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▶ コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】基板の官能化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019532118
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017081908
(87)【国際公開番号】W WO2018108708
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】1662677
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランディス,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ティロン,ラルカ
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-144120(JP,A)
【文献】特開2013-067084(JP,A)
【文献】特開2008-306066(JP,A)
【文献】特開2011-067950(JP,A)
【文献】特開2014-053558(JP,A)
【文献】特表2014-522567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0176767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーの自己組織化を意図した基板(100、400)を官能化する方法であって、以下のステップを含む:
基板(100、400)の表面に第1のポリマー材料層(110)を堆積させるステップ(S11、S21、S41)であって、当該第1のポリマー材料がブロックコポリマーに対して第1の化学的親和性を有するステップ
・第1のポリマー材料層(110)の一部分のみを基板(100、400)の表面にグラフトして、基板(100、400)の表面上にグラフトされた第1のポリマー材料層(110)のグラフト部分(110a)および当該グラフト部分(110a)の上に配置された第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)を得るステップ(S12、S22、S42);
・モールド(120)を用いて、パターン(111、201)を第1のポリマー材料層(110)の前記グラフト部分(110a)の上方に配置された犠牲層内に印刷するステップ(S13、S24、S43)であって、前記犠牲層は第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)を含むステップ
・犠牲層のパターンを第1のポリマー材料層(110)の前記グラフト部分(110a)へ基板(100、400)に届くまで、転写するステップ(S14、S25、S44);及び
前記転写するステップ(S14、S25、S44)の後に、少なくとも前記第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)を、第1のポリマー材料層(110)のグラフト部分(110a)を露出させるように、ウェットエッチングにより除去するステップ(S15、S26、S45)。
【請求項2】
前記犠牲層が、前記第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記犠牲層が、前記第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)からなる第1のサブ層及び前記第1のポリマー材料とは異なる印刷可能なポリマー材料(200)からなる第2のサブ層を含、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)上に、印刷可能なポリマー材料(200)からなる犠牲層を堆積させるステップ(S23)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記印刷可能なポリマー材料(200)が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光重合性樹脂である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板(400)が、前記ブロックコポリマーに対して第2の化学的親和性を有する第2のポリマー材料からなる表面層(410)を含み、前記犠牲層の前記パターン(111)が、前記表面層(410)にさらに転写される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のポリマー材料が、前記ブロックコポリマーの前記ブロックのうちの1つに対して優先的な親和性を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のポリマー材料層(110)の非グラフト部分(110b)が、溶媒を用いて除去される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のポリマー材料(110)が、前記ブロックコポリマーの前記ブロックに対して中性である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のポリマー材料層(110)が、ランダムコポリマー、ホモポリマー又は自己組織化単分子層から形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記パターン(111、201)が、熱印刷又はUV増強印刷によって前記犠牲層に印刷される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記パターンの印刷ステップ(S13、S24、S43)と同時に、前記基板(100、400)の表面上への前記第1のポリマー材料層(110)のグラフトステップ(S12、S22、S42)が行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
・請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を用いて官能化された基板の調製;
・官能化された基板の表面上へのブロックコポリマーの堆積;及び
・ブロックコポリマーの組織化
を含む化学エピタキシー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマーの自己組織化を意図した基板を官能化する方法に関する。この官能化法により官能化された基板からの化学エピタキシー法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックコポリマーのDSA、すなわち、指向性自己組織化は、30nm未満の限界寸法のパターンを形成することを可能にする、新たなリソグラフィ技術である。この技術は、極端紫外線(EUV)リソグラフィ及びeビームリソグラフィのより安価な代替物を構成する。
【0003】
ブロックコポリマーの自己組織化の既知の方法は、2つのカテゴリー、グラフォエピタキシー及び化学エピタキシーに一緒に分類することができ、これらの両方は論文「Guided self-assembly of block-copolymer for CMOS technology: a comparative study between grapho-epitaxy and surface chemical modification」、L.Oriaら、SPIE 2011、7970-24巻」に詳細に記載されている。
【0004】
グラフォエピタキシーは基板の表面上にガイドと呼ばれる一次トポグラフィーパターンを形成することからなり、これらのパターンは、その内部にブロックコポリマー層が堆積される領域を画定する。ガイドパターンにより、コポリマーのブロックの組織化を制御して、これらの領域内により大きな解像度の二次パターンを形成することが可能になる。ガイドパターンは、従来、フォトリソグラフィによって樹脂層に形成され、任意にハードマスクに転写される。
【0005】
化学エピタキシーは、基板の特定の部分の化学的性質を改変し、これらの部分の間のコポリマーのブロックの組織化を強制することからなる。基板の化学修飾は特に、ポリマー官能化層のグラフト化によって得ることができる。次いで、この官能化層は、基板の表面上に化学的コントラストを生成するためにパターン化される。したがって、基板の裸の部分はコポリマーのブロックに対して第1の化学的親和性を有するが、官能化層によって覆われた基板の部分は第1の化学的親和性とは異なる第2の化学的親和性を有する。官能化層のパターニングは、従来、光リソグラフィ又はeビームリソグラフィのステップによって得られる。
【0006】
文献US2012/0135159号は、印刷可能な樹脂によって基板を官能化するための別の方法を記載する。コポリマーのブロックの1つに対して優先的な親和性を有する樹脂層が、基板上に堆積される。次に、この樹脂層は、実際に樹脂層内にトポグラフィーコントラストを得るために、モールドを用いて印刷される。印刷中、樹脂は、モールドを加熱することによって、又はモールドを通して紫外線に曝すことによって、架橋される。次に、印刷された樹脂は、印刷されたパターン内の基板を露出するように、酸素プラズマへの暴露によって化学的に処理される。この処理ステップは、架橋樹脂の層を薄くして、10nm未満の厚さを達成することに等しい。薄くされた樹脂層は次に、化学エピタキシー法において官能化層として働く。
【0007】
文献US2012/0135159号の官能化方法で実施される熱印刷又はUV増強印刷は、官能化層をパターニングするためのeビームリソグラフィの代替技術である。それは、印刷する樹脂(すなわち、官能化層のポリマー)と電子感受性(すなわち、eビームに感受性)樹脂との重ね合わせによる欠陥の出現を回避する。しかし、プラズマによる、印刷された樹脂の化学的処理のステップは、官能化層(その上にブロックコポリマーが堆積される)の面を損傷し、その化学的親和性を変化させる作用を有する。その結果、官能化層によって覆われた基板の領域における化学的親和性は、そのような方法では制御することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2012/0135159号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ブロックコポリマーを自己組織化するための後者の方法に対して良好なリソグラフィ特性を保証するために、官能化層を損傷せず、又はその化学的親和性を変化させない、基板を官能化する方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この必要性は、以下のステップを提供することによって満たされる傾向がある。
・基板の表面に第1のポリマー材料の層を堆積させるステップであって、当該第1のポリマー材料は、ブロックコポリマーに対して第1の化学的親和性を有するステップ;
・第1のポリマー材料層の一部分のみを基板の表面にグラフトするステップ;
・モールドを用いて、パターンを第1のポリマー材料層の前記グラフト部分の上方に配置された犠牲層に印刷するステップ;
・犠牲層のパターンを第1のポリマー材料層の前記グラフト部分へ基板に届くまで、転写するステップ;及び
・犠牲層の少なくとも一部分を、第1のポリマー材料層のグラフト部分を露出させるように、ウェットエッチングによって除去するステップ。
【0011】
したがって、この官能化方法では、ポリマー層のグラフト部分が官能化層を構成し、これは事前に印刷されたパターンを犠牲層に転写することによってパターン化される。この犠牲層により、官能化層のパターニング中に、官能化層の有用な部分、すなわち、その上にブロックコポリマーが堆積される部分を保護することが可能になる。実際、官能化層の有用な部分は、印刷パターンの転写ステップの間犠牲層によって覆われる。この転写の後、犠牲層の除去は、下にある官能化層を損傷したり、その化学的特性を変化させたりしないように、ウェットエッチング法によって行われる。
【0012】
したがって、本発明による官能化方法により、所望の化学的親和性及び良好な表面状態を有する、基板の表面上のパターン化された官能化層を得ることが可能になる。逆に、従来技術の方法では、官能化層(印刷され、次いで薄くされた樹脂からなる)の表面は、酸素プラズマ(表面欠陥を生成し、制御されない方法でその化学的親和性を変化させる)に曝される。
【0013】
本発明による官能化方法の第1の実施形態では、犠牲層が第1のポリマー材料層の非グラフト部分から構成される。
【0014】
官能化方法の第2の実施形態では、犠牲層は第1のポリマー材料とは異なる印刷可能なポリマー材料から構成される。次に、この方法は、有利には、第1のポリマー材料層の非グラフト部分を除去し、次に、第1のポリマー材料層のグラフト部分の上に印刷可能なポリマー材料からなる犠牲層を堆積させることからなるステップを含む。
【0015】
官能化方法の第3の実施形態では、犠牲層は第1のポリマー材料層の非グラフト部分からなる第1のサブ層、及び第1のポリマー材料とは異なる印刷可能なポリマー材料からなる第2のサブ層を含み、犠牲層の前記少なくとも1つの部分は第1のサブ層に対応するウェットエッチングによって除去される。次に、この方法は、有利には、第1のポリマー材料層の非グラフト部分上に、印刷可能なポリマー材料からなる犠牲層を堆積させるステップを含む。
【0016】
好ましくは、印刷可能なポリマー材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光重合性樹脂である。
【0017】
官能化方法の発展によれば、基板はブロックコポリマーに対して第2の化学的親和性を有する第2のポリマー材料からなる表面層を含み、犠牲層のパターンは、表面層にさらに転写される。
【0018】
また、本発明による方法は個々に、又は技術的に可能なこれらの組み合わせの全てに従って考慮される、以下の特徴のうちの1つ以上を有することができる:
・前記犠牲層の少なくとも一部分は、溶媒によって除去される;
・第1のポリマー材料は、ブロックコポリマーのブロックに関して中性である;
・第2のポリマー材料は、ブロックコポリマーのブロックの1つに対して優先的な親和性を有する;
・第1のポリマー材料層は、ランダムコポリマー、ホモポリマー、又は自己組織化単分子層から形成される;
・パターンは熱印刷又はUV増強印刷によって犠牲層に印刷される;及び
・基板の表面上への第1のポリマー材料層のグラフトは,パターンの印刷と同時に実施される。
【0019】
本発明はまた、上記の官能化方法を用いて官能化された基板の調製、官能化された基板の表面上へのブロックコポリマーの堆積、及びブロックコポリマーの組織化を含む、化学エピタキシー方法に関する。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、示されるようにかつ限定されないように、以下に示す説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図1B図1Bは、本発明の第1の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図1C図1Cは、本発明の第1の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図1D図1Dは、本発明の第1の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図1E図1Eは、本発明の第1の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図2A図2Aは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図2B図2Bは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図2C図2Cは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図2D図2Dは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図2E図2Eは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図2F図2Fは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図3A図3Aは、本発明の第3の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図3B図3Bは、本発明の第3の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図3C図3Cは、本発明の第3の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図3D図3Dは、本発明の第3の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図3E図3Eは、本発明の第3の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図3F図3Fは、本発明の第3の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図4A図4Aは、本発明の第4の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図4B図4Bは、本発明の第4の実施形態による機能化方法のステップを表す。
図4C図4Cは、本発明の第4の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図4D図4Dは、本発明の第4の実施形態による官能化方法のステップを表す。
図4E図4Eは、本発明の第4の実施形態による機能化方法のステップを表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
より明確にするために、全ての図において、同一又は類似の要素には同一の参照符号を付す。
【0023】
本発明の目的である官能化方法は、基板の1つ以上の領域を覆う官能化層によって、基板の表面上に化学的コントラストを作り出すことを目的とする。基板の残りの領域は裸のままであってもよく、その場合、基板は官能化層の化学的親和性とは異なる化学的親和性を有する。化学的コントラストは、異なる化学的親和性を有する官能化層を基板の表面上に並べて配置することによっても得ることができる。
【0024】
この官能化された基板は、ブロックコポリマーを自己組織化する方法の範囲内で、ブロックコポリマーで覆われることが意図される。化学的コントラストにより、コポリマーを構成するモノマーのブロックの組織化を強制することが可能になる。したがって、基板及び官能化層(複数可)の化学的親和性は、コポリマーのブロックに関して意味される。これらの親和性は、以下の可能性から選択することができる:
・コポリマーのブロックのいずれかに対する優先的親和性;又は
・中性、すなわちコポリマーのブロックのいずれかに対する優先的親和性がない。
【0025】
図1A~1Eは、本発明の第1の実施形態による、基板100を官能化するための方法のステップS11~S15を表す。
【0026】
図1Aに示す第1のステップS11は、官能化ポリマーと呼ばれるポリマー材料110の層を基板100の表面上に堆積させることからなる。この官能化ポリマー110はグラフト可能であり、基板100の特定の領域に与えることが望まれる化学的親和性に従って選択される。また、この第1の実施形態では、官能化ポリマー110は印刷可能であり、すなわち、印刷方法によってパターン化又はモデル化することができる。
【0027】
官能化ポリマー110は好ましくはランダムコポリマー、ホモポリマー、又は表面エネルギーを制御することを可能にする任意の他のタイプのグラフト可能(及び印刷可能)ポリマーである(表面エネルギーはコポリマーのブロックに対する化学的親和性を決定する)。ポリマー層110はまた、自己組織化単分子層(SAM)から形成されてもよい。
【0028】
好ましくは、官能化ポリマー110はコポリマーのブロックに関して中性である。言い換えれば、コポリマーの各ブロックと官能化ポリマー110との間の相互作用力は同等である。一例として、官能化された基板を覆うことを意図されたブロックコポリマーが円筒形態のPS-b-PMMAである場合、官能化ポリマー110は、70重量%のポリスチレン(PS)及び30重量%のポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むランダムコポリマーPS-r-PMMAであることができる。ブロックコポリマーがラメラ形態のPS-b-PMMAである場合、官能化ポリマー110は、50重量%のPS及び50重量%のPMMAを含むPS-r-PMMAであることができる。
【0029】
基板100上への官能化ポリマー110の堆積は、有利にはスピンコーティングによって実施される。官能化ポリマー110は溶媒で希釈されて溶液を形成し、この溶液は、遠心力によって基板100上に広げられる。例えば、官能化ポリマー110がPS-r-PMMAである場合、溶媒はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であることができ、溶液は約1.5重量%のポリマー濃度を有することができる。堆積後、溶液中のポリマー110の層は一般に、5nm~100nmの間、好ましくは10nm~50nmの間の厚さを有する。このような厚さとすることにより、ポリマーを基板全面に分散させることができる。
【0030】
官能化ポリマー110の堆積の他の様式、例えば、スプレーコーティング、液滴分配、ブレードコーティング、及び化学蒸着が想定され得る。
【0031】
次に、図1BのステップS12において、ポリマー層110の一部110aが基板100の表面上にグラフトされる。このグラフトは、アニーリングによって実施することができる。実際、基板100上に堆積されたポリマー層110を加熱することによって、ポリマー鎖の一部と基板の表面との間に共有結合が形成される。次いで、これらのポリマー鎖は、基板100に密接に結合される。基板に共有結合によって結合されていないポリマー鎖は、グラフト部分110aの上方に配置されたポリマー層110の非グラフト部分110bに含まれる。アニーリングは、例えば、250℃の温度で約10分間、基板を炉内又は加熱テーブル上に置くことによって行われる。溶媒は、グラフトアニーリングの前又は間に蒸発させられる。ポリマー層110のグラフト部分110aの厚さは、1nm~15nmである。これは、典型的には5nm程度である。
【0032】
図1Cを参照すると、官能化方法は次に、ポリマー層110の非グラフト部分110bに陥凹パターン111を印刷するステップS13を含む。トポグラフィー(すなわち、突出)パターン121を備えるモールド120は、ポリマー層110で覆われた基板100に対して、より詳細にはポリマー層110の非グラフト部分110bに対して押圧される。非グラフト部分110bの各陥凹パターン111は、モールド120のトポグラフィーパターン121によって残されたインプリントに対応する。加えられる圧力及びトポグラフィーパターン121の高さは、モールドのパターン121がポリマー層110のグラフト部分110aと接触しないようなものである。次いで、官能化ポリマー110の残留層110cが、陥凹パターン111の底部で観察され得る。陥凹パターン111は好ましくは5nm~20nmの間の深さを有し、一方、非グラフト部分110bは、10nm~50nmの間の厚さを有する。
【0033】
印刷ステップS13の間、局所体積の保存の原理が適用されることが好ましく、すなわち、グラフトされていないポリマー材料は、ちょうど変位され、量が低減されない。そうするために、ポリマー層110の厚さは、非グラフト部分110bの体積がモールド120(すなわち、トポグラフィックパターン121の各側で)の空洞を充填する体積よりも大きくなるように選択される。
【0034】
本方法のこの第1の実施形態では、基板及び/又はモールドを、官能化ポリマー110のガラス転移温度を超える温度、一般にPMMA及びPSをベースとするコポリマーについて100℃~120℃の間の温度に加熱することによって、印刷が有利に熱的に増強される。次に、1バール(0.1MPa)~100バール(10MPa)の間の圧力を、数分間、モールド120の裏面に加える。最後に、モールド-基板アセンブリはモールド120が基板100から分離される前に、ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度に冷却される。
【0035】
続くステップS14(図1D参照)は非グラフト部分110bに形成された陥凹パターン111をポリマー層110のグラフトされた部分110aに転写し、それらが基板100の上面に現れるまで転写することからなる。換言すれば、このステップS14の間に、陥凹パターン111の底部に位置するポリマーの残留層110cが除去される。
【0036】
この転写は、非グラフト部分110b(これはエッチングマスクとして働く)を通してポリマー層のグラフト部分110aをエッチングすることによって得られる。グラフト部分110aの厚さは、非グラフト部分110bの厚さよりも十分に薄いので、残留層110cは、グラフト部分110a上のグラフトされていないポリマーの厚さを保存しながら、完全に除去され得る。
【0037】
例えば、酸素並びに塩素化及び/又はフッ素化ガスをベースとするプラズマタイプのドライエッチングの方法が、転写ステップS14で使用されてもよい。このタイプのエッチングは、異方性が強く、非グラフト部110bの陥凹パターン111と同じ幅のグラフト部110aの陥凹パターン111’を得ることができる。ステップS14を通じてグラフト部分が非グラフト部分110bによって覆われている限り、ポリマー層110のグラフト部分110aは、プラズマに曝されず、したがって、プラズマによって変更されるおそれはない。
【0038】
したがって、この第1の実施形態では、非グラフト部分110bが官能化ポリマーのグラフト部分110aのための保護層を構成する。グラフト部分110aは基板100の官能化層を形成するように意図されており、これにより、表面粗さ及び化学的親和性のようなその物理的及び化学的特性を保存することが可能になる。この保護は、パターンを印刷するステップの間だけでなく、これらのパターンを転写する後のステップ(官能化層をパターン化する実際のステップ)の間にも作用する。
【0039】
ポリマー層110の非グラフト部分110bはグラフト部分110aを露出させるために、図1Eによって表されるステップS15の間に除去されるので、犠牲層として認定することができる。これにより、パターニングされた、すなわち基板100の上面の1つ以上の領域を(陥凹パターン111’内に)露出させる官能化層が得られる。この除去は官能化層の特性を変化させないために、ウェットエッチングによって行われる。好ましくは、PGMEAのような溶媒が官能化ポリマーの非グラフト化部分110bを溶解するために使用される。
【0040】
官能化方法のこの第1の実施形態の特異性は、パターンがポリマー層110の非グラフト部分110bに直接印刷されることである。これにより、官能化方法のステップの数、並びに使用される材料の数を最小限に抑えることが可能になる。
【0041】
図2A~2Fは、本発明の第2の実施形態による官能化方法のステップS21~S26を表す。
【0042】
図2A及び図2Bによってそれぞれ示される2つの第1のステップS21及びS22は、図1A及び図1Bに関連して前述したステップS11及びS12と同一である。したがって、ステップS21の間に、官能化ポリマー110の層が基板100上に堆積され、次いで、ステップS22の間に、この層の一部分110aが基板100上にグラフトされる。前述のように、ポリマー層110の非グラフト部分110bは、グラフト部分110aを覆う。
【0043】
図2Cを参照すると、官能化方法は次に、ポリマー層110の非グラフト部分110b上に印刷可能なポリマー材料200からなる層を堆積させることからなるステップS23を含む。この印刷可能なポリマー200は、官能化ポリマー110とは異なる。印刷可能なポリマー200は、好ましくは、例えば、PS、PMMA又は環状オレフィンコポリマー(COC)をベースとする熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂(例えば、熱開始架橋剤を含むアクリルベースの樹脂)、又は光重合性樹脂(例えば、1つ以上の光開始剤を含むエポキシ又はアクリレートベースの樹脂)である。
【0044】
次に、図2DのステップS24において、モールド120を用いて、印刷可能なポリマー200の層にパターン201が印刷される。印刷可能なポリマー200が熱可塑性又は熱硬化性樹脂である場合、印刷は熱的に増強される。印刷可能なポリマー200は、架橋温度(熱硬化性樹脂の場合)又はガラス転移温度(熱可塑性樹脂の場合)に加熱される。この架橋又はガラス転移温度(場合に応じて)は、有利には官能化ポリマー110(例えばランダムコポリマー)のガラス転移温度よりも低い。したがって、これは、官能化ポリマー110を変形可能にすることを回避し、その結果、ポリマーを混合するおそれを回避する。
【0045】
ステップS24の別の実施形態では、印刷可能なポリマー200が光重合可能な樹脂である場合、印刷は紫外線(UV)増強される。印刷可能なポリマー200の層は、モールド120が基板100に対して押圧されている間、紫外線に曝される。そのとき、モールド120は紫外線に対して透明である。UV増強印刷は室温(すなわち、25℃)又は40℃~70℃の間の温度(したがって、官能化ポリマー110のガラス転移温度未満の温度)で実施することができる。加えられる圧力は、好ましくは1バール(0.1MPa)~50バール(5MPa)の間である。これにより、樹脂は、その硬化が得られるまで、数分間露光される。最後に、モールド120は硬化した樹脂層から分離される。
【0046】
官能化ポリマーとは異なる印刷可能なポリマー材料を使用することにより、この材料は官能化ポリマーの選択とは無関係に、その成形特性(印刷による)に対して選択することができるので、印刷パターンのステップS24を最適化することが可能になる。材料のこの区別はまた、官能化ポリマーの選択のためのより多くの可能性を提供する。実際、官能化ポリマーは、この第2の実施形態では印刷可能である必要はない。
【0047】
官能化方法は図1Dを参照して説明したものと同様に、パターン201を転写するステップS25(図2E)によって継続される。印刷可能なポリマー200の層に印刷されたパターン201は、非グラフト部分110bに転写され、次いで、基板100に届くまで、ポリマー層110のグラフト部分110aに転写される。この転写は、好ましくは印刷可能なポリマー200の層及び非グラフト部分110bを通るプラズマエッチングによって得られる。
【0048】
したがって、官能化方法のこの第2の実施形態では、パターン(201)の転写中にグラフト部分110aを保護する犠牲層がポリマー層110の非グラフト部分110bに対応する第1のサブ層、及び印刷可能なポリマー200から構成される第2のサブ層を含む。
【0049】
最後に、図2Fに示す最後のステップS26の間に、ポリマー層110の非グラフト部分110bは溶媒によって除去され、これにより、印刷可能なポリマー200の層を(ポリマーが熱硬化性若しくは光重合性材料である場合にはリフトオフ効果によって、又は熱可塑性材料である場合には溶媒自身の効果によって)同時に除去することができる。あるいは印刷可能なポリマー200の層が最初に、ドライエッチングによって、例えば、プラズマ(例えば、O、Cl、C、及びそれらの組み合わせ)によって除去され、次いで、ポリマー層110の非グラフト部分110bがウェットエッチングによって(好ましくは溶媒によって)除去される。この最後のステップにより、印刷パターン201の位置に対応する領域を除いて基板100を覆う官能化ポリマーの非グラフト部分110aを露出させることが可能になる。
【0050】
図3A図3Fは、本発明の第3の実施形態による官能化方法の連続するステップS31~S36を表す。
【0051】
この第3の実施形態はステップS33(図3C)の間に、ポリマー層110の非グラフト部分110bが、印刷可能なポリマー200の層の堆積の前に除去されるという点で、図2A図2Fの実施形態とは異なる。
【0052】
したがって、官能化ポリマーのグラフト部分110aを覆う保護(及び犠牲)層は、印刷可能ポリマー200の層のみから構成される。したがって、これは、2つのポリマー材料、すなわちグラフトされていない官能化ポリマーと印刷可能なポリマーとの重ね合わせが回避され、このためこの重ね合わせから生じる相溶性の問題が回避される。
【0053】
印刷可能材料200によって提供される利点(すなわち、印刷ステップの簡略化)に加えて、この第3の実施形態は、ポリマーの選択に関して最大の自由度を提供する。実際、官能化ポリマーはいったんグラフトされると、化学的及び熱的に安定であり、したがって、その上に堆積される印刷可能ポリマー200の選択を制限しない。
【0054】
この方法の他のステップ、すなわち、官能化ポリマー110を堆積させるステップS31、グラフトステップS32、印刷可能ポリマー200の層にパターン201を印刷するステップS34、パターン201を転写するステップS35、及び保護層を除去するステップS35は、図2A~2B、2D~2Fに関連して前述したように実施される(それぞれステップS21~S22、S24~S26)。特に、非グラフト部分110bを除去するために使用されるような溶媒(例えば、PGMEA)又は別の非プロトン性極性溶媒が印刷可能なポリマー200からなる保護層を除去するために、ステップS36において有利に使用される。
【0055】
上記の方法(図1E、2F及び3F参照)のいずれかの終わりに得られた官能化された基板は非常に高い解像度及び密度のパターンを生成するために、ブロックコポリマーの指向性自己組織化(DSA)の方法において、より詳細には化学エピタキシー法において使用され得る。この化学エピタキシー法は、官能化された基板の表面上(官能化ポリマーのグラフト部分110a上)にブロックコポリマーを堆積させるステップと、コポリマーのブロックを、例えば、アニーリングによって組織化するステップとを含む。
【0056】
ブロックコポリマーは特に、以下のものから選択することができる:
・PS-b-PMMA:ポリスチレンブロック-ポリメチルメタクリレート
・PS-b-PLA:ポリスチレンブロック-ポリ乳酸;
・PS-b-PEO:ポリスチレンブロック-ポリエチレンオキシド;
・PS-b-PDMS:ポリスチレンブロック-ポリジメチルシロキサン
・PS-b-PMMA-b-PEO:ポリスチレンブロック-ポリメチルメタクリレートブロック-ポリエチレンオキシド
・PS-b-P2VP:ポリスチレンブロック-ポリ(2ビニルピリジン)。
【0057】
官能化ポリマー110は、上記に列挙したブロックコポリマー(PS-r-PMMA、PS-r-PLA、PS-r-PEOなど)と同じモノマーのブロックから構成されるランダムコポリマー、これらのモノマー(PS、PMMA、PLAなど)の1つから構成されるホモポリマー、又は所望の親和性を有する任意の他のグラフト可能なポリマーであることができる。PS、PMMA及び/又はPDMSをはじめとする材料は、熱的に印刷することができるという特殊性を有する(図1C参照)。
【0058】
次に、図4A~4Eを参照して、本発明による官能化方法の第4の実施形態を説明する。これは、パターンが官能化ポリマーの非グラフト部分に直接印刷される第1の実施形態から導き出される。
【0059】
したがって、図4A~4Eの官能化方法は基板400上に第1の官能化ポリマー110の層を堆積するステップS41(図4A参照)、この層の一部分110aを基板400の表面上にグラフトするステップS42(図4B)、第1の官能化材料110の層の非グラフト部分110bにパターン111を印刷するステップS43(図4C)、パターン111をグラフト部分110aに転写するステップ(図4D)、及び最後に、非グラフト部分110bをウェットエッチングによって除去するステップ(図4E)を含む。
【0060】
官能化方法のこの第4の実施形態の特異性は2つである。
【0061】
第1に、官能化するための基板400は、第2の官能化ポリマー材料からなる表面層410を含む。この第2の官能化ポリマーは、図4AのステップS41で基板400上に堆積された第1の官能化ポリマー110の化学的親和性とは異なる化学的親和性を有する。したがって、第1の官能化ポリマー110がブロックコポリマーに対して中性である場合、第2の官能化ポリマーは、コポリマーのブロックのうちの1つに対して優先的な親和性を有する。第2の官能化ポリマーは、好ましくはポリスチレン(PS)などのホモポリマーである。1nm~500nmの間の厚さの表面層410は、例えば、シリコンからなる基板400の支持層420上に配置される。
【0062】
第2に、非グラフト部分110bに印刷されたパターン111は、プラズマエッチングステップS44の間にグラフト部分110aを越えて転写され、表面層410の少なくとも一部に陥凹パターン411を形成する。好ましくは、陥凹パターン411は5nm~20nmの間の深さを有する。従って、それらはシリコン支持層420には届かない。
【0063】
したがって、この官能化方法の終わり(図4E参照)に、第1の官能化ポリマー110の層と第2の官能化ポリマーからなる表面層410との間の交互によって形成された基板400の表面上に化学的コントラストが得られるだけでなく、表面層410に形成された陥凹パターン411によってもトポグラフィーコントラストが得られる。
【0064】
このような官能化された基板は特に、化学エピタキシーとグラフォエピタキシーとを組み合わせたハイブリッド法に役立ち得る。陥凹パターン411は実際にはブロックコポリマーによって充填され、官能化層(110a)と共に、コポリマーブロックの組織化を制御することを可能にするアセンブリガイドを構成する。
【0065】
ステップS44(図4D)の代替実施形態では、表面層410に形成された陥凹パターン411が支持層420の上面に現れ、この支持層420の材料(例えば、PMMA-アフィンであるSiO)は第1及び第2の官能化ポリマーの化学的親和性とは異なったブロックコポリマーに対する化学的親和性を有する。これにより、複数の化学的親和性、すなわち、ガイドの上面のレベルでの第1の化学的親和性(グラフト部分110a)、ガイドパターン411の側壁のレベルでの第2の化学的親和性(表面層410)、及びガイドパターン411の底部での第3の化学的親和性(支持層420)を有するアセンブリガイドを得ることが可能になる。
【0066】
基板400の表面層410におけるアセンブリガイドの形成はまた、図2A~2F及び3A~3Fによってそれぞれ表される官能化方法の第2及び第3の実施形態と互換性がある。したがって、パターンを印刷するために、第1の官能化ポリマー110の非グラフト部分の重ね合わせ(図2A~2F)又は置換(図3A~3F)において、特定の印刷可能なポリマー材料を使用することも可能である。
【0067】
もちろん、本発明による官能化方法は、図1図4を参照して説明した実施形態に限定されず、当業者には多くの代替及び修正が明らかになるであろう。特に、第1の官能化ポリマー(110)及び第2の官能化ポリマー(410)は、先に記載したもの以外の組成を有することができる。同様に、他のブロックコポリマーを使用することもできる。
【0068】
本方法の別の実施形態では、基板上へのポリマー層のグラフトが印刷ステップ中に得られる。実際、印刷が熱的に増強されるので、ポリマー層の全体が加熱され、印刷されていない部分が基板上にグラフトされ得る。言い換えれば、グラフトステップS12、S22、又はS42、及び印刷ステップS13、S24、又はS43は、連続的ではなく、同時に達成されてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E