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特許7111614車両における車線変更をサポートするための方法ならびに装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】車両における車線変更をサポートするための方法ならびに装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220726BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20220726BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20220726BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
B60W50/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018536406
(86)(22)【出願日】2016-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2016078657
(87)【国際公開番号】W WO2017125184
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】16465502.9
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】トメスク・ヴィクトル
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009200(JP,A)
【文献】特開2000-242896(JP,A)
【文献】特開2005-310010(JP,A)
【文献】特開2005-062912(JP,A)
【文献】特開2008-162553(JP,A)
【文献】特開2014-191632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある一本の道路の、ある一本の車線上を走行方向に移動しているある一台の車両のドライバーのために車線変更のサポートを実施するための以下のステップ:
捕捉ユニット(2)が、センサーデータに基づいて該ドライバーの該車両に接近して来ている更なる車両を捕捉するステップ、
データ処理ユニット(3)が、接近して来ている車両が捕捉された場合は直ぐに、該車両の同じ道路の他の車線への変更が、可能であり許されているか否かを確認するステップ;並びに、
同じ道路の他の車線への車線変更が、可能であり許されている場合に、該データ処理ユニット(3)、車両のマニュアル或いは自動的な車線変更をトリガーするために接近して来ている他の車両に関して車両のドライバーに情報を提供し、該ドライバーの車両が追い抜き車線から最も遠い車線にある場合に、接近して来ている他の車両に関して車両のドライバーに情報を提供しないステップ
を有している、但し、
該ドライバーの該車両の測定された走行速度と他の車両の測定された走行速度との間の相対速度も算出される
方法であって、
該ドライバーの車両と捕捉された該ドライバーの車両に後方から接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度が、予め設定されている閾値を超えている場合、双方の車両間の衝突を回避するために、該ドライバーの車両が、フリーな車線への該車両の車線変更の前、及び/或いは、その最中に自動的に加速されることを特徴とする方法。
【請求項2】
他の捕捉された車両が接近して来ている車両の側を割り出すステップも包含していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両の車両ボディの該捕捉された他の車両が接近して来ている側が、該車両の後ろ側であることが検出された場合、同じ道路上において、動いている車両の走行方向の右側にフリーな車線が存在しているか否かが確認される、但し、これが該当するケースでは、該車両のドライバーに、接近して来ている車両に関しての情報を提供し、該道路のフリーな車線に車線変更することを促すことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
動いている車両と同じ走行方向用に他の車線が存在するか否かが確認され、これが該当するケースでは、該車両の該道路の該当する車線への車線変更に対する障害物が存在するか否かも確認されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該車両のドライバーに、該ドライバーの車両と接近して来ている他の車両の速度との間の算出された相対速度に関しての情報も提供されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
同じ道路のフリーな車線への該ドライバーの車両の車線変更が、該ドライバーの車両と該接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度に依存して提案される或いは実施されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該ドライバーの車両と捕捉された該ドライバーの車両に後方から接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度が、予め設定されている閾値を超えている場合、双方の車両間の衝突を回避するために、該ドライバーの車両が、フリーな車線への該車両の車線変更の前、及び/或いは、その最中に、警告シグナルが発せられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ある一本の道路のある一本の車線に沿って走行方向に移動している車両における車線変更をサポートするための以下:
少なくとも一台の更なる接近して来る車両を捕捉する捕捉ユニット(2);並びに、
捕捉ユニット(2)によって接近して来ている車両が捕捉されると直ぐに、該車両の同じ道路の他の車線への変更が、可能であり許されているか否かを確認し、且つ、同じ道路の他の車線への車線変更が、可能であり許されている場合は、車両のマニュアル或いは自動的な車線変更をトリガーするために接近して来ている他の車両に関して車両のドライバーに情報を提供し、該ドライバーの車両が追い抜き車線から最も遠い車線にある場合に、接近して来ている他の車両に関して車両のドライバーに情報を提供しないデータ処理ユニット(3)
を有する装置であって、
但し、該データ処理ユニット(3)が、該ドライバーの該車両の測定された走行速度と他の車両の測定された走行速度との間の相対速度も算出し、且つ、
該データ処理ユニット(3)が、該ドライバーの車両と捕捉された該ドライバーの車両に後方から接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度が、予め設定されている閾値を超えている場合、双方の車両間の衝突を回避するために、フリーな車線への該車両の車線変更の前、及び/或いは、その最中に、該ドライバーの車両を加速することを特徴とする装置(1)。
【請求項9】
該捕捉ユニット(2)が、該他の車両が、車両ボディのどの側から接近して来ているのかも割り出すことを特徴とする請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
該データ処理ユニット(3)が、車両の車両ボディの該捕捉された他の車両が接近して来ている側が、該車両の後ろ側であることが検出された場合、同じ道路上において、動いている車両の走行方向の右側にフリーな車線が存在しているか否かを確認する、但し、該車両のドライバーは、該データ処理ユニット(3)によって、接近して来ている車両に関しての情報提供を受け、且つ、該データ処理ユニット(3)によって、該道路のフリーな車線に車線変更するように促されることを特徴とする請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
該データ処理ユニット(3)が、動いている車両と同じ走行方向用に他の車線が存在するか否かを確認し、これが該当するケースでは、付加的に、該車両の該道路の該当する車線への車線変更に対する障害物が存在するか否かも確認することを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
該データ処理ユニット(3)が、該車両のドライバーに算出した相対速度を伝達することを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の車線に沿って走行方向に移動している車両における車線変更をサポートするための方法ならびに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの走行状況において、ある道路の一本の車線を移動している車両は、車線変更を実施する必要がある。例えば、ある車両が、複数車線のアウトバーンを移動しているとし、同一車線上を、他の車両が、後方から、該車両に、より早い速度において接近して来ている場合、該車両が、アウトバーンの他の車線へ車線変更を実施することが、必要になる。前方を走行している車両のタイムリーな車線変更により、双方の車両が衝突する確率を下げ、その結果、全ての交通参加者の安全を高めることができる。文献DE 10 2012 215 173 A1より、後方車間に依存したマニュアル或いは自動的車線変更を実施するための方法が既知である。
【0003】
従来の車両では、ドライバーは、例えば、バックミラー或いはサイドミラーを観察することにより、接近して来ている車両を認識し、対応する車線変更を実施することができる。しかしながら、ドライバーが、交通状況に気を取られ、或いは、他の理由により、車両のバックミラーを見ず、そして、後方から高速で接近して来ている車両に気付かない、或いは、他の車線への車線変更をタイムリーに実施するには気づくのが遅すぎる可能性が残る。この際、接近して来ている車両のドライバーは、前方を走行中の車両との衝突を回避するために、車両を減速する必要がある。この制動プロセスにより、道路の流れが妨げられるだけでなく、該道路における例えば渋滞を引き起こすような、制動プロセスの連鎖反応につながることもあり得る。更には、接近して来ている車両には、意図的であれ、意図的でないにしろ、最短車間を下回り、追突の危険性が生まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の課題は、道路交通における走行安全を高めるための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば請求項1記載の特徴を有する方法、並びに請求項7に記載の特徴を有する装置によって解決される。
【0006】
それによれば、本発明は、一本の道路に沿って走行方向に移動している車両における車線変更のサポートを実施するための方法を提供するが、該方法は、以下のステップを包含している:
該車両に接近して来ている他の車両を捕捉するステップ、
接近して来ている車両が捕捉された場合は直ぐに、車両の同じ道路の他の車線への変更が、可能であり許されているか否かを確認するステップ;並びに、
同じ道路の他の車線への車線変更が、可能であり許されている場合に、車両のマニュアル或いは自律的な車線変更をトリガーするために該車両のドライバーに、接近して来ている他の車両に関して情報提供するステップ。
【0007】
本発明に係る方法のある可能な実施形態においては、付加的に車両の車両ボディの該捕捉された他の車両が接近して来ている側も検出される。
【0008】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、車両の車両ボディの該捕捉された他の車両が接近して来ている側が、該車両の後ろ側であることが検出された場合、同じ道路上において、動いている車両の走行方向の右側にフリーな車線が存在しているか否かが確認される。
【0009】
この様なケースでは、車両のドライバーに、彼の車両に後方から接近して来ている車両に関して情報提供し、道路のフリーな車線に車線変更することを促すことが好ましい。
【0010】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、動いている車両と同じ走行方向用に他の車線が存在するか否かが確認され、これが該当するケースにおいては、更に、該車両の該道路の該当する他の車線への車線変更に対する障害物が存在するか否かも確認される。
【0011】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、該車両の測定された走行速度と他の車両の測定された走行速度との間の相対速度が、算出される。
【0012】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、該車両のドライバーには、ユーザーインターフェースを介して自車両と接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度に関して情報提供される。
【0013】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、同じ道路のフリーな車線への該車両の車線変更は、該車両と接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度に依存して提案される或いは実施される。
【0014】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、該車両と捕捉された該車両に後方から接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度が、予め設定されている閾値を超えている場合、双方の車両間の衝突を回避するために、該車両は、フリーな車線への該車両の車線変更の前、及び/或いは、その最中に加速される。
【0015】
本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、該車両と捕捉された該車両に後方から接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度が、予め設定されている閾値を超えている場合、双方の車両間の衝突を回避するために、該車両によって、フリーな車線への該車両の車線変更の前、及び/或いは、その最中に警告シグナルが発せられる
【0016】
更に、本発明は、一本の道路に沿って走行方向に移動している車両における車線変更のサポートを実施するための装置を提供するが、該装置は、以下の手段を包含している:
該車両に接近して来ている他の車両を捕捉する捕捉ユニット、並びに、
接近して来ている車両が捕捉された場合は直ぐに、車両の同じ道路の他の車線への変更が、可能であり許されているか否かを確認するデータ処理ユニット;
但し、該データ処理ユニットは、同じ道路の他の車線への車線変更が、可能であり許されている場合に、車両のマニュアル或いは自律的な車線変更をトリガーするために接近して来ている他の車両に関して車両のドライバーに情報提供する。
【0017】
本発明に係る装置の更なる実施形態は、対応する従属請求項に記載されている。
【0018】
以下、車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法、並びに、本発明に係る装置の可能な実施形態を、添付されている図を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る装置の可能な実施形態のブロック図である。
図2】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る装置の一例としての更なる実施形態を描写するための更なるブロック図である。
図3】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る装置の一例としての更なる実施形態を描写するための更なるブロック図である。
図4】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法のある実施例を描写するためのフローチャートである。
図5】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法の更なる実施例を描写するための更なるフローチャートである。
図6】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法と本発明に係る装置の作動形態を説明するための起こり得る走行状況の模式的描写である。
図7】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法と本発明に係る装置の作動形態を説明するための起こり得る走行状況の模式的描写である。
図8】車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法と本発明に係る装置の作動形態を説明するための起こり得る走行状況の模式的描写である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から明らかなように、車両における車線変更のサポートを実施するための本発明に係る装置1は、示されている実施例では、捕捉ユニット2とデータ処理ユニット3を有している。該装置1は、該車両のドライバーを、彼が、車両の車線変更を実施する際にサポートする。その際、該車両は、例えば、複数車線のアウトバーンなどの道路の一本の車線上にある。該車両は、該当する道路上の車線に沿って、走行方向に動いている。図1に示されている装置1は、ある可能な実施形態においては、車両、特に好ましくは、道路交通用車両内のドライバー・アシスタント・システムの一部を構成している。該捕捉ユニット2は、該ドライバーの該当する車両にある一方向から接近して来る少なくとも一台の他の車両を捕捉する。そのために該捕捉ユニット2は、好ましくは、一つの乃至複数の該車両の車両ボディの異なる側にあるセンサーユニットを使用することができる。該捕捉ユニット2は、センサーデータを他の車両が接近して来ているか否かを割り出すために評価する。接近して来ている車両は、ある可能な実施形態においては、該捕捉ユニット2によって、装置1のデータ処理ユニット3に報告される。ある可能な実施形態においては、該データ処理ユニット3は、データを、特に好ましくは、センサーデータを評価するために、一つの乃至複数のプロセッサーを有している。該データ処理ユニット3は、接近して来ている車両が捕捉ユニット2によって捕捉された場合は直ぐに、好ましくはリアルタイムに、該車両の同じ道路の他の車線への変更が可能か否かを確かめる。該データ処理ユニット3は、同じ道路の他の車線への車両のこのような車線変更が、可能であり許されている場合、車両のマニュアル或いは自律的な車線変更をトリガーする或いは実施するために、例えばユーザーインターフェースを介して、該車両のドライバーに、接近して来ている他の車両に関して情報提供する。本発明に係る装置1のある可能な実施形態においては、該捕捉ユニット2は、付加的に車両の車両ボディの該捕捉された他の車両が接近して来ている側も捕捉する。該捕捉ユニット2は、この実施形態においては、他の車両が、例えば、前方から、後方から、左側から、又は、右側から自車両に接近しているのかを捕捉する。自車両に対して他の車両が後方から接近して来ていることが割り出された場合、ある可能な実施形態においては、該データ処理ユニット3によって、同じ道路の自車両が動いている走行方向の右側にフリーな車線があるか否かが確かめられる。この様なケースでは、該データ処理ユニット3は、該車両のドライバーには、好ましくはユーザーインターフェースを介して、後方から接近して来ている車両に関して情報提供し、該車両のドライバーに、存在するフリーな車線、即ち、右側にあるフリーな車線への車線変更を要求する。
【0021】
本発明に係る装置のある一つの実施形態では、該車両のドライバーは、車線変更を実施することを要求され、続いて、該ドライバーは、車線変更を自ら車両を操舵することによりマニュアルに実施する。代案的には、汎用的な交通ルールによって、及び/或いは、現場にある交通標識によってそれが許されている場合、該データ処理ユニット3が、自動的に乃至自律的に、使用できるフリーな車線への操舵プロセスを実施する、或いは、トリガーする。
【0022】
ある可能な実施形態においては、該データ処理ユニット3は、該車両の該道路の其々他の車線への車線変更を阻害する障害物の存在が確認される。該障害物とは、例えば、同じ道路上にある他の車両、或いは、その他の障害物、例えば、一時的に置かれている交通標識やそれに類するものである。ある可能な実施形態においては、該データ処理ユニット3は、付加的に、該当する車両の測定された走行速度と接近して来ている車両の測定された走行速度との間の相対速度も算出する。本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、該車両のドライバーは、ユーザーインターフェースを介して、自車両と接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度に関して情報提供を受ける。その際、ドライバーには、付加的に、他の車両がどの側から接近して来ているのかに関しても情報提供されることが好ましい。例えば、該車両のドライバーには、他の車両が、相対速度50km/hにおいて、後方から彼の車に接近して来ていることが情報提供される。本発明に係る方法のある更なる可能な実施形態においては、同じ道路のフリーな車線への該車両の車線変更は、自車両と接近して来ている他の車両との間の算出された相対速度に依存して示唆される或いは提案される、或いは、自動的に乃至自律的に実施される。ある可能な実施形態においては、該車線変更は、マニュアル或いは該ドライバーの操舵によって車線変更を実施するには、算出された相対速度とその時点においてまだ残っている双方の車両間の残存車間に基づいた時間が該車両のドライバーにとって十分ではない場合、自動的乃至自律的に実施される。例えばある車両が、ある一方向からドライバーの自車両に対して、ドライバーに車線変更するのみ十分な反応時間が残っていないほどの高速において接近して来ている場合、該車線変更は、データ処理ユニット3によって、該車両の操舵ユニットが適宜制御されることにより、自動的に開始されることが好ましい。
【0023】
本発明に係る装置の更なる可能な実施形態においては、該車線変更は、ドライバーが入力ユニットを用いて自律的車線変更機能を作動させた場合、自律的に実施される。この実施形態では、ドライバーは、車線変更実施の際、付加的に、聴覚的或いは視覚的に、車線変更に関して情報提供を受ける。ドライバーは、該自律的車線変更機能を停止することができるが、この場合、車線変更を交通状況が必要とし且つそれが可能な時点において、該装置1から、マニュアルな車線変更の実施が、あるユーザーインターフェースを介して要求される。車両のドライバーは、例えば、以下の条件が満たされている際に、車線変更の実施を要求される:
ある相対速度において、例えば、後方から該車両に接近して来ている他の車両が検出或いは認識された。
【0024】
特に好ましくは道路の右側に、更なる車線が、存在している。
【0025】
該車線上に車線変更を妨げる障害物が存在していない。
【0026】
車線変更の推奨は、ドライバーに対して、例えば、該車両のインストルメントボード上に表示することができる。車両のドライバーは、更に、装置1より、実施すべき車線変更の緊急性に応じて、警告メッセージを、受取る。該警告メッセージは、他の車両の相対速度、及び/或いは、他の車両が接近して来ている方向に応じて自動的に作成される。例えば、他の車両が、高い相対速度で後方から接近して来ている場合、第一音声シグナルが、ユーザーインターフェースを介して出力されることができる一方、前方において、他の車両が、同じ相対速度で接近して来ている場合は、他の音声シグナルが、ドライバーに対して出力される。聴覚的、及び/或いは、視覚的警告シグナルは、その振幅と周波数を、ドライバーに対して実施されるべき車線変更の緊急性を直接的に認識できるように、割り出された相対速度、及び/或いは、接近方向に対応させることができる。
【0027】
図2は、車線変更のサポートを実施するための本発明に係る装置の更なる実施例を描写するためのブロック図を示している。図2に示されている実施例では、捕捉ユニット2は、該当する車両ボディの異なる側面にある様々なセンサーユニット4-1,4-2,4-3,4-4に接続されている。該様々なセンサーユニット4-1,4-2,4-3,4-4は、好ましくは、車両ボディの前方、左右側方、及び、後方にある。これらセンサーユニット4-iは、例えば、該車両のレーダーシステムのレーダーセンサーであることができる。レーダーセンサーを車両ボディの様々な側に取り付けることにより、車両周辺部一周、即ち、360°の視角を捕捉することが可能になる。レーダーシステムは、接近して来るオブジェクト或いは車両から反射されセンサーユニット4-iを捕捉するレーダー波を出力する。レーダーセンサーデータ或いはレーダーセンサーシグナルは、評価のために捕捉ユニット2に送られる。該捕捉ユニット2は、レーダーセンサーデータを評価し、その助けを借りて、該車両に接近して来ている他の車両を捕捉する。ある可能な実施形態においては、該捕捉ユニット2は、様々なレーダーセンサーユニット4-iから受け取るレーダーシグナル或いはレーダーセンサーデータの評価によって、接近して来ている車両の相対速度を割り出すこともできる。捕捉ユニット2は、接近して来ている車両を、データ処理ユニット3に報告し、続いてこれが、車両の該道路の他の車線への変更が、可能且つ許されているか否かを確かめる。図2に示されている実施形態では、同じ道路の他の車線への車両のこのような車線変更が、可能であり許されている場合、車両のマニュアル或いは自律的な車線変更を実施する或いはトリガーするために、ドライバーには、ユーザーインターフェース5を介して、接近して来ている車両に関して情報提供される。
【0028】
図3は、車線変更のサポートを実施するための本発明に係る装置の更なる実施例のブロック図を示している。図3に示されている実施例では、該捕捉ユニット2は、他のユニット6から、フリーな車線への可能な車線変更を妨げかねない障害物に関しての情報を得る。該障害物とは、例えば、該道路上の他の車両などである。他の車線上における障害物の存在は、同じ或いは他のセンサ類を用いて割り出すことができる。他の車線上の障害物は例えば、車載カメラ又は他の光学的センサ類によって認識されることができる。該障害物が同じ道路上の他の車両である場合、ある可能な実施形態においては、該車両と動いている障害物との間の相対速度は、装置1のデータ処理ユニット3によって算出される。ある可能な実施形態においては、該車両の自らの走行速度は、速度センサ7によって割り出され、図3に示されているごとく、装置1の捕捉ユニット2に送られる。データ処理ユニット3は、車両のドライバーに、図3に示されているごとく、例えば、ユーザーインターフェース5を介して他の車両の接近に関する情報を提供する。更に、データ処理ユニット3は、自動的乃至自律的な車線変更を実施する、或いは、サポートするために、車両の操舵ユニット8を制御するための制御シグナルも出力することができる。
【0029】
図4は、ある車両において車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法のある実施例を描写するためのフローチャートを示している。その際、該車両は、該当する道路上の車線に沿って、走行方向に動いている。
【0030】
第一ステップS1において、該車両に接近して来ている他の車両が、検出或いは捕捉される。これは、例えば、図1に示されている捕捉ユニット2によって実施される。ステップS1において接近して来ている車両が認識されると直ぐに、ステップS2において、該車両の同じ道路の他の車線への変更が、可能であり許されているか否かが確かめられる。この場合、該車両のドライバーは、ステップS3において、接近して来ている他の車両に関して、車線変更が可能であり且つ許されている場合、車両のマニュアル或いは自律的な車線変更をトリガーするために、情報の提供を受ける。
【0031】
図5は、車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法の更なる実施例を描写するための更なるフローチャートを示している。ここでは、最初の三つのステップS1,S2,S3は、図4に示したステップS1からS3と同じである。図5に示されている実施例では、更なるステップS4において、他の車両が接近して来ている該車両の車両ボディの側が、割り出される。例えば、捕捉ユニット2は、他の車両が、前方、左側、右側、或いは、後方から該車両に接近しているのかを、捕捉或いは検出できる。更なるステップS5においては、該車両の測定された走行速度と他の車両の測定された走行速度との間の相対速度が、算出される或いは割り出される。図5に示されている実施例では、付加的に、該車両は、ステップS5において算出された自車両と後方から接近して来ている他の車両間の相対速度が、定められた閾値を超えた場合、双方の車両の衝突を回避するために、フリーな車線への車線変更の前或いは実施中に加速する。最後に、ステップS7において、ステップS5において算出された該車両と後方から接近して来ている捕捉された他の車両間の相対速度が、定められた閾値を超えた場合、車線変更の前、及び/或いは、実施中に警告シグナルを発する。例えば、該車両が、車線変更中、他の車両が、後方から、前方を走行中の車両の車線変更が衝突を回避するためには必ず実施されなければならない程の高速で接近して来ており、且つ、該車線変更が、前方を走行中の車両のドライバーによってマニュアルに操舵され又は自律的制御により実施される場合、後方にハザード点滅シグナルを出力することもできる。
【0032】
図6,7,8は、車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法と本発明に係る装置の作動形態を説明するための様々な走行状況を示している。
【0033】
図6に示されている交通状況では、二台の車両A,Bは、二車線のアウトバーンアウトバーンの追い越し車線を同じ走行方向に動いている。ここでは、車両Bが、その走行速度が高いため、前方を走行中の車両Aに接近して来ている。図6に示されている例では、前方を走行中の車両Aが、時速90km/hにおいて、左側車線を走行している一方、車両Bは、後方から時速130km/hで接近して来ている。よって、双方の車両A,B間の相対速度は、40km/hである。前方を走行中の車両A内にある捕捉ユニット2の一つのセンサが、後方から接近して来ている車両Bを認識し、該道路の他の車線への車線変更が可能であり、許されているか否かを確認する。図6に示されている交通状況では、右側車線は、フリーであり、車両Aの二車線のアウトバーンの左側の追い抜き車線から右側の車線への車線変更は、問題なく可能である。よって、図6に示されている交通状況では、車線変更は、接近して来ている車両Bに関しての情報提供を受けた後に、車両Aのドライバーによって、マニュアルに、或いは、該車線変更は、アシスタントシステムによって自動的に実施される、但し、該車線変更の実施はドライバーに好ましくは、ドライバーインターフェースを介して知らされる。ある可能な実施形態においては、双方の車両A,B間の相対速度は、算出され、車線変更は、算出された相対速度に依存して実施される。図6に示されている交通状況における双方の車両A,B間の相対速度が高ければ高いほど、車線変更を実施する可能性は高まり、且つ、それは、アシスタントシステムによって、より迅速に提案される、或いは、実施される。図6に示されている交通状況において双方の車両A,B間の相対速度が、特定の設定可能な閾値よりも高く、即ち、双方の車両A,B間の衝突の危険性がある場合、前方を走行中の車両Aは、ある可能な実施形態においては、車線変更の前、及び/或いは、その実施中に、衝突の確率を下げるために加速される。
【0034】
図7に示した交通状況では、二車線のアウトバーンの右側車線上には、前方を走行中の車両Aと略同様な速度で走っている三台目の車両Cがある。図7に示された交通状況では、右側車線上の車両Cは、前方を走行中の車両Aの右側車線への車線変更を妨げる動いている障害物である。図7に示した走行状況では、アシスタントシステムは、車両Cとの衝突の可能性を無くすために、右側車線への車線変更は、提案しない。
【0035】
図8に示されている交通状況では、車両A,Bは共に、二車線のアウトバーンアウトバーンの右側車線上にある。図8に示されている交通状況では、車両Aは、既に、最も右側の車線にあるため、車線変更による車両Aの回避は、不可能である。よって、図9に示されている交通状況では、一般的交通ルールに基づいて、車線変更は、許されていない。
【0036】
車線変更のサポートを実施するための本発明に係る方法及び本発明に係る装置では、交通安全が高められる一方、ある道路システムの交通の流れも高められる。更に、交通において、ドライバーも負担軽減される。対象となる車両は、任意の車両、特に、道路交通用車両の車両であり、例えば、乗用車、貨物自動車、或いは、自動二輪車であることができる。本発明に係る方法、並びに、システムの更なる実施形態も可能である。ある可能な実施形態においては、車線変更の際、他の交通参加者に車線変更を予告するために、自動的に対応するウインカーが作動される。更なる実施形態では、様々な車両或いは交通参観者との間において、ワイヤレスなコミュニケーション接続が、例えば、無線インターフェースを介して構築されている。車線変更をサポートするための本発明に係る方法及び本発明に係る装置のある可能な実施形態においては、車線変更は、他の交通参加者に対してコミュニケーション・インターフェースを介して付加的に知らされる。例えば、図6に示されている交通状況において、車両Bの交通参加者が、比較的高い速度において、前方を走行中の車両Aに接近して来ている場合、該車両のアシスタントシステムは、右側車線への車線変更を車両Aのドライバーに提案する或いは自律的に実施すると同時に、後方から接近して来ている車両Bに、該車線変更をコミュニケーション・インターフェースを介して知らせる。これと同時に、車両Aのアシスタントシステムは、右側車線への車線変更を知らせるために右側のウインカーを作動させることが好ましい。前方を走行中の車両Aの作動されたウインカーは、ある可能な実施形態においては、接近して来ている車両Bのドライバー・アシスタント・システムによって認識されることができる。更に、ある可能な実施形態においては、車両Aからコミュニケーション・インターフェースを介して知らされた車線変更は、車両Bのドライバー・アシスタント・システムによって検出されることができる。この交通状況においては、車両Bには、前方を走行中の車両Aが車線変更することを前提とすることができるため、車両Bのドライバーには、制動プロセスを取りやめる、或いは、逆に彼の車両Bを加速する選択肢がある。逆に、前方を走行中の車両Aのドライバー・アシスタント・システムは、例えば、図7に示されている交通状況では、接近して来ている車両Bに、コミュニケーション・インターフェースを介して、(車両Cが、隣を走っているので)右側車線への車線変更は、その時点では不可能であることを知らせることもできる。この交通状況では、車両Bのドライバーは、追突事故或いは衝突を回避するために、制動しなければならない。
【0037】
本発明に係る方法及び本発明に係る装置の使用は、図6,7,8に示されている交通状況に制限されるものではない。例えば、本発明に係る方法は、車両が他の側、特に前方から自車両に接近して来ている様な交通状況でも使用することができる。例えば、ゴーストドライバー/逆走車が、アウトバーンの追い越し車線上において、そこを走行中の車両に接近してきた場合、本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、右側車線への、そして、緊急事態では、硬路肩/非常駐車帯への車線変更もトリガーできる。この交通状況において、本発明に係る装置或いは本発明に係る方法によって、ゴーストドライバーが認識された場合、ある可能な実施形態においては、交通センターに通報することもできる。この実施形態では、該ドライバーのみが、車線変更を実施するために、向かってきている車両に関しての情報提供を受けるのではなく、更なる対策を実施し得る交通センターも同様に情報提供を受ける。よって、この実施バリエーションでは、本発明に係る装置は、ゴーストドライバーとの衝突に対する保護装置を構成していることになる。
【符号の説明】
【0038】
1 車線変更のサポートを実施するための装置
2 捕捉ユニット
3 データ処理ユニット
4 センサーユニット
5 ユーザーインターフェース
6 障害物報告ユニット
7 速度センサ
8 操舵ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8