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  • 特許-積層体 図1
  • 特許-積層体 図2A
  • 特許-積層体 図2B
  • 特許-積層体 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220726BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220726BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220726BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20220726BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20220726BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B7/023
C09J7/38
C09J201/00
C09J4/00
C09J7/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018158760
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020032548
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】仲野 武史
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-104026(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165368(WO,A1)
【文献】特開2015-193811(JP,A)
【文献】特開2004-037623(JP,A)
【文献】特開2016-203536(JP,A)
【文献】特開2011-057956(JP,A)
【文献】特開2017-035853(JP,A)
【文献】特開2008-207550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
C09J 7/00- 7/50
H01L 27/32
H05B 33/00- 33/28
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一フィルム基材と、前記第一フィルム基材の第一主面上に固着積層された第一粘着剤層とを備える補強フィルム;および前記第一フィルム基材の第二主面に仮着された表面保護フィルム、を備え、
前記第一粘着剤層は、ベースポリマー、光硬化剤、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなり、
前記表面保護フィルムは、第二フィルム基材と、前記第二フィルム基材に固着積層された第二粘着剤層とを備え、前記第二粘着剤層が、前記第一フィルム基材の第二主面に仮着されており、
前記表面保護フィルムは、波長365nmの光の透過率が30%以下である、積層体。
【請求項2】
さらに、前記第一粘着剤層に仮着されたセパレータを備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
第一フィルム基材と、前記第一フィルム基材の第一主面上に固着積層された第一粘着剤層とを備える補強フィルム;前記第一フィルム基材の第二主面に仮着された表面保護フィルム;および前記第一粘着剤層に仮着されたセパレータ、を備え、
前記第一粘着剤層は、ベースポリマー、光硬化剤、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなり、
前記表面保護フィルムは、波長365nmの光の透過率が30%以下である、積層体。
【請求項4】
前記表面保護フィルムと前記第一フィルム基材との接着力が、前記第一粘着剤層と前記セパレータとの接着力よりも大きい、請求項2または3に記載の積層体。
【請求項5】
前記セパレータが紫外線遮蔽性を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記表面保護フィルムは、前記光重合開始剤の波長450nm以下の領域における吸収極大波長の光の透過率が30%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記表面保護フィルムは、波長405nmの光の透過率が30%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記表面保護フィルムと前記第一フィルム基材との接着力が、前記第一粘着剤層とポリイミドフィルムとの接着力よりも小さい、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強フィルムを含む積層体に関する
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ等の光学デバイスや電子デバイスの表面には、表面保護や耐衝撃性付与等を目的として、粘着性フィルムが貼着される場合がある。このような粘着性フィルムは、通常、フィルム基材の主面に粘着剤層が固着積層されており、この粘着剤層を介してデバイス表面に貼り合わせられる。
【0003】
デバイスの組み立て、加工、輸送等の使用前の状態において、デバイスまたはデバイス構成部品の表面に粘着性フィルムを仮着することにより、被着体の傷つきや破損を抑制できる。このように表面の一時的な保護を目的として仮着する粘着性フィルムは、被着体から容易に剥離可能であり、被着体への糊残りが生じないことが求められる。
【0004】
特許文献1には、デバイスの組み立て、加工、輸送等に加えて、デバイスの使用時にもデバイス表面に貼着したままの状態で使用される粘着性フィルムが開示されている。このような粘着性フィルムは、表面保護に加えて、デバイスへの衝撃の分散や、フレキシブルデバイスへの剛性付与等により、デバイスを補強する機能を有している。
【0005】
粘着性フィルムを被着体に貼り合わせる際に、気泡の混入や貼り位置のずれ等の貼り合わせ不良が生じる場合がある。貼り合わせ不良が生じた場合には、被着体から粘着性フィルムを剥離し、別の粘着性フィルムを貼り合わせる作業(リワーク)が行われる。工程材として用いられる粘着性フィルムは、被着体からの剥離を前提として設計されているため、リワークが容易である。一方、永久接着を前提とする補強フィルムは、一般には、デバイスから剥離することは想定されておらず、デバイスの表面に強固に接着しているため、リワークが困難である。
【0006】
特許文献2には、ハードコートフィルムの表面に光硬化性の粘着剤層を設けた粘着性フィルムが開示されている。光硬化性の粘着剤は、光硬化前は被着体との接着力が小さいため被着体からの剥離が容易であり、光硬化性の粘着剤が固着積層されたフィルムは、リワーク性を有する補強フィルムとして利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-132977号公報
【文献】特開2015-217530号公報
【発明の概要】
【0008】
光硬化性の粘着剤は、被着体との貼り合わせ後の硬化のタイミングを任意に設定可能であり、上記のようにリワーク性にも優れている。また、被着体の表面に光硬化性の粘着剤を介してフィルムを貼り合わせた後に、所定箇所のフィルムを切断してパターニングし、パターニング箇所を剥離除去する等の加工も容易に行い得る。
【0009】
しかし、光硬化性粘着剤を備える補強フィルムを被着体に貼り合わせ、粘着剤を光硬化する前の状態の仕掛品を長期間保管すると、硬化のための光照射を行っていないにも関わらず、被着体との接着力が上昇し、被着体からの補強フィルムの剥離が困難となる場合がある。かかる課題に鑑みて、本発明は、被着体との貼り合わせた状態の仕掛品を長期間保管した場合でも、光硬化性粘着剤の接着力の経時変化が生じ難い補強フィルム積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一フィルムの第一主面上に固着積層された第一粘着剤層を備える補強フィルムと、第一フィルム基材の第二主面に仮着された表面保護フィルムとを備える積層体に関する。第一粘着剤層は、ベースポリマー、光硬化剤、および光重合開始剤を含む光硬化性組成物からなり、表面保護フィルムは紫外線遮蔽性を有する。紫外線遮蔽性を有する表面保護フィルムは、所定の波長における光透過率が30%以下であることが好ましい。
【0011】
表面保護フィルムと第一フィルム基材との接着力は、第一粘着剤層と被着体との接着力よりも小さいことが好ましい。被着体の一例としてポリイミドフィルムが挙げられる。
【0012】
一実施形態において、表面保護フィルムは、第二フィルム基材に固着積層された第二粘着剤層を備える。この形態では、表面保護フィルムの第二粘着剤層が、補強フィルムの第一フィルム基材の第二主面に仮着されていることが好ましい。
【0013】
積層体は、第一粘着剤層に仮着されたセパレータを含んでいてもよい。表面保護フィルムと第一フィルム基材との接着力は、第一粘着剤層とセパレータとの接着力よりも大きいことが好ましい。セパレータは紫外線遮蔽性を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
補強フィルムは、粘着剤層の光硬化前は被着体との接着力が小さいため、リワークが容易であり、粘着剤層を光硬化すると高い接着力を示すため、デバイスの補強および信頼性の向上に寄与する。光硬化性の粘着剤は被着体との貼り合わせ後の硬化のタイミングを任意に設定可能である。また、補強フィルムのフィルム基材に紫外線遮蔽性の表面保護フィルムを仮着しておくことにより、保管環境下での蛍光灯からの光等による粘着剤の光硬化を抑制できる。本発明の積層体を用いることにより、被着体との貼り合わせ後の仕掛品の長期間の保管が可能であり、工程のリードタイムに柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】補強フィルム積層体の積層構成を示す断面図である。
図2A】離型フィルムを剥離後の積層体の積層構成を示す断面図である。
図2B】被着体と積層体とを貼り合わせた仕掛品の断面図である。
図2C】表面保護フィルムを剥離後の補強フィルムの貼り合わせ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の補強フィルム積層体の一実施形態を表す断面図である。補強フィルム10は、第一フィルム基材11の第一主面に第一粘着剤層12を備える。第一粘着剤層12は第一フィルム基材11の主面に固着積層されている。第一粘着剤層12の表面には、セパレータ50が仮着されていることが好ましい。
【0017】
第一粘着剤層12は光硬化性組成物からなる光硬化性粘着剤であり、ベースポリマー、光硬化剤および光重合開始剤を含有する。第一粘着剤層12に紫外線等の活性光線を照射すると、光重合開始剤から活性種が生成して、光硬化剤の重合反応が進行する。これにより、粘着剤層12が硬化して、被着体との接着力が上昇する。
【0018】
第一フィルム基材11の第二主面には紫外線遮蔽性の表面保護フィルム30が仮着されている。表面保護フィルム30は、第二フィルム基材51の表面に固着積層された第二粘着剤層52を備え、第二粘着剤層52が、第一フィルム基材11の第二主面に貼り合わせられている。
【0019】
「固着」とは積層された2つの層が強固に接着しており、両者の界面での剥離が不可能または困難な状態である。「仮着」とは、積層された2つの層間の接着力が小さく、両者の界面で容易に剥離できる状態である。
【0020】
図2A~2Cは、積層体の使用例を示す概念図である。まず、積層体100からセパレータ50を剥離して、粘着剤層12を露出させる(図2A)。セパレータを剥離後の積層体102を、粘着剤層12を介して被着体70に貼り合わせる(図2B)。この段階では粘着剤層12は未硬化であるため、被着体70に対する接着力は低く、補強フィルム10は被着体70に仮着されている。粘着剤層12の光硬化前は、被着体70と粘着剤層12との界面で容易に剥離可能な状態(リワーク可能な状態)である。
【0021】
表面保護フィルム30は紫外線遮蔽性を有している。表面保護フィルム30が貼り合わせられた状態(図2B)では、保管環境の光(例えば蛍光灯等)に含まれる紫外線は、表面保護フィルムで遮蔽され、粘着剤層12には到達しない。そのため、保管環境での粘着剤層12の光硬化が抑制され、仕掛品を長期間保管した場合でも、接着力が上昇し難く、リワーク性を保持できる。
【0022】
フィルム基材11は紫外線透過性である。そのため、図2Cに示すように、補強フィルム10から表面保護フィルム30を剥離後は、フィルム基材11側から紫外線を照射すれば、フィルム基材11を透過した紫外線により粘着剤層12が硬化する。光硬化により、粘着剤層12の接着力が上昇するため、補強フィルム10は被着体70に強固に接着した状態となる。
【0023】
上記のように、本発明においては、表面保護フィルム30に紫外線遮蔽性を持たせることにより、補強フィルム10を被着体70と貼り合わせた仕掛り品を蛍光灯下で長期間保管した場合でも、粘着剤層12の不所望の光硬化を抑制し、リワーク性を保持できる。表面保護フィルム30を剥離除去後に、フィルム基材11側から光を照射して粘着剤層12を硬化することにより、接着力を適切に上昇させることが可能である。そのため、デバイスの製造工程のリードタイムに柔軟に対応可能である。
【0024】
[積層体の構成]
以下、積層体を構成する各層の好ましい形態について、順に説明する。
【0025】
<第一フィルム基材>
補強フィルム10のフィルム基材11としては、プラスチックフィルムが用いられる。フィルム基材11と粘着剤層12とを固着するために、フィルム基材11の第一主面(粘着剤層12付設面)は離型処理が施されていないことが好ましい。
【0026】
フィルム基材11の厚みは、例えば4~500μm程度である。剛性付与や衝撃緩和等によりデバイスを補強する観点から、フィルム基材11の厚みは12μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、45μm以上がさらに好ましい。補強フィルムに可撓性を持たせハンドリング性を高める観点から、フィルム基材11の厚みは300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。機械強度と可撓性とを両立する観点から、フィルム基材11の圧縮強さは、100~3000kg/cmが好ましく、200~2900kg/cmがより好ましく、300~2800kg/cmがさらに好ましく、400~2700kg/cmが特に好ましい。
【0027】
フィルム基材11を構成するプラスチック材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。ディスプレイ等の光学デバイス用の補強フィルムにおいては、フィルム基材11は透明フィルムであることが好ましい。機械強度と透明性とを兼ね備えることから、フィルム基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好適に用いられる。
【0028】
フィルム基材11側から活性光線を照射して粘着剤層12の光硬化を行う場合は、フィルム基材11は、粘着剤層12の硬化に用いられる活性光線に対する透明性を有することが好ましい。フィルム基材11の波長365nmの光の透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。フィルム基材11の波長405nmの光の透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0029】
フィルム基材11の表面には、易接着層、易滑層、離型層、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層等の機能性コーティングが設けられていてもよい。なお、前述のように、フィルム基材11と粘着剤層12とを固着するために、フィルム基材11の第一主面(粘着剤層12付設面)には離型層が設けられていないことが好ましい。
【0030】
<第一粘着剤層>
フィルム基材11上に固着積層される粘着剤層12は、ベースポリマー、光硬化剤および光重合開始剤を含む光硬化性組成物である。補強フィルム10が、ディスプレイ等の光学デバイスに用いられる場合、粘着剤層12の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。粘着剤層12のヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.7%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
【0031】
(ベースポリマー)
ベースポリマーは粘着剤組成物の主構成成分である。ベースポリマーの種類は特に限定されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ゴム系ポリマー等を適宜に選択すればよい。特に、光学的透明性および接着性に優れ、かつ接着性の制御が容易であることから、粘着剤組成物は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するものが好ましく、粘着剤組成物の50重量%以上がアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0032】
アクリル系ポリマーとしては、主たるモノマー成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0033】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖でもよく分枝を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラルキル等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、55重量%以上がさらに好ましい。
【0035】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するモノマー成分を含有することが好ましい。架橋可能な官能基を有するモノマーとしてはヒドロキシ基含有モノマーや、カルボキシ基含有モノマーが挙げられる。アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーの両方を有していてもよく、いずれか一方のみを有していてもよい。ベースポリマーのヒドロキシ基やカルボキシ基は、後述の架橋剤との反応点となる。例えば、イソシアネート系架橋剤を用いる場合は、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。エポキシ系架橋剤を用いる場合は、ベースポリマーの共重合成分として、カルボキシ基含有モノマーを含有することが好ましい。ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、凝集力が向上し、粘着剤層12の接着力が向上するとともに、リワークの際の被着体への糊残りが低減する傾向がある。
【0036】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル)メチル等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、カルボキシペンチル(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0037】
アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対するヒドロキシ基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーの合計量が、1~30重量%であることが好ましく、3~25重量%であることがより好ましく、5~20重量%であることがさらに好ましい。
【0038】
アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分として、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、N-ビニルカプロラクタム等の窒素含有モノマーを含有していてもよい。
【0039】
アクリル系ベースポリマーは、上記以外のモノマー成分を含んでいてもよい。アクリル系ベースポリマーは、モノマー成分として、例えば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマー、スルホ基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー等を含んでいてもよい。
【0040】
光硬化前の粘着剤の接着特性は、ベースポリマーの構成成分および分子量に左右されやすい。ベースポリマーの分子量が大きいほど、粘着剤が硬くなる傾向がある。アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は、10万~500万が好ましく、30万~300万がより好ましく、50万~200万がさらに好ましい。なお、ベースポリマーに架橋構造が導入される場合、ベースポリマーの分子量とは、架橋構造導入前の分子量を指す。
【0041】
ベースポリマーの構成成分における、高Tgモノマー成分の含有量が多いほど、粘着剤が硬くなる傾向がある。なお、高Tgモノマーとは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が高いモノマーを意味する。ホモポリマーのTgが40℃以上のモノマーとしては、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:173℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:97℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)等の(メタ)アクリル系モノマー;アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg:119℃)、ジエチルアクリルアミド(Tg:81℃)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、イソプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(Tg:98℃)等のアミド基含有ビニルモノマー;メタクリル酸(Tg:228℃)、アクリル酸(Tg:106℃)等の酸モノマー;N-ビニルピロリドン(Tg:54℃)等が挙げられる。
【0042】
アクリル系ベースポリマーは、ホモポリマーのTgが40℃以上のモノマーの含有量が、構成モノマー成分全量に対して1~50重量%であることが好ましく、3~40重量%であることがより好ましい。適度な硬さを有しリワーク性に優れる粘着剤層を形成するためには、ベースポリマーのモノマー成分として、ホモポリマーのTgが80℃以上のモノマー成分を含むことが好ましく、ホモポリマーのTgが100℃以上のモノマー成分を含むことがより好ましい。アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対するホモポリマーのTgが100℃以上のモノマーの含有量が、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましく、3重量%以上であることが特に好ましい。
【0043】
上記モノマー成分を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することによりベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーが得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、溶液重合法が好ましい。溶液重合の溶媒としては、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20~80重量%程度である。溶液重合に用いられる重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系等の各種公知のものを使用できる。分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。反応温度は通常50~80℃程度、反応時間は通常1~8時間程度である。
【0044】
(架橋剤)
粘着剤に適度の凝集力を持たせる観点から、ベースポリマーには架橋構造が導入されることが好ましい。例えば、ベースポリマーを重合後の溶液に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱を行うことにより、架橋構造が導入される。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、ベースポリマー中に導入されたヒドロキシ基やカルボキシ基等の官能基と反応して架橋構造を形成する。ベースポリマーのヒドロキシ基やカルボキシ基との反応性が高く、架橋構造の導入が容易であることから、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が好ましい。
【0045】
イソシアネート系架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが用いられる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートHL」)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学製「タケネートD110N」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、東ソー製「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。
【0046】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物が用いられる。エポキシ系架橋剤のエポキシ基はグリシジル基であってもよい。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤として、ナガセケムテックス製の「デナコール」、三菱ガス化学製の「テトラッドX」「テトラッドC」等の市販品を用いてもよい。
【0047】
架橋剤の使用量は、ベースポリマーの組成や分子量等に応じて適宜に調整すればよい。架橋剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~10重量部程度であり、好ましくは0.1~7重量部、より好ましくは0.2~6重量部、さらに好ましくは0.3~5重量部である。また、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量(重量部)を架橋剤の官能基当量(g/eq)で割った値は、0.00015~0.11が好ましく、0.001~0.077がより好ましく、0.003~0.055がさらに好ましく、0.0045~0.044が特に好ましい。永久接着を目的とした一般的なアクリル系の光学用透明粘着剤よりも架橋剤の使用量を大きくして粘着剤に適度な硬さを持たせることにより、リワーク時の被着体への糊残りが低減し、リワーク性が向上する傾向がある。
【0048】
架橋構造の形成を促進するために架橋触媒を用いてもよい。例えば、イソシアネート系架橋剤の架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒(特にスズ系架橋触媒)等が挙げられる。架橋触媒の使用量は、一般には、ベースポリマー100重量部に対して0.05重量部以下である。
【0049】
(光硬化剤)
粘着剤層12を構成する粘着剤組成物は、ベースポリマーに加えて光硬化剤を含有する。光硬化性の粘着剤組成物からなる粘着剤層12は、被着体との貼り合わせ後に光硬化を行うと、被着体との接着力が向上する。
【0050】
光硬化剤としては、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましい。また、光硬化剤は、ベースポリマーとの相溶性を示す化合物が好ましい。ベースポリマーとの適度な相溶性を示すことから、光硬化剤は常温で液体であるものが好ましい。光硬化剤がベースポリマーと相溶し、組成物中で均一に分散することにより、被着体との接触面積を確保可能であり、かつ透明性の高い粘着剤層12を形成できる。また、ベースポリマーと光硬化剤とが適度な相溶性を示すことにより、光硬化後の粘着剤層12内に架橋構造が均一に導入されやすく、被着体との接着力が適切に上昇する傾向がある。
【0051】
ベースポリマーと光硬化剤との相溶性は、主に、化合物の構造の影響を受ける。化合物の構造と相溶性は、例えばハンセン溶解度パラメータにより評価可能であり、ベースポリマーと光硬化剤の溶解度パラメータの差が小さいほど相溶性が高くなる傾向がある。
【0052】
アクリル系ベースポリマーとの相溶性が高いことから、光硬化剤として多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、アクリル系ベースポリマーとの相溶性に優れることから、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0053】
ベースポリマーと光硬化剤との相溶性は、化合物の分子量にも左右される。光硬化性化合物の分子量が小さいほど、ベースポリマーとの相溶性が高くなる傾向がある。ベースポリマーとの相溶性の観点から、光硬化剤の分子量は1500以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、400以下が特に好ましい。
【0054】
光硬化前の粘着剤層12においては、ベースポリマーの特性が接着性の主たる支配要因である。そのため、粘着剤組成物のベースポリマーが同一であれば、光硬化剤の種類が異なっても、光硬化前の粘着剤層の接着特性の差異は小さい。光硬化剤の種類や含有量は、主に、光硬化後の粘着剤層の接着力に影響を与える。官能基当量が小さく(すなわち、単位分子量あたりの官能基数が大きく)、光硬化剤の含有量が大きいほど、光硬化の前後で接着力に差を設けることができる。
【0055】
ベースポリマーとの相溶性が高く、かつ光硬化後の接着力を向上する観点から、光硬化剤の官能基当量(g/eq)は500以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましく、200以下が特に好ましい。一方、光硬化剤の官能基当量が過度に小さいと、光硬化後の粘着剤層の架橋点密度が高くなり、接着性が低下する場合がある。そのため、光硬化剤の官能基当量は80以上が好ましく、100以上がより好ましく、130以上がさらに好ましい。
【0056】
アクリル系ベースポリマーと多官能アクリレート光硬化剤との組み合わせにおいては、光硬化剤の官能基当量が小さい場合は、ベースポリマーと光硬化剤の相互作用が強く、初期接着力が上昇する傾向がある。本発明の用途においては、初期接着力の過度の上昇がリワーク性の低下につながる場合がある。光硬化前の粘着剤層12と被着体との接着力を適切な範囲に保持する観点からも、光硬化剤の官能基当量は上記の範囲内であることが好ましい。
【0057】
粘着剤組成物における光硬化剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、10~50重量部が好ましい。光硬化剤の配合量を上記範囲とすることにより、光硬化後の粘着剤層と被着体との接着性を適切な範囲に調整できる。光硬化剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、15~45重量部がより好ましく、20~40重量部がさらに好ましい。
【0058】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性光線の照射により活性種を発生し、光硬化剤の硬化反応を促進する。光重合開始剤としては、光硬化剤の種類等に応じて、光カチオン開始剤(光酸発生剤)、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤(光塩基発生剤)等が用いられる。光硬化剤として多官能アクリレート等のエチレン性不飽和化合物が用いられる場合は、重合開始剤として光ラジカル開始剤を用いることが好ましい。
【0059】
光ラジカル開始剤は、活性光線の照射によりラジカルを生成し、光ラジカル開始剤から光硬化剤へのラジカル移動により、光硬化剤のラジカル重合反応を促進する。光ラジカル開始剤(光ラジカル発生剤)としては、波長450nmよりも短波長の可視光または紫外線の照射によりラジカルを生成するものが好ましく、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光ラジカル開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
粘着剤層12に透明性が求められる場合、光重合開始剤は、400nmよりも長波長の光(可視光)に対する感度が小さいことが好ましく、例えば、波長405nmにおける吸光係数が1×10[mLg-1cm-1]以下である光重合開始剤が好ましく用いられる。
【0061】
粘着剤層12における光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.02~3重量部がより好ましく、0.03~2重量部がさらに好ましい。粘着剤層12における光重合開始剤の含有量は、光硬化剤100重量部に対して、0.02~10重量部が好ましく、0.05~7重量部がより好ましく、0.1~5重量部がさらに好ましい。粘着剤層12における光重合開始剤の含有量が過度に小さいと、紫外線を照射しても光硬化反応が十分に進行しない場合がある。一方、光重合開始剤の含有量が過度に大きいと、UV遮蔽性の表面保護フィルム30を透過したわずかな紫外線により、保管環境下で粘着剤の光硬化が進行し、補強フィルムのリワークが困難となる場合がある。
【0062】
(その他の添加剤)
上記例示の各成分の他、粘着剤層中には、シランカップリング剤、粘着性付与剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0063】
(粘着剤層の作製)
上記の粘着剤組成物を、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコート等により、基材上に塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去することにより粘着剤層が形成される。乾燥方法としては、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃、より好ましくは50℃~180℃、さらに好ましくは70℃~170℃である。乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、より好ましくは5秒~15分、さらに好ましくは10秒~10分である。
【0064】
粘着剤層12の厚みは、例えば、1~300μm程度である。粘着剤層12の厚みが大きいほど被着体との接着性が向上する傾向がある。一方、粘着剤層12の厚みが過度に大きい場合は、光硬化前の流動性が高く、ハンドリングが困難となる場合がある。そのため、粘着剤層12の厚みは5~100μmが好ましく、8~50μmがより好ましく、10~40μmがさらに好ましく、13~30μmが特に好ましい。
【0065】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合は、溶媒の乾燥と同時、または溶媒の乾燥後に、加熱またはエージングにより架橋を進行させることが好ましい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定され、通常、20℃~160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。溶媒を乾燥除去するための加熱が、架橋のための加熱を兼ねていてもよい。
【0066】
ベースポリマーに架橋構造が導入されることにより、ゲル分率が上昇する。ゲル分率が高いほど粘着剤が硬く、リワーク等による被着体からの補強フィルムの剥離時に、被着体への糊残りが抑制される傾向がある。光硬化前の粘着剤層12のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、65%以上が特に好ましい。粘着剤層12の光硬化前のゲル分率は、70%以上または75%以上であってもよい。
【0067】
粘着剤は未反応の光硬化剤を含有するため、光硬化前の粘着剤層12のゲル分率は一般に90%以下である。光硬化前の粘着剤層12のゲル分率が過度に大きいと、被着体に対する投錨力が低下し、初期接着力が不十分となる場合がある。そのため、光硬化前の粘着剤層12のゲル分率は、85%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0068】
ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができ、具体的には、粘着剤層を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。また、光硬化剤の量が多いほど、ゲル分率は小さくなる。架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入後も、光硬化剤は未反応の状態を維持している。そのため、ベースポリマーと光硬化剤とを含む光硬化性の粘着剤層12が形成される。
【0069】
<表面保護フィルム>
補強フィルム10の第一フィルム基材11に貼り合わせられる表面保護フィルム30は、紫外線遮蔽性を有する。表面保護フィルム30が紫外線遮蔽性を有するとは、第一粘着剤層12に含まれる光重合開始剤の吸収波長の光を遮蔽することを意味する。具体的には、表面保護フィルムは、光重合開始剤の450nm以下の領域における吸収極大波長の光の透過率が小さいことが好ましい。光重合開始剤が450nm以下の波長領域に複数の吸収極大を有する場合は、450nm以下の領域で最も長波長の吸収極大波長を、光重合開始剤の吸収極大波長とする。表面保護フィルム30は、光重合開始剤の吸収極大波長の光透過率が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0070】
1つの観点において、表面保護フィルム30は、波長405nmの光透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。別の観点において、表面保護フィルム30は、波長365nmの光透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0071】
一般的な蛍光灯の光には、紫外線として、365nmおよび405nmの水銀輝線が含まれている。補強フィルム10を被着体70に貼り合わせた仕掛品を蛍光灯下で長期間保管する場合でも、これらの波長の光透過率が低い表面保護フィルム30がフィルム基材11の表面に貼り合わせられていれば、蛍光灯からの光に起因する粘着剤層12の光硬化を抑制できる。
【0072】
表面保護フィルム30は、第一フィルム基材11に貼り合わせ可能であり、紫外線遮蔽性を有していれば、その構成や材料は特に限定されない。補強フィルム10を被着体70に貼り合わせた後、第一粘着剤層12の光硬化前に第一フィルム基材11から表面保護フィルム30を容易に剥離するためには、表面保護フィルム30は、図1に示すように、第二フィルム基材31の表面に固着積層された低粘着性の第二粘着剤層32を備えるものが好ましい。
【0073】
表面保護フィルム30は、フィルム基材31および粘着剤層32のいずれか一方または両方が紫外線遮蔽性を有していることが好ましい。フィルム基材31に紫外線遮蔽性を持たせる方法としては、ポリイミド等の紫外線吸収性を有する樹脂材料からなるフィルムを用いる方法、カーボンブラック等の紫外線吸収性を有する着色材料(色素・染料・顔料等)、酸化チタン等の紫外線反射性を有する着色材料、紫外線吸収剤等を樹脂材料に混合する方法、フィルムの表面に着色材料や紫外線吸収剤を含む層をコーティングする方法、フィルム表面に多層薄膜を設けて紫外線を反射させる方法、フィルム表面に微細な凹凸を形成して紫外線を散乱反射させる方法等が挙げられる。粘着剤層32に紫外線遮蔽性を持たせるためには、例えば、粘着剤組成物に紫外線吸収剤や紫外線吸収性を有する着色剤を添加すればよい。
【0074】
<第二フィルム基材>
表面保護フィルム30の第二フィルム基材31の材料や厚みは特に限定されない。表面保護フィルム30は、紫外線遮蔽により粘着剤層12の光硬化を抑制する機能に加えて、補強フィルム10の第一フィルム基材11の傷つきや変形等を抑制する作用を有する。補強フィルムの表面保護と可撓性とを両立する観点から、第二フィルム基材31の厚みは、5~200μm程度が好ましく、10~100μmがより好ましく、15~80μmがさらに好ましい。材料コスト低減の観点から、第二フィルム基材31の厚みは、第一フィルム基材11の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0075】
第二フィルム基材31の材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。第二フィルム基材31の材料は第一フィルム基材11の材料と同一でもよく、異なっていてもよい。フィルム基材31の表面には、易接着層、易滑層、離型層、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層等の機能性コーティングが設けられていてもよい。フィルム基材31の粘着剤層32とを固着するために、フィルム基材31の粘着剤層32付設面には離型層が設けられていないことが好ましい。
【0076】
フィルム基材31に紫外線遮蔽性を持たせる場合は、ポリイミド等が好ましい。前述のように、紫外線吸収性の着色材料や紫外線吸収剤をフィルム基材の樹脂材料と混合して紫外線遮蔽性を持たせてもよい。また、フィルム基材の表面に紫外線吸収層を形成してもよく、紫外線を散乱反射するようにフィルム基材の表面に微細な凹凸を形成してもよい。
【0077】
<第二粘着剤層>
第一フィルム基材11に対する接着安定性と易剥離性とを両立する観点から、表面保護フィルム30の第二粘着剤層32は、光硬化性を有していないものが好ましい。被着体70に貼り合わせられた積層体102から、第一フィルム基材11と第二粘着剤層32との界面で選択的に剥離を行う観点から、第二粘着剤層32の接着力は、光硬化前の第一粘着剤層12の接着力よりも小さいことが好ましい。表面保護フィルム30(第二粘着剤層32)の第一フィルム基材11に対する接着力は、1N/25mm以下が好ましく、0.5N/25mm以下が好ましく、0.3N/25mm以下がさらに好ましく、0.2N/25mm以下が特に好ましい。一方、第一フィルム基材11との接着安定性を確保する観点から、表面保護フィルム30の第一フィルム基材に対する接着力は、0.01N/25mm以上が好ましく、0.02N/25mm以上がより好ましく、0.03N/25mm以上がさらに好ましい。接着力は、引張速度0.3m/分の180°ピール試験による測定値である。
【0078】
第二粘着剤層32を構成する粘着剤の組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、易剥離性(弱粘着性)の粘着剤を形成しやすいことから、アクリル系粘着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。
【0079】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤のベースポリマーとしては、第一粘着剤層を構成するベースポリマーと同様のアクリル系ポリマーが挙げられる。アクリル系ベースポリマーには、多官能イソシアネート化合物や多官能エポキシ化合物等による架橋構造が導入されていることが好ましい。
【0080】
(ウレタン系粘着剤)
ウレタン系粘着剤のウレタン系ベースポリマーとしては、ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物が用いられる。ポリオールとしては、1分子中に2個のヒドロキシ基を有するポリオール(ジオール)、1分子中に3個のヒドロキシ基を有するポリオール(トリオール)、1分子中に4個のヒドロキシ基を有するポリオール(テトラオール)、1分子中に5個のヒドロキシ基を有するポリオール(ペンタオール)、1分子中に6個のヒドロキシ基を有するポリオール(ヘキサオール)等が挙げられる。ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、カプロラクトンポリオール等の高分子ポリオールを用いてもよい。粘着剤の凝集力が向上し、被着体に対する適度の接着力を示すとともに、被着体からの再剥離性に優れることから、ウレタン系ベースポリマーのポリオール成分としてとして、トリオールを含むものが好ましい。高分子量のトリオールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールにアルキレンオキシドを開環付加重合したポリエーテルポリオールが好ましく用いられる。
【0081】
ウレタン系ベースポリマーの形成に用いられるポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香族ポリイソシアネートのいずれでもよい。ポリイソシアネートとして、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを用いてもよい。ポリオールとポリイソシアネートとを、ポリイソシアネートが過剰となるように反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが得られる。
【0082】
(シリコーン系粘着剤)
シリコーン系粘着剤のシリコーン系ベースポリマーとしては、過酸化物架橋型シリコーンや付加反応型シリコーン等が挙げられる。中でも、付加反応型シリコーンが好ましく、フェニル基含有オルガノポリシロキサンが特に好ましい。フェニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエチルフェニルシロキサン等のポリアルキルフェニルシロキサンが挙げられる。付加反応型シリコーン系粘着剤組成物は、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを含有することが好ましい。
【0083】
シリコーンゴムとしては、フェニル基含有オルガノポリシロキサンが好ましく、中でも、メチルフェニルシロキサンを主な構成単位とするオルガノポリシロキサンからなるシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムにおけるオルガノポリシロキサンは、必要に応じて、ビニル基等の官能基を有していてもよい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、15万~150万が好ましく、28万~100万がより好ましく、50万~90万がさらに好ましい。
【0084】
シリコーンレジンとしては、例えば、構成単位「R-Si1/2」からなるM単位、構成単位「SiO」からなるQ単位、構成単位「R-SiO3/2」からなるT単位、および構成単位「R-SiO」からなるD単位から選択される少なくとも1種の単位を有する(共)重合体からなるオルガノポリシロキサンを含むものが挙げられる。なお、上記構成単位におけるRは炭化水素基またはヒドロキシ基である。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。シリコーンレジンにおける「M単位」の割合は、「Q単位、T単位およびD単位から選択された少なくとも1種の単位」の0.3~1.5倍が好ましく、0.5~1.3倍がより好ましい。
【0085】
シリコーン系粘着剤において、シリコーンゴムとシリコーンレジンとは、混合状態でもよく、シリコーンゴムとシリコーンレジンとが反応して縮合物または部分縮合物を形成していてもよい。シリコーンゴム同士、シリコーンレジン同士、またはシリコーンゴムとシリコーンレジンは、架橋剤を介して結合していてもよい。架橋剤としては、シロキサン系架橋剤および過酸化物系架橋剤等が好ましい。
【0086】
(粘着剤層の作製)
ベースポリマーに、必要に応じて架橋剤および各種の添加剤を添加した粘着剤組成物を調製する。前述のように第二粘着剤層の接着力は、第一粘着剤層の接着力よりも小さいことが好ましい。例えば、架橋剤の添加量を大きくして粘性を低下させることにより、粘着剤の接着力が小さくなる傾向がある。また、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等の添加剤を添加することにより粘着剤の接着力を小さくすることもできる。粘着剤組成物には、各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0087】
第二粘着剤層に紫外線吸収性を持たせるためには、粘着剤組成物が紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収性が高く、かつアクリル系ポリマー等との相溶性に優れることから、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、中でも、水酸基を含有するトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の水酸基の数は2個以下が好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(BASF製「TINUVIN 400」)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(BASF製「TINUVIN 405」)、(2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF製「TINUVIN 460」)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF製「TINUVIN 577」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF製「TINUVIN 479」)等が挙げられる。
【0088】
粘着剤組成物を基材上に塗布し、必要に応じて溶媒の乾燥除去および架橋のためのエージングを実施することにより第二粘着剤層が形成される。コーティング方法や加熱条件は、第一粘着剤層の形成条件として前述したものを適宜に採用すればよい。第二粘着剤層32の第一フィルム基材11に対する接着力を前述の範囲に調整する等の観点から、第二粘着剤層32の厚みは、2~100μmが好ましく、3~50μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。
【0089】
<セパレータ>
図1に示すように、第一粘着剤層12の表面には、セパレータ50が仮着されていることが好ましい。セパレータ50としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。セパレータの厚みは、通常3~200μm、好ましくは10~100μm、より好ましくは15~60μmである。セパレータ50の粘着剤層12との接触面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、もしくは脂肪酸アミド系等の離型剤、またはシリカ粉等による離型処理が施されていることが好ましい。
【0090】
セパレータ50の表面が離型処理されていることにより、積層体100からセパレータ50を容易に剥離可能である。そのため、セパレータ50を剥離する際に、積層体100の他の界面での剥離を抑制できる。
【0091】
積層体100からセパレータ50を剥離する際に、第一フィルム基材11と表面保護フィルム30(第二粘着剤層32)との界面での剥離を防止し、第一粘着剤層12とセパレータ50との界面で選択的に剥離を行う観点から、第一粘着剤層12とセパレータ50との接着力は、第二粘着剤層32と第一フィルム基材11との界面での接着力よりも小さいことが好ましい。第一粘着剤層12とセパレータ50との接着力は、0.2N/25mm以下が好ましく、0.1N/25mm以下がより好ましく、0.05N/25mm以下がさらに好ましい。一方、貼り合わせ時の気泡の混入や積層体の保管時や輸送時におけるセパレータの剥離を抑制する観点から、第一粘着剤層12とセパレータ50との接着力は、0.001N/25mm以上が好ましく、0.005N/25mm以上がより好ましく、0.01N/25mm以上がさらに好ましい。
【0092】
セパレータ50は紫外線遮蔽性を有していてもよい。セパレータ50が紫外線遮蔽性を有することにより、被着体70との貼り合わせ前の積層体100を蛍光灯下で保管した場合でも、第一粘着剤層12の不所望の光硬化を抑制できる。セパレータ50に紫外線遮蔽性を持たせる場合は、第二フィルム基材31に紫外線遮蔽性を持たせる方法として前述したように、紫外線吸収性を有する樹脂材料からなるフィルムを用いる方法、紫外線吸収性を有する着色材料や紫外線吸収剤を樹脂材料に混合する方法、フィルムの表面に着色材料や紫外線吸収剤を含む層をコーティングする方法、フィルム表面に多層薄膜を設けて紫外線を反射させる方法、フィルム表面に微細な凹凸を形成して紫外線を散乱反射させる方法等が挙げられる。
【0093】
セパレータ50が紫外線遮蔽性を有するとは、表面保護フィルム30の紫外線遮蔽性として前述したように、第一粘着剤層12に含まれる光重合開始剤の吸収波長の光を遮蔽することを意味する。具体的には、セパレータ50は、光重合開始剤の450nm以下の領域における吸収極大波長の光の透過率が小さいことが好ましく、光重合開始剤の吸収極大波長の光透過率が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。1つの観点において、セパレータ50は、波長405nmの光透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。別の観点において、セパレータ50は、波長365nmの光透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0094】
なお、セパレータ50は必ずしも紫外線遮蔽性を有していなくてもよい。セパレータ50が紫外線遮蔽性を有していない場合でも、遮光性の容器内で積層体100を保管することにより、蛍光灯等に起因する第一粘着剤層12の光硬化を抑制できる。
【0095】
[補強フィルムの使用]
補強フィルムは、デバイスまたはデバイス構成部品に貼り合わせて用いられる。補強フィルムを貼り合わせることにより、適度な剛性が付与されるため、ハンドリング性向上や破損防止効果が期待される。デバイスの製造工程において、仕掛品に補強フィルムが貼り合わせられる場合は、製品サイズに切断される前の大判の仕掛品に補強フィルムを貼り合わせてもよい。ロールトゥーロールプロセスにより製造されるデバイスのマザーロールに、補強フィルムをロールトゥーロールで貼り合わせてもよい。
【0096】
補強フィルムが貼り合わせられる被着体は特に限定されず、各種の電子デバイス、光学デバイスおよびその構成部品等が挙げられる。デバイスの高度集積化、小型軽量化および薄型化に伴って、デバイスを構成する部材の厚みが小さくなる傾向がある。構成部材の薄型化により、積層界面での応力や等に起因する湾曲やカールが生じやすくなる。また、薄型化により自重による撓みが生じやすくなる。補強フィルムを貼り合わせることにより、被着体に剛性を付与できるため、応力や自重等による湾曲、カール、撓み等が抑制され、ハンドリング性が向上する。そのため、デバイスの製造工程で仕掛品に補強フィルムを貼り合わせることにより、自動化された装置による搬送や加工の際の不良や不具合を防止できる。
【0097】
自動搬送においては、搬送対象の仕掛品と、搬送アームやピン等との接触が不可避である。また、形状の調整や不要部分除去のために、仕掛品の切断加工がおこなわれる場合がある。高度集積化、小型軽量化および薄型化されたデバイスでは、搬送装置等との接触や切断加工の際に、局所的な応力の集中による破損が生じやすい。複数の部材が積層されたデバイスの製造工程においては、部材を順次積層するだけでなく、仕掛品から部材の一部や工程材等が剥離除去される場合がある。部材が薄型化されている場合は、剥離箇所およびその近傍に局所的に応力が集中して、破損や寸法変化が生じる場合がある。補強フィルム10は粘着剤層12による応力分散性を有しているため、搬送対象物および加工対象物に補強フィルム10が貼り合わせられることにより、適度な剛性が付与されるとともに、応力が緩和・分散され、クラック、割れ、剥がれ、寸法変化等の不具合を抑制できる。
【0098】
補強フィルム10は被着体70の全面に貼り合わせられてもよく、補強を必要とする部分にのみ選択的に貼り合わせられてもよい。また、被着体の全面に補強フィルム積層体を貼り合わせ後、補強を必要としない箇所の補強フィルム積層体を切断し、被着体の表面から剥離除去してもよい。粘着剤層12の光硬化前であれば、補強フィルムは被着体表面に仮着された状態であるため、被着体70の表面から補強フィルム10を容易に剥離除去できる。
【0099】
補強フィルム積層体102を被着体70に貼り合わせ後、補強を必要とする部分の表面保護フィルム30を剥離除去して、光照射により粘着剤層12を硬化してもよい。この実施形態では、表面保護フィルム30を剥離した領域では粘着剤層12が硬化し、表面保護フィルム30が残存している領域では紫外線が遮蔽されるため粘着剤層12の硬化が抑制される。そのため、表面保護フィルムを剥離除去した領域の粘着剤層12を位置選択的に光硬化することができる。表面保護フィルム30が残存している領域では、粘着剤層12が硬化していないため、被着体70の表面から積層体102を容易に剥離除去できる。
【0100】
<光硬化前の粘着剤層の特性>
(接着力)
被着体からの剥離を容易とし、補強フィルムを剥離後の被着体への糊残りを防止する観点から、光硬化前の粘着剤層12と被着体70との接着力は、5N/25mm以下が好ましく、2N/25mm以下がより好ましく、1.3N/25mm以下がさらに好ましい。保管やハンドリングの際の補強シートの剥離を防止する観点から、光硬化前の粘着剤層12と被着体との接着力は、0.005N/25mm以上が好ましく、0.01N/25mm以上がより好ましく、0.1N/25mm以上がさらに好ましく、0.3N/25mm以上が特に好ましい。
【0101】
補強フィルム10は、粘着剤層12を光硬化前の状態において、ポリイミドフィルムに対する接着力が上記範囲内であることが好ましい。フレキシブルディスプレイパネル、フレキシブルプリント配線板(FPC)、ディスプレイパネルと配線板とを一体化したデバイス等においては、可撓性の基板材料が用いられ、耐熱性や寸法安定性の観点から、一般的に、ポリイミドフィルムが用いられる。粘着剤層12が基板としてのポリイミドフィルムに対して上記の接着力を有する補強フィルムは、粘着剤層12の光硬化前には剥離が容易であり、光硬化後は接着信頼性に優れる。
【0102】
(貯蔵弾性率)
粘着剤層12は、光硬化前の25℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が1×10~1.2×10Paであることが好ましい。せん断貯蔵弾性率(以下、単に「貯蔵弾性率」と記載する)は、JIS K7244-1「プラスチック-動的機械特性の試験方法」に記載の方法に準拠して、周波数1Hzの条件で、-50~150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した際の、所定温度における値を読み取ることにより求められる。
【0103】
粘着剤のように粘弾性を示す物質において、貯蔵弾性率G’は硬さの程度を表す指標として用いられる。粘着剤層の貯蔵弾性率は凝集力と高い相関を有しており、粘着剤の凝集力が高いほど被着体への投錨力が大きくなる傾向がある。光硬化前の粘着剤層12の貯蔵弾性率が1×10Pa以上であれば、粘着剤が十分な硬さと凝集力を有するため、被着体から補強フィルムを剥離した際に被着体への糊残りが生じ難い。また、粘着剤層12の貯蔵弾性率が大きい場合は、補強フィルムの端面からの粘着剤のはみ出しを抑制できる。光硬化前の粘着剤層12の貯蔵弾性率が1.2×10Pa以下であれば、粘着剤層12と被着体との界面での剥離が容易であり、リワークを行った場合でも、粘着剤層の凝集破壊や被着体表面への糊残りが生じ難い。補強シートのリワーク性を高め、リワーク時の被着体への糊残りを抑制する観点から、粘着剤層12の光硬化前の25℃における貯蔵弾性率G’は、3×10~1×10Paがより好ましく、4×10~9.5×10Paがさらに好ましい。
【0104】
<粘着剤層の光硬化>
被着体70に積層体102を貼り合わせ、表面保護フィルム30を剥離後に、粘着剤層12に紫外線等の活性光線を照射することにより、粘着剤層12を光硬化させる。活性光線の照射強度や照射時間は、粘着剤層12の組成や厚み等に応じて適宜設定すればよい。
【0105】
<光硬化後の粘着剤層の特性>
(接着力)
デバイスの実用時の接着信頼性の観点から、光硬化後の粘着剤層12と被着体70との接着力は、6N/25mm以上が好ましく、10N/25mm以上がより好ましく、12N/25mm以上がさらに好ましく、14N/25mm以上が特に好ましい。補強フィルムは、光硬化後の粘着剤層が、ポリイミドフィルムに対して上記範囲の接着力を有することが好ましい。光硬化後の粘着剤層12と被着体との接着力は、光硬化前の粘着剤層12と被着体との接着力の4倍以上が好ましく、8倍以上がより好ましく、10倍以上がさらに好ましい。
【0106】
粘着剤層12は、光硬化後の25℃における貯蔵弾性率G’が1.5×10Pa以上であることが好ましい。光硬化後の粘着剤層12の貯蔵弾性率が1.5×10Pa以上であれば、凝集力の増大に伴って被着体との接着力が向上し、高い接着信頼性が得られる。一方、貯蔵弾性率が過度に大きい場合は、粘着剤が濡れ拡がり難く被着体との接触面積が小さくなる。また、粘着剤の応力分散性が低下するため、剥離力が接着界面に伝播しやすく、被着体との接着力が低下する傾向がある。そのため、粘着剤層12の光硬化後の25℃における貯蔵弾性率G’は2×10Pa以下が好ましい。粘着剤層を光硬化後の補強シートの接着信頼性を高める観点から、G’は、1.8×10~1.2×10Paがより好ましく、2×10~1×10Paがさらに好ましい。
【0107】
粘着剤層12の光硬化前後の25℃における貯蔵弾性率の比G’/G’は、2以上が好ましい。G’がG’の2倍以上であれば、光硬化によるG’の増加が大きく、光硬化前のリワーク性と光硬化後の接着信頼性とを両立できる。G’/G’は4以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、10以上が特に好ましい。G’/G’の上限は特に限定されないが、G’/G’が過度に大きい場合は、光硬化前のG’が小さいことによる初期接着不良、または光硬化後のG’が過度に大きいことによる接着信頼性の低下に繋がりやすい。そのため、G’/G’は、100以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、25以下が特に好ましい。
【0108】
補強フィルム10を付設後の被着体70は、複数の積層部材の積層界面の親和性向上等を目的としたオートクレーブ処理や、回路部材接合のための熱圧着等の加熱処理が行われる場合がある。このような加熱処理が行われた際に、補強フィルムと被着体との間の粘着剤が、端面から流動しないことが好ましい。
【0109】
高温加熱時の粘着剤のはみ出しを抑制する観点から、光硬化後の粘着剤層12の100℃における貯蔵弾性率は、5×10Pa以上が好ましく、8×10Pa以上がより好ましく、1×10Pa以上がさらに好ましい。加熱時の粘着剤のはみ出し防止に加えて、加熱時の接着力低下を防止する観点から、光硬化後の粘着剤層12の100℃における貯蔵弾性率は、50℃における貯蔵弾性率の60%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、75%以上が特に好ましい。
【0110】
光硬化性の粘着剤層12は、硬化のタイミングを任意に設定可能である。リワークや補強フィルムの加工等の処理は、被着体70に積層体102を貼設後、粘着剤層12を光硬化するまでの間の任意のタイミングで実施可能であるため、デバイスの製造工程のリードタイムに柔軟に対応可能である。上述のように、紫外線遮蔽性の表面保護フィルム30が貼り合わせられているため、蛍光灯等に含まれる紫外線の粘着剤層12への到達量が小さく、粘着剤層の光硬化を抑制できる。そのため、被着体に積層体102を添接した状態の仕掛品を長期間保管した場合でも、粘着剤層12の接着力の変化が小さく、被着体70からの剥離が容易である。
【0111】
表面保護フィルム30を剥離後に、第一フィルム基材11側から活性光線を照射して第一粘着剤層12を硬化することにより、補強フィルム10は被着体70に強固に接着した状態となる。デバイスの落下、デバイス上への重量物の載置、デバイスへの飛来物の衝突等により、不意に外力が負荷された場合でも、補強フィルムが貼り合わせられていることにより、デバイスの破損を防止できる。また、粘着剤層が強固に接着しているため、長期使用においても補強フィルムが剥がれ難く、信頼性に優れている。
【実施例
【0112】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0113】
[補強フィルムの作製]
<粘着剤組成物の調製>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、モノマーとして、ブチルアクリレート95重量部およびアクリル酸5重量部、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、ならびに溶媒として酢酸エチル233重量部を投入し、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃に加熱し、7時間反応させてアクリル系ポリマーの溶液を得た。
【0114】
アクリル系ポリマーの溶液に、架橋剤として4官能エポキシ系化合物(三菱ガス化学製「テトラッドC」)0.5重量部、多官能アクリルモノマーとして新中村化学工業製「A-200」(ポリエチレングリコール#200(n=4)ジアクリレート;分子量官308、官能基当量154g/eq)30重量部、および光ラジカル開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製「イルガキュア184」;吸収極大波長:246nm、280nm、333nm)1重量部を添加し、均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0115】
<粘着剤層の形成>
表面処理がされていない厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製「ルミラーS10-75」)上に、上記の粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、ファウンテンロールを用いて塗布した。130℃で1分間乾燥して溶媒を除去後、粘着剤の塗布面に、セパレータ(表面がシリコーン離型処理された厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面を貼り合わせた。その後、25℃の雰囲気で4日間のエージング処理を行い、架橋を進行させ、フィルム基材上に光硬化性粘着シートが固着積層され、その上にセパレータが仮着された補強フィルムを得た。
【0116】
[実施例1]
<粘着剤層の作製>
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、モノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート96.2重量部、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)3.8重量部、ならびに重合開始剤としてAIBN0.2重量部を酢酸エチル150重量部とともに仕込み、23℃で緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換を行った。その後、液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、室温まで冷却した後に酢酸エチルで希釈して、重量平均分子量54万のベースポリマーの溶液(濃度25重量%)を調製した。
【0117】
ベースポリマーの溶液400重量部(固形分100重量部)に、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体;東ソー製「コロネートHX」)を固形分で4重量部、および架橋触媒としてジラウリン酸ジオクチルスズの酢酸エチル溶液(東京ファインケミカル製「エンビライザーOL-1」)を固形分で0.02重量部添加して攪拌し、アクリル系粘着剤溶液を調製した。このアクリル系粘着剤溶液を、厚み50μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン200H」)上に塗布し、130℃で20秒間加熱して、ポリイミドフィルム上に厚み10μmの粘着剤層Aを形成した。
【0118】
<表面保護フィルムの作製および補強フィルムへの貼り合わせ>
粘着剤層上に厚み38μmのセパレータ(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF」)を仮着して、ポリイミドフィルム上に厚み10μmの粘着剤層Aが固着積層され、その上にセパレータが仮着された表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムからセパレータを剥離し、補強フィルムのPETフィルム上に貼り合わせて、積層体を得た。
【0119】
[実施例2]
表面保護フィルムの基材として、ポリイミドフィルムに代えて、黒色材料を練りこんだ厚み50μmの黒色PETフィルム(東レ製「ルミラーX30」)を用い、表面保護フィルムを作製した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
[実施例3]
表面保護フィルムの基材として、ポリイミドフィルムに代えて、表面に内部空洞を有する厚み50μmの白色PETフィルム(東洋紡製「クリスパーK1212」)を用い、表面保護フィルムを作製した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0120】
[実施例4]
粘着剤組成物の調製において、ベースポリマー100重量部に、イソシアネート系架橋剤および架橋触媒に加えて、紫外線吸収剤(2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン;BASF製「Tinosorb S」)10重量部を添加した。また、表面保護フィルムの基材として、ポリイミドフィルムに代えて、厚み50μmの透明PETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルT100C50」)を用いた。これらの変更以外は実施例1と同様にして、透明PETフィルム基材上紫外線吸収剤を含む厚み10μmの粘着剤層Bが固着積層され、その上にセパレータが仮着された表面保護フィルムを得た。この表面保護フィルムからセパレータを剥離し、補強フィルムのPETフィルム上に貼り合わせて、積層体を得た。
【0121】
[比較例1]
表面保護フィルムを貼り合わせていない補強フィルムを用いた。
【0122】
[比較例2]
表面保護フィルムの基材として、ポリイミドフィルムに代えて、厚み50μmの透明PETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルT100C50」)を用い、表面保護フィルムを作製した。それ以外は実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0123】
[評価]
<光透過率>
分光光度計(日立ハイテク製「U-4100」)を用いて、表面保護フィルムの透過スペクトルを測定し、波長365nmおよび波長405nmにおける透過率を読み取った。
【0124】
<セパレータおよび表面保護フィルムの接着力>
積層体を幅25mm×長さ100mmに切り出した試料を用い、セパレータの端部をチャックで保持して、引張速度0.3m/分でセパレータの180°ピールを行い、接着力(180°ピール強度)を測定した。同一の試料を用いて、表面保護フィルムの端部をチャックで保持して、表面保護フィルムの接着力を測定した。
【0125】
<補強フィルムとポリイミドフィルムの接着力>
厚み12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製「カプトン50EN」)を、両面接着テープ(日東電工製「No.531」)を介してガラス板に貼付し、測定用ポリイミドフィルム基板を得た。積層体を幅25mm×長さ100mmに切り出し、補強フィルムの表面からセパレータを剥離除去し、測定用ポリイミドフィルム基板にハンドローラを用いて貼り合わせた。この試料(貼合直後の試料)を、ポリイミドフィルム基板側を下面、補強フィルム側を上面として水平な台の上に静置し、蛍光灯下で1週間放置した。その後、積層体から表面保護フィルムを剥離除去し、補強フィルムのPETフィルム側から、波長365nmのLED光源を用いて積算光量4000mJ/cmの紫外線を照射して粘着剤層を光硬化した。
【0126】
貼合直後の試料、貼合後蛍光灯下で1週間静置した試料、および粘着剤層を光硬化後の試料のそれぞれについて、補強フィルムのPETフィルムの端部をチャックで保持180°ピール試験を行い、補強フィルム/PIフィルム界面の接着力を測定した。
【0127】
実施例および比較例の積層体における表面保護フィルムの構成、および表面保護フィルムの光透過率、ならびに補強フィルム/PIフィルム界面、表面保護フィルムおよびセパレータの接着力の測定結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
いずれの実施例および比較例においても、被着体であるポリイミドフィルムに補強フィルムを貼り合わせた直後は、接着力が0.24N/25mmであり、被着体からの補強フィルムの剥離が容易であった。表面保護フィルムを貼り合わせていない補強フィルムを用いた比較例1では、被着体に補強フィルムを貼り合わせて蛍光灯下で1週間保管すると、接着力が大幅に上昇しており、被着体からの補強フィルムの剥離が困難となっていた。透明PETフィルム上に粘着剤層Aが積層された表面保護フィルムを補強フィルム上に貼り合わせた比較例2においても、比較例1と同様、蛍光灯下での保管後の接着力の上昇がみられた。
【0130】
紫外線遮蔽性を有するフィルム基材を備える表面保護フィルムを用いた実施例1~3では、蛍光灯下で1週間保管後も接着力の上昇はみられなかった。紫外線吸収剤を含む粘着剤層Bを備える表面保護フィルムを用いた実施例4でも、実施例1~3と同様、蛍光灯下での保管後の接着力の上昇はみられなかった。また、実施例1~4では、表面保護フィルムを剥離して紫外線を照射した後は、被着体に対して高い接着力を示した。
【0131】
これらの結果から、補強フィルムのフィルム基材上に紫外線遮蔽性を有する表面保護フィルムを貼り合わせることにより、蛍光灯からの紫外線に起因する粘着剤の光硬化を抑制し、補強フィルムを被着体と貼り合わせた仕掛品の長期保管が可能となることが分かる。このように、補強フィルムの表面に紫外線遮蔽性の表面保護フィルムを貼り合わせた積層体は、被着体との貼り合わせ後、接着力が向上するまでの時間を任意に設定可能であり、デバイス製造工程のリードタイム等に柔軟に対応可能である。
【符号の説明】
【0132】
100 補強フィルム積層体
10 補強フィルム
11 フィルム基材
12 粘着剤層
30 表面保護フィルム
31 フィルム基材
32 粘着剤層
50 セパレータ

図1
図2A
図2B
図2C