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特許7111712モジュール式大動脈弓補綴具アセンブリおよびその使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】モジュール式大動脈弓補綴具アセンブリおよびその使用の方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20220726BHJP
   A61F 2/954 20130101ALI20220726BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/954
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019529909
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017064439
(87)【国際公開番号】W WO2018106573
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/430,218
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511126109
【氏名又は名称】メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス, キース
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス, デニス
(72)【発明者】
【氏名】スタイガー, マーク
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/163957(WO,A1)
【文献】特表2014-516633(JP,A)
【文献】特表2014-526929(JP,A)
【文献】米国特許第06645242(US,B1)
【文献】特表2012-522565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0100650(US,A1)
【文献】特表2015-527156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
A61F 2/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大動脈弓内の血管内設置のために構成されている補綴アセンブリであって、前記補綴アセンブリは、
近位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は前記管状グラフトから延在する結合部も含み、前記結合部は、原位置で展開されたときに、第1の血管枝口の近位に位置付けられるように構成されており、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具が拡張構成であるときに、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、その全体の長さに沿って血管壁に接触するように構成されている外径を有する、近位大動脈ステントグラフト補綴具と、
遠位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、前記管状グラフトから延在する結合部も含み、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具が拡張構成であるときに、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、その全体の長さに沿って血管壁に接触するように構成されている外径を有する、遠位大動脈ステントグラフト補綴具と、
第1の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具が拡張構成であり、かつ、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具拡張構成であるときに、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の前記結合部を通して配置されるように構成されている、第1の分岐ステントグラフト補綴具と、
第2の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具が拡張構成であり、かつ、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具拡張構成であるときに、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の前記結合部を通して配置されるように構成されている、第2の分岐ステントグラフト補綴具
を備え
記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具がそれぞれの拡張構成であるときに、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように構成されており、前記重複は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の前記結合部が原位置で前記第1の血管枝口に対して近位に配置される場合に増加され
拡張構成における前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記重複に沿って延在し、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に配置され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面および前記大動脈弓の血管壁の両方に接触し、
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、拡張構成における前記第1の分岐ステントグラフト補綴具に接触することに起因して、拡張構成に対して部分的に圧潰するように構成されている、補綴アセンブリ。
【請求項2】
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具のそれぞれの前記結合部は環状支持体を含み、前記環状支持体は、前記結合部の上部に取り付けられ、かつ、前記結合部の上部の周囲に延在する、請求項1に記載の補綴アセンブリ。
【請求項3】
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具それぞれは、前記管状グラフトに結合されている複数のステントを含み、各ステントは、正弦波パターン化リングである、請求項1に記載の補綴アセンブリ。
【請求項4】
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈に隣接する前記大動脈弓の近位部分内に位置付けられるように構成されており、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で左鎖骨下動脈に隣接する前記大動脈弓の遠位部分内に位置付けられるように構成されており、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈内に位置付けられるように構成されている、請求項1に記載の補綴アセンブリ。
【請求項5】
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端は、原位置上行大動脈までの腕頭動脈口を経路変更するために、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の管腔内に配置されるように構成されている、請求項4に記載の補綴アセンブリ。
【請求項6】
第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の最近位ステントが原位置で前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端の近位にあるように、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の最近位ステントまで延在しない、請求項5に記載の補綴アセンブリ。
【請求項7】
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、原位置で左総頸動脈および左鎖骨下動脈のうちの1つの中に位置付けられるように構成されている、請求項4に記載の補綴アセンブリ。
【請求項8】
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具よりも高い半径方向力を及ぼすように構成されている、請求項1に記載の補綴アセンブリ。
【請求項9】
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具の近位端は、広がっている、請求項1に記載の補綴アセンブリ。
【請求項10】
大動脈弓内の血管内設置のために構成されている補綴アセンブリであって、前記補綴アセンブリは、
近位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、前記管状グラフトから延在する結合部も含み、前記結合部は、原位置で展開されたときに、第1の血管枝口に隣接して位置付けられるように構成されている、近位大動脈ステントグラフト補綴具と、
遠位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、前記管状グラフトから延在する結合部も含む、遠位大動脈ステントグラフト補綴具と、
第1の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記第1の分岐ステントグラフト補綴具それぞれ拡張構成であるときに、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の前記結合部を通して配置されるように構成されている、第1の分岐ステントグラフト補綴具と、
第2の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、前記管状グラフトに結合されている少なくとも1つのステントとを含み、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具および前記第2の分岐ステントグラフト補綴具それぞれ拡張構成であるときに、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の前記結合部を通して配置されるように構成されている、第2の分岐ステントグラフト補綴具と、
を備え
記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具がそれぞれの拡張構成であるときに、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように構成されており、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端は、前記重複に対して近位に位置付けられ、拡張構成における前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具が原位置で上行大動脈までの前記第1の血管枝口を経路変更するように、前記重複に沿って延在し、
前記重複に沿って延在する前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具内に延在し、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に挟持され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の両方に接触するように構成されており、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の前記近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の前記管腔内に配置されている前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の外面に当接し、かつ、それに接触するように構成されている、補綴アセンブリ。
【請求項11】
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈に隣接する前記大動脈弓の近位部分内に位置付けられるように構成されており、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で左鎖骨下動脈に隣接する前記大動脈弓の遠位部分内に位置付けられるように構成されており、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈内に位置付けられるように構成されている、請求項10に記載の補綴アセンブリ。
【請求項12】
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の前記結合部は、腕頭動脈口の近位に位置付けられ、前記重複に沿って延在する前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に延在する、請求項11に記載の補綴アセンブリ。
【請求項13】
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具よりも高い半径方向力を及ぼすように構成されている、請求項12に記載の補綴アセンブリ。
【請求項14】
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具よりも高い半径方向力を及ぼすように構成されている、請求項10に記載の補綴アセンブリ。
【請求項15】
大動脈弓内での展開において使用するための補綴アセンブリであって、前記補綴アセンブリは、近位大動脈ステントグラフト補綴具第1の分岐ステントグラフト補綴具遠位大動脈ステントグラフト補綴具第2の分岐ステントグラフト補綴具を備え
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、腕頭動脈に隣接する前記大動脈弓の近位部分内に位置付けられるように構成されており、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成であり、
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開されるように構成されており、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外径は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の前記拡張構成におけるその全体の長さに沿って血管壁に接触し、
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記腕頭動脈内で、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して位置付けられるように構成されており、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成であり、
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開されるように構成されており、
前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、左鎖骨下動脈に隣接する前記大動脈弓の遠位部分内位置付けられるように構成されており、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成であり、
前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開されるように構成されており、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の外径は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の拡張構成においてその全体の長さに沿って血管壁に接触し、
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、前記左鎖骨下動脈内で、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通し位置付けられるように構成されており、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成であり、
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、拡張構成に位置付けられるように構成されており、
前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置されており、前記重複は、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具が腕頭動脈口を近位に変位させること、および前記第2の分岐ステントグラフト補綴具が左鎖骨下動脈口を遠位に変位させることのうちの少なくとも1つによって、相対的に増加され
拡張構成における前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記重複に沿って延在し、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に配置され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面および前記大動脈弓の血管壁の両方に接触し、
拡張構成における前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、拡張構成における前記第1の分岐ステントグラフト補綴具に接触することに起因して、部分的に圧潰する、補綴アセンブリ。
【請求項16】
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記腕頭動脈口を近位に変位させ、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、前記腕頭動脈口の近位に位置付けられ、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に延在する、請求項15に記載の補綴アセンブリ。
【請求項17】
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記腕頭動脈口を近位に変位させ、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、前記腕頭動脈口に隣接して位置付けられ、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の管腔内に配置される前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の少なくとも一部の外面に対して当接し、それに接触する、請求項15に記載の補綴アセンブリ。
【請求項18】
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、左鎖骨下動脈口を遠位に変位させ、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、左鎖骨下動脈口の遠位に位置付けられ、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に延在する、請求項15に記載の補綴アセンブリ。
【請求項19】
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間の重複を相対的に増加させるために、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記腕頭動脈口を近位に変位させ、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、左鎖骨下動脈口を遠位に変位させる、請求項15に記載の補綴アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年12月5日に出願された米国仮特許出願番号第62/430,218号の出願日の米国特許法第119条(e)項の下の利益を主張しており、その内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、管腔内医療デバイスおよび手技に関し、より具体的には、血管内アプローチを介して大動脈弓を灌流させるように構成される、モジュール式アセンブリまたはシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
動脈瘤、解離、貫通性潰瘍、壁内血腫、および/または離断が、血管内で発生し、最も典型的には、大動脈および末梢動脈内で発生し得る。関与する大動脈の領域に応じて、動脈瘤は、そこからより小さい動脈「枝」が延在する、大動脈の血管分岐または区画を有する面積の中へ延在し得る。種々のタイプの大動脈瘤は、動脈瘤の関与の領域に基づいて、分類され得る。例えば、胸部大動脈瘤は、上行胸部大動脈、大動脈弓、および鎖骨下動脈等のそこから発出する動脈枝の中に存在する、動脈瘤を含み、また、下行胸部大動脈ならびに胸部肋間動脈および/または副腎腹部大動脈等のそこから発出する動脈枝、ならびに上腸間膜、腹腔、および/または肋間動脈等のそこから発出する動脈枝の中に存在する、動脈瘤も含む。最後に、腹部大動脈瘤は、横隔膜の下方の大動脈、例えば、腎傍大動脈および腎動脈等のそこから発出する動脈枝の中に存在する、動脈瘤を含む。
【0004】
胸部大動脈は、多数の動脈枝を有する。大動脈弓は、そこから延在する3つの主要分岐を有し、その全ては、通常、大動脈弓の凸状上面から生じ、胸郭上口を通して上行する。腕頭動脈は、気管の前方から生じる。腕頭動脈(BCA)は、2つの分岐、すなわち、右鎖骨下動脈(血液を右腕に供給する)および右総頸動脈(血液を頭部および頸部の右側に供給する)に分かれる。左総頸(LCC)動脈は、腕頭動脈の起源のちょうど左側で大動脈弓から生じる。左総頸動脈は、血液を頭部および頸部の左側に供給する。大動脈弓から生じる第3の分岐、すなわち、左鎖骨下動脈(LSA)は、左総頸動脈の起源の背後およびちょうど左側から生じ、血液を左腕に供給する。しかしながら、人口の大部分が、大動脈弓から生じる2つだけの大血管枝を有する一方で、他者は、大動脈弓から生じる4つの大血管枝を有する。本明細書でより詳細に解説されるであろうように、大血管枝の間の距離は、患者の間で著しく変動し、大動脈弓の解剖学的変動は、その治療を複雑にする。
【0005】
大動脈弓の胸部動脈瘤がある患者に関して、大動脈が、人工心肺装置を使用する手術において織物代用品と置換される、大動脈を置換するための外科手術が、実施され得る。そのような場合において、大動脈の動脈瘤部分が、除去または切開され、代用管腔が、それに跨架するように動脈瘤部分を横断して縫製される。そのような外科手術は、高度に侵襲性であり、長期的回復期間を要求し、したがって、虚弱体質の、または他の禁忌因子を伴う個人に、実施されることができない。
【0006】
代替として、大動脈の動脈瘤領域は、大動脈を通って流動する血液へのさらなる暴露から動脈瘤部分を密閉するように、管腔内に送達される管状排除デバイスの使用によって、例えば、血管の動脈瘤部分に跨架する血管の内側に設置されるステントグラフトによって、迂回されることができる。ステントグラフトは、通常、患者の鼠径領域中の切開を通して、動脈を通して導入される、特殊カテーテルを使用して、胸部切開を伴わずに埋め込まれることができる。大動脈または流動管腔内で、動脈瘤部位を内部で迂回するためのステントグラスの使用もまた、課題がないわけではない。特に、ステントグラフトが胸部場所において使用される場合、重要な動脈枝がステントグラフトによって被覆または閉塞されないが、ステントグラフトが大動脈壁に対して密閉し、血液が動脈瘤部位を越えて流動するための流動導管を提供するはずであるように、注意が払われなければならない。動脈瘤が動脈枝に直接隣接して位置する場合、大動脈からの動脈枝の起源の場所を横断して部分的または完全に延在する場所で、ステントグラフトを展開し、動脈壁へのステントグラフトの密閉を確実にする必要性がある。
【0007】
側枝に適応するために、その側壁内に穿孔または開口部を有する、主要血管ステントグラフトが、使用されてもよい。主要血管ステントグラフトは、その穿孔を血管枝口と整合させるように位置付けられる。使用時に、1つまたはそれを上回る側面開口部を有する、ステントグラフトの近位端は、事前に位置付けられ、その穿孔または開口部が、側枝の中への血流を遮断または制限することを回避するために、展開されたときに配向されるように、その場にしっかりと係留される。穿孔は、独力では緊密なシールを形成しない、またはそれを通して血液が隣接する側枝動脈の中へ導かれ得る、離散導管を含まない。結果として、血液漏出が、穿孔を囲繞するグラフト材料の縁と隣接する血管壁との間で、主要大動脈ステントグラフトの外面と周辺大動脈壁との間の空間の中へ発生する傾向がある。類似血液漏出が、ステントグラフトの埋込後転移または移動に起因し、穿孔と動脈枝との間の不整合を引き起こし、これはまた、動脈枝の中への流動の低下をもたらし得る。
【0008】
ある場合には、主要血管ステントグラフトは、多くの場合、分岐ステントグラフトと称される、別のステントグラフトによって補完される。分岐ステントグラフトは、血液が血管枝に流入するための導管を提供するように、穿孔を通して血管枝の中へ展開される。分岐ステントグラフトは、好ましくは、それと主要ステントグラフトとの間の望ましくない漏出を防止するように、原位置で(in situ)主要ステントグラフトに密閉して接続される。分岐ステントグラフトと主要ステントグラフトとの間の本接続は、原位置で効果的に作成することが困難であり得、潜在的漏出の部位である。
【0009】
ある事例では、分岐ステントグラフトが、その延在部として、主要ステントグラフトの中に組み込まれる、またはそれと一体的に形成される。そのような一体分岐ステントグラフト延在部は、送達のために主要ステントグラフトに対して折り畳まれ、または圧潰され、分岐ステントグラフト延在部を血管枝の中へ指向し、続いて、拡張するために、複数のスリーブおよびガイドワイヤを要求する、複雑な手技を要求する。さらに、ある事例では、そのような分岐ステントグラフト延在部は、それらの折り畳みまたは圧潰構成に戻る傾向があり、したがって、血管枝への非閉塞流路を提供しない。一体分岐ステントグラフト延在部の位置または場所がステントグラフト上に固定されるため、各一体分岐ステントグラフト延在部がそれらの意図された標的枝口と最適に整合されることを確実にするための機会がない。一体分岐ステントグラフト延在部と標的枝との間のオフセット整合は、カニューレ挿入および分岐ステントグラフト展開を困難にし、患者を閉塞性脳卒中の危険に曝し得る。したがって、一体分岐ステントグラフト延在部は、これらの設計のための患者適用性を有意に限定する、全ての患者解剖学的変動を治療するように最適化されない。
【0010】
患者生体構造の変動を治療するための別のアプローチは、特注設計血管内ステントグラフトの利用である。しかしながら、特注設計ステントグラフトは、有意なリードタイム、すなわち、6~8週間を要求し、設計および製造することが高価である。
【0011】
したがって、当技術分野では、大動脈等の主要血管から、大動脈弓の血管枝等のそこから発出する血管枝の中へ流動を指向するためのステントグラフト構造の改良の必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の簡単な要旨
本明細書の実施形態は、大動脈弓内の血管内設置のために構成される、補綴アセンブリであって、近位大動脈ステントグラフト補綴具と、遠位大動脈ステントグラフト補綴具と、第1の分岐ステントグラフト補綴具と、第2の分岐ステントグラフト補綴具とを含む、補綴アセンブリに関する。近位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントと、管状グラフトから延在する結合部とを含む。結合部は、原位置で展開されたときに、第1の血管枝口の近位に位置付けられるように構成される。遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントと、管状グラフトから延在する結合部とを含む。第1の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含み、第1の分岐ステントグラフト補綴具は、近位大動脈ステントグラフト補綴具および第1の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される。第2の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含み、第2の分岐ステントグラフト補綴具は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具および第2の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される。遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具が、それらの個別の拡張構成であるときに、近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように構成される。重複は、原位置で第1の血管枝口の近位に位置付けられる近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部に起因して、比較的増加される。
【0013】
本明細書の実施形態では、近位大動脈ステントグラフト補綴具は、腕頭動脈に隣接する大動脈弓の近位部分内に位置付けられるように構成され、遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、左鎖骨下動脈に隣接する大動脈弓の遠位部分内に位置付けられるように構成され、第1の分岐ステントグラフト補綴具は、腕頭動脈内に位置付けられるように構成され、第2の分岐ステントグラフト補綴具は、左総頸動脈および左鎖骨下動脈のうちの1つの中に位置付けられるように構成される。
【0014】
本明細書の実施形態では、近位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントと、管状グラフトから延在する結合部とを含む。遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントと、管状グラフトから延在する結合部とを含む。第1の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含み、第1の分岐ステントグラフト補綴具は、近位大動脈ステントグラフト補綴具および第1の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される。第2の分岐ステントグラフト補綴具は、管状グラフトと、管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含み、第2の分岐ステントグラフト補綴具は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具および第2の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される。遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具が、それらの個別の拡張構成であるときに、近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように構成される。その拡張構成における第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端が、重複の近位に位置付けられ、原位置で第1の血管枝口を効果的に近位に経路変更するように、重複に沿って延在する。
【0015】
本明細書の実施形態はまた、大動脈弓内で補綴アセンブリを展開する方法に関する。近位大動脈ステントグラフト補綴具が、腕頭動脈に隣接する大動脈弓の近位部分内に位置付けられる。近位大動脈ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である。近位大動脈ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開される。第1の分岐ステントグラフト補綴具が、腕頭動脈内で、近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して位置付けられる。第1の分岐ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である。第1の分岐ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開される。遠位大動脈ステントグラフト補綴具が、左鎖骨下動脈に隣接する大動脈弓の遠位部分内に位置付けられる。遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である。遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開される。第2の分岐ステントグラフト補綴具が、左鎖骨下動脈内で、遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して位置付けられる。第2の分岐ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である。第2の分岐ステントグラフト補綴具は、拡張構成に展開される。位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように、近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置される。重複は、第1の分岐ステントグラフト補綴具が腕頭動脈口を近位に変位させること、および第2の分岐ステントグラフト補綴具が左鎖骨下動脈口を遠位に変位させることのうちの少なくとも1つによって、相対的に増加される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
大動脈弓内の血管内設置のために構成される、補綴アセンブリであって、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、近位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具はまた、前記管状グラフトから延在する結合部も含み、前記結合部は、原位置で展開されたときに、第1の血管枝口の近位に位置付けられるように構成される、近位大動脈ステントグラフト補綴具と、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、遠位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記管状グラフトから延在する結合部も含む、遠位大動脈ステントグラフト補綴具と、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、第1の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記第1の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される、第1の分岐ステントグラフト補綴具と、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、第2の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具および前記第2の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される、第2の分岐ステントグラフト補綴具と、
を備え、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具が、それらの個別の拡張構成であるときに、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように構成され、前記重複は、原位置で前記第1の血管枝口の近位に位置付けられる前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部に起因して、相対的に増加される、
補綴アセンブリ。
(項目2)
前記近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具のそれぞれの結合部は、前記結合部の上部に取り付けられ、その周囲に延在する、環状支持体を含む、項目1に記載の補綴アセンブリ。
(項目3)
前記近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具はそれぞれ、前記管状グラフトに結合される複数のステントを含み、各ステントは、正弦波パターン化リングである、項目1に記載の補綴アセンブリ。
(項目4)
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈に隣接する前記大動脈弓の近位部分内に位置付けられるように構成され、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で左鎖骨下動脈に隣接する前記大動脈弓の遠位部分内に位置付けられるように構成され、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈内に位置付けられるように構成される、項目1に記載の補綴アセンブリ。
(項目5)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端は、原位置で腕頭動脈口から上行大動脈まで経路変更するために、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の管腔内に配置されるように構成される、項目4に記載の補綴アセンブリ。
(項目6)
第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の最近位ステントが原位置で前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端の近位にあるように、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の最近位ステントまで延在しない、項目5に記載の補綴アセンブリ。
(項目7)
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、原位置で左総頸動脈および左鎖骨下動脈のうちの1つの中に位置付けられるように構成される、項目4に記載の補綴アセンブリ。
(項目8)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具よりも高い半径方向力を及ぼすように構成される、項目1に記載の補綴アセンブリ。
(項目9)
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具の近位端は、広がっている、項目1に記載の補綴アセンブリ。
(項目10)
大動脈弓内の血管内設置のために構成される、補綴アセンブリであって、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、近位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記管状グラフトから延在する結合部も含む、近位大動脈ステントグラフト補綴具と、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、遠位大動脈ステントグラフト補綴具であって、前記管状グラフトから延在する結合部も含む、遠位大動脈ステントグラフト補綴具と、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、第1の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具および前記第1の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される、第1の分岐ステントグラフト補綴具と、
管状グラフトと、前記管状グラフトに結合される少なくとも1つのステントとを含む、第2の分岐ステントグラフト補綴具であって、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具および前記第2の分岐ステントグラフト補綴具がそれぞれ、拡張構成であるときに、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して配置されるように構成される、第2の分岐ステントグラフト補綴具と、
を備え、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具が、それらの個別の拡張構成であるときに、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように構成され、その拡張構成における前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端が、前記重複の近位に位置付けられ、原位置で第1の血管枝口を効果的に近位に経路変更するように、前記重複に沿って延在する、
補綴アセンブリ。
(項目11)
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈に隣接する前記大動脈弓の近位部分内に位置付けられるように構成され、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、原位置で左鎖骨下動脈に隣接する前記大動脈弓の遠位部分内に位置付けられるように構成され、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、原位置で腕頭動脈内に位置付けられるように構成される、項目10に記載の補綴アセンブリ。
(項目12)
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、腕頭動脈口の近位に位置付けられ、前記重複に沿って延在する前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に延在する、項目11に記載の補綴アセンブリ。
(項目13)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具よりも高い半径方向力を及ぼすように構成される、項目12に記載の補綴アセンブリ。
(項目14)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部の近位に位置付けられ、前記重複に沿って延在する前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具内に延在し、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に挟持される、項目11に記載の補綴アセンブリ。
(項目15)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具よりも高い半径方向力を及ぼすように構成される、項目14に記載の補綴アセンブリ。
(項目16)
大動脈弓内で補綴アセンブリを展開する方法であって、
腕頭動脈に隣接する前記大動脈弓の近位部分内に近位大動脈ステントグラフト補綴具を位置付けるステップであって、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である、ステップと、
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具を拡張構成に展開するステップと、
腕頭動脈内で、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して第1の分岐ステントグラフト補綴具を位置付けるステップであって、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である、ステップと、
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具を拡張構成に展開するステップと、
左鎖骨下動脈に隣接する前記大動脈弓の遠位部分内に遠位大動脈ステントグラフト補綴具を位置付けるステップであって、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である、ステップと、
前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具を拡張構成に展開するステップと、
左鎖骨下動脈内で、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部を通して第2の分岐ステントグラフト補綴具を位置付けるステップであって、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、送達のために圧縮構成である、ステップと、
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具を拡張構成に展開するステップと、
を含み、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間に重複を形成するように、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の遠位端内に配置され、前記重複は、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具が腕頭動脈口を近位に変位させること、および前記第2の分岐ステントグラフト補綴具が左鎖骨下動脈口を遠位に変位させることのうちの少なくとも1つによって、相対的に増加される、
方法。
(項目17)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、腕頭動脈口を近位に変位させ、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、腕頭動脈口の近位に位置付けられ、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に延在する、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、腕頭動脈口を近位に変位させ、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、前記腕頭動脈口に隣接して位置付けられ、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の近位端は、前記近位大動脈ステントグラフト補綴具の管腔内に配置される前記第1の分岐ステントグラフト補綴具の少なくとも一部の外面に対して当接し、それに接触する、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、左鎖骨下動脈口を遠位に変位させ、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の結合部は、左鎖骨下動脈口の遠位に位置付けられ、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具の一部は、前記遠位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と前記大動脈弓の血管壁との間に延在する、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記近位大動脈ステントグラフト補綴具と遠位大動脈ステントグラフト補綴具との間の重複を相対的に増加させるために、前記第1の分岐ステントグラフト補綴具は、腕頭動脈口を近位に変位させ、前記第2の分岐ステントグラフト補綴具は、左鎖骨下動脈口を遠位に変位させる、項目16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、大動脈弓の生体構造の概略側面図である。
【0017】
図2図2は、大動脈弓補綴アセンブリが、大動脈弓内で、原位置で展開され、組み立てられて示される、本明細書の実施形態による、大動脈弓補綴アセンブリの概略側面図である。
【0018】
図3図3は、大動脈弓補綴アセンブリが、原位置ではないが、展開され、組み立てられて示される、図2の大動脈弓補綴アセンブリの側面図である。
【0019】
図4図4は、近位大動脈ステントグラフト補綴具が、原位置ではないが展開されて示される、近位大動脈ステントグラフト補綴具であって、図2の大動脈弓補綴アセンブリのモジュールまたは構成要素である、近位大動脈ステントグラフト補綴具の概略側面図である。
【0020】
図5図5は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具が、原位置ではないが展開されて示される、遠位大動脈ステントグラフト補綴具であって、図2の大動脈弓補綴アセンブリのモジュールまたは構成要素である、遠位大動脈ステントグラフト補綴具の概略側面図である。
【0021】
図6図6は、第1の分岐ステントグラフト補綴具が、原位置ではないが展開されて示され、腕頭動脈内の設置のために構成される、第1の分岐ステントグラフト補綴具であって、図2の大動脈弓補綴アセンブリのモジュールまたは構成要素である、第1の分岐ステントグラフト補綴具の概略側面図である。
【0022】
図7図7は、第2の分岐ステントグラフト補綴具が、原位置ではないが展開されて示され、左総頸動脈または左鎖骨下動脈内の設置のために構成される、第2の分岐ステントグラフト補綴具であって、図2の大動脈弓補綴アセンブリのモジュールまたは構成要素である、第2の分岐ステントグラフト補綴具の概略側面図である。
【0023】
図8図8は、そこに結合された支持ワイヤフォームを伴う結合部を有する、近位大動脈ステントグラフト補綴具であって、図4の近位大動脈ステントグラフト補綴具の一部の概略接写図である。
【0024】
図9図9は、結合部から除去された図8の支持ワイヤフォームの概略斜視図である。
【0025】
図10図10は、本明細書の別の実施形態による、支持ワイヤフォームの概略斜視図である。
【0026】
図11図11は、その中に展開された分岐ステントグラフト補綴具を有する、図8の結合部の概略図である。
【0027】
図12図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図13図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図14図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図15図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図16図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図17図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図18図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図19図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図20図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図21図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図22図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
図23図12~23は、図2の大動脈弓補綴アセンブリを送達および展開するための方法の漸進的ステップの概略図である。
【0028】
図24図24は、大動脈弓補綴アセンブリが、左鎖骨下動脈口を遠位に経路変更する結合部を有する、遠位大動脈ステントグラフト補綴具を含み、大動脈弓補綴アセンブリが、大動脈弓内で、原位置で展開され、組み立てられて示される、本明細書の別の実施形態による、大動脈弓補綴アセンブリの概略側面図である。
【0029】
図25図25は、大動脈弓補綴アセンブリが、腕頭動脈口を経路変更するために、近位大動脈ステントグラフト補綴具の内部のみに延在する第1の分岐ステントグラフト補綴具を含み、大動脈弓補綴アセンブリが、大動脈弓内で、原位置で展開され、組み立てられて示される、本明細書の別の実施形態による、大動脈弓補綴アセンブリの概略側面図である。
【0030】
図26図26は、大動脈弓補綴アセンブリが、大動脈弓内で、原位置で展開され、組み立てられて示され、その第2の分岐ステントグラフト補綴具が、左鎖骨下動脈ではなくて左総頸動脈内で展開される、本明細書の実施形態による、大動脈弓補綴アセンブリの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
具体的実施形態が、ここで、同様の参照番号が同一または機能的類似要素を示す、図を参照して説明される。別様に示されない限り、送達システムに関して、用語「遠位」および「近位」は、治療を行う臨床医に対する位置または方向に関して、以下の説明で使用される。「遠位」および「遠位に」は、臨床医から遠隔にある、または臨床医から離れた方向にある位置であり、「近位」および「近位に」は、臨床医の近傍にある、または臨床医に向かった方向にある位置である。ステントグラフトデバイスに関して、「近位」が、血液流路を介した心臓のより近傍の部分である一方で、「遠位」は、血液流路を介した心臓からより遠いステントグラフトの部分である。
【0032】
以下の発明を実施するための形態は、本質的に例示的にすぎず、本発明または本発明の用途および使用を限定することを意図していない。本明細書の実施形態の説明は、主に、大動脈弓内の動脈瘤疾患を治療するためのモジュール式デバイスと関連しているが、本明細書に説明されるモジュール式デバイスはまた、限定されないが、解離、貫通性潰瘍、壁内血腫、離断、および仮性動脈瘤を含む、他の大動脈弓病理を治療するために使用されることもできる。さらに、先行する技術分野、背景技術、発明の概要、または以下の発明を実施するための形態で提示される、任意の明示または含意された理論によって束縛される意図はない。
【0033】
本明細書の実施形態は、血管内アプローチを介して大動脈弓を灌流させるように構成されるモジュール式アセンブリまたはシステムに関する。大動脈弓(図では「AA」として標識される)の生体構造の概略側面図である、図1を参照すると、大動脈弓内でモジュール式アセンブリを使用することの課題が、さらに説明される。より具体的には、モジュール式アプローチの採用は、大動脈弓の大血管枝の間の短い距離によって限定されている。降着ゾーンL1が、腕頭動脈(BCA)と左総頸動脈(LCC)との間に延在する一方で、降着ゾーンL2は、左総頸動脈(LCC)と左鎖骨下動脈(LSA)との間に延在する。両方の降着ゾーンL1およびL2は、大動脈弓内で展開され得る、隣接するモジュール式構成要素の耐久性のある十分な重複のためには不十分である。隣接するモジュール式構成要素の不十分な重複は、モジュール式システムを、漏出の発生を起こしやすくするであろう。モジュール式構成要素の分離の問題は、広範な心臓および呼吸誘発性運動がある、大動脈弓の動的環境によって悪化させられる。
【0034】
本明細書の実施形態は、大動脈弓を灌流させるように構成されるモジュール式アセンブリまたはシステムであり、上記で説明されるように、モジュール式システムによって遭遇され得る不十分な重複の問題に対処するように構成される、大動脈弓補綴アセンブリ100に関する。図2は、第1または近位大動脈ステントグラフト補綴具もしくはモジュール102の結合部112が、本明細書でより詳細に解説されるであろうように、隣接するモジュール式構成要素の十分な重複を可能にする適切な降着ゾーンを作成または促進するために、腕頭動脈口の近位に意図的に位置付けられる、または位置付けられるように構成される、大動脈弓補綴アセンブリ100の実施形態を図示する。大動脈弓補綴アセンブリ100は、図2では、大動脈弓内で、原位置(in situe)で展開され、組み立てられて示され、図3では、原位置ではないが、展開され、組み立てられて示される。大動脈弓補綴アセンブリ100は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102と、第2または遠位大動脈ステントグラフト補綴具もしくはモジュール122と、近位大動脈ステントグラフト補綴具102から延在する、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール142と、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122から延在する、第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール152とを含む。より詳細に解説されるであろうように、かつ図2に描写されるように、近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、腕頭動脈に隣接し、またはその近位で、大動脈弓の近位部分内の設置のために構成される一方で、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、左鎖骨下動脈に隣接し、またはその遠位で、大動脈弓の遠位部分内の設置のために構成される。第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、腕頭動脈内の設置のために構成され、腕頭動脈内から、腕頭動脈口の近位に意図的に位置付けられる、または位置付けられるように構成される、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の結合部112まで、延在するように構成される。図2の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位部分は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外側または外部表面と大動脈壁との間の大動脈弓の近位部分内の設置のために構成される。第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール152は、左鎖骨下動脈の中の設置のために構成される。大動脈弓補綴アセンブリ100のモジュール式側面は、介入医師が、他の標的血管枝の配向から独立して各大血管を治療することを可能にし、したがって、大動脈弓補綴アセンブリ100は、より広い範囲の患者生体構造を治療することが可能である。より具体的には、大動脈弓補綴アセンブリ100の各モジュールは、相互から独立して送達され、したがって、各モジュールは、患者特有の解剖学的差異に共形化するように最適化されることができる。大動脈弓補綴アセンブリ100の各モジュールが独立して送達および展開されるため、各モジュールは、相互から独立して整合されることができ、したがって、より高いレベルの患者適用性をもたらすであろう。さらに、大動脈弓補綴アセンブリ100のモジュール式アプローチの利点は、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の間の十分な重複の量が、入口部変位の量を変動または変化させることによって、所望に応じて調節され得ることである。別の言い方をすれば、介入医師は、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の間の十分な重複を達成するために、所望に応じて近位および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122を選択的に移動させる、調節する、または別様に位置付けてもよい。したがって、モジュール式側面は、大動脈弓補綴アセンブリ100が、カスタマイズ可能または個人化アプローチを用いるが、「既製」様式で、すなわち、特定の患者の生体構造のために特注設計されていないモジュール式デバイスを用いて、種々の患者を治療することを可能にする。
【0035】
より具体的には、大動脈弓補綴アセンブリ100は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122が、近位大動脈ステントグラフト補綴具102に対する十分な重複164を伴って展開され得るように、第1の分岐ステントグラフト補綴具142が、大動脈弁AV(図1で標識される)に向かって、またはそれに向かった方向に、上行大動脈への腕頭動脈口を経路変更もしくは変位させるように、構成される。近位大動脈ステントグラフト補綴具102および遠位大動脈ステントグラフト補綴具122等のモジュール式隣接構成要素は、エンドリークを回避するために、10mm~50mmに及ぶ十分な重複164を要求する。大動脈弓の湾曲に起因して、十分な重複の量は、測定が、内側大動脈曲線、外側大動脈曲線、または大動脈曲線の中心線に沿っているかどうかに基づいて、変動し得る。原位置で展開されたときに、腕頭動脈口の近位にあるように近位大動脈ステントグラフト補綴具102の結合部112を意図的に位置付けることによって、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、上行大動脈への腕頭動脈口を経路変更または変位させる。したがって、大動脈弓補綴アセンブリ100は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の展開のための降着ゾーン166のための距離を作成する、または広げる、血管内アプローチを提供する。本実施形態では、降着ゾーン166は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の遠位端から、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の結合部112を通して延在する第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端まで延在する。展開されているとき、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端は、適切または十分な重複が発生し、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の間にシールを作成することを前提として、降着ゾーン166内のいずれかの場所に配置されてもよい。いったん遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端が近位大動脈ステントグラフト補綴具102の遠位端内に配置および展開されると、十分な重複164が、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の重複または重層部分によって作成される。本明細書で使用されるような「十分な重複」は、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の重複または重層部分が、エンドリークを回避するために十分または適切な長さであることを意味する。本明細書で前述のように、大動脈弓補綴アセンブリ100のモジュール式アプローチの利点は、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の間の十分な重複の量が、入口部変位の量を変動または変化させることによって、所望に応じて調節され得ることである。
【0036】
大動脈弓補綴アセンブリ100の別の利点は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142が、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の最近位またはシールステントに影響を及ぼすことなく、腕頭動脈を灌流させることである。完全に主要ステントグラフトの近位端まで、主要ステントグラフトの外部にあるチムニーステントグラフトと異なり、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外部に延在するが、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の最近位またはシールステントまで延在しない、もしくはそれに到達しない。別の言い方をすれば、本明細書でより詳細に説明されるであろうように、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の最近位またはシールステントは、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端の近位に位置し、したがって、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の設置による影響を直接受けない。(第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端によって画定されるような)腕頭動脈口から独立している最近位またはシールステントを有することは、近位大動脈ステントグラフト補綴具102を展開するために要求される操作の量を低下させ、したがって、塞栓性脳卒中の危険性を低下させるであろう、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の軸方向または回転整合の必要性を低減させるという付加利益を有する。
【0037】
図2の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、灌流を腕頭動脈に提供し、第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、灌流を左鎖骨下動脈に提供し、バイパスまたは転位162は、灌流を左総頸動脈に提供する。左総頸動脈・左鎖骨下動脈バイパス162は、全ての弓血管枝への灌流を維持するように、必要に応じて実施されてもよく、他のバイパス手技よりも容易で低侵襲性の手技と見なされる。
【0038】
図4-7は、それぞれ、近位大動脈ステントグラフト補綴具102、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122、第1の分岐ステントグラフト補綴具142、および第2の分岐ステントグラフト補綴具152の側面図を図示する。各モジュールは、その展開構成において、例証目的のために大動脈弓補綴アセンブリ100から除去されて示され、各モジュールは、ひいては、独立して説明されるであろう。図4を参照すると、近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、大動脈弓の近位部分の中で、腕頭動脈に隣接し、そして/または腕頭動脈の近位の上行大動脈の中への設置のために構成される。近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、円周方向ステント110に結合されるグラフト材料108を含む。グラフト材料108は、縫合または他の手段を使用して、円周方向ステント110に結合されてもよい。図4に示される実施形態では、円周方向ステント110は、グラフト材料108の外側表面に結合される。しかしながら、円周方向ステント110は、代替として、グラフト材料108の内側表面に結合されてもよい。5つの円周方向ステントとともに示されているが、近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の所望の長さおよび/またはその意図された用途に応じて、より多数または少数のステントを含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。グラフト材料108は、任意の好適なグラフト材料、例えば、限定されないが、織物ポリエステル、DACRON(登録商標)材料、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーン、電子スピン材料、または他の好適な材料であってもよい。円周方向ステント110は、任意の従来のステント材料または構成であってもよい。示されるように、円周方向ステント110は、好ましくは、ニッケル・チタン合金(ニチノール)等の形状記憶材料から作製され、ジグザグ構成に形成される。円周方向ステント110の構成は、例示的にすぎず、円周方向ステント110は、限定されないが、連続または非連続螺旋構成を含む、当技術分野で公知である任意の好適な構成を有してもよい。近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、近位端104と、遠位端106とを含む。近位端104に配置されるステントは、本明細書では最近位ステント110Aと称され、概して、当技術分野ではアンカステントまたはシールステントとして説明されてもよい。本明細書の実施形態では、図4に示されるように、最近位ステント110Aは、開放ウェブまたは未被覆構成でグラフト材料108の外側に延在する。遠位端106に配置されるステント110は、本明細書では最遠位ステント110Bと称され、概して、当技術分野ではアンカステントまたはシールステントとして説明されてもよい。最遠位ステント110Bは、示されるような閉鎖ウェブ構成でグラフト材料128の縁のみまで延在する。本明細書の別の実施形態では、最近位ステント110Aは、閉鎖ウェブ構成でグラフト材料108の縁のみまで延在してもよい、および/または最遠位ステント110Bは、開放ウェブもしくは未被覆構成でグラフト材料108の外側に延在してもよい。グラフト材料108は、管状構成を有し、したがって、それを通して管腔109を画定する。近位大動脈ステントグラフト補綴具102はさらに、図8-11に関して下記で詳細に説明される、結合部112を含む。近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、Medtronic, Inc.のVALIANT MONA LSA(登録商標)胸部ステントグラフト、または他の公知のステントグラフトに類似し得る。
【0039】
加えて、図8を参照すると、結合部112は、グラフト材料108内の開口部に対応する、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の中間部分上に配置される。上記で説明されるような図2の実施形態では、結合部112は、原位置で展開されたときに腕頭動脈口の近位に意図的に位置付けられる、または位置付けられるように構成される。例証のために、結合部112は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の略中央に示されるが、結合部112の場所は、変動してもよく、結合部112は、近位端104のより近くに配置されてもよい、または遠位端106のより近くに配置されてもよい。加えて、例証のために、結合部112は、グラフト材料108の外面から離れるように半径方向に延在して示され、したがって、外部結合部と見なされてもよい。しかしながら、結合部112はまた、グラフト材料108の内面から半径方向内向きに延在するように、反転されてもよく、したがって、内部結合部と見なされてもよい。さらに、結合部112は、最初に、第1の構成で、すなわち、外部結合部または内部結合部として展開されてもよく、それを通した分岐ステントグラフト補綴具の位置付け中に変位されてもよい。結合部112は、略円錐台形状である。結合部112は、基部118および上部116を有する、グラフト材料から形成される。結合部112のグラフト材料は、好ましくは、グラフト材料108と同一タイプのグラフト材料であり、好ましくは、グラフト材料108の継続であるが、結合部は、グラフト材料108に取り付けられた別個のグラフト材料片であることができる。結合部112は、形状が略円錐台形として説明されるが、基部118は、好ましくは、円形ではなくて略楕円形である。基部118は、例えば、限定としてではなく、約20~30mmの長軸および約15~20mmの短軸を有してもよい。さらに、結合部112の高さは、約10~40mmであってもよい。さらに、結合部112は、腕頭動脈を灌流させる第1の分岐ステントグラフト補綴具142と併用されるように構成されるため、上部116の直径は、約8~20mmであってもよい。
【0040】
円周方向ステントまたは環状支持ワイヤフォーム114は、上部116の周囲の結合部112のグラフト材料に結合されてもよい。説明目的のために、図9は、結合部112から除去された支持ワイヤフォーム114を図示する。支持ワイヤフォーム114は、ニッケル・チタン合金(ニチノール)、MP35Nばねワイヤ、アセタールコポリマー、または形状記憶特性を有するポリマー材料等の生体適合性弾性材料の管状構造またはワイヤ170から形成されてもよい。別の実施形態では、支持ワイヤフォーム114は、塑性変形可能材料から形成されてもよい。さらに、別の実施形態では、支持ワイヤフォーム114は、レーザ切断されてもよい。支持ワイヤフォーム114は、本体円周方向ステント110と同一の材料から作製されてもよい、または異なる材料から作製されてもよい。例えば、円周方向ステント110は、バルーン拡張性であり得、支持ワイヤフォーム114は、自己拡張式であり得る。好ましくは、円周方向ステント110および支持ワイヤフォーム114は、ニチノール等の形状記憶材料から作製され、自己拡張式である。種々の実施形態では、ワイヤ170は、中実または中空であり、円形断面を有してもよい。実施形態では、ワイヤ170が、0.008インチ~0.012インチの直径を有する一方で、円周方向ステント110は、概して、直径が約0.010インチ~0.021インチである。一実施形態では、ワイヤ170の断面は、卵形、正方形、長方形、または任意の他の好適な形状であり得る。示されるように、ワイヤ170は、略直線区画または支柱176をともに接続する、複数の対向する屈曲部またはクラウン172、174と、ワイヤ170の2つの端部を接続または結合し、円周方向支持ワイヤフォーム114を形成する、圧着115とを有する、ジグザグまたは略正弦波構成に成形される。クラウン172は、結合部112の上部116に隣接して配置され、クラウン174は、上部116から離間されて配置される。支持ワイヤフォーム114は、支持ワイヤフォーム114の縦軸が結合部112の縦軸と略同一線上であるように配向される。一実施形態では、支持ワイヤフォーム114は、8つのクラウン172と、8つのクラウン174とを含むが、クラウンの数は限定されないことが、当業者によって理解されるであろう。支持ワイヤフォーム114は、縫合または他の手段を使用して、結合部112に結合される。支持ワイヤフォーム114は、支持ワイヤフォーム114と近位大動脈ステントグラフト補綴具102の円周方向ステント110との間の金属間接触の潜在性を回避するように、結合部112の外側表面に結合されてもよい、または支持ワイヤフォーム114は、代替として、結合部112のグラフト材料128の内側表面に結合されてもよい。
【0041】
図9の実施形態では、支持ワイヤフォーム114は、略円錐台形状である。円錐台形支持ワイヤフォーム114のクラウン172は、第1の直径D1を有する円に対称的に配列され、円錐台形支持ワイヤフォーム114のクラウン174は、直径D1を上回る第2の直径D2を有する円の周囲に等しく離間されるように配列される。支持ワイヤフォーム114は、形状が略円錐台形として説明されるが、その基部は、代替として、結合部112の外形をより密接に模倣するように、円形ではなくて楕円形であり得る。支持ワイヤフォーム114の基部が楕円形である場合、円錐台形支持ワイヤフォーム114のクラウン174は、卵形の周囲に等しく離間されるように配列される。クラウン172とクラウン174との間の垂直または長手方向距離を指す、支持ワイヤフォーム114の高さHは、結合部112の高さの25%~33%に変動し得る。例えば、12mm~15mmの高さを有する結合部に関して、支持ワイヤフォーム114の高さは、3mm~5mmの範囲内であってもよい。図10に示される別の実施形態では、支持ワイヤフォームは、形状が円錐台形ではなくて略円筒形であり得る。より具体的には、支持ワイヤフォーム1070は、直径Dを有する円に対称的に配列されるクラウン1072を含み、円筒形支持ワイヤフォーム440のクラウン1074は、同様に直径Dを有する円の周囲に等しく離間されるように配列される。
【0042】
形状および材料に起因して、結合部112は、結合部112の上部が、展開されたときに、結合部112の縦軸に対して長手方向に移動することができるため、有意な可撓性を有する。特に、図4を再び参照すると、結合部112は、支持ワイヤフォーム114の下方で基部118まで延在する、グラフト材料128の支持されていない部分119を含む。別の言い方をすれば、結合部112は、クラウン174と主要近位大動脈ステントグラフト補綴具102との間で支持されていない。グラフト材料128の支持されていない部分119は、所望に応じて、結合部112の上部116を位置付けるためのいかなる固有の能力も有していない。しかしながら、支持ワイヤフォーム114は、構造完全性を結合部112の上部116に付与し、所望に応じて結合部112の上部を適切に配向する。結合部112の可撓性、特に、グラフト材料128の支持されていない部分119の可撓性は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102が、分岐ステントグラフト補綴具を通した標的血管への流動を侵害することなく、最大90度およびそれを超えて回転オフセットされることを可能にする。故に、近位大動脈ステントグラフト補綴具102が血管枝と完全に回転整合されていない場合、結合部112は、移動または偏移し、上部116を血管枝に向けさせることができる。結合部112の移動度は、したがって、血管枝の灌流を依然として可能にしながら、その精密な標的化の要件を低減させる。結合部112およびその変形例は、本開示と同一の出願人に譲渡された、Bruszewski et al.に対する米国特許公開第20120271401号でさらに説明されている。
【0043】
ここで図5を参照すると、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、左鎖骨下動脈に隣接する、大動脈弓の遠位部分の中の設置のために構成される。近位大動脈ステントグラフト補綴具102と同様に、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、円周方向ステント130に結合されるグラフト材料128を含む。グラフト材料128は、縫合または他の手段を使用して、円周方向ステント130に結合されてもよい。図5に示される実施形態では、円周方向ステント130は、グラフト材料128の外側表面に結合される。しかしながら、円周方向ステント130は、代替として、グラフト材料128の内側表面に結合されてもよい。4つの円周方向ステントとともに示されているが、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の所望の長さおよび/またはその意図された用途に応じて、より多数または少数のステントを含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。グラフト材料128は、任意の好適なグラフト材料、例えば、限定されないが、織物ポリエステル、DACRON(登録商標)材料、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーン、または他の好適な材料であってもよい。円周方向ステント130は、任意の従来のステント材料または構成であってもよい。示されるように、円周方向ステント130は、好ましくは、ニッケル・チタン合金(ニチノール)等の形状記憶材料から作製され、ジグザグ構成に形成される。円周方向ステント130の構成は、例示的にすぎず、円周方向ステント130は、限定されないが、連続または非連続螺旋構成を含む、当技術分野で公知である任意の好適な構成を有してもよい。遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、近位端124と、遠位端126とを含む。本明細書の実施形態では、図5に示されるように、最近位ステント130Aおよび最遠位ステント130Bは両方とも、示されるような閉鎖ウェブ構成でグラフト材料128の縁のみまで延在する。本明細書の別の実施形態では、最近位ステントおよび/または最遠位ステントは、開放ウェブもしくは未被覆構成でグラフト材料128の外側に延在してもよい。グラフト材料128は、管状構成を有し、したがって、それを通して管腔129を画定する。遠位大動脈ステントグラフト補綴具122はさらに、結合部132を含む。遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、Medtronic, Inc.のVALIANT MONA LSA(登録商標)胸部ステントグラフト、または他の公知のステントグラフトに類似し得る。
【0044】
結合部132は、構造が結合部112に類似し、グラフト材料128内の開口部に対応する、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の中間部分上に配置される。例証のために、結合部132は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の略中央に示されるが、結合部132の場所は、変動してもよく、結合部132は、近位端124のより近くに配置されてもよい、または遠位端126のより近くに配置されてもよい。加えて、例証のために、結合部132は、グラフト材料128の外面から離れるように半径方向に延在して示され、したがって、外部結合部と見なされてもよい。しかしながら、結合部132はまた、グラフト材料128の内面から半径方向内向きに延在するように、反転されてもよく、したがって、内部結合部と見なされてもよい。結合部112と同様に、結合部132は、略円錐台形状であり、基部138および上部136を有する、グラフト材料から形成される。結合部132は、結合部132が大動脈および左総頸動脈の接合部または大動脈および左鎖骨下動脈の接合部において使用されるように構成されるため、上部136の直径が約6~14mmであることを除いて、結合部112と類似する寸法を有する。ワイヤフォーム114と同様に、円周方向ステントまたは環状支持ワイヤフォーム134は、上部136の周囲の結合部122のグラフト材料に結合されてもよい。
【0045】
ここで図6を参照すると、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、腕頭動脈等の血管の中の設置のために構成される。第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、円周方向ステント150に結合されるグラフト材料148を含む。グラフト材料148は、縫合または他の手段を使用して、円周方向ステント150に結合されてもよい。図6に示される実施形態では、円周方向ステント150は、グラフト材料148の外側表面に結合される。しかしながら、円周方向ステント150は、代替として、グラフト材料148の内側表面に結合されてもよい。7つの円周方向ステントとともに示されているが、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の所望の長さおよび/またはその意図された用途に応じて、より多数または少数のステントを含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。グラフト材料148は、任意の好適なグラフト材料、例えば、限定されないが、織物ポリエステル、DACRON(登録商標)材料、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーン、または他の好適な材料であってもよい。円周方向ステント150は、任意の従来のステント材料または構成であってもよい。示されるように、円周方向ステント150は、好ましくは、ニッケル・チタン合金(ニチノール)等の形状記憶材料から作製され、ジグザグ構成に形成される。円周方向ステント150の構成は、例示的にすぎず、円周方向ステント150は、限定されないが、連続または非連続螺旋構成を含む、当技術分野で公知である任意の好適な構成を有してもよい。第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、近位端144と、遠位端146とを含む。本明細書の実施形態では、図6に示されるように、最近位ステント150Aおよび最遠位ステント150Bは両方とも、示されるような閉鎖ウェブ構成でグラフト材料148の縁のみまで延在する。本明細書の別の実施形態では、最近位ステントおよび/または最遠位ステントは、開放ウェブもしくは未被覆構成でグラフト材料148の外側に延在してもよい。グラフト材料148は、管状構成を有し、したがって、それを通して管腔149を画定する。第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、Medtronic, Inc.のVALIANT(登録商標)胸部ステントグラフト、または他の公知のステントグラフトに類似し得る。
【0046】
第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の半径方向力よりも高い半径方向を及ぼすように構成される。本明細書で使用されるように、「半径方向力」は、周辺天然生体構造、すなわち、上行大動脈または天然弁輪が、心周期中に拡張および収縮すると、足場が事前判定された伸展性または抵抗を有するように、拡張/展開中に及ぼされる半径方向力ならびに埋込後に連続的に及ぼされる慢性半径方向力の両方を含む。近位大動脈ステントグラフト補綴具102および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の半径方向力は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具122が、それに対して、かつ隣接して展開されるときに、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の圧潰を回避し、したがって、腕頭動脈の灌流を維持するために、第1の分岐ステントグラフト補綴具132のものよりも低くなるように構成される。異なる相対的半径方向力を伴うステントグラフト補綴具を構成するために、第1の分岐ステントグラフト補綴具142のステント150は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122のステント130および/または近位大動脈ステントグラフト補綴具102のステント110よりも比較的厚いならびに/もしくは短い材料の区画を伴って構築されてもよい。逆に、近位大動脈ステントグラフト補綴具102および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具122のステント110、130は、それぞれ、第1の分岐ステントグラフト補綴具142のステント150よりも比較的薄いならびに/もしくは長い材料の区画を伴って構築されてもよい。より短いおよび/または厚い足場区画は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102および遠位大動脈ステントグラフト補綴具122のステント110、130が、それぞれ、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の管腔140を圧潰しないことを確実にするように、より少ない可撓性を有するが、より大きい半径方向力を有する。ステント/足場の他の変形例または修正も、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる相対的半径方向力を伴うステント/足場を構成するために使用されてもよい。
【0047】
図7を参照すると、第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、左総頸動脈または左鎖骨下動脈等の血管の中の設置のために構成される。第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、円周方向ステント160に結合されるグラフト材料158を含む。グラフト材料158は、縫合または他の手段を使用して、円周方向ステント160に結合されてもよい。図7に示される実施形態では、円周方向ステント160は、グラフト材料158の外側表面に結合される。しかしながら、円周方向ステント160は、代替として、グラフト材料158の内側表面に結合されてもよい。5つの円周方向ステントとともに示されているが、第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、第2の分岐ステントグラフト補綴具152の所望の長さおよび/またはその意図された用途に応じて、より多数または少数のステントを含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。グラフト材料158は、任意の好適なグラフト材料、例えば、限定されないが、織物ポリエステル、DACRON(登録商標)材料、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーン、または他の好適な材料であってもよい。円周方向ステント160は、任意の従来のステント材料または構成であってもよい。示されるように、円周方向ステント160は、好ましくは、ニッケル・チタン合金(ニチノール)等の形状記憶材料から作製され、ジグザグ構成に形成される。円周方向ステント160の構成は、例示的にすぎず、円周方向ステント160は、限定されないが、連続または非連続螺旋構成を含む、当技術分野で公知である任意の好適な構成を有してもよい。第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、近位端154と、遠位端156とを含む。本明細書の実施形態では、図7に示されるように、最近位ステント160Aおよび最遠位ステント160Bは両方とも、示されるような閉鎖ウェブ構成でグラフト材料158の縁のみまで延在する。本明細書の別の実施形態では、最近位ステントおよび/または最遠位ステントは、開放ウェブもしくは未被覆構成でグラフト材料158の外側に延在してもよい。さらに、図7に示されるように、本明細書の実施形態では、第2の分岐ステントグラフト補綴具152の近位端154は、広がっている。広がった近位端154は、その広がりを遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の結合部132の外面のテーパと合致させることによって、第2の分岐ステントグラフト補綴具152の密閉を補助する。グラフト材料158は、管状構成を有し、したがって、それを通して管腔159を画定する。第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、Medtronic, Inc.のVALIANT(登録商標)胸部ステントグラフト、または他の公知のステントグラフトに類似し得る。
【0048】
示されていないが、本明細書の別の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144はまた、第1の分岐ステントグラフト補綴具142と近位大動脈ステントグラフト補綴具102の結合部112との間の密閉を補助するように、第2の分岐ステントグラフト補綴具152の近位端154と同様に広がり得る。
【0049】
本明細書でより詳細に解説されるであろうように、第1および第2の分岐ステントグラフト補綴具142、152は、それぞれ、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の結合部112、132を通して、送達および展開される。埋込後、血管枝の脈動拡張および/または他の移動が、心周期中に起こり得る。血管枝のそのような移動は、最終的に、血管枝補綴具の材料の変形に起因して、それぞれ、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の結合部112、132の間のシールを劣化させ得る。より具体的には、ここで図11を参照すると、その中に展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142を伴う支持ワイヤフォーム114を含む、結合部112の概略図が示される。支持ワイヤフォーム114は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142と結合部112との間に干渉シールを生成する。支持ワイヤフォーム114は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142が結合部112内で拡張または展開し、支持ワイヤフォーム114に対して当接し、結果として、支持ワイヤフォーム114が第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位部分の周囲にしっかりと嵌合するため、第1の分岐ステントグラフト補綴具142と結合部112との間の密閉を増進する。
【0050】
一実施形態では、支持ワイヤフォーム114の展開直径は、結合部112と第1の分岐ステントグラフト補綴具142との間により効果的なシールを提供するように、小型である、または第1の分岐ステントグラフト補綴具142の展開直径よりも小さくあり得る。より具体的には、支持ワイヤフォーム114の展開直径は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の展開直径よりも最大約30%小さくあり得る。結合部112の中への第1の分岐ステントグラフト補綴具142の展開は、支持ワイヤフォーム114の限定的直径までの分岐補綴具142の拡張をもたらす。したがって、たとえ第1の分岐ステントグラフト補綴具142の移動が埋込後に起こっても、小型支持ワイヤフォーム114の形状記憶は、結合部112を支持ワイヤフォーム114の形状記憶直径まで押勢し、それによって、移動を補償し、結合部112と第1の分岐ステントグラフト補綴具142との間のシールを留保する。小型支持ワイヤフォーム114および第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、対抗する力を相互に及ぼす、2つの弾性部品である。換言すると、分岐補綴具142が支持ワイヤフォーム114の限定的直径よりも大きい直径まで拡張することを所望するため、分岐補綴具142は、外向きの力を提供し、支持ワイヤフォーム114は、対抗する内向きの力を提供し、結合部112と分岐補綴具142との間のシールを維持する。
【0051】
図6および7の実施形態では、第1および第2の分岐ステントグラフト補綴具142、152の足場または支持構造は、一連の独立した、または別個の自己拡張式ステント/正弦波パターン化リングとして図示されている。しかしながら、第1および第2の分岐ステントグラフト補綴具142、152の支持構造または足場は、自己拡張式ステントまたは単一管状半径方向圧縮性足場を形成するように相互に結合される、一連の/正弦波パターン化リング等の他の構成を有してもよい。
【0052】
参照することによって前述で本明細書に組み込まれた、本開示と同一の出願人に譲渡された、Bruszewski et al.に対する米国特許公開第20120271401号は、大動脈弓補綴アセンブリ100の各モジュールを血管内の標的場所に送達するために使用され得る、送達システムの1つまたはそれを上回る実施例を説明し、当業者に公知である多くの他の送達システムが、利用され得る。例えば、大動脈弓補綴アセンブリ100の各モジュールは、バルーン上に搭載され、標的部位にあるときに拡張され得る。したがって、別の言い方をすれば、1つまたはそれを上回るモジュールは、自己拡張式ではなくてバルーン拡張性であり得る。さらに、バルーン拡張性モジュールおよび自己拡張式モジュールの組み合わせを利用することが望ましくあり得る。他のステントグラフト送達システム、例えば、限定としてではなく、それぞれ2009年4月17日に出願された、米国特許出願公開第2008/0114442号および第2008/0262590号、ならびに米国特許第7,264,632号、ならびに米国特許出願公開第12/425616号および第12/8425628号(それぞれ、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明される送達システムが、大動脈弓補綴アセンブリ100の各モジュールを送達および展開するために利用されてもよい。
【0053】
図12-23は、大動脈弓内で大動脈弓補綴アセンブリ100を送達および展開するための方法を図式的に示す。本明細書に説明される実施例では、大動脈弓補綴アセンブリ100は、大動脈弓の中へ送達および展開される。大動脈の部分は、上行大動脈、大動脈弓(図では「AA」として標識される)、および下行大動脈を含む。大動脈弓から、腕頭動脈BCA、左総頸LCC動脈、および左鎖骨下動脈LSAが分岐している。動脈瘤(図示せず)は、大動脈弓の任意の面積中で形成し得、動脈枝への血流が維持されなければならないため、単一のステントグラフトを用いて迂回または排除することが困難であり得る。前述のように、本明細書の実施形態の説明は、主に、大動脈弓内の動脈瘤疾患を治療するためのモジュール式デバイスと関連しているが、本明細書に説明されるモジュール式デバイスはまた、限定されないが、解離、貫通性潰瘍、壁内血腫、離断、および仮性動脈瘤を含む、他の大動脈弓病理を治療するために使用されることもできる。
【0054】
大動脈弓補綴アセンブリ100を挿入するための手技に先立って、バイパス162を配設する外科的バイパス手技が、左総頸LCC動脈を左鎖骨下動脈LSAに接続するように実施される。そのような外科的バイパス手技は、大動脈弓補綴アセンブリ100の挿入の1~2週間前に実施されてもよく、または大動脈弓補綴アセンブリ100のための埋込手技と同時に実施されてもよく、大動脈弓内の動脈瘤を修復するための外科的解決策よりも有意に少ない合併症および危険性を提示する。このようにして、左鎖骨下動脈LSAまたは左総頸LCC動脈のうちの1つへの灌流を維持することは、他の動脈枝への灌流を同時に維持するであろう。
【0055】
図12は、下行大動脈を通して、大動脈弓を通して、かつ上行大動脈の中へ前進された、第1のガイドワイヤGW1および第2のガイドワイヤGW2を示す。ガイドワイヤGW1、GW2は、典型的には、当技術分野で公知であるように、大腿動脈の中に挿入され、腹部大動脈を通して胸部大動脈の中へ上に経路指定される。本明細書の別の実施形態(図示せず)では、ガイドワイヤGW1、GW2は、大動脈上または経心尖アクセスを介して導入されることができる。
【0056】
図13は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102がその中で圧縮され、ガイドワイヤGW1、GW2にわたって大動脈弓内の標的場所まで前進されている、ステントグラフト送達システム1380を示す。ステントグラフト送達システム1380および/または近位大動脈ステントグラフト補綴具102の場所は、X線写真上で検証されてもよく、送達システム1380および/または近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、当技術分野で公知であるような放射線不透過性マーカを含んでもよい。第2のガイドワイヤGW2はまた、第2のガイドワイヤGW2が後退しないように防止するように、その遠位または大動脈上端において係止されてもよい。より具体的には、第2のガイドワイヤGW2の遠位端は、スネア(図示せず)を用いて捕捉され、図13に示されるように、腕頭動脈BCAを通して引動されてもよい。第2のガイドワイヤGW2の遠位端は、貫通ワイヤ技法として当業者に公知であるように、第2のガイドワイヤGW2が上腕進入点から大動脈を通して大腿動脈切開部位において外へ延在するまで、引動される。徹底アクセスは、手技中に第2のガイドワイヤGW2を安定させ、操作する能力を改良する。加えて、貫通ワイヤ技法は、軸方向または回転不整合もしくは患者特有の解剖学的変動の場合に、血管枝への分岐ステントグラフト展開の複雑性を低減させる。
【0057】
ステントグラフト送達システム1380が、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の結合部112が腕頭動脈BCAの中への開口部(すなわち、腕頭動脈BCA口)の近位に配置される場所に来た後、ステントグラフト送達システム1380の外側スリーブまたはシースが、近位大動脈ステントグラフト補綴具102を展開するように近位に後退される。図14は、結合部112が腕頭動脈BCA口の近位に配置されている、大動脈内に展開された近位大動脈ステントグラフト補綴具102を図示する。より具体的には、ステントグラフト送達システム1380の外側スリーブまたはシースは、最初に結合部112のみを解放するように、最初に、結合部112に隣接する位置まで近位に後退されてもよい。結合部112が、外部結合部として、グラフト材料108の外面から離れるように半径方向に延在するとき、支持ワイヤフォーム114を含む結合部112は、構造完全性を結合部112の上部に提供し、結合部の遠位端を半径方向外向きに、または大動脈の血管壁に向かって配向する。いったん結合部112が展開されると、ステントグラフト送達システム1380の外側スリーブまたはシースは、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の残りの長さを展開するように、さらに後退されてもよい。いったん結合部112および近位大動脈ステントグラフト補綴具102が展開されると、それを通して配置された第1および第2のガイドワイヤGW1、GW2を伴って、図14に示されるように原位置で展開された近位大動脈ステントグラフト補綴具102を残して、送達システム1380は、除去されてもよい。本実施形態では、第1のガイドワイヤGW1は、操作の数を最小限にするように、それにわたる遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の後続の送達のためにその場に残されるが、本明細書の別の実施形態では、第1のガイドワイヤGW1は、除去されてもよく、異なるガイドワイヤが、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の送達のために位置付けられてもよい。
【0058】
図15は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142がその中で圧縮され、第2のガイドワイヤGW2にわたって腕頭動脈BCAおよび上行大動脈内の標的場所まで前進されている、分岐ステントグラフト送達システム1582を示す。分岐ステントグラフト送達システム1582および/またはその中で圧縮された第1の分岐ステントグラフト補綴具142の場所は、X線写真上で検証されてもよく、送達システム1582および/または第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、当技術分野で公知であるような放射線不透過性マーカを含んでもよい。分岐ステントグラフト送達システム1582は、従来的であり得、その中に第1の分岐ステントグラフト補綴具142を含有する。図15の実施形態では、分岐ステントグラフト送達システム1582は、第2のガイドワイヤGW2の上腕進入点を介して腕頭動脈BCAの中へ前進される。図16に描写される本明細書の別の実施形態では、その中で圧縮された第1の分岐ステントグラフト補綴具142を伴う分岐ステントグラフト送達システム1582は、第2のガイドワイヤGW2の大腿進入点を介して腕頭動脈BCAの中へ送達される。
【0059】
利用される第2のガイドワイヤGW2の進入点にかかわらず、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の内部に第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144を伴って、所望に応じて腕頭動脈BCA内に位置付けられるまで、第2のガイドワイヤGW2にわたって前進される。いったん第1の分岐ステントグラフト補綴具142が所望に応じて位置付けられると、第1の分岐ステントグラフト補綴具142を拘束する分岐ステントグラフト送達システム1582の外側シースが、次いで、近位に後退され、それによって、送達システムから第1の分岐ステントグラフト補綴具142を解放する。分岐ステントグラフト送達システム1582が、次いで、図17に示されるように、原位置で展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142を残して除去される。図17に示されるように、第2のガイドワイヤGW2はまた、本方法における本時点で除去されてもよい一方で、第1のガイドワイヤGW1は、依然として、それにわたる遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の後続の送達のためにその場に留まる。展開されたとき、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144が近位大動脈ステントグラフト補綴具102の内部に配置されるように、腕頭動脈BCA内で、結合部112を通して延在する。腕頭動脈BCA口/開口部と結合部112との間で、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、大動脈内に延在し、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外部にある。別の言い方をすれば、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の一部は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外側に配置され、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外面と大動脈壁との間に挟持され、その両方に接触する。大動脈に動脈瘤がある場合には、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外面および大動脈壁に対して対向されない場合がある。第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144は、結合部112を通して延在し、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の管腔内に配置されてもよい。本明細書の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の約10mmが、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の管腔内に延在する。図17上に示されるように、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の最近位ステント110Aまで延在しない、またはそれに到達しない。別の言い方をすれば、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の最近位ステント110Aは、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144の近位に位置付けられる。第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、ここでは第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144によって画定される、上行大動脈への腕頭動脈BCA口を近位に経路変更または変位させる。
【0060】
第1の分岐ステントグラフト補綴具142の一部が近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外側または外部に配置されると、近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142の外面に接触する、またはそれに対して当接する。しかしながら、第1の分岐ステントグラフト補綴具142が、本明細書に説明されるように、近位大動脈ステントグラフト補綴具102よりも高い半径方向力を有するため、近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142を圧潰せず、または別様にそれに干渉せず、それによって、腕頭動脈BCAの灌流が提供される。近位大動脈ステントグラフト補綴具102は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142によって部分的に圧潰されてもよいが、管腔109は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142の比較的より小さいサイズに起因して、血液が近位大動脈ステントグラフト補綴具102を通して流動するために少なくとも部分的に開放したままである。
【0061】
図18は、下行大動脈を通して大動脈弓の中へ前進された第3のガイドワイヤGW3を示す。第3のガイドワイヤGW3は、典型的には、当技術分野で公知であるように、大腿動脈の中に挿入され、腹部大動脈を通して胸部大動脈の中へ上に経路指定される。本明細書の別の実施形態(図示せず)では、第2のガイドワイヤGW2は、前もって除去されない場合があり、むしろ、第3のガイドワイヤGW3として再配置されてもよい。
【0062】
図19は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122がその中で圧縮され、第1および第3のガイドワイヤGW1、GW3にわたって大動脈弓内の標的場所まで前進されている、ステントグラフト送達システム1984を示す。ステントグラフト送達システム1984および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の場所は、X線写真上で検証されてもよく、送達システム1984および/または遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、当技術分野で公知であるような放射線不透過性マーカを含んでもよい。第3のガイドワイヤGW3はまた、第3のガイドワイヤGW3が後退しないように防止するように、その遠位または大動脈上端において係止されてもよい。より具体的には、第3のガイドワイヤGW3の遠位端は、スネア(図示せず)を用いて捕捉され、図19に示されるように、左鎖骨下動脈LSAを通して引動されてもよい。第3のガイドワイヤGW3の遠位端は、貫通ワイヤ技法として当業者に公知であるように、第3のガイドワイヤGW3が半径方向動脈進入点から大動脈を通して大腿動脈切開部位において外へ延在するまで、引動される。徹底アクセスは、手技中に第3のガイドワイヤGW3を安定させ、操作する能力を改良する。加えて、貫通ワイヤ技法は、軸方向または回転不整合もしくは患者特有の解剖学的変動の場合に、血管枝への分岐ステントグラフト展開の複雑性を低減させる。
【0063】
ステントグラフト送達システム1984が、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の結合部132が左鎖骨下動脈LSAの中への開口部とほぼ整合される場所に来た後、ステントグラフト送達システム1984の外側スリーブまたはシースが、図20に示されるように、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122を展開するように近位に後退される。より具体的には、ステントグラフト送達システム1984の外側スリーブまたはシースは、最初に結合部132のみを解放するように、最初に、結合部132に隣接する位置まで近位に後退されてもよい。結合部132が、外部結合部として、グラフト材料108の外面から離れるように半径方向に延在するとき、支持ワイヤフォーム134を含む結合部132は、構造完全性を結合部132の上部に提供し、結合部の遠位端を、左鎖骨下動脈LSA口に向かって、および/またはその中へ配向する。送達システム1984は、次いで、結合部132を左鎖骨下動脈LSAとより良好に整合させるように、移動および/または回転されてもよい。さらに、結合部132の構成に起因して、たとえ左鎖骨下動脈LSAと完全に整合されていなくても、結合部132の上部は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122全体を移動させる必要なく、その管腔開口部を左鎖骨下動脈LSAの管腔と適切に整合させるように移動されてもよい。いったん結合部132が展開され、左鎖骨下動脈LSA内で定位置に来る、またはそれに隣接すると、ステントグラフト送達システム1984の外側スリーブまたはシースは、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の残りの長さを展開するように、さらに後退されてもよい。いったん結合部132および遠位大動脈ステントグラフト補綴具122が展開されると、送達システム1984は、図20に示されるように原位置で展開された遠位大動脈ステントグラフト補綴具122を残して、除去されてもよい。所望される場合、第1のガイドワイヤGW1は、手技の本時点で除去されてもよい。
【0064】
第1の分岐ステントグラフト補綴具142が上記で説明されるように上行大動脈への腕頭動脈BCA口を近位に経路変更または変位させると、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102に対して十分な重複164を伴って展開される。遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端124は、したがって、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の遠位端106の近位に配置され、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122は、その一部に関して相互に重なり、それによって、十分な重複164を形成し、モジュール式構成要素の間のエンドリークを回避する、および/または最小限にする。結合部112および第1の分岐ステントグラフト補綴具142の遠位に配置された遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端124とともに示されるが、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端124は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144まで展開されてもよい。別の言い方をすれば、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端124は、十分な重複164の量を増加させるように、示されるよりも近位に配置されてもよいが、腕頭動脈BCAへの灌流を提供している第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144を閉塞または遮断することができない。そのような場合において、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の近位端124は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の内部に延在している、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142の外面に対して当接する、または接触してもよい。しかしながら、第1の分岐ステントグラフト補綴具142が、本明細書に説明されるように、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122よりも高い半径方向力を有するため、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具142を圧潰せず、または別様にそれに干渉せず、それによって、腕頭動脈BCAの灌流が提供される。
【0065】
着目すべきこととして、第1の分岐ステントグラフト補綴具142、近位大動脈ステントグラフト補綴具102、および遠位大動脈ステントグラフト補綴具122が、図20に示されるように展開されるとき、(その拡張構成における)第1の分岐ステントグラフト補綴具の一部2090は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の近位端144が、十分な重複164の近位に位置付けられ、腕頭動脈BCA口を効果的に近位に経路変更するように、十分な重複164に沿って延在する。別の言い方をすれば、一部2090内で得られる展開された大動脈弓補綴アセンブリ100の断面において、断面は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142と、近位大動脈ステントグラフト補綴具102と、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122とを含む。本実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外部または外側に延在し(すなわち、第1の分岐ステントグラフト補綴具142の一部2090は、近位大動脈ステントグラフト補綴具102の外面と大動脈弓の血管壁との間に延在し)、したがって、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、一部2090に沿って同心円状に配置された近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122に対して当接する。しかしながら、前述で説明されたように、第1の分岐ステントグラフト補綴具142は、第1の分岐ステントグラフト補綴具142が、近位大動脈ステントグラフト補綴具102との接触に起因して圧潰しないように、近位大動脈ステントグラフト補綴具102よりも高い半径方向力を及ぼすように構成される。
【0066】
図21は、第2の分岐ステントグラフト補綴具152がその中で圧縮され、第3のガイドワイヤGW3にわたって左鎖骨下動脈LSA内の標的場所まで、かつ下行大動脈の中へ前進されている、分岐ステントグラフト送達システム2086を示す。分岐ステントグラフト送達システム2086および/またはその中で圧縮された第2の分岐ステントグラフト補綴具152の場所は、X線写真上で検証されてもよく、送達システム2086および/または第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、当技術分野で公知であるような放射線不透過性マーカを含んでもよい。分岐ステントグラフト送達システム2086は、従来的であり得、その中に第2の分岐ステントグラフト補綴具152を含有する。分岐ステントグラフト送達システム2086は、第2の分岐ステントグラフト補綴具152の近位端154が結合部132内に配置されるように、左鎖骨下動脈LSAの中へ前進される。図21の実施形態では、分岐ステントグラフト送達システム2086は、第3のガイドワイヤGW3の半径方向動脈進入点を介して左鎖骨下動脈LSAの中へ前進される。図22に描写される本明細書の別の実施形態では、その中で圧縮された第2の分岐ステントグラフト補綴具152を伴う分岐ステントグラフト送達システム2086は、第3のガイドワイヤGW3の大腿進入点を介して左鎖骨下動脈LSAの中へ送達される。
【0067】
利用される第3のガイドワイヤGW3の進入点にかかわらず、第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の結合部132内に配置された第2の分岐ステントグラフト補綴具152の近位端154を伴って、所望に応じて左鎖骨下動脈LSAに位置付けられるまで、第3のガイドワイヤGW3にわたって前進される。いったん第2の分岐ステントグラフト補綴具152が所望に応じて位置付けられると、第2の分岐ステントグラフト補綴具152を拘束する分岐ステントグラフト送達システム2086の外側シースが、次いで、近位に後退され、それによって、送達システムから第2の分岐ステントグラフト補綴具152を解放する。分岐ステントグラフト送達システム2086および第3のガイドワイヤGW3が、次いで、図23に示されるように、原位置で展開された第2の分岐ステントグラフト補綴具152を残して除去される。第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、ここで、左鎖骨下動脈LSAを灌流させる。直接的に大動脈弓から左総頸LCC動脈への開口部(または口)は、大動脈弓補綴アセンブリ100によって遮断されるが、バイパス162は、左総頸LCC動脈を左鎖骨下動脈LSAに流体的に接続し、したがって、左鎖骨下動脈LSAの灌流はまた、左総頸LCC動脈への灌流も提供する。したがって、大動脈弓から分岐する全ての大血管が、灌流される。
【0068】
図24は、腕頭動脈BCA口が第1の分岐ステントグラフト補綴具によって近位に変位される方法に類似する様式で、左鎖骨下動脈LSA口が第2の分岐ステントグラフト補綴具によって遠位に変位される、本明細書の代替実施形態を図示する。左鎖骨下動脈LSA口は、モジュール式構成要素の達成可能な重複の量をさらに増加させるように、遠位に変位される。大動脈弓補綴アセンブリ2400は、図24では、大動脈弓内で、原位置で展開され、組み立てられて示される。大動脈弓補綴アセンブリ2400は、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール102に類似する、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール2402と、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール122に類似する、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール2422と、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール142に類似する、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール2442と、第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール2452とを含む。結合部112と同様に、第1または近位大動脈ステントグラフト補綴具もしくはモジュール2402の結合部2412は、腕頭動脈口の近位に意図的に位置付けられる、または位置付けられるように構成される。加えて、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール2422は、その結合部2432が左鎖骨下動脈LSA口の遠位に原位置で意図的に位置付けられる、または位置付けられるように構成されることを除いて、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール122に類似する。原位置で展開されたときに、左鎖骨下動脈LSA口の遠位にあるように遠位大動脈ステントグラフト補綴具2422の結合部2432を意図的に位置付けることによって、第2の分岐ステントグラフト補綴具2452は、下行大動脈への左鎖骨下動脈LSA口を経路変更または変位させる。
【0069】
より具体的には、大動脈弓補綴アセンブリ2400は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具2422が、近位大動脈ステントグラフト補綴具2402に対する十分な重複2464を伴って展開され得るように、第1の分岐ステントグラフト補綴具2442が、上行大動脈への腕頭動脈口を近位に経路変更または変位させ、第2の分岐ステントグラフト補綴具2452が、下行大動脈への左鎖骨下動脈LSA口を遠位に経路変更または変位させるように、構成される。腕頭動脈BCA口ならびに左鎖骨下動脈LSA口を経路変更または変位させることによって、大動脈弓補綴アセンブリ2400は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具2422の展開のための降着ゾーン2466のための距離を作成する、または広げる、血管内アプローチを提供する。降着ゾーン2466が、第2の分岐ステントグラフト補綴具2452を介して左鎖骨下動脈LSA口を遠位に経路変更または変位させることから獲得される付加的距離を含むため、降着ゾーン2466は、図2に関して上記で説明され、示される降着ゾーン166を上回る。降着ゾーン2466は、(その経路変更後に上行大動脈内に配置される)第1の分岐ステントグラフト補綴具2442の近位端から、(その経路変更後に下行大動脈内に配置される)第2の分岐ステントグラフト補綴具2452の近位端2454まで延在する。
【0070】
図25は、腕頭動脈BCA口が第1の分岐ステントグラフト補綴具によって近位に変位される、本明細書の代替実施形態を図示する。前述で説明された実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具(第1の分岐ステントグラフト補綴具142)の少なくとも一部は、第1の分岐ステントグラフト補綴具の本外部が、近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と大動脈壁との間に挟持され、その両方に接触するように、近位大動脈ステントグラフト補綴具(近位大動脈ステントグラフト補綴具102)の外部または外側に延在する。しかしながら、図25の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具は、近位大動脈ステントグラフト補綴具の内部または内側のみに延在する。別の言い方をすれば、図25の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具のいかなる部分も、近位大動脈ステントグラフト補綴具の外面と大動脈壁との間に挟持されない。大動脈弓補綴アセンブリ2500は、図25では、大動脈弓内で、原位置で展開され、組み立てられて示される。大動脈弓補綴アセンブリ2500は、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール102に類似する、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール2502と、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール122と、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール142に類似する、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール2542と、第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール152とを含む。本実施形態では、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502の結合部2512は、腕頭動脈口の近位に意図的に位置付けられない、または位置付けられるように構成されない。むしろ、結合部2512は、図25に示されるように、腕頭動脈口の中へ延在するように位置付けられる、または構成される。第1の分岐ステントグラフト補綴具2542は、次いで、結合部2512を通して展開され、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の比較的より長い部分は、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502の管腔内に延在する。例えば、本明細書の実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の約10~30mmが、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502の管腔内に延在する。遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、次いで、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502の遠位部分内に展開される。展開されたとき、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の一部の外面に接触する、またはそれに対して当接する。しかしながら、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542は、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122よりも高い半径方向力を有し、したがって、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具2542を圧潰せず、または別様にそれに干渉せず、それによって、腕頭動脈BCAの灌流が提供される。遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の一部の外面に共形化し、したがって、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具2542によって部分的に圧潰されてもよいが、管腔129は、展開された第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の比較的より小さいサイズに起因して、血液が遠位大動脈ステントグラフト補綴具122を通して流動するために少なくとも部分的に開放したままである。
【0071】
着目すべきこととして、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502、および遠位大動脈ステントグラフト補綴具122が、図25に示されるように展開されるとき、(その拡張構成における)第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の一部2590は、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の近位端が、十分な重複164の近位に位置付けられ、腕頭動脈BCA口を効果的に近位に経路変更するように、十分な重複164に沿って延在する。別の言い方をすれば、一部2590内で得られる展開された大動脈弓補綴アセンブリ2500の断面において、断面は、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542と、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502と、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122とを含む。本実施形態では、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542は、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502の内部または内側に延在し(すなわち、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542の一部2590は、近位大動脈ステントグラフト補綴具2502の管腔内に延在し、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122に対して当接し)、したがって、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542および遠位大動脈ステントグラフト補綴具122は両方とも、一部2590に沿って近位大動脈ステントグラフト補綴具2502内で半径方向に配置される。しかしながら、前述で説明されたように、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542は、第1の分岐ステントグラフト補綴具2542が、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122との接触に起因して圧潰しないように、遠位大動脈ステントグラフト補綴具122よりも高い半径方向力を及ぼすように構成される。
【0072】
第2の分岐ステントグラフト補綴具152/2452は、左鎖骨下動脈LSAへの灌流を提供するものとして上記に説明されるが、本明細書の別の実施形態では、第2の分岐ステントグラフト補綴具152/2452は、図26に示されるように、左総頸LCC動脈内に展開されてもよい。図26に示されるように、十分な重複2664は、第2の分岐ステントグラフト補綴具152が、左鎖骨下動脈LSAではなくて左総頸LCC動脈内に配置されるときに、依然として、近位および遠位大動脈ステントグラフト補綴具102、122の間で発生する。バイパス162が左総頸LCC動脈を左鎖骨下動脈LSAに流体的に接続すると、第2の分岐ステントグラフト補綴具152を介した左総頸LCC動脈への灌流はまた、左鎖骨下動脈LSAへの灌流も提供する。
【0073】
さらに、本明細書の別の実施形態では、第2の分岐ステントグラフト補綴具152は、大動脈弓補綴アセンブリの別個のモジュールまたは構成要素ではなくて遠位大動脈ステントグラフト補綴具122の一体延在部であってもよい。
【0074】
図12-23に説明される方法では、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール102が、最初に展開され、または埋め込まれ、その後に、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール142の展開が続き、その後に、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール122の展開が続き、最後に、第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール152の展開がある。本順序またはシーケンスは、腕頭動脈BCAへの流動および灌流の確立を優先させる。しかしながら、モジュールの展開のシーケンスは、図12-23に説明される順序から変動し得る。例えば、本明細書の別の実施形態では、モジュールは、遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール122が最初に展開され、その後に、第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール152の展開が続き、その後に、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール102の展開が続き、最後に、第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール142の展開があるように、遠位から近位に展開されてもよい。本明細書の別の実施形態では、大動脈ステントグラフト補綴具(すなわち、近位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール102および遠位大動脈ステントグラフト補綴具またはモジュール122)は両方とも、分岐ステントグラフト補綴具(第1の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール142および第2の分岐ステントグラフト補綴具またはモジュール152)の前に展開されてもよい。
【0075】
本発明による種々の実施形態が、上記に説明されているが、それらは、限定としてではなく、例証および一例のみとして提示されていることを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変更がそこで行われ得ることが、当業者に明白であろう。また、本明細書で議論される各実施形態および本明細書で引用される各参考文献の各特徴が、任意の他の実施形態の特徴と組み合わせて、使用され得ることも理解されたい。本明細書で議論される全ての特許および出版物は、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
図1
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