(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】アルコール化合物の製造法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/94 20060101AFI20220726BHJP
C07C 69/14 20060101ALI20220726BHJP
C07C 33/22 20060101ALI20220726BHJP
C07D 249/08 20060101ALI20220726BHJP
C07C 67/03 20060101ALI20220726BHJP
C07H 5/06 20060101ALI20220726BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
C07C29/94
C07C69/14
C07C33/22
C07D249/08 519
C07C67/03
C07H5/06
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018559572
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2017046877
(87)【国際公開番号】W WO2018124172
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2016254626
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 康士
(72)【発明者】
【氏名】安河内 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】西山 章
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-107949(JP,A)
【文献】特表2008-531680(JP,A)
【文献】特開2003-327578(JP,A)
【文献】特開2004-131462(JP,A)
【文献】特開2009-191205(JP,A)
【文献】特開昭52-075684(JP,A)
【文献】米国特許第02658070(US,A)
【文献】伊藤拓哉 ほか,メトキシド型陰イオン交換樹脂を用いた連続処理プロセスによるバイオディーゼル燃料製造,日本エネルギー学会大会講演要旨集,20th,2011年08月09日,pp.72-73
【文献】森本陽亮 ほか,バイオディーゼル燃料製造におけるメトキシド型陰イオン交換樹脂失活機構の検討,日本大学理工学部学術講演会講演論文集,56th,2012年,RONBUNNO.N-19
【文献】森本陽亮 ほか,固定床式連続反応装置を用いたバイオディーゼル燃料におけるメトキシド型陰イオン交換樹脂の失活機構に関する研究,廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集,24th,2013年,B12-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液して、メチルエステル及び/又はエチルエステルを生成させ、これをメタノール及び/又はエタノールと一緒に留去すること
でアルコール化合物を製造する方法であり、
前記アルコール化合物の沸点が170℃以上であり、前記メチルエステル及び/又はエチルエステルの沸点が150℃以下であることを特徴とする、アルコール化合物の製造法。
【請求項2】
アルコール化合物をアシル基で保護することによってなるエステル化合物から前記アルコール化合物を製造する方法であり、
前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液し、前記エステル化合物を分解して前記アルコール化合物と前記アシル基を含むメチルエステル及び/又はエチルエステルにし、
次に、前記メチルエステル及び/又はエチルエステルを、前記メタノール及び/又はエタノールと留去すること
、及び
前記アルコール化合物の沸点が170℃以上であり、前記メチルエステル及び/又はエチルエステルの沸点が150℃以下であることを特徴とする、アルコール化合物の製造法。
【請求項3】
前記アルコール化合物の純度が80重量%以上で得られることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の製造法。
【請求項4】
前記エステル化合物が、下記式(1);
【化1】
(式中、R
1は、置換基を有する炭素数1または2のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のシクロアルキル基、置換基を有してよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有してよい炭素数7~20のアラルキル基、置換基を有してよい炭素数6~20のアリール基、又は置換基を有してよい炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。R
2は水素原子、置換基を有してよい炭素数1~5のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~5のシクロアルキル基、又は置換基を有してよい炭素数2~5のアルケニル基を表す。)で表わされ、
前記メチルエステル及び/又はエチルエステルが、下記式(3);
【化2】
(式中、R
2は前記に同じ。R
3はメチル基、又はエチル基を表す。)で表わされ、前記アルコール化合物が、下記式(2);
【化3】
(式中、R
1は前記に同じ。)で表わされる、請求項1~
3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
前記R
2が水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はtert-ブチル基である、請求項
4に記載の製造法。
【請求項6】
前記エステル化合物が(2R,3R)-2-ジフルオロフェニル-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オールであり、前記アルコール化合物が(2R,3R)-2-ジフルオロフェニル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオールである、請求項1~
5のいずれかに記載の製造法。
【請求項7】
前記エステル化合物が(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オールであり、前記アルコール化合物が(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオールである、請求項1~
6のいずれかに記載の製造法。
【請求項8】
前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を通液する際の操作温度が、0℃以上90℃以下である、請求項1~
7のいずれかに記載の製造法。
【請求項9】
前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液の空間速度(SV)が、0.01~100hr
-1である、請求項1~
8のいずれかに記載の製造法。
【請求項10】
前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液中、エステル化合物、メタノール及びエタノールの合計含有率が80質量%以上である、請求項1~
9のいずれかに記載の製造法。
【請求項11】
カラム通液後に取得される溶液100質量%中、前記エステル化合物の含有率が5質量%以下である、請求項1~
10のいずれかに記載の製造法。
【請求項12】
水酸化物イオンをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに、メタノール及び/又はエタノールを通液することによる、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂の製造法により製造された陰イオン交換樹脂を用いる、請求項1~
11のいずれかに記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル化合物からアルコール化合物を純度よく、且つ簡便な操作で取得する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や農薬等の製造過程において、その原料、中間体、及び最終物としてアルコール化合物がしばしば用いられる。多段階を経て目的化合物を合成する場合、アルコール化合物はその反応性の高さから、様々な保護基を用いて水酸基が保護され、その後、適切な段階で脱保護される。水酸基の保護基としては、一般に酸性、弱アルカリ性、酸化や還元条件に強い保護基としてアシル基が用いられる。従って、アルコール化合物の簡便なアシル保護とその脱保護法の開発は、重要な課題の一つとなっており、水酸基を適切に保護することのほか、脱保護が簡便にできることも重要である。
【0003】
水酸基がアシル基で保護されたアルコール化合物、即ちエステル化合物から、アルコール化合物を純度よく製造する方法としては例えば、メタノール/水混合溶媒中で炭酸カリウムを用いる方法、メタノール中でナトリウムメトキシドを用いる方法、エタノール中でシアン化カリウムを用いる方法、水中で相関移動触媒と水酸化ナトリウムを用いる方法、メタノール中でアンモニア水を用いる方法、アセトニトリル中でBF3・OEt2を用いる方法、メタノール/水混合溶媒中でSc(OTf)3を用いる方法、イソプロパノール中でYb(OTf)3を用いる方法、メタノール中でヒドラジンを用いる方法など実に様々な方法が知られている(非特許文献1)。
【0004】
アシル保護されたアルコール化合物(即ち、エステル化合物)からアシル基を脱保護する方法としては、加水分解が一般的である。
【0005】
【0006】
また、アシル保護されたアルコール化合物(即ち、エステル化合物)からアシル基を脱保護する方法として、加アルコール分解もよく用いられる。
【0007】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版) Peter G.M. Wuts、Thodora W.Greene著 230-232頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、炭酸カリウム、シアン化カリウム、水酸化ナトリウムのような無機塩基類を用いる場合は生成物と分離するために抽出操作が必要となり、アンモニアやヒドラジンの場合は、脱保護されたアシル基が高沸点のアミド体に変換されるため、生成物との分離のためにはカラム精製や晶析が必要となるなど、後処理まで含めるといずれも簡便な方法とは言い難い。
【0010】
また、加水分解によりアシル基を脱保護する方法では、触媒がないと加水分解は殆ど進行しないため、塩酸、硫酸などの強酸、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強アルカリが触媒としてよく用いられる。ここで、加水分解反応後にアルコール化合物を純度よく取得するためには、使用した強酸、又は強アルカリ触媒、そして副生するカルボン酸との分離が必要である。一般にカルボン酸は沸点が高いため、濃縮留去は効率が悪い。そのため、カルボン酸を塩として水層に分離する抽出操作を行うのが一般的である。ただ抽出操作では、カルボン酸や使用した触媒を除去するために、多くの場合で水洗浄を繰り返す必要がある。このとき、生成物であるアルコール化合物の脂溶性が高ければよいが、水溶性が高い場合は水層にロスを生じる恐れがあるので、回収率を高める目的で複数回抽出を繰り返す必要もある。またアルコール化合物の沸点が低い場合、抽出液を減圧留去する際に、アルコール化合物が揮発してロスする可能性もある。更に次工程で水を嫌う場合は脱水のために濃縮操作を繰り返す必要が生じるなど、加水分解反応自体は非常に簡便であるが、その後の処理操作は実は煩雑で、工業的規模での実施において生産性を著しく低下させる要因となっていた。
【0011】
更に、加アルコール分解によりアシル基を脱保護する方法でも、アルコールを加えただけでは反応は進行しないので、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化カルシウムなどのルイス酸、又はナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基が触媒としてよく用いられる。更に、反応を完結させるためには大過剰のアルコールを添加する必要もある。
【0012】
ここで、加アルコール分解後に目的のアルコール化合物を純度よく取得するためには、まず使用した触媒を分離しなければならない。この場合も、反応液に水を加えて触媒を水層へ除去し、アルコール化合物を抽出する操作が一般的であり、そうすると前記加水分解で説明したとおり、煩雑な抽出操作が必要となる。更に大過剰のアルコールが抽出効率を低下させるので、事前に減圧留去しておく必要もある。また、触媒を濾過で除去することも考えられるが、触媒の一部は大過剰のアルコールに溶解しているため、完全に除去することは現実的に難しい。その上、加アルコール分解では、アシル保護基由来のエステルが副生するので、アルコール化合物との分離についても考えておく必要がある。このように加アルコール分解法も工業的規模での実施においては、生産性の面から決してよい方法であるとは言い難い。
【0013】
前記の従来技術が有する課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、エステル化合物からアルコール化合物を純度よく、且つ簡便な操作で取得できる生産プロセスを構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エステル化合物のメタノール及び/又はエタノール溶液を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液することによりエステル交換反応を行い、次いで副生するメチルエステル及び/又はエチルエステルと、溶媒に使ったメタノール及び/又はエタノールを一緒に留去することにより、アルコール化合物が濃縮物として純度よく得られることを見出した。
【0015】
即ち本発明は、以下の点に要旨を有するアルコール化合物の製造法に関する。
[1] エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液して、メチルエステル及び/又はエチルエステルを生成させ、これをメタノール及び/又はエタノールと一緒に留去することを特徴とする、アルコール化合物の製造法。
[2] アルコール化合物をアシル基で保護することによってなるエステル化合物から前記アルコール化合物を製造する方法であり、
前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液し、前記エステル化合物を分解して前記アルコール化合物と前記アシル基を含むメチルエステル及び/又はエチルエステルにし、
次に、前記メチルエステル及び/又はエチルエステルを、前記メタノール及び/又はエタノールと留去することを特徴とする、アルコール化合物の製造法。
[3] 前記アルコール化合物の沸点が170℃以上であり、前記メチルエステル及び/又はエチルエステルの沸点が170℃未満である、[1]又は[2]に記載の製造法。
[4] 前記アルコール化合物の純度が80重量%以上で得られることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の製造法。
[5] 前記エステル化合物が、下記式(1);
【化3】
(式中、R
1は、置換基を有する炭素数1または2のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のシクロアルキル基、置換基を有してよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有してよい炭素数7~20のアラルキル基、置換基を有してよい炭素数6~20のアリール基、又は置換基を有してよい炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。R
2は水素原子、置換基を有してよい炭素数1~5のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~5のシクロアルキル基、又は置換基を有してよい炭素数2~5のアルケニル基を表す。)で表わされ、
前記メチルエステル及び/又はエチルエステルが、下記式(3);
【化4】
(式中、R
2は前記に同じ。R
3はメチル基、又はエチル基を表す。)で表わされ、前記アルコール化合物が、下記式(2);
【化5】
(式中、R
1は前記に同じ。)で表わされる、[1]~[4]のいずれかに記載の製造法。
[6] 前記R
2が水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はtert-ブチル基である、[5]に記載の製造法。
[7] 前記エステル化合物が(2R,3R)-2-ジフルオロフェニル-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オールであり、前記アルコール化合物が(2R,3R)-2-ジフルオロフェニル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオールである、[1]~[6]のいずれかに記載の製造法。
[8] 前記エステル化合物が(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オールであり、前記アルコール化合物が(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオールである、[1]~[7]のいずれかに記載の製造法。
[9] 前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を通液する際の操作温度が、0℃以上90℃以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の製造法。
[10] 前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液の空間速度(SV)が、0.01~100hr
-1である、[1]~[9]のいずれかに記載の製造法。
[11] 前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液中、エステル化合物、メタノール及びエタノールの合計含有率が80質量%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載の製造法。
[12] カラム通液後に取得される溶液100質量%中、前記エステル化合物の含有率が5質量%以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の製造法。
[13] 水酸化物イオンをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに、メタノール及び/又はエタノールを通液することによる、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂の製造法。
[14] [13]に記載の製造法により製造された陰イオン交換樹脂を用いる、[1]~[12]のいずれかに記載の製造法。
【発明の効果】
【0016】
医薬品や農薬等の原料、中間体、最終物として有用なアルコール化合物を、効率よく大量生産する方法を提供することができる。
【0017】
本発明の製造法によれば、煩雑な抽出操作は不要であり、1回の濃縮操作のみで高純度のアルコール化合物を高収率で取得できる。また、カラム内にて反応を実施するため、反応後に陰イオン交換樹脂を分離する操作も不要となるばかりか、連続生産による生産効率の向上といった利点も併せて享受できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願発明について詳述する。
本発明で使用するエステル化合物は特に限定されず、分子内にエステル官能基が複数あってもよい。好ましくは下記式(1);
【0019】
【化6】
で表わされる。ここで、R
1は、置換基を有する炭素数1または2のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のシクロアルキル基、置換基を有してよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有してよい炭素数7~20のアラルキル基、置換基を有してよい炭素数6~20のアリール基、又は置換基を有してよい炭素数3~20のヘテロアリール基を表す。
【0020】
前記R1における置換基としては例えば、フェニル基、ジフルオロフェニル基等の置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基;トリアゾール、3-アセトアミド-2,4,5-トリ-アセトキシテトラヒドロピランなどの炭素原子とヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、または硫黄等)から構成される複素環から1個の水素原子を除去して形成される置換基を有していてもよい複素環基(複素環は好ましくは3~10員環、より好ましくは5~6員環);フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基(炭素数は好ましくは1~10);メチルチオ基等のアルキルチオ基(炭素数は好ましくは1~10);トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基(炭素数は好ましくは1~5);アセチル基;ベンゾイル基;シアノ基;ニトロ基;カルボキシ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアミド基(炭素数は好ましくは1~10);アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシル基(炭素数は好ましくは1~10);エーテル結合を有する化合物から水素原子を除去して形成される1価の基(例えば、1,3-ジオキサン等の環状エーテルから形成される1価の基);メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(炭素数は好ましくは1~10);ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジル基等のジアルキルアミノ基(炭素数は好ましくは1~10);ベンジルオキシカルボニルアミノ基、tert-ブチルカルボニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の保護アミノ基;等が挙げられ、好ましくは置換基を有していてもよい複素環基であり、より好ましくは置換基を有していてもよい含窒素または含酸素複素環基である。また置換基の数に制限はない。
なおR1の置換基として例示される炭素数6~10のアリール基及び複素環基は、それぞれ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基(炭素数は好ましくは1~10);アセチル基;ベンゾイル基;シアノ基;ニトロ基;カルボキシ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアミド基(炭素数は好ましくは1~10);アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシル基(炭素数は好ましくは1~10);メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(炭素数は好ましくは1~10);ベンジルオキシカルボニルアミノ基、tert-ブチルカルボニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の保護アミノ基;等を置換基として有していてもよい。前記置換基の数に制限はない。
【0021】
R1における炭素数1または2のアルキル基としては、メチル基またはエチル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。前記炭素数1または2のアルキル基の置換基としては、置換基を有していてもよい複素環基がより好ましい。
【0022】
R1における炭素数3~20のアルキル基としては、好ましくは炭素数3~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数3~6のアルキル基である。前記炭素数3~20のアルキル基の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基及び/または置換基を有していてもよい複素環基がより好ましい。
【0023】
R1における炭素数3~20のシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3~10のシクロアルキル基であり、より好ましくは炭素数3~6のシクロアルキル基である。
【0024】
R1における炭素数2~20のアルケニル基としては、好ましくは炭素数2~10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数2~6のアルケニル基である。
【0025】
R1における炭素数7~20のアラルキル基としては、好ましくは炭素数7~10のアラルキル基であり、より好ましくはベンジル基である。
【0026】
R1における炭素数6~20のアリール基としては、好ましくは炭素数6~10のアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0027】
R1における炭素数3~20のヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数3~10のヘテロアリール基である。
【0028】
R1として好ましくは、置換基を有する炭素数1または2のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~20のアルキル基、または置換基を有してよい炭素数7~20のアラルキル基である。
【0029】
またここで、R2は水素原子、置換基を有してよい炭素数1~5のアルキル基、置換基を有してよい炭素数3~5のシクロアルキル基、又は置換基を有してよい炭素数2~5のアルケニル基を表す。具体的には例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~10の直鎖又は分岐アルキル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~10のハロゲン化アルキル基;メトキシメチル基、ジメトキシメチル基等の炭素数2~10のアルコキシアルキル基;シアノメチル基等の炭素数2~10のシアン化アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基;ビニル基、メタリル基等の炭素数2~10のアルケニル基;等が挙げられ、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はtert-ブチル基であり、更に好ましくはメチル基、又はtert-ブチル基である。分子内に異なるエステル官能基が複数ある場合、反応温度及び/又は滞留時間を適切に調整することにより、選択的に脱保護することも可能である。
【0030】
前記エステル化合物(1)として好ましくは、(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オール、(2R,3R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オール等の(2R,3R)-2-ジフルオロフェニル-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オール、酢酸ベンジル、又はペンタアセチル-β-D-グルコサミンである。
【0031】
本発明の生成物であるアルコール化合物は特に限定されず、分子内に水酸基が複数あってもよい。好ましくは常圧の沸点が170℃以上のアルコール化合物であり、更に好ましくは185℃以上のアルコール化合物であり、特に好ましくは200℃以上のアルコール化合物であり、好ましくは650℃以下のアルコール化合物である。アルコール化合物の沸点が高いと実測での測定が困難な場合があり、その場合は計算値を適宜用いるとよい。
【0032】
また前記アルコール化合物は、より好ましくは下記式(2);
【化7】
で表わされ、ここで、R
1は前記に同じである。前記アルコール化合物(2)として好ましくは(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオール、(2R,3R)-2-(2,5-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオール等の(2R,3R)-2-ジフルオロフェニル-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオール、ベンジルアルコール、又はN-アセチル-β-D-グルコサミンである。
【0033】
本発明のエステル交換反応で副生するメチルエステル及び/又はエチルエステルは、用いるエステル化合物の構造に依存するため特に限定されず、分子内にメチルエステル官能基及び/又はエチルエステル官能基が複数あってもよい。好ましくは常圧の沸点が170℃未満のメチルエステル及び/又はエチルエステルであり、更に好ましくは150℃以下のメチルエステル及び/又はエチルエステルであり、特に好ましくは130℃以下のメチルエステル及び/又はエチルエステルであり、好ましくは30℃以上である。
【0034】
またメチルエステル及び/又はエチルエステルとしてより好ましくは、下記式(3);
【0035】
【化8】
で表わされ、ここで、R
2は前記に同じである。R
3はメチル基、又はエチル基を表す。前記メチルエステル又はエチルエステル(3)として具体的には、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、ジメトキシ酢酸メチル、ジメトキシ酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、シクロプロパンカルボン酸メチル、シクロプロパンカルボン酸エチル、シクロペンタンカルボン酸メチル、シクロペンタンカルボン酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等であり、好ましくは蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、ピバル酸メチル、又はピバル酸エチルであり、更に好ましくは酢酸メチル、酢酸エチル、ピバル酸メチル、又はピバル酸エチルである。
【0036】
次に本発明で使用する陰イオン交換樹脂について説明する。
陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂、及び弱塩基性陰イオン交換樹脂などが挙げられるが、反応速度の向上といった観点から、強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。
【0037】
強塩基性陰イオン樹脂はその交換基の構造からI型とII型に分類されるが、本反応に用いる樹脂としては特に限定されず、I型とII型のどちらを用いてもよい。
【0038】
強塩基性陰イオン交換樹脂は水分保有能力が高いほど、本反応の反応速度が向上する。水分保有能力としては、例えば40%以上、好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上であり、上限は特に限定されないが90%以下である。
【0039】
強塩基性陰イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、アンバーライト(登録商標)IRA900J(オルガノ社製)、IRA904(同)、IRA400J(同)、IRA458RF(同)、IRA410J(同)、IRA910CT(同)、IRA900(OH)-HG(同)、ORLITE(登録商標)DS-2(同)、DS-5(同)、ダウエックス(登録商標)1x2(ダウケミカル社製)、1x8(同)、MONOSPHERE(登録商標)550A(OH)(同)、ダイアイオン(登録商標)PA306S(三菱化学社製)、PA308(同)、HPA25L(同)、PA312LOH(同)、SA10OH(同)等を使用することができ、好ましくはダウエックス(登録商標)1x2又はダイアイオン(登録商標)PA306Sである。尚、これらの強塩基性陰イオン交換樹脂は、単独で用いても2種以上併用しても良く、混合比率に特に制限は無い。また陰イオン交換樹脂の選定に際しては、反応性(一般的に、表面積の大きさ、水分保有能力の高さ、架橋度の低さなどが影響)、粒子サイズ、価格などを適宜考慮するとよい。
【0040】
強塩基性陰イオン交換樹脂の市販品は、購入時点ではカウンター陰イオンが塩化物イオン(Cl-型)や水酸化物イオン(OH-型)等になっているため、カウンター陰イオンをメトキシド及び/又はエトキシドに変換するために、塩化物イオン(Cl-型)または水酸化物イオン(OH-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に変換する前処理を行う必要がある。
【0041】
カウンター陰イオンが塩化物イオン(Cl-型)の場合は、塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に、例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カルシウムメトキシド、マグネシウムメトキシド等のメタノール溶液、若しくはリチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カルシウムエトキシド、マグネシウムエトキシド等のエタノール溶液等の置換溶液を通液することで、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を製造するとよい(前処理方法1)。置換溶液として好ましくはナトリウムメトキシドのメタノール溶液、又はナトリウムエトキシドのエタノール溶液であり、更に好ましくはナトリウムメトキシドのメタノール溶液である。これらの溶液は単独で用いても2種以上併用しても良く、混合比率に特に制限は無い。
【0042】
前記置換溶液の濃度については、固体が析出しなければ特に制限されず、通常、下限は0.01モル/L、好ましくは0.05モル/L、更に好ましくは0.1モル/Lであり、上限は100モル/L、好ましくは50モル/L、更に好ましくは20モル/Lである。
【0043】
前記置換溶液の使用量は、多すぎるとコストの点で好ましくなく、少なすぎるとカウンター陰イオンの交換が不十分となるため、使用する陰イオン交換樹脂量に対して、通常、下限は0.1倍容量、好ましくは0.5倍容量、更に好ましくは1.0倍容量であり、上限は100倍容量、好ましくは50倍容量、更に好ましくは30倍容量である。
【0044】
本方法においては、前記置換溶液を通液する前に、塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂にメタノール及び/又はエタノールを通液することも望ましい。予めメタノール及び/又はエタノールを通液することで、メタノール及び/又はエタノールに溶解する樹脂由来の不純物を除去することができる。
前記メタノール及び/又はエタノールの使用量は、塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂量に対して、好ましくは0.1倍容量以上、より好ましくは1倍容量以上であり、好ましくは100倍容量以下、より好ましくは30倍容量以下である。
【0045】
陰イオン交換樹脂のカウンター陰イオンがメトキシド及び/又はエトキシドに十分交換された後は、過剰の溶液を除去するために、更にメタノール及び/又はエタノールを通液するとよい。前記メタノール及び/又はエタノールの使用量は、多すぎるとコストの点で好ましくなく、少なすぎると無機塩類の除去が不十分となるため、使用する置換溶液通液後の陰イオン交換樹脂量に対して、通常、下限は0.1倍容量、好ましくは0.5倍容量、更に好ましくは1.0倍容量であり、上限は100倍容量、好ましくは50倍容量、更に好ましくは30倍容量である。
【0046】
更に、カウンター陰イオンが塩化物イオン(Cl-型)の場合においては、まず塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を通液してカウンター陰イオンを水酸化物イオンに変換し、水酸化物イオン(OH-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を製造した後、続いてアルカリ水溶液通液後の水酸化物イオン(OH-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に、メタノール及び/又はエタノールを通液することにより、カウンター陰イオンをメトキシド及び/又はエトキシドに変換し、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を製造してもよい(前処理方法2)。
【0047】
前記アルカリ水溶液の濃度については、固体が析出しなければ特に制限されず、通常、下限は0.01モル/L、好ましくは0.05モル/L、更に好ましくは0.1モル/Lであり、上限は100モル/L、好ましくは50モル/L、更に好ましくは20モル/Lである。
【0048】
前記アルカリ水溶液の使用量は、多すぎるとコストの点で好ましくなく、少なすぎるとカウンター陰イオンの交換が不十分となるため、使用する陰イオン交換樹脂量に対して、通常、下限は0.1倍容量、好ましくは0.5倍容量、更に好ましくは1.0倍容量であり、上限は100倍容量、好ましくは50倍容量、更に好ましくは30倍容量である。
【0049】
アルカリ水溶液通液後に導入する前記メタノール及び/又はエタノールの使用量は、多すぎるとコストの点で好ましくなく、少なすぎると無機塩基の除去が不十分となるため、使用するアルカリ水溶液通液後の陰イオン交換樹脂量に対して、通常、下限は0.1倍容量、好ましくは0.5倍容量、更に好ましくは1.0倍容量であり、上限は100倍容量、好ましくは50倍容量、更に好ましくは30倍容量である。
【0050】
本方法においては、前記アルカリ水溶液を通液する前に、塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に水を通液することも望ましい。予め水を通液することで、水に溶解する樹脂由来の不純物を除去することができる。
前記水の使用量は、塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂量に対して、好ましくは0.1倍容量以上、より好ましくは1倍容量以上であり、好ましくは100倍容量以下、より好ましくは30倍容量以下である。
【0051】
また塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂にアルカリ水溶液を通液後、メタノール及び/又はエタノールを通液する前に、無機塩基の除去のため、アルカリ水溶液通液後の陰イオン交換樹脂に水を通液することも望ましい。前記水の使用量は、少なすぎると無機塩類の除去が不十分となるため、アルカリ水溶液通液後の陰イオン交換樹脂量に対して、好ましくは0.1倍容量以上、より好ましくは1倍容量以上であり、好ましくは100倍容量以下、より好ましくは30倍容量以下である。
【0052】
次に、カウンター陰イオンが水酸化物イオン(OH-型)の場合は、水酸化物イオン(OH-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に、そのままメタノール及び/又はエタノールを通液することにより、カウンター陰イオンをメトキシド及び/又はエトキシドに変換し、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を製造することができる(前処理方法3)。前記メタノール及び/又はエタノールの使用量は、多すぎるとコストの点で好ましくなく、少なすぎるとカウンター陰イオンの交換が不十分となるため、使用する陰イオン交換樹脂量に対して、通常、下限は0.1倍容量、好ましくは0.5倍容量、更に好ましくは1.0倍容量であり、上限は100倍容量、好ましくは50倍容量、更に好ましくは30倍容量である。
【0053】
本発明では特に、水酸化物イオンをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに、メタノール及び/又はエタノールを通液することにより製造されたメトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を用いることが、操作性の観点からは望ましい。
【0054】
一連の前処理操作における各液の送液速度は、生産性向上の観点でなるべく速い方が好ましいが、速すぎると陰イオンの交換や無機塩類の洗浄が不十分となるため、通常、SV(空間速度)として好ましくは0.01~100hr-1であり、更に好ましくは0.05~50hr-1、特に好ましくは0.1~30hr-1である。一連の前処理操作の操作温度は、充填樹脂の劣化等がなければ特に制限されないが、通常、使用するメタノール及び/又はエタノールの沸点付近まで可能であり、好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは70℃以下であり、特に好ましくは60℃以下であり、通常0℃以上である。
【0055】
続いて、前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を、前記メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液して、メチルエステル及び/又はエチルエステルを生成させ、これをメタノール及び/又はエタノールと一緒に留去することで、目的のアルコール化合物を製造する工程について説明する。本願発明は、換言すると、アルコール化合物をアシル基で保護することによってなるエステル化合物から前記アルコール化合物を製造する方法であり、前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液し、前記エステル化合物を分解して前記アルコール化合物と前記アシル基を含むメチルエステル及び/又はエチルエステルにし、次に、前記メチルエステル及び/又はエチルエステルを、前記メタノール及び/又はエタノールと留去することを特徴とする、アルコール化合物の製造法に関する。
【0056】
なお本発明において、「メチルエステル及び/又はエチルエステルをメタノール及び/又はエタノールと一緒に留去する」とは、メチルエステル及び/又はエチルエステルを、メタノール及び/又はエタノールと共に留去することをいい、より具体的には、メチルエステル及び/又はエチルエステルを、メタノール及び/又はエタノールと共に、一連の濃縮操作により留去することをいう。
【0057】
前記メタノール及び/又はエタノールの使用量は、前記エステル化合物が固体として析出しなければ特に制限されないが、通常、前記エステル化合物に対して、下限は0.1倍重量、好ましくは0.5倍重量、更に好ましくは1倍重量であり、上限は100倍重量、好ましくは50倍重量、更に好ましくは20倍重量である。
【0058】
反応溶媒については、前記メタノール及び/又はエタノールが溶媒としての作用を兼ねるため、特に必要としないが、溶液の粘度や通液性を調整する目的から適宜混合してもよい。混合する溶媒は、反応に関与しなければ特に限定されないが、具体的には例えば、n-へキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテロラヒドロフラン、メチルt-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピロニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒などを挙げることができる。尚、これらの溶媒は、単独で用いても2種以上併用しても良く、混合比率に特に制限は無い。本発明では、反応溶媒の含有率は低い程、精製の観点から好ましい。すなわち、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂に通液させるエステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液100質量%中、エステル化合物、メタノール及びエタノールの合計含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%(すなわち、エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールからなる溶液)であることが望ましい。
【0059】
前記陰イオン交換樹脂の使用量は、反応が進行すれば特に制限はないが、通常エステル化合物に対して、下限は0.001倍重量以上、好ましくは0.01倍重量以上、更に好ましくは0.05倍重量以上であり、上限は200倍重量以下、好ましくは100倍重量以下、更に好ましくは50倍重量以下である。
【0060】
エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を通液する際の操作温度は、充填樹脂の劣化等がなければ、特に制限されないが、通常、使用するメタノール又はエタノールの沸点付近まで可能であり、好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは70℃以下であり、より更に好ましくは60℃以下、特に好ましくは50℃以下であり、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは30℃以上である。
【0061】
前記エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液の送液速度は、生産性向上の観点でなるべく速い方が好ましいが、速すぎるとエステル交換が不十分となる可能性があるため、通常、SV(空間速度)として好ましくは0.01~100hr-1であり、更に好ましくは0.05~50hr-1、特に好ましくは0.1~30hr-1、より更に好ましくは0.3~20hr-1、最も好ましくは0.5~10hr-1である。
【0062】
反応は、通常、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを垂直に立て、ここにエステル化合物のメタノール及び/又はエタノール溶液を通液することで実施されるが、通液方向は特に制限されず、アップフロー法であってもよいし、ダウンフロー法であってもよい。
【0063】
前記カラムについては特に制限はなく、材質については耐溶剤性、耐塩基性、耐圧性、耐熱性等の要望に応じて適宜選択すればよい。例えば、鉄、チタン、銅、ニッケル、クロム、アルミウム等の金属、ステンレス、ハステロイ、モネル等の合金、ガラス、シリコン、シリコンカーバイド、各種セラミックス、ピーク樹脂、テトラフルオロエチレン等を使用できる。
【0064】
このような操作で得られたカラム通液後に取得される溶液には、目的のアルコール化合物、溶媒のメタノール及び/又はエタノール、副生物のメチルエステル及び/又はエチルエステルが含まれている。本溶液には触媒は含まれていないため、触媒を除去するための煩雑な抽出操作は不要であり、水溶性の高いアルコール化合物を水層へロスする心配もない。前記アルコール化合物はこれら混合物の中では最も沸点が高いため、常圧加熱、減圧、若しくは減圧加熱等により濃縮することで、目的のアルコール化合物を高純度化できる。このようにして得られたアルコール化合物の純度は通常80重量%以上であり、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。また目的のアルコール化合物と副生するメチルエステル及び/又はエチルエステルの沸点差が大きいほど、濃縮時のロスが少なくなるので収量が向上する。
【0065】
またカラム通液後に取得される溶液には、原料として使用されるエステル化合物がほとんど含まれていないため、目的のアルコール化合物の取得が容易である。カラム通液後に取得される溶液100質量%中、原料のエステル化合物の含有率は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0066】
このようにして得られた目的物は、後続工程に使用できる十分な純度を有しているが、純度を更に高める目的で、晶析、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手法により、更に純度を高めてもよい。
【0067】
また、エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を通液した後の陰イオン交換樹脂は、触媒活性が低下してしまい、そのまま再度使用することが難しい。そこで、本発明では、エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を通液した後の陰イオン交換樹脂に、前述した前処理方法1~2を実施することにより、メトキシド及び/又はエトキシドをカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂を再生して再度使用することも可能である。陰イオン交換樹脂の再生に際しては、前処理方法1~2における「塩化物イオン(Cl-型)をカウンター陰イオンに持つ陰イオン交換樹脂」を「エステル化合物とメタノール及び/又はエタノールを含む溶液を通液した後の陰イオン交換樹脂」に読み替えて適宜適用することが可能である。
【0068】
本願は、2016年12月28日に出願された日本国特許出願第2016-254626号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年12月28日に出願された日本国特許出願第2016-254626号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。これらの実施例は無論本発明を何ら限定するものではない。
【0070】
(1)ベンジルアルコールの製造
(実施例1)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)1.76g(約2.4ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液25mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.16ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール49mlをシリンジポンプを用いて0.82ml/分(SV:20hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0071】
続いて、3gの酢酸ベンジルにメタノール17gを入れて均一溶液とし、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.20ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的のベンジルアルコール(沸点:205℃)を2.12g含有する反応液を取得した(収率:98%)。取得した反応液中には、酢酸メチル(沸点57℃)のみが確認され、酢酸は確認されなかった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0072】
(実施例2)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA308,Cl形)1.61g(約2.4ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液25mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.16ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール49mlをシリンジポンプを用いて0.82ml/分(SV:20hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0073】
続いて、3gの酢酸ベンジルにメタノール17gを入れて均一溶液とし、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.20ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的のベンジルアルコールを1.94g含有する反応液を取得した(収率:90%)。また、副生した酢酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。取得した反応液中には、酢酸メチルのみが確認され、酢酸は確認されなかった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0074】
(実施例3)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)HPA25L,Cl形)1.60g(約2.4ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液25mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.16ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール49mlをシリンジポンプを用いて0.82ml/分(SV:20hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0075】
続いて、3gの酢酸ベンジルにメタノール17gを入れて均一溶液とし、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.20ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的のベンジルアルコールを1.84g含有する反応液を取得した(収率:85%)。また、副生した酢酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。取得した反応液中には、酢酸メチルのみが確認され、酢酸は確認されなかった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0076】
(実施例4)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)1.56g(約2.4ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液25mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.16ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール49mlをシリンジポンプを用いて0.82ml/分(SV:20hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0077】
続いて、3gの酢酸ベンジルにメタノール17gを入れて均一溶液とし、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.20ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的のベンジルアルコールを2.12g含有する反応液を取得した(収率:98%)。また、副生した酢酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。取得した反応液中には、酢酸メチルのみが確認され、酢酸は確認されなかった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0078】
(実施例5)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)1.55g(約2.4ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、60℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液60mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて1.0ml/分(SV:25hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール60mlをシリンジポンプを用いて1.0ml/分(SV:25hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0079】
続いて、6gの酢酸ベンジルにメタノール34gを入れて均一溶液とし、当該溶液をシリンジポンプを用いて1.0ml/分(SV:25hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的のベンジルアルコールを4.28g含有する反応液を取得した(収率:99%)。また、副生した酢酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。取得した反応液中には、酢酸メチルのみが確認され、酢酸は確認されなかった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0080】
(実施例6)
陰イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IRA900(OH)-HG,OH形)1.84g(約2.9ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール10mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.19ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0081】
続いて、3gの酢酸ベンジルにメタノール17gを入れて均一溶液とし、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.19ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的のベンジルアルコールを1.86g含有する反応液を取得した(収率:86%)。また、副生した酢酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。取得した反応液中には、酢酸メチルのみが確認され、酢酸は確認されなかった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0082】
(2)(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオール(5)の製造
【0083】
【0084】
実施例7~19に記載しているアルコール化合物及び参考例1,2の出発物質生成物は以下のHPLC法により分析し、定量後、収率または反応変換率を算出した。
[HPLC分析条件]
カラム:SHISEIDO CAPCELLPAK C18 TYPE MG(250×4.6mm)
移動相A:0.1%リン酸水、移動相B:アセトニトリル
流速:1.0ml/分
検出波長:UV210nm
カラム温度:30℃
保持時間:(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオール(5);7.1分、(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オール(4);28.7分、(2S,3R)-1-クロロ-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシブタン-2-オール(6);38.0分
グラジエント条件
時間(分) A液(%) B液(%)
0 70 30
15 70 30
25 40 60
45 40 60
50 10 90
60 10 90
60.1 70 30
【0085】
(実施例7)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液20mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール20mlをシリンジポンプを用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0086】
続いて、2gの化合物(4)にメタノール11.33gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを40℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.025ml/分(SV:0.4hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.40g含有する反応液を取得した(収率:92%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチル(沸点:102℃)のみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。また、副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0087】
(実施例8)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.48g(約3.9ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、40℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液20mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール70mlをシリンジポンプを用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0088】
続いて、6.5gの化合物(4)にメタノール36.83gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを40℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.025ml/分(SV:0.4hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を4.90g含有する反応液を取得した(収率:99%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。また、副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0089】
(実施例9)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0090】
続いて、2.5gの化合物(4)にエタノール18.51gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを75℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.36g含有する反応液を取得した(収率:89%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0091】
(実施例10)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0092】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを60℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.48g含有する反応液を取得した(収率:97%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0093】
(実施例11)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0094】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを50℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.33ml/分(SV:5hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.29g含有する反応液を取得した(収率:84%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0095】
(実施例12)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0096】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを50℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.065ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.52g含有する反応液を取得した(収率:100%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0097】
(実施例13)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0098】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを50℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.131ml/分(SV:2hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.51g含有する反応液を取得した(収率:99%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0099】
(実施例14)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)2.96g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0100】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを50℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.065ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.50g含有する反応液を取得した(収率:98%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0101】
(実施例15)
陰イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)1x2 100-200Mesh,Cl形)2.50g(約3.9ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0102】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを40℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.065ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.42g含有する反応液を取得した(収率:94%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0103】
(実施例16)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)2.96g(約3.9ml)をカラム(オムニフィット(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次にメタノール8mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26mL/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lのナトリウムメトキシド溶液31mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール79mlをシリンジポンプを用いて0.66ml/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0104】
続いて、2.0gの化合物(4)にメタノール14.81gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを40℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.065ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を1.36g含有する反応液を取得した(収率:89%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにナトリウムメトキシド溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0105】
(実施例17)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)150.46g(約197.67ml)をジャケット付きカラム(KIRIYAMA、内径22mm)に詰めて、25℃に温調し、垂直に立てて固定した。次に水198mLをダイヤフラムポンプ(KNF社製)を用いて3.29mL/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液494mlをダイヤフラムポンプを用いて3.29ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に水890mLをダイヤフラムポンプを用いて3.29mL/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール890mlをダイヤフラムポンプを用いて3.29ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0106】
続いて、42.4gの化合物(4)にメタノール235.8gを入れて均一溶液とし、ジャケットを50℃に温調し、当該溶液をダイヤフラムポンプを用いて3.29ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を31.96g含有する反応液を取得した(収率:99%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムに水酸化ナトリウム水溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0107】
(実施例18)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)23.7g(約31.2ml)をジャケット付きカラム(KIRIYAMA、内径11mm)に詰めて、25℃に温調し、垂直に立てて固定した。次に水31mLをダイヤフラムポンプ(KNF社製)を用いて0.52mL/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に予め調製しておいた1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液78.3mlをダイヤフラムポンプを用いて0.52ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に水140.9mLをダイヤフラムポンプを用いて0.52mL/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール281.7mlをダイヤフラムポンプを用いて1.04ml/分(SV:2hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0108】
続いて、120.3gの化合物(4)にメタノール651.3gを入れて均一溶液とし、ジャケットを50℃に温調し、当該溶液をダイヤフラムポンプを用いて1.04ml/分(SV:2hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(5)を88.02g含有する反応液を取得した(収率:96%)。取得した反応液中には、ピバル酸メチルのみが確認され、ピバル酸は確認されなかった。副生したピバル酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムに水酸化ナトリウム水溶液を送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0109】
(実施例19)陰イオン交換樹脂の耐久性評価
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)2.96g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に予め調製しておいた1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液9.8mlをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に水11.8mLをシリンジポンプを用いて0.66mL/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール17.7mlをシリンジポンプを用いて0.66mL/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0110】
続いて、145gの化合物(4)にメタノール841.43gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを50℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.065ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に通液した(送液時間:163hr)。送液中、適宜、カラムの出口から反応液をサンプリングし、反応変換率を測定した結果、以下の様な結果となった。なお反応変換率は、サンプリングした反応液のHPLC分析結果により、下記式に基づき算出した。
反応変換率=化合物(5)の面積値/(化合物(4)の面積値+化合物(5)の面積値)×100[%]
【0111】
【0112】
次に、反応液を163hr通液した樹脂が入ったカラムに、予め調製しておいた1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液9.8mlをシリンジポンプを用いて0.26ml/分(SV:4hr-1)の速度で送液した。次に水11.8mLをシリンジポンプを用いて0.66mL/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液した。次にメタノール17.7mlをシリンジポンプを用いて0.66mL/分(SV:10hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。
【0113】
続いて、化合物(4)のメタノール溶液(14.7wt%)をシリンジポンプを用いて0.065ml/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内(50℃)に通液した。カラムの出口から反応液をサンプリングして分析した結果、反応変換率は99.9%に改善した。
【0114】
(3)N-アセチル-β-D-グルコサミン(8)の製造
【化10】
【0115】
(実施例20)
陰イオン交換樹脂(DIAION(登録商標)PA306S,Cl形)3.0g(約3.9ml)をカラム(EYELA(登録商標)、内径10mm)に詰めて、25℃に温調したカラムオーブン内に入れ、垂直に立てて固定した。次に1N NaOH水溶液12mLをシリンジポンプ(YMC社製)を用いて0.065mL/分(SV:1hr-1)の速度でカラム内に送液した。次に水22mlをシリンジポンプを用いて0.13ml/分(SV:2hr-1)の速度でカラム内に送液して樹脂を洗浄した。次にメタノール19mLをシリンジポンプを用いて0.13ml/分(SV:2hr-1)の速度でカラム内に送液してメトキシド形の樹脂を取得した。
【0116】
続いて、0.73gのペンタアセチル-β-D-グルコサミン(7)にメタノール50.0gを入れて均一溶液とし、カラムオーブンを50℃に温調し、当該溶液をシリンジポンプを用いて0.13ml/分(SV:2hr-1)の速度でカラム内に通液し、カラムの出口から反応液を回収した結果、目的の化合物(8)(沸点:595℃, calculated using Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02)を0.27g含有する反応液を取得した(収率:65%)。取得した反応液中には、酢酸メチルのみが確認され、酢酸は確認されなかった。副生した酢酸メチルは濃縮操作により選択的に除去可能であった。尚、長時間の送液により、徐々に反応速度の低下がみられたものの、使用後のカラムにNaOH水溶液、水、続いてメタノールを送液することにより、樹脂は再生され、初期の反応速度に回復した。
【0117】
(参考例1)(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシ-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-ブタン-2-オール(4)の製造
フラスコに30gの(2S,3R)-1-クロロ-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-ピバロイルオキシブタン-2-オール(6)、9.04gのトリアゾール及び90gのDMAを加えて完全溶解させ、当該溶液を55℃に温調した。続いて34.17gのDBUをゆっくりと滴下し、同温度にて12時間撹拌した。その後、反応液を25℃まで冷却し、150gのトルエンと60gの水をここに加えて抽出し、得られた有機層をさらに60gの水で2回洗浄した。この有機層を減圧濃縮した結果、化合物(4)を24.79g含む濃縮液を42.45g取得した(収率75%)。
【0118】
【0119】
(参考例2)(2R,3R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-2,3-ブタンジオール(5)の製造
フラスコに上記参考例1にて取得した濃縮液(純分:19.76g)、13.83gのトルエン及び25.69gのTHFを加え、40℃に温調した。ここに28%のナトリウムメトキシド/メタノール溶液をゆっくりと滴下し、同温度にて2時間撹拌した。次に29.64gの水を反応液に加えて分液した結果、化合物(5)を14.0g含む有機層を80.9g取得した(収率93%)。尚、化合物(5)の水層へのロスは1.2g(8%)であった。