(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】エレベータの基準芯位置演算装置および基準芯演算方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/02 20060101AFI20220726BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20220726BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01B21/02 Z
G01B11/02 Z
B66B7/00 M
(21)【出願番号】P 2019031087
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 博文
(72)【発明者】
【氏名】野口 直昭
(72)【発明者】
【氏名】松家 大介
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054346(JP,A)
【文献】特開平06-305658(JP,A)
【文献】特開2007-261794(JP,A)
【文献】特開平05-278968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0172439(US,A1)
【文献】特許第6579595(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G01C 15/00
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを設置する昇降路の基準芯位置を演算する基準芯位置演算装置であって、
前記昇降路の各部の寸法を計測する計測部と、
前記基準芯位置と、前記計測部により計測された各部の寸法とに基づいて、前記昇降路の各部寸法値を演算する演算部と、を有し、
前記演算部は、
前記基準芯位置を第1の基準芯位置とした場合に、前記第1の基準芯位置に基づいて演算された前記昇降路の各部寸法値が所定の仕様を満たすか否かを判定
し、
前記第1の基準芯位置に基づいて演算された前記昇降路の各部寸法値が前記所定の仕様を満たさないと判定された場合に、前記昇降路の各部寸法値が前記所定の仕様を満たす前記基準芯位置である第2の基準芯位置を演算する
ことを特徴とする基準芯位置演算装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記第1の基準芯位置から前記第2の基準芯位置へ前記基準芯位置を変更し、前記第2の基準芯位置に基づいて前記昇降路の各部寸法値を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の基準芯位置演算装置。
【請求項3】
エレベータを設置する昇降路の基準芯位置を演算する基準芯位置演算装置であって、
前記昇降路の各部の寸法を計測する計測部と、
前記基準芯位置と、前記計測部により計測された各部の寸法とに基づいて、前記昇降路の各部寸法値を演算する演算部と、を有し、
前記演算部は、
前記基準芯位置を第1の基準芯位置とした場合に、前記第1の基準芯位置に基づいて演算された前記昇降路の各部寸法値が所定の仕様を満たすか否かを判定し、
前記計測部は、
光もしくは音を用いて、前記計測部の計測中心から前記昇降路の各部までの距離を計測する計測手段を有し、
前記計測手段にて前記昇降路の各部までの距離を計測することで前記各部の寸法を計測する
ことを特徴とす
る基準芯位置演算装置。
【請求項4】
前記計測部は、
前記計測手段により前記昇降路の各部までの距離を計測する際、所定面上の任意の計測方向へ向けて前記光もしくは前記音を出力するための回転手段を有し、
前記演算部は、
前記計測手段により計測された前記昇降路の各部までの距離と、前記回転手段の各計測方向を示す角度情報とに基づいて、前記昇降路の各部の座標情報を演算する
ことを特徴とする請求項3に記載の基準芯位置演算装置。
【請求項5】
前記演算部は、
複数の前記座標情報に基づく複数の座標を一次直線で近似することで、前記昇降路の内壁の形状を推定し、
前記一次直線が互いに交わる交点を演算し、
前記基準芯位置の座標から前記交点または前記一次直線までの距離を演算する
ことを特徴とする請求項4に記載の基準芯位置演算装置。
【請求項6】
前記計測部は、
前記計測手段および前記回転手段により、前記計測部の計測中心から、エレベータ据付用の所定基準位置の周辺に配置された所定の角部または所定の柱部を有する冶具の各部位までの距離を計測し、
前記演算部は、
前記計測部により計測された前記冶具の各部位までの距離と、前記回転手段の各計測方向を示す角度情報とに基づいて、前記所定基準位置を演算する
ことを特徴とする前記請求項4に記載の基準芯位置演算装置。
【請求項7】
前記昇降路の各部寸法値を表示部に表示するとともに、
前記所定の仕様を満たさないと判定された前記昇降路の各部寸法値を、識別可能に前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の基準芯位置演算装置。
【請求項8】
エレベータを設置する昇降路の基準芯位置を演算する基準芯位置演算装置が実行する基準芯演算方法であって、
基準芯位置演算装置が、
前記昇降路の各部の寸法を計測し、
前記基準芯位置と、前記計測された各部の寸法とに基づいて、前記昇降路の各部寸法値を演算し、
前記基準芯位置を第1の基準芯位置とした場合に、前記第1の基準芯位置に基づいて演算された前記昇降路の各部寸法値が所定の仕様を満たすか否かを判定
し、
前記第1の基準芯位置に基づいて演算された前記昇降路の各部寸法値が前記所定の仕様を満たさないと判定された場合に、前記昇降路の各部寸法値が前記所定の仕様を満たす前記基準芯位置である第2の基準芯位置を演算する
各処理を実行することを特徴とする基準芯位置演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの基準芯位置演算装置および基準芯演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの据付作業は熟練技術を要すると共に、3K(きつい、汚い、危険)環境職場と言われ、近年では据付作業技能者の不足がエレベータ業界の大きな課題となっている。
【0003】
据付作業は大きく、昇降路(昇降路は塔内と呼ばれる場合もある)の基準芯出し作業、レール芯出し・固定作業、出入口取付作業、かご組立、試運転・調整作業という順に作業を進める。ここで昇降路の基準芯出し作業はエレベータ据付の基準となる主要位置および寸法を決定する作業で、特に熟練度を要する作業のひとつである。この作業がおろそかになるとエレベータの据付精度に影響を及ぼし、最終的に乗り心地にも影響するという重要な作業である。
【0004】
ここで、基準芯出しにも関わるエレベータ昇降路内の寸法測定においては、作業負担低減や、熟練技術を必ずしも必要としない自動化技術に関する発明としてエレベータのリニューアル工事の際の昇降路の計測方法として、例えば下記の特許文献1には、「エレベータを運休させることなく、乗りかごを通常運転させながら乗りかご上に設置した1台のレーザー距離計により、螺旋状に水平方向と垂直方向の両方向の距離を安全、容易かつ自動的に行うことができる」ことが開示されている。
【0005】
また、エレベータの新設設置工事(以下、新設工事と記す)の際の昇降路の計測として、例えば下記の特許文献2には、「構造体内を長手方向に動かす搬送機械と長手方向にほぼ垂直な横方向の距離を搬送機械に接続された距離センサで計測する」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-66143号公報
【文献】特許第5497658号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術には、エレベータの新設工事作業で必須となる昇降路の基準芯位置の決定プロセスに関しては具体的なことは開示されていない。
【0008】
例えば、特許文献1には、昇降路の寸法測定自動化のために、乗りかご(以下、かごと記す)上に対象物までの距離を計測するレーザー距離計とレーザー光を走査させるためのモータを配置し、かごの昇降移動と併せてレーザー光を走査することで昇降路内の寸法を螺旋状に計測する技術が開示されている。すなわち、特許文献1は、エレベータ改修等のリニューアル作業を行う場合を想定した昇降路の計測方法のひとつである。
【0009】
また、特許文献2には、構造体内を長手方向に動かす搬送機械と長手方向にほぼ垂直な横方向の距離を搬送機械に接続された距離センサで計測する、という技術が開示されている。
【0010】
ここで、新設エレベータの据付の場合は、レールの据付を行う際に昇降路内の“基準芯”位置を決定し、出入口の位置やレールの位置を決定する必要がある。
【0011】
しかし、上記のように、特許文献1では、改修工事等を行う際のリニューアル作業を対象としているため、昇降路内の自動計測については記載されているが、“基準芯位置”の決定までは記載がされておらず、特許文献2でも、新設工事の際に必要な作業となる昇降路の“基準芯位置の決定”については開示されていない。このため、上述の従来技術では、昇降路内のエレベータの据付に必要な基準芯位置を自動計測することはできない。
【0012】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、昇降路内のエレベータの据付に必要な基準芯位置を自動計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明においては、例えば、エレベータを設置する昇降路の基準芯位置を演算する基準芯位置演算装置は、前記昇降路の各部の寸法を計測する計測部と、前記基準芯位置と、前記計測部により計測された各部の寸法とに基づいて、前記昇降路の各部寸法値を演算する演算部と、を有し、前記演算部は、前記基準芯位置を第1の基準芯位置とした場合に、前記第1の基準芯位置に基づいて演算された前記昇降路の各部寸法値が所定の仕様を満たすか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、昇降路内のエレベータの据付に必要な基準芯位置を自動計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の構成例を示す図である。
【
図2】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の構成例を表すブロック図である。
【
図3】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の基準芯出し手順の例を説明するための図である。
【
図4】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の基準芯出し手順の例を説明するための図である。
【
図5】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の動作処理フロー例を示す図である。
【
図6】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における表示例を示す図である。
【
図7】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における表示例を示す図である。
【
図8】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における寸法計測および寸法値算出の例の説明図である。
【
図9】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における寸法計測および寸法値算出の例の説明図である。
【
図10】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における寸法計測および寸法値算出の例の説明図である。
【
図11】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における寸法計測および寸法値算出の例の説明図である。
【
図12】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる返り墨位置治具の例を示す斜視図である。
【
図13】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の例を説明するための説明図である。
【
図14】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の例を説明するための説明図である。
【
図15】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の例を説明するための説明図である。
【
図16】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の例を説明するための説明図である。
【
図17A】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる、本実施例にかかる返り墨位置治具を示す平面図である。
【
図17B】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる返り墨位置治具の変形例1を示す平面図である。
【
図17C】エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる返り墨位置治具の変形例2を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を詳述する。本明細書における各図面は一例を示すものである。本明細書において、各図面の同一参照番号は、同一あるいは類似の構成または処理を示し、後出の実施例の説明では前出の実施例との差分のみを説明し、後出の説明が省略される場合がある。また、各実施例および各変形例は、本発明の技術思想の範囲内かつ整合する範囲内で一部または全部を組合せることができる。
【実施例】
【0017】
<基準芯位置演算装置の構成>
図1は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の構成例を示す図である。
図1は、実施例の基準芯位置演算装置100を、エレベータ据付の昇降路500に適用した概略斜視図を示している。本実施例では、一例として4階床の建屋の例で説明するが、本発明の適用は4階床の建屋に限られるものではなく、2階床以上の複数階床の建屋に適用することが可能である。
【0018】
基準芯位置演算装置100は、計測部101と、計測部101の装置筐体102と、基準芯位置演算装置100の演算や制御を司る演算処理装置(不図示)が搭載される基板103と、計測用の距離センサ104とを有する。ここで距離センサ104は、一例としてレーザー走査式距離センサを用いており、照射されるレーザー光により測定する対象物までの距離を計測することができる。
【0019】
さらに、基準芯位置演算装置100は、吊りフック106と、吊りフック106のリング部106aと、ロープ115とを有する。吊りフック106は、装置筐体102に一体的に取付けられている。また、吊りフック106の先端には、リング部106aが備えられており、ロープ115の端部と係合している。
【0020】
また、昇降路頂部500u付近に巻上機150が取り付けられている。巻上機150は、巻上駆動部150aと、巻上ドラム150bと、ロープ115を巻上ドラム150bのドラム幅の中で一定位置に垂直下方へ降ろすためのロープガイド150cと、巻上ドラム150bの回転数を検出するエンコーダ150eと有する。
【0021】
本実施例では、エンコーダ150eとして、例えばロータリエンコーダを使用している。このロータリエンコーダからの出力情報により、巻上ドラム150bの回転数、回転速度等の回転情報が検出でき、巻上ドラム150bから繰り出しているロープ長が判明する。基準芯位置演算装置100は、判明したロープ長をもとに、計測部101が昇降路500のどの高さ位置に存在するかを、エンコーダ150eによっても検出することができる。ここで、基準芯位置演算装置100の昇降路500内の昇降は、基準芯位置演算装置100を吊り下げるロープ115を、巻上機150で巻上げたり繰り出したりすることで行う。
【0022】
基準芯位置演算装置100に取付けられた距離センサ104は、前述の通り例えば走査式のレーザーセンサを用いている。距離センサ104は、レーザー光104Lを発し、そのレーザー光が測定対象物に当たり、その反射光を検出することで、測定物までの距離を出力する。ここで、距離センサ104は、
図1中の矢印C方向に回転することができるため、昇降路500の水平方向断面で昇降路500の内壁までの距離を計測することができる。距離センサ104は、レーザー光104Lを用いるものに限られず、光もしくは音を用いるものであってもよい。
【0023】
図1には、エレベータ1階のフロア面510、2階のフロア面520、3階のフロア面530、および4階のフロア面540のそれぞれが図示されている。昇降路500の1階のフロア面510には、1階の出入口開口部510dが設けられている。同様に、昇降路500の2階のフロア面520、3階のフロア面530、および4階のフロア面540のそれぞれには、2階の出入口開口部520d、3階の出入口開口部530d、および4階の出入口開口部540dが設けられている。また、
図1には、基準階である1階のフロア面510に予め罫書きされている、基準となる返り墨510aが図示されている。
【0024】
また、基準芯位置演算装置100は、装置筐体102の底面端部に、基準芯位置演算装置100の水平方向の位置検出用にレーザー発振器108、109が取付けられている。昇降路500のピットの昇降路底面500Lには、レーザー発振器108、109から照射されるレーザー光108a、109aの位置を検出するためのPSD(Position Sensitive Detector)208、209が設置されている。
【0025】
さらに、基準芯位置演算装置100には、装置筐体102の底面側に下向きに昇降路底面500Lまでの距離計測用のレーザー式の高さセンサ110が取付けられている。ここで、昇降路500に吹き込む風等の影響で基準芯位置演算装置100が揺れた場合、PSD208、209の受光面上の各レーザー光108a、109aの照射位置(不図示)が変化するため、この照射位置のずれ量および高さセンサ110の距離情報から、揺れ等の発生のない状況下の鉛直位置から基準芯位置演算装置100がどれだけずれているかの情報を得ることができる。
【0026】
また、
図1には、建屋基準階(通常は1階床)において基準位置となる返り墨510aが示されている。エレベータ昇降の際にかごを規制するレールの設置位置や出入口用扉の設置位置は、返り墨510aの位置を基準に行われる。また、返り墨510aは、一般的には基準階(多くは1階床)の返り墨を基準とし、他の階床の基準位置ともなる。
【0027】
基準芯位置演算装置100による距離計測は、先ず、この返り墨510aの位置を計測するところから始まる。また、基準位置となる1階床の返り墨510aの計測を初期段階で行うのが一般的である。
【0028】
<基準芯位置演算装置の機能構成>
図2は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の機能構成例を表すブロック図である。
図2に示すように、基準芯位置演算装置100は、計測部101と、距離センサ104と、レーザー発振器108、109と、高さセンサ110と、電源部111と、演算部112と、制御部113と、PSD208、209とを有する。計測部101、演算部112、および制御部113は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置である。
【0029】
距離センサ104は、水平面上での回転部を含み、基準角に対する回転の各角度位置で昇降路500の内壁等までの距離を測定する。レーザー発振器108、109は、基準芯位置演算装置100の平面内位置を検出する。高さセンサ110は、基準芯位置演算装置100の昇降方向の高さを検出する。電源部111は、バッテリーまたは外部電源であり、基準芯位置演算装置100に駆動電力を供給する。
【0030】
演算部112は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置であり、距離センサ104で計測した距離と計測時の角度位置から、昇降路のX方向およびY方向(
図1参照)の各距離成分を演算する。そして、演算部112は、後述する基準芯位置のOK判定およびNG判定を行い、さらには昇降路500の各部寸法値が仕様内に納まるように基準芯位置を変更する演算も行う。制御部113は、基準芯位置演算装置100全体の計測動作、昇降動作、計測結果の表示等の統合制御を司る。
【0031】
また、
図2に示すように、基準芯位置演算装置100には、巻上機150と、巻上機150に電力を供給する駆動用電源151と、端末装置160とが接続される。端末装置160は、計測した距離と角度情報に基づいて算出された、後述する昇降路500内の基準芯位置からの各部寸法値を一覧表示可能な、パーソナルコンピュータや、タブレット、スマートフォン等のスレート端末や、PDA(Personal Digital Assistant)等である。端末装置160は、有線通信または無線通信を行い得るように、基準芯位置演算装置100に接続される。
【0032】
<基準芯出し手順>
図3および
図4は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の基準芯出し手順を説明するための図である。
図3および
図4は、昇降路500の横断面を示す。
図3および
図4では、図示のように昇降路500、昇降路壁505、エレベータ前のフロア面510、据付用の原点となる返り墨位置600(返り墨510aと同じ)が位置する場合に、返り墨位置600を通る鉛直上方を正方向とする軸をX軸610とし、返り墨位置600を通る水平左方を正方向とする軸をY軸620としている。
【0033】
エレベータを施工する場合、フロア面510のホール側から昇降路500側を見て右方向および左方向を定義するのが一般的である。本実施例でもこの定義に沿って右方向および左方向を定義する。
【0034】
ここで、
図3に示す“D(右)”は、右側の基準芯位置P1から昇降路500の前側壁までの距離である。“G(右前)”は、基準芯位置P1から昇降路500の前側壁と垂直壁とがY方向で交わる角までの距離である。“C(右)”は、基準芯位置P1から前側壁までの距離である。“H(右)”は、基準芯位置P1から後ろ側壁までの距離である。“G(右後)”は、基準芯位置P1から昇降路500の後ろ壁と垂直壁とがY方向で交わる角までの距離である。また、
図3に示す“D(左)”、“G(左前)”、“C(左)”、“H(左)”、“G(左後)”は、それぞれ、“D(右)”、“G(右前)”、“C(右)”、“H(右)”、“G(右後)”の「右」を「左」に読み替えたものであり、フロア面510側から見て左側の基準芯位置P2に基づく各部寸法値の一部を表している。なお、“G(右前)”、“G(左前)”、“G(右後)”、および“G(左後)”は、取付けられた三方枠(不図示)を含んだ状態での距離である。
【0035】
また、
図4は、基準芯位置P1、P2を意図的に基準芯位置P1’、P2’にシフトした場合の各部寸法値の一部を表している。
【0036】
実際のエレベータの据付作業における従来の手作業による基準芯出し作業では、図面情報から、
図4に示す返り墨位置600位置よりも、設計値として既知の右側の基準芯位置P1と、左側の基準芯位置P2とに向けて、昇降路頂部500uから、図示しない2本のピアノ線を下ろす。次に、基準階でそのピアノ線の2本の足を基準芯位置P1、P2に一致させる。そして、各階において、ピアノ線位置から各部までの距離をコンベックスや直尺や曲尺等で計測し、記録する。1階から最上階までその作業を繰り返した後、記録した寸法値が予め定められた仕様に収束しているか、妥当な寸法になっているかを確認する。ここで、一部の寸法が仕様内に収束していない場合は、基準芯位置P1、P2を意図的に基準芯位置P1’、P2’に移動させたり、昇降路壁505の一部を削ったりして所定の寸法内に収束するようにする。この作業は、エレベータ据付作業技能者が建築顧客と折衝を行う際に必要になるものであり、熟練度が必要な作業となる。
【0037】
このように、従来の手作業による基準芯出し作業では、作業技能者がコンベックスや直尺、曲尺等で距離を計測するのに対し、本実施例では、距離センサ104によりレーザー光104Lを計測対象に照射し、その反射光を利用して時間を計測したり、三角測量を応用して距離を計測したりする。また、本実施例では、距離センサ104を回転ステージ(不図示)に載せ、回転ステージを回転させながら距離を計測することで、昇降路500内を走査して任意の距離を計測することができる。
【0038】
<基準芯位置演算装置の動作>
図5は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置の動作処理フローを示す図である。基準芯位置演算装置100は、作業技能者による操作を受け付けて、処理をスタートする(ステップS100)。先ず、ステップS110では、基準芯位置演算装置100は、昇降路500の階床数(FL)、各部寸法の許容させる公差、返り墨位置を基準(原点)とした基準芯位置情報等の図面情報として取り込む。この取り込みにおける各情報のセットの方法は、作業技能者が基準芯位置演算装置100に入力するものでもよいし、昇降路500のCADデータ等から自動的に情報を基準芯位置演算装置100に吸い上げる方法でもよい。例えば、基準芯位置演算装置100は、最初に昇降路500を昇降し、出入口の数をカウントして階床数(FL)を設定してもよい。
【0039】
次に、ステップS120では、基準芯位置演算装置100は、階床を示すカウンタNを0リセットする。次に、ステップS140では、基準芯位置演算装置100は、カウンタNを+1インクリメントし、N階床目の計測に備える。次に、ステップS150では、基準芯位置演算装置100は、N=1か否かを判定する。N=1の場合(ステップS150YES)、基準芯位置演算装置100は、ステップS160に処理を移す。一方、N>1の場合(ステップS150NO)、基準芯位置演算装置100は、ステップS190に処理を移す。
【0040】
ステップS160では、基準芯位置演算装置100は、カウンタNが全階床数FL以下か否か判定する。N≦FLの場合(ステップS160YES)の場合、基準芯位置演算装置100は、ステップS170に処理を移す。一方、N>FLの場合(ステップS160NO)の場合、基準芯位置演算装置100は、ステップS250に処理を移す。
【0041】
N=1(ステップS150YES)かつN≦FL(ステップS160YES)の場合、基準芯位置演算装置100は、1階床目の計測を実施することになる。初めにフロア面510に示された返り墨位置600の位置を予め計測しておく必要がある。このため、ステップS170では、基準芯位置演算装置100は、距離センサ104で返り墨位置600の位置の計測を行う。なお、返り墨位置600の位置は、図面情報をもとに入力してもよい。
【0042】
次に、ステップS180では、基準芯位置演算装置100は、距離センサ104の水平方向位置をレーザー発振器108、109で確認し、PSD208、209の受光面上の位置の変化をもとに、ステップS170で計測した基準階の返り墨位置の計測値を補正する。ステップS170およびS180は、基準階固有の設定処理である。
【0043】
次に、ステップS190では、基準芯位置演算装置100は、ステップS140で+1インクリメントしたカウンタNについて、ステップS170と同様に、計測部101自身の位置補正を行う。次に、ステップS200では、基準芯位置演算装置100は、N階床での昇降路500内の各部寸法の計測を行う。
【0044】
次に、ステップS210では、基準芯位置演算装置100は、ステップS200の計測結果の平滑化や、直線部分のデータの一次近似化を行い、昇降路500の角部の座標の演算を行う。この角部の座標の演算方法については、詳細を後述する。次に、ステップS220では、基準芯位置演算装置100は、図面情報における基準芯位置P1、P2から昇降路500の各角部までの各距離Lm(m:インデックスを表す正整数)を演算し、各距離Lmに基づく各部寸法値を演算し、所定の記憶領域に記憶する。
【0045】
ここで、各距離Lmは、例えば、
図11を参照して後述するL1~L12である。また、各距離Lmに基づく各部寸法値は、例えば
図6および
図7に示す、「測定箇所」“A(左)”、“A(右)”、“B(左)”、・・・、“G”、“H”等のエレベータ据付に必要な各部寸法値である。各距離Lmに基づく各部寸法値は、各距離Lmそのもの、あるいは、各距離Lmに基づく演算結果である。
【0046】
なお、
図6および
図7では、各「階床」および各「測定箇所」に対応する表示セルに表示される数値の図示を省略している。
【0047】
次に、ステップS230では、基準芯位置演算装置100は、端末装置160に、基準芯位置P1、P2から昇降路角までの距離、つまりエレベータ据付に必要な各部寸法を1階床分ずつ追加表示する。そして、ステップS190~S230の1階床分の計測データの採取が終了すると、ステップS240では、基準芯位置演算装置100は、計測部101が巻上機150により1階床分だけ上の階床に上昇移動する。
【0048】
ステップS240に続きステップS130を経てステップS140では、基準芯位置演算装置100は、カウンタNを+1インクリメントする。基準芯位置演算装置100は、ステップS140のカウンタNの;1インクリメント、ステップS150NO、ステップS190~S240の処理をN>FL(ステップS160NO)になるまで繰り返す。
【0049】
全階床の計測が終了し、N>FL(ステップS160NO)になると、ステップS250では、基準芯位置演算装置100は、基準階(1階)から最上階まで計測・演算した基準芯位置P1、P2からの各距離Lmに基づく各部寸法値(例えば主要寸法値)を、端末装置160に表示する。ここで、ステップS260では、基準芯位置演算装置100は、ステップS110で入力された基準情報等をもとに、各部寸法値が仕様を満たすか否かを判定する。そして、基準芯位置演算装置100は、仕様から外れた各部寸法値については、
図6に例示するように、該当する表示部分(表示セル)に、仕様外れ寸法値として、他の寸法値とは識別可能に警告表示する。
図6の例では、ハッチング表示されている表示セルが警告表示に該当する。
【0050】
次に、ステップS270では、基準芯位置演算装置100は、仕様から外れた寸法値を仕様値内に収束させるため、基準芯位置P1、P2を手動変更させる警告出力する、あるいは、返り墨位置600に対する基準芯位置P1、P2の座標を自動変更する。
図6の例では、ステップS270では、基準芯位置演算装置100は、変更前後の基準芯位置P1’、P2’を、基準芯位置変更内容表示1010cに表示している。さらに、
図7の例では、ステップS270では、基準芯位置演算装置100は、変更後の新しい基準芯位置P1’,P2’からの各部寸法値を、改めて端末装置160に、変更後基準芯位置表示1010dとして表示させている。
【0051】
例えば、作業技能者は、基準芯位置P1、P2の座標位置を手動変更させる警告出力に応じて、基準芯位置P1、P2の座標位置を適宜手動で基準芯位置P1’、P2’にシフトさせてもよい。または、例えば、基準芯位置演算装置100の演算部112は、基準階から最上階までについて、基準芯位置P1、P2からの各距離Lmの誤差の合計が最小になるように、基準芯位置P1、P2の座標位置を基準芯位置P1’、P2’に変更するように自動演算してもよい。あるいは、基準芯位置演算装置100の演算部112は、各距離Lmのうち、重要度が高いものから優先的に誤差が小さくなるように、基準芯位置P1、P2の座標位置を基準芯位置P1’、P2’に変更するように自動演算してもよい。この結果、最終的に、
図7に例示すように、各距離Lmに基づく各部寸法値が全て仕様値内に収束し、仕様外れ寸法値の警告表示が解除される。
【0052】
次に、ステップS280では、基準芯位置演算装置100は、全階床分での各部寸法値が仕様値内に収束しない場合には、収束不可能な各距離Lmと、収束しない場合において最良と推定される基準芯位置P1’、P2’およびその時の各部寸法値とを、端末装置160に表示する。ステップS280が終了すると、基準芯位置演算装置100は、一連の計測および基準芯出し作業の処理を終了する(ステップS290)。ここで、基準芯位置P1’、P2’は、施工作業者が意図的に基準芯位置を変更し入力できるものとしても構わない。
【0053】
<基準芯位置演算装置における表示例>
図6および
図7は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における表示例を示す図である。
図6および
図7は、計測および演算の結果である、エレベータ据付に必要な各部寸法値を一覧表に示した図である。
【0054】
図6および
図7に示すように、端末装置160は、モニタ画面1000を有する。モニタ画面1000は、昇降路500内の寸法を計測および演算して求めた各部寸法値を表示するための表示領域1010を有する。表示領域1010は、GUI等である。表示領域1010は、各部寸法値とその仕様を表示するための表示領域1010aと、各部寸法値の計測および演算結果を表示するための表示領域1010bとを含む。
【0055】
エレベータ施工技能者は、表示領域1010に表示された表を参照しつつ、顧客である建築業者と打合せを行い、エレベータ据付作業に問題が無いかどうかを確認する。
【0056】
なお、図示していないが、
図6および
図7において、表示セルに“-”を表示することで、当該表示セルに該当する項目が、計測や演算が必ずしも必要ではない項目であることを示すことができる。
【0057】
また、
図6においてハッチング表示されている表示セルは、計測および演算の結果、各部寸法値が仕様内に入っていない値が表示されている表示セル、つまり寸法エラーとなるものを示している。基準芯位置P1、P2からの各距離Lmに基づく各部寸法値の一または複数が所定の寸法公差内に収まっていない場合に、
図6に示すように、ハッチング表示されている該当の表示セルが、例えば赤色背景色になる等して作業技能者に警告し、基準芯位置P1、P2を適切な位置にシフトする必要があることを認識させることができる。
【0058】
端末装置160は、モニタ画面1000とともに、タッチパネルやその他の入力装置を備える。作業技能者は、表示セル部分をタッチしたり、キーボード、マウス等の入力装置を操作したりすることで、表示セルに表示されている各部寸法値の変更を入力できる。
【0059】
<寸法計測および寸法値算出>
図8~
図11は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における寸法計測および寸法値算出の説明図である。
図8~
図11は、昇降路500の横断面を示す。
図8~
図11では、昇降路壁505で囲まれた昇降路500内に収容された乗りかご650を二点鎖線で示す。そして、昇降路壁505に接触固定された板状のプレート300で昇降路500の2つの前側壁の間をフロア面510のホール側から塞ぎ、距離センサ104から照射されるレーザー光104Lを用いて、距離センサ104の測定中心から昇降路壁505の内壁までの距離が、複数の計測点250で計測される。ここで、板状のプレート300は、必ずしも連続した1枚のプレートである必要はなく、昇降路500の2つの前側壁の少なくとも壁と接する両端にそれぞれ備えられていればよい。
【0060】
距離センサ140は、その回転中心周りの角度θを制御することで連続回転もしくはステップ状に回転しながら、昇降路壁505までの距離Lを計測する。この距離Lと計測時の角度θから、X返り墨方向(X軸)およびY返り墨方向(Y軸)成分に距離Lを変換することにより、距離センサ104中心にX軸方向距離およびY方向距離を演算することが可能である。
【0061】
図9は、距離センサ104がその中心周りに360°回転し、昇降路壁505の内壁を一周にわたって計測した様子を示す。ここで、上述同様に、計測により得られた複数の計測点を、計測点250で表す。
【0062】
図10は、
図9において、昇降路壁505の各辺を一次直線250Lで近似し、角部の交点260をひし形◆で示したものである。
図11は、各距離Lm(m:インデックスを表す正整数)を両先端矢印で示したものである。これら各距離Lmに基づく各部寸法値の演算結果が、
図6および
図7で示したように、自動的に表に展開される。
【0063】
<返り墨位置の自動認識および計測>
図12は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる返り墨位置治具の例を示す斜視図である。
図13~
図17は、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の例を説明するための説明図である。
【0064】
図12に示すように、返り墨位置治具700は、頂部700aと、平面部700bとを有する。頂部700aは、向かい合って交線(稜)をなす2つの傾斜面から構成される、三角柱状である。頂部700aは、上方から見た場合に、2つの傾斜面のうちの一方の傾斜面が稜線700cを有し、他方の傾斜面が稜線700dを有する。
【0065】
図13は、返り墨位置治具700を昇降路500のホール側にある返り墨位置600に設置した図を示している。
図14は、距離センサ104により、距離センサ104の中心に角度θを変えながら回転し、返り墨位置治具700までの距離を走査ながら計測している様子を示す。
図14に示すように、距離センサ104の測定中心から返り墨位置治具700までの距離が、レーザー光104Lを用いて複数の計測点255で計測される。
【0066】
図15は、返り墨位置治具700を用いて計測した計測点255を示した図である。
図15は、昇降路壁505の内壁までの距離の計測と同様に、計測点255から直線部分を一次近似し、近似直線255L1、255L2、255L3を引いた様子を示す。
図16は、
図15に示す近似直線255L1、255L2、255L3の3箇所の交点をひし形◆で示した図である。ここで、
図15および
図16における距離JLは、返り墨位置治具700の寸法として既知である。よって、レーザー光104Lでは直接計測ができない返り墨位置600の位置を、距離JLをもとに推定することができる。
【0067】
<返り墨位置治具の変形例>
図17A~
図17Cを参照して、返り墨位置治具の変形例を説明する。
図17Aは、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる、本実施例にかかる返り墨位置治具を示す平面図である。
図17Bは、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる返り墨位置治具の変形例1を示す平面図である。
図17Cは、エレベータ昇降路の基準芯位置演算装置における返り墨位置の自動認識および計測の際に用いられる返り墨位置治具の変形例2を示す平面図である。
図17Aに示す本実施例にかかる返り墨位置治具700との比較で、
図17Bに示す変形例1にかかる返り墨位置治具710、および
図17Cに示す変形例2にかかる返り墨位置治具720を説明する。
【0068】
変形例1にかかる返り墨位置治具710は、
図17Bに示すように、上方から見た場合に、稜線710c、710dを含む頂部710aを有する。頂部710aは、返り墨位置治具700の頂部700aに対応する。
図17Aと
図17Bとの比較から分かるとおり、返り墨位置治具710は、平面部を有さず頂部710aのみを有し、稜線710cおよび稜線710dの交点が返り墨位置600の位置となるように配置される。
【0069】
また、変形例2にかかる返り墨位置治具720は、
図17Cに示すように、上方から見た場合に、稜線720c、720dを含む頂部720aを有する。頂部720aは、返り墨位置治具700の頂部700aに対応する。
図17Aと
図17Cとの比較から分かるとおり、返り墨位置治具720は、平面部を有さず頂部720aのみを有し、稜線720cおよび稜線720dの交点が返り墨位置600の位置となるように配置される。
【0070】
これら変形例1および2のいずれの返り墨位置治具710、720でも、治具上の面までの距離を距離センサ104で計測することで、返り墨位置600を推定することが可能となる。
【0071】
<実施例による効果>
本実施例によれば、昇降路内のエレベータの据付に必要な基準芯位置を、昇降路内壁の形状や寸法計測の自動計測結果に基づく各部寸法値の仕様値との比較から自動決定することで、熟練度を必要とせず、安全、容易、かつ短時間で、エレベータ昇降路の昇降路基準芯位置の演算を実現できる。よって、技能やノウハウを有する熟練技能者でないと困難であった基準芯位置設計および顧客折衝作業の効率化を図ることができる。
【0072】
また、昇降路内壁の形状や寸法計測の作業を自動化することで、作業技能者は、別の作業を進めることができ,エレベータ据付作業全般の作業効率を高めることが可能となる。さらに、昇降路内壁の形状や寸法計測の作業は、従来は高所作業も含まれており危険を伴う作業であったが、本実施例によれば多くの処理が自動化されるため、作業技能者を危険作業から解放することが可能となる。
【0073】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加や、削除、置換、統合、もしくは分散をすることが可能である。また実施例で示した各処理は、処理効率あるいは実装効率に基づいて適宜分散または統合してもよい。
【符号の説明】
【0074】
100:基準芯位置演算装置、101:計測部、102:装置筐体、103:基板、104:距離センサ、104L:レーザー光、106:吊りフック、106a:リング部、108、109:レーザー発振器、108a、109a:レーザー光、110:高さセンサ、111:電源部、112:演算部、113:制御部、115:ロープ、140:距離センサ、150:巻上機、150a:巻上駆動部、150b:巻上ドラム、150c:ロープガイド、150e:エンコーダ、151:駆動用電源、160:端末装置、208:PSD、250:計測点、250L:一次直線、255:計測点、255L1、255L2:近似直線、260:交点、300:プレート、500:昇降路、500L:昇降路底面、500u:昇降路頂部、505:昇降路壁、510:フロア面、510a:返り墨、510d:出入口開口部、520d:出入口開口部、530d:出入口開口部、540d:出入口開口部、600:返り墨位置、610:X軸、620:Y軸、700:返り墨位置治具、700a:頂部、700b:平面部、700c:稜線、700d:稜線、710:返り墨位置治具、710、720:返り墨位置治具、710a:頂部、710c:稜線、710c、710d:稜線、710d:稜線、720:返り墨位置治具、720a:頂部、720c:稜線、720c、720d:稜線、720d:稜線、1000:モニタ画面、1010:表示領域、1010a:表示領域、1010b:表示領域、1010c:基準芯位置変更内容表示、1010d:変更後基準芯位置表示