(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
A61M 60/829 20210101AFI20220726BHJP
A61M 60/122 20210101ALI20220726BHJP
【FI】
A61M60/829
A61M60/122
(21)【出願番号】P 2019555015
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2018058941
(87)【国際公開番号】W WO2018185330
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ダシェブスキー マキシム
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/118781(WO,A2)
【文献】国際公開第89/05668(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/124882(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型心臓補助ポンプ(4)用の外部駆動ユニット(7)であって、
モータ
筐体(51)と、
経皮駆動シャフト(3)と、
心臓補助ポンプ(4)を駆動するためのモータ(35)であって、前記駆動シャフト(3)を介して前記心臓補助ポンプ(4)に接続可能であり、かつ前記モータ
筐体(51)の内側に配置される、モータ(35)と、
前記駆動シャフト(3)を取り囲むカテーテル(2)と、
前記カテーテル(2)の管腔の中、又は前記カテーテル(2)と前記駆動シャフト(3)との間の空間(41)の中にパージ媒体を注入するためのパージライン(53)と、
を含み、
前記パージライン(53)は前記モータ筐体(51)の外面、及び/又は前記カテーテル(2)の近位部分(52)の外面と熱接触(54、55)
し、
前記パージライン(53)は前記パージ媒体の流れを、前記パージライン(53)が前記モータ筐体(51)の前記外面と、及び/又は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)する領域において近位方向に誘導し、その後、前記パージ媒体を前記カテーテル(2)の前記管腔の中、又は前記カテーテル(2)と前記駆動シャフト(3)との間の前記空間(41)の中に注入するように構成されることを特徴とする、外部駆動ユニット(7)。
【請求項2】
前記モータ(35)はステータ(37)と前記駆動シャフト(3)に接続された回転可能に取り付けられたロータ(36)とを含み、流体ギャップ(43)は前記ロータ(36)と前記ステータ(37)との間に形成され、前記流体ギャップ(43)は前記パージ媒体を前記流体ギャップ(43)の中に注入するためのパージ開口部(42)と流体接続し、前記パージライン(53)は前記パージ開口部(42)に接続され、又は接続可能であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項3】
前記パージライン(53)及び前記流体ギャップ(43)は前記パージ媒体を誘導するように構成され、その結果、前記パージ媒体は最初に前記モータ筐体(51)の前記外面と、及び/又は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)し、その後、前記ロータ(36)と前記ステータ(37)との間の前記流体ギャップ(43)の中に注入され、その後、前記カテーテル(2)の前記管腔の中、又は前記カテーテル(2)と前記駆動シャフト(3)との間の前記空間(41)の中に注入されることを特徴とする、請求項2に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項4】
埋め込み型心臓補助ポンプ(4)用の外部駆動ユニット(7)であって、
モータ筐体(51)と、
経皮駆動シャフト(3)と、
心臓補助ポンプ(4)を駆動するためのモータ(35)であって、前記駆動シャフト(3)を介して前記心臓補助ポンプ(4)に接続可能であり、かつ前記モータ筐体(51)の内側に配置される、モータ(35)と、
前記駆動シャフト(3)を取り囲むカテーテル(2)と、
前記カテーテル(2)の管腔の中、又は前記カテーテル(2)と前記駆動シャフト(3)との間の空間(41)の中にパージ媒体を注入するためのパージライン(53)と、
を含み、
前記パージライン(53)は前記モータ筐体(51)の外面、及び/又は前記カテーテル(2)の近位部分(52)の外面と熱接触(54、55)し、
前記モータ(35)はステータ(37)と前記駆動シャフト(3)に接続された回転可能に取り付けられたロータ(36)とを含み、流体ギャップ(43)は前記ロータ(36)と前記ステータ(37)との間に形成され、前記流体ギャップ(43)は前記パージ媒体を前記流体ギャップ(43)の中に注入するためのパージ開口部(42)と流体接続し、前記パージライン(53)は前記パージ開口部(42)に接続され、又は接続可能であり、
前記パージライン(53)及び前記流体ギャップ(43)は前記パージ媒体を誘導するように構成され、その結果、前記パージ媒体は最初に前記モータ筐体(51)の前記外面と、及び/又は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)し、その後、前記ロータ(36)と前記ステータ(37)との間の前記流体ギャップ(43)の中に注入され、その後、前記カテーテル(2)の前記管腔の中、又は前記カテーテル(2)と前記駆動シャフト(3)との間の前記空間(41)の中に注入されることを特徴とする駆動ユニット(7)。
【請求項5】
前記パージライン(53)は前記パージ媒体を誘導するように構成され、その結果、前記パージ媒体は最初に前記モータ筐体(51)の前記外面と、及び/又は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)し、その後、前記カテーテル(2)の前記管腔の中、又は前記カテーテル(2)と前記駆動シャフト(3)との間の前記空間(41)の中に注入されることを特徴とする、請求項1
~4のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項6】
前記パージライン(53)は前記モータ筐体(51)の前記外面及び前記カテーテルの前記近位部分(52)の前記外面の両方と熱接触(54、55)していることを特徴とする、請求項1
~5のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項7】
前記パージラインは完全に体外であることを特徴とする、請求項
6に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項8】
前記パージライン(53)は前記パージ媒体を誘導するように構成され、その結果、前記パージ媒体は最初に前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)の前記外面と熱接触(54)し、その後、前記モータ筐体(51)の前記外面と熱接触(55)することを特徴とする、請求項
6又は
7に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項9】
(現請求項9)
前記パージライン(53)は前記モータ筐体(51)及び/又は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)を、前記パージライン(53)が前記モータ筐体(51)の前記外面と、及び/又は前記カテーテル(2)の近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)する領域において包囲することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項10】
前記パージライン(53)は前記モータ筐体(51)及び/又は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)を、前記パージライン(53)が前記モータ筐体(51)の前記外面と、及び/又は前記カテーテル(2)の
前記近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)する前記領域において螺旋状に周回することを特徴とする、請求項9に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項11】
前記パージライン(53)は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)を、前記パージライン(53)が前記カテーテル(2)の近位部分(52)の前記外面と熱接触(55)する前記領域において螺旋状に周回することを特徴とする、請求項10に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項12】
前記駆動ユニット(7)の筐体(17)によって特徴付けられ、前記モータ筐体(51)及び/又は前記カテーテルの前記近位部分(52)が前記駆動ユニット(7)の前記筐体(17)内に配置される、請求項1~11のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項13】
前記パージライン(53)の内面と前記モータ筐体(51)の内面との間の全体的な熱コンダクタンスは、前記パージライン(53)の前記内面と前記駆動ユニット(7)の前記筐体(17)の内面との間の全体的な熱コンダクタンスの少なくとも5
倍になり得ることを特徴とする、請求
項12に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項14】
前記パージライン(53)の内面と前記モータ筐体(51)の内面との間の全体的な熱コンダクタンスは、前記パージライン(53)の前記内面と前記駆動ユニット(7)の前記筐体(17)の内面との間の全体的な熱コンダクタンスの少なくとも10倍になり得ることを特徴とする、請求項12に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項15】
前記パージライン(53)の一部分は前記モータ筐体(51)と前記駆動ユニット(7)の前記筐体(17)との間に延びることを特徴とする、請求項1
2~14のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項16】
前記パージライン(53)の一部分は前記カテーテル(2)の前記近位部分(52)と前記駆動ユニット(7)の前記筐体(17)との間に延びることを特徴とする、請求項12~1
5のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項17】
前記パージライン(53)と前記駆動ユニット(7)の前記筐体(17)との間に配置された断熱材によって特徴付けられる、請求項12~1
6のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項18】
患者の皮膚に接触するように構成された接触面を備えるヒートスプレッダ(19)によって特徴付けられ、前記接触面は前記モータ(35)と熱伝導方法で接続され、又は接続可能であり、前記モータ(35)によって発生された熱を前記患者の組織に伝達する、請求項1~1
7のいずれか1項に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項19】
前記ヒートスプレッダ(19)は少なくとも領域において可撓性であることを特徴とする、請求項1
8に記載の駆動ユニット(7)。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか1項に記載の前記駆動ユニット(7)及び前記埋め込み型心臓補助ポンプ(4)を含む、心臓補助装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療技術の分野に関する。本出願は、埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニット、及び駆動ユニットと埋め込み型心臓補助ポンプとを備える心臓補助装置に関する。本出願は、譲受人の2017年4月7日に出願された米国特許出願公開第15/482,513号「Methods and Systems for an External Drive Unit for an Implantable Heart Assist Pump」に関連し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
患者の心臓機能を支援するための心臓補助装置は、技術水準から知られている。このような装置は、埋め込み型血液ポンプを含んでもよく、それは最小侵襲性手段によって心臓の心室に挿入され得る。更に、外部(又は体外)モータは血液ポンプを駆動するために供給されてもよい。モータは、経皮カテーテルの内側に回転可能に取り付けられた経皮かつ可撓性駆動シャフトを介して血液ポンプに接続されてもよい。装置の埋め込み型構成要素は、患者の鼠径部の穿刺部位を介して挿入され得る。関連する装置は、例えば特許文献1に記載される。
【0003】
このような心臓補助装置の場合、外部モータによって放散される熱に関連して問題が生じることがある。用途によっては、モータは患者の体の近く、特に患者の脚部の近くに配置される場合があり、その間、血液ポンプは動作中である。モータによって発生された熱が効果的に除去されないと、モータは過熱し、モータの誤動作を引き起こす場合がある。加えて、モータの過熱は、モータの熱い筐体が患者の皮膚に接触したとき、特に患者が、例えば麻酔薬のために熱に気付くことができず、適切な反応ができない場合に、患者への健康リスクとなる。人間の皮膚による安全な熱吸収量は、超音波及び磁気共鳴画像プローブによって発生された熱のコンテキストで研究されている。例えば、非特許文献1では、安全な熱吸収レベルを決定する方法が説明される。
【0004】
心臓補助装置のモータが過熱するのを防ぐために、このようなモータの筐体に多数の冷却フィンを配設し、モータから熱を効果的に引き出して周囲空気に放散させることができる。しかし、空気に伝達可能な熱の量は、モータが密閉環境で動作される場合、例えば、患者が休んでいる羽毛布団の下、又は手術中の外科用ドレープの下などでは、十分でない場合がある。更に、冷却フィン付きの筐体の表面は洗浄が困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「Human Skin Temperature Response to Absorbed Thermal Power」(SPIE Proceedings-The International Society for Optical Engineering 3037:129-134、1997年3月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の技術水準を考慮して、本出願の目的は、埋め込み型心臓補助ポンプ用の改善された外部駆動ユニット及び改善された心臓補助装置を提供することである。特に、本出願の目的は、改善された熱管理を備える駆動ユニット及び心臓補助装置を提供することである。更に、本出願の目的は、心臓補助装置の安全かつ効率的な動作を可能にする駆動ユニットを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、独立請求項1の機能を備えた外部駆動ユニットによって達成される。必要に応じた更なる機能及び更なる発展は、従属請求項及び添付図面と併せた詳細な説明から明らかになるであろう。
【0009】
埋め込み型心臓補助ポンプ用の提案された外部、すなわち体外の駆動ユニットは、モータ筐体、経皮駆動シャフト、及び心臓補助ポンプを駆動するモータを含む。モータは駆動シャフトを介して心臓補助ポンプに接続可能であり、モータはモータ筐体の内側に配置される。駆動ユニットは、駆動シャフトを取り囲むカテーテルと、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中にパージ媒体を注入するためのパージラインとを更に含む。パージ媒体は、溶液、例えばグルコース溶液又は生理食塩水であってもよい。パージラインは、モータ筐体の外面と、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触する。熱接触により、熱は、近位部分のカテーテルの外面から、及び/又はモータ筐体の外面からパージ媒体に伝達され得る。
【0010】
カテーテルは通常、患者の体内に配置することを意図した部分と、患者の体外に配置することを意図した別の部分を含む。カテーテルの近位部分は、通常、患者の体外に配置することを意図する。パージ媒体をカテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入することで、血液が管腔の中、又は空間の中に浸入することを防止し、かつ駆動シャフトの回転性を損なうことを防ぐ。
【0011】
ほとんどの実施形態では、パージラインはパージ媒体を誘導するように構成され、その結果、パージ媒体はモータ筐体の外面、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と最初に熱接触し、パージ媒体はその後、カテーテルの管腔の中に、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入される。以下に説明するように、パージ媒体は、モータのステータとロータとの間の流体ギャップの中に追加的に注入され、次にカテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入され、その後、モータ筐体の外面、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触する。心臓補助装置及び/又は駆動ユニットは、流体コンベヤ、例えばポンプを含んでもよく、それは上記及び/又は以下に記載される任意の方法でパージ媒体の流れを可能にするように構成される。
【0012】
駆動ユニットを含む心臓補助装置の動作中、モータは熱放散のため加熱する場合がある。更に、いくつかの実施形態では、モータの近くに配置され得るカテーテルの近位部分もまた、動作中に加熱される場合がある。特に、動作中、熱は、モータから、カテーテルの近位部分と、筐体で覆われていない可能性がありかつ患者の皮膚に接触する可能性のあるカテーテルの近位部分に隣接する部分とに、伝達される場合がある。モータの外面と及び/又はカテーテルの近位部分の外面とのパージラインの熱接触により、熱はモータ及び/又はカテーテルの近位部分からパージラインのパージ媒体に伝達され得る。それにより、モータ及び/又はカテーテルの近位部分は冷却され得て、駆動ユニットの過熱のリスクが低減され得る。特に、駆動ユニットが毛布の下に配置され、大気によって十分に冷却されない場合、及び駆動ユニットが患者の体に接触して、患者の組織に火傷を負わせるリスクが増加する場合に、提案された駆動ユニットは、心臓補助装置の動作の安全性を改善する。
【0013】
技術水準と比べて、提案された駆動ユニットは、パージラインが2つの目的を同時に果たすために追加の部品を必要としない。第1に、パージラインはパージ媒体を患者の体内に導き、血液がカテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に浸入するのを防ぐ。第2に、本発明によるパージラインは、駆動ユニットの熱管理を改善する。加えて、パージ媒体は、モータ及び/又はカテーテルの近位部分との熱接触によって予熱されてもよい。それにより、パージ媒体の粘度を低下させて、駆動シャフトの回転可能性を改善し得る。駆動シャフトの回転可能性の改善は、パージ媒体が最初にモータ筐体の外面と、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触するために、かつ、その後で、パージ媒体がカテーテルの管腔の中に、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に、そして最終的には患者に注入されるために達成され得る。更に、パージ媒体は、モータ筐体又はカテーテルの近位部分と熱接触した後にのみ患者に浸入するため、熱接触するときのパージ媒体の初期温度は比較的低く、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分から効率的な熱伝達を可能にする。
【0014】
心臓補助装置の動作中、モータ筐体の外面は、通常、カテーテルの近位部分の外面よりも温かい。いくつかの実施形態では、パージラインは、モータ筐体の外面とカテーテルの近位部分の外面の両方と熱接触する。これらの実施形態では、駆動ユニットを冷却し、パージ媒体を予熱することが特に効率的であり得る。パージラインは、パージ媒体を誘導するように構成され得て、その結果、パージ媒体は最初にカテーテルの近位部分の外面と熱接触し、その後、モータ筐体の外面と熱接触するようにされ、パージ媒体の段階的な予熱ができ、かつカテーテルの近位部分の効率的な冷却を可能にする。次に、パージ媒体は、いくつかの実施形態において、以下で説明するように、モータの流体ギャップの中に注入され得る。その後、パージ媒体は、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入され得る。
【0015】
カテーテルは、1つ以上の管腔を含んでもよい。いくつかの実施形態では、心臓補助装置は、パージ媒体が最初に遠位方向にカテーテルの管腔のうちの1つを介して患者の体内に流入し、次にカテーテルの別の管腔を介して患者の体外に戻るように構成され得る。ほとんどの実施形態では、カテーテルの管腔又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間は、カテーテルの近位部分の中に延在する。特に、管腔又は空間は、カテーテルの近位部分の全長にわたって延在してもよく、いくつかの実施形態ではカテーテルの全長を越えて延在してもよい。この実施形態では、熱は、カテーテルの近位部分又は近位部分に隣接する部分に、管腔又は空間内のパージ媒体を介して伝達され得る。したがって、カテーテルの近位部分をパージラインによって冷却することは、この実施形態では特に有益であり得る。
【0016】
ほとんどの実施形態では、パージラインはカテーテルの一部分を形成しない。特に、パージラインは、ほとんどの実施形態においてカテーテルの管腔によって形成されない。パージラインは、カテーテルの外壁の外側に配置される別ラインであってもよい。
【0017】
パージラインは、典型的には完全に体外であるため、埋め込まれた部分を含まない。パージラインは、典型的にはカテーテルの空間又は管腔と流体接続するように配置される。駆動ユニットは、典型的には、空間又は管腔と流体接続するパージ開口部を含む。パージラインはパージ開口部に取り付けられ得て、パージラインは空間又は管腔と流体接続する。典型的には、心臓補助装置の動作中、パージ媒体は空間又は管腔内で遠位方向に流れる。
【0018】
モータは電気モータであってもよい。いくつかの実施形態では、モータは、ステータとロータを含む。ロータは駆動シャフトに接続されてもよい。ロータは、通常、磁石、特に永久磁石を含む。ステータは、多数の巻線を含んでもよい。ステータは、通常、ロータを取り囲み、磁気ギャップがロータの磁石とステータの巻線との間に形成される。ロータは回転可能に取り付けられてもよい。流体ギャップは、ロータとステータとの間に形成されてもよい。流体ギャップは、パージ開口部と流体接続され得て、パージ媒体を流体ギャップに注入する。パージラインは、パージ開口部に接続され得るか、接続可能であり得る。パージ媒体は、流体ギャップの中、及びカテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入されてもよい。モータの流体ギャップは通常、カテーテルの管腔、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間と流体接続する。典型的な実施形態では、パージライン及び流体ギャップは、パージ媒体を誘導するように構成され、その結果、パージ媒体は最初にモータ筐体の外面、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触し、その後、ロータとステータとの間の流体ギャップの中に注入され、その後、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入される。
【0019】
パージされていないモータが使用されるとき、モータをカテーテルと駆動シャフトとの間の空間から分離して、空気が空間の中に入り、最終的に患者に入るのを回避するためにシールが必要な場合がある。パージされたモータの使用では、摩擦を発生し、かつカテーテルと駆動シャフトとの間の空間からモータを分離する複雑なシールが不要になるという利点がある。したがって、モータはより簡単に製造でき、摩擦損失を低減でき、その結果、モータをより効率的に動作させ得る。更に、シールは通常、破損し易く、シールが配設されない場合、心臓補助装置の故障のリスクが低減され得る。
【0020】
モータがパージ媒体を用いてパージされると、モータは効率的に冷却され得る。更に、パージ媒体は、カテーテルの近位部分及び/又はモータ筐体との熱接触により予熱されるため、パージ媒体はモータの流体ギャップに入るとき、既に粘度が低下している。したがって、駆動ユニットは、モータの流体ギャップ及び/又は軸受の摩擦損失を低減し、モータの効率を高める。
【0021】
いくつかの実施形態では、パージラインは、最初にパージ媒体の流れをカテーテルの近位部分の外面との熱接触の領域に誘導し、次にモータ筐体の外面との熱接触の領域に誘導し、次にロータとステータとの間の流体ギャップの中に、そして次にカテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中、及び/又はモータの流体ギャップの中(以下に説明)に誘導するように構成される。驚くべきことに、この実施形態による駆動ユニットが使用される場合、埋め込み型心臓補助ポンプを使用して特定の量の血液を輸送するのに必要なモータ電流、すなわちステータの巻線に印加される電流は、パージ媒体の流量とは無関係であることが見出された。対照的に、パージラインと、モータ筐体の外面及び/又はカテーテルの近位部分の外面との間の熱接触がない場合、モータ電流はパージ流量の増加と共に増加し、これはおそらく、流体ギャップ内のパージ媒体が流量の増加のために冷たくなり、これにより粘度が増し、モータの摩擦損失が増加するためである。次に、本発明によるパージ媒体の予熱は、異なるパージ流量に対して一定のモータ電流をもたらす。それにより、モータ電流は、心臓補助装置の制御パラメータとして有益に使用することができ、これはモータ電流に対するパージ流量の望ましくない影響を考慮する必要がないためである。したがって、心臓補助装置の電子制御は大幅に簡素化され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、パージラインは、パージ媒体の流れを、パージラインがモータ筐体の外面と、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触する領域で近位方向に誘導し、その後、パージ媒体をカテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入するように構成される。このような向流配置の熱伝達は特に効率的である。この配置では、パージ媒体は、カテーテルの管腔又はカテーテルと駆動ラインとの間の空間において(遠位方向の流れ)と比べて、カテーテルの近位部分の外面との熱接触の領域において反対方向(近位方向の流れ)に流れ、及び/又は、パージ媒体は、ステータとロータとの間の流体ギャップにおいて(遠位方向の流れ)と比べて、モータ筐体の外面との熱接触の領域において反対方向(近位方向の流れ)に流れる。特に、流体コンベヤは、パージ媒体が流体ギャップ内で遠位側に流れるように構成されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、パージラインは、パージラインがモータ筐体の外面と、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触している領域で、少なくとも部分的にモータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分を取り囲む。モータ筐体とカテーテルの近位部分を取り囲むことにより、熱伝達の領域が増加し、したがって、熱伝達の効率が向上され得る。通常、パージラインは、モータ筐体と、及び/又はカテーテルの近位部分と多数の側面から、例えば少なくとも180°の角度範囲にわたって熱接触する。特に、パージラインは、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分を全角度範囲にわたって完全に取り囲み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、パージラインは可撓性である。パージラインは、管状の形状を有してもよく、更に丸い断面を有してもよい。パージラインの外径は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm及び/又は最大5mm、好ましくは最大3mmであり得る。パージラインの内径は、少なくとも0.3mm、好ましくは少なくとも0.7mm、及び/又は最大で2mm、好ましくは最大で1.5mmであり得る。パージラインは、生体適合性材料を含むか、又は生体適合性材料で作られてもよい。いくつかの実施形態では、パージラインは、PU、PEEKなどのプラスチック材料、又はステンレス鋼などの金属を含むか、それらで作られる。パージラインの材料の高い熱伝導率は、パージ媒体とモータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分との間の熱接触を改善し得る。
【0025】
パージラインは、パージラインがモータ筐体の外面と、及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触する領域において、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分を螺旋状に周回し得る。パージラインが明確な螺旋状に延びる場合、パージラインの内側のアンダーカット領域は防止され得て、パージラインがパージ媒体で満たされたときにエアポケットがパージラインに残るリスクが低減される。例えば、この目的のために、パージラインは、パージ媒体用の1つの直列流路のみを含み、平行流路を含まなくてもよい。これにより、パージラインの確実な脱気が可能になる。例えば、パージラインは、モータ筐体の周り、及び/又はカテーテルの近位部分の周りに巻き付けられてもよい。この実施形態では、駆動ユニットは製造が容易である。更に、駆動ユニットは、パージラインの適切な巻数を選択するのみで、所望の熱伝達効率で容易に製造でき、それにより、所望の熱伝達領域を作ることができる。いくつかの実施形態では、パージラインは、カテーテルの近位部分の周りに少なくとも4巻き、好ましくは少なくとも8巻き、及び/又はモータ筐体の周りに少なくとも3巻き、好ましくは少なくとも5巻きを形成する。
【0026】
パージラインは、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分に取り付けられてもよい。ほとんどの実施形態では、パージラインは、モータ筐体の、及び/又はカテーテルの近位部分の外面に熱接触の領域で接し、その結果、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分はパージラインに直接接触する。しかしながら、別の実施形態では、熱伝導要素は、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分とパージラインとの間に配置されてもよい。次いで、パージライン及びモータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分は、熱伝導要素に直接接触してもよい。このような配置は、確実な熱接触を可能にする。いくつかの実施形態では、パージラインは少なくとも部分的にモータ筐体に組み込まれる。例えば、パージラインは、モータ筐体の内側に埋め込まれた管腔によって部分的に形成されてもよい。パージラインの内面とモータ筐体の内面との間の全体的な熱コンダクタンス(W/K)は、パージラインの内面と駆動ユニットの筐体の内面との間の全体的な熱コンダクタンスの少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍であってもよい。更に、パージラインの内面とモータの内部、特にモータの巻線との間の全体的な熱コンダクタンスは、少なくともパージラインの内面とモータ筐体の内面との間の全体的な熱コンダクタンスであってもよい。このような全体的な熱コンダクタンスは、パージラインの内面とモータ筐体の内面との間に配置された材料の一連の熱コンダクタンス、ならびに断面積、厚さ、及び熱接触コンダクタンスを考慮する。パージラインと駆動ユニットの筐体との間の熱コンダクタンスが比較的高いため、モータによって発生された熱は、例えば空気の対流によって駆動ユニットの筐体内に分散されてもよく、駆動ユニットの筐体の局所的なホットスポットは回避され得る。更に、モータの内部はモータ筐体と熱接触にあり、モータによって発生された熱はモータ筐体の外面に伝達される。モータの流体ギャップからモータ筐体の外面への熱の十分な伝達を達成するために、巻線を鋳造材料、例えばエポキシ樹脂に鋳込まれてもよく、流体ギャップとモータ筐体の外面との間の空気の空間の発生を防ぐ。いくつかの実施形態では、鋳造材料は、巻線とモータ筐体を直接一緒に結合する。
【0027】
いくつかの実施形態では、駆動ユニットは、ヒートスプレッダを更に備える。ヒートスプレッダは、患者の皮膚に接触し、及び/又は直接接触し、及び/又は平らに置かれるように構成された接触面を備えてもよい。接触面は、熱伝導方法でモータに接続され、又は接続可能であり、モータによって発生された熱を患者の組織に伝達する。
【0028】
ヒートスプレッダを含む駆動ユニットは、米国特許出願公開第2016/0213827号で議論されるように、心臓補助ポンプのモータからの効率的な熱除去が患者から離れて生じなければならないという技術水準の一般的な信念に反する解決策を提供する。代わりに、提案された駆動ユニットの効率的な熱除去は、少なくとも部分的には患者の組織への熱伝達によって達成され得る。したがって、心臓補助ポンプの動作中、熱がモータからヒートスプレッダの接触面に伝達され得る。モータと接触面との間の熱接触の熱コンダクタンスは十分に大きくてもよく、モータによって発生された熱をヒートスプレッダを介して患者の組織に伝達できる。
【0029】
接触面は平らであっても、湾曲していてもよい。典型的な実施形態では、接触面は無段である。好ましい実施形態では、接触面は可撓性であり、組織への接触を最大にする。接触面は、モータから組織への熱伝達のために配設され得る。全接触面は、駆動ユニットの使用中に皮膚と接触してもよい。駆動ユニットは、患者の皮膚に接触するように設計された駆動ユニットのすべての領域の全体によって形成された底面を更に含んでもよい。接触面は通常、底面の一部分を形成する。しかしながら、いくつかの実施形態では、接触面は底面全体を形成する。
【0030】
本出願は更に、上記又は下記の駆動ユニットを含み、埋め込み型心臓補助ポンプを更に含む心臓補助装置に関する。心臓補助ポンプは、駆動ユニットの駆動シャフトに接続されてもよく、例えば分離不能に接続されてもよい。別の実施形態では、モータは、カップリングを介して、例えば磁気クラッチを介して駆動シャフトに接続されてもよい。
【0031】
心臓補助装置の動作方法によると、駆動ユニットは心臓補助ポンプを駆動する。パージ媒体は、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間に注入される。熱はモータによって発生され、モータ筐体に伝達される。更に、熱は、モータ筐体の外面から、及び/又はカテーテルの近位部分の外面からパージラインに伝達される。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダが配設され、モータによって発生された熱はヒートスプレッダに伝達される。更なる実施形態では、ヒートスプレッダの接触面は、患者の皮膚に接触し、及び/又は直接接触し、及び/又は平らに置かれ、その結果、モータによって発生された熱は患者の組織に伝達される。更なる実施形態では、ヒートスプレッダの接触面は、患者の皮膚に直接接触する。しかしながら、場合によっては、例えば患者の衣服の部分などの別の材料が皮膚と接触面との間に配置されてもよい。
【0033】
駆動ユニットは、駆動ユニットの筐体を含んでもよい。モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分は、駆動ユニットの筐体内に配置されてもよい。パージラインの一部分は、モータ筐体と駆動ユニットの筐体との間に延び、上記のようにパージラインへの熱伝達を達成し得る。更に、パージラインの一部分は、カテーテルの近位部分と駆動ユニットの筐体との間を延び、上記のようにパージラインへの熱伝達を達成してもよい。カテーテルの近位部分に隣接する部分は、駆動ユニットの筐体の外側に配置されてもよい。更に、パージラインは、駆動ユニットの筐体の外側に配置される部分を含んでもよい。この部分は、通常、パージ媒体の供給源に取り付け可能である。駆動ユニットの簡潔で費用対効率の高い製造のために、パージラインの直径は、駆動ユニットの筐体の外側に配置される部分と、モータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分と熱接触する部分と同じであってもよい。
【0034】
ヒートスプレッダは、駆動ユニットの筐体に取り付けられ得る。典型的な実施形態では、駆動ユニットの筐体は、駆動ユニットが組み立てられたときに少なくとも部分的に見える外部筐体である。ヒートスプレッダは、駆動ユニットの筐体の外側に配置されてもよい。ヒートスプレッダは、モータから患者の組織への熱伝導を可能にするように構成される。ほとんどの実施形態では、ヒートスプレッダは、電気エネルギーの供給を必要としない受動構成要素である。更に、ヒートスプレッダは、ほとんどの実施形態において、可動部品及び/又は可動流体に依存しない。ヒートスプレッダは、駆動ユニットの筐体に剛性又は移動可能に接続され得る。いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは、駆動ユニットの筐体に取り外し可能に接続される。例えば、ヒートスプレッダを外した状態でカテーテル検査室において心臓補助ポンプを埋め込むことが便利な場合がある。駆動ユニットの筐体は、この状況では心臓補助装置のハンドルとして機能してもよい。埋め込み手順の後、駆動ユニットの筐体をヒートスプレッダに接続してもよく、その結果、モータによって発生された熱が患者の組織に効率的に伝達され得る。熱は、モータからモータ筐体に伝達され得る。モータ筐体は、駆動ユニットの筐体と熱接触してもよく、それにより、モータによって発生された熱が、モータ筐体から駆動ユニットの筐体に伝達され得る。更に、この熱は、駆動ユニットの筐体からヒートスプレッダに伝達され得る。
【0035】
駆動ユニットは、駆動ユニットを患者の大腿部に取り付けるように構成された保持手段を含んでもよい。心臓補助装置が使用される場合、典型的な適用シナリオでは、少なくとも駆動ユニットの底面が患者の皮膚と接触するようになる。次いで、更に接触面は皮膚と接触するようになってもよい。その後、駆動ユニットは、モータの動作中、モータから熱を特に効率的に除去することを可能にする。それにより、モータの過熱が発生するのを防ぐことができる。
【0036】
ヒートスプレッダは、パージラインとモータ筐体及び/又はカテーテルの近位部分との提案された熱接触とともに、心臓補助装置の熱管理を最適化するように一緒に機能する。多くの実施形態では、駆動ユニットから大気への熱伝達は、心臓補助装置が動作するときに必要とされない。したがって、心臓補助装置は、駆動ユニットが羽毛布団又は外科用ドレープで覆われている場合でさえ、過熱することなく確実に動作され得る。典型的な実施形態では、冷却フィンは不要である。したがって、提案された駆動ユニットは、比較的コンパクトに設計することができ、これにより、駆動ユニットの取り付けの容易さ及び駆動ユニットの装着の快適さが向上する。更に、モータから除去される熱の量は予測可能であり、大気の温度又は大気の流量に強く依存しない。したがって、駆動ユニットの熱管理は信頼性の高い方法で制御され得る。更に、冷却フィンが不要であるため、駆動ユニットの筐体は、部分的又は完全に連続的及び/又は無段の表面を有してもよい。したがって、駆動ユニットの洗浄は簡単であり得る。
【0037】
したがって、駆動ユニットは異なる適用シナリオで有益に使用され得る。
【0038】
第1の、カテーテル検査室での心臓補助装置の埋め込み中、ドレープの下の領域は非滅菌とみなされる可能性があるため、モータは滅菌ドレープの上に置かれてもよい。この状況では、モータの周りの空気の対流が可能になり、過熱のリスクが低減される。更に、患者がモータに意図せず接触する可能性は低く、ユーザ(医師)とモータの接触は、通常は手袋を用いて生じる。したがって、モータの許容温度は、以下で説明する第2の適用シナリオよりも高くなる。更に、駆動ユニットの汚染のリスクは、ユーザが汚染された、特に血液で汚れた手袋でモータに触れる可能性があるため、比較的高い。
【0039】
第2の、患者の搬送中又は集中治療室において、ポンプが患者の体内でその位置を保つことが特に重要である。この状況では、モータはその重量のため、穿刺部位に対して確実に固定される必要がある。この目的のために、モータは通常、毛布又は羽毛布団の下に置かれる。したがって、対流によるモータからの熱伝達は効率的ではなく、動作中のモータの過熱のリスクを考慮する必要がある。更に、このシナリオでは、患者がポンプに直接接触する可能性がある。したがって、モータからパージ媒体及び/又は患者の組織への効率的な熱伝達は、上記又は下記の駆動ユニットによって確実にされる場合、非常に有益である。更に、長時間の使用後はモータの洗浄が必要になる可能性があるため、提案された駆動ユニットで得られる表面形状は、例えば、冷却フィンを含む当技術分野で既知のヒートシンクの設計と比較して有益である。
【0040】
ヒートスプレッダの接触面の表面積は、駆動ユニットの筐体の表面の表面積より大きくてもよく、駆動ユニットの筐体の表面は、動作中に患者に面する筐体の表面である。ヒートスプレッダは、駆動ユニットの筐体を越えて延びるようなサイズにし得る。いくつかの実施形態において、接触面の表面積は少なくとも25cm2、好ましくは少なくとも50cm2又は少なくとも100cm2である。通常、表面積は400cm2未満である。十分に大きい表面積は、モータから患者の組織への熱の効率的な伝達を可能にするのに必要である。更に、十分に大きい表面積は、組織の局所的な過熱及び組織への損傷の発生を防ぐため重要である。患者の組織に伝達される熱の量は、通常、接触面の表面積の最大80mW/cm2、好ましくは最大60mW/cm2又は最大40mW/cm2である。更に、表面積は、駆動ユニットの熱管理を設計する際の重要要素を構成し、モータを所望の温度で動作させることができる。ほとんどの実施形態では、駆動ユニットの動作中、接触面の表面積とモータによって放散される熱の比は、少なくとも13cm2/W、好ましくは25cm2/W、特に好ましくは50cm2/Wであり、組織の局所的な過熱を回避する。
【0041】
ヒートスプレッダは、少なくとも領域において可撓性であってもよい。それにより、接触面は、皮膚の起伏のある表面に適合し得る。例えば、接触面は、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられる場合、大腿部の形状に適合し得る。これにより、駆動ユニットの装着の快適さが改善され得て、ヒートスプレッダと患者の皮膚との間の熱接触が確保され得る。ヒートスプレッダは、ヒートスプレッダのすべての領域で可撓性であり得る。
【0042】
組織に伝達された熱は通常、治療目的には役立たない。モータから患者の組織への熱の効率的な伝達を可能にするために、熱交換器は、熱伝導率が比較的高い材料の少なくとも一部分を含んでもよい。この領域は、接触面上に完全に広がってもよい。この領域の熱伝導率は、少なくとも1W/(m・K)、好ましくは少なくとも10W/(m・K)、少なくとも50W/(m・K)、又は少なくとも100W/(m・K)であってもよい。好ましい実施形態では、ヒートスプレッダの熱伝導率は、ヒートスプレッダの接触面に平行な方向の方が接触面に垂直な方向よりも高く、熱エネルギーが表面全体に広く行き渡ることを確実にし、ホットスポットを回避する。
【0043】
モータから患者の組織への安全かつ効率的な熱伝達のために、表面積にわたる熱の分散が最も重要であるため、駆動ユニットの重量と必要な材料の量はヒートスプレッダを平らな形状であるように設計することにより低減され得る。したがって、ヒートスプレッダは、2cm未満、特に1cm未満又は0.5cm未満の厚さを備えてもよい。例えば、ヒートスプレッダは薄片であってもよい。
【0044】
ヒートスプレッダは熱伝導層を含んでもよい。熱伝導層は、接触面の領域をわたる熱の迅速かつ効率的な伝達を可能にし得て、その結果、皮膚のホットスポットが回避される。ヒートスプレッダは、キャリア層を更に含んでもよい。キャリア層は、熱伝導層よりも低い熱伝導率を有し得る。キャリア層は、エラストマ及び/又はプラスチックを含んでもよい。このように、熱伝導層、特に比較的薄い及び/又は可撓性層は、熱の十分な伝達を可能にすることができ、一方、キャリア層はヒートスプレッダの十分な機械的安定性を提供し得る。熱伝導層は、金属、特に銅、アルミニウム、及び/又は熱分解カーボンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは複数の熱伝導層を含んでもよい。
【0045】
加えて、ヒートスプレッダは生体適合性コーティングを含んでもよい。例えば、ヒートスプレッダの接触面は生体適合性コーティングを含んでもよい。コーティングは、ヒートスプレッダの底面の一部分を形成してもよく、又はヒートスプレッダの底面を完全に形成してもよい。コーティングは、熱伝導層を覆い、及び/又は包囲し得る。特に、ヒートスプレッダ又はその熱伝導層が、汗に可溶性であり得る有害物質を含む場合、コーティングが施されてもよい。その後、コーティングにより、有害物質が患者の皮膚に到達するのを防止し得る。例えば、生体適合性コーティングは、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、PEEK、又は生体適合性、例えば埋め込み可能な金属を含んでもよい。生体適合性コーティングは、2mm未満、好ましくは0.5mm未満又は0.1mm未満の厚さを有し得る。生体適合性コーティングは、生体適合性キャリアを構築するキャリア材料と同一であってもよい。
【0046】
更に、モータ及び/又はモータ筐体及び/又は駆動ユニットの筐体は細長くてもよい。モータ及び/又はモータ筐体及び/又は駆動ユニットの筐体の伸長方向は、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられたときの大腿部の軸方向と一致してもよい。保持手段は、通常、駆動ユニットの筐体に接続される。駆動ユニットの保持手段は、ストラップ及び/又は面ファスナ手段を含んでもよい。保持手段は、接着剤を更に含み得る。大腿部への駆動ユニットの接着取り付けにより、穿刺部位に対する駆動ユニットの特に確実な固定が可能になる。特に、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられるとき、接着固定は効果的な保持手段を形成することができ、駆動ユニットが大腿部のテーパー部分を膝に向かって滑り落ちるのを防ぐ。例えば、穿刺部位にかかる機械的負荷は、示唆された保持手段により低減され得る。いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは、ヒートスプレッダを皮膚に取り付けるための接着面を含む。例えば、ヒートスプレッダは接着パッチによって形成されてもよい。この実施形態によると、モータによって発生された熱は、パッチを介して患者の組織に伝達され得る。パッチの熱コンダクタンスは十分に大きくてもよく、熱が組織に効率的に伝達される。接着面は、接触面の一部分及び/又は接触面全体を形成してもよい。接着剤は、例えば接着性創傷閉鎖パッチにより既知である生体適合性接着剤であってもよい。
【0047】
更に、駆動ユニットは固定の手段を含み、駆動ユニットが患者の皮膚上の異なる位置へ移動するのを防止し得る。例えば、固定の手段はゴム引き領域を含んでもよい。駆動ユニットの底面は、塊を更に含んでもよい。
【0048】
ヒートスプレッダは、開口部又は凹部、特に貫通穴又は溝を含み得て、皮膚からの汗の蒸発を可能にする。開口部又は凹部は、接触面に隣接して少なくとも部分的に配置されてもよい。典型的な実施形態では、ヒートスプレッダは、少なくとも3つ、少なくとも5つ、又は少なくとも8つの開口部又は凹部を含む。モータの動作中、患者の組織に伝わる熱により、患者の発汗が促進される場合がある。したがって、開口部又は凹部は、駆動ユニットの装着の快適さを著しく改善し得る。大気への蒸気の効率的な移動を達成するために、開口部又は凹部の最小又は均一な直径は通常、少なくとも1mm又は少なくとも5mmである。開口部又は凹部の最大又は均一な直径は、通常最大で20mm又は80mmである。
【0049】
いくつかの実施形態では、開口部は細長い。最大直径と最小直径の比は、少なくとも1.2又は少なくとも2である。このようにして、汗を(蒸気の形態で)体から大気に効率的に移動させることができ、一方でヒートスプレッダでの十分な機械的安定性と効率的な2次元熱伝導が確保される。例えば、開口部は細長くてもよく、その結果、開口部は、駆動ユニットが患者の大腿部に取り付けられたときに、大腿部の円周方向でより大きな直径を示し、かつ大腿部の軸方向でより小さな直径を示す。モータが軸方向に細長い場合、穴の伸長により熱を円周方向に効率的に伝達することができ、一方、蒸気は皮膚から効率的に除去される。
【0050】
いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダは、気化した汗が皮膚から大気に移動することを可能にする細孔を含む。ヒートスプレッダは、細孔を備えた膜を含んでもよい。細孔は、少なくとも0.02μm及び/又は最大0.3μmの直径を有してもよい。
【0051】
ヒートスプレッダは、汗吸収材料、特に織物又は綿を含み得る。汗吸収材料は、ヒートスプレッダの底面の一部分を形成してもよい。汗吸収材料は、患者の皮膚から汗を吸収し、したがって、駆動ユニットの装着の快適さを改善し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、ヒートスプレッダはヒートパイプを含む。ヒートパイプは平らであり得る。例えば、ヒートパイプは熱拡散器であってもよい。通常、ヒートパイプの底面は患者の皮膚に接触する。別の実施形態では、ヒートパイプは、モータとヒートスプレッダの間に配置され、それらに接続されてもよい。ヒートパイプの上面は、モータと熱接触してもよい。ヒートパイプは、モータから組織又は接触面への効率的な熱伝達を可能にし得る。
【0053】
パージ媒体の摩擦損失は、パージされていないモータと比較して、パージされたモータの効率の低下をもたらすことが予想される場合がある。驚くべきことに、上記又は下記の特徴のいずれか1つによって、及びこれらの特徴の組み合わせによって、モータの不利な低効率が回避され得る。流体ギャップの幅は、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mm、及び/又は最大1mm、好ましくは最大0.5又は最大0.3mmであってもよい。磁気ギャップの最小サイズは、流体ギャップのサイズによって制限されることを考慮する必要がある。典型的には、ロータ及び/又はステータは、流体ギャップを区切り得るスリーブ又はコーティングを含む。流体ギャップの境界面は、平滑及び/又は無段であってもよく、アンダーカット面を避けて、確実な通気プロセスを確保してもよい。これにより、ロータ磁石及び/又はステータ巻線は、パージ媒体の腐食作用から保護され得る。結果として、磁気ギャップは通常、流体ギャップよりも大きい。磁気損失は、流体(及び磁気)ギャップの幅の増加とともに増加すると予想されるが、驚くべきことに、流体ギャップの幅が比較的大きいと、モータの効率が全体的に向上することが見出された。この改善は、パージ媒体の摩擦損失の減少に関連する。
【0054】
上記で説明したように、提案された駆動ユニットにより、様々な適用シナリオで心臓補助装置の熱管理を正確に制御することが可能である。特に、流体ギャップ内のパージ媒体の温度は正確に制御可能であり得る。この効果は、カテーテルの近位部分の外面及び/又はモータ筐体の外面との熱接触によるパージ媒体の予熱によって、又はモータからパージライン及び/又はヒートスプレッダへの熱除去によって達成され得る。典型的な実施形態では、流体ギャップ内のパージ媒体の温度は、定常動作状態で少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃である。更に、流体ギャップ内のパージ媒体の温度は、定常動作状態で最大100℃、好ましくは最大90℃である。それに従ってパージ媒体の温度を制御することにより、パージ媒体の粘度は下げられてもよく、同時にパージ媒体の温度は患者にとって安全に維持され得て、パージ媒体の沸騰が防止される。したがって、モータは、パージ媒体の温度を制御することにより、特に効率的な方法で動作させることができ、流体の摩擦損失は低下する。
【0055】
パージ流体の温度を正確に制御するために、予熱されたパージ媒体の温度、並びに流体ギャップと患者の皮膚との間、及び/又は流体ギャップとパージラインとの間の熱伝達を分析し、調整する必要がある。例えば、流体ギャップからパージラインへの熱伝達は、モータ筐体の材料の影響を受ける場合がある。モータ筐体は、金属、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウムを含有するか、又はそれで作られてもよい。いくつかの実施形態では、モータの巻線は、モータ筐体の内側に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、モータ筐体は、巻線を封入するプラスチック鋳造材料によって部分的又は完全に形成される。巻線は、1つ以上の銅線を含んでもよい。更に、流体ギャップからヒートスプレッダへの熱伝達は、駆動ユニットの筐体の材料によって影響を受ける場合がある。駆動ユニットの筐体は、PEEK又はABSなどのプラスチック材料を含有するか、又はそれで作られてもよい。プラスチック材料は、所望の温度範囲でモータを動作可能にするのに特に適している。いくつかの実施形態では、駆動ユニットの筐体は、駆動ユニットのハンドルとして使用され得るように成形される。
【0056】
いくつかの実施形態では、駆動ユニットは、パージラインと駆動ユニットの筐体との間に配置された断熱材を含む。断熱材は、カテーテルの近位部分との熱接触領域と駆動ユニットの筐体との間に配置されてもよい。追加的又は代替的に、断熱材は、モータ筐体との熱接触領域と駆動ユニットの筐体との間に配置されてもよい。断熱材はパージラインを包囲し得る。加えて、断熱材は管状形状であり得る。断熱材は、プラスチック材料、特に発泡プラスチック材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、パージラインと駆動ユニットの筐体との間にエアギャップ又は真空ギャップが形成され、熱接触領域のいずれか又は両方と駆動ユニットの筐体との間の断熱を達成する。エアギャップは、駆動ユニットの筐体内のモータによって発生された熱を対流により均一に分散可能にするため、駆動ユニットの筐体上の局所的なホットスポットが回避される。更に、パージラインは、モータ筐体と及び/又はカテーテルの近位部分との熱接触の領域で熱収縮チューブ内に部分的に包囲されてもよく、熱接触が改善される。
【0057】
心臓補助装置のいくつかの実施形態によると、駆動ユニットは、カテーテルの近位部分及び/又はモータ筐体と熱接触するパージラインを備えてもよいし備えなくてもよい。更に、駆動ユニットは、上記又は下記のようなヒートスプレッダを含まなくてもよく、及び/又は駆動ユニットは、患者の皮膚と接触させることを意図しないヒートスプレッダを含んでもよい。モータからの熱除去の手段は、例えば、上記又は下記で説明するパージライン又はヒートスプレッダによって、モータ筐体又は駆動ユニットの筐体に取り付けられた冷却フィンによって、或いは熱伝導方法でモータに接続されたヒートパイプによって形成されてもよい。更なる実施形態は、態様を互いに組み合わせて、及び/又は上記又は下記の説明と組み合わせることで明らかになる。
【0058】
特に、本出願は、とりわけ、更に以下の態様に関する。
【0059】
1.外部駆動ユニットと埋め込み型又は埋め込まれた心臓補助ポンプとを含む心臓補助装置の動作方法であって、駆動ユニットは心臓補助ポンプを駆動するモータを含み、モータは心臓補助ポンプに経皮駆動シャフトを介して接続され、モータはステータと駆動シャフトに接続可能な回転可能に取り付けられたロータとを備え、流体ギャップはロータとステータとの間に形成され、流体ギャップはパージ開口部と流体接続して、パージ媒体を流体ギャップに注入し、心臓補助装置は駆動シャフトを取り囲むカテーテルを含み、パージ媒体は流体ギャップの中、及びカテーテルと駆動シャフトの間の空間の中、又はカテーテルの管腔の中に注入される、動作方法。
【0060】
2.流体ギャップ内のパージ媒体の温度は定常動作状態で少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃である、態様1の方法。
【0061】
3.流体ギャップ内のパージ媒体の温度は定常動作状態において、最大で100℃、好ましくは最大で90℃である、態様1と2のいずれか1つの方法。
【0062】
4.パージ媒体はグルコース溶液又は生理食塩水である、態様1~3のいずれか1つの方法。
【0063】
5.駆動ユニットはパージ開口部に取り付けられたパージラインを含み、パージラインはモータ筐体の外面及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触にあり、パージ媒体はモータ筐体の外面及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触することによって予熱され、その後、パージ媒体は流体ギャップの中へ注入される、態様1~4のいずれか1つの方法。
【0064】
6.心臓補助ポンプを駆動するモータを含む埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニットであって、モータは経皮駆動シャフトを介して心臓補助ポンプに接続可能又は接続され、駆動ユニットは熱伝導方法でモータに接続されたヒートパイプを含む、外部駆動ユニット。
【0065】
7.駆動ユニットは筐体、特にモータ筐体又は駆動ユニットの筐体を含み、ヒートパイプは熱伝導方法で筐体に接続される、態様6の駆動ユニット。
【0066】
8.態様6又は7のいずれか1つの駆動ユニットを含み、更にヒートシンクを備えたコンソール又はコントローラユニットを含む心臓補助システムであって、ヒートパイプの一部分は熱伝導方法でヒートシンクと接続されてモータから熱を除去する、心臓補助システム。
【0067】
9.心臓補助ポンプを駆動するためのモータを備える埋め込み型心臓補助ポンプ用の外部駆動ユニットであって、モータは経皮駆動シャフトを介して心臓補助ポンプに接続可能であり、患者の皮膚に接触するように構成された接触面を備えるヒートスプレッダによって特徴付けられ、接触面は熱伝導方法でモータに接続され、又は接続可能であり、モータによって発生された熱を患者の組織に伝達する、外部駆動ユニット。
【0068】
10.外部駆動ユニットと埋め込み型又は埋め込まれた心臓補助ポンプとを含む心臓補助装置の動作方法であって、駆動ユニットは心臓補助ポンプを駆動するモータを含み、モータは経皮駆動シャフトを介して心臓補助ポンプに接続され、駆動ユニットはモータ筐体を更に含み、モータはモータ筐体の内側に配置され、駆動ユニットは、駆動シャフトを取り囲むカテーテルと、パージ媒体をカテーテルの管腔の中に又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入するパージラインとを更に含み、パージラインはモータ筐体の外面及び/又はカテーテルの近位部分の外面と熱接触し、その結果、熱は近位部分のカテーテルの外面から、及び/又はモータ筐体の外面からパージ媒体に伝達される、動作方法。
【0069】
11.パージラインはパージ媒体を誘導し、その結果、パージ媒体はモータ筐体の外面及び/又はカテーテルの近位部分の外面と最初に熱接触し、その後、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入される、態様10の方法。
【0070】
12.パージラインはパージ媒体を誘導し、その結果、パージ媒体はモータ筐体の外面と最初に熱接触し、その後、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入される、態様11の方法。
【0071】
13.モータはステータと、駆動シャフトに接続された回転可能に取り付けられたロータとを含み、流体ギャップはロータとステータとの間に形成され、流体ギャップはパージ開口部と流体接続にあり、パージ媒体を流体ギャップの中に注入し、パージラインはパージ開口部に接続される、態様10の方法。
【0072】
14.パージラインと流体ギャップはパージ媒体を誘導し、その結果、パージ媒体はモータ筐体の外面及び/又はカテーテルの近位部分の外面と最初に熱接触され、その後、ロータとステータとの間の流体ギャップの中に注入され、その後、カテーテルの管腔の中、又はカテーテルと駆動シャフトとの間の空間の中に注入される、態様13の方法。
【0073】
15.パージ媒体が流体ギャップ内で遠位方向に流れる、態様13の方法。
【0074】
例示的な実施形態は、以下の図面と併せて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】埋め込まれた心臓補助ポンプと体外駆動ユニットを備えた心臓補助装置を示す概略図である。
【
図5】ヒートスプレッダと駆動ユニットの筐体を示す概略断面図である。
【
図7】駆動ユニットの筐体とモータを示す概略断面図である。
【
図8】別の実施形態による駆動ユニットを示す概略断面図である。
【
図9】パージラインとモータ筐体を示す概略断面図である。
【
図10】パージラインとモータ筐体及びカテーテルの近位部分との間の熱接触がある場合とない場合の駆動ユニットの測定動作パラメータの比較を示すグラフである。
【
図11】別の実施形態による駆動ユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
心臓補助装置1の概略図を
図1に示す。心臓補助装置1はカテーテル2を含む。可撓性駆動シャフト3はカテーテル2の内側に誘導される。カテーテル2の遠位端部及び駆動シャフト3の遠位端部は、心臓補助ポンプ4のポンプ頭部と接続される。心臓補助ポンプ4は、筐体5及びプロペラ6を含む。プロペラ6は、駆動シャフト3の遠位端部に接続される。駆動シャフト3の近位端部は、モータを含む体外駆動ユニット7に接続される。駆動ユニット7は、プロペラの回転運動を駆動して患者の血液を動かすように構成される。
【0077】
心臓補助ポンプ4とカテーテル2及び駆動シャフト3は、患者の大腿動脈へ、患者の鼠径部に位置する穿刺部位8を介して挿入される。図示の配置は、心臓の左心室機能を支援するための心臓補助装置1の使用を示し、心臓補助ポンプ4は大動脈弁11の領域で患者の左心室10の内側に部分的に配置される。心臓補助装置1が動作すると、駆動シャフト3は駆動ユニット7のモータによって駆動され、心臓補助装置1は血液を左心室10から大動脈12の中へ、すなわち心臓補助装置1の遠位端部13から近位端部14に向かう方向に運ぶ。別の実施形態では、心臓補助装置1は、心臓補助装置1の近位端部14から遠位端部13に向かう方向に血液を運ぶように構成されてもよい。このような配置は、心臓の右心室機能を支援するのに特に適する。
【0078】
駆動ユニット7は、
図2に概略的に示されるように、患者の大腿部15に取り付けられ得る。
図2及び後続の図における繰り返しの特徴は、同じ参照番号を使用して示される。図示された実施形態では、駆動ユニット7は、ストラップ16、例えば弾性ストラップによって穿刺部位8に対して所定の位置に保持される。ほとんどの実施形態では、ストラップの長さは45~60cmである。しかし、以下で説明するように、別の固定の手段も可能である。モータはモータ筐体の内側に配置される。モータ筐体は、例えば射出成形されたABS部品によって形成された、駆動ユニット7の筐体17の内側に配置される。駆動ユニット7の筐体17の表面は、ほとんどの実施形態において平滑で無段であるため、駆動ユニット7の筐体17は洗浄が容易であり、心臓補助装置1のハンドルとして機能し得る。カテーテル2は、駆動ユニット7の筐体17の近位端部に液密方法(fluid-tight manner)で剛性接続される。更に、供給ライン18は図に概略的に示される。図示の実施形態では、供給ライン18は、駆動ユニット7の筐体17の近位端部に接続され、モータ用の電力供給ライン及びパージ媒体用の流体供給源又はパージラインを含む。別の実施形態では、流体供給源又はパージラインと電力供給ラインとは各々、複数の別個の供給ラインのうちの1つの内側に誘導される。更に、いくつかの実施形態では、供給ライン18及び/又は流体供給源又はパージラインは、駆動ユニット7の筐体17の遠位端部又は側面で駆動ユニット7の筐体17から出る。
【0079】
駆動ユニット7は、ヒートスプレッダ19を更に含む。ヒートスプレッダ19は、駆動ユニット7の筐体17に剛性接続され、動作中にモータによって発生された熱がヒートスプレッダ19に伝達される。ヒートスプレッダ19は、薄く、4mm以下の厚さである。例えば、ヒートスプレッダ19は、以下で説明するパッチによって、又は平らな2次元ヒートパイプによって形成されてもよい。ヒートスプレッダ19の底面は、接触面で患者の皮膚に対して平らに置かれ、直接接触し、その結果、熱はヒートスプレッダ19から患者の組織に伝達され得る。モータの動作中、駆動ユニット7の筐体17の外面の温度は、ヒートスプレッダ19を大腿部15に固定する前に43℃を超える場合がある。しかし、ヒートスプレッダ19の熱伝導率は、熱が十分な領域に均等に分散されて大腿部15に伝達されることを確実にし、その結果、駆動ユニット7の筐体17の表面の温度は、組織を損傷する臨界温度を定義する42℃の温度下に急速に低下する。
【0080】
ヒートスプレッダ19は、100W/(m・K)を超える熱伝導率を有する領域を含んで、熱を横方向に広げ、その結果、熱は接触面全体に効率的に伝達される。接触面の表面積は、いくつかの実施形態では、200cm2程度に大きくてもよい。ヒートスプレッダ19は、開口部(貫通穴)を更に含み、そのうちの2つは参照番号20と20’を用いて示される。開口部20、20’は、気化した汗を大気に移すことを可能にし、したがって、装着の快適さを向上させる。
【0081】
駆動ユニット7の斜視図を
図3に示す。図示の実施形態では、ヒートスプレッダ19は、駆動ユニット7の筐体17を受け入れる凹部22を有する。ストラップ16は、ループ面23を備える面ファスナ機構を含み、ストラップの端部分に配置されて図には示されていない対応するフック面に係合する。心臓補助装置1が使用中の場合、駆動ユニット7の筐体17は凹部22に受け入れられ、ストラップ16は大腿部の周りに円周方向に巻き付けられ、その結果、駆動ユニット7の筐体17はストラップ16の一部分によって覆われ、駆動ユニット7は所定の位置に保持される。
【0082】
ヒートスプレッダ19の開口部20、20’は、
図4に概略的に示されるように細長くてもよい。この場合、開口部20、20’は、大腿部15に対して円周方向24により大きな直径を示し、ヒートスプレッダ19のこの方向24への効率的な熱移動を可能にする。駆動ユニット7の筐体17は、大腿部15の軸方向25に対応する垂直方向25に細長くなる。
【0083】
ヒートスプレッダ19は、大腿部15の形状に適合するように湾曲及び/又は可撓性であってもよい。例えば、ヒートスプレッダ19は、薄片又はパッチを含み得る。
図5は、第1パッチ26及び第2パッチ27によって形成されたヒートスプレッダ19と駆動ユニット7の筐体17の例示的な断面を示す。パッチ26、27は、各々屈曲可能であり、各々が大腿部15に面する接着底面28、29を含む。パッチ26、27は、示された実施形態において駆動ユニット7の筐体17を包囲し、モータから熱を効率的に引き出す。図示の実施形態では、ヒートスプレッダ19の接着面は保持手段を形成し、穿刺部位8に対して駆動ユニット7を所定の位置に保持する。したがって、上記のストラップ16などの別の保持手段は、必要でない場合もあるが、いくつかの実施形態では依然として供給され得る。
【0084】
ヒートスプレッダ19の例示的な断面を
図6に示す。ヒートスプレッダ19は多層構造であってもよい。ヒートスプレッダ19は、ヒートスプレッダ19の上層を形成するキャリア層30を含む。
【0085】
キャリア層30は、エラストマ及び/又はプラスチック材料によって形成されてもよい。接触面の領域を横切る、すなわち図の水平方向における効率的な熱伝達のために、ヒートスプレッダ19は更に、薄い熱伝導層31を含み、それは熱伝導率の高い材料、例えば、銅、アルミニウム又は熱分解カーボンの薄層で形成され得る。熱伝導層31は、不活性及び生体適合性コーティング32によって両側で囲まれ、生体適合性コーティング32はパリレン、ポリウレタン、シリコーン、PEEK、又は生体適合性のある、例えば埋め込み可能な金属で作られる。生体適合性コーティング32は、ヒートスプレッダ19の開口部20の内壁の熱伝導層31を更に覆う。ヒートスプレッダの無段底面は、例えば接着剤を含有する接着層33によって形成され、ヒートスプレッダ19を患者の皮膚に貼り付ける。
【0086】
更に、ヒートスプレッダ19の、又は駆動ユニット7の汗吸収部分34を
図6に概略的に示す。汗吸収部分は、例えば、織物及び/又は綿で作られてもよい。加えて、ヒートスプレッダ19又は駆動ユニット7は、ゴム塊49、49’を備えたゴム引き領域48を含み、ヒートスプレッダ19が穿刺部位8に対してスライドするのを防止する。汗吸収部分34及びゴム引き領域48は、ヒートスプレッダ19の底面全体に均等に分布されてもよい。
【0087】
モータ35の概略図を
図7に示す。モータ35はモータ筐体の内側に配置され、モータ筐体は駆動ユニット7の筐体17内に配置される。モータ35は、永久磁石を備えるロータ36と巻線38を備えるステータ37を含む。ロータ36は、第1軸受39と第2軸受40を用いて回転可能に取り付けられ、ステータ37の巻線を流れる電流により回転され得る。ロータ36は駆動シャフト3と剛性接続され、プロペラ6を駆動する。
【0088】
カテーテル2は、駆動ユニット7の筐体17に剛性接続され、空間41がカテーテル2と駆動シャフト3との間に形成される。この空間41は、ロータ36とステータ37との間に形成される流体ギャップ43、パージ開口部42及び供給ライン18と流体接続にある。半径方向における流体ギャップ43の幅は、0.2~0.3mmの間であり得る。心臓補助装置1が動作すると、パージ媒体、例えばグルコース溶液が供給ライン18を介して供給され、流体ギャップ43を通り、カテーテル2と駆動シャフト3との間の空間41を通って(そして最終的には心臓補助装置1の近位端部で患者内に)流れる。
【0089】
モータ35の動作中、例えば2Wの電力散逸により、モータ35が加熱される場合がある。熱は、参照番号44付きの矢印によって概略的に示されるように、モータ35から除去され、流体ギャップ43の内側のグルコース溶液の温度を定常動作状態において75℃で一定に保持する。熱を除去するために、熱は、例えば上述のようにヒートスプレッダ19を用いて患者の組織45に伝達されてもよく、例えば駆動ユニット7の筐体17の冷却ファンを用いて大気46に伝達されてもよく、及び/又はコンソールもしくはコントローラユニットのヒートシンク47に、例えば、駆動ユニット7の筐体17に接続された細長いヒートパイプを介して伝達されてもよい。更に、追加又は代替的に、熱は以下に説明するように、流体供給ライン又はパージラインに伝達されてもよい。これらの熱除去機構の任意の組み合わせが可能である。
【0090】
更に、インダクタ50は、モータ35がフルブロック転流で駆動されない場合、渦電流損失を低減するために供給され得る。これらのインダクタ50は、更に駆動ユニット7の筐体17の内側に配置し得るが、好ましい実施形態では、インダクタ50は、モータ35のコントローラユニットに接続されるモータケーブル18の端部に(又はコントローラユニット自体に)配置され、モータ35及び患者の脚部への更なる重量と熱源を回避する。
【0091】
パージラインへの熱除去は、後続の図と併せて説明する。
図8は、駆動ユニット7の別の実施形態を概略的に示す。この駆動ユニット7は、前述の駆動ユニット7の特徴のいずれかを含んでもよい。更に、
図8の駆動ユニット7では、パージライン53は二重の役割、すなわちパージ媒体用の供給ラインとして、及び熱除去用の手段として作用する。
図8に示すように、ステータ37の巻線38は、モータ筐体51に包囲される。モータ筐体51は、駆動ユニット7の筐体17内の中央位置に配置される。しかしながら、別の実施形態では、モータ筐体51は、駆動ユニット7の筐体17内の近位位置に配置される。更に、カテーテル2は、近位部分52を含み、近位部分52は駆動ユニット7の筐体17の内側に配置される。概略的に示すように、供給ライン18は、駆動ユニット7の筐体17の近位端部に取り付けられる。供給ライン18は、モータ35の電力供給用の電気リード線を含む。パージライン53は、この実施形態では供給ライン18内に含まれない。パージライン53は、駆動ユニット7の筐体17の遠位領域において、駆動ユニット7の筐体17の側面の開口部を通って延びる。
【0092】
パージライン53の端部分は、パージ媒体の供給源(図示せず)に取り付けられる。パージライン53は、駆動ユニット7の筐体17の内部に延在する。駆動ユニット7の筐体17の内側では、パージライン53はカテーテル2の近位部分52の外面に接して位置する。したがって、カテーテル2の近位部分52とパージライン53との間の熱接触は、参照番号54付きの矢印で示されるように形成される。更に、パージライン53は、モータ筐体51の外面に接して位置する。したがって、モータ筐体51とパージライン53との間の熱接触は、参照番号55付きの矢印で示すように形成される。パージライン53は、パージ開口部42に更に取り付けられる。パージ媒体が供給されると、矢印で示すように駆動ユニット7を通って流れる(そのうちのいくつかは参照番号56でマークされる)。パージ媒体は、最初に熱接触領域54、55を通過し、次に流体ギャップ43に入り、その後、カテーテル2と駆動シャフト3との間の空間41に入る。更なる実施形態では、パージ媒体はカテーテル2の管腔に入る。パージ媒体は、熱接触54、55を通過するときに主に近位方向に流れる。その後、パージ媒体が流体ギャップ43、及びカテーテル2と駆動シャフト3との間の空間41を通って流れると、パージ媒体は遠位方向に流れる。
【0093】
心臓補助ポンプの動作中、注入されたパージ媒体は、カテーテル2の近位部分52及びモータ35を、熱接触54、55により、かつその比較的低い温度により冷却する。それにより、カテーテル2の近位部分52に遠位側に隣接して配置され、かつ駆動ユニット7の筐体17の外側に配置されるカテーテル2の部分63は、著しく冷却され、その結果、駆動ユニット7の筐体17の内側に配置されていないカテーテル2の部分63は、怪我のリスクなしに触れることができる。更に、カテーテル2の部分63の加熱によるカテーテル2の変形のリスク(及び、それにより、カテーテル2の内側に配置された可撓性駆動シャフト3の変形及び破損のリスク)が低減される。更に、パージ媒体は、熱接触54、55により予熱された後、流体ギャップ43に入る。その結果、パージ媒体は、より高い温度及びより低い粘度で流体ギャップ43に入り、モータ35の摩擦損失は低減され、モータ35はより効率的に動作する。
【0094】
モータ筐体51は、ほとんどの実施形態において円筒形状を有する。
図9に示すように、パージライン53は管状であり、モータ筐体51の周りに巻き付けられ、その結果、パージライン53はモータ筐体51の外面に直接接触して良好な熱接触55を可能にする。更に、パージライン53は、同様の方法でカテーテル2の近位部分52の周りに巻き付けられてもよい。駆動ユニット7を製造するために、パージライン53は、熱成形により事前に形成されて、パージライン53の螺旋形状を形成することができる。パージライン53がカテーテル2の近位部分52の周り、及びモータ筐体51の周りに巻き付けられた後、パージライン53は、可撓性シリコーン鋳造材料に埋め込まれるか、又はパージライン53を取り囲む収縮チューブによって、もしくはモータ筐体51とパージライン53との間に配置された接着剤によってモータ筐体51に確実に固定される。更にカテーテル2の近位部分52は、ほとんどの実施形態において円筒形状を有する。パージライン53の直径は均一であってもよい。カテーテル2、特にその近位部分52は、例えばPUなどのプラスチック材料、又は、例えばPebax(登録商標)などのポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含むことができる。カテーテル2は、金属で編まれていてもよい。
【0095】
駆動ユニット7は、パージライン53と駆動ユニット7の筐体17との間に配置された断熱材(図示せず)を更に含んでもよく、その結果、駆動ユニット7の筐体17の加熱を防止する。更に、熱接触54、55によって形成される熱交換器の効率は、この方法で改善され得る。断熱材は、熱接触54、55の領域でパージライン53を完全に取り囲むことができ、プラスチック材料で作られた断熱発泡チューブとなり得る。断熱状態は、パージライン53と駆動ユニット7の筐体17との間のエアギャップによって形成されてもよい。
【0096】
図10は、異なる心臓補助装置1について測定された動作パラメータのグラフを示し、第1は
図8による駆動ユニット7、すなわち熱接触54、55を含む状態(クロス)であり、第2は対応する駆動ユニット7であるが、パージライン53がカテーテル2の近位部分52ともモータ筐体51とも熱接触しない状態(円)である。左垂直軸57は温度を示し、右垂直軸58は、所定の血液移動速度を達成するために印加しなければならないモータ電流を示す。水平軸59は、パージ媒体の流量を示す。最高測定値60、60’は、モータ電流を示す右垂直軸に対応する。中間測定値61、61’及び最低測定値62、62’は、左垂直軸に対応し、モータ35の温度61、61’及びカテーテル2の部分63の温度62、62’を示し、部分63はカテーテル2の近位部分52に隣接して配置される。モータ温度61、61’は、パージ率の増加とともに減少し、カテーテル2の部分63の温度62、62’は、パージ率の増加とともに増加する。測定値は、モータ及びカテーテル2の部分63の両方が、モータ筐体51とカテーテル2の近位部分52とのパージラインの提案された熱接触54、55を使用することにより、効果的に冷却され得ることを示す。モータ電流60は、熱接触54、55が設けられていない場合、パージ率とともに増加する。対照的に、提案された熱接触54、55が用いられる場合、モータ電流60’は妥当なパージ率で著しく減少し得る。したがって、提案された熱接触54、55は、心臓補助装置1をより効果的にする。驚くべきことに、熱接触54、55のため、モータ電流60’は流量にまったく依存しない。したがって、モータ電流60’に対するパージ率の影響は、モータ電流60’が心臓補助装置1の重要な制御パラメータとして使用される(例えば、心臓補助装置1の機能不全を示す)場合に無視され得る。したがって、提案された熱接触54,55’は、心臓補助装置1の簡略化された監視回路を可能にする。
【0097】
図11は、別の実施形態による駆動ユニット7を示す。この駆動ユニット7は、上述の特徴のいずれかまたはすべてを含み得る。駆動ユニット7の筐体17の上部分は図に示されず、駆動ユニット7の内部を見ることができる。駆動ユニット7の筐体17は、駆動ユニット7のハンドルとして機能し、このため、片手で容易に保持できる湾曲形状を示す。モータの電力供給用の電気リード線を含む供給ライン18(図示せず)は、駆動ユニット7の筐体17の近位端部に配置された供給プラグ64に取り付けられてもよい。更なる電気リード線(明確にするために図示せず)は、供給ラインをモータ35と接続し、モータ35はモータ筐体51の内側に配置される。カテーテル2は、筐体17に隣接してその外側に配置される部分63を含み、更に筐体17の内側に配置され、部分63をモータ35に接続する近位部分52を含む。
【0098】
パージライン53は、駆動ユニット7の筐体17に、筐体17の遠位部分で入る。更に、上記のように、パージライン53は、カテーテル2の近位部分52及びモータ筐体51の周りに巻き付けられ、熱接触54、55を形成する。パージライン53は、モータ筐体51の近位端部に更に接続され、モータ35の流体ギャップ43と流体接続を形成する。パージライン53とモータ筐体51との熱接触を更に改善するために、パージライン53は、熱収縮チューブ65内に囲まれる(熱収縮チューブ65の下のパージライン53の位置は、破線を用いて示される)。熱収縮チューブ65は、パージライン53をモータ筐体51に押し付け、それにより熱接触を改善する。更にカテーテル2の近位部分52の周りに巻き付けられたパージライン53の一部分は、熱収縮チューブ(図示せず)内に包囲されてもよい。更に、エアギャップ66、66’は、駆動ユニット7の筐体17と、モータ筐体51及びカテーテル2の近位部分52の熱接触54、55を形成するパージライン53の一部分との間に形成される。エアギャップ66、66’は、モータ筐体51に対する断熱状態を形成する(上述のような断熱発泡チューブが代替的にまたは追加的に提供されてもよい)。更に、エアギャップ66、66’は、モータによって発生された熱が対流によって筐体17内にある程度分散することを可能にし、局所的なホットスポットが回避される。