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▶ インフィネオン テクノロジーズ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】SiCベースの超接合半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220726BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220726BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220726BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 658A
H01L29/06 301D
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019190772
(22)【出願日】2019-10-18
(62)【分割の表示】P 2016020504の分割
【原出願日】2016-02-05
(65)【公開番号】P2020038975
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2019-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】10 2015 202 121.1
(32)【優先日】2015-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ, ハンス-ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ヤンチャー, ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ラップ, ローラント
(72)【発明者】
【氏名】シュスターレダー, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー, ハンス
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-119611(JP,A)
【文献】特開2004-363515(JP,A)
【文献】特開昭57-27027(JP,A)
【文献】特開2001-15448(JP,A)
【文献】特開2003-273355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/78,06,12
H01L21/336,265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1)の製造方法であって、
シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料を含む半導体ボディ(11)を設ける工程と、
第1の導電型のドーパントでドープされた少なくとも1つの第1の半導体領域(111-1、111-2)を前記半導体ボディ(11)内に生成する工程であって、第1の注入イオンの第1の注入(31)を適用する工程を含む、工程と、
前記少なくとも1つの第1の半導体領域(111-1、111-2)に隣接するとともに前記第1の導電型と相補的な第2の導電型のドーパントでドープされた少なくとも1つの第2の半導体領域(112)を前記半導体ボディ(11)内に生成する工程であって、第2の注入イオンの第2の注入(32)を適用する工程を含み、前記少なくとも1つの第1の半導体領域及び前記少なくとも1つの第2の半導体領域が、超接合構造を有するドリフト領域を形成する、工程と、
前記少なくとも1つの第2の半導体領域より高ドープである半導体領域を含む基材領域を形成する工程と、を含み、
前記ドリフト領域は、前記基材領域に接触し、
前記少なくとも1つの第1の半導体領域は、前記ドリフト領域内で終端しており、前記少なくとも1つの第1の半導体領域がない前記ドリフト領域の区域によって前記基材領域から離間されている方法であって、前記方法は、
注入装置と前記半導体ボディ(11)との間にエネルギー拡散器アセンブリ(33)を配置する工程であって、前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)は、注入イオンを受け取るように構成され、かつ出力注入イオンが、前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)に入る際のそのエネルギーと比較して低下されたエネルギーを示すように、受け取った注入イオンを出力するように構成され、前記エネルギーの低下量は前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)に入る点および/または角度に依存する、工程と、
前記第1の注入イオンと前記第2の注入イオンとの少なくとも1つが前記半導体ボディ(11)に入る前に前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)を横断するように前記第1の注入(31)および前記第2の注入(32)を適用する工程と、
第1のマスク(35-1)により前記半導体ボディ(11)の表面(11-1)をマスクする工程であって、前記第1の注入(31)は前記表面(11-1)が前記第1のマスク(35-1)でマスクされている状態で適用される工程と、
第2のマスク(35-2)により前記半導体ボディ(11)の前記表面(11-1)をマスクする工程であって、前記第2の注入(32)は前記表面(11-1)が前記第2のマスク(35-2)でマスクされた状態で適用され、前記第2のマスク(35-2)は前記第1のマスク(35-1)の構造と相補的な構造を示し、かつ、前記第1のマスク(35-1)によってマスクされていない領域が、前記第2のマスク(35-2)によってマスクされている領域よりも狭い、マスクする工程と、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記第2の注入(32)を適用する前に前記第1のマスク(35-1)を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)を生成するために前記第2のマスク(35-2)上にエネルギー拡散器材料を配置する工程であって、前記エネルギー拡散器材料は、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、炭素、タングステン、モリブデン、チタン、鉛、銅のうちの少なくとも1つを含む、工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)を生成するために前記第1のマスク(35-1)上にエネルギー拡散器材料を配置する工程であって、前記エネルギー拡散器材料は、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、炭素、タングステン、モリブデン、チタン、鉛、銅のうちの少なくとも1つを含む、工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー拡散器アセンブリ(33)を生成するために前記半導体ボディ(11)上にエネルギー拡散器材料を配置する工程であって、前記エネルギー拡散器材料は、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、炭素、タングステン、モリブデン、チタン、鉛、銅のうちの少なくとも1つを含む、工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記半導体ボディ(11)の前記半導体ボディ材料は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコンのドーパント拡散係数より少なくとも2桁低いドーパント拡散係数を示す半導体材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記半導体ボディ(11)は当初ノンドープまたは弱ドープである領域(11-2)を含み、前記少なくとも1つの第1の半導体領域(111-1、111-2)と前記少なくとも1つの第2の半導体領域(112)とは前記当初ノンドープまたは弱ドープである領域(11-2)内に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記当初ノンドープまたは弱ドープである領域(11-2)は、炭化ケイ素層、窒化ガリウム層、窒化アルミニウム層、シリコンのドーパント拡散係数より少なくとも2桁低いドーパント拡散係数を示す半導体材料の層のうちの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の注入(31)および前記第2の注入(32)は、前記少なくとも1つの第1の半導体領域(111-1、111-2)と前記少なくとも1つの第2の半導体領域(112)とにより前記半導体ボディ(11)内に超接合構造を確立するために適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の半導体領域のドーピング濃度が、前記少なくとも1つの第2の半導体領域のドーピング濃度に同等である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基材領域と前記ドリフト領域との間に更にドープされた層を形成する工程、をさらに含み、
前記更にドープされた層は、前記第2の導電型のドーパントでドープされている、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、半導体装置の実施形態と半導体装置の製造方法の実施形態、例えばダイオード、MOSFETなどの実施形態とこのような製品の製造方法の実施形態とに言及する。特に、本明細書は、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料に基づく半導体装置の実施形態、例えば炭化珪素に基づく半導体装置の実施形態と、このような半導体装置の製造方法の実施形態とに言及する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを変換することおよび電気モータまたは電気機械を駆動することなど自動車、民生および産業用途における現代の装置の多くの機能は半導体装置に依存する。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、ダイオードおよび同様な装置は、限定しないが電源および電力変換器内のスイッチを含む様々な用途に使用されてきた。
【0003】
このような半導体装置のスイッチング振る舞いおよび/またはこのような半導体装置を使用する電力変換器の効率を改善するために、所謂超接合構造が導入された。時折、このような超接合構造を有する半導体装置は「補償装置」、「CoolMOS(商標)装置」、「SJ装置」または「RESURF装置」とも呼ばれる。超接合構造は電荷補償構造である。例えば、超接合構造により、高電圧MOSFET内のエピタキシャル層の抵抗は大幅に(例えば、5倍を越えて)低減され得る。
【0004】
半導体装置内に超接合構造(「補償構造」とも呼ばれる)を十分な精度で、特に電荷補償の程度を十分な精度で生成することは通常、挑戦的な課題である。正確な超接合構造を生成することは、半導体ボディ材料の拡散係数が比較的小さければ、さらに挑戦的な課題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によると、半導体装置が提供される。本半導体装置は、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料を含む半導体ボディを含む。本半導体装置はさらに、第1の導電型のドーパントでドープされるとともに延伸方向に沿って半導体ボディ中に延伸する円柱形状を示す少なくとも1つの第1の半導体領域を含み、少なくとも1つの第1の半導体領域のそれぞれの幅は前記延伸方向に沿って連続的に増加する。本半導体装置はまた、半導体ボディ内に含まれる少なくとも1つの第2の半導体領域であって、少なくとも1つの第1の半導体領域に隣接するように配置されるとともに第1の導電型と相補的な第2の導電型のドーパントでドープされる少なくとも1つの第2の半導体領域を含む。
【0006】
別の実施形態によると、別の半導体装置が提供される。この別の半導体装置は、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料を含む半導体ボディと、半導体ボディ内に含まれる少なくとも1つの第1の半導体領域であって、注入された第1の導電型のドーパントでドープされるとともに延伸方向に沿って半導体ボディ中に延伸する円柱形状を示す少なくとも1つの第1の半導体領域と、半導体ボディ内に含まれる少なくとも1つの第2の半導体領域であって、少なくとも1つの第1の半導体領域に隣接して配置されるとともに第1の導電型と相補的な注入された第2の導電型のドーパントでドープされる少なくとも1つの第2の半導体領域とを含み、延伸方向に垂直な方向の第1の半導体領域と第2の半導体領域との遷移部が、半導体装置の垂直断面内に、延伸方向に沿った第1の半導体領域の総延長の少なくとも50%に沿って直線を形成する。
【0007】
さらに別の実施形態によると、半導体装置の製造方法が提供される。本方法は、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料を含む半導体ボディを設ける工程と、第1の導電型のドーパントでドープされる少なくとも1つの第1の半導体領域を半導体ボディ内に生成する工程であって、第1の注入イオンの第1の注入を適用する工程を含む、工程と、少なくとも1つの第1の半導体領域に隣接するとともに第1の導電型と相補的な第2の導電型のドーパントでドープされる少なくとも1つの第2の半導体領域を半導体ボディ内に生成する工程であって、第2の注入イオンの第2の注入を適用する工程を含む、工程とを含む。
【0008】
当業者は、以下の詳細な説明を読み添付図面を見るとさらなる特徴と利点を認識する。
【0009】
添付図面における構成要素は、必ずしも原寸に比例していなく、むしろ本発明の原理を説明することに重点が置かれる。さらに、添付図面では、同様な参照符号は対応部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の垂直断面の一部を概略的に示す。
図2】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の第1の半導体領域の垂直断面の一部を概略的に示す。
図3A】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図3B】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図3C】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図4A】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図4B】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図4C】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図5A】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法の注入工程を概略的に示す。
図5B】1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法の注入工程を概略的に示す。
図6】1つまたは複数の実施形態によるエネルギー拡散器アセンブリの垂直断面の一部を概略的に示す。
図7A】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図7B】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図7C】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図7D】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図8A】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図8B】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図8C】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
図8D】半導体装置の製造方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明では、実施形態の一部をなし、本発明が実施され得る特定の実施態様を例示として示す添付図面を参照する。
【0012】
この点に関し、「上」、「底」、「下」、「前」、「背後」、「後」、「前縁」、「後縁」などの方向用語は、説明される図面の配向を参照して使用され得る。実施形態の構成要素は多くの異なる配向で配置され得るので、方向用語は例示目的で使用され、決して限定しない。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を利用し得ることと構造的または論理的変更をなし得ることとを理解すべきである。したがって、以下の詳細説明は限定的な意味で取られてはならなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により規定される。
【0013】
以下では、様々な実施形態を詳細に参照し、その1つまたは複数の例を添付図面に例示する。各例は説明のために提供されており、本発明を制限するようには意図されていない。例えば、一実施形態の一部として例示または説明される特徴は、さらに別の実施形態をもたらすために他の実施形態上でまたはそれに関連して使用され得る。本発明はこのような修正および変形を含むように意図されている。これらの例は特定の言語を使用して説明されるが、特定の言語は添付の特許請求範囲を制限するものと解釈されてはならない。図面はスケーリングされていなく、例示目的のためだけである。明確のために、同じ要素または製造工程は、別途記載のない限り、様々な図面では同じ参照符号により示された。
【0014】
本明細書で使用される用語「水平」は、半導体基板または半導体領域の水平面にほぼ平行な配向を記述するように意図されている。これは、例えばウェハまたはダイの表面(例えば、半導体ボディの表面)であり得る。
【0015】
本明細書で使用される用語「垂直」は、水平面にほぼ垂直(すなわち、半導体基板または半導体領域の表面の法線方向に平行)に配置された配向を記述するように意図されている。
【0016】
本明細書では、pドープは「第1の導電型」と呼ばれ、nドープは「第2の導電型」と呼ばれる。代替的に、第1の導電型がnドープであり第2の導電型がpドープとなるように反対のドーピング関係が採用され得る。例えば、第1の導電型のドーパントはアクセプタであり得、第2の導電型のドーパントはドナーであり得る。代替的に、第1の導電型のドーパントはドナーであり得、第2の導電型のドーパントはアクセプタであり得る。
【0017】
さらに、本明細書内では、用語「ドーピング濃度」は、特定の半導体領域の積分ドーピング濃度、または平均ドーピング濃度、またはシート電荷キャリア濃度をそれぞれ参照し得る。したがって、例えば、「特定の半導体領域が別の半導体領域のドーピング濃度と比較して高いまたは低い一定のドーピング濃度を示す」という記述は、前記半導体領域のそれぞれの平均ドーピング濃度が互いに異なるということを示し得る。
【0018】
本明細書に記載される特定の実施形態は、限定しないがモノリシック集積化電力半導体装置、例えば電力変換器内で使用され得るモノリシックに集積化電力半導体装置に関する。
【0019】
本明細書で使用される用語「電力半導体装置」は、高電圧遮断およびスイッチングおよび/または高電流通過およびスイッチング能力を有するシングルチップ上の半導体装置を記述するように意図されている。換言すれば、前記電力半導体装置は、高電流、典型的にはアンペア範囲の電流、例えば最大数十アンペア、および/または高電圧、典型的には50Vを越える電圧、より典型的には200V以上の電圧を対象としたものである。
【0020】
本明細書の文脈では、用語「オーム接触」、「電気的接触」、「オーム接続」と「電気的接続」は、半導体装置の2つの領域、区画、部分間に、または1つまたは複数の装置の異なる端子間に、または端子またはメタライゼーションまたは電極と半導体装置の一部分との間に低オーム電気接続または低オーム電流経路が存在するということを記述するように意図されている。さらに、本明細書の文脈では、用語「接触」は、各半導体装置の2つの素子間に直接的物理的接続があるということを記述するように意図されており、例えば、互いに接触した2つの素子間の遷移部は別の中間素子などを含むことはできない。
【0021】
図7A図7Dは、半導体装置71を製造する手法を概略的に示す。半導体装置71は半導体基材領域711と半導体基材領域711の上のドープ半導体領域712とを含み得る。例えば、半導体基材領域711とドープ半導体領域712の両方はシリコンに基づく。さらに、ドープ半導体領域712はnドープ領域であり得る。このドープ半導体領域712は、それぞれ気泡の形をした第1の領域72と第2の領域73とを含むエピタキシャルnドープ層であり得る。例えば、第2の気泡73はpドープされ第1の気泡72はnドープされる。気泡72、73はイオン注入を行うことにより生成され得る。図7Bに示す次の工程では、別のノンドープまたは弱ドープエピタキシャル層713がドープ半導体領域712の上に生成され得る。これらのノンドープまたは弱ドープエピタキシャル層713のそれぞれの中には、別の第1の気泡73および第2の気泡72が、それぞれの注入工程74を行うことによりそして最上部層713の表面上にマスク714を配置することにより生成され得る。これらの工程は、図7Cに概略的に示すような構造が実現されるまで繰り返され得る。図7Dに概略的に示された最終工程では、互いの上に配置された複数の気泡は、広い熱拡散工程を行うことによりそれぞれの第1の円柱状半導体領域75とそれぞれの第2の円柱状半導体領域76とにマージされ得る。
【0022】
図7A図7Dに示す方法により、超接合構造が半導体装置71内に確立される。半導体装置71を製造するこの手法は複数のエピタキシャル層712、713を生成する工程と複数の注入工程74を行う工程とを含むので、この手法は「多重エピタクシ・多重注入処理」とも呼ばれる。垂直方向に互いに離間された複数の気泡をマージするために行われる熱拡散工程により(図7C参照)、注入領域(すなわち気泡)の横方向延伸部も観測され得る。このような横方向延伸部は、それぞれの円柱状半導体領域75、76とエピタキシャル層712、713間の遷移部により画定される比較的高いうねりの接合領域を生じ得る。しかし、このような高いうねりは半導体装置71の性能を悪化し得る。例えば、このような高いうねりは、半導体装置71のかなり高いオン抵抗を生じ得る。
【0023】
超接合構造を有する半導体装置を製造する別の手法が図8A図8Dに概略的に示される。この手法は「トレンチ・エピタクシ・充填処理」と呼ばれることがある。例えば、超接合構造は、半導体基材領域811とドープ半導体領域812とを有する半導体装置81内に生成される。ドープ半導体領域812はnドープ半導体領域であり得る。第1の工程では、マスク83がドープ半導体領域812の上に配置され得、いくつかの空のトレンチ82がドープ半導体領域812内に形成され得る(図8B参照)。後続の工程では、トレンチ82は、pドープ半導体材料であり得るトレンチ充填材84で充填され得る。図8Dに概略的に示す次の工程では、マスク83とトレンチ充填材84の突出部分とを除去するために化学機械研磨(CMP)が行われ得る。トレンチ・エピタクシ・充填処理内では熱拡散工程を行うことが回避され得るとしても、前記トレンチ82を充填するために選択エピタクシを適用することは比較的高い散乱を含み得る。したがって、半導体装置81は、半導体装置81の性能を低下し得る比較的高い補償散乱を示すことがある。例えば、前記散乱は、半導体装置81の比較的高いオン抵抗を生じることがある。
【0024】
図1は、1つまたは複数の実施形態による半導体装置1の垂直断面の一部を概略的に示す。半導体装置1は、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料を含む半導体ボディ11を含む。
【0025】
例えば、半導体ボディ材料は、炭化珪素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、またはシリコンのドーパント拡散係数より少なくとも2桁低いドーパント拡散係数を示す別の半導体材料のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
一実施形態では、前記ドーパント拡散係数は適用可能処理温度において判断され得る。例えば、炭化珪素は1700℃~1800℃の範囲のポスト注入アニール温度を示し得、シリコンの場合、このようなポスト注入アニール温度は1700℃未満、例えば約1100℃であり得る。
【0027】
さらに、半導体ボディ11は、炭化珪素半導体ボディ、窒化ガリウム半導体ボディ、窒化アルミニウム半導体ボディなどであり得る。
【0028】
ドーパント拡散係数はアクセプタ拡散係数またはドナー拡散係数のいずれかであり得る。
【0029】
例えば、半導体ボディ11の半導体ボディ材料は、例えば適用可能処理温度(半導体ボディ材料として炭化珪素の場合例えば1800℃)においてそれぞれ判断される10-13cm/s未満、または10-14cm/s未満、またはさらには10-15cm/s未満のドナー拡散係数を示す。
【0030】
半導体ボディ材料はさらに、例えば適用可能処理温度(半導体ボディ材料として炭化珪素の場合例えば1800℃)においてそれぞれ判断される10-13cm/s未満、または10-14cm/s未満、またはさらには10-15cm/s未満のアクセプタ拡散係数を示し得る。
【0031】
半導体装置1はさらに、半導体ボディ11内に含まれる第1の半導体領域111-1、111-2を含む。半導体装置1が2つの第1の半導体領域111-1、111-2を含むということを図1が概略的に示しても、「半導体装置1はまた、このような第1の半導体領域のうちの1つだけ例えば第1の半導体領域111-1または第1の半導体領域111-2だけ、または3以上の第1の半導体領域をそれぞれ含み得る」ということを理解すべきである。
【0032】
第1の半導体領域111-1、111-2は第1の導電型のドーパントでドープされ得る。例えば、第1の半導体領域111-1、111-2はアクセプタでドープされる。しかし、第1の半導体領域111-1、111-2のすべてが同じドーパントでドープされるということは必要要件ではない。例えば、第1の半導体領域111-1が前記第1の導電型のドーパントでドープされ、第2の半導体領域111-2は第1の導電型と相補的な第2の導電型のドーパントでドープされるということが可能である。
【0033】
例えば、第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれは延伸方向Bに沿って半導体ボディ11中に延伸する円柱形状を示し得る。第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれの幅Dは、図2に関して以下にさらに詳細に説明するように前記延伸方向Bに沿って連続的に増加する。
【0034】
例えば、前記延伸方向Bに沿って連続的に増加する前記幅Dは第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれの前記円柱形状を構成し得る。
【0035】
「第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれはまた、前記延伸方向Bにほぼ垂直な横方向に、前記幅Dにほぼ垂直な横方向に、および半導体ボディ11の表面11-1にほぼ平行な横方向に、例えば前記延伸方向Bの総延長と比較してさらに遠くまで延伸し得る」ということを理解すべきである。したがって、第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれはさらに、ストライプ形状を示し得る。さらに、第1の半導体領域111-1、111-2のこのような形状は本明細書の意味では円柱形状とみなす。
【0036】
例えば、第1の半導体領域111-1、111-2の少なくとも1つは、例えば図1図4Cのそれぞれに概略的に示されるように、第1の垂直断面において、前記円柱形状を示す。さらに、前記第1の半導体領域111-1、111-2の少なくとも1つは同時に、前記第1の垂直断面に垂直な第2の(不図示の)垂直断面において、前記ストライプ形状を示し得る。
【0037】
半導体装置1はさらに、半導体ボディ11内に含まれるとともに第1の半導体領域111-1、111-2に隣接して配置される少なくとも1つの第2の半導体領域112を含む。第2の半導体領域112は第1の半導体領域111-1、111-2と接触し得る。第2の半導体領域112は、第1の導電型と相補的な第2の導電型のドーパントでドープされる。例えば、第2の半導体領域112はドナーでドープされる。
【0038】
例えば、一方の側の第1の半導体領域111-1、111-2と他方の側の第2の半導体領域112の両方は、必要な電荷平衡を実現するために同等なドーピング濃度を有し得る。
【0039】
一実施形態では、第2の半導体領域112のドーピング濃度は、低伝導損を可能にするように半導体装置1が十分に低いオン抵抗を示すように選択される。さらに、第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれのドーピング濃度は、半導体装置1の低スイッチング損失を可能にするように前記必要な電荷平衡(例えば、必要な補償度)を実現するために、第2の半導体領域112のドーピング濃度に基づいて選択され得る。例えば、第1の半導体領域111-1、111-2のそれぞれのドーピング濃度は第2の半導体領域112のドーピング濃度とほぼ同一である。
【0040】
一実施形態によると、前記第1の半導体領域111-1、111-2の少なくとも1つの前記延伸方向Bに沿ったドーピング濃度は、第1の半導体領域111-1、111-2の前記少なくとも1つの延伸方向の総延長の少なくとも10%(例えば、少なくとも0.3μm、少なくとも1μm、または少なくとも2μm、または少なくとも3μm、またはさらには3μm超)に沿った固定値から50%未満、または30%未満、または20%未満、または10%未満、または5%未満だけ逸脱する。さらに、前記延伸方向Bの第1の半導体領域111-1、111-2の前記少なくとも1つの所与の深さにおいて、ドーピング濃度は、前記所与の深さにおける幅Dの少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%に沿ってほぼ一定である。
【0041】
例えば、前記固定値は、第1の半導体領域111-1、111-2の前記少なくとも1つの領域中のドーピング濃度の最大値または平均値、または第2の半導体領域112中のドーピング濃度の最大値または平均値であり得る。
【0042】
例えば、第1の半導体領域111-1、111-2は、第1の注入イオンの少なくとも1つの第1の注入により生成された。また、第2の半導体領域112は、第2の注入イオンの少なくとも1つの第2の注入により生成された場合がある。
【0043】
換言すれば、第1の半導体領域111-1、111-2は第1の導電型のドーパントの注入でドープされる半導体ボディ材料を含む半導体領域であり得、半導体ボディ11内に含まれる第2の半導体領域112は第1の導電型と相補的な第2の導電型のドーパントの注入でドープされる半導体ボディ材料を含む半導体領域であり得る。
【0044】
例えば、第1の半導体領域111-1、111-2と第2の半導体領域112は、超接合構造を有するドリフト容積を形成する。例えば、半導体装置1のこのようなドリフト容積は炭化珪素ベースの電力MOSFETまたは別の半導体装置の一部であり得る。
【0045】
延伸方向Bに垂直な方向の第1の半導体領域111-1と前記第2の半導体領域112との遷移部が接合領域111-13を形成する。したがって、延伸方向Bに垂直な方向の第1の半導体領域111-2と第2の半導体領域112との遷移部が別の接合領域111-23を形成する。接合領域111-13、111-23の両方は比較的低いうねりを示し得る。
【0046】
例えば、第1の半導体領域111-1の前記幅Dは対向接合領域111-13間の距離により画定され得、他の第1の半導体領域111-2の幅Dは対向接合領域111-23間の距離により画定され得る。
【0047】
図1図2に示す垂直断面では、一方の側の第1の半導体領域111-1、111-2と他方の側の第2の半導体領域112間の前記接合領域111-13、111-23は直線として現れる。例えば、前記直線は、延伸方向Bに沿った第1の半導体領域111-1、111-2それぞれの総延長の少なくとも50%の直線である。上記直線は、前記総延長の50%を越える直線、例えば前記総延長の60%を越える、75%を越える、95%を越える、またはさらには98%を越える直線であり得る。したがって、前記接合領域111-13、111-23は、前記総延長の50%を越える、例えば前記総延長の60%を越える、75%を越える、95%を越える、またはさらには98%を越える低いうねりを示し得る。低いうねりの態様については、図2に関してさらに詳細に説明する。
【0048】
図2は、図1に示す半導体装置1の半導体ボディ11内に含まれる第1の半導体領域111-1の垂直断面の一部を概略的に示す。説明を簡単にするために、半導体領域111-1は図1のイラストと比較して90°回転されて示される。第1の半導体領域111-1は近位端111-11と遠位端111-12とを含む。近位端111-11は表面11-1に最も近い端であり、遠位端111-12は表面11-1から最も遠い端である。したがって、別の第1の半導体領域111-2もまた、近位端111-21と遠位端111-22とを含む。
【0049】
第1の半導体領域111-1の近位端111-11は近位幅d1を示し、遠位端は遠位幅d2を示す。第1の半導体領域111-1の前記延伸方向Bに沿った前記近位端111-11と前記遠位端111-12間の他の全ての位置における幅Dは近位幅d1より大きく遠位幅d2より小さい。
【0050】
例えば、前記延伸方向Bに沿った第1の半導体領域111-1の幅Dの変化率は正である。さらに、一実施形態によると、前記変化率はほぼ一定である。したがって、垂直断面に関して低いうねりまたは前記直線をそれぞれ示す前記接合領域111-13が形成され得る。
【0051】
したがって、本明細書の範囲内では、語句「直線」は、前記幅Dの変化率(すなわち延伸方向Bに沿った前記幅Dの増加)が前記延伸方向Bに沿ってほぼ一定であるということを表し得る。対照的に、上記熱拡散工程を含む多重エピタクシ・多重注入処理にしたがって生成された円柱状半導体領域75、76の幅の変化率は(図7A図7Dに概略的に示される)は変化し、延伸方向に沿って正および負であり得る。したがって、それぞれの円柱状半導体領域75、76とエピタキシャル層712、713との遷移部により画定される接合領域のうねりは比較的高く、垂直断面では、いかなる直線も前記遷移部により形成されなく、比較的高い波紋を示す波状線が形成される。
【0052】
例えば、第1の半導体領域111-1のそれぞれの幅の変化率は、前記延伸方向Bと前記接合領域111-13との仮想交差点における交角と同一である延伸角βにより与えられる。例えば、この延伸角βは、0.1°~10°の範囲内、例えば約3°である。さらに、延伸角βは第1の半導体領域111-1の全延伸部に沿ってほぼ一定であり得る。
【0053】
図1図2に示すように、延伸方向Bは、第1の半導体領域111-1、111-2が半導体ボディ11内に垂直方向に延伸するように半導体ボディ11の表面11-1にほぼ垂直である。
【0054】
図3A図3C図4A図4Cは、1つまたは複数の実施形態による半導体装置の製造方法、例えば図1に概略的に示された半導体装置1の製造方法を概略的に示す。
【0055】
図3A図4Aに示す第1の工程では、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料を含む半導体ボディ11が設けられる。半導体ボディ11の半導体ボディ材料のこのようなドーパント拡散係数の例示的値は既に上に示した。例えば、半導体ボディ11は、炭化珪素半導体ボディ、窒化ガリウム半導体ボディ、窒化アルミニウム半導体ボディなどであり得る。
【0056】
設けられる半導体ボディ11は、高ドープ半導体領域であり得る基材領域11-3を含み得る。前記注入31、32を行う前に、半導体ボディ11は当初ノンドープまたは弱ドープである領域11-2を含み得る。例えば、当初ノンドープまたは弱ドープである領域11-2は、炭化珪素層、窒化ガリウム層、窒化アルミニウム層、または例えば適用可能処理温度で比較してシリコンのドーパント拡散係数より少なくとも2桁低いドーパント拡散係数を示す別の半導体材料の層のうちの1つである。例えば、第1の注入31は、そうでなければノンドープまたは弱ドープである半導体領域11-2内に第1の半導体領域111-1、111-2を生成するように行われる。
【0057】
図3B図4Bに示す次の工程では、第1の半導体領域111-1、111-2が半導体ボディ11内に生成される。図1に関し既に説明したように、ただ1つの第1の半導体領域(例えば、第1の半導体領域111-1)を生成することで十分な場合がある。代替的に前記生成工程では、3以上の第1の半導体領域111-1、111-2が前記延伸方向Bに垂直な横方向延伸部に沿って分散されて生成され得る。
【0058】
第1の半導体領域111-1、111-2を生成する工程は、第1の注入イオンの第1の注入31を適用する工程を含み得る。例えば、第1の注入イオンは、第1の半導体領域111-1、111-2がpドープされるようにアクセプタを含み得る。
【0059】
図3C図4Cに概略的に示す後続の工程では、第2の半導体領域112が半導体ボディ11内にそして第1の半導体領域111-1、111-2に隣接して生成される。第2の半導体領域112の生成工程は第2の注入イオンの第2の注入32を適用する工程を含み得る。例えば、第2の注入イオンは、第2の半導体領域112がnドープされるようにドナーを含み得る。
【0060】
換言すれば、第1の半導体領域111-1、111-2と第2の半導体領域112の両方は注入により生成され得る。ドナーとアクセプタの両方は注入により半導体ボディ11中に導入され得る。
【0061】
生成された第1の半導体領域111-1、111-2と生成された第2の半導体領域112は超接合構造を示すドリフト領域11-4を形成し得る。第2の半導体領域112と第1の半導体領域111-1、111-2とにより形成されるドリフト容積11-4は基材領域11-3と接触し得る。この基材領域11-3は比較的高いドープの半導体領域であり得る。基材領域11-3は第2の半導体領域112のドーピング濃度より高いドーピング濃度を示し得る。
【0062】
例えば、前記第1の注入31は第1の半導体領域111-1が延伸方向Bに沿って半導体ボディ11中に延伸する円柱形状を示すように行われ、第1の半導体領域111-1の幅Dは図1図2にも概略的に示したように前記延伸方向(B)に沿って連続的に増加する。この目的を達成するために、半導体ボディ11の表面11-1は第1のマスク35-1でマスクされ得、前記第1の注入31は、表面11-1が第1のマスク35-1でマスクされた状態で適用され得る。第1のマスク35-1は第1の半導体領域111-1、111-2の延伸プロファイルを画定し得る。
【0063】
例えば、第1のマスク35-1は、第1の注入イオンが半導体ボディ11へ入れるようにする第1の開口35-12を画定するように互いに離間された第1のマスク要素35-11を含む。
【0064】
第1の注入31が行われた後、第1のマスク35-1は図3Bに概略的に示すように第2の注入32を行う前に除去され得る。例えば、図4Bに示すように、第2の注入32を行う前に、半導体ボディ11の表面11-1は第2のマスク35-2でマスクされ得、第2の注入32は、表面11-1が第2のマスク35-2でマスクされた状態で適用され得る。例えば、第2のマスク35-2は第1のマスク35-1の構造とほぼ相補的な構造を示す。第2のマスク要素35-21は、第2の注入イオンが半導体ボディ11へ入れるようにする第2の開口35-22を画定するように、第1の開口35-12の領域内にほぼ配置され得る。
【0065】
図4A図4Cに示す方法は、図3A図3Cに示す方法に似ており、図3A図3Cに関して上に述べたことは図4A図4Cへ同様に適用される。しかし、図4A図4Cに示す方法によると、設けられた半導体ボディ11は基材領域11-3に隣接する別のドープ層11-5を含む。例えば、このドープ層11-5は、ドナーであり得る第2の導電型のドーパントでドープされる。さらに、前記第2の注入32を行う前に、半導体ボディ11の表面11-1は前記第2のマスク35-2でマスクされる。図3A図3Cに概略的に示す方法と比較して、マスク35-2が半導体ボディ11の表面11-1上にある状態で第2の注入32を行った後第2の半導体領域112と第1の半導体領域111-1、111-2間には図4Cに概略的に示すようにいくつかのノンドープまたは弱ドープ領域11-2が残り得る。
【0066】
半導体装置1の製造方法はさらに、注入装置(図示せず)と半導体ボディ11間にエネルギー拡散器アセンブリ33を配置する工程を含み得る。このようなエネルギー拡散器アセンブリ33は、図3A図4A図3B図4B、および図5Aに、さらに詳細には図6に概略的に示される。
【0067】
エネルギー拡散器アセンブリ33は、注入イオンを受け取るように構成され、かつ出力注入イオンが、エネルギー拡散器アセンブリ33に入る際のそのエネルギーと比較して低下されたエネルギーを示すように、受け取った注入イオンを出力するように構成され得る。エネルギー拡散器アセンブリは、図5Aに関して以下にさらに詳細に説明するようにそれぞれのエネルギーの低下量がエネルギー拡散器アセンブリ33内に入る点および/または角度に依存するような構造を示し得る。
【0068】
第1の注入31と第2の注入32を適用する工程は、第1の注入イオンと第2の注入イオンとの少なくとも1つが半導体ボディ11へ入る前にエネルギー拡散器アセンブリ33を横断するように行われ得る。例えば、エネルギー拡散器アセンブリ33は、第1の注入31と第2の注入32の両方が行われる間注入装置(図示せず)と半導体ボディ11との間に配置される。したがって、この実施形態では、第1の注入イオンと第2の注入イオンの両方は半導体ボディ11に入る前に同じエネルギー拡散器アセンブリ33を横断する。
【0069】
エネルギー拡散器アセンブリ33は、半導体ボディ11の表面11-1上に、または前記第1のマスク35-1上に、または前記第2のマスク35-2上にそれぞれ配置され得る。代替的にエネルギー拡散器アセンブリ33は、半導体ボディ11から例えば1mm~10mmの範囲(例えば、5mm)など何mmの距離だけ離れて配置され得る。
【0070】
エネルギー拡散器アセンブリ33はエネルギー拡散器材料を含み得、エネルギー拡散器材料は、シリコン、二酸化ケイ素、アルミニウム、炭化珪素、グラファイト、炭素、タングステン、モリブデン、鉛、チタン、銅のうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、エネルギー拡散器アセンブリ33はシリコンなどの単結晶材料で作られた拡散器素子332-1~332-4を含み得る。例えば、拡散器素子332-1~332-4の寸法は、ほぼ均一のドーピング濃度プロファイルのイオンビームの十分に大きな横方向広がりが保証され得るように小さく保たれる。
【0071】
例えば、第1の注入および/または第2の注入は500KeV~12MeVの範囲の注入エネルギーで行われる。
【0072】
図5A図5Bは、図3A図4Cに概略的に示された方法で行われ得る注入工程を概略的に示す。上に詳述されたように、エネルギー拡散器アセンブリ33は前記第1の注入31および/または前記第2の注入32を行うために注入装置と半導体ボディ11との間に配置され得る。その垂直断面が図6に概略的に示されるエネルギー拡散器アセンブリ33は支持層331とその上に搭載された拡散器構造332とを含み得る。例えば、拡散器構造332は、距離Aだけ互いに一様に離間され得る複数の拡散器素子332-1~332-4を含む。例えば、拡散器素子332-1~332-4はそれぞれ、傾斜角αを有する錐体形を示す。錐体形の代わりに、拡散器素子332-1~332-4はまた、三角柱などの角柱の形を示し得る。
【0073】
図5Aに関し、2つの異なるイオン36-1、36-2の2つの異なる経路を考察する。第1のイオン36-1は、支持層331のレセプタ側331-1にほぼ垂直な方向でエネルギー拡散器アセンブリ33に近づく。第1のイオン36-1は入口の第1の点33-1でエネルギー拡散器アセンブリ33に入る。エネルギー拡散器アセンブリ33に入る際、第1のイオン36-1は図5Aの太い矢印により概略的に示されるエネルギーE1を示す。第1のイオン36-1は、正確に2つの隣接エネルギー拡散器素子(例えば、エネルギー拡散器素子332-1、332-2)間においてエネルギー拡散器アセンブリ33を横断する。したがって、第1のイオン36-1のエネルギーの低下は比較的小さい。エネルギー拡散器アセンブリ33を横断した後、第1のイオン36-1は低下エネルギーE1’を示す。次に、第1のイオン36-1は半導体ボディ11に入り、半導体ボディ11内の延伸深さb2に到達する。
【0074】
対照的に、第2の経路37-2に従う第2のイオン36-2は、拡散器素子332-3などの拡散器素子全体を貫通して横断するように入口の第2の点33-2でエネルギー拡散器アセンブリ33に入る。エネルギー拡散器アセンブリ33に入る前、第2のイオン36-2は図5Aの太い矢印により概略的に示されるようにエネルギーE2を示す。拡散器素子全体を貫通してエネルギー拡散器アセンブリ33を横断した後、第2のイオン36-2のエネルギーは図5Aの短い太い矢印により示されるように大幅に低下される。例えば、エネルギー拡散器アセンブリ33を横断した後、第2のイオン36-2は低下エネルギーE2’を示す。次に、第2のイオン36-2は半導体ボディ11に入り、延伸深さb1に到達するだけである。延伸深さb1は延伸深さb2と比較してかなり小さい。
【0075】
図5Aでは、2つの極限状況が示される。第1のイオン36-1のエネルギー拡散器アセンブリ33により導出されたエネルギー低下は、第1のイオン36-1が拡散器構造332の拡散器素子を実質的に横切らないので、可能な最小のエネルギー低下であり得る。対照的に、第2のイオン36-2の導出されたエネルギー低下は、第2のイオン36-2が拡散器素子を完全に横断するようにエネルギー拡散器アセンブリに入るので最大エネルギー低下であり得る。換言すれば、図1図2に概略的に示されるように、極小エネルギー低下に遭遇する第1の注入イオンは第1の半導体領域111-1の前記遠位端111-12を画定し得、最大エネルギー低下に遭遇する第1の注入イオンは第1の半導体領域111-1の前記近位端111-11を画定し得る。
【0076】
エネルギー拡散器アセンブリ33により、エネルギー拡散器アセンブリを横断する注入イオンは半導体ボディ11内の異なる延伸深さに到達し得る。これは、図5Bに概略的に示されるように、例えば第1の半導体領域111-1、111-2のほぼ一様な濃度プロファイルc1を実現することを可能にし得る。換言すれば、第1の半導体領域111-1、111-2のドーピング濃度は、エネルギー拡散器アセンブリ33が半導体ボディ11と注入装置(図示せず)の間に配置された状態で前記第1の注入31が行われれば、前記延伸方向Bに沿ってほぼ一様であり得る。
【0077】
半導体装置を製造する上記方法は、シリコンのドーパント拡散係数より小さいドーパント拡散係数を示す半導体ボディ材料内に超接合構造を生成することを可能にし得る。例えば、前記超接合構造を生成する工程は熱拡散工程を行うことを含まない。
【0078】
しかし、前記第1の注入と前記第2の注入を行うことにより半導体装置を製造する上記方法は積層的に(例えば、図7A図7Cに関し例示的に説明したやり方で)進められ得るということに注意すべきである。例えば、積層的に進めることにより、比較的深い第1の半導体領域が生成され得る。すべての層に関し、第1の注入イオンと第2の注入イオンの両方は1つまたは複数の別個の注入により注入され得る。このような別個の注入工程のそれぞれは、別個のエネルギー拡散器アセンブリ、別個の注入ドーズ量、および/または別個の注入エネルギーを使用する工程を含み得る。例えば、注入エネルギーに依存して、半導体ボディの約3~8のエピタクシ層の前記第1の注入と前記第2の注入を繰り返すことが好適な場合がある。最下層に関し、このような最下層の別個のエネルギー拡散器アセンブリを使用することを回避するように、高エネルギー注入の適用により濃度プロファイルを広げることも可能な場合がある。さらに、前記別個の注入は、それぞれの第1の半導体領域が、現在処理されているそれぞれの層の全深さに沿って延伸するように行われ得る。したがって、隣接層の第1の半導体領域は既に互いに接触しているので熱拡散を行うことが回避され得る。こうして、多くのドーピングプロファイルが半導体ボディ内に実現され得る。
【0079】
さらに、アバランシェ降伏頑強性を改善するために、前記延伸方向に沿って若干だけ延伸する1つまたは複数のドープ領域を導入することが可能である。このような別のドープ領域により、電界の垂直分布の専用ピークが実現され得る。
【0080】
加えて、前記第1の半導体領域により形成された前記ドリフト区域と一方の側の第2の半導体領域と他方の側の高ドープ基板との間にフィールドストップ層が同様なやり方で導入され得る。このようなフィールドストップ構造は半導体装置のアバランシェ降伏頑強性および/または宇宙放射頑強性を改善し得る。
【0081】
上に提供された方法は、垂直方向概念と横方向概念の両方で超接合構造を実現するのに適する場合がある。
【0082】
「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」などの空間的相対語は、第2の要素に対する一要素の配置について説明するための説明の容易さのために使用される。これらの用語は、図面に描写されたものとは異なる配向に加え、それぞれの装置の異なる配向を包含するように意図されている。さらに、「第1」、「第2」などの用語もまた、様々な構成要素、領域、部分などを説明するために使用され、制限することを意図していない。同様な用語は本明細書を通して同様な構成要素を指す。
【0083】
本明細書で使用されるように、用語「有する」「含有する」、「からなる」、「示す」などは、上述の要素または特徴の存在を示す開放型用語であり、追加要素または特徴を排除するものではない。単数形式の冠詞は文脈が明確に指示しない限り単数の物だけでなく複数の物を含むように意図されている。
【0084】
上記範囲の変形と応用とを考慮に入れて、本発明はこれまでの説明により制限されないしまた添付図面により制限されないということを理解すべきである。むしろ、本発明は以下の特許請求範囲とそれらの法的等価物によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0085】
1 半導体装置
11 半導体ボディ
11-1 表面
11-2 ノンドープまたは弱ドープ領域
11-3 基材領域
11-4 ドリフト容積
11-5 ドープ層
31 第1の注入
32 第2の注入
33 エネルギー拡散器アセンブリ
33-1 入口の第1の点
33-2 入口の第2の点
35-1 第1のマスク
35-2 第2のマスク
35-11 第1のマスク要素
35-12 第1の開口
35-21 第2のマスク要素
35-22 第2の開口
36-1 第1のイオン
36-2 第2のイオン
37-2 第2の経路
71 半導体装置
72 第2の気泡
73 第1の気泡
74 注入工程
75 半導体領域
76 半導体領域
81 半導体装置
82 トレンチ
83 マスク
84 トレンチ充填材
111-1 第1の半導体領域
111-2 第1の半導体領域
111-11 近位端
111-12 遠位端
111-13 接合領域
111-21 近位端
111-22 遠位端
111-23 接合領域
112 第2の半導体領域
331 支持層
331-1 レセプタ側
332 拡散器構造
332-1 拡散器素子
332-2 拡散器素子
332-3 拡散器素子
332-4 拡散器素子
711 半導体基材領域
712 ドープ半導体領域
713 ノンドープまたは弱ドープエピタキシャル層
714 マスク
811 半導体基材領域
812 ドープ半導体領域
A 距離
b1 延伸深さ
b2 延伸深さ
c1 濃度プロファイル
d1 近位幅
d2 遠位幅
B 延伸方向
D 幅
E1 第1のエネルギー
E1’ 第1の低下エネルギー
E2 第2のエネルギー
E2’ 第2の低下エネルギー
α 傾斜角
β 延伸角
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D