(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】印字装置
(51)【国際特許分類】
B41J 25/308 20060101AFI20220726BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220726BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20220726BHJP
B41J 19/20 20060101ALI20220726BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B41J25/308 Z
B41J2/01 303
B41J2/01 305
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J3/407
B41J19/20 K
B41J21/00 Z
(21)【出願番号】P 2018175747
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000185374
【氏名又は名称】小池酸素工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕行
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】大木 繁
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1148089(KR,B1)
【文献】特開平07-266262(JP,A)
【文献】特開2018-069519(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0095146(KR,A)
【文献】米国特許第05144330(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 25/308
B41J 2/01
B41J 3/407
B41J 19/20
B41J 21/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアによって搬送されている被印字材の上面に印字するための印字装置であって、
コンベアを跨いで移動不能に設置されたガーターと、該ガーターに対しコンベアによる搬送方向及びコンベアを横断する方向に移動可能に且つ昇降可能に搭載されコンベアによって搬送される被印字材の上面に対して印字する印字ヘッドと、を有する印字部と、
前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され搬送される被印字材の傾きを検出する傾き検出部と、
前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され被印字材の厚さを検出する厚さ検出部と、
前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され被印字材の下流側の端部近傍で且つ幅方向両端側の高さを検出する両端側高さ検出部と、
前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側であってコンベアを横断する方向に複数配置され被印字材の厚さ方向の歪を検出する歪検出部と、
前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され被印字材の搬送速度を検出する搬送速度検出部と、
予め印字すべき被印字材の板厚を含む被印字材データ及び該被印字材に対する印字データを記憶し、前記傾き検出部によって検出した被印字材の傾きに応じて印字データの座標を変換し、前記厚さ検出部によって検出した厚さに対応させて前記印字部を昇降させるように制御する制御部と
、を有し、
前記傾き検出部は、前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置されて被印字材の長さ方向の端部を検出する長さ方向端部検出部材と、該長さ方向端部検出部材よりも搬送方向上流側に配置されて被印字材の幅方向の端部を検出する幅方向端部検出部材と、を有し、前記長さ方向端部検出部材による被印字材の長さ方向の端部の検出と前記幅方向端部検出部材による被印字材の幅方向の端部の検出を同期させることで被印字材の傾きを検出することを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記印字部は、前記ガーターに搭載されコンベアによる搬送方向と交差する方向に横行する第1キャリッジと、該第1キャリッジに搭載され、コンベアの搬送方向に沿って往復移動する第2キャリッジと、を有し、前記第2キャリッジに印字ヘッドが昇降可能に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載した印字装置。
【請求項3】
前記両端側高さ検出部は、コンベアの搬送方向を横断する方向に移動可能に配置された一対の距離検出部材を有し、該一対の距離検出部材によって被印字材の表面との距離を検出することで該被印字材の両端部分の高さを検出することを特徴とする請求項1
または2記載した印字装置。
【請求項4】
前記歪検出部はコンベアを横断する方向に配置された複数の距離検出部材を有し、該複数の距離検出部材と対向する被印字材の上面の距離を検出することで、被印字材の厚さ方向の歪を検出することを特徴とする請求項1乃至
3の何れかに記載した印字装置。
【請求項5】
前記搬送速度検出部は、コンベアによって搬送される被印字材の表面と接触して該被印字材の移動に伴って回転する回転体を有し、該回転体の回転を検出して被印字材の搬送速度を検出することを特徴とする請求項1乃至
4の何れかに記載した印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアによって搬送されている被印字材に対し、文字や数字或いは記号又は線を含む図形等を印字するための印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
造船業や鉄構業或いはシヤリング業では、鋼板の表面に切断や溶接に関する情報となる文字や数字或いは線などを印字することが行われている。鋼板に印字する場合、該鋼板を作業領域に停止させておき、印字ヘッドを二次元的に移動させつつ、予め設定された文字や数字或いは線などを印字するのが一般的である。このような印字を行うための印字装置は、鋼板を載置する定盤と、定盤に沿って走行する台車と、台車に搭載され定盤を横断する方向に横行するキャリッジと、キャリッジに搭載された印字ヘッドを有して構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、特許文献2に記載された発明は、搬送装置によって搬送されている板材に対してマーキングを行えるようにした罫書装置に関するものである。この罫書装置は、搬送装置によって搬送される板材の板厚検出センサ、板耳検出センサと板面高さ検出センサ、及びドットマーキングヘッドを有して構成されている。ドットマーキングヘッドは、移動中の板材の全幅にわたって同時にマーキングができるように、マーキング装置の下面の全面に搬送装置を横断する方向に分布して配置されている。
【0004】
そして、板厚検出センサによって検出した板厚に対応させてドットマーキングヘッドを昇降させて最適な高さを保持し、板耳検出センサによって検出した板耳の位置に対応させてドットマーキングヘッドを搬送装置を横断する方向に移動させ、この状態で板材に対するマーキングを実行している。特に、板面高さ検出センサはドットマーキングヘッドと同様にマーキング装置の下面に配置されており、板材に対するマーキングの直前で該板材の局部的変化を検出してこの変化に対応させるようにマーキング装置を追従させている。
【0005】
特許文献2には、搬送装置の上流側には、ショッププライマー塗装乾燥機が配置された構成が記載されている。このため、板材に対するショッププライマーの塗装、乾燥、及び乾燥後のマーキングを一連の作業として行うことが可能となる。従って、マーキングのための特別な作業スペースや板材の運搬設備などが不要となり、合理的な作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4574110号公報
【文献】特許第2736604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明では、専用の作業スペースや専用のクレーン等の運搬設備などの設備が必要となるという問題が生じる。
【0008】
特許文献2に記載された発明では、マーキング装置は横スライド機構、昇降機構からなる支持装置を有し、該支持装置によって搬送装置を横断する方向に並べて配置されたドットマーキングヘッドを同時に横スライド及び昇降させるように構成されている。このため、板材に高さ方向の歪が生じているような場合、個々のドットマーキングヘッドと板材との距離が等しくならなくなる虞があり、この結果、マーキングが不鮮明になる虞がある。
【0009】
本発明の目的は、被印字材が傾斜していても正確な位置に印字することができる印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る印字装置は、コンベアによって搬送されている被印字材の上面に印字するための印字装置であって、コンベアを跨いで移動不能に設置されたガーターと、該ガーターに対しコンベアによる搬送方向及びコンベアを横断する方向に移動可能に且つ昇降可能に搭載されコンベアによって搬送される被印字材の上面に対して印字する印字ヘッドと、を有する印字部と、前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され搬送される被印字材の傾きを検出する傾き検出部と、前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され被印字材の厚さを検出する厚さ検出部と、前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され被印字材の下流側の端部近傍で且つ幅方向両端側の高さを検出する両端側高さ検出部と、前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側であってコンベアを横断する方向に複数配置され被印字材の厚さ方向の歪を検出する歪検出部と、 前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置され被印字材の搬送速度を検出する搬送速度検出部と、予め印字すべき被印字材の板厚を含む被印字材データ及び該被印字材に対する印字データを記憶し、前記傾き検出部によって検出した被印字材の傾きに応じて印字データの座標を変換し、前記厚さ検出部によって検出した厚さに対応させて前記印字部を昇降させるように制御する制御部と、を有し、前記傾き検出部は、前記印字部よりもコンベアによる搬送方向上流側に配置されて被印字材の長さ方向の端部を検出する長さ方向端部検出部材と、該長さ方向端部検出部材よりも搬送方向上流側に配置されて被印字材の幅方向の端部を検出する幅方向端部検出部材と、を有し、前記長さ方向端部検出部材による被印字材の長さ方向の端部の検出と前記幅方向端部検出部材による被印字材の幅方向の端部の検出を同期させることで被印字材の傾きを検出することを特徴とする。
【0011】
上記印字装置に於いて、前記印字部は、前記ガーターに搭載されコンベアによる搬送方向と交差する方向に横行する第1キャリッジと、該第1キャリッジに搭載され、コンベアの搬送方向に沿って往復移動する第2キャリッジと、を有し、前記第2キャリッジに印字ヘッドが昇降可能に搭載されていることが好ましい。
【0013】
上記何れかの印字装置に於いて、前記両端側高さ検出部は、コンベアの搬送方向を横断する方向に移動可能に配置された一対の距離検出部材を有し、該一対の距離検出部材によって被印字材の表面との距離を検出することで該被印字材の両端部分の高さを検出することが好ましい。
【0014】
上記何れかの印字装置に於いて、前記歪検出部はコンベアを横断する方向に配置された複数の距離検出部材を有し、該複数の距離検出部材と対向する被印字材の上面の距離を検出することで、被印字材の厚さ方向の歪を検出することが好ましい。
【0015】
上記何れかの印字装置に於いて、前記搬送速度検出部は、コンベアによって搬送される被印字材の表面と接触して該被印字材の移動に伴って回転する回転体を有し、該回転体の回転を検出して被印字材の搬送速度を検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る印字装置では、コンベアによって搬送されている被印字材の上面に文字や数字或いは記号又は線を含む図形などを正確に印字することができる。即ち、本発明に係る印字装置では、被印字材に対して印字を実行する際に、印字部よりも搬送方向上流側で、被印字材の搬送方向に対する傾き、板厚、幅方向両端部分の高さ、被印字材の搬送速度、を検出している。このため、検出した被印字材の姿勢や歪などの条件に対応させて、印字すべき印字データの座標の変換、或いは印字ヘッドの搬送面からの高さの調整、を行って印字を実行することができる。
【0017】
また、印字ヘッドが、コンベアによる搬送方向と交差する方向に横行すると共に搬送方向に沿って往復移動し且つ昇降可能に構成されているので、被印字材に対する印字を実行する過程で、検出された被印字材の両端部分の高さや厚さ方向の歪に追従することができる。特に、印字ヘッドが搬送方向を横断する方向に印字する過程で、昇降した場合であっても、該印字ヘッドを構成するノズルどうしの被印字材に対する距離の差が小さいため、形成された印字に不都合が生じることがない。
【0018】
また、傾き検出部が、長さ方向端部検出部材による被印字材の下流側の端部を検出すると同期して幅方向の端部を検出するので、確実に被印字材の傾きを検出することができる。
【0019】
また、傾き検出部が、幅方向端部検出部材により幅方向の端部を検出するとき、被印字材との距離を検出するので、コンベアによる搬送方向と交差する横方向に対する被印字材のずれ量を検出することができる。該ずれ量により、印字データをオフセットできる。すなわち、前記ずれ量だけ印字データを移動させることで、求められる位置に正確に印字することができる。
【0020】
両端側高さ検出部が、コンベアの搬送方向を横断する方向に移動可能に配置された一対の距離検出部材によって被印字材の表面との距離を検出するので、被印字材に捻れや部分的な高さの差が生じていてもこれらを検出することができる。このため、厚さ検出部で検出した被印字材の厚さに加えて幅方向両端部分の高さによっても印字ヘッドの高さを調整することができる。
【0021】
また、歪検出部が、被印字材の厚さ方向の歪を検出するので、検出した被印字材の歪に対応させて印字ヘッドを追従させることができる。
【0022】
また、搬送速度検出部が、被印字材の表面と接触して回転する回転体を有し、該回転体の回転を検出して被印字材の搬送速度を検出するので、コンベアの搬送面との間にすべりが生じたような場合でも、実際の正確な搬送速度を検出することで、検出した搬送速度に応じて印字ヘッドの移動速度を制御して印字を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施例に係る印字装置の構成を説明する模式平面図である。
【
図4】厚さ検出部の構成を説明する模式正面図である。
【
図5】両端側高さ検出部の構成を説明する模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る印字装置は、コンベアによって搬送されている例えば鋼板などの被印字材の搬送方向に対する傾き、面外方向への反りや歪などを検出し、検出した傾き、反りや歪に対応させて印字ヘッドを駆動し、或いは印字することなく通過させるようにしたものである。
【0025】
以下、本実施例に係る印字装置について図を用いて説明する。
図1に示す印字装置Aは、コンベア1によって矢印X方向(以下「下流方向」又は「搬送方向」ともいう)に搬送されている鋼板などの被印字材(以下「鋼板2」という)の上面の予め設定された位置に文字や数字或いは記号又は線を含む図形等を印字するものである。
【0026】
このため、印字装置Aは、鋼板2に印字するための印字部Bと、鋼板2の傾きを検出する傾き検出部Cと、鋼板2の厚さを検出する厚さ検出部Dと、鋼板2の下流側端部2aの近傍で且つ幅方向端部2b1、2b2近傍の高さを検出する両端側高さ検出部Eと、鋼板2の厚さ方向の歪、例えば反りなどを検出する歪検出部Fと、鋼板2の搬送速度を検出する搬送速度検出部Gと、を有して構成されている。
【0027】
コンベア1は鋼板2を矢印X方向に搬送するものである。このため、鋼板2を載置して搬送する機能を有するものであれば構造を限定するものではない。このようなコンベアとしては、ローラコンベアやスラットコンベア或いはベルトコンベアなどがあるが、鋼板の重量や反りなどを考慮するとローラコンベアであることが好ましい。
【0028】
本実施例では、コンベア1として複数のローラを並べて構成したローラコンベアを用いており、これらのローラを予め設定された搬送速度となるように駆動することで、鋼板2を搬送している。
【0029】
鋼板2の表面の状態を限定するものではなく、黒皮の状態や除錆した状態或いは塗装した状態であっても良い。本実施例では、鋼板2として表面に防錆塗装が施されたものを対象としている。即ち、コンベア1の搬送方向上流側にサンドブラスト装置と塗装装置が設置されており、鋼板2がこれらの装置を通過する過程で表面が除錆され、除錆された表面に防錆塗料が塗装されている。このため、鋼板2はサンドブラスト処理、塗装処理に適した速度で搬送されている。
【0030】
印字部Bは印字装置Aに於ける最も下流側に配置されている。印字部Bは移動可能に構成された印字ヘッド10を有しており、該印字ヘッド10をコンベア1を横断する方向及び搬送方向に移動させつつ駆動することで、搬送されている鋼板2の予め設定された位置に印字することが可能である。
【0031】
印字部Bはコンベア1を跨いで設置されたガーター11を有している。このガーター11には、第1キャリッジ駆動モータ12aに駆動されてコンベア1による搬送方向(矢印X方向)と交差する方向に横行可能に構成された第1キャリッジ12が搭載されている。また、第1キャリッジ12には、第2キャリッジ駆動モータ13aに駆動されてコンベア1による搬送方向に移動可能に構成された第2キャリッジ13が搭載されている。更に、第2キャリッジ13には、昇降モータ14aに駆動されてコンベア1の垂直方向(矢印Z方向、以下単に「垂直方向」ともいう)に昇降可能に構成された昇降ブラケット14が配置されており、該昇降ブラケット14に印字ヘッド10が搭載されている。従って、駆動モータ12a、13a及び昇降モータ14aを駆動することで、印字ヘッド10を三次元的に移動させることが可能である。
【0032】
印字ヘッド10は鋼板2の上面に文字や数字或いは記号又は線を含む図形等を印字する機能を有するものであれば良く、構成を限定するものではない。このような印字ヘッドとしては、単独のノズルからインクを噴射して線状の印字を行う線状マーキングヘッドや、マトリックス状に配置した複数のノズルから選択的にインクを噴射してマーキングを行うドットマーキングヘッドがある。本実施例では、ドットマーキングヘッドを利用している。
【0033】
第1キャリッジ12は、搭載された印字ヘッド10を予め設定された鋼板2の最大幅寸法を満足する距離に対応させて横行させ得るように構成されている。そして、通常はコンベア1の幅方向の何れか一方の端部側に設定された初期位置に退避した状態を保持している。
【0034】
また、第2キャリッジ13は、長さがコンベア1による鋼板2の搬送速度と鋼板2の最大幅寸法とに対応させて設定されている。そして、通常はコンベア1の搬送方向上流側の端部に設定された初期位置に退避した状態を保持している、
【0035】
また、昇降ブラケット14は、通常印字ヘッド10を上昇限に設定された初期位置に退避させた状態を保持している。
【0036】
第1キャリッジ12及び第2キャリッジ13、昇降ブラケット14が初期位置にある状態で鋼板2に対する印字を開始するに場合の動作を説明する。先ず、昇降ブラケット14によって印字ヘッド10を鋼板2の上面から距離(高さ)が予め設定された寸法となるまで下降させる。次いで、第2キャリッジ13及び印字ヘッド10を第1キャリッジ12によって矢印Y方向(以下「コンベア1の幅方向」ともいう)に横行させつつ、第2キャリッジ13によって鋼板2の搬送速度に対応させて矢印X方向に移動させる。この移動過程で印字ヘッド10を駆動することで、鋼板2に対する印字を行うことが可能である。
【0037】
傾き検出部Cは印字部Bよりもコンベア1による搬送方向上流側に配置されており、搬送されている鋼板2の傾きを該鋼板2が印字部Bに到達する以前に検出するものである。このため、傾き検出部Cは、鋼板2の長さ方向の下流側の端部2aを検出する長さ方向端部検出部材18と、該長さ方向端部検出部材18よりも搬送方向上流側に配置されて被印字材の幅方向の端部となる幅方向の端面2cを検出する一対の幅方向端面検出部材19a、19bとを有している。
【0038】
長さ方向端部検出部材18、幅方向端面検出部材19a、19bによる鋼板2の検出機構は限定するものではなく、接触式センサや非接触式センサであって良い。本実施例では、各検出部材として夫々非接触式のレーザセンサを用いている。
【0039】
長さ方向端部検出部材18はコンベア1の上方であって幅方向の略中央に垂直方向に配置されている。また、一対の幅方向端面検出部材19a、19bはコンベア1の幅方向一方側であってコンベア1の搬送面よりも上方に且つ予め設定された距離離隔して該コンベア1の中央方向に向けて平行に配置されている。そして、長さ方向端部検出部材18による鋼板2の長さ方向の端部2aの検出と幅方向端面検出部材19a、19bによる鋼板2の幅方向の端面2cの検出を同期させることで、鋼板2の搬送方向に対する傾きを検出することが可能である。
【0040】
傾き検出部Cで検出した鋼板2の傾きに応じて、後述する制御部35では、予め記憶している鋼板2に対する印字データの座標を変換し、変換された印字データによって印字ヘッド10を駆動制御することが可能となる。
【0041】
厚さ検出部Dは印字部Bよりもコンベア1による搬送方向上流側に配置されており、コンベア1によって搬送されている鋼板2の厚さを該鋼板2が印字部Bに到達する以前に検出するものである。このため、厚さ検出部Dは鋼板2の厚さを検出する厚さ検出部材20を有している。厚さ検出部材20はレーザセンサによって構成されており、コンベア1の幅方向の略中央に垂直方向に配置されている。
【0042】
厚さ検出部材20は、コンベア1の垂直方向に該コンベア1による搬送面(並列したローラの頂点を結ぶ面)から予め設定された高さHに配置されている。そして、予め設定された高さHと鋼板2の表面を検出したときの距離hとの差から鋼板2の厚さtを検出し得るように構成されている。
【0043】
厚さ検出部Dで検出した鋼板2の厚さtに応じて、後述する制御部35では、予め記憶している鋼板2の厚さと検出した厚さtを比較し、印字ヘッド10を鋼板2の表面からの距離が印字を実行するのに最適な高さとなるように下降させる。特に、検出した鋼板2の厚さtが予め記憶している厚さと異なるような場合、印字対象の鋼板ではないと判断して印字部Bを通過させるように制御する。
【0044】
厚さ検出部材20による鋼板2の厚さの検出タイミングは特に限定するものではないが、前述した傾き検出部Cに於ける長さ方向端部検出部材18による鋼板2の長さ方向の端部2aの検出と同期させることが好ましい。しかし、この場合には厚さ検出部材20と長さ方向端部検出部材18との距離が鋼板2の長さによって制限を受けることとなる。このため、必ずしも厚さ検出部材20による鋼板2の厚さtの検出と、長さ方向端部検出部材18による鋼板2の長さ方向の端部2aの検出を同期させることに限定するものではない。
【0045】
上記の如く、鋼板2に対して印字を実行する際には、厚さ検出部Dで検出した鋼板2の厚さtに対応させて印字ヘッド10の鋼板2の表面からの高さを設定する。この場合、鋼板2が幅、長さ方向にわたって平坦であれば表面も平坦であり、円滑な印字を実行することが可能である。しかし、鋼板2が全面にわたって平坦であることの保証はない。そして、厚さ検出部Dでは、厚さ検出部材20がコンベア1の幅方向の略中央に配置されているため、鋼板2が幅方向の反りが生じているような場合、反り上がった鋼板2の端部が印字ヘッド10に衝突する虞が生じる。このため、両端側高さ検出部Eによって鋼板2の幅方向両端部近傍の高さを検出することで、該鋼板2の反りを検出しうるように構成されている。
【0046】
両端側高さ検出部Eは、印字部Bよりもコンベア1による搬送方向上流側に配置され、搬送されている鋼板2の下流側の幅方向の両端部近傍の高さを該鋼板2が印字部Bに到達する以前に検出するものである。そして、検出した鋼板2の幅方向の両端部近傍の高さhb1、hb2と、厚さ検出部Dで検出した鋼板2の厚さtとの差によって印字ヘッド10の高さを補正して印字を実行し得るように構成されている。
【0047】
両端側高さ検出部Eはコンベア1を横断する方向に移動可能に構成された一対の距離検出部材23a、23bを有しており、該一対の距離検出部材23a、23bによって鋼板2の幅方向両端部近傍2b1、2b2の表面との距離を検出することでこれらの高さを検出し得るように構成されている。鋼板2の幅方向の端部近傍とは、長さ方向の端部2aからの寸法及び幅方向の端面2cからの寸法を厳密に限定するものではなく、略端部の近傍であれば良い。
【0048】
このため、一対の距離検出部材23a、23bは、コンベア1によって搬送される鋼板2の幅方向の端部近傍に対向する位置まで移動し得るように構成されている。即ち、コンベア1の搬送方向に沿った両側であって且つ対向する位置に夫々スタンド24が設置されており、これらのスタンド24には、駆動モータ26a、26bによって駆動されてコンベア1を横断する方向に移動するアーム25a、25bが配置されている。そして夫々のアーム25a、25bの先端に距離検出部材23a、23bが取り付けられている。
【0049】
夫々の距離検出部材23a、23bは、厚さ検出部材20と同様にレーザセンサによって構成されており、コンベア1の垂直方向に該コンベア1による搬送面から予め設定された高さHに配置されている。そして、予め設定された高さHと鋼板2の幅方向の端部近傍の表面を検出したときの距離との差から該近傍の高さhb1、hb2を検出し得るように構成されている。
【0050】
両端側高さ検出部Eは、単に鋼板2の幅方向の端部近傍のみの高さを検出するのみに限定するものではなく、アーム25a又はアーム25bをコンベア1を横断する方向に繰り出して鋼板2の幅方向に位置を変えて高さを検出し得るように構成することが好ましい。特に、鋼板2に対する印字の進行に伴う印字ヘッド10の横行位置と、鋼板2の搬送速度に関連つけて先行して鋼板2の高さを検出しておくことで、検出した高さに対応させて印字ヘッド10の高さを補正することが可能となる。
【0051】
歪検出部Fは印字部Bよりも搬送方向上流側に配置され、鋼板2の幅方向の凹凸を検出することで厚さ方向の歪を検出するものである。即ち、前述したように鋼板2が全面にわたって平坦であることの保証はなく、幅方向及び、又は長さ方向に波打つような歪が生じていることがある。鋼板2に大きな歪が生じているような場合、この歪に対して印字ヘッド10が追従し得なくなる虞が生じたり、形成された印字の品質が低下してしまう虞が生じる。このため、鋼板2に大きな歪が生じていることを検出した場合、この鋼板2に対する印字を中止して印字部Bを通過させることが好ましい。
【0052】
歪検出部Fは、コンベア1を横断して設置されたフレーム28に予め設定された間隔を持って複数の距離検出部材29を配置して構成されている。距離検出部材29はレーザセンサを利用しており、コンベア1の垂直方向に互いに同じ高さHに設定されてフレーム28に取り付けられている。隣接する距離検出部材29どうしの間隔は特に限定するものではなく、予め設定された鋼板2の最大幅寸法や想定した歪に応じて適宜設定することが好ましい。
【0053】
鋼板2は予め設定された速度で駆動されるコンベア1によって搬送されている。しかし、鋼板2とコンベア1との間に滑りが生じる虞があり、コンベア1の駆動速度と鋼板2が実際に搬送されている速度とが一致しないことがある。この場合、鋼板2に対して実行された印字が目的の位置からずれることとなる。このため、鋼板2の実際の搬送速度を検出して検出した搬送速度に対応させて印字ヘッド10を駆動することが必要となる。
【0054】
搬送速度検出部Gは鋼板2の実際の搬送速度を検出するものであり、印字部Bよりもコンベア1による搬送方向上流側であってコンベア1の幅方向の略中央に配置されている。搬送速度検出部Gは、搬送されている鋼板2の表面に接触して該鋼板2の搬送に伴って回転する回転体31と、フレーム28に支持されて該回転体31を鋼板2の表面に対して押圧する押圧部材32を有している。
【0055】
そして、回転体31の回転を図示しないロータリーエンコーダによって検出することで鋼板2の搬送速度を検出し得るように構成されている。特に、回転体31は押圧部材32によって略一定の力で鋼板2の表面に押圧されている。このため、回転体31と鋼板2の表面との間で滑りが生じる虞がなく、且つ鋼板2の長手方向に凹凸が生じているような場合でもこの凹凸に追従することが可能であり、鋼板2の正確な搬送速度を検出することが可能となる。
【0056】
本実施例では、回転体31は鋼板2の上面に接触することで、該鋼板2の搬送に伴って回転するように構成されている。しかし、回転体31が接触する表面は鋼板2の上面にのみ限定するものではなく、下面であっても側面であっても良い。
【0057】
制御部35は入力装置36から入力された印字データを記憶する印字データ記憶部35aと、印字装置Aを構成する印字部B、傾き検出部C、厚さ検出部D、両端側高さ検出部E、歪検出部F、搬送速度検出Gの動作プログラムを記憶するプログラム記憶部35bと、演算部35cを有して構成されている。
【0058】
印字データ記憶部35aには、予め入力装置36から目的の鋼板2の板厚や長寸法、長さ寸法などの仕様情報や印字すべき印字情報が入力され、仕様データ、印字データとして記憶されている。また、プログラム記憶部35bにはコンベア1の上流側から供給された鋼板2に対する各部B~Gの動作プログラムが予め記憶されている。
【0059】
次に、上記の如く構成された印字装置Aにより鋼板2に対する印字の進行について説明する。
【0060】
コンベア1の上流側から鋼板2が供給され、該鋼板2の仕様情報がコンベア1の上流側に配置された例えばサンドブラスト装置から制御部35に伝達され、或いは入力されると、鋼板2に設定された仕様データや印字データが読みだされる。
【0061】
コンベア1によって搬送された鋼板2の長手方向下流側の端部2aが傾き検出部Cの長さ方向端部検出部材18によって検出されると、同時に、幅方向端面検出部材19a、19bによって鋼板2の幅方向の端面2cまでの距離が検出されて制御部35に送られる。制御部35では、夫々の幅方向端面検出部材19a、19bによって検出した端面2cまでの距離の差に基づいて鋼板2の傾きを算出し、この算出結果に基づいて記憶した印字データの座標を変換する。
【0062】
長さ方向端部検出部材18による鋼板2の長手方向の端部2aの検出と同時に、厚さ検出部Dの厚さ検出部材20によって鋼板2の表面までの距離を検出し、検出した距離hが制御部35に送られる。制御部35では、コンベア1から厚さ検出部材20の高さHと検出した距離hとから得た鋼板2の厚さtを予め記憶した鋼板2の仕様データと比較し、両者の差が許容範囲にあれば目的の鋼板であると判断する。
【0063】
供給された鋼板2が印字対象となる目的の鋼板であると判断した場合、搬送方向下流側に後続する両端側高さ検出部E、歪検出部F、搬送速度検出部G及び印字部Bを夫々予め設定された動作プログラムに従って制御する。このとき、印字部Bの昇降ブラケット14の昇降モータ14aには、印字ヘッド10を鋼板2の表面から離隔させるべき高さが指定される。
【0064】
また、鋼板2の厚さが予め記憶した仕様データから逸脱している場合、供給された鋼板2は目的の鋼板ではないと判断し、印字対象ではないとして搬送方向下流側に後続する両端側高さ検出部E、歪検出部F、搬送速度検出部G及び印字部Bを通過させる。
【0065】
コンベア1によって搬送されている鋼板2が印字対象である場合、制御部35からの指令に基づいて両端側高さ検出部Eの駆動モータ26a、26bが回転してアーム25a、25bを夫々コンベア1を横断する方向に繰り出す。アーム25a、25bの繰り出しによって、距離検出部材23a、23bを鋼板2の幅方向の端部2b1、2b2の近傍に対向させる。
【0066】
そして、各距離検出部材23a、23bによって鋼板2の幅方向の両端近傍の高さhb1、hb2を検出して制御部35に送る。制御部35では、距離検出部材23a、23bによって検出した鋼板2の幅方向の両端近傍の高さhb1、hb2と、厚さ検出部Dで検出した鋼板2の厚さとを比較する。
【0067】
両者に差が生じている場合、この差が許容範囲内であれば、この差に基づいて印字部Bの昇降モータ14aに対し印字ヘッド10の鋼板2の表面からの高さの値を補正する。また、両者の差が許容範囲を逸脱しているような場合、鋼板2に対して印字を実行することが不可能と判断して後続する歪検出部F、搬送速度検出部G及び印字部Bを通過させる。
【0068】
コンベア1によって搬送されている印字対象となる鋼板2が歪検出部Fに到達すると、該歪検出部Fに配置された複数の距離検出部材29によって同時に鋼板2の表面までの距離が検出されて制御部35に送られる。制御部35では送られた各距離検出部材29からの距離どうしを比較することで、鋼板2の幅方向の歪、即ち凹凸の具合を検知する。そして、歪の具合が許容範囲内であれば、この歪に基づいて印字部Bの昇降モータ14aに対し印字ヘッド10の鋼板2の表面からの高さの値を補正する。また、両者の差が許容範囲を逸脱しているような場合、鋼板2に対する印字を実行することが不可能と判断して後続する歪検出部F、搬送速度検出部G及び印字部Bを通過させる。
【0069】
コンベア1によって搬送されている印字対象となる鋼板2が搬送速度検出部Gに到達すると、押圧部材32によって回転体31が鋼板2の表面に押圧され、該回転体31は鋼板2の搬送に伴って回転する。回転体31の回転は該回転体31に内蔵又は接続されたロータリーエンコーダによって検出されて制御部35に送られ、該制御部35で鋼板2の正確な搬送速度が検出される。そして、検出された正確な鋼板2の搬送速度に基づいて、印字部Bの第1キャリッジ12の駆動モータ12a、第2キャリッジ13の駆動モータ13aの駆動が制御される。
【0070】
制御部35では、厚さ検出部Dで検出された鋼板2厚さに基づいて印字ヘッド10の高さを設定し、傾き検出部Cで検出した鋼板2の傾きに対応させて印字データの座標を変換し、更に、搬送速度検出部Gで検出された鋼板2の正確な搬送速度に基づいて第1キャリッジ12、第2キャリッジ13の速度を設定して夫々を駆動することで、鋼板2に対して目的の印字を実行することが可能である。そして、両端側高さ検出部E、歪検出部Fで検出された高さの違いに基づいて印字ヘッド10の高さを補正することで、明瞭な印字を実行することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る印字装置は、鋼板に限定することなくコンベアによって搬送される板状の材に対して印字する際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0072】
A 印字装置
B 印字部
C 傾き検出部
D 厚さ検出部
E 両端側高さ検出部
F 歪検出部
G 搬送速度検出部
1 コンベア
2 鋼板
2a 端部
2b1、2b2 幅方向両端部近傍
2c 端面
10 印字ヘッド
11 ガーター
12 第1キャリッジ
12a 第1キャリッジ駆動モータ
13 第2キャリッジ
13a 第2キャリッジ駆動モータ
14 昇降ブラケット
14a 昇降モータ
18 長さ方向端部検出部材
19a、19b 幅方向端面検出部材
20 厚さ検出部材
23a、23b 距離検出部材
24 スタンド
25a、25b アーム
26a、26b 駆動モータ
28 フレーム
29 距離検出部材
31 回転体
32 押圧部材
35 制御部
35a 印字データ記憶部
35b プログラム記憶部
35c 演算部
36 入力装置