(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
F24C 7/04 20210101AFI20220726BHJP
F24C 15/00 20060101ALI20220726BHJP
H05B 6/12 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
F24C7/04 301A
F24C15/00 M
H05B6/12 324
(21)【出願番号】P 2018187070
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】塩野 岳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 道弘
(72)【発明者】
【氏名】蒲 厚仁
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-344453(JP,A)
【文献】特表2006-517334(JP,A)
【文献】特開2012-100749(JP,A)
【文献】特開2005-122961(JP,A)
【文献】特開2004-192862(JP,A)
【文献】特開2005-140418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0334785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/04
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を加熱する加熱手段と、
加熱手段の加熱条件を設定する加熱条件設定手段と、
加熱条件設定手段で設定される加熱条件に基づいて加熱手段を制御する加熱制御手段と、
時間情報を取得する計時手段と、
調理容器の温度特性情報を取得する温度特性情報取得手段と、
特定の調理における、加熱条件設定手段で設定される加熱条件情報、計時手段で取得される時間情報、及び温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報を少なくとも関連付けた調理情報を記憶する記憶手段と、を備え、
特定の調理を再現する再現調理が設定されると、
対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づき再現調理を開始させ、
再現調理中、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とを対比し、
温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが、所定の特性値以上、乖離している場合、再現調理を中止する制御構成を有する加熱調理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理システムは、さらに、
調理容器を特定する調理容器情報を取得する調理容器情報取得手段を備え、
記憶手段は、特定の調理における、加熱条件設定手段で設定される加熱条件情報、計時手段で取得される時間情報、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報、及び調理容器情報を少なくとも関連付けた調理情報を記憶し、
特定の調理を再現する再現調理が設定されると、
調理容器情報取得手段によって取得される調理容器情報が、対応する特定の調理の調理情報における調理容器情報と略一致する場合、対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づき再現調理を開始させる制御構成を有する加熱調理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理システムにおいて、
再現調理を開始すると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定を無効とし、
再現調理を中止すると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定を可能にする制御構成を有する加熱調理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱調理システムは、さらに、
報知手段を備え、
再現調理を中止する場合、報知手段から再現調理の中止を報知させるとともに、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定が可能であることを報知させる制御構成を有する加熱調理システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の加熱調理システムにおいて、
再現調理を中止した後、加熱条件設定手段で加熱条件を任意設定する手動調理が継続されると、再現調理を中止する前の調理情報と、再現調理を中止した後の調理情報とに基づく新たな調理情報を記憶手段に記憶する制御構成を有する加熱調理システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱調理システムにおいて、
調理容器情報取得手段は、調理容器に付与された識別コードを読み取る識別コード読み取り手段または調理容器の画像を取得する画像データ取得手段の少なくともいずれか一方を有する加熱調理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱調理システムにおいて、
識別コードは、調理容器の固有の識別コードを生成する識別コード生成手段によって調理容器に付与される加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理システムに関する。特に、本発明は、使用者の好みに応じた調理の再現が可能な加熱調理システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器に搭載されている自動調理は、予め設定された画一的な加熱条件で加熱手段の加熱量が変更される。そのため、使用者の好みに応じた焼き加減などの調理の仕上がりとなるような被調理物が得られ難い。上記観点から、特定の調理について、加熱調理中に使用者が設定した加熱条件情報と、時間情報と、温度検知手段で取得される温度情報と、使用される調理容器の調理容器情報とを関連付けた調理情報を記憶し、特定の調理を再現する場合、再現メニューで特定の調理を選択すると、使用者の好みに応じた加熱条件で再現調理を実行する加熱調理器が提案されている(例えば、特許文献1)。この再現調理が可能な加熱調理器によれば、再現調理中、過去に使用者が加熱調理したときの調理情報における温度情報が再現されるように加熱手段の加熱量が変更される。また、被調理物の量等の相違によって、再現調理中、温度検知手段で取得される温度情報と記憶された調理情報における温度情報とに差が生じると、温度差を小さくするように加熱手段の加熱量が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同種の調理でも、使用する被調理物の食材が異なっていたり、調理の手順が異なっていたりすると、調理容器の温度が異なってくる。例えば、同じカレーでも、野菜カレーとビーフカレーとでは、熱の通り方が異なるため、加熱調理中の調理容器の温度が異なる。また、同じ野菜カレーでも、カボチャやジャガイモなどの熱の通り難い食材を多く含む場合と、ナスやトマトなどの熱の通りやすい食材を多く含む場合とでは、加熱調理中の調理容器の温度が異なる。さらに、同じ食材を同じ量、使用する同一のカレーであっても、調理容器への食材の投入順序によって加熱調理中の調理容器の温度が異なってくる。そのため、特許文献1のように、再現調理を実行するとき、温度検知手段で取得される調理容器の温度情報が対応する特定の調理の調理情報における温度情報と大きく異なる場合でも、温度情報が一致するように加熱量の変更が行われると、使用者の好みに応じた調理の仕上がりの被調理物が得られない可能性がある。また、使用者によって食材や調理手順が異なる場合、登録されている調理情報の詳細を知らない使用者が調理情報を利用して再現調理をしようとすると、調理が再現されない可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、使用者の好みに応じた再現調理が可能な加熱調理システムにおいて、使用者の使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
調理容器を加熱する加熱手段と、
加熱手段の加熱条件を設定する加熱条件設定手段と、
加熱条件設定手段で設定される加熱条件に基づいて加熱手段を制御する加熱制御手段と、
時間情報を取得する計時手段と、
調理容器の温度特性情報を取得する温度特性情報取得手段と、
特定の調理における、加熱条件設定手段で設定される加熱条件情報、計時手段で取得される時間情報、及び温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報を少なくとも関連付けた調理情報を記憶する記憶手段と、を備え、
特定の調理を再現する再現調理が設定されると、
対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づき再現調理を開始させ、
再現調理中、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とを対比し、
温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが、所定の特性値以上、乖離している場合、再現調理を中止する制御構成を有する加熱調理システムが提供される。
【0007】
上記加熱調理システムによれば、再現調理を実行するための調理情報には、特定の調理における、加熱条件設定手段で設定される加熱条件情報と、計時手段で取得される時間情報と、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報とが少なくとも関連付けられているから、特定の調理を再現する再現調理が設定されると、対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づき再現調理を開始させることができる。そして、再現調理中、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが対比され、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが、所定の特性値以上、乖離している場合、再現調理が中止されるから、対応する特定の調理における調理の進行状態と大きな相違が生じる前に、再現調理を中止させることができる。
【0008】
好ましくは、上記加熱調理システムは、さらに、
調理容器を特定する調理容器情報を取得する調理容器情報取得手段を備え、
記憶手段は、特定の調理における、加熱条件設定手段で設定される加熱条件情報、計時手段で取得される時間情報、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報、及び調理容器情報を少なくとも関連付けた調理情報を記憶し、
特定の調理を再現する再現調理が設定されると、
調理容器情報取得手段によって取得される調理容器情報が、対応する特定の調理の調理情報における調理容器情報と略一致する場合、対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づき再現調理を開始させる。
【0009】
上記加熱調理システムによれば、再現調理を実行するための調理情報には、特定の調理における、加熱条件設定手段で設定される加熱条件情報と、計時手段で取得される時間情報と、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、調理容器情報とが少なくとも関連付けられており、特定の調理を再現する再現調理が設定されると、再現調理において調理容器情報取得手段によって取得される調理容器情報と、対応する特定の調理の調理情報における調理容器情報とが略一致する場合にのみ再現調理が開始されるから、調理容器の相違に起因した温度特性情報の相違が生じ難い状態で再現調理を実行させることができる。
【0010】
一方、既述したように、同一の調理容器が使用される場合でも、食材や調理手順が相違すると、同じ加熱条件でも調理容器の温度は異なってくるから、対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づいて再現調理を継続させると、使用者の好みと異なる調理の仕上がりとなる可能性が高い。
【0011】
しかしながら、上記加熱調理システムによれば、再現調理中、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが対比され、温度特性情報取得手段で取得される温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが、所定の特性値以上、乖離している場合、再現調理が中止されるから、対応する特定の調理における調理の進行状態と大きな相違が生じる前に、再現調理を中止させることができる。
【0012】
好ましくは、上記加熱調理システムは、
再現調理を開始すると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定を無効とし、
再現調理を中止すると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定を可能にする制御構成を有する。
【0013】
上記加熱調理システムによれば、再現調理が開始されると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定が無効とされるから、再現調理中に不用意に加熱条件が変更されるのを防止できる。また、上記加熱調理システムによれば、再現調理が中止されると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定が可能とされるから、使用者は手動調理で調理を継続させることができる。
【0014】
好ましくは、上記加熱調理システムは、さらに、
報知手段を備え、
再現調理を中止する場合、報知手段から再現調理の中止を報知させるとともに、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定が可能であることを報知させる制御構成を有する。
【0015】
上記加熱調理システムによれば、再現調理を中止する場合、報知手段から再現調理の中止を報知させるから、使用者に再現調理の中止を認識させることができる。また、上記加熱調理システムによれば、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定が可能であることを報知させるから、再現調理の中止後に、手動調理で調理が継続可能であることを使用者に認識させることができる。
【0016】
好ましくは、上記加熱調理システムは、
再現調理を中止した後、加熱条件設定手段で加熱条件を任意設定する手動調理が継続されると、再現調理を中止する前の調理情報と、再現調理を中止した後の調理情報とに基づく新たな調理情報を記憶手段に記憶する制御構成を有する。
【0017】
再現調理を中止すると、加熱条件設定手段での加熱条件の任意設定が可能な加熱調理システムでは、再現調理が中止された後でも、使用者が手動調理を継続することができる。そして、上記加熱調理システムによれば、再現調理が中止された後、手動調理が継続されると、再現調理を中止する前の調理情報と、再現調理を中止した後の調理情報とに基づく新たな調理情報が記憶手段に記憶されるから、食材や調理手順等の相違がある類似の調理について、より使用者の好みに応じた調理の仕上がりが得られる調理情報を得ることができる。
【0018】
好ましくは、上記加熱調理システムにおいて、
調理容器情報取得手段は、調理容器に付与された識別コードを読み取る識別コード読み取り手段または調理容器の画像を取得する画像データ取得手段の少なくともいずれか一方を有する。
【0019】
上記加熱調理システムによれば、簡易な手段により調理容器を特定することができる。また、識別コードを使用すれば、記憶容量の小さな記憶手段を利用することができる。
【0020】
好ましくは、上記加熱調理システムにおいて、
識別コードは、調理容器の固有の識別コードを生成する識別コード生成手段によって調理容器に付与される。
【0021】
上記加熱調理システムによれば、任意の調理容器を用いる場合でも、調理容器を特定することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、使用者の好みに応じた再現調理が可能な加熱調理システムにおいて、再現調理における調理の進行度合いが対応する特定の調理における調理の進行度合いと大きく異なる前、すなわち、再現調理中の温度特性情報と、対応する特定の調理の調理情報における温度特性情報とが所定の特性値以上、乖離する前に、再現調理を中止させることができる。これにより、使用者の好みに応じた調理の仕上がりの被調理物が得られるから、使用者の使い勝手に優れる加熱調理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの一部を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの調理情報の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの制御動作の一例を示すフローチャートの一部である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの再現メニューの一例を示す説明図、
図7(b)は、本発明の実施の形態に係る加熱調理システムの追加された再現メニューの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施の形態に係る加熱調理システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、システムキッチンに収容されるビルトインコンロタイプのガスコンロに適用した本実施の形態の加熱調理システムの一例を示す概略斜視図である。
図1に示すように、コンロ本体3の天板30上には五徳35,36,37と環状のコンロバーナ31,32,33が位置しているとともに、コンロ本体3の正面中央にはグリル庫20の開閉扉21が配設されている。なお、本明細書では、グリル庫20の開閉扉21が設けられている面を前面とし、コンロ本体3の奥行き方向を前後方向、コンロ本体3の幅方向を左右方向、コンロ本体3の高さ方向を上下方向という。
【0025】
コンロバーナ31,32,33の中央部にはそれぞれ、五徳35,36,37上に載置された調理容器50の鍋底に当接して調理容器50の鍋底温度(温度特性情報)を検知する温度センサ(温度特性情報取得手段)31a,32a,33aが設けられている。温度センサ31a,32a,33aは、コンロ本体3内で昇降自在に支持されており、五徳35,36,37上に調理容器50が載置されていない鍋無し状態では五徳35,36,37よりも高い位置に突出し、五徳35,36,37上に調理容器50が載置された鍋有り状態になると、調理容器50の荷重を受けて押し下げられるように構成されている。また、各コンロバーナ31,32,33の炎孔近傍位置には、後述する点火電極、及び熱電対が配設されている。
【0026】
グリル庫20の開閉扉21の右側に位置するコンロ操作部23には、電源スイッチ29と、コンロバーナ31,32,33の点・消火と火力調整機能を兼備した操作摘み24,25,26とが配設されている。操作摘み24,25,26はそれぞれ、押し込み操作の繰り返しによってコンロ操作部23から突出した使用状態と、コンロ操作部23と面一になった不使用状態との2状態に変化するようになっている。また、コンロ操作部23には、電源スイッチ29に隣接して、スピーカ27が内蔵されている。
【0027】
コンロ操作部23の下方には、コンロバーナ31,32,33で各種の調理を行うための操作表示ユニット39が格納されている。図示しないが、操作表示ユニット39には、ガスコンロの運転状態や調理モード、調理条件等を表示する液晶表示部と、各コンロバーナ31,32,33で自動で調理するための自動調理用のオートメニュースイッチ、温度設定スイッチ、タイマスイッチ、使用者が特定の調理について再現調理を実行するための再現メニュースイッチ、調理容器情報や使用者が手動で調理した手動調理の調理情報を記憶させるためのメモリスイッチなどの各種スイッチとが設けられている。なお、本実施の形態では、操作表示ユニット39の液晶表示部やスピーカ27が所定の報知を行う報知手段に対応する。
【0028】
天板30の前方の左右中央部には、使用する調理容器50に付与されているICタグ53の調理容器情報を読み取るICタグリーダ(調理容器情報取得手段)40が埋設されている。なお、本実施の形態では、調理容器情報を有するICタグ53が付与されたメーカ推薦の調理容器50が用いられているが、調理容器50を特定できれば、調理容器情報取得手段は特定されない。例えば、調理容器情報取得手段として非接触画像センシング手段を使用し、撮影した画像データを調理容器情報として使用してもよい。なお、画像データを調理容器情報として使用する場合、同一の調理容器50の判定にあたっては、取得された画像データと記憶されている画像データとが完全に一致する場合だけでなく、略一致する場合を含む。また、任意の調理容器50を用いる場合、調理容器情報は携帯端末等で作製可能なQRコード(登録商標)などの識別コードであってもよい。
【0029】
図2は、本実施の形態のガスコンロのブロック図の一部である。なお、コンロバーナ31,33も同様の構成を有するため、これらについては省略し、以下では主としてコンロバーナ32について説明する。
図2に示すように、コンロバーナ32には、燃料ガスを供給するガス供給管100が接続され、ガス供給管100には、元電磁弁4及び流量変更弁5が介設されている。なお、流量変更弁5は従来公知の電動弁であり、ステッピングモータ14を介して流量変更弁5の開度を変更することにより、コンロバーナ32の火力のレベルが「1」(最小)から「9」(最大)までの9段階に切り替えられる。従って、本実施の形態では、操作摘み25がコンロバーナ32の加熱条件を設定する加熱条件設定手段に対応する。
【0030】
制御装置12には、元電磁弁4、ステッピングモータ14や、点火電極32b、熱電対32c、既述した操作摘み25、スピーカ27、操作表示ユニット39、温度センサ32a、ICタグリーダ40などが電気配線を介して接続されている。
【0031】
制御装置12は、機能的構成手段として、元電磁弁4や流量変更弁5の開度を調整してコンロバーナ32の火力を制御する加熱制御部120、調理中の経過時間を計時する計時部121、スピーカ27や操作表示ユニット39から所定の情報を報知させる報知制御部122、ICタグリーダ40で読み取られた調理容器情報と一致する調理容器情報を有する調理情報を抽出する抽出部123、対応する特定の調理の調理情報に基づき再現調理を実行する再現調理実行部124、再現調理中、温度センサ32aで検知される調理容器50の鍋底温度と、選択された再現調理に対応する特定の調理の調理情報における調理容器50の鍋底温度とを所定の単位時間ごとに対比して、これらの温度差が所定の特性値以上、乖離しているかどうかを判定する調理温度判定部125、調理温度判定部125で、所定の特性値以上の温度差が確認されると、再現調理を中止させる再現調理中止部126、操作摘み25で火力が任意設定される場合、加熱条件、鍋底温度、経過時間を取得して記憶部130に記憶する調理状態取得部127などを備える。
【0032】
また、制御装置12は、マイコン上のROMやRAMなどにより構成された記憶部130を備える。記憶部130には、所定の制御プログラムや各種設定値、報知内容の異なる複数の音声情報や画像情報、調理容器50を特定する調理容器情報、自動調理を実行するための加熱条件情報や温度特性情報等の調理情報、使用者が過去に行った特定の調理の再現調理を実行するための加熱条件情報や温度特性情報等の調理情報が記憶されている。再現調理を実行するための特定の調理の調理情報の詳細は後述するが、各調理情報には、使用者が特定の調理について手動調理を実行したときの、ICタグリーダ40から出力される調理容器情報と、使用者が操作摘み25を操作することによって変更される加熱条件である火力レベルの加熱条件情報と、温度センサ32aから出力される調理容器50の鍋底温度の温度特性情報と、計時部121によって計時される経過時間の時間情報とが少なくとも関連付けられて記憶されている。なお、本実施の形態では、温度特性情報として、温度センサ32aで検知される調理容器50の鍋底温度のみが使用されているが、鍋底温度の代わりに、あるいは鍋底温度とともに、温度勾配などの他の温度特性情報を使用してもよい。
【0033】
図1に戻って、調理容器50は容器本体部51と把手部52とを備え、把手部52にはICタグ53が埋設されている。ICタグ53には、調理容器情報として、形状(例えば、鍋型)、材質(例えば、アルミ)、サイズ(例えば、30cm径)、メーカ、品番などの各項目で分類された調理容器固有の識別番号が付与されている。
【0034】
次に、本実施の形態のガスコンロにおける、特定の調理の調理情報を記憶部130に登録する制御動作の一例について、
図3~
図4を参照して説明する。なお、ここでは、特定の調理としてタイ風カレーを例に挙げて説明するが、他の調理でも同様である。
【0035】
図3に示すように、ガスコンロの電源が供給されている状態で、使用者が、ICタグ53が付与された調理容器50をICタグリーダ40に近づけると、ICタグリーダ40は、ICタグ53から調理容器50の調理容器情報を読み取り、制御装置12に出力する(ステップS121)。
【0036】
このとき、記憶部130に記憶されている調理容器情報の中にICタグリーダ40で読み取られた調理容器情報と一致しているものが登録されているかどうかが判定される(ステップS122)。そして、記憶部130に一致する調理容器情報がある場合(ステップS122で、Yes)、その調理容器50の形状等が操作表示ユニット39に表示される(ステップS124及びS103)。一方、記憶部130に一致する調理容器情報が登録されていない場合(ステップS122で、No)、操作表示ユニット39から新しい調理容器50として記憶部130に登録させるかどうかが報知される(ステップS101)。そして、例えば、使用者が操作表示ユニット39のメモリスイッチを押し操作すると、使用される調理容器50の調理容器情報が記憶部130に新たに登録され(ステップS102及びS123)、上記と同様に、調理容器50の形状等が操作表示ユニット39に表示される(ステップS124及びS103)。
【0037】
次いで、例えば、使用者が操作摘み25をオン操作してコンロバーナ32を点火させると(ステップS104)、調理状態の取得が開始され、計時部121で計時される経過時間が時間情報として、操作摘み25で設定される加熱条件が加熱条件情報として記憶部130に記憶される。また、温度センサ32aで検知される調理容器50の鍋底温度が温度特性情報として単位時間ごとに記憶部130に記憶される(ステップS125)。
【0038】
次いで、例えば、使用者が操作摘み25をオフ操作してコンロバーナ32が消火されるまで、操作摘み25で設定される加熱条件情報等が同様に記憶部130に記憶される(ステップS105,S106及びS126,S127)。
【0039】
コンロバーナ32が消火されると、操作表示ユニット39に、スピーカ27や操作表示ユニット39から今回の手動調理の調理情報を登録するかどうかが報知される(ステップS128及びS107)。そして、例えば、使用者が操作表示ユニット39で調理名等を入力し、メモリスイッチを押し操作すると、
図4に示す今回の手動調理の調理情報の一部が表示され、今回の手動調理における調理容器情報と、計時された時間情報と、操作摘み25で設定された加熱条件の加熱条件情報と、温度センサ32aで検知された調理容器50の鍋底温度の温度特性情報とが関連付けられた1つの調理情報(例えば、レシピNo.1:タイ風カレー)が記憶部130に記憶される(ステップS108及びS129)。このとき、調理情報に、調理日や分量、使用した食材や投入順、コメントなどの他の情報をさらに含めてもよい。
【0040】
次に、本実施の形態のガスコンロにおいて、登録された特定の調理の調理情報を利用して再現調理を実行する制御動作の一例を
図5~
図7を参照して説明する。
図5に示すように、再現調理を実行する場合、例えば、使用者が操作表示ユニット39で再現メニュースイッチをオン操作すると、スピーカ27及び操作表示ユニット39からICタグリーダ40での調理容器50の読み取りが指示される(ステップS201,202及びS221)。
【0041】
使用者が調理容器50をICタグリーダ40にかざして、調理容器情報である識別番号が読み取られ、制御装置12に出力されると(ステップS222)、ICタグリーダ40で読み取られた調理容器情報と一致する調理容器情報を有する調理情報が記憶部130に記憶されている調理情報の中から抽出され、
図7(a)に示す調理名等の再現メニューが操作表示ユニット39に表示される(ステップS223及びS203)。なお、図示しないが、ICタグリーダ40で読み取られた調理容器情報に一致する調理容器情報が記憶部130に記憶されていない場合、再現調理を実行することなく、上記と同様に、新しい調理容器50として調理容器情報を記憶部130に登録させるかどうかが報知される。従って、再現調理は調理容器50が一致する場合にのみ実行されるから、調理容器50の相違に起因した温度特性の相違が生じ難い状態で再現調理を開始させることができる。これにより、調理の再現性を向上させることができる。
【0042】
使用者が操作表示ユニット39を操作して、再現メニュー中の特定の調理(例えば、レシピNo.1:タイ風カレー)を選択すると、スピーカ27及び操作表示ユニット39から調理容器50のコンロバーナ32上への載置が報知される(ステップS204)。そして、温度センサ32aが下方に押し下げられて、調理容器50の載置が検知され、使用者が操作摘み25をオン操作すると、コンロバーナ32が点火されて、再現調理が開始される(ステップS205及びS224)。再現調理が開始されると、再現調理の実行中、操作摘み25による火力設定が無効とされる(ステップS225)。これにより、再現調理中に不用意にコンロバーナ32の火力が変更されるのを防止することができる。
【0043】
再現調理が開始されると、選択された再現調理に対応する特定の調理の調理情報における加熱条件情報に基づき、コンロバーナ32の火力が変更される。そして、特定の調理の調理情報における時間情報に基づき所定の調理時間が終了するまで、温度センサ32aで検知される単位時間ごとの調理容器50の鍋底温度(温度特性情報)と、記憶部130に記憶されている選択された再現調理に対応する特定の調理の調理情報における調理容器50の鍋底温度(温度特性情報)とが対比され、これらの温度差が所定の特性値(例えば、20℃)以上、相違するかどうかが判定される(ステップS226,227)。なお、例えば、夏季と冬季とでは水温に差があるため、点火初期は上記温度差が大きくなる場合がある。そのため、再現調理開始から一定時間経過後に温度特性情報の対比を開始させてもよい。
【0044】
再現調理中、上記温度差が所定の特性値以上、相違することなく、所定の調理時間が経過すると(ステップS226で、No、ステップS227で、Yes)、スピーカ27及び操作表示ユニット39から再現調理の終了が報知される(ステップS228及びS206)。
【0045】
一方、再現調理中、上記温度差が所定の特性値以上、相違した場合(ステップS226で、Yes)、コンロバーナ32が消火されて、特定の調理の調理情報に基づく再現調理が中止されるとともに、操作摘み25による火力設定の無効が解除される(ステップS229,S230)。また、スピーカ27及び操作表示ユニット39から再現調理の中止と、操作摘み25で火力を任意に変更して手動調理による調理が継続可能であることが報知される(ステップS231及びS207)。
【0046】
使用者が、操作摘み25をオン操作して、手動調理を継続させると(ステップS208)、既述した調理情報の登録と同様に、加熱条件情報等が記憶部130に記憶される(ステップS232~S234及びS209~S210)。そして、使用者が操作摘み25をオフ操作してコンロバーナ32を消火させて手動調理を終了させると、調理情報の登録と同様に、今回の調理を新たな特定の調理の調理情報として記憶させるかどうかが報知される。使用者が操作表示ユニット39で調理名等を入力し、メモリスイッチを押し操作すると、
図4と同様の調理情報が報知されるとともに、再現調理が中止されるまでの調理情報と、再現調理が中止された後の手動調理の調理情報とを組み合わせた調理情報が記憶部130に記憶され、
図7(b)に示す新たな調理情報(例えば、レシピNo.6:タイ風カレー2)が追加された再現メニューが作成される(ステップS235,S236及びS211,S212)。
【0047】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のガスコンロによれば、再現調理における調理の進行度合いが対応する特定の調理における調理の進行度合いと大きく異なる前に、再現調理を中止させることができる。従って、再現調理を中止させた後、使用者が手動調理で調理を継続させることができる。また、再現調理が中止された後の加熱条件等を利用して新たな調理情報を得ることができる。これにより、使用者の好みに応じた調理の仕上がりの被調理物が得られるから、使用者の使い勝手に優れる加熱調理システムを提供することができる。
【0048】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、加熱調理器としてガスコンロ例に挙げて説明したが、本発明は、誘導加熱調理器などの他の加熱調理器を用いる加熱調理システムにも適用することができる。
(2)上記実施の形態では、調理容器情報取得手段で取得した調理容器情報と加熱条件情報等とが関連付けられた調理情報が記憶手段に登録されているが、メーカ推薦の調理容器が用いられる場合、予め記憶手段に登録された調理容器情報と加熱条件情報等とを関連付けた調理情報を記憶手段に登録させてもよい。
(3)上記実施の形態では、加熱調理器の記憶手段に全ての調理情報が記憶されているが、通信手段を備える加熱調理器の場合、調理情報の一部または全部を外部記憶手段に記憶させてもよい。また、再現メニューを外部端末に表示させてもよい。さらに、加熱調理器に通信手段を設け、通信手段から通信ネットワークを介して、例えば、所定のコミュニティサイトへ調理情報を投稿させてもよい。これにより、同一の調理容器や加熱調理器を有する他の使用者も同一の調理を容易に再現することができるだけでなく、調理レシピを蓄積することができる。
(4)上記実施の形態では、再現調理を開始させる場合、調理容器情報取得手段で調理容器情報を取得し、調理容器情報取得手段で取得された調理容器情報と一致する調理容器情報を有する調理情報を記憶手段から抽出して、抽出された調理情報の中から目的とする再現調理に対応する特定の調理が選択される。しかしながら、
図8に示すように、使用者が操作表示ユニット等を操作して目的とする再現調理に対応する特定の調理を選択した後、調理容器情報取得手段で調理容器情報を取得し、選択された特定の調理の調理情報における調理容器情報と、取得された調理情報とが一致する場合に、再現調理を開始させてもよい(ステップS301~S304及びS321~S324)。なお、説明は省略するが、再現調理が開始された後の制御動作(ステップS305以降及びS325以降)は、上記実施の形態のそれと同様である。
(5)上記実施の形態では、調理容器情報取得手段であるICタグリーダは加熱調理器に設けられているが、画像データを調理容器情報として使用する場合、スマートホンなどのカメラ付き携帯端末を調理容器情報取得手段として用いてもよい。
(6)上記実施の形態では、調理容器情報取得手段であるICタグリーダは、天板に1つのみ設けられているが、加熱手段と調理容器との相関が取りやすくなるように、加熱手段ごとに設けてもよい。なお、複数の加熱手段がある場合、再現調理は少なくとも1つの加熱手段で実行することができる。また、能力の異なる複数の加熱手段がある場合、調理中の温度特性情報が異なってくるため、加熱手段ごとに再現調理が実行されるように構成することが好ましい。
(7)上記実施の形態では、再現調理を中止する場合、コンロバーナを消火させているが、再現調理を中止する場合、コンロバーナを消火させることなく、特定の調理の調理情報に基づく火力の変更を中止し、手動調理による調理を継続させてもよい。これにより、再現調理を中止させた後でもコンロバーナの燃焼が継続されるから、次回の再現調理において、より使用者の好みに応じた調理の再現が可能となる。なお、この場合、
図6における再現調理中止後のバーナの点火(ステップST208)は不要である。
【符号の説明】
【0049】
31,32,33 コンロバーナ(加熱手段)
24,25,26 操作摘み(加熱条件設定手段)
12 制御装置
27 スピーカ
31a,32a,33a 温度センサ(温度特性情報取得手段)
39 操作表示ユニット
40 ICタグリーダ(調理容器情報取得手段)
50 調理容器
120 加熱制御部
121 計時部