出口41に塩素臭吸着フィルター50(
図5)を備えている。
【0030】
排出口41は、排出管42と、排出管42の下流側に設けられ、塩素臭吸着フィルター50を保持する保持部43とを含む。排出管42には、空間94内の空気を吸引して空間94外への排出を促す吸引ポンプ44が設けられている。保持部43は、排出管42よりも幅広に設けられ、その内部に塩素臭吸着フィルター50が保持されている。塩素臭吸着フィルター50については、後述する。
【0031】
排出口41は、洗浄タンク10の側壁32dを貫通している。さらに、図示しないが、排出口41は、筐体2を貫通している。
【0032】
図3,4に示すように、本実施の形態の洗浄タンク10は、給水口12、排水口13、戻し口14、オーバーフロー口15、および、排出口41を有する。排出口41は、オーバーフロー口15よりも上方に位置し、空間94に面する。排出口41の位置は、側壁32の上部(蓋91)に近い位置が好ましい。排出口41は、蓋91に設けられてもよい。また、排出口41は、給水口12および戻し口14が設けられた側壁32dとは異なる側壁32a~32cのいずれかに設けられていてもよい。
【0033】
(塩素臭吸着フィルターについて)
次に、
図5,
図6を参照して、食品洗浄装置1の塩素臭吸着フィルター50について説明する。なお、
図6において、矢印60は、排出口41の排出管42内における空気の流れを示す。
【0034】
塩素臭吸着フィルター50は、塩素成分を物理吸着可能な物理吸着層51と、物理吸着層51に重ね合わせられ、塩素成分を化学吸着可能な化学吸着層52と、化学吸着層52に重ね合わせられ、塩素成分と反応して呈色する物質が添着している呈色層53とを備える。
【0035】
物理吸着層51は、排出管42の空気の流れの上流側に位置する。物理吸着層51は、塩素成分のサイズに合わせた細孔を有しており、たとえばファンデルワールス力によりその細孔に塩素成分を吸着させることが可能である。
【0036】
物理吸着層51は、たとえば、活性炭により形成される。
図6を特に参照して、物理吸着層51に用いられる活性炭は、細孔径2nm以下のミクロ孔101と、細孔径2nm以上50nm以下のメソ孔102と、細孔径50nm以上のマクロ孔103とを含む。細孔径2nm以下のミクロ孔101は、塩素成分のサイズと同程度であるため、塩素成分を捕捉する。
【0037】
物理吸着層51は、たとえば、粉状の活性炭を繊維に練り込んだ不織布またはフィルターである。物理吸着層51をフィルターで形成する場合、たとえば、ハニカム構造、網目構造などにする。ハニカム構造のフィルターを用いれば、通気性および強度を向上させることができる。また、網目構造のフィルターを用いれば、薄型化および軽量化することができる。
【0038】
化学吸着層52は、物理吸着層51の空気の流れの下流側(空間94の外側)に位置する。化学吸着層52は、イオン反応を伴う吸着であり、塩素成分とイオン反応することで吸着させることが可能な層である。
【0039】
物理吸着層51と同様に、化学吸着層52は、たとえば、活性炭により形成される。化学吸着層52に用いられる活性炭は、細孔径2nm以下のミクロ孔101と、細孔径2nm以上50nm以下のメソ孔102と、細孔径50nm以上のマクロ孔103とを含む。化学吸着層52の細孔101,102,103には、塩素系の物質と反応しやすい物質、たとえば、イオン交換樹脂が添着されているが、塩素系の物質と反応しやすい物質であればこれに限定されない。なお、イオン交換樹脂は、
図7においてハッチングで示している。
【0040】
化学吸着層52と物理吸着層51とのミクロ孔101を比較すると、物理吸着層51の活性炭におけるミクロ孔の占める割合は、化学吸着層52の活性炭におけるミクロ孔の占める割合よりも大きい。これにより、ミクロ孔の割合の大きい物理吸着層51で塩素成分だけを物理吸着させ、物理吸着層51で吸着できなかった塩素成分を、イオン交換樹脂が添着された化学吸着層52で化学吸着させることができ、塩素成分だけを塩素臭吸着フィルター50で効率よく吸着することができる。
【0041】
呈色層53は、化学吸着層52の空気の流れの下流側(空間94の外側)に位置する。呈色層53は、基材と、基材に添着され、塩素成分と反応して呈色する物質とを有する。呈色層53の基材は、たとえば、活性炭、不織布、ゼオライトなどにより形成される。基材に添着される物質は、たとえばヨウ化カリウムなどであるが、塩素成分と反応して呈色する物質であればこれに限定されない。呈色層53は、色の変化を確認することを目的としているため、不織布、ゼオライトであることが好ましい。
【0042】
呈色層53にヨウ化カリウムを用いた場合、塩素成分とヨウ化カリウムとの反応式は、下記である。
【0043】
2KI+Cl2→2KCl+I2
【0044】
ヨウ化カリウム塩素と反応すると、塩化カリウムとともにヨウ素が発生する。この反応により呈色層53は、赤褐色に呈色する。
【0045】
呈色層53は、排出管42の最下流に設けられているため、塩素成分が物理吸着層51および化学吸着層52に吸着されずに呈色層53にまで到達した場合に呈色する。つまり、呈色層53が呈色することで、物理吸着層51および化学吸着層52の塩素成分の吸着の飽和を確認することができる。
【0046】
呈色層53は、外部から視認できるように設けられることが好ましい。また、呈色層53が外部から視認できない場合は、センサーを用いてもよい。具体的には、呈色層53に色差計を取り付けて、その値を判定する制御部および表示部を連携させて、呈色層53の変色をデジタルで表示させてもよい。
【0047】
塩素臭吸着フィルター50は、ユニット化されていることが好ましい。具体的には、物理吸着層51、化学吸着層52および呈色層53が枠材に嵌め込まれて一体的に形成されていてもよい。塩素臭吸着フィルター50がユニット化されていることで、物理吸着層51、化学吸着層52および呈色層53をそれぞれ交換しなくてもよいため、簡単に交換することができる。
【0048】
図7を参照して、塩素臭吸着フィルター50の作用について説明する。また、理解容易のために塩素成分70および塩素成分70以外の臭気成分71,72を模式的に図示しているが、それらが
図7の形状に限定されないことは当然である。また、塩素臭吸着フィルター50のハッチングを省略している。
【0049】
図1,3に示すように、ユーザにより操作ボタン93が操作されると、給水バルブ21aは開状態となり、洗浄タンク10への電解水の給水が開始される。これにより、給水洗浄が行われる。
【0050】
食品洗浄処理が開始されると、洗浄タンク10内の電解水から塩素ガスが揮発する。そのため、洗浄処理が進むにつれて、空間94に塩素ガスが充満する。
図4に示すように、吸引ポンプ44をONにし、空間94の空気の吸引を開始する。空間94の空気は、塩素成分だけでなく、塩素成分以外の様々な臭気成分を含む。
【0051】
図7に示すように、吸引ポンプ44により吸引された空気が塩素臭吸着フィルター50の物理吸着層51に到達すると、塩素成分70は、塩素成分70のサイズに対応するミクロ孔101に捕捉される。
【0052】
ここで、物理吸着層51と化学吸着層52とは密着しておらず、単に積層されているだけである。さらに、これらの層51,52と保持部43とは密着していない。これにより、塩素臭吸着フィルター50と保持部43との間、および、物理吸着層51と化学吸着層52との間には、隙間45が設けられている。そのため、物理吸着層51で吸着されなかった塩素成分70、および、ミクロ孔101のサイズとは異なる臭気成分71,72は、隙間45や細孔を通って化学吸着層52に到達する。
【0053】
次に、化学吸着層52に到達した塩素成分70は、イオン交換樹脂と化学反応し、化学吸着層52に吸着される。
図7において、化学吸着層52においても、イオン交換樹脂と化学反応を起こさない臭気成分71,72は、化学吸着層52に吸着されずに隙間45や細孔を通って空間94外に排出される。
【0054】
このような構成により、物理吸着層51は、ミクロ孔101で塩素成分70だけを捕捉し、化学吸着層52は、物理吸着層51で取りこぼされた塩素成分70をイオン交換樹脂で吸着することができる。これにより、塩素成分70だけを効率よく吸着することができ、塩素成分70以外の臭気成分71,72を吸着しないため、塩素臭吸着フィルター50の交換時期を長くすることができる。
【0055】
また、化学吸着層52で吸着されなかった臭気成分71,72は、隙間45を通って呈色層53に到達し、空気の流れに沿って連結部43の外部に排出される。塩素成分70が物理吸着層51および化学吸着層52で吸着されず、呈色層53にまで到達した場合は、呈色層53に塩素成分と反応して呈色するヨウ化カリウムが添着されているため、塩素成分70はヨウ化カリウムと反応し、呈色層53は呈色する。
【0056】
このような構成により、呈色層53が呈色すれば、物理吸着層51と化学吸着層52による塩素除去性能が劣化し、塩素成分を十分に吸着できなくなったことが分かる。これにより、塩素臭吸着フィルター50の交換時期を容易に知らせることができるため、適時に塩素臭吸着フィルター50の交換を行うことができる。
【0057】
図8は、塩素臭吸着フィルター50における塩素成分の吸着割合を示す模式的なグラフである。縦軸は、塩素成分の濃度(%)を示し、横軸は、時間の経過を示す。
【0058】
図8を参照して、塩素成分を含有する空気が、物理吸着層51、化学吸着層52、呈色層53の順で通過するつれ、物理吸着層51において塩素成分の約50%が吸着され、化学吸着層52において塩素成分の約40%が吸着され、呈色層53において塩素成分が微量吸着されることが分かる。
【0059】
なお、上記実施の形態において、化学吸着層52は、活性炭であるとして説明した。しかし、化学吸着層52は、活性炭以外で形成されていてもよく、化学吸着層52は、通気性を有する基材を含み、基材にはイオン交換樹脂層が添着していればよい。
【0060】
また、塩素臭吸着フィルター50は、物理吸着層51と化学吸着層52とが必須の構成要件であり、必ずしも呈色層53を有していなくてもよい。
【0061】
また、本実施の形態において、電解水は微酸性電解水であることとしたが、限定的ではなく、塩素成分を含有する電解水であれば、アルカリ性の電解水であってもよい。
【0062】
また、本実施の形態において、塩素臭吸着フィルター50は、食品を洗浄する食品洗浄装置1に用いられるとして説明したが、塩素成分を含有する電解水で洗浄する装置、たとえば、食器洗浄機などに用いられてもよい。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 食品洗浄装置、2 洗浄槽、10 洗浄タンク、11 網カゴ、12 給水口、13 排水口、14 戻し口、15 オーバーフロー口、21 給水経路、21a 給水バルブ、22 排水経路、22a 排水バルブ、23 電解水循環経路、23a 循環ポンプ、31 底壁、32,32a,32b,32c,32d 側壁、41 排出口、42 排出管、43 保持部、44 吸引ポンプ、45 隙間、50 塩素臭吸着フィルター、51 物理吸着層、52 化学吸着層、53 呈色層、60,A1,A2 矢印、70 塩素成分、71,72 臭気成分、90 筐体、91 蓋、93 操作ボタン、94 空間、101 ミクロ孔、102 メソ孔、103 マクロ孔。