(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ガスコック
(51)【国際特許分類】
F16K 5/00 20060101AFI20220726BHJP
F16K 31/524 20060101ALI20220726BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20220726BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20220726BHJP
F23N 5/26 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
F16K5/00 A
F16K31/524 A
F24C3/12 U
F23K5/00 301C
F23N5/26 T
F23N5/26 V
(21)【出願番号】P 2018137649
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】脇田 章義
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1013996(EP,A1)
【文献】特開平11-63252(JP,A)
【文献】特開2001-99422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00
F16K 31/524
F24C 3/12
F23K 5/00
F23N 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端にコンロ天板上に露出する操作摘みが取付けられた上下方向に長手の操作軸と、操作軸の回転で回転してバーナへの供給ガス量を調節するコック本体内の閉子と、弁座、弁体、弁体を弁座に接近する閉じ方向に付勢する弁バネ、弁体に弁座から離隔する開き方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片及び吸着片に対向する電磁石を有し、弁体の開閉方向が水平方向となる水平姿勢で配置されたコック本体内の電磁安全弁と、操作軸の押し下げに連動して下動するプッシュロッドと、プッシュロッドの下端に対向する受圧アーム部及び電磁安全弁の弁体に対向する押圧アーム部を有し、プッシュロッドの下動に伴い受圧アーム部を介して入力されるトルクで電磁安全弁の弁体の開閉方向に直交する水平軸線回りに回転し、押圧アーム部を介して電磁安全弁の弁体を吸着片が電磁石に当接する開弁位置に押動させるコック本体内のカム部材とを備えるガスコックにおいて、
カム部材を、電磁安全弁の弁体の押圧を解除する回転方向に付勢するカム戻しバネを備えることを特徴とするガスコック。
【請求項2】
前記カム戻しバネは、前記押圧アーム部に係止される一端の可動部と、前記コック本体に係止される他端の固定部と、中間のコイル部とを有するねじりコイルバネで構成され、コイル部に挿通されるように前記受圧アーム部が設けられることを特徴とする請求項1記載のガスコック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロ天板上に露出する操作摘みで操作されるガスコックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガスコックとして、上端にコンロ天板上に露出する操作摘みが取付けられた上下方向に長手の操作軸と、操作軸の回転で回転してバーナへの供給ガス量を調節するコック本体内の閉子と、弁座、弁体、弁体を弁座に接近する閉じ方向に付勢する弁バネ、弁体に弁座から離隔する開き方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片及び吸着片に対向する電磁石を有し、弁体の開閉方向が水平方向となる水平姿勢で配置されたコック本体内の電磁安全弁と、操作軸の押し下げに連動して下動するプッシュロッドと、プッシュロッドの下端に対向する受圧アーム部及び電磁安全弁の弁体に対向する押圧アーム部を有し、プッシュロッドの下動に伴い受圧アーム部を介して入力されるトルクで電磁安全弁の弁体の開閉方向に直交する水平軸線回りに回転し、押圧アーム部を介して電磁安全弁の弁体を吸着片が電磁石に当接する開弁位置に押動させるコック本体内のカム部材とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来例のものでは、操作軸をその押し下げ解除で上動させると、これに追従してプッシュロッドも上動するが、カム部材は、電磁安全弁の弁体を開弁位置まで押動させた回転位置に留まる。そのため、電磁石への通電停止で弁体が弁座に着座する閉弁位置に復帰する際に、弁体がカム部材の押圧ロッドを押すことになる。そのため、弁体と押圧ロッドとの間での擦れによる摩耗粉が発生し、この摩耗粉が弁体や弁座に付着して、弁漏れの原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、電磁安全弁の弁体が閉弁位置に復帰する際の摩耗粉の発生を防止できるようにしたガスコックを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、上端にコンロ天板上に露出する操作摘みが取付けられた上下方向に長手の操作軸と、操作軸の回転で回転してバーナへの供給ガス量を調節するコック本体内の閉子と、弁座、弁体、弁体を弁座に接近する閉じ方向に付勢する弁バネ、弁体に弁座から離隔する開き方向にのびる弁軸を介して連結した吸着片及び吸着片に対向する電磁石を有し、弁体の開閉方向が水平方向となる水平姿勢で配置されたコック本体内の電磁安全弁と、操作軸の押し下げに連動して下動するプッシュロッドと、プッシュロッドの下端に対向する受圧アーム部及び電磁安全弁の弁体に対向する押圧アーム部を有し、プッシュロッドの下動に伴い受圧アーム部を介して入力されるトルクで電磁安全弁の弁体の開閉方向に直交する水平軸線回りに回転し、押圧アーム部を介して電磁安全弁の弁体を吸着片が電磁石に当接する開弁位置に押動させるコック本体内のカム部材とを備えるガスコックにおいて、カム部材を、電磁安全弁の弁体の押圧を解除する回転方向に付勢するカム戻しバネを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、操作軸をその押し下げ解除で上動させると、これに追従してプッシュロッドが上動すると共に、カム部材がカム戻しバネの付勢力で電磁安全弁の弁体の押圧を解除する方向に回転する。そのため、電磁安全弁の弁体が閉弁位置に復帰する際に、弁体がカム部材の押圧アーム部に接触することはない。従って、弁体が閉弁位置に復帰する際に、弁体と押圧アーム部との擦れによる摩耗粉は発生せず、摩耗粉による弁漏れを防止することができる。
【0008】
また、本発明において、カム戻しバネは、押圧アーム部に係止される一端の可動部と、コック本体に係止される他端の固定部と、中間のコイル部とを有するねじりコイルバネで構成され、コイル部に挿通されるように受圧アーム部が設けられることが望ましい。これによれば、カム戻しバネをカム部材に予め組付けておくことができ、組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態のガスコックを備えるコンロの一例の斜視図。
【
図5】
図4のV-V線で切断した組み立て状態のガスコックの要部の断面図。
【
図6】実施形態のガスコックのプッシュロッドとカム部材と電磁安全弁の弁体との関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すコンロは、システムキッチンの図示省略したカウンタトップに落とし込むようにして設置するコンロ本体Cを備えるドロップイン式コンロであり、コンロ本体Cの上面を覆うようにしてカウンタトップ上に載置されるコンロ天板TP上に露出する左右一対のコンロバーナB,Bを備えている。これら各バーナBに対するガス供給路には、
図2以下に示す本発明の実施形態のガスコック1が介設されている。
【0011】
このガスコック1は、コック本体2内に設けられた上流側の電磁安全弁3(
図3参照)と下流側の閉子4(
図4、
図5参照)とを備えている。コック本体2には、電磁安全弁3の上流側に位置するガス流入口21と、閉子4の下流側に位置する図示されていないガス流出口とが形成されている。ガスコック1は、更に、上端にコンロ天板TP上に露出する操作摘み51(
図1参照)が取付けられた上下方向に長手の操作軸5を備えている。
【0012】
図4も参照して、操作軸5は、コック本体2の上端に締結される固定板22に形成した軸孔221と固定板22上に共締めされる支持板23に形成した軸孔231とに挿通されて、回転及び上下動自在に支持されている。操作軸5の下端には、閉子4の上端に形成された切欠き部41に上下方向に摺動自在に係合する係合部52が突設されている。そのため、操作軸5の回転で係合部52を介して閉子4が回転し、コンロバーナBへの供給ガス量が調節される。
【0013】
操作軸5の係合部52の上方部分には、後述するスイッチ操作板56の上面に当接するフランジ部53が設けられ、スイッチ操作板56と閉子4との間に介設したバネ54で操作軸5が上方に付勢される。また、操作軸5には、フランジ部53の周囲1箇所から径方向外方に突出する突起部55が設けられ、一方、コック本体2の閉子4が収納される部分の上方内面には、周方向に離隔させて突起部55と協働する第1乃至第3の回り止め部241,242,243が設けられている。更に、固定板22には、第1回り止め部241に突起部55が当接する消火位置に操作軸5が存する状態で突起部55が下方から係合する回り止め孔222が形成されている。そして、操作軸5の消火位置での押し下げにより突起部55を回り止め孔222の下方に離脱させた状態で、操作軸5を突起部55が第2回り止め部242に当接する点火位置まで回転させたときに、コンロバーナBへの供給ガス量が最大になり、次に、点火位置で操作軸5をその押し下げ解除で上動させたとき、突起部55が第2回り止め部242を乗り越え、この状態で操作軸5を突起部55が第3回り止め部243に当接する弱火位置まで回転させたときに、コンロバーナBへの供給ガス量が最小になるようにしている。
【0014】
電磁安全弁3は、
図3に示す如く、ガス流入口21に連通するコック本体2内の弁室31の一端に形成した弁座32と、弁座32に対向する弁室31内の弁体33と、弁体33を弁座32に接近する閉じ方向に付勢する弁バネ34と、弁体33に弁座32から離隔する開き方向にのびる弁軸33aを介して連結した吸着片35と、吸着片35に対向する電磁石36とを備えている。そして、弁体33を吸着片35が電磁石36に当接する開弁位置に押動させた状態で電磁石36に通電することにより、弁体33が開弁位置に吸着保持されるようにしている。
【0015】
ここで、電磁安全弁3は、弁体33の開閉方向が水平方向となる水平姿勢で配置されている。そして、操作軸5の押し下げに連動して電磁安全弁3の弁体33を開弁位置に押動させる操作機構の構成部材として、
図6に示す如く、バネ61に抗して下動するプッシュロッド6と、プッシュロッド6の下端に対向する受圧アーム部71及び電磁安全弁3の弁体33に対向する押圧アーム部72を有するコック本体2内のカム部材7とを設けている。カム部材7は、プッシュロッド6の下動に伴い受圧アーム部71を介して入力されるトルクで電磁安全弁3の弁体33の開閉方向に直交する水平軸線回り、即ち、水平の支軸73回りに回転し、押圧アーム部72を介して電磁安全弁3の弁体33を開弁位置に押動させる。
【0016】
受圧アーム部71のプッシュロッド6の下端が当接する受圧面71aは、カム部材7の回転軸線に平行な軸線を中心とするアール面に形成されている。これにより、受圧面71aに対するプッシュロッド6下端の摺動抵抗が減少する。その結果、操作軸5の押し操作力を軽減でき、更に、受圧面71aに対するプッシュロッド6下端の摺動による摩耗粉の発生を抑制して耐久性を向上できる。
【0017】
本実施形態のガスコック1は、更に、操作軸5の押し下げにより操作軸5(具体的には、フランジ部53)に押されて下動するスイッチ操作板56と、スイッチ操作板56の下動でオンするようにコック本体2の外面に取付けられた第1マイクロスイッチ8と、固定板22と支持板23との間に介設した、操作軸5と一緒に回転するカム57と協働する第2マイクロスイッチ9とを備えている。
図4を参照して、カム57の周方向1箇所には径方向内方に窪んだ凹部571が形成されている。操作軸5を消火位置から回転させると、第2マイクロスイッチ9の動作レバー91がカム57の凹部571以外の部分に押されて、第2マイクロスイッチ9がオンする。そして、第1マイクロスイッチ8がオンしたときに、図外のイグナイタに通電してコンロバーナBに付設した点火電極でスパークを発生させるようにし、また、第2マイクロスイッチ9がオンしたときに、電磁安全弁3の電磁石36に通電し、通電開始から所定時間経過した後にコンロバーナBに付設した熱電対等の火炎検知素子Baで火炎が検知されなくなったときは、電磁石36への通電を停止して、電磁安全弁3を閉弁させるようにした。
【0018】
図5も参照して、操作軸5のフランジ部53は、上側の大径部と下側の小径部とを有する段付き形状に形成されている。スイッチ操作板56には、フランジ部53の小径部が嵌合する中央部の透孔561と、中央部から第1マイクロスイッチ8の配置部側にのびて、第1マイクロスイッチ8の動作レバー81に上方から当接するスイッチ押圧部562とが設けられている。
【0019】
また、上記プッシュロッド6は、平面視で操作軸5を挟んで第1マイクロスイッチ8と反対側に位置する部分に配置されている。そして、スイッチ操作板56に、中央部からプッシュロッド6の配置部側にのびて、プッシュロッド6の上端に対向するロッド押圧部563を設け、操作軸5の押し下げによるスイッチ操作板56の下動でプッシュロッド6がロッド押圧部563に押されて下動するようにしている。
【0020】
尚、操作軸5の押し下げでスイッチ操作板56が下動する際に、プッシュロッド6に作用する上方へのバネ61の付勢力でロッド押圧部563側が高くなるようにスイッチ操作板56が傾いてしまう。そして、スイッチ操作板56が第1マイクロスイッチ8をオンさせる位置まで下動しても、スイッチ操作板56の傾きでプッシュロッド6を下方に押し切れず、カム部材7の回転不足で電磁安全弁3の弁体33を開弁位置まで押動できなくなる。そこで、平面視で操作軸5と第1マイクロスイッチ8との間に位置するコック本体2の部分に、スイッチ操作板56が第1マイクロスイッチ8をオンさせる位置まで下動したときにスイッチ操作板56が当接するストッパ部25を設けている。これによれば、スイッチ操作板56が第1マイクロスイッチ8をオンさせる位置まで下動した後の引き続く操作軸5の押し下げに伴い、ストッパ部25を支点にしてロッド押圧部563側が高くなる傾きが解消されるようにスイッチ操作板56が傾動し、プッシュロッド6が下方に押し切られて、カム部材7が十分に回転し、電磁安全弁3の弁体33が開弁位置に確実に押動される。
【0021】
更に、本実施形態では、ストッパ部25の上面から上方に突出する突起部251を設け、スイッチ操作板56に、突起部251が貫通する位置決め孔564を形成している。これによれば、スイッチ操作板56が操作軸5を中心に回転変位してコック本体2のストッパ部25以外の部分に当接することがなく、当接部分からの抵抗で操作軸5の押し操作力が増加することを防止できる。
【0022】
また、本実施形態では、
図3、
図6に示されているように、カム部材7は、電磁安全弁3の弁体33の押圧を解除する回転方向(
図3で反時計方向)にカム戻しバネ74で付勢されている。これによれば、操作軸5をその押し下げ解除で上動させると、これに追従してプッシュロッド6がバネ61の付勢力で上動すると共に、カム部材7がカム戻しバネ74の付勢力で弁体33の押圧を解除する方向に回転する。そのため、電磁安全弁3の弁体33が電磁石36への通電停止で閉弁位置に復帰する際に、弁体33がカム部材7の押圧アーム部72に接触することはない。従って、弁体33が閉弁位置に復帰する際に、弁体33と押圧アーム部72との擦れによる摩耗粉は発生せず、摩耗粉による弁漏れを防止することができる。
【0023】
尚、カム戻しバネ74は、押圧アーム部72を
図3で上方に付勢する板バネで構成することも可能であるが、本実施形態では、押圧アーム部72に巻き付けて係止される一端の可動部741と、コック本体2に係止される他端の固定部742と、中間のコイル部743を有するねじりコイルバネで構成されている。そして、コイル部743に挿通されるように受圧アーム部71を設けている。これによれば、カム戻しバネ74をカム部材7に容易に脱落しないように予め組付けておくことができ、組立性が向上する。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、操作軸5の押し下げでスイッチ操作板56を介してプッシュロッド6を下動させているが、プッシュロッド6を操作軸5に直接連結してもよい。また、第1マイクロスイッチ8と第2マイクロスイッチ9との一方を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
TP…コンロ天板、1…ガスコック、2…コック本体、3…電磁安全弁、32…弁座、33…弁体、34…弁バネ、36…電磁石、4…閉子、5…操作軸、51…操作摘み、6…プッシュロッド、61…バネ、7…カム部材、71…受圧アーム部、72…押圧アーム部、74…カム戻しバネ、741…可動部、742…固定部、743…コイル部。