(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-25
(45)【発行日】2022-08-02
(54)【発明の名称】放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するためのシステムおよび方法。
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 Q
(21)【出願番号】P 2019572828
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2018059999
(87)【国際公開番号】W WO2018193022
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-01-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519373626
【氏名又は名称】イオン・ビーム・アプリケーションズ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ヴァン・ルールムンド
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】内藤 真徳
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-99110(JP,A)
【文献】特開平11-161327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0321553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の照射野に対して複数の照射分割を送出するように構成された放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するように構成された装置であって、
- 前記複数の照射野の各照射分割に対して、前記システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す1つまたは複数の量に対する値を測定するように構成された測定ユニットと、
- 前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、
正規化係数で前記測定値を正規化するように構成された正規化器であって、前記正規化係数は、以前の照射分割の送出中にその量に対して測定された以前の測定値
の合計と、前記正規化された値の以前に決定された移動平均の合計との比率から計算される、正規化器と、
- 前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の移動平均を決定するように構成された平均化ユニットと、
- 前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の前記移動平均をそれぞれの所定の値と比較し、前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の前記移動平均が正常な挙動からの逸脱を示しているかどうか判定するように構成された比較器と
を含む装置。
【請求項2】
前記装置が、ある時間間隔にわたる、前記正規化された値のそれぞれの前記平均を監視するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記比較器が、前記放射線治療システムの特定のハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、関係する量に対する前記正規化された値の前記決定された平均の正常な挙動からの逸脱との間の一意的な相関を表す情報を記憶する、かつ/またはそれを引き出すように構成された、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、前記量の1つまたは複数に対する前記正規化された値の前記決定された平均に基づいて、かつ、前記一意的な相関に基づいて、前記放射線治療システムのハードウェア構成部品のハードウェア劣化を決定するように構成された、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記放射線治療システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品のハードウェア劣化を表すデータを受け取り、選択されたハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、1つまたは複数の量に対する前記正規化された値の前記決定された平均の正常な挙動からの逸脱との間の一意的な相関を決定するように構成された相関ユニットを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、離れた場所から放射線治療システムを監視するように構成された分散装置である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、複数の放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するように構成された、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
照射野の複数の照射分割を送出するように構成された1つまたは複数の放射線治療システム、および請求項1から7のいずれか一項に記載の装置を含む監視システム。
【請求項9】
複数の照射野に対して複数の照射分割を送出するための放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するためのコンピュータ実装方法であって、
前記方法は、プロセッサによって実行される、
a)前記複数の照射野の各照射分割に対して、前記システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す1つまたは複数の量に対する測定値を受信するステップと、
b)前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、
正規化係数で前記受信された測定値を正規化するステップであって、前記正規化係数は、以前の照射分割の送出中にその量に対して測定された以前の受信された測定値
の合計と、前記正規化された値の以前に決定された移動平均の合計との比率から計算される、ステップと、
c)前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の移動平均を決定するステップと、
d)前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の前記移動平均をそれぞれの所定の値と比較するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記正規化するステップが、前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、以前の照射分割の送出中にその量に対して測定された受信された測定値を考慮するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プロセッサによって実行される、
f)前記放射線治療システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品のハードウェア劣化を表すデータをメモリに記憶するステップと、
g)選択されたハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、1つまたは複数の量に対する前記正規化された値の前記決定された平均の正常な挙動からの逸脱との間の一意的な相関を決定するステップと
を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサによって実行される、
h)前記量の1つまたは複数に対する前記正規化された値の前記決定された平均に基づいて、かつ、前記ハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、前記1つまたは複数の量に対する前記正規化された値の前記決定された平均の正常な挙動からの逸脱との間の一意的な相関に基づいて、前記放射線治療システムのハードウェア構成部品のハードウェア劣化を決定するステップ
を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
複数の照射野に対して複数の照射分割を送出するように構成された放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するためのコンピュータプログラムであって、
- 前記複数の照射野の各照射分割に対して、前記システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す1つまたは複数の量に対する測定値を受信するステップと、
- 前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、
正規化係数で前記受信された測定値を正規化するステップであって、前記正規化係数は、以前の照射分割の送出中にその量に対して測定された以前の受信された測定値
の合計と、前記正規化された値の以前に決定された移動平均の合計との比率から計算される、正規化するステップと、
- 前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の移動平均を決定するステップと、
- 前記1つまたは複数の量のそれぞれに対して、前記正規化された値の前記移動平均をそれぞれの所定の値と比較するステップと
を、プログラム可能な装置で実行するとき、前記装置に実行させるように構成されたソフトウェアコード部分を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するためのシステムおよび方法に関する。より一般的には、本発明は放射線治療に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般に、放射線治療に関する。放射線治療は、いくつかの癌治療に用いられる。放射線治療は、例えば、X線または電子ビームによる、動物、例えば、人間の体の治療を含む。本明細書では、陽子線および/または炭素イオンビームなどのイオンビームを使用した、動物、例えば、人間の体の治療などの粒子線治療もまた、放射線治療として考えられる。
【0003】
放射線治療は、イオンビーム送出システムなどの放射線治療システムを使用して適用される。複数の患者のそれぞれに対して、照射野が送出される。通常、照射野は複数回の放射線治療にわたって、例えば、複数日にわたって患者に送出される。放射線治療中に送出される照射野の部分は、照射分割と呼ばれる。したがって、放射線治療システムは、複数の照射野(各患者に対して1つまたは複数の照射野)を送出し、各照射野に対して、複数の照射分割が与えられる(各患者は、同じ照射分割を受けるために複数回戻る)。
【0004】
放射線治療システムは、粒子加速器、ビーム輸送システム、ガントリ、ビーム送出システム、患者位置決め装置、およびX線患者位置決め確認システムなどの多くの構成部品を含む。ビーム送出システムは、治療領域を画定する、いわゆる、ノズルを備え、ノズルは、ノズルの受動散乱型またはノズルのスポット走査型のどちらかとすることができる。スポット走査ノズルは、粒子ビームを標的領域にわたって走査するために、1つまたは複数の磁石を備える。このような構成部品にいずれか、またはそれらの部品の不調は、放射線治療システムを停止させる場合がある。停止時間は、患者を治療することができないことを意味する。したがって、不調は防止されることが好ましい。しかしながら、放射線治療システムの構成部品の不調は一般に予測することが困難である。したがって、予防メンテナンスがしばしば、メンテナンスが実際に必要であることを直接暗示する特定の時間間隔で計画される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、これらの欠点を克服する、または、少なくとも減らすことである。より一般的には、本発明の目的は、放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するための、改善された、または、少なくとも代替の方法およびシステムを提供することである。より一般的には、本発明の目的は、改善された、または、少なくとも代替の放射線治療システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、複数の照射野に対して複数の照射分割を送出するように構成された放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するための装置が提供される。したがって、複数の照射野を送出することができ、各照射野を、その照射野を複数の照射分割にして送出することができる。これらの照射分割は異なる治療に属してもよいことは認識されるであろう。単一の治療内では、照射分割は実質的に同一にすることができる。本装置は、複数の照射野の各照射分割に対して、システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す1つまたは複数の量に対する値を測定するように構成された測定ユニットを含む。本装置は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、測定値を正規化するように構成された正規化器を含む。本装置は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均、例えば、移動平均を決定するように構成された平均化ユニットを含む。本装置は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均をそれぞれの所定の値と比較するように構成された比較器を含む。所定の値は、予め設定することができる、または自動的に計算することができることは認識されるであろう。正規化することによって、異なる照射分割、例えば、異なる照射野、層、またはスポットに関する量の測定を、たとえ、例えば、設定点またはパラメータが異なる照射分割で異なっているとしても、同じ統計解析で使用することができる、例えば、平均化することができる。
【0007】
正規化器は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、以前の照射分割の送出中に測定された値を考慮して測定値を正規化するように構成することができる。したがって、正規化は、(例えば、異なる患者の)複数の照射野の以前の照射分割の間に送出されたときに測定された量の以前の値、例えば、全履歴を考慮する。したがって、正規化器は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、(例えば、異なる患者の)複数の照射野の以前の照射分割の送出中に測定された量の以前の値、例えば、全履歴に対して測定値を正規化するように構成することができる。正規化器は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、測定値の履歴データに対して測定値を正規化するように構成することができる。この正規化によって、平均化後、(例えば、毎日、)正規化され、平均化された測定値の傾向曲線を(例えば、長期間にわたって)確立することができる。傾向曲線によって、正常な挙動からの逸脱、例えば、(差し迫った)不調を評価することができる。任意選択的に、正規化器は、より古い以前の照射分割の送出中に測定された値よりも、より直近の以前の照射分割の送出中に測定された値により大きな重みを割り当てるように構成される。任意選択的に、正規化器は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、量の以前の値の所定の数に対して測定値を正規化するように構成される。
【0008】
ハードウェア構成部品の機能を表す量は、例えば、電力消費、内部電圧、内部電流、温度、振動、出力パワー、出力品質、ノイズ成分などとすることができる。これらの量は、ハードウェア構成部品の状態を評価するための診断データとして使用するよりも、ハードウェア構成部品の特性に関係付けることができることは認識されるであろう。例としては、1)冗長なシステムがまだ正常な傾向に従っている間の、所与の電離箱の信号のドリフトに関係した治療の中断数の増大、2)磁石の電力供給の出力の変動に関係したビーム位置または形状の変化、などがある。
【0009】
任意選択的に、本装置は、ある時間間隔にわたる、正規化された値のそれぞれの平均を監視するように構成される。したがって、時間にわたる変化を検出することができる。
【0010】
任意選択的に、比較器は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均が、正常な挙動からの逸脱を示しているかどうか判定するように構成される。正常な挙動からの逸脱は、例えば、正規化された値の平均のドリフト、振動、および/または跳躍とすることができる。正常な挙動からのこのような逸脱は、ハードウェア構成部品の劣化の兆候の場合があり、差し迫った不調の兆候の場合さえある。
【0011】
任意選択的に、本装置は、正規化された値の平均の時間発展に基づいて、所定の値を決定するように構成される。したがって、正常な挙動からの逸脱を示すための閾値は、正規化された値自体の平均の時間発展から決定することができる。したがって、例えば、正規化された値の平均に対する正常値は、例えば、初期に決定することができ、閾値は、例えば、正常値からの所定の偏差、例えば、90%および110%で設定することができる。したがって、例えば、正常値に対するドリフト、振動、および/または跳躍を検出することができる。
【0012】
任意選択的に、比較器は、放射線治療システムの特定のハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、関係する量に対する正規化された値の決定された平均の逸脱との間の一意的な相関を表す情報を記憶する、かつ/またはそれを引き出すように構成される。任意選択的に、本装置は、これらの量の1つまたは複数に対する正規化された値の決定された平均に基づいて、かつ、一意的な相関に基づいて、放射線治療システムのハードウェア構成部品のハードウェア劣化を決定するように構成される。
【0013】
任意選択的に、本装置は、放射線治療システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品のハードウェア劣化を表すデータを受け取り、特定のハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、1つまたは複数の量に対する正規化された値の決定された平均の逸脱との間の一意的な相関を決定するように構成された相関ユニットを含む。
【0014】
一態様によれば、システム性能の劣化は検出され、任意選択的に、機器の故障、およびしばしば、停止時間をもたらす前に、警報が発せられる。システムの挙動の変化の有用な検出を達成するために、システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す量を監視することができる。任意選択的に、このような量は、ハードウェア構成部品の単一の故障モードを包含するように選ばれる。したがって、ハードウェアの所与の部分の劣化を検出することができる。これに代えて、または、これに加えて、このような量は、システムの任意の他の故障に対して透明になるように選ばれる。これに代えて、または、これに加えて、このような量は、量が、正常な環境では時間にわたって一定のままであり、現場の活動(治療の数、試験の照射野など)の性質に依存しないことを意味する時不変であるように選ばれる。
【0015】
陽子線治療センタでの動作は、このような傾向を検出するように非常に興味深い特性を示す。治療は、照射野の送出を含む。送出される照射野は一般に、長時間にわたって、例えば、ひと月の期間にわたって毎日、繰り返し送出され、しばしば広げられた実質的に同一の多くの照射分割に分割される。照射分割は一般に、複数の層、例えば、1つの照射分割当たり約16層よりなる。層は一般に、複数のスポット、例えば、1つの層当たり約100スポットよりなる。また、一般に、多くの異なる治療が1日の間に与えられ、その結果、多くの異なる照射野が1日の間に送出される。異なる治療は一般に同時に行われず、異なる日に、異なる照射野で始めて終わる、すなわち、実質的に同一の一続きの照射分割(1つの治療内)は、他の実質的に同一の一続きの照射分割(他の治療)と重なる。異なる照射野のこの部分的な重なりによって、現場の動作に何ら修正を施すことなく、システムの各装置のデータの傾向を抜き出すことができる。例えば、起動時に特定の照射野を走らせる必要はない。照射野を組み合わせると、ノイズを非常に低減することができる。照射野のいくつかの部分を使用すると、ノイズをさらに低減することができ、典型的には、各照射分割で計算された量に対しては√30 (≒5)のファクタで、各層で計算された量に対しては√500 (≒20)のファクタで、各スポットで計算された量に対しては√5・104 (≒220)のファクタで低減することができる。
【0016】
提示される解析は、システム性能のゆっくりとしたドリフトを検出することができる。さらに、データは、各治療後に更新することができる。装置の急速(例えば、1時間)な劣化は、他の手段(エラー、アラームなど)で対処することが好ましい。
【0017】
任意選択的に、本装置は、離れた場所から放射線治療システムを監視するように構成された分散装置である。離れた場所は、例えば、複数の放射線治療システムを、例えば、インターネットなど通信リンクによって監視する監視センタとすることができる。
【0018】
任意選択的に、本装置は、互いに地理的に離れた放射線治療システムなどの、複数の放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するように構成される。
【0019】
任意選択的に、1つまたは複数の量は、ビーム位置(スポット走査に対しては、ビームは、ビームを予め計画した様々な位置に位置決めすることによって、目標領域にわたって走査される)、電離箱のノイズレベル(電離箱は、患者に送出された線量を測定するために使用され、他の電離箱は、ビームの位置を測定するために使用される)、またはその位置に達するためにディグレーダによって必要とされる時間のうちの1つまたは複数である。受動散乱ノズルが使用されるとき、回転モジュレーションホイールは、ビームのエネルギーを変調させるために使用することができ、1つまたは複数の量は、ホイールの回転の変動と関係付けることができる。
【0020】
一態様によれば、複数の、例えば、実質的に同一の照射野に対して複数の照射分割を送出するように構成された1つまたは複数の放射線治療システム、および上記の装置を含む監視システムが提供される。
【0021】
一態様によれば、複数の照射野に対して複数の照射分割を送出する放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するための方法が提供される。本方法は、複数の照射野の各照射分割に対して、システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す1つまたは複数の量に対する値を測定するステップを含む。本方法は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、測定値を正規化するステップを含む。本方法は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均を決定するステップを含む。本方法は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均をそれぞれの所定の値と比較するステップを含む。
【0022】
任意選択的に、正規化するステップは、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、以前の照射分割の送出中に測定された値を考慮して測定値を正規化するステップを含む。任意選択的に、正規化するステップは、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、(例えば、異なる患者の)複数の照射野の以前の照射分割の送出中に測定された量の以前の値、例えば、全履歴に対して測定値を正規化するステップを含む。任意選択的に、正規化するステップは、より古い以前の照射分割の送出中の測定された値よりも、より直近の以前の照射分割の送出中に測定された値により大きな重みを割り当てるステップを含む。
【0023】
任意選択的に、本方法は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、次の時点で、正規化された値の決定された平均をメモリに記憶するステップを含む。
【0024】
任意選択的に、本方法は、放射線治療システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品のハードウェア劣化を表すデータをメモリに記憶するステップを含む。任意選択的に、本方法は、選択されたハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、1つまたは複数の量に対する正規化された値の決定された平均の逸脱との間の一意的な相関を決定するステップを含む。
【0025】
任意選択的に、本方法は、これらの量の1つまたは複数に対する正規化された値の決定された平均に基づいて、かつ、前記ハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、前記1つまたは複数の量に対する正規化された値の決定された平均の逸脱との間の一意的な相関に基づいて、放射線治療システムのハードウェア構成部品のハードウェア劣化を決定するステップを含む。
【0026】
本方法は、コンピュータで実施する方法であってもよいことは認識されるであろう。
【0027】
一態様によれば、複数の照射野に対して複数の照射分割を送出するように構成された放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するためのコンピュータプログラム製品が提供される。本コンピュータプログラム製品は、
- 複数の照射野の各照射分割に対して、システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を表す1つまたは複数の量に対する測定値を受け取るステップと、
- 1つまたは複数の量のそれぞれに対して、測定値を正規化するステップと、
- 1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均、例えば、移動平均を決定するステップと、
- 1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均をそれぞれの所定の値と比較するステップと
を、プログラム可能な装置で実行するとき、装置に実行させるように構成されたソフトウェアのコード部分を含む。
【0028】
任意選択的に、本コンピュータプログラム製品は、非一時的なデータ記憶装置に含まれる。
【0029】
本システムを考慮して説明された態様、特徴、およびオプションのいずれも、本方法および本コンピュータプログラム製品に同様に適用されることは認識されよう。上記の態様、特徴、およびオプションの任意の1つまたは複数を組み合わせることができることもまた明らかであろう。
【0030】
本発明は、図面に示される例示的な実施形態に基づいて、さらに明らかにされる。例示的な実施形態は、非限定的な例示として与えられる。図は、非限定的な例として与えられる本発明の実施形態の概略的な描写にすぎないことを留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】装置および放射線治療システムの例の図である。
【
図4】正規化されたデータ、ならびに正規化および平均化されたデータの例の図である。
【
図6】正規化されたデータ、ならびに正規化および平均化されたデータの例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、放射線治療システム2のハードウェア劣化を検出するための装置1の概略図を示す。放射線治療システム2は、複数の照射野に対して複数の照射分割を送出するように構成される。この例では、放射線治療は、数日の過程にわたって複数の照射分割で患者に送出される。照射分割の照射野は複数の層からなる。各層は複数のスポットからなる。
【0033】
装置1は測定ユニット4を含む。測定ユニット4は、各照射分割に対して、システム2の1つまたは複数のハードウェア構成部品6.n (n = 1, 2, 3, ..)の機能を表す1つまたは複数の量に対する値を測定するように構成される。ハードウェア構成部品は不調になる可能性がある。ここでは、ハードウェア不調はまた、故障が差し迫っていることを表す劣化、あるいは整備または交換が望ましいことを示す劣化である可能性がある。1つの目的は、放射線治療システム2が実際に故障する前に、不調のハードウェア構成部品、または不調になりそうな構成部品を整備、修理、または交換することができるように、ハードウェア故障を予測することである。このようなハードウェア構成部品の例は、例えば、電離箱(受けた累積線量による劣化を受ける)、モジュレーションホイール(機械的摩耗、特に、全サイクル数に依存した機械的摩耗を受ける)、増幅器、コントローラなどの電子モジュールとすることができる。測定ユニット4が、放射線治療システム2の一部分であるセンサから測定値を受け取る、または引き出すことが可能であることは認識されるであろう。したがって、センサの不調および/または劣化もまた、装置1を使って監視することができる。
【0034】
装置1は正規化器8を含む。正規化器8は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、測定値を正規化するように構成される。装置1は平均化ユニット10を含む。平均化ユニット10は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均、例えば、移動平均を決定するように構成される。装置1は比較器12を含む。比較器12は、1つまたは複数の量のそれぞれに対して、正規化された値の平均をそれぞれの所定の値と比較するように構成される。所定の値は、予め設定することができる、または自動的に決定することができる。
【0035】
装置1は、ここまで説明したように、以下のように使用することができる。
図2は、例示的なフロー図を示す。
【0036】
この例では、放射線治療システム2によって、日数Mにわたって照射野数Nが送出されることが考えられている。ここで、各照射野の照射分割は1日当たり1回送出されると仮定されているが、照射野の照射分割が、1日当たり1回より多い、または少ない回数送出されることも可能であることは認識されるであろう。この例では、複数の照射野の複数の照射分割が評価されているが、複数の層または複数のスポットに対しても同様に適用されることは明らかであろう。重要な点は、同じ要素(照射分割、層、スポット)の期間にわたる再現性である。
【0037】
測定ユニット4は、ステップ100において、各照射野に対して、1つまたは複数のハードウェア構成部品の機能を代表する1つまたは複数の量に対する値を測定する。各測定量に対して、aijは、j日目での照射野iに対する量aの値として、または、より一般的には、照射野iの照射分割jに対する量aの値として定義される。この例では、量は、電離箱(IC:ionization chamber)での計数など、厳密に正の値(すなわち、ゼロまたはそれより大きい)を有すると考えられる。常に正の値とは限らない量、例えば、位置は、初めに正の値に変換することができる。簡単にするために、この例では、単一の量aijを考える。
【0038】
本方法の目的は、j日目ごとのすべての照射野からの情報をグループ分けするシーケンスxjを見出すことである。この例では、照射野iに対する測定量aijの値は、ステップ102において、正規化され、平均化された、例えば、移動平均化された値xjに等しく寄与するように、正規化器8によって正規化され、平均化ユニット10によって平均化される。ここで、ある照射野に対する量の最初の値は、j日目の他のすべての照射野に対するその量に対する他のすべての値の平均に対する正規化係数を決定する。
【0039】
j日目での有効照射野xjの生成は、以下のように行うことができる。正規化係数Rijは、次のように定義される。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
ここで、Njは、時jでのゼロでない照射野の数であり、joiは照射野iの開始時である。式EQ3における積算は、時jにおける、ゼロでないすべての正規化された照射野にわたって行われる。時jでの各照射野iに対する正規化係数Rijは、正規化された測定量
【0044】
【0045】
が、j-1日目までの全履歴にわたって最もよくxjに近づくように計算される。したがって、正規化は、測定された量の以前の値、例えば、全履歴に対して実施される。
【0046】
照射野の量の最初の値は、履歴がないため、完全には正規化することができないことは認識されるであろう。これは、特に、照射野が時間的にあまり長く続かない、または照射野が少ないときには、xjの正確度に影響することがある。必要ならば、これを改善するためにいくつかの解決策を適用することができる。例えば、量の値aijのxjに対する寄与は、十分な事象を累積した照射野の量の値のみが寄与するように、遅らせることができる。例えば、xjは、繰り返し補正することができる。最も古い継続値aijまでの値は、最後に計算された正規化係数Rijで再計算することができる。例えば、減衰パラメータは、下記で説明するように加えることができる。
【0047】
上記の例では、式EQ1によれば、正規化係数Rijは、量の値aijの全履歴に依存することに留意されたい。いくつかの環境では、これは、照射野が非常に長い時間続く場合には、いくつかのドリフトを見えなくすることがある。代替の例では、減衰パラメータλを加えることが可能である。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
ここで、αij(言い換えれば、Xj)は、直近の事象に重みを多く付けたaij(言い換えれば、xj)の移動平均を表す。パラメータλは0(長記憶)と1(短記憶)との間である。その値は、観察しているドリフトの時定数に応じて選ぶことができる。正規化係数Rijが、量の値aijの部分的な履歴、例えば、最直近の6つの量の値に依存することもまた可能である。
【0054】
上の例では、連続する事象間の時間は一定であると考えることができると仮定されている。実際には、例えば、週末には治療がないこと、患者の予定が変わることなどにより、これは、いつも当てはまるとは限らないことは明らかであろう。例えば、事象間の時間間隔が一定でないことを考慮するために、EQ4およびEQ5において、λを、λΔtに置き換えることができる。ここで、Δtは連続する事象間の時間である。所与の照射野が特定の日に照射されなかった場合は、xjの平均のドリフトを、αijに移すことができる。
【0055】
【0056】
いくつかの場合には、時間は、構成部品の劣化を観察するために最良のものさしでないことがあることは認識されるであろう。時間を、放射線損傷を考慮するために累積線量、または、移動(例えば、回転)部品に対する使用サイクル数などの代替の軸によって置き換えることが可能である。上記の式は相変わらず有効である。
【0057】
積算下での値の正規化はバイアスをもたらす。aijの+10%または-10%の変動は、1/(1+10%)≠1-10%であるので、xjに非対称の影響を有する。結果として、大きな変動に対して、生データaijの傾向に関係しない傾きをxjに観察することができる。例として、λ=0の場合を考える(照射野の第1の値から正規化)。σjを照射野ajの標準偏差とし、テイラー級数から
【0058】
【0059】
それぞれの新しい照射分割にオーダー(order)
【0060】
【0061】
のバイアスを導入する。xjの観察される傾きは次式となる。
【0062】
【0063】
ここで、fは、新しい照射分割が始まる頻度である。この誤差を避ける、または少なくとも小さくするための例示的な方法を、本明細書で下記に提示する。
【0064】
EQ11のアーチファクトを低減するための簡単な解決策は、aijに一定値Aを加える(aij→aij+A)ことによってσj/ aj を小さくすることである。この動作は、xjの変動の振幅がAとは独立であるように、最後にもとに戻されることが好ましい。
【0065】
【0066】
ここで、
【0067】
【0068】
は、すべての値aijの平均である。
【0069】
ドリフトアーチファクトを取り除く、または少なくとも低減するためのより入念な方法は、EQ11で生じた誤差を補償することによって結果を補正することである。これは、収束に達するまで、σjを計算してxjを補正することによって繰り返し行うことができる。
【0070】
次に、EQ1に従って例を説明する。時の関数として3つの照射野を有する次の行列を考える。
【0071】
【0072】
ここで、第1行は、1日目から6日目(j=1..6)の測定値を有する、第1の照射野(i=1)の照射分割に対する量の、測定されたゼロでない値aijを示す。第2行は、2日目から7日目(j=2..7)の測定値を有する、第2の照射野(i=2)の照射分割に対する量の、測定されたゼロでない値aijを示す。第3行は、5日目から9日目(j=5..9)の測定値を有する、第3の照射野(i=3)の照射分割に対する量の、測定されたゼロでない値aijを示す。同様に、第1列は、1日目(j=1)の異なる照射野の照射分割に対する測定値を示し、この例では、第1の照射野(j=1)の照射分割のみがゼロでない。
【0073】
第1行(ここでは、第1の照射野を示す)は1日目が基準になる。したがって、値a11は、第1の照射野に対する正規化係数として働き得る。
【0074】
【0075】
2日目は、第2の照射野が入り、x2に正規化される。したがって、2日目の測定された量は、1日目に測定された量に対して正規化される。さらに、x2は、それより前の照射野(この場合は、第1の照射野)から計算される。
【0076】
【0077】
3日目は、第1および第2の照射野がxjに寄与し始める。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
例を簡単にするために、x3に対しては、平方和よりむしろ線形和がとられた。この例では、3日目の前に、1つの照射野のみがxjに寄与し、その場合には、正規化を変える理由がないので、R12=R13であることに留意されたい。これは、第1および第2の照射野が両方、x3に影響を与えるので、次の日には変わる。
【0082】
このプロセスが進んで、xjは、
【0083】
【0084】
と
【0085】
【0086】
との中間になる。5日目は、第3の照射野が操作に入り(ゼロでない)、x5に正規化される。これは、6日目にxjに寄与し始める。
【0087】
次に、模擬実験を説明する。この実験に対して、3と5の間のランダムな振幅を有する、それぞれが平均20の照射分割を含む500の照射野、すなわち、照射野の照射分割に対する10000の量の値を発生した。各照射野は約20日間続く、すなわち、各照射野は、連続20日、実質的に同じように、分割して送出される。測定される値の日ごとの変動は、およそ2.5%の標準偏差を有するように設定される。これは、1日当たりおよそ30人の患者を有する治療室に対するおよそ1年分のデータを表している。
図3は、照射野の生の値a
ij、すなわち、この実験で測定された量に対する生の値に対する点の集まり20を示す。
図4では、照射野の値a
ijは同じ基準
【0088】
【0089】
に正規化され22、各照射野内の固有の変動のみが維持される。正規化することによって、異なる照射野、例えば、異なる照射野の異なる照射分割、層、またはスポットに関する量の測定を、たとえ、設定点またはパラメータが異なる照射野に対して異なっていても、同じ統計解析で使用することができる、例えば、平均化することができる。黒の曲線24は、正規化された照射野
【0090】
【0091】
から作られた有効照射野xjを示す。単一の照射野の変動は、すべての照射野にわたって平均化することによって大いに低減される。
【0092】
このアルゴリズムの潜在能力を示すために、すべての照射野が1日当たり0.1%の小さなドリフトを受ける第2の実験が模擬された。
図5は、それぞれが20日に及ぶ、5つの例示的な個別の照射野に対する測定値26を示す。
図5を見てわかるように、1日当たり0.1%のドリフトは、時間間隔が短すぎる、および、信号にノイズが多すぎるという両方の理由によって、単一の照射野ではほとんど目立たない。
図6は、それぞれ約20の照射分割の500の照射野を示し、各照射野は、1日当たり0.1%のドリフトを有し、上記のように正規化されている28。この場合もまた、黒い線30はx
jを表している。500の照射野をすべて合わせることによって、x
jへの0.1%のドリフトの影響は明らかに観察可能であることは、
図5を見ればわかる。装置1は、ある時間間隔にわたる、正規化された値のそれぞれの平均を監視するように構成される。比較器12は、ステップ104において、正規化された値の平均をそれぞれの所定の値と比較するように構成される。ここで、比較器は、正規化された値の平均が、正常な挙動からの逸脱を示しているかどうか判定するように構成される。この例では、比較器12は、正規化され平均化された値x
jの履歴値を基準値として採ることができる。これに代えて、比較器は、値1を基準値として採ることができる(ここでは、値は、1に正規化される)。比較器12が逸脱、例えば、x
j<0.9またはx
j>1.1を検出した場合、アラームを発することができる。さらに、装置1は通信ユニット16を含むことができる。
【0093】
ときどき、照射野は、例えば、患者の特性評価の場合に、1日に1回より多く送出される。これは、aij内で結果を平均化することによってノイズを低減する機会となる。
【0094】
いくつかの照射分割は、システム、または医師のどちらかにによって中止することができる。照射野の残りの照射分割を後で照射することができるが、このような照射野は、データへの望ましくないノイズを避けるために破棄されることが好ましい。実際の送出されたスポットの数と意図されたスポットの数とのチェックサムを使って、これらの不完全な照射野を自動的に除去することができる。
【0095】
中断を受けた照射野は、データにノイズを加えることがあるが、中断は、使用者にシステムが何かうまくいっていないことをすでに警告する。使用者が、このような照射野を除去したいかどうかを選ぶことができることが可能である。
【0096】
病院はときどき、腫瘍の縮小に対応するために、治療方針内の照射計画を修正する。本システムは、例えば、新しい患者のIDから、または送出されたスポットの数と全線量とのチェックサムによって、これを自動的に検出するように構成することができる。
【0097】
照射分割が、新しいソフトウェアの版をインストールしたときと重なると、新しい版における退縮は、同じ患者に測定差異を生じさせ得る。これは、版が変わる前と変わった後の潜在的な変化を検出するための機会を与える。ソフトウェアのリリースの時は、ハードウェア構成部品の故障との混同を避けるために明確に示されることが好ましい。
【0098】
上記で、正常な環境において一定のままになるべき基準変数を生成する方法を説明した。この目的は、システムが正常な挙動から逸脱するときを検出することである。
図7は、予想された一定値から逸脱したxのいくつかの可能な時間挙動、すなわち、x
jの時系列を示す。システムのハードウェア構成部品の劣化または故障は、例えば、ドリフト(青い曲線)をもたらすことがある。これに代えて、または、これに加えて、故障または劣化は、周期的なパターン(赤い曲線)をもたらすことがある。これに代えて、または、これに加えて、故障または劣化は、反応の急激な変化(緑)をもたらすことがある。例えば、放射線損傷を受けた装置に、または磁気ホールプローブに、ハードウェア信号の反応のドリフトを観察することは普通のことであろう。長い時間間隔にわたってxの傾きを監視すれば、これを検出することができるであろう。所定の閾値を定めることができる(例えば、20%)。xの値が所定の閾値を横切るときに、アラームを発することができる、かつ/または、メンテナンスを計画することができる。周期的なパターンを見ると、何日にもわたってデータの再現性が起こるように、これらは、普通、非常に長時間のスケールにわたって生じることに留意されたい。それでも、例えば、顧客によるシステムの使用(治療数の変化、午前と午後との間の違い、実験的なミッションの影響など)または、その他(季節の湿度変化など)に関係することがある、データの周期的なパターン対して調べることは洞察的であり得る。例えば、フーリエ解析を使用してこのような周期的なパターンを抜き出すことができる。突然の変化を考えると、「突然」は、その影響は日にわたる変動に関係するので相対的なものであることに留意されたい。さらに、いくつかの装置は、システムの動作をすぐに止めることをしない反応の変化を示すことがあるが、このような変化は、さらなる損傷の最初の兆候である場合がある。例えば、減衰パラメータλおよびその修正によって、このような結果についての情報をデータ解析によって抜き出すことを可能にすることができる。
【0099】
上記の例では、単一の量aが測定および監視された。複数の異なる量a、b、c、dなどを同時に測定および監視することもまた可能であることは認識されるであろう。一態様によれば、機能が損なわれたハードウェア構成部品を、システムの他のすべての部品、および放射線治療システムの使用とは独立して識別することができる。さらに、一組の量a、b、c、dなどを監視することができる。これらの量は、欠陥のある、劣化した、またはその他機能が損なわれたハードウェア構成部品、あるいはその部品を識別する際の変数として使用することができる診断データを形成する。これらの変数は、各ハードウェア故障が、変数の一意的な組合せに対応するように選ばれる。変数はまた、照射野の特性(飛程、変調など)から独立しているように選ばれる。変数ができるだけ少ないノイズを示すことが好ましい。変数はゼロの近くで平均化しないことが好ましいが、これは、上記のように改善することができる。
【0100】
2つの表が利用可能とすることができる。第1の表は、測定されたすべての変数を含むことができる。第2の表は、識別されるすべてのハードウェア故障を含むことができる。変数とハードウェア故障との間の相関を示す相関行列を与えることができる。
図8は、ハードウェア故障HW1、HW2、HW3、..HW10を変数a、b、c、d、e、f、g、h、k、m、o、p、q、r、sに相関付ける相関行列の例を示す。例えば、ハードウェア故障HW2は、変数bと一意的に相関付けられている。例えば、ハードウェア故障HW7は、変数e、p、qの組合せと一意的に相関付けられている。例えば、ハードウェア故障HW6は、いかなる変数とも相関せず、したがって、変数a、b、c、d、e、f、g、h、k、m、o、p、q、r、sの組では検出することはできない。
【0101】
比較器12は相関行列を記憶することができる、かつ/または、メモリから相関行列を引き出すことができる。すでに説明したように、各ハードウェア故障が、1つまたは複数の変数の一意的な組合せに対応することが好ましい。したがって、変数の測定値の逸脱からハードウェア故障を一意的に識別することが可能である。ここでは、ハードウェア故障はまた、故障が差し迫っていることを表す劣化、あるいは整備または交換が望ましいことを示す劣化である可能性がある。したがって、装置1は、ステップ106において、量の1つまたは複数に対する正規化された値の決定された平均に基づいて、かつ、一意的な相関に基づいて、放射線治療システムのハードウェア構成部品のハードウェア劣化を決定することができる。
【0102】
相関行列は、例えば、システムの知識に従って、手作業で作ることができる。しかしながら、相関行列は、自動的に生成または更新することもまた可能である。さらに、ハードウェア故障が観察されるたびに、直近で変化した変数を自動的に探すことができる。装置1は、相関ユニット14を含むことができる。相関ユニット14は、放射線治療システムの1つまたは複数のハードウェア構成部品のハードウェア劣化を表すデータを受け取り、特定のハードウェア構成部品のハードウェア劣化と、1つまたは複数の量に対する正規化された値の決定された平均の逸脱との間の一意的な相関を決定するように構成される。
【0103】
一態様によれば、装置1は、離れた場所から放射線治療システム2を監視するように構成された分散装置とすることができる。これに代えて、または、これに加えて、装置は、例えば、互いに地理的に離れた、複数の放射線治療システムのハードウェア劣化を検出するように構成することができる。一例では、装置1は、市、州、国、大陸、または世界をまたぐ複数の放射線治療システムを監視するように構成された中央監視ステーションに配置される。
【0104】
本明細書において、本発明は、本発明の実施形態の特定の例を参照して説明されている。しかしながら、本発明の本質から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることは明らかであろう。明瞭かつ簡潔に説明するために、本明細書では、特徴は、同じ、または別々の実施形態の一部分として説明されているが、これらの別々の実施形態で説明された特徴のすべて、またはいくつかの組合せを有する代替の実施形態もまた考えられる。
【0105】
時間は、システムに対するドリフトを検討するための自然の量であると思われるが、物理学の観点から、他のいくつかの横座標がより適切な場合がある。例えば、電離箱の経時変化は、受けた累積線量に関係すると予想され、モジュレーションホイールの経時変化は、全サイクル数に依存すると予想される。したがって、任意の単調な量を横座標として使用することができるが、本方法は、時間を代替の量に取り換えることによって相変わらず有効である。
【0106】
本装置、あるいは測定ユニット、正規化器、平均化ユニット、比較器、相関ユニット、および/または通信ユニットなどの本装置の部品は、おそらく、ソフトウェアコード部分を含む専用の電子回路として具現化することができることは認識されるであろう。本装置、あるいは測定ユニット、正規化器、平均化ユニット、比較器、相関ユニット、および/または通信ユニットなどの本装置の部品はまた、コンピュータなどのプログラム可能な装置で実行され、例えば、そのメモリに記憶されるソフトウェアコード部分として具現化することができる。
【0107】
しかしながら、他の修正、変更、および代替もまた可能である。したがって、本明細書、図面、および例は、限定するというよりもむしろ、例示するものとみなすべきである。
【0108】
明瞭かつ簡潔に説明するために、本明細書では、特徴は、同じ、または別々の実施形態の一部分として説明されているが、本発明の範囲は、説明された特徴のすべて、またはいくつかの組合せを有する実施形態を含むことができることは認識されるであろう。
【0109】
特許請求の範囲において、括弧内のいかなる参照符号も、請求項を限定するものとして解釈すべきでない。語「備えている(comprising)」は、請求項で列挙した特徴またはステップ以外の特徴またはステップが存在することを除外しない。さらに、語「1つ(a)」および「1つ(an)」は、「唯一(only one)」に限定するものとして解釈されるべきではなく、「少なくとも1つ(at least one)」を意味するために使用されており、複数を除外しない。特定の方法が互いに異なる請求項に列挙されているという事実だけで、これらの方法を組み合わせて利点となるように使用することができないことが示されたわけではない。
【符号の説明】
【0110】
1 装置
2 放射線治療システム
4 測定ユニット
8 正規化器
10 平均化ユニット
12 比較器
14 相関ユニット
16 通信ユニット