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特許71117251,3,5-トリアジン誘導体の塩およびその結晶、その製造方法、医薬組成物、ならびにそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】1,3,5-トリアジン誘導体の塩およびその結晶、その製造方法、医薬組成物、ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20220726BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20220726BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220726BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220726BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C07D401/14
A61K31/53
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019539249
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2018073578
(87)【国際公開番号】W WO2018133856
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】201710047243.4
(32)【優先日】2017-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710570764.8
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517285024
【氏名又は名称】正大天晴▲藥▼▲業▼集▲団▼股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】517285035
【氏名又は名称】▲連▼▲雲▼港▲潤▼▲衆▼制▲藥▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】516333687
【氏名又は名称】北京▲賽▼林泰医▲藥▼技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CENTAURUS BIOPHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building #16,Minzhuang Road #3,Haidian District,Beijing 100195,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 体▲聡▼
(72)【発明者】
【氏名】肖 慧▲豐▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲鋭▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 ▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 宏江
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲曉▼金
(72)【発明者】
【氏名】武 静▲麗▼
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104114543(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107641114(CN,A)
【文献】国際公開第2015/017821(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/016513(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の結晶Aであって、
【化1】
その粉末X線回折スペクトルが約10.1°、16.1°、17.5°、18.9°および21.7°において2θ値で表される回折ピークを有することを特徴とする、式Iの化合物の結晶A
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルが約10.1°、12.3°、14.3°、14.6°、16.1°、17.5°、18.9°、19.7°、20.1°、21.7°、22.4°、22.8°、23.5°、24.0°、24.4°、26.2°および29.8°において2θ値で表される回折ピークを有する、請求項1に記載の式Iの化合物の結晶A。
【請求項3】
式Iの化合物の結晶Bであって、
【化2】
その粉末X線回折スペクトルが約10.0°、17.4°、18.8°、24.3°および26.1°において2θ値で表される回折ピークを有することを特徴とする、式Iの化合物の結晶B
【請求項4】
粉末X線回折スペクトルが約10.0°、12.2°、14.5°、15.7°、17.4°、18.8°、19.8°、21.6°、23.4°、24.3°、26.1°および29.7°において2θ値で表される回折ピークを有する、請求項3に記載の式Iの化合物の結晶B。
【請求項5】
式Iの化合物のメシル酸塩の結晶Iであって、
【化3】
粉末X線回折スペクトルが約6.2°、12.1°、20.2°および25.0°において2θ値で表される回折ピークを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶I
【請求項6】
粉末X線回折スペクトルが約6.2°、12.1°、13.0°、13.9°、17.8°、18.3°、20.2°、21.2°、22.7°、23.6°、24.6°、25.0°および27.0°において2θ値で表される回折ピークを有する、請求項5に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶I。
【請求項7】
請求項5または6に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶Iの製造方法であって、
(i)式Iの化合物をメチルtert-ブチルエーテルに溶解するステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、を含む、方法。
【請求項8】
式Iの化合物のメシル酸塩の結晶IIであって、
【化4】
その粉末X線回折スペクトルが約7.3°、14.2°、19.2°、21.1°、21.5°、および25.3°において2θ値で表される回折ピークを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶II。
【請求項9】
粉末X線回折スペクトルが約7.3°、9.7°、10.6°、11.6°、13.2°、14.2°、16.4°、17.2°、18.9°、19.2°、19.5°、19.9°、20.4°、21.1°、21.5°、22.0°、22.4°、23.0°、23.2°、24.2°、24.7°、25.3°および27.5°において2θ値で表される回折ピークを有する、請求項8に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶II。
【請求項10】
請求項8または9に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶IIの製造方法であって、
(i)式Iの化合物をメチルtert-ブチルエーテルに溶解するステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液にメタンスルホン酸を還流温度で滴下するステップと、
(iii)ステップ(ii)の溶液を室温に冷却して固体を沈殿させるステップと、
(iv)前記固体を濾過して乾燥するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
式Iの化合物のメシル酸塩の結晶VIIIであって、
【化5】
その粉末X線回折スペクトルが約7.12°、14.05°、19.11°、21.02°、21.33°、および25.15°において2θ値で表される回折ピークを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶VIII。
【請求項12】
粉末X線回折スペクトルが約7.12°、9.60°、10.46°、13.07°、14.05°、16.20°、17.10°、18.80°、19.11°、19.41°、19.80°、20.24°、21.02°、21.33°、21.92°、22.32°、22.89°、23.11°、24.12°、24.56°、25.15°、27.42°および30.21°において2θ値で表される回折ピークを有する、請求項11に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶VIII。
【請求項13】
請求項1または2に記載の式Iの化合物の結晶A、あるいは請求項3または4に記載の式Iの化合物の結晶B、あるいは請求項5または6に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶I、あるいは請求項8または9に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶II、あるいは請求項11または12に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶VIII、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
場合により、IDH2突然変異によって誘発された癌は、膠芽腫(神経膠腫)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性新生物(MPN)、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫、黒色腫、非小細胞肺がん、軟骨肉腫、胆管がん、および血管免疫芽細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)からなる群より選ばれる、IDH2突然変異によって誘発された癌を治療するための、請求項1または2に記載の式Iの化合物の結晶A、あるいは請求項3または4に記載の式Iの化合物の結晶B、あるいは請求項5または6記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶I、あるいは請求項8または9に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶II、あるいは請求項11または12に記載の式Iの化合物のメシル酸塩の結晶VIII、あるいは請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
IDH2突然変異がIDH2/R140Q突然変異またはIDH2/R172K突然変異である、請求項14に記載の結晶または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年1月22日および2017年7月13日にそれぞれ中国国家知的財産局に提出された中国特許出願第201710047243.4号および第201710570764.8号の優先権および利益を主張し、当該中国特許出願の内容の全てを本願に援用する。
【0002】
本発明は、医学化学の分野に属し、1,3,5-トリアジン誘導体の塩およびその結晶に関し、より具体的には、4-(tert-ブトキシアミノ)-6-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-N-(2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-アミンの塩およびその結晶に関する。
【0003】
また、本発明は、1,3,5-トリアジン誘導体の塩およびその結晶を製造するための方法、医薬組成物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞内トリカルボン酸回路における最も重要な鍵となる酵素であるIDH(全称:イソクエン酸デヒドロゲナ-ゼ)は、イソクエン酸の酸化的脱炭酸を触媒して2-オキソグルタル酸(すなわち、α-ケトグルタル酸)を形成することができる。研究により、多くの腫瘍(神経膠腫、肉腫、急性骨髄性白血病など)が触媒中心にあるアルギニン残基(IDH1/R132H、IDH2/R140Q、およびIDH2/R172K)にIDH変異を持つことは示されている。IDH2突然変異は、急性骨髄性白血病(AML)患者の約15%に発生し、突然変異率は年齢とともに増加する。
【0005】
AgiosとCelgeneによって共同開発された最初のIDH2阻害剤であるエナシデニブ(AG-221)は、再発性および難治性のAMLに対する治療後の全奏効率(ORR)が最高で41%までに達し、完全寛解率(CR)が最高で27%までに達する。有効的な患者の76%が少なくとも6ヶ月間治療を持続し、そしてそれらの44%が安定した状態を持っている。
【0006】
活性成分の化学的安定性、固体安定性、インビボ代謝特性および有効期間は、商業的使用のために同定された活性化合物にとって非常に重要な要素である。したがって、所望の特性を有する適切な形態の薬物を提供することは、薬物の製造および貯蔵にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、化学名:4-(tert-ブトキシアミノ)-6-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-N-(2-(トリフルオロメチル))ピリジン-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-アミンを持つ、式Iで表される1,3,5-トリアジン誘導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
【化1】
本発明の目的は、式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の塩およびそれらの結晶を提供することである。式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の塩およびその結晶は、高い安定性、低い吸湿性、良好なインビボ代謝レベル、および長い半減期を有し、そしてそれらは、IDH2に対して良好な阻害活性を有し、物理的性質、安全性、代謝安定性の面で優れた性質を持ち、医薬品としての価値が高い。
【0009】
本発明は式Iの化合物の結晶に関する。
一態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約10.1°、16.1°、17.5°、18.9°および21.7°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約10.1°、16.1°、17.5°、18.9°、21.7°、23.5°、24.4°および26.2°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約10.1°、16.1°、17.5°、18.9°、21.7°、22.4°、22.8°、23.5°、24.0°、24.4°、26.2°、および29.8°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約10.1°、12.3°、14.3°、14.6°、16.1°、17.5°、18.9°、19.7°、20.1°、21.7°、22.4°、22.8°、23.5°、24.0°、24.4°、26.2°、および29.8°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物の結晶形Aを提供する。
【0010】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物の結晶形Aの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表1に示される特徴を有する。
【0011】
【表1】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の結晶形Aは、実質的に図1に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物の結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料(サンプル)からの熱流(heat flow)が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約224.8℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0013】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物を室温で有機溶媒に溶解し、透明溶液を得た後、減圧下で濃縮し、そして乾燥して式Iの化合物の結晶形Aを得ること、を含む、式Iの化合物の結晶形Aの製造方法を提供する。この方法では、有機溶媒は、メタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、tert-ブタノ-ル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、および1,4-ジオキサンのうちの1つまたは複数の任意割合での混合物より選ばれる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、およびそれらの混合溶媒からなる群より選ばれる。
【0014】
上記製造方法のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の有機溶媒に対するモル体積比は、1mmol:5~15mL、または1mmol:5~10mLである。
【0015】
別の態様では、本発明は、有機溶媒中で式Iの化合物をスラリ-化して濾過し、および乾燥して式Iの化合物の結晶形Aを得ること、を含む、式Iの化合物の結晶形Aの別の製造方法を提供する。この方法において、有機溶媒は、ジクロロメタン、ジエチルエ-テル、メチルtert-ブチルエ-テル、エチレングリコ-ルジメチルエ-テル、n-ヘキサン、n-ヘプタンおよびn-オクタン、ならびに複数の上記溶媒の任意割合での混合溶媒からなる群より選ばれる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタン、メチルtert-ブチルエ-テル、n-ヘプタン、およびそれらの複数の任意割合での混合溶媒からなる群より選ばれる。
【0016】
上記の他の製造方法のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の有機溶媒に対するモル体積比は1mmol:2~10mL、または1mmol:2~5mLである。
【0017】
上記の他の製造方法のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の上記結晶形Aを製造する過程において、0~50℃または有機溶媒の還流温度でスラリ-化することができる。いくつかの実施形態において、25~30℃または有機溶媒の還流温度でスラリ-化する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約10.0°、17.4°、18.8°、24.3°および26.1°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約10.0°、17.4°、18.8°、21.6°、24.3°および26.1°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約10.0°、15.7°、17.4°、18.8°、19.8°、21.6°、23.4°、24.3°および26.1°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約10.0°、12.2°、14.5°、15.7°、17.4°、18.8°、19.8°、21.6°、23.4°、24.3°、26.1°および29.7°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物の結晶形Bを提供する。
【0019】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物の結晶形Bの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表2に示される特徴を有する。
【0020】
【表2】
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の結晶形Bは、実質的に図3に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物の結晶形Bの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約224.7℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0022】
別の態様では、本発明は、室温で式Iの化合物を酢酸エチル中に溶解し、透明溶液を得た後減圧下で濃縮し、乾燥して式Iの化合物の結晶形Bを得ること、を含む、式Iの化合物の結晶形Bの製造方法を提供する。
【0023】
上記製造方法のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の有機溶媒に対するモル体積比は、1mmol:2~10mL、または1mmol:2~5mLである。
【0024】
また、本発明は、式Iの化合物の酸付加塩、ならびに前記酸付加塩の水和物および溶媒和物に関し、その中で、前記酸は有機酸および無機酸からなる群より選ばれる。いくつかの実施形態において、有機酸は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、酢酸、安息香酸、グルタル酸、D-酒石酸、L-酒石酸およびフマル酸からなる群より選ばれる。いくつかの実施形態において、無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸からなる群より選ばれる。いくいくつかの実施形態において、前記酸は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、マレイン酸、塩酸、および硫酸からなる群より選ばれ、いくつかの実施形態において、前記酸は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、および塩酸からなる群より選ばれる。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を提供する。場合により、式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は結晶形または非晶形である。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、式Iの化合物のp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を提供する。場合により、式Iの化合物のp-トルエンスルホン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は結晶形または非晶形である。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、式Iの化合物のマレイン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を提供する。場合により、式Iの化合物のマレイン酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は結晶形または非晶形である。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は式Iの化合物の塩酸塩、またはその水和物もしくは溶媒和物を提供する。場合により、式Iの化合物の塩酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物は結晶形または非晶形である。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、化合物Iの硫酸塩またはその水和物もしくは溶媒和物を提供する。場合により、式Iの化合物の硫酸塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物は結晶形または非晶形である。
【0030】
例えば、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩は結晶形または非晶形であってもよく、本発明に係る式Iの化合物のメタンスルホン酸塩水和物は、結晶形または非晶形であってもよく、また、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の溶媒和物は、結晶形または非晶形であってもよい。
【0031】
さらに別の態様では、本発明は、式Iの化合物を有機溶媒に溶解し、撹拌しながら酸を加え、そして0.5~2時間後に反応液から固体を沈殿させて濾過し、乾燥して式Iの化合物の酸付加塩またはその水和物もしくは溶媒和物を得るステップを含む、式Iの化合物の酸付加塩の製造方法を提供する。
【0032】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造方法のいくつかの実施形態において、有機溶媒は、メタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、tert-ブタノ-ル、酢酸エチル、アセトン、メチルtert-ブチルエ-テル、エチレングリコ-ルジメチルエ-テル、テトラヒドロフラン、およびアセトニトリル、およびそれらの複数の任意割合での混合溶媒からなる群より選ばれる。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、メチルtert-ブチルエ-テル、およびそれらの混合溶媒からなる群より選ばれる。
【0033】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造方法のいくつかの実施形態において、式Iの化合物の酸に対するモル比は、1:0.9~5、または1:0.9~3である。
【0034】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物の有機溶媒に対するモル体積比は、1mmol:1~20mL、または1mmol:1~15mLである。
【0035】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物の酸付加塩の製造プロセスにおいて、式Iの化合物を有機溶媒中に入れ、撹拌しながら酸を加えて0.5~2時間反応させる操作は、0~50℃で行うことができ、有機溶媒の還流温度で行うこともできる。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の酸付加塩の製造プロセスにおいて、式Iの化合物を有機溶媒に溶解し、撹拌しながら酸を加えて0.5~2時間反応させる操作は、20~30℃で、または有機溶媒の還流温度で行われる。
【0036】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造方法のいくつかの実施形態において、前記酸は、反応系に直接加えてもよく、または溶液に予備配合されてから反応系に加えてもよい。予備配合用の溶媒は、水、メタノ-ル、エタノ-ル、アセトン、テトラヒドロフラン、およびアセトニトリルのうちの1つの溶媒、または複数の溶媒の任意割合での混合物を含むが、これらに限定されない。予備配合用の溶媒は、式Iの化合物を溶解するのに使用される有機溶媒と同じでも異なっていてもよい。予備配合用の溶媒に対する酸のモル体積比は1mmol:0.1~1mL、または1mmol:0.3~1mLである。
【0037】
本発明において、式Iの化合物は、酸の性質および製造条件に基づいて、それぞれ0.5分子、1分子または2分子の酸との付加反応によってヘミ- 、モノ-またはジ -塩(hemi-, mono- or di-salt)を形成し得ることに留意すべきである。
【0038】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造方法のいくつかの実施形態において、製造に添加される酸は、遊離酸または酸の水和物の形態であってもよい。
【0039】
上記式Iの化合物の酸付加塩の製造プロセスのいくつかの実施形態において、製造プロセスによって得られる式Iの化合物の酸付加塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、場合により結晶形または非晶形である。
【0040】
また、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶に関する。
【0041】
一態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約6.2°、12.1°、20.2°および25.0°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.2°、12.1°、18.3°、20.2°、22.7°、24.6°、および25.0°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.2°、12.1°、17.8°、18.3°、20.2°、21.2°、22.7°、23.6°、24.6°、25.0°および27.0°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.2°、12.1°、13.0°、13.9°、17.8°、18.3°、20.2°、21.2°、22.7°、23.6°、24.6°、25.0°および27.0°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iを提供する。
【0042】

本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表3に示される特徴を有する。
【0043】
【表3】
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iは、実質的に図5に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
【0045】
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約147.3℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0046】
別の態様では、本発明は、
(i)上記式Iの化合物をメチルtert-ブチルエ-テルに溶解するステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、を含む、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの製造方法を提供する。
【0047】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)におけるメチルtert-ブチルエ-テルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:10~20mL、または1mmol:10~15 mLである。
【0048】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:1~1.5、または1:1~1.2である。
【0049】
別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約7.3°、14.2°、19.2°、21.1°、21.5°、および25.3°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約7.3°、9.7°、10.6°、14.2°、19.2°、19.5°、19.9°、20.4°、21.1°、21.5°、22.4、および25.3°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約7.3°、9.7°、10.6°、11.6°、14.2°、16.4°、18.9°、19.2°、19.5°、19.9°、20.4°、21.1°、21.5°、22.0°、22.4°、24.2°、24.7°、25.3°、および27.5°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIを提供する。
【0050】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表4に示される特徴を有する。
【0051】
【表4】
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIは、実質的に図7に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約192.8℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0053】
別の態様では、本発明は、
(i)上記式Iの化合物をメチルtert-ブチルエ-テルに溶解するステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液にメタンスルホン酸を還流温度で滴下するステップと、
(iii)ステップ(ii)の溶液を室温に冷却して固体を沈殿させるステップと、
(iv)前記固体を濾過して乾燥するステップと、を含む、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの製造方法を提供する。
【0054】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)におけるメチルtert-ブチルエ-テルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:10~20mL、または1mmol:10~15 mLである。
【0055】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の還流温度は、50~60℃、または55~60℃である。
【0056】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:1~1.5、または1:1~1.2である。
【0057】
さらに別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約8.2°、8.5°、8.7°、8.8°、16.2°、18.1°、18.6°、19.8°、および22.2°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.2°、8.5°、8.7°、8.8°、16.2°、18.1°、18.6°、19.8°、21.0°、21.4°、および22.2°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.2°、8.5°、8.7°、8.8°、16.2°、16.6°、17.0°、18.1°、18.6°、19.8°、20.1°、21.0°、21.4°、22.2°、22.8°、23.6°および25.9°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.2°、8.5°、8.7°、8.8°、16.2°、16.6°、17.0°、17.3°、18.1°、18.6°、18.8°、19.2°、19.8°、20.1°、20.4°、21.0°、21.4°、22.2°、22.8°、23.6°、24.6°、25.9°、および27.7°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIを提供する。
【0058】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表5に示される特徴を有する。
【0059】
【表5】
【0060】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIは、実質的に図9に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
【0061】
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約110.5℃および166.0℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、
(i)式Iの化合物を酢酸エチルに溶解するするステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、を含む、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの製造方法を提供する。
【0063】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)における酢酸エチルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:5~15mL、または1mmol:5~10 mLである。
【0064】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:1~1.5、または1:1~1.2である。
【0065】
さらに別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約8.0°、8.4°、15.8°、20.2°、21.2°、および23.7°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約8.0°、8.4°、8.8°、15.8°、17.9°、19.8°、20.2°、21.2°、および23.7°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約8.0°、8.4°、8.8°、12.0°、15.8°、16.6°、17.9°、19.8°、20.2°、21.2°、23.7°、24.2°、および25.2°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約88.0°、8.4°、8.8°、12.0°、13.6°、15.8°、16.6°、17.9°、19.8°、20.2°、21.2°、23.7°、24.2°、25.2°、26.2°、26.7°、および29.5°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩のIV型結晶を提供する。
【0066】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表6に示される特徴を有する。
【0067】
【表6】
【0068】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVは、実質的に図11に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約94.4℃および166.0℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0069】
別の態様では、本発明は、
(i)上記式Iの化合物を酢酸エチルに溶解するするステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、
(iv)ステップ(iii)の固体を100~110℃、真空下でさらに乾燥させるステップと、を含む、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの製造方法を提供する。
【0070】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)における酢酸エチルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:5~15mL、または1mmol:5~10 mLである。
【0071】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:1~3.5、または1:1~3である。
【0072】
別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約8.1°、8.2°、8.5°、8.7°、16.1°、18.5°、および19.8°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.1°、8.2°、8.5°、8.7°、16.1°、17.3°、18.5°、19.8°、21.0°、および22.2°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.1°、8.2°、8.5°、8.7°、15.8°、16.1°、17.3°、18.5°、19.8°、20.1°、21.0°、22.2°、23.6°、24.6°、および27.7°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.1°、8.2°、8.5°、8.7°、15.8°、16.1°、16.7°、17.3°、18.1°、18.5°、19.8°、20.1°、20.3°、21.0°、21.4°、22.2°、22.8°、23.6°、24.3°、24.6°、および27.7において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩のV型結晶を提供する。
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表7に示される特徴を有する。
【0073】
【表7】
【0074】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vは、実質的に図13に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約116.6℃および165.8℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0075】
さらなる態様では、本発明は、
(i)上記式Iの化合物をアセトンに溶解するするステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、を含む、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの製造方法を提供する。
【0076】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)におけるアセトンに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:5~15mL、または1mmol:5~10 mLである。
【0077】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:1~3.5、または1:1~3である。
【0078】
さらに別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約8.5°、16.7°、18.1°、および22.8°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.3°、8.5°、16.7°、18.1°、20.1°、20.5°、21.4°、22.8°および25.9°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.3°、8.5°、16.7°、17.0°、18.1°、19.3°、20.1°、20.5°、21.4°、22.8°、25.9°、および26.2°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIを提供する。
【0079】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表8に示される特徴を有する。
【0080】
【表8】
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIは、実質的に図15に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約103.5℃および154.2℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0082】
さらなる態様では、本発明は、
(i)上記式Iの化合物をアセトニトリルに溶解するするステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、を含み、
式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:1~1.5、または1:1~1.2である、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの製造方法を提供する。
【0083】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)におけるアセトニトリルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:5~15mL、または1mmol:5~10 mLである。
【0084】
さらに別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約8.2°、16.1°、18.5°、19.7°、および22.1°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.2°、16.1°、18.5°、19.7°、21.0°、22.1°、23.6°、24.6°、および27.6°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.2°、16.1°、18.5°、19.7°、21.0°、22.1°、23.6°、24.6°、および27.6°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、さらに典型的には、粉末X線回折スペクトルが約6.8°、8.2°、8.7°、16.1°、17.2°、18.1°、18.5°、18.8°、19.7°、21.0°、22.1°、22.8°、23.6°、24.3°、24.6°、27.6°、および28.8°において2θ値で表されるに回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIを提供する。
【0085】
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表9に示される特徴を有する。
【0086】
【表9】
【0087】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIは、実質的に図17に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
限定ではないが、本発明は、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの示差走査熱量測定(DSC)の測定パタ-ンの典型例を提供し、DSCパタ-ンは、試料からの熱流が温度の関数としてプロットされたものであり、前記温度の変化率は約10℃/分間である。このDSCパタ-ンは、約110.0℃および166.1℃に吸収ピ-クを有することを特徴とする。
【0088】
さらなる態様では、本発明は、
(i)式Iの化合物をアセトニトリルに溶解するするステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液に室温でメタンスルホン酸を滴下するステップと、
(iii)固体を沈殿させ、濾過して乾燥させるステップと、を含み、
式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:2~3.5、または1:2~3である、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの製造方法を提供する。
【0089】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)におけるアセトニトリルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:5~15mL、または1mmol:5~10 mLである。
【0090】
さらに別の態様では、本発明は、粉末X線回折スペクトルが約7.12°、14.05°、19.11°、21.02°、21.33°および25.15°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、典型的には、粉末X線回折スペクトルが約7.12°、9.60°、10.46°、14.05°、18.80°、19.11°、19.41°、19.80°、20.24°、21.02°、21.33°、22.32°、24.12°および25.15°において2θ値で表される回折ピ-クを有し、より典型的には、粉末X線回折スペクトルが約7.12°、9.60°、10.46°、13.07°、14.05°、16.20°、17.10°、18.80°、19.11°、19.41°、19.80°、20.24°、21.02°、21.33°、21.92°、22.32°、22.89°、23.11°、24.12°、24.56°、25.15°、27.42°、および30.21°において2θ値で表される回折ピ-クを有することを特徴とする、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIを提供する。
本発明の実施形態として、本発明に係る式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの粉末X線回折スペクトルの特徴的ピ-クのピ-ク位置および強度は、表10に示される特徴を有する。
【0091】
【表10】
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIは、実質的に図19に示されるような粉末X線回折パタ-ンを有する。
さらなる態様では、本発明は、
(i)式Iの化合物をメチルtert-ブチルエ-テルに溶解するステップと、
(ii)ステップ(i)の溶液にメタンスルホン酸のメチルtert-ブチルエ-テル溶液を還流温度で滴下するステップと、
(iii)ステップ(ii)の溶液を室温に冷却して固体を沈殿させるステップと、
(iv)前記固体を濾過して乾燥するステップと、を含む、上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの製造方法を提供する。
【0093】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(i)におけるメチルtert-ブチルエ-テルに対する式Iの化合物のモル体積比は、1mmol:10~20mL、または1mmol:10~15 mLである。
【0094】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の還流温度は、50~60℃、または55~60℃である。
【0095】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、ステップ(ii)におけるメチルtert-ブチルエ-テルに対するメタンスルホン酸のモル体積比は、1mmol:5~10mLであり、または1mmol:8~10mLである。
【0096】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、式Iの化合物のメタンスルホン酸に対するモル比は、1:0.5~1.5、または1:0.5~1.0である。
【0097】
上記式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの製造プロセスのいくつかの実施形態において、還流時間は0.5~2時間、または1~1.5時間である。
【0098】
本発明に係る式Iの化合物の結晶形Aおよび結晶形B、式Iの化合物の塩およびその結晶(式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形I、II、III、IV、V、VI、VIIを含む)は、高い安定性、低い吸湿性、良好なインビボ代謝レベル、および長い半減期を有し、そしてそれらは、IDH2に対して良好な阻害活性を有し、物理的性質、安全性、代謝安定性の面で優れた性質を持ち、医薬品としての価値が高い。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明に係る様々な上記の製造方法で得られる式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩およびそれらの水和物または溶媒和物、ならびに式Iの化合物のメシル酸塩の結晶は、当分野における通常方法によって乾燥させることができる。いくつかの実施形態において、乾燥方法は、室温での乾燥、減圧下での乾燥、または送風乾燥を含む。いくつかの実施形態において、乾燥方法は減圧下での真空乾燥である。いくつかの実施形態において、乾燥装置は換気フ-ド、真空オ-ブン、または熱風オ-ブンである。いくつかの実施形態において、乾燥温度は60℃~100℃、80℃~100℃、または90℃~100℃である。いくつかの実施形態において、乾燥時間は、2~10時間、2~8時間、または4~8時間である。
【0100】
本発明においては、反応液が固体を析出(沈殿)させるように、溶媒系が自発的に沈殿することができ、あるいは、反応液の温度を下げることにより(特に反応液の初期温度が上昇した場合)、沈殿を誘導することができ、あるいは、溶媒体積を(例えば減圧下で)減少させ、または溶媒を完全に蒸発させて沈殿を誘導することができ、あるいは、抗溶媒(anti-solvent)を加えて沈殿を引き起こすことができ、あるいは、種結晶を加えて沈殿を開始することができる。例えば、式Iの化合物の塩酸塩の製造方法において、反応液が固体を析出させることは、溶媒系が自発的に沈殿物を形成することである。
【0101】
本発明において「結晶」とは、規則性の高い化学構造を有する固体を意味する。本発明における結晶は、少なくとも特定の重量百分率の結晶を有する形態である。具体的な百分率は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92です。%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または10%から99.9%の間の任意の百分率である。いくつかの実施形態において、具体的な百分率は、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または50%から99.9%の間の任意の百分率である。いくつかの実施形態において、具体的な百分率は、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または80%から99.9%の間の任意の百分率である。いくつかの実施形態において、具体的な百分率は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または90%と99.9%の間の任意の百分率である。
【0102】
本発明は、治療上有効量の式Iの化合物の結晶、および薬学的に許容される担体、または他の賦形剤、あるいは治療上有効量の式Iの化合物の酸付加塩、またはその水和物もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される担体もしくは他の賦形剤、あるいは式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、および薬学的に許容される担体または他の賦形剤を含む医薬組成物を提供する。式Iの化合物の結晶は、式Iの化合物の結晶形Aまたは式Iの化合物の結晶形Bであり、式Iの化合物の酸付加塩は、式Iの化合物のメシル酸塩、式Iの化合物の塩酸塩、式Iの化合物の硫酸塩、式Iの化合物のp-トルエンスルホン酸塩、または式Iの化合物のマレイン酸塩、あるいは上記付加塩の水和物もしくは溶媒和物である。前記酸付加塩もしくは水和物もしくは溶媒和物は、場合により結晶形または非晶形であり、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶は結晶形I、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIを含む。薬学的に許容される担体は、固体または液体であってもよい。固体担体は、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、結合剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料のうちの1つ以上を含んでもよい。適切な固体担体としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、スクロ-ス、ラクト-ス、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロ-ス、メチルセルロ-ス、カルボキシメチルセルロ-スナトリウムおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などの組成物を製造するために使用される。経口および非経口投与に適した液体担体には、水、アルコ-ル、油などが含まれる。
【0103】
上記医薬組成物は特定の剤形にすることができる。投与経路は、経口投与、非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与を含む)、直腸投与などが好ましい。例えば、経口投与に適した剤形には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、粉剤、ロゼンジ剤、シロップ剤、および懸濁剤が含まれる。非経口投与に適した剤形には、注射用の水溶液または非水溶液またはエマルジョンが含まれる。直腸投与に適した剤形には、親水性または疎水性担体を用いた坐剤が含まれる。上記の剤形は、必要に応じて有効成分の急速放出、遅延放出または制御放出に適した剤形にすることができる。
【0104】
本発明の別の態様では、本発明に係る式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくはその溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは本発明に係る医薬組成物を、それを必要とする対象に投与すること、を含む、IDH2変異体の活性を阻害する方法を提供する。
【0105】
本発明のさらなる別の態様では、本発明に係る式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくはその溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは本発明に係る医薬組成物を、それを必要とする対象に投与すること、を含む、IDH2突然変異によって誘発された癌を治療する方法を提供する。
【0106】
また、本発明の別の態様では、IDH2変異体の活性を阻害するために用いられる、本発明に係る式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは本発明に係る医薬組成物を提供する。
【0107】
さらなる態様では、本発明は、IDH 2突然変異によって誘発された癌を治療するための、本発明に係る式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはその水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは医薬組成物を提供する。
【0108】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは上記医薬組成物の、IDH2変異体の活性を阻害することにおける使用を提供する。
【0109】
さらに別の態様では、本発明は、式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは上記医薬組成物の、IDH2突然変異によって誘発された癌を治療することにおける使用を提供する。
【0110】
さらに別の態様では、本発明は、式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは上記医薬組成物の、IDH2変異体の活性を阻害するための医薬の製造における使用を提供する。
【0111】
さらに別の態様では、本発明は、式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは上記医薬組成物の、IDH2突然変異によって誘発された癌を治療するための医薬の製造における使用を提供する。
【0112】
本発明に係る式Iの化合物の結晶、式Iの化合物の酸付加塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶、あるいは上記医薬組成物は、単独でまたは他の医薬と組み合わせてIDH2突然変異によって誘発された癌を治療するために使用することができる。式Iの化合物の結晶は、式Iの化合物の結晶形Aまたは式Iの化合物の結晶形Bであり、場合により、式Iの化合物の酸付加塩は、式Iの化合物のメシル酸塩、式Iの化合物の塩酸塩、式Iの化合物の硫酸塩、式Iの化合物のp-トルエンスルホン酸塩、または式Iの化合物のマレイン酸塩、あるいは上記付加塩の水和物もしくは溶媒和物である。また、前記酸付加塩もしくは水和物もしくは溶媒和物は、場合により結晶形または非晶形であり、式Iの化合物のメシル酸塩の結晶は結晶形I、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIを含む。いくつかの実施形態において、IDH2突然変異によって誘発された癌は、膠芽腫(神経膠腫)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性新生物(MPN)、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫、黒色腫、非小細胞肺がん、軟骨肉腫、胆管がん、および血管免疫芽細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)などからなる群より選ばれる。より具体的な実施形態において、治療される癌は、神経膠腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄性増殖性新生物(MPN)、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、軟骨肉腫、および血管性免疫芽細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)からなる群より選ばれる。いくつかの実施形態において、癌は急性骨髄性白血病(AML)または肉腫を含む。
【0113】
本出願のいくつかの実施形態において、IDH2変異はIDH2/R140Q変異またはIDH2/R172K変異である。
【0114】
「IDH2変異体」とは、IDH2/R140Q変異形態またはIDH2/R172K変異形態が生じているIDH2を意味する。
【0115】
本発明において、試料の粉末X線回折スペクトルは、計器:BRUKER D2、試料前処理:直接圧縮、試料トレイ:単結晶シリコン試料トレイ、初期ショットスリット:0.6nm、2θ角範囲:5°~40°、検出器スリット:3mm、Cuタ-ゲット、管電圧と電流:30KV、10mAという条件で測定される。
【0116】
本発明において、DSCスペクトルは、計器:メトラ-・トレドDSC1、温度範囲:0~300℃、加熱速度:10℃/分間という条件下で測定される。
【0117】
説明すべきであることは、以下の通り、粉末X線回折スペクトル(XRD)において、結晶化合物から得られた回折スペクトは、特定の結晶形に対して特徴的なものである場合が多く、その中で、スペクトル帯(特に低角度において)の相対強度は、結晶条件、粒径、およびその他の測定条件の差異に起因した優位配向効果(preferential orientation effects)によって変化する可能性がある。したがって、回折ピ-クの相対強度は、相応の結晶形に対して特徴的なものではなく、既知の結晶形と同じか否かを判断する際に、ピ-クの相対強度よりもピ-クの相対位置に注意を払うべきである。また、任意の所定の結晶形に対して、ピ-クの位置に少しの誤差が存在する可能性があるのは、結晶学の分野でよく知られていることである。例えば、ピ-クの位置は、試料を分析する際の温度変化、試料の移動、または計器の較正等に起因してシフトすることができ、2θ値の測定誤差は、約±0.2°になる場合がある。したがって、このような誤差は、各種の結晶構造を決定する際に考慮に入れるべきである。XRDパタ-ンにおいて、通常、2θ角または格子面間隔dでピ-ク位置を示し、両方の間に簡単な換算関係:d=λ/2sinθを持っており、式中、dは格子面間隔を表し、λは入射X線の波長を表し、θは回折角を表す。同種の化合物の同種の結晶形には、それらのXRDパタ-ンのピ-ク位置が全体的に類似性を有し、相対強度の誤差は比較的大きい可能性がある。特に注意すべきは、混合物の同定において、含有量低下等の要素に起因して一部の回折線の欠失を引き起こし、この際に、高純度試料から観察された全てのスペクトル帯に頼る必要がなく、ひいては、所定の結晶(結晶形)に対して1本のスペクトル帯だけでも特徴的なものになる可能性がある。
【0118】
DSCでは、結晶構造の変化や結晶の熔融によって熱を吸収したり放出したりする際の結晶の転移温度を測定する。同種の化合物の同種の結晶形には、連続的な分析において、熱転移温度および融点の誤差が典型的に±5℃程度以内にあり、通常±3℃程度以内にあり、ある化合物がある所定のDSCピ-クまたは融点を有すると言われる場合、それは該DSCピ-クまたは融点が±5℃の範囲内に変化し得ることを意味する。DSCは異なる結晶形を判別するための補助方法を提供する。異なる結晶形は、それらの異なる転移温度の特徴によって識別することができる。混合物については、そのDSCピ-クまたは融点がより広い範囲に変動している可能性があることを留意すべきである。また、物質溶融の過程において分解に伴うため、溶融温度と昇温速度とが互いに関連している。
【0119】
本発明において、「治療有効量」とは、毒性ではないが所望の効果を達成するのに医薬または薬剤の十分な量を意味する。有効量は個々に決定することができ、そして受容体の年齢および一般的状態ならびに特定の活性物質に依存する。特定の場合における有効量は、当業者により通常の実験を通じて決定することができる。
【0120】
本発明において、「薬学的に許容される担体」とは、活性成分と一緒に投与され、生物に対して有意な刺激を与えず、そして活性化合物の生物学的活性および特性を損なわない担体(キャリア)を意味する。担体に関するその他の情報は、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott、Williams&Wilkins(2005)」にあり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
本発明において、用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物(その結晶形を含む)と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。当該物理的会合は水素結合を含む。ある場合には、溶媒和物は、例えば1つまたは複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれている際に分離することができる。「溶媒和物」は、液相溶媒和物と分離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的な溶媒和物としては、例えば、水和物、またはアセトネ-トが挙げられる。
【0122】
本発明において、用語「水和物」とは、溶媒分子が定義された化学量論量で存在するHAXA8000Oである溶媒和物であり、例えば、半水和物、一水和物、二水和物、または三水和物を含んでもよい。
【0123】
本発明において、用語「酸付加塩」とは、有機酸または無機酸を遊離塩基と反応させることによって形成された塩を意味する。
【0124】
本発明において、「モル比(molar ratio)」と「モルの比(ratio of the moles)」とは同義である。
【0125】
本発明において、用語「室温」とは、20~25℃を意味する。
【0126】
本発明において、用語「減圧濃縮」または「減圧下で濃縮する」とは、真空引きにより減圧して溶媒の沸点を下げ、溶媒を蒸発させて固体を析出させることを意味する。
【0127】
本発明において、用語「スラリ-化(叩解)」とは、固体と溶媒とを混合し撹拌して十分に接触させ、溶媒に対する物質の溶解度の差を利用して不純物を溶解させる精製方法を意味する。
【0128】
本発明において、用語「被験体(個体)」とは、ヒトおよび動物、例えば哺乳動物(例えば、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよび鳥類など)を含む。
【0129】
本明細書にある数値範囲が記載されている場合、その範囲はその端点ならびにその範囲内のすべての個々の整数および端数を含み、さらにそれらの端点および内部整数のすべてのさまざまな可能な組み合わせによって形成される狭い範囲のそれぞれを含む。上記範囲のうちの値のより大きいグル-プのサブグル-プを形成するようになることは、形成されたより狭い範囲のそれぞれが明示的に列挙されていると同一程度になっているものである。
【0130】
用語「任意に(optionally)」または「必要に応じて」とは、その後に記載の1つまたは複数の事象または状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、ならびに該記載が前記事象または状況が発生した場合と発生しなかった場合を含むことを意味する。
【0131】
本発明において、PKパラメ-タは以下のように説明される。PKパラメ-タにおいて、Tmaxはピ-ク(最大濃度)までの時間(Tmax)であり、Cmaxは最大血中濃度(the maximum plasma concentration)であり、MRT(0-t)は、時間0から最終採血時点までの平均滞留時間であり、T1/2は半減期であり、AUC(0-t)は、時間0から最終採血時点までの血中濃度曲線と時間軸とで囲まれる面積であり、AUC(0-∞)は、時間0から無限大の時点までの血中濃度曲線と時間軸とで囲まれる面積である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1】式Iの化合物の結晶形Aの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図2】式Iの化合物の結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図3】式Iの化合物の結晶形Bの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図4】式Iの化合物の結晶形Bの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図5】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図6】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図7】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図8】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図9】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図10】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図11】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図12】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図13】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図14】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図15】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図16】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図17】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
図18】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図19】式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの粉末X線回折パタ-ン(XRPD)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0133】
以下の特定の実施例は、当業者が本発明をより明確に理解して実施することを可能にするために提供される。それらは本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示および典型的な代表として解釈されるべきである。当業者は、本発明に係る化合物を製造するために関与する他の合成経路があり、そして以下に提供されるものが非限定的な例であることを理解するであろう。
【0134】
酸化または加水分解を受けやすい原料を含むすべての操作は、窒素保護雰囲気下で行われる。特に明記しない限り、本発明で使用される原料は市販されており、さらなる精製なしに直接使用される。本発明で使用される溶媒は市販されており、いかなる特別な処理もなしに直接使用される。
【0135】
カラムクロマトグラフィ-は、青島化工有限公司製造のシリカゲル(200~300メッシュ)を用いて行った。核磁気共鳴クロマトグラフィ-(NMR)は、Varian VNMRS-400核磁気共鳴計器を用いて測定した。液体クロマトグラフィ-/質量分析(LC/MS)は、FINNIGAN Thermo LCQ Advantage MAX、Agilent LC 1200シリ-ズ(カラム:Waters Symmetry C18、Φ4.6x50 mm、5μm、35℃)およびESI(+)イオンモ-ドを使用した。融点試験機はBUCHI B-545融点装置である。
【0136】
実施例1:式Iの化合物の調製
A: メチル6-トリフルオロメチル-ピリジン-2-カルボキシレ-ト
【化2】
窒素ガスの保護下で、2-ブロモ-6-トリフルオロメチルピリジン(1.48g、6.55mmol)のメタノ-ル(50.0mL)溶液に、酢酸パラジウム(74.0mg、0.33mmol)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(363.0mg、0.655mmol)、およびトリエチルアミン(0.92g、9.1mmol)を順次加えた。60℃、2大気圧の一酸化炭素雰囲気下で反応液を18時間反応させた。反応終了後、該反応液を室温まで冷却して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-により精製して表題化合物(0.9g、収率: 67.0%)を得た。
なかでも、2-ブロモ-6-トリフルオロメチルピリジンが市販されている。
【0137】
B: 6-(6-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4(1H、3H)-ジオン
【化3】
【0138】
窒素ガスの保護下で、ナトリウムエトキシド(11.2g、165.0mmol)のエタノ-ル(200mL)溶液に、6-トリフルオロメチル-ピリジン-2-カルボン酸メチル(10.0g、48.7mmol)およびビウレット(4.2g、40.7mmol)を順次加えた。混合物を2時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。反応液(反応混合物)を真空減圧下で濃縮した後、得られた残渣を水に注ぎ込み、6N塩酸溶液でpH7に調整した。得られた固体を濾過し、ろ過ケ-キを水で洗浄し、次いで乾燥させて表題化合物(5.0g、収率:47.5%)を得た。
【0139】
C: 2,4-ジクロロ-6-(6-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-1,3,5-トリアジン
【化4】
窒素ガスの保護下で、6-(6-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4(1H、3H)-ジオン(15.0g、58.1mmol)とオキシ塩化リンとの混合溶液(200mL)を100℃で2時間反応させた後、室温に冷却した。反応液を減圧下で濃縮した後、得られた残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注いだ。得られた混合物を酢酸エチル(2×100mL)で抽出し、そして有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで濾過した。濾液を真空下で濃縮して、表題化合物(10.0g、収率:58.3%)を得た。
【0140】
D: 4-クロロ-6-(6-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-N-(2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-アミン
【化5】
2,4-ジクロロ-6-(6-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(5.0g、16.9mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、4-アミノ-2-トリフルオロメチルピリジン(3.3g、20.3mmol)および炭酸水素ナトリウム(2.14g、25.3mmol)を加えた。
【0141】
混合物を70℃で8時間反応させ、次いで室温に冷却した。次いで、反応液を真空減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-により精製して表題化合物(6.5 g、収率: 91.2%)を得た。
なかでも、4-アミノ-2-トリフルオロメチルピリジンが市販されている。
【0142】
E: 4-(tert-ブトキシアミノ)-6-(6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-N-(2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4)-イル)-1,3,5-トリアジン-2-アミン(式Iの化合物)
【化6】
【0143】
4-クロロ-6-(6-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-N-(2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-アミン(39.7g、94.5mmol)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、O-tert-ブチルヒドロキシルアミン塩酸塩(17.7g、140.9mmol)および炭酸水素ナトリウム(31.7g、377mmol)を加えた。
【0144】
混合物を70℃で8時間反応させ、次いで室温に冷却した。次いで、反応液を濾過し、濾液を真空減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製して表題化合物(30.0g、収率:67%)を得た。
融点(Mp):226.1~228℃。
【0145】
MS m/z[ESI]: 474.14 [M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 11.00 (s, 1H), 10.84 (s, 1H), 8.74 (s, 1H), 8.57 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 8.31 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.99 (s, 1H), 1.28 (s, 9H).
【0146】
実施例2:式Iの化合物の結晶形Aの調製
室温で、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)をテトラヒドロフラン(60mL)に加え、撹拌して溶解させて透明な溶液を得た。次に、溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体を真空下、80℃で4時間乾燥した。融点:224.6℃~226℃。
【0147】
実施例3:式Iの化合物の結晶形Aの調製
室温で、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)を1,4-ジオキサン(100mL)に加え、撹拌して溶解させて透明な溶液を得た。次に、溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体を真空下、80℃で4時間乾燥した。融点:224.6℃~226℃。
【0148】
実施例4:式Iの化合物の結晶形Aの調製
実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)にジクロロメタン(50mL)を加え、2時間還流下でスラリ-化した後、反応温度を室温まで下げた。得られた混合物を濾過し、そしてろ過ケ-キを真空下、80℃で4時間乾燥した。融点:224.6℃~226℃。
【0149】
実施例5:式Iの化合物の結晶形Aの調製
実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)にn-ヘプタン(50mL)を加え、そして室温で2時間スラリ-化(slurried)した。得られた混合物を濾過し、そしてろ過ケ-キを真空下、80℃で4時間乾燥した。融点:224.6℃~226℃。
【0150】
実施例6:式Iの化合物の結晶形Bの調製
室温で、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)に、酢酸エチル(50mL)を加え、撹拌して溶解させて透明な溶液を得た。次に、溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体を真空下、80℃で4時間乾燥した。融点:226.1℃~228℃。
【0151】
実施例7:式Iの化合物の塩酸塩の調製
室温で、実施例1で得られた式Iの化合物(1.0g、2.1mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、14.6質量%塩化水素(3.2mmol)のエタノ-ル(0.8g)溶液を滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:177.2~179℃。
【0152】
実施例8:式Iの化合物の硫酸塩の調製
室温で、実施例1で得られた式Iの化合物(1.0g、2.1mmol)の酢酸エチル(10mL)溶液に、1.67mol/Lの希硫酸のエタノ-ル溶液(1.9mL)を室温で滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:181.2~183℃。
【0153】
実施例9:式Iの化合物のp-トルエンスルホン酸塩の調製
p-トルエンスルホン酸一水和物(0.6g、3.1mmol)を室温でアセトン(2mL)に溶解した。次いで予備配合されたp-トルエンスルホン酸のアセトン溶液を、実施例1で得られた式Iの化合物(1.0g、2.1mmol)のアセトン(10mL)溶液に滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:173.9~176℃。
【0154】
実施例10: 式Iの化合物のマレイン酸塩の調製
室温でマレイン酸(0.58g、5.0mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(2.45g、5.2mmol)のアセトン(10mL)溶液に加えた。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:171.3~173℃。
【0155】
実施例11: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Iの調製
室温でメタンスルホン酸(0.61g、6.3mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(3.0g、6.3mmol)のメチルtert-ブチルエ-テル(90mL)溶液に滴下した。1時間撹拌し、反応液から固体が沈殿した後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:148.2~150.2℃。
【0156】
実施例12: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIの調製
還流温度でメタンスルホン酸(0.61g、6.3mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(3.0g、6.3mmol)のメチルtert-ブチルエ-テル(90mL)溶液に滴下した。1時間撹拌した後、反応温度を室温まで下げ、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:187.1~189.1℃。
【0157】
実施例13: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IIIの調製
室温でメタンスルホン酸(1.21g、12.6mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)の酢酸エチル(100mL)溶液に滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:150.9~152.9℃。
【0158】
実施例14: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形IVの調製
室温でメタンスルホン酸(3.05g、31.5mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)の酢酸エチル(100mL)溶液に滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。濾過ケ-クを真空下80℃で4時間乾燥し、次いで真空下100℃で4時間乾燥した。融点:155.0~157.0℃。
【0159】
実施例16: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形Vの調製
室温でメタンスルホン酸(3.05g、31.5mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)のアセトン(100mL)溶液に滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:151.8~153.8℃。
【0160】
実施例17: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIの調製
室温でメタンスルホン酸(1.21g、12.6mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)のアセトニトリル(100mL)溶液に滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:145.5~147.5℃。
【0161】
実施例18: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIの調製
室温でメタンスルホン酸(3.05g、31.5mmol)を、実施例1で得られた式Iの化合物(5.0g、10.6mmol)のアセトニトリル(100mL)溶液に滴下した。2時間撹拌した後、反応液から固体を沈殿させた後、濾過した。ろ過ケ-キを真空下80℃で乾燥した。融点:140.1~142.1℃。
【0162】
実施例19: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの調製
式1の化合物(3.0g、6.3mmol)をメチルtert-ブチルエ-テル(90mL)に溶解し、反応液を加熱還流した。次いで、それに、メチルtert-ブチルエ-テル(60mL)のメチレンスルホン酸(0.61g、6.3mmol)溶液を徐々に滴下した。反応液を還流して1時間反応させた後、室温に冷却して濾過した。ろ過ケ-キを真空下90℃で乾燥して白色固体を得た。融点:188.8~191.2℃。
【0163】
実施例20: 式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIIIの調製
式1の化合物(3.0g、6.3mmol)をメチルtert-ブチルエ-テル(90mL)に溶解し、反応液を加熱還流した。次いで、それに、メチルtert-ブチルエ-テル(30mL)のメチレンスルホン酸(0.31g、3.1mmol)溶液を徐々に滴下した。反応液を還流して1時間反応させた後、室温に冷却して濾過した。ろ過ケ-キを真空下90℃で乾燥して白色固体を得た。融点:188.8~191.2℃。
【0164】
実施例21:式Iの化合物の種々の塩の吸湿性試験
式Iの化合物の種々の酸付加塩を、それぞれ、中国薬局方2010年版第II部の付録XIX Jに記載されている「薬物吸湿性試験のガイドライン」に従って試験した。試料の吸湿による増加重量をそれぞれ計算した。結果を表11に示す。
【0165】
【表11】
【0166】
実施例22:式Iの化合物の種々の塩の安定性試験
式Iの化合物の種々の酸付加塩の安定性を、中国薬局方2010年版、第II部、付録XIX Cに記載されている方法に従って試験した。結果を表12に示す。
【0167】
【表12】
【0168】
実施例23:IDH2に対する阻害活性試験
本発明は、IDH2に対する本出願の化合物の阻害活性(R172K、40-end)を決定するために以下の方法を使用する。前記阻害活性は、IC50値、すなわちIDH2活性が50%阻害された際に必要な化合物の濃度として表されている。
【0169】
材料および方法:
IDH2(R172K、40-end)に対する化合物の阻害活性は、ヘルパ-因子NADPH(還元型補酵素II)の減少によって決定された。試験化合物を酵素およびNADPHとともにプレインキュベ-トした後、α-KGを加えて反応を開始させ、線形条件下で120分間反応させた。次いで、ジアホラ-ゼ(リポアミドデヒドロゲナ-ゼ)および対応する基質レサズリンを加えることにより反応を停止させた。ジアホラ-ゼは、利用可能なヘルパ-因子NADPHを減少させることによってIDH2m反応を停止させ、NADPHをNADP(酸化型補酵素II)に酸化し、レサズリンを高蛍光性レゾルフィンに還元した。特定の反応時間後に残っているヘルパ-因子NADPHの量を、容易に検出可能な蛍光団を介して定量した。
【0170】
具体的には、3倍勾配希釈試験化合物2.5μLを384ウェルプレ-トに加え、次いで80nMのIDH2(R172K、40-end)および40μMのNADPHを含有する反応緩衝液(20mM Tris-HCl、PH7.5。150mM NaCl、10mM MgCl、10mM MnCl、0.4mg/mL BSA および 2mM DTT)5μLを加えた。次いで、得られた試験混合物を23℃で120分間インキュベ-トし、その後4mMのα-KGを含有する2.5μLの反応緩衝液を加えて反応を開始させた。室温で120分間インキュベ-トした後、反応緩衝液を用いて調製した5μLの停止混合物(0.4U/mLジアホラ-ゼおよび40μMレサズリン)を加えて、レサズリンをレゾルフィンに変換して、残りのNADPHを測定した。23℃の温度で10分間インキュベ-トした後、蛍光値をFlexstation 3によりEx535/Em595で測定した。結果を表13に示し、その中で、式Iの化合物はAG-221よりも優れた阻害活性を有する。
【0171】
【表13】
【0172】
実施例24:薬物動態学的試験
健康な雄性成体ラット(7~9週齢)を用い、各群の動物(雄性ラット3匹)に5mg/kgの単回投与量で1回胃内投与した。この試験の前に、胃内投与群の動物を一晩絶食させた。絶食期間は投与前10時間から投与後4時間であった。
【0173】
投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8および24時間に血液試料を採取した。小動物麻酔器を用いて動物をイソフルランで麻酔した後、眼底静脈叢から全血試料0.3mLを採取した。血液試料をヘパリン抗凝固チュ-ブに入れて4℃、4000rpmで5分間遠心した。得られた血漿試料を遠心分離管に移して分析まで-80℃で保存した。
【0174】
検証された液体クロマトグラフィ-・タンデム質量分析(LC-MS/MS)法を用いて血漿試料を分析した。個々の動物の血漿中濃度-時間デ-タを、ソフトウェアWinNonlin(Professional Edition、バ-ジョン6.3、Pharsight Company)を用いて分析した。濃度分析のために非コンパ-トメントモデルを導入した。化合物の薬物動態学的パラメ-タ(PKパラメ-タ)を計算した。結果を表14に示す。式Iの化合物は、良好なインビボ代謝レベルおよび長い半減期を有し、その血漿中薬物濃度は、同じ投与量の場合AG-221より高い。
【0175】
【表14】
【0176】
実施例25:薬物動態学的試験
1.試験材料
種:SDラット。
レベル:SPF。
数および性別:20、雄。
体重:200~220g。
ソ-ス:上海Xipuer Bikai実験動物有限公司(Shanghai Xipuer Bikai Experimental Animal Co., Ltd.)SCXK(上海)2013-0016。
【0177】
2.試験方法
20匹の雄性SPF SDラットを無作為に4つの群に分け、一晩絶食させ(水に自由に摂取し)、そしてそれぞれ(塩基性基で)50mg/kgの式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形I(実施例11)、50mg/kgの式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形II(実施例12)、50mg/kgの式Iの化合物のメシル酸塩の結晶形VIII(実施例19)、および50mg/kgの式Iの化合物の塩酸塩(実施例7)を胃内投与した。血液試料(0.2~0.3mL)を、投与後0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、24時間、30時間および48時間の採血時点でラットの眼窩から採取した。次いで、集めた全血をEDTA-K2遠心分離管に入れ、4℃で保存し、0.5時間以内に、4℃で4000rpmで10分間遠心分離して血漿を分離した。全ての血漿を収集した後1時間以内に、-20℃で保存した。薬物動態学的パラメ-タ(PKパラメ-タ)は、ノンコンパ-トメント統計モ-メント理論に従ってソフトウェアDAS 3.2.1を用いて計算した。結果を表15に示す。
【0178】
【表15】
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