(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ヒドロキシケイ皮酸誘導体、その方法および使用
(51)【国際特許分類】
C07F 9/54 20060101AFI20220726BHJP
A61K 31/66 20060101ALI20220726BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220726BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220726BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20220726BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220726BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220726BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220726BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220726BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220726BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220726BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220726BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220726BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220726BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220726BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220726BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220726BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220726BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220726BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220726BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220726BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220726BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20220726BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C07F9/54 CSP
A61K31/66
A61K9/51
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/06
A61K9/127
A61P25/28
A61P25/00
A61P21/00
A61P9/00
A61P25/00 101
A61P3/10
A61P27/16
A61P1/00
A61P3/00
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A61P25/14
A61P13/12
A61P17/00
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A61P15/00
A61P1/18
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A61K8/55
A61Q19/08
A61K39/39
A61K49/00
A23L33/10
C12N1/00 G
C12N5/074
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019541900
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(86)【国際出願番号】 IB2017056412
(87)【国際公開番号】W WO2018069904
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】515119446
【氏名又は名称】ウニヴェルシダージ ド ポルト
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DO PORTO
(73)【特許権者】
【識別番号】519135932
【氏名又は名称】セントロ デ ネウロシエンシアス エ ビオロジア セルラル
【氏名又は名称原語表記】CENTRO DE NEUROCIENCIAS E BIOLOGIA CELULAR
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】マリア フェルナンダ マルティンス ボルヘス
(72)【発明者】
【氏名】パウロ ジョルジ グーベア シモエス ダ シルバ オリビエラ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ カルロス サントス テイクセラ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド カギデ フェイギン
(72)【発明者】
【氏名】エステル ソフィア テイクセラ ベンフェイト
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510750(JP,A)
【文献】国際公開第2006/105669(WO,A1)
【文献】Prime, Tracy A. et al.,A ratiometric fluorescent probe for assessing mitochondrial phospholipid peroxidation within living cells,Free Radical Biology & Medicine ,2012年,Vol.53, No.3,pp.544-553
【文献】Prasitpan, Noojaree et al.,N-1 and C-2 substituted tryptophans as potential inhibitorsof sickle cell hemoglobin gelation,Journal of Heterocyclic Chemistry ,1992年,Vol.29, No.2,pp.335-341
【文献】Millard, Melissa et al.,A Selective Mitochondrial-Targeted Chlorambucil with Remarkable Cytotoxicity in Breast and Pancreatic Cancers,Journal of Medicinal Chemistry ,2013年,Vol.56, No.22,pp.9170-9179
【文献】イスラエル特許出願237549号明細書,2016年01月31日,IL 237549 A
【文献】Teixeira, J. et al.,Rational discovery and development of a mitochondria-targeted antioxidant based on cinnamic acid scaffold,Free Radical Research ,2012年,Vol.46, No.5,pp.600-611
【文献】ASIN-CAYUELA, J. et al.,Fine-tuning the hydrophobicity of amitochondria-targeted antioxidant,FEBS Letters,2004年,Vol.571,pp.9-16
【文献】Brovarets, V. S. et al.,Synthesis of [1-(acylamino)ethenyl]triphenylphosphoniumsalts,Zhurnal Obshchei Khimii ,1992年,62(6),,pp.1423-1425
【文献】Benfeito, Sofia et al.,Antioxidant therapy: Still in search of the 'magic bullet',Mitochondrion,2013年,13(5),,pp.427-435
【文献】Stoyanovsky, Detcho A. et al.,Design and Synthesis of a Mitochondria-Targeted Mimic of Glutathione Peroxidase, MitoEbselen-2, as a Radiation MitigatorStoyanovs,ACS Medicinal Chemistry Letters ,2014年,5(12),,pp.1304-1307
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体であって、前記化合物が(E)-(6-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート
、(E)-(6-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート、(E)-(8-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート、(E)-(10-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート、(E)-(8-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート、または(E)-(10-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートである、
化合物、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項2】
医学または獣医学における使用のための請求項
1に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項3】
ミトコンドリアの形態およびOXPHOS酵素の発現のうちのいずれか一つの調節における使用のための請求項1
または2に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項4】
ミトコンドリア障害に関連する症状、またはミトコンドリア機能不全もしくはミトコンドリア疾患に関連する状態に関連する症状の治療、または予防、または抑制における使用のための請求項1~
3のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項5】
前記ミトコンドリア障害が、ミオクローヌスてんかん;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん;レーバー遺伝性視神経萎縮症;神経性薄弱運動失調網膜色素変性症(neuropathy ataxia and retinitis pigmentosa);ミトコンドリアミオパチー、脳症、ラクトアシドーシス、脳卒中;リー症候群;リー様症候群(Leigh-like syndrome);優性視神経萎縮症;カーンズ-セイヤー症候群;母性遺伝性糖尿病および難聴;アルパーズ-フッテンロッハー症候群;運動失調ニューロパシースペクトラム;慢性進行性外眼筋麻痺;ピアソン症候群;ミトコンドリア神経胃腸管性脳症(Mitochondrial Neuro- Gastro-Intestinal Encephalopathy);センガーズ症候群(Sengers syndrome);リー様症候群(Leigh-like syndrome)の3-メチルグルタコン酸尿症、感音難聴、脳症、および神経放射線学的所見;ミオパチー;ミトコンドリアミオパチー;心筋症;および脳筋症、複合IV surfeitタンパク質欠損による欠損リー症候群;ピルビン酸酸化およびATPプラスPCr産生率の妨害を含む、これまでに解決されていない遺伝的欠陥を伴う単独または複合OXPHOS欠損からなる群から選択される障害である、請求項
3または4に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項6】
前記ミトコンドリア機能不全に関連する状態が、フリードライヒ運動失調症;尿細管性アシドーシス;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症;ハンチントン病;広汎性発達障害;聴力損失;難聴;糖尿病;老化;およびミトコンドリア機能を妨害する薬物副作用からなる群から選択される状態である、請求項
3または4に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項7】
神経変性疾患、異常増殖、腎臓疾患、強皮症、肝臓鉄過剰症、肝臓銅過剰症、脱毛症、ヒト不妊症、急性膵炎、線維筋痛症、またはミトコンドリア疾患の治療、予防、または抑制における使用のための請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項8】
非アルコール性脂肪性肝疾患群、すなわち非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、または肝硬変の治療における使用のための請求項1~
6のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項9】
前記異常増殖疾患が、癌、特に、基底細胞癌、骨癌、腸癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、または胆道癌である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項10】
腎臓疾患、すなわち腎不全における使用のための請求項1~
9のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項11】
筋萎縮性側索硬化症における使用のための請求項1~
10のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項12】
抗菌薬として、
化粧品用活性成分、またはサプリメント、または機能性食品として、または抗しわスキンケア製品として、または多能性細胞培養物の維持において、細胞培養のための補充物としての使用のための請求項1~
11のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項13】
殺菌薬としての使用のための請求項12に記載の化合物、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項14】
アンチエイジングにおける化粧品用活性成分、またはサプリメント、または機能性食品としての使用のための請求項12に記載の化合物、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項15】
増殖培地化合物としての使用のための請求項12に記載の化合物、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項16】
身体運動後の筋肉回復のための使用
またはイメージング研究におけるプローブとしての使用のための請求項1~
15のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
いずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
ミトコンドリアイメージング研究をモニタリングするための
プローブとして使用のための請求項
16に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項18】
請求項1~
16のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体および薬剤的に許容できる担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、またはそれらの混合物を含
む医薬組成物。
【請求項19】
前記薬剤的に許容できる担体が、以下のリスト:食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素、またはそれらの混合物から選択され
、前記アジュバントが、以下のリスト:水中油型エマルジョンアジュバント、アルミニウムアジュバント、TLR-4リガンド、サポニン、およびそれらの混合物から選択され、前記賦形剤が、以下のリスト:グルコース、ラクトース、スクロース、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、またはそれらの混合物から選択される、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
神経変性疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、異常増殖、腎臓疾患、強皮症、肝臓鉄過剰症、肝臓銅過剰症、脱毛症、ヒト不妊症、急性膵炎、または線維筋痛症の治療または予防のための方法における使用のための請求項
18または19に記載の医薬組成物であって、一日量で投与される前記医薬組成物。
【請求項21】
一日量が20mg/日または10mg/日である、請求項
18~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~
17のいずれか一項に記載の化合物
、またはその薬剤的に許容できる溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体または請求項
18~
21のいずれか一項に記載の医薬組成物を含
むナノ担体
またはリポソーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミトコンドリア指向性抗酸化剤として作用する新規のヒドロキシケイ皮酸誘導体の設計および開発に関する。さらに、本開示は、例えば、ヒトおよび動物の疾患の分野における、例えば、ミトコンドリア機能不全またはミトコンドリア欠損を治療するための、ならびに化粧品の分野における、例えば、皮膚の老化を予防する、または遅延させるための、ヒドロキシケイ皮酸誘導体の方法および使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレスは、様々な局面で生体システムに影響を与える非常に複雑な過程である。生体システムへの酸化ストレスの影響は、関与する酸化剤の種類、その産生の部位および強度、内因性抗酸化剤の組成および活性、ならびに修復システムの活性に依存する。酸化ストレスは、細胞内のレドックスシグナル伝達を変化させ、正常な恒常性を乱し得、場合によっては、大きな細胞の損傷をもたらし得、そのため、多くの疾患、すなわち加齢に伴う疾患と関連している。1,2
【0003】
病的事象において、内因性抗酸化防御剤のプールは、酸化剤産生の増加に対処するのに充分ではない可能性があるので、外因性抗酸化剤が内因性防御システムの不充分さを補うだけではなく、抗酸化反応全体も改善することを考えると、外因性抗酸化剤の投与は、細胞傷害を減少させるのに有益であり得ることが示唆されている。外因性抗酸化剤は、理論的には、様々なレベルで酸化的損傷経路の複雑なネットワークを遮断し、治療効果をもたらし得る。その結果、食事から外因的に獲得される抗酸化剤は、レドックス細胞恒常性において重要な機能を有し得、細胞機能および疾患予防にとって重要であり得る。
【0004】
抗酸化剤は、被酸化性基質の濃度と比較して低濃度で存在する場合に、生体分子の酸化を著しく遅延させる、または防止する物質として定義されてきた。抗酸化剤は、循環する反応性種の中和(捕捉活性)、遷移金属イオンの封鎖(キレート化活性)、および反応性種の産生に関与する酵素の阻害などの様々な機構によってその効果を発揮し得る。1,2さらに、抗酸化剤は、内因性抗酸化剤システムの発現または活性も増加させ得る。
【0005】
抗酸化剤のそれ自体、または他の薬剤と組み合わせた使用は、酸化ストレスに関連する有害事象の予防/最小化、すなわち関連する疾患または過程において有益であると考えられている1。
【0006】
フェノール化合物は、ヒトの食事中に存在する最も重要な種類の天然の抗酸化剤の一つである。疫学的研究および関連するメタアナリシスは、フェノールに富んだ食品または飲料が多い食事の長期間の摂取が、酸化ストレス関連疾患の発生率に好ましい結果を有することを示唆した2。
【0007】
ヒドロキシケイ皮酸(HCA)は、天然および食事中に見られる主要な種類のフェノール化合物の一つである。HCAの中で、コーヒー酸およびクマル酸は、果実中に最も豊富にあり、全HCA含有量の75~100%を占める。HCAの食事摂取量は、合計211mg/日と推定されている。他の研究では、一例として、コーヒー、果物および果物のジュースが主な食事源である、コーヒー酸単独の摂取量は、206mg/日であると報告された2。
【0008】
ヒドロキシケイ皮酸(HCA)は広範囲の生物活性を示す。ヒドロキシケイ皮酸(HCA)は、多様な作用機序、すなわち直接的フリーラジカル捕捉活性および/または他の間接的作用、例えば、プロオキシダント遷移金属(すなわち銅および鉄)のキレート化、遺伝子発現の調節(例えば、ARE/Nrf2経路)、およびラジカル生成酵素系の阻害に関連する、それらの抗酸化特性によってよく知られている2。
【0009】
ヒドロキシケイ皮酸のようなフェノール系天然抗酸化剤は、前臨床試験において概ね成功を収めているが、依然としてヒトの介入試験または臨床試験においてはほとんど有益性がない。過去数年間にわたる臨床試験において、これまでのところ、好ましい/関連性のある結果は得られていない。ほとんどの研究は、フェノール系天然抗酸化剤のうちの一部が治療上の利点を欠くことを示した。実際、前臨床試験で得られた結果と臨床試験の結果との間には顕著な不一致が存在する。このギャップは、臨床試験で使用されるプロトコルだけでなく、査定評価下の抗酸化剤の薬物動態の制約とも関連している可能性がある。他の天然または食事性の抗酸化剤と同様に、フェノール系天然抗酸化剤は、生物学的障壁を越えて細胞内標的部位に到達することができないという生物学的利用能の欠点を有する2。他方で、何人かの著者は、このタイプの天然の抗酸化剤は、特定の細胞区画において正常なレドックスバランスを変え、役に立つどころか逆に害になることがあり得ることを提唱した。いくつかの抗酸化剤は、フリーラジカル生成の関連する場所、すなわち、実際に活性酸素種(ROS)および酸化的損傷の主な源であるミトコンドリアに到達しないということもあり得る1,2。
【0010】
ミトコンドリア機能、特に細胞のレドックス/酸化バランスにおけるミトコンドリアの影響は、細胞の生死の制御に重要である。ミトコンドリアは、細胞への化学エネルギーの主要な供給源であることに加えて、細胞生存、レドックスバランス、および細胞死を含む細胞恒常性に関連する複数のシグナル伝達経路の調節において、ROSの生成および解毒に関与している3,4。ROS生成は内因性抗酸化ネットワークによって厳密に調節されているが、ROSの分解はミトコンドリアの酸化的損傷および機能不全をもたらし得る。ミトコンドリアの酸化的機能不全は、複数の代謝経路およびシグナル伝達経路を損ない、アポトーシスまたはネクローシスを介して細胞死を引き起こし得る。
【0011】
酸化ストレスの増大に起因するミトコンドリアの変化が、例えば癌、脳卒中、心不全、肥満、神経変性障害、および加齢において重要な役割を果たすことを示唆する証拠が増加している3,4。
【0012】
病因におけるミトコンドリアの役割はかなり一致しているが、当該細胞小器官を標的化して破壊を防ぐことは、必ずしも簡単ではない。酸化的損傷の予防/最小化によるミトコンドリア機能の改善は、有効かつ有望な治療戦略である。ROS/抗酸化剤比の維持およびレドックスの維持は、細胞シグナル伝達にとって重要であるため、抗酸化剤が機能不全ミトコンドリアを標的とするようにすることは、薬理学的に興味深い3,4。
【0013】
多数のミトコンドリア標的抗酸化剤、特に担体としてトリフェニルホスホニウム(TPP)を使用する抗酸化剤が開発されている。このタイプの親油性カチオンは、内膜電位勾配(ΔΨ)を利用して、ミトコンドリア膜を越え、ミトコンドリアマトリックス内に蓄積することができる2,4。
【0014】
最も研究されているミトコンドリア標的抗酸化剤の一つは、ミトキノン(Mitoquinone)(MitoQ,MitoQ10,[10-(4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソ-1,4-シクロヘキサジエン-1-イル)デシル]トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート)である。MitoQは、10-炭素アルキル鎖(dTPP)スペーサーおよびトリフェニルホスホニウム(TPP)カチオンに共有結合した内因性抗酸化剤部分(コエンザイムQ)によって構成されている。MitoQは、異なる病理、すなわちC型肝炎について臨床試験中である。しかし、MitoQを神経変性疾患の治療法として使用する臨床試験は、期待外れの結果を生んでいる。
【0015】
他の関連のミトコンドリア標的抗酸化剤は、葉緑体の電子伝達系に関与するキノンであるプラストキノンをベースとする、SKQ1[10-(4,5-ジメチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)デシル)トリフェニルホスホニウムブロミド)]である。SkQ1は、ミトコンドリア内部の酸化ストレスを減少させ、ドライアイ状態に対する有意な保護効果があることが示された。
【0016】
それでもなお、治療および化粧品などの他の用途に使用される有効かつ安全なミトコンドリアモジュレーターが依然として必要とされている。
【0017】
担体としてのTPPの使用もまた、HCAがミトコンドリアを標的とするようにする戦略として追跡された。これに関連して、コーヒー酸をベースとするミトコンドリア指向性抗酸化剤のプロトタイプが我々のグループによって開発された5。ここでAntiOxCIN1と命名された化合物は、より親油性でありながら親化合物の抗酸化活性を保持した。AntiOxCIN1は、ミトコンドリアに蓄積し、異なる酸化ストレスストレッサー、すなわちH2O2およびリノール酸-ヒドロペルオキシドに対してマウス筋芽細胞C2C12細胞を保護した。しかしながら、ミトコンドリア指向性抗酸化剤としてのAntiOxCIN1の有効性は決して望みどおりではなかった。
【0018】
これらの事実は、本開示が対処する技術的問題を説明するために開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【文献】Murphy MP. Antioxidants as therapies: can we improve on nature? Free Radical Biology and Medicine 2014, 66: 20-23.
【文献】Benfeito S, Oliveira C, Soares P, Fernandes C, Silva T, Teixeira J, et al. Antioxidant therapy: still in search of the 'magic bullet'. Mitochondrion 2013, 13(5): 427-435
【文献】Wallace DC, Fan W, Procaccio V. Mitochondrial energetics and therapeutics. Annual review of pathology 2010, 5: 297-348.
【文献】Smith RA, Hartley RC, Cocheme HM, Murphy MP. Mitochondrial pharmacology. Trends in pharmacological sciences 2012, 33(6): 341-352.
【文献】Teixeira J, Soares P, Benfeito S, Gaspar A, Garrido J, Murphy MP, et al. Rational discovery and development of a mitochondria-targeted antioxidant based on cinnamic acid scaffold. Free radical research 2012, 46(5): 600-611.
【発明の概要】
【0020】
ミトコンドリア、ならびに細胞性活性酸素種(ROS)およびレドックスバランスの制御は、創薬にとって魅力的なターゲットである。モジュレーター剤を用いてミトコンドリアを標的化することは、有効な戦略であることが分かっている。これに関連して、ヒドロキシケイ皮酸をベースとする強力で有効なミトコンドリア指向性抗酸化剤(AntiOxCIN)の合理的な設計が行われた。
【0021】
本開示は、第一の態様において、一般式
【0022】
【0023】
によって同定され得る新規ヒドロキシケイ皮酸誘導体、
または薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、立体異性体の開発に関し、式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、互いに独立して選択され、
R1、R2、R3、R4、およびR5は、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、メトキシル、アミノ、カルボン酸、またはニトロ基から選択され、
R6、R7、R8は、アルキル鎖、アルケニル鎖、アルキニル鎖、置換型アリール、または環であり、
R6とR7との間の結合は、単結合、二重結合、または三重結合であり、
但し、R6とR7との間の結合が二重結合である場合、R3=R2はOHとは異なり、R1=R4はHとは異なり、R6=R7はメチルとは異なり、
Z-は陰イオンである。
【0024】
国際純正応用化学連合(IUPAC)の定義に基づいて、アルキル基は、任意の炭素原子から水素原子を除去することによってアルカンから誘導される一価の基-CnH2n+1として定義される。非分岐状アルカンの末端炭素原子から水素原子を除去することによって誘導される基は、通常のアルキル(n-アルキル)基であるのサブクラスH(CH2)nを形成する。基RCH2、R2CH(R≠H)、およびR3C(R≠H)は、それぞれ第一級、第二級、および第三級アルキル基である。アリール基は、環炭素原子から水素原子を除去することによってアレーン(単環式および多環式芳香族炭化水素)から誘導される。
【0025】
「アルキル」は「低級アルキル」を含み、30個以下の炭素原子を有する炭素断片を包含するように適用される。アルキル基の例として、オクチル、ノニル、ノルボルニル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、エイコシル、3,7-ジエチル-2,2-ジメチル-4-プロピルノニル、2-(シクロドデシル)エチル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0026】
「低級アルキル」は、1~7個の炭素原子のアルキル基を意味する。低級アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-およびtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2-メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチルなどが挙げられる。
【0027】
ハロゲンは、F、Cl、Br、I、Atからなるリストから選択される元素である。
【0028】
一実施形態において、R6とR7との間の結合は、単結合または二重結合であり得、但し、R6とR7との間の結合が二重結合である場合、R3=R2はOHとは異なり、R1=R4はHとは異なり、R6=R7はメチルとは異なる。
【0029】
一実施形態において、アルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖は、C1~C30鎖、好ましくはC1~C18鎖、より好ましくはC2~C14鎖、さらにより好ましくはC3~C12鎖またはC6~C10鎖であり得る。
【0030】
一実施形態において、アルキル鎖は、C6アルキル鎖、C7アルキル鎖、C8アルキル鎖、C9アルキル鎖、またはC10アルキル鎖であり得る。
【0031】
一実施形態において、置換型アリールは、
a)それぞれがC1~C6-アルキル、C1~C6-アルコキシ、COOH;C1~C6-アルキルで1回もしくは2回置換されていてもよいCONH2;SO3H、アミノ、チオール、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、CF3、もしくはOCF3で1回もしくは数回置換されていてもよい、
C1~C6-アルキル、C3~C8-シクロアルキル、C6~C10-アリール、C6~C10-アリール-C1~C8-アルキル、C1~C6-アルコキシ、C6~C10-アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C8-アルコキシ、ヒドロキシル、CO2H、C1~C6-アルコキシカルボニル、C6~C10-アリールオキシカルボニル、C6~C10-アリール-C1~C8-アルコキシカルボニル、C1~C6-アルキルカルボニル、C6~C10-アリールカルボニル、C6~C10-アリール-C1~C8-アルキルカルボニル、C1~C6-アルキルカルボキシ、C6~C10-アリールカルボキシ、C1~C6-アルキルメルカプチル(alkylmercaptyl)、C6~C10-アリールメルカプチル(arylmercaptyl)、C1~C6-アルキルメルカプトカルボニル、C3~C8-シクロアルキルメルカプトカルボニル、C6~C10-アリールメルカプトカルボニル、C1~C6-アルキルメルカプトカルボキシ、C6~C10-アリールメルカプトカルボキシ、C1~C6-アルキルスルホニル、C6~C10-アリールスルホニル、C1~C6-アルキルスルホキシ、C6~C10-アリールスルホキシ;
ここで、これらの任意選択の置換基のいくつかが組み合わされて、アンネレーションされた飽和、不飽和、もしくは芳香族のホモもしくはヘテロ環系を形成してもよい;または
b)C1~C6-アルキル、C1~C6-アルコキシ、COOH;1回もしくは2回置換されていてもよいCONH2で1回もしくは数回置換されていてもよい飽和、不飽和、もしくは芳香族のヘテロ環
で1回または数回置換されていてもよい、アルカン-アリール置換型、アルケン-アリール置換型、またはアルキン-アリール置換型、好ましくはC6~C10-アリール、好ましくはフェニル;ベンジル、フェネチル、フェンプロピル、フェンブチル、またはフェンヘキシルであり得る。
【0032】
一実施形態において、環は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、またはシクロヘキサンであり得る。
【0033】
一実施形態において、Z-陰イオンは、以下のリスト:アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ニトレート、またはハロゲンから選択され、前記ハロゲンは、F、Cl、またはBrであり得;前記アルキルスルホネートまたはアリールスルホネートは、以下のリスト:メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、および2-ナフタレンスルホネートから選択され得る。
【0034】
一実施形態において、R1、R2、R3、R4、およびR5は、ハロゲンを含んでなり得、前記ハロゲンはF、Cl、またはBrである。
【0035】
一実施形態において、R1およびR5はHであり得る。
【0036】
一実施形態において、R2およびR3はOHであり得る。
【0037】
一実施形態において、R4はHまたはOHであり得る。
【0038】
一実施形態において、R6およびR7はC1アルキル鎖であり得る。
【0039】
一実施形態において、R8はC2アルキル鎖であり得る。
【0040】
一実施形態において、化合物は、(E)-(6-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートであり得る。
【0041】
一実施形態において、化合物は、(E)-(8-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートであり得る。
【0042】
一実施形態において、化合物は、(E)-(6-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートであり得る。
【0043】
一実施形態において、化合物は、(E)-(8-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートであり得る。
【0044】
一実施形態において、化合物は、(E)-(10-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートであり得る。
【0045】
一実施形態において、化合物は、(E)-(10-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネートであり得る。
【0046】
本開示は、医学または獣医学における使用のための本願で開示されている化合物または関連化合物にも関する。
【0047】
一実施形態において、開示されている化合物または関連化合物は、ミトコンドリアの形態および/またはOXPHOS酵素の発現のうちの少なくとも一つを調節するために使用され得る。
【0048】
一実施形態において、開示されている化合物または関連化合物は、ミトコンドリア障害に関連する症状、またはミトコンドリア呼吸鎖異常に起因する疾患を含む、一般にミトコンドリア機能不全に関連する状態に関連する症状の治療、または予防、または抑制のために使用され得る。
【0049】
一実施形態において、ミトコンドリア障害は、ミオクローヌスてんかん;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON);神経性薄弱運動失調網膜色素変性症(neuropathy ataxia and retinitis pigmentosa)(NARP);ミトコンドリアミオパチー、脳症、ラクトアシドーシス、脳卒中(MELAS);リー症候群;リー様症候群(Leigh-like syndrome);優性視神経萎縮症(DOA);カーンズ-セイヤー症候群(KSS);母性遺伝性糖尿病および難聴(MIDD);アルパーズ-フッテンロッハー症候群;運動失調ニューロパシースペクトラム;慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO);ピアソン症候群;ミトコンドリア神経胃腸管性脳症(Mitochondrial Neuro- Gastro-Intestinal Encephalopathy)(MNGIE);センガーズ症候群(Sengers syndrome);リー様症候群(Leigh-like syndrome)の3-メチルグルタコン酸尿症、感音難聴、脳症、および神経放射線学的所見(MEGDEL);ミオパチー;ミトコンドリアミオパチー;心筋症;ならびに脳筋症、SURF1(複合IV surfeitタンパク質欠損によるCOX欠損リー症候群)、ならびにピルビン酸酸化およびATPプラスPCr産生率の妨害を含む、これまでに解決されていない遺伝的欠陥を伴う単独または複合OXPHOS欠損からなる群から選択される障害である。
【0050】
一実施形態において、ミトコンドリア機能不全に関連する状態は、フリードライヒ運動失調症(FRDA);尿細管性アシドーシス;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);ハンチントン病;広汎性発達障害;聴力損失;難聴;糖尿病;老化;およびミトコンドリア機能を妨害する薬剤副作用からなる群から選択される障害であり得る。
【0051】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、神経変性疾患、異常増殖、腎臓疾患、強皮症、肝臓鉄過剰症、肝臓銅過剰症、脱毛症、ヒト不妊症、急性膵炎、線維筋痛症、またはミトコンドリア酸化的疾患の併発に関連する他の疾患の治療または予防において使用するためのものであり得る。
【0052】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、とりわけ、非アルコール性脂肪性肝疾患群、すなわち非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、または肝硬変の治療における使用のためのものであり得る。
【0053】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、とりわけ、異常増殖において使用するためのものであり得、前記異常増殖疾患は、癌、特に、基底細胞癌、骨癌、腸癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、または胆道癌である。
【0054】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、とりわけ、腎臓関連疾患、すなわち腎不全における使用のためのものであり得る。
【0055】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、筋萎縮性側索硬化症における使用のためのものであり得る。
【0056】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、抗菌薬として、特に殺菌薬としての使用のためのものであり得る。
【0057】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、多能性細胞培養物の維持における、細胞培養のための補充物として、特に増殖培地成分としての使用のためのものであり得る。
【0058】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、身体運動後の筋肉回復を促進するために使用するためのものであり得る。
【0059】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、化粧品、サプリメント、または機能性食品の活性成分として、すなわち、アンチエイジングまたは抗しわスキンケア成分または製品として使用され得る。
【0060】
一実施形態において、本願で開示されている化合物または関連化合物は、イメージング研究におけるプローブとして、特にミトコンドリアイメージング研究をモニタリングするために使用するためのものであり得る。
【0061】
本開示はまた、本願で開示されている化合物、または関連化合物のいずれかを含んでなる、多能性幹細胞を未分化状態で維持するための細胞培養培地にも関する。
【0062】
本開示は、とりわけ、本願で開示されている化合物または関連化合物および1種以上の薬剤的に許容できる担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、またはそれらの混合物を含んでなる医薬組成物にも関する。
【0063】
一実施形態において、薬剤的に許容できる担体は、とりわけ、以下のリスト:食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0064】
一実施形態において、アジュバントは、とりわけ、以下のリスト:水中油型エマルジョンアジュバント、アルミニウムアジュバント、TLR-4リガンド、サポニン、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0065】
一実施形態において、賦形剤は、とりわけ、以下のリスト:グルコース、ラクトース、スクロース、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、またはそれらの混合物から選択され得る。
【0066】
一実施形態において、医薬組成物は、局所、経口、非経口、または注射投与され得る。
【0067】
一実施形態において、医薬組成物は、例えば、神経変性疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、異常増殖、腎臓疾患、強皮症、肝臓鉄過剰症、肝臓銅過剰症、脱毛症、ヒト不妊症、急性膵炎、または線維筋痛症の治療または予防のための方法における使用のためのものであり得、前記医薬組成物は、一日量で投与される。
【0068】
一実施形態において、前記医薬組成物の一日量は、とりわけ、20mg/日または10mg/日であり得る。
【0069】
本開示は、ナノ担体、例えばリポソームも提供し、前記ナノ担体または前記リポソームは、本願で開示されている化合物もしくは関連化合物または医薬組成物を含んでなる。
【0070】
いくつかの実施形態において、組成物は、本願の主題に含まれる開示されている化合物または関連化合物を、免疫療法または薬理学的アプローチを含む他の療法の有効性を対象において5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、90%以上、95%以上、95.7%以上、98%以上、または99%以上改善するのに有効な量で含んでなり得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、組成物は、0.1~1000mgの用量を含んでなる。例えば、いくつかの実施形態において、製剤は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg、600mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、900mg/kg、または1000mg/kgの用量を含んでなる。いくつかの実施形態において、組成物は、0.1~10mg/kg、0.1~100mg/kg、1~10mg/kg、1~100mg/kg、1~1000mg/kg、10~100mg/kg、10~1000mg/kg、100~1000mg/kg、10~50mg/kg、10~25mg/kg、10~20mg/kg、50~100mg/kg、または100~250mg/kgの用量を含んでなる。
【0072】
好ましい投与経路としては、経口、非経口、筋肉内、静脈内、インサイチュ注入、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、または局所が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
いくつかの実施形態において、用量または剤形を、例えば、1日1回、1日2回、または1日3回、対象に投与し得る。他の実施形態において、用量を、週に1回、月に1回、2ヶ月に1回、1年に4回、1年に3回、1年に2回、または1年に1回、対象に投与する。
【0074】
明細書および特許請求の範囲を通して、語句「含んでなる」および当該語句の変化形は、他の技術的特徴、追加物、構成要素、または工程を排除することは意図されていない。本願で開示されている解決手段の他の目的、利点、および特徴は、明細書を考察することにより当業者に明らかになるか、または解決手段の実施により習得され得る。
【0075】
以下の図面は、明細書を説明するための好ましい実施形態を提供しており、開示の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】数種のAntiOxCINを得るための合成戦略。試薬および条件:i)エチルクロロホルメート,アミノアルコール,室温;ii)メタンスルホニルクロリド,室温;iii)トリフェニルホスフィン,150℃(マイクロ波,1時間30分)もしくは130℃(18時間);またはiv)BBr3,-70℃(10分)から室温(12時間)。
【
図2】コーヒー酸、AntiOxCIN、およびMitoQの鉄キレート特性の評価。EDTA(キレート剤)を基準として使用した。一元配置分散分析を用いて対照群と比較した統計的有意性(P<0.0001,n.s., 有意でない)。
【
図3】(A)TPP選択性電極を用いて測定した、エネルギーを与えられたラット肝臓ミトコンドリアによるAntiOxCIN取り込み。(B)親油性(---)およびミトコンドリア蓄積比率(-)に対するAntiOxCINの芳香環パターン置換およびアルキル炭素側鎖の効果。(C)ラット肝臓ミトコンドリアによるAntiOxCIN蓄積比率。MIT,ミトコンドリア;SUC,コハク酸塩;VAL,バリノマイシン。
【
図4】様々な酸化条件下でのミトコンドリア脂質過酸化に対するコーヒー酸、AntiOxCIN、およびMitoQの効果。(A)TBARSレベルおよび(B)酸素消費の変化。対照対AntiOxCIN(5μM)プレインキュベーション間の比較を一元配置分散分析を用いることにより実施した。
【
図5】ADPおよびFe
2+により誘発されるRLM膜の脂質過酸化、ならびにそれに続く酸素消費に対する(A)コーヒー酸、(B)dTPPおよびMitoQ,ならびに(C)カテコールコアを含むAntiOxCINまたは(D)ピロガロールコアを含むAntiOxCINの効果。
【
図6】5mMコハク酸塩により支持されるRLM呼吸に対するMitoQおよびAntiOxCINの効果。(A)MitoQの効果(白色,対照;水平パターン,2.5μM,垂直パターン,5μM);(B~H),AntiOxCINの効果(白色,対照;水平パターン,2.5μM,垂直パターン,5μM,格子パターン,10μM)。様々な呼吸速度/状態に対する統計的有意性は、スチューデントの両側t検定を使用して決定した。
【
図7】ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)を誘発したときのミトコンドリア膨化に対するAntiOxCINおよびMitoQの効果。(A)2.5μM、(B)5μM、および(C)10μMのAntiOxCINおよびMitoQをRLMで5分間プレインキュベーションし、その後カルシウムを添加した。対照(Ca
2+のみ)対AntiOxCIN誘導体をCa
2+の前にプレインキュベーションしたアッセイ間の比較を一元配置分散分析を用いることにより実施した。CsA-シクロスポリンA
【
図8】(A)肝細胞癌細胞(HepG2)に対するAntiOxCIN
4(黒四角)およびAntiOxCIN
6(・)の細胞毒性プロファイル。統計的有意性は一元配置分散分析を用いて対照群と比較した。(B)HepG2細胞の鉄および過酸化水素誘発損傷に対するAntiOxCIN
4およびAntiOxCIN
6の効果。対照(FeSO
4またはH
2O
2)対AntiOxCINをプレインキュベーションした製剤間の比較を一元配置分散分析を用いることにより実施した。(C)AntiOxCIN
4およびAntiOxCIN
6(それぞれ100μMおよび2.5μM)は、正常な核の形態およびミトコンドリア分極を乱さなかった。
【発明を実施するための形態】
【0077】
詳細な説明
一実施形態において、および一例として、数種のケイ皮酸親油性カチオン性抗酸化剤(AntiOxCIN)の開発のための合成戦略が
図1に示されている。この例において、出発物質として使用したジトリメトキシケイ皮酸(1)またはトリメトキシケイ皮酸(2)を、アミド化反応によって、可変長を有する適当な二官能化アルキルスペーサーに結合した(ケイ皮酸誘導体3~8)。次いで、誘導体のアルコール官能基を脱離基(-OSO
2CH
3)で活性化して、ケイ皮酸誘導体9~14を得た。その後、末端基をトリフェニルホスフィン(PPh
3)との求核置換反応により置換して、古典的な反応またはマイクロ波を利用する反応を通じてトリフェニルホスホニウムカチオン15~20を得た。マイクロ波放射の使用は、環境への配慮を増した方法でAntiOxCIN前駆体を得ることを可能にする。古典的な反応には18時間必要であったこととは対照的に、反応時間は1時間30分であった。最後に、AntiOxCIN(AntiOxCIN
2~AntiOxCIN
7)を三臭化ホウ素(BBr
3)溶液を用いる脱メチル化反応により得た。
【0078】
一実施形態において、および一例として、AntiOxCINの抗酸化特性、レドックス特性、および親油特性を報告した。コーヒー酸およびAntiOxCIN1も試験に含めた。結果を表1に示した。
【0079】
【0080】
一実施形態において、AntiOxCINの抗酸化活性をランク付けする階層化をインビトロ非細胞方法により確立した。選択された総抗酸化能(TAC)アッセイ(DPPH、ABTS、およびGO)は、抗酸化剤によるインサイチュラジカル失活の結果としてのラジカル吸光度の減少の吸光光度測定を伴った。より高い抗酸化活性を有する化合物は、より低いIC50値を示す。抗酸化データ(表1)によって、コーヒー酸およびAntiOxCIN1と比較して、AntiOxCINが有効な抗酸化剤であることと、達成されたIC50値が3つの異なるアッセイにおいて同じ傾向をたどったこととを結論付けることができる。データは、ピロガロール系(AntiOxCIN4、AntiOxCIN5、およびAntiOxCIN7)を含んでなる系列が、それらのカテコール(AntiOxCIN2、AntiOxCIN3、およびAntiOxCIN6)対応物よりも高い抗酸化活性を示すことを明確に示した。概して、トリフェニルホスホニウム(TPP)脂肪族側鎖の導入は、コーヒー酸と比較して、抗酸化活性のわずかな減少をもたらした。この減少は、スペーサー長の増大および/または芳香環への追加のヒドロキシル基の導入によって減弱/改善された。
【0081】
一実施形態において、AntiOxCIN4、AntiOxCIN5、およびAntiOxCIN7は、コーヒー酸およびAntiOxCIN1と同様またはそれ以上の抗酸化活性を有する。スペーサー長内で行われる化学変化は、ラジカル捕捉能に悪影響を及ぼさない。反対に、長いアルキルスペーサーを有する化合物については、より高い抗酸化能が観察された。
【0082】
一実施形態において、および一例として、AntiOxCINレドックス特性を評価した(表1)。レドックス電位は、抗酸化剤が水素原子および/または電子をフリーラジカルに供与する能力と相関している。概して、低い酸化電位(Ep)は優れた抗酸化性能に関連している。
【0083】
一実施形態において、差分パルスおよびサイクリックボルタンメトリーによって生理的pH(7.4)で得られたレドックスデータにより、コーヒー酸およびそのカテコール類似体(AntiOxCIN1、AntiOxCIN2、AntiOxCIN3、およびAntiOxCIN6)がカテコール基の存在に特徴的なレドックス電位(Ep)(Ep=0.164~0.174V)を示したことを結論づけることができる(表1)。しかしながら、ピロガロール誘導体(AntiOxCIN4、AntiOxCIN5、およびAntiOxCIN7)では、レドックス電位の有意な減少が観察された(Ep=0.034~0.057V)(表1)。
【0084】
一実施形態において、サイクリックボルタンメトリーによって、コーヒー酸およびそのカテコール類似体(AntiOxCIN1、AntiOxCIN2、AntiOxCIN3、およびAntiOxCIN6)は、逆スキャンで単一のアノードピークと1つのカソードピークが観察されたため、可逆反応を受けると結論付けることができた。全ての系において、酸化機序は、セミキノンラジカルの形成およびそれに続くオルト-キノンへの酸化に対応すると考えられる、分子当たり2つの電子が関与するため、コーヒー酸について提案された機序と類似していた。
【0085】
一実施形態において、ピロガロール系(AntiOxCIN4、AntiOxCIN5、およびAntiOxCIN7)は、カソードスイープで還元波が見られたため、不可逆的な酸化反応を受けるようである。このタイプの系では、差分パルスボルタンメトリーを用いて生理的pHで1つのアノードピークのみが観察された。ボルタモグラムは、それぞれ、化合物の溶解形態および吸着形態の酸化に対応するよりアノード電位での拡散ピークおよび吸着ポストピークを示した。酸化波は、ピロガロール部分の酸化過程に関連し得る。サイクリックボルタモグラムは、2つの重なり合ったアノードピークの存在も示す。カソードスイープで明瞭な還元波は見られなかったため、アノードピークは不可逆的過程に対応するように見えた。ピロガロール系における追加のフェノール基の存在は、カテコール系と比較して、セミキノン中間体の安定化に影響を与え、結果として酸化機序に影響を与えるようである。
【0086】
一実施形態において、TACアッセイで得られたデータは、AntiOxCINのレドックスのアウトラインと一致する。全体として、結果は、ケイ皮酸芳香族環上に存在するヒドロキシル置換基の数が、抗酸化特性および電気化学特性に直接的に関係しているという仮説を強固なものにする。
【0087】
一実施形態において、AntiOxCINの親油特性は、電気化学により生理的pHで評価した。過程は2つの混じりあわない電解質溶液間の界面(ITIES)で起こるため、使用される技術は、生体膜を通るイオン性薬剤の移動を模倣するために使用されることが多い。最初に水相に存在していたイオン性薬剤(C=0.32mM)が1,6-ジクロロヘキサン(DCH)相に移動する移動電位(Etr)は、差分パルスボルタンメトリー(DPV)によって測定される。ITIESモデルにおいて、移動電位(Etr)は、薬剤の親油特性が増すと、陽性の程度が低くなる。
【0088】
一実施形態において、および一例として、得られたAntiOxCINの移動電位(Etr)は、表1に示されている。概して、AntiOxCINの親油性の増大が、アルキルスペーサーの長さの関数として観察された。この挙動は、AntiOxCINの系列の両方で観察され、AntiOxCIN1は、親油性がより低い化合物であった。予想通り、コーヒー酸は浸透しない。相対的な親油性は、カテコールベースの系列では、以下の順序:AntiOxCIN1<AntiOxCIN2<AntiOxCIN3<AntiOxCIN6で増加し、ピロガロールベースの系列では:AntiOxCIN4<AntiOxCIN5<AntiOxCIN7で増加した。スペーサー長の同様の増大(例えば、AntiOxCIN6対AntiOxCIN7)では、追加のOH官能基の導入は、AntiOxCINの親油性を増加させた。
【0089】
一実施形態において、および一例として、AntiOxCINのキレート特性、すなわち鉄をキレートするその能力を測定した。鉄は、ヒトの健康および疾患に深刻な影響を与える酸化的損傷事象と関連する強力な酸化剤種である、ヒドロキシルラジカル(●OH)を生じるフェントン反応およびハーバー-ワイス反応を触媒することができるレドックス活性金属である。ここで留意すべきは、ミトコンドリアの鉄の恒常性の喪失およびその結果としての鉄の過剰は、ミトコンドリア機能不全、ひいては様々な病理に寄与し得るということである。したがって、金属キレート剤、またはこの機序または複数の機序によって作用する抗酸化剤の使用は、金属誘発毒性を防ぐための治療的アプローチとして機能することができる。
【0090】
一実施形態において、AntiOxCINの鉄(II)キレート特性を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を基準として使用するフェロジンアッセイによって評価した。コーヒー酸およびMitoQの鉄キレート特性も評価した。EDTAは、着色されたフェロジン-fe(II)錯体の形成を完全に阻害することができるため、溶液中の全ての鉄をキレート化することができることが分かった。
【0091】
一実施形態において、MitoQとは対照的に、AntiOxCIN(カテコール系列またはピロガロール系列)およびコーヒー酸は、EDTAと同様に、二価鉄イオンをキレート化することができた(
図2)。AntiOxCINに化学修飾を施したにもかかわらず、新規の誘導体は、キレート剤EDTAおよびコーヒー酸と同様に、鉄をキレートする顕著な能力を依然として示す(
図2)。AntiOxCIN
2およびAntiOxCIN
4は、コーヒー酸自体よりも高い鉄キレート活性を示した。
【0092】
一実施形態において、AntiOxCINのキレート特性がMitoQによって共有されなかったことが明らかにされている。この特有のAntiOxCIN特性は、鉄過剰を伴うミトコンドリア障害および代謝障害の治療のための重要な特徴をそれ自体で構成し得る。
【0093】
一実施形態において、および一例として、単離したラット肝臓ミトコンドリア(RLM)において、膜電位に応じた、ミトコンドリアのAntiOxCINの取り込みを評価した。AntiOxCINは、ΔΨによって駆動され、ミトコンドリアの内側に蓄積することができる(
図3A)。ミトコンドリアマトリックス内の様々なAntiOxCINの蓄積のアウトラインが注目されている。当該過程は、スペーサー長の増加および芳香族置換パターンに関連し、AntiOxCINの親油性に直接的に関連することが分かった(
図3Bおよび3C,表1)。しかしながら、AntiOxCINの親油性の線形増加は、ミトコンドリアマトリックス蓄積の比率の増加に直接的に変換はされなかった(
図3B)。以下の順位が得られた: AntiOxCIN
1<AntiOxCIN
2<AntiOxCIN
6<AntiOxCIN
3(カテコール系列);AntiOxCIN
4<AntiOxCIN
7<AntiOxCIN
5(ピロガロール系列)(
図3C)。AntiOxCIN
6およびAntiOxCIN
7は、最も親油性の化合物であったが、カットオフ膜効果におそらく起因して、より低い蓄積比率を示す。化学構造の違いにも関わらず、AntiOxCIN
2、AntiOxCIN
6、およびAntiOxCIN
4は、ほぼ同じ蓄積比率を示した。全てのAntiOxCINは、MitoQと同等かつAntiOxCIN
1よりも高い蓄積比率を示す(
図3C)。
【0094】
ミトコンドリア膜は、ROS生成部位の近くに位置するため、特に酸化されやすい高濃度の多価不飽和脂肪酸を有する。
【0095】
一実施形態において、および一例として、RLM膜の脂質過酸化の保護に対するAntiOxCIN抗酸化能を測定した。2つの異なる酸化ストレッサー剤、FeSO
4/H
2O
2/アスコルベートおよびADP/FeSO
4、ならびに2つのエンドポイント、それぞれTBARS生成および酸素消費が使用されてきた。MitoQを基準として使用した(
図4および5)。
【0096】
一実施形態では、FeSO
4/H
2O
2/アスコルベートアッセイにおいて、AntiOxCIN
2(カテコール系列)およびAntiOxCIN
7(ピロガロール系列)は、ミトコンドリア脂質過酸化の防止において最も効果的なミトコンドリア指向性ケイ皮酸誘導体であることが分かった(
図4A)。ADP/FeSO
4アッセイにおいて、AntiOxCINの脂質過酸化防止能力は、同じ傾向をたどった(
図4Bおよび5A~D)。RLMにおいて脂質過酸化を阻害する能力のAntiOxCIN対MitoQは、MitoQ>AntiOxCIN
7>AntiOxCIN
2>>AntiOxCIN
4≒AntiOxCIN
5>AntiOxCIN
6≒AntiOxCIN
3>AntiOxCIN
1>コーヒー酸の順序で減少した。AntiOxCIN
2を除いて、ピロガロールをベースとするAntiOxCIN(
図4および5D)は、コーヒー酸よりも、脂質過酸化膜過程を遅延させるのにより効果的であり、より高い性能を有する。
【0097】
細胞代謝はミトコンドリアの特有の機能に依存するので、ミトコンドリア機能パラメータに対する化合物の効果は、化合物の毒性プロファイルについての情報を与え得る。そこで、ミトコンドリア内膜を損傷することによって、または呼吸鎖、ATP合成、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)過程、もしくは輸送機構を阻害することによって、ミトコンドリア機能不全を誘発する化合物の能力を評価した。
【0098】
一実施形態において、および一例として、ミトコンドリアの生体エネルギー機構(bioenergetics)、すなわちRLM ΔΨおよびミトコンドリア呼吸パラメータに対するAntiOxCINおよびMitoQの毒性効果を測定した。ΔΨは、ミトコンドリア呼吸によって生じる電気化学的勾配の主成分を表し、利用可能な総エネルギーの90%超を占める。ミトコンドリア呼吸アッセイでは、グルタミン酸塩/リンゴ酸塩(錯体I用)およびコハク酸塩(錯体II用)を基質として使用した。また、呼吸調節率(RCR,状態3/状態4の呼吸)およびADP/O指数(ATP合成と酸素消費との間の共役)として知られるミトコンドリア酸化的リン酸化共役指数も計算した。AntiOxCINおよびMitoQを、最高濃度を10μMとして、抗酸化関連濃度で試験した。
【0099】
一実施形態において、MitoQについて得られたミトコンドリアの生体エネルギー機構(bioenergetics)データを(表2)に示した。得られた結果は、比較解析に使用した。
【0100】
【0101】
一実施形態において、MitoQは、全ての試験した濃度について、RCRおよびADP/Oパラメータの有意な減少を引き起こしたことが観察された(表2)。さらに、基質としてグルタミン酸塩/リンゴ酸塩を用いて、RLMを5μM以下のMitoQ濃度でインキュベートした場合に、状態2、状態4、およびオリゴマイシン阻害呼吸における増加、ならびに状態3およびFCCP脱共役呼吸における減少が観察された(
図6A)。コハク酸塩を使用した場合、試験した最高濃度のMitoQの存在下では、RLMは完全に脱共役していた(
図6A)。MitoQの濃度を増加させてインキュベーションしたところ、エネルギーを与えた時に得られる最大ΔΨが漸進的に減少した(表2)。また、MitoQ(5μM)は、ΔΨミトコンドリア回復能を対照と同様の値にまで減少させた。ADP誘発脱分極後に再分極は起こらなかったため、ADP添加後のΔΨ崩壊は10μMのMitoQで観察された(表2)。
【0102】
一実施形態において、AntiOxCINの毒性試験で使用した最高濃度は、MitoQがミトコンドリアの生体エネルギー機構(bioenergetics)を完全に妨害した濃度であった。AntiOxCINの毒性試験のデータを表3~9に示した。AntiOxCIN1も比較解析のために当該試験に含めた(表3)。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
一実施形態において、および一例として、状態2、状態3、状態4、オリゴマイシン阻害呼吸およびミトコンドリア呼吸アッセイ、ならびにコハク酸塩(基質として使用した FCCP刺激呼吸)についてのAntiOxCINおよびMitoQの速度が、
図6A~Hに示されている。
【0111】
一実施形態において、AntiOxCINが、用量依存的に呼吸鎖に変化を誘発したことが分かった。概して、AntiOxCINは、2.5μMより高い濃度で、その親油性に主に依存し、その芳香族パターン(カテコール対ピロガロール)に依存しない過程で、状態2、4、およびオリゴマイシン阻害呼吸を増加させた(
図6B~H)。全ての試験した濃度(2.5~10μM)について、状態3の呼吸に対する二相性の用量依存的効果が観察され、親油性の低い化合物(AntiOxCIN
2およびAntiOxCIN
4)により減少が起こり、親油性の高いAntiOxCIN(AntiOxCIN
3、AntiOxCIN
6、AntiOxCIN
5、およびAntiOxCIN
7)で増加が起こった(
図6B~H)。
【0112】
一実施形態において、AntiOxCINが、単離されたRLMの呼吸プロファイルの用量依存的変化を誘導したことが示された。おそらく、観察された効果のいくつかは、膜透過処理効果またはプロトンシャトリング活性に起因し得る。この効果は、非リン酸化呼吸の刺激および小さいΔΨ脱分極をもたらし得る。結果的に、いくつかのAntiOxCINでは、ADP/O比により評価したミトコンドリアリン酸化系も、影響を受けた。状態3の呼吸に対する二相性の用量依存的効果が観察され、親油性の低い化合物(AntiOxCIN
2およびAntiOxCIN
4)により当該呼吸状態の減少が起こり、親油性の高いAntiOxCIN(AntiOxCIN
3、AntiOxCIN
6、AntiOxCIN
5、およびAntiOxCIN
7)で当該状態3の呼吸の増加が観察された(
図6)。
【0113】
一実施形態において、および一例として、ΔΨに対するAntiOxCINの直接的効果を測定した(表3~9)。AntiOxCINの添加後、ΔΨ変化が、使用した基質にかかわらず、同様であったことが分かった。概して、2.5μMのAntiOxCIN3(表5)およびAntiOxCIN6(表6)またはAntiOxCIN5(表8)およびAntiOxCIN7(表9)を用いたRLMのインキュベーションは、それぞれ10または25mVの初期のわずかな過分極を促したが、AntiOxCINは、わずかな用量依存的ΔΨ脱分極を引き起こした。しかしながら、AntiOxCIN6(5μMを超える濃度)(表6)およびAntiOxCIN7(10μM)を用いたインキュベーションは、コハク酸塩がエネルギーとして与えられたミトコンドリアにおけるΔΨの有意な減少をもたらした。
【0114】
一実施形態において、ミトコンドリアの生体エネルギー機構(bioenergetics)装置でのAntiOxCINの毒性をランク付けする階層化を確立した:AntiOxCIN1<AntiOxCIN2<AntiOxCIN3<AntiOxCIN6(カテコール系列);AntiOxCIN4<AntiOxCIN5<AntiOxCIN7(ピロガロール系列)。
【0115】
一実施形態において、高濃度で観察されたAntiOxCINのミトコンドリア毒性は、スペーサーの親油性および/またはTPP部分の存在と関連している可能性があり、(カテコール対ピロガロール)との関連はあったとしてもほんの少しである。実際、コーヒー酸は、ミトコンドリアの生体エネルギー機構(bioenergetics)装置に対して、低い毒性を示した。なお、TPPカチオンおよび親油性スペーサーの存在は、効果的で、場合によっては広範なミトコンドリア蓄積に必須である。
【0116】
一実施形態において、高い濃度では、ミトコンドリア標的抗酸化剤、AntiOxCINおよびMitoQは、ミトコンドリア内膜における損傷を引き起こすことによって、または呼吸鎖、ATP合成、もしくは輸送機構を阻害することによって、ミトコンドリア呼吸を乱すことができることが分かった。
【0117】
一実施形態において、MitoQは、5μMで、RLMにおいて脂質過酸化を効果的に阻害した(
図4および5)が、2.5μMで、RLMのミトコンドリアの生体エネルギー機構(bioenergetic)装置で毒性を引き起こした(
図6Aおよび表2)ことが強調されているはずである。
【0118】
一実施形態において、ミトコンドリア指向性抗酸化剤の毒性を回避するためには、創薬最適化プロセスに従って、適当な親油性バランスが達成されなければならないことが結論付けられた。
【0119】
一実施形態において、研究中のAntiOxCINでは、それらの構造とは無関係に、抗酸化効果を発揮するのに必要な濃度よりも高い濃度でRLM毒性が検出されたことが結論付けられた。
【0120】
一実施形態において、概して、AntiOxCINが、MitoQよりも良好な安全性プロファイルを示したことが結論付けられた。
【0121】
一実施形態において、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の開孔に対するAntiOxCINの効果を評価した。概して、親油性が低いAntiOxCINは、全ての試験した濃度ではmPTP開孔に対して効果がなかった(
図7A~C)。
【0122】
一実施形態において、親油性が高いAntiOxCIN(AntiOxCIN
3、AntiOxCIN
5、AntiOxCIN
6、AntiOxCIN
7)は、カルシウム依存性mPTP開孔の阻害を引き起こしたことが分かった。カテコールベースの化合物では、効果は、古典的なmPTP減感剤(desensitizer)であるシクロスポリンA(1μM)の効果と同様であった。MitoQは、mPTP誘発に効果がなかった(
図7A~C)。この特性は、例えば、通常移植片におけるミトコンドリア破壊を伴う、移植片における移植片対宿主拒絶反応を防止および治療するために治療的に重要であり得る。
【0123】
一実施形態において、および一例として、2つのAntiOxCIN(AntiOxCIN
4およびAntiOxCIN
6)の細胞毒性を、肝細胞癌由来のヒト肝細胞(HepG2)の単層培養物およびSRB法を用いて評価した(
図8A)。データから、(カテコール部分を内包する)AntiOxCIN
6は、HepG2細胞に対して(ピロガロール部分を有する)AntiOxCIN
4よりも高い毒性を示すことが結論付けられた(
図6A)。注目すべきことには、2.5μMより高い濃度では、AntiOxCIN
6は、細胞増殖を阻害し、一方、100μMよりも高い濃度では、AntiOxCIN
4は細胞増殖を刺激した。
【0124】
一実施形態において、AntiOxCIN
6の親油特性(表1)およびRLM蓄積比率(
図3)に基づくAntiOxCIN
6の毒性は、有害作用に関連することが多い特性である、カテコールレドックス化学作用の存在により媒介される他のプロセスによって媒介され得ることが結論付けられた。
【0125】
一実施形態において、および一例として、AntiOxCIN
4およびAntiOxCIN
6の抗酸化細胞のアウトラインを、肝細胞癌由来のヒト肝細胞(HepG2)の単層培養物および2つの異なる酸化ストレッサー(250μMのFeSO
4または250μMのH
2O
2)を用いて評価した(
図8B)。両方のAntiOxCINは、細胞増殖の結果として表される、鉄および過酸化水素誘発HepG2細胞毒性を有意に防止した(
図6B)。AntiOxCIN
4のより高い効果は、TACアッセイ(表1)およびRLMアッセイ(
図4)から得られたデータと一致する。
【0126】
一実施形態において、および一例として、AntiOxCIN
4およびAntiOxCIN
6のミトコンドリアネットワークおよび核クロマチン凝縮における形態学的変化を測定した。HepG2細胞をAntiOxCINで48時間処理し、次いで、ミトコンドリアのΔΨ依存性蛍光プローブTMRMおよびDNA色素Hoechst 33342を用いてインキュベートした。結果は、AntiOxCIN
4(100μM)およびAntiOxCIN
6(2.5μM)が、HepG2において、核の形態学的変化も、ミトコンドリア脱分極も誘発しなかったことを示した(
図8C)。
【0127】
一実施形態において、AntiOxCIN1の調整された構造的修飾は、AntiOxCIN1のミトコンドリア指向特性の有意な改善をもたらしたことが結論付けられた。いくつかのAntiOxCINは、抗酸化活性が高まっており、ミトコンドリアの蓄積が多く、毒性が低い。
【0128】
一実施形態において、AntiOxCIN系列から、ピロガロールベースの類似体であるAntiOxCIN4は、ミトコンドリアの酸化に関連した障害における治療用途を有する画期的(first class)薬剤の開発のための潜在的な候補であると予測される。AntiOxCIN4は、ミトコンドリアの形態および分極を乱さず、MitoQによって共有されない顕著な鉄キレート特性を示した。AntiOxCIN4は、酸化ストレスに関連した疾患および状態において、ミトコンドリアの鉄過剰の効果を軽減および/またはミトコンドリアの鉄の蓄積を低減するのに有用であり得る。
【0129】
製造するために従った合成手順の例、ならびにいくつかの中間体およびAntiOxCINが提供される。
【0130】
一実施形態において、化合物の構造的キャラクタリゼーションは、分光分析法によって行った。1Hおよび13CスペクトルNMRスペクトルを、それぞれ400および100MHzで動作するBruker Avance IIIで、室温で取得し、記録した。化学シフトを、内部基準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対するδ(ppm)値で表し、カップリング定数(J)をHzで与える。帰属は、DEPT(分極移動による無歪増大(distortionless enhancement by polarization transfer))からも行った(下線の値)。質量スペクトル(MS)は、Bruker Microtof(ESI)またはVarian 320-MS(EI)装置で記録し、重要なフラグメントのm/z(相対%)で表した。
【0131】
一実施形態において、マイクロ波を利用する全プロセスをBiotage Initiator Microwave Synthesizerで行った。
【0132】
一実施形態において、反応の進行を、数種の割合のジクロロメタン、酢酸エチル、およびジクロロメタン/メタノール中のアルミニウムシリカゲルシート60 F254プレート(ドイツのダルムシュタットのMerck)での薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によって評価した。スポットをUV検出(254および366nm)を用いて検出した。フラッシュカラムクロマトグラフィーをシリカゲル60(0.040~0.063mm)(Carlo Erba Reactifs - SDS,フランス)を用いて行った。
【0133】
一実施形態において、ケイ皮酸アミドを得るための一般合成手順(化合物3~8,
図1)は以下であった:3,4-ジメトキシケイ皮酸(1)、または3,4,5-トリメトキシケイ皮酸(2),(1mmol),をジクロロメタン(10ml)およびトリエチルアミン(2mmol)に溶解した。氷浴中に保たれた撹拌溶液に、クロロギ酸エチル(2mmol)を滴下した。室温で2時間撹拌した後、混合物を氷浴中で冷却し、目的の(pretended)アミノアルコール(2mmol)を滴下した。反応物を室温で10時間撹拌した。中和後、溶媒を部分的に蒸発させ、反応混合物をジクロロメタン(3×20mL)で抽出した。有機相をまとめ、水(3×20mL)、10%重炭酸ナトリウム水溶液(NaHCO
3)(2×20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)で乾燥させた。濾過後、溶媒を蒸発させ、目的(pretended)化合物を得た。
【0134】
一実施形態において、(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-(6-ヒドロキシヘキシル)プロパ-2-エンアミド(3)の収率は81%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.31 (4H, m, H3’, H4’), 1.49 (4H, m, H2’, H5’), 3.30 (2H, m, H1’), 3.55 (2H, t, J = 6.5 Hz, H6’), 3.80 (3H, s, OCH3), 3.81 (3H, s, OCH3), 6.03 (1H, t, J = 5.6 Hz, CONH), 6.25 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.75 (1H, d, J = 8,3 Hz, H5), 6.94 (1H, d, J = 1.9 Hz, H2), 6,99 (1H, dd, J = 1.7, 8.4 Hz, H6), 7.48 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.4(C3’), 26.6 (C4’), 30.0 (C2’), 32.7 (C5’), 39.7(C1’), 56.0 (2x (OCH3), 62.7 (C6’), 109.9 (C2), 111.2 (C5), 118.9 (Cα), 121.9 (C6), 128.0 (C1), 140.8(Cβ), 149.2 (C4), 150.6 (C3), 166.5 (CONH). EI/ME m/z (%): 307 (M+, 17), 206 (62), 192 (27), 191 (100), 189 (29)。
【0135】
一実施形態において、(E)-3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-(6-ヒドロキシヘキシル)プロパ-2-エンアミド(4)の収率は88%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.37 (4H, m, H3’, H4’), 1.56 (4H, m, H2’, H5’), 3.36 (2H, m, H1’), 3.62 (2H, t, J = 6.6 Hz, H6’), 3,85 (6H, s, 2xOCH3), 3,86 (3H, s, OCH3), 6.35 (1H, t, J = 5.6 Hz, CONH), 6.40 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.72 (2H, s, H2, H6), 7.52 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.1 (C3’), 26.2 (C4’) 29.8 (C2’), 32.3(C5’), 39.3 (C1’), 55.9 (2xOCH3), 60.7 (OCH3), 62.3 (C6’), 104.7 (C2, C6), 120.2 (Cα), 130.3 (C1), 139.2 (C4), 140.4 (Cβ), 153.1 (C3, C5), 166.0 (CONH). EI/ME m/z (%): 337 (M+, 64), 336 (41), 236 (27), 222 (58), 221 (100)。
【0136】
一実施形態において、(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-(8-ヒドロキシオクチル)プロパ-2-エンアミド(5)の収率は83%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.26 - 1.40 (6H, m, H3’, H4’, H5’), 1.51 - 1.62 (4H, m, H2’, H6’), 1.70 - 1.81 (2H, m, H7’), 3.37 (2H, dd, J = 7.0, 13.0 Hz, H1’), 3.63 (2H, t, J = 6.6 Hz, H8’), 3.89 (3H, s, OCH3), 3.89 (3H, s, OCH3), 5.82 (1H, bs, CONH), 6.29 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.84 (1H, d, J = 8.3 Hz, H5), 7.02 (1H, d, J = 1.9 Hz, H2), 7.07 (1H, dd, J = 8.3, 1.9 Hz, H6), 7.55 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.6(C6’), 26.8 (C3’), 29.2 (C4’), 29.3 (C5’), 29.7(C2’), 32.7 (C7’), 39.7 (C1’), 55.9 (OCH3), 56.0(OCH3), 62.9 (C8’), 109.8 (C2), 111.1 (C5), 118.8(C6), 121.9 (Cα), 127.9 (C1), 140.6 (Cβ), 149.1 (C4), 150.5 (C3), 166.2 (CONH). EI/ME m/z (%): 336 (M+1, 40), 335 (M+, 71), 206 (53), 192 (75), 191 (100), 151 (63)。
【0137】
一実施形態において、(E)-3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-(8-ヒドロキシオクチル)プロパ-2-エンアミド(6)は収率:89%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.28 - 1.41 (6H, m, H3’, H4’, H5’) 1.44 - 1.70 (6H, m, H2’, H6’, H7’), 3.38 (2H, dd, J = 7.0, 13.0 Hz, H1’), 3.64 (2H, t, J = 6.6 Hz, H8’), 3.87 (3H, s, OCH3), 3.88 (6H, s, 2xOCH3), 5.67 (1H, t, J = 7.0 Hz, CONH), 6.30 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα) 6.73 (2H, s, J = 6.7 Hz, H2, H6), 7.53 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.6 (C6’), 26.8 (C3’), 29.2(C4’), 29.3 (C5’), 29.7 (C2’), 32.7 (C7’), 39.8(C1’), 56.2 (2xOCH3), 61.0 (OCH3), 63.0(C8’), 105.0 (C2, C6),
120.2 (Cα), 130.5 (C1), 139.6 (C4), 140.8 (Cβ), 153.4 (C3, C5), 165.8 (CONH). EI/ME m/z (%): 366 (M+1, 39), 365 (M+, 98), 236. (45), 221 (100) 181 (37).
【0138】
一実施形態において、(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-(10-ヒドロキシデシル)プロパ-2-エンアミド(7)の収率は78%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.21 - 1.41 (10H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’), 1.49 - 1.62 (4H, m, H2’, H8’), 1.75 - 2.00 (2H, m, H9’), 3.32 - 3.42 (2H, m, H1’), 3.64 (2H, t, J = 6.6 Hz, H10’), 3.90 (6H, s, 2xOCH3), 5.79 (1H, bs, CONH), 6.29 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.84 (1H, d, J = 8.3 Hz, H5), 7.02 (1H, d, J = 1.7 Hz, H2), 7.08 (1H, dd, J = 8.3, 1.7 Hz, H6), 7.56 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.8 (C8’), 27.0 (C3’), 29.3(C4’), 29.45 (C5’), 29.49 (C6’), 29.6 (C7’), 29.8(C2’), 32.9 (C9’), 39.9 (C1’), 56.0 (OCH3), 56.1(OCH3), 63.2 (C10’), 109.9 (C2), 111.3 (C5), 118.8(C6), 122.0 (Cα), 128.0 (C1), 140.9 (Cβ), 149.3 (C4), 150.7 (C3), 166.3 (CONH). EI/ME m/z (%): 364 (M+1, 433), 363 (M+, 89), 206 (54), 192 (72), 191 (100), 151 (46)。
【0139】
一実施形態において、(E)-3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-(10-ヒドロキシデシル)プロパ-2-エンアミド(8)の収率は69%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.23 - 1.42 (10H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’), 1.51 - 1.61 (4H, m, H2’, H8’), 1.89 - 2.06 (2H, m, H9’), 3.33 - 3.43 (2H, m, H1’), 3.64 (2H, t, J = 6.6 Hz, H10’), 3.87 (3H, s, OCH3), 3.88 (6H, s, 2xOCH3)), 5.82 (1H, bs, CONH), 6.33 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hα), 6.73 (2H, s, H2, H6), 7.55 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.8(C8’), 27.0 (C3’), 29.3 (C4’), 29.45 (C5’), 29.50(C6’), 29.6 (C7’), 29.8 (C2’), 32.9 (C9’), 39.9(C1’), 56.0 (2xOCH3), 61.1 (OCH3), 63.2(C10’), 105.1 (C2, C6), 120.3 (Cα), 130.6 (C1), 139.7 (C4), 141.0 (Cβ), 153.5 (C3, C5), 165.9 (CONH). EI/ME m/z (%): 394 (M+1, 40), 393 (M+, 100), 236 (37) 222 (86), 221 (93)。
【0140】
一実施形態において、メタンスルホネート誘導体を得るための合成手順(化合物9~14,
図1)は以下の通りであった:ケイ皮酸アミド(3~8)(1mmol)をテトラヒドロフラン(10ml)およびトリエチルアミン(2mmol)の混合物に溶解し、室温で10分間撹拌した。次いで、テトラヒドロフラン(5ml)中の塩化メタンスルホニル(1.3mmol)の溶液を滴下した。室温で12時間撹拌した後、混合物を中和し、溶媒を部分的に蒸発させた。得られた反応混合物をジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、まとめた有機相を水(3×20mL)、10%NaHCO
3水溶液(2×20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。各化合物のサンプルを精製し、構造的キャラクタリゼーションを実施した。
【0141】
一実施形態において、(E)-(6-(3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)メタンスルホネート(9)の収率は87%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった: 化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.42 (4H, m, H3’, H4’), 1.66 (4H, m, H2’, H5’), 3.00 (3H, s, OSO2CH3), 3.38 (2H, m, H1’), 3.88 (3H, s, OCH3), 3.89 (3H, s, OCH3), 4.22 (2H, t, J = 6.4 Hz, H6’), 5.97 (1H, t, J = 5.6 Hz, CONH), 6.33 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.84 (1H, d, J = 8.3 Hz, H5), 7.03 (1H, d, J = 1.9 Hz, H2), 7.07 (1H, dd, J = 1.9, 8.3 Hz, H6), 7.55 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 24.9(C3’), 26.0 (C4’), 28.8 (C2’), 29.3 (C5’), 37.2(OSO2CH3), 39.2 (C1’), 55.7 (2xOCH3), 69.8 (C6’), 109.5 (C2), 110.9 (C5), 118.6 (Cα), 121.7(C6), 127.7 (C1), 140.4 (Cβ), 148.9 (C4), 150.3 (C3), 166.1 (CONH)。
【0142】
一実施形態において、(E)-(6-(3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)メタンスルホネート(10)の収率は95%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.36 (4H, m, H3’, H4’), 1.60 (4H, m, H2’, H5’), 2.95 (3H, s, OSO2CH3), 3.32 (2H, m, H1’), 3.80 (6H, s, 2xOCH3), 3.81 (3H, s, OCH3), 4.16 (2H, t, J = 6.4 Hz, H6’), 6.07 (1H, t, J = 5.7 Hz, CONH), 6.34 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.68 (2H, s, H2, H6), 7.46 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.5(C3’), 26.6 (C4’), 29.4 (C2’), 29.8 (C5’), 37.8(OSO2CH3), 39.9 (C1’), 56.5 (2xOCH3), 61.4 (OCH3), 70.5 (C6’), 105.4 (C2, C6), 120.8(Cα), 131.0 (C1), 139.8 (C4), 141.0 (Cβ), 154.8 (C3, C5), 166.4 (CONH)。
【0143】
一実施形態において、(E)-(8-(3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)オクチル)メタンスルホネート(11)の収率は95%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.27 - 1.47 (8H, m, H3’, H4’, H5’, H6’). 1.48 - 1.64 (2H, m, H2’), 1.66 - 1.79 (2H, m, H7’), 3.00 (3H, s, OSO2CH3), 3.37 (2H, dd, J = 13.1 6.7 Hz, H1’), 3.88 (3H, s, OCH3), 3.89 (3H, s, OCH3), 4.21 (2H, t, J = 6.5 Hz, H8’), 5.97 (1H, bs, CONH), 6.33 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.83 (1H, d, J = 8.3 Hz, H5), 7.03 (1H, s, H2), 7.07 (1H, d, J = 8.1 Hz, H6), 7.55 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.3 (C6’), 26.7 (C3’), 28.8 (C4’), 29.00(C5’), 29.05 (C2’), 29.6 (C7’), 37.4 (OSO2CH3), 39.7 (C1’), 55.87 (OCH3), 55.95 (OCH3), 70.2 (C8’), 109.7 (C2), 111.1 (C5), 118.9 (C6), 121.9(Cα), 128.0 (C1), 140.5 (Cβ), 149.1 (C4), 150.5 (C3), 166.2 (CONH)。
【0144】
一実施形態において、(E)-(8-(3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)オクチル)メタンスルホネート(12)の収率は96%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.29 - 1.45 (6H, m, H3’, H4’, H5’), 1.52 - 1.63 (4H, m, H2’, H6’), 1.65 - 1.80 (2H, m, H7’), 3.00 (3H, s, OSO2CH3), 3.38 (2H, td, J = 13.1, 7.0 Hz, H1’), 3.87 (3H, s, OCH3), 3.88 (6H, s, 2 x OCH
3), 4.23 (2H, t, J = 6.5 Hz, H8’), 5.64 (1H, t, J = 7.0 Hz, NH), 6.30 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.73 (2H, s, H2, H6), 7.53 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.3(C6’), 26.7 (C3’), 28.8 (C7’), 29.0 (C4’), 29.1(C5’), 29.6 (C2’), 37.4 (OSO2CH3), 39.7(C1’), 56.2 (2xOCH3), 61.0 (OCH3), 70.1 (C8’), 105.0 (C2, C6), 120.1 (Cα), 130.5 (C1), 139.6 (C4), 140.8 (Cβ), 153.4 (C3, C5), 165.8 (CONH)。
【0145】
一実施形態において、(E)-(10-(3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)デシル)メタンスルホネート(13)の収率は98%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.20 - 1.45 (12H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’, H8’), 1.49 - 1.64 (2H, m, H2’), 1.67 - 1.83 (2H, m, H9’), 3.01 (3H, s, OSO2CH3), 3.38 (2H, dd, J = 10.9, 6.3 Hz, H1’), 3.90 (6H, s, 2 x OCH3), 4.23 (2H, t, J = 6.6 Hz, H10’), 5.82 - 5.95 (1H, m, CONH), 6.32 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.85 (1H, d, J = 8.2 Hz, H5), 7.03 (1H, s, H2), 7.08 (1H, d, J = 8.2 Hz, H6), 7.57 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.4 (C8’), 27.0 (C3’), 29.0 (C5’), 29.2(C4’), 29.28 (C6’), 29.34 (C7’), 29.4 (C2’), 29.8 (C9’), 37.5(CH3SO3), 39.9 (C1’), 55.97 (OCH3), 56.05 (OCH3), 70.3 (C10’), 109.8 (C2), 111.2(C5), 118.8 (C6), 122.0 (Cα), 128.0 (C1), 140.8 (Cβ), 149.2 (C4), 150.6 (C3), 166.3 (CONH)。
【0146】
一実施形態において、(E)-(10-(3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)デシル)メタンスルホネート(14)の収率は96%であった。構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ =1.18 - 1.47 (12H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’, H8’), 1.51 - 1.64 (2H, m, H2’), 1.68 - 1.82 (2H, m, H9’), 3.00 (3H, s, OSO2CH3), 3.32 - 3.45 (2H, m, H1’), 3.87 (3H, s, OCH3)), 3.88 (6H, s, 2xOCH3), 4.22 (2H, t, J = 6.6 Hz, H10’), 5.84 (1H, bs, CONH), 6.34 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hα), 6.74 (2H, s, H2, H6), 7.54 (1H, d, J = 15.5 Hz, Hβ). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 25.5 (C8’), 27.0 (C3’), 29.0(C5’), 29.0(C4’), 29.2 (C6’), 29.3 (C7’), 29.35(C2’), 29.40 (C9’), 37.5 (OSO2CH3), 40.0(C1’), 56.3 (2xOCH3), 60.1 (OCH3),70.3(C10’), 105.2(C2, C6), 105.2(C6), 120.1 (Cα), 130.6 (C1), 139.8 (C4), 141.8 (Cβ), 153.6 (C3, C5), 166.1 (CONH)。
【0147】
一実施形態において、マイクロ波または古典的アプローチによるケイ皮酸ベースのトリフェニルホスホニウム塩(化合物15~20,
図1)を得るための合成手順を記載する。
【0148】
一実施形態において、トリフェニルホスホニウム塩15および16の製造は以下の通りに実施した: 化合物9または10(1mmol)をマイクロ波バイアル中でトリフェニルホスフィン(1mmol)と充分に混合し、アルゴン下で密封した。反応物を150℃で1時間30分間磁気攪拌しながらマイクロ波照射下に置いた。完了したら、反応混合物を室温で冷却し、粗生成物を溶出系としてジクロロメタン/メタノール[9:1の比(v/v)]を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的の化合物を含有する画分をまとめ、溶媒を蒸発させた。次いで、得られた残渣を最少量のジクロロメタンで溶解させ、過剰のエチルエーテルでトリチュレーションした。溶媒を静かに注ぎ、最後の固体残渣を真空下で乾燥させて、トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート塩を得た。
【0149】
一実施形態において、(E)-(6-(3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(15)の収率は73%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.38 (4H, m, H3’, H4’), 1.47 (4H, m, H2’, H5’), 3.17 (2H, d, J= 5.1 Hz, H1’), 3.29 (2H, m, H6’), 3.69 (3H, s, OCH3), 3.71 (3H, s, OCH3), 6.62 (1H, d, J = 8.3 Hz, H5), 6.82 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.85 (1H, dd, J = 1.9, 8.3 Hz, H6), 7.04 (1H, s, H2), 7.29 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.54-7.63 (15H, m, PPh3), 8.30 (1H, t, J = 5.3 Hz, CONH). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 21.2 (d, JCP = 51.8 Hz, C6’), 25.0 (C5’) 28.1(C4’), 28.9 (C3’), 38.2 (C2’), 39.0 (C1’), 55.4(2xOCH3), 109.2 (C2), 110.3 (C5), 117.5 (d, JCP= 85.9 Hz, C1’’), 120.3 (Cα), 121.3 (C6), 128,1 (C1), 130.0 (d, JCP = 12.5 Hz, C3’’, C5’’), 132.8 (d, JCP = 9.9 Hz, C2’’, C6’’), 134.5(d, JCP = 2.8 Hz, C4’’), 138.0 (Cβ), 148.4 (C4), 149.3 (C3), 166.4 (CONH). EM/IE m/z (%): 277 (25), 195 (33), 85 (85), 83 (100)。
【0150】
一実施形態において、(E)-(6-(3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(16)の収率は65%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, DMSO): δ = 1.33 (4H, m, H3’, H4’), 1.52 (4H, m, H2’, H5’), 3.15 (2H, m, H1’), 3.59 (2H, m, H6’), 3.69 (3H, s, OCH3), 3.82 (6H, s, 2xOCH3), 6.68 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.90 (2H, s, H2, H6), 7.34 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.76-7.84 (15H, m, PPh3), 8.18 (1H, t, J = 5.6 Hz, CONH). 13C (100 MHz, DMSO): δ = 20.2 (d, JCP = 49.7 Hz C6’), 21.8 (C5’), 25.6 (C4’), 28.8 (C3’), 29.6 (C2’), 38.5(C1’), 55.9 (2xOCH3), 60.2 (OCH3), 104.9(C2, C6), 118.6 (d, JCP = 85.7 Hz, C1’’), 121.9 (Cα), 130.3 (d, JCP = 12.4 Hz, C3’’, C5’’), 130.7 (C1), 133.6 (d, JCP= 10.1 Hz, C2’’, C6’’), 134.9 (d, JCP = 2.4 Hz, C4’’), 138.5(Cβ), 153.1 (C3, C5), 156.3 (C4), 165.0 (CONH). EM/IE m/z (%): 278 (24), 277 (48), 263 (34), 262 (100), 261 (22), 184 (22), 183 (75), 108 (38)。
【0151】
一実施形態において、トリフェニルホスホニウム塩17~20の製造は以下の通りに実施した: メタンスルホネート誘導体(11~14)(1mmol)を、トリフェニルホスフィン(1mmol)と共に、アルゴン雰囲気下、130℃で18時間加熱した。粗生成物を溶出系としてジクロロメタン/メタノール[9:1の比(v/v)]を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的(pretended)化合物を含有する画分をまとめ、溶媒を蒸発させた。次いで、得られた残渣を最少量のジクロロメタンで溶解させ、過剰のエチルエーテルでトリチュレーションした。溶媒を静かに注ぎ、最後の固体残渣を真空下で乾燥させて、トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート塩を得た。
【0152】
一実施形態において、(E)-(8-(3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(17)の収率は53%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.25 - 1.40 (6H, m, H3’, H4’, H5’), 1.49 - 1.60 (4H, m, H2’, H6’), 1.61 - 1.73 (2H, m, H7’), 2.68 (3H, s, OSO2CH3), 3.26 (2H, t, J = 7.1 Hz, H1’), 3.43 - 3.33 (2H, m, H8’), 3.85 (3H, s, OCH3), 3.86 (3H, s, OCH3), 6.48 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.96 (1H, d, J = 8.3 Hz, H5), 7.11 (1H, dd, J = 2.0, 8.3 Hz, H6), 7.15 (1H, d, J = 2.0 Hz, H2), 7.44 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.70 - 7.94 (16H, m, PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.6(d, JCP = 51.2 Hz, C8’), 23.5 (d, JCP = 4.4 Hz, C6’), 27.7 (C3’), 29.7 (C4’), 29.9 (C5’), 30.4(C2’), 31.4 (d, JCP = 16.0 Hz, C7’), 39.5 (OSO2CH3), 40.4 (C1’), 56.4 (OCH3), 56.5 (OCH3), 111.4 (C2), 112.8 (C5), 119.6 (C6), 120.0 (d, JCP= 85.8 Hz, C1’’), 123.2 (Cα), 129.4 (C1), 131.5 (d, JCP = 12.6 Hz, C3’’, C5’’), 134.8(d, JCP = 9.9 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 141.5 (Cβ), 150.7 (C4), 152.2 (C3), 168.9 (CONH). ME/ESI m/z (%): 581 (M++H- CH3SO3, 45), 580 (M+-CH3SO3, 54), 462 (100)。
【0153】
一実施形態において、(E)-(8-(3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(18)の収率は96%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, CDCl3): δ = 1.18 - 1.46 (6H, m, H3’, H4’, H5’), 1.51 - 1.66 (6H, m, H2’, H6’, H7’), 2.68 (3H, s, OSO2CH3), 3.33 (2H, dd, J = 12.3 6.3 Hz, H1’), 3.58 - 3.43 (2H, m, H8’), 3.83 (3H, s, OCH3), 3.85 (6H, s, 2 x OCH3), 6.85 (2H, s, H2, H6), 6.92 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 7.46 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hβ), 7.62 - 7.85 (15H, m, PPh3), 7.99 (1H, t, J = 5.2 Hz, CONH). 13C (100 MHz, CDCl3): δ = 21.9 (d, JCP= 50.2 Hz, C8’), 22.3 (d, JCP = 4.5 Hz, C6’), 25.9(C4’), 27.8 (C3’), 28.0 (C5’), 28.8 (C2’), 29.5 (d, JCP = 16.1 Hz, C7’), 39.3 (OSO2CH3), 39.7(C1’), 56.3 (2xOCH3), 60.9 (OCH3), 105.1(C2, C6), 118.5 (d, JCP = 85.8 Hz, C1’’), 122.4 (Cα), 130.5 (d, JCP = 12.5 Hz, C3’’, C5’’), 131.5 (C1), 133.5 (d, JCP= 9.9 Hz, C2’’, C6’’) , 135.1 (d, JCP = 2.9 Hz, C4’’), 138.8 (C4), 139.0 (Cβ), 153.2 (C3, C5), 166.7 (CONH). ME/ESI m/z (%): 611 (M++H-CH3SO3, 46) 610 (M+- CH3SO3, 100)。
【0154】
一実施形態において、(E)-(10-(3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(19)の収率は61%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.18 - 1.41 (10H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’), 1.46 - 1.59 (4H, m, H2’, H8’), 1.60 - 1.72 (2H, m, H9’), 2.68 (3H, s, OSO2CH3), 3.27 (2H, t, J = 7.1 Hz, H1’), 3.32 - 3.42 (2H, m, H10’), 3.85 (3H, s, OCH3), 3.86 (3H, s, OCH3), 6.48 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.95 (1H, d, J = 8.2 Hz, H5), 7.11 (1H, dd, J = 8.2, 1.9 Hz, H6), 7.14 (1H, d, J = 1.9 Hz, H2), 7.44 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.95 - 7.68 (16H, m,PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.6 (d, JCP= 51.1 Hz, C10’), 23.5 (d, JCP = 4.5 Hz, C8’), 27.9(C3’), 29.8 (C4’), 30.2 (C5’, C6’), 30.35 (C7’), 30.42(C2’), 31.5 (d, JCP = 16.1 Hz, C9’), 39.5 (OSO2CH3), 40.5 (C1’), 56.4 (OCH3), 56.5 (OCH3), 111.4 (C2), 112.8 (C5), 119.8 (C6), 120.0 (d, JCP= 85.8 Hz, C1’’), 123.2 (Cα), 129.4 (C1), 131.5 (d, JCP = 12.5 Hz, C3’’, C5’’), 134.8(d, JCP = 9.9 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 141.5 (Cβ), 150.7 (C4), 152.2 (C3), 168.9 (CONH). ME/ESI m/z (%): 610 (M++H- CH3SO3, 73) 609 (M+- CH3SO3, 100), 491 (33), 490 (67)。
【0155】
一実施形態において、(E)-(10-(3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(20)の収率は69%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.20 - 1.41 (10H, m, H3’, H4’, H5’, H6’, H7’), 1.48 - 1.59 (4H, m, H2’, H8’), 1.60 - 1.72 (2H, m, H9’), 2.68 (3H, s, OSO2CH3), 3.28 (2H, t, J = 7.1 Hz, H1’), 3.35 - 3.45 (2H, m, H10’), 3.78 (3H, s, OCH3), 3.86 (6H, s, 2xOCH3), 6.55 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.86 (2H, s, H2, H6), 7.43 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.70 - 7.96 (16H, m, PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.6 (d, JCP= 51.0 Hz, C10’), 23.5 (d, JCP = 4.4 Hz, C8’), 27.9(C3’), 29.8 (C4’), 30.2 (C5’, C6’), 30.37 (C7’), 30.42(C2’), 31.5 (d, JCP = 16.0 Hz, C9’), 39.5 (OSO2CH3), 40.5 (C1’), 56.7 (2xOCH3), 61.2 (OCH3), 106.3 (C2, C6), 120.0 (d, JCP = 86.3 Hz, C1’’), 121.5(Cα), 132.2 (C1), 131.5 (d, JCP = 12.5 Hz, C3’’, C5’’), 134.8(d, JCP = 10.0 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 140.7 (C4), 141.5 (Cβ), 154.8 (C3, C5), 168.6 (CONH). ME/ESI m/z (%): 640 (M++2- CH3SO3, 100), 639 (M++H- CH3SO3, 100), 418 (33)。
【0156】
一実施形態において、ミトコンドリア指向性抗酸化剤(AntiOxCIN
2~AntiOxCIN
7,
図1)の製造の一般合成手順を以下の通りに実施した: トリフェニルホスホニウム化合物(15~20)(1mmol)を無水ジクロロメタン(15ml)に溶解した。反応混合物をアルゴン下で撹拌し、-70℃より低い温度で冷却した。この溶液に、三臭化ホウ素(3mmol,ジクロロメタン中1M溶液)を加えた。添加が完了したら、反応物を-70℃で10分間維持し、次いで12時間、連続撹拌しながら室温まで温めた。水でBBr
3を破壊後、精製プロセスを簡単に実施した。水の除去後、得られた生成物をメタノールに溶解し、無水Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、溶媒を蒸発させた。
【0157】
一実施形態において、(E)-(6-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(AntiOxCIN2)の収率は30%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, DMSO): δ = 1.35 (4H, m, H3’, H4’), 1.50 (4H, m, H2’, H5’), 3.17 (2H, d, J= 2.8 Hz, H1’), 3.58 (2H, m, H6’), 6.34 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.75 (1H, d, J = 8.0 Hz, H5), 6.82 (1H, dd, J = 1.9, 8.0 Hz, H6), 6.94 (1H, d, J =1.9 Hz, H2), 7.20 (1H, d, J = 15,7 Hz, Hβ), 7.74 - 7.92 (15H, m, PPh3), 7.99 (1H, t, J = 5.6 Hz, CONH), 9.14 (1H, s, OH), 9.39 (1H, s, OH). 13C (100 MHz, DMSO): δ = 20.2(d, JCP = 50,2 Hz, C6’), 21.8 (C5’) 25.6 (C4’), 28.9(C3’), 29.6 (C2’), 38.4 (C1’), 113.8 (C2), 115.8(C5), 118.4 (d, JCP = 85,6 Hz, C1’’), 119.0 (Cα), 120.3(C6), 126.4 (C1), 130.3 (d, JCP = 12.4 Hz, C3’’, C5’’), 133.6(d, JCP = 10.1 Hz, C2’’, C6’’), 134.9 (d, JCP = 2.4 Hz, C4’’), 138.8 (Cβ), 145.5 (C4), 147.2 (C3), 165.3 (CONH). EM/IE m/z (%): 277 (25), 263 (33), 262 (100), 183 (74), 108 (34).
【0158】
一実施形態において、(E)-(8-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(AntiOxCIN3)の収率は55%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.23 - 1.41 (6H, m, H3’, H4’, H5’), 1.47 - 1.59 (4H, m, H2’, H6’), 1.60 - 1.73 (2H, m, H7’), 3.25 (2H, t, J = 7.0 Hz, H1’), 3.33 - 3.44 (2H, m, H8’), 6.36 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.75 (1H, d, J = 8.2 Hz, H5), 6.87 (1H, dd, J = 8.2, 2.0 Hz, H6), 6.99 (1H, d, J = 2.0 Hz, H2), 7.36 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.68 - 7.94 (16H, m, PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.7(d, JCP = 51.0 Hz, C8’), 22.5 (d, JCP = 4.4 Hz, C6’), 27.7 (C3’), 29.7 (C4’), 29.9 (C5’), 30.4(C2’), 31.4 (d, JCP = 16.0 Hz, C7’), 40.4 (C1’), 115.1(C2), 116.5 (C5), 118.6 (C6), 120.0 (d, JCP = 86.3 Hz, C1’’), 122.1 (Cα), 128.3 (C1), 131.6 (d, JCP = 12.6 Hz, C3’’, C5’’), 134.8(d, JCP = 9.9 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 142.1 (Cβ), 146.8 (C4), 148.8 (C3), 169.2 (CONH). ESI /ME m/z (%): 553 (M++H - CH3SO3, 73), 552 (M - CH3SO3, 100), 462 (10)。
【0159】
一実施形態において、(E)-(10-(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(AntiOxCIN6)の収率は80%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.20 - 1.40 (10H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’), 1.47 - 1.57 (4H,m, H2’, H8’), 1.59 - 1.71 (2H, m, H9’), 3.26 (2H, t, J = 7.1 Hz, H1’), 3.33 - 3.41 (2H, m, H10’), 6.36 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hα), 6.75 (1H, d, J = 8.2 Hz, H5), 6.88 (1H, dd, J = 8.4, 2.1 Hz, H6), 6.99 (1H, d, J = 2.1 Hz, H2), 7.36 (1H, d, J = 15.7 Hz, Hβ), 7.68 - 7.98 (16H, m, PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.7(d, JCP = 51.0 Hz, C10’), 23.5 (d, JCP = 4.4 Hz, C8’), 27.9 (C3’), 29.8 (C4’), 30.2 (C5’, C6’), 30.3(C7’), 30.4 (C2’), 31.5 (d, JCP = 16.1 Hz, C9’), 40.5(C1’), 115.0 (C2), 116.5 (C5), 119.8 (C6), 120.0 (d, JCP= 86.3 Hz, C1’’), 122.0 (Cα), 128.3 (C1), 131.5 (d, JCP = 12.6 Hz, C3’’, C5’’), 134.8(d, JCP = 10.0 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 142.0 (Cβ), 146.8 (C4), 148.7 (C3), 169.2 (CONH). ESI /ME m/z (%): 581 (M++H-CH3SO3, 85) 580 (M+-CH3SO3, 100), 490 (20)。
【0160】
一実施形態において、(E)-(6-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)プロパ-2-エンアミド)ヘキシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(AntiOxCIN4)の収率は50%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, DMSO): δ = 1.35 (4H, m, H3’, H4’), 1.50 (4H, m, H2’, H5), 2.72 (2H, m, H1’), 3.58 (2H, m, H6’) 6.28 (1H, d, J = 15,6 Hz, Hα), 6.47 (2H, s, H2, H6), 7.10 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hβ), 7.75 - 7.79 (15H, m, PPh3), 8.00 (1H, t, J = 5.6 Hz, CONH). 13C (100 MHz, DMSO): δ = 19.8 (d, JCP= 49.5 Hz, C6’), 21.3 (C5’), 25.2 (C4’), 26.2 (C3’), 28.5(C2’), 38.2 (C1’), 106.3 (C2, C6), 118.2 (d, JCP = 85.1 Hz, C1’’), 118.6 (Cα), 124.9 (C1), 129.8 (d, JCP = 12.4 Hz, C3’’, C5’’), 133.2(d, JCP = 10.1 Hz, C2’’, C6’’), 134.5 (d, JCP = 2.8 Hz, C4’’), 134.7 (C4), 138.8 (Cβ), 145.7 (C3, C5), 164.9 (CONH). EM/IE m/z (%): 277 (40), 263 (26), 262 (100), 184 (20), 183 (78), 108 (36), 82 (76), 81 (33), 80 (78), 79 (35), 58 (22)。
【0161】
一実施形態において、(E)-(8-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)アクリルアミド)オクチル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(AntiOxCIN5)の収率は88%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.25 - 1.42 (6H, m, H3’, H4’, H5’), 1.46 - 1.61 (4H, m, H2’, H6’), 1.59 - 1.74 (2H, m, H7’), 3.24 (2H, t, J = 7.0 Hz, H1’), 3.35 (3H, s, OSO2CH3), 3.43 - 3.32 (2H, m, H10’), 6.33 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hα), 6.56 (2H, s H2, H6), 7.28 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hβ), 7.70 - 7.92 (16H, m, PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.7 (d, JCP= 51.1 Hz, C8’), 23.5 (d, JCP = 4.4 Hz, C6’), 27.7(C3’), 29.7 (C4’), 29.9 (C5’), 30.3 (C2’), 31.4 (d, JCP = 16.1 Hz, C7’), 40.4 (C1’, CH3SO3), 108.3 (C2, C6), 118.7 (Cα), 120.0 (d, JCP = 86.3 Hz, C1’’), 127.4 (C1), 131.6 (d, JCP= 12.5 Hz, C3’’, C5’’), 134.8 (d, JCP = 9.9 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 126.8 (C4), 142.4 (Cβ), 147.2 (C3, C5), 169.2(CONH). ESI/ME m/z (%): 569 (M++H-CH3SO3, 43), 568 (M+-CH3SO3, 100)。
【0162】
一実施形態において、(E)-(10-(3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)アクリルアミド)デシル)トリフェニルホスホニウムメタンスルホネート(AntiOxCIN7)の収率は53%であった。化合物の構造的キャラクタリゼーションは、以下の通りであった:1H (400 MHz, MeOD): δ = 1.19 - 1.43 (10H, m, H3’, H4’, H5’,H6’, H7’), 1.49 - 1.60 (4H, m, H2’, H8’), 1.60 - 1.73 (2H, m, H9’), 3.28 (2H, t, J = 7.0 Hz, H1’), 3.34 - 3.43 (2H, m, H10’), 6.34 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hα), 6.58 (2H, s, H2, H6), 7.31 (1H, d, J = 15.6 Hz, Hβ), 7.71 - 7.95 (16H, m, PPh3, CONH). 13C (100 MHz, MeOD): δ = 22.7(d, JCP = 51.0 Hz, C10’), 23.5 (d, JCP = 4.3 Hz, C8’), 27.9 (C3’), 29.8 (C4’), 30.2 (C5’, C6’), 30.3(C7’), 30.4 (C2’), 31.5 (d, JCP = 15.9 Hz, C9’), 40.5(C1’), 108.2 (C2, C6), 118.7 (Cα), 120.0 (d, JCP = 86.3 Hz, C1’’), 127.3 (C1), 131.5 (d, JCP = 12.5 Hz, C3’’, C5’’), 134.8(d, JCP = 9.9 Hz, C2’’, C6’’), 136.3 (d, JCP = 3.0 Hz, C4’’), 136.7 (C4), 142.4 (Cβ), 147.1 (C3, C5), 169.2 (CONH). ESI /ME m/z (%): 597 (M++H-CH3SO3, 67), 596 (M+ -CH3SO3, 100) 418 (14)。
【0163】
AntiOxCINのラジカル捕捉活性は、DPPH・、ABTS・+、およびGO・ラジカルをベースとする総抗酸化能アッセイによって評価した。全てのこれらの方法は、抗酸化剤によるラジカル(DPPH・、ABTS・+、またはGO・)の失活に起因する吸光度減少の吸光光度測定を伴った。ラジカルの量を50%減少させるのに必要な最小抗酸化剤濃度として定義されるIC50で結果を表した。抗酸化アッセイは、Bio-Tech instrumentsのマルチプレートリーダー(Powerwave XS Microplate Reader)で実施した。
【0164】
一実施形態において、DPPH・ラジカル捕捉活性は、以下の通りに実施した:濃度を増加させた(0μM~500μMの範囲の)試験化合物の溶液をエタノール中で調製した。DPPH・エタノール溶液(6.85mM)も調製し、次いで515nmで0.72±0.02の吸光度に達するように希釈した。各化合物溶液(20μL)を180μLのDPPH・溶液に添加し、これを三回ずつ行い、515nmの吸光度を45分間毎分記録した。ラジカルの阻害のパーセントは、100%のラジカルに相当するブランク(20μLのエタノールおよび180μLのDPPH・溶液)と試験化合物溶液との間の比較に基づいた。IC50値を求めるために、用量反応曲線を作成した。データは、3つの独立した実験の平均±SEMである。
【0165】
一実施形態において、ABTS・+捕捉活性は、以下の通りに評価した:濃度を増加させた(10μM~500μMの範囲の)試験化合物のエタノール溶液を調製した。150mMの過硫酸カリウム水溶液(163μL)を10mLの7mMのABTS水溶液に添加し、続いて室温で16時間暗所で保存することによって、ABTS・+ラジカルカチオン溶液を得た(2.45mMの最終濃度)。次いで、溶液をエタノールで希釈して0.72±0.02の吸光度に到達させた。化合物(20μL)をABTS・+溶液(180μL)に添加することを三回ずつ行った後、15分間毎分、分光光度測定を行った。ラジカルの阻害のパーセントは、100%のラジカルに相当するブランク(20μLのエタノールおよび180μLのABTS・+溶液)と試験化合物溶液との間の比較に基づいた。IC50値を求めるために、用量反応曲線を作成した。データは、3つの独立した実験の平均±SEMである。
【0166】
一実施形態において、GO・捕捉活性は、以下の通りに評価した:5μM~75μMの濃度の試験化合物の溶液をエタノール中で調製した。5mMのGO・のエタノール溶液を調製し、428nmで1.00±0.02の吸光度に達するように希釈した。GO・溶液(180μL)への化合物溶液の添加(20μL)を3回ずつ行い、その後、暗所で、室温で30分間にわたって428nmで吸光度測定を行った。ラジカルの阻害のパーセントは、100%のラジカルに相当するブランク(20μLのエタノールおよび180μLのGO・溶液)と試験化合物溶液との間の比較に基づいた。IC50値を求めるために、用量反応曲線を作成した。データは、3つの独立した実験の平均±SEMである。
【0167】
一実施形態において、AntiOxCINのレドックス特性および親油特性を電気化学的技術により評価した。
【0168】
一実施形態において、コンピューター制御ポテンショスタットAutolab PGSTAT302N(オランダのユトレヒトのMetrohm Autolab)を用いて電気化学的分析データを得た。概して、サイクリックボルタンメトリー(CV)データは、50mVs-1の走査速度で取得した。差分パルスボルタンメトリー(DPV)の結果は、4mVのステップ電位、50mVのパルス振幅、および8mVs-1の走査速度で取得した。電気化学信号は、General Purpose Electrochemical System (GPES)バージョン4.9、ソフトウェアパッケージによってモニタリングした。分析信号に対するバックグラウンドノイズの寄与を最小限にするために、全ての電気化学実験は、室温でファラデーケージ内に配置された電気化学セル内で行った。
【0169】
一実施形態において、AntiOxCINのレドックス特性の評価プロセスは、以下の通りに実施した:各化合物のストック溶液(10mM)を、適当な量をエタノールに溶解することによって調製した。ボルタンメトリー検量線用溶液は、0.1mMの最終濃度で、電気化学セル内で調製した。pH7.4の支持電解質を、6.2mLの0.2Mリン酸水素二カリウムおよび43.8mLの0.2Mリン酸二水素カリウムを100mLに希釈することによって調製した。ボルタンメトリーデータは、作用電極としてのガラス状炭素電極(GCE,d=2mm)、白金線の対電極、および飽和Ag/AgCl参照電極からなる3電極系で取得した。一実施形態において、AntiOxCINの親油特性の評価は、以下の通りに実施した:電気化学セルは、2つのAg/AgCl参照電極および2つのPtの対電極を各相に一つ含むマイクロ液液界面(μITIES)のアレイを有する4つの電極系であった。4.0mLの水相で満たされたガラスシリンダーに微孔性膜をのせてフルオロシリコーンシーラント(Dow Corning 730)でシールし、そこにAntiOxCIN溶液のアリコートを加えた。次いで、膜をセルに含まれる有機相に浸した。有機相参照溶液(2mM BTPPACl+2mM NaCl水溶液)を機械で安定化した。支持電解質水溶液は、10mMのpH7.0のTris-HClバッファーであった。
【0170】
一実施形態において、AntiOxCIN鉄キレート特性を、Bio-Tech instrumentsのマルチプレートリーダー(Powerwave XS Microplate Reader)で実施する分光光度フェロジン法により評価した。
【0171】
一実施形態において、AntiOxCIN鉄キレート特性を、以下の通りに評価した:各ウェルに、酢酸アンモニウム(20μM)中の試験化合物(100μM)および硫酸アンモニウム鉄(II)の溶液を添加し、10分間インキュベートし、吸光度を562nmで読み取った。次いで、新たに調製したフェロジン溶液(5mM)を各ウェルに加えた(96μMの最終濃度)。37℃で10分間さらにインキュベートした後、[Fe(フェロジン)3]2+錯体の吸光度を562nmで測定した。試験化合物の代わりにDMSOを用いてブランクウェルを試験した。EDTAを基準として使用した。全化合物を100μMの最終濃度で試験した。試験化合物に因るあらゆる吸光度をなくすために、最終の値に対して最初の読み取りの吸光度を減算した。データは、3つの独立した実験の平均±SEMであり、Fe(II)キレート化の%(EDTA=100%)として表されている。
【0172】
一実施形態において、AntiOxCIN機能性ミトコンドリア毒性プロファイルの評価を、ラット肝臓ミトコンドリア(RLM)で行った。組織をホモジナイズし、続いて250mMのスクロース、10mMのHEPES(pH7.4)、1mMのEGTA、および0.1%の無脂肪ウシ血清アルブミンを含有する氷冷バッファー中で分画遠心することによってRLMを調製した。粗ミトコンドリア調製物を得た後、ペレットを2回洗浄し、洗浄バッファー(250mMのスクロースおよび10mMのHEPES,pH7.4)に再懸濁した。BSAを標準として使用するビウレットアッセイによりタンパク質濃度を測定した。
【0173】
一実施形態において、ミトコンドリアのAntiOxCINの取り込みを評価した。
【0174】
一実施形態において、エネルギーが与えられたRLMによるAntiOxCINのミトコンドリアによる取り込みを以下の通りに評価した:RLM(0.5mgタンパク質/mL)を1mLのKCl培地(120mM KCl,10mM HEPES,pH7.2、および1mM EGTA)でAntiOxCINと共に37℃で絶えず撹拌しながらインキュベートした。ロテノン(1.5μM)の存在下で、電極応答を較正するために、各AntiOxCINの1μMの添加を5回連続して行った。次いで、コハク酸塩(10mM)を添加してΔΨを発生させた。バリノマイシン(0.2μg/mL)をアッセイの終わりに添加して、ΔΨを消失させた。測定は、テトラフェニルホスホニウムカチオン(TPP+)の分布を測定するイオン選択電極および参照としてのAg/AgCl2電極を用いて行った。ミトコンドリア蓄積比率は、ミトコンドリア内容積が約0.5μL/mgタンパク質であると仮定した場合のミトコンドリア外培地からミトコンドリア内培地へのAntiOxCINの消失、およびTPP化合物のミトコンドリアによる取り込みに対する結合補正(binding correction)によって計算した。
【0175】
RLM脂質過酸化に対するAntiOxCINの結果を評価した。2つの異なる方法を使用した。
【0176】
一実施形態において、RLM脂質過酸化に対するAntiOxCINの効果を、チオバルビツール酸反応性種(TBARS)アッセイにより以下の通りに測定した:RLM(2mgタンパク質/ml)を、100mM KCl、pH7.6の10mM Tris-HClを含有する0.8mLの培地で、基質として5mMのグルタミン酸塩/2.5mMのリンゴ酸塩を補充し、37℃でインキュベートした。RLMを5分間各AntiOxCIN(5μM)と共にインキュベートし、次いで100μM FeSO4/500μM H2O2/5mM アスコルビン酸を添加することにより、ミトコンドリアを37℃で15分間酸化ストレス条件に曝した。酸化ストレスに曝した後、60μLのDMSO中2%(v/v)ブチル化ヒドロキシトルエンを添加し、次いで200μLの35%(v/v)過塩素酸および200μLの1%(w/v)チオバルビツール酸を添加した。次いで、サンプルを15分間100℃でインキュベートし、放冷し、上清をガラス管に移した。2mLのMiliQ水および2mLのブタン-1-オールを添加した後、サンプルを数秒間激しくボルテックスした。2つの相を分離させた。有機層のアリコート(250μL)の蛍光を、TBARSについて、プレートリーダー(λEx=515nm;λEm=553nm)で分析した。グルタミン酸塩/リンゴ酸塩でエネルギーが与えられたRLM中のTBARSバックグラウンド生成は、ごくわずかであることが分かった。データは、3つの独立した実験の平均±SEMであり、対照の%(対照=100%)として表されている。
【0177】
一実施形態において、RLM脂質過酸化に対するAntiOxCINの効果を第2の方法により以下の通りに測定した:グルタミン酸塩/リンゴ酸塩(5mM/2.5mM)を呼吸基質として用いる、100mM KCl、pH7.6の10mM Tris-HClからなる1mLの総体積の反応培地中の2mgのRLMの酸素消費を、37℃で、クラーク酸素電極でモニタリングした。RLMを各AntiOxCIN(5μM)と共に5分間インキュベートし、次いで脂質過酸化過程を10mM ADPおよび0.1mM FeSO4(ともに最終濃度)を添加することにより開始させた。インキュベーション培地中のO2の飽和濃度を37℃で217μMとした。プロオキシダントペア(1mM ADP/0.1mM FeSO4)によるRLM膜の過酸化に起因する酸素消費の時間依存性変化を記録した。トレースは、6つの独立した実験からの平均±SEMの記録である。ADP/Fe2+の添加の結果として生じる、より遅い酸素消費に関連する位相の遅れ時間(time lag-phase)を使用して、脂質過酸化を防止するためのAntiOxCINの有効性を測定した。データは、6つの独立した実験からの平均±SEMであり、対照の%(対照=100%)として表されている。
【0178】
一実施形態において、ミトコンドリアの呼吸に対するAntiOxCINの効果を評価した。
【0179】
一実施形態において、ミトコンドリアの呼吸に対するAntiOxCINの効果の評価を以下の通りに実施した:単離したRLMの呼吸を、1mLのサーモスタット式ウォータージャケット方式チャンバー中の好適なレコーダーに連結したクラークス型酸素電極で、磁気撹拌しながら37℃で、ポーラログラフィーにより評価した1。標準呼吸培地は、130mM スクロース、50mM KCl、5mM KH2PO4、5mM HEPES(pH7.3、)および10μM EGTAからなった。増加させた濃度(2.5~10μM)のAntiOxCINを、呼吸基質であるグルタミン酸塩/リンゴ酸塩(それぞれ10mMおよび5mM)またはコハク酸塩(5mM)ならびにRLM(1mg)を含む反応培地に添加し、5分間インキュベートさせ、その後アッセイした。状態2を、AntiOxCINを用いた5分のインキュベーション時間の間の呼吸とみなした。状態3の呼吸を誘発するために、125nmol ADP(グルタミン酸塩/リンゴ酸塩を使用)または75nmol ADP(コハク酸塩を使用)を添加した。状態4をADPリン酸化の終了後に測定した。その後のオリゴマイシン(2μg/ml)の添加は、ATP合成酵素を阻害し、オリゴマイシン阻害呼吸状態を引き起こした。最後に、1μM FCCPを添加して、非共役呼吸を誘発した。対照実験では、グルタミン酸塩-リンゴ酸塩またはコハク酸塩を呼吸基質として、それぞれ、RCRは6.42±0.57および4.90±0.66であった。同じ呼吸基質で、それぞれ、ADP/O指数は2.64±0.10および1.58±0.09であった。データは、7つの独立した実験の平均±SEMである。
【0180】
一実施形態において、膜貫通電位(ΔΨ)に対するAntiOxCINの効果を評価した。
【0181】
一実施形態において、ミトコンドリアの膜貫通電位(ΔΨ)に対するAntiOxCINの効果の評価を以下の通りに実施した:ミトコンドリア膜貫通電位(ΔΨ)をサフラニン(5μM)の蛍光変化の評価により推定し、495nmおよび586nmの励起波長および発光波長で動作し、5nmのスリット幅を有する分光蛍光計で記録した。増加させた濃度(2.5~10μM)のAntiOxCINを、呼吸基質であるグルタミン酸塩/リンゴ酸塩(それぞれ5mMおよび2.5mM)またはコハク酸塩(5mM)ならびにRLM(2mLの最終容積中0.5mg)を含む反応培地(200mM スクロース,1mM KH2PO4,10mM Tris(pH7.4)、および10μM EGTA)に添加し、5分間インキュベートさせ、その後25℃でアッセイを開始した。このアッセイでは、サフラニン(5μM)およびADP(25nmol)をそれぞれアッセイの開始および脱分極の誘発に使用した。次いで、1μM FCCPを全実験の終わりに添加して、ミトコンドリアを脱分極させた。200mM スクロース、1mM NaH2PO4、10mM Tris(pH7.4)、および10μM EGTAを含み、0.4μg バリノマイシンを補充されたK+フリーの反応培地でRLMをインキュベートしたときに得られた較正曲線を使用して、ΔΨを計算した。ΔΨにより誘発されたサフラニンの蛍光変化の拡大は、標準的培地およびK+フリーの培地で同様であることが分かった。「再分極」は、添加したADPの完全なリン酸化後の膜電位の回復に相当する。位相の遅れは、添加したADPのリン酸化に必要とされる時間を反映した。単離したRLMは、グルタミン酸塩/リンゴ酸塩またはコハク酸塩をそれぞれ使用したときに、ΔΨ≒226mVおよびΔΨ≒202mV(負の内側)を生じさせた。データは、5つの独立した実験の平均±SEMである。
【0182】
一実施形態において、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開孔に対するAntiOxCINの効果を評価した。
【0183】
一実施形態において、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開孔に対するAntiOxCINの効果を以下の通りに測定した:540nmでの分光測定によりモニタリングした、ミトコンドリア懸濁液から散乱された光の変化を測定することによって、ミトコンドリア膨化を推定した。増加させた濃度(2.5~10μM)のAntiOxCINを、反応培地(1.5μM ロテノンを補充した、200mM スクロース、1mM KH2PO4、10mM Tris(pH7.4)、5mM コハク酸塩、および10μM EGTA)にRLM(1mg)の存在下で添加し、5分間インキュベートさせ、その後アッセイした。毎日量を決めた適当な濃度のCa2+(15~50μM)を添加することによって実験を開始した。PTP減感剤(de-sensitizer)であるシクロスポリンA(CsA)を添加して、mPTP開孔を実証した。反応物を連続的に撹拌し、温度を37℃に維持した。データは、3つの独立した実験の平均±SEMであり、540nmのΔ吸光度として表されている。
【0184】
一実施形態において、AntiOxCIN4およびAntiOxCIN6の細胞毒性プロファイルをヒト肝細胞癌HepG2細胞で評価した。ピルビン酸ナトリウム(0.11g/L)、重炭酸ナトリウム(1.8g/L)、ならびに10%ウシ胎児血清(FBS)および1%の抗生物質ペニシリン-ストレプトマイシン100×溶液を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)(DMEM; D5648)から構成される高グルコース培地中でヒト肝細胞癌HepG2細胞を培養した。細胞を5%CO2の加湿型インキュベーター中で37℃で維持した。HepG2細胞を4×104細胞/mLの密度で播種し、処理前に24時間増殖させた。
【0185】
一実施形態において、細胞毒性スクリーニングを以下の通りに実施した:細胞を48ウェルプレート上に置き(2×104細胞/500μL)、次いで、それぞれ25μM~500μMまたは0.5μM~25μMの範囲のAntiOxCIN4およびAntiOxCIN6の濃度で48時間インキュベートした。インキュベーション後、スルホローダミンB(SRB)アッセイを細胞のタンパク質含有量の測定に基づく細胞密度測定に使用した。簡潔には、インキュベーション後、培地を除去し、ウェルをPBS(1×)でリンスした。100%メタノール中1%酢酸を-20℃で2時間以上添加することによって細胞を固定した。その後、固定液を捨て、プレートを37℃のオーブンで乾燥した。250マイクロリットルの1%酢酸溶液中0.5%SRBを添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、ウェルを水中1%酢酸で洗浄し、乾燥した。次いで、500μlのTris(pH10)を添加し、プレートを15分間撹拌した。最後に、各上清200μlを96ウェルプレートに移し、光学濃度を540nmで測定した。データは4つの独立した実験の平均±SEMであり、結果は、それぞれの時点で何の処理もしていない場合の細胞密度を表す対照(対照=100%)のパーセンテージとして表されている。
【0186】
一実施形態において、AntiOxCIN4およびAntiOxCIN6の細胞抗酸化性プロファイルをヒト肝細胞癌HepG2細胞で評価した。
【0187】
一実施形態において、細胞抗酸化性スクリーニングは、以下の通りに実施した: 細胞を48ウェルプレート上に置き(2×104細胞/500μL)、無毒性濃度のAntiOxCIN4(100μM)またはAntiOxCIN6(2.5μM)と共に1時間プレインキュベートした。インキュベーション時間後、250μM FeSO4または250μM H2O2の添加により、細胞を48時間酸化ストレス条件に曝した。インキュベーション時間の終わりに、前述のようにSRBアッセイを細胞密度測定に使用した。データは、4つの独立した実験の平均±SEMである。結果は、それぞれの時点で何の処理もしていない場合の細胞密度を表す対照(対照=100%)のパーセンテージとして表されている。オキシダントストレッサーは、対照と比較して、それぞれ30%および42%の細胞増殖の有意な阻害をもたらした。
【0188】
一実施形態において、ヒト肝細胞癌HepG2細胞においてAntiOxCIN4およびAntiOxCIN6により誘発される細胞の形態学的変化は、生体用落射蛍光顕微鏡を使用して評価した。
【0189】
一実施形態において、生体用落射蛍光顕微鏡によるクロマチン凝縮ならびにミトコンドリアの分極および分布を含む形態学的変化の検出は、以下の通りに実施した: ウェル当たり1つのガラス製カバーガラスを用いて細胞を6ウェルプレートに置き(8×104細胞/2mL)、次いで無毒性濃度のAntiOxCIN4またはAntiOxCIN6で48時間処理した。インキュベーション時間の終了の30分前に、ミトコンドリアネットワークをTMRM(100nM)で染色し、一方核をHoechst 33342(1μg/mL)で染色して、アポトーシスクロマチン凝縮を暗条件下でHBSS(NaCl 137mM,KCl 5.4mM,NaHCO3 4.2mM,Na2HPO4 0.3mM,KH2PO4 0.4mM,CaCl2 1.3mM,MgCl2 0.5mM,MgSO4 0.6mM,およびD-グルコース 5.6mM,pH7.4)中で37℃で検出した。ガラス製カバーガラスをウェルから取り出し、1滴の封入剤と共にスライドガラス上に置いた。細胞画像をZeiss LSM 510Meta顕微鏡を用いて取得し、ImageJ software 1.49vで分析した。イメージング手順の間、プローブを細胞と共に維持し、各ウェルから4つの画像視野を無作為に収集した。画像は3つの独立した実験を代表するものである。
【0190】
一実施形態において、全ての生物学的データを以下の通りに分析した: GraphPad Prism 5.0ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)で、全ての結果は、示された実験の数に対する平均±SEMとして表れている。データは、2つの平均の比較のためのスチューデントのt検定、ならびに一元配置分散分析および検定後のダネットの多重比較によって分析した。2つよりも多い群を1つの独立変数で比較するために最後の検定を使用した。有意性は、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.0005、****P<0.0001で認められた。
【0191】
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、またはルーチンの実験のみを用いて確かめることができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることは意図されておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載の通りである。
【0192】
特許請求の範囲の詳述において単数形の要素または特徴が使用されている場合、複数形も含まれ、具体的に除外されていなければ、その逆も同様である。例えば、用語「細胞(a cell)」または「前記細胞(the cell)」は、複数形「細胞(cells)」または「前記細胞(the cells)」も含み、その逆も同様である。特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、そうでないことが示されていない限り、または文脈から明らかでない限り、1以上を意味し得る。そうでないことが示されていない限り、または文脈から明らかでない限り、群の1つ、複数、または全ての要素が所与の製品または方法に存在する、使用される、または関連がある場合には、群の1つ以上の要素を含む、「または」当該要素間の請求項または説明が満たされると見なされる。本発明は、群のただ1つの要素が所与の製品または方法に存在する、使用される、または関連がある実施形態を含む。本発明は、群の1を超える要素、または全ての要素が所与の製品または方法に存在する、使用される、または関連がある実施形態も含む。
【0193】
さらに、本開示は、1つ以上の請求項からの、または明細書の関連部分からの1つ以上の制限、要素、条項、説明用語などが別の請求項に導入された全ての変形、組み合せ、および置換を包含することを理解されたい。例えば、他の請求項に従属する請求項を、同じ独立請求項に従属する他の請求項にある1つ以上の制限を含むように変更することができる。さらに、特許請求の範囲に組成物が記載されている場合、別段の定めがない限り、または不整合性もしくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されているいずれかの目的のために当該組成物を使用する方法が含まれ、本明細書に開示されている製造方法のいずれか、または当該技術分野で公知の他の方法に従って当該組成物を製造する方法が含まれることを理解されたい。
【0194】
範囲が与えられている場合、端点も含まれる。さらに、別段の定めがない限り、またはそうでないことが文脈および/もしくは当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表されている値は、本発明の異なる実施形態において記載されている範囲内の、文脈上明らかに別段の定めがない限り、範囲の下限の単位の10分の1までの任意の特定の値をとることができる。別段の定めがない限り、またはそうでないことが文脈および/もしくは当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表されている値は、所与の範囲内の任意の部分範囲をとることができ、当該部分範囲の端点は、当該範囲の下限の単位の10分の1と同じ正確度で表される。
【0195】
また、本発明の任意の特定の実施形態は、任意の1つ以上の請求項から明示的に除外され得ることを理解されたい。範囲が与えられている場合、当該範囲内の任意の値は、任意の1つ以上の請求項から明示的に除外され得る。本発明の組成物および/または方法の任意の実施形態、要素、特徴、用途、または態様は、任意の1つ以上の請求項から除外され得る。簡潔にするため、1つ以上の要素、特徴、目的、または態様が除外されている実施形態の全ては、本明細書に明示的に記載されてはいない。
【0196】
上記の実施形態は、組み合わせることができる。
【0197】
以下の特許請求の範囲は、本開示の具体的な実施形態をさらに提示する。
【0198】
本文書に記載されている全ての参考文献は、あたかもそれぞれの参考文献が個々に参照により援用されているかのように、参照によりその全体で本明細書に援用される。