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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】フィルターバッグ用紙
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/808 20060101AFI20220726BHJP
   D21H 27/08 20060101ALI20220726BHJP
   A47J 31/18 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B65D85/808
D21H27/08
A47J31/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018213721
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079108
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】奈良 明
(72)【発明者】
【氏名】白石 隆志
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-046683(JP,U)
【文献】特開2015-182771(JP,A)
【文献】特開2015-193405(JP,A)
【文献】特開2016-120971(JP,A)
【文献】特表2004-526635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/808
D21H 27/08
A47J 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水量が、45g/m以上60g/m以下であり、ノンヒートシールタイプ用であることを特徴とするフィルターバッグ用紙。
【請求項2】
ペン書きサイズ度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.12:2016)が5以上であることを特徴とする請求項1に記載のフィルターバッグ用紙。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルターバッグ用紙を有するノンヒートシールタイプのフィルターバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶、緑茶等の茶葉類を入れて袋状とし、袋ごと煮出し、あるいは水出しを行い、茶飲料等の液体を抽出するためのフィルターバッグを製造するためのフィルターバッグ用紙に関する。詳しくは、機械的なクリンピング等によって袋形状とするノンヒートシールタイプのフィルターバッグを製造するためのフィルターバッグ用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紅茶、緑茶等の茶葉類、麦茶や杜仲茶等の茶外茶類、鰹節、昆布等の出汁類の抽出を目的として、フィルターバッグが用いられている。フィルターバッグは、液中に浸して用いられ、可溶性成分を抽出するものである。例えば、特許文献1には、急須で淹れた茶に匹敵する色合い及び味の強さの茶を淹れることができる、ウォータージェット加工を施したフィルターバッグ用紙が提案されている。
【0003】
フィルターバッグには熱融着繊維を配合することでヒートシール加工により製袋するヒートシールタイプと、セルロース繊維を主体としヒートシール加工を行わずに製袋するノンヒートシールタイプに大別される。なお、ノンヒートシールタイプのフィルターバッグに茶葉類を入れて袋状に製袋する際は、フィルターバッグ用紙の端面同士をクリンピング加工して接合している。
【0004】
フィルターバッグは、茶類等を抽出する際にお湯に浸して用いられることがあるが、この際、フィルターバッグ内の気体がお湯に熱せられて膨張し、膨張した気体がフィルターバッグから上手く抜けられずに圧力が高まる場合がある。そして、ノンヒートシールタイプのフィルターバッグでは、クリンピングが外れて内包物が流出してしまう(以下破袋と表記する)場合がある。フィルターバッグ用紙の親水性を低くすることにより、気体がフィルターバッグを通過しやすくなり破袋を防ぐことができるが、親水性の低いフィルターバッグ用紙は、水が通過しにくく、抽出される液体の風味が薄い場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-182771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、破袋が起こりにくく、十分な風味を有する液体が抽出できるフィルターバッグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は以下のとおりである。
1.吸水量が、45g/m以上60g/m以下であることを特徴とするフィルターバッグ用紙。
2.ペン書きサイズ度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.12:2016)が5以上であることを特徴とする1.に記載のフィルターバッグ用紙。
3.1.または2.に記載のフィルターバッグ用紙を有するフィルターバッグ。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルターバッグ用紙からなるフィルターバッグは、内部から気体が抜けやすく、お湯と接した際の破袋を防ぐことができる。また、本発明のフィルターバッグ用紙からなるフィルターバッグは、内部と外部とで液体が交換されるため、十分な風味を有する液体を抽出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(吸水量)
本発明のフィルターバッグ用紙は、吸水量が、45g/m以上60g/m以下であることを特徴とする。吸水量が60g/mを超える場合、水と馴染みやすいため、フィルターバッグ用紙の微細な穴が水で塞がれて気体が通過しにくく、このフィルターバッグ用紙からなるフィルターバッグは、お湯と接触して熱せられると、内部の気体が膨張して圧力が高まり、破袋してしまう場合がある。吸水量が45g/m未満の場合は、水に濡れにくいため、水が通過しにくく、このフィルターバッグ用紙からなるフィルターバッグは、十分な風味を有する液体を抽出できない場合がある。フィルターバッグ用紙の吸水量は、48g/m以上58g/m以下であることがより好ましい。なお、本発明において、吸水量とは、下記実施例に記載の方法により算出される値である。
【0010】
(ペン書きサイズ度)
本発明のフィルターバッグ用紙のペン書きサイズ度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.12:2016)は、5以上であることが好ましい。ペン書きサイズ度が5以上であると、気体が通過しやすく、破袋が発生し難い。
本発明において、フィルターバッグ用紙の吸水量、ペン書きサイズ度は、サイズ剤や撥水剤の種類と配合量(塗工量)等により、調整することができる。
【0011】
(坪量)
本発明のフィルターバッグ用紙の坪量は、10g/m以上15g/m以下が好ましい。坪量が10g/mより小さいと紙力が低下し、製袋機で断紙が起こりやすくなる。坪量が15g/mより大きいと濾水性が低下して抽出される液体の風味が薄くなる場合がある。
【0012】
(厚さ)
本発明のフィルターバッグ用紙の厚さは、40μm以上70μm以下が好ましい。フィルターバッグ用紙の厚さが40μmより薄いとクリンピングの加工性が低下する場合がある。フィルターバッグ用紙の厚さが70μmより厚いと低密度となり紙力が低下し製袋機で断紙が起こりやすくなる。
【0013】
(引張強さ・湿潤引張強さ)
本発明のフィルターバッグ用紙は、JAPAN TAPPI No.71に準じて測定した縦方向の乾燥引張強さが、0.70kg/15mm以上であることが好ましい。また、JAPAN TAPPI No.71に準じて測定した縦方向の湿潤引張強さが、0.15kg/15mm以上であることが好ましい。縦方向の引張強さが上記した値未満であると、成型時や抽出時に断紙が発生しやすくなる。
【0014】
(紙基材)
本発明のフィルターバッグ用紙を製造するための製紙用繊維の種類は特に限定されず、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ、亜麻、ケナフ、楮、みつまたなどの靭皮繊維、バガス、竹、エスパルトなどの硬質繊維、コットンパルプなどの種子毛繊維、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプなどの葉鞘・葉繊維といった非木材パルプ、合成繊維(ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維)などの1種または2種以上を用いることができる。また、パルプとしては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
【0015】
(塗工剤)
本発明のフィルターバッグ用紙は、必要に応じて紙基材に各種塗工剤を使用することが可能である。塗工剤としては、強度、湿潤強度、また、本発明のフィルターバッグ用紙に要求される吸水量を満足するために、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、撥水剤またはサイズ剤を使用することが好ましい。
【0016】
(湿潤紙力増強剤)
本発明において、湿潤紙力増強剤は、特に限定されるものではなく、ジアルデヒドグアーガム、グリオキサール変性ポリアクリルアミド、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミンなどが使用できる。
【0017】
(乾燥紙力増強剤)
本発明において、乾燥紙力増強剤は、特に限定されるものではなく、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルグアーガム、ポリアクリルアミド、グリオキサール変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルグアーガムなどが使用できる。
【0018】
(撥水剤・サイズ剤)
本発明において、撥水剤またはサイズ剤は、特に限定されるものではなく、スチレンアクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリルニトリル共重合体、アニオン性ポリウレタン、スチレン・無水マレイン酸共重合体などが使用できる。
【0019】
塗工液中の撥水剤またはサイズ剤濃度は、塗工方法によって適宜調整することができる。また、撥水剤またはサイズ剤の塗工量は、本発明の吸水量を満足できるものであれば特に制限されないが、0.1g/m以上1.0g/m以下(乾燥重量)程度である。
【0020】
(製造方法)
本発明のフィルターバッグ用紙の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、抄紙した紙基材に、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、撥水剤またはサイズ剤等を含む塗工液を塗工する方法が挙げられる。
紙基材の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマー、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜短網抄紙機等を用いて行うことができる。また、乾燥工程は、多筒式シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風ドライヤーなど適宜選定することができる。
塗工液の塗工方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレスやニップコート等の方式によって塗工することができる。
【0021】
(製袋方法)
本発明のフィルターバッグ用紙は、茶葉等を充填した状態で製袋され、フィルターバッグとして用いられる。本発明のフィルターバッグの製袋方法は特に制限されず、クリンピング等の公知の方法で製袋することができる。
【実施例
【0022】
<実施例1>
離解処理した針葉樹パルプ50重量%、マニラ麻パルプ40重量%、レーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製、1.7dt×5mm)10重量%を抄紙用原料とし、短網抄紙機にて坪量11.8g/m目標で抄造した原紙を得た。
得られた原紙に、湿潤紙力増強剤(株式会社理研グリーン製、商品名:カイメン557H)を0.45wt%(固形分)、乾燥紙力増強剤(ハリマ化成株式会社製、商品名:ハーマイドKS2)を1.8wt%(固形分)で含む第一塗工液をサイズプレス塗工し、一度乾燥を行った。その後、撥水剤(株式会社第一塗料製造所製、商品名:ハービルC-3)を2.4wt%(固形分)で含む第二塗工液をサイズプレス塗工、乾燥し、坪量13.2g/m、厚さ51μmのフィルターバッグ用紙を得た。
【0023】
<実施例2>
第二塗工液中の撥水剤の濃度を3.6wt%(固形分)とした以外は、実施例1と同様にして、坪量13.3g/m、厚さ51μmのフィルターバッグ用紙を得た。
【0024】
<実施例3>
第二塗工液中の撥水剤の濃度を2.0wt%(固形分)とした以外は、実施例1と同様にして、坪量13.3g/m、厚さ61μmのフィルターバッグ用紙を得た。
【0025】
<比較例1>
第二塗工液中の撥水剤の濃度を8.0wt%(固形分)とした以外は、実施例1と同様にして、坪量14.7g/m、厚さ62μmのフィルターバッグ用紙を得た。
【0026】
<比較例2>
第二塗工液を塗工していない以外は、実施例1と同様にして、坪量12.7g/m、厚さ61μmのフィルターバッグ用紙を得た。
【0027】
実施例、比較例で得られたフィルターバッグ用紙について下記評価を行った。結果を表1に示す。
(坪量、厚さ)
坪量はJIS P8124に、厚さはJIS P8118に準拠して測定した。
【0028】
(引張強さ・湿潤引張強さ)
乾燥引張強さは、JAPAN TAPPI No.71に準拠して測定した。
湿潤引張強さは、試験サンプル(幅15mm、長さ25mm程度)を、界面活性剤水溶液(第一工業製薬株式会社製、商品名:ネオコールSW-C)に十分に浸漬し、流水で洗浄して撥水性やサイズ性を消失させ、ろ紙で挟み込んで表面に付着した余剰な水分を取り除いた後に、JAPAN TAPPI No.71に準拠して測定した。
【0029】
(吸水量)
吸水量は以下の手順で算出した。
1.上底の長さ10cm、下底の長さ16cm、高さ20cmの直角台形としたサンプルの乾燥重量(測定値Ag)を測定する。
2.サンプルを十分に水に浸す。
3.サンプルを、上底と下底が鉛直方向で、斜辺が下方となるように60秒吊るした後、湿潤重量(測定値B1g)を測定する。
4.2.3.を繰り返し、湿潤重量(測定値B2g)を測定する。
5.次式(1)より、吸水量を算出する。
吸水量(g/m)={(B1+B2)/2-A}/サンプル面積 式(1)
【0030】
(ペン書きサイズ度)
ペン書きサイズ度は、JAPAN TAPPI No.12:2016に準拠して測定した。
【0031】
「製袋方法」
実施例、比較例で製造したフィルターバッグ用紙を15cm×10cmの長方形に切り取り、市販のほうじ茶用ティーバッグ(株式会社伊藤園製、商品名:お~いお茶 ほうじ茶 ティーバッグ)から取り出したほうじ茶粉末2gを入れて、長辺をクリンピングにより封じ、長辺方向に2つに折り畳んだ後、短辺を折り重ねてステープラーで閉じて、フィルターバッグとした。
【0032】
(破袋試験)
上記フィルターバッグを、約-18℃の冷凍庫で30分間放置した後、300ml容ビーカーに入れ、沸騰水200mlを一気に注ぎ、破袋の有無を確認した。
【0033】
(お茶の風味)
上記フィルターバッグに90℃水を注いでから1分後の抽出液の風味を、1名のパネラーが実際に飲んで下記基準で評価した。
風味 3:濃い
2:若干薄い
1:薄い
【0034】
【表1】
【0035】
(結果)
吸水量が41%程度である比較例1のフィルターバッグ用紙から製袋したフィルターバッグは、破袋は発生しなかったものの抽出したお茶の風味が薄かった。吸水量が65%程度である比較例2のフィルターバッグ用紙から製袋したフィルターバッグは、抽出したお茶の風味は濃かったものの破袋が発生した。
それに対し、吸水量が48%程度である実施例2のフィルターバッグ用紙から製袋したフィルターバッグは、破袋は発生せず、抽出したお茶の風味は若干薄い程度であった。
さらに、吸水量が51及び54%程度である実施例1及び3のフィルターバッグ用紙から製袋したフィルターバッグは、破袋は発生せず、風味が濃い美味しいお茶が抽出できた。