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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】車両用空調機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20220726BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B60H1/32 623B
B60H1/32 623C
B60H1/32 623M
F02D29/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018135010
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020011605
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】江坂 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一郎
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-038979(JP,A)
【文献】特開平07-034929(JP,A)
【文献】特開昭63-287623(JP,A)
【文献】特開2009-248799(JP,A)
【文献】特開2005-075066(JP,A)
【文献】特開2009-154627(JP,A)
【文献】特開2002-234340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0007576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F02D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの回転速度が急減速するか否かを判定する減速判定部と、
前記車両の空調機の動作の停止を許可する停止許可部と、
前記エンジンの回転速度が急減速することを前記減速判定部が判定し、かつ、前記空調機の動作の停止を前記停止許可部が許可したとき、前記空調機の動作を停止させる動作制御部と、を備え、
前記停止許可部は、前記空調機の動作の前回の停止時から第1の所定時間が経過した場合、又は、前記車両の車速が所定速度以上になった場合の少なくともいずれかの場合に前記空調機の動作の停止を許可する、車両用空調機の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調機の制御装置であって、
前記車速の減速度が所定値以下であるか否かを判定する加速度判定部を更に備え、
前記動作制御部は、前記エンジンの回転速度が急減速することを前記減速判定部が判定し、かつ、前記空調機の動作の停止を前記停止許可部が許可した場合又は前記車速の減速度が所定値以下になったことを前記加速度判定部が判定した場合の少なくともいずれかの場合に、前記空調機の動作を停止させる、請求項1に記載の車両用空調機の制御装置。
【請求項3】
前記減速判定部は、前記エンジンの回転速度が所定の回転速度を下回り、かつ、前記車両のトルクコンバーターがロックアップ解放されるときに前記エンジンの回転速度が急減速すると判定する、請求項1又は請求項2に記載の車両用空調機の制御装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記空調機の動作が停止した後、第2の所定時間経過後に前記空調機を動作させる、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用空調機の制御装置。
【請求項5】
前記第1の所定時間は、30秒~60秒である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用空調機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の負荷がエンジンにかかることで生じるエンジンストール(「エンスト」ともいう)を防止する技術が知られている。例えば特許文献1には、減速時の加速度に応じた速度に車速が達したときに、空調機のコンプレッサが停止する技術が開示されている。また、特許文献2には、エンジンの回転速度の減速度に基づいて演算された所定時間後のエンジンの回転速度が所定の回転速度以下のときに、空調機の動作が停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-154627
【文献】特開2007-38979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1に開示の技術では、主に車両の速度と減速時の加速度に応じて空調機の動作が停止する。特許文献2に開示の技術では、主にエンジンの回転速度と減速度に応じて空調機の動作が停止する。しかしながら、特許文献1及び2に開示の技術では、空調機の動作が停止した時から短時間で再度空調機の動作が停止する場合がある。この場合、空調機の冷房能力が十分発揮されず、車室内の温度が上昇する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、空調機の負荷によるエンストの防止と頻繁な空調機の動作の停止の防止を両立することが可能な、新規かつ改良された車両用空調機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両のエンジンの回転速度が急減速するか否かを判定する減速判定部と、前記車両の空調機の動作の停止を許可する停止許可部と、前記エンジンの回転速度が急減速することを前記減速判定部が判定し、かつ、前記空調機の動作の停止を前記停止許可部が許可したとき、前記空調機の動作を停止させる動作制御部と、を備え、前記停止許可部は、前記空調機の動作の前回の停止時から第1の所定時間が経過した場合、又は、前記車両の車速が所定速度以上になった場合の少なくともいずれかの場合に前記空調機の動作の停止を許可する車両用空調機の制御装置が提供される。
【0007】
車両用空調機の制御装置は、前記車速の減速度が所定値以下であるか否かを判定する加速度判定部を更に備え、前記エンジンの回転速度が急減速することを前記減速判定部が判定し、かつ、前記空調機の動作の停止を前記停止許可部が許可した場合又は前記車速の減速度が所定値以下になったことを前記加速度判定部が判定した場合の少なくともいずれかの場合に、前記動作制御部が前記空調機の動作を停止させてもよい。
【0008】
前記減速判定部は、前記エンジンの回転速度が所定の回転速度を下回り、かつ、前記車両のトルクコンバーターがロックアップ解放されるときに前記エンジンの回転速度が急減速すると判定してもよい。
【0009】
前記動作制御部は、前記空調機の動作が停止した後、第2の所定時間経過後に前記空調機を動作させてもよい。
【0010】
前記第1の所定時間は、30秒~60秒であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、空調機の負荷によるエンストの防止と頻繁な空調機の動作の停止の防止を両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両のパワートレーン及び空調機の概略構成図である。
図2】車両用空調機の制御装置を備えた車両のパワートレーン及び空調機の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る車両用空調機の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】本実施形態に係る急減速判定部の動作を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る停止許可部の動作を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る車両用空調機の制御装置の制御履歴を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
1.車両の全体構成
1-1.車両の機構の概略構成
図1は、車両のパワートレーン及び空調機の概略構成図である。
【0015】
車両100はエンジン102を備えている。エンジン102は、たとえば4ストロークのガソリンエンジンである。車両100は、エンジンコントロールユニット(以下、「ECU」という)128を備えている。エンジン102は、車両の走行用動力源として用いられるほか、空調機のコンプレッサ116の動力源としても用いられる。
【0016】
エンジン102にはトルクコンバーター106が連結されている。トルクコンバーター106は、エンジン102の動力を変速機108に伝達する流体クラッチである。トルクコンバーター106の基本構造は、図示しないポンプインペラー、ステーター、及びタービンライナーで構成されている。ポンプインペラーはエンジン102の出力軸とつながっている。ポンプインペラーが回転すると、トルクコンバーター106の作動油が回転する。回転した作動油がタービンライナーを回転させる。タービンライナーは変速機108につながっている。そのため、エンジン102の動力が変速機108に伝達される。
【0017】
トルクコンバーター106は、エンジンの回転速度等に応じてロックアップ締結される。このとき、エンジン102とタービンライナーが直結される。そして、エンジン102の動力が作動油を介さずに変速機108に伝達される。また、トルクコンバーター106がロックアップ締結されているとき、エンジンの回転速度等が所定の条件を満たすと、トルクコンバーター106はロックアップ解放される。
【0018】
トルクコンバーター106には変速機108が連結される。変速機108は多段自動変速機(「ステップAT」ともいう)であってもよいし、無段変速機(以下、「CVT」という)であってもよい。ステップATは、多板クラッチの切り替え制御で自動変速する多段式の変速機である。CVTは、変速を連続的に行う変速機である。CVT108の構造は、金属ベルト式、チェーン式、又はトロイダル式のいずれであってもよい。
【0019】
次に、空調機の構成と動作について説明する。エンジン102とコンプレッサ116はそれぞれエンジン側プーリー110aとコンプレッサ側プーリー110bを備えている。ベルト112はエンジン側プーリー110aとコンプレッサ側プーリー110bをつないでいる。マグネットクラッチ114はコンプレッサ側プーリー110bとコンプレッサ116を断続する。コンプレッサ側プーリー110bとコンプレッサ116が接続されると、エンジン102の駆動力がコンプレッサ116へ伝達される。
【0020】
コンプレッサ116がエンジン102の動力により回転駆動すると、冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒はコンデンサ118で冷却されて液化する。その後、冷媒は霧化され、クーリングユニット120のエバポレータ122で蒸発する。このとき、冷媒が気化潜熱によって空気を冷却する。冷却された空気は、ブロワ124で送り出される。送り出された空気は、図示しないヒータコアを通過し、暖められた空気と混合される。適切の温度になった空気は、吹き出し口から車室内に吹出される。
【0021】
1-2.車両のコントロールユニットの概略構成
図2は、車両用空調機の制御装置を備えた車両のパワートレーン及び空調機の構成を示すブロック図である。
【0022】
車両100のシステムは、ECU128と、トランスミッションコントロールユニット(以下、「TCU」という)130と、空調機コントロールユニット138を備える。空調機コントロールユニット138は車両用空調機の制御装置に相当する。
【0023】
各種センサは、ECU128、TCU130、又は空調機コントロールユニット138に接続される。各種センサは、ECU128、TCU130、又は空調機コントロールユニット138のいずれに接続されていてもよい。各種センサの信号は、例えばコントロールエリアネットワーク(以下、「CAN」という)通信システムを介して、ECU128、TCU130および空調機コントロールユニット138の相互に伝達される。
【0024】
ECU128には、例えばエンジン102の吸入空気量、スロットルポジション、エンジンの回転速度、クランクポジション、又は水温などの各種運転パラメータが入力される。これらのパラメータに応じて、ECU128が、燃料噴射信号などの制御命令信号を出力する。ECU128には、クランク角センサ104が接続されている。クランク角センサ104はエンジンの回転速度を検出し、エンジンの回転速度に応じた信号をECU128に伝達する。
【0025】
TCU130は、トルクコンバーター106と変速機108を統括的に制御する。TCU130は、ロックアップクラッチ136を制御することで、トルクコンバーター106のロックアップ締結とロックアップ解放を行う。TCU130には、車速センサ132が接続されている。
【0026】
空調機コントロールユニット138には、車室内温度センサ148、日射センサ150、外気温センサ152、エバポセンサ154、及び空調機スイッチ156が接続されている。
【0027】
車室内温度センサ148及び外気温センサ152は、それぞれ車室内及び車外の温度を、例えばサーミスタを用いて検出する。その検出された温度に応じた電気信号が空調機コントロールユニット138に伝達される。日射センサ150は、車両が受ける日光の強さを、フォトダイオードを用いて電流に変換する。その電流信号が空調機コントロールユニット138に伝達される。エバポセンサ154は、空調機のエバポレータを通過する空気の温度を検出する。その温度に応じた信号が空調機コントロールユニット138に伝達される。
【0028】
ECU128に内蔵されたタイマが、時間を測定する。その時間に応じたタイマ値Tが空調機コントロールユニット138に伝達される。動作制御部146がコンプレッサ116の動作を停止したとき、動作制御部146がタイマ値Tを0にリセットする。
【0029】
空調機スイッチ156は、運転者等のユーザーがコンプレッサ116のONとOFFをマニュアルで入力するための装置である。ユーザーが手動で空調機スイッチ156をOFFにして空調機の動作を停止させたときに、動作制御部146がタイマ値を0にリセットしてもよい。
【0030】
空調機コントロールユニット138は、空調機の動作を統括的に制御する。空調機は、温風と冷風の混合比率や風量などをユーザーが手動で調整する空調機であってもよい。また、空調機は、車室内温度を所望の温度に近づけるように温風と冷風の混合比率や風量を、各種センサの信号に基づいて空調機コントロールユニット138が調整する空調機であってもよい。
【0031】
空調機コントロールユニット138は、減速判定部140と、停止許可部142と、動作制御部146を備える。空調機コントロールユニット138は、さらに加速度判定部144を備えてもよい。
【0032】
減速判定部140は車両100のエンジン102の回転速度が急減速するか否かを判定する。その判定結果に応じた信号は停止許可部142に伝達される。急減速の判定方法は、エンジンの回転速度が所定の回転速度閾値ωac以下になり、かつ、トルクコンバーター106がロックアップ解放されるときに急減速することを判定する方法でもよい。回転速度閾値ωacは、例えば400~500rpm程度の回転速度である。回転速度閾値ωacは、車室内温度、外気温、日射量、又はエバポ温度などの環境パラメータ、コンプレッサ116の運転状況、車速又はエンジンの回転速度などの運転パラメータに応じて変更してもよい。
【0033】
停止許可部142は、タイマ値および車速に応じて空調機の動作の停止を許可するか否かを判定する。タイマ値が所定のタイマ閾値Tac以上の場合、又は、車速が所定の車速閾値Vac以上の場合の少なくともいずれかの場合に、停止許可部142は空調機の動作の停止を許可する。なお、所定のタイマ閾値Tacは、特許請求の範囲に記載の第1の所定時間に相当する。
【0034】
タイマ閾値Tacは例えば30秒~60秒程度の値である。タイマ閾値Tacが30秒以上であれば、頻繁な空調機の動作の停止を効果的に防止することができる。タイム閾値Tacが60秒以下であれば、空調機の負荷によるエンストを効果的に防止することができる。車速閾値Vacは例えば40km/h程度の値である。タイマ閾値Tacや車速閾値Vacは、車室内温度、外気温、日射量、又はエバポ温度などの環境パラメータ、コンプレッサ116の運転状況、車速又はエンジンの回転速度などの運転パラメータに応じて変更してもよい。
【0035】
加速度判定部144は、加速度が所定の加速度閾値Aac以下であるか否かを判定する。車速センサ132は、例えば100msのサンプリング間隔で車速を測定する。測定された車速から前回測定された車速を差し引いた速度を加速度とした場合、加速度閾値Aacは例えば-2km/h程度の値である。加速度閾値Aacは、車室内温度、外気温、日射量、又はエバポ温度などの環境パラメータ、コンプレッサ116の運転状況、車速又はエンジンの回転速度などの運転パラメータに応じて変更してもよい。
【0036】
動作制御部146は、コンプレッサ116を制御する。車両100のエンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定し、かつ、停止許可部142が空調機の動作の停止を許可したとき、動作制御部146は空調機の動作を停止させる。このとき、動作制御部146は、マグネットクラッチ114をOFFにする。すると、コンプレッサ116の動作が停止し、空調機の動作は停止する。動作制御部146は、空調機の動作が停止した後、第2の所定時間が経過した後に空調機の動作を動作させてもよい。空調機の動作が再度動作することで、車室内の温度が適切な温度に維持される。
【0037】
車両100のエンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定し、かつ、空調機の動作の停止を停止許可部142が許可した場合または加速度が加速度閾値Aacを下回ったことを加速度判定部144が判定した場合の少なくともいずれかの場合に、動作制御部146は、空調機の動作を停止してもよい。
【0038】
2.車両用空調機の制御装置
2-1.車両用空調機の制御装置の動作
次に、上述した空調機コントロールユニット138の空調機の動作の制御の概略について説明する。図3は、本実施形態に係る車両用空調機の制御装置の動作を示すフローチャートである。以下、ステップごとに順を追って説明する。なお、空調機コントロールユニット138は、車両用空調機の制御装置に相当する。
【0039】
<ステップS202:空調機のON状態の判定>
動作制御部146が、コンプレッサ116が動作しているか否かを判定する。コンプレッサ116が動作している場合、動作制御部146が、空調機がON状態であると判定する。空調機がON状態である場合、フローがステップS204に進む。空調機がOFF状態である場合、フローがENDに進み、空調機の動作の制御は終了する。
【0040】
<ステップS204:車両の急減速の判定>
減速判定部140が、後述する判定方法で車両100のエンジン102の回転速度が急減速するか否かを判定する。エンジン102の回転速度が急減速しない場合、空調機の動作の制御は終了する。エンジン102の回転速度が急減速する場合、フローがステップS206に進む。
【0041】
<ステップS206:空調機の動作の停止の許可判定>
停止許可部142が、空調機の動作の停止を許可するか否かを判定する。停止許可部142が空調機の動作の停止を許可するか否かを判定する方法の詳細は後述する。空調機の動作の停止が許可される場合、フローがステップS210に進む。空調機の動作の停止が許可されない場合、フローがステップS208に進む。
【0042】
<ステップS208:加速度の判定>
加速度判定部144が、車速の加速度が加速度閾値Aac以下であるか否かを判定する。車速の加速度が加速度閾値Aac以下である場合、フローがステップS210に進む。車速の加速度が加速度閾値Aac以下でない場合、空調機の動作の制御が終了する。
【0043】
<ステップS210:コンプレッサをOFF>
動作制御部146が、コンプレッサ116をOFFにする。フローがステップS212に進む。
【0044】
<ステップS212:コンプレッサ停止後所定時間待つ>
動作制御部146は、コンプレッサ116の前回の停止時から、第2の所定時間が経過するのを待つ。第2の所定時間は、例えば2秒程度である。第2の所定時間が経過すると、フローはステップS214に進む。
【0045】
<ステップS214:コンプレッサをON>
動作制御部146が、コンプレッサ116をONにする。空調機の動作の制御が終了する。
【0046】
図3のステップS202において、車両100のエンジン102の回転速度が急減速するか否かを減速判定部140が判定する方法について説明する。減速判定部140は、急減速判定処理により、車両100のエンジン102の回転速度が急減速するか否かを判定する。図4は、本実施形態に係る減速判定部140の動作を示すフローチャートである。
【0047】
<ステップS302:エンジンの回転速度の判定>
減速判定部140が、エンジンの回転速度が所定の回転速度閾値ωac以下であるか否かを判定する。エンジンの回転速度が回転速度閾値ωac以下である場合、フローがステップS306に進む。エンジンの回転速度が回転速度閾値ωac以下でない場合、フローがステップS304に進む。
【0048】
<ステップS304:急減速判定フラグをOFF>
減速判定部140が、急減速判定フラグをOFFにする。急減速判定処理は終了する。
【0049】
<ステップS306:ロックアップの解放判定>
減速判定部140が、トルクコンバーター106がロックアップ解放されるか否かを判定する。TCU130は、エンジンの回転速度等に基づいてロックアップ解放をするか否かを決定する。その決定結果に応じた信号はCANを介して空調機コントロールユニット138に伝達される。伝達された信号に基づいて、減速判定部140が、トルクコンバーター106がロックアップ解放されるか否かを判定する。トルクコンバーター106がロックアップ解放される場合、フローがステップS308に進む。トルクコンバーター106がロックアップ解放されない場合、フローがステップS304に進む。
【0050】
<ステップS308:急減速判定フラグをON>
減速判定部140が、急減速判定フラグをONにする。減速判定処理は終了する。
【0051】
ステップがENDになったとき、急減速判定フラグがONの場合は、車両100のエンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定する。つまり、図3のフローのステップS204において、Yesの枝に進む。一方、急減速判定フラグがOFFの場合は、車両100が急減速しないことを減速判定部140が判定する。
【0052】
次に、図3のステップS206において、停止許可部142が空調機の動作の停止を許可するか否かを判定する方法について説明する。停止許可部142は、停止許可処理により、空調機の動作の停止を許可するか否かを判定する。図5は、本実施形態に係る停止許可部142の動作を示すフローチャートである。
【0053】
<ステップS402:車速の判定>
停止許可部142が、車速が車速閾値Vac以上であるか否かを判定する。車速が車速閾値Vac以上でない場合、フローがステップS406に進む。車速が車速閾値Vac以上である場合は、フローがステップS404に進む。
【0054】
<ステップS404:停止許可判定フラグをON>
停止許可部142が、停止許可判定フラグをONにする。停止許可処理は終了する。
【0055】
<ステップS406:タイマ値の判定>
停止許可部142が、タイマ値がタイマ閾値Tac以上であるか否かを判定する。タイマ値がタイマ閾値Tac以上であることは、空調機の動作の前回の停止時からタイマ閾値Tac以上の時間が経過したことを意味する。タイマ値がタイマ閾値Tac以上である場合、フローがステップS404に進む。タイマ値がタイマ閾値Tac以上でない場合、フローがステップS408に進む。
【0056】
<ステップS408:停止許可判定フラグをOFF>
停止許可部142が、停止許可判定フラグをOFFにする。停止許可処理は終了する。
【0057】
ステップがENDになったとき、停止許可判定フラグがONである場合は、停止許可部142が空調機の動作の停止を許可する。つまり、図3のステップS206でYesの枝に進む。一方、停止許可判定フラグがOFFである場合は、ステップS206ではNoの枝に進む。
【0058】
2-2.本実施形態の効果
次に、本実施形態の効果について、比較例と対比して説明する。比較例については、本実施形態と同様の部分については省略し、相違点について説明する。比較例は、空調機の動作の制御において、図3におけるフローチャートのステップS206とステップS208に相当する判定を行わない点で本実施形態と相違する。つまり、比較例では、減速判定部140が減速判定処理を行い、急減速判定フラグがONになったときに、動作制御部146がコンプレッサ116をOFFにする。
【0059】
図6は、本実施形態に係る車両用空調機の制御装置の制御履歴を示すグラフである。横軸は時間を示す。縦軸は車速、急減速判定フラグ(ONまたはOFF)、車速の加速度、タイマ値、本実施形態のコンプレッサ116の動作(ONまたはOFF)、比較例のコンプレッサ116の動作(ONまたはOFF)を示す。ただし、車速の加速度の正の部分については省略して表記している。
【0060】
本実施形態では、車両100のエンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定した場合に、急減速判定フラグがONになる。タイマ値がタイマ閾値Tac以上の場合、又は、車速が車速閾値Vac以上の場合の少なくともいずれかの場合に、停止許可部142が空調機の動作の停止を許可する。このとき、停止許可判定フラグがONになる。
【0061】
エンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定し、かつ、停止許可部142が空調機の動作の停止を許可したとき、動作制御部146がコンプレッサ116をOFFにする。このとき、動作制御部146は、タイマ値を0にリセットする。この空調機の動作の停止は、コンプレッサ116がOFFになる第1のタイミング502及び第3のタイミング506に対応している。
【0062】
また、加速度判定部144は、車速の加速度が加速度閾値Aac以下であるか否かを判定する。車両100のエンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定し、かつ、空調機の動作の停止を停止許可部142が許可した場合または車速の加速度が加速度閾値Aac以下になったことを加速度判定部144が判定した場合の少なくともいずれかの場合に、動作制御部146がコンプレッサ116を2秒間OFFにする。この空調機の動作の停止のタイミングは、本実施形態の第1のタイミング502、第2のタイミング504、及び第3のタイミング506でコンプレッサ116がOFFになるタイミングに対応している。
【0063】
コンプレッサ116がOFFになる比較例の第1のタイミング508と比較例の第4のタイミング514の時間には、停止許可判定フラグがOFFであり、かつ、加速度が加速度閾値Aacより高いため、本実施形態では空調機の動作が停止しない。その結果、比較例では5回空調機の動作が停止するのに対し、本実施形態では3回空調機の動作が停止する。つまり、本実施形態では空調機の動作の回数が低減され、頻繁な空調機の動作の停止が防止されている。
【0064】
また、タイマ値がタイマ閾値Tac未満であっても、エンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定し、かつ、車速が車速閾値Vac以上であるとき、本実施形態ではコンプレッサ116がOFFになる。これは、本実施形態の第1のタイミング502に対応する。このように空調機の動作が停止されることで、空調機の負荷によるエンストが防止される。
【0065】
さらに、タイマ値がタイマ閾値Tac未満であっても、エンジン102の回転速度が急減速することを減速判定部140が判定し、かつ、車速の減速度が加速度閾値Aac以下であるとき、本実施形態ではコンプレッサ116がOFFになる。これは、本実施形態の第2のタイミング504に対応する。このように空調機の動作が停止されることで、空調機の負荷によるエンストが防止される。
【0066】
以上のように本実施形態では、タイマ値の判定により、空調機の動作の停止の頻度が低減される。また、車速や減速度に応じて空調機の動作が停止される。その結果、渋滞時などの低速走行中に加減速を繰り返す状況であっても、車室内温度の上昇の防止とエンストの防止が両立される。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
100 車両
102 エンジン
106 トルクコンバーター
108 変速機
116 コンプレッサ
128 ECU
130 TCU
132 車速センサ
138 空調機コントロールユニット
140 減速判定部
142 停止許可部
144 加速度判定部
146 動作制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6