(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20220726BHJP
F23N 5/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
F24C3/12 X
F23N5/10 310K
F24C3/12 Q
(21)【出願番号】P 2018210261
(22)【出願日】2018-11-08
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】桜井 淳一
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-111852(JP,U)
【文献】特開2013-92294(JP,A)
【文献】特開2012-254245(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107355828(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F23N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口する加熱庫と、
加熱庫内に収容された被調理物を加熱するバーナと、
バーナの炎孔に臨むように加熱庫内に露出し、炎孔に形成される燃焼炎を検知する熱電対と、
加熱庫内に露出している熱電対の露出部の全体をバーナ側とは反対側から覆い、熱電対の延在する方向において熱電対の露出部の先端部よりも加熱庫内方に延在する第1カバー材と、
加熱庫内に露出している熱電対の露出部の根元部をバーナ側から覆う第2カバー材と、を備え、
第1カバー材は、熱電対の露出部のバーナ側とは反対側に、熱電対の露出部と対向して設けられた第1対向側壁部を少なくとも有し、
第1対向側壁部は、熱電対の露出部の先端部と根元部との間の中間部と対向する位置に、第1貫通孔を有する加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
第1カバー材は、第1対向側壁部の前後方向の両端部からバーナ側に向かって延在し、加熱庫前方側及び加熱庫後方側で熱電対の露出部と対向して設けられた第1前方側壁部及び第1後方側壁部を有し、
第1前方側壁部及び第1後方側壁部は、第1後方側壁部とバーナとの間の隙間が第1前方側壁部とバーナとの間のそれよりも大きくなるように形成されている加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
第2カバー材は、熱電対の露出部の根元部のバーナ側に、熱電対の露出部の根元部と対向して設けられた第2対向側壁部と、第2対向側壁部の加熱庫内方側の端部から第1カバー材の第1対向側壁部に向かって延在し、熱電対が貫通する第2内方側壁部とを少なくとも有し、
第2カバー材は、第2対向側壁部及び第2内方側壁部の前後方向の端部がそれぞれ、第1カバー材の第1前方側壁部及び第1後方側壁部の内面に略当接するように、第1カバー材内に配設されている加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器において、
第2カバー材は、第2内方側壁部の第1カバー材側の端部から第1カバー材の第1対向側壁部の内面に沿って加熱庫内方に延在する第2延長側壁部を有し、
第2延長側壁部は、第1貫通孔と対向する位置に第2貫通孔を有する加熱調理器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
第1カバー材と第2カバー材とは、別部材または一体化させた部材からなる加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を加熱調理する加熱庫を備えた加熱調理器に関する。特に、本発明は、加熱庫内に設けられたバーナの燃焼炎を検知する熱電対を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被調理物を加熱するバーナと、バーナの炎孔近傍に配設され、バーナの燃焼炎に炙られて熱起電力を出力する熱電対とを有し、加熱庫内で被調理物を加熱調理する加熱調理器がある。この種の加熱調理器では、バーナの失火による燃焼不良を防止するため、熱電対の熱起電力が所定の失火判定閾値未満に低下すると、開閉弁を閉弁させることによりバーナへの燃料ガスの供給を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱庫内で被調理物を加熱調理中、例えば、加熱庫前方の開口部に設けられている開閉扉が開閉されると、外部から低温のフレッシュエアが加熱庫内に流入し、加熱庫内の気流が変化する。このような外的要因による気流の変化が生じると、熱電対の熱起電力が変動し、失火判定閾値未満に熱起電力が低下する。その結果、バーナが正常に燃焼しているにも関わらず、調理途中で強制的にバーナが消火されるという問題がある。一方、熱電対の出力を高めるために熱電対をバーナの炎孔に近づけ過ぎると、熱電対が高温に過熱される。その結果、熱電対が損傷したり、バーナが失火しているにも関わらず、熱起電力が長時間、失火判定閾値未満まで低下せず、バーナへの燃料ガスの供給の停止が遅れたりするという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、熱電対の損傷を防止しつつ、バーナの失火を正確に判定して、調理性能に優れ、高い安全性を有する加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
前方に開口する加熱庫と、
加熱庫内に収容された被調理物を加熱するバーナと、
バーナの炎孔に臨むように加熱庫内に露出し、炎孔に形成される燃焼炎を検知する熱電対と、
加熱庫内に露出している熱電対の露出部の全体をバーナ側とは反対側から覆い、熱電対の延在する方向において熱電対の露出部の先端部よりも加熱庫内方に延在する第1カバー材と、
加熱庫内に露出している熱電対の露出部の根元部をバーナ側から覆う第2カバー材と、を備え、
第1カバー材は、熱電対の露出部のバーナ側とは反対側に、熱電対の露出部と対向して設けられた第1対向側壁部を少なくとも有し、
第1対向側壁部は、熱電対の露出部の先端部と根元部との間の中間部と対向する位置に、第1貫通孔を有する加熱調理器である。
【0007】
上記加熱調理器によれば、第1カバー材は、加熱庫内に露出している熱電対の露出部の全体をバーナ側とは反対側から覆い、且つ熱電対の延在する方向において熱電対の露出部の先端部よりも加熱庫内方に延在しているため、感熱部である熱電対の露出部の先端部が加熱庫内の気流の変化の影響を受け難い。これにより、熱起電力の変動を低減することができ、バーナが正常に燃焼しているときに熱起電力が失火判定閾値未満に低下するのを防止することができる。
【0008】
一方、バーナ側とは反対側から熱電対の露出部が大きな第1カバー材で覆われている場合、バーナによって第1カバー材も高温に加熱される。そのため、熱電対の露出部の温度が上昇しやすいだけでなく、第1カバー材とバーナとの間に高温の熱気が滞留し、熱電対が過熱される虞がある。しかしながら、上記加熱調理器によれば、第2カバー材は、加熱庫内に露出している熱電対の露出部の根元部をバーナ側から覆っているから、バーナからの輻射熱を低減することができるとともに、バーナ側から熱電対の露出部の根元部に向かう熱気を遮蔽することができる。その結果、バーナの燃焼時、熱電対の露出部の根元部の温度を低下させることができるから、熱伝導により熱電対の露出部の先端部の温度を低下させることができる。これにより、熱電対の損傷を防止することができる。
【0009】
また、上記加熱調理器によれば、第1カバー材は、熱電対の露出部のバーナ側とは反対側に、熱電対の露出部と対向して設けられた第1対向側壁部を少なくとも有し、第1対向側壁部は、熱電対の露出部の先端部と根元部との間の中間部と対向する位置に第1貫通孔を有しているから、バーナが失火したとき、第1カバー材によって覆われている熱電対の周囲の熱気を第1貫通孔から放出させることができ、熱電対の露出部の先端部の温度を低下させることができる。これにより、バーナが失火した場合、第1カバー材内に熱気が滞留し難いから、短時間で熱起電力を失火判定閾値未満に低下させることができる。
【0010】
そして、上記加熱調理器によれば、第1貫通孔は熱電対の露出部の先端部と根元部との間の中間部と対向する位置に設けられているから、熱気が第1貫通孔を通過するときに感熱部である熱電対の露出部の先端部への影響を低減することができる。さらに、第1貫通孔は上記中間部に対向する位置に設けられており、第1貫通孔よりも加熱庫内方側に位置する熱電対の露出部の先端部は第1対向側壁部と対向しているから、他のバーナの燃焼状態が変化しても、熱電対の露出部の先端部は加熱庫内の気流の変化の影響を受け難い。これにより、熱起電力の変動を低減することができ、バーナが正常に燃焼しているときに熱起電力が失火判定閾値未満に低下するのを確実に防止することができる。
【0011】
好ましくは、上記加熱調理器において、
第1カバー材は、第1対向側壁部の前後方向の両端部からバーナ側に向かって延在し、加熱庫前方側及び加熱庫後方側で熱電対の露出部と対向して設けられた第1前方側壁部及び第1後方側壁部を有し、
第1前方側壁部及び第1後方側壁部は、第1後方側壁部とバーナとの間の隙間が第1前方側壁部とバーナとの間のそれよりも大きくなるように形成される。
【0012】
上記加熱調理器によれば、第1カバー材は、熱電対の露出部のバーナ側とは反対側に熱電対の露出部と対向して設けられた第1対向側壁部と、第1対向側壁部の前後方向の両端部からバーナ側に向かって延在し、加熱庫前方側及び加熱庫後方側で熱電対の露出部と対向して設けられた第1前方側壁部及び第1後方側壁部とを有しているから、外的要因により加熱庫内の気流に変化が生じても、熱起電力の変動を確実に低減することができる。
【0013】
一方、第1カバー材は、第1対向側壁部、第1前方側壁部、及び第1後方側壁部を有しているため、第1カバー材が高温に加熱され、第1カバー材によって覆われた熱電対の露出部の周囲に熱気が滞留しやすい。そのため、バーナが失火したとき、熱起電力が長時間、失火判定閾値未満に低下せず、バーナへの燃料ガスの供給の停止が遅れる虞がある。
【0014】
しかしながら、上記加熱調理器によれば、第1前方側壁部及び第1後方側壁部は、第1後方側壁部とバーナとの間の隙間が第1前方側壁部とバーナとの間のそれよりも大きくなるように形成されているから、バーナから第1カバー材への伝熱が抑えることができるとともに、加熱庫後方側に熱気を放出させることができ、熱電対の温度を低下させることができる。これにより、バーナが失火した場合、第1カバー材内に熱気が滞留し難いから、短時間で熱起電力を失火判定閾値未満に低下させることができる。
【0015】
好ましくは、上記加熱調理器において、
第2カバー材は、熱電対の露出部の根元部のバーナ側に、熱電対の露出部の根元部と対向して設けられた第2対向側壁部と、第2対向側壁部の加熱庫内方側の端部から第1カバー材の第1対向側壁部に向かって延在し、熱電対が貫通する第2内方側壁部とを少なくとも有し、
第2カバー材は、第2対向側壁部及び第2内方側壁部の前後方向の端部がそれぞれ、第1カバー材の第1前方側壁部及び第1後方側壁部の内面に略当接するように、第1カバー材内に配設される。
【0016】
上記加熱調理器によれば、第2カバー材は、熱電対の露出部の根元部のバーナ側に、熱電対の露出部の根元部と対向して設けられた第2対向側壁部を有するから、バーナからの輻射熱を第2対向側壁部により遮蔽することができる。また、第2カバー材は、第2対向側壁部の加熱庫内方側の端部から第1カバー材の第1対向側壁部に向かって延在し、熱電対が貫通する第2内方側壁部を有するから、加熱庫内方側から熱電対の露出部の根元部に向かう熱気を遮蔽することができる。さらに、第2カバー材は、第2対向側壁部及び第2内方側壁部の前後方向の端部がそれぞれ、第1カバー材の第1前方側壁部及び第1後方側壁部の内面に略当接するように、第1カバー材内に配設されているから、第1カバー材と第2カバー材との間の隙間を通って、熱電対の露出部の根元部に向かう熱気を遮蔽することができる。その結果、バーナの燃焼時、熱電対の露出部の根元部の温度を低下させることができ、熱伝導により熱電対の先端部の温度を低下させることができる。これにより、熱電対の損傷を確実に防止することができる。
【0017】
好ましくは、上記加熱調理器において、
第2カバー材は、第2内方側壁部の第1カバー材側の端部から第1カバー材の第1対向側壁部の内面に沿って加熱庫内方に延在する第2延長側壁部を有し、
第2延長側壁部は、第1貫通孔と対向する位置に第2貫通孔を有する。
【0018】
上記加熱調理器によれば、第2カバー材は、第2内方側壁部の第1カバー材側の端部から第1カバー材の第1対向側壁部の内面に沿って加熱庫内方に延在する第2延長側壁部を有しており、第2延長側壁部は、第1貫通孔と対向する位置に第2貫通孔を有しているから、第2貫通孔及び第1貫通孔を介して、第1カバー材に覆われた熱電対の周囲の熱気を加熱庫内に放出させることができる。
【0019】
好ましくは、上記加熱調理器において、
第1カバー材と第2カバー材とは、別部材または一体化させた部材からなる。
【0020】
第1カバー材と第2カバー材とを別部材から形成することにより、バーナの燃焼時、第1カバー材から第2カバー材への熱伝導を低減することができる。また、第1カバー材と第2カバー材とを一体化させた部材から形成することにより、製造の容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、バーナの燃焼中、熱電対の損傷を防止しつつ、外的要因によって加熱庫内の気流の変化が生じたときの熱起電力の変動を低減することができるから、正常にバーナが燃焼しているときの不要な加熱調理の中断を防止することができる。また、本発明によれば、バーナが失火したとき、短時間で熱起電力を失火判定閾値未満に低下させることができる。従って、本発明によれば、バーナが失火していないときの誤判定を防止することができるとともに、バーナが失火したときは短時間でバーナへの燃料ガスの供給を停止させることができる。これにより、調理性能に優れ、高い安全性を有する加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略部分切欠正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る加熱庫を右側方から見た要部概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る加熱庫を前方下方から見た要部概略斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器に取り付けられている熱電対、第1カバー材及び第2カバー材を示す要部概略斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器及び比較対象の加熱調理器における燃焼状態での熱電対の熱起電力の変動を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器及び比較対象の加熱調理器における熱電対の各部位の温度を示す測定データである。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器及び比較対象の加熱調理器における消火状態での熱電対の熱起電力の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の一例を示す概略部分切欠正面図である。本実施の形態の加熱調理器100は、上下バーナ30,40により被調理物を上下から加熱する両面焼き式の加熱庫2を備えた業務用の焼物調理器である。
【0024】
加熱調理器100は、加熱庫2内の熱気を外部に排出する排気口110が設けられた上枠壁101と、左右枠壁102,103と、後枠壁(図示せず)と、下枠壁104と、上下前枠体105,106と、左右前枠体107,108とを有する略矩形箱状の調理器本体120と、調理器本体120の正面略中央に設けられた開閉扉である遮熱扉130とを備える。調理器本体120内に収容されている加熱庫2は、上壁21と、左右壁22,23と、後壁(図示せず)と、下壁24とを有し、前方に被調理物を出し入れする開口部20が開口する略矩形箱状を有する。右前枠体108に設けられた遮熱扉130の右側方の操作部には、下火バーナ用摘み151と、上火バーナ用摘み152,153とが配設されている。なお、本明細書では、加熱調理器100を遮熱扉130が設けられている正面側から見たときの奥行方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0025】
加熱庫2内には、被調理物を載置させる焼網9が配設されている。焼網9の下方には、加熱庫2の左右方向の略全幅に亘って、被調理物を下方から加熱する前後に一対の下火バーナ40が配設されている。各下火バーナ40は、左右に延在するバーナパイプ41と、バーナパイプ41と焼網9との間にバーナパイプ41によって加熱される赤熱板42とを備える。従って、下火バーナ40を点火すると、バーナパイプ41に燃焼炎が形成されて赤熱板42が加熱され、輻射熱や熱気が加熱庫2の上方に向かって放射される。図示しないが、加熱庫2の右壁23と加熱調理器100の右枠壁103との間であって、右前枠体108の後方の内部空間には、ガス配管や開閉電磁弁などが配設された器具配設部が設けられており、その下部域には、パイロット炎を下火バーナ40に火移りさせて、点火させるための下パイロットバーナと、下バイロットバーナを点火させるための点火電極とが配設されている。また、各下火バーナ40に形成される燃焼炎を検知する熱電対は、器具配設部から加熱庫2の右壁23を貫通して、加熱庫内方に突出するように設けられている。
【0026】
加熱庫2内の焼網9の上方には、加熱庫2の上壁21に設けられたバーナ用開口(図示せず)に臨むように、加熱庫2の左右方向の略全幅に亘って、被調理物を上方から加熱する前後に一対の上火バーナ30が配設されている。上火バーナ30は、下面に多数の炎孔が形成された表面燃焼式のセラミックバーナであり、バーナ本体31と、バーナ本体31の開口部に設けられた面状の加熱プレート32とを備える。従って、上火バーナ30を点火すると、下面の略全体に燃焼炎が形成され、輻射熱や熱気が加熱庫2の下方に向かって放射される。
【0027】
図2は、加熱庫2の右側方から見た上火バーナ30の右壁23近傍を示す要部概略斜視図であり、
図3は、加熱庫2の前方下方から見た上火バーナ30の右壁23近傍を示す要部概略斜視図である。
図2に示すように、上記した器具配設部の上方域には、パイロット炎を上火バーナ30に火移りさせて、上火バーナ30を点火させるための上パイロットバーナ90と、上パイロットバーナ90を点火させるための点火電極91とが配設されている。図示しないが、上火バーナ30への燃料ガスの供給・停止を行う開閉電磁弁や上パイロットバーナ90への燃料ガスの供給・停止を行う上パイロット電磁弁などが器具配設部に配設されている。
【0028】
各上火バーナ30の右端部の下方の加熱庫2の右壁23には、熱電対8を挿通させるための熱電対用挿通口26と、上パイロットバーナ90の炎孔が臨むパイロット炎用貫通口27と、後述する第1カバー材5を係止させるための係止用貫通口28とが前方から順に開設されている。上パイロットバーナ90を点火させると、パイロット炎用貫通口27を介して加熱庫2内にパイロット炎が噴出されて、上火バーナ30に火移りし、上火バーナ30が点火される。
【0029】
図2~
図4に示すように、上火バーナ30に形成される燃焼炎を検知する熱電対8は、熱電対8の先端部側の略半分が器具配設部から熱電対用挿通口26を貫通して加熱庫内方に所定の長さ(例えば、約30mm)、略水平に露出している。加熱庫2内に露出している熱電対8の露出部の先端部81は、加熱庫2の右壁23近傍の上火バーナ30の炎孔35に臨んでいる。熱電対8は、耐熱金属製の鞘管に封入されたシース型熱電対からなり、略円錐状の先端部81が感熱部を構成する。熱電対8は、熱電対8の後端部を挿通させた熱電対取り付け部95を器具配設部における加熱庫2の右壁23の上方部に設けられた台座部29にネジPでネジ止めすることによって固定されている。熱電対8の後端部には配線88が接続されており、熱電対8が上火バーナ30の燃焼炎により加熱されることで発生する熱起電力は、配線88を介して図示しない制御装置に出力される。
【0030】
加熱庫2の右壁23の内面には、加熱庫2内に露出する熱電対8の露出部全体を下方から覆う耐熱金属製の第1カバー材5が取り付けられている。第1カバー材5は、第1カバー材5が加熱庫2の右壁23の内面に取り付けられたとき、加熱庫2の右壁23から加熱庫内方に向かって突出する熱電対8の露出部の下方に対向して延在する第1対向側壁部51と、第1対向側壁部51の前後方向の両端部から上方の上火バーナ側に向かって立設する第1前方側壁部52及び第1後方側壁部53と、第1前方側壁部52の加熱庫2の右壁側の基端部から加熱庫2の右壁23の内面に沿うように前方に延在する第1前方取り付け部54と、第1後方側壁部53の加熱庫2の右壁側の基端部近傍の上縁から隣接するパイロット炎用貫通口27を跨いで後方に延在し、さらにその後端部から加熱庫2の右壁23の内面に沿うように下方に屈曲させた第1後方取り付け部55とを有する。第1後方側壁部53及び第1後方取り付け部55にはそれぞれ、第1カバー材5が加熱庫2の右壁23の内面に取り付けられたとき、既述したパイロット炎用貫通口27及び係止用貫通口28から加熱庫外方の器具配設部内に向かって突出し、これらに係止される係止部53a,55aが設けられている。
【0031】
第1カバー材5は、加熱庫2の右壁23の内面に沿って配設される第1前方取り付け部54及び第1後方取り付け部55を加熱庫2の右壁23に器具配設部側からネジPでネジ止めすることにより固定されている。従って、加熱庫2内に露出している熱電対8の露出部を下方から覆うように第1カバー材5が加熱庫2の右壁23の内面に取り付けられると、熱電対8の露出部は、露出部の下方に対向する第1対向側壁部51、熱電対8の露出部の前方に対向する第1前方側壁部52、及び熱電対8の露出部の後方に対向する第1後方側壁部53によって形成される上方の上火バーナ側及び左側方の加熱庫内方側に開放する略樋形状の収容部内に、これらの側壁部51,52,53と非接触で収容される。
【0032】
第1対向側壁部51は、先端部81の突出端よりも所定長さ(例えば、約10mm)、加熱庫内方に延在している。また、第1対向側壁部51は、熱電対8の露出部の先端部81と、後述する第2カバー材7の第2内方側壁部72との間の熱電対8の露出部の中間部82と対向する位置に、第1対向側壁部51を貫通する第1貫通孔55を有する。第1貫通孔55は、第1対向側壁部51の前後方向の幅よりも若干小さい幅で、所定の長さ(例えば、約7mm)で設けられている。なお、第1貫通孔55は、感熱部である熱電対8の露出部の先端部と、第2カバー材5によって覆われている熱電対8の露出部の根元部83との間の中間部82の一部のみに対向して設けられてもよい。
【0033】
第1前方側壁部52及び第1後方側壁部53は、第1カバー材5が加熱庫2の右壁23の内面に取り付けられると、第1前方側壁部52の上縁が上火バーナ30の下面に略接触し、第2内方側壁部72よりも加熱庫内方側に位置する第1後方側壁部53の上縁が第1前方側壁部52の上縁よりも下方(例えば、約2mm)に位置するように設けられている。このため、第1後方側壁部53と上火バーナ30の下面との間には、第1前方側壁部52と上火バーナ30の下面との間よりも大きな隙間が形成される。
【0034】
第1カバー材5の熱電対8の収容部内には、耐熱金属製の第2カバー材7が配設されている。第2カバー材7は、加熱庫2の右壁23の内面近傍(例えば、加熱庫2の右壁23の内面から約15mm)に位置する熱電対8の露出部の根元部83の上方に対向して熱電対8の延びる方向に延在する第2対向側壁部71と、第2対向側壁部71の加熱庫内方側の端部から下方の第1カバー材5の第1対向側壁部51の内面であって、既述した第1貫通孔55の右側方の周縁に向かって垂設された第2内方側壁部72と、第2内方側壁部72の下端から第1対向側壁部51の内面に沿って第1対向側壁部51の加熱庫内方側の端部まで延在する第2延長側壁部73とを有する。
【0035】
第2対向側壁部71及び第2内方側壁部72は、第2カバー材7が第1カバー材5内に配置されたとき、第1カバー材5と第2カバー材7との間に隙間が形成されないように、第2対向側壁部71及び第2内方側壁部72の前後方向の両端部がそれぞれ、第1前方側壁部52及び第1後方側壁部53の内面に当接する大きさに設定されている。図示しないが、第2内方側壁部72の上下及び前後方向の略中央部には、熱電対8を貫挿させる挿通孔が穿設されており、熱電対8は、第2内方側壁部72の挿通孔を通って第1カバー材5によって形成されている熱電対8の収容部を加熱庫内方に向かって延在している。従って、第2カバー材7の第2内方側壁部72の挿通孔に熱電対8を挿通させると、熱電対8の露出部の根元部83は、加熱庫2の右壁23と、第1カバー材5の第1対向側壁部51、第1前方側壁部52及び第1後方側壁部53と、第2カバー材7の第2対向側壁部71及び第2内方側壁部72とによって周囲が覆われており、熱電対8の露出部の先端部81が収容されている加熱庫内方側の熱電対8の収容部とは画成された略矩形箱状の空間内に配置される。
【0036】
第2カバー材7は、第2延長側壁部73を第1対向側壁部51にスポット溶接することにより第1カバー材5に固定されている。第2延長側壁部73には、第2カバー材7が第1カバー材5の熱電対8の収容部に配設されたとき、第1貫通孔55に対向する位置に第2貫通孔75が開設されている。第2貫通孔75は、第1貫通孔55と略同一の大きさを有する。従って、第2内方側壁部72よりも左側方の加熱庫内方側における第1カバー材5の熱電対8の収容部は、上火バーナ側及び加熱庫内方側だけでなく、第2貫通孔75及び第1貫通孔55を介して加熱庫2内と連通している。
【0037】
図示しないが、配線88を介して熱電対8と接続されている制御装置は、失火判定回路を有する。失火判定回路は、上火バーナ30が点火された後、熱電対8から出力される熱起電力が所定の失火判定閾値未満になると、対応する開閉電磁弁を強制的に閉弁させる。これにより、上火バーナ30への燃料ガスの供給が停止される。
【0038】
本実施の形態によれば、加熱庫2の構成壁の1つである右壁23から加熱庫内方に向かって突出させた熱電対8の露出部が、上方に配置された上火バーナ側とは反対側の下方から、第1対向側壁部51、第1前方側壁部52、及び第1後方側壁部53を有する第1カバー材5に覆われており、第1カバー材5は、加熱庫2内に露出している熱電対8の露出部の先端部81よりも加熱庫内方に延在している。従って、例えば、遮熱扉130を開閉させたときに外部の低温のフレッシュエアが加熱庫2内に流入し、加熱庫2内の気流に変化が生じても、第1カバー材5によって覆われた熱電対8の露出部の先端部81は気流の変化の影響を受け難く、熱起電力の変動を確実に低減することができる。
【0039】
また、第1貫通孔55は熱電対8の露出部の中間部82に対向する位置に設けられており、第1貫通孔55よりも加熱庫内方側に位置する熱電対8の露出部の先端部81は第1対向側壁部51と対向しているから、熱気が第2貫通孔75及び第1貫通孔55を通過するときに感熱部である先端部81への影響を低減することができる。また、例えば、下火バーナ40が消火されて、加熱庫2内の気流に変化が生じ、加熱庫2内の低温の熱気が第1貫通孔55及び第2貫通孔75を介して熱電対8の収容部に流れても、熱電対8の露出部の先端部81は気流の変化の影響を受け難く、熱起電力の変動を確実に低減することができる。これにより、上火バーナ30が正常に燃焼しているとき、上記のような外的要因によって加熱庫2内の気流の変化が生じても、熱起電力が失火判定閾値未満に低下するのを防止することができる。
【0040】
一方、第1カバー材5は、熱電対8よりも加熱庫内方に延在する第1対向側壁部51、第1前方側壁部52、及び第1後方側壁部53を有しているため、第1カバー材5によって覆われた熱電対8の周囲に熱気が滞留し、第1カバー材5が高温に加熱される。その結果、第1対向側壁部51、第1前方側壁部52、及び第1後方側壁部53と対向する熱電対8の露出部が過熱されて、熱電対8が損傷する虞がある。
【0041】
しかしながら、上記実施の形態によれば、第2カバー材7は、熱電対8の露出部の根元部83よりも上方の上火バーナ側に、熱電対8の露出部の根元部83と対向して設けられた第2対向側壁部71を有するから、上火バーナ30からの輻射熱を第2対向側壁部71により遮蔽することができるとともに、上火バーナ側からの熱電対8の露出部の根元部83への熱気の流れを遮蔽することができる。また、第2カバー材7は、第2対向側壁部71の加熱庫内方側の端部から第1カバー材5の第1対向側壁部51に向かって延在し、熱電対8が貫通する第2内方側壁部72を有するから、加熱庫内方側から熱電対8の露出部の根元部83に向かう熱気を遮蔽することができる。さらに、第1カバー材5と第2カバー材7との間に熱気が流れる隙間が形成されないように、第2対向側壁部71及び第2内方側壁部72の前後方向の両端部はそれぞれ、第1前方側壁部52及び第1後方側壁部53の内面に略当接しているから、熱電対8の露出部の根元部83に向かう熱気を確実に遮蔽することができる。その結果、上火バーナ30の燃焼時、熱電対8の露出部の根元部83の温度を低下させることができ、熱伝導により熱電対8の露出部の先端部81の温度を低下させることができる。これにより、熱電対8の損傷を防止することができる。
【0042】
また、上記実施の形態によれば、第1対向側壁部51に開設されている第1貫通孔55は熱電対8の露出部の先端部81と根元部83との間の中間部82と対向する位置に設けられており、第2延長側壁部73に開設されている第2貫通孔75は第1貫通孔55と対向しているから、第1カバー材5によって覆われている熱電対8の周囲の熱気を第2貫通孔75及び第1貫通孔55を介して加熱庫2内に速やかに放出させることができる。さらに、第1前方側壁部52及び第1後方側壁部53は、第1後方側壁部53と上火バーナ30との間の隙間が第1前方側壁部52と上火バーナ30との間のそれよりも大きくなるように形成されているから、上火バーナ30から第1カバー材5への伝熱を抑えることができるとともに、第1カバー材5内から加熱庫後方側にも熱気を放出させることができる。これにより、上火バーナ30が失火した場合、第1カバー材5内に熱気が滞留し難いから、短時間で熱起電力を失火判定閾値未満に低下させることができる。
【0043】
また、上記実施の形態によれば、第1カバー材5及び第2カバー材7は別部材から形成されているから、第1カバー材5から第2カバー材7への熱伝導を低減することができる。その結果、上火バーナ30の燃焼時、熱電対8の露出部の根元部83の温度を低下させることができ、熱伝導により熱電対8の露出部の先端部81の温度をさらに低下させることができる。これにより、熱電対8の損傷を確実に防止することができる。
【0044】
図5は、本実施の形態の加熱調理器及び比較対象の加熱調理器における後方の上火バーナ30の燃焼状態での熱電対の熱起電力の変動を示すグラフである。
図5中、(a)は、本実施の形態の第1カバー材5及び第2カバー材7を有する加熱調理器であり、(b)は、第1貫通孔55が形成されておらず、第1対向側壁部51が熱電対8の露出部の先端部81と対向する位置までしか形成されていない第1カバー材を有し、第2カバー材7が設けられていない比較対象の加熱調理器であり、(c)は、第1貫通孔55は形成されていないが、第1対向側壁部71が熱電対8の露出部の先端部81よりも加熱庫内方側まで延在している第1カバー材を有し、第2カバー材7が設けられていない比較対象の加熱調理器であり、(d)は、第1対向側壁部51が熱電対8の露出部の先端部81よりも加熱庫内方側まで延在しているが、第1貫通孔が熱電対8の露出部の先端部81に対向する位置に開設されている第1カバー材を有し、第2カバー材7が設けられていない比較対象の加熱調理器である。なお、比較対象の加熱調理器(b)~(d)の第1カバー材にはいずれも、同一の高さの第1前方側壁部と第1後方側壁部とが設けられている。
【0045】
図5の測定では、加熱庫2内の気流に変化が生じたときの上火バーナ30の燃焼炎を検知する熱電対8の熱起電力の変動を対比するため、いずれの加熱調理器でも、点火開始から20分間までは、遮熱扉130を閉じた状態で上下バーナ30,40を大火で燃焼させ、20分間から25分間は、遮熱扉130を開放させた状態で同一の火力で上下バーナ30,40を燃焼させている。また、25分間から30分間は、遮熱扉130を閉じた状態で同一の火力で上火バーナ30を燃焼させているが、下火バーナ40を消火させ、さらに、30分間から35分間は、前方の上火バーナ30を消火させ、後方の上火バーナ30のみを大火で燃焼させている。
【0046】
図5に示すように、いずれの加熱調理器でも、遮熱扉130が閉じられ、全ての上下バーナ30,40が安定に燃焼している状態では、熱起電力に大きな変動は観察されない。しかしながら、遮熱扉130を開放して外部の低温のフレッシュエアが加熱庫2内に流入すると、加熱庫2内の気流に変化が生じる。そのため、加熱庫内方側に延在する第1カバー材の第1対向側壁部が熱電対8の先端部までしか形成されていない加熱調理器(b)では、熱起電力が大きく低下する(加熱調理器(b)の20分間から25分間の熱起電力)。これに対して、本実施の形態の加熱調理器(a)では、上火バーナ30の燃焼中、遮熱扉130を開放させても、熱起電力の低下は小さい(加熱調理器(a)の20分間から25分間の熱起電力)。一般に、失火判定閾値は熱電対8の公差を考慮して一定の範囲で設定されるが、バーナの燃焼時における失火判定は、未燃ガスの漏出を抑えるため高く設定することが好ましい。従って、本実施の形態によれば、例えば、失火判定閾値の最大値を約1.5mVに設定しても、遮熱扉130の開放時における失火の誤判定を確実に防止することができる。
【0047】
また、熱電対8の露出部の先端部81と対向する位置に貫通孔が設けられている第1カバー材を有する加熱調理器(d)では、遮熱扉130の開放による気流の変化が生じた場合の熱起電力の変動は抑えられるが、他の上下バーナ30,40の燃焼状態が変化すると、熱起電力の変動が生じる(加熱調理器(d)の25分間から35分間の熱起電力)。これは、他の上下バーナ30,40を消火させることによって、熱電対8の露出部の先端部81に対向して設けられた貫通孔を介して熱電対8の露出部の先端部81に流れる熱気の温度が変化するためと考えられる。これに対して、本実施の形態の加熱調理器(a)では、他の上下バーナ30,40を消火させても、熱電対8から出力される熱起電力の変動は小さい(加熱調理器(a)の25分間から35分間の熱起電力)。従って、本実施の形態によれば、他の上下バーナ30,40の燃焼状態の変化による熱起電力の変動も低減することができる。
【0048】
図6は、本実施の形態の加熱調理器(a)及び比較対象の加熱調理器(c)における後方の上火バーナ30の燃焼状態での熱電対8の露出部の各部位の温度データである。なお、いずれの温度も、遮熱扉130を閉じた状態で上下バーナ30,40を大火で燃焼させたときのものである。
【0049】
図5に示すように、第1対向側壁部が熱電対8の露出部の先端部81よりも加熱庫内方側まで延在しているが、第2カバー材7が設けられていない加熱調理器(c)では、遮熱扉130の開放等による熱起電力の変動は少ない。従って、加熱調理器(c)でも、上火バーナ30が正常に燃焼しているときの失火の誤判定は防止できる。しかしながら、
図6に示すように、加熱調理器(c)における熱電対8の露出部の先端部81の温度は704℃、熱電対8の露出部の根元部83の温度は553℃である。これに対して、本実施の形態の加熱調理器(a)では、熱電対8の露出部の先端部81の温度は599℃、熱電対8の露出部の根元部83の温度は405℃である。
【0050】
上火バーナ30が燃焼していると、第1カバー材5も高温に加熱される。また、第2カバー材7が形成されていない場合、熱電対8の露出部の全体が上火バーナ30の輻射熱によって直接、加熱される。それゆえ、熱電対8の露出部の下方に大きな第1カバー材5が設けられていると、熱電対8の露出部の先端部81の温度がより高温になり、熱電対8が損傷する虞がある。しかしながら、本実施の形態の加熱調理器(a)における熱電対8の露出部の先端部81の温度は、比較対象の加熱調理器(c)のそれより105℃も低くなっている。これは、本実施の形態の加熱調理器(a)における熱電対8の露出部の根元部83の温度と、比較対象の加熱調理器(c)のそれとの対比に示されるように、第2カバー材7によって、熱電対8の露出部の根元部83の温度が低下され、その熱伝導によって熱電対8の露出部の先端部81の温度を低下させることができるためである。
【0051】
図7は、本実施の形態の加熱調理器(a)及び比較対象の加熱調理器(c)における上火バーナ30を消火させたときの熱電対8の熱起電力の変動を示すグラフである。
図7に示すように、本実施の形態の加熱調理器(a)における上火バーナ30を消火させたときの熱起電力は、比較対象の加熱調理器(c)のそれよりも速やかに低下する。加熱調理器(c)のように熱電対8の露出部が貫通孔が形成されていない第1カバー材によって下方から覆われている場合、上火バーナ30が失火しても、第1カバー材内に熱気が滞留して、熱電対8の露出部の先端部の温度が低下し難い。そのため、熱起電力が失火判定閾値未満に低下するのに長時間を必要とする。これに対して、本実施の形態の加熱調理器(a)では、上火バーナ30が失火すると、第1カバー材5によって覆われている熱電対8の周囲の熱気を、第2貫通孔75及び第1貫通孔55や、上火バーナ30と第1後方側壁部53との間の隙間から加熱庫2内に放出させることができる。従って、本実施の形態によれば、失火判定閾値の最低値を低く設定したとき、比較対象の加熱調理器(c)に比べて迅速に開閉電磁弁を閉弁させて、失火から短時間で上火バーナ30への燃料ガスの供給を停止させることができる。
【0052】
以上のように、本実施の形態によれば、上火バーナ30の燃焼中、熱電対8の損傷を防止しつつ、外的要因による加熱庫2内の気流の変化に起因した熱起電力の変動を低減することができるから、正常に上火バーナ30が燃焼しているときの不要な加熱調理の中断を防止することができる。また、本実施の形態によれば、上火バーナ30が失火したとき、短時間で熱起電力を失火判定閾値未満に低下させることができる。従って、本実施の形態によれば、上火バーナ30が失火していないときの誤判定を防止することができるとともに、上火バーナ30が失火したときは短時間で上火バーナ30への燃料ガスの供給を停止させることができる。これにより、調理性能に優れ、高い安全性を有する加熱調理器を提供することができる。
【0053】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、上火バーナの炎孔に形成される燃焼炎を検知する熱電対が第1カバー材及び第2カバー材によって上下から覆われている。しかしながら、下火バーナの炎孔に形成される燃焼炎を検知する熱電対が、上下反転させた第1カバー材及び第2カバー材によって上下から覆われてもよい。また、上火バーナは、加熱庫の左右壁から加熱庫の上壁に亘って形成されていてもよい。
(2)上記実施の形態では、熱電対は加熱庫の構成壁から略水平に加熱庫内に突出している。しかしながら、バーナの形態に合わせて、加熱庫の構成壁から傾斜して加熱庫内に突出させてもよい。
(3)上記実施の形態では、第1カバー材と第2カバー材とは別部材から構成されている。しかしながら、製造の容易化のため、第1カバー材と第2カバー材とは一体化させた部材から構成されてもよい。
(4)上記実施の形態では、第2延長側壁部を有する第2カバー材が用いられている。しかしながら、第2延長側壁部のない第2カバー材が用いられてもよい。この場合、第2延長側壁部に開設されている第2貫通孔も設ける必要がない。
【符号の説明】
【0054】
2 加熱庫
30 上火バーナ
8 熱電対
5 第1カバー材
51 第1対向側壁部
52 第1前方側壁部
53 第1後方側壁部
55 第1貫通孔
7 第2カバー材
71 第2対向側壁部
72 第2内方側壁部
75 第2貫通孔
100 加熱調理器