(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】カバー層及びPC/ABS層を備える多層コンポジット物品ならびにその方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220726BHJP
B32B 25/16 20060101ALI20220726BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220726BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220726BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20220726BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20220726BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220726BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20220726BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B32B27/36 102
B32B25/16
B32B27/20 A
B32B27/20 Z
B32B27/40
B29C45/16
B29C45/56
C08K3/013
C08L51/04
C08L69/00
(21)【出願番号】P 2019512884
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2017072655
(87)【国際公開番号】W WO2018046698
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-01
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510288530
【氏名又は名称】トリンゼオ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ノルビン ファン リール
(72)【発明者】
【氏名】パスカル エー.エル.エー.イェー.ラーケマン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラース エム.アー.ヘルマンス
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512805(JP,A)
【文献】特表2015-510524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 45/00-45/24、45/46-45/63、
45/70-45/72、45/74-45/84
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ポリカーボナート成分と、スチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む靭性化成分とを含む2種以上のポリマーを含む配合物であるポリマー組成物を含む基材層
であって、前記耐衝撃性改質材がポリブタジエンゴムである、基材層と、
ii)前記基材層に直接接着した、ポリウレタン及び/またはポリ尿素を含むカバー層と
を備える多層物品であって、
前記2種以上のポリマーの濃度が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として
、70重量パーセント以
上であり、前記ポリカーボナート成分及び前記靭性化成分の総重量が、前記ポリマー組成物の前記2種以上のポリマーの総重量を基準として
、75重量パーセント
~100重量パーセントであり、前記ポリカーボナート成分の前記靭性化成分に対する重量比が
、10:90
~45:5
5であり、前記耐衝撃性改質材の濃度が、前記2種以上のポリマーの総重量を基準として
、3重量%
~13重量パーセン
トである、前記多層物品。
【請求項2】
前記ポリマー組成物中の
、前記ポリカーボナート成分以外のポリエステルの量
が0重量パーセントまたは
1.9重量パーセント未満である、請求項1に記載の多層物品。
【請求項3】
前記耐衝撃性改質材
の濃度が、前記2種以上のポリマーの総重量を基準として、5~13重量パーセントである、請求項1または2に記載の多層物品。
【請求項4】
前記靭性化成分が塊状重合法ABSを含む、請求項1~3のいずれかに記載の多層物品。
【請求項5】
前記靭性化成分がグラフト法ABS耐衝撃性改質材
を含み、前記グラフト法ABS耐衝撃性改質材が、前記グラフト法ABS耐衝撃性改質材の総重量を基準として
、45重量パーセント
~85重量パーセント
のポリブタジエン濃度を有する、請求項1~4のいずれかに記載の多層物品。
【請求項6】
前記ポリカーボナート成分が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として
、25重量パーセント
~45重量パーセン
トの量で存在する、請求項1~5のいずれかに記載の多層物品。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、前記スチレン-アクリロニトリル共重合体を含むスチレン含有相中に分散したポリブタジエン含有相を含むABS熱可塑性樹脂(すなわち、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂)を含み、前記スチレン-アクリロニトリル共重合体が、前記
スチレン-アクリロニトリ
ル共重合体の総重量を基準として
、60重量パーセント以上のスチレ
ン及び15重量パーセント以上のアクリロニトリ
ルを含む、請求項1~6のいずれかに記載の多層物品。
【請求項8】
前記スチレン-アクリロニトリル共重合体が
、95重量%以上
のアクリロニトリル及びスチレン
を含むランダム共重合体である、請求項1~7のいずれかに記載の多層物品。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、3重量パーセント~30重量パーセン
トの量の強化用充填材を含む、請求項1~8のいずれかに記載の多層物品。
【請求項10】
前記強化用充填材がガラス繊維、珪灰石、または両方を含む、請求項9に記載の多層物品。
【請求項11】
前
記カバー層
が、厚さが
0.15mm以上1.0mm未満のオーバーモールドされた層であり、空隙率が10体積パーセント以下の緻密な層である、請求項1~10のいずれかに記載の多層物品。
【請求項12】
前記カバー層が、
厚さが0.3mm~0.8mmのオーバーモールドされた層であり、空隙率
が5体積パーセント以
下の緻密な層である、請求項1~11のいずれかに記載の多層物品。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が
、0.2
~9重量パーセン
トの、官能化モノマーを含む1種または複数種のエチレン共重合体を含む、請求項1~12のいずれかに記載の多層物品。
【請求項14】
前記基材層が顔料または他の着色剤で着色されており、且つ前記カバー層
が透明であり、前記基材層が、酸化防止剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤、離型剤、及び流動性改質剤からなる群より選択される1種または複数種の添加剤を含む、請求項1~13のいずれかに記載の多層物品。
【請求項15】
前記基材層が、空隙率
が10体積パーセント以下の緻密な基材層である、請求項1~14のいずれかに記載の多層物品。
【請求項16】
前記基材層中の任意のスチレン共重合体であって、無水マレイン酸、マレイン酸、または前記スチレン共重合体にカルボキシル基を与える他のモノマーを含む前記スチレン共重合体の量が、前記ポリマー組成物の総重量を基準とし
て0.9重量パーセント以下である、請求項1~15のいずれかに記載の多層物品。
【請求項17】
前記基材層中の前記
強化用充填
材、前記靭性化成
分、及び前記ポリカーボナートの総量が、前記基材層の総重量を基準とし
て95重量パーセント以上である、請求項
9または10に記載の多層物品。
【請求項18】
前記
強化用充填材が有機サイズ剤を有する珪灰石を含む、請求項
10に記載の多層物品。
【請求項19】
i)金型キャビティ中において、ガラス転移温度を有するポリカーボナートを含み、表面を有する基材層の表面上に空隙を設けるステップと、
ii)前記金型キャビティ中にポリウレタン及び/またはポリ尿素を形成するための重合性組成物を射出するステップと、
iii)前記ガラス転移温度よりも低い温度の前記表面を前記重合性組成物と接触させるステップと、
iv)前記金型キャビティが閉じている間に前記ポリウレタン及び/または前記ポリ尿素を少なくとも部分的に重合させるステップと
を含み、
前記基材層が、前記ポリカーボナートと、スチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む靭性化成分とを含む2種以上のポリマーを含む配合物であるポリマー組成物を含み、
前記耐衝撃性改質材がポリブタジエンゴムであり、前記2種以上のポリマーの濃度が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として
、70重量パーセント以
上であり、前記ポリカーボナート及び前記靭性化成分の総重量が、前記ポリマー組成物の前記2種以上のポリマーの総重量を基準として
、75重量パーセント
~100重量パーセントであり、前記ポリカーボナートの前記靭性化成分に対する重量比が
、10:90
~45:5
5であり、前記耐衝撃性改質材の濃度が、前記2種以上のポリマーの総重量を基準として
、3重量%
~13重量パーセン
トである方法。
【請求項20】
請求項1~18のいずれかに記載の多層物品を形成するために用いられる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、発明の名称を「ポリウレタン層及びPC/ABS層を備える多層コンポジット物品」とする、2016年9月9日出願の欧州特許出願第EP16188106.5号、ならびに2016年10月18日出願の米国仮特許出願62/409,636の優先権を主張し、これらの出願のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本明細書の教示は、基材層(例えばポリカーボナート含有層)に直接接触するカバー層(例えばポリウレタン層、ポリ尿素層、またはそれらの両方)を備える多層物品に関する。上記基材層は、好ましくはポリカーボナートと靭性化成分とを含む配合物を含む。上記靭性化成分は、スチレン-アクリロニトリル共重合体と耐衝撃性改質材(好ましくはポリブタジエンなどのエラストマー)とを含んでいてもよい。上記ポリカーボナートの上記靭性化成分に対する重量比は、好ましくは55:45未満である。本多層物品は、自動車の内装及び/または自動車の内装及び/または及び/または外装のトリム部品に用いてもよく、好ましくは、老化前及び/または老化後にカバー層の基材層への強い接着を有する。カバー層は、好ましくは、基材層の表面上の空隙を充填するように、金型に重合性組成物を射出し、上記重合性組成物を少なくとも部分的に重合させて、ポリウレタン及び/またはポリ尿素を形成することを含むプロセスにおいて、基材層の表面上に成型される。
【背景技術】
【0003】
ポリ(メタクリル酸メチル)(すなわちPMMA)の基材とポリウレタンのオーバーモールド層とを備えるコンポジット材料が自動車部品に使用されている。しかしながら、PMMAは一般に高密度であり(ニート樹脂に関して約1.18g/cm3、充填樹脂に関しては更に高い)、且つ上記PMMA基材層は一般に構造上の要件を満たすために厚くする必要がある。改良を行って上記コンポジット部品を軽量化するために、PMMAをポリカーボナート含有組成物に置き換えようとする努力が最近なされている。
【0004】
ポリカーボナート(すなわちPC)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂(すなわちABS)を含む種々のポリマー組成物が、自動車の内装部品及び/または自動車の外装部品に使用されている。これらのPC/ABS含有組成物は、これらの用途に要求される、高い延性及び/または耐衝撃性、良好な耐熱性、ならびに寸法安定性などの性能特性を有するように配合することができる。耐久性のある表面特性(例えば、耐引っかき性及び耐傷付性)及び/または特定の審美的特性を必要とする用途などのいくつかの用途において、PC/ABS含有組成物はポリウレタン層で被覆される。しかしながら、上記基材(例えばPC/ABS含有組成物)と上記ポリウレタン層との間の接着は、自動車の内装及び外装部品に対する気候老化要件などの老化後に容易に劣化する可能性がある。
【0005】
ポリウレタン層及び/またはポリカーボナート及び/またはABSを含む基材層を備える種々の物品が、米国特許出願公開2011/0135934A1(Seidel et al.、2011年6月9日公開)、2005/0218547A1(Roche et al.、2005年10月6日公開)、2013/0196130A1(Hufen et al.、2013年8月1日公開)、2011/0027575A1(Drube et al.、2011年2月3日公開)、及び米国特許6,461,732B1(Wittmann et al.、2002年10月8日発行)、ならびに欧州特許出願公開EP1736293A1(Heinl et al.、2006年12月27日公開)に記載され、これらの内容は、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0006】
米国特許出願公開2011/0135934(Seidel et al.、2011年6月9日)は、一般に高濃度のポリカーボナート、芳香族ポリエステルカーボナート、及び芳香族ポリエステルを含有する基材層、ならびにオーバーモールドポリウレタン層またはポリ尿素層を備えるコンポジット構造体を記述する。この特許出願は、基材層中に高濃度のポリカーボナートが必要であることを教示するが、老化後の耐久性のある接着の必要性に関する指針はほとんどまたは全く示していない。
【0007】
米国特許出願公開2013/0196130A1は、ポリカーボナート/ABS配合組成物に対するポリウレタンの接着を記述し、該組成物は許容可能な接着を達成するためにポリブチレンテレフタラートまたはポリエチレンテレフタラートを必要とする。
【0008】
欧州特許出願公開EP1736293A1は、PC/ABS組成物をポリウレタンに接着することが困難であることを記述し(例えば003段落を参照のこと)、その接着を改善するために(例えばABSとの)ポリアミド配合物を用いる。
【0009】
米国特許6,461,732B1は、厚手のポリウレタン発泡体に接着するために、(中央粒径が約40μmの、概括的に球形である粒子と考えられている)AlO(OH)粒子を用いた組成物を記述する。
【0010】
米国特許出願公開2011/0027575A1は、ポリウレタン層と基材層とを備える物品を記述し、上記基材層は、接着を改善するために窒素発泡剤を用いて成型される。上記基材層は高濃度のポリカーボナートを含み、充填材を含まない(例えば表1のPCS-2を参照のこと)か、または実質的にポリカーボナート、SAN共重合体、及びガラス繊維から構成される(例えば表1のPCS-1を参照のこと)。
【0011】
米国特許出願公開US2005/0218547A1は、ポリウレタン層を備える種々のコンポジット部品を記述するが、(例えば高温及び/または高湿での)老化後の接着及び低い線熱膨張係数を有することが必要である点に言及してはいない。
【0012】
自動車部品向けの基材用のポリマー組成物(例えばPC及びABSを含む配合物)が引き続き求められている。特に、良好な接着の耐久性も有するような組成物が求められている。また、基材層及び/またはカバー層中に着色剤が均一にモールドインされたコンポジット物品が求められている。更に、薄肉化すること及び/またはより低密度の組成物を用いることによるより軽量の部品が求められている。コンポジット部品の製造方法の改良も求められている。更に、ポリマー組成物(例えばPC/ABS含有配合物)から形成され、且つポリウレタン、ポリ尿素、またはそれらの両方を含むオーバーモールドされたカバー層に耐久性をもった形態で接着された基材層を備えるコンポジット物品が求められている。例えば、物品であって、該物品中における上記層間の接着が、(例えば、高温、光への曝露、湿気への曝露、熱サイクルへの曝露、またはそれらの任意の組み合わせにおける)老化後でさえも強固であるような上記物品が求められている。上記基材層用の好ましい組成物は、実質的にもしくは完全にポリエステルを含まない(例えば、実質的にもしくは完全にポリブチレンテレフタラート及びポリエチレンテレフタラートを含まない)、及び/または実質的にもしくは完全にポリアミドを含まない。上記基材層用の好ましい組成物は、実質的にまたは完全に非強化用充填材を含まない。
【発明の概要】
【0013】
一態様において、本明細書の教示は、ポリウレタンに対する接着が良好なポリマー組成物、及び/またはかかるポリマー組成物を含み、ポリウレタン、ポリ尿素、もしくはそれらの両方のカバー層に接着した基材を備える物品を対象とする。上記ポリマー組成物は、好ましくは低密度であり、高温、高湿、及び/または光への暴露における老化後であっても上記カバー層に接着しており、最も好ましくは気候老化試験後に上記カバー層に接着している。好ましいポリマー組成物はポリカーボナート成分と靭性化成分とを含む。上記靭性化成分はスチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む。上記靭性化成分は、1種もしくは複数種のスチレン-アクリロニトリル共重合体、1種もしくは複数種のアクリロニトリル-スチレン-ブタジエン熱可塑性樹脂(例えば、塊状重合法ABS、乳化重合法ABS、グラフト法高ブタジエン濃度ABS、もしくはそれらの組み合わせ)、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよく、本質的に(例えば、約75重量パーセント以上、もしくは約90重量パーセント以上、もしくは約95重量パーセント以上の)上記から構成されてもよく、あるいは完全に上記から構成されてもよい。上記ポリカーボナート成分の上記靭性化成分に対する重量比は、好ましくは約55:45以下、より好ましくは約50:50以下である。上記靭性化成分は、好ましくは3重量パーセント~23重量パーセントの耐衝撃性改質材(例えば、上記ABS中に存在するようなポリブタジエン)を含む。既存のPC/ABS配合物は、多くの場合、ポリウレタン最上層の接着の低下が問題となり、及び/または種々の性能特性に影響を及ぼす場合がある更なるポリマーを必要とする。このたび、ABSを、特定の最大量のポリカーボナート及び特定の量の耐衝撃性改質材と共に組み合わせて基材を形成することにより、ポリウレタン及び/またはポリ尿素の層でオーバーモールドされた場合に、接着性能(初期接着及び老化後の接着)が改善されることが見出された。
【0014】
本教示の一態様は、ポリマー組成物を含む基材層と、上記基材層に直接接着したポリウレタン及び/またはポリ尿素のカバー層とを備える多層物品を対象とする。上記ポリマー組成物は、好ましくは、ポリカーボナートポリマーと、1種または複数種のスチレン含有共重合体を含む靭性化成分とを含む配合物である。上記ポリマー組成物は、任意選択で、1種または複数の強化用充填材(好ましくは、ガラス繊維などの繊維または珪灰石)を含む。上記ポリマー組成物中のポリエステルの量は、好ましくは約5重量パーセント未満、より好ましくは約0である。
【0015】
本教示の別の態様は、i)ポリカーボナート成分と、スチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む靭性化成分とを含む2種以上のポリマーを含む配合物であるポリマー組成物を含む基材層と、ii)上記基材層に直接接着した、ポリウレタン及び/またはポリ尿素を含むカバー層とを備える多層物品であって、上記2種以上のポリマーの濃度が、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約70重量パーセント以上(好ましくは約83重量パーセント以上、より好ましくは約88重量パーセント以上)、且つ約100重量パーセント以下(好ましくは約99重量パーセント以下)である上記多層物品を対象とする。上記ポリカーボナート成分及び上記靭性化成分の総重量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の上記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約75重量パーセント~約100重量パーセントである。上記ポリカーボナート成分の上記靭性化成分に対する重量比は、好ましくは、約10:90以上(好ましくは約20:80以上、より好ましくは約25:75以上)、且つ約55:45以下(好ましくは約50:50以下、より好ましくは約45:55以下)である。上記耐衝撃性改質材の濃度は、上記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約3重量%以上(好ましくは約5重量パーセント以上、より好ましくは約7重量パーセント以上)、且つ約23重量パーセント以下(好ましくは約18重量パーセント以下、より好ましくは約15重量パーセント以下、最も好ましくは約13重量パーセント以下)であってよい。
【0016】
本発明の別の態様は、本明細書の教示に係るコンポジット物品などのコンポジット物品の製造方法を対象とする。好ましくは、上記方法は、i)金型キャビティ中において、ガラス転移温度を有するポリカーボナートを含み、表面を有する基材層の表面上に空隙を設けるステップと、ii)上記金型キャビティ中にポリウレタン及び/またはポリ尿素を形成するための重合性組成物を射出するステップと、iii)上記ガラス転移温度よりも低い温度の上記表面を上記重合性組成物と接触させるステップと、iv)上記金型キャビティが閉じている間に上記ポリウレタン及び/または上記ポリ尿素を少なくとも部分的に重合させるステップとを含んでいてもよい。好ましくは、上記基材層は、上記ポリカーボナートと、スチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む靭性化成分とを含む2種以上のポリマーを含む配合物であるポリマー組成物を含み、上記2種以上のポリマーの濃度は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約70重量パーセント以上(好ましくは約83重量パーセント以上、より好ましくは約88重量パーセント以上)、且つ約100重量パーセント以下(好ましくは約99重量パーセント以下)であり、上記ポリカーボナート及び上記靭性化成分の総重量は、上記ポリマー組成物の上記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約75重量パーセント~約100重量パーセントであり、上記ポリカーボナートの上記靭性化成分に対する重量比は、約10:90以上(好ましくは約20:80以上、より好ましくは約25:75以上)、且つ約55:45以下(好ましくは約50:50以下、より好ましくは約45:55以下)であり、上記耐衝撃性改質材の濃度は、上記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約3重量%以上(好ましくは約5重量パーセント以上、より好ましくは約7重量パーセント以上)、且つ約23重量パーセント以下(好ましくは約18重量パーセント以下、より好ましくは約15重量パーセント以下、最も好ましくは約13重量パーセント以下)である。上記方法は、好ましくは、基材層を形成するステップ(例えば基材層を成型するステップ)を含む。上記方法は、好ましくは、上記基材層上にカバー層を形成する(例えばカバー層を成型する)ステップを含む。上記方法は、好ましくは、上記基材層上で、カバー層を重合及び/または架橋するステップを含む。
【0017】
本明細書の教示の種々の態様は、以下の特徴、すなわち、上記ポリマー組成物中のポリエステルの量が約ゼロまたは約5重量パーセント未満である;上記耐衝撃性改質材が、上記靭性化成分の総重量を基準として、25~85重量パーセント(好ましくは45~75重量パーセント、より好ましくは55~75重量パーセント)の量で存在する;上記耐衝撃性改質材がポリブタジエンゴムである;上記靭性化成分が塊状重合法ABSを含む;上記靭性化成分がグラフト法ABS耐衝撃性改質材を含む;上記ABS耐衝撃性改質材が(約45重量パーセント以上、より好ましくは約55重量パーセント以上)のポリブタジエンを含む;上記ABS耐衝撃性改質材が、上記グラフト法ABS耐衝撃性改質材の総重量を基準として、約85重量パーセント以下(好ましくは約75重量パーセント以下)のポリブタジエンを含む;上記ポリマー組成物が、当該ポリマー組成物の総重量を基準として、約20重量パーセント以上(好ましくは約25重量パーセント以上、より好ましくは約30重量パーセント以上、最も好ましくは約35重量パーセント以上)の量の上記ポリカーボナート成分を含む;上記ポリマー組成物が、約70重量パーセント以下(好ましくは約55重量パーセント以下、より好ましくは約50重量パーセント以下、より好ましくは約45重量%以下)の量の上記ポリカーボナート組成物を含む;上記ポリマー組成物が、上記スチレン-アクリロニトリル共重合体を含むスチレン含有相中に分散したポリブタジエン含有相を含むABS熱可塑性樹脂(すなわち、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂)を含む;上記スチレン-アクリロニトリル共重合体が、当該アクリロニトリル-スチレン共重合体の総重量を基準として、約60重量パーセント以上のスチレン(且つ好ましくは約82重量パーセント以下のスチレン)及び約15重量パーセント以上のアクリロニトリル(且つ好ましくは約33重量%以下のアクリロニトリル)を含む;上記スチレン-アクリロニトリル共重合体が、本質的に(例えば、約90重量%以上、約95重量%以上、約97重量%以上、または約99重量%以上の、好ましくは完全に)アクリロニトリル及びスチレンからなるランダム共重合体である;上記耐衝撃性改質材が上記スチレン-アクリロニトリル共重合体にグラフトされている;上記ポリマー組成物が、当該ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量パーセント~約30重量パーセント(好ましくは約5重量パーセント%~約23重量パーセント、最も好ましくは約7重量パーセント~約15重量パーセント)の量の強化用充填材を含む;上記強化用充填材がガラス繊維、珪灰石、またはそれらの両方を含む;上記基材層の厚さが約0.3mm~約10mm(好ましくは約0.5mm~約5mm)である;上記カバー層の厚さが約0.2mm~約1.5mm(好ましくは約0.3mm~約1.0mm、より好ましくは約0.3mm~約0.8mm)である;上記ポリマー組成物中の任意のタルクの量が約2重量パーセント以下である(好ましくは約1重量パーセント以下、より好ましくは、上記ポリマー組成物はタルクを含まない);上記カバー層が、空隙率が約20体積パーセント以下(好ましくは約10体積パーセント以下、より好ましくは約5体積パーセント以下、最も好ましくは約2体積パーセン以下)の緻密な層である;上記基材層がモールドインされた着色剤を含む;上記カバー層がモールドインされた着色剤を含む;上記ポリマー組成物が、約0.2~約9重量パーセント(好ましくは約1~約7重量パーセント、更により好ましくは約1.5~約5重量パーセント、最も好ましくは約2~約4重量パーセント)の1種または複数種のエチレン共重合体を含む;上記エチレン共重合体が官能化モノマーを含む;上記基材層が顔料または他の着色剤で着色されている;上記カバー層が実質的に透明(clear)及び/または実質的に透明(transparent)である;上記基材層中の上記充填材(好ましくは珪灰石)、上記靭性化成分(好ましくは塊状重合法ABS及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体)、及び上記ポリカーボナートの総量が、上記基材層の総重量を基準として、約95重量パーセント以上である;上記ポリカーボナート成分の上記靭性化成分に対する重量比が、約55:45以下(好ましくは約50:50以下、最も好ましくは約45:55以下)である;上記基材層が緻密な(例えば、空隙率が約10体積パーセント以下、好ましくは5体積パーセント以下の)基材層である;塊状重合法ABS以外の上記靭性化成分の量が、当該靭性化成分の総重量を基準として、好ましくは60重量パーセント未満(より好ましくは40重量パーセント未満、更により好ましくは25重量パーセント未満)である;上記基材が発泡剤を用いずに形成される;上記基材層中の任意のスチレン共重合体であって、無水マレイン酸、マレイン酸、または上記スチレン共重合体にカルボキシル基を与える他のモノマーを含む上記スチレン共重合体の量が、(上記ポリマー組成物の総重量を基準として、または上記基材層の総重量を基準として)約0.9重量パーセント以下である;上記基材層が、酸化防止剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤、離型剤、及び流動性改質剤からなる群より選択される1種または複数種の添加剤を含む;上記珪灰石が被覆珪灰石である;あるいは上記珪灰石が有機サイズ剤を含む;の1または任意の組み合わせを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aは例示としての、基材層20とカバー層30とを備えるコンポジット物品10の断面図である。上記基材層と上記カバー層との間の界面は、
図1Aに示すように略平面であってもよい。
図1Bは例示としての、基材層20’とカバー層30’とを備えるコンポジット物品10’の断面図である。上記基材層と上記カバー層との間の界面は、
図1Bに示すように湾曲していてもよい。
【
図2】例示としての、本明細書の教示に係る針状充填材の光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に示す説明及び例示は、本発明、その原理、及びその実際の用途を他の当業者に知らせることを意図する。当業者は本発明を、特定の用途の要件に最も適し得るように、その多数の形態で適合させ且つ適用してもよい。したがって、記載される本発明の特定の実施形態は、網羅的であることまたは本教示を限定することを意図するものではない。よって、本教示の範囲は、上記の説明を参照することによって判定されるべきものではなく、添付の特許請求の範囲を、かかる特許請求の範囲の権利が及ぶ均等物の全範囲と共に参照することによって判定されるべきものである。特許出願及び刊行物を含む全ての論文及び引用文献の開示は、あらゆる目的のために参照により援用される。添付の特許請求の範囲から集められることとなる他の組み合わせも可能であり、それらも本記載をもって、参照により本明細書に援用される。
【0020】
カバー層に対する接着(耐久性のある接着を含む)が良好であり、且つ本明細書に記載される基材層に関する1または複数の特徴を有する基材層に対するニーズは、ポリカーボナートと、ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂を含む靭性化成分とを含むポリマー組成物用いることによって達成される。かかる組成物は、好ましくは、剛性が高く、線熱膨張係数(すなわちCLTE)が低くてもよく、且つ老化後(例えば気候老化後)にポリウレタンまたはポリ尿素への良好な接着性を保持していてもよい。上記ポリマー組成物は、ポリウレタン、ポリ尿素、またはそれらの両方を含むカバー層に直接接触し、且つ接着する基材層を備えるコンポジット材料に使用してもよい。上記基材層のポリマー組成物は、好ましくは、特定の量のポリカーボナート、及び特定の量の耐衝撃性改質材を含む。好ましくは、上記基材層と上記カバー層との間の初期接着は、(例えば、本明細書に記載のPosiTest(登録商標)AT-A自動接着試験機を用いて測定して)約2.5MPa以上、より好ましくは約3.0MPa以上、更により好ましくは約3.5MPa以上、更により好ましくは約4.0MPa以上、最も好ましくは約4.2MPa以上である。好ましくは、上記基材層と上記カバー層との間の接着は、短時間熱サイクル(Volkswagen PV1200老化試験、別段の明記がない限り8サイクル)、熱光老化試験(VDA75202、別段の明記がない限り3型の条件を用いて4ピリオド)、熱-酸化老化(別段の明記がない限り120℃で240時間)、太陽光シミュレーション試験(別段の明記がない限りDIN75220屋内1T、約42℃で240時間、相対湿度約30パーセント未満)、加水分解試験(別段の明記がない限りDBL7384-8.1.18に基づき、約90℃及び少なくとも87パーセントの相対湿度で少なくとも72時間)、またはそれらの任意の組み合わせなどの加速老化に曝露した後であっても耐久性がある。かかる促進老化に曝露した後に、上記基材層と上記カバー層との間の接着は、好ましくは約2.3MPa以上、より好ましくは約2.7MPa以上、更により好ましくは約3.1MPa以上、更により好ましくは約3.5MPa以上、最も好ましくは約3.7MPa以上である。例えば、上記基材層と上記カバー層との間の接着は、初期には約4MPa以上であってよく、短時間熱サイクル後、熱光老化試験後、熱-酸化老化後、太陽光シミュレーション試験後、加水分解試験後、またはそれらの任意の組み合わせの後に、約3.5MPa以上であってよい。
【0021】
基材層
上記基材層は、本明細書の教示に係るポリマー組成物を含む、本質的に該組成物から構成される、または完全に該組成物から構成される。好ましくは、カバー層と接触する上記基材層の表面の一部または全てが上記ポリマー組成物から形成される。
【0022】
ポリマー組成物
上記基材層は、複数種のポリマーを含むポリマー組成物から形成される及び/または該組成物を含む。任意選択で、上記ポリマー組成物は1種または複数種の充填材を含む。上記材料の組み合わせは、上記基材層が物品に(強度、耐衝撃性、低線熱膨張係数、またはそれらの任意の組み合わせなどの)必要なバルク特性を付与しつつ、老化後であってもカバー層への接着を維持するように選択される。
【0023】
ポリカーボナート
上記ポリカーボナートは、好ましくは芳香族ポリカーボナートである。かかる芳香族ポリカーボナートは、米国特許出願公開2013/0196130A1(Hufen et al.、2013年8月1日公開、例えば、0025~0053段落を参照のこと)、及び2011/0129631A1(Van Nuffel、2011年6月2日公開、例えば0035~0058段落を参照のこと)、ならびに国際特許出願公開WO2011/107273(Van Nuffel et al.、例えば、5ページ、21行目~9ページ、23行目を参照のこと)に記載される芳香族ポリカーボナートを含んでいてもよく、または該ポリカーボナートから本質的に構成されていてもよく、上記特許文献はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0024】
本明細書の教示に係る好適な芳香族ポリカーボナートは文献公知であるか、または文献公知の方法によって製造することができる(例えば、芳香族ポリカーボナートの製造に関しては、Schnell, “Chemistry and Physics of Polycarbonates”, Interscience Publishers, 1964、ならびに米国特許第3,028,365号、第4,529,791号、及び第4,677,162号を参照されたく、これらの文献はそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0025】
芳香族ポリカーボナートの製造は、例えば、任意選択で連鎖停止剤、例えばモノフェノールを用いて、また任意選択で三官能分枝形成剤もしくは四官能以上の分枝形成剤、例えばトリフェノールもしくはテトラフェノールを用いて、ジフェノールを炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、及び/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物と、界面法により反応させることによって実施される。
【0026】
芳香族ポリカーボナート及び/または芳香族ポリエステルカーボナートを製造するためのジフェノールは、好ましくは式I
【化1】
(式中、
Aは単結合、C
1~C
5アルキレン、C
2~C
5アルキリデン、C
5~C
6シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO
2-、任意選択でヘテロ原子を含有する他の芳香環が縮合していてもよいC
6~C
12アリーレン、または式IIもしくは式III
【化2】
【化3】
(式中、
R
c及びR
dは互いに独立し、各X
1について個別に選択可能であり、水素またはC
1~C
6アルキル、好ましくは水素、メチル、またはエチルであり、
X
1は炭素を表し、
mは4~7、好ましくは4または5の整数を表し、但し、R
c及びR
dは、少なくとも1のX
1原子上で同時にアルキルを表す)
のラジカルを表し、
Bは、各場合において独立に、水素、C
1~C
12アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素及び/または臭素であり、
xは、各場合において互いに独立に、0、1、または2であり、
pは0または1である)
のジフェノールである。
【0027】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)-C1~C5アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)-C5~C6シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、及びα,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびに臭素化及び/または塩素化された核を有するそれらの誘導体である。
【0028】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、及び4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ならびにそれらの二及び四臭素化または塩素化誘導体、例えば、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、または2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。上記ジフェノールは個々に、または任意の混合物として用いてもよい。上記ジフェノールは文献公知であるか、または文献公知の方法によって得ることができる。
【0029】
上記芳香族ポリカーボナートの製造に好適な連鎖停止剤の例としては、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノール、または2,4,6-トリブロモフェノール、ならびに4-(1,3-ジメチル-ブチル)-フェノールなどの長鎖アルキルフェノール、または3,5-ジ-tert-ブチル-フェノール、p-イソ-オクチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノール、及び4-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールなどの、それらのアルキル置換基中に合計で8~20のC原子を含有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノールが挙げられる。用いられる連鎖停止剤の量は、一般に、それぞれの場合に用いられるジフェノールの合計のモル量に対して0.1モルパーセント~10モルパーセントである。
【0030】
上記芳香族ポリカーボナートの重量平均分子量は、好ましくは約10,000以上、より好ましくは約15,000以上、更により好ましくは約20,000以上、最も好ましくは約22,000以上である。上記芳香族ポリカーボナートの重量平均分子量は、好ましくは約200,000以下、より好ましくは約100,000以下、最も好ましくは約50,000以下である。例えば、上記重量平均分子量は、約10,000~約200,000、または約20,000~約80,000であってよい。別段の指示がない限り、本明細書における芳香族ポリカーボナート及び/または芳香族ポリエステルカーボナートの「分子量」への言及は、ビスフェノールAポリカーボナート標準試料を用い、レーザー散乱技術を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(Mw)を指し、モル当たりのグラム(g/モル)の単位で表示される。
【0031】
上記芳香族ポリカーボナートは直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。分枝鎖状ポリカーボナートは、公知の方法で、例えば、用いられるジフェノールの合計量に対して0.05~2.0モルパーセントの三官能化合物または四官能以上の化合物、例えば3以上のフェノール性基を含有する化合物を導入することによって分枝を形成することができる。本発明に好適な分枝鎖状ポリカーボナートは公知の技術によって製造することができ、例えば、いくつかの好適な方法が、米国特許第3,028,365号、第4,529,791号、及び第4,677,162号に開示され、上記特許は本記載をもってそれらの全体が参照により援用される。
【0032】
用いてもよい好適な分枝形成剤は、例えば、(用いられるジカルボン酸二塩化物に対して)0.01~1.0モルパーセントの量の、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’-,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸四塩化物、もしくはピロメリット酸四塩化物などの三官能または多官能のカルボン酸塩化物、あるいは用いられるジフェノールに対して0.01~1.0モルパーセントの量の、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ヘプテン、4,4-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-フェニル-メタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]-プロパン、2,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェノール、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-メタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチル-ベンジル)-4-メチル-フェノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン、もしくはテトラキス(4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-フェノキシ)-メタンなどの三官能または多官能のフェノールである。フェノール系分枝形成剤は上記ジフェノールと共に反応槽に入れることができる。酸塩化物分枝形成剤は上記酸塩化物と共に導入することができる。
【0033】
ホモポリカーボナート及びコポリカーボナートの両方が好適である。本発明による成分(i)に係るコポリカーボナートの製造に関しては、(用いられるジフェノールの総量に対して)1~25重量部、好ましくは2.5~25重量部の、ヒドロキシ-アリールオキシ末端基を含むポリジオルガノシロキサンも使用することができる。これらは公知である(例えば、米国特許第3,419,634号を参照のこと)か、または文献公知の方法により製造することができる。
【0034】
ビスフェノールAホモポリカーボナートは別として、上記好ましいポリカーボナートは、ビスフェノールAの、上記ジフェノールの合計のモル量に対して最大15モルパーセントの、好ましいまたは特に好ましいものとして挙げられている他のジフェノール、特には2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンとのコポリカーボナートである。
【0035】
上記芳香族ポリカーボナートの相対溶液粘度(ηrel)は、好ましくは、(100mLの塩化メチレン中、それぞれ0.5gのポリカーボナート及びポリエステルカーボナートの溶液について25℃で測定して)1.18~1.4、好ましくは1.22~1.3の範囲内である。
【0036】
靭性化成分
上記靭性化成分は、モノビニリデン芳香族共重合体(例えばスチレン含有共重合体)及び耐衝撃性改質材を含む。例えば、上記靭性化成分は、ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂(例えばABS熱可塑性樹脂)を含んでいてもよい。
【0037】
上記基材用のポリマー組成物は、一般に、1種または複数種のモノビニリデン芳香族共重合体を含む。上記モノビニリデン芳香族共重合体は、本明細書に記載される任意のかかる共重合体であってよく、好ましくは第1のモノマーのスチレンと第2のモノマーのアクリロニトリルとを含む。好ましくは、上記モノビニリデン芳香族共重合体の一部または全てが、1種または複数種のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂に含まれる。上記基材組成物は1種または複数種のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂を含む。
【0038】
ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の例としては、米国特許出願公開2011/0040035A1(Shields et al.、2011年2月17日公開、例えば0048~0087段落を参照のこと)、US2007/106028A1(Maes et al.、2007年5月10日公開、例えば0010~0064段落を参照のこと)、及び国際特許出願公開WO2011/107273(Van Nuffel et al.、2011年9月9日公開、US61/309,634の優先権を主張、例えば10ページ、5行目~14ページ、30行目を参照のこと)に記載されるものが挙げられ、上記特許文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0039】
上記ポリマー組成物に用いられるゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂は、一般的に、マトリクスすなわち連続相中のモノビニリデン芳香族及びエチレン性不飽和ニトリルの共重合体と、上記マトリクス中に分散したゴム粒子とを含む。本発明のマトリクスすなわち連続相は、共重合体であって、その中で重合したモノビニリデン芳香族モノマー及びエチレン性不飽和ニトリルモノマーを含む上記共重合体、または共重合体であって、その中で重合したモノビニリデン芳香族モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び1種または複数種の、上記モノビニリデン芳香族モノマー及びエチレン性不飽和ニトリルモノマーと共重合することが可能であるビニルモノマーを含む共重合体である。本明細書では、共重合体とは、インターポリマー化した2種以上のモノマーを有するポリマーとして定義される。これらの組成は、一般にSAN型またはSANとして知られており、それは、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)が最も一般的な例であることによる。
【0040】
ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂を製造するのに好適な種々の技術は本技術分野において周知である。これらの公知の重合方法の例としては、概括的に塊状(mass)重合法として知られるバルク重合、塊状溶液(mass-solution)重合、または塊状懸濁(mass-suspension)重合が挙げられる。ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の製造方法を十分に考察するには、“Modern Styrenic Polymers” of Series In Polymer Science (Wiley), Ed. John Scheirs and Duane Priddy, ISBN 0 471 497525、ならびに、例えば、米国特許第3,660,535号、第3,243,481号、及び第4,239,863号も参照されたく、これらの文献は参照により本明細書に援用される。
【0041】
一般に、本発明のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の製造には連続塊状重合技術が有利に用いられる。好ましくは、上記重合は、米国特許第2,727,884号に記載されるものであり、一部が重合した生成物の一部の再循環を備えていてもまたは備えていなくてもよい、場合により複数帯域栓流塊状プロセス(multizone plug flow bulk process)と呼ばれる、1または複数の実質的に線状の成層流型またはいわゆる「栓流」型反応器中で、あるいは、撹拌槽反応器であって、該反応器の内容物が全体にわたって本質的に均一であり、一般に、1または複数の栓流型反応器と組み合わせて用いられる上記撹拌槽反応器中で実施される。あるいは、EP412801に教示される並列の反応器の配列も、本発明のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の製造に適する場合がある。
【0042】
複数帯域栓流塊状プロセスは、互いに連続的に接続され、複数の反応帯域を与える一連の重合槽(または塔)を備える。ゴム、例えばブタジエンゴム(立体特異的)を、モノビニリデン芳香族コモノマー、例えばスチレン(ST)とアクリロニトリル(AN)との混合物に溶解し、次いでこのゴム溶液を上記反応システムに供給する。重合は熱的にまたは化学的に開始してもよく、この反応混合物の粘度は徐々に増加することとなる。反応過程中に、上記ゴムはST/ANポリマーでグラフトされ(グラフトSAN)、上記ゴム溶液中で、バルクSAN(遊離SANまたはマトリクスSANまたは非グラフトSANとも呼ばれる)も形成されている。上記遊離SAN(すなわち、非グラフトSAN)をゴム溶液の単一の連続的な「相」中に「保持」することができない箇所では、上記遊離SANはSAN相のドメインを形成し始める。そうなれば重合混合物は二相系である。重合が進むにつれてますます多くの遊離SANが形成され、ゴム相は、成長し続ける遊離SANのマトリクス中に粒子(ゴムドメイン)としてそれ自体を分散し始める。最終的には遊離SANが連続相となる。これは実際には油中油型エマルション系の形成である。その上、一部のマトリクスSANはゴム粒子内に吸蔵される。この段階は通常、転相という名が付される。転相前とは、ゴムが連続相であり、ゴム粒子が形成されていないことを意味し、転相後とは、実質的に全てのゴム相がゴム粒子に変換されてSANの連続相が存在することを意味する。転相に続いて、より多くのマトリクスSAN(遊離SAN)が形成され、そしておそらく、ゴム粒子にはより多くのSANがグラフトされる。
【0043】
モノビニリデン芳香族モノマーとしては、米国特許第4,666,987号、第4,572,819号、及び4,585,825号に記載されているモノマーが挙げられるが、これらに限定されず、上記特許文献は参照により本明細書に援用される。好ましくは、上記モノマーは式
【化4】
(式中、R’は水素またはメチルであり、Arは、アルキル、ハロ、またはハロアルキル置換基を有するかまたは有さない1~3の芳香環を有する芳香環構造であり、但し、いずれのアルキル基も1~6の炭素原子を含み、ハロアルキルとはハロ置換アルキル基をいう)のモノマーである。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、但し、アルキルフェニルとはアルキル置換フェニル基をいい、フェニルが最も好ましい。好ましいモノビニリデン芳香族モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンの全異性体、特にパラビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンの全異性体など、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
一般的には、かかるモノビニリデン芳香族モノマーは、上記マトリクス共重合体の総重量を基準として、約50重量パーセント以上の量、好ましくは約60重量パーセント以上の量、より好ましくは約65重量パーセント以上の量、最も好ましくは約70重量パーセント以上の量を構成する。一般的には、かかるモノビニリデン芳香族モノマーは、上記マトリクス共重合体の総重量を基準として、約95重量パーセント以下、好ましくは約85重量パーセント以下、より好ましくは約80重量パーセント以下、最も好ましくは75重量パーセント以下を構成することとなる。
【0045】
不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。上記不飽和ニトリルは、上記マトリクス共重合体中に、該マトリクス共重合体の総重量を基準として、一般に約5重量パーセント以上の量、好ましくは約10重量パーセント以上の量、より好ましくは約15重量パーセント以上の量、最も好ましくは約20重量パーセント以上の量で用いられる。上記不飽和ニトリルは、上記マトリクス共重合体中に、該マトリクス共重合体の総重量を基準として、一般に約50重量パーセント以下、好ましくは約45重量パーセント以下、より好ましくは約35重量パーセント以下、最も好ましくは約30重量パーセント以下の量で用いられる。
【0046】
共役1,3ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)、α-またはβ-不飽和一塩基酸及びその誘導体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など、及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソ-ブチル、メタクリル酸メチルなどそれらの対応するエステル)、塩化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなど、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、これらに相当するフマル酸エステル、N-フェニルマレイミド(NPMI)などのエチレン性不飽和ジカルボン酸ならびにそれらの無水物及び誘導体などを含む他のビニルモノマーも、上記マトリクス共重合体中に重合した形態で含まれていてもよい。これらの更なるコモノマーは、モノビニリデン芳香族及びエチレン性不飽和ニトリルマトリクス共重合体とのインターポリマー化及び/または、上記マトリクス中に配合する、例えば上記マトリクス中に配合することができるポリマー成分への重合を含むいくつかの方法で、上記組成物中に導入することができる。かかるコモノマーが存在する場合、その量は、一般に、上記マトリクス共重合体の総重量を基準として、約20重量パーセント以下、より好ましくは約10重量パーセント以下、最も好ましくは約5重量パーセント以下となる。上記マトリクス共重合体は、好ましくは、無水マレイン酸及びカルボン酸基を実質的に含まないか、または更には、完全に含まない(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、またはカルボン酸基を生じる他のモノマーの量が、当該スチレン系共重合体の総重量を基準として、好ましくは約4重量%以下、より好ましくは約0.9重量%以下、更により好ましくは約0.25重量%以下、最も好ましくは約0重量%である)。
【0047】
上記マトリクス共重合体は、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の重量を基準として、約60重量パーセント以上、好ましくは約70重量パーセント以上、より好ましくは約75重量パーセント以上、更により好ましくは約80パーセント以上、最も好ましくは約82重量パーセント以上の量で存在する。上記マトリクス共重合体は、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の重量を基準として、約90.5重量パーセント以下、好ましくは約90重量パーセント以下、より好ましくは約89重量パーセント以下、最も好ましくは約88重量パーセント以下の量で存在する。
【0048】
本発明での使用には種々のゴムが好適である。上記ゴムとしては、ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴム、エチレン共重合体ゴム、アクリル酸エステルゴム、ポリイソプレンゴム、ハロゲン含有ゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。ゴム形成モノマーの他の共重合性モノマーとの共重合体も好適である。
【0049】
好ましいゴムは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴムまたはジエン系ゴムの混合物、すなわち1種または複数種の共役1,3-ジエンの任意のゴム状ポリマーであり、1,3-ブタジエンが特に好ましい。かかるゴムとしては、1,3-ブタジエンのホモポリマー及び1,3-ブタジエンの1種または複数種の共重合性モノマー、例えば、スチレンが好ましい本明細書に上述のモノビニリデン芳香族モノマーとの共重合体が挙げられる。好ましい1,3-ブタジエンの共重合体は、当該1,3-ブタジエン共重合体の重量を基準として、少なくとも約30重量パーセントの1,3-ブタジエンゴム、より好ましくは約50重量パーセント~、更により好ましくは約70重量パーセント~、最も好ましくは約90重量パーセント~の1,3-ブタジエンゴムと、最大約70重量パーセントのモノビニリデン芳香族モノマー、より好ましくは最大約50重量パーセント、更により好ましくは最大約30重量パーセント、最も好ましくは最大約10重量パーセントのモノビニリデン芳香族モノマーとのブロックまたはテーパーブロックゴムである。
【0050】
充填材
上記ポリマー組成物は、選択されたポリマーの低い密度が概して維持されるように、充填材を実質的に含まないかまたは完全に含まなくてもよい。例えば、充填材の濃度は、約20重量パーセント以下、約15重量パーセント以下、約10重量パーセント以下、または約3重量パーセント以下であってよい。
【0051】
充填材が用いられる場合、該充填剤は好ましくは、長さの径に対する比が約4以上の繊維などの強化用充填材を含むか、または本質的にそれらからなる。他の充填材(例えば、タルク、クレーなどの非強化用充填材)の量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約6重量パーセント以下、約4重量パーセント以下、約2重量パーセント以下、または約1重量パーセント以下である。
【0052】
強化用充填材は、上記ポリマー組成物の強度を向上させるために及び/または該組成物の線熱膨張係数を低下させるために用いてもよい。
【0053】
上記強化用充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。他の強化用充填材としては、珪灰石などの針状の形状の鉱物充填材が挙げられる。
【0054】
上記強化用充填材は1種または複数種の針状充填材を含んでいてもよい。好ましい充填材は、アスペクト比(例えば長さの径に対する比)が約2以上、より好ましくは約3以上、更により好ましくは約4以上、最も好ましくは約6以上の細長い粒子である。上記充填材のアスペクト比は、約1000以下、約40以下、約30以下、約20以下、または約15以下であってよい。特に好ましい針状充填材は針状珪灰石である。珪灰石はメタケイ酸カルシウム(すなわちCaSiO3)である。好ましい珪灰石は実質的にCaSiO3からなる。任意の不純物の量(例えば、カルシウム及びケイ素の酸化物以外の酸化物の総量)は、好ましくは約10重量パーセント以下、より好ましくは約7重量パーセント以下、更により好ましくは約5重量パーセント以下、最も好ましくは約3重量パーセント以下である。
【0055】
上記充填材中のいずれかの形態のMgの量は、当該充填材の総重量を基準として、好ましくは約1重量パーセント以下、より好ましくは約0.5重量パーセント以下、最も好ましくは約0.2重量パーセント以下である。
【0056】
上記充填材は処理されていても未処理であってもよい。例えば、上記充填材は、上記熱可塑性組成物の1種または複数種のポリマーに対する充填材の接着を向上させるためにサイズ剤を含んでいてもよい。好ましい珪灰石はサイズ剤を含む。
【0057】
上記針状充填材の硬度は、好ましくは約3モース以上、より好ましくは約3.5モース以上、最も好ましくは約4モース以上である。上記充填材の硬度は、好ましくは約8モース以下、より好ましくは約6モース以下、最も好ましくは約5モース以下である。上記針状充填材(例えば珪灰石)は、以下の特徴の1または任意の組み合わせを有していてもよい。すなわち、約2.5~約3.5(好ましくは約2.7~約3.1、より好ましくは約2.90g/cm3)の比重;25μm~約150μm(例えば、約40μm~約75μm、好ましくは約50μmまたは約63μm)のメジアン長さ;約1~約20μm、好ましくは約2~約10μm、より好ましくは約4μm~約8μm)の中央径;約50%以上(例えば、約70%以上、または約80%~約100%)の約2.0μm~約20μmの径を有する粒子の百分率;約0.5m2/g~約10m2/g(例えば、BETにより測定して約2.9m2/g)の比表面積;または約7~約13(例えば約9.9)の10%スラリーのpHである。好ましい珪灰石は、(例えば、約80%以上、または約90%以上、または約95%以上の)メタケイ酸カルシウム(すなわちCaSiO3)を含む。
【0058】
用いてもよい充填材の例としては、NYCO MINERALSから市販されているNYGLOS(登録商標)4W及びNYGLOS(登録商標)4W 10992珪灰石が挙げられる。NYGLOS(登録商標)4Wの比重は約2.90g/cm3であり、中央長さは約63μmであり、中央径は約4μm~約8μmであり、約2.0μm~約20μmの径の粒子の百分率は約80%~約100%であり、BETにより測定した比表面積は約2.9m2/gであり、10%スラリーのpHは約9.9であり、硬度(モース)は約4.5である。これらの珪灰石は約95%以上のメタケイ酸カルシウム(すなわちCaSiO3)を含む。NYGLOS(登録商標)4Wのアスペクト比は約11:1である。Mgの量は、当該珪灰石の総重量を基準として約0.2重量パーセント以下である。
【0059】
上記ポリマー組成物は複数種のポリマーを含む。本明細書に上述したように、上記複数種のポリマーは、ポリカーボナートと、好ましくはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂(好ましくは塊状重合法ABS)及び任意選択でアクリロニトリル-スチレン共重合体を含む、または上記熱可塑性樹脂及び任意選択で上記共重合体である靭性化成分とを含む。上記ポリマー組成物は更なるポリマーを含んでいてもよいが、これらのポリマーは一般的には当該ポリマー組成物中に少量成分として存在する。好ましくは、上記ポリカーボナート、上記アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂(例えば塊状重合法ABS)、及び任意のアクリロニトリル-スチレン共重合体の総量は、上記ポリマー組成物中の当該の複数のポリマーの総重量を基準として、約70重量パーセント以上、より好ましくは約80重量パーセント以上、更により好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは約95重量パーセント以上であり、且つ約100重量パーセント以下である。
【0060】
上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量は、好ましくは約75重量パーセント以上、より好ましくは約83重量パーセント以上、最も好ましくは約88重量パーセント以上である。上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約100重量パーセント以下、約99重量パーセント以下、または約98重量パーセント以下であってよい。
【0061】
上記ポリカーボナート(例えば芳香族ポリカーボナート)は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、及び/または上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量を基準として、約10重量パーセント以上、より好ましくは約20重量パーセント以上、更により好ましくは約25重量パーセント以上、更により好ましくは約28重量パーセント、最も好ましくは約30重量パーセント以上の量で存在する。上記ポリカーボナートは、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、及び/または上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量を基準として、約55重量パーセント以下、より好ましくは約54重量パーセント以下、更により好ましくは約53重量パーセント以下、更により好ましくは約50重量パーセント以下、更により好ましくは約48重量パーセント以下、更により好ましくは約45重量パーセント以下、更により好ましくは約42重量パーセント以下、最も好ましくは約40重量パーセント以下の量で存在する。例えば、上記ポリカーボナートの量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約20重量パーセント~約55重量パーセント、約30~約50重量パーセント、約28重量パーセント~約48重量パーセント、約25~約50重量パーセント、または約30~約55重量パーセントであってよい。
【0062】
上記ポリマー組成物中の、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂(例えば上記ABS熱可塑性樹脂)及び任意の更なる耐衝撃性改質材及び/またはスチレン-アクリロニトリル共重合体を含む上記靭性化成分の量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、及び/または上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量を基準として、約90重量パーセント以下、より好ましくは約80重量パーセント以下、更により好ましくは約75重量パーセント以下、最も好ましくは約70重量パーセント以下である。上記靭性化成分は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、及び/または上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量を基準として、約40重量パーセント以上、より好ましくは約45重量パーセント以上、更により好ましくは約50重量パーセント以上、最も好ましくは55重量パーセント以上の量で存在する。
【0063】
上記ポリカーボナート成分(すなわち上記ポリカーボナート)の上記靭性化成分に対する重量比は、好ましくは約10:90以上、より好ましくは約20:80以上、最も好ましくは約25:75以上である。上記ポリカーボナート成分(すなわち上記ポリカーボナート)の上記靭性化成分に対する重量比は、好ましくは約55:45以下、より好ましくは約50:50以下、最も好ましくは約45:55以下である。
【0064】
上記耐衝撃性改質材(例えばポリブタジエン)の濃度は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量パーセント以上、より好ましくは約5重量パーセント以上、最も好ましくは約7重量パーセント以上である。上記耐衝撃性改質材(例えばポリブタジエン)の濃度は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約23重量パーセント以下、より好ましくは約18重量パーセント以下、更により好ましくは約15重量パーセント以下、最も好ましくは約13重量パーセント以下である。
【0065】
任意の更なる(すなわち、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂中の当該共重合体以外の)スチレン-アクリロニトリル共重合体は、用いられる場合、好ましくは、当該熱可塑性樹脂組成物の総重量を基準として、約25重量パーセント以下、より好ましくは約20重量パーセント以下、更により好ましくは約15重量パーセント、最も好ましくは約10重量パーセント以下である。かかる更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体は約0重量パーセント以上の量で存在してもよい。かかる更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の重量の上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の重量に対する比は、好ましくは、約1.0以下、より好ましくは約0.8以下、更により好ましくは約0.6以下、最も好ましくは約0.45以下である。
【0066】
本発明の一態様において、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂の一部または全てを、i)スチレン-アクリロニトリル共重合体(本明細書に記載のものなど)と、ii)ゴム改質材との組み合わせで置き換えてもよい。好ましくは、上記ゴム改質材の量は、上記スチレン-アクリロニトリル共重合体と上記ゴム改質材との総重量を基準として、約2重量パーセント~約30重量パーセント、より好ましくは約3重量パーセント~約20重量パーセント、最も好ましくは約3重量パーセント~約15重量パーセントである。上記ゴム改質材は約0℃以下のガラス転移温度を有する任意のポリマーを含んでいてもよい。上記ゴム改質材は好ましくは上記スチレン-アクリロニトリル共重合体に延性を付与する。特に好ましいゴム改質材は、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、またはそれらの両方を含む。別の特に好ましいゴムは、アクリル酸ブチルもしくはアクリル酸エチルヘキシルを含むかまたはそれらから本質的になるアクリルゴムである。上記ゴム改質材は、当該ゴム改質材の上記スチレン-アクリロニトリル共重合体との相溶性を向上させるのに十分な量のスチレンを含んでいてもよい。上記ゴム改質材は、好ましくはブタジエンとスチレンとを含む共重合体である。上記ゴム改質材はコアシェルポリマーであってもよい。上記コアは好ましくはエラストマーポリマーを含み、上記シェルは好ましくは約100℃を超える融解温度及び/またはガラス転移温度を有するポリマーを含む。例えば、上記ゴム改質材は、ブタジエンとスチレンとを含むポリマーを含むかまたは本質的にそれらからなるコアを備えていてもよい。別の例として、上記コアは、アクリル酸ブチル、もしくはアクリル酸エチルヘキシルを含むなどの、1種または複数種のアクリルゴムを含んでいてもよい。上記ゴム改質材はアクリルエステルモノマーを含むシェルを有していてもよい。上記ゴム改質材はポリメタクリル酸メチルを含むシェルを有していてもよい。上記ゴム改質材は、ポリ(ブタジエン/スチレン)のコア及びポリメタクリル酸メチルのシェルを備えるコアシェルMBS改質材であってもよい。上記ゴム改質材として用いてもよいコア-シェル耐衝撃性改質材の例としては、THE DOWCHEMICAL COMPANYから市販されているPARALOID(商標)耐衝撃性改質材が挙げられる。上記ゴム改質材は、乳化重合法ABS及び/またはグラフト化ゴム濃縮物として提供されてもよい。上記グラフト化ゴム濃縮物中のエラストマーの量は、好ましくは、当該グラフト化ゴム濃縮物の総重量を基準として、約20重量パーセント以上、より好ましくは約30重量パーセント以上、更により好ましくは約45重量パーセント以上、最も好ましくは約55重量パーセント以上である。上記グラフト化ゴム濃縮物は、SAN共重合体上にグラフトされていてもよい(例えば、乳化重合法によって製造される)。上記グラフト化ゴム濃縮物は、本質的に(すなわち、約95重量パーセント以上)、または完全に1種または複数種のエラストマー(例えばブタジエン)及び1種または複数種のスチレン含有ポリマー(例えばSAN)から構成されていてもよい。上記グラフト化ゴム濃縮物は、例えば更なるSANと共に、上記ポリマー組成物に別途に添加してもよい。上記グラフト化ゴム濃縮物は、上記ポリマー組成物に添加する前に、更なるスチレン含有ポリマー(例えばSAN)と混合してもよい。塊状重合法ABS以外の靭性化成分(例えば、GRCまたはコア-シェル共重合体)の量は、好ましくは、当該靭性化成分の重量を基準として、60重量パーセント未満、より好ましくは40重量パーセント未満、更により好ましくは25重量パーセント未満である。
【0067】
上記強化用充填材の量(例えば、珪灰石及び/またはガラス繊維の量)は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量パーセント以上、より好ましくは約4重量パーセント以上、更により好ましくは約5重量パーセント以上、最も好ましくは約6重量パーセント以上である。上記強化用充填材の量(例えば、珪灰石及び/またはガラス繊維の量)は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約25重量パーセント以下、より好ましくは約20重量パーセント以下、更により好ましくは約17重量パーセント以下、更により好ましくは約14重量パーセント以下、最も好ましくは約11重量パーセント以下である。例えば、上記強化用充填材は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量パーセント~約25重量パーセント、約5重量パーセント~約14重量パーセント、約4重量パーセント~約11重量パーセント、または約3重量パーセント~約14重量パーセントの量で存在してもよい。
【0068】
上記ポリマー組成物中のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂、ポリカーボナート、及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の総量は、好ましくは、上記ポリマー組成物中の当該ポリマーの総重量を基準として、約70重量パーセント以上、より好ましくは約80重量パーセント以上、更により好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは約95重量パーセント以上である。上記ポリマー組成物中のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂、ポリカーボナート、及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の総量は、上記ポリマー組成物中のポリマーの総重量を基準として、約100重量パーセント以下であってよい。好ましくは、上記ポリマー組成物中のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂、ポリカーボナート、及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の総量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約50重量パーセント以上、より好ましくは約65重量パーセント以上、更に好ましくは約77重量パーセント以上、最も好ましくは約82重量パーセント以上である。上記ポリマー組成物中のゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂、ポリカーボナート、及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の総量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約97重量パーセント以下、より好ましくは約95重量パーセント以下、更により好ましくは約92重量パーセント以下、最も好ましくは約89重量パーセント以下である。
【0069】
上記ポリマー組成物中の上記強化用充填材、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂、上記ポリカーボナート、及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の総量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは、約80重量パーセント以上、より好ましくは約90重量パーセント以上、更により好ましくは約95重量パーセント以上、最も好ましくは約97重量パーセント以上である。上記ポリマー組成物中の上記強化用充填材、上記ゴム改質モノビニリデン芳香族熱可塑性樹脂、上記ポリカーボナート、及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体の総量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約100重量パーセント以下であってよい。
【0070】
上記ポリマー組成物は、任意選択で、本明細書に記載されるものなどの1種または複数種の更なるポリマーを含んでいてもよい。更なるポリマーの例としては、(例えば、50重量パーセント以上のエチレン及び/またはプロピレンを含む)オレフィン系共重合体、ポリエステル、及びポリアミドが挙げられる。
【0071】
オレフィン系共重合体
用いてもよいオレフィン系共重合体としては、酸素原子及び/または窒素原子を含む1または複数の官能基を有するポリオレフィン共重合体が挙げられる。好ましいオレフィン系共重合体は、約50重量パーセント以上、より好ましくは約60重量パーセント以上、最も好ましくは約65重量パーセント以上の量の、1種または複数種のα-オレフィンを含む。上記オレフィン系共重合体は、好ましくは、少なくとも1の酸素原子を有する1種または複数種のコモノマーを含む。本明細書では、オレフィン系共重合体は、無水マレイン酸及びカルボン酸基を実質的に含まない(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、またはカルボン酸基を生じる他のモノマーの量が、当該オレフィン系共重合体の総重量を基準として、約4重量%以下、より好ましくは約0.9重量%以下、更により好ましくは約0.25重量%以下である)。好ましいコモノマーとしては、アクリル酸エステル及び酢酸エステルが挙げられる。例えば上記オレフィン系共重合体はエチレン-アクリル酸エステル共重合体であってよい。特に好ましいオレフィン系共重合体はAmplify AEエチレン-アクリル酸エステル共重合体である。上記オレフィン系共重合体を用いる場合、その量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約25重量パーセント以下、より好ましくは約20重量パーセント以下、更により好ましくは約12重量パーセント以下、最も好ましくは約8重量パーセント以下である。上記オレフィン系共重合体の量は約0重量パーセント以上であってよい。
【0072】
ポリエステル
上記ポリマー組成物(例えば、上記基材層のポリマー組成物)は、1種または複数種のポリエステルを含んでいてもよい。用いてもよいポリエステルの例としては、ポリアルキレンテレフタラートなどの芳香族ポリエステルが挙げられる。用いてもよいポリエステルの例としては、米国特許出願公開2013/0196130A1(Hufen et al.による、2013年8月1日公開、例えば0123~0132段落を参照のこと)に記載されるポリエステルが挙げられ、上記特許文献は参照により本明細書に援用される。上記ポリマー組成物は、好ましくは実質的にまたは完全にポリエステルを含まない。ポリエステルが存在する場合、その総量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約10重量パーセント以下、より好ましくは約5重量パーセント以下、更により好ましくは約2重量パーセント以下、更により好ましくは約1.9重量パーセント以下、更により好ましくは約1.0重量パーセント以下、最も好ましくは約0.4重量パーセント以下である。例えば、ポリエステルの総量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約0重量パーセント~約10重量パーセント、約0重量パーセント~約1.9重量パーセント、または約0重量パーセント~約0.4重量パーセントであってよい。
【0073】
ポリアミド
上記ポリマー組成物(例えば、上記基材層のポリマー組成物)は、任意選択で1種または複数種のポリアミドを含んでいてもよい。上記ポリアミドは任意の種類のものであってよい。好適なポリアミドとしては、ジアミンと二酸との反応生成物、及び単一のモノマーからなる(monadic)ポリアミドが挙げられる。ジアミン及び二酸から形成されるポリアミドとしては、アジピン酸またはテレフタル酸のいずれかとジアミンとの反応生成物を含有するポリアミド(例えばナイロン)を挙げることができる。単一のモノマーからなるポリアミドの例としては、ナイロン6、及びポリ(p-ベンズアミド)が挙げられる。本発明において用いてもよいナイロンとしては、ナイロン3、ナイロン4、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン6T、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/66/610、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン69、ナイロン7、ナイロン77、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、及びナイロン91が挙げられる。上述のポリアミドのいずれかを含有する共重合体も用いてよい。ポリアミド共重合体はポリエーテルを含んでいてもよい。ポリアミド共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、それらの組み合わせであってもよい。上記ポリマー組成物は、好ましくは、実質的にまたは完全にポリアミドを含まない。ポリアミドが存在する場合、その総量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量パーセント以下、より好ましくは約2重量パーセント以下、更により好ましくは約1.9重量パーセント以下、更により好ましくは約1.0重量パーセント以下、最も好ましくは約0.4重量パーセント以下である。例えば、ポリアミドの総量は、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約0重量パーセント~約3重量パーセント、約0重量パーセント~約1.9重量パーセント、または約0重量パーセント~約0.4重量パーセントであってよい。
【0074】
添加剤
上記ポリマー組成物は1種または複数種の添加剤を含んでいてもよい。例えば、上記ポリマー組成物は、1種もしくは複数種の安定剤(例えば、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、またはUV安定剤)、1種もしくは複数種の着色剤、1種もしくは複数種の加工助剤、1種もしくは複数種の難燃剤、1種もしくは複数種の離型剤、1種もしくは複数種の帯電防止剤、1種もしくは複数種の導電性添加剤、1種もしくは複数種の耐引っかき性を向上させるための添加剤、または1種もしくは複数種のドリップ防止剤を含んでいてもよい。用いてもよい添加剤の例としては、米国特許出願公開2013/0196130A1(Hufen et al.による、2013年8月1日公開、例えば、0144~0147段落を参照のこと)に記載される添加剤が挙げられ、上記特許文献は参照により本明細書に援用される。
【0075】
好ましい添加剤としては、ポリカーボナート組成物に一般的に使用される添加剤及び/またはポリスチレン及び/またはABS組成物に一般的に使用される添加剤が挙げられる。
【0076】
好ましい酸化防止剤としては、立体障害フェノール系酸化防止剤が挙げられる。特に好ましい酸化防止剤は、BASFから市販されているIRGANOX(登録商標)1076(CAS番号2082-79-3)などの3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルである。
【0077】
好ましい離型剤としては、ポリオールエステル型離型剤が挙げられる。特に好ましい離型剤は、SAFICALCAN NECARBO BVから市販されているLOXIOL(登録商標)P861/3.5である。他の特に好ましい離型剤は、EMERY OLEOCHEMICALS LLC(CINCINNATI、OH)から市販されているLOXIOL(登録商標)VPG861である。
【0078】
上記1種または複数種の添加剤が存在する場合、それらの総量は、好ましくは、上記ポリマー組成物の総重量を基準として、約10重量パーセント以下、より好ましくは約5重量パーセント以下、最も好ましくは約2.5重量パーセント以下である。上記1種または複数種の添加剤の総量は、約0重量パーセント以上、約0.1重量パーセント以上、または約0.3重量パーセント以上であってよい。
【0079】
上記ポリマー組成物は、好ましくは、無水マレイン酸及びカルボン酸基(例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、またはカルボン酸基を生じる他のモノマー)を含むポリマーを実質的に含まないか、または更には全く含まない。理論に拘束されるものではないが、かかるモノマーが存在する場合の(例えば、湿度及び/または気候老化後の)耐久性の乏しさは、当該材料の酸化及び/または劣化に関係すると考えられる。好ましくは、かかるモノマーを含むいずれかのポリマーの量は、スチレン共重合体の総重量を基準として、または上記ポリマー組成物の総重量を基準として、または上記基材層の総重量を基準として、約1.2重量%以下、より好ましくは約0.9重量%以下、更により好ましくは約0.25重量%以下、最も好ましくは約0重量%である。
【0080】
上記ポリマー組成物は任意の手段によって基材層に形成することができる。例えば、上記基材層は、成型(例えば、射出成型、圧縮成型、オーバーモールディング、または共射出成型)、押出成形(例えば、異形押出成形、またはシート押出成形、またはインフレーションフィルム押出成形)、カレンダー加工、3-D印刷法、またはポリマー材料の加工において公知の任意の他の方法によって形成することができる。上記基材層の厚さは任意であってよい。基材の厚さは一般的には特定の用途の要件に依存する。上記基材層の厚さは、約0.2mm以上、より好ましくは約0.5mm以上、更により好ましくは約1.0mm以上、最も好ましくは約2.0mm以上である。上記基材層の厚さは、好ましくは、約30mm以下、より好ましくは約20mm以下、更により好ましくは約20mm以下、更により好ましくは約10mm以下、最も好ましくは約8mm以下である。上記基材層の厚さは均一であってもよく、または変動してもよいことが理解されよう。上記基材の厚さが変動する場合、上記の厚さの値は、カバー層に接着されるべき領域における当該基材の平均厚さをいう。
【0081】
上記基材層は、好ましくは緻密な材料(例えば、空隙率が10体積パーセント以下、好ましくは約3体積パーセント以下、最も好ましくは約0.8体積パーセント以下)である。上記緻密な基材層中の空隙の量は、0体積パーセント以上、または約0.3体積パーセント以上であってよい。緻密な基材を用いることによって、上記基材層の厚さ及び/または当該基材層の総重量を低減することができることを見出した。緻密な基材を用いることによって、接着性及び耐久性に関して更なる課題が生じる。理論に拘束されるものではないが、発泡した基材層の空隙によって、当該層の機械的付着の手段が提供される場合があり、及び/または耐久性試験の際のエネルギー吸収の手段が提供される場合がある。好ましくは、上記基材層は発泡剤(例えば、物理発泡剤または化学発泡剤)を用いることなく製造される。したがって、得られる基材層は、好ましくは残留する発泡剤またはその副生成物を含まない。上記基材に関しては緻密な材料が好ましいが、本明細書の教示は、基材層が(例えば、空隙率が10体積パーセントを超える、好ましくは約20体積パーセント以上の、最も好ましくは約40体積パーセント以上の)発泡材料である場合にも使用できることが理解されよう。発泡基材層の空隙率は、約75体積パーセント以下、約60体積パーセント以下、または約50体積パーセント以下であってよい。
【0082】
上記基材層は、着色され、透明(clear)であり、または透明であって(transparent)よい。例えば、上記基材層は、当該基材に所定の色を付けるために1種または複数種の着色剤を含んでいてもよい。着色基材層を用いることは、透明な(transparent)または透明な(clear)カバー層を有する物品において特に有利である場合がある。
【0083】
特性
本明細書の教示に係るポリマー組成物の線熱膨張係数は、好ましくは、-30℃~30℃で測定して、約75×10-6cm/cm/℃以下、より好ましくは65×10-6cm/cm/℃以下、更により好ましくは約60×10-6cm/cm/℃以下、更により好ましくは約50×10-6cm/cm/℃以下、最も好ましくは約40×10-6cm/cm/℃以下である。上記ポリマー組成物の線熱膨張係数は、約5×10-6cm/cm/℃以上、または約20×10-6cm/cm/℃以上であってよい。
【0084】
上記ポリマー組成物は、好ましくは以下の特徴の1もしくは複数、または全てを有する。すなわち、ISO179-1eAに準拠して測定して、約8~約40kJ/m2のノッチ付きシャルピー衝撃強さ;ISO527に準拠して測定して、約2000~約6000MPaの引張弾性率(珪灰石及び/またはガラス繊維などの充填材を含むポリマー組成物の弾性率は、好ましくは約3000MPa以上);またはISO527に準拠して測定して、約5~約80パーセントの破断点伸び(充填材を含むポリマー組成物の破断点伸びは40パーセント未満)である。
【0085】
カバー層
本明細書の教示に係る物品は上記基材層上にカバー層を備える。上記カバー層は上記基材層の表面の一部または全てを覆う。上記カバー層は上記基材層に直接接触し、その接触領域において上記基材層と接着している。
【0086】
上記カバー層の厚さは任意であってよいが、好ましくは上記基材層の厚さよりも薄い。したがって、上記基材層は当該の物品の「バルク」に対して1または複数の有利な特性を付与することができる一方、上記カバー層は当該物品の表面に1または複数の特性を付与することができる。好ましくは、上記カバー層の厚さは、約0.15mm以上、より好ましくは約0.30mm以上、更により好ましくは約0.5mm以上、最も好ましくは約0.6mm以上である。上記カバー層の厚さは、好ましくは約3mm以下、より好ましくは約1.5mm以下、最も好ましくは約1.0mm以下である。
【0087】
上記カバー層は、任意の公知の方法に従って上記基材層に塗布してもよい。上記カバー層は、ポリマー、プレポリマー、モノマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む材料から形成されてもよい。好ましくは、上記カバー層は、上記基材層の表面に塗布された後に、重合及び/または架橋される組成物から形成される。好ましい上記カバー層の塗布方法は成型ステップ(例えばオーバーモールディング)を含む。
【0088】
上記カバー層の塗布方法は、重合性組成物を金型に射出するステップと、上記重合性組成物を少なくとも部分的に重合し、ポリウレタン及び/またはポリ尿素を形成するステップとを含んでいてもよい。上記重合性組成物は、金型キャビティに入る前にスタティックミキサーを通ってもよい。上記金型キャビティは、好ましくはその表面上に空隙を有する上記基材層を備える。上記重合性組成物が上記金型に射出されると、該組成物は上記基材層の表面の少なくとも一部と接触する。上記重合性組成物は、好ましくは当該材料の一部または全てが重合するまで上記金型キャビティ内に保持される。上記重合性組成物が上記基材層の表面と接触するとき、該基材層の温度は好ましくは上記ポリマー組成物のガラス転移温度よりも低い(例えば、当該ポリカーボナートのガラス転移温度よりも低い)。
【0089】
上記カバー層は、2種以上の成分、または3種以上の成分を有する多成分系として供給されてもよい。例えば、上記系は、個々には安定であり、且つ混ざり合うと重合する第1の成分及び第2の成分を含んでいてもよい。上記カバー層は、上記成分のそれぞれを金型に射出することによって製造してもよい。上記複数の成分を射出する前に混合してもよく、射出の際に(例えば混合ヘッドを用いて)混合してもよく、または金型内で混合してもよい。好ましくは、上記複数の成分を、混合ヘッド(例えば、動的または静的混合ヘッド)を用いることなどによって、当該材料を金型に射出する際に混合する。
【0090】
上記カバー層は、好ましくは室温の液体として成型される(例えば、室温または高温で塗布される)。好ましくは、上記重合性組成物は金型内で迅速に重合し、その結果当該コンポジット部品を妥当な時間内に金型から取り出すことができる。好ましくは、重合時間(すなわち、上記カバー層が、当該部品を金型から取り出すのに十分な強度を発現するのに要する時間)は約50分以下、より好ましくは約20分以下、更により好ましくは約7分以下、更により好ましくは約3分以下、最も好ましくは約1分以下である。上記重合性組成物は、室温または高温で金型に射出してもよい。金型温度は、上記重合性組成物が金型のキャビティを実質的にまたは完全に充填することができるように、十分に低くする必要がある。好ましくは、金型温度は、約170℃以下、より好ましくは約130℃以下、更により好ましくは約110℃以下、最も好ましくは約100℃以下である。金型温度は、重合が妥当な時間内に起こるように十分に高くする必要がある。好ましくは金型温度は、約15℃以上、より好ましくは約25℃以上、更により好ましくは約35℃以上、更により好ましくは約45℃以上、最も好ましくは約55℃以上である。
【0091】
好ましくは、上記重合性組成物は、実質的にまたは完全に揮発性有機化合物を含まない。好ましくは、上記重合性組成物は有害な大気汚染物質を含まない。好ましくは、上記重合性組成物の重合は揮発性有機化合物を生成しない。好ましくは、上記重合性組成物は、(例えば、約20℃~約50℃、約50℃~約80℃、または約80℃~約110℃の加工温度において)約10分以内、より好ましくは約4分以内、更により好ましくは約2分以内、最も好ましくは約60秒以内に粘着性がなくなるように選択される。
【0092】
上記カバー層は緻密な材料であってもよく、または発泡材料であってもよい。好ましいカバー層は緻密(すなわち、空隙率が約20体積パーセント以下、好ましくは約10体積パーセント以下、より好ましくは約5体積パーセント以下の緻密な材料)である。
【0093】
上記カバー層は、好ましくは、上記基材層と接触し、且つ接着するポリウレタン、ポリ尿素、もしくはそれらの両方を含むか、またはそれらから本質的に構成される。上記カバー層は、米国特許出願公開2013/0196130A1(Hufen et al.による、2013年8月1日公開、例えば0173~0240段落を参照のこと)に記載される特徴の1または任意の組み合わせを含むポリウレタンを含んでいてもよく、上記特許文献は参照により本明細書に援用される。上記カバー層は、米国特許出願公開2011/0135934A1(Seidel et al.、2011年6月9日公開、0172~0219段落を参照のこと)、米国特許出願公開2002/0058716A1(Wittmann et al.、2002年5月16日公開、0117~0151段落を参照のこと)、米国特許5,192,814A(Oshima et al.、1993年3月9日公開)、米国特許4,764,540(1988年8月16日公開、2欄、43行目~10欄、32行目及び実施例を参照のこと)、ならびに米国特許5,331,051(1994年7月19日発行、2欄、5行目~6欄、42行及び実施例を参照のこと)に記載されるものなどのポリウレタンまたはポリ尿素を含んでいてもよく、上記特許文献の内容は全て参照により本明細書に援用される。
【0094】
好ましいポリ尿素は、以下の構造
【化5】
を有する1種または複数種の繰り返し単位を含む。上記ポリ尿素は、1種または複数種のイソシアネート化合物及び1種または複数種のアミン化合物を含む反応生成物であってよい。上記イソシアネート含有化合物は、好ましくは2以上のイソシアネート官能基を含む(例えば、上記イソシアネート含有化合物は、ジイソシアネート(複数可)、3以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい)。上記アミン化合物は、好ましくは2以上のアミン基を含む。例えば、上記アミン化合物は、ジアミン(複数可)、3以上のアミンを含むポリアミン、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。好ましいイソシアネートとしては、芳香族イソシアネート、芳香族イソシアネート、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
本発明に従って使用されるポリウレタンは、ポリイソシアネートのH-活性多官能性化合物、好ましくはポリオールとの反応によって得られる。用語「ポリウレタン」は、本発明の文脈においては、ポリウレタン尿素も意味すると理解されるべきものであり、ポリウレタン尿素においては、N-H官能基を有する上記化合物が、任意選択でポリオールとの混合物で、H-活性多官能価化合物として用いられる。
【0096】
好適なポリイソシアネートは、当業者にそれ自体は公知の、好ましくは≧2のNCO官能価を有する芳香族、芳香族脂肪族、脂肪族、または脂環式ポリイソシアネートであり、該ポリイソシアネートは、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌラート、ウレトジオン、ウレタン、アロファナート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素、及び/またはカルボジイミド構造を含有していてもよい。これらは個々に、または互いに任意且つ所望の混合物で用いてもよい。
【0097】
この文脈において、上述のポリイソシアネートは、それ自体は当業者に公知であり、脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、及び/または芳香族に結合したイソシアネート基を有するジ及びトリイソシアネートをベースとしており、これらがホスゲンを用いて製造されたかまたはホスゲンを用いないプロセスによって製造されたかは重要ではない。かかるジ及びトリイソシアネートの例は、1,4-ジイソシアネートブタン、1,5-ジイソシアネートペンタン、1,6-ジイソシアネートヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアネートペンタン、1,5-ジイソシアネート-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,10-ジイソシアネートデカン、1,3-及び1,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3-及び1,4-ビス-(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン、1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロン-ジイソシアネート、IPDI)、4,4’-ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン(Desmodur(登録商標)W, Bayer AG, Leverkusen, DE)、4-イソシアネートメチル-1,8-オクタン-ジイソシアネート(トリイソシアネートノナン、TIN)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、1-イソシアネート-1-メチル-3-イソシアネートメチルシクロヘキサン、1-イソシアネート-1-メチル-4-イソシアネートメチルシクロヘキサン、ビス-(イソシアネートメチル)-ノルボルナン、1,5-ナフタレン-ジイソシアネート、1,3-及び1,4-ビス-(2-イソシアネートプロパ-2-イル)-ベンゼン(TMXDI)、2,4-及び2,6-ジイソシアネートトルエン(TDI)、特には2,4及び2,6異性体ならびに上記2種の異性体の混合物である工業用グレード、2,4’-及び4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)、ポリメリックMDI(pMDI)、1,5-ジイソシアネートナフタレン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン(XDI)、ならびに任意且つ所望の上記化合物の混合物である。
【0098】
この文脈において、上記ポリイソシアネートの平均NCO官能価は、好ましくは2.0~5.0、好ましくは2.2~4.5、特に好ましくは2.2~2.7であり、イソシアネート基含有量は5.0~37.0重量%、好ましくは14.0~34.0重量%である。
【0099】
好ましい態様において、脂肪族及び/または脂環式に結合したイソシアネート基のみを有する上述の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物が用いられる。
【0100】
より好ましくは、上記の種類のポリイソシアネートは、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、異性体のビス-(4,4’-イソシアネートシクロヘキシル)-メタン、及びそれらの混合物をベースとしている。
【0101】
より高分子量の変性ポリイソシアネートの中で、ポリウレタンの化学から知られている、400~15,000、好ましくは600~12,000の分子量範囲の、末端イソシアネート基を有するプレポリマーが特に興味深い。これらの化合物は、それ自体は公知の方法で、例として述べた種類の過剰量の単純なポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも2の基を有する有機化合物、特に有機ポリヒドロキシ化合物との反応によって製造される。好適なかかるポリヒドロキシ化合物は、62~599、好ましくは62~200の分子量範囲の単純であり且つ多官能性のアルコール、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロパン-1,2-ジオール、またはブタン-1,4-ジオールもしくはブタン-2,3-ジオールであるが、特には、それ自体はポリウレタンの化学から公知である種類の、少なくとも2、原則として2~8、但し好ましくは2~6の第一級及び/または第二級ヒドロキシル基を有する、600~12,000、好ましくは800~4,000の分子量の、より高分子量のポリエーテルポリオール及び/またはポリエステルポリオールである。例えば、例として述べた種類の低分子量ポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性である基を有するあまり好ましくはない化合物、例えば、ポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシル基を含有するポリアセタール、ポリヒドロキシ-ポリカーボナート、ヒドロキシル基を含有するポリエステルアミド、またはヒドロキシル基を含有するオレフィン性不飽和化合物の共重合体とから得られたこれらのNCOプレポリマーも、当然使用することができる。
【0102】
イソシアネート基に対して反応性である基、特にヒドロキシルを有し、且つ上記NCOプレポリマーの製造に適した化合物は、例えば、米国特許第4,218,543号に開示される化合物である。上記NCOプレポリマーの製造において、イソシアネート基に対して反応性である基を有するこれらの化合物を、NCO過剰を維持しつつ、例として上述した種類の単純なポリイソシアネートと反応させる。上記NCOプレポリマーのNCO含有量は一般に10~26重量%、好ましくは15~26重量%である。このことから既に明らかになっていることではあるが、本発明の文脈において、「NCOプレポリマー」または「末端イソシアネート基を有するプレポリマー」とは、反応生成物それ自体及び、しばしば「セミプレポリマー」とも呼ばれる、過剰量の未反応出発ポリイソシアネートとの混合物の両方を意味すると理解されるべきものである。
【0103】
OH価が>500mgKOH/gである可能な脂肪族ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、プロパン-1,3-ジオールなどのポリウレタン化学において通常使用される鎖延長剤である。2-ブタン-1,4-ジオール、ブテン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、及び/または2-メチルプロパン-1,3-ジオールなどのジオールが好ましい。脂肪族ジオールを互いに混合して用いることも当然可能である。
【0104】
好適なH活性成分は、平均OH価が5~600mgKOH/gであり、且つ平均官能価が2~6であるポリオールである。平均OH価が10~50mgKOH/gであるポリオールが好ましい。本発明にかかる好適なポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ジヒドロキシブタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、またはスクロースなどの適宜のスターター分子のアルコキシル化によって入手可能なポリヒドロキシ-ポリエーテルである。アンモニアまたはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、アニリン、もしくはアミノアルコールなどのアミン、またはビスフェノールAなどのフェノール類も同様にスターターとして機能することができる。上記アルコキシル化は、プロピレンオキシド及び/またはエチレンオキシドを、任意且つ所望の順序でまたは混合物として使用して行われる。
【0105】
ポリオールに加えて、アミン及びアミノアルコール、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、N,N’-ジメチル(ジエチル)-エチレンジアミン、2-アミノ-2-メチル(またはエチル)-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル(エチル)-1,3-プロパンジオール、ならびにアルコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ジヒドロキシブタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセリン及びペンタエリトリトール、及びソルビトール及びスクロース、またはこれらの化合物の混合物を含む群から選択される少なくとも1種の更なる架橋剤及び/または鎖延長剤が更に存在してもよい。
【0106】
それ自体が公知の方法で、低分子量アルコールの、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸などの多官能性カルボン酸、またはこれらの酸の無水物との反応によって入手可能なものなどのポリエステルポリオールは、当該H活性成分の粘度が高くなり過ぎない限り更に好ましい。エステル基を含有する好ましいポリオールはヒマシ油である。また、樹脂、例えばアルデヒド-ケトン樹脂を溶解することによって得ることができるようなヒマシ油を含む配合物、及び他の天然油をベースとするヒマシ油及びポリオールの変性物も好適である。
【0107】
より高分子量のポリヒドロキシ-ポリエーテルであって、その中に高分子量の重付加物または重縮合物またはポリマーが、微細に分散した、溶解した、またはグラフトされた形態で存在する上記ポリヒドロキシ-ポリエーテルも同様に好適である。かかる変性ポリヒドロキシ化合物は、例えば、重付加反応(例えば、ポリイソシアネートとアミノ官能性化合物との間の反応)または重縮合反応(例えば、ホルムアルデヒドとフェノール及び/またはアミンとの間)が、上記ヒドロキシル基を含有する化合物中、イン・シチュで進行する場合には、それ自体は公知の方法で得られる。但し、既製の水性ポリマー分散液をポリヒドロキシ化合物と混合し、次いでその混合物から水を除去することも可能である。
【0108】
例えば、ポリエーテルまたはポリカーボナートポリオールの存在下でスチレン及びアクリロニトリルを重合することによって得られるような、ビニルポリマーで変性されたポリヒドロキシ化合物もまた、ポリウレタンの製造に好適である。DE-A 2 442 101、DE-A 2 844 922、及びDE-A 2 646 141に従って、ビニルホスホン酸エステル及び任意選択で(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、またはOH官能性(メタ)アクリル酸エステルを用いたグラフト重合により変性されたポリエーテルポリオールが使用される場合、特定の難燃性のプラスチックが得られる。
【0109】
H-活性化合物として用いられることとなる、代表的な言及された化合物は、例えば、High Polymers, vol. XVI, “Polyurethanes Chemistry and Technology”, Saunders-Frisch (ed.) Interscience Publishers, New York, London, vol. 1, p. 32-42, 44, 54 and vol. II, 1984, p. 5-6 and p. 198-199に記載される。
【0110】
記載した化合物の混合物も使用することができる。
【0111】
上記H活性成分の平均OH価及び平均官能価は、特に、得られるポリウレタンの脆性の増大に起因して制限される。但し、当業者は当該ポリウレタンの物理的なポリマー特性に影響を与える可能性を原理的には理解しており、その結果上記NCO成分、脂肪族ジオール、及びポリオールを有利な形態で互いに調整することができる。
【0112】
ポリウレタン層(b)は発泡体であってもよく、またはラッカーもしくは被膜のように中実であってもよい。
【0113】
例えば離型剤、発泡剤、充填材、触媒、及び防炎剤などの、それ自体は公知の全ての補助物質及び添加剤を、その製造に用いてもよい。
【0114】
この文脈において、任意選択で用いられることとなる補助物質及び添加剤は、
a)発泡剤としての水及び/または易揮発性の無機もしくは有機物質
b)触媒
c)乳化剤及び泡安定剤などの界面活性添加剤
d)反応遅延剤
e)添加剤
である。
【0115】
本発明に従って用いられることとなるラッカーとしては、1-C及び2-Cラッカー系、好ましくは水性ラッカーが挙げられる。本発明の文脈における2成分ラッカー(2-C)はまた、本発明に係る水性ラッカーに加えて硬化剤も含有する。
【0116】
一実施形態によれば、本発明に係る水性ラッカーは1成分ラッカーである。
【0117】
上記に代わる実施形態において、少なくとも片面上の被膜は水性2成分ポリウレタンラッカーである。
【0118】
本発明に従って用いられることとなる2成分ポリウレタンラッカーは、一実施形態において、該ラッカーが好ましくは本質的に、
(a)任意選択で有機溶媒または有機溶媒混合物が共存する、任意選択で親水化されたポリイソシアネート、
(b)水中の且つ任意選択で有機溶媒または有機溶媒混合物が共存する、イソシアネートに対して反応性である基を有し、且つ任意選択で親水性化された化合物、
(c)任意選択で更なる添加剤及び補助物質
(ここで、(a)+(b)の量が20~100重量部であり、(c)の量が0~80重量部であり、但し、個々の成分(a)~(c)の重量部の合計が100である)
を、含有することを特徴とする。
【0119】
本発明の文脈における2成分系とは、ラッカーであって、該ラッカー中の成分(a)及び(b)が、該成分の反応性のために別個の容器中に貯蔵されなければならないかまたは貯蔵する必要がある上記ラッカーを意味すると理解されるべきものである。上記2成分は塗布の直前に混合され、次いで一般には更に活性化を行うことなく反応する。
【0120】
上記(ポリ)イソシアネート成分(a)は、好ましくは、脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、及び/または芳香族に結合した遊離イソシアネート基を有し、且つ室温において液体であるか、または室温において液体であることを目的として溶媒で希釈されている、任意且つ所望の有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネート成分(a)の23℃における粘度は、有利には、10~15,000mPa・s、好ましくは10~5,000mPa・sである。ポリイソシアネート成分(a)は、特に好ましくは、(平均)NCO官能価が2.0~5.0であり、且つ23℃における粘度が10~2,000mPa・sである、脂肪族及び/または脂環式に結合したイソシアネート基のみを有するポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0121】
好ましくは、水性2成分ポリウレタンラッカー由来の特に高いレベルのラッカー技術を得るためには、遊離NCO基を有するポリイソシアネートを架橋剤として用いる。好適なかかる架橋剤樹脂は、例えば、イソホロン-ジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、1,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、ビス-(4-イソシアネートシクロヘキシル)-メタン、1,3-ジイソシアネートベンゼン、2,4-及び/または2,6-ジイソシアネートトルエン(TDI)、ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)、ならびにω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)をベースとするポリイソシアネートである。イソホロン-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、ビス-(4-イソシアネートシクロヘキシル)-メタン、及びω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)をベースとするポリイソシアネートが好ましい。
【0122】
上述したジイソシアネートは、任意選択で、それ自体として用いてもよいが、一般には、該ジイソシアネートの誘導体が用いられる。好適な誘導体は、ビウレット、イソシアヌラート、ウレトジオン、ウレタン、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、カルボジイミド、アシル尿素、及びアロファナート基を含有するポリイソシアネートである。
【0123】
好ましい誘導体は、イソシアヌラート、イミノオキサジアジンジオン、及びウレトジオン構造を有する誘導体である。イソホロン-ジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレン-ジイソシアネート(HDI)、1,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、ビス-(4-イソシアネートシクロヘキシル)-メタン由来のこれらの構造要素を有する低モノマーラッカーポリイソシアネートが特に好ましい。
【0124】
例えばTIN(トリイソシアネートノナン)などのトリイソシアネートも好適である。
【0125】
(ポリ)イソシアネート成分(a)は、任意選択で親水性に変性してもよい。例えば、カルボキシラート基、スルホナート基、及び/またはポリエチレンオキシド基及び/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基を用いた変性によって、水溶性あるいは水分散性ポリイソシアネートを得ることができる。
【0126】
不足した量の単官能性、親水性のポリエーテルアルコールとの反応によって、ポリイソシアネートの親水化が可能である。かかる親水性化ポリイソシアネートの製造は、例えば、EP-A 0 540 985,3ページ,55行目-4ページ,5行目に記載される。EP-A-0 959 087,3ページ,39-51行目に記載される、アロファナート基を含有し、且つアロファナート化条件下での低モノマーポリイソシアネートのポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとの反応によって製造されるポリイソシアネートも特に好適である。DE-A 10 007 821,2ページ,66行目-3ページ,5行目に記載される、トリイソシアネートノナンをベースとする水分散性ポリイソシアネート混合物、ならびに例えば、DE-A 10 024 624, 3ページ,13-33行またはWO 01/88006にも記載されるような、イオン性基(スルホナート基、ホスホナート基)で親水性化されたポリイソシアネートも好適である。乳化剤の添加による外部からの親水性化も同様に可能である。
【0127】
用いられるポリイソシアネート成分(a)のNCO含有量は、例えば、いわゆるポリエーテルアロファナート(ポリエーテルによる親水性化)の場合、5~25重量%の範囲であってよい。スルホン酸基による親水化の場合には、4~26重量%のNCO含有量を達成することができる。但し、これらの数値は例としてのものに過ぎないと理解されるべきものである。
【0128】
用いられる上記イソシアネート成分は、イソシアネートに対して反応性である成分によって、存在するイソシアネート基の最大3分の1まで、部分的にブロックされていてもよい。この場合、更に架橋させるために、後のステップにおいて、ブロックされたイソシアネート成分の更なるポリオールとの反応を行ってもよい。
【0129】
これらのポリイソシアネート向けの好適なブロッキング剤は、例えば、単官能性アルコール、例えばアセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム、ε-カプロラクタムなどのラクタム、フェノール、ジイソプロピルアミン、またはジブチルアミンなどのアミン、ジメチルピラゾールまたはトリアゾール、及びマロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、またはマロン酸ジブチルエステルである。
【0130】
脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、及び/または芳香族イソシアネート、特に好ましくは脂肪族または脂環式イソシアネートをベースとした遊離イソシアネート基を有する、低粘度の、疎水性の、または親水性化したポリイソシアネートを用いることが好ましい。というのも、このような方法において、上記ラッカーフィルムの特に高レベルの特性が達成されるからである。本発明に係る結合剤分散液の利点は、これらの架橋剤との組み合わせにおいて最も明確に現れる。これらのポリイソシアネートは一般に23℃において10~3,500mPa・sの粘度を有する。必要な場合には、上記ポリイソシアネートを、粘度を記載した範囲内の値まで下げるために少量の不活性溶媒との混合物で用いてもよい。トリイソシアネートノナンも、上記架橋剤成分として、単独でまたは混合物で用いてもよい。
【0131】
種々のポリイソシアネートの混合物を用いることも、原則として当然可能である。
【0132】
イソシアネートに対して反応性である基を有する好適な化合物(b)は、例えば、ヒドロキシル基、スルホナート基及び/またはカルボキシラート基、好ましくはカルボキシラート基、及び任意選択でスルホン酸基及び/またはカルボキシル基、好ましくはカルボキシル基を含む、オレフィン性不飽和モノマーのポリマー(いわゆるポリアクリラートポリオール)、ジオールとジカルボン酸との組み合わせのポリマー(いわゆるポリエステルポリオール)、ジオールと、ジカルボン酸と、ジイソシアネートとの組み合わせのポリマー(いわゆるポリウレタンポリオール)、及び/またはポリオール類のハイブリッド系のポリマー、例えば、ポリアクリラート-ポリエステルポリオール、ポリアクリラート-ポリウレタンポリオール、ポリエステル-ポリウレタンポリオール、もしくはポリエステル-ポリウレタンポリオールであって、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる分子量Mn(数平均)が500~50,000、特には1,000~10,000であり、ヒドロキシル価が16.5~264mgKOH/gの固体樹脂、好ましくは33~165mgKOH/gの固体樹脂であり、(非中和スルホン酸及び/またはカルボキシル基に基づく)酸価が0~150mgKOH/gの固体樹脂、好ましくは0~100mgKOH/gの固体樹脂であり、且つスルホナート基及び/またはカルボキシル基の含有量が5~417ミリ当量/100g-固体、好ましくは24~278ミリ当量/100g-固体である上記ポリマーである。
【0133】
これらのアニオン性基は、特に好ましくはカルボキシラート基である。種々の結合剤の概説は、例えば、EP-A 0 959 115, p. 3, l. 26-54に記載される。但し、単純なジオール成分も用いることができる。水に溶解または分散し、イソシアネートに対して反応性である基を有する全ての結合剤は、原則として結合剤成分(b)として好適である。これらの結合剤としては、例えば、水に分散し、ウレタンまたは尿素基中に存在する活性水素原子に起因して、ポリイソシアネートと架橋することができるポリウレタンまたはポリ尿素も挙げられる。但し、ポリオール、すなわち遊離OH基を有する化合物が好ましい。結合剤成分(b)は一般に、10~60重量%、好ましくは20~50重量%強度の水溶液及び/または水分散液の形態で、上記被覆組成物の製造に用いられ、一般に、上記水溶液及び/または水分散液の粘度は10~105mPa・s/23℃、好ましくは100~10,000mPa・s/23℃であり、pHの値は5~10、好ましくは6~9である。補助的な溶媒を任意選択で用いてもよい。結合剤成分(b)の分子量及びそのアニオン性基または遊離酸基、特にカルボキシル基の含有量に応じて、当該ポリマーを含有する水性系は、真の分散液、コロイド分散液、または分子分散液になるが、一般的にはいわゆる「部分分散液」、すなわち部分的に分子分散し、且つ部分的にコロイド分散する水性系である。
【0134】
成分(a)由来のイソシアネート基の、成分(b)由来のヒドロキシル基などのイソシアネートに対する反応性基に対する比(NCO-OH比)は広範囲にわたっていてもよい。従って、0.2:1.0~4.0:1.0の比をラッカー技術用途に用いてもよい。0.35:1~2.0:1.0の範囲が好ましく、1.0:1.0~1.5:1.0が特に好ましい。
【0135】
任意選択で、1~10,000ppmの市販の触媒を上記組成物に添加してもよい。
【0136】
本発明に係る水性結合剤分散液の製造前、製造中、または製造後に、及び少なくとも1種の架橋剤の添加により被覆組成物を製造する場合にも、例えば消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、(c)とは異なる更なる触媒、スキン層保護剤、沈降防止剤、または乳化剤などのラッカー技術の従来の補助物質及び添加剤(d)を添加してもよい。
【0137】
本コンポジット物品は、単一の射出成型機または2以上の射出成型機(例えば、基材層を成型するための第1の成型機及びカバー層を成型するための第2の成型機)で製造してもよい。好ましくは、基材層を金型中で成型することができ、且つ該基材層を金型から取り出すことなく、該基材層の上にカバー層を成型することができるように、本コンポジット物品を単一の成型機で製造する。例えば、上記カバー層を形成するための重合性組成物を導入するための空隙が上記基材層の表面上に存在するように、上記基材層を成型した後に金型のキャビティの容積が変化してもよい。
【0138】
上記プロセスは、上記ポリマー組成物の軟化温度を超える温度(例えば、ポリカーボナートのガラス転移温度を超える温度)で該ポリマー組成物を金型中に射出成型するステップを含んでいてもよい。金型温度は、好ましくは、当該ポリカーボナートが金型内で固化するように、(例えば、当該ポリカーボナートのガラス転移温度よりも低い温度に冷却することによって)十分に低い温度とする。
【0139】
上記2成分ポリウレタン系は、溶媒として水及び/または有機溶媒またはそれらの混合物を含有していてもよい。
【0140】
本明細書の教示に係るコンポジット物品は、自動車用途及び非自動車用途に用いてもよい。好ましい自動車用途としては、自動車内装部品及び自動車外装部品が挙げられる。本コンポジット物品は目に見える用途に特に有用である。好ましい部品としては、自動車用内装トリム装飾部品(例えばダッシュボード及びドアパネル)ならびに自動車用外装トリム部品(例えばAピラー及びBピラー用)が挙げられる。
【0141】
本明細書の教示に係るコンポジット物品は、自動車用途及び非自動車用途に用いてもよい。好ましい自動車用途としては、自動車内装部品及び自動車外装部品が挙げられる。本コンポジット物品は目に見える用途に特に有用である。好ましい部品としては、自動車用内装トリム装飾部品(例えばダッシュボード及びドアパネル)ならびに自動車用外装トリム部品(例えばAピラー及びBピラー用)が挙げられる。
【0142】
試験方法
線熱膨張係数
線熱膨張係数(CLTE)はISO1359-2に準拠して、(ISO527-1に用いられる)ISO棒状引張試験片に対して-30℃~30℃の温度の間で測定する。
【0143】
剛性/弾性率
引張弾性率はISO527-1、-2に準拠して、約23℃で測定する。
【0144】
曲げ弾性率
曲げ弾性率はISO178に準拠して測定する。
【0145】
分子量
重量平均分子量、数平均分子量、及び多分散度指数は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定する。
【0146】
接着
接着は、DeFelskoから市販されているPosiTest(登録商標)AT-A自動接着試験機を用いて測定する。台車をカバー層に接着剤で貼付し、このカバー層を台車の周囲に沿って切断する。カバー層を剥離する力を測定する。別段の明記がない限り、上記台車の径は約20mmである。
【0147】
老化耐久性
老化耐久性は、老化した試料について、本明細書に記載のPosiTest(登録商標)AT-A自動接着試験機を用いて測定する。主な老化試験の例を以下に示す。
【0148】
短時間熱サイクル試験:Volkswagen PV1200老化試験
各サイクルは720分間(12時間)続き、(1)当該部品を相対湿度80%で23℃から80℃まで60分かけて加熱し;(2)80℃及び80%の相対湿度で240分間保持し;(3)-40℃まで120時間かけて冷却し、同時に湿度を低下させて氷点付近で約30%の相対湿度とし、且つ氷点下では湿度を制御せず;(4)-40℃で240分間保持し;(5)-40℃から23℃まで60分間加熱し、同時に湿度調節する(温度が0℃を通過する際に約30%の相対湿度)。別段の明示がない限り、当該試料を8サイクル(すなわち約96時間)繰り返し処理する。
【0149】
熱光老化試験:VDA75202
VDA75202はXENOTEST ALPHA試験装置を用いて実施する。試験条件はタイプ3である。曝露期間の回数は4回である。ブラックスタンダード温度は約90℃である。温度は約65℃であり、相対湿度は10~30パーセントである。照射強度60W/m2である(300~400nmの波長範囲にわたって測定)。
【0150】
熱-酸化老化
熱-酸化老化はオーブン内で約120℃の一定温度で約240時間実施する。
【0151】
太陽光シミュレーション試験-DIN75220屋内1T
上記試験は、約80℃及び30%未満の相対湿度で240時間行う。照射強度は約830W/m2である。スペクトルエネルギーは、約6.9%のUV光(295~400nm)、約59.7%の可視光(400~800nm)、及び約48.6%の赤外光(800~2450nm)である。
【0152】
加水分解試験(DBL7384-8.1.18に基づく)
試験は90℃、相対湿度約98~100パーセントで72時間行う。
【0153】
メルトフローレート
別段の明示がない限り、メルトフローレートはISO1133に準拠して測定し、g/10分の単位で表示する。ポリカーボナートポリマーについては、メルトフローレートは約300℃の温度及び約1.2kgの荷重で測定する。アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂(例えばABS熱可塑性樹脂)については、メルトフローレートは約220℃の温度及び約10.0kgの荷重で測定する。スチレン-アクリロニトリル共重合体については、メルトフローレートは約230℃の温度及び約3.8kgの荷重で測定する。PCABS樹脂については、メルトフローレートは、約260℃の温度及び約5.0kgの荷重で測定する。
【0154】
本明細書に記載されるいずれの数値も、いずれの低い方の値といずれの高い方の値との間に少なくとも2単位の開きがあるという条件で、1単位の増分で上記低い方の値から高い方の値までの全ての値を含む。例として、成分の量または例えば温度、圧力、時間などのプロセス変数の値が、例えば1~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70であると記載される場合には、15~85、22~68、43~51、30~32などの値が本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満の値については、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01、または0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されていることの例に過ぎず、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、同様に本出願において明示的に記述されているとみなされる必要がある。理解することができようが、本明細書において「重量部」として表される量の教示も、重量パーセントで表される同一の範囲を企図する。したがって、発明の詳細な説明における「得られるポリマー配合物組成物の「x」重量部」による範囲の表現も、「得られるポリマー配合物組成物の重量パーセントでの「x」」の同一の記載される量の範囲の教示を企図する。
【0155】
別段の明示がない限り、全ての範囲は両方の端点及び当該端点間の全ての数を含む。範囲に関して「約」または「おおよそ」を用いる場合は、当該範囲の両端に適用される。したがって、「約20~30」は、少なくとも明示された端点を含んで、「約20~約30」に及ぶことを意図する。
【0156】
特許出願及び刊行物を含む全ての論文及び参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照により援用される。組合せを記述するための用語「~から本質的になる」は、特定された要素、成分、構成要素、またはステップ、ならびに当該組合せの基礎的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないような他の要素、成分、構成要素、またはステップを含むものとする。本明細書における、要素、成分、構成要素、またはステップの組み合わせを記述するための「含む」(comprising)または「含む」(including)という用語の使用も、当該要素、成分、構成要素、またはステップから本質的になる実施形態を企図する。
【0157】
複数の要素、成分、構成要素、またはステップは、単一の統合された要素、成分、構成要素、またはステップによって与えられてもよい。あるいは、単一の統合された要素、成分、構成要素、またはステップは、別個の複数の要素、成分、構成要素、またはステップに分割されてもよい。要素、成分、構成要素、またはステップを記述するための「a」または「1つの(one)」の開示は、更なる要素、成分、構成要素、またはステップを排除することを意図するものではない。
【0158】
上述の説明は例示であり限定するものではないことを意図することが理解されよう。上述の説明を読めば、当業者には、提供される実施例以外にも多くの実施形態ならびに多くの用途が明らかとなろう。したがって、本発明の範囲は上述の説明を参照して判定されるべきものではなく、添付の特許請求の範囲を、かかる特許請求の範囲の権利が及ぶ均等物の全ての範囲と共に参照し、判定されるべきものである。特許出願及び刊行物を含む全ての論文及び参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照により援用される。添付の特許請求の範囲において、本明細書に開示される主題のいずれかの態様が記載されない場合、それは、かかる主題の権利放棄でもなく、また本発明者らがかかる主題を、開示される発明の主題の一部ではないと考えていると見なされるべきものでもない。
【0159】
材料
ABS-Aは、密度が(ISO1183に準拠して測定して)約1.05g/cm3のであり、メルトフローレートが(ISO1133に準拠し、220℃/10kgで測定して)約13g/10分であるMAGNUM(登録商標)8434アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂(TRINSEOから市販)である。Magnum(登録商標)8434は塊状重合法ABSであり、約10~12重量パーセントのブタジエン、約65~70重量パーセントのスチレン、及び約20~24重量パーセントのアクリロニトリルを含む。
【0160】
ABS-Bは、密度が(ISO1183に準拠して測定して)約1.05g/cm3であり、メルトフローレートが(ISO1133に準拠し、220℃/10kgで測定して)約4.5g/10分であるMAGNUM(登録商標)3904アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂(TRINSEOから市販)である。Magnum(登録商標)3904は塊状重合法ABSである。曲げ弾性率は(ISO178に準拠し、3.2mm厚の射出成型試験試料で測定して)約276kpsiである。破断点引張ひずみ(降伏)は(ISO527-2/50に準拠し、3.2mm厚の射出成型試験試料で測定して)約2.6%である。
【0161】
グラフト法ABS-Aは、KUMHO PETROCHEMICALから市販されているKumho(登録商標)HR181である。ゴム含有量は57~60重量パーセントである。ゴム粒径は0.35~0.40μmである。
【0162】
充填材Aは、NYCO MINERALSから市販されているNYGLOS(登録商標)4W 10992珪灰石である。充填材Aは、約46.15重量パーセントのCaO、約51.60重量パーセントのSiO
2、約0.77重量パーセントのFe
2O
3、約0.34重量パーセントのAl
2O
3、約0.16重量パーセントのMnO、約0.38重量パーセントのMgO、約0.05重量パーセントのTiO
2、及び約0.05重量パーセントのK
2Oを含むCaSiO
3の化学組成を有する。充填材Aは、
図2に示すような、アスペクト比が約11:1である針状構造を有する。充填材Aのモース硬度は約4.5であり、中央粒径(CilasGranulometer)は約4.5μmであり、(Apline Jet Sieve)マイナス325アメリカメッシュスクリーンを約99.9パーセント通過であり、G.E.明度はASTM E07に準拠して測定して約92であり、嵩密度(ゆるみ)はASTM C87に準拠して測定して約0.2g/cm
3であり、嵩密度(タップ)はASTM C87に準拠して測定して約0.35であり、吸油量はASTM D281に準拠して測定して約75ポンド/100ポンドであり、比重は約2.9である。上記珪灰石は有機サイズ剤で被覆されている。
【0163】
充填材Bはガラス繊維であり、JOHNSMANVILLEから市販されている、サイズ剤で被覆されたチョップド型繊維ThermoFlow(登録商標)720である。上記繊維はEガラス繊維(アルミノホウケイ酸ガラス)であり、公称フィラメント径は約13μm、長さは約4.7mmである。
【0164】
充填材Cはタルク充填材である。
【0165】
PC-Aは、メルトフローレート(すなわちメルトマスフローレート)がISO1133に準拠し、300℃/1.2kgで測定して約10g/10分である、ビスフェノールAの線状ポリカーボナートである。PC-Aの引張弾性率は約2300MPaであり、降伏点引張強さは約60.0MPaであり、破断点引張強さは約71.0MPaであり、降伏点引張伸びは約6%であり、破断点引張伸びは約150%である(全てISO527-2/50に準拠して測定)。PC-Aの屈折率は、ISO489に準拠して測定して約1.586であり、光透過率は約89.0%及び曇り度は約1.0%(共にASTM D1003に準拠して測定)である。PC-Aの曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定して約2400MPaであり、シャルピーノッチ付き衝撃強さは、ISO179/e1Aに準拠し、23℃で測定して35kJ/m2であり、ノッチ付きアイゾット衝撃値は、ISO180/Aに準拠し、23℃で測定して90kJ/m2であり、ノッチなしアイゾット衝撃値は、ISO180に準拠し、23℃で測定して「破断せず」である。PC-Aの線熱膨張係数は、ASTM D696に準拠して測定して、-40℃~82℃で約6.8×10-5cm/cm/℃である。PC-AはTRINSEOからCALIBRE(商標)300-10ポリカーボナート樹脂として市販されている。
【0166】
エチレン共重合体AはAmplify EA101である。
【0167】
添加剤パッケージAは熱安定剤及び加工助剤を含む添加剤パッケージである。上記添加剤パッケージには、CCSAN BLACK高濃度着色剤、Irganox 1076、及びLOXIOL EP861が約10:1:2の重量比で含まれる。
【0168】
ポリ尿素系Aは高透明ポリ尿素被覆系である。
【0169】
ポリ尿素系Bは黒色ポリ尿素系である。この系にはイソシアネート及びアセタートを含む2K硬化剤が含まれる。
【0170】
ポリウレタン系Aは、カバー層を着色するための着色剤ペーストを含むポリウレタン系である。
【表1】
【表2】
【表3】
【0171】
実施例1は、表1に示すポリマー組成物を射出成型することによって製造する。ホッパーからノズルまでの温度プロファイルは240/250/255/260℃であり、ホットランナーの温度は約275℃である。スクリュー径は約55mmである。クッションは約3.8cm3である。可塑化時間は約11秒である。射出量は約247.1cm3であり、射出時間は約1.45秒である。射出圧力は約1500バールであり、背圧は約100バールである。射出速度は約125cm3/秒である。保持圧力は、それぞれ0.5秒間で、450/400/350バールである。金型の温度は約80℃であり、冷却時間は約70秒である。基材層の厚さは約3.4mmである。部品重量は約222.5gである。基材層を冷却した後、重合性組成物を射出するための空隙を設けるためにキャビティを拡張する。基板層の表面上に空隙を形成する。重合性組成物をキャビティ中に射出して上記空隙を充填し、基材層の表面を接触させる。このステップの間の金型温度は約80℃である。カバー層が部分的に重合した後、当該コンポジット部品をキャビティから取り出す。総サイクル時間は約105秒である。このコンポジット材料の全厚は約4.76mmである。
【0172】
上記重合性組成物は2KポリウレタンRIM系である。
【0173】
上記カバー層と基板層との間の接着は、PosiTest AT-Aを用いて測定する。台車の大きさは約20mmである。
【0174】
製造したままの状態の試料について接着を測定する。接着はまた、Volkswagen PV1200に準拠した気候老化後にも測定する。接着はまた、90℃で72時間の熱老化の後にも測定する。結果を表1に示す。
【0175】
実施例2~4を、上記ポリマー組成物が表1に示す充填材を含むことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。実施例2は、珪灰石を含む。実施例3はガラス繊維を含む。実施例4はタルクを含む。
【0176】
実施例5を、上記ポリマー組成物が表2に記載する珪灰石及びエチレン共重合体を含むことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。
【0177】
実施例6を、異なる塊状重合法ABSを用い、上記組成物が珪灰石を含み、且つグラフト法ABSを用いないことを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。組成を表2に記載する。
【0178】
実施例7を、表2に示すポリマー組成物を用いることを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。この組成物はタルクを含む。
【0179】
実施例8を、カバー層がポリ尿素系Bであることを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。
【0180】
実施例9を、カバー層がポリウレタン系Aであることを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。
【0181】
実施例10を、カバー層がポリ尿素システムAであることを除いて、実施例1と同様の方法を用いて製造する。
【0182】
実施例8、9、及び10を、成型したままの状態及び以下の老化条件後に接着について試験する。
【0183】
加水分解老化:90℃及び98~100%の相対湿度で72時間。
【0184】
熱光老化-VDA75202に準拠し4日間。
【0185】
耐候性試験-Volkswagen PV1200に準拠し、8サイクル/96時間。
【0186】
熱-酸化老化-120℃で240時間。
【0187】
太陽光シミュレーション-DIN75220-10日間、80℃、830W/m2。
本開示には、以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
i)ポリカーボナート成分と、スチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む靭性化成分とを含む2種以上のポリマーを含む配合物であるポリマー組成物を含む基材層と、
ii)前記基材層に直接接着した、ポリウレタン及び/またはポリ尿素を含むカバー層と
を備える多層物品であって、
前記2種以上のポリマーの濃度が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約70重量パーセント以上(好ましくは約83重量パーセント以上、より好ましくは約88重量パーセント以上)、且つ約100重量パーセント以下(好ましくは約99重量パーセント以下)であり、前記ポリカーボナート成分及び前記靭性化成分の総重量が、前記ポリマー組成物の前記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約75重量パーセント~約100重量パーセントであり、前記ポリカーボナート成分の前記靭性化成分に対する重量比が、約10:90以上(好ましくは約20:80以上、より好ましくは約25:75以上)、且つ約55:45以下(好ましくは約50:50以下、より好ましくは約45:55以下)であり、前記耐衝撃性改質材の濃度が、前記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約3重量%以上(好ましくは約5重量パーセント以上、より好ましくは約7重量パーセント以上)、且つ約23重量パーセント以下(好ましくは約18重量パーセント以下、より好ましくは約15重量パーセント以下、最も好ましくは約13重量パーセント以下)である、前記多層物品。
[実施形態2]
前記ポリマー組成物中のポリエステルの量が約0重量パーセントまたは約5重量パーセント未満である、実施形態1に記載の多層物品。
[実施形態3]
前記耐衝撃性改質材がポリブタジエンゴムである、実施形態1または2に記載の多層物品。
[実施形態4]
前記靭性化成分が塊状重合法ABSを含む、実施形態1~3のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態5]
前記靭性化成分がグラフト法ABS耐衝撃性改質材(好ましくは、ポリブタジエン濃度が、前記グラフト法ABS耐衝撃性改質材の総重量を基準として、i)約45重量パーセント以上、より好ましくは約55重量パーセント以上、且つii)約85重量パーセント以下、より好ましくは約75重量パーセント以下である)を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態6]
前記ポリカーボナート成分が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約20重量パーセント~約55重量パーセント(好ましくは約20~約50重量パーセント、より好ましくは約25重量パーセント~約45重量パーセント、最も好ましくは約30~約45重量パーセント)の量で存在する、実施形態1~5のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態7]
前記ポリマー組成物が、前記スチレン-アクリロニトリル共重合体を含むスチレン含有相中に分散したポリブタジエン含有相を含むABS熱可塑性樹脂(すなわち、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン熱可塑性樹脂)を含み、前記スチレン-アクリロニトリル共重合体が、前記アクリロニトリル-スチレン共重合体の総重量を基準として、約60重量パーセント以上のスチレン(且つ、好ましくは約82重量パーセント以下のスチレン)及び約15重量パーセント以上のアクリロニトリル(且つ、好ましくは約33重量パーセント以下のアクリロニトリル)を含む、実施形態1~6のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態8]
前記スチレン-アクリロニトリル共重合体が、本質的に(例えば、約90重量%以上、約95重量%以上、約97重量%以上、または約99重量%以上の、好ましくは完全に)アクリロニトリル及びスチレンからなるランダム共重合体である、実施形態1~7のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態9]
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約3重量パーセント~約30重量パーセント(好ましくは約5重量パーセント~約23重量パーセント、最も好ましくは約7重量パーセント~約15重量パーセント)の量の強化用充填材を含む、実施形態1~8のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態10]
前記強化用充填材がガラス繊維、珪灰石、または両方を含む、実施形態9に記載の多層物品。
[実施形態11]
前記基材層の厚さが約0.3mm~約10mm(好ましくは約0.5mm~約5mm)であり、及び/または前記カバー層の厚さが約0.2mm~約1.5mm(好ましくは約0.3mm~約1.0mm、より好ましくは約0.3mm~約0.8mm)である、実施形態1~10のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態12]
前記カバー層が、空隙率が約20体積パーセント以下(好ましくは約10体積パーセント以下、より好ましくは約5体積パーセント以下、最も好ましくは約2体積%以下)の緻密な層である、実施形態1~11のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態13]
前記ポリマー組成物が、約0.2~約9重量パーセント(好ましくは約1~約7重量パーセント、更により好ましくは約1.5~約5重量パーセント、最も好ましくは約2~約4重量パーセント)の、官能化モノマーを含む1種または複数種のエチレン共重合体を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態14]
前記基材層が顔料または他の着色剤で着色されており、且つ前記カバー層が実質的に透明(clear)及び/または実質的に透明(transparent)であり、前記基材層が、酸化防止剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤、離型剤、及び流動性改質剤からなる群より選択される1種または複数種の添加剤を含む、実施形態1~13のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態15]
前記基材層が、空隙率が約10体積パーセント以下の緻密な基材層である、実施形態1~14のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態16]
前記基材層中の任意のスチレン共重合体であって、無水マレイン酸、マレイン酸、または前記スチレン共重合体にカルボキシル基を与える他のモノマーを含む前記スチレン共重合体の量が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として(例えば、前記基材層の総重量を基準として)約0.9重量パーセント以下である、実施形態1~15のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態17]
前記基材層中の前記充填材(好ましくは前記珪灰石またはガラス、より好ましくは前記珪灰石)、前記靭性化成分(好ましくは前記塊状重合法ABS及び任意の更なるスチレン-アクリロニトリル共重合体)、及び前記ポリカーボナートの総量が、前記基材層の総重量を基準として約95重量パーセント以上である、実施形態1~16のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態18]
前記充填材が有機サイズ剤を有する珪灰石を含む、実施形態1~17のいずれかに記載の多層物品。
[実施形態19]
i)金型キャビティ中において、ガラス転移温度を有するポリカーボナートを含み、表面を有する基材層の表面上に空隙を設けるステップと、
ii)前記金型キャビティ中にポリウレタン及び/またはポリ尿素を形成するための重合性組成物を射出するステップと、
iii)前記ガラス転移温度よりも低い温度の前記表面を前記重合性組成物と接触させるステップと、
iv)前記金型キャビティが閉じている間に前記ポリウレタン及び/または前記ポリ尿素を少なくとも部分的に重合させるステップと
を含み、
前記基材層が、前記ポリカーボナートと、スチレン-アクリロニトリル共重合体及び耐衝撃性改質材を含む靭性化成分とを含む2種以上のポリマーを含む配合物であるポリマー組成物を含み、前記2種以上のポリマーの濃度が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、約70重量パーセント以上(好ましくは約83重量パーセント以上、より好ましくは約88重量パーセント以上)、且つ約100重量パーセント以下(好ましくは約99重量パーセント以下)であり、前記ポリカーボナート及び前記靭性化成分の総重量が、前記ポリマー組成物の前記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約75重量パーセント~約100重量パーセントであり、前記ポリカーボナートの前記靭性化成分に対する重量比が、約10:90以上(好ましくは約20:80以上、より好ましくは約25:75以上)、且つ約55:45以下(好ましくは約50:50以下、より好ましくは約45:55以下)であり、前記耐衝撃性改質材の濃度が、前記2種以上のポリマーの総重量を基準として、約3重量%以上(好ましくは約5重量パーセント以上、より好ましくは約7重量パーセント以上)、且つ約23重量パーセント以下(好ましくは約18重量パーセント以下、より好ましくは約15重量パーセント以下、最も好ましくは約13重量パーセント以下)である方法。
[実施形態20]
実施形態1~18のいずれかに記載の多層物品を形成するために用いられる、実施形態19に記載の方法。